(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】内視鏡用スネア
(51)【国際特許分類】
A61B 17/32 20060101AFI20220111BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20220111BHJP
A61B 1/018 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A61B17/32 528
A61B18/14
A61B1/018 515
(21)【出願番号】P 2017232377
(22)【出願日】2017-12-04
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000153823
【氏名又は名称】株式会社八光
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(72)【発明者】
【氏名】中島 清一
(72)【発明者】
【氏名】吾妻 聖臣
(72)【発明者】
【氏名】新田 瞬
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛史
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-154988(JP,U)
【文献】特開2000-271146(JP,A)
【文献】米国特許第04326530(US,A)
【文献】特開平01-119243(JP,A)
【文献】特開2017-136188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/32
A61B 18/14
A61B 1/018
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のシースと、
シース内を摺動する並列した2本のケーブルと、
2本のケーブルの各々の遠位端に両端を接続し、シースから出退して、突出するときループを形成する弾性のワイヤーと、
ケーブルを介してワイヤーの出退及びループの拡縮を操作する手元操作部より構成し、
前記ワイヤーには、該ワイヤーがループを形成したときシース先端近傍となる位置であって、
一方側のケーブルとの接続部から延びるワイヤー近位端近傍の領域に、所定の間隔を設けて遠位側及び近位側の2つの折り曲げ部を癖付けして形成し、
該近位側に癖付けされる折り曲げ部は、形成されるループの外方方向にほぼ直角に曲げて形成し、
前記手元操作部に、並列するケーブルを共にスライドする第一のスライド手段と、
ケーブルとの接続部から延びるワイヤー近位端近傍の領域に、折り曲げ部を設けていない側のワイヤー端部が接続されたケーブルのみをスライドする第二のスライド手段を備えたことを特徴とする内視鏡用スネア。
【請求項2】
前記第一のスライド手段によりワイヤーがシースから突出されたとき、前記ワイヤーに設ける遠位側の折り曲げ部がワイヤーの先端部となる位置に設定される請求項1の内視鏡用スネア。
【請求項3】
前記第一のスライド手段のスライド幅は、遠位側と近位側の折り曲げ部の間隔よりわずかに長く設定される請求項1乃至2のいずれかの内視鏡用スネア。
【請求項4】
前記弾性のワイヤーは金属撚り線より形成される請求項1乃至3のいずれかの内視鏡用スネア。
【請求項5】
前記金属撚り線よりなるワイヤーはブラスト加工を施してなる4の内視鏡用スネア。
【請求項6】
前記ワイヤーは超弾性合金より形成される請求項1乃至3のいずれかの内視鏡用スネア。
【請求項7】
前記超弾性合金よりなるワイヤーは断面を三角形に形成する請求項6の内視鏡用スネア。
【請求項8】
前記ワイヤーに癖付けされる遠位側の折り曲げ部は、形成されるループの外方に向けた突起として形成される請求項1乃至7のいずれかの内視鏡用スネア。
【請求項9】
前記手元操作部は、シースを接続する操作部本体と、
前記
ワイヤー近位端近傍の領域に折り曲げ部を形成した側のワイヤー端部とケーブルを介して接続する前記第一のスライド手段を構成する第一のスライダーと、
前記
ワイヤー近位端近傍の領域に折り曲げ部を設けない側のワイヤー端部とケーブルを介して接続する第二のスライド手段を構成する第二のスライダーを備え、
