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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】伸縮性回路基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/03 20060101AFI20220111BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
H05K1/03 630B
H05K1/02 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017198525
(22)【出願日】2017-10-12
(65)【公開番号】P2019075409
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】小川 健一
(72)【発明者】
【氏名】沖本 直子
(72)【発明者】
【氏名】染谷 隆夫
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/065272(WO,A1)
【文献】特開2015-079803(JP,A)
【文献】特開2008-177259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する基材と、
前記基材の一方の面側の配線および機能性部材と、
前記基材の前記一方の面とは反対側の面側の応力調整層と
を有し、前記配線は、凹凸形状の断面形状を有し、
前記応力調整層は、樹脂およびエラストマーを少なくとも一方を含有する、伸縮性回路基板。
【請求項2】
前記応力調整層は、凹凸形状の断面形状を有する、請求項1に記載の伸縮性回路基板。
【請求項3】
前記応力調整層は、粘着性を有さない、請求項1または請求項2に記載の伸縮性回路基板。
【請求項4】
前記応力調整層の前記基材とは反対側の面、または、前記配線および前記機能性部材の前記基材とは反対側の面に、粘着層を有する、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の伸縮性回路基板。
【請求項5】
前記基材と前記配線および前記機能性部材との間に、前記基材側から順に、接着層および支持基材を有する、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の伸縮性回路基板。
【請求項6】
平坦である、請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の伸縮性回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、伸縮性を有する基材および配線を有する伸縮性回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、伸縮性エレクトロニクス(ストレッチャブルエレクトロニクスとも称する。)が注目を集めており、伸縮可能な伸縮性回路基板の開発が盛んになされている。伸縮性回路基板を得る手法の一つとして、特許文献1には、予め伸長させた伸縮性を有する基材の上に金属薄膜を配置した後、張力を解放することで、シワ状の金属薄膜を作製する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-103459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような伸縮性を有する基材を予め伸長させる方法においては、張力を解放した際に、伸縮性を有する基材の金属薄膜が配置された面と、その反対側の面とで収縮差が生じ、得られる伸縮性回路基板に反りが発生するという問題がある。伸縮性回路基板に反りが生じると、対象物への適用が困難となったり、粘着加工やパッケージ等の後工程が困難となったりする。
【0005】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、反りの程度を制御することが可能な伸縮性回路基板を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示は、伸縮性を有する基材と、上記基材の一方の面側の配線および機能性部材と、上記基材の上記一方の面とは反対側の面側の応力調整層とを有し、上記配線は、凹凸形状の断面形状を有する、伸縮性回路基板を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、反りの程度を制御することが可能な伸縮性回路基板を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の伸縮性回路基板の一例を示す概略平面図および断面図である。
図2】本開示の伸縮性回路基板の製造方法の一例を示す工程図である。
図3】従来の伸縮性回路基板の一例を示す概略断面図である。
図4】本開示の伸縮性回路基板の他の例を示す概略断面図である。
図5】本開示の伸縮性回路基板の他の例を示す概略平面図である。
図6】本開示の伸縮性回路基板における配線の凹凸形状の一例を示す模式図である。
図7】本開示の伸縮性回路基板の他の例を示す概略断面図である。
図8】本開示の伸縮性回路基板の他の例を示す概略断面図である。
図9】本開示の伸縮性回路基板の他の例を示す概略断面図である。
