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特許6997866日本脳炎ワクチン含有マイクロニードルアレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】日本脳炎ワクチン含有マイクロニードルアレイ
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20220111BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20220111BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220111BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220111BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220111BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220111BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220111BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220111BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A61M37/00 510
A61K39/12
A61K9/08
A61P31/14
A61P37/04
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/34
A61K47/36
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020521280
(86)(22)【出願日】2019-05-22
(86)【国際出願番号】 JP2019020284
(87)【国際公開番号】W WO2019225650
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2018098810
(32)【優先日】2018-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173692
【氏名又は名称】一般財団法人阪大微生物病研究会
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】島田 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】森 久容
(72)【発明者】
【氏名】草野 隆之
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/047596(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/074239(WO,A1)
【文献】特開2017-095427(JP,A)
【文献】米国特許第05374243(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0287832(US,A1)
【文献】国際公開第2017/179614(WO,A1)
【文献】特開2016-175813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
A61K 39/12
A61K 9/08
A61P 31/14
A61P 37/04
A61K 47/26
A61K 47/10
A61K 47/34
A61K 47/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート部と、シート部の上面に存在する複数の針部とを有するマイクロニードルアレイであって、針部は、電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種、日本脳炎ワクチン、および電気的に中性である界面活性剤を含み、シート部は、電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種を含む、マイクロニードルアレイ。
【請求項2】
電気的に中性である界面活性剤が、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合ポリマー、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、またはオクチルフェノールエトキシレートである、請求項1に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項3】
針部に含まれる電気的に中性である水溶性高分子の重量平均分子量が5000以上100,000以下である、請求項1または2に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項4】
針部に含まれる水溶性高分子が多糖類である、請求項1から3の何れか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項5】
針部に含まれる水溶性高分子がヒドロキシエチルデンプンである、請求項1から4のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項6】
シート部に含まれる電気的に中性である水溶性高分子の重量平均分子量が5000以上100,000以下である、請求項1から5の何れか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項7】
シート部に含まれる水溶性高分子が多糖類である、請求項1から6の何れか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項8】
シート部に含まれる水溶性高分子がヒドロキシエチルデンプンである、請求項1から7のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項9】
針部に含まれる二糖類が、スクロースである、請求項1から8のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日本脳炎ワクチン含有マイクロニードルアレイ、特に日本脳炎ワクチンを含有する自己溶解型マイクロニードルアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
適量の薬物を投与し、かつ十分な薬効を達成するための薬物の投与方法として、薬物を含有する高アスペクト比のマイクロニードル(針部)が形成されたマイクロニードルアレイを用いて、マイクロニードルによって角質バリア層を貫通して、苦痛を伴わずに薬物を皮膚内に注入する方法が注目されている。例えば、生体内溶解性を有する物質を基材とした自己溶解型マイクロニードルアレイが報告されている。自己溶解型マイクロニードルアレイにおいては、その基材に薬物を保持させておき、マイクロニードルが皮膚に挿入された際に基材が自己溶解することにより、薬物を皮内に投与することができる。
【0003】
特許文献1には、微細構造物のアレイを作製する方法であって、(a)少なくとも1つの治療剤を溶媒中に溶解または懸濁させ、治療剤溶液または懸濁液を形成するステップと、(b)少なくとも1つのポリマーを溶媒中に溶解させ、ポリマー溶液を形成するステップと、(c)治療剤溶液または懸濁液およびポリマー溶液または懸濁液を混合し、ポリマーマトリクス溶液または懸濁液を形成するステップと、(d)ポリマーマトリクス溶液または懸濁液を微細構造のキャビティの配列を有する成形型に分注するステップと、(e)成形型内の微細構造のキャビティを充填するステップと、(f)成形型表面の過剰溶液または懸濁液ポリマーマトリクスを除去するステップと、(g)成形型の下方から、約5~50℃の温度で溶液または懸濁液を乾燥させるステップと、(h)約5~50℃の真空下で微細構造物を乾燥させるステップとを含む、方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、患者の角質層を貫通するよう適合されている複数の微小突起を有する微小突起部材;および微小突起部材上に配置された生体適合性コーティングであって、最低1種のエポエチンに基づく剤を配置させているコーティング製剤から形成されるコーティング、を含んでなる、エポエチンに基づく剤を患者に経皮送達するための送達系が記載されている。