各々のスライダーは操作部本体を軸として規定の可動域をスライド範囲として設定される請求項1乃至
8のいずれかの内視鏡用スネア。
【請求項10】
前記第一のスライダーは、弾性部材により当該スライド範囲の遠位側に付勢されてなる請求項
9の内視鏡用スネア。
【請求項11】
前記第一のスライダーまたは操作部本体の近位端のいずれか、及び、第二のスライダーには手指による操作のための操作リングを備える請求項
9乃至
10のいずれかの内視鏡用スネア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の鉗子チャンネルを通して体内に挿入し、ループ状に形成されるワイヤーによりポリープ等の組織を捕捉切除する内視鏡用スネアに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の鉗子チャンネルに挿入してポリープを切除するために用いる内視鏡用スネアは、シース内に挿通された操作ワイヤー(ケーブル)の先端にループ状のワイヤーが延設されており、手元側からケーブルを前進・後退させることにより、ワイヤーがシースの先端から出退するもので、シースから突出したワイヤーが自己弾性力によりループ状に拡開し、このループ内にポリープを捕捉し、ループを閉じながら高周波焼灼することでポリープが切除されるといったものである。そして、ワイヤーは細径のシース内に閉じられて収容され、突出時に拡開する態様に形状付されており、その多くの拡開時の形状は、軸方向に長く幅方向に短い楕円あるいは多角形として形成されている。
【0003】
そして、ループの縦長傾向はワイヤーを徐々に押出す構成であるため押出しの長さ(突出長)が短いほど顕著で、突出初期段階ではほとんど拡開されておらず、ポリープを捕捉するのに十分な幅を確保するためには押出し長さを長くする必要があるなど、特に小さなポリープに対しては操作性が良く無いといった問題があった。
【0004】
これに対し、シースからワイヤーを突出してループを形成する際、突出初期段階の小さなループであっても幅のある円環状を形成することで、小さなポリープでも容易に安定した捕捉ができるとした内視鏡用スネアが提案されている。(特許文献1)このスネアは、従来の一般的なスネアに設けられているループの先端にワイヤーを折り曲げて形成する突起部を設けることなく、1本のワイヤーの一端を、シース先端部分に設けた先端チップに取り付け、他端を、シース内をスライドするケーブル先端に接続して形成するもので、該ワイヤーがシースから突出するとき、シースの軸に対して片側に偏った形態の円環状に拡開される構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記構成の内視鏡用スネアによると、ワイヤーにより形成されるループは突出初期段階であっても軸方向に長い楕円とはならずにポリープが捕捉しやすい幅を持った円環状を呈することが期待されるが、ワイヤーに特別な加工部等がないためループ形成段階での保形が不安定で、特に、ワイヤー突出の初期段階で該ワイヤーが捩れてループが反転してしまい、ループの位置や向きが変わるなど安定した位置でのループ形状の拡開が困難となる問題が残されていた。
【0007】
そこで、本発明は、内視鏡を介してポリープ等の組織を切除する内視鏡用スネアにおいて、シースからワイヤーを突出させ拡開、閉塞する際にループの大きさに依らずループ形状を円環状に保持するとともに、ワイヤー突出の初期段階であってもワイヤーが捩れることがなく、常に安定した位置や向きでループを円環状に拡縮することのできる内視鏡用スネアの提供を課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内視鏡用スネアは、可撓性のシースと、シース内を摺動する並列した2本のケーブルと、該2本のケーブルの遠位端各々に両端を接続する弾性のワイヤーと、ケーブルを介してワイヤーを操作する手元操作部から構成され、該手元操作部の操作によりシースからのワイヤーの出退及びワイヤーでのループの拡縮が行われる。そして、ループが形成されるワイヤーには、該ループが形成されたときにシース先端近傍となる位置であって、一方側のケーブルとの接続部から延びるワイヤー近位端近傍の領域に、所定の間隔を設けて遠位側及び近位側の2つの折り曲げ部を癖付けして設け、うち、該近位側に癖付けされる折り曲げ部を、形成されるループの外方方向にほぼ直角に曲げて形成してなる。また、前記手元操作部には、並列するケーブルを共にスライドしワイヤーをシースから出退させる第一のスライド手段と、ケーブルとの接続部から延びるワイヤー近位端近傍の領域に、折り曲げ部を設けていない側のワイヤー端部が接続されたケーブルのみをスライドしワイヤーによるループを拡縮する第二のスライド手段を設けて構成する。
