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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20220203BHJP
   C08L 75/06 20060101ALI20220203BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220203BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20220203BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220203BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20220203BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20220203BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20220203BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220203BHJP
【FI】
C08L101/12
C08L75/06
C08K3/013
H01M50/20
H01M10/625
H01M10/6554
H01M10/647
H01M10/653
H01M10/613
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020513283
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 KR2019003150
(87)【国際公開番号】W WO2019190106
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-03-04
(31)【優先権主張番号】10-2018-0035749
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0029277
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ギョン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】セ・ウ・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・グ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ウン・スク・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・スク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・スク・パク
(72)【発明者】
【氏名】サン・ミン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジョ・ヤン
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0076493(US,A1)
【文献】特開昭64-006055(JP,A)
【文献】特開2014-111686(JP,A)
【文献】特開2013-053305(JP,A)
【文献】特表2019-504916(JP,A)
【文献】国際公開第2017/171490(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/137303(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
H01M 50/20
H01M 10/625
H01M 10/6554
H01M 10/647
H01M 10/653
H01M 10/613
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル系ポリオール樹脂含有主剤組成物部;
ポリイソシアネート含有硬化剤組成物部;及び
フィラーを含み、
前記フィラーは、前記主剤組成物部又は前記硬化剤組成物部に含まれており、
前記エステル系ポリオールは、DSC(Differential Scanning calorimetry)分析で結晶化温度(Tc)と溶融温度(Tm)が観察されない非結晶性ポリオール又は溶融温度(Tm)が15℃未満であるエステル系ポリオールであり、
前記エステル系ポリオール樹脂は、下記化学式1又は2で表示され、
【化1】
【化2】
ただし、前記化学式1及び2で、Xは、カルボン酸由来の単位であり、Yは、ポリオール由来の単位であり、nは、2~10の範囲内の数であり、mは、1~10の範囲内の数であり、
下記関係式1で定義される初期粘度変化率が1.1~5.0の範囲内であり、
下記関係式2で定義される初期粘度変化率が10以上であり、
下記関係式1及び2で、Vは、100,000~500,000cPの範囲内であり、Vは、2,000,000cP以下であり、Vは、5,000,000cP以上を満足する硬化性樹脂組成物。
[関係式1]
初期粘度変化率 = V/V
[関係式2]
初期粘度変化率 = V/V
(前記関係式1及び2で、Vは、初期粘度であって、前記主剤組成物部と硬化剤組成物部とを混合した樹脂組成物に対して、前記混合後60秒以内に常温で測定した粘度値であり、Vは、Vが測定された前記樹脂組成物を常温で5分の間放置した後に測定された粘度値であり、Vは、Vが測定された前記樹脂組成物を常温で60分間放置後に測定された粘度値であり、V~Vは、流変物性測定器(ARES)を用いて0.01~10.0/sまでのせん断速度(shear rate)の範囲で測定するとき、2.5/s地点で測定された粘度値である。)
【請求項2】
前記樹脂組成物は、常温硬化型二液型ウレタン系樹脂組成物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記主剤組成物部と硬化剤組成物部と混合した樹脂組成物に対して、前記混合後24時間が経過した後に測定された硬化物の絶縁破壊電圧が10kV/mm以上である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記エステル系ポリオール樹脂とポリイソシアネートの混合物は、硬化後0℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記エステル系ポリオール樹脂及びポリイソシアネートは、それぞれ10,000cP未満の粘度を有する、請求項1又は4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記カルボン酸由来の単位Xは、フタル酸単位、イソフタル酸単位、テレフタル酸単位、トリメリット酸単位、テトラヒドロフタル酸単位、ヘキサヒドロフタル酸単位、テトラクロロフタル酸単位、シュウ酸単位、アジピン酸単位、アゼライン酸単位、セバシン酸単位、コハク酸単位、リンゴ酸単位、グルタル酸単位、マロン酸単位、ピメリン酸単位、スベリン酸単位、2,2-ジメチルコハク酸単位、3,3-ジメチルグルタル酸単位、2,2-ジメチルグルタル酸単位、マレイン酸単位、フマル酸単位、イタコン酸単位及び脂肪酸単位からなる群より選択された一つ以上の単位である、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリオール由来の単位Yは、エチレングリコール単位、プロピレングリコール単位、1,2-ブチレングリコール単位、2,3-ブチレングリコール単位、1,3-プロパンジオール単位、1,3-ブタンジオール単位、1,4-ブタンジオール単位、1,6-ヘキサンジオール単位、ネオペンチルグリコール単位、1,2-エチルへキシルジオール単位、1,5-ペンタンジオール単位、1,9-ノナンジオール単位、1,10-デカンジオール単位、1,3-シクロヘキサンジメタノール単位、1,4-シクロヘキサンジメタノール単位、グリセリン単位及びトリメチロールプロパン単位からなる群より選択されるいずれか一つ又は2個以上の単位である、請求項又はに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリイソシアネートは、非芳香族ポリイソシアネートである、請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記非芳香族ポリイソシアネートは、脂環族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートのカルボジイミド変性ポリイソシアネート又は脂環族ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性ポリイソシアネートである、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記フィラーは、アルミナ、AlN(aluminum nitride)、BN(boron nitride)、窒化ケイ素(silicon nitride)、SiC又はBeOを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記エステル系ポリオール樹脂及びポリイソシアネートの含量を合わせた100重量部に対して、50~2,000重量部のフィラーを含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
上部板、下部板及び側壁を有し、前記上部板、下部板及び側壁により内部空間が形成されているモジュールケース;
前記モジュールケースの内部空間に存在する複数のバッテリセル;及び
請求項1~1のいずれか一項に記載の組成物が硬化されて形成され、前記複数のバッテリセルと接触する樹脂層を含む、バッテリモジュール。
【請求項13】
請求項1に記載のバッテリモジュールを一つ以上含む、バッテリパック。
【請求項14】
