(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/541 20210101AFI20220111BHJP
H01M 50/543 20210101ALI20220111BHJP
H01M 10/12 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
H01M50/541
H01M50/543
H01M10/12 K
(21)【出願番号】P 2018004326
(22)【出願日】2018-01-15
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】島田 康平
(72)【発明者】
【氏名】原 耕介
【審査官】立木 林
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-105461(JP,A)
【文献】特開2006-269322(JP,A)
【文献】特開平6-076863(JP,A)
【文献】特開2008-016331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 10/00-10/04
H01M 10/06-10/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に配列された第1~第NのN個のセル室(Nは3以上の整数を示す。)を有する電槽と、
複数の電極板が積層されてなり、前記電極板の積層方向が前記所定方向となるように前記第1~第Nのセル室にそれぞれ収容された第1~第NのN個の電極群と、
前記第1の電極群上に位置する第1の極柱及び前記第Nの電極群上に位置する第2の極柱と、を備え、
前記N個の電極群は、それぞれ、前記極柱側に突出する、第1の耳部及び前記第1の耳部よりも前記第1の極柱から遠くに位置する第2の耳部を有し、
前記電極板の積層方向から視たときに、
前記第2~第(N-1)の電極群における前記第1の耳部の少なくとも一部は、前記第1の電極群における前記第1の耳部及び前記第1の極柱よりも、前記電極群の中央寄りに位置し、
前記第1の電極群における前記第1の耳部は、前記第2~第(N-1)の電極群における前記電極群の中央寄りに位置する前記第1の耳部よりも、前記第1の極柱寄りに位置する、鉛蓄電池。
【請求項2】
前記電極板の積層方向から視たときに、前記第2~第(N-1)の電極群における前記第1の耳部の全てが、前記第1の電極群における前記第1の耳部及び前記第1の極柱よりも、前記電極群の中央寄りに位置する、請求項1に記載の鉛蓄電池。
【請求項3】
前記電極板の積層方向から視たときに、前記第1の電極群における前記第1の耳部が、前記第1の極柱よりも電極群の中央寄りに位置する、請求項1又は2に記載の鉛蓄電池。
【請求項4】
前記電極板の積層方向から視たときに、前記第1の電極群における第1の耳部が、前記第1の極柱が延びる方向に位置する、請求項1又は2に記載の鉛蓄電池。
【請求項5】
前記第1の電極群において、前記第1の極柱と同極性の電極板は、前記第1の極柱と異なる極性の電極板よりも重い、請求項1~4のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、産業用に広く用いられており、例えば自動車のバッテリー、バックアップ用電源、及び電動車の主電源に用いられる。近年では、炭酸ガス排出規制対策、低燃費化等を目的として、発電制御、信号待ち等の際にエンジンを停止するシステムを搭載したアイドリングストップシステム車(以下「ISS車」という)の検討が盛んに行われており、鉛蓄電池にもISS車用途に適した特性が求められている。
【0003】
鉛蓄電池には、電池特性を向上させることが求められている。電池特性を向上させる手段の一つとして、電極における電気抵抗を低減させることが有効であることが知られている。これに対し、特許文献1には、負極活物質に鱗片状黒鉛を用いることで負極の電気抵抗を低減できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、電極の電気抵抗を低減する更なる手段を検討した結果、電極群の耳部を該電極群の中央寄りに位置させることで電極の電気抵抗を更に低減でき、電池性能を向上させることができることを見出した。しかしながら、耳部を電極群の中央寄りに位置させた鉛蓄電池を車両に搭載して用いる場合、車両の振動に伴う鉛蓄電池の振動により、鉛蓄電池の構成物品の一つである極柱の破損が発生しやすくなることが明らかになった。
【0006】
