(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】放射線分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/2252 20180101AFI20220111BHJP
【FI】
G01N23/2252
(21)【出願番号】P 2017143653
(22)【出願日】2017-07-25
【審査請求日】2020-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】中山 哲
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓一
(72)【発明者】
【氏名】永田 篤士
(72)【発明者】
【氏名】茅根 一夫
【審査官】佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-203245(JP,A)
【文献】特開2011-039053(JP,A)
【文献】特開2017-044557(JP,A)
【文献】国際公開第2015/181961(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0027748(US,A1)
【文献】米国特許第05398273(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC
G01N 23/00-G01N 23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体に第1放射線を照射する励起源部と、
前記第1放射線が照射された前記物体から発生する第2放射線を検出する3以上の放射線検出器を備える放射線検出部と、
前記物体と前記放射線検出部との間に配置され、前記第2放射線を集束させる放射線集束部と、
前記放射線集束部と前記放射線検出部との相対的な位置関係を
、少なくとも前記放射線検出器の配置面と平行な面内において可変にする位置可変部と、
記憶部に記憶された情報であって前記放射線集束部を出射する前記第2放射線の強度分布を示す第1情報と前記放射線検出器のそれぞれが前記第2放射線を検出した計数に基づく分布を示す第2情報とに基づいて、前記位置可変部に
、前記配置面と平行な面内における前記位置関係を変化させる制御部と、
を備える放射線分析装置。
【請求項2】
物体に第1放射線を照射する励起源部と、
前記第1放射線が照射された前記物体から発生する第2放射線を検出する3以上の放射線検出器を備える放射線検出部と、
前記物体と前記放射線検出部との間に配置され、前記第2放射線を集束させる放射線集束部と、
前記放射線集束部と前記放射線検出部との相対的な位置関係を可変にする位置可変部と、
記憶部に記憶された情報であって前記放射線集束部を出射する前記第2放射線の強度分布を示す第1情報と前記放射線検出器のそれぞれが前記第2放射線を検出した計数に基づく分布を示す第2情報とに基づいて、前記位置可変部に前記位置関係を変化させる制御部と、
を備え、
前記第1情報は、ユーザーにより補正された強度分布を示す情報である、
放射線分析装置。
【請求項3】
物体に第1放射線を照射する励起源部と、
前記第1放射線が照射された前記物体から発生する第2放射線を検出する3以上の放射線検出器を備える放射線検出部と、
前記物体と前記放射線検出部との間に配置され、前記第2放射線を集束させる放射線集束部と、
前記放射線集束部と前記放射線検出部との相対的な位置関係を可変にする位置可変部と、
記憶部に記憶された情報であって前記放射線集束部を出射する前記第2放射線の強度分布を示す第1情報と前記放射線検出器のそれぞれが前記第2放射線を検出した計数に基づく分布を示す第2情報とに基づいて、前記位置可変部に前記位置関係を変化させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記放射線検出器のそれぞれが前記第2放射線を単位時間あたりに検出した計数率を算出し、算出した前記放射線検出器毎の前記計数率の分布を、前記第2情報として算出する、
放射線分析装置。
【請求項4】
物体に第1放射線を照射する励起源部と、
前記第1放射線が照射された前記物体から発生する第2放射線を検出する3以上の放射線検出器を備える放射線検出部と、
前記物体と前記放射線検出部との間に配置され、前記第2放射線を集束させる放射線集束部と、
前記放射線集束部と前記放射線検出部との相対的な位置関係を可変にする位置可変部と、
記憶部に記憶された情報であって前記放射線集束部を出射する前記第2放射線の強度分布を示す第1情報と前記放射線検出器のそれぞれが前記第2放射線を検出した計数に基づく分布を示す第2情報とに基づいて、前記位置可変部に前記位置関係を変化させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1情報が示す前記強度分布を表す関数の形状と、前記第2情報が示す分布を表す関数の形状とに基づいて、前記放射線検出器が配置された面に直交する方向における前記位置関係を前記位置可変部に変化させる、
放射線分析装置。
【請求項5】
前記第1情報は、前記放射線集束部の焦点の強度分布を示す情報である、
請求項1
から4のうちいずれか一項に記載の放射線分析装置。
【請求項6】
前記第1情報は、前記放射線検出器のそれぞれの前記第2放射線を検出する検出効率が高くなる強度分布を示す情報である、
請求項1から
5のうちいずれか一項に記載の放射線分析装置。
【請求項7】
前記第1情報は、前記放射線検出器のそれぞれの前記第2放射線を検出する検出効率が最も高くなる強度分布を示す情報である、
請求項
6に記載の放射線分析装置。
【請求項8】
前記放射線集束部は、キャピラリーである、
請求項1から
7のうちいずれか一項に記載の放射線分析装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1情報が示す前記強度分布のピークと、前記第2情報が示す分布のピークとに基づいて、前記放射線検出器が配置された面に沿った方向における前記位置関係を前記位置可変部に変化させる、
請求項1から8のうちいずれか一項に記載の放射線分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射線分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体に放射線を照射し、物体の性質や構造を分析する技術の研究や開発が行われている。
【0003】
これに関し、ガラス毛管束型からなるX線用レンズとX線を検出する複数の検出器を備え、X線の検出効率を向上させた微量熱量計型エネルギー分散型X線分光計が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような微量熱量計型エネルギー分散型X線分光計では、X線用レンズと検出器との相対的な位置関係を変化させる場合にユーザーが手動で当該位置関係を変化させなければならず、当該位置関係を変化させる操作に熟練したユーザーでなければ、当該位置関係をユーザーが所望する位置関係に変化させることが困難な場合があった。その結果、当該微量熱量計型エネルギー分散型X線分光計では、複数の検出器によるX線の検出効率を更に向上させることが困難な場合があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、放射線の検出効率を容易に向上させることができる放射線分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、物体に第1放射線を照射する励起源部と、前記第1放射線が照射された前記物体から発生する第2放射線を検出する3以上の放射線検出器を備える放射線検出部と、前記物体と前記放射線検出部との間に配置され、前記第2放射線を集束させる放射線集束部と、前記放射線集束部と前記放射線検出部との相対的な位置関係を可変にする位置可変部と、記憶部に記憶された前記放射線集束部の焦点の強度分布を示す第1情報と前記放射線検出器のそれぞれが前記第2放射線を検出した計数に基づく分布を示す第2情報とに基づいて、前記位置可変部に前記位置関係を変化させる制御部と、を備える放射線分析装置である。