図10】本開示の伸縮性回路基板の反りの測定方法を説明するための模式図である。
図11】本開示の伸縮性回路基板の製造方法の他の例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の伸縮性回路基板について詳細に説明する。
【0010】
本開示の伸縮性回路基板は、伸縮性を有する基材と、上記基材の一方の面側の配線および機能性部材と、上記基材の上記一方の面とは反対側の面側の応力調整層とを有し、上記配線は、凹凸形状の断面形状を有する。
【0011】
ここで、「伸縮性」とは、伸び縮みすることができる性質、すなわち、常態である非伸長状態から伸長することができ、この伸長状態から解放したときに復元することができる性質をいう。伸縮性は、ストレッチャブルともいう。
【0012】
「基材の一方の面側の配線および機能性部材」とは、配線および機能性部材が基材の一方の面に直接配置されていてもよく、配線および機能性部材が基材の一方の面に他の部材を介して間接的に配置されていてもよいことをいう。
また、「基材の一方の面とは反対側の面側の応力調整層」とは、応力調整層が基材の一方の面とは反対側の面に直接配置されていてもよく、応力調整層が基材の一方の面とは反対側の面に他の部材を介して間接的に配置されていてもよいことをいう。
【0013】
本開示の伸縮性回路基板について図面を参照して説明する。図1(a)、(b)は、本開示の伸縮性回路基板の一例を示す概略平面図および断面図であり、図1(b)は図1(a)のA-A線断面図である。図1(a)、(b)に例示する伸縮性回路基板1は、伸縮性を有する基材2を有しており、基材2の一方の面に配線5および機能性部材6を有し、基材2の一方の面とは反対側の面に応力調整層8を有している。伸縮性回路基板1は、基材2と配線5および機能性部材6との間に支持基材4を有していてもよく、さらに基材2および支持基材4の間に第1の接着層3を有していてもよい。すなわち、支持基材4の一方の面に配線5および機能性部材6を有する配線基材10が、第1の接着層3を介して基材2の一方の面に配置されていてもよい。また、伸縮性回路基板1は、基材2と応力調整層8との間に第2の接着層7を有していてもよい。すなわち、応力調整層8が、第2の接着層7を介して基材2の一方の面とは反対側の面に配置されていてもよい。そして、配線5は、凹凸形状の断面形状を有する。また、第1の接着層3、支持基材4、第2の接着層7および応力調整層8も、凹凸形状の断面形状を有することができる。配線5は、凹凸形状の断面形状を有しており、厚み方向に繰り返し折りたたまれた構造を有していることから、伸縮可能である。
なお、断面形状とは、厚み方向の断面形状をいう。
【0014】
また、伸縮性回路基板が、基材と配線および機能性部材との間に有する接着層のことを、第1の接着層と称する。また、伸縮性回路基板が、基材と応力調整層との間に有する接着層のことを、第2の接着層と称する。
【0015】
図2は本開示の伸縮性回路基板の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図2(a)に示すように、支持基材4の一方の面に配線5および機能性部材6を有する配線基材10を準備する。次に、図2(b)~(c)に示すように、伸縮性を有する基材2を伸長する。本工程は、伸縮性を有する基材をプレストレッチするともいう。次いで、図2(d)に示すように、基材2を伸長させた状態で、基材2の一方の面に、第1の接着層3を介して配線基材10の支持基材4側の面を貼合し、基材2の一方の面とは反対側の面に、第2の接着層7を介して応力調整層8を貼合する。続いて、図2(e)に示すように、基材2の張力を解放する。この際、伸縮性を有する基材2が収縮するのに伴い、配線5、支持基材4、第1の接着層3、応力調整層8および第2の接着層7も収縮し、これらの部材に波状等の凹凸が発生する。これにより、伸縮性回路基板1が得られる。
【0016】
ここで、伸縮性回路基板の製造方法において応力調整層を配置しない場合には、張力を解放した際に、伸縮性を有する基材の配線および機能性部材側の面と、その反対側の面とで収縮差が生じ、例えば図3に示すように、得られる伸縮性回路基板100に反りが発生する。伸縮性回路基板に反りが生じると、対象物への適用が困難となったり、粘着加工、パッケージ等の後工程が困難となったりする。
例えば、伸縮性回路基板の配線および機能性部材側の面を、粘着層を介して対象物に貼付する場合、図3に例示するように、伸縮性回路基板100が配線5および機能性部材6側に凸に沿っていると、伸縮性基板の配線および機能性部材側の面を対象物に貼付し難く、また伸縮性回路基板の端部から剥がれ易くなる。
また例えば、伸縮性回路基板の片側の面に、対象物に貼付するために粘着層を配置する場合、伸縮性回路基板が反っていると、粘着層を配置し難い。
【0017】
本開示においては、伸縮性回路基板が、伸縮性を有する基材の配線および機能性部材とは反対側の面に、応力調整層を有することから、伸縮性回路基板の製造工程において張力を解放した際の、伸縮性を有する基材の配線および機能性部材側の面と、その反対側の面との収縮差を調整し、伸縮性回路基板の反りの程度を制御することができる。伸縮性回路基板の反りの程度を制御する際には、伸縮性回路基板が応力調整層を有さない場合と比較して、伸縮性回路基板の反りを小さくすることも、伸縮性回路基板の反りを大きくすることも、伸縮性回路基板の反りの方向を逆にすることもできる。例えば、図4に示す伸縮性回路基板1は、応力調整層8側に凸に反っており、図3に示すような応力調整層を有さない伸縮性回路基板100と比較して、伸縮性回路基板1の反りの方向が逆になっている。
