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特許6998347基板処理装置、半導体装置の製造方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20220111BHJP
   H01L 21/324 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
H01L21/31 E
H01L21/324 T
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019162703
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021044282
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2020-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三部 誠
(72)【発明者】
【氏名】竹橋 信明
【審査官】田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-134816(JP,A)
【文献】特開2006-100303(JP,A)
【文献】特開2009-076533(JP,A)
【文献】特開平05-144746(JP,A)
【文献】国際公開第2012/011423(WO,A1)
【文献】特開平02-218117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/324
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を保持するボートを挿入する炉口を一端に有し内部に前記複数の基板を処理する処理室を構成する反応管と、
前記反応管の外周側に炉口側から前記反応管の他端に渡って設けられ管軸方向に複数のゾーン毎に分割して設けられた複数のヒータと、
前記ゾーンの温度若しくは前記ゾーンに対応する前記ヒータの温度を測定する複数の温度センサと、
前記温度センサで得た温度データに基づいて各々の前記ヒータへ供給する電力を制御して前記ゾーン毎に温度を調節する温度調節器と、
前記炉口を閉塞する蓋を含む炉口アセンブリと、
を備え、
前記温度調節器は、複数の前記ヒータを加熱して前記基板を熱処理する際に、前記基板が配置される前記ゾーンに対応する前記ヒータを予め設定した温度とし、炉口側で前記基板が配置されない2つ以上の前記ゾーンにおいては前記炉口に向けて温度が低下する温度勾配が形成されるように、複数の前記ヒータに供給する電力を前記ヒータ毎に制御するよう構成され
前記温度勾配が形成される2つ以上の前記ゾーンのうち、炉口側に対して遠いゾーンの管軸方向の長さは、前記2つ以上の前記ゾーンのうち、前記遠いゾーンよりも炉口側に近いゾーンの管軸方向の長さの半分以下に構成される、基板処理装置。
【請求項2】
最も炉口側で前記基板が配置されない前記ゾーンに対応して設けた前記温度センサは、該ゾーンに対応する前記ヒータのうちで炉口側とは反対側に配置され、
前記炉口側から数えて2番目の前記ゾーンに対応して設けた前記温度センサは、該ゾーンに対応する前記ヒータのうちで炉口側とは反対側に配置され
前記基板が配置されている前記ゾーンに対応して設けた前記温度センサは、該ゾーンに対応する前記ヒータの前記管軸方向の中央部にそれぞれ配置されている、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記炉口アセンブリは、前記処理室の炉口を塞ぐ蓋を備え、
前記蓋と前記ボートの間には断熱構造体が設けられ、
前記炉口が前記蓋で閉じられたときに、前記断熱構造体の上端が炉口側から数えて2番目の前記ゾーン内に位置するように前記断熱構造体の高さが設定されている、請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記炉口アセンブリは、前記蓋に設けられ前記ボートを回転させる回転機構を備え、
前記回転機構は、前記基板を熱処理する際に、基板上に周方向に沿ってガス流れを生じさせ、前記ボートの半径方向における前記基板の処理の均一性を向上させる速度で前記ボートを回転させ、
