(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】フライ処理装置
(51)【国際特許分類】
A47J 37/12 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
A47J37/12 351
(21)【出願番号】P 2020178455
(22)【出願日】2020-10-23
(62)【分割の表示】P 2017510007の分割
【原出願日】2016-03-29
【審査請求日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】P 2015068552
(32)【優先日】2015-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】町田 典之
(72)【発明者】
【氏名】安田 茂
(72)【発明者】
【氏名】日比 貴昭
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-165641(JP,A)
【文献】特公平3-74093(JP,B2)
【文献】特開2005-296417(JP,A)
【文献】特公昭59-25590(JP,B2)
【文献】米国特許第4488478(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)フライ油槽と、
2)前記フライ油槽の上流側に配設され、フライ用の食品原料を投入する原料供給機構と、
3)前記フライ油槽の下流側よりフライ油を流出させ、当該フライ油を前記フライ油槽の上流側において、フライ油槽の底部側から上部方向にフライ油を噴出するフライ油の流入装置によりフライ油槽中に流入させるフライ油循環機構と、
4)前記流出させた油を再加熱するための熱交換機と、
5)前記油槽内に配置され、前記フライ油中に投入された食品を上流側から下流側に向けて移送するフライ食品移送機構であって、前記フライ油槽の上流側で投入された食品を、その投入の直後から前記フライ油槽の底部側から上部方向に噴出するフライ油によりその相互の位置を乱しながら、フライ油面に浮遊させた状態で移送する第一移送機構と、これに連続してフライ食品をフライ油槽の油面以下に浸漬させた状態で移送する第二移送機構とを有するフライ食品移送機構と、
6)前記フライ後の食品をフライ油槽から回収するフライ食品回収機構と、
を備えた、食品のフライ処理装置。
【請求項2】
前記5)のフライ食品移送機構が、フライ食品を所定間隔で区画する区分け板を備えた請求項1に記載の食品のフライ処理装置。
【請求項3】
フライオイルを上流側から下流側に流動させて当該下流側から流出させたフライオイルを、熱交換器を経由してフライ油槽に流入させるフライ装置を用いたフライ食品の製造方法であって、
1)フライ用の原料食品をフライ油槽の上流側から投入する工程
2)前記フライ中の原料食品をフライ油槽上流側において浮遊させてフライする工程、
3)前記フライ油槽上流側において、フライ用の原料食品のフライ槽への投入の直後からフライ油槽底部側から上部方向に向けてフライ油を噴出させて浮遊する食品の位置を乱しながらフライ油槽に流入する工程
4)前記浮遊させてフライする工程に連続してフライ中のフライ食品をフライオイル中に浸漬してフライする工程
5)前記フライオイル中に浸漬してフライ後のフライ食品をフライ油槽より回収する工程、の各工程を含むフライ食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小麦粉やじゃがいもを原料とするデンプン質を主原料とし、(スナック系の)フライ食品の製造装置に関するものである。具体的には、フライ処理された麺線やポテトチップ等の製造装置に関するものである。特にフライ麺線おいては1~10cm程度の短い麺線のフライ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小麦粉やじゃがいもを原料とするデンプン質を主原料とする(スナック系の)フライ食品は種々存在する。例えば、即席麺は通常の麺線が20~70cm程度の長さをもつものが多い。一方、近年の消費者嗜好の多様化とともにスープ感覚で食べる1~10cm程度の短い長さの麺線も必要になってきている。特に、海外においては短い麺線を有し、スープ感覚で喫食する短い麺製品の需要も多く存在する。即席麺の分野においてもこのような短い長さの麺線を製造する必要性が高まっている。ここで、短い麺線を含む即席麺の場合、容器への麺線群の充填の際、喫食時の調理の点等から各麺線群がまとまった塊状ではなく、ばらけた状態で収納されていることが必要となっていた。