請求項1に記載のバッテリモジュール又は請求項1に記載のバッテリパックを含む、自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2018年3月28日に出願された大韓民国特許出願第10-2018-0035749号及び2019年3月14日に出願された大韓民国特許出願第10-2019-0029277号に基づく優先権の利益を主張し、該当大韓民国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、樹脂組成物に関する。具体的に、本出願は、樹脂組成物と、前記樹脂組成物の硬化物と、を含むバッテリモジュール、バッテリパック及び自動車に関する。
【背景技術】
【0003】
二次電池には、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池又はリチウム二次電池などがあり、代表的なものはリチウム二次電池である。
【0004】
リチウム二次電池は、主にリチウム酸化物と炭素素材をそれぞれ陽極及び陰極活物質として用いる。リチウム二次電池は、陽極活物質と陰極活物質がそれぞれ塗布された陽極板と陰極板がセパレータを挟んで配置された電極組立体及び電極組立体を電解液と共に密封収納する外装材を含むが、外装材の形状によって缶型二次電池とパウチ型二次電池に分類され得る。このような単一の二次電池は、バッテリセルと呼称され得る。
【0005】
自動車や電力保存装置のような中大型装置の場合には、容量及び出力を高めるために多数のバッテリセルが互いに電気的に連結されたバッテリモジュールが用いられるか、そのようなバッテリモジュールが複数個連結されたバッテリパックが用いられ得る。
【0006】
上記のように、バッテリモジュールやバッテリパックを構成する方法のうち一つは、複数のバッテリセルをバッテリモジュールの内部に固定できる接着素材を用いる方法である。このとき、前記接着素材は、バッテリモジュールの表面に形成された注入ホールを通じてバッテリモジュールの内部に注入され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願の一つの目的は、バッテリモジュール内でバッテリセルを固定させるために用いられる接着組成物において、組成物の注入工程性を改善することである。
【0008】
本出願の他の目的は、バッテリモジュールの内に注入されて硬化された後、優れた絶縁性、接着力、発熱性などを提供することができる組成物を提供することである。
【0009】
本出願のまた他の目的は、バッテリモジュール及びバッテリパックを提供することである。
【0010】
本出願の前記目的及びその他の目的は、下記詳しく説明する本出願により全て解決され得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願に関する一つの例示で、本出願は、バッテリモジュール又はバッテリパックに用いられる硬化性樹脂組成物に関する。具体的に、本出願の組成物は、下記説明するように、バッテリモジュールのケース内部に注入され、バッテリモジュール内に存在する一つ以上のバッテリセルと接触して硬化された後にはバッテリモジュール内でバッテリセルを固定するために用いられる組成物であってもよい。それによって、前記樹脂組成物は、主剤成分を含み得、前記主剤成分と混合する場合、硬化が行われるようにする硬化剤成分を含み得る。また、前記樹脂組成物は、下記説明するように、フィラーを含有することができる。
【0012】
樹脂組成物の使用と関連して、前記樹脂組成物、すなわち、接着剤組成物の硬化速度が過度に速くて粘度が高くなる場合には、モジュール内部への注入が容易でない。一方に、注入された液状接着剤が充分に硬化されない場合には、粘度が低いので、追加される工程によってモジュールを移動させるかモジュールを返す作業が続く場合、接着剤が漏出されるか部品が汚染する恐れがあり、接着剤により接着させようとした部品間の界面が浮き上ることがある。このような点を考慮して、本出願の発明者らは、一定レベルの硬化速度を有することで、工程性に優れ、バッテリモジュールの製造工程で接着剤により発生できる汚染や部品間剥離を防止することができる樹脂組成物を開発するに至った。
【0013】
それによって、本出願の樹脂組成物は、下記のような速度の硬化特性を有することができる。本出願で、樹脂組成物が有する硬化速度は、時間による粘度変化として表現され得る。
【0014】
前記組成物は、下記関係式1で定義される初期粘度変化率が1.1~5.0の範囲内を満足する組成物であってもよい。
【0015】
[関係式1]
初期粘度変化率 = V/V
【0016】
前記関係式1で、Vは、初期粘度であって、樹脂組成物の構成成分、すなわち、主剤と硬化剤を混合した後60秒以内に常温で測定した粘度値であり、Vは、Vが測定された樹脂組成物を常温で5分の間放置した後に測定された粘度値である。前記V及びVは、流変物性測定器(ARES)を用いて0.01~10.0/sまでのせん断速度(shear rate)の範囲で測定するとき、2.5/s地点で測定された粘度値である。本出願で用語「常温」は、特に加温又は減温されない状態であって、約10℃~30℃の範囲内のいずれか一つの温度、例えば、約15℃以上、約18℃以上、約20℃以上又は約23℃以上であり、約27℃以下の温度を意味することができる。
【0017】
上記のように、関係式1で表示される粘度変化率を満足するということは、バッテリモジュールを形成するための作業の初盤に注入される液状接着剤組成物の粘度が比較的低いレベルで維持されることを意味する。それによって、十分な工程負荷率を確保することができる。
【0018】
また、前記組成物は、下記関係式2で定義される初期粘度変化率が10以上を満足する組成物であってもよい。
【0019】
[関係式2]
初期粘度変化率 = V/V
【0020】
前記関係式2で、Vは、初期粘度であって、樹脂組成物の構成成分、すなわち、主剤及び硬化剤成分を混合した後60秒以内に常温で測定した粘度値であり、Vは、Vが測定された樹脂組成物を常温で60分間放置後に測定された粘度値である。前記V及びVは、流変物性測定器(ARES)を用いて0.01~10.0/sまでのせん断速度(shear rate)の範囲で測定するとき、2.5/s地点で測定された粘度値である。
【0021】
上記のように、関係式2で表示される粘度変化率を満足するということは、バッテリモジュール内に注入した後60分が経過した後には、注入された組成物がバッテリセルをモジュールケースの内部で固定させ得るほどある程度硬化することができ、モジュールを移動させるか返す場合にも隣接する部品の汚染や部品界面間の浮き上りを防止することができることを意味する。
【0022】
本出願で、前記V、V及びVは、仮硬化粘度値と呼称され得る。本出願で「仮硬化」とは、本硬化状態に至ることができない状態を意味し得るが、「本硬化状態」とは、バッテリモジュールを製造するためにモジュール内に注入された素材が実際放熱などの機能が付与された接着剤として機能を行うほど十分に硬化されたと見られる状態を意味し得る。ウレタン樹脂を例示として説明すると、本硬化状態は、常温及び30~70%の相対湿度条件で24時間硬化を基準として、FT-IR分析により確認される2250cm-1近所でのNCOピーク基準転換率(conversion)が80%以上であることから確認できる。
【0023】
一つの例示で、樹脂組成物が有するVの値は、500,000cP以下であってもよい。その下限は、例えば、100,000cP以上であってもよい。該当範囲を満足する場合、前記関係式1及び2を満足するに有利であり、それによって、適切な工程性を確保することができる。
【0024】
一つの例示で、前記樹脂組成物が有するVの値は、2,000,000cP以下であってもよい。該当範囲を満足するということは、下記説明する二液型樹脂組成物の構成成分が混合された後に硬化反応が起きているにも、いままで適切な流れ性が組成物に存在することを意味する。前記V値を満足する場合、上述した前記関係式1を満足するに有利であり、それによって、適切な工程性を確保することができる。
【0025】
また一つの例示で、前記樹脂組成物が有するVの値は、5,000,000cP以上であってもよい。該当範囲を満足するということは、二液型樹脂組成物の構成成分が混合された後にバッテリモジュール内に注入されると期待される通常的な時間の間硬化反応が十分に行われながら組成物の流れ性が弱くなったことで、バッテリセルを十分に固定させ得ることを意味する。前記V値を満足する場合、上述した前記関係式2を満足するに有利であり、それによって、適切な工程性と製品耐久性を確保することができる。
【0026】
前記関係式1を満足することを前提として、必要に応じては、前記関係式2でVに相応する粘度値が達成される時間を短縮するように追加的に所定の措置を取ってもよい。例えば、バッテリモジュールの構成成分に悪影響を及ぼさないレベルで組成物に対する加温又は加熱によりVに相応する粘度値をより速く得ることもできる。
【0027】
前記規定された粘度と関連した硬化速度特性を満足し、硬化後には、その用途に適合する接着性を有する限り、樹脂組成物の種類は特に制限されない。
【0028】
一つの例示で、前記樹脂組成物としては、常温硬化型組成物が用いられ得る。「常温硬化型組成物」とは、常温での硬化反応により所定の接着能を発揮することができるシステムを有する組成物を意味することで、例えば、二液型シリコン系樹脂組成物、二液型ウレタン系樹脂組成物、二液型エポキシ系樹脂組成物又は二液型アクリル系樹脂組成物であってもよい。
【0029】
一つの例示で、前記樹脂組成物は、硬化(本硬化)後に優れた電気絶縁性を提供することができる。下記説明するバッテリモジュールの構造で樹脂層が電気絶縁性を示す場合、バッテリモジュールの性能が維持され、安定性が確保され得る。例えば、樹脂組成物の構成成分、すなわち、主剤及び硬化剤を混合して24時間が経過した後、その硬化物の絶縁破壊電圧を測定する場合、絶縁破壊電圧は、約10kV/mm以上、15kV/mm以上又は20kV/mm以上であってもよい。前記絶縁破壊電圧は、その数値が高いほど樹脂層が優れた絶縁性を示すもので、その上限は特に制限されるものではないが、樹脂層の組成などを考慮すると、約50kV/mm以下、45kV/mm以下、40kV/mm以下、35kV/mm以下又は30kV/mm以下であってもよい。前記絶縁破壊電圧は、下記実施例で説明するように、ASTM D149に準拠して測定できる。また、前記範囲の絶縁破壊電圧は、例えば、下記説明する硬化性組成物に用いられるフィラーや樹脂成分又はこれらの含量を調節して確保され得る。