【0008】
本発明の他の態様は、上記の放射線分析装置において、前記第1情報は、前記放射線集束部の焦点の強度分布を示す情報である、構成が用いられてもよい。
【0009】
本発明の他の態様は、上記の放射線分析装置において、前記第1情報は、ユーザーにより補正された強度分布を示す情報である、構成が用いられてもよい。
【0010】
本発明の他の態様は、上記の放射線分析装置において、前記第1情報は、前記放射線検出器のそれぞれの前記第2放射線を検出する検出効率が高くなる強度分布を示す情報である、構成が用いられてもよい。
【0011】
本発明の他の態様は、上記の放射線分析装置において、前記第1情報は、前記放射線検出器のそれぞれの前記第2放射線を検出する検出効率が最も高くなる強度分布を示す情報である、構成が用いられてもよい。
【0012】
本発明の他の態様は、上記の放射線分析装置において、前記放射線集束部は、キャピラリーである、構成が用いられてもよい。
【0013】
本発明の他の態様は、上記の放射線分析装置において、前記制御部は、前記放射線検出器のそれぞれが前記第2放射線を単位時間あたりに検出した計数率を算出し、算出した前記放射線検出器毎の前記計数率の分布を、前記第2情報として算出する、構成が用いられてもよい。
【0014】
本発明の他の態様は、上記の放射線分析装置において、前記制御部は、前記第1情報が示す前記強度分布を表す関数の形状と、前記第2情報が示す分布を表す関数の形状とに基づいて、前記放射線検出器が配置された面に直交する方向における前記位置関係を前記位置可変部に変化させる、構成が用いられてもよい。
本発明の他の態様は、上記の放射線分析装置において、前記制御部は、前記第1情報が示す前記強度分布のピークと、前記第2情報が示す分布のピークとに基づいて、前記放射線検出器が配置された面に沿った方向における前記位置関係を前記位置可変部に変化させる、構成が用いられてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、放射線の検出効率を容易に向上させることができる放射線分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る放射線分析装置1の構成の一例を示す図である。
【
図2】3以上の放射線検出器Dが配置された配置面M1の一例を示す上面図である。
【
図3】第1制御装置30及び第2制御装置40の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】制御装置20が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】放射線検出部12と放射線集束部13との相対的な位置関係が初期位置関係と一致している場合における放射線検出部12と放射線集束部13との一例を示す左側面図である。
【
図6】第1情報が示す強度分布の一例を示す図である。
【
図8】配置面M1上のある位置XPと第1情報が示す強度分布のピークの位置とが一致するように、配置面M1上における21の放射線検出器Dの配置と第1情報が示す強度分布とを配置マッチングさせた後の第1情報が示す強度分布の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
<放射線分析装置の構成>
まず、放射線分析装置1の構成について説明する。
図1は、実施形態に係る放射線分析装置1の構成の一例を示す図である。
放射線分析装置1は、検出装置10と、制御装置20を備える。
【0019】
検出装置10は、励起源部11と、放射線検出部12と、放射線集束部13と、位置可変部14と、冷却装置16と、筐体17を備える。
【0020】
励起源部11は、物体Wに第1放射線R1を照射する。励起源部11は、例えば、電子銃である。この場合、第1放射線R1は、電子線である。なお、励起源部11は、電子銃に代えて、物体WにX線やイオンビーム等の電子線と異なる放射線を第1放射線R1として照射する装置であってもよい。
【0021】
放射線検出部12は、3以上の放射線検出器Dを備える。
【0022】
放射線検出器Dは、第1放射線R1が照射された物体Wから発生する蛍光X線等の第2放射線R2を検出する。放射線検出器Dは、例えば、超伝導転移端センサー(TES、Transition Edge Sensor)を有する検出器である。以下では、一例として、第2放射線R2が当該物体Wから発生する蛍光X線等の特性X線である場合について説明する。すなわち、放射線分析装置1は、この一例において、超伝導X線分析装置である。なお、第2放射線R2は、蛍光X線に代えて、他の放射線であってもよい。また、放射線検出器Dは、超伝導転移端センサーを有する検出器に代えて、STJ(Superconducting Tunnel Junction)型センサー、シリコン半導体検出器、X線CCD(Charge Coupled Device)カメラ、フラットパネル検出器等の第2放射線R2を検出可能な検出器であれば如何なる検出器であってもよい。
なお、放射線検出部12は、3以上の放射線検出器Dのそれぞれと一体に構成されている構成であってもよい。この場合、放射線検出部12のうちの3以上の超伝導転移端センサーは、放射線検出部12が有する部位のうちの放射線を検出する部位を構成しており、当該部位は、後述する配置面M1に1つ設置される。
【0023】
ここで、超伝導転移端センサーは、X線が入射した際に生じる抵抗変化によって第2放射線R2を検出する。超伝導転移端センサーの受光部は、X線を受光する吸収体と、抵抗値の変化する超伝導体とを備える。X線が入射する前の超伝導体の温度は、ほぼ臨界温度に保持される。このため、当該超伝導体は、超伝導状態と常電導状態との間の中間状態に保持されている。中間状態の超伝導体の抵抗値は、僅かな温度変化が起こるだけでも急激に変化する。超伝導転移端センサーは、当該抵抗値の変化によってX線の入射を検出する。具体的には、超伝導転移端センサーの吸収体にX線が入射した場合、当該吸収体の温度が上昇し、当該吸収体の温度上昇に伴って当該超伝導体の抵抗値が変化する。この際、当該抵抗値が、当該吸収体に入射したX線のエネルギー(すなわち、上昇した当該吸収体の温度)に比例して急激に変化する(例えば、温度変化が数mKの場合における抵抗変化が0.1Ω等)。この性質を利用し、超伝導転移端センサーは、当該抵抗変化の大きさによって第2放射線R2のエネルギーを検出する。なお、入射するX線のエネルギーが低い場合、超伝導転移端センサーは、当該吸収体へのX線の入射による当該超伝導体の温度変化を用いず、当該超伝導体へのX線の入射による当該超伝導体の温度変化を用いて第2放射線R2のエネルギーを検出する場合もある。このようにして第2放射線R2のエネルギーを検出した場合、放射線検出器Dは、検出したエネルギーに比例した大きさの電気信号を、第2放射線R2を検出したことを示す検出情報として制御装置20に出力する。なお、3以上の放射線検出器Dの一部又は全部は、互いに種類が異なる構成であってもよく、互いに形状が異なる構成であってもよく、互いに大きさが異なる構成であってもよい。また、検出情報には、第2放射線R2を検出したことを示す電気信号に加えて、他の情報を示す信号が含まれる構成であってもよい。例えば、放射線検出器Dは、第2放射線R2を検出したことを示す情報に基づく値を算出する算出部を備え、当該算出部により算出された当該値を含む検出情報を制御装置20に出力する構成であってもよい。当該値は、例えば、当該電気信号のピーク値、第2放射線R2を検出した計数等である。また、ある放射線検出器Dから出力された検出情報には、当該放射線検出器Dの位置を示す情報、当該放射線検出器Dによる検出における検出条件を示す情報等が含まれてもよい。また、当該電気信号は、アナログ信号であってもよく、デジタル信号であってもよい。また、当該電気信号がアナログ信号である場合、放射線検出器Dは、A/D(Analog/Digital)コンバーターを備える構成であってもよい。