【0005】
特許文献3には、生体内溶解性の物質からなる基剤と基剤に保持された目的物質とを有し、体表に挿入して使用され、基剤が溶解することにより目的物質が体内に吸収される針状の体表適用製剤であって、界面によって挿入方向に分けられた2以上の区分からなり、最後端の区分以外の少なくとも1つの区分に目的物質が保持されており、目的物質が保持された区分は、基剤を構成する物質を溶媒に溶解し、さらに目的物質を溶解又は分散させ、液状の目的物質含有基剤を乾燥させて固化して得られるものであり、目的物質が保持された区分と目的物質が保持されない区分とは、別々に調製された異なる組成物から成るものである体表適用製剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2016-512754号公報
【文献】特表2008-530230号公報
【文献】特許第5538897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らの検討により、ワクチンの中でも特に日本脳炎ワクチンは、マイクロニードルアレイの製造中の乾燥工程において活性を失いやすいことが見出された。上記した特許文献1~3においては、活性の低下を抑制するための検討はなされていない。
【0008】
本発明は、日本脳炎ワクチンの活性の低下を抑制できる、日本脳炎ワクチン含有マイクロニードルアレイを提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、シート部と、シート部の上面に存在する複数の針部とを有するマイクロニードルアレイにおいて、針部に、電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種、日本脳炎ワクチン、および電気的に中性である界面活性剤を含め、シート部に、電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種を含めることによって、日本脳炎ワクチンの活性の低下を抑制できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0010】
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)シート部と、シート部の上面に存在する複数の針部とを有するマイクロニードルアレイであって、針部は、電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種 、日本脳炎ワクチン、および電気的に中性である界面活性剤を含み、シート部は、電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種を含む、マイクロニードルアレイ。
(2)電気的に中性である界面活性剤が、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合ポリマー、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、またはオクチルフェノールエトキシレートである、 (1)に記載のマイクロニードルアレイ。
(3)針部に含まれる電気的に中性である水溶性高分子の重量平均分子量が5000以上 100,000以下である、(1)または(2)に記載のマイクロニードルアレイ。
(4)針部に含まれる水溶性高分子が多糖類である、(1)から(3)の何れか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
(5)針部に含まれる水溶性高分子がヒドロキシエチルデンプンである、(1)から(4)のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
(6)シート部に含まれる電気的に中性である水溶性高分子の重量平均分子量が5000以上100,000以下である、(1)から(5)の何れか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
(7)シート部に含まれる水溶性高分子が多糖類である、(1)から(6)の何れか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
(8)シート部に含まれる水溶性高分子がヒドロキシエチルデンプンである、(1)から(7)のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
(9)針部に含まれる二糖類が、スクロースである、(1)から(8)のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、マイクロニードルアレイの製造に際して、日本脳炎ワクチンの活性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1Aは、円錐状のマイクロニードルの斜視図であり、図1Bは、角錐状のマイクロニードルの斜視図であり、図1Cは、円錐状及び角錐状のマイクロニードルの断面図である。
図2図2は、別の形状のマイクロニードルの斜視図である。
図3図3は、別の形状のマイクロニードルの斜視図である。
図4図4は、図2図3に示すマイクロニードルの断面図である。
図5図5は、別の形状のマイクロニードルの斜視図である。
図6図6は、別の形状のマイクロニードルの斜視図である。
図7図7は、図5図6に示すマイクロニードルの断面図である。
図8図8は、針部側面の傾き(角度)が連続的に変化した別の形状のマイクロニードルの断面図である。
図9図9A~Cは、モールドの製造方法の工程図である。
図10図10は、モールドの拡大図である。
図11図11は、別の形態のモールドを示す断面図である。
図12図12A~Cは、日本脳炎ワクチンを含む溶液をモールドに充填する工程を示す概略図である。
図13図13は、ノズルの先端を示す斜視図である。
図14図14は、充填中のノズルの先端とモールドとの部分拡大図である。
図15図15は、移動中のノズルの先端とモールドとの部分拡大図である。
図16図16A~Dは、別のマイクロニードルアレイの形成工程を示す説明図である。
図17図17A~Cは、別のマイクロニードルアレイの形成工程を示す説明図である。
図18図18は、剥離工程を示す説明図である。
図19図19は、別の剥離工程を示す説明図である。
図20図20は、マイクロニードルアレイを示す説明図である。
図21図21の(A)及び(B)は、原版の平面図及び側面図である。
図22図22は、実施例で使用した充填装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本明細書において、「日本脳炎ワクチンを含む」とは、体表に穿刺する際に、日本脳炎ワクチンの効果が発揮される量の日本脳炎ワクチンを含むことを意味する。「日本脳炎ワクチンを含まない」とは、日本脳炎ワクチンの効果が発揮される量の日本脳炎ワクチンを含んでいないことを意味し、日本脳炎ワクチンの量の範囲が、日本脳炎ワクチンを全く含まない場合から、効果が発揮されない量までの範囲を含む。
【0014】
[マイクロニードルアレイの構成]
本発明のマイクロニードルアレイは、シート部と、シート部の上面に存在する複数の針部とを有するマイクロニードルアレイであって、針部は、電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種、日本脳炎ワクチン、および電気的に中性である界面活性剤を含み、シート部は、電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種を含む、マイクロニードルアレイである。
