(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】光学フィルム用粘着剤組成物、粘着剤層およびその製造方法、光学部材、ならびに画像表示装置
(51)【国際特許分類】
C09J 133/06 20060101AFI20220111BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20220111BHJP
C09J 133/02 20060101ALI20220111BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220111BHJP
C09J 183/02 20060101ALI20220111BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20220111BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220111BHJP
C08F 220/12 20060101ALI20220111BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220111BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220111BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20220111BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J133/14
C09J133/02
C09J11/06
C09J183/02
C09J175/04
C09J7/38
C08F220/12
B32B27/00 M
B32B27/30 A
G02B5/30
G02F1/1335 510
(21)【出願番号】P 2017110312
(22)【出願日】2017-06-02
【審査請求日】2020-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2016156890
(32)【優先日】2016-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】乾 州弘
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 達弘
(72)【発明者】
【氏名】小川 博史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 利行
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-014827(JP,A)
【文献】特開2011-132296(JP,A)
【文献】特表2011-509332(JP,A)
【文献】特開2016-108555(JP,A)
【文献】特開2006-169428(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0068436(KR,A)
【文献】特開2003-013027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 -201/10
B32B 1/00 - 43/00
G02B 5/30
G02F 1/1335- 1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート共重合体(A)、過酸化物(B)、および過酸化物以外の架橋剤(C)を含む光学フィルム用粘着剤組成物であって、
前記(メタ)アクリレート共重合体(A)が、(a1)アルキル(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位と、
(a2)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位および(a4)カルボキシル基を有するモノマー由来の構成単位の少なくとも一方と、
(a3)芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位と、
を含み、
前記(メタ)アクリレート共重合体(A)は、前記(メタ)アクリレート共重合体(A)を構成する構成単位の全量100質量%に対して、前記(a3)芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位を10質量%以上30質量%以下で含み、
前記過酸化物(B)は、1分間半減期温度が80℃以上125℃以下であり、
前記過酸化物以外の架橋剤(C)が、ブロックイソシアネート化合物を含まない、光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記過酸化物(B)の含有量が、前記(メタ)アクリレート共重合体(A)100質量部に対して、0.02質量部以上10質量部以下である、請求項1に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記過酸化物以外の架橋剤(C)の含有量が、前記(メタ)アクリレート共重合体(A)100質量部に対して、0.001質量部以上2質量部以下である、請求項1
または2に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート共重合体(A)は、当該(メタ)アクリレート共重合体(A)を構成する構成単位の全量100質量%に対して、前記(a2)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位を0.01質量%以上10質量%以下含む、請求項
1~3のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレート共重合体(A)は、当該(メタ)アクリレート共重合体(A)を構成する構成単位の全量100質量%に対して、前記(a4)カルボキシル基を有するモノマー由来の構成単位を、0質量%を超え10質量%以下含む、請求項
1~4のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリレート共重合体(A)は、当該(メタ)アクリレート共重合体(A)を構成する構成単位の全量100質量%に対して、成分(a5)を、0質量%を超え20質量%以下含み、
前記成分(a5)は、アルキル(メタ)アクリレートモノマー、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマーおよびカルボキシル基を有するモノマー以外の、モノマー由来の構成単位である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリレート共重合体(A)100質量部に対して、シランカップリング剤(D)を、0.01質量部以上1質量部以下さらに含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項8】
下記化学式1に示される構造を有するシリケートオリゴマー(E)をさらに含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【化1】
前記化学式1において、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、またはフェニル基であり;
X
1およびX
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、またはフェニル基であり;
nは1以上100以下の整数である。
【請求項9】
前記シリケートオリゴマー(E)が、メチルシリケートオリゴマーを含む、請求項
8に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項10】
前記シリケートオリゴマー(E)の重量平均分子量が、300以上30000以下である、請求項
8または9に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項11】
前記過酸化物以外の架橋剤(C)は、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤およびアジリジン系架橋剤からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1~
10のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物から形成されてなる、光学フィルム用粘着剤層。
【請求項13】
請求項
12に記載の光学フィルム用粘着剤層と、
前記粘着剤層の一方の面に設けられた第一の光学フィルムと、
を有する、光学部材。
【請求項14】
前記粘着剤層の前記第一の光学フィルムが設けられた面とは反対側の面に、ガラスまたは第二の光学フィルムをさらに有する、請求項
13に記載の光学部材。
【請求項15】
前記第一の光学フィルムと、前記光学フィルム用粘着剤層との間に、少なくとも1層の易接着処理層をさらに有する、請求項
13または14に記載の光学部材。
【請求項16】
前記第一の光学フィルムの、前記光学フィルム用粘着剤層と向き合う側の面に、第一の易接着処理層を有し、
前記光学フィルム用粘着剤層の、前記第一の光学フィルムと向き合う側の面に、第二の易接着処理層を有する、請求項
15に記載の光学部材。
【請求項17】
前記第一の光学フィルムが偏光板である、請求項
13~16のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項18】
請求項
13~17のいずれか1項に記載の光学部材を、少なくとも1つ用いた、画像表示装置。
【請求項19】
請求項1~
11のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物を、剥離処理した離型シート上に塗布し、次いで加熱処理して架橋反応させることを含む、光学フィルム用粘着剤層の製造方法。
【請求項20】
前記加熱処理の温度が80℃以上120℃以下である、請求項
19に記載の光学フィルム用粘着剤層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム用粘着剤組成物に関する。また、本発明は、当該光学フィルム用粘着剤組成物から形成される粘着剤層にも関する。さらに、本発明は、当該粘着剤層を用いた光学部材、および当該光学部材を用いた画像表示装置にも関する。さらにまた、本発明は、当該粘着剤層の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置の一種である液晶表示装置等の液晶パネルには、偏光フィルム(偏光板)が必要不可欠である。そのほかに、ディスプレイの表示品位を向上させるために、様々な光学フィルム等の光学部材が貼着されている。これらの光学部材を液晶パネルに貼着する際、通常、粘着剤が使用されている。また、2枚以上の同種もしくは異種の光学フィルム同士を貼着する際にも、通常、粘着剤が使用されている。
【0003】
粘着剤の必要特性としては、粘着剤の接着状態での耐久性が求められている。係る耐久性とは、従来の環境促進試験として、通常行われる加熱および加湿等による耐久試験に対して、粘着剤に起因する剥がれや浮き等の不具合が発生しない性質をいう。一方、近年では、車載用パネルに使用される光学フィルムにおいては、従来と比べてより優れた耐久性が求められている。すなわち、従来と比べてより高温かつ高湿環境下での耐久試験で、粘着剤に起因する剥がれや浮き等の不具合が発生しないことが求められている。
【0004】
また、粘着剤を使用して、光学フィルムを液晶パネルに貼り合わせる際、貼り合わせた位置を誤ったり、貼り合わせ面に異物が噛み込んだりしたような場合がある。そのような場合には、光学フィルムを液晶パネルから剥離し、再度の貼り合わせを行うことが必要である。特に、近年では、従来の液晶表示装置の作製工程に加え、ケミカルエッチング処理されたガラスを用いた薄型液晶パネル等の液晶表示装置の使用が増えていると共に、光学フィルムも薄く脆くなってきている。よって、かような薄型液晶表示装置や薄型光学フィルムに対して、従来の耐久性だけを目指した粘着剤を用いると、以下のような問題が出て来た。すなわち、薄型液晶表示装置や薄型光学フィルムが割れてしまったり、破断してしまったりするという問題である。このため、係る剥離工程において、リワーク性という粘着剤の特性が要求されるようになってきている。係るリワーク性とは、液晶表示装置等から糊残りなく、光学フィルムを容易に剥がすことができる再剥離性をいう。
【0005】
また、生産性を向上させるために、製造工程面において優れたハンドリング性を有することがより望ましい。
【0006】
