(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】水素バリア剤、水素バリア膜形成用組成物、水素バリア膜、水素バリア膜の製造方法、及び電子素子
(51)【国際特許分類】
H01L 21/312 20060101AFI20220111BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20220111BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20220111BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220111BHJP
H05B 33/04 20060101ALI20220111BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220111BHJP
H01L 51/30 20060101ALI20220111BHJP
H01L 51/05 20060101ALI20220111BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220111BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
H01L21/312 A
G03F7/004 501
G03F7/027
H05B33/14 A
H05B33/04
H05B33/02
H01L29/28 250G
H01L29/28 100A
C08L101/00
C08K5/3445
(21)【出願番号】P 2018062917
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】引田 二郎
(72)【発明者】
【氏名】染谷 和也
(72)【発明者】
【氏名】三隅 浩一
(72)【発明者】
【氏名】塩田 大
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/031928(WO,A1)
【文献】特開2017-147416(JP,A)
【文献】国際公開第2007/010736(WO,A1)
【文献】特開2009-215368(JP,A)
【文献】特表2010-507900(JP,A)
【文献】特開昭59-017266(JP,A)
【文献】国際公開第2014/083845(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/129670(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/312
G03F 7/004
G03F 7/027
H01L 51/50
H05B 33/04
H05B 33/02
H01L 51/30
H01L 51/05
C08L 101/00
C08K 5/3445
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1):
【化1】
(式(1)中、X
m+はm価の対カチオンを表し、R
1は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、R
2は置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、R
3は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホン酸エステル基、又は有機基を表し、mは1以上の整数を表し、nは0以上3以下の整数を表し、R
2はR
1と結合して環状構造を形成していてもよい。)
で表される化合物からなる、水素バリア剤。
【請求項2】
基材成分(A)と、請求項1に記載の水素バリア剤(B)とを含む、水素バリア膜形成用組成物。
【請求項3】
前記基材成分(A)が、アルカリ可溶性樹脂(A1)と、光重合性化合物(A2)とを含み、
さらに、光重合開始剤(C)を含む、請求項2に記載の水素バリア膜形成用組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の水素バリア剤(B)を含む、水素バリア膜。
【請求項5】
請求項3に記載の水素バリア膜形成用組成物の硬化物からなる水素バリア膜。
【請求項6】
請求項3に記載の水素バリア膜形成用組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成することと、
前記塗布膜を露光することと、を含む、水素バリア膜の製造方法。
【請求項7】
パッシベーション膜と、請求項4又は5に記載の水素バリア膜とを含む、電子素子。
【請求項8】
さらに、TFTを含む、請求項7に記載の電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素バリア剤、水素バリア膜形成用組成物、水素バリア膜、水素バリア膜の製造方法、及び電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々の電子素子において様々な機能性膜が形成されている。電子素子の中でも、導電性有機材料や有機半導体の開発の進行にともない、有機電子素子の開発が進んでいる。かかる有機電子素子の代表的な例としては有機EL素子が挙げられる。
電子素子が有機EL素子である場合、機能性膜としては、例えば、パッシベーション膜、透明電極膜、透明絶縁層、平坦化膜、有機発光膜、保護膜等が挙げられる。
【0003】
電子素子は、有機EL素子のように素子を駆動させるためにTFTを備えることが多い。また、電子素子は、銅等の金属からなる配線を備えることも多い。ここで、TFTは、水素ガスとの接触による還元反応により機能が損なわれるおそれがあり、金属配線についても水素ガスによる還元によって電気的特性が変化するおそれがある。
【0004】
他方で、電子素子中の機能性膜の材料の中には、材料の製造方法に起因して水素ガスを放出する材料がある。例えば、パッシベーション膜の材料として用いられるSiN等は、その製造方法に起因して、アンモニアガスを内包する場合がある。このため、SiNから、アンモニアの分解により生じた水素ガスが発生する場合がある。
このように、有機EL素子等の電子素子では、内部での水素の発生により、TFTや金属配線等の部材が悪影響をうける場合がある。
【0005】
かかる問題から、例えば、有機電界発光素子(有機EL素子)中に、水素吸収物質として、金属薄膜を含ませる方法が提案されている(特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、透明性が要求される箇所への適用は困難であるし、水素吸収物質を含ませる工程が電子素子の製造方法に付加され、電子素子の製造工程が煩雑になるうえ、電子素子の製造コストアップの要因になる。