前記温度調節器は、前記基板が配置される前記ゾーンに対応する前記ヒータを1250°C以上の処理温度に制御し、最も炉口側で前記基板が配置されない前記ゾーンに対応する前記ヒータを前記処理温度より低い温度に制御し、前記温度勾配が、前記炉口側から数えて2番目の前記ゾーン内に形成される、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板の処理中に処理室内に希ガスを供給するガス導入管を更に備える請求項1又は4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記回転機構は、前記ヒータが1250°C以上の処理温度に制御されている間、前記基板を回転させる請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記回転機構は、前記ヒータが1250°C以上の処理温度に制御されている間、前記基板を回転させず、前記処理温度より低温であってパッシブ酸化とアクティブ酸化の遷移温度を含む温度帯において、前記基板を回転させる請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記複数のゾーンは、1250°C以上の第1処理温度と、第1処理温度より低い第2処理温度の処理で共通に利用されるゾーン配置を有し、最も遠い前記ゾーンは、前記第2処理温度で処理する際に前記温度勾配が形成されない請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項9】
一端に設けた炉口から複数の基板を保持するボートを反応管の内部に挿入する挿入工程と、
前記反応管の外周側に炉口側から前記反応管の他端に渡って設けられ管軸方向に複数のゾーン毎に分割して設けられた複数のヒータで前記反応管の内部に配置された前記基板を加熱する加熱工程と、
前記ゾーンの温度若しくはゾーンに対応する前記ヒータの各々の温度を温度センサで計測する温度計測工程と、
前記基板が配置されている前記ゾーンの前記ヒータを予め設定した温度とし、炉口側で前記基板が配置されていない2つの前記ゾーンの温度を、他の前記ゾーンの温度よりも低くなるように、複数の前記温度センサで得た温度データに基づいて各々の前記ヒータの供給電力を温度調節器で制御し、前記2つのゾーンにおいて前記基板が配置されているゾーン側から炉口側に向けて温度が低下するように温度勾配を形成する温度調整工程と、
を有し、
前記温度勾配が形成される2つ以上の前記ゾーンのうち、炉口側に対して遠いゾーンの管軸方向の長さは、前記2つ以上の前記ゾーンのうち、前記遠いゾーンよりも炉口側に近いゾーンの管軸方向の長さの半分以下に構成される、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
一端に設けた炉口から複数の基板を保持するボートを反応管の内部に挿入する挿入手順と、
前記反応管の外周側に炉口側から前記反応管の他端に渡って設けられ管軸方向に複数のゾーン毎に分割して設けられた複数のヒータで前記反応管の内部に配置された前記基板を加熱する加熱手順と、
前記ゾーンの温度若しくはゾーンに対応する前記ヒータの各々の温度を温度センサで計測する温度計測手順と、
前記基板が配置されている前記ゾーンの前記ヒータを予め設定した温度とし、炉口側で前記基板が配置されていない2つの前記ゾーンの温度を、他の前記ゾーンの温度よりも低くなるように、複数の前記温度センサで得た前記温度のデータに基づいて各々の前記ヒータの供給電力を温度調節器で制御し、前記2つのゾーンにおいて前記基板が配置されているゾーン側から炉口側に向けて温度が低下するように温度勾配を形成する温度調整手順と、
を基板処理装置のコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記温度勾配が形成される2つ以上の前記ゾーンのうち、炉口側に対して遠いゾーンの管軸方向の長さは、前記2つ以上の前記ゾーンのうち、前記遠いゾーンよりも炉口側に近いゾーンの管軸方向の長さの半分以下に構成されている、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
基板に熱処理を施す基板処理装置において、基板を処理する反応管の周囲に基板を加熱するヒータを配置し、所定温度に基板を加熱して処理可能な基板処理装置がある(特許文献1、2参照)。ここでは基板を搭載するボートを回転機構で回転させ、基板の面内処理を均一にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-312364号公報
【文献】特許4436371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、基板を面内均一に処理すると共に、より高温で処理することが求められている。そのため、基板処理装置は、今までの温度帯の他に、より高い温度帯でも処理可能な性能が求められる。
