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特許6997844積層体を加工する方法、加工フィルムの製造方法、および、積層体加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】積層体を加工する方法、加工フィルムの製造方法、および、積層体加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20220111BHJP
   B23C 3/12 20060101ALI20220111BHJP
   B23Q 3/06 20060101ALI20220111BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20220111BHJP
   B24C 1/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B23Q11/00 L
B23C3/12 Z
B23Q3/06 303Z
G02B5/30
B24C1/00 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020165042
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2021079536
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2019206286
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】松本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤井 幹士
【審査官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-018308(JP,A)
【文献】特開2010-082712(JP,A)
【文献】特開2002-192414(JP,A)
【文献】特開2011-110619(JP,A)
【文献】国際公開第2018/211732(WO,A1)
【文献】特開2018-144192(JP,A)
【文献】特表2015-536835(JP,A)
【文献】国際公開第2015/001789(WO,A1)
【文献】米国特許第10112202(US,B1)
【文献】特開2019-070793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B23C 3/12
B23Q 3/06
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学フィルムを有する積層体を工具で加工する方法であって、
刃を有し回転する工具を、前記積層体に接触させつつ、前記積層体に対して相対的に移動させて前記積層体を切削または研磨加工する、A工程と、
前記A工程中に、前記工具に対してドライアイス粒子を衝突させる、B工程と、を備え、
前記工具は、刃部及び柄部を有して前記回転の軸方向に伸びる柱状部と、前記刃部の外周面に設けられた前記刃と、を備え、
前記A工程において、前記軸を前記積層体の厚み方向に平行に配置した上で、前記刃部の外周面を前記積層体の端面に接触させ、
前記A工程において、前記柱状部を、前記積層体の端面に沿って、かつ、前記積層体の厚み方向と直交する方向に、前記積層体に対して相対的に移動させ、
前記A工程において、前記柱状部の前記移動の方向は、前記工具の前記回転の方向に対してアップカットの方向であり、
前記B工程において、前記工具の回転の軸方向から見て、前記工具の回転の軸Q及び前記工具の刃が前記端面から離れる点Aを結ぶ線Bと、前記ドライアイス粒子の噴射方向EJと、がなす角θが、前記線Bを始点として前記工具の回転方向に測定して45~135°である、方法。
【請求項2】
前記工具の加工屑排出方向は、前記刃部の先端から前記柄部に向かう方向または前記柄部から前記刃部の先端に向かう方向であり、
前記衝突させる工程では、前記ドライアイス粒子を、前記刃部に対して、前記加工屑排出方向と反対向きに、かつ、前記柱状部の軸に対して斜めの方向に衝突させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工具の加工屑排出方向は前記刃部の先端から前記柄部に向かう方向であり、
前記衝突させる工程では、前記ドライアイス粒子を、前記刃部に対して、前記柄部から前記刃部の先端に向かう向きに、かつ、前記柱状部の軸に対して斜めの方向に衝突させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記刃は右刃右ねじれであり前記柄部からみて時計回りに回転される、または、前記刃は左刃左ねじれであり前記柄部からみて反時計回りに回転される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記A工程において、前記端面における、前記積層体を厚み方向から見た凸部、凹部、又は非直線部に前記工具を接触させる、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記B工程では、長穴形状の開口部を有するノズルからドライアイス粒子を噴射させ、前記開口部を前記刃部に面する位置に配置する、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一つの前記光学フィルムは、1又は複数の粘着剤層を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記粘着剤層の厚みは50μm以上である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記積層体の厚みに占める、前記粘着剤層の合計厚みの割合は、30%以上である、請求項又はに記載の方法。