【0003】
通常の20~70cm程度の麺線長を有するフライ即席麺塊は、α化後にカットされた麺線群をリテーナと呼ばれる型枠に収納して、上部に蓋を被せてからフライ油中に浸漬して製造する。得られる麺塊は麺線が入り組んだ一つの麺線群の塊となる。
【0004】
一方、上述のような1~10cm程度の短い長さの麺線を同様にリテーナに収納してフライすると、上記と同様に一つの麺線群の塊となってしまい、当該麺線群に衝撃を加えても容易に全体がばらけず、フライ後においてばらけた状態でのフライ麺線を容易に得ることは困難であった。また、塊状になると当該内部の麺線群のフライ処理が不足するという問題もある。
そこで、リテーナ以外を用いて比較的小さめのフライ物を連続して製造する方法としては、以下の先行技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3955690号 しかし、特許文献1記載の方法は、小さな揚げ玉を連続的に製造する方法であり、これよりも大きな麺線に適用しようとしても、フライが十分でなかったり、また、単位時間当たりの生産量も不足し、生産性において劣ることが予想される。このように、従来まで1~10cm程度の短いフライ麺線群をばらけた状態で効率的に製造する方法は開発されていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者らは、フライ処理された短い麺線群をばらけた状態で効率的に製造することができる装置について開発することを課題とした。さらに、当該方法については、麺線群のみを対象とするだけではなく、当該方法が他のフライ食品にも応用できる方法を開発することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究の結果、本課題を解決するために、加熱された油を含むフライ油槽にα化後の短い麺線を順次投入して、フライ油槽内に設けられたコンベアによって麺線群を移送させつつフライする装置を採用して、当初はフライ油中に浸漬せずに、浮遊させるような態様で移送させてフライを途中まで行った後、短時間に麺線群をフライ油中に浸漬して移送してフライする、という方法が有効であることを見出した。
さらに、当該浮遊させた状態でフライ中のフライ物に対して、フライ槽の底部から上部方向に向けてフライオイルを流入させ、フライ物を撹拌することでフライ物を均一に効率よくフライできることを見出して本発明を完成させたのである。
すなわち、このように製造することで良好な生産性を維持しながら、フライ後に得られる麺線群がばらけた状態か、或いは塊状になっているものでも軽い衝撃で容易にばらけたフライ麺線とできることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
また、前記麺線のフライ処理装置において、フライ油の循環機構において、フライ油の流入がフライ油槽の底部側から上部方向にフライ油を噴出させることで、フライ食品間の相互の位置を乱して結着を防ぐ方法が、フライ終了後の麺線のばらけに有効であることを見出した。
さらに、本発明者らの鋭意研究の結果、本装置をフライ前のスライスしたじゃがいも等に対して適用し、ポテトチップのフライ処理にも適用したところ、フライ終了後のポテトチップのばらけに有効であるとともに、従来まで比べて低温又は短時間で好適にポテトチップを製造できることを見出した。
すなわち、これらの短いフライ麺線やポテトチップのような所定のサイズを有するデンプン系のフライ食品に本装置が優れたフライ処理効果を有することを見出して本発明を完成させたのである。
【0008】
すなわち、本願第一の発明は、
「1)フライ油槽と、
2)前記フライ油槽の上流側に配設され、フライ用の原料食品を投入する原料供給機構と、
3)前記フライ油槽の下流側よりフライ油を流出させ、当該フライ油を前記フライ油槽の上流側において、フライ油槽の底部側から上部方向にフライ油を噴出するフライ油の流入装置によりフライ油槽中に流入させるフライ油循環機構と、
4)前記流出させた油を再加熱するための熱交換機と、
5)前記油槽内に配置され、前記フライ油中に投入された食品を上流側から下流側に向けて移送するフライ食品移送機構であって、前記フライ油槽の上流側で投入された食品をフライ油面に浮遊させた状態で移送する第一移送機構と、これに連続してフライ食品をフライ油槽の油面以下に浸漬させた状態で移送する第二移送機構とを有するフライ食品移送機構と、