【0009】
また、各部は次のように構成あるいは形成されることが好ましい。
・前記ワイヤーに癖付けされた遠位側の折り曲げ部は、第一のスライド手段によりシースから突出されたとき、該ワイヤーの先端部となる位置に設定される。
・前記第一のスライド手段のスライド幅は、前記遠位側と近位側の折り曲げ部の間の長さよりわずかに長く設定される。
・前記ワイヤーは、金属撚り線により形成され、必要に応じ表面にブラスト加工を施す。
・前記ワイヤーは、超弾性合金により形成されても良く、その際の断面は三角形に形成されても良い。
・前記ワイヤーに癖付けされる遠位側の折り曲げ部は、形成されるループの外方に向けた突起として形成される。
・前記手元操作部は、シースを接続する操作部本体と、前記ワイヤー近位端近傍の領域に折り曲げ部を形成した側のワイヤー端部とケーブルを介して接続する前記第一のスライド手段を構成する第一のスライダーと、前記ワイヤー近位端近傍の領域に折り曲げ部を設けない側のワイヤー端部とケーブルを介して接続する第二のスライド手段を構成する第二のスライダーを備え、各々のスライダーは操作部本体を軸として規定の可動域をスライド範囲として設定される。
・前記第一のスライダーは、弾性部材により該スライダーのスライド範囲の遠位側に付勢されてなる。
・前記第一のスライダーまたは操作部本体の近位端のいずれか、及び、第二のスライダーには手指による操作のための操作リングを備える。
【0010】
(作用)
前記手段の内視鏡用スネアによると、シースからワイヤーを突出してループを形成する際、第二のスライド手段によりループを拡開するのに先立ち第一のスライド手段によりワイヤーの2つの折り曲げ部をシースから突出しておくことで、第二のスライド手段により折り曲げ部のない側のワイヤーを突出してループを形成、拡開する段階において、該2つの折り曲げ部がワイヤーの一方側の基端部で該ワイヤーの位置や方向を安定して保持することで、形成される円環形状のループ全体も安定して保形でき、従来のループ形成初期段階で見られるワイヤーの捩れが防止され、安定した円環形状を保持しつつループ径を拡縮することができる。
【0011】
また、第一のスライド手段によるワイヤーの突出先端部を遠位側の折り曲げ部とすることで、該折り曲げ部がシース内に収容されているときの先端部ともなり、収容や突出のためのスライドをスムーズなものとすることができる。また、第一のスライド手段のスライド幅が遠位側と近位側の折り曲げ部の間隔よりわずかに長く設定されることで、形成されるループの基端部(ワイヤーの一方側の突出近位端部)が近位側の折り曲げ部となり、前記の通り基端部(近位端部)で保形されることで形成されるループ形状を保持しやすい。
【0012】
更に、ワイヤーに撚り線や超弾性合金を用いることにより意図しない折り癖を付けることなくループへの形状変形が可能で、また、折り曲げ部を容易に形成することができる。そして、撚り線にブラスト加工を施したり、超弾性合金の断面を三角形としたりすることでポリープ捕捉のさいの滑りを防止した確実な掴持を可能にする。
【0013】
加えて、ワイヤーの遠位側の折り曲げ部を突起として形成することで、該突起部分でのワイヤーの湾曲が抑えられ一層安定したループ形状の保形が期待され、また、単に直角等に曲げた場合に比べ、該部分の両側が広い角度に(より直線的に)開かれるためワイヤーが一層円環状に近いループを形成する。
【0014】