【0015】
本発明において複数とは、1つ以上のことを意味する。
本発明のマイクロニードルアレイは、日本脳炎ワクチンを効率的に皮膚中に投与するために、シート部及び針部を少なくとも含み、針部に日本脳炎ワクチンを担持させている。
【0016】
本発明のマイクロニードルアレイとは、シート部の上面側に、複数の針部がアレイ状に配置されているデバイスである。針部は、シート部の上面側に配置されていることが好ましい。針部は、シート部の上面に直接配置されていてもよいし、あるいは針部は、シート部の上面に配置された錐台部の上面に配置されていてもよい。
【0017】
好ましくは、針部は、シート部の上面に配置された錐台部の上面に配置されているが、この場合、本発明のマイクロニードルアレイは、シート部と複数の針部との間に複数の錐台部とを有するものとなる。この態様においては、針部先端領域が、電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種、日本脳炎ワクチン、および電気的に中性である界面活性剤を含み、針部のうちの針部先端領域以外の根元領域、錐台部及びシート部が、電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種を含むことが好ましい。針部およびシート部に含まれる 水溶性高分子は同一でも異なるものでもよい。水溶性高分子については後述する。
【0018】
シート部は、針部を支持するための土台であり、図1図8に示すシート部116のような平面状の形状を有する。このとき、シート部の上面とは、面上に複数の針部がアレイ状に配置された面を指す。
シート部の面積は、特に限定されないが、0.005~1000mm2であることが好ましく、0.05~500mm2であることがより好ましく、0.1~400mm2であることがさらに好ましい。
【0019】
シート部の厚さは、錐台部又は針部と接している面と、反対側の面の間の距離で表す。シート部の厚さとしては、1μm以上2000μm以下であることが好ましく、3μm以上1500μm以下であることがより好ましく、5μm以上1000μm以下であることがさらに好ましい。
シート部は、電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種を含む。シート部には、それ以外の添加物(例えば、電荷を有する水溶性高分子など)を含んでいてもよい。なお、シート部には日本脳炎ワクチンを含まないことが好ましい。
【0020】
シート部に含まれる、電気的に中性である水溶性高分子としては、特に限定されないが、多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールを挙げることができる。上記の多糖類としては、例えば、プルラン、デキストラン、デキストリン、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの、セルロースを部分的に変性した水溶性セルロース誘導体)、ヒドロキシエチルデンプン、アラビアゴム等が挙げられる。上記の成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0021】
上記の中でも、シート部に含まれる電気的に中性である水溶性高分子は、ヒドロキシエチルデンプン、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリビニルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ヒドロキシエチルデンプンが特に好ましい。
【0022】
本発明において、 シート部は電気的に中性でない水溶性高分子または二糖類以外の糖類を含んでもよい。シート部に含まれる、 電気的に中性でない水溶性高分子または二糖類以外の糖類として、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0023】
シート部において、電気的に中性でない水溶性高分子または二糖類以外の糖類の含有率は、シート部の全固形分の0%以上50質量%未満が好ましく、 0%以上40質量%未満がより好ましく、0%以上30質量%以下がさら好ましく、 0%以上20質量%以下が最も好ましい。
【0024】
シート部に含まれる電気的に中性である水溶性高分子の重量平均分子量は5000以上100,000以下であることが好ましく、10,000以上100,000以下であることがより好ましく、30,000以上90,000以下であることがさらに好ましい。
【0025】
シート部には、二糖類を含めてもよい、二糖類としては、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハース又はセロビオースなどが挙げられ、特にスクロースが好ましい。
【0026】
マイクロニードルアレイは、シート部の上面側に、アレイ状に配置された複数の針部から構成される。針部は、先端を有する凸状構造物であって、鋭い先端を有する針形状に限定されるものではなく、先の尖っていない形状でもよい。
針部の形状の例としては、円錐状、多角錐状(四角錐状など)、又は紡錘状などが挙げられる。例えば、図1図8に示す針部112のような形状を有し、針部の全体の形状が、円錐状又は多角錐状(四角錐状など)であってもよいし、針部側面の傾き(角度)を連続的に変化させた構造であってもよい。また、針部側面の傾き(角度)が非連続的に変化する、二層又はそれ以上の多層構造をとることもできる。
本発明のマイクロニードルアレイを皮膚に適用した場合、針部が皮膚に挿入され、シート部の上面又はその一部が皮膚に接するようになることが好ましい。
【0027】
針部の高さ(長さ)は、針部の先端から、錐台部又はシート部(錐台部が存在しない場合)へ下ろした垂線の長さで表す。針部の高さ(長さ)は特に限定されないが、好ましくは50μm以上3000μm以下であり、より好ましくは100μm以上1500μm以下であり、さらに好ましくは100μm以上1000μm以下である。針部の長さが50μm以上であれば、日本脳炎ワクチンの経皮投与を行うことができ、また針部の長さが3000μm以下とすることで、針部が神経に接触することによる痛みの発生を防止し、また出血を回避できるため、好ましい。
【0028】
錐台部(ただし、錐台部が存在しない場合には針部)とシート部の界面を基底部と呼ぶ。1つの針部の基底における最も遠い点間の距離が、50μm以上2000μm以下であることが好ましく、100μm以上1500μm以下であることがより好ましく、200μm以上1000μm以下であることがさらに好ましい。
【0029】
針部は、1つのマイクロニードルアレイにあたり1~2000本配置されることが好ましく、3~1000本配置されることがより好ましく、5~500本配置されることがさらに好ましい。1つのマイクロニードルアレイあたり2本の針部を含む場合、針部の間隔は、針部の先端から錐台部又はシート部(錐台部が存在しない場合)へ下ろした垂線の足の間の距離で表す。1つのマイクロニードルあたり3本以上の針部を含む場合、配列される針部の間隔は、全ての針部においてそれぞれ最も近接した針部に対して先端から錐台部又はシート部(錐台部が存在しない場合)へ下ろした垂線の足の間の距離を求め、その平均値で表す。針部の間隔は、0.1mm以上10mm以下であることが好ましく、0.2mm以上5mm以下であることがより好ましく、0.3mm以上3mm以下であることがさらに好ましい。
【0030】
針部は、電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種、日本脳炎ワクチン、および電気的に中性である界面活性剤を含む。
針部が皮膚内に残留しても人体に支障が生じないように、電気的に中性である水溶性高分子は生体溶解性物質であることが好ましい。
