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特許6997803感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法、化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法、化合物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20220111BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20220111BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20220111BHJP
   C07C 381/12 20060101ALI20220111BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/039 601
G03F7/038 601
C07C381/12 CSP
G03F7/20 521
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019560866
(86)(22)【出願日】2018-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2018042011
(87)【国際公開番号】W WO2019123895
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2017246984
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】上村 稔
(72)【発明者】
【氏名】山本 恵士
(72)【発明者】
【氏名】後藤 研由
(72)【発明者】
【氏名】白川 三千紘
(72)【発明者】
【氏名】藤田 光宏
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-202993(JP,A)
【文献】特開2013-167825(JP,A)
【文献】特開2013-167826(JP,A)
【文献】特開2018-022103(JP,A)
【文献】特開2018-025778(JP,A)
【文献】特開2018-035096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
C07C 381/12
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する酸発生剤と、
酸拡散制御剤と、を含み、
前記酸拡散制御剤が、下記一般式(1)で表される化合物を含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

上記式中、Ar、Ar及びArは、各々独立に、芳香族炭化水素基を表す。
は、Ar上でSと結合する炭素原子に対してオルト位に置換し、且つ、-L-CO 、-L-SO 、又は-L-X-N-Yを表す。
は、2価の連結基を表す。
及びLは、各々独立に、単結合、又は2価の連結基を表す。
は、-SO-、又は-CO-を表す。
は、-SO-R、又は-CO-Rを表す。
及びRは、各々独立に、1価の置換基を表す。
なお、Ar、Ar及びArは、更に置換基を有していてもよく、前記置換基同士が互いに結合して、環を形成していてもよい。
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物である、請求項1に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化2】

上記式中、Ar、及びArは、各々独立に、単環芳香族炭化水素基を表す。
、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、又は非芳香族性の置換基を表す。
は、-L-CO 、-L-SO 、又は-L-X-N-Yを表す。
は、2価の連結基を表す。
及びLは、各々独立に、単結合、又は2価の連結基を表す。
は、-SO-、又は-CO-を表す。
は、-SO-R、又は-CO-Rを表す。
及びRは、各々独立に、1価の置換基を表す。
なお、Ar及びArは、更に置換基を有していてもよく、前記置換基同士が互いに結合して、環を形成していてもよい。
【請求項3】
~Rが全て水素原子であるか、又は、Ar及びArの少なくとも一方が無置換の単環芳香族炭化水素基である、請求項2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
~Rが全て水素原子であり且つAr及びArの一方が無置換の単環芳香族炭化水素基であるか、
Ar及びArがいずれも無置換の単環芳香族炭化水素基であるか、又は、
~Rが全て水素原子であり且つAr及びArがいずれも無置換の単環芳香族炭化水素基である、請求項2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
が、-L-CO 、又は-L-X-N-Yである、請求項1~4のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
が単結合である、請求項5に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項7】
樹脂と、
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する酸発生剤と、
酸拡散制御剤と、を含み、
前記酸拡散制御剤が、下記一般式(1)で表される化合物を含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化3】

上記式中、Ar 、Ar 及びAr は、各々独立に、芳香族炭化水素基を表す。
また、Ar 、Ar 及びAr は、更に置換基を有していてもよく、前記置換基同士が互いに結合して、環を形成していてもよい。但し、Ar 、Ar 及びAr の少なくとも一つは、置換基としてハロゲン原子を有する。
は、Ar 上でS と結合する炭素原子に対してオルト位に置換し、且つ、-L -CO を表す。
は、単結合を表す。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成されたレジスト膜。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
前記レジスト膜を露光する露光工程と、
露光された前記レジスト膜を、現像液を用いて現像する現像工程と、を含む、パターン形成方法。
【請求項10】
請求項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法、及び化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IC(Integrated Circuit、集積回路)及びLSI(Large Scale Integrated circuit、大規模集積回路)等の半導体デバイスの製造プロセスにおいては、化学増幅型レジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、化学増幅型レジスト組成物を用いたパターン形成方法として、「(ア)下記(A)~(C)を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によって膜を形成する工程、
(A)酸の作用により極性が増大して有機溶剤を含む現像液に対する溶解性が減少する樹脂、
(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物、及び
(C)カチオン部位とアニオン部位を同一分子内に有し、かつ、該カチオン部位と該アニオン部位が共有結合によって連結している化合物
(イ)上記膜を露光する工程、及び
(ウ)上記露光された膜を、有機溶剤を含む現像液を用いて現像してネガ型のパターンを形成する工程を有するパターン形成方法。」を開示している。また、上記特許文献1では、(C)成分として、下記2種のベタイン型化合物を開示している。
【0004】
上記(B)成分は、いわゆる酸発生剤であり、露光工程(工程(イ))の際に活性光線又は放射線の照射を受けて酸を発生する。この発生酸は、主として酸分解性樹脂(上記(A)成分)の脱保護反応に寄与する。
【0005】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-170205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、特許文献1を参照して、樹脂成分の脱保護反応(酸分解性樹脂の脱保護反応)を起こすため、又は樹脂成分の架橋反応を生起させるために通常用いられる酸発生剤(以下、「酸発生剤X」という。)と上記ベタイン型化合物とを含む感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を調製して検討したところ、上記ベタイン型化合物は、活性光線又は放射線の照射を受けると、酸発生剤Xから発生する酸よりも相対的に弱い酸を発生し、酸発生剤Xから発生する酸の未露光部分への拡散を制御する酸拡散制御剤(中和剤)として機能することを知見している。
一方で、本発明者らは、上記ベタイン型化合物は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中において凝集体(例えば2量体)を形成し易く、系中に均一に分散されにくいことを明らかとした。この結果として、酸発生剤Xと上記ベタイン型化合物を含む感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の膜(以下において「感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の膜」を「レジスト膜」ともいうこともある。)中では、上記ベタイン型化合物が不均一に存在することにより、露光工程の際に上記ベタイン型化合物による酸発生剤Xから発生する酸の拡散抑制(中和)が均一に進行せず、形成されるパターンは、パターン線幅の揺らぎ(LWR(line width roughness))及び面内均一性(CDU(critical dimension uniformity))が必ずしも十分ではないことを明らかとした。
【0008】
そこで、本発明は、パターン線幅の揺らぎ(LWR)及び面内均一性(CDU)に優れたパターンを形成し得る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたレジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、新規な化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、酸発生剤と、酸拡散制御剤として一般式(1)で表される化合物と、を含む感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によれば上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0010】
〔1〕 樹脂と、
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する酸発生剤と、
酸拡散制御剤と、を含み、
上記酸拡散制御剤が、一般式(1)で表される化合物を少なくとも含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔2〕 上記一般式(1)で表される化合物が、一般式(2)で表される化合物である、〔1〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔3〕 一般式(2)中、R~Rが全て水素原子であるか、又は、Ar及びArの少なくとも一方が無置換の単環芳香族炭化水素基である、〔2〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔4〕 一般式(2)中、R~Rが全て水素原子であり且つAr及びArの一方が無置換の単環芳香族炭化水素基であるか、
Ar及びArがいずれも無置換の単環芳香族炭化水素基であるか、又は、
~Rが全て水素原子であり且つAr及びArがいずれも無置換の単環芳香族炭化水素基である、〔2〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔5〕 一般式(1)又は一般式(2)中、Aが、-L-CO 、又は-L-X-N-Yである、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔6〕 L及びLが単結合である、〔5〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔7〕 〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成されたレジスト膜。
〔8〕 〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
上記レジスト膜を露光する露光工程と、
露光された上記レジスト膜を、現像液を用いて現像する現像工程と、を含む、パターン形成方法。
〔9〕 〔8〕に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
〔10〕 一般式(1)で表される化合物。
〔11〕 一般式(2)で表される化合物。
〔12〕 一般式(2)中、R~Rが全て水素原子であるか、又は、Ar及びArの少なくとも一方が無置換の単環芳香族炭化水素基である、〔11〕に記載の化合物。
〔13〕 一般式(2)中、R~Rが全て水素原子であり且つAr及びArの一方が無置換の単環芳香族炭化水素基であるか、
Ar及びArがいずれも無置換の単環芳香族炭化水素基であるか、又は、
~Rが全て水素原子であり且つAr及びArがいずれも無置換の単環芳香族炭化水素基である、〔11〕に記載の化合物。
〔14〕 一般式(1)又は一般式(2)中、Aが、-L-CO 、又は-L-X-N-Yである、〔10〕~〔13〕のいずれかに記載の化合物。
〔15〕 L及びLが単結合である、〔14〕に記載の化合物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パターン線幅の揺らぎ(LWR)及び面内均一性(CDU)に優れたパターンを形成し得る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供できる。
また、本発明によれば、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたレジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法を提供できる。
また、本発明によれば、新規な化合物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に制限されない。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光:Extreme Ultraviolet)、X線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。本明細書中における「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。
本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及びEUV光等による露光のみならず、電子線、及びイオンビーム等の粒子線による描画も含む。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0013】
本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表す。
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(分子量分布ともいう。)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー社製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶媒:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー社製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0014】
本明細書中における基(原子団)の表記について、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と共に置換基を有する基をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
【0015】
また、本明細書において、「置換基を有していてもよい」というときの置換基の種類、置換基の位置、及び、置換基の数は特に制限されない。置換基の数は例えば、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上であってもよい。置換基の例としては水素原子を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、例えば、以下の置換基群Tから選択できる。
(置換基T)
置換基Tとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基及びtert-ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びp-トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基及びフェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基及びベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びメトキサリル基等のアシル基;メチルスルファニル基及びtert-ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基;フェニルスルファニル基及びp-トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基;アルキル基;シクロアルキル基;アリール基;ヘテロアリール基;水酸基;カルボキシ基;ホルミル基;スルホ基;シアノ基;アルキルアミノカルボニル基;アリールアミノカルボニル基;スルホンアミド基;シリル基;アミノ基;モノアルキルアミノ基;ジアルキルアミノ基;アリールアミノ基;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0016】