このため、電子素子がもともと備える機能層に配合することによって、機能層に水素バリア性を付与することができる水素バリア剤や、当該水素バリア剤を用いて形成される水素バリア膜が求められている。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであって、種々の材料に水素バリア性能を付与することができる水素バリア剤と、当該水素バリア剤を含む水素バリア膜形成用組成物と、前述の水素バリア剤を含む水素バリア膜と、前述の水素バリア膜形成用組成物を用いる水素バリア膜の製造方法と、水素バリア膜を備える電子素子とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、イミダゾリル基を有する特定の構造の塩化合物を水素バリア剤として用いることと、前述の水素バリア剤を基材成分に配合して水素バリア膜形成用組成物を調製することと、前述の水素バリア膜形成用組成物を用いて水素バリア膜を形成することとによって、上記の課題を解決できることを見出し本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
なお、本発明の「水素バリア」性能の対象となる“水素”とは、H2分子、Hラジカル、H+(プロトン)の各種成分及び個々の成分の組み合わせからなる混合成分全体の両方を意味する。
【0010】
本発明の第1の態様は、下式(1):
【化1】
(式(1)中、X
m+はm価の対カチオンを表し、R
1は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、R
2は置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、R
3は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホン酸エステル基、又は有機基を表し、mは1以上の整数を表し、nは0以上3以下の整数を表し、R
2はR
1と結合して環状構造を形成していてもよい。)
で表される化合物からなる、水素バリア剤である。
【0011】
本発明の第2の態様は、基材成分(A)と、第1の態様にかかる水素バリア剤(B)とを含む、水素バリア膜形成用組成物である。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1の態様にかかる水素バリア剤を含む、水素バリア膜である。
【0013】
本発明の第4の態様は、第2の態様にかかる水素バリア膜形成用組成物であって、基材成分(A)が、アルカリ可溶性樹脂(A1)と、光重合性化合物(A2)とを含み、さらに、光重合開始剤(C)を含む、水素バリア膜形成用組成物の硬化物からなる水素バリア膜である。
【0014】
本発明の第5の態様は、
第2の態様にかかる水素バリア膜形成用組成物であって、基材成分(A)が、アルカリ可溶性樹脂(A1)と、光重合性化合物(A2)とを含み、さらに、光重合開始剤(C)を含む、水素バリア膜形成用組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成することと、
塗布膜を露光することと、を含む、水素バリア膜の製造方法である。
【0015】
本発明の第6の態様は、パッシベーション膜と、第3の態様、又は第4の態様にかかる水素バリア膜とを含む、電子素子である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、種々の材料に水素バリア性能を付与することができる水素バリア剤と、当該水素バリア剤を含む水素バリア膜形成用組成物と、前述の水素バリア剤を含む水素バリア膜と、前述の水素バリア膜形成用組成物を用いる水素バリア膜の製造方法と、水素バリア膜を備える電子素子とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
≪水素バリア剤≫
水素バリア剤は、下式(1)で表される化合物からなる。水素バリア剤は、種々の材料に配合されることにより種々の物品に水素バリア性を付与する。
【化2】
(式(1)中、X
m+はm価の対カチオンを表し、R
1は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、R
2は置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、R
3は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホン酸エステル基、又は有機基を表し、mは1以上の整数を表し、nは0以上3以下の整数を表し、R
2はR
1と結合して環状構造を形成していてもよい。)
【0018】
m価の対カチオンX
m+は、非環式若しくは環式の含窒素脂肪族カチオン、含窒素芳香族カチオン又は金属カチオンであることが好ましい。mは1以上3以下の整数であるのがが好ましく、1又は2がより好ましく、1がさらに好ましい。
上記環式の含窒素脂肪族カチオンとしては、環を構成する原子として窒素原子以外のヘテロ原子(例えば、酸素原子、イオウ原子等)を含んでいてもよい。
上記非環式若しくは環式の含窒素脂肪族カチオンとしては、下記式(2)~(4)のいずれかで表されるカチオンが好ましい。
【化3】
(式(2)中、R
11~R
14はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、又は置換基を有してもよい複素環基を表し、R
11~R
14から選択される少なくとも2つは連結して環を形成していてもよい。)
【0019】
式(2)中、置換基を有してもよいアルキル基としては、炭素原子数1以上30以下のアルキル基が好ましい。置換基を有してもよいアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、1-エチルペンチル基、トリフルオロメチル基、2-エチルヘキシル基、フェナシル基、1-ナフトイルメチル基、2-ナフトイルメチル基、4-メチルスルファニルフェナシル基、4-フェニルスルファニルフェナシル基、4-ジメチルアミノフェナシル基、4-シアノフェナシル基、4-メチルフェナシル基、2-メチルフェナシル基、3-フルオロフェナシル基、3-トリフルオロメチルフェナシル基、及び3-ニトロフェナシル基等が挙げられる。
置換基を有してもよいシクロアルキル基としては、炭素原子数5以上30以下のシクロアルキル基が好ましい。置換基を有してもよいシクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0020】
置換基を有してもよいアルケニル基としては、炭素原子数2以上10以下のアルケニル基が好ましい。置換基を有してもよいアルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、及びスチリル基等が挙げられる。
置換基を有してもよいアルキニル基としては、炭素原子数2以上10以下のアルキニル基が好ましい。置換基を有してもよいアルキニル基の具体例としては、エチニル基、プロピニル基、及びプロパルギル基等が挙げられる。
置換基を有してもよいアリール基としては、炭素原子数6以上30以下のアリール基が好ましい。置換基を有してもよいアリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、9-アンスリル基、9-フェナントリル基、1-ピレニル基、5-ナフタセニル基、1-インデニル基、2-アズレニル基、9-フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、キシリル基、o-クメニル基、m-クメニル基、p-クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、及びピラントレニル基、オバレニル基等が挙げられる。