【0031】
針部に含まれる電気的に中性である水溶性高分子としては、特に限定されないが、多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールを挙げることができる。上記の多糖類としては、例えば、プルラン、デキストラン、デキストリン、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの、セルロースを部分的に変性した水溶性セルロース誘導体)、ヒドロキシエチルデンプン、アラビアゴム等が挙げられる。上記の成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0032】
上記の中でも、針部に含まれる水溶性高分子は、ヒドロキシエチルデンプン、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリビニルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ヒドロキシエチルデンプンが特に好ましい。更に、日本脳炎ワクチンとの混合時に凝集しにくくするため、一般的に電荷を持たない多糖類がより好ましい。針部に含まれる電気的に中性である水溶性高分子は、シート部に含まれる電気的に中性である水溶性高分子と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
針部に含まれる電気的に中性である水溶性高分子の重量平均分子量は5000以上100,000以下であることが好ましく、10,000以上100,000以下であることがより好ましく、30,000以上90,000以下であることがさらに好ましい。
【0034】
針部(特に、針部先端領域)には、二糖類を含めてもよく、二糖類としては、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハース又はセロビオースなどが挙げられ、特にスクロースが好ましい。
【0035】
本発明においては、針部の全固形分の50質量%以上が、電気的に中性である水溶性高分子または二糖類である。好ましくは針部の全固形分の55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上が電気的に中性である水溶性高分子または二糖類である。
上限は特に限定されないが、好ましくは、針部の全固形分の99質量%以下が電気的に中性である水溶性高分子または二糖類であり、より好ましくは、針部の全固形分の95質量%以下が電気的に中性である水溶性高分子または二糖類であり、さらに好ましくは、針部の全固形分の90質量%以下が電気的に中性である水溶性高分子または二糖類である。
針部の全固形分の50質量%以上を電気的に中性である水溶性高分子または二糖類とすることによって、良好な穿刺性及び良好な効果を得ることができる。
【0036】
針部の全固形分における電気的に中性である水溶性高分子または二糖類の比率は、以下の方法により測定することができるが、特に限定されない。測定方法としては、たとえば、作製したマイクロニードルアレイの針部を切断し、針部を緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)など、針部を構成する水溶性高分子を溶解するのに適した緩衝液)中に溶解させ、溶液中の電気的に中性である水溶性高分子または二糖類の量を高速液体クロマトグラフィー法にて測定することができる。
【0037】
針部は、日本脳炎ワクチンを含有する。
日本脳炎ワクチンとしては、不活化日本脳炎ウイルスを有効成分とするワクチンを使用することができる。例えば、日本脳炎ウイルスをVero細胞(アフリカミドリザル腎臓由来株化細胞)の培養液から調製したホルマリン不活化ウイルス調製物、日本脳炎ウイルスに感染したマウスの脳から調製したホルマリン不活化ウイルス調製物などを使用することができる。
【0038】
針部全体における日本脳炎ワクチンの含有量は、特に限定されないが、針部の固形分質量に対して、好ましくは0.001~10質量%であり、より好ましくは0.003~1質量%であり、特に好ましくは0.005~0.5質量%である。
マイクロニードルアレイ1枚あたりの日本脳炎ワクチンの含有量は、特に限定されないが、タンパク質含量として、好ましくは0.05~5μgであり、より好ましくは0.2~3μgである。
【0039】
針部は、電気的に中性である界面活性剤(非イオン性界面活性剤)を含む。
【0040】
電気的に中性である界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合ポリマー、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オクチルフェノールエトキシレート等が挙げられる。上記の中でも、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合ポリマー、またはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が特に好ましい。電気的に中性である界面活性剤としては、Tween(登録商標)80、MONTANOX(登録商標)80 API、Pluronic(登録商標)F-68、NIKKOL(登録商標)HCO-60、Triton(登録商標)X-100などの市販品を使用することもできる。
【0041】
電気的に中性である界面活性剤の添加量は、特に限定されないが、マイクロニードルアレイ1枚(面積は1cm2)あたり0.01μg以上であることが好ましく、0.1μg以上であることがより好ましい。
【0042】
以下、添付の図面に従って、本発明の好ましい実施の形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0043】
図1図8は、マイクロニードルアレイの一部拡大図であるマイクロニードル110を示している。本発明のマイクロニードルアレイは、シート部116の表面に複数個の針部112が形成されることで、構成される(図においては、シート部116上に1つの針部112のみ、あるいは1つの錘台部113と1つの針部112を表示し、これをマイクロニードル110と称する)。
【0044】
図1Aにおいて、針部112は円錐状の形状を有し、図1Bにおいて、針部112は四角錐状の形状を有している。図1Cにおいて、Hは針部112の高さを、Wは針部112の直径(幅)を、Tはシート部116の高さ(厚み)を示す。
【0045】
図2及び図3は、シート部116の表面に、錐台部113及び針部112が形成された別の形状を有するマイクロニードル110を示している。図2において、錐台部113は、円錐台の形状を有し、針部112は円錐の形状を有している。また、図3において、錐台部113は、四角錐台の形状を有し、針部112は四角錐の形状を有している。ただし、針部の形状は、これらの形状に限定されるものではない。
【0046】
図4は、図2及び図3に示されるマイクロニードル110の断面図である。図4において、Hは針部112の高さを、Wは基底部の直径(幅)を、Tはシート部116の高さ(厚み)を示す。
【0047】
本発明のマイクロニードルアレイは、図1Cのマイクロニードル110の形状より、図4のマイクロニードル110の形状とすることが好ましい。このような構造をとることで、針部全体の体積が大きくなり、マイクロニードルアレイの製造時において、より多くの日本脳炎ワクチンを針部の上端に集中させることができる。
【0048】
図5及び図6は、さらに別の形状を有するマイクロニードル110を示している。
【0049】
図5に示される針部第1層112Aは円錐状の形状を有し、針部第2層112Bは円柱状の形状を有している。図6に示される針部第1層112Aは四角錐状の形状を有し、針部第2層112Bは四角柱状の形状を有している。ただし、針部の形状は、これらの形状に限定されるものではない。
【0050】
図7は、図5及び図6に示されるマイクロニードル110の断面図である。図7において、Hは針部112の高さを、Wは基底部の直径(幅)を、Tはシート部116の高さ(厚み)を示す。