また、第一のスライダーを弾性部材によりスライド範囲の遠位側に付勢することにより、第一のスライダーの遠位側への操作は弾性部材の付勢により自然に成されるため不要となり、近位側への操作は、該第一のスライダーの遠位側に設ける第二のスライダーの操作と一体とすることができ、スライド手段を2つ設けていてもワンハンドでの操作が可能となる。また、所定の位置に操作リングを備えることにより3本あるいは4本の指による安定した操作が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の手段及び作用によると、シースからワイヤーを突出させ拡開、閉塞する際にループの大きさに依らずループ形状を円環状に保持することができるとともに、ワイヤー突出の初期段階であってもワイヤーが捩れることがなく、常に安定した位置でループを拡縮できることで、様々な大きさ、特に小さなポリープに対しても容易で安定した捕捉を可能とする内視鏡用スネアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第一の実施の形態の内視鏡用スネアを示す全体構成図で、最大のループが形成された状態。
【
図2】前記形態のワイヤー及び先端部分の内部構成を示す拡大図。
【
図3】前記形態の手元操作部分の内部構成を示す拡大図。
【
図5】前記形態の初期状態で第一スライド手段を遠位端に配置し、ワイヤーの折り曲げ部までがシースから突出した状態を示す全体構成図。
【
図6】前記ワイヤーの折り曲げ部までが突出した状態のワイヤー部分を示す拡大図。
【
図7】前記形態のシース内にワイヤー全体が収容された状態を示す全体構成図。
【
図8】前記ワイヤーが収容された状態の先端部分の内部構成を示す拡大図。
【
図9】前記形態の第二のスライド手段を中途までスライドして、ワイヤーがループ形成した状態を示す全体構成図。
【
図10】本発明の第二の実施の形態の内視鏡用スネアを示す全体構成図で、シース内にワイヤー全体が収容された状態。
【
図11】前記の形態のワイヤーが最大のループが形成された状態を示す全体構成図。
【
図12】前記形態のワイヤー及び先端部分の内部構成を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参考に詳細に説明する。
図1は本実施の形態の内視鏡用スネアを示す全体構成図で、ワイヤーが最大のループを形成した状態を示しており、
図2はそのワイヤー及び先端部分を、
図3、
図4は手元操作部を示しており、
図3は内部構成を示す正面図、
図4は開口側からの側面図を示している。尚、手元操作部は全体構成が分りやすいように第二のスライド手段を中途までスライドした段階の状態を示しており、弾性部材(スプリング)は隠れ線(点線)で描くところ理解を容易とするため実線で示している。
【0018】
本形態の内視鏡用スネアは、内視鏡の鉗子チャンネルに挿入可能な径及び長さを備えた可撓性を有する長尺なシース1と、
シース1内に配置して該シース1と軸方向に相対してスライドする2本並列に設けられる第一のケーブル21及び第二のケーブル22と、
該第一及び第二のケーブル21、22の各々の先端に接続チップ23、24を介して両端を接続する一連のループを形成するワイヤー3と、
該ワイヤー3のシース1からの出退並びにループの形成及び拡縮の操作を、ケーブル21、22を介して行う手元操作部4により構成する。
【0019】
シース1は、鉗子チャンネルへの挿入やスネアの操作性が考慮され、可撓性であっても比較的硬質で軸方向への延伸性や表面摩擦抵抗の小さな、例えば、ポリプロピレンやフッ素系樹脂のような樹脂により形成される外筒チューブで、サイズは内視鏡の鉗子チャンネルに適合したものが選択されれば良いか、本例においては、一般的な鉗子チャンネルに無理なく使用できる外径2.6mm、長さ1600mm(有効長)のフッ素樹脂チューブが用いられた。そして、シース1の近位端は手元操作部4の先端にシース基42により接続されてなる。
【0020】
ケーブル21、22はシース1内に2本並列して設けられており、鉗子チャンネル内での操作性を考慮し適度な可撓性と剛性を併せ持ち、軸方向への延伸性が小さく、更に、手元操作による動作を確実に先端にまで伝えることのできる追従性を備えたものとして、ステンレス等の金属線を複数撚り合せて形成した金属撚線より形成される。そのサイズは、前記シース1に適合して該シース内腔を2本が無理なく摺動する外径(本例においては、0.6mm)に形成される。
【0021】