〔感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物〕
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう。)は、樹脂と、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する酸発生剤(以下、「酸発生剤X」ともいう。)と、酸拡散制御剤と、を含み、上記酸拡散制御剤が、後述する一般式(1)で表される化合物を少なくとも含む。
【0017】
本発明の特徴点としては、一般式(1)で表される化合物を酸拡散制御剤として含んでいる点が挙げられる。
以下、一般式(1)で表される化合物の酸拡散制御剤としての作用機序を説明した後、一般式(1)で表される化合物の構造的特徴を述べる。
【0018】
<一般式(1)で表される化合物の酸拡散制御剤としての作用機序>
一般式(1)で表される化合物は、活性光線又は放射線の照射を受けて酸を発生する。一般式(1)で表される化合物から発生する酸は、樹脂成分の脱保護反応(酸分解性樹脂の脱保護反応)を起こすため、又は樹脂成分の架橋反応を生起させるために通常用いられる酸発生剤(酸発生剤X)に対して相対的に弱酸となる。このため、露光時及び/又は露光後のレジスト膜系中では、酸発生剤Xにより発生する酸と、一般式(1)で表される化合物から発生する酸のアニオンとの見かけ上のプロトン交換反応が生じる。この結果として、酸発生剤Xにより発生する酸が中和され、酸発生剤Xから発生する酸の未露光部分への拡散が抑制される。
【0019】
<一般式(1)で表される化合物の構造的特徴>
一般式(1)で表される化合物の構造的な特徴点としては、Aで表されるアニオン性基が、スルホニウムカチオンに結合するAr(芳香族炭化水素基)上のSと結合する炭素原子に対してオルト位に置換している点が挙げられる。
本発明者らは、特許文献1に記載されたベタイン型化合物が感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中において凝集しやすい(2量体等の多量体を形成しやすい)原因が、ベタイン型化合物の分子内分極にあると推測している。より詳細には、上記ベタイン型化合物は、分子内の正電荷と負電荷が離れ過ぎており、電荷の中和のために他の分子と凝集すると考えている。
これに対して一般式(1)で表される化合物は、Aで表されるアニオン性基とSで表される硫黄原子のカチオン部位とが構造的に近いため、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中において凝集しにくい。したがって、一般式(1)で表される化合物は、レジスト膜系中においても均一に分散されて存在する。この結果として、露光時及び/又は露光後のレジスト膜系中において、一般式(1)で表される化合物から発生する酸による酸発生剤Xから発生する酸の拡散抑制(中和)が、均一に進行すると推測している。
上記作用機序により、本発明の組成物により形成されるパターンは、LWR性能及びCDU性能に優れる。
なお、一般式(1)で表される化合物から発生する酸としては、下記一般式(1X)で表される酸及び下記一般式(1Y)で表される酸のいずれか1種以上であると推測している。つまり、その構造に依存して、下記一般式(1X)で表される酸が単独で発生するか、下記一般式(1Y)で表される酸が単独で発生するか、又は下記一般式(1X)で表される酸と下記一般式(1Y)で表される酸がいずれも発生すると推測される。
なお、下記一般式(1X)及び下記一般式(1Y)中、Ar、Ar、Ar、及びAは、一般式(1)中のAr、Ar、Ar、及びAと同義である。
一般式(1X):Ar-A-H
一般式(1Y):Ar-S-Ar-Ar-A-H
【0020】
なお、上述の点以外に、酸拡散制御剤がベタイン構造を有する点も、LWR性能及びCDU性能の向上に寄与していると推測される。一般式(1)で表される化合物と同様の酸拡散制御の作用機序(酸発生剤Xの中和の作用機序)を有する酸拡散制御剤として、例えば、トリフェニルスルホニウム塩等が公知であるが、これらの酸拡散制御剤を使用した場合と比べると、ベタイン構造の酸拡散制御剤を使用した場合、レジスト膜が可塑化しにくい。このため、現像の際に露光後のレジスト膜がムラのある溶け方をしにくく、結果として、LWR性能及びCDU性能の向上に寄与していると考えている。
【0021】
以下、本発明の組成物に含まれる成分について詳述する。なお、本発明の組成物は、いわゆるレジスト組成物であり、ポジ型のレジスト組成物であっても、ネガ型のレジスト組成物であってもよい。また、アルカリ現像用のレジスト組成物であっても、有機溶剤現像用のレジスト組成物であってもよい。
本発明の組成物は、典型的には、化学増幅型のレジスト組成物である。
【0022】
<樹脂(A)>
本発明の組成物は、樹脂(以下、「樹脂(A)」ともいう。)を含む。
樹脂(A)としては、例えば、樹脂(AX1)、及び、樹脂(AX2)等を使用でき、なかでも、樹脂(AX1)が好ましい。
【0023】
(樹脂(AX1))
樹脂(AX1)は、酸の作用により分解して極性が増大する基(以下、「酸分解性基」ともいう。)を有する樹脂(以下、「酸分解性樹脂」ともいう。)である。
本発明の組成物が樹脂(AX1)を含む場合、形成されるパターンとしては、通常、現像液としてアルカリ現像液を採用したときはポジ型パターンとなり、現像液として有機系現像液を採用したときはネガ型パターンとなる。
【0024】
樹脂(AX1)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
【0025】
樹脂(AX1)としては、公知の樹脂を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0055>~<0191>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落<0035>~<0085>、及び米国特許出願公開2016/0147150A1号明細書の段落<0045>~<0090>に開示された公知の樹脂を樹脂(AX1)として好適に使用できる。
【0026】
酸分解性基は、極性基が酸の作用により分解して脱離する基(脱離基)で保護された構造を有することが好ましい。
極性基としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及びトリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基(2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中で解離する基)、及び、アルコール性水酸基等が挙げられる。
【0027】
なお、アルコール性水酸基とは、炭化水素基に結合した水酸基であって、芳香環上に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基)以外の水酸基をいい、水酸基としてα位がフッ素原子等の電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール基等)は除く。アルコール性水酸基としては、pKa(酸解離定数)が12以上20以下の水酸基であることが好ましい。
【0028】
好ましい極性基としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、及びスルホン酸基が挙げられる。
【0029】
酸分解性基として好ましい基は、これらの基の水素原子を酸の作用により脱離する基(脱離基)で置換した基である。
酸の作用により脱離する基(脱離基)としては、例えば、-C(R36)(R37)(R38)、-C(R36)(R37)(OR39)、及び-C(R01)(R02)(OR39)等が挙げられる。
式中、R36~R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。
【0030】
36~R39、R01、及びR02で表されるアルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、へキシル基、及びオクチル基等が挙げられる。
36~R39、R01及びR02で表されるシクロアルキル基としては、単環でも、多環でもよい。単環のシクロアルキル基としては、炭素数3~8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。多環のシクロアルキル基としては、炭素数6~20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、及びアンドロスタニル基等が挙げられる。なお、シクロアルキル基中の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
36~R39、R01及びR02で表されるアリール基としては、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
36~R39、R01及びR02で表されるアラルキル基は、炭素数7~12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、及びナフチルメチル基等が挙げられる。
36~R39、R01及びR02で表されるアルケニル基は、炭素数2~8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、及びシクロへキセニル基等が挙げられる。
36とR37とが互いに結合して形成される環としては、シクロアルキル基(単環又は多環)であることが好ましい。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又はノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
【0031】
酸分解性基として、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、又は第3級のアルキルエステル基等が好ましく、アセタール基、又は第3級アルキルエステル基がより好ましい。
【0032】
樹脂(AX1)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0033】
【化2】
【0034】
一般式(AI)において、
Xaは、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。
Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Rx~Rxは、それぞれ独立に、アルキル基、又はシクロアルキル基を表す。
Rx~Rxのいずれか2つが結合して環構造を形成してもよく、形成しなくてもよい。
【0035】
Tで表される2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、-COO-Rt-、及び-O-Rt-等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はアリーレン基を表す。
Tは、単結合、又は-COO-Rt-が好ましい。Rtは、炭素数1~5の鎖状アルキレン基が好ましく、-CH-、-(CH-、又は-(CH-がより好ましい。
Tとしては、単結合であることがより好ましい。
【0036】
Xaは、水素原子、又はアルキル基であることが好ましい。
Xaで表されるアルキル基としては、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、水酸基、及びハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)が挙げられる。
Xaで表されるアルキル基としては、炭素数1~4が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基、及びトリフルオロメチル基等が挙げられる。Xaのアルキル基としては、メチル基であることが好ましい。
【0037】
Rx、Rx及びRxで表されるアルキル基としては、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、又はt-ブチル基等が好ましい。アルキル基の炭素数としては、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。Rx、Rx、及びRxで表されるアルキル基は、炭素間結合の一部が二重結合であってもよい。
Rx、Rx及びRxで表されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又はノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
【0038】
Rx、Rx及びRxの2つが結合して形成する環構造としては、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、シクロヘプチル環、及びシクロオクタン環等の単環のシクロアルカン環、又はノルボルナン環、テトラシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、及びアダマンタン環等の多環のシクロアルキル環が好ましい。なかでも、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、又はアダマンタン環がより好ましい。Rx、Rx及びRxの2つが結合して形成する環構造としては、下記に示す構造も好ましい。
【0039】
【化3】
【0040】
以下に一般式(AI)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの具体例を挙げるが、本発明は、これらの具体例に制限されない。下記の具体例は、一般式(AI)におけるXaがメチル基である場合に相当するが、Xaは、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基に任意に置換できる。
【0041】
【化4】
【0042】
樹脂(AX1)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0336>~<0369>に記載の繰り返し単位を有することも好ましい。
【0043】
また、樹脂(AX1)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0363>~<0364>に記載された酸の作用により分解してアルコール性水酸基を生じる基を含む繰り返し単位を有していてもよい。
【0044】
樹脂(AX1)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を、1種単独で含んでもよく、2種以上を併用して含んでもよい。
【0045】
樹脂(AX1)に含まれる酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量(酸分解性基を有する繰り返し単位が複数存在する場合はその合計)は、樹脂(AX1)の全繰り返し単位に対して、10~90モル%が好ましく、20~80モル%がより好ましく、30~70モル%が更に好ましい。
【0046】
樹脂(AX1)は、ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
【0047】
ラクトン構造又はスルトン構造としては、ラクトン構造又はスルトン構造を有していればよく、5~7員環ラクトン構造又は5~7員環スルトン構造が好ましい。なかでも、ビシクロ構造若しくはスピロ構造を形成する形で5~7員環ラクトン構造に他の環構造が縮環しているもの、又は、ビシクロ構造若しくはスピロ構造を形成する形で5~7員環スルトン構造に他の環構造が縮環しているもの、がより好ましい。
樹脂(AX1)は、下記一般式(LC1-1)~(LC1-21)のいずれかで表されるラクトン構造、又は、下記一般式(SL1-1)~(SL1-3)のいずれかで表されるスルトン構造を有する繰り返し単位を有することが更に好ましい。また、ラクトン構造又はスルトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましい構造としては、一般式(LC1-1)、一般式(LC1-4)、一般式(LC1-5)、一般式(LC1-8)、一般式(LC1-16)、若しくは一般式(LC1-21)で表されるラクトン構造、又は、一般式(SL1-1)で表されるスルトン構造が挙げられる。
【0048】
【化5】
【0049】
ラクトン構造部分又はスルトン構造部分は、置換基(Rb)を有していても、有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb)としては、炭素数1~8のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数2~8のアルコキシカルボニル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、及び酸分解性基等が挙げられ、炭素数1~4のアルキル基、シアノ基、又は酸分解性基が好ましい。nは、0~4の整数を表す。nが2以上の時、複数存在する置換基(Rb)は、同一でも異なっていてもよい。また、複数存在する置換基(Rb)同士が結合して環を形成してもよい。
【0050】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(III)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0051】
【化6】
【0052】
上記一般式(III)中、
Aは、エステル結合(-COO-で表される基)又はアミド結合(-CONH-で表される基)を表す。
nは、-R-Z-で表される構造の繰り返し数であり、0~5の整数を表し、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。nが0である場合、-R-Z-は存在せず、単結合となる。
は、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はその組み合わせを表す。Rが複数個ある場合、Rは、各々独立に、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はその組み合わせを表す。