かような粘着剤として、アクリル系粘着剤が広く使用されている。一般に、溶媒を含むアクリル系粘着剤を用いた貼り合わせは、以下のように行われる。すなわち、先ず(メタ)アクリレート系樹脂および架橋剤を含む粘着剤組成物を調製し、これを工程用のフィルムの剥離面側に塗布する。そして、塗布後の粘着剤組成物からなる層を乾燥し、その後硬化することにより、(メタ)アクリレート系の樹脂の間に架橋構造が形成される。工程用フィルム側に形成された粘着剤層を、被着体である光学フィルムの一面に転写させれば、工程用フィルムを含んだ光学部材(粘着型光学フィルム)が得られる。その後、工程用フィルムをはがした粘着剤層を有する光学フィルムを他方の被着体である別の光学フィルムや液晶パネルと貼り合わせる。これにより、2つの被着体の間が粘着剤層で密着される。このように、予め光学フィルムの一方の面に架橋処理を施した粘着剤層を形成しておくと、貼り合わせの後に固着のための乾燥工程を必要としなくなるというメリットがある。
【0007】
上記のような光学フィルム用粘着剤組成物は、これまで多くの提案がなされている。
【0008】
例えば、特許文献1には、下記成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)を含有する光学フィルム用粘着剤組成物が開示されている。前記成分(A)が少なくとも下記成分(a1)、(a2)および(a3)を共重合してなるアクリル系ポリマーである。前記成分(A)の重量平均分子量は80万~160万であり、且つMw/Mnは10~50である。前記(a1)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルであり、含有量が5~89.5重量%である。前記(a2)は芳香環含有モノマーであり、含有量が10~85重量%である。前記(a3)は水酸基含有モノマーであり、含有量が0.5~10重量%である。前記成分(B)はイソシアネート系架橋剤であり、成分(A)100重量部に対し0.005~5重量部を含有する。前記成分(C)はシランカップリング剤であり、成分(A)100重量部に対し0.05~1.0重量部を含む。前記成分(D)は架橋促進剤であり、成分(A)100重量部に対し0.001~0.5重量部を含有する。かような構成により、耐久性と光漏れ防止性を良好に維持しつつ、再剥離時の汚染や過酷な条件下での剥がれを抑制できる光学フィルム用粘着剤組成物が得られる。
【0009】
また、特許文献2には、(メタ)アクリル系ポリマーおよび架橋剤を含有してなる粘着剤が開示されている。前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー成分として、複素環含有アクリルモノマー3~10重量%、カルボキシル基含有モノマー0.5~5重量%、ヒドロキシ基含有モノマー0.05~2重量%、およびアルキル(メタ)アクリレート83~96.45重量%、を含む。前記(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量が150万~280万である。かような構成により、粘着剤層を薄型化した場合においても、耐久性を満足することができる。
【0010】
また、特許文献3には、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を含有する光学フィルム用粘着剤組成物が開示されている。前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレート(a1)67~96.99重量%、芳香環含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)1~20重量%、カルボキシル基含有モノマー(a3)2~10重量%、および、ヒドロキシ基含有モノマー(a4)0.01~3重量%、を含む。前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、Mwが160万以上であり、かつ、Mw/Mnが1.8以上10以下である。かような構成により、リワーク性および耐久性を満足でき、かつ周辺部の白ヌケによる表示ムラを改善できる粘着剤層を形成することができる。
【0011】
また、特許文献4および5には、(メタ)アクリル系ポリマーを含有し、固形分含有量が20重量%以上であり、溶剤の含有量が80重量%以下である光学フィルム用粘着剤組成物が開示されている。前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレート30~98.9重量%、重合性芳香環含有モノマー1~50重量%、ヒドロキシ基含有モノマー0.1~20重量%、およびカルボキシル基含有モノマー0~4重量%を共重合してなる。前記(メタ)アクリル系ポリマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量が30万~120万である。前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位としてカルボキシル基含有モノマーを含まない。かような構成により、再剥離性に優れ、耐久性と塗工面の平滑性と溶剤使用量の削減とをバランス良く達成できると共に、粘着剤層中のマイクロゲル発生を低減できる。
【0012】
また、特許文献6には、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)とイソシアネート系架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物が開示されている。前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重量平均分子量が150万~250万であり、水酸基を有するモノ
マー単位と、芳香環を有するモノマー単位とを含有する。なお、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、カルボキシル基を有するモノマー単位を含有しない。前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、前記水酸基を有するモノマー単位を1~10質量%含有し、前記芳香環を有するモノマー単位を1~10質量%含有する。かような構成により、透明導電膜等の被着体に酸成分による悪影響を与えず、かつ、耐久性に優れた粘着剤組成物とすることができる。
【0013】
また、特許文献7には、アクリル系ポリマー、架橋剤およびシランカップリング剤を含有する粘着剤を開示されている。前記アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレート(a1)、芳香環構造を有する(メタ)アクリレート(a2)、およびモノマー(a3)を含有する。前記成分(a1)の含有割合は、49.9~84.9重量%である。前記成分(a2)の含有割合は、15~50重量%である。前記成分(a3)は、(a1)成分および(a2)成分を除くモノマーであり、その含有割合が、0.1~5重量%である。前記アクリル系ポリマーは、Mwが140万~250万、かつMw/Mnが3~10である。かような構成により、耐久性、表示均一性が良好であり、かつ、ハンドリング性の良好な粘着型光学フィルムを提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2007-138057号公報
【文献】特開2007-277510号公報
【文献】特開2011-105918号公報
【文献】特開2012-140578号公報
【文献】特開2012-140579号公報
【文献】特開2014-152317号公報
【文献】特開2009-276451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、本発明者らの検討によると、上記特許文献1~7に記載の粘着剤層を以ってしても、以下の課題1~3を同時に解決できないことが判明した。課題1とは、耐久性とリワーク性との両立が不十分であったことである。課題2とは、エージング処理を必要としないというハンドリング性が十分ではなかったことである。課題3とは、オリゴマー汚染が生じて塗工ラインや液晶パネルなどを汚染してしまったりすることである。
【0016】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、光学フィルム用粘着剤組成物において、上記の課題1~3を同時に解決できる手段を提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明の別の目的は、かような粘着剤組成物から形成される粘着剤層、当該粘着剤層を用いた光学部材、および当該光学部材を用いた画像表示装置を提供することである。
【0018】
また、本発明のさらなる別の目的は、粘着剤層の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、特定の構成成分を有する粘着剤組成物によって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち、本発明は、(メタ)アクリレート共重合体(A)、過酸化物(B)、および
過酸化物以外の架橋剤(C)を含む光学フィルム用粘着剤組成物であって、前記過酸化物(B)は、1分間半減期温度が80℃以上125℃以下であり、前記過酸化物以外の架橋剤(C)が、ブロックイソシアネート化合物を含まない、光学フィルム用粘着剤組成物である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光学フィルム用粘着剤組成物において、耐久性とリワーク性とを両立させると共に、エージング処理を必要としないというハンドリング性をより向上させ、且つオリゴマー汚染も十分に抑制しうる手段が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について、説明する。
【0023】
{光学フィルム用粘着剤組成物}
本発明に係る光学フィルム用粘着剤組成物は、(メタ)アクリレート共重合体(A)、過酸化物(B)、および過酸化物以外の架橋剤(C)を含み、前記過酸化物(B)は、1分間半減期温度が80℃以上125℃以下であり、前記過酸化物以外の架橋剤(C)が、ブロックイソシアネート化合物を含まない。
【0024】
以下、本発明に係る光学フィルム用粘着剤組成物を構成する各成分について、順に説明する。
【0025】
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタアクリレートの総称である。(メタ)アクリル酸等の(メタ)を含む化合物等も同様に、名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。また、「(メタ)アクリレート共重合体(A)」を、「共重合体(A)」とも称する。
【0026】
<(メタ)アクリレート共重合体(A)>
本発明に係る光学フィルム用粘着剤組成物は、(メタ)アクリレート共重合体(A)を必須に含む。共重合体(A)が後述の過酸化物(B)および/または過酸化物以外の架橋剤(C)と反応して架橋構造を形成することにより、接着性(粘着性)が発揮される。
【0027】
本発明に係る共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)として、特に制限されないが、耐久性および塗工時の生産性の観点から、80万以上250万以下であることが好ましく、130万以上220万以下であることがより好ましく、150万以上200万以下であることがさらに好ましい。本発明に係る共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、後述する重合反応で使用する重合開始剤や、反応温度および反応時間などの反応条件等を適宜調整することによって当業者であれば容易に制御することができる。なお、本明細書において、重量平均分子量は実施例に示す方法によって測定されうる。
【0028】
本発明において、共重合体(A)を構成する構成単位は、特に制限されないが、(a1)アルキル(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位(以下、単に「成分(a1)」とも称する)を含むことが好ましい。また、成分(a1)と、(a2)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位(以下、単に「成分(a2)」とも称する)および(a4)カルボキシル基を有するモノマー由来の構成単位(以下、単に「成分(a4)」とも称する)の少なくとも一方と、を含むことも好ましい。すなわち、本発明に係る共重合体(A)は、成分(a1)と、成分(a2)と、を含むことが好ましく;成分(a1)と、成分(a4)と、を含むことも好ましく;さらに成分(a1)と、成分(a2)と、成分(a4)と、を含むことも好ましい。また、本発明に係る共重合体(A)は、(a3)芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位(以下、