そこで、本発明は、電極の電気抵抗を低減しつつ、極柱の破損を抑制できる鉛蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、電極群の耳部と極柱との間の距離に着目し検討を行った。その結果、極柱に接続された耳部(極柱が位置するセル室に収容された電極群における極柱側の耳部)を電極群の中央寄りに位置させて該耳部が極柱から離れた状態とした場合に、極柱の破損が起こりやすくなる一方で、該耳部を極柱寄りに位置させて該耳部と極柱との間の距離を短くした場合には、極柱の破損が起こりづらくなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の一側面は、所定方向に配列された第1~第NのN個のセル室(Nは3以上の整数を示す。)を有する電槽と、複数の電極板が積層されてなり、電極板の積層方向が上記所定方向となるように第1~第Nのセル室にそれぞれ収容された第1~第NのN個の電極群と、第1の電極群上に位置する第1の極柱及び第Nの電極群上に位置する第2の極柱と、を備える鉛蓄電池に関する。この鉛蓄電池において、N個の電極群(第1~第Nの電極群)は、それぞれ、極柱側に突出する、第1の耳部及び第1の耳部よりも第1の極柱から遠くに位置する第2の耳部を有し、電極板の積層方向から視たときに、第2~第(N-1)の電極群における第1の耳部の少なくとも一部は、第1の電極群における第1の耳部及び第1の極柱よりも、電極群の中央寄りに位置し、第1の電極群における第1の耳部は、第2~第(N-1)の電極群における電極群の中央寄りに位置する第1の耳部よりも、第1の極柱寄りに位置する。
【0009】
上記鉛蓄電池では、第2~第(N-1)の電極群における第1の耳部が第1の電極群における第1の耳部及び第1の極柱よりも電極群の中央寄りに位置するため、電極板における耳と該耳から最も遠い位置に充填されている電極活物質との間の距離が短くなり、電極の電気抵抗を低減することができる。また、第1の電極群における第1の耳部が第2~第(N-1)の電極群における第1の耳部よりも第1の極柱寄りに位置するため、当該第1の耳部と第1の極柱との間の距離が短くなり、鉛蓄電池の振動に伴う電極群の振動を抑制することができる。その結果、鉛蓄電池が振動したときに第1の極柱に対して加わる応力を低減することができ、極柱の破損を抑制することができる。すなわち、上記鉛蓄電池によれば、電極の電気抵抗を低減しつつ、第1の極柱の破損を抑制できる。
【0010】
上記鉛蓄電池では、電極板の積層方向から視たときに、第2~第(N-1)の電極群における第1の耳部の全てが、第1の電極群における第1の耳部及び第1の極柱よりも、電極群の中央寄りに位置してよい。この場合では、第2~第(N-1)の電極群の全てにおいて、当該電極群の第1の耳部が第1の電極群における第1の耳部及び第1の極柱よりも電極群の端寄りに位置する場合に比べて、電極板における耳と該耳から最も遠い位置に充填されている電極活物質との間の距離が短くなり、電極の電気抵抗をより低減できる。
【0011】
上記鉛蓄電池では、電極板の積層方向から視たときに、第1の電極群における第1の耳部が、第1の極柱よりも電極群の中央寄りに位置してよい。この場合では、第1の電極群における第1の耳部が第1の極柱よりも電極群の端寄りに位置する場合に比べて、電極板における耳と該耳から最も遠い位置に充填されている電極活物質との間の距離が短くなり、電極の電気抵抗をより低減できる。
【0012】
上記鉛蓄電池では、電極板の積層方向から視たときに、第1の電極群における第1の耳部が、第1の極柱が延びる方向に位置してよい。この態様では、第1の電極群における第1の耳部が第1の極柱よりも電極群の中央寄り又は電極群の端寄りに位置する場合に比べて、第1の耳部と第1の極柱との間の距離が短くなり、鉛蓄電池の振動に伴う電極群の振動をより抑制することができる。そのため、鉛蓄電池が振動したときに第1の極柱に対して加わる応力をより低減することができ、第1の極柱の破損をより抑制できる。
【0013】
上記第1の電極群において、第1の極柱と同極性の電極板は、第1の極柱と異なる極性の電極板よりも重くてよい。この場合では、本発明の効果が顕著となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電極の電気抵抗を低減しつつ、極柱の破損を抑制できる鉛蓄電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態の鉛蓄電池の全体構成及び内部構造を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した鉛蓄電池の要部分解斜視図である。
【
図3】
図1に示した鉛蓄電池の電極群を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示した鉛蓄電池の内部を、電極板の積層方向から視た図である。
【
図5】
図1に示した鉛蓄電池の内部を、電極板の積層方向から視た図である。
【
図6】他の実施形態の鉛蓄電池の内部を電極板の積層方向から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、一実施形態の鉛蓄電池の全体構成及び内部構造を示す斜視図である。
図1に示すように、鉛蓄電池1は、上面が開口している電槽2と、電槽2の開口を閉じる蓋3と、電槽2の内部に収容された電極群(極板群)4及び希硫酸等の電解液(図示せず。)と、蓋3から電槽2の内部に延びる極柱5と、を備えている。蓋3には、正極端子6と、負極端子7と、蓋3に設けられた注液口を閉塞する液口栓8とが設けられている。正極端子6及び負極端子7は、同極性の極柱5(正極柱又は負極柱)を介して電極群4に電気的に接続されている。電槽2及び蓋3は、例えばポリプロピレンで形成されている。極柱5は、例えば、鉛又は鉛合金で形成されている。
【0017】
図2は、