したがって、対象物の曲面や平面に応じて、伸縮性回路基板の反りの程度を制御し、伸縮性回路基板を対象物に適用し易くすることが可能である。また、伸縮性回路基板の片側の面を粘着層を介して対象物に貼付する場合には、剥がれ難くすることもできる。
また、伸縮性回路基板の反りを抑制して、粘着加工やパッケージ等の後工程を容易にすることが可能である。例えば、伸縮性回路基板は、ウェアラブルデバイス、特に医療やヘルスケア分野での利用が期待されており、具体的には、伸縮性回路基板の片側の面を粘着層を介してヒトの皮膚や衣料に貼付する場合等が考えられる。そのため、反りが抑制されており、粘着加工等の後工程が容易である伸縮性回路基板は有用である。
【0018】
本開示の伸縮性回路基板は、伸縮性を有する基材、配線、機能性部材、および応力調整層を有するものである。以下、本開示の伸縮性回路基板の各構成について説明する。
【0019】
1.応力調整層
応力調整層は、伸縮性回路基板の反りの程度を制御することができ、かつ、伸縮に耐え得るものであればよい。中でも、上述したように、応力調整層によって、伸縮性回路基板の製造工程において張力を解放した際の、伸縮性を有する基材の配線および機能性部材側の面と、その反対側の面との収縮差を調整し、伸縮性回路基板の反りの程度を制御することができるため、応力調整層は、伸縮性を有する基材よりも大きな引張弾性率を有することが好ましい。
【0020】
また、応力調整層に用いられる材料は、伸縮性を有していてもよく、伸縮性を有さなくてもよい。
【0021】
応力調整層に用いられる伸縮性を有さない材料としては、薄膜にすることが可能であり、伸縮に耐え得る材料であればよく、例えば、樹脂を挙げることができる。具体的には、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド等が挙げられる。応力調整層が樹脂を含む場合、応力調整層の材料は、配線基材の支持基材の材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。伸縮性回路基板の反りを抑制して平坦にする場合には、応力調整層の材料は、配線基材の支持基材と同じ材料であることが好ましい。また、応力調整層の材料が伸縮性を有さない場合、応力調整層としては、樹脂基材を用いることができる。
【0022】
応力調整層に用いられる伸縮性を有する材料の伸縮性としては、後述の伸縮性を有する基材の伸縮性と同様とすることができる。
応力調整層に用いられる伸縮性を有する材料としては、例えば、エラストマーを挙げることができる。エラストマーとしては、一般的な熱可塑性エラストマーおよび熱硬化性エラストマーを用いることができ、具体的には、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、アミド系エラストマー、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリスチレンブタジエン、ポリクロロプレン等が挙げられる。
【0023】
応力調整層は、通常、粘着性を有さない。応力調整層が粘着性を有すると、後工程が困難となるからである。また、伸縮性回路基板は、対象物に貼付するための粘着層を有する場合があるが、応力調整層は、そのような粘着層とは区別されるものである。
ここで、粘着性を有さないとは、応力調整層の粘着力が0.01N/25mm以下であることをいい、好ましくは0.005N/25mm以下、より好ましくは0.001N/25mm以下である。
【0024】
応力調整層の粘着力は、以下の方法で測定することができる。まず、伸縮性回路基板から25mm幅の試験片を採取し、試験片の応力調整層側の面に、25mm幅のガラス板を貼り合せる。次に、引張試験機を用いて、引張速度:1200mm/分、剥離角:180°、温度:20℃、湿度:50%の条件で、ガラス板に対する粘着力(N/25mm)を測定することができる。なお、伸縮性回路基板の測定対象となる面に剥離層が配置されている場合には、剥離層を剥がしてから測定する。
【0025】
応力調整層は、凹凸形状の断面形状を有していてもよく、有さなくてもよい。応力調整層の材料が伸縮性を有さない場合、図1に例示するように、応力調整層8は、通常、凹凸形状の断面形状を有する。なお、凹凸形状の断面形状については、後述の配線の項に記載する凹凸形状の断面形状と同様とすることができる。
【0026】
応力調整層の厚みとしては、伸縮に耐え得る厚みであればよく、目的とする伸縮性回路基板の反りの程度や、応力調整層の材料等に応じて適宜選択される。
例えば、応力調整層の材料が伸縮性を有さない場合、応力調整層の厚みは、1μm以上とすることができる。また、この場合、応力調整層の厚みは、25μm以下とすることができ、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
また、応力調整層の材料が伸縮性を有する場合、応力調整層の厚みは、1μm以上とすることができ、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。また、この場合、応力調整層の厚みは、500μm以下とすることができ、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。