【0030】
一つの例示で、前記組成物は、二液型ウレタン系組成物であってもよい。二液型ウレタンは、イソシアネート系化合物及びポリオール系化合物を混合して形成されるポリウレタンを意味することで、単一組成内にウレタン基を有する一液型ポリウレタンとは区別される。二液型ウレタン系組成物が用いられる場合、前記組成物は下記構成を有することができる。前記二液型ポリウレタンの場合、ポリオールなどを含む主剤とイソシアネートなどを含む硬化剤が常温で反応して硬化され得る。前記硬化反応は、例えば、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL:dibutyltin dilaurate)のような触媒の助けを受けることができる。それによって、前記二液型ウレタン系組成物は、主剤成分(ポリオール)と硬化剤成分(イソシアネート)の物理的な混合物を含むことができ、そして/又は主剤成分と硬化剤成分の反応物(硬化物)を含むことができる。
【0031】
前記二液型ウレタン系組成物は、少なくともポリオール樹脂を含む主剤組成物部(又は主剤部)及び少なくともポリイソシアネートを含む硬化剤組成物部(又は硬化剤部)を含むことができる。それによって、前記樹脂組成物の硬化物は、前記ポリオール由来の単位と前記ポリイソシアネート由来の単位を全て含むことができる。このとき、前記ポリオール由来の単位は、ポリオールがポリイソシアネートとウレタン反応して形成される単位であり、ポリイソシアネート由来の単位は、ポリイソシアネートがポリオールとウレタン反応して形成される単位であってもよい。
【0032】
また、前記組成物は、フィラーを含むことができる。 例えば、工程上必要に応じて揺変性を確保するために、そして/又はバッテリモジュールやバッテリパック内で放熱性(熱伝導性)を確保するために、下記説明するように、本出願の組成物には、過量のフィラーが含まれ得る。具体的な内容は、下記関連された説明で詳しく説明する。
【0033】
一つの例示で、前記主剤組成物部に含まれるポリオール樹脂としては、エステル系ポリオール樹脂が用いられ得る。エステル系ポリオールを用いる場合、樹脂組成物の硬化後にバッテリモジュール内で優れた接着性と接着信頼性を確保するのに有利である。
【0034】
一つの例示で、前記エステル系ポリオールとしては、例えば、カルボン酸系ポリオールやカプロラクトン系ポリオールが用いられ得る。
【0035】
前記カルボン酸系ポリオールは、カルボン酸とポリオール(例:ジオール又はトリオールなど)を含む成分を反応させて形成することができ、カプロラクトン系ポリオールは、カプロラクトンとポリオール(例:ジオール又はトリオールなど)を含む成分を反応させて形成することができる。このとき、前記カルボン酸は、ジカルボン酸であってもよい。
【0036】
一つの例示で、前記ポリオールは、下記化学式1又は2で表示されるポリオールであってもよい。
【0037】
【化1】
【0038】
【化2】
【0039】
化学式1及び2で、Xは、カルボン酸由来の単位であり、Yは、ポリオール由来の単位である。ポリオール由来の単位は、例えば、トリオール単位又はジオール単位であってもよい。また、n及びmは、任意の数であってもよい。
【0040】
前記化学式で、カルボン酸由来の単位は、カルボン酸がポリオールと反応して形成された単位であり、ポリオール由来の単位は、ポリオールがカルボン酸又はカプロラクトンと反応して形成された単位である。
【0041】
すなわち、ポリオールのヒドロキシ基とカルボン酸のカルボキシル基が反応すると、縮合反応により水(HO)分子が脱離しながらエステル結合が形成されるが、前記化学式1のXは、前記カルボン酸が前記縮合反応によってエステル結合を形成した後に前記エステル結合部分を除いた部分を意味する。また、Yは、前記縮合反応によってポリオールがエステル結合を形成した後にそのエステル結合を除いた部分である。前記エステル結合は、化学式1に表示されている。
【0042】
また、化学式2のYもポリオールがカプロラクトンとエステル結合を形成した後にそのエステル結合を除いた部分を示す。前記エステル結合は、化学式2に表示されている。
【0043】
一方、前記化学式でYのポリオール由来の単位がトリオール単位のように3個以上のヒドロキシ基を含むポリオールに由来した単位である場合、前記化学式構造でY部分には、分枝が形成された構造が具現され得る。
【0044】
前記化学式1で、Xのカルボン酸由来の単位の種類は特に制限されないが、目的とする物性の確保のために、フタル酸単位、イソフタル酸単位、テレフタル酸単位、トリメリット酸単位、テトラヒドロフタル酸単位、ヘキサヒドロフタル酸単位、テトラクロロフタル酸単位、シュウ酸単位、アジピン酸単位、アゼライン酸単位、セバシン酸単位、コハク酸単位、リンゴ酸単位、グルタル酸単位、マロン酸単位、ピメリン酸単位、スベリン酸単位、2,2-ジメチルコハク酸単位、3,3-ジメチルグルタル酸単位、2,2-ジメチルグルタル酸単位、マレイン酸単位、フマル酸単位、イタコン酸単位及び脂肪酸単位からなる群より選択されたいずれか一つの単位であってもよい。上述した範囲の低いガラス転移温度を考慮すると、芳香族カルボン酸由来の単位よりは脂肪族カルボン酸由来の単位が好ましい。
【0045】
一方、化学式1及び2で、Yのポリオール由来の単位の種類は特に制限されないが、目的とする物性の確保のために、エチレングリコール単位、ジエチレングリコール単位、プロピレングリコール単位、1,2-ブチレングリコール単位、2,3-ブチレングリコール単位、1,3-プロパンジオール単位、1,3-ブタンジオール単位、1,4-ブタンジオール単位、1,6-ヘキサンジオール単位、ネオペンチルグリコール単位、1,2-エチルへキシルジオール単位、1,5-ペンタンジオール単位、1,9-ノナンジオール単位、1,10-デカンジオール単位、1,3-シクロヘキサンジメタノール単位、1,4-シクロヘキサンジメタノール単位、グリセリン単位及びトリメチロールプロパン単位からなる群より選択されるいずれか一つ以上であってもよい。
【0046】
一方、前記化学式1で、nは、任意の数であり、その範囲は、樹脂組成物又はその硬化物である樹脂層が目的とする物性を考慮して選択され得る。例えば、nは、約2~10又は2~5であってもよい。
【0047】
また、前記化学式2で、mは、任意の数であり、その範囲は、樹脂組成物又はその硬化物である樹脂層が目的とする物性を考慮して選択され得る。例えば、mは、約1~10又は1~5であってもよい。
【0048】
化学式1及び2で、nとmが前記範囲を脱すると、ポリオールの結晶性発現が強くなって組成物の注入工程性に悪影響を及ぼすことがある。
【0049】
前記ポリオールの分子量は、下記説明する低粘度特性や、耐久性又は接着性などを考慮して調節され得、例えば、約300~2,000の範囲内であってもよい。特に異に規定しない限り、本明細書で「分子量」は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)であってもよい。前記範囲を脱する場合、硬化後に樹脂層の信頼性が良くないか揮発成分と関連した問題が発生できる。
【0050】
本出願で「ポリイソシアネート」とは、イソシアネート基を2以上含む化合物を意味することができる。
【0051】
本出願で、硬化剤組成物部に含まれるポリイソシアネートの種類は特に制限されないが、目的とする物性の確保のために芳香族基を含まない非芳香族イソシアネート化合物を用いることができる。すなわち、脂肪族又は脂環族系列を用いることが有利である。芳香族ポリイソシアネートを用いる場合、反応速度が過度に速く、硬化物のガラス転移温度が高くなる恐れがあるので、本出願の組成物の使用用途に適合する工程性と物性を確保しにくい場合がある。
【0052】
例えば、脂肪族又は脂肪族環状ポリイソシアネートやその変性物が用いられ得る。具体的に、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート又はテトラメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンジイソシアネート又はジシクロへキシルメタンジイソシアネートなどの脂肪族環状ポリイソシアネート;又は上記のうちいずれか一つ以上のカルボジイミド変性ポリイソシアネートやイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;などが用いられ得る。また、前記羅列された化合物のうち2個以上の混合物が用いられ得る。
【0053】
樹脂組成物内で前記ポリオール由来の樹脂成分とポリイソシアネート由来の樹脂成分の割合は、特に制限されず、これらの間のウレタン反応が可能になるように適切に調節され得る。
【0054】
上述したように、放熱性(熱伝導性)を確保するために又は工程上必要による揺変性の確保のために、過量のフィラーが組成物に含まれ得るが、過量のフィラーが用いられる場合、組成物の粘度が高くなってバッテリモジュールのケース内に前記組成物を注入するときの工程性が悪くなることがある。したがって、過量のフィラーを含むと共に、工程性に妨害にならないほどの十分な低粘度特性が必要である。また、単純に低粘度のみを示すと、工程性の確保が困難になるので、適切な揺変性が要求され、硬化しながら優れた接着力を示し、硬化自体は常温で進行する必要がある。そして、エステル系ポリオールは、硬化後に接着性の確保には有利であるが、結晶性が比較的高いため、常温でワックス(wax)状態になる可能性が高く、粘度上昇によって適切な注入工程性の確保に不利な側面がある。たとえ、メルティング(melting)により粘度を下げて用いる場合であっても、保存過程で自然的に発生する結晶性によりフィラーと混合した後に続く組成物の注入又は塗布工程で結晶化による粘度上昇が発生し、結果的に工程性が低下し得る。このような点を考慮して、本出願で用いられるエステル系ポリオールは、下記特性を満足することができる。
【0055】