【0024】
また、放射線検出部12は、3以上の放射線検出器Dのそれぞれを配置する配置面M1を有する。すなわち、3以上の放射線検出器Dのそれぞれは、配置面M1内に配置されている。配置面M1は、平面であってもよく、曲面であってもよく、段差を有する面であってもよく、他の形状の面であってもよい。以下では、一例として、配置面M1が平面である場合について説明する。
【0025】
3以上の放射線検出器Dは、配置面M1に直交する方向に沿って3以上の放射線検出器Dを見た場合において、例えば、配置面M1の中心から放射状に配置面M1内に配置されている。ここで、
図2を参照し、配置面M1における放射線検出器Dの配置例について説明する。
図2は、3以上の放射線検出器Dが配置された配置面M1の一例を示す上面図である。なお、
図2では、3以上の放射線検出器Dそれぞれの形状は、図を簡略化するため、四角形によって表されているが、四角形に代えて、他の形状であってもよい。
【0026】
図2に示した例では、配置面M1に配置された放射線検出器Dの数は、21である。なお、配置面M1に配置された放射線検出器Dの数は、3以上であれば21より少なくてもよく、21より多くてもよい。また、当該例では、配置面M1の中心の位置には、21の放射線検出器Dのうちの1つが配置されている。そして、当該位置を中心とする第1半径の第1円C1上に等間隔に8つの放射線検出器Dが配置されている。また、当該位置を中心とする第2半径の第2円C2上に等間隔に12の放射線検出器Dが配置されている。ここで、第2半径は、第1半径よりも大きい半径である。以下では、一例として、21の放射線検出器Dが、
図2における配置であって配置面M1内における放射線検出器Dの配置と同じように配置面M1内に配置されている場合について説明する。なお、
図2における配置であって配置面M1内における放射線検出器Dの配置は、あくまでも一例に過ぎず、21の放射線検出器Dは、例えば、配置面M1内にマトリクス状に配置される構成であってもよく、配置面M1内に他の形状となるように配置される構成であってもよい。ただし、配置面M1内に配置された放射線検出器D同士の間隔は、放射線検出部12による第2放射線R2の検出効率が低下してしまうことを抑制するため、小さい方が望ましい。このため、
図2に示した例では、各放射線検出器Dの大きさは、配置面M1の中心の位置からの距離に応じて決められており、当該距離が長くなるほど大きくなっている。なお、各放射線検出器Dの大きさは、互いに同じであってもよい。
【0027】
図1に戻る。放射線検出部12が超伝導転移端センサーやSTJ型センサーの場合、放射線検出部12は、サーマルシールドSDの内部に配置される。シールドカバーの1つであるサーマルシールドSDは、サーマルシールドSDの外部からの輻射熱を多層の断熱材や真空層等で遮蔽し、サーマルシールドSDの内部の温度が上昇することを抑制する。すなわち、サーマルシールドSDは、放射線検出部12の温度が当該輻射熱によって上昇してしまうことを抑制する。これにより、放射線検出部12が有する超伝導転移端センサーの超伝導状態は、超伝導転移端センサーにX線が入射するまで保持される。
なお、放射線検出部12がシリコン半導体検出器、X線CCD等の場合、シールドカバー(この一例において、サーマルシールドSD)の内部を真空にすることや、窒素ガス雰囲気にすること等によって、サーマルシールドSDは、放射線検出部12の動作環境を保持する構成になっている。
【0028】
放射線集束部13は、第1放射線R1が照射された物体から発生した第2放射線R2を放射線検出部12に集束(集光)させる光学部材である。より具体的には、放射線集束部13は、第2放射線R2を所定の焦点距離において所定の焦点径となるように集束させる。放射線集束部13は、例えば、毛管束型等のポリキャピラリーである。なお、放射線集束部13は、ポリキャピラリーに代えて、レンズ等の第2放射線R2を放射線検出部12に集束(集光)させる他の光学部材であってもよい。放射線集束部13は、励起源部11により第1放射線R1が照射される物体と放射線検出部12との間に配置される。
【0029】
冷却装置16は、サーマルシールドSDと接続しており、サーマルシールドSD内部を冷却する。これにより、冷却装置16は、サーマルシールドSDの内部に配置された放射線検出部12が有する超伝導転移端センサーの状態を超伝導状態にすることができる。
【0030】
位置可変部14は、制御装置20から取得する制御信号に基づいて、放射線検出部12と放射線集束部13との相対的な位置関係を変化させる。
【0031】
位置可変部14は、冷却装置16の外側に設けられ、冷却装置16の位置を手動や電動で可変させることにより放射線検出部12の位置が変えることにより、放射線集束部13と放射線検出部12との相対的な位置関係を変化させることができる。
なお、位置可変部14は、例えば、冷却装置16内に設けられ、サーマルシールドSDの内部に設置された放射線検出部12の位置を可変させてもよい。また、位置可変部14は、一部又は全部を放射線集束部13側に設けて、放射線集束部13を放射線検出部12に対して相対的に移動させることが可能な構成でもよい。また、位置可変部14は、放射線集束部13と放射線検出部12の両方を移動させることが可能であり、放射線集束部13と放射線検出部12との相対的な位置関係を変化させることが可能な構成でもよい。
また、放射線集束部13と放射線検出部12との相対的な位置関係をXYZ軸の3軸、又はチルトや回転を含む4軸や5軸に変化させることが望ましい。
【0032】
筐体17は、検出装置10の筐体である。この一例において、筐体17の内部には、励起源部11から第1放射線R1が照射される照射口と、励起源部11から第1放射線R1が照射される物体と、放射線集束部13と、位置可変部14の一部または全部と、サーマルシールドSDの内部に配置された放射線検出部12とが配置される。
図1に示した例では、筐体17の内部には、第1放射線R1が照射される物体として物体Wが配置されている。物体Wは、ユーザーが性質や構造を分析したい所望の物体の試料であれば如何なる物体であってもよい。なお、筐体17の内部には、これらに加えて、位置可変部14が配置される構成であってもよい。筐体17の内部の状態は、図示しない真空ポンプによって真空状態にされる構成であってもよい。
【0033】
検出装置10は、ケーブルによって制御装置20と通信可能に接続されている。これにより、検出装置10が備える励起源部11、放射線検出部12、冷却装置16のそれぞれは、制御装置20から取得される制御信号に基づく動作を行う。なお、ケーブルを介した有線通信は、例えば、イーサネット(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)等の規格によって行われる。また、検出装置10は、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格により行われる無線通信によって制御装置20と接続される構成であってもよい。