【0027】
伸縮性回路基板の反りの程度は、応力調整層の材料、厚み等により調整することができる。
例えば、応力調整層の厚みを厚くすることにより、基材を伸長したときの応力による基材の応力調整層側の面の縮む変位量を小さくことができる。また例えば、応力調整層に比較的大きな引張弾性率をもつ材料を用いることにより、基材を伸長したときの応力による基材の応力調整層側の面の縮む変位量を小さくすることができる。これにより、伸縮性回路基板の反りを抑制することができる。
また例えば、応力調整層と配線基材の支持基材とを同一部材とすることで、伸縮性回路基板の反りを抑制することができる。
【0028】
本開示においては、応力調整層により、伸縮性回路基板の反りの程度を制御することができるが、中でも、伸縮性回路基板の反りを抑制することが好ましい。
【0029】
応力調整層は、基材の一方の面とは反対側の面に配置されていればよく、全面に配置されていてもよく、部分的に配置されていてもよい。
【0030】
基材の一方の面とは反対側の面に応力調整層を配置する方法としては、材料等に応じて適宜選択される。詳細については、後述の伸縮性回路基板の製造方法の項に記載する。
【0031】
2.配線
配線は、凹凸形状の断面形状を有する。凹凸形状は、配線が伸縮可能な形状であれば特に限定されるものではなく、例えば波状等が挙げられる。また、凹凸形状は、規則的な形状であってもよく、不規則な形状であってもよい。
【0032】
また、凹凸形状は、平面視において、凸部の稜線が、例えば直線状であってもよく、曲線状であってもよく、波状であってもよい。また、平面視において、凸部の稜線の間隔は、規則的であってもよく、不規則であってもよい。図5(a)~(c)は、配線の一例を示す平面図である。図5(a)において、凸部の稜線21は直線状であり、凸部の稜線21の間隔は規則的である。図5(b)において、凸部の稜線21は波状であり、凸部の稜線21の間隔は規則的である。図5(c)において、凸部の稜線21は曲線状であり、凸部の稜線21の間隔は不規則である。なお、図5(a)~(c)において、実線は凸部の稜線21を示し、破線は凹部の稜線22を示す。
【0033】
凹凸形状において、凸部の間隔は、規則的であってもよく、不規則であってもよい。凸部の間隔は、例えば10μm以上とすることができ、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。また、凸部の間隔は、例えば1000μm以下とすることができ、750μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。凸部の間隔が上記範囲内であることにより、配線は伸縮可能である。なお、凸部の間隔とは、図6に示すような隣り合う凸部間の間隔dである。
【0034】
また、凹凸形状において、凸部および凹部の高低差は、規則的であってもよく、不規則であってもよい。凸部および凹部の高低差は、例えば1μm以上とすることができ、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。また、凸部および凹部の高低差は、例えば500μm以下とすることができ、400μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。凸部および凹部の高低差が上記範囲内であることにより、配線は伸縮可能である。なお、凸部および凹部の高低差とは、図6に示すような凸部の頂部から凹部の底部までの高さhである。
【0035】
配線の材料としては、伸縮性を有する基材を予め伸長する伸縮性回路基板の製造方法によって伸縮性を有する配線を得ることが可能であり、また伸縮に耐え得る材料であればよく、それ自体が伸縮性を有していてもよく、伸縮性を有さなくてもよい。
【0036】
配線に用いられる伸縮性を有さない材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、白金、クロム等の金属や、これらの金属を含む合金が挙げられる。配線の材料が伸縮性を有さない場合、配線としては、金属膜を用いることができる。
【0037】
配線に用いられる伸縮性を有する材料の伸縮性としては、後述の伸縮性を有する基材の伸縮性と同様とすることができる。
配線に用いられる伸縮性を有する材料としては、例えば、導電性粒子およびエラストマーを含有する導電性組成物が挙げられる。導電性粒子としては、配線に使用できるものであればよく、例えば、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、カーボン等の粒子が挙げられる。中でも、銀粒子が好ましく用いられる。また、エラストマーとしては、一般的な熱可塑性エラストマーおよび熱硬化性エラストマーを用いることができ、例えば、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、ポリブタジエン、ポリクロロプレンが挙げられる。
【0038】
また、平面視における配線の形状は、特に限定されるものではないが、中でも図1(a)例示するように直線状であることが好ましい。伸縮性回路基板の設計が容易になるからである。
【0039】
配線の厚みとしては、伸縮に耐え得る厚みであればよく、配線の材料等に応じて適宜選択される。