そして、それぞれの遠位端にワイヤー端部31、32が接続されるが、後記するワイヤーの折り曲げ部33、34を有する側の端部に接続される第一のケーブル21、及び、折り曲げ部33、34の無い側の端部に接続される第二のケーブル22がそれぞれの接続チップ23、24を介して接続される。一方、近位端は、第一のケーブル21は後記する手元操作部4の第一のスライド手段となる第一のスライダー5に、第二のケーブル22は第二のスライド手段となる第二のスライダー6に接続するが、それぞれの基側部分にはシース1やワイヤー3の座屈を防止し、また、スライド操作をスムーズにするための第一及び第二のケーブル21、22を被覆する通電性の補強パイプ25、26を設け、その近位端を第一及び第二のスライダー5、6に設けるケーブル接続部71、81に接続している。
【0022】
ワイヤー3は、前記ケーブル21、22より細径のステンレス等の金属細線を複数撚り合せた撚り線、あるいは、自然状態で展開されたループ形状を採るように記憶付けされた、例えばNi―Ti合金等の超弾性合金など、細径なシース1内に収容されても経時変化による潰れや折り癖などの変形が生じ難い通電可能な金属ワイヤーよりなり、シース1から突出すると拡開して自然に円環状に広がるものとして形成される。また、必要に応じて撚り線で形成されるワイヤー3にブラスト加工を施したり、超弾性合金で形成されるワイヤーの断面を三角形としたりすると、ポリープを捕捉したさいに滑り難く保持しやすいものとすることができる。尚、本例においては、より形状変化を生じ難い0.1mmのステンレス細線を7本撚って形成した金属撚線が用いられた。
【0023】
また、ワイヤー3には、前記第一のケーブル21に接続される側のワイヤー端部31から所定の距離を設けた位置、即ち、第一のケーブル21が遠位端にスライドされているときにシース1から僅かに突出される位置に、該ワイヤー3をほぼ直角に折り曲げた第二の折り曲げ部34を、該第二の折り曲げ部34の遠位側に所定の間隔(本例では7mm)を設けた位置、即ち、前記第一のケーブル21が遠位端にスライドされているとき、シース1から突出された状態(
図5、6参照)でワイヤー3の先端部となる位置に、ループの外方に突出する尖塔状の突起(第一の折り曲げ部)33を癖付けして形成する。
【0024】
そして、前記したとおり第一及び第二の折り曲げ部33、34を設けた側のワイヤー端部31を第一のスライド手段に延設された第一のケーブル21に接続チップ23を介して接続し、第一及び第二の折り曲げ部33、34を設けない側のワイヤー端部32を第二のスライド手段に延設された第二のケーブル22に接続チップ24を介して接続して形成される。
【0025】
手元操作部4は、遠位端にシース1を接続するシース基42と近位端に把持リング44を備える端部キャップ43を設けた操作部本体41と、該操作部本体41を軸として前後にスライドする、第一のケーブル21(補強パイプ25)が接続される第一のスライド手段となる第一のスライダー5と、第一のスライダー5より遠位側に配置される第二のケーブル22(補強パイプ26)と接続される第二のスライド手段となる第二のスライダー6により構成される。
【0026】
操作部本体41は、ワイヤー3がシース1から突出する長をカバーできるスライド長を備えた筒状体で、前記の通り遠位側にシース基42を、近位側に後記するスプリング52をホールドする端部キャップ43とスライド手段をスライド操作するさいに主に母指を入れての操作把持部となる把持リング43とをそれぞれ設けて構成する。そして、本例においては、筒状体の中間部(シース基42及び端部キャップ43を除く部分)を四角形筒状のスライド域として形成し、そのひとつの面を開口面としてワイヤー等の内部構造部との連結面とした。また、スライド域の内面の所定の位置に第一のスライダー5の遠位側へのスライドを規制するストッパー45を内面への突起として形成している。尚、開口面の構成は、スライド手段の構造等により操作部本体に相対して備えるスリットなどとしても良い。
【0027】
第一のスライダー5は、操作部本体41のスライド域の近位側に設けられ、前記ワイヤー3の第一及び第二の折り曲げ部33、34部分までをシース1から出退させる長さをスライド範囲として操作部本体4を軸に前後に可動(本例ではスライド幅10mm)する。そして、第一のスライダー5が前記ストッパー45に当接しスライド範囲の遠位側に位置するとき、前記ワイヤー3の第一及び第二の折り曲げ部33、34までがシース1から突出しており、近位側に位置するとき該折り曲げ部33、34を含むワイヤー3全体がシース1内に収容されている。尚、本形態における第一のスライダー5には、操作部本体4内部で第一のケーブル21(補強バイプ25)の近位端部と接続するための金属製の接続ロッド7を側面から挿着して設けており、そのケーブル接続部71で第一のケーブル21とロー付け等により接続固定される。