【0034】
制御装置20は、第1制御装置30と、第2制御装置40を備える。この一例では、制御装置20は、第1制御装置30と、第1制御装置30と別体の第2制御装置40とによって構成されているが、これに代えて、第2制御装置40と一体の第1制御装置30、又は第1制御装置30と一体の第2制御装置40によって構成されてもよい。この場合、制御装置20は、第1制御装置30が有する機能と、第2制御装置40が有する機能を有する。
【0035】
第1制御装置30は、例えば、デスクトップPC(Personal Computer)やノートPC、ワークステーション等の情報処理機能を有し、単一又は複数の装置によって構成される。第1制御装置30は、励起源部11に第1放射線R1を照射させる。
【0036】
第2制御装置40は、例えば、デスクトップPCやノートPC、ワークステーション等の情報処理機能を有し、単一又は複数の装置によって構成される。
【0037】
第2制御装置40は、放射線検出部12が備える各放射線検出器Dから前述の検出情報を取得する。第2制御装置40は、取得した検出情報に基づいて、第1放射線R1が照射された物体の性質や構造を分析する。なお、冷却装置16は、図示しない冷却制御装置によってサーマルシールドSDの内部を冷却させる。
【0038】
<放射線分析装置の概要>
ここで、放射線分析装置1の概要について説明する。
【0039】
放射線分析装置1と異なる放射線分析装置X(例えば、従来の放射線分析装置)では、キャピラリーと検出器との相対的な位置関係を変化させる場合にユーザーが手で当該位置関係を変化させなければならず、当該位置関係を変化させる操作に熟練したユーザーでなければ、当該位置関係をユーザーが所望する位置関係に変化させることが困難な場合があった。その結果、当該放射線分析装置Xでは、検出器によるX線の検出効率を向上させることが困難な場合があった。
【0040】
そこで、放射線分析装置1は、物体Wに第1放射線R1を照射し、第1放射線R1が照射された物体Wから発生する第2放射線R2を放射線検出器Dによって検出し、予め記憶された放射線集束部13の焦点の強度分布を示す第1情報と放射線検出器Dのそれぞれが第2放射線R2を検出した計数に基づく分布を示す第2情報とに基づいて、放射線集束部13と放射線検出部12との相対的な位置関係を位置可変部14に変化させる。これにより、放射線分析装置1は、放射線の検出効率を容易に向上させることができる。当該位置関係を位置可変部14に変化させた後、放射線分析装置1は、物体Wに第1放射線R1を照射し、第1放射線R1が照射された物体Wから発生する第2放射線R2を放射線検出器Dによって検出し、放射線検出器Dのそれぞれが第2放射線R2を検出した計数に基づいて、第1放射線R1が照射された物体Wの性質や構造を分析する。なお、放射線分析装置1は、物体Wと異なる物体(例えば、標準試料等)に第1放射線R1を照射し、第1放射線R1が照射された当該物体から発生する第2放射線R2を放射線検出器Dによって検出し、予め記憶された放射線集束部13の焦点の強度分布を示す第1情報と放射線検出器Dのそれぞれが第2放射線R2を検出した計数に基づく分布を示す第2情報とに基づいて、放射線集束部13と放射線検出部12との相対的な位置関係を位置可変部14に変化させる構成であってもよい。この場合、放射線分析装置1は、物体Wの性質や構造を分析するため、当該位置関係を変化させた後に当該物体が取り外され、当該物体に代えて物体Wが取り付けられる。
以下では、第2制御装置40が位置可変部14を駆動させ、放射線集束部13と放射線検出部12との相対的な位置関係を位置可変部14に変化させる処理について詳しく説明する。
【0041】
<第1制御装置及び第2制御装置の機能構成>
以下、
図3を参照し、第1制御装置30及び第2制御装置40の機能構成について説明する。
図3は、第1制御装置30及び第2制御装置40の機能構成の一例を示す図である。
【0042】
第1制御装置30は、励起源部制御部361を備える。
【0043】
励起源部制御部361は、例えば、図示しないCPUが、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等である図示しない記憶部に記憶された各種プログラムを実行することにより実現される。
【0044】
励起源部制御部361は、ユーザーから受け付けた操作又は第2制御装置40からの要求に基づいて、励起源部11に第1放射線R1を照射させる。
【0045】
第2制御装置40は、HDDやSSDである記憶部42と、キーボードやマウス等の入力装置である入力受付部43と、液晶ディスプレイパネルや有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイパネルである表示部45と、制御部46を備える。
【0046】
制御部46は、第2制御装置40の全体を制御する。制御部46は、表示制御部461と、検出情報取得部462と、駆動制御部463と、記憶制御部464と、分析部465を備える。制御部46が備えるこれらの機能部は、例えば、図示しないCPUが、記憶部42に記憶された各種プログラムを実行することにより実現される。
【0047】
表示制御部461は、ユーザーから受け付けた操作に基づいて各種の画面を生成する。表示制御部461は、生成した画面を表示部45に表示させる。
検出情報取得部462は、検出装置10が備える放射線検出部12の放射線検出器Dから検出情報を取得する。
駆動制御部463は、ユーザーから受け付けた操作に基づいて位置可変部14を駆動させる。また、駆動制御部463は、後述する記憶制御部464が記憶部42に記憶させた検出情報に基づいて位置可変部14を駆動させる。
記憶制御部464は、検出情報取得部462が取得した検出情報を記憶部42に記憶させる。また、記憶制御部464は、分析部465が分析した結果を記憶部42に記憶させる。
分析部465は、取得した検出情報、又は/及び、記憶制御部464が記憶部42に記憶させた検出情報に基づいて、物体Wの性質や構造を分析する。
【0048】
<制御装置が行う処理の具体例>
以下、
図4を参照し、制御装置20が行う処理の具体例について説明する。
図4は、制御装置20が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下では、物体Wが筐体17の内部のうちの励起源部11から第1放射線R1を照射される所定の配置位置に予め配置されている場合について説明する。
【0049】
駆動制御部463は、位置可変部14を駆動させ、放射線検出部12を放射線集束部13に対して相対的に移動させる。これにより、駆動制御部463は、放射線検出部12と放射線集束部13との相対的な位置関係を予め決められた初期位置関係と一致させる(ステップS110)。ここで、
図5を参照し、初期位置関係について説明する。
【0050】
図5は、放射線検出部12と放射線集束部13との相対的な位置関係が初期位置関係と一致している場合における放射線検出部12と放射線集束部13との一例を示す図である。なお、
図5に示した放射線検出部12と放射線集束部13との相対的な位置関係は、
図1に示した放射線分析装置1が見える方向と同じ方向から放射線検出部12と放射線集束部13とを見た場合における当該位置関係である。
【0051】
また、
図5に示した三次元直交座標系MCは、放射線検出部12と放射線集束部13との相対的な位置関係を示す座標系である。三次元直交座標系MCにおけるZ軸の正方向は、この一例において、配置面M1と直交する方向のうち放射線検出部12から放射線集束部13に向かう方向と一致している。また、この一例において、三次元直交座標系MCのX軸は、