6)前記フライ後の食品をフライ油槽から回収するフライ食品回収機構と、
を備えた、食品のフライ処理装置。」、
である。
【0009】
次に、当該フライ処理装置においては、5)のフライ食品移送機構において、フライ中のフライ食品を所定間隔で区分けしながら移送しつつ、フライ処理する方法が好適である。
すなわち、本願第二の発明は、
「前記5)のフライ食品移送機構が、フライ食品を所定間隔で区画する区分け板を備えた請求項1に記載の食品のフライ処理装置」である。
さらに、本願発明者は、請求項1のフライ処理装置において実現されるフライ食品の製造方法についても意図している。
【0010】
すなわち、本願第三の発明は、
「フライオイルを上流側から下流側に流動させて当該下流側から流出させたフライオイルを、熱交換器を経由してフライ槽に流入させるフライ装置を用いたフライ処理方法であって、
1)フライ用の原料食品をフライ槽の上流側から投入する工程
2)前記フライ中の原料食品をフライ槽上流側において浮遊させてフライする工程、
3)前記フライ油槽上流側においてフライ槽底部側から上部方向に向けてフライ油を噴出させてフライ槽に流入する工程
4)前記浮遊させてフライする工程に連続してフライ中のフライ食品をフライオイル中に浸漬してフライする工程
5)前記フライオイル中に浸漬してフライ後のフライ食品をフライオイル槽より回収する工程、
の各工程を含むフライ食品の製造方法。」、である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフライ処理装置を用いることで、デンプンを主原料とするフライ食品をばらけた状態で効率的に製造することができる。また、当該対象食品が、短い麺線群の塊状麺塊が残った場合でも軽い衝撃でフライ後の麺線群を容易にばらけさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は本願発明の第一の実施態様の麺線フライ処理装置の断面模式図を示したものである。
【
図2】
図2は本願発明の第二の実施態様の麺線フライ処理装置の断面模式図を示したものである。
【
図3】
図3は本願発明の比較例の麺線フライ処理装置の断面模式図を示したものである。
【符号の説明】
【0013】
1 フライ油槽
3 食品供給機構
5 コンベア(食品供給機構)
7 スロープ(食品供給機構)
9 フライ油循環機構
11 ポンプ
13 熱交換器
15 食品移送機構
17 コンベア(食品移送機構)
19 パドル
21 第一移送機構
23 第二移送機構
25 回収機構
26 回収コンベア
27 フライオイル噴射機構(底面から)
29 孔
31 フライオイル噴射機構(管状部材)
MS 食品群
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施態様について図面を参照しつつ説明する。但し、本発明はこれらの実施態様に限定されるものではない。
【0015】
図1は本願発明の第一の実施態様の食品フライ処理装置の断面模式図を示したものである。
第一の実施態様のフライ処理装置は、フライ油槽1、当該フライ油槽1にカットされた食品を投入する投入機(食品供給機構)3と、当該フライ油槽内を長手方向に循環するコンベア17を有するフライ食品移送機構15を有している。また、当該コンベア17には、投入されたフライ食品をフライさせつつ下流側に搬送するパドル19が所定間隔をおいて装着されている。また、フライ終了後に外部にフライ食品群を排出するためのフライ食品の回収機構25として、パドルを有する回収コンベア26が設けられている。
─フライ油槽─
本発明におけるフライ油槽1には、フライ油が注入される。フライ油の種類については特に限定されず種々のオイルを用いることができる。例えば、植物油、動物油等のフライオイルを用いることができる。具体的には、植物油ではパーム油、大豆油、コーン油麺実油等、動物油であるとラード等が挙げられる。また、必要に応じて水素添加した油を用いてもよいことは勿論である。
【0016】
尚、本発明の第一の実施態様のフライ油槽1の底面は、上流側が高、下流側が低となり二種類の高さとなる底面を有している。これによって後述する第一移送機構におけるパドルから底面までの間隔と、第二移送機構におけるパドルから底面までの間隔がほぼ一定になるとともに、上流側から下流側のフライ油の移動がスムースに行われるようになる。
─フライ用の原料食品─