単に「成分(a3)」とも称する)を含むことも好ましい。さらに、本発明に係る共重合体(A)は、上記成分(a1)と、上記成分(a2)および成分(a4)の少なくとも一方と共に、上記成分(a3)をさらに含むことがより好ましい。
【0029】
なお、本明細書において、「共重合体Xが、モノマーY1由来の構成単位と、モノマーY2由来の構成単位と、を含む」とは、共重合体Xを共重合によって得る際に、使用される原料モノマーとしては、モノマーY1とモノマーY2とを含むことを意味する。したがって、例えば、上述した(a1)アルキル(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位と、(a2)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位と、(a3)芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位と、を含む場合では、本発明に係る共重合体(A)は、換言すると、(a1)アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、(a2)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーと、(a3)芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマーと、を共重合してなる共重合体である。
【0030】
以下、本発明に係る共重合体(A)を構成できる各モノマー由来の構成単位について順に説明する。
【0031】
〔(a1)アルキル(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位〕
本発明に係る共重合体(A)は、成分(a1)を含むことが好ましい。かような成分(a1)が、本発明に係る共重合体(A)の構成単位として含まれることによって、粘着性の確保や基本特性を確保する意義を有すると考えられる。
【0032】
本発明において、アルキル(メタ)アクリレートモノマーの構造は、特に制限されず、(メタ)アクリレートのエステル部位に、アルキル基が導入されている形態であれば、特に制限されない。
【0033】
係るアルキル基の炭素数は特に制限はないが、汎用性、価格および取り扱い等の観点から1以上20以下であることが好ましく、1以上12以下がより好ましく、1以上10以下がさらにより好ましく、1以上8以下であることがさらに好ましく、1以上6以下であることが特に好ましい。また、アルキル基は、直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状のいずれであってもよいが、ガラス転移温度を低くする観点から、直鎖状または分枝鎖状であることが好ましい。なお、アルキル基が環状の場合、炭素数は3以上である。
【0034】
係るアルキル基としては、特に制限されないが、メチル基エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、シクロヘキシル基、1-メチルシクロヘキシル基、n-ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、イソヘプチル基、t-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、t-オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、へプタデシル基、またはオクタデシル基等が挙げられる。特に、粘着性の確保や基本特性を確保する観点から、メチル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基が好ましい。
【0035】
よって、アルキル(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノ
ニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、加熱耐久性および接着力の観点から、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、これらは単独または2種以上混合して用いることができる。
【0036】
本発明に係る共重合体(A)における成分(a1)の含有量(原料モノマーとしてのアルキル(メタ)アクリレートモノマーの配合量)は、特に制限されないが、後述する他の原料モノマーの含有量との良好なバランスや、耐久性の向上、光漏れの抑制等の観点から、当該共重合体(A)を構成する構成単位の全量100質量%に対して、50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、60質量%以上93質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上90質量%以下であることが特に好ましい。なお、本明細書において、「共重合体(A)を構成する構成単位の全量100質量%」とは、共重合体(A)を共重合により得る際に、使用される全ての原料モノマーの全量100質量%であることを意味する。
【0037】
〔(a2)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位〕
本発明に係る共重合体(A)は、(a2)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位を含むことが好ましい。かような成分(a2)が、本発明に係る共重合体(A)の構成単位として含まれることによって、リワーク性が向上し、また、成分(a2)は、分子間架橋剤との反応性に富むため、後述する粘着剤層の凝集性や耐熱性を向上する意義を有すると考えられる。
【0038】
本発明において、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの構造は、特に制限されず、(メタ)アクリレートモノマーの一部にヒドロキシル基が導入されている形態であれば、特に制限されない。
【0039】
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等が挙げられ、さらに、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物等が挙げられる。なかでも、後述するイソシアネート系架橋剤を使用する際に、架橋点として効率良く機能する観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。なお、これらは単独または2種以上混合して用いることができる。
【0040】
本発明に係る共重合体(A)における成分(a2)の含有量(原料モノマーとしてのヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの配合量)は、特に制限されないが、後述するイソシアネート系架橋剤を使用する際に架橋点を良いバランスで確保することにより、耐久性を向上させる観点から、当該共重合体(A)を構成する構成単位の全量100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.1
質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0041】
〔(a3)芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位〕
本発明に係る共重合体(A)は、(a3)芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位をさらに含むことがより好ましい。かような成分(a3)は、光学フィルム用粘着剤組成物において、主に光漏れの抑制に寄与しうる。
【0042】
本発明において、芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマーの構造は、特に制限されず、その構造中に芳香環(芳香族環)および(メタ)アクリロイル基を含むものであれば、いかなる構造を有するものであってもよい。ここで、芳香環としては、特に制限はないが、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環等が挙げられる。
【0043】
芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、ポリスチリル(メタ)アクリレート等のベンゼン環を有するもの;ヒドロキシエチル化β-ナフトールアクリレート、2-ナフトエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチルアクリレート、2-(4-メトキシ-1-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート等のナフタレン環を有するもの;ビフェニル(メタ)アクリレート等のビフェニル環を有するものが挙げられる。なかでも、光漏れを抑制し、かつ耐久性を確保しやすくなるという観点から、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、が好ましい。なお、これらは1種のみを含んでもよいし、2種以上を組み合わせて含んでもよい。
【0044】
本発明に係る共重合体(A)における成分(a3)の含有量(原料モノマーとしての芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマーの配合量)は、特に制限されないが、光漏れを十分に抑制できると共に耐久性確保の観点から、当該共重合体(A)を構成する構成単位の全量100質量%に対して、10質量%以上30質量%以下であることが好ましく、10.5質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、11質量%以上20質量%以下であることが特に好ましい。
【0045】
〔(a4)カルボキシル基を有するモノマー由来の構成単位〕
本発明において、共重合体(A)は、任意に、(a4)カルボキシル基を有するモノマー由来の構成単位をさらに含むことができる。かような成分(a4)は、光学フィルム用粘着剤組成物において、主に耐久性と液晶パネルとの密着性確保に寄与しうる。
【0046】
本発明において、カルボキシル基を有するモノマーの構造は、特に制限されず、その構造中にカルボキシル基および重合性の不飽和結合を含むものであれば、いかなる構造を有するものであってもよい。
【0047】
カルボキシル基を有するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、およびオレイン酸等が挙げられる。なかでも、他の(メタ)アクリルモノマーとの共重合性が優れているという観点から、(メタ)アク
リル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。なお、これらは1種のみを含んでもよいし、2種以上を組み合わせて含んでもよい。
【0048】
成分(a4)をさらに含む場合の成分(a4)の含有量(原料モノマーとしてのカルボキシル基を有するモノマーの配合量)は、特に制限されないが、耐久性確保とリワーク性を悪化させないという観点から、当該共重合体(A)を構成する構成単位の全量100質量%に対して、0質量%を超え10質量%以下であることが好ましく、0質量%を超え8質量%以下であることがより好ましく、0質量%を超え5質量%以下であることが特に好ましい。
【0049】
〔(a5):前記成分(a1)、成分(a2)、成分(a3)、および成分(a4)以外の、モノマー由来の構成単位〕
本発明に係る共重合体(A)は、任意に、前記成分(a1)、成分(a2)、成分(a3)、および成分(a4)以外のモノマー由来の構成単位(以下、単に「成分(a5)」とも称する)を含むことができる。なお、本発明において、成分(a1)、成分(a2)、成分(a3)、成分(a4)および成分(a5)の合計量は100質量%とする。すなわち、例えば共重合体(A)が、前記成分(a1)、成分(a2)、成分(a3)、成分(a4)および成分(a5)由来の構成単位を全て含む場合では、成分(a1)、成分(a2)、成分(a3)、成分(a4)および成分(a5)の合計量が100質量%であり、前記成分由来の構成単位のうち、いずれか1つ以上を含まない場合では、残りの成分の合計量が100質量%である。
【0050】
成分(a5)を構成する原料モノマーとしては、特に制限されず、例えば、アルコキシアルキル基またはアルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリレートモノマーが好適に用いられる。