図5において紙面の下から上に向かう方向に一致している。また、この一例において、三次元直交座標系MCのY軸は、
図5において紙面に直行し、紙面裏側から表側に向かう方向と一致している。すなわち、この一例において、三次元直交座標系MCにおけるX軸及びY軸によって張られるXY平面は、配置面M1と平行な面である。
【0052】
初期位置関係は、例えば、21の放射線検出器Dのうちの少なくとも3以上の放射線検出器Dが照射領域に含まれる場合における放射線集束部13と放射線検出部12との相対的な位置関係のことである。照射領域は、配置面M1に配置された各放射線検出器Dの検出面である面MMを含む仮想的な面M2内の領域のうち放射線集束部13によって集束された第2放射線R2が照射される領域(
図5では、当該面上において2本の二点鎖線によって挟まれた領域)のことである。なお、この一例では、三次元直交座標系MCのZ軸方向における面MMそれぞれの位置は、同じであるが、互いに異なる構成であってもよい。また、この一例では、配置面M1と面M2とは、平行であるが、非平行であってもよい。また、
図5に示した点FP1は、放射線集束部13によって集束された第2放射線R2の焦点を示している。
図5に示した例では、三次元直交座標系MCのZ軸方向における点FP1の位置は、当該Z軸方向における面M2の位置と一致している。
尚、三次元直交座標系MCのZ軸方向における点FP1の位置は、面M2の位置に一致していなくてもよい。
【0053】
ステップS110の処理が行われた後、駆動制御部463は、記憶部42に予め記憶された第1情報を記憶部42から読み出す(ステップS115)。第1情報は、ユーザーが所望する強度分布である。具体的には、第1情報は、予め測定された強度分布であって放射線集束部13の焦点の強度分布を示す情報、ユーザーによって補正された当該強度分布を示す情報、理論計算によって予め算出された強度分布を示す情報、各放射線検出器Dが第2放射線R2を検出する検出効率が高くなる強度分布を示す情報、各放射線検出器Dが第2放射線R2を検出する検出効率が最も高くなる強度分布を示す情報等である。以下では、第1情報が、予め測定された強度分布であって放射線集束部13の焦点の強度分布を示す情報である場合について説明する。
【0054】
図6は、第1情報が示す強度分布の一例を示す図である。
図6に示した強度分布は、図を簡略化するため、放射線集束部13の焦点の強度分布を二次元平面上に射影した図である。
図6に示したグラフの横軸は、第1情報の強度分布の得られる平面上の位置であって放射線集束部13の中心軸を基準とした当該中心軸に直交する方向における位置を示す。また、当該グラフの縦軸は、X線の強度を示す。
図6に示した曲線FC1は、当該強度分布を表す関数を示している。第1情報は、放射線集束部13の製造者(メーカー等)から予め提供された情報であってもよい。ユーザーは、ステップS110の処理が開始されるよりも前のタイミングにおいて、当該製造者から提供された第1情報を記憶部42に記憶させる。なお、駆動制御部463は、当該タイミングにおいてユーザーから受け付けた操作に基づいて、インターネット等の通信網を介して予め決められたサーバーから第1情報を取得する構成であってもよい。この場合、記憶制御部464は、駆動制御部463が当該サーバーから取得した第1情報を記憶部42に記憶させる。
【0055】
次に、励起源部制御部361は、物体Wへの第1放射線R1の照射を励起源部11に開始させる(ステップS130)。これにより、放射線検出器Dは、第2放射線R2を検出するたびに検出情報を第2制御装置40に出力する。次に、検出情報取得部462は、予め決められた測定時間が経過するまでの間、放射線検出器Dのそれぞれから検出情報を取得する(ステップS140)。そして、記憶制御部464は、取得した検出情報を記憶部42に記憶させる。より具体的には、記憶制御部464は、ある放射線検出器Dから検出情報取得部462が検出情報を取得した場合、取得した当該検出情報と、当該検出情報を取得した時刻を示す時刻情報と、当該放射線検出器Dを示す検出器情報とを対応付けて記憶部42に記憶させる。当該測定時間は、例えば、1分である。なお、当該測定時間は、1分より短い時間であってもよく、1分より長い時間であってもよい。次に、励起源部制御部361は、物体Wへの第1放射線R1の照射を励起源部11に終了させる(ステップS150)。
【0056】
次に、駆動制御部463は、ステップS140において記憶部42に記憶された複数の検出情報に基づいて、放射線検出器D毎に、放射線検出器Dが第2放射線R2を単位時間あたりに検出した計数である計数率を算出する。単位時間は、この一例において、1秒である。なお、単位時間は、1分等の他の時間であってもよい。そして、駆動制御部463は、算出した放射線検出器D毎の計数率の分布を第2情報として算出する(ステップS160)。具体的には、駆動制御部463は、放射線検出器D毎に、放射線検出器Dの位置と、当該位置への第2放射線R2の単位時間あたりの入射量に相当する計数率との関係を表すヒストグラムを生成する。駆動制御部463は、生成したヒストグラムを所定の関数によってフィッティングし、フィッティングしたフィッティングカーブを放射線検出器D毎の計数率の分布を示す第2情報として算出する。以下では、一例として、所定の関数がガウス関数である場合について説明する。なお、所定の関数は、ガウス関数に代えて、多項式に基づく関数等の他の関数であってもよい。
図7は、第2情報が示す分布の一例を示す図である。
図7に示した分布は、図を簡略化するため、放射線検出器D毎の計数率の分布を二次元平面上に射影した図である。
図7に示したグラフの横軸は、中心にある放射線検出器Dの中心を原点とする、配置面M1に配置された各放射線検出器Dの検出面である面MMを含む仮想的な面M2における位置を示す。また、当該グラフの縦軸は、計数率を示す。
図7に示した曲線FC2は、当該分布を表す関数を示している。ここで、
図7に示した曲線FC2は、ピークを有さない曲線であるが、これは一例に過ぎず、ピークを有する曲線である場合もある。
【0057】
ステップS160の処理が行われた後、駆動制御部463は、ステップS115において記憶部42から読み出した第1情報を、ステップS160において算出した第2情報にマッチングさせ、第2情報が示す分布を表す関数のピークが存在すると推定される位置であって三次元直交座標系MCのXY平面上での位置を照射位置として算出する(ステップS180)。すなわち、ステップS180における駆動制御部463は、ステップS140の処理中において面M2上に第2放射線R2が照射されていた照射領域の中心の三次元直交座標系MCにおける位置を照射位置として算出する。ここで、当該位置は、三次元直交座標系MCのXY平面上における位置のことである。ステップS180の処理が行われた後、駆動制御部463は、ステップS180において算出した照射位置に基づいて位置可変部14を駆動させ、放射線集束部13と放射線検出部12との相対的な位置関係を変化させる照射位置調整動作を行う(ステップS190)。照射位置調整動作では、駆動制御部463は、ステップS180において算出した照射位置であって三次元直交座標系MCのXY平面上における位置から、ステップS115において読み出した第1情報が示す分布のピークの位置までの距離及び方向を示すベクトルを算出する。当該位置は、第1情報の強度分布の得られる平面上の位置であって放射線集束部13の中心軸を基準とした当該中心軸に直交する方向における当該ピークの位置のことである。そして、照射位置調整動作では、駆動制御部463は、算出した当該ベクトルに従って当該距離だけ位置可変部14で放射線検出部12を放射線集束部13に対して相対的に動かす。これにより、放射線分析装置1は、放射線検出部12による第2放射線R2の検出効率を容易に向上させることができる。ステップS190の処理が行われた後、駆動制御部463は、処理を終了する。