【0051】
図8は、針部112の側面の傾き(角度)が連続的に変化した別の形状のマイクロニードルの断面図である。図8において、Hは針部112の高さを、Tはシート部116の高さ(厚み)を示す。
【0052】
本発明のマイクロニードルアレイにおいて、針部は、横列について1mm当たり約0.1~10本の間隔で配置されていることが好ましい。マイクロニードルアレイは、1cm2当たり1~10000本のマイクロニードルを有することがより好ましい。マイクロニードルの密度を1本/cm2以上とすることにより効率良く皮膚を穿孔することができ、またマイクロニードルの密度を10000本/cm2以下とすることにより、マイクロニードルアレイが十分に穿刺することが可能になる。針部の密度は、好ましくは10~5000本/cm2であり、さらに好ましくは25~1000本/cm2であり、特に好ましくは25~400本/cm2である。
【0053】
本発明のマイクロニードルアレイは、乾燥剤と一緒に密閉保存されている形態で供給することができる。乾燥剤としては、公知の乾燥剤(例えば、シリカゲル、生石灰、塩化カルシウム、シリカアルミナ、シート状乾燥剤など)を使用することができる。
【0054】
[マイクロニードルアレイの製造方法]
本発明のマイクロニードルアレイは、例えば、特開2013-153866号公報又は国際公開WO2014/077242号公報に記載の方法に準じて以下の方法により製造することができる。
【0055】
(モールドの作製)
図9Aから9Cは、モールド(型)の作製の工程図である。図9Aに示すように、モールドを作製するための原版を先ず作製する。この原版11の作製方法は2種類ある。
【0056】
1番目の方法は、Si基板上にフォトレジストを塗布した後、露光、現像を行う。そして、RIE(リアクティブイオンエッチング)等によるエッチングを行うことにより、原版11の表面に円錐の形状部(凸部)12のアレイを作製する。尚、原版11の表面に円錐の形状部を形成するようにRIE等のエッチングを行う際には、Si基板を回転させながら斜め方向からのエッチングを行うことにより、円錐の形状を形成することが可能である。2番目の方法は、Ni等の金属基板に、ダイヤモンドバイト等の切削工具を用いた加工により、原版11の表面に四角錘などの形状部12のアレイを形成する方法がある。
【0057】
次に、モールドの作製を行う。具体的には、図9Bに示すように、原版11よりモールド13を作製する。方法としては以下の4つの方法が考えられる。
1番目の方法は、原版11にPDMS(ポリジメチルシロキサン、例えば、ダウコーニング社製のシルガード184(登録商標))に硬化剤を添加したシリコーン樹脂を流し込み、100℃で加熱処理し硬化した後に、原版11より剥離する方法である。2番目の方法は、紫外線を照射することにより硬化するUV(Ultraviolet)硬化樹脂を原版11に流し込み、窒素雰囲気中で紫外線を照射した後に、原版11より剥離する方法である。3番目の方法は、ポリスチレンやPMMA(ポリメチルメタクリレート)等のプラスチック樹脂を有機溶剤に溶解させた溶液を剥離剤の塗布された原版11に流し込み、乾燥させることにより有機溶剤を揮発させて硬化させた後に、原版11より剥離する方法である。4番目の方法は、Ni電鋳により反転品を作成する方法である。
【0058】
これにより、原版11の円錐形又は角錐形の反転形状である針状凹部15が2次元配列で配列されたモールド13が作製される。このようにして作製されたモールド13を図9Cに示す。
【0059】
図10は他の好ましいモールド13の態様を示したものである。針状凹部15は、モールド13の表面から深さ方向に狭くなるテーパ状の入口部15Aと、深さ方向に先細りの先端凹部15Bとを備えている。入口部15Aをテーパ形状とすることで、溶液を針状凹部15に充填しやすくなる。
【0060】
図11は、マイクロニードルアレイの製造を行う上で、より好ましいモールド複合体18の態様を示したものである。図11中、(A)部はモールド複合体18を示す。図11中、(B)部は、(A)部のうち、円で囲まれた部分の拡大図である。
【0061】
図11の(A)部に示すように、モールド複合体18は、針状凹部15の先端(底)に空気抜き孔15Cが形成されたモールド13、及び、モールド13の裏面に貼り合わされ、気体は透過するが液体は透過しない材料で形成された気体透過シート19と、を備える。空気抜き孔15Cは、モールド13の裏面を貫通する貫通孔として形成される。ここで、モールド13の裏面とは、空気抜き孔15Cが形成された側の面を言う。これにより、針状凹部15の先端は空気抜き孔15C、及び気体透過シート19を介して大気と連通する。
このようなモールド複合体18を使用することで、針状凹部15に充填される溶液は透過せず、針状凹部15に存在する空気のみを針状凹部15から追い出すことができる。これにより、針状凹部15の形状を高分子に転写する転写性が良くなり、よりシャープな針部を形成することができる。
【0062】
空気抜き孔15Cの径D(直径)としては、1~50μmの範囲が好ましい。空気抜き孔15Cの径Dが1μm未満の場合、空気抜き孔としての役目を十分に果たせない。また、空気抜き孔15Cの径Dが50μmを超える場合、成形されたマイクロニードルの先端部のシャープ性が損なわれる。
【0063】
気体は透過するが液体は透過しない材料で形成された気体透過シート19としては、例えば気体透過性フィルム(住友電気工業社製、ポアフロン(登録商標)、FP-010)を好適に使用できる。
【0064】
モールド13に用いる材料としては、弾性素材又は金属製素材を用いることができ、弾性素材が好ましく、気体透過性の高い素材が更に好ましい。気体透過性の代表である酸素透過性は、1×10-12(mL/s・m2・Pa)以上が好ましく、1×10-10(mL/s・m2・Pa)以上がさらに好ましい。なお、1mLは、10-63である。気体透過性を上記範囲とすることにより、モールド13の凹部に存在する空気を型側から追い出すことができ、欠陥の少ないマイクロニードルアレイを製造することができる。このような材料として、具体的には、シリコーン樹脂(例えば、ダウコーニング社製のシルガード184(登録商標)、信越化学工業株式会社のKE-1310ST(品番))、紫外線硬化樹脂、プラスチック樹脂(例えば、ポリスチレン、PMMA(ポリメチルメタクリレート))を溶融、又は溶剤に溶解させたものなどを挙げることができる。これらの中でもシリコーンゴム系の素材は、繰り返し加圧による転写に耐久性があり、かつ素材との剥離性がよいため好ましい。また、金属製素材としては、Ni、Cu、Cr、Mo、W、Ir、Tr、Fe、Co、MgO、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、α-酸化アルミニウム,酸化ジルコニウム、ステンレス(例えば、ボーラー・ウッデホルム社(Bohler-Uddeholm KK)のスタバックス材(STAVAX)(商標))などやその合金を挙げることができる。枠14の材質としては、モールド13の材質と同様の材質のものを用いることができる。
【0065】
(溶液)
本発明においては、
(i)針部の一部である針部先端領域を形成するための、電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種、日本脳炎ワクチン、および電気的に中性である界面活性剤を含む容液、並びに、
(ii)針部のうちの針部先端領域以外の針部根元領域とシート部(又は針部のうちの針部先端領域以外の針部根元領域と、錐台部と、シート部)とを形成するための、電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種を含む溶液、
を準備することが好ましい。
【0066】
電気的に中性である水溶性高分子、二糖類、および電気的に中性である界面活性剤の種類は、本明細書上記した通りである。