【0021】
置換基を有してもよいアラルキル基としては、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、2-α-ナフチルエチル基、及び2-β-ナフチルエチル基等が挙げられる。
置換基を有してもよい複素環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、芳香族あるいは脂肪族の複素環が好ましい。複素環の具体例としては、チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ナフト[2,3-b]チエニル基、チアントレニル基、フリル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、2H-ピロリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H-インドリル基、インドリル基、1H-インダゾリル基、プリニル基、4H-キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサニリル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、4aH-カルバゾリル基、カルバゾリル基、β-カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナルサジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基、及びチオキサントリル基等が挙げられる。
【0022】
さらに、前述した置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、又は置換基を有してもよい複素環基の水素原子はさらに他の置換基で置換されていても良い。
【0023】
そのような置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ニトロ基;メトキシ基、エトキシ基、及びtert-ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、及びp-トリルオキシ基等のアリールオキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;メトキシカルボニル基、及びブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ビニルオキシカルボニル基、及びアリルオキシカルボニル基等のアルケニルオキシカルボニル基;アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びメトキサリル基等のアシル基;メチルスルファニル基、及びtert-ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基;フェニルスルファニル基、及びp-トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基;メチルアミノ基、及びシクロヘキシルアミノ基等のし脂肪族第二級アミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、及びピペリジノ基等の脂肪族第三級アミノ基;フェニルアミノ基、p-トリルアミノ基等の芳香族第二級アミノ基;メチル基、エチル基、tert-ブチル基、及びドデシル基等のアルキル基;フェニル基、p-トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基等のアリール基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;スルホンアミド基;ホルミル基;メルカプト基;スルホ基;メシル基;p-トルエンスルホニル基;第一級アミノ基;ニトロソ基;トリフルオロメチル基、及びトリクロロメチル基等のハロゲン化アルキル基;トリメチルシリル基;ホスフィニコ基;ホスホノ基;アルキルスルホニル基;アリールスルホニル基;トリアルキルアンモニウム基;ジメチルスルホニウミル基;トリフェニルフェナシルホスホニウミル基等が挙げられる。
【0024】
式(2)中、R11~R14から選択される少なくとも2つが連結して環を形成する場合、連結基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基又はそれらを連結してなる2価の基が挙げられる。連結基としては、炭素原子数1以上10以下の2価の基が好ましい。R11~R14から選択される少なくとも2つから形成される環は、環を構成する原子として酸素原子を含んでいてもよい。
【0025】
(R21)2N+=C(NR22
2)2 (3)
(式(3)中、R21はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、R22はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、-C(=NR23)-NR23
2(3個のR23はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基)、又は、=C(-NR24
2)2(4個のR24はそれぞれ独立に水素原子又は有機基)を表す。)
【0026】
R21~R23についてのアルキル基としては、炭素原子数1以上10以下のアルキル基が好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、及び1-エチルペンチル基等が挙げられる。
R21~R23についてのシクロアルキル基としては、炭素原子数5以上30以下のシクロアルキル基が好ましい。シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
R24についての有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、及びアリール基等が挙げられる。
式(3)で表されるカチオンとしては、1,2-ジイソプロピル-3-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジウム、1-メチルビグアニジウム、1-n-ブチルビグアニジウム、1-(2-エチルヘキシル)ビグアニジウム、1-n-オクタデシルビグアニジウム、1,1-ジメチルビグアニジウム、1,1-ジエチルビグアニジウム、1-シクロヘキシルビグアニジウム、2-エチル-1,1,3,3-テトラメチルグアニジウム、1-ベンジルグアニジウム、1,3-ジベンジルグアニジウム、1-ベンジル-2,3-ジメチルグアニジウム、1-フェニルグアニジウム等が挙げられ、1,2-ジイソプロピル-3-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジウムが好ましい。
【0027】
【化4】
(式(4)中、R
31はそれぞれ独立に水素原子又は有機基を表し、sは2以上6以下の整数を表す。)
R