なお、精度向上や組調と微調を組合せるなどを目的に、ステップS130からステップS190の処理が繰り返されてもよい。
【0058】
以上のように、放射線分析装置1は、記憶部42に記憶された放射線集束部13の焦点の強度分布を示す第1情報と放射線検出器Dのそれぞれが第2放射線R2を検出した計数に基づく分布を示す第2情報とに基づいて、位置可変部14に放射線集束部13と放射線検出部12との相対的な位置関係を変化させる。これにより、放射線分析装置1は、放射線検出部12による第2放射線R2の検出効率を容易に向上させることができる。
【0059】
なお、駆動制御部463は、ステップS190の処理を行う前後において、又は当該処理を行っている最中において、放射線集束部13と放射線検出部12との相対的な位置関係のうち三次元直交座標系MCにおけるZ軸に沿った方向での当該位置関係を変化させ第1情報が示す分布と第2情報が示す分布の形状を一致させる構成であってもよい。この場合、駆動制御部463は、第1情報及び第2情報のそれぞれが示す分布の半値幅によって当該方向での移動距離であって位置可変部14で当該方向に動かす移動距離を算出する。ここで、駆動制御部463は、例えば、当該Z軸の正方向に位置可変部14で動かす場合の移動距離を正の値として算出し、当該Z軸の負方向に位置可変部14で動かす場合の移動距離を負の値として算出する。駆動制御部463は、算出した移動距離に基づいて位置可変部14を駆動させ、位置可変部14で動かす。これにより、駆動制御部463は、Z軸に沿った方向での当該位置関係を、ユーザーが所望する位置関係に変化させる。
【0060】
<実施形態の変形例1>
以下、実施形態の変形例1について説明する。なお、実施形態の変形例1では、実施形態と同様な構成部に対して同じ符号を付して説明を省略する。また、以下の説明では、説明の便宜上、配置面M1上の三次元直交座標系MCにおける位置を、単に配置面M1上の位置と称して説明する。実施形態では、配置面M1には、配置面M1の中心から放射状に21の放射線検出器Dが配置されていた。しかし、配置面M1に配置される21の放射線検出器Dは、前述の正面方向に向かって配置面M1を見た場合において、配置面M1の中心を通る軸周りの回転に対して非対称に配置されている場合がある。このような場合、実施形態において説明した方法では、放射線検出部12の検出効率を向上させることが困難な場合がある。また、当該方法では、配置面M1の中心から放射状に21の放射線検出器Dが配置されていたとしても、第1情報の強度分布のピーク位置を配置面M1の中心とは異なる位置に調整するような場合、放射線検出部12の検出効率を向上させることは、困難である。そこで、実施形態の変形例1では、駆動制御部463は、ステップS180において、配置面M1内における21の放射線検出器Dの配置と、第1情報とに基づいて前述の照射位置を一致させる目標の位置である照射目標位置を算出する。そして、駆動制御部463は、ステップS190において位置可変部14を動作させ、算出された照射目標位置と照射位置とが一致するように放射線検出部12と放射線集束部13との相対的な位置関係を位置可変部14に変化させる。これにより、放射線分析装置1は、放射線検出部12による第2放射線R2の検出効率をより確実に向上させることができる。
【0061】
具体的には、駆動制御部463は、配置面M1上の位置毎に、第1情報が示す強度分布と、配置面M1上における21の放射線検出器Dの配置とのマッチングである配置マッチングを行うことにより、照射目標位置を算出する。配置面M1上のある位置について行う配置マッチングでは、当該位置と第1情報が示す強度分布のピークの位置とが一致するように、当該強度分布におけるXY平面(すなわち、当該強度分布における2つの横軸によって形成される平面)上の位置と、配置面M1上の位置との対応付けを行う。
【0062】
ここで、
図8は、配置面M1上のある位置XPと第1情報が示す強度分布のピークの位置とが一致するように、配置面M1上における21の放射線検出器Dの配置と第1情報が示す強度分布とを配置マッチングさせた後の第1情報が示す強度分布の一例を示す図である。すなわち、
図8は、当該対応付けによってXY平面上の位置を配置面M1上の位置に変換された強度分布であって第1情報が示す強度分布の一例を示す図である。なお、
図8に示した強度分布は、図を簡略化するため、当該第1情報が示す強度分布を二次元平面に射影した図である。
【0063】
図8では、説明を簡略化するため、配置面M1に配置された放射線検出器Dが放射線検出器D1、放射線検出器D2、放射線検出器D3の3つの放射線検出器Dである場合について説明する。
図8に示した位置XD1は、配置面M1上における放射線検出器D1の位置を示している。また、
図8に示した位置XD2は、配置面M1上における放射線検出器D2の位置を示している。また、
図8に示した位置XD3は、配置面M1上における放射線検出器D3の位置を示している。また、
図8に示した領域A1は、配置面M1上の領域のうち放射線検出器D1のサイズが占める領域を表す。また、
図8に示した領域A2は、配置面M1上の領域のうち放射線検出器D2のサイズが占める領域を表す。また、
図8に示した領域A3は、配置面M1上の領域のうち放射線検出器D3のサイズが占める領域を表す。このような領域A1~領域A3のそれぞれは、配置面M1における放射線検出器D毎の領域の一例である。
【0064】
配置面M1上のある位置について配置マッチングを行った後、駆動制御部463は、記憶部42に予め記憶された情報であって各放射線検出器Dのサイズを示す情報を含む設計情報を記憶部42から読み出す。また、駆動制御部463は、記憶部42に予め記憶された情報であって各放射線検出器Dの検出感度を示す検出感度情報を記憶部42から読み出す。駆動制御部463は、記憶部42から読み出した設計情報に基づいて、当該位置について配置マッチングが行われた後の第1情報が示す強度分布において、
図8に示した領域A1~領域A3のように、放射線検出器D毎の領域を特定する。そして、駆動制御部463は、特定した領域毎に、領域に対応する放射線検出器Dの強度を算出する強度算出処理を行う。具体的には、駆動制御部463は、強度算出処理において、特定した領域のうちのある領域と、当該第1情報が示す強度分布を表す関数の曲線(
図8に示した例では、曲線FC1)とによって囲まれた部分の面積を算出する。駆動制御部463は、算出した面積に、記憶部42から読み出した検出感度情報が示す検出感度であって当該領域に対応する放射線検出器Dの検出感度を乗算した値を、当該放射線検出器Dの強度として算出する。駆動制御部463は、このように放射線検出器Dの強度を算出する強度算出処理を、特定した各領域に対応する放射線検出器Dについて繰り返し行う。そして、駆動制御部463は、算出した放射線検出器D毎の強度の総和を算出する。
【0065】
駆動制御部463は、このような放射線検出器D毎の強度の総和を、配置面M1上の各位置について配置マッチングが行われた第1情報毎、すなわち配置面M1上の位置毎に算出する。そして、駆動制御部463は、算出した配置面M1上の位置毎の当該総和のうち、最大の総和に対応する配置面M1上の位置を、照射目標位置として算出(特定)する。このようにして算出した照射目標位置と照射位置とが一致している場合、照射目標位置と照射位置とが一致していない場合と比べて、放射線検出部12の検出効率が向上する。
また、駆動制御部463は、必要に応じて検出器の最大係数率に応じて検出器の最大計数率や寿命を考慮した負荷分散や最適化のために、設定した計数率の上限や寿命の下限を満足する範囲での最大の総和に、当該総和が対応する位置を、照射目標位置として算出(特定)する。