【請求項10】
複数の光学フィルムが積層された積層体を、請求項1~のいずれか1項に記載の方法で加工する工程を備える、加工フィルムの製造方法。
【請求項11】
複数の光学フィルムが積層された積層体を積層方向の両側から挟んで固定する固定機構と、
刃を有する工具と、
前記工具を回転させる回転部と、
回転する前記工具を前記積層体に接触させつつ、前記積層体に対して相対的に移動させ移動部と、
前記刃に対してドライアイス粒子を噴射するように構成されたノズルと、を備え、
前記工具は、刃部及び柄部を有して前記回転の軸方向に伸びる柱状部と、前記刃部の外周面に設けられた前記刃と、を有し、
前記移動部は、回転する前記工具を、前記回転の軸を前記積層体の厚み方向に平行に配置した上で、前記柱状部の外周面を前記積層体の端面に接触させるように構成され、
前記移動部は、回転する前記工具を、前記積層体の端面に沿って、かつ、前記回転の軸に直交する方向に、前記積層体に対して相対的に移動するように構成され、
前記移動部は、前記工具の前記回転の方向に対してアップカットの方向に、回転する前記工具を移動させるように構成され
前記ノズルは、前記工具の回転の軸方向から見て、前記工具の回転の軸Q及び前記工具の刃が前記端面から離れる点Aを結ぶ線Bと、前記ノズルの軸と、がなす角θが、前記線Bを始点として前記工具の回転方向に測定して45~135°となるように構成された、積層体加工装置。
【請求項12】
前記ノズルは、前記工具と共に前記積層体に対して相対的に移動しながら、前記刃に対して前記ドライアイス粒子を噴射するように構成された、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記工具の加工屑排出方向は、前記刃部の先端から前記柄部に向かう方向または前記柄部から前記刃部の先端に向かう方向であり、
前記ノズルは、前記ドライアイス粒子を、前記刃部に対して、前記加工屑排出方向と反対向きに、かつ、前記柱状部の軸に対して斜めの方向に衝突させるように構成されている、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記ノズルの開口は長穴形状を有し、前記開口が前記刃部に面するように構成された請求項1113のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記ノズルには、ドライアイス粒子供給部が接続されている、請求項1114のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体を加工する方法、加工フィルムの製造方法、および、積層体加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、偏光板などの光学フィルムの積層体を、エンドミルなどの、刃を有して回転する工具で切削して、寸法精度を確保することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-018308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エンドミルなどの工具の刃に光学フィルムの屑などが付着する場合があった。特に、光学フィルムに粘着剤層が含まれている場合にはその傾向が顕著となる。
【0005】
工具の刃に屑が付着すると、工作精度が低下して好ましくない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、エンドミルなどの回転する工具の刃に対する屑の付着を抑制できる、積層体の加工方法、加工フィルムの製造方法、及び、積層体加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる複数の光学フィルムを有する積層体を工具で加工する方法は、刃を有し回転する工具を、前記積層体に接触させつつ、前記積層体に対して相対的に移動させて前記積層体を切削または研磨加工する、A工程と、前記A工程中に、前記工具に対してドライアイス粒子を衝突させる、B工程と、を備える。
【0008】
ここで、前記工具は、刃部及び柄部を有して前記回転の軸方向に伸びる柱状部と、前記刃部の外周面に設けられた前記刃と、を備えることができる。
【0009】
また、前記工具の加工屑排出方向は、前記刃部の先端から前記柄部に向かう方向または前記柄部から前記刃部の先端に向かう方向であり、
前記衝突させる工程では、前記ドライアイス粒子を、前記刃部に対して、前記加工屑排出方向と反対向きに、かつ、前記柱状部の軸に対して斜めの方向に衝突させることができる。
【0010】
また、前記工具の加工屑排出方向は前記刃部の先端から前記柄部に向かう方向であり、前記衝突させる工程では、前記ドライアイス粒子を、前記刃部に対して、前記柄部から前記刃部の先端に向かう向きに、かつ、前記柱状部の軸に対して斜めの方向に衝突させることができる。
【0011】
また、前記刃は右刃右ねじれであり前記柄部からみて時計回りに回転される、または、前記刃は左刃左ねじれであり前記柄部からみて反時計回りに回転されることができる。
【0012】