本発明でいうフライ用の原料食品とは、フライ処理する前の食品原料であって、小麦粉やじゃがいも等を原料とするデンプン系を主原料とするフライ食品である。
すなわち、具体的には、小麦粉、澱粉及び塩類に水を混合して、圧延、カット、α化(蒸煮、茹で)した後にフライ処理する食品群や、じゃがいもをスライスしてからブランチング処理した後にフライ処理する前のポテトチップ原料が挙げられる。さらに、偏平のポテトチップのみならずスティック状のポテトスティックやフライドポテト、更には、とうもろこしを原料とするコーン系のスナック製品でも適用可能なことは勿論である。
次に、本発明でいうフライ用の原料食品とは、概ね10cm以内の粒状物に好適に利用できる。当該粒状物とは、細長状のタイプや、正方形又は長方形等の種々の形状が可能なことは勿論である。
─原料食品供給機構─
本発明は、前記フライ油槽にフライ原料食品を連続又は間欠的に投入する食品供給機構3を備えている。当該供給機構については特にその構成は限定されないが、例えば、
図1に示すようにα化後の食品をカットした後の食品群を運び、コンベア5の先端がフライ油槽1の上部まで延びている態様等が考えられる。
【0017】
また、フライ食品原料をカットしつつ、そのままフライ槽に投入されるような態様であってもよい。また、
図1に示すようにスロープ7を設けて、当該スロープ7をフライ前の食品が滑り落ちるような構成であってもよい。
─フライ油循環機構─
本発明においては、フライ油の循環機構9を設けているが、本第一の実施態様においてはフライ油の循環をさせるために、ポンプ11によってフライ油槽1の下流部付近の流出口からフライ油を流出させ、上流側にフライ油を流入している。このようにすることでフライ油槽内において上流側から下流側へのフライ油の流れを形成させることができる。また、フライ油中に投入された食品群を下流側に無理なくスムースに送ることができ、食品群をパドルの循環に合わせて上流から下流側に移送することができる。
【0018】
本第一の実施態様では、下流側の流出口から流出されたフライ油をポンプ11により上流側のフライ油槽1の端部の底部側よりフライ油を流入するとともに、前述した食品供給機構3における食品群を、フライ油槽1に滑り落とすスロープ7にも供給しており、当該フライ油の供給により食品群のスムースなスロープ7での滑り落ちを実現している。
─ストレーナ─
本発明の第一の実施態様においては、フライ油の循環機構9として下流側のフライ油をフライ油槽1から回収して熱交換器13に送る管状の経路が設けられているが、当該フライ油槽1からフライ油の回収の際、ストレーナ15を通過するように構成されている。本発明は1~10cm程度の食品群を対象としているため、イレギュラーに微小な麺の断片が生じる場合がある。このため、フライ油を循環させる際に、フライ油をフィルタリングする工程が重要となる。本発明のストレーナについては金網状のタイプやさらに濾紙を用いるタイプ等の種々のタイプを利用することができる。尚、当該フィルタリングの金網や濾紙は回転・循環するタイプを利用するのが好ましい。
─熱交換器─
本発明においては、前記フライ油槽1より流出させた油を再加熱するためにポンプの後にフライ油の再加熱用の熱交換器13が設けられている。本発明においては熱交換器13の種類は限定されず、種々の熱交換器のタイプを利用することができる。
─フライ食品移送機構─
本発明においてはフライ油槽1内において食品群を移送するフライ食品移送機構15が設けられている。
図1に示す本発明の第一の実施態様においては、コンベア17からなるフライ食品移送機構が開示されている。該コンベア17はステンレス製の通液性の網状ベルトの両端にチェーンが配設されており、当該チェーンに所定間隔を隔てて、多数のパドル19が設けられている。
当該パドルは、横長の矩形板からなり、その両端は、フライ油槽1の両側壁の内面に当接する位置に配置されている。また、コンベア17には、チェーンを移送するための6×2(両面)のスプロケットを有する。尚、スプロケットの代わりに適宜、ガイド等を利用してもよいことは勿論である。
また、コンベア17は所定のスプロケットに固着した回転軸に連結された駆動装置によって回転駆動される。
【0019】
次に、本発明のフライ処理装置においては、前記フライ食品移送機構15が、フライ油槽の上流側で投入された食品をフライ油面に浮遊させた状態で移送する第一移送機構21と、これに連続してフライ食品をフライ油槽の油面以下に浸漬させた状態で移送する第二移送機構23を有する。これらの移送の工程で投入された食品群はフライ処理される。
【0020】