Zは、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表す。Zが複数個ある場合には、Zは、各々独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表す。
は、ラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基を表す。
は、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基(好ましくはメチル基)を表す。
【0053】
のアルキレン基又はシクロアルキレン基は置換基を有してもよい。
Zとしては、エーテル結合、又はエステル結合が好ましく、エステル結合がより好ましい。
【0054】
樹脂(AX1)は、カーボネート構造を有する繰り返し単位を有していてもよい。カーボネート構造は、環状炭酸エステル構造であることが好ましい。
環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位は、下記一般式(A-1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0055】
【化7】
【0056】
一般式(A-1)中、R は、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基(好ましくはメチル基)を表す。
nは0以上の整数を表す。
は、置換基を表す。nが2以上の場合、R は、各々独立して、置換基を表す。
Aは、単結合、又は2価の連結基を表す。
Zは、式中の-O-C(=O)-O-で表される基と共に単環構造又は多環構造を形成する原子団を表す。
【0057】
樹脂(AX1)は、ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0370>~<0414>に記載の繰り返し単位を有することも好ましい。
【0058】
樹脂(AX1)は、ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位を、1種単独で有していてよく、2種以上を併用して有していてもよい。
【0059】
以下に一般式(III)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの具体例、及び一般式(A-1)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの具体例を挙げるが、本発明は、これらの具体例に制限されない。下記の具体例は、一般式(III)におけるR及び一般式(A-1)におけるR がメチル基である場合に相当するが、R及びR は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基に任意に置換できる。
【0060】
【化8】
【0061】
上記モノマーの他に、下記に示すモノマーも樹脂(AX1)の原料として好適に用いられる。
【0062】
【化9】
【0063】
樹脂(AX1)に含まれるラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位の含有量(ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位が複数存在する場合はその合計)は、樹脂(AX1)中の全繰り返し単位に対して、5~70モル%が好ましく、10~65モル%がより好ましく、20~60モル%が更に好ましい。
【0064】
樹脂(AX1)は、極性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、及びフッ素化アルコール基等が挙げられる。
極性基を有する繰り返し単位としては、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位が好ましい。また、極性基を有する繰り返し単位は、酸分解性基を有さないことが好ましい。極性基で置換された脂環炭化水素構造における、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、又はノルボルナン基が好ましい。
【0065】
以下に極性基を有する繰り返し単位に相当するモノマーの具体例を挙げるが、本発明は、これらの具体例に制限されない。
【0066】
【化10】
【0067】
この他にも、極性基を有する繰り返し単位の具体例としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0415>~<0433>に開示された繰り返し単位が挙げられる。
樹脂(AX1)は、極性基を有する繰り返し単位を、1種単独で有していてよく、2種以上を併用して有していてもよい。
極性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(AX1)中の全繰り返し単位に対して、5~50モル%が好ましく、5~48モル%がより好ましく、10~25モル%が更に好ましい。
【0068】
樹脂(AX1)は、更に、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位を有していてもよい。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位は、脂環炭化水素構造を有することが好ましい。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位としては、例えば、米国特許出願公開2016/0026083A1号明細書の段落<0236>~<0237>に記載された繰り返し単位が挙げられる。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位に相当するモノマーの好ましい例を以下に示す。
【0069】
【化11】
【0070】
この他にも、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位の具体例としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0433>に開示された繰り返し単位が挙げられる。
樹脂(AX1)は、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位を、1種単独で有していてもよく、2種以上を併用して有していてもよい。
酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位の含有量は、樹脂(AX1)中の全繰り返し単位に対して、5~40モル%が好ましく、5~30モル%がより好ましく、5~25モル%が更に好ましい。
【0071】
樹脂(AX1)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性、標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、又は、更にレジストの一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、及び、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有していてもよい。
このような繰り返し構造単位としては、所定の単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに制限されない。
【0072】
所定の単量体としては、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、及びビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等が挙げられる。
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物を用いてもよい。
樹脂(AX1)において、各繰り返し構造単位の含有モル比は、種々の性能を調節するために適宜設定される。
【0073】
本発明の組成物がArF露光用であるとき、ArF光の透過性の観点から、樹脂(AX1)は実質的には芳香族基を有さないことが好ましい。より具体的には、樹脂(AX1)中の全繰り返し単位に対して、芳香族基を有する繰り返し単位が5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、理想的には0モル%、すなわち芳香族基を有する繰り返し単位を有さないことが更に好ましい。また、樹脂(AX1)は単環又は多環の脂環炭化水素構造を有することが好ましい。
【0074】
樹脂(AX1)は、繰り返し単位の全てが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されることが好ましい。この場合、繰り返し単位の全てがメタクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位の全てがアクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位の全てがメタクリレート系繰り返し単位とアクリレート系繰り返し単位とによるもののいずれのものでも用いることができるが、アクリレート系繰り返し単位が樹脂(AX1)の全繰り返し単位に対して50モル%以下であることが好ましい。
【0075】
本発明の組成物がKrF露光用、EB露光用又はEUV露光用であるとき、樹脂(AX1)は芳香族炭化水素環基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。樹脂(AX1)がフェノール性水酸基を含む繰り返し単位を有することがより好ましい。フェノール性水酸基を含む繰り返し単位としては、ヒドロキシスチレン繰り返し単位、又はヒドロキシスチレン(メタ)アクリレート繰り返し単位が挙げられる。
本発明の組成物がKrF露光用、EB露光用又はEUV露光用であるとき、樹脂(AX1)は、フェノール性水酸基の水素原子が酸の作用により分解して脱離する基(脱離基)で保護された構造を有することが好ましい。
樹脂(AX1)に含まれる芳香族炭化水素環基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(AX1)中の全繰り返し単位に対して、30~100モル%が好ましく、40~100モル%がより好ましく、50~100モル%が更に好ましい。
【0076】
樹脂(AX1)の重量平均分子量は、1,000~200,000が好ましく、2,000~20,000がより好ましく、3,000~20,000が更に好ましい。分散度(Mw/Mn)は、通常1.0~3.0であり、1.0~2.6が好ましく、1.0~2.0がより好ましく、1.1~2.0が更に好ましい。
【0077】
樹脂(AX1)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中、樹脂(AX1)の含有量は、全固形分中に対して、一般的に20.0質量%以上の場合が多く、40.0質量%以上が好ましく、60.0質量%以上がより好ましく、80.0質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、99.5質量%以下が好ましく、99.0質量%以下がより好ましく、97.0質量%以下が更に好ましい。
【0078】
(樹脂(AX2))
樹脂(AX2)は、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂である。
なお、本発明の組成物が樹脂(AX2)を含む場合、本発明の組成物は、樹脂(AX2)とともに、後述する架橋剤(G)を含む。なお、架橋剤(G)は、樹脂(AX2)に担持された形態であってもよい。
本発明の組成物が樹脂(AX2)を含む場合、形成されるパターンは、通常、ネガ型パターンとなる。
樹脂(AX2)としては、なかでも、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。また、樹脂(AX2)は、前述した酸分解性基を有していてもよい。
【0079】
樹脂(AX2)が有するフェノール性水酸基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(II)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0080】
【化12】
【0081】
一般式(II)中、
は、水素原子、アルキル基(好ましくはメチル基)、又はハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)を表す。
B’は、単結合又は2価の連結基を表す。
Ar’は、芳香環基を表す。
mは1以上の整数を表す。
【0082】
B’で表される2価の連結基としては、一般式(AI)中のTと同義であり、好適態様も同じである。
Ar’で表される芳香環基としては、ベンゼン環が好ましい。
mは、1以上の整数であれば特に制限されないが、例えば、1~4が好ましく、1~3がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
【0083】
樹脂(AX2)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物の全固形分中の樹脂(AX2)の含有量は、一般的に30質量%以上である場合が多く、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、99質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
樹脂(AX2)としては、米国特許出願公開2016/0282720A1号明細書の段落<0142>~<0347>に開示された樹脂を好適に挙げられる。
【0084】
本発明の組成物は、樹脂(AX1)と樹脂(AX2)の両方を含んでいてもよい。
【0085】
<酸発生剤(B)>
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤(B)」ともいう。)を含む。
なお、ここでいう酸発生剤(B)は、樹脂成分の脱保護反応(酸分解性樹脂の脱保護反応)を起こすため、又は樹脂成分の架橋反応を生起させるために通常用いられる酸発生剤(上述した酸発生剤X)が該当し、酸発生剤(B)には、上述の一般式(1)で表される化合物は含まれない。
酸発生剤(B)としては、活性光線又は放射線の照射により有機酸を発生する化合物が好ましい。例えば、スルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物、ジアゾニウム塩化合物、ホスホニウム塩化合物、イミドスルホネート化合物、オキシムスルホネート化合物、ジアゾジスルホン化合物、ジスルホン化合物、及びo-ニトロベンジルスルホネート化合物が挙げられる。
【0086】
酸発生剤(B)としては、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物を、単独又はそれらの混合物として適宜選択して使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0125>~<0319>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落<0086>~<0094>、及び、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0323>~<0402>に開示された公知の化合物を酸発生剤(B)として好適に使用できる。
【0087】
酸発生剤(B)としては、例えば、下記一般式(ZI)、一般式(ZII)、又は一般式(ZIII)で表される化合物が好ましい。
【0088】
【化13】
【0089】
上記一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1~30であり、1~20が好ましい。
また、R201~R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、及びペンチレン基等)、及び-CH-CH-O-CH-CH-が挙げられる。
は、アニオンを表す。
【0090】
一般式(ZI)におけるカチオンの好適な態様としては、後述する化合物(ZI-1)、化合物(ZI-2)、化合物(ZI-3)、及び化合物(ZI-4)における対応する基が挙げられる。
なお、酸発生剤(B)は、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201~R203の少なくとも1つと、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201~R203の少なくとも1つとが、単結合又は連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0091】
まず、化合物(ZI-1)について説明する。
化合物(ZI-1)は、上記一般式(ZI)のR201~R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウム化合物、すなわち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R201~R203の全てがアリール基でもよいし、R201~R203の一部がアリール基であり、残りがアルキル基又はシクロアルキル基であってもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、及びアリールジシクロアルキルスルホニウム化合物が挙げられる。
【0092】
アリールスルホニウム化合物に含まれるアリール基としては、フェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、及びベンゾチオフェン残基等が挙げられる。アリールスルホニウム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1~15の直鎖状アルキル基、炭素数3~15の分岐鎖状アルキル基、又は炭素数3~15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0093】