また、前記A工程において、前記軸を前記積層体の厚み方向に平行に配置した上で、前記刃部の外周面を前記積層体の端面に接触させることができる。
【0013】
また、前記A工程において、前記柱状部を、前記積層体の端面に沿って、かつ、前記積層体の厚み方向と直交する方向に、前記積層体に対して相対的に移動させることができる。
【0014】
また、前記A工程において、前記柱状部の前記移動の方向は、前記工具の前記回転の方向に対してアップカットの方向であることができる。
【0015】
また、前記B工程において、前記工具の回転の軸方向から見て、前記工具の回転の軸Q及び前記工具の刃が前記端面から離れる点Aを結ぶ線Bと、前記ドライアイス粒子の噴射方向EJと、がなす角θが、前記線Bを始点として前記工具の回転方向に測定して0~180°であることができる。
【0016】
また、前記A工程において、前記端面における、前記積層体を厚み方向から見た凸部、凹部、又は非直線部に前記工具を接触させることができる。
【0017】
また、前記B工程では、長穴形状の開口部を有するノズルからドライアイス粒子を噴射させ、前記開口部を前記刃部に面する位置に配置することができる。
【0018】
また、前記A工程において、前記軸を前記積層体の厚み方向に平行に配置した上で、
前記柱状部が前記積層体を貫通するように前記柱状部を前記積層体に対して相対的に移動させることができる。
【0019】
ここで、少なくとも一つの前記光学フィルムは、1又は複数の粘着剤層を有することができる。
【0020】
また、前記粘着剤層の厚みは50μm以上であることができる。
【0021】
また、前記積層体の厚みに占める、前記粘着剤層の合計厚みの割合は、30%以上であることができる。
【0022】
本発明にかかる加工フィルムの製造方法は、複数の光学フィルムが積層された積層体を、上記のいずれかの積層体を工具で加工する方法で加工する工程を備える。
【0023】
本発明にかかる積層体加工装置は、
複数の光学フィルムが積層された積層体を積層方向の両側から挟んで固定する固定機構と、
刃を有する工具と、
前記工具を回転させる回転部と、
回転する前記工具を前記積層体に接触させつつ、前記積層体に対して相対的に移動させ移動部と、
前記刃に対してドライアイス粒子を噴射するように構成されたノズルと、を備える。
【0024】
ここで、前記ノズルは、前記工具と共に前記積層体に対して相対的に移動しながら、前記刃に対して前記ドライアイス粒子を噴射するように構成されることができる。
【0025】
また、前記工具は、刃部及び柄部を有し前記回転の軸方向に伸びる柱状部と、前記刃部の外周面に設けられた前記刃と、を有することができる。
【0026】
また、前記工具の加工屑排出方向は、前記刃部の先端から前記柄部に向かう方向または前記柄部から前記刃部の先端に向かう方向であり、
前記ノズルは、前記ドライアイス粒子を、前記刃部に対して、前記加工屑排出方向と反対向きに、かつ、前記柱状部の軸に対して斜めの方向に衝突させるように構成されていることができる。
【0027】
また、前記移動部は、回転する前記工具を、前記回転の軸を前記積層体の厚み方向に平行に配置した上で、前記柱状部の外周面を前記積層体の端面に接触させるように構成されることができる。
【0028】
また、前記移動部は、回転する前記工具を、前記積層体の端面に沿って、かつ、前記回転の軸に直交する方向に、前記積層体に対して相対的に移動するように構成されることができる。
【0029】
また、前記移動部は、前記工具の前記回転の方向に対してアップカットの方向に、回転する前記工具を移動させるように構成されることができる。
【0030】
また、前記ノズルは、前記工具の回転の軸方向から見て、前記工具の回転の軸Q及び前記工具の刃が前記端面から離れる点Aを結ぶ線Bと、前記ノズルの軸と、がなす角θが、前記線Bを始点として前記工具の回転方向に測定して0~180°となるように構成されることができる。
【0031】
また、前記ノズルの開口は長穴形状を有し、前記開口が前記刃部に面するように構成されることができる。
【0032】
また、前記ノズルには、ドライアイス粒子供給部が接続されていることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、エンドミルなどの回転する工具の刃に対する屑の付着を抑制できる、積層体の加工方法、加工フィルムの製造方法、及び、積層体加工装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、一実施形態にかかる積層体の端面図である。
図2図2の(a)~(e)は、それぞれ一実施形態にかかる積層体の上面図である。
図3図3は、1実施形態にかかる積層体加工装置の模式図である。
図4図4の(a)及び(b)は、それぞれ、エンドミルの移動方向がエンドミルの回転方向に対してアップカットである場合及びダウンカットである場合を示す、エンドミル近傍の軸に垂直な断面図である。
図5図5の(a)~(d)は、それぞれ、エンドミルの刃部が右刃右ねじれ、右刃左ねじれ、左刃右ねじれ、左刃左ねじれである場合のドライアイス粒子の噴射方向EJを示す模式図である。
図6図6は、一実施形態にかかるドライアイス粒子供給部の構成を示すフロー図である。
図7図7の(a)及び(b)は、エンドミルによる加工の一態様をそれぞれ示す模式図である。
図8図8は、エンドミルによる加工の一態様をそれぞれ示す模式図である。
図9図9は、別の実施形態にかかるノズル及びエンドミル44を示す模式図である。