第一移送機構21については、食品供給機構3より投入された複数の食品群をフライ油中に強制的に浸漬させるのではなく、浮遊(フロート)させた状態でフライするように構成されている(フロートフライ)。
また、ここでいう浮遊させた状態でのフライ(フロートフライ)とは、意図的(積極的)に食品群を油中に浸漬しない状態をいう。従って、複数の食品群がフライオイル中を浮遊して流動する状態であると、食品群が重なり合った状態となっており、その下方側の一部は油中に浸漬された状態となっている場合もあることは勿論である。
【0021】
同様に、本発明の第一の実施態様のようにパドル間に投入される食品の量が多い場合、当該食品群の下部の一部は、上記と同様にフライ油中に浸漬された状態となる。本発明にいう浮遊状態によるフライとはこのような状態も含むものとする。尚、浮遊状態であるため、食品群はその相対的な位置が変動しやすい状態となっている。
【0022】
当該第一の移送機構21に続いて、第二の移送機構23が設けられている。当該第二の移送機構23については、第一の移送機構21の過程でフライされた食品が第二の移送機構23に移る。当該第二の移送機構23においては、コンベア部がフライ油の液面とほぼ同一か、当該フライ油面よりも下部まで下降する。このようにして、食品群は強制的にフライ油中に浸漬して、ディープフライ(食品群が強制的に油面以下に浸漬させられた状態でのフライ)が行われる。
【0023】
上記の第一移送と第二移送のフライ時間は、フライ対象とする食品によるが、例えば、フライ麺線群であれば、第一移送と第二移送の比率にもよるが、麺線群の場合、概ね第一移送が10~60秒、第二移送が10~60秒程度必要である。
また、ポテトチップの場合においては、第一移送と第二移送の比率にもよるが、概ね第一移送が45秒~120秒、第二移送が45秒~120秒程度必要である。
第一移送から第二移送への移行は種々の方法が可能である。すなわち、
図1に示す第一の実施態様のように、単一のコンベア装置を用いることによって、第一移送から第二移送への移行を実現してもよい。本第一の実施態様では、第一移送から第二移送に移る際において、コンベアラインが緩やかな傾斜を有している。また、複数のコンベアを用いて、食品群を受渡しするような態様でもよい。
─フライ油噴射機構─
図2に示す本発明の第二の実施態様においては、フライ油が熱交換器を経由して再度フライ油槽1に供給する際にフライ油槽1の底面より、上部方向に向けてフライ油の噴射機構27が設けられている。
当該フライ油の噴射機構によって、フライ油中で底面から上部に向かってフライ油の流動を生じさせることができる。
【0024】
本発明においては、フライ前の食品群がフライ油槽1に投入されて、浮遊しつつフライ処理がされる。この際、第一移送機構21に示すようにパドルによって食品群が下流方向に送られる。その後に第二移送機構23によって強制的にフライ油下に食品群がフライ油面より下部に浸漬せしめられ、ディープフライが行われる。
【0025】
ここで、フライ油噴射機構を用いることでフライ処理される食品群が第一移送機構21中に浮遊しつつフライされている状態において、食品群の相互の位置を乱すことによって、後のディープフライを経た後において、食品群をさらに容易にばらけさせることができ、これとともにフライ効率を向上させることができる。
【0026】
具体的には、第一移送機構21によって搬送されている食品群に対してフライ油槽1の底部側から孔29を管等によってフライ油の噴射を行うことが有効となる。尚、本第二の実施態様では、
図2に示すようにフライ油循環(下流→上流)の役割も兼ねてフライ油槽1の底面部からのフライ油の噴射機構27を設けている。
【0027】
尚、当該噴射機構27は、食品群の第一移送機構21による移送と第二移送機構23による移送開始後の範囲で実施される態様を示しているが、当該フライ油の噴射は、第一移送機構21が実施される領域で行われることが好ましい。また、第二移送機構23が実施される領域の始め部分まで行われるのが最も好ましい。
【0028】
図2は、フライ油槽1の底面より、上部方向に向けてフライ油の噴射機構について
図1とは別の態様を示している。
図2においては、複数の孔を上部方向に設けた管状部材31をフライ油槽1の下部に配置して利用する態様を示している。フライ油槽1の下流より流出するフライ油をポンプによって上流に運び、当該管からフライ油を流入している。また、当該管状部材31には上部方向に孔が設けられているため、流入するフライ油はフライ油槽1の底部から上方向に向けて噴射される。これによってパドル19間のフライ食品群はその相互の位置を乱される。これによって後のディープフライを経た後において、