図1に示した鉛蓄電池の要部分解斜視図である。
図2に示すように、電槽2は、例えば、中空の直方体状である。電槽2の底面が長方形状であり、電槽2の上面の略全面が開口している。電槽2は、所定方向に配列された6個の第1~第6のセル室22a~22f(以下、これらをまとめて「セル室22」ともいう。)を有する。セル室22は、電極群4が挿入される空間である。
図2に示す鉛蓄電池では、電槽2の長手方向が所定方向(配列方向)となるように、電槽2の短手方向に略平行に設けられた5枚の隔壁21によって電槽2の内部が6区画に分割されている。これにより、電槽2の内部には、電槽2の長手方向に沿って並ぶ第1~第6のセル室22a~22fが形成されている。
【0018】
第1~第6のセル室22a~22fには、それぞれ、第1~第6の電極群4a~4fが収容されている。
図2に示すように、各電極群4は、本体部41と本体部41の一端から極柱5側(電槽2の開口面側)に突出する第1の耳部42及び第2の耳部43とを有している。第2の耳部43は、第1の耳部42よりも極柱5(例えば正極柱9)から遠くに位置する。電極群4の詳細は後述する。
【0019】
図2に示すように、第1の極柱である正極柱9が、蓋3から第1のセル室22a内に延びており、第1の電極群4a上に位置している。また、第2の極柱である負極柱10が、蓋3から第6のセル室22f内に延びており、第6の電極群4f上に位置している。この実施形態では、正極柱9が第1の極柱であり、負極柱10が第2の極柱であるが、負極柱10が第1の極柱であり、正極柱9が第2の極柱であってもよい。
【0020】
以下では、
図3~
図5を参照して、電極群4(第1~第6の電極群4a~4f)の構成を説明する。
【0021】
図3は、第1のセル室22aに収容される第1の電極群4aを示す斜視図である。特に断らない限り、第2~6の電極群4b~4fは、第1の電極群4aと同様の構成である。
図3に示すように、第1の電極群4aは、正極板11と、負極板12と、セパレータ13と、を備える。第1の電極群4aは、複数の電極板(正極板11及び負極板12)が、セパレータ13を介して、セル室22の配列方向に沿って交互に積層された構造を有している。すなわち、電極板は、その主面がセル室22の配列方向に垂直な方向に広がるように配置されている。
図3に示す例では、電極板の積層方向に直交する方向のうち、電槽2の開口面に略垂直な方向が電極板の短手方向となり、電槽2の開口面に略平行な方向が電極板の長手方向となる。
【0022】
正極板11は、正極集電体14と、該正極集電体14に保持された(充填された)正極活物質15と、を備える。負極板12は、負極集電体16と、該負極集電体16に保持された(充填された)負極活物質17と、を備える。正極活物質15は、Pb成分としてPbO2を含み、必要に応じて、PbO2以外のPb成分(例えばPbSO4)及び添加剤を更に含む。負極活物質17は、Pb成分としてPb単体を含み、必要に応じてPb単体以外のPb成分(例えばPbSO4)及び添加剤を更に含む。
【0023】
集電体(正極集電体14及び負極集電体16)は、電極活物質(正極活物質15又は負極活物質17)を保持する活物質保持部18a,18bと、活物質保持部18a,18bの一端から突出した耳19a,19bと、を有している。すなわち、集電体を備える電極板は、その一端に耳を有している。複数の電極板における同極性の耳は、ストラップ(正極ストラップ31又は負極ストラップ32)で集合溶接されて、耳部(第1の耳部42又は第2の耳部43)を構成している。本明細書では、電極群における同極性の耳の集合を耳部と称する。電極群4aでは、第1の耳部42が正極の耳部であり、第2の耳部43が負極の耳部である。集電体は、例えば、鉛合金で形成されている。集電体は、鉛合金等を、重力鋳造法、エキスパンド法、打ち抜き法等で格子状に形成することにより得ることができる。
【0024】
正極ストラップ31には、極柱5に接続するための極柱接続部33が設けられている。負極ストラップ32には、隣り合う第2のセル室22bに収容される第2の電極群4bと接続するためのセル間接続部34が設けられている。なお、
図2に示すように、第2~第5の電極群4b~4eでは、正極ストラップ31及び負極ストラップ32にセル間接続部34が設けられており、極柱接続部33は設けられていない。また、第6の電極群4fでは、正極ストラップ31にセル間接続部34が設けられており、負極ストラップ32に極柱接続部33が設けられている。ストラップ(正極ストラップ31及び負極ストラップ32)、極柱接続部33及びセル間接続部34は、例えば、鉛合金で形成されている。
【0025】
セパレータ13は袋状であり、負極板12を収容している。セパレータ13は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等で形成されている。他の一実施形態では、セパレータ13は、正極板11を収容していてよく、袋状でなくてもよい。
【0026】
図4は、鉛蓄電池1の内部を電極板の積層方向における第1の電極群4a側から視た図である。
図4では、紙面手前側に位置する電極群(第1の電極群4a)が実線で示されており、紙面手前側に位置する電極群よりも紙面奥側に位置する電極群のうち、紙面手前側に位置する電極群と重ならない部分(第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42b)が二点鎖線で示されている。