図10図10は、別の実施形態にかかるノズル及びエンドミル44を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図面を参照して本発明の一つの実施形態について説明する。まず、図1を参照して、加工の対象となる積層体10について説明する。図1において、Z方向が厚み方向であり、X方向及びY方向がZ方向に垂直な方向である。
【0036】
積層体10は、複数の光学フィルム12を有する。各光学フィルム12は、単層フィルムであっても、積層フィルムであっても良い。
【0037】
単層フィルムの例は、樹脂フィルムである。樹脂の例は、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状オレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)、アクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレート系樹脂等)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート系樹脂等)、及び、ポリイミド系樹脂(ポリイミド、ポリアミドイミド)等である。これらの単層フィルムは、保護フィルム、基材フィルム、位相差フィルム、ウィンドウフィルム等の光学フィルムであることができる。
【0038】
積層フィルムは、複数の層を有するフィルムである。積層フィルムの例は、偏光フィルム、円偏光板、及び、タッチセンサである。
【0039】
例えば、偏光フィルムは、基材と、偏光子とを少なくとも備える。
【0040】
円偏光板は、例えば、偏光子と、位相差(1/4λ)フィルムとを有する。
【0041】
タッチセンサは、透明基板と、感知パターン層と、センシングラインとを含むことができる。
【0042】
積層フィルムは、更に、粘着剤層、接着剤層、剥離フィルム、プロテクトフィルムなどの層を備えることができる。
【0043】
少なくとも一つの積層フィルムは、典型的には、1又は複数の粘着剤層を有する。粘着剤とは、粘着性を有してそのまま室温で他の部材と貼合可能な層である。粘着剤の例は、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤である。積層体加工装置において加工する時点において、積層体10中の粘着剤層は粘着性を有する。
【0044】
本発明における粘着剤層として、熱や光などにより架橋硬化可能なものも挙げられる。
当該粘着剤層は、硬化前に粘着性を有して室温で他の部材と貼合可能であり、さらに、熱や光などの方法により架橋して硬化すると接着強度が向上する粘着剤層である。かかる粘着剤の例は、アクリル系粘接着剤である。なお、積層体加工装置において加工する時点において、積層体10中の粘着剤は硬化前であって粘着性を有する。
【0045】
積層体10が粘着剤層を含むと、粘着剤層の屑などが刃に付着しやすくなるので、本発明の効果が高い。
【0046】
各光学フィルム12の厚みに特に限定はないが、例えば、20μm~500mm、好ましくは50μm~500μm、より好ましくは50μm~200μmとすることができる。
【0047】
積層フィルムが粘着剤層を含む場合、各粘着剤層の厚みは50μm以上であることができ、100μm以上であることもできる。各粘着剤層の厚みは250μm以下であることもできる。
【0048】
上述のように積層体10は、このような光学フィルム12を複数備えるが、積層体10における光学フィルム12の数は2以上であれば特に限定されないが、通常、5以上であり、10以上であっても良く、50以上であっても良い。積層体10の各光学フィルム12は、通常、互いに同一の積層構造を有する光学フィルム12であるが、互いに異なる積層構造を有する光学フィルム12を積層することも可能である。
【0049】
また、積層体10の厚みは、例えば10mm~60mm、好ましくは20mm~50mmとすることができる。
【0050】
積層体10の厚みに占める、粘着剤層の合計厚みの割合は、30%以上であることができ、40%以上であることもできる。粘着剤層の合計厚みが厚くなると、より刃に付着しやすくなるので効果が高い。
【0051】
積層体10は、積層体10を積層体加工装置100の一対の接触部材22間(詳しくは後述)に固定する際に光学フィルム12が傷つくのを防ぐべく、複数の光学フィルム12以外に、積層方向の両端の一方又は両方に、保護フィルム14を有することができる。
【0052】
保護フィルム14の例は、樹脂フィルムである。樹脂の例は、上記した樹脂フィルムで例示した樹脂に加え、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタラート等である。
【0053】
保護フィルム14の厚みは、例えば、0.2mm~1.0mm、好ましくは0.3mm~0.8mm、より好ましくは0.3mm~0.6mmとすることができる。
【0054】
光学フィルム12の外形形状(厚み方向から見た形状)は特に限定されない。図2は積層体10の種々の例を厚み方向(Z方向)から見た図である。積層体10の外形形状は、図2の(a)~(e)にそれぞれ示すように、矩形、角の丸い矩形、凹部PDを有する形態、凸部PPを有する形態、穴部THを有する形態であってもよい。ここで、非直線部の例は丸みを帯びた部分Rである。
【0055】
一つの積層体10における各光学フィルム12の外形形状は通常実質的に同一である。
