(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】誘電エラストマー発電システム
(51)【国際特許分類】
H02N 11/00 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
H02N11/00 Z
(21)【出願番号】P 2017044829
(22)【出願日】2017-03-09
【審査請求日】2020-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】514285911
【氏名又は名称】千葉 正毅
(73)【特許権者】
【識別番号】510244754
【氏名又は名称】和氣 美紀夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】千葉 正毅
(72)【発明者】
【氏名】和氣 美紀夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光明
(72)【発明者】
【氏名】澤田 誠
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特許第5479659(JP,B2)
【文献】特開2015-154628(JP,A)
【文献】特公昭55-9350(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電エラストマー層および当該誘電エラストマー層を挟む一対の電極層を有する誘電エラストマー発電要素を含む発電部と、
特定個数の複数のコンデンサを含み、前記発電部からの出力電力が入力される中間蓄電部と、
前記中間蓄電部からの出力電力が入力される蓄電部と、
入力モードと
中間モードと出力モードとを切り替えて設定制御する制御部と、を備え、
前記入力モードにあっては、前記中間蓄電部の前記複数のコンデンサのいずれかを直列数が前記特定個数以下の入力直列数となるように前記発電部に接続し、
前記中間モードにあっては、前記入力モードにおける前記複数のコンデンサと前記発電部とが非接続となり、
前記出力モードにあっては、前記複数のコンデンサのいずれかを直列数が前記入力直列数よりも小である出力直列数となるように前記蓄電部に接続し、
前記制御部は、前記発電部による発電の電圧を監視すること、または、前記誘電エラストマー発電要素の伸長および収縮状態を検出すること、により、前記入力モードと前記出力モードとを切り替える、ことを特徴とする、誘電エラストマー発電システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記出力モードにおいて前記入力直列数以下であって上記出力直列数よりも大である個数の前記コンデンサを互いに並列に接続する、請求項1に記載の誘電エラストマー発電システム。
【請求項3】
誘電エラストマー層および当該誘電エラストマー層を挟む一対の電極層を有する誘電エラストマー発電要素を含む発電部と、
特定個数の複数のコンデンサを含み、前記発電部からの出力電力が入力される中間蓄電部と、
前記中間蓄電部からの出力電力が入力される蓄電部と、
入力モードと中間モードと出力モードとを切り替えて設定制御する制御部と、を備え、
前記入力モードにあっては、前記中間蓄電部の前記複数のコンデンサのいずれかを直列数が前記特定個数以下の入力直列数となるように前記発電部に接続し、
前記中間モードにあっては、前記入力モードにおける前記複数のコンデンサと前記発電部とが非接続となり、
前記入力モードで前記発電部に接続された前記複数のコンデンサのいずれかを直列数が前記入力直列数よりも小である中間出力直列数となるように接続し、かつ、前記複数のコンデンサのうち前記入力モードで前記発電部に接続された前記複数のコンデンサ以外のコンデンサのいずれかを直列数が前記中間出力直列数よりも大である中間入力直列数となるように接続するとともに、
前記中間出力直列数で接続された前記複数のコンデンサから前記中間入力直列数となるように接続された前記複数のコンデンサに電力が出力され、
前記出力モードにあっては、前記中間入力直列数で接続された前記複数のコンデンサを直列数が前記中間入力直列数よりも小である出力直列数となるように前記蓄電部に接続する、
ことを特徴とする、誘電エラストマー発電システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記出力モードにおいて前記入力直列数以下であって上記出力直列数よりも大である個数の前記コンデンサを互いに並列に接続する、請求項3に記載の誘電エラストマー発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電エラストマー発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