【0027】
図4に示すように、電極板の積層方向から視たときに、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bは、電極群4の中央寄りに位置する。すなわち、電極板の積層方向から視たときに、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bから電極群4の中央までの距離aは、電極群4の幅(耳部の突出方向と略垂直な方向における電極群4の長さ)の1/4以下である。ここで、電極板の積層方向から視た耳部から電極群の中央までの距離は、電極板の積層方向から視たときの、耳部の幅方向(耳部の突出方向に略垂直な方向)の中央から電極群の幅方向の中央までの最短距離と定義される。耳部の幅方向の中央は、例えば、耳部の根元(電極群の本体部における耳部が突出する側の一端)における、耳部の幅方向の中央に位置する点(例えば、
図4に示す点A及び点B)を基準としてよい。電極群の幅方向の中央は、例えば、電極群の本体部の耳部が突出する側の一端における、電極群の幅方向の中央に位置する点(例えば、
図4に示す点C)を基準としてよい。通常、電極板の積層方向から視たときに、電極群を構成する各電極板の耳から各電極板の中央までの距離は同一であるが、各電極板の耳から各電極板の中央までの距離が互いに異なる場合には、各電極板における耳から各電極板の中央までの距離の平均を、電極板の積層方向から視た耳部から電極群の中央までの距離とする。
【0028】
図4に示す例では、電極板の積層方向から視たときに、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bの全てが、電極群4の中央寄りに位置するが、これに限定されない。例えば、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bの一部が、電極板の積層方向から視たときに、電極群4の中央寄りに位置していてもよい。
【0029】
第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bは、電極板の積層方向から視たときに、互いに重なるように位置する。すなわち、第2~第5の電極群4b~4eにおける距離aはいずれも等しい。他の一実施形態では、第2~第5の電極群4b~4eにおける距離aは互いに異なっていてもよい。生産効率の観点では、好ましくは、第2~第5の電極群4b~4eにおける距離aが等しい。距離aは、電極の電気抵抗をより低減できる観点から、例えば、24mm以下又は15mm以下であってよい。距離aは、例えば、10mm以上であってよい。
【0030】
電極板の積層方向から視たときに、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bは、第1の電極群4aにおける第1の耳部42a及び正極柱9よりも、電極群4の中央寄りに位置する。すなわち、電極板の積層方向から視たときに、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bは、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bから電極群の中央までの距離aが、第1の電極群4aにおける第1の耳部42aから電極群の中央までの距離b1、及び、正極柱9から電極群の中央までの距離c1よりも短くなるように設けられている。ここで、電極板の積層方向から視た極柱から電極群の中央までの距離は、電極板の積層方向から視たときの、極柱の中心軸線上に位置する点から電極群の中央までの最短距離と定義される。
【0031】
図4に示す例では、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bの全てが、第1の電極群4aにおける第1の耳部42a及び正極柱9よりも、電極群4の中央寄りに位置するが、これに限定されない。例えば、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bの一部が、第1の電極群4aにおける第1の耳部42a及び正極柱9よりも、電極群4の中央寄りに位置していてもよい。
【0032】
第1の電極群4aにおける第1の耳部42aから電極群の中央までの距離b1は、電極の電気抵抗をより低減できる観点から、例えば、50mm以下又は30mm以下であってよい。距離b1は、例えば、25mm以上であってよい。
【0033】
正極柱9から電極群の中央までの距離c1は、例えば、25mm以上であり、60mm以下である。
【0034】
距離b1に対する距離aの比率(a/b1)は、電極の電気抵抗を低減しつつ、正極柱(第1の極柱)の破損を抑制するという効果が得られやすい観点から、例えば、1未満であり、0.8以下であってもよい。距離b1に対する距離aの比率(a/b1)は、例えば、0.2以上であってよい。距離aと距離b1との差(b1-a)は、電極の電気抵抗を低減しつつ、正極柱(第1の極柱)の破損を抑制するという効果が得られやすい観点から、例えば、5mm以上又は10mm以上であってよく、また、30mm以下又は15mm以下であってよい。