例えば、フィルム原反からトムソン刃などで各光学フィルム12を切り出すことにより、実質的に同一の外形形状を有する多数の光学フィルム12を得ることができる。積層体10において、各光学フィルム12は、図2に示すように、外形形状が同じ向きとなるように積層され、図1に示すように、各光学フィルム12の外側の端面により、積層体10の外側の端面EFが形成されている。なお、図2の(e)に示すように各光学フィルム12が穴部THを有する場合には、図1に点線で示すように、外側の端面EFに加えて、穴部TH内に内側の端面EFも形成される。
【0056】
各光学フィルム12の大きさに特に限定はなく、例えば、フィルムの一辺の長さは、例えば、100mm以上であることができる。
【0057】
続いて、この積層体10を加工する積層体加工装置100の一例について説明する。図3は、本実施形態にかかる積層体加工装置100の側面図である。
【0058】
本実施形態に係る積層体加工装置100は、積層体10を固定する固定機構20及び加工部40を有する。
【0059】
固定機構20は、積層体10を積層方向の両側から挟んで固定するように構成されている。具体的には、固定機構20は、一対の接触部材22、固定部61、押圧部60、を主として備える。
【0060】
一対の接触部材22は、それぞれ板状部材であり、その厚み方向がZ方向(押圧する方向及び積層体の厚み方向)に配置され、フィルムの積層体10を厚み方向の両側から挟むように上下方向に離間して配置されている。図3において、X,Y方向が水平方向で、Z方向が鉛直方向である。
【0061】
接触部材22をZ方向から見た大きさは、固定されるフィルムの積層体10の表面(厚み方向と垂直な面)の外形形状より小さい範囲で適宜設定できる。
【0062】
図3に示すように、加工前に積層体10を一対の接触部材22で挟んだ際に、積層体10の外側の端面EFが接触部材22における端面APから突出する突出量Tは、0.8mm~1.5mmであることが好適である。例えば、加工前の突出量Tは1mmとすることができる。加工後の積層体の突出量Tは、0.3~0.8mmとすることができ、0.5mmとすることができる。
【0063】
接触部材22は、それぞれ金属部材であることが好適である。金属の例は、アルミニウム、鋼、ステンレス鋼、合金工具鋼(例えばSKD11)等である。
【0064】
下方の接触部材22は連結部24を介して固定部61に固定され、上方の接触部材22は連結部24を介して押圧部60に固定されている。
【0065】
押圧部60は、固定部61よりも上に配置されていて、押圧部60は固定部61に対して、上方の接触部材22を上下方向に移動可能に構成されている。したがって、押圧部60は、上方の接触部材22を下方の接触部材22に向かって押圧することができる。すなわち、一対の接触部材22の間に積層体10を厚み方向の両側から押圧して固定することができる。
【0066】
押圧部60の具体的構成に特に限定はなく、例えば、スクリュージャッキ、油圧ジャッキ等の公知の移動機構を使用できる。一軸式でも、多軸式でも良い。
【0067】
加工部40は、エンドミル(刃を有する工具)44、エンドミルを回転させる回転部42、回転するエンドミル44を積層体に対して相対的に移動させる移動部46、及び、ドライアイス粒子を噴射するノズル420を有する。
【0068】
エンドミル44の形態に特に限定はないが、通常、図3に示すように、刃部44b及び柄(シャンク)部44aを有し回転の軸方向に伸びる柱状部44zと、刃部44bの外面に設けられた刃44cと、を備える。エンドミル44として、例えば、ルーター型のエンドミル等を好適に使用できる。エンドミル44の刃部44bの長さ(Z軸方向)は、積層体10の厚みよりも長いことが好適である。エンドミルの刃部44bは、外周面に刃44cを有するが、先端44tにも刃を有することができる。
【0069】
回転部42は、エンドミル44をその軸周りに回転させる。本実施形態では、回転部42は、エンドミル44を、積層体10の厚み方向(Z方向)と平行な軸周りに回転させる。
【0070】
移動部46は、回転するエンドミル44を、エンドミル44の刃部44bの外周面が積層体10の端面EFに接触する状態で、端面EFに沿って、積層体10の厚み方向と垂直な方向に移動させる。移動部46の例は3軸(XYZ)駆動装置やロボットアームである。
【0071】
ここで、移動部46は、エンドミル44を、エンドミルの回転に対してアップカットの方向に移動してもよいし、ダウンカットの方向に移動してもよい。
【0072】
図4の(a)及び(b)は、回転するエンドミル44を積層体10に接触させつつ移動させる状態を示す図であり、図3の積層体10及び刃部44bの水平断面を柄部44a側から(上から下に向かって)見た図である。刃部44bは矢印D1の方向に回転し、刃部44bは端面EFにそって、積層体10に対して相対的に矢印D2の方向に移動する。
【0073】
図4の(a)はアップカット方向にエンドミル44が移動している状況を示す水平断面図である。刃44cが点Pで積層体10に接触した時の刃44cが進む方向とエンドミル44の移動方向D2とが同じ方向である場合、エンドミル44がアップカットの方向に移動すると呼ぶ。これに対して、図4の(b)はダウンカット方向にエンドミル44が移動している状況を示す水平断面図である。刃44cが点Pで積層体10から離れる時に刃44cが進む方向とエンドミル44の移動方向D2とが逆方向である場合、エンドミル44がダウンカットの方向に移動すると呼ぶ。
【0074】
移動部46は、加工後の積層体10の端面における屑の付着を抑制する観点から、エンドミル44を、エンドミル44の回転に対してアップカットの方向に移動することが好ましい。
【0075】
図3に示すように、ノズル420には後述するドライアイス粒子供給部300が接続されており、ドライアイス粒子を噴射することができる。