誘電エラストマー層と当該誘電エラストマー層を挟む一対の電極層とを有する誘電エラストマー要素は、駆動用途および発電用途のそれぞれの分野において開発が進められている。特許文献1,2には、誘電エラストマー要素が発電用途に用いられた誘電エラストマー発電システムが開示されている。この誘電エラストマー発電システムにおいては、誘電エラストマー要素を伸長させる外力(力学的エネルギー)を電気的エネルギーに変換することにより発電がなされている。この発電による電力は、たとえばニッケル水素電池やリチウムイオン電池に代表される二次電池に蓄電される。
【0003】
誘電エラストマー要素を用いた発電は、誘電エラストマー要素の伸長および収縮からなる1サイクルで行われる。このサイクルを生じさせる外力等の変化が比較的短時間であっても、誘電エラストマー要素の伸長および収縮が当該変化に追従可能であるという利点がある。また、誘電エラストマー要素における発電は、電圧が比較的高いという側面があり、たとえば数千Vに達する。一方、上述した二次電池は、化学反応を利用した蓄電原理であるため、充電に比較的長い時間を要する。また、二次電池の充電における適正電圧は、誘電エラストマー要素による発電の電圧に比べて圧倒的に低い。このため、誘電エラストマー要素によって発電された電力を二次電池に効率よく蓄電することには、困難が伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5479659号号公報
【文献】特許第5509350号号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、より効率よく蓄電することが可能な誘電エラストマー発電システムを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によって提供される誘電エラストマー発電システムは、誘電エラストマー層および当該誘電エラストマー層を挟む一対の電極層を有する誘電エラストマー発電要素を含む発電部と、特定個数の複数のコンデンサを含み、前記発電部からの出力電力が入力される中間蓄電部と、前記中間蓄電部からの出力電力が入力される蓄電部と、入力モードと出力モードとを切り替えて設定制御する制御部と、を備え、前記入力モードにあっては、前記中間蓄電部の前記複数のコンデンサのいずれかを直列数が前記特定個数以下の入力直列数となるように前記発電部に接続し、前記出力モードにあっては、前記複数のコンデンサのいずれかを直列数が前記入力直列数よりも小である出力直列数となるように前記蓄電部に接続する、ことを特徴としている。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記制御部は、前記出力モードにおいて前記入力直列数以下であって上記出力直列数よりも大である個数の前記コンデンサを互いに並列に接続する。
【0008】
本発明の第2の側面によって提供される誘電エラストマー発電システムは、誘電エラストマー層および当該誘電エラストマー層を挟む一対の電極層を有する誘電エラストマー発電要素を含む発電部と、特定個数の複数のコンデンサを含み、前記発電部からの出力電力が入力される中間蓄電部と、前記中間蓄電部からの出力電力が入力される蓄電部と、入力モードと中間モードと出力モードとを切り替えて設定制御する制御部と、を備え、前記入力モードにあっては、前記中間蓄電部の前記複数のコンデンサのいずれかを直列数が前記特定個数以下の入力直列数となるように前記発電部に接続し、前記中間モードにあっては、前記入力モードにおける前記複数のコンデンサと前記発電部とが非接続となり、前記入力モードで前記発電部に接続された前記複数のコンデンサのいずれかを直列数が前記入力直列数よりも小である中間出力直列数となるように接続し、かつ、前記複数のコンデンサのうち前記入力モードで前記発電部に接続された前記複数のコンデンサ以外のコンデンサのいずれかを直列数が前記中間出力直列数よりも大である中間入力直列数となるように接続するとともに、前記中間出力直列数で接続された前記複数のコンデンサから前記中間入力直列数となるように接続された前記複数のコンデンサに電力が出力され、前記出力モードにあっては、前記中間入力直列数で接続された前記複数のコンデンサを直列数が前記中間入力直列数よりも小である出力直列数となるように前記蓄電部に接続する、ことを特徴としている。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記制御部は、前記出力モードにおいて前記入力直列数以下であって上記出力直列数よりも大である個数の前記コンデンサを互いに並列に接続する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前記発電部で発電された電力は、まず前記中間蓄電部によって蓄電された後に前記蓄電部へと出力される。