【0005】
反応管の蓋やボートの回転機構等を含む炉口部(炉口アセンブリ)は、反応管内の熱から保護されるべきである。しかしながら、炉口部の構成は今までの温度帯に対応できるよう設計されているため、より高い温度帯で処理しようとすると炉口部が熱ダメージを受ける場合がある。
【0006】
本開示の目的は、高温で基板を処理する場合に、炉口部の構造への熱ダメージを低減できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の基板処理装置は、複数の基板を保持するボートを挿入する炉口を一端に有し内部に前記複数の基板を処理する処理室を構成する反応管と、前記反応管の外周側に炉口側から前記反応管の他端に渡って設けられ管軸方向に複数のゾーン毎に分割して設けられた複数のヒータと、前記ゾーンの温度若しくは前記ゾーンに対応する前記ヒータの温度を測定する複数の温度センサと、前記温度センサで得た温度データに基づいて各々の前記ヒータへ供給する電力を制御して前記ゾーン毎に温度を調節する温度調節器と、前記炉口を閉塞する蓋を含む炉口アセンブリと、を備え、前記温度調節器は、複数の前記ヒータを加熱して前記基板を熱処理する際に、前記基板が配置される前記ゾーンに対応する前記ヒータを予め設定した温度とし、炉口側で前記基板が配置されない2つ以上の前記ゾーンにおいては前記炉口に向けて温度が低下する温度勾配が形成されるように、複数の前記ヒータに供給する電力を前記ヒータ毎に制御するよう構成され、前記温度勾配が形成される2つ以上の前記ゾーンのうち、炉口側に対して遠いゾーンの管軸方向の長さは、前記2つ以上の前記ゾーンのうち、前記遠いゾーンよりも炉口側に近いゾーンの管軸方向の長さの半分以下に構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、高温で基板を処理する場合に、炉口部への熱ダメージを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る基板処理装置の要部の概略を示す縦断面図である。
図2】基板処理装置の回転機構を示す縦断面図である。
図3】1250℃で基板を処理する際の基板処理装置の一部を拡大した縦断面図である。
図4】基板処理装置の温度調節系を示すブロック図である。
図5】1000℃で基板を処理する際の基板処理装置の一部を拡大した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示す本開示の実施形態に係る基板処理装置10は、一例として、半導体ウエハ等の基板12を加熱して処理する。基板処理装置10は、基板を1000℃付近で処理するプロセスと、1250℃付近で処理するプロセスの両方に適合するように、寸法等が設計されている。
【0011】
基板処理装置10は、略直方体の装填室14を形成する箱形状に構築された筐体16を備えており、筐体16の装填室14は、後述するボート34S或いはボート34L(図5参照)が後述する反応管50への搬入搬出に対して待機する待機室を構成している。装填室14には、ボート34S,34Lを昇降させるボートエレベーター18が設置されている。また、筐体16の天井板には、ボート34S,34Lを通過させるボート搬入搬出口20が開設されている。
【0012】
ボートエレベーター18は装填室14に垂直に立脚されて回転自在に支承された送りねじ軸22と、装填室14の外部に設置されて送りねじ軸22を回転駆動するモータ24と、送りねじ軸22に噛合されて送りねじ軸22の回転に伴って昇降する昇降台26と、昇降台26に水平に突設された支持アーム28とを備えている。
【0013】
図2に示すように、支持アーム28の先端部には、後述する反応管50の内部の処理空間を閉塞する蓋30が水平に支持されており、蓋30は円盤形状に構築されている。
【0014】
蓋30の下部には、後述する断熱構造体42L又は断熱構造体42S、及びボート34S又はボート34Lを回転させる回転機構32が設置されている。回転機構32は、筐体(ハウジング)32Aの内部にモータ、及び減速機(共に図示せず)を備えており、減速機の出力軸32Bが断熱構造体42Lに接続されるようになっている。出力軸32Bは、内部に空洞を設け熱伝達を低減させた耐熱材料製の延長シャフトを介して、断熱構造体42Lに接続されうる。なお、筐体32Aと出力軸32Bとの間には、反応管50の内部に供給したガスの漏れを阻止する流体シール32Cが設けられ、筐体32Aと蓋30との間は、ガスケット等によって封止されている。
【0015】