【0051】
アルコキシアルキル基またはアルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリレートモノマーの例として、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート;エトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ-トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルオキシ-ジジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n=4-10)、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコールアクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
また、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するアクリルモノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド等のアミノ基を有するアクリルモノマー;(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有するアクリルモノマー;2-メタクリロイルオキシエチルジフェニルホスファート(メタ)アクリレート、トリメタクリロイルオキシエチルホスファート(メタ)アクリレート、トリアクリロイルオキシエチルホスファート(メタ)アクリレート等のリン酸基を有するアクリルモノマー;スルホプロピル(メタ)アクリレートナトリウム、2-スルホエチル(メ
タ)アクリレートナトリウム、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基を有するアクリルモノマー;ウレタン(メタ)アクリレート等のウレタン基を有するアクリルモノマー等が挙げられる。;p-tert-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、o-ビフェニル(メタ)アクリレート等のフェニル基を有するアクリルビニルモノマー;2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエチル)シラン、ビニルトリアセチルシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン基を有するビニルモニマー;スチレン、クロロスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリロニトリル、ビニルピリジン等も、成分(a5)を構成する原料モノマーとして挙げられる。
【0053】
なお、上述したものは、成分(a5)として単独または2種以上混合して用いることができる。また、本発明に係る共重合体(A)を製造する際に、後述する架橋剤との反応を容易に制御できるという観点から、成分(a5)として、共重合性の問題で分子量が高くなりにくいなどの問題から、オレフィン系モノマーを含有しないほうが好ましい。
【0054】
成分(a5)をさらに含む場合の成分(a5)の含有量(前記(a1)、(a2)、(a3)および(a4)以外の原料モノマーの配合量)は、特に制限されないが、架橋性確保と耐久性確保の観点から、当該共重合体(A)を構成する構成単位の全量100質量%に対して、0質量%を超え20質量%以下であることが好ましく、0質量%を超え10質量%以下であることがより好ましく、0質量%を超え5質量%以下であることが特に好ましい。
【0055】
〔(メタ)アクリレート共重合体(A)の製造方法〕
次に、共重合体(A)の製造方法について説明する。本発明において、共重合体(A)の製造方法は特に制限されず、重合開始剤を使用する溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、薄膜重合法、噴霧重合法など従来公知の方法を用いることができる。重合制御の方法としては、断熱重合法、温度制御重合法、等温重合法などが挙げられる。重合開始剤は、熱重合開始剤、光重合開始剤のいずれを用いてもよい。また、重合開始剤により重合を開始させる方法の他にまたはそれに加えて、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射して重合を開始させる方法を採用することもできる。なかでも、熱重合開始剤を用いた溶液重合法または光重合開始剤を用いた塊状重合法が、分子量の調節が容易であり、また不純物も少なくできるため、より好ましい。
【0056】
熱重合開始剤を用いた溶液重合法では、共重合体(A)の原料となるモノマー溶液、例えば、アルキル(メタ)アクリレートモノマー、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマー、ならびに任意に含まれるカルボキシル基を有するモノマー、および任意に含まれる前記以外のモノマーからなる原料モノマー溶液に熱重合開始剤を添加し、重合反応を行う。より詳細には、溶剤として酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等を用い、原料モノマーの合計量100質量部に対して、熱重合開始剤を好ましくは0.01質量部以上1質量部以下を添加し、窒素雰囲気下で、例えば反応温度40℃以上90℃以下(あるいは60℃以上90℃以下)で、3時間以上10時間以下反応させる方法が挙げられる。
【0057】
熱重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2.4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2.4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-
2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドレイト、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレイト、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾ化合物;t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物が挙げられる。これら熱重合開始剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0058】
光重合開始剤を用いた塊状重合法では、例えば、原料モノマーと、光重合開始剤とを添加し、窒素雰囲気下で反応開始温度を20℃以上35℃以下として活性エネルギー線を照射する。反応系内の温度が、反応開始温度から5℃以上15℃以下上昇した段階で、反応系内に空気を導入するなどして反応を停止させ、共重合体(A)を得る方法が挙げられる。
【0059】
塊状重合法で用いられる活性エネルギー線の例としては、例えば、紫外線、レーザー線、α線、β線、γ線、X線、電子線などが挙げられるが、制御性および取り扱い性の良さ、コストの点から紫外線が好適に用いられる。より好ましくは、波長200nm以上400nm以下の紫外線が用いられる。紫外線は、高圧水銀灯、マイクロ波励起型ランプ、ケミカルランプ、ブラックライトなどの光源を用いて照射することができる。照度は3.2mW/cm2以上5.6mW/cm2以下が好ましい。
【0060】
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノンをはじめとするベンゾフェノン類;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインエーテル類;4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノンなどが挙げられる。これら光重合開始剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0061】
光重合開始剤は市販品を用いてもよく、市販品の例としては、例えばイルガキュア(登録商標)184、819、907、651、1700、1800、819、369、261、ダロキュア(登録商標)TPO、ダロキュア(登録商標)1173(以上、BASFジャパン株式会社製)、エザキュア(登録商標)KIP150、TZT(以上、DKSHジャパン株式会社製)、カヤキュア(登録商標)BMS、DMBI(以上、日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
【0062】
光重合開始剤の使用量は、原料モノマーの合計量100質量部に対して、好ましくは0.0005質量部以上1質量部以下、より好ましくは0.002質量部以上0.5質量部以下である。
【0063】
また、共重合体(A)の分子量を調節するために、連鎖移動剤を使用することもできる。例えば、メチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ベンジルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸およびそのエステル、2-エチルヘキシルチオグリコール、チオグリコール酸オクチルなどのメルカプタン類;メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、イソプロパノール、t-ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、アリルアルコールなどのアルコール類;クロルエタン、フルオロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒドなどのカルボニル類;メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、α-メチルスチレンなどが挙げられる。これらは、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0064】
<過酸化物(B)>
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物には、必須成分として過酸化物(B)を含む。なお、本明細書において、「過酸化物」とは、分子構造内にパーオキサイド構造「-O-O-」を有する化合物を意味する。
【0065】
本発明において、過酸化物(B)は、1分間半減期温度が80℃以上125℃以下である。1分間半減期温度が80℃未満の過酸化物を用いると粘着剤溶液の配合後の保存安定性が悪化するおそれがあり、他方、1分間半減期温度が125℃を超える過酸化物を用いると、低温の乾燥条件での過酸化物による効果が期待出来ない。その一方で、1分間半減期温度が80℃以上125℃以下であると、係る過酸化物(B)を低温かつ短時間で分解することができ、かような過酸化物(B)を用いることで、本発明の光学フィルム用粘着剤組成物から光学フィルム用粘着剤層を形成する際に、低温かつ短時間で加熱処理することができるため、粘着剤層の基材を構成する素材などが、変質や変形してしまう可能性を回避できる観点から好ましい。
【0066】
「過酸化物の半減期」とは、過酸化物の分解速度を表す指標であって、過酸化物の残存量が半分になるまでの時間を意味する。ある時間で半減期を得るための分解温度や、ある温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログ等に記載されており、例えば、日油株式会社発行の有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)に記載されている。
【0067】
本発明において、過酸化物(B)は、架橋剤として働くものであってもよく、重合開始剤として働くものであってもよく、またはその両方の役割を有していてもよい。
【0068】