上記溶液中の、電気的に中性である水溶性高分子または二糖類の濃度は、使用する物質の種類によっても異なるが、一般的には1~50質量%であることが好ましい。また、溶解に用いる溶媒は、水以外であっても揮発性を有するものであればよく、メチルエチルケトン(MEK)、アルコールなどを用いることができる。
【0067】
(針部先端領域の形成)
図12Aに示すように、2次元配列された針状凹部15を有するモールド13が、基台20の上に配置される。モールド13には、5×5の2次元配列された、2組の複数の針状凹部15が形成されている。日本脳炎ワクチンを含む溶液22を収容するタンク30、タンクに接続される配管32、及び、配管32の先端に接続されたノズル34、を有する液供給装置36が準備される。なお、本例では、針状凹部15が5×5で2次元配列されている場合を例示しているが、針状凹部15の個数は5×5に限定されるものではなく、M×N(M及びNはそれぞれ独立に1以上の任意の整数を示し、好ましくは2~30、より好ましくは3~25、さらに好ましくは3~20である)で2次元配列されていればよい。
【0068】
図13はノズルの先端部の概略斜視図を示している。図13に示すように、ノズル34の先端には平坦面であるリップ部34A及びスリット形状の開口部34Bを備えている。スリット形状の開口部34Bにより、例えば、1列を構成する複数の針状凹部15に同時に、日本脳炎ワクチンを含む溶液22を充填することが可能となる。開口部34Bの大きさ(長さと幅)は、一度に充填すべき針状凹部15の数に応じて適宜選択される。開口部34Bの長さを長くすることで、より多くの針状凹部15に一度に日本脳炎ワクチンを含む溶液22を充填することができる。これにより、生産性を向上させることが可能となる。
【0069】
ノズル34に用いる材料としては、弾性素材又は金属製素材を用いることができる。例えば、テフロン(登録商標)、ステンレス鋼(SUS(Steel Use Stainless))、チタン等が挙げられる。
【0070】
図12Bに示すように、ノズル34の開口部34Bが針状凹部15の上に位置調整される。ノズル34のリップ部34Aとモールド13の表面とは接触している。液供給装置36から日本脳炎ワクチンを含む溶液22がモールド13に供給され、ノズル34の開口部34Bから日本脳炎ワクチンを含む溶液22が針状凹部15に充填される。本実施形態では、1列を構成する複数の針状凹部15に日本脳炎ワクチンを含む溶液22が同時に充填される。ただし、これに限定されず、針状凹部15に一つずつ充填するようにすることもできる。
【0071】
モールド13が気体透過性を有する素材で構成される場合、モールド13の裏面から吸引することで日本脳炎ワクチンを含む溶液22を吸引でき、針状凹部15内への日本脳炎ワクチンを含む溶液22の充填を促進させることができる。
【0072】
図12Bを参照して充填工程に次いで、図12Cに示すように、ノズル34のリップ部34Aとモールド13の表面とを接触させながら、開口部34Bの長さ方向と垂直方向に液供給装置36を相対的に移動し、ノズル34を、日本脳炎ワクチンを含む溶液22が充填されていない針状凹部15に移動する。ノズル34の開口部34Bが針状凹部15の上に位置調整される。本実施の形態では、ノズル34を移動させる例で説明したが、モールド13を移動させてもよい。
【0073】
ノズル34のリップ部34Aとモールド13の表面とを接触させて移動しているので、ノズル34がモールド13の針状凹部15以外の表面に残る日本脳炎ワクチンを含む溶液22を掻き取ることができる。日本脳炎ワクチンを含む溶液22をモールド13の針状凹部15以外に残らないようにすることができる。
【0074】
モールド13へのダメージを減らすことと、モールド13の圧縮による変形をできるだけ抑制するため、移動する際のノズル34のモールド13への押付け圧はできる限り小さい方が好ましい。また、日本脳炎ワクチンを含む溶液22がモールド13の針状凹部15以外に残らないようにするため、モールド13もしくはノズル34の少なくとも一方がフレキシブルな弾性変形する素材であることが望ましい。
【0075】
図12Bの充填工程と、図12Cの移動工程とを繰り返すことで、5×5の2次元配列された針状凹部15に日本脳炎ワクチンを含む溶液22が充填される。5×5の2次元配列された針状凹部15に日本脳炎ワクチンを含む溶液22が充填されると、隣接する5×5の2次元配列された針状凹部15に液供給装置36を移動し、図12Bの充填工程と、図12Cの移動工程とを繰り返す。隣接する5×5の2次元配列された針状凹部15にも日本脳炎ワクチンを含む溶液22が充填される。
【0076】
上述の充填工程と移動工程について、(1)ノズル34を移動しながら日本脳炎ワクチンを含む水溶液22を針状凹部15に充填する態様でもよいし、(2)ノズル34の移動中に針状凹部15の上でノズル34を一旦静止して日本脳炎ワクチンを含む溶液22を充填し、充填後にノズル34を再度移動させる態様でもよい。充填工程と移動工程との間、ノズル34のリップ部34Aがモールド13の表面に接触している。
【0077】
図14は、日本脳炎ワクチンを含む溶液22を針状凹部15に充填中におけるノズル34の先端とモールド13との部分拡大図である。図15に示すように、ノズル34内に加圧力P1を加えることで、針状凹部15内へ日本脳炎ワクチンを含む溶液22を充填するのを促進することができる。さらに、針状凹部15内へ日本脳炎ワクチンを含む溶液22を充填する際、ノズル34をモールド13の表面に接触させる押付け力P2を、ノズル34内の加圧力P1以上とすることが好ましい。押付け力P2≧加圧力P1とすることにより、日本脳炎ワクチンを含む溶液22が針状凹部15からモールド13の表面に漏れ出すのを抑制することができる。
【0078】
図15は、ノズル34の移動中における、ノズル34の先端とモールド13との部分拡大図である。ノズル34をモールド13に対して相対的に移動する際、ノズル34をモールド13の表面に接触させる押付け力P3を、充填中のノズル34をモールド13の表面に接触させる押付け力P2より小さくすることが好ましい。モールド13へのダメージを減らし、モールド13の圧縮による変形を抑制するためである。
【0079】
5×5で構成される複数の針状凹部15への充填が完了すると、ノズル34は、隣接する5×5で構成される複数の針状凹部15へ移動される。液供給に関して、隣接する5×5で構成される複数の針状凹部15へ移動する際、日本脳炎ワクチンを含む溶液22の供給を停止するのが好ましい。5列目の針状凹部15から次の1列目の針状凹部15までは距離がある。その間をノズル34が移動する間、日本脳炎ワクチンを含む溶液22を供給し続けると、ノズル34内の液圧が高くなりすぎる場合がある。その結果、ノズル34から日本脳炎ワクチンを含む溶液22がモールド13の針状凹部15以外に流れ出る場合があり、これを抑制するため、ノズル34内の液圧を検出し、液圧が高くなりすぎると判定した際には日本脳炎ワクチンを含む溶液22の供給を停止するのが好ましい。
【0080】
なお、上記においてはノズルを有するディスペンサーを用いて日本脳炎ワクチンを含む溶液を供給する方法を説明したが、ディスペンサーによる塗布に加えて、バー塗布、スピン塗布、スプレーなどによる塗布などを適用することもできる。
【0081】
本発明においては、日本脳炎ワクチンを含む溶液を針状凹部に供給した後、乾燥処理を実施することが好ましい。
好ましくは、本発明マイクロニードルアレイは、日本脳炎ワクチンを含む溶液を充填した針部形成用モールドを、乾燥することによって針部の一部を形成する工程;及び、電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種を含む溶液を、上記で形成された針部の一部の上面に充填して乾燥する工程によって製造することができる。
【0082】
日本脳炎ワクチンを含む溶液を充填した針部形成用モールドを乾燥する際の条件としては、乾燥開始後30分から300分間経過してから、上記溶液の含水率が20%以下に到達する条件であることが好ましい。