回転機構32の外周部には、環状の水冷ジャケット72が設けられている。水冷ジャケット72の内部には、冷水供給装置74から送られた冷却水が循環するようになっており、回転機構32が水冷されるように構成されている。
【0016】
図1に示すように、ボート34Sは、上下で一対の端板36、38と、端板36と端板38との間に架設されて垂直に配設された三本の保持部材40とを備えており、三本の保持部材40には多数の保持溝41が長手方向に等間隔に配されて互いに対向して開口するように刻設されている。
【0017】
ボート34Sは、三本の保持部材40の保持溝41間に基板12が挿入されることにより、複数枚の基板12を水平にかつ互いに中心を揃えた状態に整列させて保持することができるようになっている。基板12は、200mm又はそれ以上の直径を有する。
【0018】

図3、及び図5に示すように、断熱構造体42S、及び断熱構造体42Lは、共に円柱状に形成され、内部に断熱材(図示せず)が設けられている。断熱構造体42S、42Lは、ボート34L,34Sと回転機構32とを離間させている。実施形態のポート34Sと断熱構造体42Sの一部は、一例として、SiC(炭化ケイ素)等の材料で形成されている。
【0019】
図1、3に示すボート34L、及び図5に示すボート34Sは、各々高さが異り、それに応じて基板12の装填枚数も異なりうる。本実施形態では、図3に示すように、ボート34Sは、断熱構造体42Lと組み合わされて反応管50の内部に挿入され、図5に示すように、ボート34Lは、断熱構造体42Sと組み合わされて反応管50の内部に挿入される。
【0020】
ここで、図5に示すように、断熱構造体42Sの高さをh、ボート34Lの高さをh図3に示すように、断熱構造体42Lの高さをh、ボート34Sの高さをh、としたときに、h+h=h+h=Hとなる関係を有している。
【0021】
図1、及び図3に示すように、装填室14の天井板の上方には、漏れた処理ガスや断熱材からのパーティクル等を捕捉するスカベンジャ44がボート搬入搬出口20を取り囲むように構築されている。
【0022】
スカベンジャ44の上には、上端が閉塞された円筒形状に形成された断熱槽46が垂直に立設され、断熱槽46の内側には、円筒状のヒータ筒48が断熱槽46と同軸的に配置されている。
【0023】
また、筐体16の天井板の上には、ヒータ筒48の内側に、上端が閉塞された円筒状の反応管50が、アダプタ52を介してヒータ筒48と同軸的に配置されている。アダプタ52、及び反応管50は、ボート搬入搬出口20に同軸的に配置されて筐体16に支持されている。
【0024】
なお、装填室14には、ボート34S,34Lに対して基板12を装荷(チャージング)および脱装(ディスチャージング)するウエハ移載機構(図示省略)等が設置されうる。
【0025】
反応管50は、一例として、SiC(炭化ケイ素)等で形成されている。この反応管50は、上端部が閉塞され、下端部が開放された円筒状に形成されている。この反応管50の下方には石英製のアダプタ52が配置され、このアダプタ52により反応管50が筐体16の天井壁の上に支持されている。反応管50の内部は、基板12を処理する処理室(空間)とされている。
【0026】
アダプタ52は、上端部と下端部が開放された円筒形状をしている。本実施形態では、アダプタ52の下部の開口が、ボート34S,34L、及び断熱構造体42S,42L)を挿入するための炉口54とされている。前述したボートエレベーター18の蓋30が、アダプタ52の下端面に当接することにより炉口54が閉塞され、反応管50、及びアダプタ52の内部が密閉されるようになっている。炉口部(炉口アセンブリ)は、少なくとも蓋30、回転機構32を含み、更に断熱熱構造体42L、42S、アダプタ52、水冷ジャケット72等を含みうる。
【0027】
アダプタ52には、ガス導入管56、及び排気管58がそれぞれ接続されている。
ガス導入管56は、スカベンジャ44を貫通し、一方側が反応管50の側面に沿って上方に敷設されて、反応管50の天井部の上に形成されたバッファ室60に連通するように接続されている。ガス導入管56の他方側には、ガス供給源59が接続されている。
【0028】
バッファ室60には複数個のガス噴出口62が開設されており、ガス導入管56からバッファ室60に導入されたガスはバッファ室60内で拡散した後、複数個のガス噴出口62から反応管50の内部にシャワー状に吹き出すようになっている。
【0029】
なお、ガス導入管56が反応管50の外でその下端から上端に伸びる構成に代えて、反応管50内に開口するガス導入管56と、その開口に接続されガスを反応管50の上部へ導く管状のガスノズルを用いてもよい。
【0030】