例えば、配線の材料が伸縮性を有さない場合、配線の厚みは、25nm以上とすることができ、50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。また、この場合、配線の厚みは、10μm以下とすることができ、5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
また、配線の材料が伸縮性を有する場合、配線の厚みは、5μm以上とすることができ、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。また、この場合、配線の厚みは、60μm以下とすることができ、50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましい。
【0040】
配線の形成方法としては、材料等に応じて適宜選択される。配線の材料が伸縮性を有さない場合、例えば支持基材上に蒸着法やスパッタリング法等により金属膜を形成した後、フォトリソグラフィ法により金属膜をパターニングする方法が挙げられる。また、配線の材料が伸縮性を有する場合、例えば支持基材上に一般的な印刷法により上記の導電性粒子およびエラストマーを含有する導電性組成物をパターン状に印刷する方法が挙げられる。
【0041】
3.機能性部材
機能性部材としては、伸縮性回路基板の用途等に応じて適宜選択されるものであり、例えば、IC、LED、センサ、抵抗器、キャパシタ、インダクタ、圧電素子、バッテリー等が挙げられる。中でも、センサが好ましく用いられる。
【0042】
センサとしては、例えば、温度センサ、圧力センサ、光センサ、光電センサ、近接センサ、せん断力センサ、磁気センサ等を挙げることができる。中でも、センサは、心拍や脈拍、心電、血圧、体温、血中酸素濃度、筋電、脳波等の生体情報を測定することができる生体センサであることが好ましい。
【0043】
機能性部材は、配線に接続されている。機能性部材および配線の接続構造については、一般的なものを適用することができる。
また、機能性部材および配線を接続する接続部を補強するため、機能性部材の周囲をポッティング剤等の樹脂で覆うことができる。これにより、機能性部材および配線の接続部の機械的な信頼性を向上させることができる。
【0044】
機能性部材は、伸縮に耐え得るものである場合には、凹凸形状の断面形状を有していてもよい。凹凸形状については、上記配線と同様とすることができる。例えば、機能性部材がTFTやOLED等である場合、凹凸形状の断面形状を有することができる。
【0045】
4.伸縮性を有する基材
基材は、伸縮性を有する。基材の伸縮性としては、常態(非伸長状態)を基準として150%(初期の長さの1.5倍)に伸長した後、この伸長状態から解放したときの復元率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。なお、復元率の上限は100%である。
なお、復元率は、幅25mmの試験片を準備し、試験片を150%伸長して1時間保持した後、伸長を解放して1時間放置して復元させ、下記の計算式により求めることができる。
復元率(%)=(伸長直後の長さ-復元後の長さ)÷(伸長直後の長さ-引張前の長さ)×100
なお、伸長直後の長さとは、150%伸長した状態の長さをいう。
【0046】
基材の材料としては、伸縮性を有するものであればよく、例えばエラストマーを挙げることができ、伸縮性回路基板の用途等に応じて適宜選択される。エラストマーとしては、一般的な熱可塑性エラストマーおよび熱硬化性エラストマーを用いることができ、具体的には、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、アミド系エラストマー、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリスチレンブタジエン、ポリクロロプレン等が挙げられる。
【0047】
基材の厚みは、特に限定されないが、伸縮性回路基板を適用する対象物の動きを妨げないという観点および取扱い性の観点から、例えば25μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることがさらに好ましく、また、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましい。
【0048】
5.粘着層
本開示の伸縮性回路基板は、応力調整層の基材とは反対側の面、または、配線および機能性部材の基材とは反対側の面に、粘着層を有していてもよい。粘着層は、伸縮性回路基板を対象物に貼付するために設けられるものである。
【0049】
粘着層9は、例えば図7に示すように、応力調整層8の基材2とは反対側の面に配置されていてもよく、図8に示すように、配線5および機能性部材6の基材2とは反対側の面に配置されていてもよい。
【0050】
粘着層は、通常、凹凸形状の断面形状を有する配線等を形成した後に配置されるものであることから、凹凸形状の断面形状は有さない。
【0051】
粘着層としては、特に限定されるものではなく、一般的な粘着剤を用いることができ、伸縮性回路基板の用途等に応じて適宜選択される。例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。
【0052】