【0066】
なお、前述の強度算出処理を数式で説明する場合、例えば、駆動制御部463は、以下の式(1)の値が最大となる配置面M1上の位置を、照射目標位置として算出する。
【0067】
【0068】
ここで、Iは、配置面M1上のある位置について配置マッチングが行われた後の第1情報に基づいて算出された総和であって放射線検出器D毎の強度の総和を示す。また、Chは、各放射線検出器Dを識別するための番号を示す。また、nは、配置面M1に配置された放射線検出器Dの総数を示す。また、KChは、Chによって識別される放射線検出器Dの検出感度を示す。また、fは、当該強度分布を表す関数を示す。AChは、配置面M1上の領域のうちChによって識別される放射線検出器Dのサイズが占める領域を示す。
【0069】
このように、放射線分析装置1は、配置面M1に配置される21の放射線検出器Dが、前述の正面方向に向かって配置面M1を見た場合において、配置面M1の中心を通る軸周りの回転に対して非対称に配置されている場合であっても、照射目標位置を算出することにより、放射線検出部12による第2放射線R2の検出効率を向上させることができる。
【0070】
<実施形態の変形例2>
以下、実施形態の変形例2について説明する。なお、実施形態の変形例2では、実施形態と同様な構成部に対して同じ符号を付して説明を省略する。実施形態では、駆動制御部463は、検出情報取得部462が放射線検出部12(すなわち、放射線検出器D)から取得した検出情報に基づいて第2情報を算出したが、これに代えて、放射線検出部12と異なる放射線検出部である第2放射線検出部によって検出された分布であって放射線集束部13により集束された第2放射線R2の強度分布を示す情報を第2情報として生成する構成であってもよい。この場合、第2放射線検出部は、例えば、X線CCD(Charge Coupled Device)カメラ、フラットパネル検出器等の当該強度分布を検出可能な検出器を有する。また、当該場合、駆動制御部463は、記憶部42に予め記憶された情報であって放射線検出部12と第2放射線検出部との相対的な位置を示す情報である位置情報を記憶部42から読み出す。そして、第2放射線検出部が当該第2放射線R2を検出する検出面上における当該強度分布と、読み出した位置情報とに基づいて、当該強度分布を放射線検出部12によって当該第2放射線R2を検出した場合における当該第2放射線R2の強度分布に変換し、変換した強度分布を示す第2情報を生成する。
【0071】
例えば、第2放射線検出部は、放射線検出部12が備える放射線検出器Dと放射線集束部13との間を遮蔽するシャッターに配置される構成であってもよい。当該シャッターは、放射線検出部12と放射線集束部13との間において開閉可能な板部材によって構成され、第2制御装置40からの要求に応じて当該板部材を開閉させる。これにより、放射線分析装置1は、第2放射線検出部を設置させるための新たな部材を追加することなく、第2放射線検出部を検出装置10に設けることができる。
【0072】
<実施形態において得られる効果とその背景>
X線のエネルギーを弁別することが可能なX線分析装置が有するX線検出器として、エネルギー分散型X線検出器と、波長分散型X線検出器とが知られている。エネルギー分散型X線検出器は、エネルギー分散型X線検出器内に入射したX線のエネルギーを電気信号に変換し、変換した電気信号の大きさによって当該エネルギーを算出する。一方、波長分散型X線検出器は、波長分散型X線検出器に入射したX線を分光して単色化し、単色化したX線を比例計数管で検出する。
【0073】
エネルギー分散型X線検出器としては、シリコンリチウム型検出器や、シリコンドリフト型検出器、ゲルマニウム検出器等の半導体検出器が知られている。例えば、シリコンリチウム型検出器やシリコンドリフト型検出器は、電子顕微鏡の元素分析装置に多用され、0~20keV程度のエネルギーを検出することができる。しかし、これらの検出器は、シリコンを用いているため、エネルギー分解能がシリコンのバンドギャップ(1.1eV)に依存し、エネルギー分解能を130eV程度以上に改善することが難しく、波長分散型X線検出器と比べてエネルギー分解能が10倍以上劣る。
【0074】
エネルギー分解能が130eVであるエネルギー分散型X線検出器にX線が入射した場合、当該エネルギー分散型X線検出器は、入射したX線のエネルギーを130eV程度の誤差を伴って検出することが可能である。従って、当該誤差が小さいほど、エネルギー分解能は高くなる。
【0075】
実施形態において放射線分析装置1の一例として挙げた超伝導X線分析装置は、前述したように、超伝導転移端センサーを超伝導X線検出器として有する。超伝導転移端センサーは、波長分散型X線検出器のエネルギー分解能と同程度のエネルギー分解能を有するエネルギー分散型X線検出器として知られている超伝導X線検出器の一種である。超伝導転移端センサーは、マイクロカロリーメーターとも称される。超伝導X線検出器としては、超伝導転移端センサーの他に、ジョセフソン効果を利用したジョセフソントンネル接合素子や、超伝導ラインを利用した超伝導単一光子検出素子、超伝導力学インダクタンス検出器等が知られている。
【0076】
例えば、超伝導転移端センサーは、他の超伝導X線検出器よりも高いエネルギー分解能を有している。例えば、5.9keVの特性X線のエネルギーを検出する場合の超伝導転移端センサーのエネルギー分解能は、10eV以下にすることができる。
【0077】
タングステンフィラメント型等の電子発生源を有する走査電子顕微鏡に超伝導転移端センサーを取り付けた場合、電子線が照射された物体から発生する特性X線のエネルギーを超伝導転移端センサーによって検出することにより、半導体型X線検出器では弁別不可能な特性X線(例えば、Si-kα、W-Mα、β)を弁別することができる。
【0078】
X線検出器の性能を示す指標としては、上記において説明したエネルギー分解能の他に、計数効率が知られている。計数効率は、X線検出器の放射線受光部の面積、厚さや材料、放射線発生源とX線検出器の距離、X線検出器の最大計数率等により決まる。例えば、一般的なシリコンドリフト型検出器では、数mm2~数百mm2の当該面積を有し、最大計数率は、数万cps~数十万cpsである。一方、超伝導転移端センサーの当該面積は、一般的に1mm2よりも小さく、最大計数率は、数百cps程度である。
【0079】
このことから、実施形態において説明したように、超伝導転移端センサーを超伝導X線検出器として有する放射線分析装置1が、位置可変部14を有し、放射線検出部12を位置可変部14によりユーザーが所望する移動方向にユーザーが所望する移動量だけ移動させることができることは、放射線分析装置1の計数効率を向上させる上で非常に重要であると言える。ユーザーが手動で放射線集束部13に対する相対的な放射線検出部12の位置を変化させる場合、計数効率を向上させることは困難である。このような困難さは、放射線集束部13によって直径が100μm程度にまで集束された第2放射線R2を、1mm2よりも小さな面積の受光部に効率よく入射させなければならないことからも容易に理解できる。
【0080】
なお、上記において説明した実施形態及び実施形態の変形例は、放射線検出器Dが第2放射線R2を検出した計数に基づく物体Wの性質や構造の分析を行う前に予め行う場合において放射線分析装置1に適用されるが、これに代えて、当該分析を行っている最中の放射線分析装置1に適用される構成であってもよい。この場合、放射線分析装置1は、当該分析中における焦点位置のドリフトを補正することができる。