【0028】
また、第一のスライダー5の近位側には、前記操作部本体4の近位端となる端部キャップ43が設けられており、該端部キャップ43内部には第一のスライダー5を遠位側に付勢するスプリング52が設けられ、自然状態(スプリングが伸びた状態)で第一のスライダー5をそのスライド範囲の遠位側に保持して、前記ワイヤー3の折り曲げ部33、34部分をシース1から突出した状態に保持している。このように、スプリング52により第一のスライダー5を遠位側に付勢しておくことにより、第一のスライダー5に把持部を設けることなく遠位方向へのスライドが可能で、また、第二のスライダー6の近位側へのスライドを利用して、第一のスライダー5を、スプリング52を圧縮しながら近位側に同時にスライドすることもできる。これにより、第一及び第二のスライダー5、6を別々に2つ設けてもワンハンドでの操作が可能となっている。
【0029】
第二のスライダー6は、操作部本体41スライド域の第一のスライダー5の遠位側に設けられ、ワイヤー3のループ形成部全体がシース1から出退する範囲をスライド範囲として操作部本体41を軸に前後に可動(本例ではスライド幅100mm)する。そして、第二のスライダー6が第一のスライダー5と共にスプリング52が圧縮されたスライド範囲の近位側にあるとき、ワイヤー3全体がシース1内に収容されており、この状態から第二のスライダー6を遠位側にスライドしていくと第二のケーブル22を介してワイヤー3の折り曲げ部33、34を設けていない側がシース1から突出してループが拡開される。尚、本形態の第二のスライダー6には、操作部本体4内部で第二のケーブル22(補強パイプ26)の近位端部と接続するため、及び、先端のワイヤー3へ通電するための高周波発生装置の端子接続部とするための通電性金属の接続ロット8を側面から挿着して設け、ケーブル接続部81でロー付け等により第二のケーブル22と接続固定される。一方、該接続ロット8の第二のスライダー6側面から外部への突出部が高周波発生装置の端子との接続部となる。
【0030】
また、第二のスライダー6には、翼状に相対するスライドリング61を設け、スライド操作のさいに主に示指と中指あるいは中指と薬指を入れる操作把持部としている。
【0031】
次に、本実施の形態の内視鏡用スネアの操作及び動作について説明する。
図5は、本形態のスネア操作前の初期状態であって、シースからワイヤーの折り曲げ部までが突出されたループ形成前の状態を示しており、
図6がその状態での突出されたワイヤー部分の拡大図を示している。
操作前の初期状態の手元操作部4は、第一のスライダー5がスプリング52の付勢により該スライダー5のスライド範囲遠位側に押圧された状態で位置され、第二のスライダー6が該スライダー6のスライド範囲の近位側であって、第一のスライダー5によるスライド分だけ近位端部から遠位側に寄った位置に、本例においては第一及び第二のスライダー5、6が当接した状態で位置される。
【0032】
このとき、スネア先端側のワイヤー3は、第一及び第二のスライダー5、6の遠位側へのスライド分だけシース1から突出されることになり、前記した通り、このスライド分は第一及び第二の折り曲げ部33、34までをシース1から突出する長さであることから、第二の折り曲げ部34までの長さがシース1から突出されることになる。そして、第二のスライダー6も第一のスライダー5と同じ長さ遠位側にスライドした位置にあることから、ワイヤー3の折り曲げ部を設けない側も同じ長さ同時に突出される。そして、このとき第一の折り曲げ部(突起)33がワイヤー3の突出先端部となるように設定されている。
【0033】
図7は、本形態のスネアのワイヤー全体がシース内に収容された状態を示し、
図8は、その先端部分の内部構造の拡大図を示している。