排気管58の下流側には排気装置76が接続されており、反応管50の内部のガスを排気したり、反応管50の内部の圧力を制御することができる。このため、ガス噴出口62からから反応管50の内部の処理空間上部に導入されたガスは、反応管50の内部を流下して排気管58を介して反応管50の外部に排気される。
【0031】
(ヒータ筒の構成)
図3に示すように、ヒータ筒48は、反応管50の周囲に配置されている。このヒータ筒48には、以下に説明するように、個別に温度制御可能とされる複数のゾーン64が管軸方向に設定されている。
【0032】
本例では、ヒータ筒48の一番下のゾーン(最も炉口54側のゾーン)は、サブゾーン64subLとされ、下から2番目のゾーンは緩衝ゾーン64L、下から3番目のゾーンは中央下部ゾーン64CL、下から4番目のゾーンは中央ゾーン64C、下から5番目のゾーンは中央上部ゾーン64CU、下から6番目のゾーンは上部ゾーン64Uとされている。
【0033】
サブゾーン64subLにはヒータ66subLが配置され、緩衝ゾーン64Lにはヒータ66Lが配置され、中央下部ゾーン64CLにはヒータ66CLが配置され、中央ゾーン64Cにはヒータ66Cが配置され、中央上部ゾーン64CUにはヒータ66CUが配置され、上部ゾーン64Uにはヒータ66Uが配置されている。均熱領域を構成しうるヒータ66Lから中央上部ゾーン64CUまでのヒータ66は、それぞれの内周面において、均一な発熱をするように注意深く設けられるが、実際には、抵抗線の配置等に起因して、発熱むらが生じうる。
【0034】
各ヒータの内周壁には、各々熱電対等の温度センサ68が設置されている。サブゾーン64subLのヒータ66subLには上端近傍に温度センサ68subLが設けられ、緩衝ゾーン64Lのヒータ66Lには上端近傍に温度センサ68Lが配置され、中央下部ゾーン64CLのヒータ66CLには軸方向中間部に温度センサ68CLが配置され、中央ゾーン64Cのヒータ66Cには軸方向中間部に温度センサ68Cが配置され、中央上部ゾーン64CUのヒータ66CUには温度センサ68CUが配置され、上部ゾーン64Uのヒータ66Uには温度センサ68Uが下端近傍に配置されている。ここで、上端近傍とは一例として上端から数ミリ以内、下端近傍とは一例として下端から数ミリ以内のことを意味する。
【0035】
これにより、温度センサ68subLはサブゾーン64subLのヒータ66subLの上端付近のヒータ温度を計測し、温度センサ68Lは緩衝ゾーン64Lのヒータ66Lの上端付近のヒータ温度を計測し、温度センサ68CLは中央下部ゾーン64CLのヒータ66CLの軸方向中間部のヒータ温度を測定し、温度センサ68Cは中央ゾーン64Cのヒータ66Cの軸方向中間部のヒータ温度を測定し、温度センサ68CUは中央上部ゾーン64CUのヒータ66CUの軸方向中間部のヒータ温度を測定し、温度センサ68Uは上部ゾーン64Uのヒータ66Uの下端近傍のヒータ温度を測定することができる。
【0036】
図4に示すように、これらヒータ66、及び温度センサ68は、温度調節器70に接続されている。各ヒータは各ヒータに設けられた温度センサによってその温度が測定され、温度調節器70は、各温度センサから温度測定データを収集し、各ヒータの温度が予め設定した温度となるように、言い換えれば、各ゾーンの温度が予め設定した目標温度となるように各ヒータに供給する電力を制御(フィードバック制御)する。
【0037】
本実施形態の基板処理装置10では、高さ(軸方向長さ)が異なる2種類のボート34S、34Lが用意されており、図5に示すように、高さが高い一方のボート34Lは、基板12を1000℃で処理する際に用いられ、図3に示すように、ボート34Lよりも高さが低い他方のボート34Sは、基板12を1250℃で処理する際に用いられる。
【0038】
図3に示すように、反応管50の頂部(天井部)は、ヒータ筒48の上端よりも低い位置にあり、ヒータ筒66の上部ゾーン64Uの内部に位置している。
【0039】
また、基板12を1250℃で処理する際に用いられる高さの低いボート34Sは、反応管50の内部に配置した場合に、ボート34Sに装填される最も上側の基板12が中央上部ゾーン64CUの上端付近(但し、上端よりも下側)に位置し、ボート34Sに装填される最も下側の基板12が中央下部ゾーン64CLの下端付近(但し、下端よりも上側)に配置され、複数の基板12が、中央下部ゾーン64CL、中央ゾーン64C、及び中央上部ゾーン64CUに配置されるようにボート34Sの高さh(軸方向長さ)が決められている。
【0040】