本出願で、前記エステル系ポリオールは、非結晶性であるか、十分に結晶性が低いポリオールであってもよい。上記で「非結晶性」とは、DSC(Differential Scanning calorimetry)分析で結晶化温度(Tc)と溶融温度(Tm)が観察されない場合を意味する。前記DSC分析は、公知の装置、例えば、Q2000(TA instruments社)を用いて行うことができる。具体的に、前記DSC分析は、10℃/分(min)の速度で-80~60℃の範囲内で行うことができ、例えば、前記速度で25℃から50℃に昇温した後に-70℃に減温し、更に50℃に昇温する方式で行うことができる。また、上記で「十分に結晶性が低い」とは、DSC分析で観察される溶融点又は溶融温度(Tm)が15℃未満であって、約10℃以下、5℃以下、0℃以下、-5℃以下、-10℃以下又は-20℃以下程度である場合を意味する。このとき、溶融点の下限は特に制限されないが、例えば、前記溶融点は、約-80℃以上、約-75℃以上又は約-70℃以上であってもよい。ポリオールが結晶性であるか前記溶融点の範囲を満足しない場合のように(常温)結晶性が高い場合には、温度による粘度差が大きくなりやすいので、フィラーと樹脂を混合する工程でフィラーの分散度と最終混合物の粘度に良くない影響を与えることがあり、工程性を低下し、その結果、バッテリモジュール用接着組成物に要求される耐寒性、耐熱性及び耐水性を満足しにくくなる。
【0056】
図1は、前記エステル系ポリオールの非結晶特性又は充分に結晶性が低い特性を判断する例示として、いくつかのポリオールに対するDSC分析結果を示したグラフである。本出願によると、試料#1は、非結晶性と判断でき、試料#2及び#3は、充分に結晶性が低いと判断できる。一方、溶融温度(Tm)が33.52℃である試料#4の場合には、結晶性が高いと言える。
【0057】
一つの例示で、前記ウレタン系組成物に含まれるポリオール樹脂とイソシアネート成分は、硬化(本硬化)後に0℃未満のガラス転移温度(Tg)を有することができる。
【0058】
前記ガラス転移温度の範囲を満足する場合、バッテリモジュールやバッテリパックが用いられる低い温度でも脆い(brittle)特性を比較的短時間内に確保することができ、それによって、耐衝撃性や耐振動特性が保障され得る。一方、前記範囲を満足しない場合には、硬化物の粘着特性(tacky)が過度に高いか熱安定性が低下する可能性がある。一つの例示で、前記硬化後にウレタン系組成物が有するガラス転移温度の下限は、-70℃以上、-60℃以上、-50℃以上、-40℃以上又は-30℃以上であってもよく、その上限は、-5℃以下、-10℃以下、-15℃以下又は-20℃以下であってもよい。前記ガラス転移温度は、ポリオール樹脂とイソシアネート成分(フィラーを含まない)を硬化させた後に測定され得る。
【0059】
また、本出願では、前記樹脂組成物の用途及びその用途によって要求される機能を確保するために、添加剤が用いられ得る。例えば、前記樹脂組成物は、樹脂層の熱伝導性、絶縁性及び耐熱性(TGA分析)などを考慮して、所定のフィラーを含むことができる。フィラーが樹脂組成物に含まれる形態や方式は特に制限されない。例えば、フィラーは、主剤組成物部及び/又は硬化剤組成物部にあらかじめ含まれた状態でウレタン系組成物の形成に用いられ得る。又は、主剤組成物部と硬化剤組成物部を混合する過程で、別途で用意したフィラーが一緒に混合される方式でも用いられ得る。
【0060】
一つの例示で、少なくても前記組成物に含まれるフィラーは、熱伝導性フィラーであってもよい。本出願で用語「熱伝導性フィラー」は、熱伝導度が約1W/mK以上、約5W/mK以上、約10W/mK以上又は約15W/mK以上である材料を意味することができる。具体的に、前記熱伝導性フィラーの熱伝導度は、約400W/mK以下、約350W/mK以下又は約300W/mK以下であってもよい。用いられる熱伝導性フィラーの種類は特に制限されず、絶縁性などを一緒に考慮するとき、セラミックスフィラーであってもよい。例えば、アルミナ、AlN(aluminum nitride)、BN(boron nitride)、窒化ケイ素(silicon nitride)、SiC又はBeOなどのようなセラミックス粒子が用いられ得る。前記フィラーの形態や割合は特に制限されず、ウレタン系組成物の粘度、組成物が硬化された樹脂層内での沈降可能性、目的とする熱抵抗乃至は熱伝導度、絶縁性、充填効果又は分散性などを考慮して適切に調節され得る。一般的にフィラーのサイズが大きくなるほどこれを含む組成物の粘度が高くなり、樹脂層内でフィラーが沈降する可能性が高くなる。また、サイズが小さくなるほど熱抵抗が高くなる傾向がある。したがって、上記のような点を考慮して適正種類及びサイズのフィラーが選択され得、必要に応じて、2種以上のフィラーを一緒に用いることもできる。また、充填される量を考慮すると、球形のフィラーを用いることが有利であるが、ネットワークの形成や伝導性などを考慮して針状や板状などのような形態のフィラーも用いられ得る。前記フィラーの熱伝導度は、公知の方法によって測定され得、このとき、フィラーの熱伝導度は、フィラーを溶融させた後に試片を作る方式で測定され得る。
【0061】
一つの例示で、前記組成物は、平均粒径が0.001μm~80μmの範囲内にある熱伝導性フィラーを含むことができる。前記フィラーの平均粒径は、他の例示で、0.01μm以上、0.1μm以上、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上又は約6μm以上であってもよい。前記フィラーの平均粒径は、他の例示で、約75μm以下、約70μm以下、約65μm以下、約60μm以下、約55μm以下、約50μm以下、約45μm以下、約40μm以下、約35μm以下、約30μm以下、約25μm以下、約20μm以下、約15μm以下、約10μm以下又は約5μm以下であってもよい。前記平均粒径は、PSA(particle size analysis)装備を用いて測定され得る。一つの例示で、前記平均粒径は、粒子の頻度の累積が、50%になる位置の粒子径であるD(50)を意味することができる。
【0062】
優れた放熱性能を得るために、熱伝導性フィラーを高含量で用いることを考慮することができる。例えば、前記フィラーは、全体樹脂成分、すなわち、前記エステル系ポリオール樹脂及びポリイソシアネートの含量を合わせた100重量部に対して、約50~2,000重量部の範囲内で用いられ得る。他の例示で、前記フィラーの含量は、全体樹脂成分より過量で用いられ得る。具体的に、前記エステル系ポリオール樹脂及びポリイソシアネートの含量を合わせた100重量部に対して、約100重量部以上、約150重量部以上、約200重量部以上、約250重量部以上、約300重量部以上、約350重量部以上、約400重量部以上、約500重量部以上、約550重量部以上、約600重量部以上又は約650重量部以上のフィラーが用いられ得る。一つの例示で、フィラーが前記範囲ほど用いられる場合、主剤組成物部と硬化剤組成物部に同一の量に分配され得る。
【0063】
上記のように、高含量で熱伝導性フィラーが用いられる場合、フィラーを含む主剤組成物部、硬化剤組成物部又はこれらを含む組成物の粘度が増加し得る。説明したように、樹脂組成物の粘度が過度に高い場合、注入工程性が良くなく、それによって、樹脂層に要求される物性が樹脂層全体で充分に具現されない。このような点を考慮するとき、樹脂成分としては、液状であるか十分な流動を有する低粘度成分を用いることが好ましい。
【0064】
一つの例示で、エステル系ポリオール樹脂及びポリイソシアネート成分は、それぞれ10,000cP以下の粘度を有することができる。具体的に、前記樹脂成分は、8,000cP以下、6,000cP以下、4,000cP以下、2,000cP又は1,000CP以下の粘度を有することができる。好ましくは、前記粘度の上限が900cP以下、800cP以下、700cP以下、600cP以下、500cP以下又は400cP以下であってもよい。特に制限されないが、各樹脂成分の粘度の下限は、50cP以上又は100cP以上であってもよい。粘度が過度に低い場合、工程性は良いかも知れないが、原材料の分子量が低くなって揮発可能性が高くなり、耐熱性/耐寒性、難燃性及び接着力が劣化し得る。しかし、前記下限の範囲を満足することで、このような短所を防ぐことができる。前記樹脂の粘度は、例えば、Brookfield LV type粘度計を用いて常温で測定され得る。
【0065】
上記外にも、多様な種類のフィラーが用いられ得る。例えば、樹脂組成物が硬化した樹脂層の絶縁特性を確保するために、グラファイト(graphite)などのような炭素(系)フィラーの使用が考慮され得る。又は、例えば、フュームドシリカ、クレイ又は炭酸カルシウムなどのようなフィラーが用いられ得る。このようなフィラーの形態や含量の割合は特に制限されず、樹脂組成物の粘度、樹脂層内での沈降可能性、揺変性、絶縁性、充填効果又は分散性などを考慮して選択され得る。
【0066】
前記組成物は、必要な粘度の調節、例えば、粘度を高めるかあるいは低めるために又はせん断力による粘度の調節のために、粘度調節剤、例えば、揺変性付与剤、希釈剤、分散剤、表面処理剤又はカップリング剤などをさらに含んでいてもよい。
【0067】
揺変性付与剤は、樹脂組成物のせん断力による粘度を調節してバッテリモジュールの製造工程が効果的に行われるようにすることができる。使用できる揺変性付与剤としては、フュームドシリカなどが例示され得る。
【0068】
希釈剤又は分散剤は、通常、樹脂組成物の粘度を低めるために用いられるもので、上記のような作用を示すことができるものであれば、業界で公知にされた多様な種類のものを制限なしに用いることができる。
【0069】
表面処理剤は、樹脂層に導入されているフィラーの表面処理のためのものであり、上記のような作用を示すものであれば、業界で公知にされた多様な種類のものを制限なしに用いることができる。
【0070】
カップリング剤の場合は、例えば、アルミナのような熱伝導性フィラーの分散性を改善するために用いることができ、上記のような作用を示すものであれば、業界で公知にされた多様な種類のものを制限なしに用いることができる。
【0071】
また、前記樹脂組成物は、難燃剤又は難燃補助剤などをさらに含むことができる。この場合、特別な制限なしに公知の難燃剤が用いられ得、例えば、固相のフィラー形態の難燃剤や液相難燃剤などが適用され得る。難燃剤としては、例えば、メラミンシアヌレート(melamine cyanurate)などのような有機系難燃剤や水酸化マグネシウムなどのような無機系難燃剤などがある。樹脂層に充填されるフィラーの量が多い場合、液相タイプの難燃材料(TEP、Triethyl phosphate又はTCPP、tris(1,3-chloro-2-propyl)phosphateなど)を用いてもよい。また、難燃上昇剤として作用できるシランカップリング剤が追加されてもよい。