201~R203で表されるアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は、各々独立に、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~14)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、又はフェニルチオ基を置換基として有してもよい。
【0094】
次に、化合物(ZI-2)について説明する。
化合物(ZI-2)は、式(ZI)におけるR201~R203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含む芳香族環も包含する。
201~R203としての芳香環を有さない有機基は、一般的に炭素数1~30であり、炭素数1~20が好ましい。
201~R203は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基が好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、又はアルコキシカルボニルメチル基がより好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基が更に好ましい。
【0095】
201~R203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基)、又は、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基)が好ましい。
201~R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1~5)、水酸基、シアノ基、又はニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0096】
次に、化合物(ZI-3)について説明する。
化合物(ZI-3)は、下記一般式(ZI-3)で表され、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0097】
【化14】
【0098】
一般式(ZI-3)中、
1c~R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基又はビニル基を表す。
【0099】
1c~R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとR、及びRとRは、各々結合して環構造を形成してもよく、この環構造は、各々独立に酸素原子、硫黄原子、ケトン基、エステル結合、又はアミド結合を含んでいてもよい。
上記環構造としては、芳香族又は非芳香族の炭化水素環、芳香族又は非芳香族の複素環、及びこれらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環が挙げられる。環構造としては、3~10員環が挙げられ、4~8員環が好ましく、5又は6員環がより好ましい。
【0100】
1c~R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRとRが結合して形成する基としては、ブチレン基、及びペンチレン基等が挙げられる。
5cとR6c、及びR5cとRが結合して形成する基としては、単結合又はアルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、メチレン基、及びエチレン基等が挙げられる。
Zcは、アニオンを表す。
【0101】
次に、化合物(ZI-4)について説明する。
化合物(ZI-4)は、下記一般式(ZI-4)で表される。
【0102】
【化15】
【0103】
一般式(ZI-4)中、
lは0~2の整数を表す。
rは0~8の整数を表す。
13は、水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
14は、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。R14は、複数存在する場合は各々独立して、水酸基等の上記基を表す。
15は、各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、又はナフチル基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成するとき、環骨格内に、酸素原子、又は窒素原子等のヘテロ原子を含んでもよい。一態様において、2つのR15がアルキレン基であり、互いに結合して環構造を形成することが好ましい。
は、アニオンを表す。
【0104】
一般式(ZI-4)において、R13、R14及びR15で表されるアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状である。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-ブチル基、又はt-ブチル基が好ましい。
【0105】
次に、一般式(ZII)、及び(ZIII)について説明する。
一般式(ZII)、及び(ZIII)中、R204~R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204~R207で表されるアリール基としては、フェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R204~R207で表されるアリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造を有するアリール基の骨格としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、及びベンゾチオフェン等が挙げられる。
204~R207で表されるアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1~10の直鎖状アルキル基、炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基等)、又は、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基等)が好ましい。
【0106】
204~R207で表されるアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は、各々独立に、置換基を有していてもよい。R204~R207で表されるアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~15)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、及びフェニルチオ基等が挙げられる。
は、アニオンを表す。
【0107】
一般式(ZI)におけるZ、一般式(ZII)におけるZ、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZとしては、下記一般式(3)で表されるアニオンが好ましい。
【0108】
【化16】
【0109】
一般式(3)中、
oは、1~3の整数を表す。pは、0~10の整数を表す。qは、0~10の整数を表す。
【0110】
Xfは、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。このアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロアルキル基が好ましい。
Xfは、フッ素原子又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子又はCFであることがより好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが更に好ましい。
【0111】
及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R及びRが複数存在する場合、R及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
及びRで表されるアルキル基は、置換基を有していてもよく、炭素数1~4が好ましい。R及びRは、好ましくは水素原子である。
少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基の具体例及び好適な態様は一般式(3)中のXfの具体例及び好適な態様と同じである。
【0112】
Lは、2価の連結基を表す。Lが複数存在する場合、Lは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
2価の連結基としては、例えば、-COO-(-C(=O)-O-)、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基等が挙げられる。これらの中でも、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-SO-、-COO-アルキレン基-、-OCO-アルキレン基-、-CONH-アルキレン基-、又は-NHCO-アルキレン基-が好ましく、-COO-、-OCO-、-CONH-、-SO-、-COO-アルキレン基-、又は-OCO-アルキレン基-がより好ましい。
【0113】
Wは、環状構造を含む有機基を表す。これらの中でも、環状の有機基であることが好ましい。
環状の有機基としては、例えば、脂環基、アリール基、及び複素環基が挙げられる。
脂環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の炭素数7以上の嵩高い構造を有する脂環基が好ましい。
【0114】
アリール基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、及びアントリル基が挙げられる。
複素環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。多環式の方がより酸の拡散を抑制可能である。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよいし、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、及びピリジン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、スルトン環、及びデカヒドロイソキノリン環が挙げられる。ラクトン環及びスルトン環の例としては、前述の樹脂において例示したラクトン構造及びスルトン構造が挙げられる。複素環基における複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、又はデカヒドロイソキノリン環が特に好ましい。
【0115】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよく、炭素数1~12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、及び、スピロ環のいずれであってもよく、炭素数3~20が好ましい)、アリール基(炭素数6~14が好ましい)、水酸基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及びスルホン酸エステル基が挙げられる。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であってもよい。
【0116】
一般式(3)で表されるアニオンとしては、SO -CF-CH-OCO-(L)q’-W、SO -CF-CHF-CH-OCO-(L)q’-W、SO -CF-COO-(L)q’-W、SO -CF-CF-CH-CH-(L)q-W、又は、SO -CF-CH(CF)-OCO-(L)q’-Wが好ましい。ここで、L、q及びWは、一般式(3)と同様である。q’は、0~10の整数を表す。
【0117】
一態様において、一般式(ZI)におけるZ、一般式(ZII)におけるZ、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZとしては、下記の一般式(4)で表されるアニオンも好ましい。
【0118】
【化17】
【0119】
一般式(4)中、
B1及びXB2は、各々独立に、水素原子、又はフッ素原子を有さない1価の有機基を表す。XB1及びXB2は、水素原子であることが好ましい。
B3及びXB4は、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基を表す。XB3及びXB4の少なくとも一方がフッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基であることが好ましく、XB3及びXB4の両方がフッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基であることがより好ましい。XB3及びXB4の両方が、フッ素で置換されたアルキル基であることが更に好ましい。
L、q及びWは、一般式(3)と同様である。
【0120】
一般式(ZI)におけるZ、一般式(ZII)におけるZ、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZとしては、下記一般式(5)で表されるアニオンも好ましい。
【0121】
【化18】
【0122】
一般式(5)において、Xaは、各々独立に、フッ素原子、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。Xbは、各々独立に、水素原子、又はフッ素原子を有さない有機基を表す。o、p、q、R、R、L、及びWの定義及び好ましい態様は、一般式(3)と同様である。
【0123】
一般式(ZI)におけるZ、一般式(ZII)におけるZ、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZは、ベンゼンスルホン酸アニオンであってもよく、分岐鎖状アルキル基又はシクロアルキル基によって置換されたベンゼンスルホン酸アニオンであることが好ましい。
【0124】
一般式(ZI)におけるZ、一般式(ZII)におけるZ、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZとしては、下記の一般式(SA1)で表される芳香族スルホン酸アニオンも好ましい。
【0125】
【化19】
【0126】
式(SA1)中、
Arは、アリール基を表し、スルホン酸アニオン及び-(D-B)基以外の置換基を更に有していてもよい。更に有してもよい置換基としては、フッ素原子及び水酸基等が挙げられる。
【0127】
nは、0以上の整数を表す。nとしては、1~4が好ましく、2~3がより好ましく、3が更に好ましい。
【0128】
Dは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸エステル基、エステル基、及び、これらの2種以上の組み合わせからなる基等が挙げられる。
【0129】
Bは、炭化水素基を表す。
【0130】
Dは単結合であり、Bは脂肪族炭化水素構造であることが好ましい。Bは、イソプロピル基又はシクロヘキシル基がより好ましい。
【0131】
一般式(ZI)におけるスルホニウムカチオン、及び一般式(ZII)におけるヨードニウムカチオンの好ましい例を以下に示す。
【0132】
【化20】
【0133】
一般式(ZI)におけるアニオンZ、一般式(ZII)におけるアニオンZ、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZの好ましい例を以下に示す。
【0134】
【化21】
【0135】
上記のカチオン及びアニオンを任意に組みわせて酸発生剤(B)として使用できる。
【0136】
酸発生剤(B)は、低分子化合物の形態であってもよく、重合体の一部に組み込まれた形態であってもよい。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用してもよい。
酸発生剤(B)は、低分子化合物の形態であることが好ましい。
酸発生剤(B)が、低分子化合物の形態である場合、分子量は3,000以下が好ましく、2,000以下がより好ましく、1,000以下が更に好ましい。
酸発生剤(B)が、重合体の一部に組み込まれた形態である場合、前述した樹脂(A)の一部に組み込まれてもよく、樹脂(A)とは異なる樹脂に組み込まれてもよい。
酸発生剤(B)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
組成物中、酸発生剤(B)の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として、0.1~20.0質量%が好ましく、0.5~15.0質量%がより好ましく、1.0~15.0質量%が更に好ましい。
酸発生剤として、上記一般式(ZI-3)又は(ZI-4)で表される化合物を含む場合、組成物中に含まれる酸発生剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として、5~35質量%が好ましく、7~30質量%がより好ましい。
【0137】
また、活性光線又は放射線の照射により酸発生剤(B)が分解して発生する酸の酸解離定数pKaとしては、後述する一般式(1)で表される化合物から発生する酸のpKaよりも小さいことが好ましい。
活性光線又は放射線の照射により酸発生剤(B)が分解して発生する酸の酸解離定数pKaとしては、-1.00以下であることが好ましく、-1.50以下であることがより好ましく、-2.00以下であることが更に好ましい。pKaの下限値は特に制限されないが、例えば、-5.00以上である。pKa(酸解離定数)は下記の方法により測定できる。
【0138】
≪酸解離定数pKaの測定≫
本明細書において、酸解離定数pKaとは、水溶液中での酸解離定数pKaのことを表し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に記載のものであり、この値が低いほど酸強度が大きいことを示している。水溶液中での酸解離定数pKaは、具体的には、無限希釈水溶液を用い、25℃での酸解離定数を測定することにより実測することができ、また、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求めることもできる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示している。
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)
【0139】
<酸拡散制御剤>