前記コンデンサを用いた前記中間蓄電部の蓄電は、化学反応等を伴わないため、前記発電部で発電された電力を速やかに蓄電することができる。また、前記発電部からの電力が前記中間蓄電部に入力される入力モードにおける入力個数よりも、前記中間蓄電部から前記蓄電部へと電力が出力される出力モードにおける出力個数は少ない。このため、入力モードにおける前記中間蓄電部への電圧よりも、出力モードにおける前記蓄電部への電圧を低下させることができる。これは、前記蓄電部による蓄電を適正な電圧で行うのに有利である。したがって、前記誘電エラストマー発電システムによれば、発電された電力をより効率よく二次電池等の蓄電部へ蓄電することができる。
【0011】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に基づく誘電エラストマー発電システムを概略的に示すシステム構成図である。
【
図2】
図1の誘電エラストマー発電システムの誘電エラストマー発電要素の発電原理を概略的に示す図である。
【
図3】
図1の誘電エラストマー発電システムの誘電エラストマー発電要素の発電原理を概略的に示す図である。
【
図4】
図1の誘電エラストマー発電システムを概略的に示すシステム構成図である。
【
図5】
図1の誘電エラストマー発電システムによる発電状態を示すグラフである。
【
図6】本発明の第2実施形態に基づく誘電エラストマー発電システムを概略的に示すシステム構成図である。
【
図7】
図6の誘電エラストマー発電システムを概略的に示すシステム構成図である。
【
図8】
図6の誘電エラストマー発電システムを概略的に示すシステム構成図である。
【
図9】
図6の誘電エラストマー発電システムによる発電状態を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0014】
図1~
図3は、本発明の第1実施形態に基づく誘電エラストマー発電システムを示している。本実施形態の誘電エラストマー発電システムA1は、発電部1、制御部2、中間蓄電部3、蓄電部5およびスイッチ部6を備えている。誘電エラストマー発電システムA1は、外力を利用して発電を行う装置である。外力の発生源の具体的構成は特に限定されず、海洋の波に代表される自然エネルギーを発生するものや、人体等の生体エネルギーを発するものを適宜利用することができる。
【0015】
図1は、誘電エラストマー発電システムA1を概略的に示すシステム構成図である。
図2および
図3は、誘電エラストマー発電システムA1の誘電エラストマー発電要素11の発電原理を概略的に示す図である。
【0016】
発電部1は、誘電エラストマー発電システムA1において機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換するものである。発電部1は、誘電エラストマー発電要素11を備える。なお、
図1~
図3では、誘電エラストマー発電要素11を模式的に示している。誘電エラストマー発電要素11は、誘電エラストマー層111および一対の電極層112を有する。なお、発電部1は、誘電エラストマー発電要素11に加えて、入力された外力を誘電エラストマー発電要素11に伝達するための構造部材や、発電動作を実現する上で利用される張力を誘電エラストマー発電要素11に発生させるための張力維持機構等(いずれも図示略)を適宜備えていてもよい。
【0017】
誘電エラストマー層111は、弾性変形が可能であるとともに、絶縁強度が高いことが求められる。このような誘電エラストマー層111の材質は特に限定されないが、好ましい例として、たとえばシリコーンエラストマーやアクリルエラストマーが挙げられる。
【0018】
一対の電極層112は、誘電エラストマー層111を挟んでおり、初期電荷が与えられ、出力電圧が生じる部位である。電極層112は、導電性を有するとともに、誘電エラストマー層111の弾性変形に追従しうる弾性変形が可能な材質によって形成される。このような材質としては、弾性変形可能な主材に導電性を付与するフィラーが混入された材質が挙げられる。前記フィラーの好ましい例として、たとえばカーボンナノチューブが挙げられる。
【0019】
誘電エラストマー発電要素11は、外部からの外力や拘束を受けていない状態であって、一対の電極層112に電圧が印加されていない状態においては、自発的な伸長や伸縮を生じていない自然長状態にあり、外力が付与された場合に、誘電エラストマー層111の弾性変形が許容されている。
【0020】