【0076】
ノズル420は、連結部424により移動部46に固定されている。また、ノズル420の軸線すなわちドライアイス粒子の噴射方向EJは、エンドミル44の刃部44bを向いている。したがって、エンドミル44の移動時においても、ノズル420の噴射方向EJはエンドミル44の刃部44bを向き、切削時における刃部44bに付着した屑の連続除去が可能となっている。ノズル420の開口は円形である。ノズル420の開口の径は、1~10mmとすることができる。
【0077】
続いて、図5を参照して、ノズル420の軸方向すなわち、ノズル420からのドライアイス粒子の噴射方向EJについて詳しく説明する。
【0078】
具体的には、噴射方向EJは、エンドミル44の加工屑の排出方向と反対向きに、且つ、エンドミルの柱状部44zの軸と斜めに配置されることが好ましい。
【0079】
例えば、図5の(a)に示すように、エンドミルが右刃右ねじれ、すなわち、柄部44a側から見て刃44cが時計回りで柄部44aから刃部44bの先端に向かうようにらせん状に形成され、かつ、逃げ面44dが刃44cより刃部44bの先端側に設けられている場合には、エンドミル44は柄部44aから見て時計回りに回転され、加工屑排出方向は、刃部44bの先端から柄部44aに向かう方向である。
【0080】
図5の(b)に示すように、エンドミル44が右刃左ねじれ、すなわち、柄部44a側から見て刃44cが反時計回りで柄部44aから刃部44bの先端に向かうようにらせん状に形成され、かつ、逃げ面44dが刃44cより柄部44a側に設けられている場合には、エンドミル44は柄部44aから見て時計回りに回転され、加工屑排出方向は、柄部44aから刃部44bの先端に向かう方向である。
【0081】
図5の(c)に示すように、エンドミルが左刃右ねじれ、すなわち、柄部44a側から見て刃44cが時計回りで柄部44aから刃部44bの先端に向かうようにらせん状に形成され、かつ、逃げ面44dが刃44cより柄部44a側に設けられている場合には、エンドミル44は柄部44aから見て反時計回りに回転され、加工屑排出方向は柄部44aから刃部44bの先端に向かう方向である。
【0082】
図5の(d)に示すように、エンドミル44が左刃左ねじれ、すなわち、柄部44a側から見て刃44cが反時計回りで柄部44aから刃部44bの先端に向かうようにらせん状に形成され、かつ、逃げ面44dが刃44cより刃部44bの先端側に設けられている場合には、エンドミル44は柄部44aから見て反時計回りに回転され、加工屑排出方向は、刃部44bの先端から柄部44aに向かう方向である。
【0083】
したがって、ドライアイス粒子の噴射方向EJが、エンドミル44の加工屑の排出方向と反対向きに、且つ、エンドミルの柱状部44zの軸と斜めに配置される、とは以下のようになる。すなわち、図5の(a)及び(d)のように、加工屑排出方向が刃部44bの先端から柄部44aに向かう方向である場合には、噴射方向EJは、柄部44aから刃部44bの先端に向かう向き、かつ、柱状部44zの軸に対して斜めの方向となる。一方、図5の(b)及び(c)のように、加工屑排出方向が柄部44aから刃部44bの先端に向かう方向である場合には、噴射方向EJは、刃部44bの先端から柄部44aに向かう向き、かつ、柱状部44zの軸に対して斜めの方向となる。
【0084】
加工時における屑排出のしやすさから、図5の(a)又は(d)のように、加工屑の排出方向が、刃部44bの先端から柄部44aに向かう方向であることが好適である。
【0085】
図5において、柱状部44zの軸と噴射方向EJとがなす角(鋭角)αは5~85°とすることができ、10~65°とすることが好適である。
【0086】
次に、エンドミル44の柱状部44zの軸方向から見たときの、噴射方向EJについて図4を参照して説明する。
【0087】
前記工具の回転の軸方向から見て、ドライアイス粒子の噴射方向EJ、すなわち、ノズル420の軸の方向は、刃部44bに向いていればよく、噴射方向EJは回転軸Qを通ることが好ましい。
【0088】
ドライアイス粒子の噴射方向EJは、エンドミル44の回転軸Q及びエンドミル44の刃44cが端面EFから離れる点Aを結ぶ線Bと、ドライアイス粒子の噴射方向EJと、がなす角θが、線Bを始点としてエンドミル44の回転方向に測定して0~180°であることが好適である。これは、アップカットでも、ダウンカットでも同様である。
【0089】
図4の(a)のアップカットの場合に角θは、積層体の端面に加工屑が付着することを防止する観点から45~135°が好ましく、図4の(b)のダウンカットの場合にも同様の観点から角θは90~180°が好ましい。加工屑としてはフィルムの屑や粘着剤の屑等が挙げられる。
【0090】
続いて、ドライアイス粒子供給部300について説明する。図6に示すように、ドライアイス粒子供給部300は、液体二酸化炭素源310、搬送ガス源330、液体二酸化炭素源310及びノズル420を接続するラインL1、及び、搬送ガス源330及びノズル420を接続するラインL2を備える。
【0091】
ラインL1には、バルブ340及びオリフィス350が、ラインL2には、バルブ360が設けられている。
【0092】
バルブ340を開けて液体二酸化炭素源310の液体をオリフィス350で断熱膨張させてドライアイス粒子(ドライアイススノー)を生成し、ノズル420に送る。バルブ360を開けて、搬送ガス源330からガスをノズル420に供給して、ノズル420からドライアイス粒子をガスで吹き出させて、エンドミル44の刃部44bに向かって噴射させ、刃部44bに衝突させることができる。