本発明の組成物は、酸拡散制御剤を含む。酸拡散制御剤は、露光時に酸発生剤(B)等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における酸分解性樹脂の反応を抑制するクエンチャーとして作用する。
本発明の組成物は、酸拡散制御剤として、一般式(1)で表される化合物を少なくとも含んでいればよく、本発明の効果を妨げない範囲でその他の酸拡散防止剤を含んでいてもよい。
なお、以下においては、一般式(1)で表される化合物を酸拡散制御剤(C)として説明し、その他の酸拡散防止剤を酸拡散制御剤(D)として説明する。
【0140】
(酸拡散制御剤(C))
以下、一般式(1)で表される化合物について説明する。
(一般式(1)で表される化合物)
【0141】
【化22】
【0142】
上記式中、Ar、Ar及びArは、各々独立に、芳香族炭化水素基を表す。
は、Ar上でSと結合する炭素原子に対してオルト位に置換し、且つ、-L-CO 、-L-SO 、又は-L-X-N-Yを表す。
、L及びLは、各々独立に、単結合、又は2価の連結基を表す。
は、-SO-、又は-CO-を表す。
は、-SO-R、又は-CO-Rを表す。
及びRは、各々独立に、1価の置換基を表す。
なお、Ar、Ar及びArは、更に置換基を有していてもよく、上記置換基同士が互いに結合して、環を形成していてもよい。
【0143】
Ar、Ar及びArで表される芳香族炭化水素基としては、単環構造(単環芳香族炭化水素基)及び多環構造(多環芳香族炭化水素基)のいずれであってもよい。上記芳香族炭化水素基の炭素数は特に制限されないが、5~18が好ましく、5~10がより好ましい。上記芳香族炭化水素基の具体例としては、アリール基(フェニル基、トリル基、及びキシリル基等)、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナブテニル基、フルオレニル基、及びピレニル基等が挙げられる。
Ar、Ar及びArで表される芳香族炭化水素基としては、形成されるパターンのLWR性能及びCDU性能がより優れる点で、なかでも、単環芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0144】
Ar、Ar及びArは、更に置換基を有していてもよい。上記置換基の種類は特に制限されず、上述した置換基群Tで例示された基が挙げられる。置換基としては、非芳香族性の置換基(なお、本明細書において「非芳香族性の置換基」とは、芳香族性を示さない置換基を意図し、例えば、芳香族環を有しない置換基が挙げられる。)が好ましく、アルキル基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。炭素数は1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましい。)、フルオロアルキル基(少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロアルキル基が好ましい。)、ハロゲン原子(ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。)、チオアルキル基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましい。)、又はアルコキシ基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましい。)がより好ましい。
【0145】
Ar、Ar及びArに置換した置換基は、置換基同士が互いに結合して、環を形成していてもよい。上記環としては、芳香族性の及び非芳香族性のいずれであってもよいが、形成されるパターンのLWR性能及びCDU性能がより優れる点で、非芳香族性であることが好ましい。なお、上記環は、更に置換基(例えば置換基群Tで例示したものが挙げられる。)を有していてもよい。
【0146】
一般式(1)で表される化合物としては、形成されるパターンのLWR性能及びCDU性能がより優れる点で、なかでも、Ar、Ar及びArのうちいずれか1つ以上が無置換の単環芳香族炭化水素基であることが好ましく(なお、Arについては、A以外に置換基を有さないという意図である)、Ar、Ar及びArのうちいずれか2つ以上が単環芳香族炭化水素基であることがより好ましく、Ar、Ar及びArが全て単環芳香族炭化水素基であることがより好ましい。
【0147】
は、Ar上でSと結合する炭素原子に対してオルト位に置換し、且つ、-L-CO 、-L-SO 、又は-L-X-N-Yを表す。
ここで「Ar上でSと結合する炭素原子に対してオルト位に置換する」とは、Arにおいて、一般式(1)に明示されるスルホニウムカチオンとの結合位置の炭素原子に対してオルト位にAが置換する意図である。言い換えると、Aは、Arにおいて、一般式(1)に明示されるスルホニウムカチオンとの結合位置の炭素原子に隣接する炭素原子に置換する。
【0148】
、L及びLは、各々独立に、単結合、又は2価の連結基を表し、形成されるパターンのLWR性能及びCDU性能がより優れる点で、単結合が好ましい。
、L及びLで表される2価の連結基としては特に制限されないが、例えば、-O-、-CO-、2価の炭化水素基(例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、及び、アリーレン基)、及び、これらを2以上組み合わせた基が挙げられる。L、L及びLで表される2価の連結基としては、なかでも、LWR性能及びCDU性能により優れる点で、-O-、-CO-、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数2~10のアルケニレン基、炭素数2~10のアルキニレン基、及びこれらを2以上組み合わせた基が好ましく、-O-、-CO-、炭素数1~6のアルキレン基、及びこれらを2以上組み合わせた基がより好ましく、炭素数1~6のアルキレン基が更に好ましく、炭素数1~3のアルキレン基が特に好ましい。
なお、L、L及びL中のArとの結合位置の原子は、酸素原子以外であることが好ましい。例えば、L、L及びLで表される2価の連結基が-O-(酸素原子)を含む場合であっても、上記のように酸素原子以外の原子(例えば、炭素原子)がArと結合することが好ましい。
【0149】
としては、形成されるパターンのLWR性能及びCDU性能がより優れる点で、-L-CO 、又は-L-X-N-Yが好ましい。
【0150】
は、-SO-、又は-CO-を表す。
は、-SO-R、又は-CO-Rを表す。
【0151】
及びRは、各々独立に、1価の置換基を表す。
及びRで表される1価の置換基としては特に制限されないが、上述した置換基群Tで例示された基が挙げられる。R及びRで表される1価の置換基としては、なかでも、アルキル基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。炭素数は1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましく、1~3が特に好ましい。)、アルケニル基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。炭素数は2~20が好ましく、2~10がより好ましく、2~6が更に好ましい。)、又はアルキニル基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。炭素数は2~20が好ましく、2~10がより好ましく、2~6が更に好ましい。)が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基が更に好ましい。
なお、上記アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基は、更に置換基(例えば置換基群Tで例示したものが挙げられる。)を有していてもよい。
【0152】
酸拡散制御剤としての機能がより優れる点で、一般式(1)で表される化合物から発生する酸のpKaは、例えば、-2.00超であることが好ましく、1.00以上であることがより好ましく、1.50以上であることが更に好ましい。pKaの上限値は特に制限されないが、例えば、14.0以下である。
pKa(酸解離定数)は上述した方法により測定できる。
【0153】
一般式(1)で表される化合物から発生する酸のpKaは、主に、Aの種類により調整できる。
【0154】
本発明の組成物中、一般式(1)で表される化合物により発生する酸のpKaと、酸発生剤(B)から発生する酸のpKaとの差は、1.00以上が好ましく、2.00以上がより好ましい。なお、上限値は特に制限されないが、例えば、10.0である。
上述のとおり、酸拡散制御剤である一般式(1)で表される化合物により発生する酸は、酸発生剤(B)から発生する酸に対して相対的に弱酸となる。一般式(1)で表される化合物により発生する酸と酸発生剤(B)から発生する酸とのpKaの差が上記数値範囲であれば、一般式(1)で表される化合物は、酸拡散制御剤としての機能がより優れる。
【0155】
上記一般式(1)で表される化合物としては、形成されるパターンのLWR性能及びCDU性能がより優れる点で、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。以下、一般式(2)について説明する。
(一般式(2)で表される化合物)
【0156】
【化23】
【0157】
上記式中、Ar、Ar、及びAは、一般式(1)中のAr、Ar、及びAと同義であり、好適態様も同じである。
【0158】
、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、又は非芳香族性の置換基を表す。
、R、R、及びRで表される置換基としては、非芳香族性の置換基であれば特に制限されず、アルキル基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。炭素数は1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましい。)、フルオロアルキル基(少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロアルキル基が好ましい。)、ハロゲン原子(ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。)、チオアルキル基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましい。)、又はアルコキシ基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。炭素数は1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましい。)がより好ましい。
なお、R、R、R、及びRは、互いに連結して環を形成してもよい。上記環としては、非芳香族性であることが好ましい。なお、上記環は、更に置換基(例えば置換基群Tで例示したものが挙げられる。)を有していてもよい。なかでも、形成されるパターンのLWR性能及びCDU性能がより優れる点で、R、R、R、及びRは、互いに結合して環構造を形成しないことが好ましい。
【0159】
Ar及びArは、更に置換基を有していてもよく、置換基同士が互いに結合して、環を形成していてもよい。上記環としては、芳香族性の及び非芳香族性のいずれであってもよいが、形成されるパターンのLWR性能及びCDU性能がより優れる点で、非芳香族性であることが好ましい。なお、上記環は、更に置換基(例えば置換基群Tで例示したものが挙げられる。)を有していてもよい。
【0160】
一般式(2)で表される化合物としては、形成されるパターンのLWR性能及びCDU性能がより優れる点で、R~Rが全て水素原子であるか、又は、Ar及びArの少なくとも一方が無置換の単環芳香族炭化水素基であることが好ましい。なかでも、形成されるパターンのLWR性能及びCDU性能がより優れる点で、R~Rが全て水素原子であり且つAr及びArの一方が無置換の単環芳香族炭化水素基であるか、Ar及びArがいずれも無置換の単環芳香族炭化水素基であるか、又は、R~Rが全て水素原子であり且つAr及びArがいずれも無置換の単環芳香族炭化水素基であることがより好ましい。
【0161】
上記一般式(1)で表される化合物は、例えば、公知の手法に従って合成できる。
【0162】
以下、上記一般式(1)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明はこれに制限されない。
【0163】
【化24】
【0164】
上記一般式(1)で表される化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中、一般式(1)で表される化合物の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として0.1~10質量%が好ましく、0.5~8.0質量%がより好ましい。
また、上記一般式(1)で表される化合物と上記酸発生剤(B)(酸発生剤X)との含有量比(酸発生剤(B)/一般式(1)で表される化合物)は、質量比で、例えば、1/99~99/1であり、90/10~30/70が好ましく、85/15~40/60がより好ましい。
【0165】
(酸拡散制御剤(D))
本発明の組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、上述した酸拡散制御剤(C)(一般式(1)で表される化合物が該当する。)以外の他の酸拡散制御剤(以下、「酸拡散制御剤(D)」)を含んでいてもよい。
酸拡散制御剤(D)としては、例えば、塩基性化合物(DA)、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)、酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)、又はカチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)等を酸拡散制御剤として使用できる。本発明の組成物においては、公知の酸拡散制御剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0627>~<0664>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落<0095>~<0187>、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0403>~<0423>、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0259>~<0328>に開示された公知の化合物を酸拡散制御剤(D)として好適に使用できる。
【0166】
塩基性化合物(DA)としては、下記式(A)~(E)で示される構造を有する化合物が好ましい。
【0167】
【化25】
【0168】
一般式(A)及び(E)中、
200、R201及びR202は、同一でも異なってもよく、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)又はアリール基(炭素数6~20)を表す。R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
203、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0169】
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、置換基を有していても無置換であってもよい。
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1~20のアミノアルキル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1~20のシアノアルキル基が好ましい。
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0170】
塩基性化合物(DA)としては、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、又はピペリジン等が好ましく、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造若しくはピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、又は、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアニリン誘導体等がより好ましい。
【0171】
活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)(以下、「化合物(DB)」ともいう。)は、プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解して、プロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化する化合物である。
【0172】
プロトンアクセプター性官能基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基、又は、π共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基を意味する。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0173】
【化26】
【0174】
プロトンアクセプター性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル構造、アザクラウンエーテル構造、1~3級アミン構造、ピリジン構造、イミダゾール構造、及びピラジン構造等が挙げられる。
【0175】
化合物(DB)は、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下若しくは消失し、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する。ここでプロトンアクセプター性の低下若しくは消失、又はプロトンアクセプター性から酸性への変化とは、プロトンアクセプター性官能基にプロトンが付加することに起因するプロトンアクセプター性の変化であり、具体的には、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(DB)とプロトンとからプロトン付加体が生成するとき、その化学平衡における平衡定数が減少することを意味する。