【0072】
前記組成物は、上述したような構成を含むことができ、また、溶剤型組成物、水系組成物又は無溶剤型組成物であってもよいが、後述する製造工程の便宜などを考慮するとき、無溶剤型が適切である。
【0073】
本出願の組成物は、硬化後に下記説明する用途に適合する物性を有することができる。本明細書で言及する物性のうち測定温度がその物性に影響を及ぼす場合、特に異に言及しない限り、その物性は常温で測定した物性であってもよい。また、物性と関連して「硬化後」という表現は、上述した本硬化と同一な意味で用いられ得る。
【0074】
一つの例示で、前記樹脂組成物は、硬化後に常温で所定の接着力(S)を有することができる。具体的に、前記樹脂層は、約150gf/10mm以上、200gf/10mm以上、250gf/10mm以上、300gf/10mm以上、350gf/10mm以上又は400gf/10mm以上の接着力を有することができる。接着力が前記範囲を満足する場合、適切な耐衝撃性と耐振動性を確保することができる。前記樹脂層の接着力の上限は特に制限されず、例えば、約1,000gf/10mm以下、900gf/10mm以下、800gf/10mm以下、700gf/10mm以下、600gf/10mm以下又は500gf/10mm以下程度であってもよい。接着力が過度に高い場合には、硬化した組成物と付着されるパウチ部分が破れる危険がある。具体的に、自動車の走行中に事故によりバッテリモジュールの形態が変形される程度の衝撃が発生する場合、バッテリセルが硬化した樹脂層により過度に強く付着されている場合、パウチが破れてバッテリ内部の危険物質が露出するか爆発が生じ得る。前記接着力は、アルミニウムパウチに対して測定され得る。例えば、バッテリセルの製作に用いられるアルミニウムパウチを約10mmの幅で切断し、ガラス板上に樹脂組成物をローディングし、その上に前記切断したアルミニウムパウチをそのパウチのPET(poly(ethylene terephthalate))面と前記樹脂組成物が接触するようにローディングした後、25℃及び50%RHの条件で、24時間の間樹脂組成物を硬化させて、前記アルミニウムパウチを引張試験器(Texture analyzer)で180゜の剥離角度と300mm/minの剥離速度で剥離しながら接着力を測定することができる。
【0075】
また一つの例示で、前記樹脂組成物の硬化後の接着力は、高温/高湿下でも相当レベルに維持され得る。具体的に、本出願で、前記常温で測定された硬化後の接着力(S)に対して、所定の条件で行われる高温/高湿の加速化テストを進行した後、同一な方法で測定された接着力(S)が有する%割合[(S/ S)x 100]は、70%以上又は80%以上であってもよい。一つの例示で、前記高温/高湿加速化テストは、前記常温接着力を測定するために用いられる試片と同一な試片を、40~100℃の温度及び75%RH以上の湿度条件で、10日間保管した後に測定され得る。前記接着力及び関係を満足する場合、バッテリモジュールの使用環境が変わっても優れた接着耐久性を維持することができる。
【0076】
一つの例示で、前記樹脂組成物は、硬化後に優れた耐熱性を有することができる。これと関連して、本出願の組成物は、フィラーを含まない状態で、樹脂成分のみの硬化物に対して測定された熱重量分析(TGA)を行うとき、5%の重量損失(5% weight loss)の温度が120℃以上であってもよい。また、本出願の組成物は、フィラーを含んだ状態で、樹脂組成物の硬化物に対して測定された熱重量分析(TGA)を行うとき、800℃の残量が70重量%以上であってもよい。前記800℃の残量は、他の例示で、約75重量%以上、約80重量%以上、約85重量%以上又は約90重量%以上であってもよい。前記800℃の残量は、他の例示で、約99重量%以下であってもよい。このとき、熱重量分析(TGA)は、60cm/分の窒素(N)雰囲気下で20℃/分の昇温速度で、25~800℃の範囲で測定され得る。前記熱重量分析(TGA)と関連された耐熱特性は、樹脂及び/又はフィラーの種類やこれらの含量を調節することで確保できる。
【0077】
本出願に関する他の一例で、本出願は、バッテリモジュールに関する。前記モジュールは、モジュールケース及びバッテリセルを含む。バッテリセルは、前記モジュールケース内に収納されていてもよい。バッテリセルは、モジュールケース内に一つ以上存在することができ、そして、複数のバッテリセルがモジュールケース内に収納されていてもよい。モジュールケース内に収納されるバッテリセルの数は、用途などによって調節されるもので、特に制限されない。モジュールケースに収納されているバッテリセルは、互いに電気的に連結されていてもよい。
【0078】
モジュールケースは、バッテリセルが収納される内部空間を形成する側壁と下部板を少なくとも含むことができる。また、モジュールケースは、前記内部空間を密閉する上部板をさらに含むことができる。前記側壁、下部板及び上部板は、互いに一体型に形成されていてもよく、又はそれぞれ分離された側壁、下部板及び/又は上部板が組み立てられて前記モジュールケースが形成されていてもよい。このようなモジュールケースの形態及びサイズは、特に制限されず、用途や前記内部空間に収納されるバッテリセルの形態及び個数などによって適切に選択され得る。
【0079】
上記で用語「上部板」と「下部板」は、モジュールケースを構成している板が少なくとも2個存在するため、これを区別するために用いられる相対的概念の用語である。すなわち、実際使用状態で上部板が必ず上部に存在し、下部板が必ず下部に存在しなければならないことを意味するものではない。
【0080】
図2は、例示的なモジュールケース10を示す図であり、一つの下部板10aと4個の側壁10bを含む箱形態のモジュールケース10の例示である。モジュールケース10は、内部空間を密閉する上部板10cをさらに含むことができる。
【0081】
図3は、バッテリセル20が収納されている図2のモジュールケース10を上部から観察した模式図である。
【0082】
モジュールケースの前記下部板、側壁及び/又は上部板には、ホールが形成されていてもよい。前記ホールは、後述するように、注入工程により樹脂層を形成する場合に、前記樹脂層の形成材料、すなわち、樹脂組成物を注入するために用いられる注入ホールであってもよい。前記ホールの形態、個数及び位置は、前記樹脂層の形成材料の注入効率を考慮して調整され得る。一つの例示で、前記ホールは、少なくとも前記下部板及び/又は上部板に形成されていてもよい。
【0083】
一つの例示で、前記ホールは、前記側壁、下部板又は上部板の全体長さの約1/4~3/4地点又は約3/8~7/8地点又は略中間部に形成されていてもよい。この地点に形成された注入ホールを通じて樹脂組成物を注入することで、樹脂層が広い接触面積を有するように注入することができる。前記 1/4、3/4、3/8又は7/8地点は、例えば、図4に示したように、下部板などのいずれか一つの末端面Eを基準で測定した全体長さLに対して、前記ホールの形成位置まで行った距離Aの割合である。また、上記で長さL及び距離Aが形成される末端Eは、前記長さLと距離Aを同一な末端Eから測定する限り、任意の末端Eであってもよい。図4で、注入ホール50aは、下部板10aの略中間部に位置する形態である。
【0084】
注入ホールのサイズ及び形状は特に制限されず、後述する樹脂層材料の注入効率を考慮して調節され得る。例えば、前記ホールは、円形、楕円形、三角形や四角形などの多角形又は無定形であってもよい。注入ホールの個数及びその間隔も特に制限されるものではなく、上述したように樹脂層が下部板などと広い接触面積を有するように調節され得る。
【0085】
前記注入ホールが形成されている上部板と下部板などの末端には、観察ホール(例えば、図4の50b)が形成され得る。このような観察ホールは、例えば、前記注入ホールを通じて樹脂層材料を注入するときに、注入された材料が該当側壁、下部板又は上部板の末端までよく注入されるかを観察するために形成されたものであってもよい。前記観察ホールの位置、形態、サイズ及び個数は、前記注入される材料が適切に注入されたかを確認できるように形成される限り、特に制限されない。
【0086】
前記モジュールケースは、熱伝導性ケースであってもよい。用語「熱伝導性ケース」は、ケース全体の熱伝導度が10W/mK以上であるか、あるいは少なくとも上記のような熱伝導度を有する部位を含むケースを意味する。例えば、上述した側壁、下部板及び上部板のうち少なくとも一つは、上述した熱伝導度を有することができる。また他の例示で、前記側壁、下部板及び上部板のうち少なくとも一つが前記熱伝導度を有する部位を含むことができる。例えば、本出願のバッテリモジュールは、後述するように、上部板及びバッテリセルと接触する第1フィラー含有硬化樹脂層と下部板及びバッテリセルと接触する第2フィラー含有硬化樹脂層を含むことができるが、少なくとも前記第2フィラー含有硬化樹脂層は、熱伝導性樹脂層であってもよく、これによって、少なくとも前記下部板は、熱伝導性を有するか熱伝導性部位を含むことができる。
【0087】
上記で熱伝導性である上部板、下部板、側壁又は熱伝導性部位の熱伝導度は、他の例示で、20W/mK以上、30W/mK以上、40W/mK以上、50W/mK以上、60W/mK以上、70W/mK以上、80W/mK以上、90W/mK以上、100W/mK以上、110W/mK以上、120W/mK以上、130W/mK以上、140W/mK以上、150W/mK以上、160W/mK以上、170W/mK以上、180W/mK以上、190W/mK以上又は195W/mK以上であってもよい。前記熱伝導度は、その数値が高いほどモジュールの放熱特性などの側面で有利であるので、その上限は特に制限されない。一つの例示で、前記熱伝導度は、約1,000W/mK以下、900W/mK以下、800W/mK以下、700W/mK以下、600W/mK以下、500W/mK以下、400W/mK以下、300W/mK又は250W/mK以下であってもよいが、これに制限されるものではない。上記のような熱伝導度を示す材料の種類は特に制限されず、例えば、アルミニウム、金、純銀、タングステン、銅、ニッケル又は白金などの金属素材などがある。モジュールケースは、全体が上記のような熱伝導性材料からなるか、少なくとも一部の部位が前記熱伝導性材料からなった部位であってもよい。これによって、前記モジュールケースは、前記言及された範囲の熱伝導度を有するか、あるいは前記言及された熱伝導度を有する部位を少なくとも一部位含むことができる。