【0035】
距離c1に対する距離aの比率(a/c1)は、電極の電気抵抗を低減しつつ、正極柱(第1の極柱)の破損を抑制するという効果が得られやすい観点から、例えば、1未満であり、0.7以下であってもよい。距離c1に対する距離aの比率(a/c1)は、例えば、0.2以上であってよい。距離aと距離c1との差(c1-a)は、電極の電気抵抗を低減しつつ、正極柱(第1の極柱)の破損を抑制するという効果が得られやすい観点から、例えば、30mm以上又は35mm以上であってよく、また、45mm以下又は40mm以下であってよい。
【0036】
電極板の積層方向から視たときに、第1の電極群4aにおける第1の耳部42aは、第2~第5の電極群4b~4eにおける電極群4の中央寄りに位置する第1の耳部よりも、正極柱9寄りに位置する。すなわち、電極板の積層方向から視たときに、第1の電極群4aにおける第1の耳部42aから正極柱9までの距離d1は、第2~第5の電極群4b~4eにおける電極群4の中央寄りに位置する第1の耳部から正極柱9までの距離e1よりも短い。ここで、電極板の積層方向から視た耳部から極柱までの距離とは、電極板の積層方向から視たときの、耳部の幅方向の中央から極柱の中心軸線上に位置する点までの最短距離を意味する。
【0037】
図4に示す例では、第1の電極群4aにおける第1の耳部42aが、電極板の積層方向から視たときに、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bのうちの全ての耳部よりも正極柱9寄りに位置するが、これに限定されない。例えば、第1の電極群4aにおける第1の耳部42aは、電極板の積層方向から視たときに、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bの一部よりも正極柱9寄りに位置していてよい。
【0038】
第1の電極群4aにおける第1の耳部42aから正極柱9までの距離d1は、正極柱(第1の極柱)の破損を抑制できる観点から、例えば、15mm以下又は10mm以下であってよい。距離d1は、例えば、1mm以上であってよい。
【0039】
第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bから正極柱9までの距離e1は、例えば、10mm以上であり、30mm以下である。
【0040】
第1の電極群4aにおける第1の耳部42aは、電極板の積層方向から視たときに、正極柱9よりも電極群4の中央寄りに位置する。すなわち、第1の電極群4aにおける第1の耳部42aから電極群の中央までの距離b1は、正極柱9から電極群の中央までの距離c1よりも短い。
【0041】
図5は、鉛蓄電池1の内部を電極板の積層方向における第6の電極群4f側から視た図である。
図5では、紙面手前側に位置する電極群(第6の電極群4f)が実線で示されており紙面手前側に位置する電極群4よりも紙面奥側に位置する電極群のうち、紙面手前側に位置する電極群と重ならない部分(第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42b)が二点鎖線で示されている。
【0042】
第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bは、電極板の積層方向から視たときに、第6の電極群4fにおける第1の耳部42c及び負極柱10よりも、電極群4の中央寄りに位置する。すなわち、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bは、電極板の積層方向から視たときに、上記距離aが、第6の電極群4fにおける第1の耳部42cから電極群の中央までの距離b2、及び、負極柱10から電極群の中央までの距離c2よりも短くなるように設けられている。
【0043】
図5に示す例では、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bの全てが、第6の電極群4fにおける第1の耳部42c及び負極柱10よりも、電極群4の中央寄りに位置するが、これに限定されない。例えば、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bの一部が、第6の電極群4fにおける第1の耳部42c及び負極柱10よりも、電極群4の中央寄りに位置していてもよい。
【0044】
第6の電極群4fにおける第1の耳部42cは、電極板の積層方向から視たときに、第2~第5の電極群4b~4eにおける電極群4の中央寄りに位置する第1の耳部よりも、負極柱10寄りに位置する。すなわち、電極板の積層方向から視たときに、第6の電極群4fにおける第1の耳部42cから負極柱10までの距離d2は、第2~第5の電極群4b~4eにおける電極群4の中央寄りに位置する第1の耳部から負極柱10までの距離e2よりも短い。
【0045】