プロトンアクセプター性は、pH測定を行うことによって確認できる。
【0176】
活性光線又は放射線の照射により化合物(DB)が分解して発生する化合物の酸解離定数pKaは、pKa<-1を満たすことが好ましく、-13<pKa<-1を満たすことがより好ましく、-13<pKa<-3を満たすことが更に好ましい。
【0177】
なお、酸解離定数pKaとは、上述した方法により求めることができる。
【0178】
本発明の組成物では、酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)を酸拡散制御剤として使用できる。
酸発生剤と、酸発生剤から生じた酸に対して相対的に弱酸である酸を発生するオニウム塩とを混合して用いた場合、活性光線性又は放射線の照射により酸発生剤から生じた酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
【0179】
酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩としては、下記一般式(d1-1)~(d1-3)で表される化合物が好ましい。
【0180】
【化27】
【0181】
式中、R51は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Z2cは置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基(ただし、Sに隣接する炭素にはフッ素原子は置換されていないものとする)であり、R52は有機基であり、Yは直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基又はアリーレン基であり、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基であり、Mは各々独立に、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。
【0182】
として表されるスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンの好ましい例としては、一般式(ZI)で例示したスルホニウムカチオン及び一般式(ZII)で例示したヨードニウムカチオンが挙げられる。
【0183】
窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)(以下、「化合物(DD)」ともいう。)は、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体であることが好ましい。
酸の作用により脱離する基としては、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、又はヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、又はヘミアミナールエーテル基がより好ましい。
化合物(DD)の分子量は、100~1000が好ましく、100~700がより好ましく、100~500が更に好ましい。
化合物(DD)は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有してもよい。カルバメート基を構成する保護基としては、下記一般式(d-1)で表される。
【0184】
【化28】
【0185】
一般式(d-1)において、
Rbは、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~30)、アリール基(好ましくは炭素数3~30)、アラルキル基(好ましくは炭素数1~10)、又はアルコキシアルキル基(好ましくは炭素数1~10)を表す。Rbは相互に連結して環を形成していてもよい。
Rbが示すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立に水酸基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい。Rbが示すアルコキシアルキル基についても同様である。
【0186】
Rbとしては、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基が好ましく、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はシクロアルキル基がより好ましい。
2つのRbが相互に連結して形成する環としては、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環式炭化水素、及びその誘導体等が挙げられる。
一般式(d-1)で表される基の具体的な構造としては、米国特許公報US2012/0135348A1号明細書の段落<0466>に開示された構造が挙げられるが、これに制限されない。
【0187】
化合物(DD)は、下記一般式(6)で表される構造を有することが好ましい。
【0188】
【化29】
【0189】
一般式(6)において、
lは0~2の整数を表し、mは1~3の整数を表し、l+m=3を満たす。
Raは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。lが2のとき、2つのRaは同じでも異なっていてもよく、2つのRaは相互に連結して式中の窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。この複素環には式中の窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。
Rbは、上記一般式(d-1)におけるRbと同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(6)において、Raとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立にRbとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基が置換されていてもよい基として前述した基と同様な基で置換されていてもよい。
【0190】
上記Raのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(これらの基は、上記基で置換されていてもよい)の具体例としては、Rbについて前述した具体例と同様な基が挙げられる。
本発明における特に好ましい化合物(DD)の具体例としては、米国特許出願公開2012/0135348A1号明細書の段落<0475>に開示された化合物が挙げられるが、これに制限されない。
【0191】
カチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)(以下、「化合物(DE)」ともいう。)は、カチオン部に窒素原子を含む塩基性部位を有する化合物であることが好ましい。塩基性部位は、アミノ基であることが好ましく、脂肪族アミノ基であることがより好ましい。塩基性部位中の窒素原子に隣接する原子の全てが、水素原子又は炭素原子であることが更に好ましい。また、塩基性向上の観点から、窒素原子に対して、電子求引性の官能基(カルボニル基、スルホニル基、シアノ基、及びハロゲン原子等)が直結していないことが好ましい。
化合物(DE)の好ましい具体例としては、米国特許出願公開2015/0309408A1号明細書の段落<0203>に開示された化合物が挙げられるが、これに制限されない。
【0192】
酸拡散制御剤(D)の好ましい例を以下に示す。
【0193】
【化30】

【化31】
【0194】
本発明の組成物において、酸拡散制御剤(D)は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
組成物中、酸拡散制御剤(D)を含む場合、酸拡散制御剤(D)の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として、0.1~10.0質量%が好ましく、0.1~5.0質量%がより好ましい。
【0195】
<疎水性樹脂(E)>
本発明の組成物は、疎水性樹脂(E)を含んでいてもよい。なお、疎水性樹脂(E)は、樹脂(AX1)及び樹脂(AX2)とは異なる樹脂であることが好ましい。
本発明の組成物が、疎水性樹脂(E)を含むことにより、感活性光線性又は感放射線性膜の表面における静的/動的な接触角を制御できる。これにより、現像特性の改善、アウトガスの抑制、液浸露光における液浸液追随性の向上、及び液浸欠陥の低減等が可能となる。
疎水性樹脂(E)は、レジスト膜の表面に偏在するように設計されることが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性/非極性物質を均一に混合することに寄与しなくてもよい。
【0196】
疎水性樹脂(E)は、膜表層への偏在化の観点から、“フッ素原子”、“ケイ素原子”、及び“樹脂の側鎖部分に含有されたCH部分構造”からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位を有する樹脂であることが好ましい。
疎水性樹脂(E)が、フッ素原子及び/又はケイ素原子を含む場合、疎水性樹脂(E)における上記フッ素原子及び/又はケイ素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
【0197】
疎水性樹脂(E)がフッ素原子を含む場合、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又はフッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であることが好ましい。
【0198】
疎水性樹脂(E)は、下記(x)~(z)の群から選ばれる基を少なくとも1つを有することが好ましい。
(x)酸基
(y)アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(以下、極性変換基ともいう。)
(z)酸の作用により分解する基
【0199】
酸基(x)としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及びトリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
酸基としては、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホンイミド基、又はビス(アルキルカルボニル)メチレン基が好ましい。
【0200】
アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(y)としては、例えば、ラクトン基、カルボン酸エステル基(-COO-)、酸無水物基(-C(O)OC(O)-)、酸イミド基(-NHCONH-)、カルボン酸チオエステル基(-COS-)、炭酸エステル基(-OC(O)O-)、硫酸エステル基(-OSOO-)、及びスルホン酸エステル基(-SOO-)等が挙げられ、ラクトン基又はカルボン酸エステル基(-COO-)が好ましい。
これらの基を含んだ繰り返し単位としては、例えば、樹脂の主鎖にこれらの基が直接結合している繰り返し単位であり、例えば、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルによる繰り返し単位等が挙げられる。この繰り返し単位は、これらの基が連結基を介して樹脂の主鎖に結合していてもよい。又は、この繰り返し単位は、これらの基を有する重合開始剤又は連鎖移動剤を重合時に用いて、樹脂の末端に導入されていてもよい。
ラクトン基を有する繰り返し単位としては、例えば、先に樹脂(AX1)の項で説明したラクトン構造を有する繰り返し単位と同様のものが挙げられる。
【0201】
アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(y)を有する繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂(E)中の全繰り返し単位に対して、1~100モル%が好ましく、3~98モル%がより好ましく、5~95モル%が更に好ましい。
【0202】
疎水性樹脂(E)における、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位は、樹脂(AX1)で挙げた酸分解性基を有する繰り返し単位と同様のものが挙げられる。酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位は、フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有していてもよい。酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂(E)中の全繰り返し単位に対して、1~80モル%が好ましく、10~80モル%がより好ましく、20~60モル%が更に好ましい。
疎水性樹脂(E)は、更に、上述した繰り返し単位とは別の繰り返し単位を有していてもよい。
【0203】
フッ素原子を含む繰り返し単位は、疎水性樹脂(E)中の全繰り返し単位に対して、10~100モル%が好ましく、30~100モル%がより好ましい。また、ケイ素原子を含む繰り返し単位は、疎水性樹脂(E)中の全繰り返し単位に対して、10~100モル%が好ましく、20~100モル%がより好ましい。
【0204】
一方、特に疎水性樹脂(E)が側鎖部分にCH部分構造を含む場合においては、疎水性樹脂(E)が、フッ素原子及びケイ素原子を実質的に含まない形態も好ましい。また、疎水性樹脂(E)は、炭素原子、酸素原子、水素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる原子のみによって構成された繰り返し単位のみで実質的に構成されることが好ましい。
【0205】
疎水性樹脂(E)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、1,000~100,000が好ましく、1,000~50,000がより好ましい。
【0206】
疎水性樹脂(E)に含まれる残存モノマー及び/又はオリゴマー成分の合計含有量は、0.01~5質量%が好ましく、0.01~3質量%がより好ましい。また、分散度(Mw/Mn)は、1~5の範囲が好ましく、1~3の範囲がより好ましい。
【0207】
疎水性樹脂(E)としては、公知の樹脂を、単独又はそれらの混合物として適宜に選択して使用できる。例えば、米国特許出願公開2015/0168830A1号明細書の段落<0451>~<0704>、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0340>~<0356>に開示された公知の樹脂を疎水性樹脂(E)として好適に使用できる。また、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0177>~<0258>に開示された繰り返し単位も、疎水性樹脂(E)を構成する繰り返し単位として好ましい。
【0208】
疎水性樹脂(E)を構成する繰り返し単位に相当するモノマーの好ましい例を以下に示す。
【0209】
【化32】
【0210】
【化33】
【0211】
疎水性樹脂(E)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
表面エネルギーが異なる2種以上の疎水性樹脂(E)を混合して使用することが、液浸露光における液浸液追随性と現像特性の両立の観点から好ましい。
組成物中、疎水性樹脂(E)の含有量は、組成物中の全固形分に対し、0.01~10.0質量%が好ましく、0.05~8.0質量%がより好ましい。
【0212】
<溶剤(F)>
本発明の組成物は、溶剤を含んでいてもよい。
本発明の組成物においては、公知のレジスト溶剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0665>~<0670>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落<0210>~<0235>、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0424>~<0426>、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0357>~<0366>に開示された公知の溶剤を好適に使用できる。
組成物を調製する際に使用できる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及びピルビン酸アルキル等の有機溶剤が挙げられる。
【0213】
有機溶剤として、構造中に水酸基を有する溶剤と、水酸基を有さない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を有する溶剤、及び水酸基を有さない溶剤としては、前述の例示化合物を適宜選択できるが、水酸基を含む溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、又は乳酸アルキル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、又は乳酸エチルがより好ましい。また、水酸基を有さない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を有していてもよいモノケトン化合物、環状ラクトン、又は酢酸アルキル等が好ましく、これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルエトキシプロピオネート、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は酢酸ブチルがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、エチルエトキシプロピオネート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は2-ヘプタノンが更に好ましい。水酸基を有さない溶剤としては、プロピレンカーボネートも好ましい。
水酸基を有する溶剤と水酸基を有さない溶剤との混合比(質量比)は、1/99~99/1であり、10/90~90/10が好ましく、20/80~60/40がより好ましい。水酸基を有さない溶剤を50質量%以上含む混合溶剤が、塗布均一性の点で好ましい。