図1の場合と同様に食品群を容易に分離できる。
尚、
図1及び
図2においては、所定間隔のパドルによって領域が区切られているため、当該パドルと上部の網状ベルトにより区画された空間を形成している。当該区画された空間に浮遊するフライ食品に対して、下方よりフライオイルが流入されて、当該空間内でフライ食品が撹拌されると、フライ食品は対流し、フライが均一に行われることによって余分な水分が比較的迅速に揮発する。
また、フライ槽底部より流入する油が熱交換器を介して加熱された油であるため、フライ食品に対して熱交換器を介した直後の油が吹き込まれるというメリットを有する。
尚、
図1に示すように熱交換器を介して加熱されたフライオイルのすべてが底部より上方に流入されるものではなく、一部のみでもよいことは勿論である。すなわち、
図1においては、フライ槽の上流において紙面水平方向にフライ槽への流入経路も開示されている。
また、本発明の請求項1の3)にいう底部側とは、厳密に底面のみをいうものではなく、浮遊フライさせている食品群を撹拌する効果があればよく、例えば側面部から斜め上方に向かって噴射する場合も含むものとする。
【0029】
─フライ食品回収機構─
本発明においては、フライ後の食品をフライ油槽1から回収する回収機構25を有している。本願第一の実施態様においては、第二移送が終了してフライ処理が完了した食品群を、パドルを有する回収コンベアによってフライ油槽1から回収する機構が記載されている。
【0030】
─短い麺線群とする場合の構成─
[1]短麺線のフライ装置として利用する場合
本発明のフライ処理装置は、特に短麺線(1~10cm程度)の処理装置として利用できる。すなわち、当該出願を短麺線のフライ装置として利用する場合には、本発明のフライ処理装置は、例えば以下のような構成となる。
「1)フライ油槽と、
2)前記フライ油槽の上流側に配設され、蒸煮・カット後の1~10cmの麺線を投入する麺線供給機構と、
3)前記フライ油槽の下流側よりフライ油を流出させ、当該フライ油を前記フライ油槽の上流側において、フライ油槽の底部側から上部方向にフライ油を噴出するフライ油の流入装置によりフライ油槽中に流入させるフライ油循環機構と、
4)前記流出させた油を再加熱するための熱交換機と、
5)前記油槽内に配置され、前記フライ油中に投入された麺線を上流側から下流側に向けて移送するフライ麺線移送機構であって、前記フライ油槽の上流側で投入された麺線をフライ油面に浮遊させた状態で移送する第一移送機構と、これに連続してフライ麺線をフライ油槽の油面以下に浸漬させた状態で移送する第二移送機構とを有するフライ麺線移送機構と、
6)前記フライ後の麺線をフライ油槽から回収するフライ麺線回収機構と、
を備えた、麺線のフライ処理装置。」
【0031】
─投入された麺線の動き─
次に、本発明の第一の実施態様における麺線群のフライ工程について説明する。まず、カットされた麺線は順次、フライ油槽1の上流端部より投入されていく、投入された麺線群はフライ油中に投入されて、まず、第一移送機構21内において浮遊状態でフライが行われる。フライがされるとともに、所定間隔で設置された複数のパドル間に区画されたフライ麺線群はコンベアの進行とともにパドルによって運ばれて順次、下流側に運ばれていく。
【0032】
当該フライ途中で、第二移送機構23に移行し、コンベア17がフライ油面の前後まで下降し、パドル19間に区画され浮遊状態でフライされていた麺線群がフライ油中に浸漬されてフライ(ディープフライ)がされる機構に移る。
【0033】
所定時間のディープフライの後にフライ工程は終了し、液面から上昇したフライ麺線群は別の設けられた麺線回収機構(パドルを備えたコンベア)25によりフライ油槽1から排出され、フライ麺線群をばらけた状態で回収することができる。また、本発明のフライ麺処理装置を用いた場合、フライ麺線同士が一体となって塊状となった部分があったとしても、振動や軽い衝撃を与えることによって、麺線同士を容易にばらけさせることができる。このようにして得られた麺線群は、包装材(カップ容器等)への充填等を経て次の工程に移ることができ、最終的に商品として完成する。
【0034】
─ポテトチップを製造する場合の構成─
[2]ポテトチップのフライ処理装置として利用する場合
本発明のフライ処理装置は、前述の短麺線群のフライのみならず、ポテトチップにおいても好適に利用できる。