また、上記において説明した実施形態及び実施形態の変形例では、前述した通り、三次元直交座標系MCのZ軸方向における点FP1の位置は、当該Z軸方向における面M2の位置と一致している。この場合、放射線分析装置1は、放射線集束部13の製造者(メーカー等)から予め提供された情報であって放射線集束部13の焦点の強度分布を示す情報を第1情報として用いることができる。一方、ユーザーは、三次元直交座標系MCのZ軸方向における点FP1の位置を、当該Z軸方向における面M2の位置と一致させずに放射線分析装置1によって物体Wの性質や構造の分析を行う場合がある。この場合、放射線分析装置1は、放射線集束部13の製造者(メーカー等)から予め提供された情報であって放射線集束部13の焦点の強度分布を示す情報がユーザーによって補正された情報を第1情報として用いることが望ましい。この際、ユーザーは、放射線分析装置1によって事前に基準となる強度分布を測定し、測定した結果に基づいて当該情報を補正する。なお、このような補正は、他の方法によって行われる構成であってもよい。
また、上記において説明した実施形態及び実施形態の変形例では、前述した通り、三次元直交座標系MCのZ軸方向における面MMそれぞれの位置は、同じである。しかし、三次元直交座標系MCのZ軸方向における面MMそれぞれの位置は、互いに異なっていてもよい。この場合、ユーザーは、放射線分析装置1によって事前に基準となる強度分布を面MM毎に測定し、測定した結果に基づいて、放射線集束部13の製造者(メーカー等)から予め提供された情報であって放射線集束部13の焦点の強度分布を示す情報を補正する。そして、放射線分析装置1は、補正された当該情報を第1情報として用いる。なお、このような補正は、他の方法によって行われる構成であってもよい。
【0081】
以上説明したように、実施形態における放射線分析装置(この一例において、放射線分析装置1)は、物体(この一例において、物体W)に第1放射線(この一例において、第1放射線R1)を照射する励起源部(この一例において、励起源部11)と、第1放射線が照射された物体から発生する第2放射線(この一例において、第2放射線R2)を検出する3以上の放射線検出器(この一例において、放射線検出器D)を備える放射線検出部(この一例において、放射線検出部12)と、物体と放射線検出部との間に配置され、第2放射線を集束させる放射線集束部(この一例において、放射線集束部13)と、放射線集束部と放射線検出部との相対的な位置関係を可変にする位置可変部(この一例において、位置可変部14)と、記憶部(この一例において、記憶部42)に記憶された放射線集束部の焦点の強度分布を示す第1情報と放射線検出器のそれぞれが第2放射線を検出した計数に基づく分布を示す第2情報とに基づいて、位置可変部に当該位置関係を変化させる制御部(この一例において、制御部46)と、を備える。これにより、放射線分析装置は、放射線の検出効率を容易に向上させることができる。
【0082】
また、放射線分析装置では、第1情報は、放射線集束部を出射する第2放射線の強度分布を示す情報である。これにより、放射線分析装置は、放射線集束部を出射する第2放射線の強度分布を示す情報である第1情報に基づいて、放射線の検出効率を容易に向上させることができる。
また、放射線分析装置では、第1情報は、予め測定された放射線集束部を出射する前記第2放射線の強度分布またはコンピュータシミュレーションで求められた放射線集束部を出射する前記第2放射線であって放射線集束部の焦点の強度分布の強度分布を示す情報である。これにより、放射線分析装置は、予め測定またはコンピュータシミュレーションで求められた放射線集束部を出射する前記第2放射線の強度分布であって放射線集束部の焦点の強度分布を示す情報である第1情報に基づいて、放射線の検出効率を容易に向上させることができる。
【0083】
また、放射線分析装置では、第1情報は、ユーザーにより補正された強度分布であって放射線集束部の強度分布を示す情報である。これにより、放射線分析装置は、ユーザーにより補正された強度分布であって放射線集束部の強度分布を示す情報である第1情報に基づいて、放射線の検出効率を容易に向上させることができる。
【0084】
また、放射線分析装置では、第1情報は、放射線検出器のそれぞれの第2放射線を検出する検出効率が高くなる強度分布を示す情報である。これにより、放射線分析装置は、放射線検出器のそれぞれの第2放射線を検出する検出効率が高くなる強度分布を示す情報である第1情報に基づいて、放射線の検出効率を容易に向上させることができる。
【0085】
また、放射線分析装置では、第1情報は、放射線検出器のそれぞれの第2放射線を検出する検出効率が最も高くなる強度分布を示す情報である。これにより、放射線分析装置は、放射線検出器のそれぞれの第2放射線を検出する検出効率が最も高くなる強度分布を示す情報である第1情報に基づいて、放射線の検出効率を容易に向上させることができる。
【0086】
また、放射線分析装置では、放射線集束部は、キャピラリーである。これにより、放射線分析装置は、第1情報と第2情報とに基づいて放射線検出部とキャピラリーとの相対的な位置関係を位置可変部に変化させることにより、放射線分析装置の製造コストの増大を抑制することができる。
【0087】
また、放射線分析装置は、放射線検出器のそれぞれが第2放射線を単位時間あたりに検出した計数率を算出し、算出した放射線検出器毎の計数率の分布を、第2情報として算出する。これにより、放射線分析装置は、放射線検出器毎の計数率の分布を示す第2情報に基づいて、放射線の検出効率を容易に向上させることができる。
また、放射線分析装置は、第1情報が示す前記強度分布を表す関数の形状と、第2情報が示す分布を表す関数の形状とに基づいて、放射線検出器が配置された面に直交する方向における放射線検出部と放射線集束部との相対的な位置関係を位置可変部に変化させる。これにより、放射線分析装置は、第1情報が示す前記強度分布を表す関数の形状と、第2情報が示す分布を表す関数の形状とに基づいて、放射線の検出効率を容易に向上させることができる。
【0088】
また、放射線分析装置は、第1情報が示す強度分布のピークと、第2情報が示す分布のピークとに基づいて、放射線検出器が配置された面に沿った方向における放射線検出部と放射線集束部との相対的な位置関係を位置可変部に変化させる。これにより、放射線分析装置は、第1情報が示す強度分布のピークと、第2情報が示す分布のピークとに基づいて、放射線の検出効率を容易に向上させることができる。
【0089】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
【0090】
また、以上に説明した装置(例えば、制御装置20)における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピューターシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disk)-ROM等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリー(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0091】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…放射線分析装置、10…検出装置、11…励起源部、12…放射線検出部、13…放射線集束部、14…位置可変部、16…冷却装置、17…筐体、20…制御装置、30…第1制御装置、40…第2制御装置、42…記憶部、43…入力受付部、44…通信部、45…表示部、46…制御部、361…励起源部制御部、461…表示制御部、462…検出情報取得部、463…駆動制御部、464…記憶制御部、465…分析部、D…放射線検出器