粘着層の厚みとしては、伸縮可能であり、伸縮性回路基板を対象物に貼付可能な厚みであればよく、伸縮性回路基板の用途等に応じて適宜選択される。粘着層の厚みは、例えば10μm以上、100μm以下の範囲内とすることができる。
【0053】
また、粘着層の基材とは反対側の面には、剥離層が配置されていてもよい。剥離層としては、一般的なものを使用することができる。
【0054】
粘着層の配置方法としては、例えば、応力調整層の基材とは反対側の面、または、配線および機能性部材の基材とは反対側の面に、粘着剤を塗布する方法や、剥離層の一方の面に粘着層を有する粘着フィルムを準備し、粘着フィルムの粘着層側の面を、応力調整層の基材とは反対側の面、または、配線および機能性部材の基材とは反対側の面に貼合する方法が挙げられる。
【0055】
6.支持基材および第1の接着層
本開示の伸縮性回路基板は、通常、基材と配線および機能性部材との間に、支持基材を有しており、支持基材の一方の面に配線および機能性部材を有する配線基材を有する。また、本開示の伸縮性回路基板は、通常、基材と支持基材との間に、第1の接着層を有する。すなわち、伸縮性回路基板は、基材と支持基材との間に、基材側から順に、第1の接着層および支持基材を有する。伸縮性回路基板が、支持基材の一方の面に配線および機能性部材を有する配線基材を有し、配線基材の支持基材側に第1の接着層が配置されていることにより、配線基材を基材に容易に貼合することができる。
【0056】
支持基材としては、伸縮に耐え得るものであればよく、例えば、樹脂基材を挙げることができる。樹脂基材を構成する材料としては、具体的には、ポリエチレンナフタレートやポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、シクロオレフィンポリマー等が挙げられる。
【0057】
支持基材は、通常、凹凸形状の断面形状を有する。凹凸形状については、上記配線と同様とすることができる。
【0058】
支持基材の厚みは、凹凸形状の断面形状を有することにより伸縮可能な厚みであればよく、例えば1μm以上とすることがき、また、10μm以下とすることができる。
【0059】
第1の接着層としては、特に限定されるものではなく、回路基板に使用される一般的な接着剤や粘着剤を用いることができる。
【0060】
第1の接着層は、通常、凹凸形状の断面形状を有する。凹凸形状については、上記配線と同様とすることができる。
【0061】
第1の接着層の厚みとしては、伸縮可能であり、配線基材の支持基材側の面を基材に貼合可能な厚みであればよく、例えば10μm以上、100μm以下の範囲内とすることができる。
【0062】
また、第1の接着層は、分子接着層であってもよい。なお、「分子接着」とは、分子接着剤となる化合物を2つの被着体の間に付与し、化学結合によりこれらの2つの被着体を接着接合することをいう。本開示においては、伸縮性を有する基材と支持基材とを、分子接着剤による化学結合により接着結合することができる。
【0063】
分子接着層に用いられる分子接着剤としては、公知の分子接着剤を用いることができ、伸縮性回路基板の用途等に応じて適宜選択される。例えば、シランカップリング剤、チオール系化合物等が挙げられる。
【0064】
分子接着層の厚さは、例えば数nm程度である。
分子接着層の配置方法としては、例えば、伸縮性を有する基材の一方の面、および、支持基材の配線および機能性部材とは反対側の面を、分子接着剤により表面修飾する方法が挙げられる。
【0065】
7.第2の接着層
本開示の伸縮性回路基板は、基材と応力調整層との間に、第2の接着層を有していてもよい。第2の接着層により、応力調整層を基材に容易に貼合することができる。
【0066】
応力調整層の材料が伸縮性を有さない場合には、基材と応力調整層との間に、第2の接着層が配置されていることが好ましい。また、応力調整層の材料が伸縮性を有する場合には、基材と応力調整層との間に、第2の接着層が配置されていてもよく、第2の接着層が配置されていなくてもよい。
【0067】
第2の接着層は、通常、凹凸形状の断面形状を有する。凹凸形状については、上記配線と同様とすることができる。
【0068】
第2の接着層の材料および厚みについては、上記第1の接着層と同様とすることができる。
【0069】
また、第2の接着層は、分子接着層であってもよい。本開示においては、基材と応力調整層とを、分子接着剤による化学結合により接着結合することができる。
分子接着層については、上記第1の接着層と同様とすることができる。
【0070】
8.伸縮性回路基板
伸縮性回路基板は、平坦であってもよく、反りを有していてもよい。また、伸縮性回路基板が反りを有する場合、例えば図9に示すように配線5および機能性部材6側に凸に反っていてもよく、図4に示すように応力調整層8側に凸に反っていてもよい。中でも、伸縮性回路基板は、反りが小さいことが好ましく、平坦であることがより好ましい。後工程が容易になるからである。
【0071】
具体的には、伸縮性回路基板の反りは、図10に例示するように、伸縮性回路基板1の端部が反り上がる形態で伸縮性回路基板1を平坦な場所に設置し、断面から観察したときの、伸縮性回路基板1の反り量Dを測定することにより評価することができる。なお、図10に例示するように、伸縮性回路基板1の端部が反り上がる形態で伸縮性回路基板1を平坦な場所に設置し、断面から観察したときの、伸縮性回路基板1の凹面の最大深さを、伸縮性回路基板1の反り量Dとする。また、伸縮性回路基板の反りが比較的大きい場合には、伸縮性回路基板の断面から観察することにより、伸縮性回路基板の反りを確認することができる。