なお、ボート34Sを搭載している断熱構造体42Lは、反応管50の内部に挿入されている状態で、その上端が、ヒータ筒66の緩衝ゾーン64Lの内部に位置するように(即ち、サブゾーン64subL、及び中央下部ゾーン64CLに入らないように)、その高さhが決められている。
【0041】
一方、図5に示すように、高さの高いボート34Lは、反応管50の内部に配置した場合に、ボート34Lに装填される最も上側の基板12は中央上部ゾーン64CUの上端付近(但し、上端よりも下側)に位置し、ボート34Lに装填される最も下側の基板12は、緩衝ゾーン64Lの下端付近(但し、下端よりも上側)に配置され、複数の基板12が、緩衝ゾーン64L、中央下部ゾーン64CL、中央ゾーン64C、及び中央上部ゾーン64CUの何れかに配置されるようにボート34Lの高さh(軸方向長さ)が決められている。
【0042】
また、ボート34Lを搭載している断熱構造体42Sは、反応管50の内部に挿入されている状態で、その上端が、ヒータ筒48のサブゾーン64subLの上端から上側に位置しないように、即ち、緩衝ゾーン64Lに入らないようにその高さhが決められている。
【0043】
通常、均熱領域と、温度勾配領域との境界付近のゾーンは、管軸方向に温度変動(ハンチング)が生じやすいため、ゾーンの高さを小さくし、制御性を向上させる。本例では緩衝ゾーン64Lの高さが、隣接する中央下部ゾーン64CL及びサブゾーン64subLの高さの半分以下に設定される。
【0044】
(熱処理:1000℃)
本実施形態の基板処理装置10を用い、一例として1000℃で基板12を熱処理(例えば酸化膜形成)する工程を説明する。
処理開始前のスタンバイ時は、断熱槽46内は800℃程度に維持されている。ここでは全ての温度センサ68に対応する目標温度を800℃として、温度調節器70によって制御されているものとする。
【0045】
ボートエレベーター18を駆動し、予め準備しておいた断熱構造体42Sで支持した基板装填済みのボート34L(1000℃処理用)を反応管50の内部に搬入(ボートローディング)し、蓋30でアダプタ52の炉口54を閉塞する(挿入工程)。
【0046】
その後、温度調節器70は、均熱領域が1000℃となるように、各ゾーンの温度を一定の昇温レートで上昇させる制御を行う。例えば、一定の昇温レートで連続或いは断続的に変化する目標温度を設定する。このように変化する目標温度は、昇温・降温パターンとして温度調節器70内に記憶されうる。最終的には、基板12が配置される緩衝ゾーン64L、中央下部ゾーン64CL、中央ゾーン64C、中央上部ゾーン64CUの4つのゾーンが1000℃となり、緩衝ゾーン64の上端付近が1000℃となり、また、上部ゾーン64Uの下端付近が1000℃となるように、温度調節器70は、温度センサ68subLからの温度測定データ、温度センサ68Lからの温度測定データ、温度センサ68CLからの温度測定データ、温度センサ68Cからの温度測定データ、温度センサ68CUからの温度測定データ、温度センサ68Uからの温度測定データに基づいて、温度調節器70はヒータ66subL、ヒータ66L、ヒータ66CL、ヒータ66C、ヒータ66CU、及びヒータ66Uに供給する電力を制御する(加熱工程、温度計測工程、温度調整工程)。
【0047】
その後、反応管50の内部に水蒸気等を含む処理ガスが導入され、基板12の熱処理が行われる。基板12を熱処理する際には、回転機構32で断熱構造体42S、及びボート34Lを回転させる(回転工程)。これにより、ヒータ66の発熱むらや、ガス供給管56付近の温度低下があったとしても、ボート34Lに装填された基板12への加熱が平均化されるので、基板12全体を適正に熱処理することができる。更に、回転により、粘性流のガスは基板12の表面上に周方向に流れ、更に遠心力によって半径方向にも流れを生じるので、基板12全体に均一に処理ガスを接触させることができ、基板12全体を適正に熱処理することができる。
【0048】
ここで、ヒータ66subLの上側にはヒータ66CLが隣接して設けられているが、ヒータ66subLの下側にはヒータが設けられていないので、ヒータ66subLの上部と下部の温度を比較すると、ヒータ66subLの下部の温度はヒータ66subLの上部の温度よりも低くなり(ヒータ66subLの熱は、下方のスカベンジャ44側へ逃げるため)、図3のヒータの温度を示すグラフ線G2で示すように、ヒータ66subLの温度は、下部に向かうに従って低下する。即ち、ヒータ66subLにおいて、上部側が高温、下部側が低温となる温度勾配が形成される。この結果、緩衝ゾーン64Lから中央上部ゾーン64CUまでの間で均熱領域が達成される。
【0049】