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含むことが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独溶剤でもよいし、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む2種類以上の混合溶剤でもよい。
【0214】
<架橋剤(G)>
本発明の組成物は、酸の作用により樹脂を架橋する化合物(以下、架橋剤(G)ともいう。)を含んでいてもよい。架橋剤(G)としては、公知の化合物を適宜に使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0147154A1号明細書の段落<0379>~<0431>、及び、米国特許出願公開2016/0282720A1号明細書の段落<0064>~<0141>に開示された公知の化合物を架橋剤(G)として好適に使用できる。
架橋剤(G)は、樹脂を架橋しうる架橋性基を有している化合物であり、架橋性基としては、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、アシルオキシメチル基、アルコキシメチルエーテル基、オキシラン環、及びオキセタン環等が挙げられる。
架橋性基は、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、オキシラン環又はオキセタン環であることが好ましい。
架橋剤(G)は、架橋性基を2個以上有する化合物(樹脂も含む)であることが好ましい。
架橋剤(G)は、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有する、フェノール誘導体、ウレア系化合物(ウレア構造を有する化合物)又はメラミン系化合物(メラミン構造を有する化合物)であることがより好ましい。
架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋剤(G)の含有量は、レジスト組成物の全固形分に対して、1.0~50質量%が好ましく、3.0~40質量%が好ましく、5.0~30質量%が更に好ましい。
【0215】
<界面活性剤(H)>
本発明の組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤を含む場合、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(具体的には、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、又はフッ素原子とケイ素原子との両方を有する界面活性剤)が好ましい。
【0216】
本発明の組成物が界面活性剤を含むことにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源を使用した場合に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないパターンを得ることができる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤として、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落<0276>に記載の界面活性剤が挙げられる。
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落<0280>に記載の、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。
【0217】
これらの界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.0001~2.0質量%が好ましく、0.0005~1.0質量%がより好ましい。
一方、界面活性剤の含有量が、組成物の全固形分に対して10ppm以上とすることにより、疎水性樹脂(E)の表面偏在性が上がる。それにより、感活性光線性又は感放射線性膜の表面をより疎水的にすることができ、液浸露光時の水追随性が向上する。
【0218】
(その他の添加剤)
本発明の組成物は、更に、酸増殖剤、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止剤、及び、溶解促進剤等の他の添加剤を含んでいてもよい。
【0219】
<調製方法>
本発明の組成物の固形分濃度は、通常1.0~10質量%が好ましく、2.0~5.7質量%がより好ましく、2.0~5.3質量%が更に好ましい。固形分濃度とは、組成物の総質量に対する、溶剤を除く他のレジスト成分の質量の質量百分率である。
【0220】
なお、本発明の組成物からなる感活性光線性又は感放射線性膜の膜厚は、解像力向上の観点から、90nm以下が好ましく、85nm以下がより好ましい。組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性又は製膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
【0221】
本発明の組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは上記混合溶剤に溶解し、これをフィルター濾過した後、所定の支持体(基板)上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは0.1μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.03μm以下が更に好ましい。このフィルターは、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製のものが好ましい。フィルター濾過においては、例えば日本国特許出願公開第2002-62667号明細書(特開2002-62667)に開示されるように、循環的な濾過を行ってもよく、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ってもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理等を行ってもよい。
【0222】
<用途>
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により反応して性質が変化する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、本発明の組成物は、IC(Integrated Circuit)等の半導体製造工程、液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造、インプリント用モールド構造体の作製、その他のフォトファブリケーション工程、又は平版印刷版、若しくは酸硬化性組成物の製造に使用される感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。本発明において形成されるパターンは、エッチング工程、イオンインプランテーション工程、バンプ電極形成工程、再配線形成工程、及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等において使用できる。
【0223】
〔パターン形成方法〕
本発明は上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成方法にも関する。以下、本発明のパターン形成方法について説明する。また、パターン形成方法の説明と併せて、本発明の感活性光線性又は感放射線性膜についても説明する。
【0224】
本発明のパターン形成方法は、
(i)上述した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によってレジスト膜(感活性光線性又は感放射線性膜)を支持体上に形成する工程(レジスト膜形成工程)、
(ii)上記レジスト膜を露光する(活性光線又は放射線を照射する)工程(露光工程)、及び、
(iii)上記露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程(現像工程)、
を有する。
【0225】
本発明のパターン形成方法は、上記(i)~(iii)の工程を含んでいれば特に制限されず、更に下記の工程を有していてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程における露光方法が、液浸露光であってもよい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程の前に、(iv)前加熱(PB:PreBake)工程を含むことが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程の後、かつ、(iii)現像工程の前に、(v)露光後加熱(PEB:Post Exposure Bake)工程を含むことが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(iv)前加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(v)露光後加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
【0226】
本発明のパターン形成方法において、上述した(i)成膜工程、(ii)露光工程、及び(iii)現像工程は、一般的に知られている方法により行うことができる。
また、必要に応じて、レジスト膜と支持体との間にレジスト下層膜(例えば、SOG(Spin On Glass)、SOC(Spin On Carbon)、及び、反射防止膜)を形成してもよい。レジスト下層膜を構成する材料としては、公知の有機系又は無機系の材料を適宜用いることができる。
レジスト膜の上層に、保護膜(トップコート)を形成してもよい。保護膜としては、公知の材料を適宜用いることができる。例えば、米国特許出願公開第2007/0178407号明細書、米国特許出願公開第2008/0085466号明細書、米国特許出願公開第2007/0275326号明細書、米国特許出願公開第2016/0299432号明細書、米国特許出願公開第2013/0244438号明細書、国際特許出願公開第2016/157988A号明細書に開示された保護膜形成用組成物を好適に使用できる。保護膜形成用組成物としては、上述した酸拡散制御剤を含むものが好ましい。
上述した疎水性樹脂を含むレジスト膜の上層に保護膜を形成してもよい。
【0227】
支持体は、特に制限されるものではなく、IC等の半導体の製造工程、又は液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造工程のほか、その他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程等で一般的に用いられる基板を用いることができる。支持体の具体例としては、シリコン、SiO、及びSiN等の無機基板等が挙げられる。
【0228】
加熱温度は、(iv)前加熱工程及び(v)露光後加熱工程のいずれにおいても、70~130℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。
加熱時間は、(iv)前加熱工程及び(v)露光後加熱工程のいずれにおいても、30~300秒が好ましく、30~180秒がより好ましく、30~90秒が更に好ましい。
加熱は、露光装置及び現像装置に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
【0229】
露光工程に用いられる光源波長に制限はないが、例えば、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光(EUV)、X線、及び電子線等が挙げられる。これらの中でも遠紫外光が好ましく、その波長は250nm以下が好ましく、220nm以下がより好ましく、1~200nmが更に好ましい。具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(157nm)、X線、EUV(13nm)、又は電子線等であり、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV又は電子線が好ましい。
【0230】
(iii)現像工程においては、アルカリ現像液であっても、有機溶剤を含む現像液(以下、有機系現像液ともいう。)であってもよい。
【0231】
アルカリ現像液としては、通常、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに代表される4級アンモニウム塩が用いられるが、これ以外にも無機アルカリ、1~3級アミン、アルコールアミン、及び環状アミン等のアルカリ水溶液も使用可能である。
更に、上記アルカリ現像液は、アルコール類、及び/又は界面活性剤を適当量含んでいてもよい。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1~20質量%である。アルカリ現像液のpHは、通常10~15である。
アルカリ現像液を用いて現像を行う時間は、通常10~300秒である。
アルカリ現像液のアルカリ濃度、pH、及び現像時間は、形成するパターンに応じて、適宜調整できる。
【0232】
有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含む現像液であることが好ましい。
【0233】
ケトン系溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、2-ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、及びプロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0234】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、ブタン酸ブチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、酢酸イソアミル、イソ酪酸イソブチル、及びプロピオン酸ブチル等が挙げられる。
【0235】
アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0715>~<0718>に開示された溶剤を使用できる。
【0236】
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤又は水と混合してもよい。現像液全体としての含水率は、50質量%未満が好ましく、20質量%未満がより好ましく、10質量%未満が更に好ましく、0質量%以上5質量%未満が最も好ましく、実質的に水分を含まないことが特に好ましい。
有機系現像液に対する有機溶剤の含有量は、現像液の全量に対して、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、90~100質量%が更に好ましく、95~100質量%が特に好ましい。
【0237】
有機系現像液は、必要に応じて公知の界面活性剤を適当量含んでいてもよい。
【0238】
界面活性剤の含有量は現像液の全量に対して、通常0.001~5質量%であり、0.005~2質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
【0239】
有機系現像液は、上述した酸拡散制御剤を含んでいてもよい。
【0240】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、又は一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0241】
アルカリ水溶液を用いて現像を行う工程(アルカリ現像工程)、及び有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程(有機溶剤現像工程)を組み合わせてもよい。これにより、中間的な露光強度の領域のみを溶解させずにパターン形成が行えるので、より微細なパターンを形成できる。
【0242】
(iii)現像工程の後に、リンス液を用いて洗浄する工程(リンス工程)を含むことが好ましい。
【0243】
アルカリ現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、例えば純水を使用できる。純水は、界面活性剤を適当量含んでいてもよい。この場合、現像工程又はリンス工程の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を追加してもよい。更に、リンス処理又は超臨界流体による処理の後、パターン中に残存する水分を除去するために加熱処理を行ってもよい。
【0244】
有機溶剤を含む現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、パターンを溶解しないものであれば特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用できる。リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含むリンス液を用いることが好ましい。
炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及びエーテル系溶剤の具体例としては、有機溶剤を含む現像液において説明したものと同様のものが挙げられる。
この場合のリンス工程に用いるリンス液としては、1価アルコールを含むリンス液がより好ましい。
【0245】
リンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐鎖状、又は環状の1価アルコールが挙げられる。具体的には、1-ブタノール、2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、tert―ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-ヘキサノール、シクロペンタノール、2-ヘプタノール、2-オクタノール、3-ヘキサノール、3-ヘプタノール、3-オクタノール、4-オクタノール、及びメチルイソブチルカルビノールが挙げられる。炭素数5以上の1価アルコールとしては、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、及びメチルイソブチルカルビノール等が挙げられる。