制御部2は、誘電エラストマー発電要素11の一対の電極層112への初期電圧の印加および一対の電極層112から中間蓄電部3および蓄電部5への出力電力の入力を制御する。また、制御部2は、当該印加および入力に際し、スイッチ部6の切り替え制御を行う。このような制御部2は、たとえば、初期電荷を生じる電源部、出力電力を利用に適した電圧に変圧する等の機能を果たす変電部、電源部および変電部を制御するCPU、を含む。
【0021】
中間蓄電部3は、発電部1によって発電された電力を一時的に蓄電するものである。中間蓄電部3は、複数のコンデンサ31を含んでいる。複数のコンデンサ31は、後述する一時的な蓄電と蓄電部5への出力に際し、スイッチ部6によって互いに直列または並列に接続されることが意図されている。このような複数のコンデンサ31の具体的な構成は、スイッチ部6の構成によって適宜変更可能である。
図1に図示された例においては、複数のコンデンサ31は、互いに個別に配置されており、スイッチ部6によって互いの接続状態が設定される構成である。コンデンサ31の具体的な種類は、特に限定されず、電気二重層コンデンサ、セラミックコンデンサ、電解コンデンサ等の種々のコンデンサを採用可能である。
【0022】
本実施形態においては、中間蓄電部3に含まれる複数のコンデンサ31の個数は、8個である。この場合、本発明で言う特定個数は、8個である。以降においては説明の便宜のため、複数のコンデンサ31を、コンデンサ311~318と区別する場合がある。なお、本実施形態にあっては、コンデンサ311~318の静電容量がそれぞれ等しいものを用いた例を示しているが、静電容量が異なるコンデンサを組み合わせてもよく、その構成は任意である。また、コンデンサ31の個数も8個に限定されるものではない。
【0023】
蓄電部5は、中間蓄電部3に一時的に蓄電された電力が入力されるものであり、誘電エラストマー発電システムA1における最終蓄電手段である。蓄電部5の構成は特に限定されず、発電部1から発電される電力を適切に蓄電可能な蓄電容量を備えたものであればよい。蓄電部5を構成する所謂二次電池としては、たとえばニッケル水素電池やリチウムイオン電池が挙げられる。また、蓄電部5は、入力電圧を二次電池に適した電圧に降下させる降圧回路を備えていてもよい。
【0024】
スイッチ部6は、中間蓄電部3と発電部1および蓄電部5との接続状態と、複数のコンデンサ31の接続状態とを切り替えるものである。スイッチ部6の具体的構成は特に限定されず、必要となる数量のスイッチ部品を含む配線回路によって構成されても良いし、所謂スイッチング素子に代表される電子モジュールによって構成されても良い。
図1においては、スイッチ部6は、その機能を説明する便宜として、概略的に示されている。本実施形態においては、スイッチ部6は、入力側スイッチ部61、出力側スイッチ部62および中間スイッチ部63からなる。入力側スイッチ部61は、発電部1と中間蓄電部3とを接続する部位である。出力側スイッチ部62は、中間蓄電部3と蓄電部5とを接続する部位である。中間スイッチ部63は、複数のコンデンサ31を所定の接続状態で接続する部位である。本実施形態においては、入力側スイッチ部61、出力側スイッチ部62および中間スイッチ部63は、制御部2の指令によって切り替え動作を実行する。なお、制御部2とスイッチ部6とが一体的な部品として組み上げられた構成であっても良い。あるいは、中間蓄電部3と中間スイッチ部63とが一体的なパッケージユニットとして構成されていてもよい。
【0025】
入力側スイッチ部61は、制御部2の指令により、発電部1と中間蓄電部3との切断および接続を実行する。入力側スイッチ部61は、発電部1と中間蓄電部3とを接続する場合、たとえば入力経路611をその内部に生成する。入力経路611は、発電部1の出力端子と、中間スイッチ部63の任意の端子と、を接続するものである。
【0026】
出力側スイッチ部62は、制御部2の指令により、中間スイッチ部63と蓄電部5との切断および接続を実行する。
図1は、出力側スイッチ部62が中間スイッチ部63と蓄電部5とを切断している状態を示している。また、出力側スイッチ部62は、中間スイッチ部63と蓄電部5とを接続する場合、たとえば
図4に示す出力経路621をその内部に生成する。出力経路621は、中間スイッチ部63の任意の端子と、蓄電部5の入力端子とを接続するものである。
【0027】
中間スイッチ部63は、制御部2の指令により、中間蓄電部3の複数のコンデンサ31のうち任意の個数のコンデンサ31を選択して、これらのコンデンサ31を任意の接続状態で接続するものである。
図1に示す例においては、中間スイッチ部63は、コンデンサ311~318を互いに直列に繋ぐ中間経路631をその内部に生成させている。
【0028】
図2および
図3は、誘電エラストマー発電要素11における発電の原理を示している。誘電エラストマー発電要素11は、スイッチ部6の入力側スイッチ部61を介して中間蓄電部3に接続可能な状態とされている。