本発明に係る過酸化物(B)の具体例として、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度88.3℃)、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(同90.6℃)、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(同92.1℃)、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート(同92.4℃)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート(同103.5℃)、t-ヘキシルパーオキシピバレート、(同109.1℃)、t-ブチルパーオキシピバレート(同110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(同116.4℃)、ビス-n-オクタノイルパーオキシド(同117.4℃)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(同124.3℃)などが挙げられる。なかでも、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエートが好ましく用いられる。これらは、1種のみで用いてもよいが、反応性を調節する観点から2種以上併用することもまた好ましい。2種以上
併用する例としては、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートおよびジラウロイルパーオキシドの組合せが好適である。
【0069】
また、過酸化物(B)は、合成してもよいし市販品を使用してもよい。
【0070】
市販品としては、例えば、日油株式会社製の商品名:「パーロイル(登録商標)IB」(1分間半減期温度85.1℃)、「パークミル(登録商標)ND」(同94.0℃)、「パーロイル(登録商標)NPP」(同94.0℃)、「パーロイル(登録商標)IPP」(同88.3℃)、「パーロイル(登録商標)SBP」(同92.4℃)、「パーオクタ(登録商標)ND」(同92.4℃)、「パーロイル(登録商標)TCP」(同92.1℃)、「パーロイル(登録商標)OPP」(同90.6℃)、「パーヘキシル(登録商標)ND」(同100.9℃)、「パーブチル(登録商標)ND」(同103.5℃)、「パーブチル(登録商標)NHP」(同104.6℃)、「パーヘキシル(登録商標)PV」(同109.1℃)、「パーブチル(登録商標)PV」(同110.3℃)、「パーロイル(登録商標)355」(同112.6℃)、「パーロイル(登録商標)L」(同116.4℃)、「パーオクタ(登録商標)O」(同124.3℃)、および「パーヘキサ(登録商標)25O」(同118.8℃)などが挙げられる。
【0071】
本発明において、過酸化物(B)の含有量は、特に制限されないが、前記共重合体(A)100質量部に対して、0.02質量部以上10質量部以下であることが好ましい。過酸化物(B)の含有量が、0.02質量部以上であると、過酸化物の効果が期待できる。他方、10質量部以下であると、架橋密度が上がり過ぎず耐久性を悪化させることがなく、粘着剤液の安定性を悪くしたりすることも回避できるからである。
【0072】
また、高温での加熱耐久性をより満足させるという観点から、過酸化物(B)の含有量は、前記共重合体(A)100質量部に対して、0.05質量部以上9質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上5質量部以下であることが特に好ましい。
【0073】
<過酸化物以外の架橋剤(C)>
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物には、必須成分として、過酸化物以外の架橋剤(C)を含む。過酸化物以外の架橋剤(C)は、共重合体(A)と反応して架橋構造を形成するため、光学フィルム用粘着剤組成物において、主に接着性(粘着性)および耐久性に寄与しうる。また、ここで「過酸化物以外の」と規定しているのは、上述した「過酸化物(B)」と区別するためである。
【0074】
本発明において、前記過酸化物以外の架橋剤(C)は、ブロックイソシアネート化合物を含まない。なお、「ブロックイソシアネート化合物」とは、ブロック化剤(「保護基」とも称する)を用いて、イソシアネート基が保護されたイソシアネート化合物である。
【0075】
従来、塗料などの硬化剤としてブロックイソシアネート化合物が一般的に使用されているが、高温で長時間の加熱処理が必要とされている。これに対して、例えば特開2011-132297号公報によれば、過酸化物とブロックイソシアネート化合物とを併用することによって、低温および/または短時間で粘着剤を硬化することができる発明が開示されている。
【0076】
しかしながら、本発明者らの研究によると、過酸化物とブロックイソシアネート化合物とを併用する場合において、得られる粘着剤組成物の耐久性が低下してしまう可能性があることが判明した。そこで、本発明者らの研究により、敢えてブロックイソシアネート化合物を含まない架橋剤(C)と、上述した特定の過酸化物(B)とを併用することにより、特開2011-132297号公報に記載の技術よりも低温かつ短時間で粘着剤を硬化
することができ、その上、得られた粘着剤組成物の耐久性も向上できることが見出され、本発明の完成に至った。
【0077】
本発明において、過酸化物以外の架橋剤(C)は、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤およびアジリジン系架橋剤からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。以下では、各種の架橋剤について説明する。
【0078】
〔イソシアネート系架橋剤〕
本発明において、過酸化物以外の架橋剤(C)として、イソシアネート系架橋剤が好ましく用いられる。この場合において、上述した通り、イソシアネート系架橋剤として、ブロック化されていないイソシアネート化合物の形態で使用される。
【0079】
本発明において、好適に用いられるイソシアネート系架橋剤としては、トリアリルイソシアヌレート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリデンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)などの芳香族ジイソシアネート類;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ジイソシアネート類;トランスシクロヘキサンー1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6-XDI(水添XDI)、H12-MDI(水添MDI)などの脂環式ジイソシアネート類;上記ジイソシアネートのカルボジイミド変性ジイソシアネート類;またはこれらのイソシアヌレート変性ジイソシアネート類などが挙げられる。上記イソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらイソシアネート化合物のビウレット体やイソシアヌレート体も好適に使用することができる。
【0080】
また、これらのイソシアネート系架橋剤は、合成したものを使用してもよいし、市販品を使用しても構わない。
【0081】
市販品としては、例えば、コロネート(登録商標)L、コロネート(登録商標)HL、コロネート(登録商標)HX、コロネート(登録商標)2030、コロネート(登録商標)2031(以上、東ソー株式会社製)、タケネート(登録商標)D-102、タケネート(登録商標)D-110N、タケネート(登録商標)D-131N、タケネート(登録商標)D-200、タケネート(登録商標)D-202(以上、三井化学株式会社製)、デュラネート(登録商標)24A-100、デュラネート(登録商標)TPA-100、デュラネート(登録商標)TKA-100、デュラネート(登録商標)P301-75E、デュラネート(登録商標)E402-90T、デュラネート(登録商標)E405-80T、デュラネート(登録商標)TSE-100、デュラネート(登録商標)D-101、デュラネート(登録商標)D-201(以上、旭化成ケミカルズ株式会社製)、スミジュール(登録商標)N-75、N-3200、N-3300(以上、住化バイエルウレタン株式会社)等が挙げられる。これらの中で、コロネート(登録商標)L、コロネート(登録商標)HL、コロネート(登録商標)HX、タケネート(登録商標)D-110N、デュラネート(登録商標)24A-100、デュラネート(登録商標)TPA-100が挙げられる。なかでも、タケネート(登録商標)D-110N、タケネート(登録商標)D-131N、コロネート(登録商標)L、コロネート(登録商標)HX、デュラネート(登録商標)24A-100が好ましい。
【0082】
〔カルボジイミド系架橋剤〕
本発明において、カルボジイミド系架橋剤は、特に制限されないが、一例を挙げると、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドが使用される。
【0083】
上記脱炭酸縮合反応に供されるジイソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1-メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0084】
また、上記脱炭酸縮合反応に用いられるカルボジイミド化触媒としては、例えば、1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-2-ホスホレン-1-オキシド、あるいはこれらの3-ホスホレン異性体等のホスホレンオキシド等が挙げられる。
【0085】
上記高分子量ポリカルボジイミドは、合成したものを使用してもよいし、市販品を使用しても構わない。
【0086】
市販品としては、例えば、日清紡ケミカル株式会社製のカルボジライト(登録商標)シリーズが挙げられる。なかでも、カルボジライト(登録商標)V-01、V-03、V-05、V-07、V-09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0087】
〔オキサゾリン系架橋剤〕
本発明において、オキサゾリン系架橋剤は、特に制限されないが、アクリル骨格またはスチレン骨格からなる主鎖を含み、その主鎖の側鎖にオキサゾリン基を有しているオキサゾリン基含有アクリル/スチレン系ポリマーや、アクリル骨格からなる主鎖を含み、その主鎖の側鎖にオキサゾリン基を有しているオキサゾリン基含有アクリル系ポリマーといった、オキサゾリン基含有ポリマーが好ましく使用される。
【0088】
オキサゾリン基としては、例えば、2-オキサゾリン基、3-オキサゾリン基、4-オキサゾリン基などが挙げられ、なかでも、2-オキサゾリン基が好ましい。
【0089】
また、上記オキサゾリン基含有ポリマーは、オキサゾリン基以外に、ポリオキシアルキレン基を有していてもよい。
【0090】
オキサゾリン基含有ポリマーとしては、具体的には、(株)日本触媒製のエポクロス(登録商標)WS-300、エポクロス(登録商標)WS-500、エポクロス(登録商標)WS-700などのオキサゾリン基含有アクリル系ポリマー、例えば、(株)日本触媒製のエポクロス(登録商標)K-1000シリーズ、エポクロス(登録商標)K-2000シリーズなどのオキサゾリン基含有アクリル/スチレン系ポリマーなどが挙げられる。
【0091】
〔エポキシ系架橋剤〕
本発明において、エポキシ系架橋剤は、特に制限されず、公知のエポキシ系架橋剤を適宜採用することができる。市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)製の「TETR
AD-C」、「TETRAD-X」、株式会社ADEKA製の「アデカレジンEPUシリーズ」や「アデカレジンEPRシリーズ」、株式会社ダイセル製の「セロキサイド」などが挙げられる。特に、これらのような液状エポキシ樹脂は、光学フィルム用粘着剤組成物を製造する際の混合操作が容易になる点で好ましい。
【0092】
〔アジリジン系架橋剤〕
本発明において、アジリジン系架橋剤は、特に制限されないが、アジリジン環を複数有する多官能アジリジン化合物を好適に用いることができる。多官能アジリジン化合物としては、例えば、米国特許第3,225,013号明細書、米国特許第4,490,505号明細書、及び米国特許第5,534,391号明細書、特開2003-104970号明細書に開示された化合物等が挙げられる。
【0093】
また、アジリジン系架橋剤の市販品として、例えば、(株)日本触媒製のケミタイト(登録商標)PZ-33、ケミタイト(登録商標)DZ-22Eなどが挙げられる。
【0094】
本発明において、過酸化物以外の架橋剤(C)は、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、およびアジリジン系架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む限りにおいては、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。2種以上を併用する場合は、同じ系統の架橋剤を2種以上(例えば、イソシアネート系架橋剤を2種)組み合わせてもよいし、異なる系統の架橋剤をそれぞれ1種以上(例えば、イソシアネート系架橋剤を1種とカルボジイミド系架橋剤を1種)組み合わせても構わない。