特に好ましくは、上記の乾燥は、日本脳炎ワクチンの活性が失われない温度以下に保ち、かつ乾燥開始後60分以上経過してから、溶液の含水率が20%以下に到達するように制御することができる。
【0083】
上記した乾燥速度の制御の方法としては、例えば、温度、湿度、乾燥風量、容器の使用、容器の容積及び/又は形状など、乾燥を遅らすことが可能な任意の手段を取ることができる。
【0084】
乾燥は、好ましくは、日本脳炎ワクチンを含む溶液を充填した針部形成用モールドを、容器を被せた状態又は容器に収容した状態で、行うことができる。
乾燥の際の温度は、好ましくは1~45℃であり、より好ましくは1~40℃である。
乾燥の際の相対湿度は、好ましくは10~95%であり、より好ましくは20~95%であり、さらに好ましくは30~95%である。
【0085】
(シート部の形成)
シート部を形成する工程について、いくつかの態様を説明する。
シート部を形成する工程について、第1の態様について図16Aから図16Dを参照して説明する。モールド13の針状凹部15に日本脳炎ワクチンを含む溶液22をノズル34から充填する。次いで、図16Bに示すように、日本脳炎ワクチンを含む溶液22を乾燥固化させることで、針状凹部15内に日本脳炎ワクチンを含む層120が形成される。次いで、図16Cに示すように、日本脳炎ワクチンを含む層120が形成されたモールド13に、電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種を含む溶液24をディスペンサーにより塗布する。ディスペンサーによる塗布に加えて、バー塗布、スピン塗布、スプレーなどによる塗布などを適用することができる。日本脳炎ワクチンを含む層120は固化されているので、日本脳炎ワクチンが、上記溶液24に拡散するのを抑制することができる。次いで、図17Dに示すように、上記溶液24を乾燥固化させることで、複数の針部112、錐台部113及び、シート部116から構成されるマイクロニードルアレイ1が形成される。
【0086】
第1の態様において、日本脳炎ワクチンを含む溶液22、及び電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種を含む溶液24の針状凹部15内への充填を促進させるために、モールド13の表面からの加圧、及び、モールド13の裏面からの減圧吸引を行うことも好ましい。
【0087】
次に、第2の態様について図17Aから17Cを参照して説明する。図17Aに示すように、モールド13の針状凹部15に日本脳炎ワクチンを含む溶液22をノズル34から充填する。次いで、図16Bと同様に、日本脳炎ワクチンを含む溶液22を乾燥固化させることで、日本脳炎ワクチンを含む層120が針状凹部15内に形成される。次に、図17Bに示すように、別の支持体29の上に、電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種を含む溶液24を塗布する。支持体29は限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース、ガラス等を使用することができる。次に、図17Cに示すように、針状凹部15に日本脳炎ワクチンを含む層120が形成されたモールド13に、支持体29の上に形成された上記溶液24を重ねる。これにより、上記溶液24を針状凹部15の内部に充填させる。日本脳炎ワクチンを含む層は固化されているので、日本脳炎ワクチンが、上記溶液24に拡散するのを抑制することができる。次に、上記溶液24を乾燥固化させることで、複数の針部112、錐台部113及びシート部116から構成されるマイクロニードルアレイが形成される。
【0088】
第2の態様において、電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種を含む溶液24の針状凹部15内への充填を促進させるために、モールド13の表面からの加圧及びモールド13の裏面からの減圧吸引を行うことも好ましい。
【0089】
電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種を含む溶液24を乾燥させる方法として、溶液中の溶媒を揮発させる工程であればよい。その方法は特に限定するものではなく、例えば加熱、送風、減圧等の方法が用いられる。乾燥処理は、1~50℃で1~72時間の条件で行うことができる。送風の場合には、0.1~10m/秒の温風を吹き付ける方法が挙げられる。乾燥温度は、日本脳炎ワクチンを含む溶液22内の日本脳炎ワクチンを熱劣化させない温度であることが好ましい。
【0090】
(剥離)
マイクロニードルアレイをモールド13から剥離する方法は特に限定されない。剥離の際に針部が曲がったり折れたりしないことが好ましい。具体的には、図18に示すように、マイクロニードルアレイの上に、粘着性の粘着層が形成されているシート状の基材40を付着させた後、端部から基材40をめくるように剥離を行うことができる。ただし、この方法では針部が曲がる可能性がある。そのため、図19に示すように、マイクロニードルアレイの上の基材40に吸盤(図示せず)を設置し、エアーで吸引しながら垂直に引き上げる方法を適用することができる。なお、基材40として支持体29を使用してもよい。
【0091】
図20はモールド13から剥離されたマイクロニードルアレイ2を示している。マイクロニードルアレイ2は、基材40、基材40の上に形成された針部112、錐台部113及びシート部116で構成される。針部112は、円錐形状又は多角錐形状を少なくとも先端に有しているが、針部112はこの形状に限定されるものではない。
【0092】
本発明のマイクロニードルアレイの製造法としては、特に限定されないが、(1)モールドの製造工程、(2)電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種、日本脳炎ワクチン、および電気的に中性である界面活性剤を含む溶液を調製する工程、(3)(2)で得た液をモールドに充填し、針部先端領域を形成する工程、(4)電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種を含む溶液をモールドに充填し、針部の残部、(所望により錐台部)、及びシート部を形成する工程、(5)モールドから剥離する工程、を含む製造法によって得ることが好ましい。
【0093】
以下に、本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【実施例
【0094】
実施例における略号、商品名は以下を意味する。
HES:ヒドロキシエチルスターチ70000(Fresenius Kabi株式会社)(重量平均分子量は70000)
DEX:デキストラン70000(名糖産業株式会社)(重量平均分子量は70000)
CS:コンドロイチン硫酸ナトリウム(マルハニチロ株式会社)(重量平均分子量は90000)
スクロース:ショ糖(富士フイルム和光純薬株式会社)
PVP K25:ポリビニルピロリドン(富士フイルム和光純薬株式会社)(重量平均分子量は24000)
【0095】
Tw:MONTANOX(登録商標)80 API(Seppic株式会社)
SDS:ドデシル硫酸ナトリウム (富士フイルム和光純薬株式会社)
Pluronic(登録商標)F-68(日油株式会社)
NIKKOL(登録商標)HCO-60(日光ケミカルズ株式会社)
Triton(登録商標)X-100 (Alfa Aesar株式会社)
L-グルタミン酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社)
【0096】
[実施例1]
<マイクロニードルアレイの製造及び評価>
(モールドの製造)