ヒータ66subLの下側において、処理管内の温度分布は、断熱構造体42Sの断熱作用によって、所定の勾配で下がり続け、回転機構32に至っては十分低温(例えば200℃以下)となる。この結果、回転機構32の流体シール32Cに磁性流体シールを用いた場合でも、温度上昇によるシール性の低下や耐久性の低下を効果的に抑制することができる。
【0050】
なお、本実施形態の基板処理装置10では、必要に応じて水冷ジャケット72の内部に、冷水供給装置74から供給された冷却水を循環させることができる。これにより、回転機構32の温度をより低下させることができる。
【0051】
なお、ヒータ66Uの下側にはヒータ66CUが隣接して設けられているが、ヒータ66Uの上にはヒータが設けられていないので、ヒータ66Uの上部と下部の温度を比較すると、ヒータ66Uの上部の温度はヒータ66Uの下部の温度よりも低くなり、図3のヒータの温度を示すグラフ線G2で示すように、ヒータ66Uの温度は、上部に向かうに従って低下する。
【0052】
基板12の熱処理が終了すると、断熱槽46内はスタンバイ温度まで降温され、蓋30がボートエレベーター18によって下降されて熱処理済の基板12がボート34Lに保持された状態で反応管50の外部に搬出(ボートアンローディング)され、その後、処理済の基板12はボート34Lから取出される(ウエハディスチャージング)。
【0053】
(高温熱処理:1250℃)
次に、本実施形態の基板処理装置10を用い、1000°Cを超える温度、一例として、1250℃で基板12を高温熱処理(アルゴンガス等の希ガスや水素ガスを用いたアニール)する工程を説明する。
1250℃で基板12を高温熱処理する場合も、工程の流れは1000°Cと大よそ同じである。昇温は、各ゾーンの温度を一定の昇温レートで上昇させる制御を行う。この際、到達温度が1000℃であるヒータ66subLの昇温レートは、他のヒータ66の昇温レートよりも小さく設定され、全てのヒータが略同時に最終温度に到達するように制御される。最終的には、基板12が配置される中央下部ゾーン64CL、中央ゾーン64C、及び中央上部ゾーン64CUの3つのゾーンが1250℃で一定となり、緩衝ゾーン64Lの上端付近が1250℃となり、サブゾーン64subLの上端付近が中間温度である1000℃、上部ゾーン64Uの下端付近が1250℃となるように、温度調節器70は、温度センサ68subLからの温度測定データ、温度センサ68Lからの温度測定データ、温度センサ68CLからの温度測定データ、温度センサ68Cからの温度測定データ、温度センサ68CUからの温度測定データ、温度センサ68Uからの温度測定データに基づいて、温度調節器70はヒータ66subL、ヒータ66L、ヒータ66CL、ヒータ66C、ヒータ66CU、及びヒータ66Uに供給する電力を制御する。
【0054】
ここで、緩衝ゾーン64Lのヒータ66Lの上側には1250℃に設定されるヒータ66CLが隣接して設けられているが、緩衝ゾーン64Lの下側には上端側が1000℃に設定されるヒータ66subLが設けられているので、緩衝ゾーン64Lのヒータ66Lの上部と下部の温度を比較すると、ヒータ66Lの下部の温度はヒータ66Lの上部の温度よりも低くなり、図5のヒータの温度を示すグラフ線G1で示すように、ヒータ66Lの温度は、下部に向かうに従って低下する。即ち、ヒータ66Lにおいて、上部側が高温、下部側が低温となる温度勾配が形成される。
【0055】
また、サブゾーン64subLの内部にも1000℃処理と同様な温度勾配が形成される。図5グラフ線G1は、ヒータ66Lとヒータ66subLの範囲内で一定の割合で温度が低下する、理想的な温度勾配を示している。実際には、ヒータ66Lとヒータ66subLの境界における温度勾配の変化が十分小さければよい。このようにすると、均熱領域内の温度変動を抑えやすい。なおこの温度変動を実測し、温度変動が小さくなるように、中間温度を調整することができる。つまり、温度センサ68subLの目標温度である中間温度は、ヒータの上限温度を超えない範囲で、1000℃以外の温度に設定されうる。
【0056】
その後、反応管50の内部にアルゴンガス等を含む処理ガスが導入され、基板12の熱処理が行われる。1250℃のような温度では、酸素を介在した昇華や凝華が盛んに起こる。すなわち、基板のSiが酸化され、SiOとなって蒸発したり、SiOが基板上にSiやSiO2を堆積させたりする。これらの反応は、平衡条件付近で起こるため、わずかな温度や圧力の違いによって、基板への処理が不均一になるほか、パーティクルを発生させる恐れがある。本例では、熱処理中にボート34Lを回転させるので、基板12の温度が均一化するほか、ガスが基板12上を遠心力によって半径方向に流れることで、基板12中心から外周付近に亘ってSiOの分圧を低下させ、望ましくない堆積を抑制することができる。なお上述したような昇華は、低温且つ酸素分圧が高い時のパッシブ酸化と高温且つ酸素分圧が低い時のアクティブ酸化との境界付近の温度で、エッチングレートが極大となり、多量のSiOが発生する。そのため、1250℃度の処理中に限らず、昇温又は降温中に境界温度を通過する時に、ボートを回転させてもよい。これにより、基板への凝華物の付着(ヘイズ)を抑制できる。