図2においては、誘電エラストマー発電要素11に、図中上下方向に向かう外力が加えられている。このため、誘電エラストマー発電要素11の誘電エラストマー層111が、図中上下方向に伸長されている。これにより、誘電エラストマー層111の面積が拡大し、厚さが縮小している。一対の電極層112は、誘電エラストマー層111に追従しており、面積が拡大している。この状態において、誘電エラストマー発電要素11をコンデンサとしてとらえた場合、その静電容量C1は、外力が加えられる前と比較して大きくなっている。この状態の誘電エラストマー発電要素11に、初期電圧を印加する。具体的には、静電容量C1の誘電エラストマー発電要素11に電圧V1を印加することにより、電流Iqが流れ、電荷Qが与えられる。この印加は、制御部2に内蔵された電源部から電圧を印加することによって実現されても良いし、蓄電状態とされた中間蓄電部3を利用して電圧を印加してもよい。
図2においては、便宜上、中間蓄電部3から印加された場合を示している。
【0029】
図3は、
図2に示す状態の後に、上記外力が弱められ、あるいはゼロとなることにより、
図2に示す状態から誘電エラストマー発電要素11が縮小した状態を示している。この状態においては、誘電エラストマー層111の面積が縮小し、厚さが増大している。一対の電極層112は、誘電エラストマー層111に追従しており、面積が縮小している。この状態において、誘電エラストマー発電要素11をコンデンサとしてとらえた場合、その静電容量C2は、上述した静電容量C1よりも小さくなっている。しかし、一対の電極層112に蓄えられた電荷Qは、一定である。このため、電圧V2と電圧V1との比は、静電容量C2と静電容量C1との比と、反比例の関係にあり、電圧V2は電圧V1と比べて高い。したがって、一対の電極層112から中間蓄電部3に電圧V1よりも高い電圧V2で出力電流Iwを受電する。これにより、初期電圧の印加に要する電力を上回る出力電力が得られる。これが、誘電エラストマー発電要素11における発電である。
【0030】
次に、誘電エラストマー発電システムA1の発電および蓄電の動作について、
図1、
図4~
図6を参照しつつ、以下に説明する。
【0031】
図1は、誘電エラストマー発電システムA1の発電部1において発電が行われている状態を示している。この状態においては、制御部2の指令により、中間スイッチ部63が、中間経路631を生成することにより、8つのコンデンサ311~コンデンサ318を互いに直列に接続している。本発明においては、入力モードにおいて、スイッチ部6の中間スイッチ部63によって互いに接続されるコンデンサ31の直列数を入力直列数と定義する。入力直列数は、上述した特定個数以下であり、本実施形態においては、入力直列数は、8個であり、特定個数と同数である。また、スイッチ部6の入力側スイッチ部61が、発電部1と中間スイッチ部63とを接続している。これにより、互いに直列に接続された8つのコンデンサ311~コンデンサ318が、発電部1に接続されている。一方、出力側スイッチ部62は、中間スイッチ部63と蓄電部5とを切断している。本発明において、このモードは、発電部1からの電力が中間蓄電部3に入力される、入力モードと定義される。なお、特定個数と入力直列数とが同数であることに限定されず、入力直列数が特定個数よりも小であってもよい。
【0032】
この状態で発電部1の誘電エラストマー発電要素11が伸長および収縮すると、
図2および
図3を参照して説明した原理により、誘電エラストマー発電要素11において発電がなされる。
【0033】
図5の上側のグラフは、横軸が時間軸であり、縦軸が中間蓄電部3への入力電圧Viである。入力電圧Viは、上述した電圧V2と電圧V1との差に相当する。図示された時刻T11~時刻T12において、制御部2の指令により、スイッチ部6が入力モードとされている。そして、誘電エラストマー発電要素11の伸長および収縮により、入力電圧Viが増加し、当該電圧に応じて中間蓄電部3へと電力が入力される。本実施形態においては、入力モードにおいてコンデンサ311~コンデンサ318が発電部1に接続されている。このため、互いに直列に接続されたコンデンサ311~コンデンサ318に、入力電圧Viで電力が入力される。すなわち、コンデンサ311~コンデンサ318のそれぞれには、入力電圧Viの1/8の電圧が印加されることとなる。
【0034】
次いで、制御部2の指令により、スイッチ部6は、
図4に示すように、発電部1と中間蓄電部3とを切断し、中間蓄電部3と蓄電部5とを接続する。本発明において、このモードは、中間蓄電部3から蓄電部5へと電力が出力される、出力モードと定義される。なお、入力モードと出力モードの切り替えは、任意のタイミングで行うことが可能であり、あらゆる判断基準によって制御部2によって判断される。たとえば、発電部1による発電の電圧(入力電圧Vi)を監視することにより、入力電圧Viが0か0に近い値である場合に、入力モードから出力モードに切り替えてもよい。あるいは、誘電エラストマー発電要素11の伸長および収縮状態を検出するセンサ(図示略)を用いて、誘電エラストマー発電要素11が有意な伸長および収縮をしていない場合に、入力モードから出力モードに切り替えてもよい。