【0093】
衝突させるドライアイス粒子の平均粒径は特に限定されないが、加工屑なかでも粘着剤の屑を効率よく除去する観点から100μm以上であることが好ましい。また、粘着剤層がドライアイスの衝突により欠けることを抑制する観点から、1000μm以下であることが好ましい。ドライアイス粒子の平均粒径は、レーザドップラ流速計により測定できる。
【0094】
衝突させるドライアイス粒子の速度は、5m/sec~100m/secとすることができる。
【0095】
ドライアイスの搬送ガスは特に限定されず、例えば、窒素、空気、炭酸ガスとすることができる。
【0096】
ドライアイス粒子の粒径は、オリフィス350で断熱膨張させてからノズル420で吹き出すまでの距離(断熱膨張距離)や、ノズル420とドライアイス粒子の供給対象との距離(噴射距離)により調節できる。
【0097】
ノズル420と刃部44bとの距離(噴射距離)は、20mm未満とすることが好適である。また、断熱膨張距離は、例えば、10~500mmとすることができる。
【0098】
(端面加工方法及び端面加工フィルムの製造方法)
続いて、本発明の実施形態に係る端面加工方法及び端面加工フィルムの製造方法について説明する。
【0099】
まず、上述の積層体10を用意する。積層体の端面EFが本実施形態における加工対象となる。
【0100】
つづいて、この積層体10を、図3に示すように、一対の接触部材22の間に挟み、押圧部60で、一方の接触部材22を他方の接触部材22に向かって押圧し、積層体10を固定する。
【0101】
続いて、積層体10を固定した状態で、積層体10の端面EFに対して、積層体10の厚み方向と平行な軸周りに回転するエンドミル44の刃部44bの外周面を接触させると共に、エンドミル44を端面EFに沿って、厚み方向と直交する方向、例えば、長辺又は短辺方向に移動させ、各端面EFの加工を行う(A工程)。加工の具体例として、切削が挙げられる。これにより、積層体10を構成する各光学フィルム12の平面形状(寸法、直角度等)を精度良く所定の形にすることができる。
【0102】
ここでは、積層体10の全端面EFのうちの75%以上を加工することができ、該全端面EFのうちの90%以上、95%以上、99%以上、100%を加工してもよい。
【0103】
この切削加工と同時に、ノズル420からドライアイス粒子を噴射して、刃部44bに衝突させる(B工程)。ここでは、エンドミル44が、積層体10の端面EFに沿って相対的に移動して研削をしている間、ドライアイス粒子をエンドミル44の刃部44bに噴射し続けることが好適である。
【0104】
切削の終了後、押圧部60による押圧を解除して、一対の接触部材22間から積層体10を取り出すことで、精度良く端面加工された積層体10が得られる。必要に応じて、積層体10から各光学フィルム12を分離することにより、分離された光学フィルム12が得られる。
【0105】
本実施形態によれば、切削加工中に、エンドミル44の刃部44bにドライアイス粒子を衝突させているので、研削加工中に生じる加工屑をエンドミル44の刃部44bから都度除去することができる。これにより、刃部に付着した屑により、加工精度が低下することが抑制される。
【0106】
特に、積層体10が粘着剤層を有する場合には、粘着剤の屑が刃部に付着しやすいが、本実施形態によれば、切削中に刃部から粘着剤の屑を除去できるので、効果が高い。
【0107】
本発明は上記実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。
【0108】
例えば、フィルム及び積層体10の形状は図2の形状に限られず任意の形状を取ることができる。例えば、外形形状は楕円(長円を含む)や円形でもよい。なお、A工程の切削工程は、積層体10の端面の内、積層体を厚み方向から見た凸部、凹部、又は非直線部にエンドミルを接触させて行うことが好適である。
【0109】
なお、上記実施形態では、A工程での加工対象は積層体10の外側の端面EFであるが、端面EFでなくてもよいし、穴の内部のような内側の端面でもよい。
【0110】
例えば、図7の(a)のように、A工程において、エンドミル44の軸を積層体10の厚み方向に平行に配置した上で、柱状部44zが積層体10の厚み方向の上面10Sに凹み部を形成するように柱状部44zを積層体10に対して相対的に移動させ、積層体10に穴を開けてもよい。このとき、A工程において、柱状部44zが積層体10の厚み方向に貫通するように柱状部44zを積層体10に対して相対的に移動させてもよい。これにより、積層体10に貫通した穴部を設けることができ、各光学フィルム12に貫通穴を開けることができる。
【0111】
また、図7の(b)に示すように、A工程において、貫通後に、エンドミル44を渦巻き状(スパイラル状)に回転させ、穴部THの径を広げてもよい。
【0112】
さらに、図8に示すように、A工程において、エンドミル44の軸を積層体10の厚み方向に平行に配置した上で、エンドミル44を積層体10の上面10Sから下面10Bに向けて、ヘリカル状(らせん状)に移動させることもできる。これにより、柱状部44zが積層体10の厚み方向の上面10Sから凹み部の径を広げなから深さも広げ、大きな貫通穴を形成することができる。
【0113】
そして、上述の各A工程を行う場合にも、上述のB工程を行うことにより、エンドミルの刃部44bにおける屑の付着を抑制することができる。
【0114】