【0246】
各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合して使用してもよい。
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。含水率を10質量%以下とすることで、良好な現像特性が得られる。
【0247】
リンス液は、界面活性剤を適当量含んでいてもよい。
リンス工程においては、有機系現像液を用いる現像を行った基板を、有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に制限されないが、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、又は基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。中でも、回転塗布法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2,000~4,000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むことも好ましい。この加熱工程によりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程において、加熱温度は通常40~160℃であり、70~95℃が好ましく、加熱時間は通常10秒~3分であり、30秒~90秒が好ましい。
【0248】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及び、本発明のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、レジスト溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、又はトップコート形成用組成物等)は、金属成分、異性体、及び残存モノマー等の不純物を含まないことが好ましい。上記の各種材料に含まれるこれらの不純物の含有量としては、1ppm以下が好ましく、100ppt以下がより好ましく、10ppt以下が更に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が特に好ましい。
【0249】
上記各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過が挙げられる。フィルター孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルターの材質としては、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製のフィルターが好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルター濾過工程では、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であってもよい。フィルターとしては、日本国特許出願公開第2016-201426号明細書(特開2016-201426)に開示されるような溶出物が低減されたものが好ましい。
フィルター濾過のほか、吸着材による不純物の除去を行ってもよく、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル若しくはゼオライト等の無機系吸着材、又は活性炭等の有機系吸着材を使用できる。金属吸着剤としては、例えば、日本国特許出願公開第2016-206500号明細書(特開2016-206500)に開示されるものが挙げられる。
また、上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う、又は装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法が挙げられる。レジスト成分の各種材料(樹脂及び光酸発生剤等)を合成する製造設備の全工程にグラスライニングの処理を施すことも、pptオーダーまで金属等の不純物を低減するために好ましい。各種材料を構成する原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
【0250】
上記の各種材料は、不純物の混入を防止するために、米国特許出願公開第2015/0227049号明細書、日本国特許出願公開第2015-123351号明細書(特開2015-123351)等に記載された容器に保存されることが好ましい。
【0251】
本発明のパターン形成方法により形成されるパターンに、パターンの表面荒れを改善する方法を適用してもよい。パターンの表面荒れを改善する方法としては、例えば、米国特許出願公開第2015/0104957号明細書に開示された、水素を含むガスのプラズマによってパターンを処理する方法が挙げられる。その他にも、日本国特許出願公開第2004-235468号明細書(特開2004-235468)、米国特許出願公開第2010/0020297号明細書、Proc. of SPIE Vol.8328 83280N-1“EUV Resist Curing Technique for LWR Reduction and Etch Selectivity Enhancement”に記載されるような公知の方法を適用してもよい。
また、上記の方法によって形成されたパターンは、例えば日本国特許出願公開第1991-270227号明細書(特開平3-270227)及び米国特許出願公開第2013/0209941号明細書に開示されたスペーサープロセスの芯材(Core)として使用できる。
【0252】
〔電子デバイスの製造方法〕
また、本発明は、上記したパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法にも関する。本発明の電子デバイスの製造方法により製造された電子デバイスは、電気電子機器(例えば、家電、OA(Office Automation)関連機器、メディア関連機器、光学用機器、及び通信機器等)に、好適に搭載される。
【0253】
〔化合物〕
また、本発明は、一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物にも関する。
一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物の具体的な態様については、上述した通りである。
【実施例
【0254】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により制限的に解釈されるべきものではない。
【0255】
〔感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の調製〕
以下に、第3表に示す感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に含まれる各種成分を示す。
<樹脂(AX1)>
第3表に示される樹脂(A1~A6)を以下に示す。
なお、樹脂A1~A6の重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)はGPC(キャリア:テトラヒドロフラン(THF))により測定した(ポリスチレン換算量である)。また、樹脂の組成比(モル%比)は、13C-NMR(nuclear magnetic resonance)により測定した。
【0256】
【化34】
【0257】
<酸発生剤(B)>
第3表に示される酸発生剤(B)(化合物B1~B10)(酸発生剤Xに該当)の構造を以下に示す。
【0258】
【化35】
【0259】
第1表に、上述した酸発生剤(B)(化合物B1~B10)から発生する酸のpKaを示す。pKaの測定は、上述した方法により行った。
【0260】
【表1】
【0261】
<酸拡散制御剤>
(一般式(1)で表される化合物(C))
第3表に示される一般式(1)で表される化合物(化合物C1~C18)の構造を以下に示す。また、併せて、化合物C1の合成例を一例として示す。
【0262】
≪合成例1:化合物C1の合成≫
容器内に入れたTHF(20mL)に、2-ヨード安息香酸エチル(3.3g)を溶解させた後、内温を-10℃まで冷却した。次いで、冷却した混合液に、内温が0℃を超えないように、イソプロピルマグネシウムクロリド-塩化リチウム錯体(THF溶液、11.9g)を滴下後、-10℃で30分撹拌した(反応液1)。
容器内に入れたTHF(20mL)に、ジフェニルスルホキシド(3.2g)を溶解させた後、内温を-10℃まで冷却した。次いで、冷却した混合液に、内温が0℃を超えないように、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(3.4g)を滴下後、0℃で30分撹拌した(反応液2)。
続いて、反応液2を収容した容器内に、内温が0℃を越えないように反応液1を滴下した後、室温で12時間反応させた。得られた反応液に、塩化メチレン(100mL)と蒸留水(100mL)を添加し、分液した。次いで、抽出した有機層を蒸留水(50mL)で4回洗浄した後、溶媒を留去した。更に、得られた残渣をカラムで精製することで、精製物を得た。
上記工程により得られた精製物を、塩化メチレン(16mL)に溶解後、更に0.2規定水酸化ナトリウム(16mL)を添加し、40℃で4時間反応させた。得られた反応液を分液し、水層を塩化メチレン(15mL)で5回抽出した後、溶媒を留去した。得られた固体をジイソプロピルエーテル(5mL)で洗浄後、溶媒を除去し、乾燥させることで、C1(0.26g)を得た。
【0263】
また、上記化合物C1の合成例と同様の操作を行い、後掲の化合物C2~C24を合成した。
【0264】
【化36】
【0265】
(比較用酸拡散制御剤(D))
第3表に示される比較用酸拡散制御剤(化合物D1~D4)の構造を以下に示す。
【0266】
【化37】
【0267】
(酸拡散制御剤のpKa)
第2表に、化合物C1~C24から発生する酸のpKa、及び化合物D1~D4から発生する酸のpKaを示す。pKaの測定は、上述した方法により行った。
【0268】
【表2】
【0269】
<感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の調製>
第3表に示した各成分を固形分濃度が3.3質量%となるように混合した。次いで、得られた混合液を、最初に孔径50nmのポリエチレン製フィルター、次に孔径10nmのナイロン製フィルター、最後に孔径5nmのポリエチレン製フィルターの順番で濾過することにより、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を調製した。なお、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物において、固形分とは、溶剤(F)以外の全ての成分を意味する。得られた感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を、実施例及び比較例で使用した。
【0270】
〔パターン形成及び各種評価〕
<パターン形成1:ArF液浸露光、有機溶剤現像>
シリコンウエハ上に有機反射防止膜形成用組成物ARC29SR(日産化学社製)を塗布し、205℃で60秒間加熱を行い、膜厚95nmの反射防止膜を形成した。得られた反射防止膜上に、実施例及び比較例の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を塗布し、100℃で60秒間加熱(PB:Prebake)を行い、膜厚85nmのレジスト膜を形成した。
上記の手順により得られたシリコンウエハ上のレジスト膜を、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA1.20、C-Quad、アウターシグマ0.900、インナーシグマ0.812、XY偏向)を用いて、線幅44nmの1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを通して露光した。液浸液としては超純水を用いた。その後、露光後のレジスト膜を105℃で60秒間加熱(PEB:Post Exposure Bake)した後、ネガ型現像液(有機系現像液、酢酸ブチル)を用いて30秒間パドル法で現像し、更に、リンス液(メチルイソブチルカルビノール(MIBC))を用いて30秒間パドル法でリンスした。続いて、このシリコンウエハを4000rpmの回転数で30秒間スピン乾燥させて、線幅44nmの1:1ラインアンドスペースのパターンを形成した。
【0271】
<性能評価:LWR性能(nm)>
得られた44nmの1:1ラインアンドスペースのパターンに対して、測長走査型電子顕微鏡(日立製作所社製、S-8840)を使用してパターン上部から観察した。この際、ラインパターンの長手方向のエッジ2μmの範囲について、線幅を50ポイント測定し、測定された線幅の測定ばらつきについて標準偏差(3σ)を算出した。標準偏差(3σ)の値が小さいほどLWR性能が良好なパターンであることを示す。
なお、LWR性能の評価は、下記5段階の基準に基づいて実施した。評価結果を第3表に示す。
【0272】
(評価基準)
「5」:LWR<3.0nm
「4」:3.0nm≦LWR<4.0nm
「3」:4.0nm≦LWR<5.0nm
「2」:5.0nm≦LWR<6.0nm
「1」:6.0nm≦LWR
【0273】
<パターン形成2:ArF液浸露光、有機溶剤現像>
シリコンウエハ上に有機反射防止膜ARC29SR(Brewer社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークを行い膜厚98nmの反射防止膜を形成し、その上に、実施例及び比較例の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を塗布し、100℃で60秒間に亘ってベークを行い、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。
上記の手順により得られたレジスト膜を形成したウエハをArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA(numerical aperture)1.20、C-Quad、アウターシグマ0.98、インナーシグマ0.89、XY偏向)を用い、直径45nmのコンタクトホールパターンを、6%ハーフトーンマスクを介して露光した。上述のパターンサイズになる露光量を、最適露光量とした。液浸液としては超純水を使用した。その後PEB温度を90℃に設定した温度で加熱した後、有機現像液である酢酸ブチルで30秒間現像し、スピン乾燥してホールパターンを得た。
【0274】
<性能評価:CDU性能(nm)>
上記最適露光量(Eopt)で露光された1ショット内において、互いの間隔が1μmの20箇所の領域において、各領域ごとに任意の25個(すなわち、計500個)のホールサイズを測定し、これらの標準偏差(σ)を求め、3σを算出した。値が小さいほど寸法のばらつきが小さく、良好な性能であることを示す。
なお、CDU性能の評価は、下記5段階の基準に基づいて実施した。評価結果を第3表に示す。
【0275】
(評価基準)
「5」:CDU<4.0nm
「4」:4.0nm≦CDU<4.5nm
「3」:4.5nm≦CDU<5.0nm
「2」:5.0nm≦CDU<6.0nm
「1」:6.0nm≦CDU
【0276】
なお、第3表において、各成分の含有量(質量%)は、全固形分に対する含有量を意味する。
また、第3表において、「pKa(B)」とは、酸発生剤(B)(化合物B1~B10)から発生する酸のpKaに該当する(第1表に掲載したものと同じである)。
また、第3表において、「pKa(A1)」及び「pKa(A2)」とは、一般式(1)で表される化合物(化合物C1~C24)から発生する酸のpKa、及び比較用酸拡散制御剤(化合物D1~D4)から発生する酸のpKaにそれぞれ該当する(第2表に掲載したものと同じである)。
【0277】
【表3】
【0278】
第3表の結果から、実施例の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によれば、形成されるパターンのLWR及びCDUがいずれも優れていることが確認された。
また、実施例1、4、10、及び12の対比から、一般式(1)で表される化合物において、Ar、Ar及びArの少なくとも1つ以上が無置換の単環芳香族炭化水素基である場合(言い換えると、一般式(2)で表される化合物において、R~Rが全て水素原子であるか、又は、Ar及びArの少なくとも一方が無置換の単環芳香族炭化水素基である場合(実施例1、4、及び10と、実施例12との対比))、形成されるパターンのLWR及びCDUがいずれもより優れていることが確認された。
【0279】
また、実施例1、4、10、及び12の対比から、一般式(1)で表される化合物において、Ar、Ar及びArの少なくとも2つ以上が無置換の単環芳香族炭化水素基である場合(言い換えると、一般式(2)で表される化合物において、R~Rが全て水素原子であり且つAr及びArの一方が無置換の単環芳香族炭化水素基であるか、Ar及びArがいずれも無置換の単環芳香族炭化水素基であるか、又は、R~Rが全て水素原子であり且つAr及びArがいずれも無置換の単環芳香族炭化水素基である場合(実施例1及び4と、実施例10及び12との対比))、形成されるパターンのLWR及びCDUがいずれもより優れていることが確認された。
【0280】
また、実施例1と実施例13及び14との対比から、一般式(1)で表される化合物において、L~Lが単結合である場合、形成されるパターンのLWR及びCDUがいずれもより優れていることが確認された。
また、実施例1、2、及び15~18の対比から、一般式(1)で表される化合物において、Aが、-L-CO 、又は-L-X-N-Yである場合、形成されるパターンのLWR及びCDUがいずれもより優れていることが確認された。
【0281】
また、実施例1と実施例19及び実施例20との対比から、一般式(1)で表される化合物が、一般式(2)で表される化合物である場合、形成されるパターンのLWR及びCDUがいずれもより優れていることが確認された。
【0282】
また、実施例21と実施例22との対比から、一般式(1)で表される化合物において、Arが非芳香性の置換基を有する場合、形成されるパターンのLWR及びCDUがいずれもより優れていることが確認された。
【0283】
一方、比較例の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物では、所望の要求を満たさなかった。