前記初期状態から第一及び第二のスライダー5、6をスライド範囲の近位端にスライドすることで前記突出していたワイヤー3全体がシース1内に収容される。初期状態からの操作は、操作部本体41の近位端に設ける把持リング43と第二のスライダー6に設けるスライドリング61を手指で把持し、相対的に近づけスプリング52を圧縮してスライドする。このとき、第一及び第二のスライダー5、6は同じ長さが後方にスライドされワイヤー3の両端も同じだけ後退するため、この状態でも第一の折り曲げ部33がワイヤー3の先端部となりシース1内に収容しやすい形態となっている。
そして、このワイヤー3をシース1内に収容した状態を維持しつつ内視鏡の鉗子孔に挿入される。
【0034】
図9は、前記形態の第二のスライド手段をスライド範囲の中途までスライドして、ワイヤーがループ形成した状態を示している。
前記ワイヤー3の全てがシース1内に収容された状態からワイヤー3を突出させる際は、前記把持リング44及びスライドリング61を手指で把持し、第二のスライダー6を操作部本体4の遠位側にスライドするが、第一のスライダー5が該スライド範囲の遠位端となるまではワイヤー3は両側が同時の突出し、折り曲げ部33、34までが突出した状態(
図5、6参照)となり、その後は、第二のスライダー6のみがスライドし、ワイヤー3の折り曲げ部33、34を設けていない側のみが突出されて円環状のループが形成され、該スライドの長さにより形成されるループ径が拡縮される。そして、第二のスライダー6がスライド範囲の遠位端に位置されたとき最大のループ(
図1、
図2参照)が形成される。
【0035】
次に、本形態のスネアの使用方法について手順に従い説明する。
1.高周波発生装置から延設される電極を第二のスライダー6に設けた接続ロッド8の端子接続部に接続する。
2.把持リング43を母指で、スライドリング61を示指と中指あるいは中指と薬指で把持し、スプリング52の弾性力に抗して圧縮し、第一及び第二スライダー5、6を操作本体部41のスライド域の近位端に位置させ、ワイヤー3をシース1内に完全に収容した状態でシース1を内視鏡の鉗子孔に挿入する。
3.シース1の先端部分を体内に挿入したら、把持部の力を抜きスプリング52を自然状態とすると、第一のスライダー5が自然にスライド範囲の遠位側に移動し、ワイヤー3がシース1から折り曲げ部33、34までを突出した状態となる。
4.この状態から第二のスライダー6をスライド範囲の遠位側にスライドして行き、切除したいポリープの大きさに適合するループまで拡開する。
5.ポリープをループ内に捕捉し、高周波を通電しながら、第二のスライダー6をスライド範囲の近位側にスライドしワイヤー3のループを収縮させてポリープを切除する。
【0036】
図10から
図12は本発明の第二の実施の形態の内視鏡用スネアを示し、
図10は、ワイヤー全体がシース内に収容されている状態、
図11は、ワイヤーが最大のループを形成した状態の全体構成を示しており、
図12は、ループ形成されたワイヤー部分の拡大図を示している。
尚、本形態のスネアは、基本構成及び各部の機能は前述の第一の実施の形態のスネアと同様であるため、前記形態との相違点以外は簡略に説明している。
【0037】
本形態のスネアは第一の実施の形態と同様に、シース100、シース内に2本並列に設ける第一及び第二のケーブル210、220、該ケーブル210、220の遠位端に接続チップ230、240を介して両端部310、320を接続するワイヤー300、及び、該ケーブル210、220を介してワイヤー300のシース100からの出退及びループ形成の操作をする手元操作部400より構成される。シース100及びケーブル210、220は前述の形態と同様なものにより形成されており、ワイヤー300の第一の折り曲げ部330の形状、及び、手元操作部400のみが異なる形態を示している。
【0038】
本例のワイヤー300の折り曲げ部330、340は、該折り曲げ部330、340を設定する位置やシース100からの出退、ループ形成の機能などは第一の実施の形態と同様とするが、第一の折り曲げ部330が前述の形態の突起33ではなく、第一及び第二の折り曲げ部330、340共にワイヤー300をほぼ直角に折り曲げて形成され、該第一及び第二の折り曲げ部330、340は形成されるループに対して第二の折り曲げ部340は外側に向けて、第一の折り曲げ部330は内側に向けて曲げられ癖付けされている。尚、本折り曲げ部330、340の構造は、癖付けによる円環状のループ形状保持力が突起33を形成したときに比較して弱くなることが予想され、形成される円環(ループ)の縦横比が縦長となる可能性はあるが、第二の折り曲げ部340の形成が容易となる利点がある。