さらに、ノズル420の開口部の形状も円形に限られない。例えば、図9に示すように、ノズル420の開口部42aの形状を長穴形状としてもよい。この場合、長穴の軸方向を、柱状部44zの軸と平行とする、すなわち、開口部42aが刃部44bに面するように構成されていることが好適である。長穴の軸方向長さは、刃部44bの長さに応じて適宜設定できる。
【0115】
上記実施形態では、切削時に移動する工具に対してドライアイス粒子を吹き付けるべく、ノズル420が移動部46に固定されているが、回転部42に固定されていてもよい。
【0116】
図10に示すように、エンドミル44の移動部46とは別のノズル420用の移動部46’を有していても実施は可能である。この場合、エンドミル44の柱状部44zの軸に垂直な方向から見て、ノズル420の噴射方向EJをエンドミルの柱状部44zと直交する方向とし、かつ、ノズル420をエンドミル44の柱状部の軸方向に沿って往復走査運動するようにしてもよい。
【0117】
加工部40、押圧部60の態様も上記の態様に限定されないことは言うまでも無い。例えば、上記実施形態では工具としてエンドミル44を用いているが、エンドミル以外の工具、例えば、カンナ刃を用いることも可能である。また、回転円板の一方面上に切削刃が設けられた平面研削工具を用いてもよい。また、刃として砥粒を有する工具を用いてもよく、この場合は、切削工程でなく、研磨工程を行うことができる。このような場合でも、切削や研磨中に、工具の刃にドライアイス粒子を衝突させることにより、加工屑の付着に伴う、切削精度の低下や、研磨効率の低下が抑制される。
【0118】
上記実施形態では、固定部61が下に、押圧部60が上にあるが、反対に配置されていてもよく、固定部を有さずに、一対の押圧部60が上下にそれぞれ配置されていてもよい。
【0119】
上記実施形態では、積層体10に対して、移動部46によりエンドミル44を移動させているが、エンドミルと積層体10とが相対移動すればよく、例えば、エンドミル44を固定し、積層体10を移動部でエンドミルに対して移動させても実施可能である。
【0120】
積層体加工装置100は、加工部40を1つ有すればよいが、迅速に加工を行う観点から、加工部40を2つ以上有してもよい。この場合、それぞれの加工部にノズル420を設けることができる。
【実施例
【0121】
(フィルム及び積層体の準備)
セパレータフィルム(PET)/粘着剤層/保護フィルム(TAC)/偏光子(PVA)/保護フィルム(TAC)/光学機能性フィルム層(粘着剤層を含む積層体)/粘着剤層/セパレータフィルム(PET)という層構成を有する原反フィルムを用意した。
保護フィルムと偏光子とは水系接着剤により接着した。原反フィルムの厚みは367μmとなった。
【0122】
原反フィルムを、トムソン刃により、155.6×75.6mmのサイズの矩形の形状に打ち抜いて光学フィルム12を得た。次に、光学フィルム12を50枚重ねて積層体10を得た。
【0123】
積層体10の厚みに占める、粘着剤層の合計厚みの割合は、47%であった。
【0124】
(実施例1)
図1に示す積層体加工装置100を用意した。エンドミル44は図5の(a)に示すように右刃右ねじれであり、加工屑排出方向は刃部の先端から柄部に向かう方向であり、エンドミルを時計回りに回転させた。
【0125】
エンドミル44の刃部44bを、柱状部44zの軸を積層体10の厚み方向に平行に配置した上で、柱状部44zの外周面を積層体10の端面に接触させつつ、柱状部44zを、積層体10の端面EFに沿って、かつ、積層体10の厚み方向と直交する方向に、積層体10に対して相対的に移動させて、端面の切削(切削深さ0.4mm)を行った。切削した長さは長辺の長さすなわち155.6mmとした。ここでは、エンドミルの移動方向を、図4の(a)に示すように、エンドミルの回転方向に対してアップカットの方向とした。
【0126】
エンドミルで積層体10を切削している間、ノズル420から、空気搬送したドライアイス粒子を噴出させてエンドミルの刃部44bに衝突させた。ドライアイス粒子の噴射方向EJは、図5の(a)に示すように、刃部44bに対して、加工屑排出方向と反対向きに、かつ、柱状部44zの軸に対して斜めの方向に衝突させた。角度αは60°とした。
また、図4におけるθは約70°とした。
【0127】
切削後に、エンドミルの刃部における粘着剤屑の付着状況、及び、積層体の端面における粘着剤屑の付着状況を目視で確認した。
【0128】
(実施例2)
エンドミルの移動方向を、図4の(b)に示すように、エンドミルの回転方向に対してダウンカットの方向とした以外は、実施例1と同様とした。
【0129】
(実施例3)
ノズル420から、ドライアイス粒子を含まない空気を噴出させる以外は実施例1と同様とした。
【0130】
(比較例2)
ノズル420からガス及び粒子を一切噴出させないいがいは、実施例1と同様とした。
【0131】
結果を表1に示す。なお、◎は粘着剤の付着がないこと、◎は粘着剤の付着が少量あること、×は粘着剤の付着が大量にあることを意味する。
【0132】
【表1】
【符号の説明】
【0133】
10…積層体、12…光学フィルム、20…固定機構、42…回転部、42a…開口部、44a…柄部(シャンク)、44b…刃部、44c…刃、44t…先端、44z…柱状部、44…エンドミル(工具)、46,46’…移動部、100…積層体加工装置、300…ドライアイス粒子供給部、420…ノズル、AP…端面、EF…端面、PD…凹部、PP…凸部、R…非直線部、Q…軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10