【0035】
図示された例においては、制御部2の指令により、中間スイッチ部63内に中間経路632が生成され、8つのコンデンサ311~318が互いに並列に接続されている。そして、これらのコンデンサ311~コンデンサ318が、出力側スイッチ部62の出力経路621によって蓄電部5に接続されている。本発明においては、出力モードにおいて、スイッチ部6の中間スイッチ部63によって互いに接続されるコンデンサ31の直列数を出力直列数と定義する。出力直列数は、入力直列数未満の個数であり、図示された例においては、出力直列数は、1個である。この接続により、中間蓄電部3のコンデンサ311~コンデンサ318に蓄電された電力は、蓄電部5へと出力される。なお、
図5に示すように、本実施形態においては、時刻T11~時刻T12よりも長い時間である時刻T12~時刻T21の間に、コンデンサ311~318の電力を蓄電部5に出力している。また、出力電圧Voは、入力電圧Viよりも低い電圧であり、本実施形態においては、入力電圧Viの1/8である。時刻T12~時刻T21の時間は、コンデンサ311~318に蓄電された電力を、蓄電部5に蓄電するのに要する時間によって決定される。
【0036】
コンデンサ311~コンデンサ318に蓄電された電力が蓄電部5に蓄電されると、当該出力モードが完了する。この完了は、たとえばコンデンサ311~318の電荷状態を制御部2が監視することによって判断される。
【0037】
以上より、時刻T11~時刻T12において発電部1が発電した電力は、中間蓄電部3を介して蓄電部5に蓄電され、発電および蓄電の1サイクルが完了する。この後は、次の誘電エラストマー発電要素11における発電に対応して、制御部2は、スイッチ部6に入力モードをとらせる。なお、
図5においては、時刻T21において出力モードが完了すると、次の入力モードが開始された場合を示しているが、時刻T21において出力モードが完了した後に、所定時間において入力モードおよび出力モードのいずれでもない状態をとる動作例であってもよい。そして、時刻T21~時刻T22における入力モード(時刻T11~時刻T12における入力モードと同様)と、時刻T22~時刻T31における出力モード(時刻T12~時刻T21における出力モードと同様)によって次の発電および蓄電のサイクルが実行され、さらに、時刻T31~時刻T32における入力モード(時刻T11~時刻T12における入力モードと同様)と、時刻T32~時刻T33における出力モード(時刻T12~時刻T21における出力モードと同様)によってさらに次の発電および蓄電のサイクルが実行される。
【0038】
次に、誘電エラストマー発電システムA1の作用について説明する。
【0039】
本実施形態によれば、発電部1で発電された電力は、まず中間蓄電部3によって蓄電された後に蓄電部5へと出力される。コンデンサ31を用いた中間蓄電部3の蓄電は、化学反応等を伴わないため、発電部1で発電された電力を速やかに蓄電することができる。また、発電部1からの電力が中間蓄電部3に入力される入力モードにおける入力直列数よりも、中間蓄電部3から蓄電部5へと電力が出力される出力モードにおける出力直列数は少ない。このため、入力モードにおける中間蓄電部3への電圧よりも、出力モードにおける蓄電部5への電圧を低下させることが可能である。これは、蓄電部5による蓄電を適正な電圧で行うのに有利である。したがって、誘電エラストマー発電システムA1によれば、発電部1で発電した電力をより効率よく蓄電部5へ蓄電することができる。
【0040】
また、本実施形態においては、入力モードにおいて蓄電された8つのコンデンサ311~コンデンサ318のすべてが、出力モードにおいて互いに並列に接続され、出力直列数が1個に設定される。これにより、
図5に示す出力電圧Voを、入力電圧Viの1/8にまで低下させることが可能であり、効率よく蓄電するのに好ましい。なお、入力電圧Viと出力電圧Voとの比は、入力直列数と出力直列数との比となる。
【0041】
図6~
図9は、本発明の第2実施形態に基づく誘電エラストマー発電システムを示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0042】
図6は、本実施形態の誘電エラストマー発電システムA2の入力モードを示している。本実施形態においては、中間蓄電部3の特定個数が、誘電エラストマー発電システムA1と同様に8個である一方、入力直列数が4個とされている。すなわち、中間スイッチ部63は、制御部2の指令により、4つのコンデンサ311~314を互いに直列に接続させる中間経路631を生成している。このため、図示された入力モードにおいては、発電部1からの電力がコンデンサ311~314にのみ蓄電される。