すなわち、本発明のフライ処理装置をポテトチップのフライ処理機として使用する場合には、本発明のフライ処理装置は、例えば、以下のような構成となる。
「1)フライ油槽と、
2)前記フライ油槽の上流側に配設され、カット後のスライスポテトを投入する供給機構と、3)前記フライ油槽の下流側よりフライ油を流出させ、当該フライ油を前記フライ油槽の上流側より前記フライ油槽中に流入させるフライ油循環機構であって、フライ油槽中へのフライ油の流入が、フライ油槽の底部側から上部側にフライ油を噴出するフライ油の流入機構により行われるフライ油循環機構と、
4)前記流出させた油を再加熱するための熱交換機と、
5)前記油槽内に配置され、前記フライ油中に投入されたスライスポテトを上流側から下流側に向けて移送するスライスポテト移送機構であって、前記フライ油槽の上流側で投入されたスライスポテトをフライ油面に浮遊させた状態で移送する第一移送機構と、これに連続してスライスポテトをフライ油槽の油面以下に浸漬させた状態で移送する第二移送機構とを有するスライスポテト移送機構と、
6)前記フライ後のポテトチップをフライ油槽から回収するポテトチップ回収機構と、
を備えた、ポテトチップの製造装置。」
本構成のフライ装置を用いることで、底部からのオイルの噴出しによって、パドル間に区画された空間内に収容された原料のスライスしたじゃがいもが撹拌されながらフライされる。すなわち、スライスじゃがいもが動き回ることで、じゃがいもが撹拌されるとともに、底部より噴出された熱交換された油によって効率的にフライされる。このためフライ効率がアップする。
このように本発明をポテトチップのフライ処理装置として用いることで、フライ終了後のポテトチップのばらけに有効であるとともに、フライ温度を従来170℃~180℃程度必要としているところ、フライ温度170℃~160℃程度に低下させることができ、フライ温度を下げながら、同等のポテトチップを調製することができた。また、低温とすることでアクリルアミドの低減にも寄与することができる。
【実施例】
【0035】
本発明の麺線のフライ処理装置を用いてフライ麺線群をばらけた状態でフライ処理をできるかを試験した。
<実施例1>本願製法1(フロートフライ有り フライ油の噴射有り)
図2に示したフライ処理装置を用いて麺線群を処理した。小麦粉、澱粉、かん水を含む原料を混練・複合・圧延・カットを経て製造された生麺線を蒸しによりα化して3cmごとにカットし短麺線を製造した。当該、短麺線群を
図1に記載のフライ処理装置(フライ温度150℃)に投入して、第一移送機構で45秒、第二移送機構で40秒の合計85秒間フライ処理して麺線回収機構(パドルを有するコンベア)によって、フライ麺線群を回収した。尚、底部から上方に向けてフライオイルの噴出しを実施した。
【0036】
<比較例1>比較製法1(フロートフライ有り フライ油の噴射無し)
図3に示したフライ処理装置(フライ油中での底部から上部方向のフライ油の噴出が無いもの)を用いて麺線群を処理した。フライ処理の方法は、実施例1の場合と同様とした。
【0037】
<比較例2>比較製法2(フロートフライ無し フライ油の噴射無し)
比較例1と同様に
図3に示したフライ処理装置を用い、フライ油槽中のフライ油の量を増やして第一移送領域においてもパドル全体がフライ油に浸漬するように調整した。当該調整後において実施例1と同様に麺線群のフライ処理を行った。この場合、第一移送機構においてもパドルの上までフライ油が存在するため、第一移送機構中において麺線群がディープフライされ、第二移送機構においても連続してディープフライが継続する態様となった。
【0038】
─結果─
実施例1及び比較例1ではフライ後の麺線群は塊状とならず、一部が結着している状況(塊状部分)であり、振動を与えることで分離することができた。
但し、実施例1(フライ噴出あり)では、比較例1より麺線群をよりばらけさせることができた。また、塊状部分は実施例1の場合よりも少なく、より良好な“ばらけ”を実現できた。また、各麺線のフライ状態は、比較例1に比べて良好なフライ状態であった。
比較例2では、フライ後の麺線は塊状となり、当該塊状麺に衝撃を加えても麺線を一部ばらけさせることはできたが、完全に麺線群をばらけさせることは困難であった。実施例1、及び比較例1及び2のフライ直後の麺線群の写真を
図4~
図6に示す。
本出願は、2015年3月30日出願の日本特許出願‐出願番号2015-068552に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。