図5に示す例では、第6の電極群4fにおける第1の耳部42cが、電極板の積層方向から視たときに、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bのうちの全ての耳部よりも負極柱10寄りに位置するが、これに限定されない。例えば、第6の電極群4fにおける第1の耳部42cは、電極板の積層方向から視たときに、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bの一部よりも負極柱10寄りに位置していてよい。
【0046】
第6の電極群4fにおける第1の耳部42cは、電極板の積層方向から視たときに、負極柱10よりも電極群4の中央寄りに位置する。すなわち、第6の電極群4fにおける第1の耳部42cから電極群の中央までの距離b2は、負極柱10から電極群の中央までの距離c2よりも短い。
【0047】
距離b2、距離c2、距離d2及び距離e2が取り得る値は、それぞれ、上述した距離b1、距離c1、距離d1及び距離e1と同じであってよい。また、距離b2に対する距離aの比率(a/b2)、距離aと距離b2との差(b2-a)、距離c2に対する距離aの比率(a/c2)、及び、距離aと距離c2との差(c2-a)が取り得る値は、それぞれ、上述した比率(a/b1)、差(b1-a)、比率(a/c1)及び差(c1-a)と同じであってよい。
【0048】
図4及び
図5に示すように、第1~第6の電極群4a~4fにおける第2の耳部43は、電極板の積層方向から視たときに、互いに重なるように位置している。すなわち、第1~第6の電極群4a~4fにおける第2の耳部43から電極群の中央までの距離はいずれも等しい。他の一実施形態では、第1~第6の電極群4a~4fにおける第2の耳部43から電極群の中央までの距離は互いに異なっていてもよい。生産効率の観点では、上記距離が等しいことが好ましい。
【0049】
第1~第6の電極群4a~4fにおける第2の耳部43は、電極板の積層方向から視たときに、電極群4の中央寄りに位置する。すなわち、第1~第6の電極群4a~4fにおける第2の耳部43から電極群の中央までの距離は、電極群4の幅の1/4以下である。第1~第6の電極群4a~4fにおける第2の耳部43の位置は特に限定されないが、電極の電気抵抗をより低減できる観点では、電極板の積層方向から視たときに、電極群4の中央寄りに位置することが好ましい。
【0050】
以上説明した鉛蓄電池1では、電極板の積層方向から視たときに、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bが電極群4の中央寄りに位置するため、第1の耳部が電極群の端寄りに位置する場合に比べて、電極板における耳と該耳から最も遠い位置に充填されている電極活物質との間の距離が短くなり、電極の電気抵抗が低減される。特に、上記実施形態の鉛蓄電池1では、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bの全てが電極群4の中央寄りに位置するため、電極の電気抵抗を低減する効果が顕著に奏される。
【0051】
また、上記実施形態の鉛蓄電池1では、電極板の積層方向から視たときに、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bが第1の電極群4aにおける第1の耳部42a及び正極柱9よりも電極群4の中央寄りに位置するため、第1の電極群4aにおける第1の耳部42aを正極柱9寄りに位置させたとしても、電極の電気抵抗を低減することができる。特に、上記実施形態の鉛蓄電池1では、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bの全てが第1の電極群4aにおける第1の耳部42a及び正極柱9よりも電極群4の中央寄りに位置するため、電極の電気抵抗を低減する効果が顕著に奏される。
【0052】
また、上記実施形態の鉛蓄電池1では、電極板の積層方向から視たときに、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bが第6の電極群4fにおける第1の耳部42c及び負極柱10よりも電極群4の中央寄りに位置するため、第6の電極群4fにおける第1の耳部42cを負極柱10寄りに位置させたとしても、電極の電気抵抗を低減することができる。特に、上記実施形態の鉛蓄電池1では、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bの全てが第6の電極群4fにおける第1の耳部42c及び負極柱10よりも電極群4の中央寄りに位置するため、電極の電気抵抗を低減する効果が顕著に奏される。
【0053】
また、上記実施形態の鉛蓄電池1では、電極板の積層方向から視たときに、第1の電極群4aにおける第1の耳部42aが第2~第5の電極群4b~4eにおける電極群4の中央寄りに位置する第1の耳部よりも正極柱9寄りに位置するため、当該第1の耳部42aと正極柱9との間の距離が短くなり、鉛蓄電池の振動に伴う電極群4の振動を抑制することができる。その結果、鉛蓄電池が振動したときに正極柱9に対して加わる応力(例えば、正極柱9の周囲方向及び電極板の積層方向に加わる応力)を低減することができる。このような理由から、上記実施形態の鉛蓄電池1では、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bを電極群4の中央寄りに位置させて電極の電気抵抗を抑制しつつ、正極柱9(第1の極柱)の破損を抑制することができる。特に、上記実施形態の鉛蓄電池1では、第1の電極群4aにおける第1の耳部42aが第2~第5の電極群4b~4eにおける全ての第1の耳部42bよりも正極柱9寄りに位置するため、電極の電気抵抗の低減と正極柱の破損の抑制とをより好適に両立できる。