【0057】
高温度処理は、Si基板中のCOP(Crystal Originated Particle)等の結晶欠陥を低減するためのアルゴンアニールや、SiC基板中のドーパントを活性化する活性化アニール、ビア・トレンチへの埋め込み性の改善や気孔除去のための高温高圧アニールを含む。アルゴンアニールは、600℃以上で効果が表れ、温度の上昇とともに効果が高まる。1250℃未満ではボート回転を行っても現在要求される高度な結晶品質及び平坦性(均一性)を得られないが、1250℃以上では要求を満たすことができる。高温度処理が可能な温度の上限は、Si基板に対してはその融点(1414℃)で制限され、或いはヒータや断熱槽46の耐熱温度で制限される。SiC活性化アニールは標準的には1400℃~1800℃で行われるため、実用上の上限は2000℃で十分である。この上限温度を超えると、基板若しくは基板処理装置自体が損傷するが、この上限温度以下であれば、正常に処理できる。
【0058】
以上のように、本実施形態の基板処理装置10では、ヒータ筒48の各ヒータの温度を個別に制御することで、回転機構32の耐久性低下を抑制しつつ、基板12を1000℃で熱処理したり、より高温の1250℃で熱処理することができる。1250℃で熱処理する際は、ヒータ66Lにおいて下部側が低温となるように温度勾配が形成され、さらに、ヒータ66Lの下側のヒータ66subLにおいては、前述した1000℃で基板12を熱処理する場合と同様に、下部側が上部側の温度(1000℃)よりも低温となるように温度勾配が形成されるため、回転機構32の熱ダメージが抑制される。
【0059】
本実施形態によれば、1000°Cの処理と1250°Cの処理において、ヒータ66のゾーン配置を共通化でき、また回転機構32や、断熱槽46と炉口54との間の距離(スカベンジャ44の高さ)が共通化されることで、筐体の高さも共通化され、基板処理装置10の構成の大部分を共通化することができる。
【0060】
[他の実施形態]
なお、本開示は以上の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲
で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0061】
本開示における実施形態においては、ウエハを処理する場合について説明したが、本開示は液晶パネルのガラス基板や磁気ディスクや光ディスク等の基板を処理する基板処理装置全般に適用することができる。
【0062】
上記実施形態の基板処理装置10では、回転機構32を冷却水で冷却するために、水冷ジャケット72、及び冷水供給装置74を用いたが、これに限定されず、例えば、水冷ジャケット72、及び冷水供給装置74は、必要に応じて設ければよく、本発明において必須ではない。
また、回転機構32に放熱フィンを設け、放熱フィンに向けてブロアで送風を行うことで回転機構32を冷却してもよい。
【0063】
上記実施形態では、一つの基板処理装置10で、1000°Cの処理と、1250°Cの処理の両方を行うようにしているが、例えば、基板処理装置10を2台設け、一方を1000°Cの処理用、他方を1250°Cの処理用として使い分けてもよい。また、ボートや断熱構造体以外の構成を共用せず、処理温度によって異ならせることを妨げない。例えばアダプタ52は必須ではなく、特に1000°Cの処理では、同一の素材によって反応管50の一部として形成してもよく、反応管50内にプロファイル熱電対を更に設けて、ヒータ温度をカスケード制御してもよい。
【符号の説明】
【0064】
10…基板処理装置、12…基板、30…蓋、32…回転機構、34S…ボート、34L…ボート、42S…断熱構造体、42L…断熱構造体、48…ヒータ筒、50…反応管(処理室)、56…ガス導入管(ガス供給部)、59…ガス供給源(ガス供給部)、66subL…ヒータ、66L…ヒータ、66CL…ヒータ、66C…ヒータ、66CU…ヒータ、66U…ヒータ、68subL…温度センサ、68L…温度センサ、68CL…温度センサ、68C…温度センサ、68CU…温度センサ、68U…温度センサ、70…温度調節器
図1
図2
図3
図4
図5