【0095】
本発明に係る光学フィルム用粘着剤組成物における過酸化物以外の架橋剤(C)の含有量は、特に制限されないが、前記共重合体(A)100質量部に対して、0.001質量部以上2質量部以下であることが好ましい。過酸化物以外の架橋剤(C)の含有量が0.001質量部以上であると、架橋効果が十分に得られ、耐久性を確保することができ、また糊欠け性の点においても良好であり、一方、含有量が2質量以下であると、粘着剤層が硬くなり過ぎず、耐久性を確保することができる。なお、本明細書において、「糊欠け性」とは、本発明の粘着剤組成物を用いた粘着剤層を有する光学部材(例えば、偏光板等)を打ち抜いたときに、該光学部材の端部(切断面)から粘着剤層が欠けてしまう性質をいう。「糊欠け性」の程度は、実施例に記載された基準によって評価する。
【0096】
また、架橋効果発現による耐久性がさらに確保される観点から、過酸化物以外の架橋剤(C)の含有量は、前記共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上1.5質量部以下であることがより好ましく、0.05質量部以上1.0質量部以下であることが特に好ましい。
【0097】
<シランカップリング剤(D)>
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、シランカップリング剤(D)をさらに含むことが好ましい。シランカップリング剤(D)は、光学フィルム用粘着剤組成物において、主に耐久性の向上や、被着体がガラスである場合におけるガラスとの密着性向上に寄与しうる。なお、本明細書において、「シランカップリング剤」とは、シロキサン結合(Si-O-Si結合)を有さず、分子内に2以上の反応基を有する化合物を意味する。
【0098】
本発明において、シランカップリング剤(D)は、特に制限されないが、具体的には、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-オク
チルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス-(3-〔トリエトキシシリル〕プロピル)テトラスルフィド、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。さらには、エポキシ基(グリシドキシ基)、アミノ基、メルカプト基、(メタ)アクリロイル基等の官能基を有するシランカップリング剤と、これらの官能基と反応性を有する官能基とを含有するシランカップリング剤、他のカップリング剤、ポリイソシアネートなどを、各官能基について任意の割合で反応させて得られる加水分解性シリル基を有する化合物も使用できる。
【0099】
上記シランカップリング剤(D)は、合成してもよいし市販品を使用してもよい。シランカップリング剤の市販品としては、例えば、KBM-303、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-573、KBM-802、KBM-803、KBE-846、KBE-9007(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0100】
なお、シランカップリング剤(D)は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0101】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物がシランカップリング剤(D)を含む場合の、シランカップリング剤(D)の含有量は、特に制限されないが、共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上10質量部以下であり、より好ましくは0.005質量部以上5質量部以下であり、さらに好ましくは0.01質量部以上3質量部以下であり、特に好ましくは0.01質量部以上1質量部以下であり。含有量が0.001質量部以上であると、耐久性に対する効果が発現するという観点で好ましい。一方、含有量が10質量部以下であると、低分子量化合物に由来する加熱発泡の悪化がなくなるという観点で好ましい。
【0102】
<シリケートオリゴマー(E)>
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、シリケートオリゴマー(E)をさらに含むことが好ましい。シリケートオリゴマー(E)は、光学フィルム用粘着剤組成物において、主にリワーク性の向上に寄与しうる。
【0103】
本発明に係るシリケートオリゴマー(E)は、下記化学式1に示される構造を有することが好ましい。
【0104】
【0105】
上記化学式1において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、またはフェニル基であり;X1およびX2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、またはフェニル基であり;nは1以上100以下の整数である。nは、2以上100以下の整数であることが好ましい。係るアルキル基およびフェニル基は、置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。また、アルキル基は直鎖構造であってもよく、分枝鎖構造であってもよい。
【0106】
本発明において、耐久性とリワーク性とが両立しやすいという観点から、化学式1で示される化合物の中でも、R1およびR2ならびにX1およびX2の全てがメチル基である、メチルシリケートオリゴマーであることが好ましい。なお、シリケートオリゴマー(E)としては、上記で示される化合物のうち1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0107】
本発明において、シリケートオリゴマー(E)の重量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは300以上30000以下であり、より好ましくは500以上25000以下であり、さらに好ましくは600以上5000以下であり、特に好ましくは600以上5000以下である。重量平均分子量が300以上であると、リワーク性を確保しやすいという観点で好ましい。一方、30000以下であると、耐久性を確保しやすいという観点で好ましい。
【0108】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物がシリケートオリゴマー(E)を含む場合の、シリケートオリゴマー(E)の含有量は、特に制限されないが、共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上50質量部以下であり、より好ましくは0.3質量部以上10質量部以下であり、さらに好ましくは0.5質量部以上5質量部以下である。含有量が0.01質量部以上であると、耐久性に対する効果が発現する点で好ましい。一方、含有量が50質量部以下であると、リワーク性と耐久性とが両立しやすくなる点で好ましい。
【0109】
<溶剤>
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、必要に応じて溶剤を含みうる。溶剤としては、特に制限されないが、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0110】
光学フィルム用粘着剤組成物における固形分は、特に制限されないが、塗工性および生産性の観点から、光学フィルム用粘着剤組成物の全量100質量%に対して、好ましくは10質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは12質量%以上30質量%以下である。
【0111】
<その他の添加成分>
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、必要に応じて、架橋促進剤、老化防止剤、充
填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加成分(その他の添加成分)を、本発明の効果を損なわない範囲内で含有してもよい。
【0112】
<粘着剤組成物の製造(調製)方法>
本発明において、光学フィルム用粘着剤組成物は、特に制限されず、例えば、共重合体(A)、過酸化物(B)、および過酸化物以外の架橋剤(C)と、任意に含まれうるシランカップリング剤(D)、シリケートオリゴマー(E)、溶媒、およびその他の添加剤とを、混合させることにより調製することができる。なお、上記各成分の混合順や混合温度などは、特に制限されず、当業者により適宜調整されうる。
【0113】
{用途}
上述した本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、様々な用途に適する。例えば、光学フィルムなどの光学部材に好ましく用いられる。特に、近年、大型の液晶パネルに使用される薄型の粘着型光学フィルムに好ましく用いられる。かような光学フィルムとしては、偏光板、着色防止としての位相差板、液晶ディスプレイの視野角を改善するための視野角拡大フィルム等の光学補償フィルム、ディスプレイのコントラストを高めるための輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものが挙げられる。
【0114】
本発明において、上述した光学フィルム用粘着剤組成物から形成されてなる粘着剤層の形態、光学フィルム等に当該粘着剤層が形成されてなる光学部材の形態、当該光学フィルムが偏光板である形態、または、当該光学部材を液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイ(PDP)、曲面ディスプレイまたはフレキシブルディスプレイ等の画像表示装置などに応用する形態等も提供されうる。以下、それぞれについて説明する。
【0115】
<粘着剤層>
本発明の一形態によると、上述した本発明の光学フィルム用粘着剤組成物から形成されてなる光学フィルム用粘着剤層が提供される。
【0116】
本発明の粘着剤層の厚さ(乾燥後膜厚)は、その用途により当業者が適宜設定することができるが、好ましくは1μm以上200μm以下であり、より好ましくは3μm以上75μm以下であり、さらに好ましくは5μm以上40μm以下であり、特に好ましくは7μm以上35μm以下であり、最も好ましくは10μm以上30μm以下である。厚さが上記範囲内であると、耐久性と粘着特性とが良好なバランスが取れるという観点で好ましい。
【0117】
本発明の粘着剤層の乾燥直後のゲル分率は、特に制限されないが、打ち抜き加工やスリット加工を行う観点から、95%以下であることが好ましい。また、乾燥直後の粘着剤層への打痕や耐久性への懸念がなくなりエージング処理を必要としなくなるという観点から、40%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましい。ゲル分率は、架橋剤の量や過酸化物の量を調整することによって制御することができる。なお、粘着剤層の乾燥直後のゲル分率は、実施例に記載された方法により測定された値を採用する。
【0118】
〔粘着剤層の製造方法〕
本発明の他の形態によると、上述した本発明の光学フィルム用粘着剤組成物を、剥離処理した離型シート上に塗布し、次いで加熱処理して架橋反応させることを含む、光学フィルム用粘着剤層の製造方法も提供される。
【0119】
粘着剤組成物を光学フィルムに使用する際には、光学フィルム上に直接粘着剤組成物を塗工し粘着剤層を形成してもよいが、離型性を有するフィルム上に当該粘着剤組成物を塗
工し粘着剤層を形成した上で、様々な光学フィルムに転写して使用することが望ましい。また、このようにして製造された粘着剤層付の離型性を有するフィルムも製造工程で一緒に巻き取ってロール状とすることができ、必要に応じて裁断や加工をして、様々な光学フィルムや液晶パネルなどに貼着する時に、当該離型性を有するフィルムを取りはずして使用することができる。さらに、粘着剤層が実用に供されるまで、離型性を有するフィルムは、粘着剤層を保護する役割も果たすことができる。本明細書において、かような離型性を有するフィルムは、離型シート(セパレータ)とも称する。
【0120】
離型シートの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などを挙げることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0121】
また、離型シートの厚さは、通常5μm以上200μm以下であり、好ましくは5μm以上100μm以下程度である。
【0122】