【0054】
また、上記実施形態の鉛蓄電池1では、電極板の積層方向から視たときに、第6の電極群4fにおける第1の耳部42cが第2~第5の電極群4b~4eにおける電極群4の中央寄りに位置する第1の耳部よりも負極柱10寄りに位置するため、当該第1の耳部42cと負極柱10との間の距離が短くなり、鉛蓄電池の振動に伴う電極群4の振動を抑制することができる。その結果、鉛蓄電池が振動したときに負極柱10に対して加わる応力(例えば、負極柱10の周囲方向及び電極板の積層方向に加わる応力)を低減することができる。このような理由から、上記態様の鉛蓄電池1では、第2~第5の電極群4b~4eにおける第1の耳部42bを電極群4の中央寄りに位置させて電極の電気抵抗を抑制しつつ、負極柱10(第2の極柱)の破損を抑制できる。特に、上記実施形態の鉛蓄電池1では、第6の電極群4fにおける第1の耳部42cが第2~第5の電極群4b~4eにおける全ての第1の耳部42bよりも負極柱10寄りに位置するため、電極の電気抵抗の低減と負極柱の破損の抑制とをより好適に両立できる。
【0055】
また、上記実施形態の鉛蓄電池1では、電極板の積層方向から視たときに、第1の電極群4aにおける第1の耳部42aが正極柱9よりも電極群4の中央寄りに位置するため、当該第1の耳部42aが正極柱9よりも電極群4の端寄りに位置する場合に比べて、電極板における耳と該耳から最も遠い位置に充填されている電極活物質との間の距離が短くなり、電極の電気抵抗をより低減できる。また、上記実施形態の鉛蓄電池1では、電極板の積層方向から視たときに、第6の電極群4fにおける第1の耳部42cが負極柱10よりも電極群4の中央寄りに位置するため、上記と同様の理由により、電極の電気抵抗をより低減できる。
【0056】
また、上記実施形態の鉛蓄電池1では、電極板の積層方向から視たときに、第1~第6の電極群4a~4fにおける第2の耳部43が電極群4の中央寄りに位置するため、電極の電気抵抗をより低減できる。
【0057】
本発明の鉛蓄電池は、上記実施形態以外に他の実施形態であり得る。他の実施形態の鉛蓄電池の一例を
図6に示す。
図6は、他の実施形態の鉛蓄電池の内部を電極板の積層方向における第1の電極群4a側から視た図である。上記実施形態では、電極板の積層方向から視たときに、第1の電極群4aにおける第1の耳部42aが正極柱9よりも電極群4の中央寄りに位置するが、
図6に示す実施形態では、第1の電極群4aにおける第1の耳部42aが、正極柱9が延びる方向(正極柱9の中心軸線上)に位置している。具体的には、第1の電極群4aにおける第1の耳部42aから正極柱9までの距離d1が0である。この態様では、鉛蓄電池の振動時に正極柱に加わる応力がより低減されるため、正極柱の破損をより低減することができる。同様に、電極板の積層方向から視たときに、第6の電極群4fにおける第1の耳部42cが、負極柱10が延びる方向(負極柱10の中心軸線上)に位置していてもよい。この場合、鉛蓄電池の振動時に極柱負極柱に加わる応力がより低減されるため、負極柱の破損をより一層低減することができる。
【0058】
また、図示しないが、電極板の積層方向から視たときに、正極柱9が第1の電極群4aにおける第1の耳部42aよりも電極群4の中央寄りに位置していてもよい。すなわち、第1の電極群4aにおける第1の耳部42aから電極群の中央までの距離b1が、正極柱9から電極群の中央までの距離c1よりも長くてよい。同様に、電極板の積層方向から視たときに、負極柱10が第6の電極群4fにおける第1の耳部42cよりも電極群4の中央寄りに位置していてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、電極群4(第1の電極群4a及び第の6の電極群4f)が極柱接続部33を介して極柱5(正極柱9及び負極柱10)に接続されているが、
図6に示すように、極柱接続部33を介することなく、電極群4と極柱5とが接続されてもよい。上記実施形態では電極群4が極柱接続部33を介して極柱5に接続されているため、電槽2の開口面に垂直な方向から視た場合、第1の耳部42と極柱5とが重なり部分を有していないが、
図6に示す実施形態では、電槽2の開口面に垂直な方向から視た場合、第1の耳部42と極柱5とが重なり部分を有することとなる。この態様では、鉛蓄電池の振動時に極柱に加わる応力がより低減されるため、極柱の破損をより低減することができる。
【0060】
図2に示す例では、セル室22の数Nが6であるが、セル室22の数は、これに限定されるものではなく、鉛蓄電池1の用途に応じて適宜選択される。セル室22の数Nは、通常偶数であるが奇数であってもよい。電極群は通常直列に配列されるため、セル室の数Nが奇数である場合、電極群4の幅方向の中央を基準として、正極柱9と負極柱10とが互いに異なる側に位置する。したがって、上記実施形態では、第Nの電極群(第6の電極群4f)の第1の耳部42が第2の耳部43よりも負極柱(第2の極柱10)側に位置するが、セル室の数Nが奇数である場合には、第Nの電極群(第6の電極群4f)の第2の耳部43が第1の耳部42よりも負極柱(第2の極柱)10側に位置する。