【0039】
本例の手元操作部400は、長尺筒状でスライダー500、600によるスライド域を形成する操作部本体410と、該操作部本体410の遠位側に設けるシース1を接続するシース基420と、近位側に設けるスライド近位端部となる端部キャップ430、及び、第一及び第二のスライダー500、600とにより構成され、前記第一の形態と同様にシース100やケーブル210、220と接続してなるが、前形態の様に第二のスライダー6操作により第一のスライダー5を連動して作動するものではなく、第一のスライダー500及び第二のスライダー600を独立してスライド操作するもので、それぞれのスライダー500、600にスライド操作の把持部となる、主に示指と中指あるいは中指と薬指を挿入して用いる翼状に形成する第一及び第二のスライドリング510、610を設けて構成した。
【0040】
そして、第一のスライダー500のスライド範囲を、ワイヤー300がシース100内に収容された状態(
図10参照)から、折り曲げ部330、340までがシース100から突出する状態となる長さに設定し、そのスライド範囲の近位側を操作部本体410の近位端となる端部キャップ430に当接する位置とし、遠位側となる位置には第一のスライダー500のスライドを止めるストッパー450を設けて形成した。
【0041】
第二のスライダー600は第一のスライダー500の遠位側に設定し、そのスライド範囲は、近位側を第一のスライダー500が近位端にあるときに該第一のスライダー500に当接する位置(
図10参照)とし、遠位側を手元操作部本体410の遠位端となるシース基420に当接する位置(
図11参照)として設定した。
【0042】
本形態の内視鏡用スネアは、第一及び第二のスライダー500、600が操作部本体410の近位端側に位置されるとき、ワイヤー300はシース100内に全体が収納されており、第一のスライダー500の操作によりスライド範囲の遠位側にスライドされるとき、第二のスライダー600も同様の長さ前方にスライドされ、第一スライダー500のスライド範囲の遠位端にストッパー440で止まったとき、ワイヤー100の第二の折り曲げ部340までがシース100から突出される。その際、第一の折り曲げ部330がシース100の先端部となるように設定されている。
【0043】
前記折り曲げ部330、340部分のみが突出した状態から、第一のスライダー500を遠位側に保持した状態で、第二のスライダー600を遠位側にスライドすると、該ワイヤー300の折り曲げ部330、340を設けない側のワイヤー300が突出され、第二のスライダー600のスライド範囲で、該スライドの長さに応じた大きさのループが形成される。
【0044】
本形態のスネアは、各々のスライダー500、600にスライド操作のためのスライドリング510、610を設けており、それぞれをスライド操作する際に該スライドリング510、610への手指の入れ替えが必要となることで、第一の実施の形態に比較すると操作性が若干劣りワンハンドでの操作が困難となるが、前述の形態のようにスプリング52を使用しないなど器具構成を簡易なものとすることができる。尚、本形態の使用方法の手順はスライド手段のスライド方法を除き前述の形態と同様に実施されれば良い。
【符号の説明】
【0045】
1.100. シース
21.210. 第一のケーブル
22.220. 第二のケーブル
23.24.230.240. 接続チップ
25.26. 補強パイプ
3.300. ワイヤー
31.32.310.320. (ワイヤー)端部
33.330. 第一の折り曲げ部(突起)
34.340. 第二の折り曲げ部
4.400. 手元操作部
41.410. 操作部本体
42.420. シース基
43.430. 端部キャップ
44. 把持リング
45.450. ストッパー
5.500. 第一のスライダー
510. 第一のスライドリング
52. スプリング
6.600. 第二のスライダー
61.610.(第二の)スライドリング
7.8. 接続ロット
71.81. ケーブル接続部