【0043】
図7は、
図6に示す入力モードの後に、制御部2の指令によって実行される中間モードを示している。この中間モードにおいては、中間スイッチ部63が中間経路632を生成させ、4つのコンデンサ311~コンデンサ314を互いに並列に接続させている。本発明においては、入力モードによって蓄電された複数のコンデンサ31のすべてもしくはいずれかを、直列数が入力直列数よりも小である中間出力直列数となるように接続する。図示された例においては、蓄電された4つのコンデンサ311~コンデンサ314の全てを中間経路632によって並列に接続しており、直列数は、1個である。すなわち、中間出力直列数が、1個である例である。
【0044】
また、中間スイッチ部63は、制御部2の指令により、入力モードにおいて蓄電されたコンデンサ311~コンデンサ314とは異なるコンデンサ315~コンデンサ318を中間経路633によって互いに接続させている。本発明においては、入力数が中間出力直列数よりも大である中間入力直列数となるように接続する。図示された例においては、4つのコンデンサ315~コンデンサ318が、中間経路633によって互いに直列に接続されており、中間入力直列数が、4個である例である。
【0045】
そして、コンデンサ311~コンデンサ314とコンデンサ315~コンデンサ318とが互いに接続されることにより、コンデンサ311~コンデンサ314からコンデンサ315~コンデンサ318へと蓄電された電力が移される。
【0046】
図8は、
図7に示す中間モードの後に、制御部2の指令によって実行される出力モードを示している。この出力モードにおいては、制御部2の指令により、中間スイッチ部63が中間経路634を生成させ、中間モードにおいて蓄電されたコンデンサ315~コンデンサ318を互いに接続させている。この接続においては、コンデンサ315~コンデンサ318が、直列数が中入力直列数よりも小である出力直列数となるように接続される。図示された例においては、4つのコンデンサ315~コンデンサ318が互いに並列に接続されており、出力直列数は1個である。そして、出力側スイッチ部62の出力経路621によって、中間スイッチ部63が蓄電部5に接続される。これにより、コンデンサ315~コンデンサ318に蓄電された電力が、蓄電部5へと蓄電される。
【0047】
図9は、誘電エラストマー発電システムA2における入力モード、中間モードおよび出力モードを示すグラフである。時刻T11~時刻T12においては、入力電圧Viで入力モードが実行されている。次いで、時刻T12~時刻T13においては、中間モードが実行されている。中間モードでのコンデンサ311~コンデンサ315からの出力電圧Voは、入力電圧Viの1/4となっている。次いで、時刻T13~時刻T21においては、出力モードが実行されている。出力モードでのコンデンサ315~コンデンサ318からの出力電圧Voは、中間モードの出力電圧Voのさらに1/4となっており、入力モードの入力電圧Viの1/16となっている。
【0048】
このような実施形態によっても、発電部1で発電した電力をより効率よく蓄電部5へ蓄電することができる。また、本実施形態においては、入力モードと出力モードとの間に中間モードを実行することにより、
図9に示した例においては、出力モードにおける出力電圧Voを入力モードにおける入力電圧Viの1/16に低下させることができる。これは、入力モードにおける入力電圧Viと出力モードにおける出力電圧Voとの比が、入力直列数と中間出力直列数との比と、中間入力直列数と出力直列数との比と、を互いに乗じた比となることによる。
【0049】
本発明に係る誘電エラストマー発電システムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る誘電エラストマー発電システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0050】
A1,A2:誘電エラストマー発電システム
1 :発電部
2 :制御部
3 :中間蓄電部
5 :蓄電部
6 :スイッチ部
11 :誘電エラストマー発電要素
31 :コンデンサ
61 :入力側スイッチ部
62 :出力側スイッチ部
63 :中間スイッチ部
111 :誘電エラストマー層
112 :電極層
311,312,313,314,315,316,317,318:コンデンサ
611 :入力経路
621 :出力経路
631,632,633,634:中間経路
C1,C2:静電容量
Iq :電流
Iw :出力電流
Q :電荷
V1,V2 :電圧
Vi :入力電圧
Vo :出力電圧