【0088】
モジュールケースで前記範囲の熱伝導度を有する部位は、後述する樹脂層及び/又は絶縁層と接触する部位であってもよい。また、前記熱伝導度を有する部位は、冷却水のような冷却媒体と接する部位であってもよい。このような構造を有する場合、バッテリセルから発生した熱を効果的に外部に放出することができる。
【0089】
モジュールケース内に収納されるバッテリセルの種類も特に制限されず、公知の多様なバッテリセルが全て適用され得る。一つの例示で、前記バッテリセルは、パウチ型であってもよい。図5を参照して説明すると、パウチ型バッテリセル100は、通常的に電極組立体、電解質及びパウチ外装材を含むことができる。
【0090】
図5は、例示的なパウチ型バッテリセルの構成を概略的に示す分離斜視図であり、図6は、図5の構成の結合斜視図である。
【0091】
パウチ型バッテリセル100に含まれる電極組立体110は、一つ以上の陽極板及び一つ以上の陰極板がセパレータを挟んで配置された形態であってもよい。電極組立体110は、一つの陽極板と一つの陰極板がセパレータと共に巻取された巻取型であるか、多数の陽極板と多数の陰極板がセパレータを挟んで相互に積層されたスタック型であってもよい。
【0092】
パウチの外装材120は、例えば、外部絶縁層、金属層及び内部接着層を具備する形態で構成され得る。このような外装材120は、電極組立体110と電解液など内部要素を保護し、電極組立体110と電解液による電気化学的性質に対する補完及び放熱性などを考慮してアルミニウムなどの金属薄膜を含むことができる。このような金属薄膜は、電極組立体110及び電解液などの要素や電池外部の他の要素との電気的絶縁性を確保するために、絶縁物質に形成された絶縁層の間に介在され得る。また、前記パウチには、例えば、PETのような高分子樹脂層(基材)がさらに含まれ得る。
【0093】
一つの例示で、外装材120は、上部パウチ121と下部パウチ122を含むことができ、上部パウチ121と下部パウチ122のうち少なくとも一つには、凹状の内部空間Iが形成され得る。このようなパウチの内部空間Iには、電極組立体110が収納され得る。上部パウチ121と下部パウチ122の外周面には、シーリング部Sが具備され、このようなシーリング部Sが互いに接着されて電極組立体110が収容された内部空間が密閉され得る。
【0094】
電極組立体110の各電極板には、電極タブが具備され、一つ以上の電極タブが電極リードと連結され得る。電極リードは、上部パウチ121と下部パウチ122のシーリング部Sの間に介在されて外装材120の外部に露出されることで、二次電池の電極端子として機能することができる。
【0095】
上述したパウチ型バッテリセルの形態は、一つの例示に過ぎず、本出願で適用されるバッテリセルが上記のような種類に制限されるものではない。本出願では、公知にされた多様な形態のパウチ型バッテリセル又はその他形態の電池が全てバッテリセルとして適用され得る。
【0096】
本出願のバッテリモジュールは、樹脂層をさらに含むことができる。具体的に、本出願のバッテリモジュールは、フィラー含有組成物が硬化された硬化樹脂層を含むことができる。前記硬化樹脂層は、上述したウレタン系組成物から形成され得る。
【0097】
バッテリモジュールは、前記樹脂層として、前記上部板及びバッテリセルと接触している第1フィラー含有硬化樹脂層と、前記下部板とバッテリセルと接触している第2フィラー含有硬化樹脂層と、を含むことができる。前記第1及び第2フィラー含有硬化樹脂層のうち一つ以上は、上述したウレタン系組成物の硬化物を含むことができ、それによって、上述した所定の接着力、耐寒性、耐熱性及び絶縁性を有することができる。その外に、第1及び第2フィラー含有硬化樹脂層は、下記のような特性を有することができる。
【0098】
一つの例示で、前記樹脂層は、熱伝導性樹脂層であってもよい。このような場合に熱伝導性樹脂層の熱伝導度は、約1.5W/mK以上、約2W/mK以上、2.5W/mK以上、3W/mK以上、3.5W/mK以上又は4W/mK以上であってもよい。前記熱伝導度は、50W/mK以下、45W/mK以下、40W/mK以下、35W/mK以下、30W/mK以下、25W/mK以下、20W/mK以下、15W/mK以下、10W/mK以下、5W/mK以下、4.5W/mK以下又は約4.0W/mK以下であってもよい。上記のように、樹脂層が熱伝導性樹脂層である場合に、前記樹脂層が付着されている下部板、上部板及び/又は側壁などは、上述した熱伝導度が10W/mK以上である部位であってもよい。このとき、前記熱伝導度を示すモジュールケースの部位は、冷却媒体、例えば、冷却水などと接する部位であってもよい。樹脂層の熱伝導度は、公知のホットディスク(hot disk)装備を用いて測定されるもので、例えば、ASTM D5470規格又はISO 22007-2規格によって測定された数値である。上記のような樹脂層の熱伝導度は、例えば、上述したように、樹脂層に含まれるフィラー及びその含量割合を適切に調節することで確保され得る。
【0099】
一つの例示で、前記バッテリモジュールで前記樹脂層又はその樹脂層が適用されたバッテリモジュールの熱抵抗は、5K/W以下、4.5K/W以下、4K/W以下、3.5K/W以下、3K/W以下又は約2.8K/W以下であってもよい。前記範囲の熱抵抗が現われるように樹脂層又はその樹脂層が適用されたバッテリモジュールを調節する場合に、優れた冷却効率乃至は放熱効率が確保され得る。前記熱抵抗の測定は、バッテリモジュールを駆動しながらモジュール上のセル位置によって温度センサーを付着し、センサーから測定された温度に基づいて計算され得る。前記熱抵抗の測定方式は特に制限されず、例えば、ASTM D5470規格又はISO 22007-2規格によって前記熱抵抗が測定され得る。
【0100】
一つの例示で、前記樹脂層は、所定の熱衝撃試験でも耐久性が維持されるように形成された樹脂層であってもよい。熱衝撃試験は、業界で公知にされた方式で行われ得る。例えば、約-40℃の低温で30分維持した後、また温度を80℃に上げて30分維持することを一つのサイクルとするとき、前記サイクルを100回繰り返した熱衝撃試験後にバッテリモジュールのモジュールケース又はバッテリセルから剥離されるかあるいはクラックが発生しない樹脂層であってもよい。例えば、バッテリモジュールが自動車などのように長い保証期間(自動車の場合、約15年以上)が要求される製品に適用される場合に、耐久性の確保のためには、上記のようなレベルの性能が要求され得る。
【0101】
一つの例示で、前記樹脂層は、難燃性樹脂層であってもよい。本出願で用語「難燃性樹脂層」は、UL 94 V Test(Vertical Burning Test)でV-0等級を示す樹脂層を意味することができる。これにより、バッテリモジュールから発生し得る火事及びその他事故に対する安定性を確保することができる。
【0102】
一つの例示で、前記樹脂層は、比重が5以下であってもよい。前記比重は、他の例示で、4.5以下、4以下、3.5以下又は3以下であってもよい。このような範囲の比重を示す樹脂層は、より軽量化されたバッテリモジュールの製造に有利である。前記比重は、その数値が低いほどモジュールの軽量化に有利であるので、その下限は特に制限されない。例えば、前記比重は、約1.5以上又は2以上であってもよい。樹脂層が上記のような範囲の比重を示すために樹脂層に添加される成分が調節され得る。例えば、フィラーの添加時になるべく低い比重でも目的とする熱伝導性が確保できるフィラー、すなわち、自体的に比重が低いフィラーを適用するか、表面処理が行われたフィラーを適用する方式などが用いられ得る。
【0103】
一つの例示で、前記樹脂層は、なるべく揮発性物質を含まないことが好ましい。例えば、前記樹脂層は、非揮発性成分の割合が90重量%以上、95重量%以上又は98重量%以上であってもよい。上記で非揮発性成分とその割合は、次の方式で規定され得る。すなわち、樹脂層を100℃で1時間程度維持した後に残存する部分を非揮発性成分と定義することができる。したがって、前記非揮発性成分の割合は、前記樹脂層の初期重量と前記100℃で1時間程度維持した後の割合を基準で測定することができる。
【0104】
一つの例示で、前記樹脂層は、硬化過程又は硬化された後に低い収縮率を有することが有利である。これにより、モジュールの製造乃至は使用過程で発生し得る剥離や空隙の発生などを防止することができる。前記収縮率は、上述した効果を示すことができる範囲で適切に調節され得、例えば、5%未満、3%未満又は約1%未満であってもよい。前記収縮率は、その数値が低いほど有利であるので、その下限は特に制限されない。
【0105】
一つの例示で、前記樹脂層は、モジュールの製造乃至は使用過程で発生し得る剥離や空隙の発生などを防止するために、低い熱膨脹係数(CTE)を有することができる。前記熱膨脹係数は、例えば、300ppm/K未満、250ppm/K未満、200ppm/K未満、150ppm/K未満又は約100ppm/K未満であってもよい。前記熱膨脹係数は、その数値が低いほど有利であるので、その下限は特に制限されない。前記熱膨脹係数の測定方法は特に制限されるものではない。例えば、TMA(Thermo Mechanical Analyze)を用いてexpansion mode、0.05 N load下で-40~125℃の範囲で、5℃/minの条件で測定することで、変形された長さに基づいて指定された温度区間内で長さ変形率を確認する方式で熱膨脹係数が測定され得る。
【0106】