【0072】
伸縮性回路基板の反り量は、例えば10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましく、2mm以下であることがさらに好ましい。反り量が上記範囲であれば、伸縮性回路基板の反りを小さくすることができ、さらには平坦な形状を実現することができる。
ここで、伸縮性回路基板が平坦であるとは、反り量が2mm以下であることをいう。
【0073】
9.伸縮性回路基板の製造方法
本開示の伸縮性回路基板は、伸縮性回路基板を予め伸長する方法により作製することができる。本開示の伸縮性回路基板の製造方法は、応力調整層の材料に応じて、2つの態様に分けることができる。以下、各態様について説明する。
【0074】
(1)第1態様
本開示の伸縮性回路基板の製造方法の第1態様は、応力調整層の材料が伸縮性を有さない場合である。本態様の伸縮性回路基板の製造方法は、伸縮性を有する基材を伸長する伸長工程と、基材を伸長した状態で、基材の一方の面に配線および機能性部材を配置する配線および機能性部材配置工程と、基材を伸長した状態で、基材の一方の面とは反対側の面に応力調整層を配置する応力調整層配置工程と、配線および機能性部材配置工程および応力調整層配置工程後、基材の張力を解放する張力解放工程とを有する。
【0075】
図2(a)~(e)は、本態様の伸縮性回路基板の製造方法の一例を示す工程図である。なお、図2(a)~(e)については、既に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0076】
(a)伸長工程
基材を伸長する際には、例えば一軸方向に伸長してもよく、二軸方向に伸長してもよい。
【0077】
基材は、常態を基準として、120%(初期の長さの1.2倍)以上に伸長することが好ましく、130%(初期の長さの1.3倍)以上に伸長することがより好ましく、150%(初期の長さの1.5倍)以上に伸長することがさらに好ましい。基材を上記の範囲で伸長することにより、伸縮可能な配線を得ることができる。
【0078】
また、通常、基材は、機械的に伸長させる。伸長条件は、基材の材料や厚み等に応じて適宜選択される。
【0079】
(b)配線および機能性部材配置工程
基材の一方の面に配線および機能性部材を配置する方法としては、通常、支持基材の一方の面に配線および機能性部材を有する配線基材を作製し、配線基材の支持基材側の面を、第1の接着層を介して基材の一方の面に貼合する方法が用いられる。
【0080】
第1の接着層は、基材を伸長した後に、配線基材の支持基材側の面に配置してもよく、基材を伸長する前に、基材の一方の面に配置してもよい。また、第1の接着層を基材の一方の面に配置する場合には、上記伸長工程前に、第1の接着層を基材の一方の面に配置してもよい。
【0081】
第1の接着層の配置方法としては、例えば、接着剤や粘着剤を塗布する方法や、剥離層の一方の面に接着層を有する接着フィルムを準備し、接着フィルムを貼合する方法が挙げられる。
【0082】
(c)応力調整層配置工程
基材の一方の面とは反対側の面に応力調整層を配置する方法としては、通常、応力調整層を、第2の接着層を介して基材の一方の面とは反対側の面に貼合する方法が用いられる。
【0083】
第2の接着層は、基材を伸長した後に、応力調整層の面に配置してもよく、基材を伸長する前に、基材の一方の面に配置してもよい。また、第2の接着層を基材の一方の面に配置する場合には、上記伸長工程前に、第2の接着層を基材の一方の面に配置してもよい。
【0084】
第2の接着層の配置方法としては、例えば、接着剤や粘着剤を塗布する方法や、剥離層の一方の面に接着層を有する接着フィルムを準備し、接着フィルムを貼合する方法が挙げられる。
【0085】
配線および機能性部材配置工程および応力調整層配置工程は、いずれの工程を先に行ってもよい。
【0086】
(d)張力解放工程
伸長工程において、基材を機械的に伸長させた場合には、その張力を解放する。
【0087】
(e)その他の工程
本態様の伸縮性回路基板の製造方法は、張力解放工程後に、応力調整層の基材とは反対側の面、または、配線および機能性部材の基材とは反対側の面に、粘着層を配置する粘着層配置工程を有してもよい。
【0088】
(2)第2態様
本開示の伸縮性回路基板の製造方法の第2態様は、応力調整層の材料が伸縮性を有する場合である。本態様の伸縮性回路基板の製造方法は、伸縮性を有する基材の一方の面とは反対側の面に応力調整層を有する積層体を作製する積層体作製工程と、積層体を伸長する伸長工程と、積層体を伸長した状態で、基材の一方の面に配線および機能性部材を配置する配線および機能性部材配置工程と、積層体の張力を解放する張力解放工程とを有する。
【0089】
図11(a)~(f)は、本態様の伸縮性回路基板の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図11(a)に示すように、支持基材4の一方の面に配線5および機能性部材6を有する配線基材10を準備する。次に、図11(b)に示すように、基材2の一方の面とは反対側の面に応力調整層8を有する積層体を作製する。次に、図11(c)~(d)に示すように、基材2および応力調整層8の積層体を伸長する。次いで、図11(e)に示すように、基材2および応力調整層8の積層体を伸長させた状態で、基材2の一方の面に、第1の接着層3を介して配線基材10の支持基材4側の面を貼合する。続いて、図11(f)に示すように、基材2および応力調整層8の積層体の張力を解放する。この際、基材2および応力調整層8が収縮するのに伴い、配線5、支持基材4および第1の接着層3も収縮し、これらの部材に波状等の凹凸が発生する。これにより、伸縮性回路基板1が得られる。