離型シートには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型処理および防汚処理、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理をさらに行うことができる。特に、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる観点から、離型シートの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を行うことが好ましい。
【0123】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物を剥離処理した離型シート上に塗布する際の、塗布方式としては、特に制限されず、各種公知方法が用いられる。例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法が挙げられる。
【0124】
本発明の粘着剤層の製造方法においては、上述した光学フィルム用粘着剤組成物を離型シート上に塗布後、加熱処理する工程を行う。係る加熱処理工程は、塗布して得られる塗布膜中の溶剤を乾燥して除去するだけではなく、上述した光学フィルム用粘着剤組成物を架橋反応させる目的も果たしている。加熱処理の温度は、特に制限されないが、優れた粘着特性を有する粘着剤層を得ることができるという観点から、好ましくは40℃以上150℃以下であり、より好ましくは50℃以上130℃以下であり、さらに好ましくは80℃以上120℃以下であり、特に好ましくは110℃以上120℃以下である。
【0125】
また、加熱処理の時間は、適宜設定されうるが、好ましくは5秒以上20分以下であり、より好ましくは5秒以上10分以下であり、さらに好ましくは10秒以上5分以下であり、特に好ましくは10秒以上2分以下である。
【0126】
また、加熱処理の手段としては、特に制限されず、各種公知の方法が用いられる。例えば、上下同じ方向にフィルムの搬送方向に熱風を送風するパラレル乾燥方式、上下異なる方向にフィルムの搬送方向に熱風を送風するカウンター乾燥方式、フィルムの上下から直接熱風を送風するフロート乾燥方式などの方法が挙げられる。
【0127】
{光学部材}
本発明の一形態によると、上述した光学フィルム用粘着剤層と、当該粘着剤層の一方の面に設けられた第一の光学フィルムと、を有する光学部材が提供される。
【0128】
また、本発明の光学部材は、本発明の粘着剤層の前記第一の光学フィルムが設けられた面とは反対側の面に、ガラスまたは第二の光学フィルムをさらに有することができる。なお、ここで、「第一の光学フィルム」と、「第二の光学フィルム」とは、同じ構成(材料、機能等)を有するフィルムであってもよく、異なる構成(材料、機能等)を有するフィルムであってもよい。また、本発明において、第一の光学フィルム(または第二の光学フィルム)は偏光板である形態も提供される。
【0129】
本発明において、上述した粘着剤組成物は、光学フィルムの片面または両面に直接塗布して粘着剤層を形成して使用されてもよいが、上述した理由で、セパレータなどに粘着剤層を予め形成し、これを光学フィルムの片面または両面に転写することにより使用することが望ましい。また、転写する前に、光学フィルムの表面には、その材質に応じて、易接着処理層の形成などの下地処理や、帯電防止層の形成などを行ってもよい。また、粘着剤層の表面においても易接着処理を行ってもよい。光学フィルムと粘着剤層とを強固に接着させる観点から、光学フィルムと本発明の光学フィルム用粘着剤層との間に、易接着処理層を有することが好ましい。
【0130】
<易接着処理層(易接着層)>
本発明の光学部材は、前記第一の光学フィルムと、前記光学フィルム用粘着剤層との間に、少なくとも1層の易接着処理層をさらに有することが好ましい。
【0131】
また、より好ましい形態として、本発明の光学部材は、前記第一の光学フィルムの、前記光学フィルム用粘着剤層と向き合う側の面に、第一の易接着処理層を有し、前記光学フィルム用粘着剤層の、前記第一の光学フィルムと向き合う側の面に、第二の易接着処理層を有する。このように光学部材において、第一と第二の易接着処理層の両方を有する構成は、光学フィルムと粘着剤層をより強固に接着させられるという観点から好ましい。
【0132】
易接着処理層としては、コロナ処理、プラズマ処理など、粘着剤層と接触する部材の表面を処理するものでもよいし、あるいは、プライマー層のような別途の部材を、粘着剤層と接触する部材の表面に設けてもよい。
【0133】
プライマー層を構成する材料は、プライマー層と接触する部材と良好な密着性を有し、凝集力に優れる膜を形成するものが好ましい。例えば、各種ポリマー類、金属酸化物のゾル、シリカゾルなどが用いられ、なかでもポリマー類が好ましく用いられる。プライマー層は、帯電防止機能を有していてもよい。
【0134】
プライマー層を構成するポリマー類としては、オキサゾリン基含有ポリマー、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、分子中にアミノ基を含むポリマー類が挙げられる。なかでも、ポリウレタン樹脂、オキサゾリン基含有ポリマーがより好ましく用いられる。
【0135】
オキサゾリン基含有ポリマーは市販品を用いることができる。例えば、株式会社日本触媒製のエポクロス(登録商標)シリーズ(例えば、エポクロス(登録商標)WS700)などが挙げられるが、これらに限定されない。また、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、分子中にアミノ基を含むポリマー類などについては、特開2011-105918号公報の段落「0107」~「0113」に開示されているものが適宜採用されうる。
【0136】
プライマー層の厚さは、10nm以上5000nm以下程度であり、好ましくは50nm以上500nm以下である。上記の範囲内であると、十分な強度および密着性を発揮しつつ、光学特性を維持することができる。
【0137】
プライマー層の形成方法は特に制限されず、プライマー層の原料(下塗り剤)をコーテ
ィング法、ディッピング法、スプレー法などの塗工法を用いて塗布し、乾燥することによってプライマー層を形成することができる。
【0138】
<光学フィルム>
本発明において、光学フィルム(第一の光学フィルムまたは第二の光学フィルム)としては、偏光板、着色防止としての位相差板、液晶ディスプレイの視野角を改善するための視野角拡大フィルム等の光学補償フィルム、ディスプレイのコントラストを高めるための輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
<偏光板>
本発明において、光学フィルムとして好適な偏光板は、従来公知の方法により、保護フィルムと偏光子とを、接着剤を用いて貼り合わせ、加熱乾燥または紫外線、電子線等で硬化することによって製造し得る。塗布した接着剤は、乾燥または紫外線、電子線等で硬化により接着性を発現して接着層を構成する。
【0140】
偏光子としては、特に制限はなく、従来公知のものを使用できる。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性材料を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
【0141】
このうち、平均重合度2000以上2800以下、ケン化度90モル%以上100モル%以下のポリビニルアルコールフィルムをヨウ素で染色し、3倍以上8倍以下に一軸延伸して製造した偏光子が特に好ましい。より具体的には、このような偏光子は、例えばポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素の水溶液に浸漬して染色し、延伸して得られる。
【0142】
ヨウ素の水溶液に浸漬する方法としては、例えば、0.1質量%以上10質量%以下のヨウ素および/またはヨウ化カリウムを含む水溶液に浸漬する方法が好ましい。また、必要に応じて50℃以上70℃以下のホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬してもよく、洗浄や染色むら防止のために、25℃以上35℃以下の水に浸漬してもよい。延伸はヨウ素で染色した後に行っても、染色しながら延伸しても、延伸してからヨウ素で染色してもよい。染色および延伸後は、水洗し、35℃以上55℃以下で1分以上10分以下程度乾燥してもよい。かような偏光子は、多種多様のものが市販されている。
【0143】
また、偏光子の厚みは、特に制限されないが、一般的に3μm以上80μm以下である。
【0144】
本発明において、光学フィルムとしてより高度な耐久性が求められるという観点から、光学フィルムとして片面または両面が保護された偏光板が好ましい。保護の方法として、特に制限されず、保護フィルムを貼り合わせるなどの公知方法が適宜採用されうる。
【0145】
保護フィルムとしては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる材料が好ましい。例えば、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ系樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0146】
なお、偏光子の片側には、透明保護フィルムが接着剤により貼り合わされるが、他の片側には、透明保護フィルムまたは、保護層として(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。
【0147】
偏光板の厚みは、特に制限されないが、一般的に20μm以上200μm以下である。また、本発明において、薄型化の観点から、100μm以下であることが好ましく、75μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。かような薄型偏光板は、本発明の粘着剤組成物の効果をより顕著に発現する観点から好ましい。
【0148】
偏光板の製造方法は、特に限定されず、例えば、接着剤を塗布した後は、偏光子と保護フィルムとをロールラミネーター等により貼り合わせることによって行うことができる。貼り合わせた後に適宜乾燥または紫外線、電子線等で硬化工程を施してもよい。また、接着剤を塗布する際は、保護フィルム、偏光子のいずれに塗布してもよく、双方に塗布してもよい。接着剤は、乾燥後の接着層の厚みが10nm以上10μm以下になるように塗布するのが好ましい。また、接着剤としては、特に限定されず、偏光子の材料に合わせて公知にものから適宜採用されうる。例えば、偏光子としてポリビニルアルコール系フィルムを用いる場合には、ポリビニルアルコール系接着剤または紫外線硬化系接着剤としてアクリル系、エポキシ系、アクリル-エポキシ系を用いることができる。接着剤層の厚さは、均一な面内厚みを得ることと、十分な接着力を得ることから、ポリビニルアルコール系接着剤では10nm以上200nm以下であることが好ましく、紫外線硬化系接着剤では0.2μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0149】
本発明において、粘着剤層が形成されてなる粘着型偏光板も提供されうる。なお、粘着型偏光板の構成や製造などについては、上述した粘着剤層を有する光学フィルムの場合と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0150】
{画像表示装置}
本発明は、上述した光学部材のうち、少なくとも1つを用いる画像表示装置も提供する。
【0151】
画像表示装置としては、特に限定されず、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイ(PDP)等が挙げられる。また、本発明の粘着剤組成物の効果をより顕著に発現する観点から、特に薄型の画像表示装置が好ましく適用される。
【実施例】
【0152】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0153】
また、下記操作において、特記しない限り、操作および物性などの測定は、23℃相対湿度55%RHの条件で行う。
【0154】
〔製造例1 (メタ)アクリレート共重合体(A1)の調製〕
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、n-ブチルアクリレート(株式会社日本触媒製)70質量%、メチルアクリレート(株式会社日本触媒製)18質量%、4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)1質量%、ベンジルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)11質量%および重合開始剤としての2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業株式会社製)0.1質量%を、酢酸エチル100質量%と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入