一辺40mmの平滑なNi板の表面に、図21に示すような、底面が500μmの直径D1で、150μmの高さH1の円錐台50上に、300μmの直径D2で、500μmの高さH2の円錐52が形成された針状構造の形状部12を、1000μmのピッチL1にて四角形状に100本の針を2次元正方配列に研削加工することで、原版11を作製した。この原版11の上に、シリコンゴム(ダウ・コーニング社製SILASTIC MDX4-4210)を0.6mmの厚みで膜を形成し、膜面から原版11の円錐先端部50μmを突出させた状態で熱硬化させ、剥離した。これにより、約30μmの直径の貫通孔を有するシリコンゴムの反転品を作製した。このシリコンゴム反転品の、中央部に10列×10行の2次元配列された針状凹部が形成された、一辺30mmの平面部外を切り落としたものをモールドとして用いた。針状凹部の開口部が広い方をモールドの表面とし、30μmの直径の貫通孔(空気抜き孔)を有する面をモールドの裏面とした。
【0097】
(日本脳炎ワクチンを含む水溶液の調製)
日本脳炎ワクチン原液(阪大微生物病研究会より提供)を遠心限外濾過法によって濃縮した後、水溶性高分子、スクロース(富士フイルム和光純薬株式会社)、L-グルタミン酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社)、界面活性剤と混合した。各成分の使用量は表1に記す。
【0098】
(シート部を形成する溶液の調製)
ヒドロキシエチルデンプン70000(HES、Fresenius Kabi株式会社)を水に溶解して、HESの56質量%水溶液を調製した。
【0099】
(日本脳炎ワクチンを含む溶液の充填及び乾燥)
図22に示す充填装置を使用した。充填装置は、モールドとノズルの相対位置座標を制御するX軸駆動部61及びZ軸駆動部62、ノズル63を取り付け可能な液供給装置64(武蔵エンジニアリング社製超微量定量ディスペンサーSMP-III)、モールド69を固定する吸引台65、モールド表面形状を測定するレーザー変位計66(パナソニック社製HL-C201A)、ノズル押し込み圧力を測定するロードセル67(共和電業製LCX-A-500N)、及び表面形状及び押し付け圧力の測定値のデータを基にZ軸を制御する制御機構68を備える。
【0100】
水平な吸引台上に一辺15mmの気体透過性フィルム(住友電気工業社製、ポアフロン(登録商標)、FP-010)を置き、その上に表面が上になるようにモールドを設置した。モールド裏面方向からゲージ圧90kPaの吸引圧で減圧して、気体透過性フィルムとモールドをバキューム台に固定した。
【0101】
図13に示すような形状のSUS製(ステンレス鋼)のノズルを準備し、長さ20mm、幅2mmのリップ部の中央に、長さ12mm、幅0.2mmのスリット状の開口部を形成した。このノズルを液供給装置に接続した。3mLの日本脳炎ワクチンを含む溶液を、液供給装置とノズル内部に装填した。開口部を、モールドの表面に形成された複数の針状凹部で構成される1列目と平行となるようにノズルを調整した。1列目に対して2列目と反対方向に2mmの間隔をおいた位置で、ノズルを1.372×104Pa(0.14kgf/cm2)の圧力でモールドに押し付けた。ノズルを押し付けたまま、押し付け圧の変動が±0.490×104Pa(0.05kgf/cm2)に収まるようにZ軸を制御しつつ、0.5mm/秒で開口部の長さ方向と垂直方向に移動させながら、液供給装置にて、日本脳炎ワクチンを含む溶液を、0.15μL/秒で20秒間、開口部から放出した。2次元配列された複数の針状凹部の孔パターンを通過して、2mm間隔を置いた位置でノズルの移動を停止し、ノズルをモールドから離した。
【0102】
日本脳炎ワクチンを含む溶液を充填したモールドを、23℃、45%の環境下でフタ(箱)内に収め、乾燥した。このとき、日本脳炎ワクチン含む溶液は、徐々に乾燥され、180分以上経過した後に、含水率が20%以下となる。また乾燥の手段は、フタに限定されるものではなく、温湿度制御や風量制御などの他の手段を用いても良い。
【0103】
(シート部の形成及び乾燥)
シート部を形成する支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート(175μm)をクラウドリムーバー(Victor jvc社)を用いて、以下条件(使用ガス:O2、ガス圧:13Pa、高周波(RF)電力:100W、照射時間:3分、O2流量:SV250、目標真空度(CCG):2.0×10-4Pa)にて親水化プラズマ処理したものを用いる。処理を施したPET上に、シート部を形成する溶液を、表裏面を75μmの膜厚で塗布した。一方で、日本脳炎ワクチンを含む溶液を充填したモールドを吸引台に吸引固定した。シート部を形成する溶液を塗布したPETの表面側を、モールド表面を向かい合わせに配置し、更にPETとモールド間の空隙、また、PETのモールドと反対側の空間を2分間減圧した。減圧後、PETのモールドと反対側の空間のみ大気圧開放することで、シート部を形成する溶液を塗布したPETと、モールドを貼り合せた。10分間接触状態を維持した後、PETとモールドが貼り合わさって一体となったものを23℃、45%(相対湿度)の環境下で乾燥させた。
【0104】
(剥離工程)
乾燥固化したマイクロニードルアレイをモールドから慎重に剥離することで、日本脳炎ワクチンを内包したマイクロニードルアレイが形成された。本マイクロニードルは、錘台部と針部から構成されており、針状凸部の長さLが約800μm、基底部の幅:約350μm、錘台部が、高さ約190μm、上底面直径約350μm、下底面直径約700μmの円錐台構造であり、針本数109本、針の間隔約1mmで配置されている。
【0105】
[実施例2~14および比較例1~2]
日本脳炎ワクチンを含む水溶液およびシート部を形成する溶液の組成を表1に示す通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてマイクロニードルを製造した。
表1における日本脳炎ワクチン含量および電気的に中性である界面活性剤の量は、マイクロニードルアレイ1枚当たりの量である。マイクロニードルアレイ1枚の面積は、1cm2である。なお、実施例5において、DEX/CSの比率(質量比)は70/30で作成した。
【0106】
(評価1:マイクロニードルアレイ製造後のワクチン活性)
溶解液(Tween(登録商標)20を0.1%、牛血清アルブミンを0.5%含有するリン酸緩衝液)1mLでマイクロニードルアレイを丸ごと溶解し、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)でワクチン活性を評価した。予想含量を(充填液中の日本脳炎ワクチン濃度(μg/mL)×モールドへの充填重量(mg))から算出した。上記の評価の結果を表1に示す。ELISAで検出されたワクチン含量が予想含量の80%以上をA、80%未満をBとした。
【0107】
【表1】
【符号の説明】
【0108】
1 マイクロニードルアレイ
2 マイクロニードルアレイ
110 マイクロニードル
112 針部
112A 針部第1層
112B 針部第2層
113 錐台部
116 シート部
120 日本脳炎ワクチンを含む層
122 日本脳炎ワクチンを含まない層
W 直径(幅)
H 高さ
T 高さ(厚み)
11 原版
12 形状部
13 モールド
15 針状凹部
15A 入口部
15B 先端凹部
15C 空気抜き孔
D 径(直径)
18 モールド複合体
19 気体透過シート
20 基台
22 日本脳炎ワクチンを含む溶液
24 電気的に中性である水溶性高分子および二糖類のうちの少なくとも一種を含む溶液
29 支持体
30 タンク
32 配管
34 ノズル
34A リップ部
34B 開口部
36 液供給装置
P1 加圧力
P2 押付け力
P3 押付け力
40 基材
50 円錐台
52 円錐
D1 直径
D2 直径
L10 ピッチ
H1 高さ
H2 高さ
61 X軸駆動部
62 Z軸駆動部
63 ノズル
64 液供給装置
65 吸引台
66 レーザー変位計
67 ロードセル
68 制御機構
69 モールド
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9
図10
図11
図12
図13
図14
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図18
図19
図20
図21
図22