【0061】
セル室の数Nが偶数である場合と同様の理由で同様の効果が得られる観点から、セル室の数Nが奇数である場合、電極板の積層方向から視たときに、第2~第(N-1)の電極群における第2の耳部の少なくとも一部(例えば全部)が、第Nの電極群における第2の耳部及び第2の極柱よりも、電極群の中央寄りに位置し、第Nの電極群における第2の耳部が、第2~第(N-1)の電極群における電極群の中央寄りに位置する第2の耳部よりも、第2の極柱寄りに位置してよい。また、電極板の積層方向から視たときに、第Nの電極群における第2の耳部が、第2の極柱よりも電極群の中央寄りに位置してよい。また、電極板の積層方向から視たときに、第Nの電極群における第2の耳部が、第2の極柱が延びる方向に位置してよい。
【0062】
図2に示す例では、第1のセル室及び第Nのセル室(第6のセル室)がセル室の配列方向の両端に位置するが、セル室の配列順序は特に限定されない。本明細書では、その内部に極柱5が位置するセル室が第1のセル室及び第Nのセル室となる。
【0063】
また、電極板の積層方向から視たときに、第2~第5の電極群における第1の耳部が第1の電極群における第1の耳部及び第1の極柱よりも電極群の中央寄りに位置し、第1の電極群における第1の耳部が第2~第5の電極群における電極群の中央寄りに位置する第1の耳部よりも第1の極柱寄りに位置していれば、第2~第5の電極群における第1の耳部は、第6の電極群における第1の耳部及び第2の極柱よりも電極群の中央寄りに位置しなくてよく、第6の電極群における第1の耳部は、第2~第5の電極群における電極群の中央寄りに位置する第1の耳部よりも第2の極柱寄りに位置しなくてもよい。この態様では、第1の電極群において、第1の極柱と同極性の電極板が、第1の極柱と異なる極性の電極板よりも重い場合に、本発明の効果が顕著に奏される。通常、正極の方が負極よりも活物質利用率が低く、正極が負極よりも重い設計であるため、車両の振動に伴う極柱の破損は正極柱においてより起こりやすい。そのため、第1の極柱が正極柱であり、第1の電極群における第1の耳部が正極の耳部であることが好ましい。
【0064】
次に、上述した鉛蓄電池1の製造方法について説明する。鉛蓄電池1の製造方法は、例えば、未化成の電極板(未化成の正極板及び未化成の負極板)を得る電極板製造工程と、未化成の電極板を含む構成部材を組み立てて鉛蓄電池1を得る組立工程とを備える。
【0065】
電極板製造工程では、例えば、正極板11及び負極板12のそれぞれについて、電極活物質ペースト(正極活物質ペースト及び負極活物質ペースト)を集電体の活物質保持部18a,18bに充填した後に、熟成及び乾燥を行うことにより未化成の電極板を得る。
【0066】
正極活物質ペーストは、例えば、正極活物質の原料(鉛粉、鉛丹(Pb3O4)等)に添加剤(補強用短繊維等)及び水を加え、次いで、希硫酸を加えて混練することにより得られる。この正極活物質ペーストを正極集電体14の活物質保持部18aに充填した後に、例えば、温度35~85℃、湿度50~98RH%の雰囲気で15~60時間熟成し、温度45~80℃で15~30時間乾燥することにより、未化成の正極板が得られる。
【0067】
負極活物質ペーストは、例えば、負極活物質の原料(鉛粉等)に添加剤(炭素材料、硫酸バリウム、補強用短繊維、スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂等)を添加して乾式混合することにより混合物を得た後、希硫酸及び水を加えて混練することにより得られる。この負極活物質ペーストを負極集電体16の活物質保持部18bに充填した後に、例えば、温度45~65℃、湿度70~98RH%の雰囲気で15~30時間熟成し、温度45~60℃で15~30時間乾燥することにより、未化成の負極板が得られる。
【0068】
組立工程では、例えば、未化成の正極板及び未化成の負極板を、セパレータ13を介して交互に積層し、正極板の耳同士及び負極板の耳同士をそれぞれストラップで連結(溶接等)させて電極群を得る。この電極群を電槽2内に配置して未化成の電池を作製する。次に、未化成の電池に電解液(希硫酸等)を注入した後、直流電流を通電して電槽化成する。化成後の電解液の比重を適切な比重に調整して鉛蓄電池1が得られる。
【0069】
化成条件及び硫酸の比重は、電極活物質の性状に応じて調整することができる。化成処理は、組立工程後に実施される代わりに、電極板製造工程における熟成及び乾燥後の多数の電極板をまとめて化成槽に浸漬して実施されてもよい(タンク化成)。
【符号の説明】
【0070】
1…鉛蓄電池、2…電槽、4…電極群、4a~4f…第1~第6の電極群(第1~第Nの電極群)、5…極柱、9…正極柱(第1の極柱)、10…負極柱(第2の極柱)、22a~22f…第1~第6のセル室(第1~第Nのセル室)、42…第1の耳部、42a…第1の電極群における第1の耳部、42b…第2~第5の電極群における第1の耳部(第2~第(N-1)の電極群における第1の耳部)、42c…第6の電極群における第1の耳部(第Nの電極群における第1の耳部)、43…第2の耳部。