【0090】
(a)積層体作製工程
基材の一方の面とは反対側の面に応力調整層を有する積層体の作製方法としては、例えば、基材および応力調整層を同時成型する方法、基材および応力調整層を熱ラミネートする方法、応力調整層を第2の接着層を介して基材の一方面とは反対側の面に貼合する方法が挙げられる。
【0091】
(b)伸長工程
伸長工程については、上記第1態様の伸長工程と同様とすることができる。
【0092】
(c)配線および機能性部材配置工程
配線および機能性部材配置工程については、上記第1態様の配線および機能性部材配置工程と同様とすることができる。
【0093】
(d)張力解放工程
張力解放工程については、上記第1態様の張力解放工程と同様とすることができる。
【0094】
(e)その他の工程
本態様の伸縮性回路基板の製造方法は、張力解放工程後に、応力調整層の基材とは反対側の面、または、配線および機能性部材の基材とは反対側の面に、粘着層を配置する粘着層配置工程を有してもよい。
【0095】
10.用途
伸縮性回路基板は、伸縮性を有することから、曲面に適用することができ、かつ、変形に追従することができる。このような利点から、伸縮性回路基板は、例えば、ウェアラブルデバイス、医療機器、ロボット等に用いることができる。具体的には、温度センサ、圧力センサ、光センサ、光電センサ、近接センサ、せん断力センサ、磁気センサ等の各種センサが挙げられる。また、伸縮性回路基板は、心拍や脈拍、心電、血圧、体温、血中酸素濃度、筋電、脳波等の生体情報を検知する生体センサに有用である。
伸縮性回路基板は、例えば、ヒトの皮膚に貼付して用いてもよく、ウェアラブルデバイスやロボットに装着して用いてもよい。
【0096】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例
【0097】
以下に実施例および比較例を示し、本開示をさらに詳細に説明する。
【0098】
[実施例]
1)伸縮性基材および接着層の積層体の形成
接着層として粘着シート(3M社製、型番:8146)を用い、その粘着シート上に2液付加縮合のポリジメチルシロキサン(以下、PDMSと称する。)を厚さ700μmになるよう塗布し、さらに未硬化のPDMS表面に粘着シート(3M社製、型番:8146)を積層させてPDMSを硬化させ、接着層/伸縮性基材/接着層の積層体を準備した。
【0099】
2)配線基材の形成
支持基材として厚さ2.5μmのポリエチレンナフタレート(以下、PENと称する。)フィルムを用い、PENフィルム上にAgペーストをスクリーン印刷して、幅500μmの電極対(配線)を形成した。次いで、電極間に1.0×0.5mmサイズのLEDチップを導電性接着剤(化研テック社製、型番:CL-3160)にて接続させた。さらに、LEDチップ周囲にシリコーン系ポッティング剤(スリーボンド社製、型番:TB1220G)を塗布し硬化させた。
【0100】
3)伸縮性回路基板の作製
上記の接着層/伸縮性基材/接着層の積層体を1軸に150%伸長させた状態で、積層体の一方の接着層面に、上記の配線基材の支持基材面を貼合した。次いで、積層体のもう一方の接着層面に、応力調整層として厚さ2.5μmのPENフィルムを貼合した。次いで、伸長を解放することで、接着層/伸縮性基材/接着層の積層体を収縮させたところ、LEDおよびシリコーン系ポッティング剤が配置されている領域以外の領域において、表面に凹凸形状が生じて収縮した。これにより、配線、支持基材、接着層および応力調整層が凹凸形状の断面形状を有する、伸縮性回路基板が得られた。
得られた伸縮性回路基板では、1軸伸長方向と直交する方向において反り量が2mm以下であった。
【0101】
[比較例]
1)伸縮性基材/接着層の積層体の形成
接着層として粘着シート(3M社製、型番:8146)を用い、その粘着シート上に2液付加縮合のPDMSを厚さ700μmになるよう塗布し硬化させ、伸縮性基材/接着層の積層体を形成した。
【0102】
2)配線基材の形成
配線基材は、実施例1と同様にして形成した。
【0103】
3)伸縮性回路基板の作製
上記の伸縮性基材/接着層の積層体を1軸に150%伸長させた状態で、積層体の接着層面に、上記の配線基材の支持基材面を貼合した。次いで、伸長を開放することで、伸縮性基材/接着層の積層体を収縮させたところ、LEDおよびシリコーン系ポッティング剤が配置されている領域以外の領域において、表面に凹凸形状が生じて収縮した。
得られた伸縮性回路基板は、1軸伸長方向と直交する方向において反り量が10mm以上であり、カールしていた。これは、積層体の配線基材を貼合した面とその反対側の面とで、伸縮性基材の収縮量が異なっていたためと考えられる。
【符号の説明】
【0104】
1 … 伸縮性回路基板
2 … 伸縮性を有する基材
3 … 第1の接着層
4 … 支持基材
5 … 配線
6 … 機能性部材
7 … 第2の接着層
8 … 応力調整層
9 … 粘着層
10 … 配線基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11