一つの例示で、バッテリモジュールに優れた耐久性又は耐衝撃性を付与するために、前記樹脂層は、適切レベルの引張強度を有することができる。例えば、前記樹脂層は、約1.0MPa以上のヤング率(young's modulus)を有するように構成され得る。ヤング率は、例えば、-40~80℃の範囲内で各ポイント別に低温(約-40℃)、常温(約25℃)及び高温(約80℃)で、引張モード(tensile mode)で測定する場合の勾配値であってもよい。ヤング率は、温度が高いほど低く測定される。例えば、本出願の樹脂層は、ヤング率が前記区間内で1.0Mpa以上、より具体的には、10~500Mpaの範囲であってもよい。ヤング率が前記範囲未満である場合には、大きい重量のセルを固定する機能が良くなく、過度に大きい場合には、脆い(brittle)特性が高いので、車両衝突のような衝撃状況でクラックが発生し得る。
【0107】
一つの例示で、前記樹脂層は、適切な硬度を示すことが有利である。例えば、樹脂層の硬度が過度に高いと、樹脂層が脆い(brittle)特性を有するので、信頼性に悪い影響を与えることがある。このような点を考慮するとき、樹脂層の硬度を調節することで耐衝撃性、耐振動性を確保し、製品の耐久性を確保することができる。樹脂層は、例えば、ショアー(shore)Aタイプでの硬度が100未満、99以下、98以下、95以下又は93以下であるか、ショアーDタイプでの硬度が約80未満、約70以下、約65以下又は約60以下であってもよい。前記硬度の下限は特に制限されない。例えば、硬度は、ショアー(shore)Aタイプで硬度が60以上であるか、ショアー(shore)00タイプでの硬度が5以上又は約10以上程度であってもよい。前記範囲の硬度は、フィラーの含量などを調節することで確保され得る。ショアー硬度は、例えば、shore A硬度計のように、各タイプに合う硬度計を用いて公知の方法によって測定され得る。公知の方法としては、ASTM D2240などがある。
【0108】
上記のように、バッテリモジュール内に前記特性を満足する硬化樹脂層を形成することで、外部の衝撃や振動に対する耐久性に優れたバッテリモジュールが提供され得る。
【0109】
本出願のバッテリモジュールで前記樹脂層と接触している側壁、下部板及び上部板のうち少なくとも一つは、上述した熱伝導性の側壁、下部板又は上部板であってもよい。一方、本明細書で用語「接触」は、例えば、樹脂層と前記上部板、下部板及び/又は側壁又はバッテリセルが直接接触しているか、その間に他の要素、例えば、絶縁層などが存在する場合を意味し得る。また、熱伝導性の側壁、下部板又は上部板と接触する樹脂層は、該当対象と熱的で接触していてもよい。このとき、熱的接触は、前記樹脂層が前記下部板などと直接接触しているか、あるいは前記樹脂層と前記下部板などの間に他の要素、例えば、後述する絶縁層などが存在するが、その他の要素が前記バッテリセルから樹脂層、そして前記樹脂層から前記下部板などへの熱の伝達を妨害していない状態を意味し得る。上記で「熱の伝達を妨害しない」とは、前記樹脂層と前記下部板などの間に他の要素(例:絶縁層又は後述するガイド部)が存在する場合にも、その他の要素と前記樹脂層の全体熱伝導度が約1.5W/mK以上、約2W/mK以上、2.5W/mK以上、3W/mK以上、3.5W/mK以上又は4W/mK以上になるか、あるいは前記樹脂層及びそれと接触している下部板などの全体熱伝導度が前記他の要素がある場合にも前記範囲内に含まれる場合を意味する。前記熱的接触の熱伝導度は、50W/mK以下、45W/mK以下、40W/mK以下、35W/mK以下、30W/mK以下、25W/mK以下、20W/mK以下、15W/mK以下、10W/mK以下、5W/mK以下、4.5W/mK以下又は約4.0W/mK以下であってもよい。このような熱的接触は、前記他の要素が存在する場合に、その他の要素の熱伝導度及び/又は厚さを制御して達成することができる。
【0110】
前記熱伝導性樹脂層は、前記下部板などと熱的に接触しており、また、前記バッテリセルとも熱的に接触していてもよい。上記のような構造の採用により、一般的なバッテリモジュール又はそのようなモジュールの集合体であるバッテリパックの構成時に、既存に要求された多様な締結部品やモジュールの冷却装備などを大幅で減少させると共に、放熱特性を確保し、単位体積当たり一層多いバッテリセルが収納されるモジュールを具現することができる。これによって、本出願では、より小型であり、軽いと共に高出力のバッテリモジュールを提供することができる。
【0111】
図7は、前記バッテリモジュールの例示的な断面図である。図7で、前記モジュールは、側壁10bと下部板10aを含むケース10;前記ケースの内部に収納されている複数のバッテリセル20及び前記バッテリセル20とケース10の全てと接触している樹脂層30を含む形態であってもよい。図7は、下部板10a側に存在する樹脂層30に対する図であるが、本出願のバッテリモジュールは、上部板側にも図7のような形態で位置する樹脂層を含むことができる。
【0112】
上記構造で前記樹脂層30と接触している下部板などは、上述したように熱伝導性の下部板などであってもよい。
【0113】
前記樹脂層と下部板などの接触面積は、前記下部板などの全体面積に対して、約70%以上、約75%以上、約80% 以上、約85%以上、約90%以上又は約95%以上であってもよい。前記接触面積の上限は特に制限されず、例えば、100%以下又は約100%未満であってもよい。
【0114】
上部板又は下部板が熱伝導性であり、それと接触している硬化樹脂層も熱伝導性である場合に、前記熱伝導性部位又は熱伝導性の下部板などは、冷却水のような冷却媒体と接する部位であってもよい。すなわち、図7に模式的に示したように、上記のような構造により熱Hが下部板などに容易に排出され得、このような下部板などを冷却媒体CWと接触させることで、より簡素化された構造でも熱の放出が容易に行われるようにすることができる。
【0115】
第1及び第2硬化樹脂層は、それぞれ厚さが、例えば、約100μm~5mmの範囲内又は約200μm~5mmの範囲内であってもよい。本出願の構造では、前記樹脂層の厚さは目的とする放熱特性や耐久性を考慮して適正厚さに設定することができる。前記厚さは、樹脂層の最も薄い部位の厚さ、最も厚い部位の厚さ又は平均厚さであってもよい。
【0116】
図7に示したように、前記モジュールケース10内部の少なくとも一面、例えば、樹脂層30と接触する面10aには、収納されるバッテリセル20をガイドすることができるガイド部10dが存在できる。このとき、ガイド部10dの形状は特に制限されず、適用されるバッテリセルの形態などを考慮して適正な形状が採用され得る。前記ガイド部10dは、前記下部板などと一体に形成されているものであるか、あるいは別に付着されたものであってもよい。前記ガイド部10dは、上述した熱的接触を考慮して熱伝導性素材、例えば、アルミニウム、金、純銀、タングステン、銅、ニッケル又は白金などの金属素材を用いて形成することができる。また、図面には図示しなかったが、収納されるバッテリセル20の間には、間紙又は接着剤層が存在してもよい。上記で間紙は、バッテリセルの充放電時にバッファーの役目を行うことができる。
【0117】
一つの例示で、前記バッテリモジュールは、前記モジュールケースと前記バッテリセルの間又は前記樹脂層と前記モジュールケースの間に絶縁層をさらに含むことができる。図8は、ケースの下部板10a上に形成されたガイド部10dと樹脂層30の間に絶縁層40が形成されている場合を例示的に図示したものである。絶縁層を追加することで、使用過程で発生し得る衝撃によるセルとケースの接触による電気的短絡現象や火事発生などの問題を防止することができる。前記絶縁層は、高い絶縁性と熱伝導性を有する絶縁シートを用いて形成するか、あるいは絶縁性を示す物質の塗布乃至は注入により形成できる。例えば、後述するバッテリモジュールの製造方法で、樹脂組成物の注入前に絶縁層を形成する過程が行われ得る。絶縁層の形成には、いわゆるTIM(Thermal Interface Material)などが適用されてもよい。他の方式で、絶縁層は、接着性物質で形成でき、例えば、熱伝導性フィラーのようなフィラーの含量が少ないかない樹脂層を用いて絶縁層を形成してもよい。絶縁層の形成に用いることができる樹脂成分としては、アクリル樹脂、PVC(poly(vinyl chloride))、PE(polyethylene)などのオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、シリコンや、EPDMラバー(ethylene propylene diene monomer rubber)などのラバー成分などが例示され得るが、これに制限されるものではない。前記絶縁層は、ASTM D149に準拠して測定した絶縁破壊電圧が約5kV/mm以上、約10kV/mm以上、約15kV/mm以上、20kV/mm以上、25kV/mm以上又は30kV/mm以上であってもよい。前記絶縁破壊電圧は、その数値が高いほど優れた絶縁性を示すことで、特に制限されるものではない。例えば、前記絶縁層の絶縁破壊電圧は、約100kV/mm以下、90kV/mm以下、80kV/mm以下、70kV/mm以下又は60kV/mm以下であってもよい。前記絶縁層の厚さは、その絶縁層の絶縁性や熱伝導性などを考慮して適正範囲に設定でき、例えば、約5μm以上、約10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上又は90μm以上程度であってもよい。また、厚さの上限も特に制限されず、例えば、約1mm以下、約200μm以下、190μm以下、180μm以下、170μm以下、160μm以下又は150μm以下であってもよい。
【0118】
本出願に関する他の一例で、本出願は、バッテリモジュール、例えば、前記言及したバッテリモジュールの製造方法に関する。
【0119】
本出願の製造方法は、上述したモジュールケース内に樹脂組成物を注入するステップ;前記モジュールケース内にバッテリセルを収納するステップ及び前記樹脂組成物を硬化させて前記樹脂層を形成するステップを含むことができる。
【0120】
モジュールケースの内部に樹脂組成物を注入するステップとモジュールケース内にバッテリセルを収納するステップの順序は特に制限されない。例えば、モジュールケース内に樹脂組成物を先に注入し、その状態でバッテリセルを収納するか、あるいはバッテリセルを先にモジュールケースの内部に収納した後に樹脂組成物を注入することができる。
【0121】
樹脂組成物としては、上述した樹脂組成物を用いることができる。
【0122】