した。窒素ガス置換した後に、フラスコ内の液温を55℃付近に制御し、5時間重合反応を行い、重量平均分子量(Mw)190万の(メタ)アクリレート共重合体(A1)の溶液を調製した。
【0155】
〔製造例2~15 (メタ)アクリレート共重合体(A2)~(A15)の調製〕
(メタ)アクリレート共重合体を形成する各モノマーの種類およびその組成割合、ならびに重合開始剤の量および反応時間を、下記表1に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様な操作を行い、(メタ)アクリレート共重合体(A2)~(A15)の溶液を調製した。また、それぞれの重量平均分子量(Mw)も表1に示した。
【0156】
なお、上述した各製造例における重量平均分子量(Mw)の測定は、以下の方法に従って行った。
【0157】
(重量平均分子量(Mw)の測定)
上述した各製造例で調製した各(メタ)アクリレート共重合体の重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により、下記測定条件にて測定した。
・分析装置:東ソー社製、HLC-8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.8ml/min
・注入量:100μl
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン。
【0158】
【0159】
<実施例1>
〔光学フィルム用粘着剤組成物の調製〕
製造例11で得られた(メタ)アクリレート共重合体(A11)溶液の固形分100%(w/w)(すなわち、(メタ)アクリレート共重合体(A11)100質量部)に対して、過酸化物(B)としてパーロイル(登録商標)TCP(日油株式会社製) 0.3質量部、過酸化物以外の架橋剤(C)としてタケネート(登録商標)D110-N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の75重量%酢酸エチル溶液、1分子中のイソシアネート基数:3個、三井化学株式会社製) 0.1質量部(有効成分換算)、およびシランカップリング剤(D)としてKBM-403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製) 0.1質量部を配合して、実施例1の光学フィルム用粘着剤組成物の溶液(固形分15%(w/w))を調製した。
【0160】
〔粘着剤層の形成〕
上記で得られた光学フィルム用粘着剤組成物の溶液を、シリコーン処理を施した、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、MRF38、オリゴマー防止層なし)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが20μmになるように塗布し、110℃で2分間加熱処理して、実施例1の粘着剤層を形成した。なお、加熱処理は、フィルムの上下から直接熱風を送風するフロート乾燥方式の方法によって行った。
【0161】
〔光学部材の作製〕
(偏光板の作製)
以下の工程により、光学フィルムとして片面保護偏光板を作製した。
【0162】
厚さ20μmのポリビニルアルコールフィルムを、速度比の異なるロール間において、30℃、0.3質量%濃度のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3倍まで延伸した。その後、60℃、4質量%濃度のホウ酸、10質量%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍になるまで延伸した。次いで、30℃、1.5質量%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に10秒間浸漬することで洗浄した後、50℃で4分間乾燥を行い、偏光子を得た。当該偏光子の片面に、厚さ20μmのアクリル系フィルム(ラクトン変性アクリル系樹脂フィルム)をポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せて合計厚みが27μmの片面保護の薄型偏光板を作製した。
【0163】
(粘着剤層付偏光板の作製)
上記で得られた偏光板の粘着剤層を形成する偏光子側にコロナ放電量80[W・min/m2]でコロナ処理を行い、易接着処理層を形成した。次に、易接着処理層同士が接触するように、粘着剤層を形成したPETフィルム(シリコーン処理を施した)を転写し、実施例1の光学部材、すなわち粘着剤層付偏光板を作製した。
【0164】
<実施例2~39および比較例1~7>
下記表2に示すように、光学フィルム用粘着剤組成物を構成する(メタ)アクリレート共重合体(A)、過酸化物(B)、および過酸化物以外の架橋剤(C)、ならびに必要に応じてのシランカップリング剤(D)およびシリケートオリゴマー(E)の種類および添加量(配合量)、粘着剤層を形成する際の加熱処理の温度および時間を変更したこと以外は、実施例1の操作と同様にして、それぞれの実施例および比較例に対応する粘着剤層付偏光板を作製した。
【0165】
【0166】
【0167】
{評価}
上記の実施例および比較例で作製した各粘着剤層付の偏光板(光学部材)に対して、以下の評価を行った。それぞれの評価結果は、下記表3に示される。
【0168】
<耐久性>
上記実施例および比較例で作製した光学部材を37インチサイズに切り出してサンプルとし、厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製、イーグルXG)にラミネーターを用いて貼着した。次いで、50℃、0.5MPaで15分間オートクレーブ処理して、上記サンプルを完全に無アクリルガラスに密着させた。かかる処理の施されたサンプルを、下記(1)~(3)の耐久性試験にそれぞれ供し、各試験後に偏光板とガラスとの間の外観を下記基準で目視にて評価した。
【0169】
(1)105℃で500時間処理した(加熱試験)
(2)60℃/相対湿度95%RHの雰囲気下で500時間処理した(加湿試験)
(3)85℃の環境で30分放置の後-40℃の環境で30分放置することを1サイクルとし、1サイクル1時間で合計300サイクル(300時間)の処理を行った(ヒートショック(HS)試験)。
【0170】
目視評価
◎:発泡、剥がれ、浮きなしなどの外観上の変化が全くなし。
○:わずかながら端部に剥がれ、または発泡があるが、実用上問題なし。
△:端部に剥がれ、または発泡があるが、特別な用途でなければ、実用上問題なし。
×:端部に著しい剥がれあり、実用上問題あり。
【0171】
<リワーク性>
上記実施例および比較例で作製した光学部材を幅25mm×長さ100mmに裁断したものをサンプル1、縦420mm×横320mmに裁断したものをサンプル2(3枚作製)とした。このサンプル1およびサンプル2を、それぞれ厚さ0.7mmの無アルカリガラス板(コーニング社製、イーグルXG)に、ラミネーターを用いて貼り付け、次いで50℃、5atmで15分間オートクレーブ処理して完全に密着させた(初期)。その後、50℃の乾燥条件下で48時間加熱処理を施した(加熱後)。
【0172】
上記サンプル1の接着力を測定した。接着力は、引張り試験機(オリエンテック社製 テンシロン万能材料試験機 STA-1150)にて、23℃、相対湿度50%RHの条件下、剥離角度180°、剥離速度300mm/minでJIS Z0237(2009)の粘着テープおよび粘着シート試験の方法に準拠して、サンプル1を引き剥がす際の接着力(N/25mm)を測定することにより求めた。
【0173】
また、上記サンプル2(3枚)について、人の手によって無アルカリガラス板からサンプルを剥がし、下記基準でリワーク性を評価した(実リワーク性)。
【0174】
評価
◎:3枚とも糊残りやフィルムの破断がなく良好に剥離可能。
○:3枚中一部はフィルムが破断したが、再度の剥離によって剥がせた。
△:3枚ともフィルム破断したが、再度の剥離によって剥がせた。
×:3枚とも糊残りが生じるか、または何度剥離してもフィルムが破断して剥がせなかった。
【0175】
以上、接着力および実リワーク性の結果を総合にして各実施例および比較例のサンプルのリワーク性について判断を行った。
【0176】
<光漏れ>
上記実施例および比較例で作製した光学部材を、縦420mm×横320mmのサイズに上下の偏光板が直交するように各1枚切り出してサンプルとした。このサンプルを厚さ0.7mmの無アルカリガラス板(コーニング社製、イーグルXG)の両面にクロスニコルになるようにラミネーターにて貼り合せた。次いで、50℃、5atmで15分間のオートクレーブ処理を行って二次サンプルとした(初期)。その後、二次サンプルを、105℃の条件下で48時間の処理を行った(加熱後)。加熱後の二次サンプルを、1万カンデラのバックライト上に置き、光漏れを下記の基準により、目視で評価した。
【0177】
目視評価
◎:コーナームラの発生がなく、実用上問題ない。
○:コーナームラがわずかながら発生しているが、表示領域には表れていないので、実用上問題ない。
△:コーナームラが発生して表示領域にわずかに表れているが、実用上問題ない。
×:コーナームラが発生して表示領域にきつく表れており、実用上問題がある。
【0178】
<ゲル分率>
上述した各実施例および比較例に記載の加熱処理温度および時間(表2を参照)に基づき、別途形成された粘着剤層を、離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムで両側から挟まれた構成のサンプルを作製し、それをゲル分率測定用サンプルとした。
【0179】
それぞれのサンプルを加熱処理直後に秤取し、最初の重量W1とした。次いで、それぞれのサンプルを、酢酸エチル溶液に浸漬して、23℃55%RHの環境下で1週間放置した。その後、不溶分を取り出し、酢酸エチルを除去し、乾燥させてからサンプルを秤取し、重量(W2)を測定した。その後、下記数式1によって、各サンプルのゲル分率を求めた。
【0180】
【0181】
<エージングレス化>
乾燥直後の粘着剤層のゲル分率がある数値以上であると打痕や耐久性への懸念がなくなり、エージング処理の必要もなくなる(「エージングレス化」と称する)。
【0182】
このため、上述した方法によって測定された各サンプルのゲル分率に基づき、下記基準で判断し、各サンプルのエージング処理の必要性について評価した。
○:ゲル分率65%以上 打痕、加工性、耐久性への影響はない;エージング処理不要。△:ゲル分率40%以上65%未満 打痕への影響はない;エージング処理不要。
×:ゲル分率40%未満 打痕、加工性悪化、および耐久性悪化の懸念がある;エージング処理必要。
【0183】
<オリゴマー汚染>
上述した各実施例および比較例で形成した粘着剤組成物から形成される粘着剤層を積層した、オリゴマー防止層なしのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ38μm、三菱化学ポリエステルフィルム社製、MRF38)を、上記表2に示した各実施例および比較例の加熱処理温度下で、2時間塗工ラインにかけた。各フィルムサンプルを搬送しながら加熱処理した際にライン上のガイドロール上にPETオリゴマーの析出があるかどうかについて、以下の基準で、目視で確認した。
〇:ガイドロール上にPETオリゴマー析出なし。
△:ガイドロール状にPETオリゴマー析出が若干量にある。
×:ガイドロール上にPETオリゴマー析出が多量にある。
【0184】
<糊欠け性>
上述した各実施例および比較例で作製した粘着剤層付偏光板を一辺の長さが100mmである正方形に荻野精機製作所製自動切断機NZ-600で打ち抜いたもの(1枚)について、端部からの糊欠け性を以下の基準で評価した。
〇:端部からの糊欠け深さが100μm未満。
△:端部からの糊欠け深さが100μm以上300μm未満。
×:端部からの糊欠け深さが300μm以上。
【0185】
【0186】
【0187】
上記表3から明らかなように、本発明の光学フィルム用粘着剤組成物を使用した粘着剤層付の偏光板(実施例1~39)は、耐久性とリワーク性とが両立すると共に、エージン
グ処理を必要としないハンドリング性においても優れ、且つオリゴマー汚染も十分に抑制できたことが分かった。また、本発明の光学フィルム用粘着剤組成物を使用した粘着剤層付の偏光板(実施例1~39)は、光漏れの評価においても良好な結果が得られた。さらに、本発明の光学フィルム用粘着剤組成物を使用した粘着剤層付の偏光板(実施例1~39)を打ち抜く際に、端部から糊が欠けてしまう現象も大幅に抑えられている。