モジュールケース内に樹脂組成物を注入する方式は特に制限されず、公知の方式が適用され得る。例えば、モジュールケースの開口部に樹脂組成物を注いで樹脂組成物を注入するか、モジュールケースに形成されている上述した注入ホールにより樹脂組成物を注射(injection)する方式、バッテリセルとバッテリモジュールの両方に樹脂組成物を塗布する方式などが適用され得る。適切な固定のために前記注入工程は、バッテリモジュール又はバッテリセルを一定に振動させながら行ってもよい。
【0123】
樹脂組成物が注入されたモジュールケース又は前記組成物が注入される前のモジュールケースにバッテリセルを収納する方式は特に制限されない。
【0124】
バッテリセルの収納は、目的とする配置などを考慮してバッテリセルをモジュールケース内の適合する位置に配置することで行ってもよい。また、カートリッジ構造体が存在する場合、前記カートリッジ構造体の適正位置にバッテリセルを位置させるか、バッテリセルが位置されたカートリッジ構造体をモジュールケース内に挿入して前記ステップを行うことができる。
【0125】
バッテリセルを収納した後にバッテリセルの間の接着又はバッテリセルとモジュールケースの間の接着は、注入された樹脂組成物を硬化させて形成することができる。樹脂組成物を硬化させる方式は特に制限されない。一つの例示で、前記組成物を用いる場合、常温で樹脂組成物を所定時間(約24時間)維持する方式によって樹脂組成物を硬化することができる。セルの熱安定性を阻害しないレベルで、熱を一定時間印加して硬化を促進させてもよい。例えば、硬化前又は硬化過程やバッテリセルの収納前又は収納過程などにおいて、60℃未満の温度、より具体的には、約30℃~50℃範囲の熱を印加することで、タクトタイムを減少させて工程性を改善することができる。バッテリセルの間の接着を成すかバッテリセルとモジュールケースの間の接着を成すことができる硬化物は、上述したように、最小80%以上の転換率を有することができる。
【0126】
本出願に関するまた他の一例において、本出願は、バッテリパック、例えば、上述したバッテリモジュールを2個以上含むバッテリパックに関する。バッテリパックで前記バッテリモジュールは、互いに電気的に連結されていてもよい。2個以上のバッテリモジュールを電気的に連結してバッテリパックを構成する方式は特に制限されず、公知の方式が全て適用され得る。
【0127】
また、本出願は、前記バッテリモジュール又は前記バッテリパックを含む装置に関する。前記装置の例としては、電気自動車のような自動車が挙げられるが、これに制限されず、2次電池を出力で要求する全ての用途の装置であってもよい。また、前記バッテリモジュール又はバッテリパックを用いて前記自動車を構成する方式は特に制限されず、関連技術分野で知られた一般的な方式が適用され得る。
【発明の効果】
【0128】
本出願の一例によると、バッテリモジュールへの注入工程性に優れ、注入後には、バッテリモジュール内の他の部品の汚染発生を防止することができる樹脂組成物が提供される。また、前記組成物は、硬化後に優れた絶縁性、放熱性及び接着性などを有する。
【図面の簡単な説明】
【0129】
図1図1は、本出願の一例によってエステル系ポリオールの非結晶特性又は十分に結晶性が低い特性を判断する例を示す。
図2図2は、本出願で適用できる例示的なモジュールケースを示す。
図3図3は、モジュールケース内にバッテリセルが収納されている形態を概略的に示す。
図4図4は、注入ホールと観察ホールが形成された例示的な下部板を概略的に示す。
図5図5は、バッテリセルで用いられる例示的なバッテリパウチを概略的に示す。
図6図6は、バッテリセルで用いられる例示的なバッテリパウチを概略的に示す。
図7図7は、例示的なバッテリモジュールの構造を概略的に示す。
図8図8は、例示的なバッテリモジュールの構造を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0130】
以下、実施例及び比較例により本出願のバッテリモジュールを説明するが、本出願の範囲は下記提示された範囲によって制限されるものではない。
【0131】
評価方法
1.粘度
樹脂組成物の粘度は、流変物性測定器(ARES)を用いて常温で0.01~10.0/sまでのせん断速度(shear rate)条件で測定した。実施例で言及した粘度は、せん断速度2.5/sの地点での粘度であり、せん断速度が0.25/sである地点と2.5/sである地点での粘度の比によりTI(チキソトロピー指数、thixotropic index)を決めることができる。
【0132】
2.絶縁性能
下記記載した耐電圧と絶縁破壊電圧がそれぞれ全て所定の値を満足する場合、○で表示し、そうでない場合、Xで表示した。
【0133】
(1)耐電圧
ISO 6469-3によって測定した。具体的に、モジュール状態で組成物を注入し、1時間が経過した後に2kVを1秒間印加した。漏洩電流が1mA未満であると、○で表示し、その以上であると、Xで表示した。
【0134】
(2)絶縁破壊電圧
ASTM D149に根拠して2mm厚さの硬化物(本硬化される)を製造し、絶縁破壊電圧の測定時にその値が10kV/mm以上であると、○で表示し、これより低いと、Xで表示した。
【0135】
3.工程性
図1のような形状のモジュールケースとして、アルミニウムで製造された下部板、側壁及び上部板を有するモジュールケースを用いた。前記モジュールケースの下部板の内側面には、バッテリセルの装着をガイディングするガイド部が形成されており、前記モジュールケースの上部板及び下部板の中心部には、樹脂組成物の注入のための注入ホールが一定間隔に形成されており、上部板及び下部板の末端には、観察ホールが形成されているケースを用いた。前記モジュールケース内にバッテリパウチを複数個積層したパウチの束を収納した。その後、前記モジュールケースの上面に上部板を覆った。
【0136】
(1)前記上部板と下部板のそれぞれの注入ホールに樹脂組成物を注入し、組成物が観察ホールまで到逹することを確認した。観察ホールまで到逹するにかかる時間が5分以内である場合には、○で表示し、それを超過するか観察ホールまで到逹するほど十分な流れ性を有しない場合又は過度に大きい流れ性により注入後にモジュール内で重力方向の上部と下部にそれぞれ均一に充填されない場合には、Xで表示した。
【0137】
(2)組成物を注入(充填)して1時間が経過した後にモジュールに動きと振動を与えながら、モジュールから組成物が流れるかを観察した。流れた組成物による外部汚染がない場合、○で表示し、汚染がある場合、Xで表示した。
【0138】
実施例~比較例
<実施例1>
ポリオール:主剤組成物には、前記化学式2で表示されるカプロラクトン系ポリオールとして、繰り返し単位の数(化学式2のm)が約1~3程度レベルであり、ポリオール由来の単位(化学式2のY)としては、1,4-ブタンジオールを含むポリオールを含む樹脂(Brookfield LV type粘度計で測定するとき、約280cPの粘度を有する)を所定含量用いた。
【0139】
イソシアネート:硬化剤組成物には、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネ-ト)とHDIトリマーの混合物(Brookfield LV type粘度計で測定するとき、170cPの粘度を有する)を用いた。このとき、NCO indexが約100になるようにイソシアネート化合物の使用量を調節した。
【0140】
フィラー:アルミナを用いた。その含量は、前記ポリオールとイソシアネートの含量を合わせた100重量部に対して1,000重量部の割合になるようにし、主剤組成物部及び硬化剤組成物部に前記アルミナを同量に分割配合した。
【0141】
分散剤:陰イオン性分散剤を所定含量投入した。
【0142】
触媒:ジブチル錫ジラウレート(DBTDL:dibutyltin dilaurate)を表1のような含量ほど用いた。
【0143】
前記成分を混合して二液型ウレタン系組成物を製造した。
【0144】
<実施例2>
分散剤の含量を実施例1で用いた分散剤の含量に対して70%で添加したこと以外は、実施例1と同一に組成物を製造した。
【0145】
<実施例3>
主剤組成物部は、ビニル基を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)を含み、硬化剤組成物部は、ビニル基を有するポリジメチルシロキサンとハイドライド基を有するポリジメチルシロキサンを含むように構成し、それぞれ粘度が20万~30万内外になるようにフィラーと配合した。混合過程のうち白金触媒の使用量を適切に調節した。
【0146】
<比較例1>
触媒の含量を実施例1で用いた含量に対して30%で用いたこと以外は、実施例1と同一に組成物を製造した。
【0147】
<比較例2>
触媒の含量を実施例1で用いた含量に対して3倍レベルで用いたこと以外は、実施例1と同一に組成物を製造した。
【0148】
<比較例3>
主剤組成物の化学式2で繰り返し単位mを1未満にしたこと以外は、実施例1と同一に組成物を製造した。
【0149】
【表1】
【0150】
【表2】
【0151】
前記表1及び2から、本出願の粘度関連条件を満足する実施例は、優れた工程性と絶縁性能を具現するが、粘度条件を満足しない比較例の場合には、工程性が良くないことが分かる。具体的に、比較例1のように、十分でない硬化によりV3が過度に低い場合には、隣接部品に対する汚染や接着面に対する剥離が発生でき、比較例2のように、V2が測定される時点で既に硬化が過度に行われた場合には、注入工程性が良くないことが分かる。そして、比較例3のように、V1と関連された粘度が過度に低い場合には、注入後に硬化が進行される前にオーバーフロー(over flow)が激しく発生し、注入された組成物がモジュール内の重力方向の上部から下部に流れながら均一に硬化された樹脂層を形成するよりは重力方向の下部にのみ満たされ、その結果、重力方向の上部は、未充填され得る。
【符号の説明】
【0152】
10:モジュールケース
10a:下部板
10b:側壁
10c:上部板
10d:ガイド部
20:バッテリセル
30:樹脂層
50a:注入ホール
50b:観察ホール
40:絶縁層
100:パウチ型バッテリセル
110:電極組立体
120:外装材
121:上部パウチ
122:下部パウチ
S:シーリング部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8