31についての有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、及びアリール基等が挙げられる。上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アラルキル基、及び上記アリール基は、置換基を有していてもよい。上記置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ニトロ基;メトキシ基、エトキシ基、及びtert-ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、及びp-トリルオキシ基等のアリールオキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;メトキシカルボニル基、及びブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ビニルオキシカルボニル基、及びアリルオキシカルボニル基等のアルケニルオキシカルボニル基;アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びメトキサリル基等のアシル基;メチルスルファニル基、及びtert-ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基;フェニルスルファニル基、及びp-トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基;メチルアミノ基、及びシクロヘキシルアミノ基等のし脂肪族第二級アミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、及びピペリジノ基等の脂肪族第三級アミノ基;フェニルアミノ基、p-トリルアミノ基等の芳香族第二級アミノ基;メチル基、エチル基、tert-ブチル基、及びドデシル基等のアルキル基;フェニル基、p-トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基等のアリール基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;スルホンアミド基;ホルミル基;メルカプト基;スルホ基;メシル基;p-トルエンスルホニル基;第一級アミノ基;ニトロソ基;トリフルオロメチル基、及びトリクロロメチル基等のハロゲン化アルキル基;トリメチルシリル基;ホスフィニコ基;ホスホノ基;アルキルスルホニル基;アリールスルホニル基;トリアルキルアンモニウム基;ジメチルスルホニウミル基;トリフェニルフェナシルホスホニウミル基等が挙げられる。
sは3以上5以下の整数であることが好ましく、3又は4であることがより好ましい。
【0028】
対カチオンX
mについて、芳香族基を含むカチオンであるのが好ましい。対カチオンX
mに含まれる芳香族基は、芳香族複素環基であるのが好ましい。対カチオンX
mに含まれる芳香族基は、含窒素芳香族複素環基であるのが好ましい。対カチオンX
m+についての含窒素芳香族カチオンとしては、下記式(5)~(13)のいずれかで表されるカチオンが好ましい。
【化5】
(式中、R
Hは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表す。R
41、R
43、R
45、R
46、R
47、R
48、R
50、R
51、及びR
52はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。R
42、R
44、及びR
49はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。R
41~R
52はそれぞれ独立にハロゲン原子、シアノ基、又はニトロ基で置換されていてもよい。
R
41及びR
42は互いに結合して環を形成していてもよい。少なくとも2つのR
41は互いに結合して環を形成していてもよい。R
43、及びR
44は互いに結合して環を形成していてもよい。2つのR
43は互いに結合して環を形成していてもよい。少なくとも2つのR
45は互いに結合して環を形成していてもよい。少なくとも2つのR
46は互いに結合して環を形成していてもよい。少なくとも2つのR
47は互いに結合して環を形成していてもよい。R
48、及びR
49は互いに結合して環を形成していてもよい。少なくとも2つのR
48は互いに結合して環を形成していてもよい。少なくとも2つのR
50は互いに結合して環を形成していてもよい。少なくとも2つのR
51は互いに結合して環を形成していてもよい。少なくとも2つのR
52は互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0029】
R41~R52についてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。
RH、及びR41~R52についてのアルキル基としては、直鎖アルキル基であっても、分岐鎖アルキル基であってもよい。当該アルキル基の炭素原子数は特に限定されない。アルキル基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上5以下が特に好ましい。
RH、及びR41~R52についてのアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチル-n-ヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、及びn-イコシル基が挙げられる。
【0030】
R41~R52についてのシクロアルキル基としては、炭素原子数5以上30以下のシクロアルキル基が好ましい。シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
R41~R52についてのアルケニル基としては、炭素原子数2以上10以下のアルケニル基が好ましい。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、及びスチリル基等が挙げられる。
R41~R52についてのアルキニル基としては、炭素原子数2以上10以下のアルキニル基が好ましい。アルキニル基の具体例としては、エチニル基、プロピニル基、及びプロパルギル基等が挙げられる。
【0031】
mが2以上の整数である場合、m価の対カチオンX
m+についての非環式若しくは環式の含窒素脂肪族カチオンとしては、下記式(14)~(16)のいずれかで表されることが好ましい。
【化6】
(上記式中、R
Hは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表す。R
53、及びR
55は、それぞれ独立にアルキル基、又はシクロアルキル基を表す。R
54はアルキレン基、シクロアルキレン基、又はそれらを連結してなる2価の基を表す。R
56はアルキレン基を表す。R
53~R
56はそれぞれ独立にハロゲン原子、シアノ基、又はニトロ基で置換されていてもよい。少なくとも2つのR
53は互いに結合して環を形成していてもよい。R
53及びR
54は互いに結合して環を形成していてもよい。2つのR
55は互いに結合して環を形成していてもよい。)
R
Hの具体例及び好ましい例としては、上述した具体例及び好ましい例と同様のものが挙げられる。
R
H及びR
53~R
55についてのアルキル基としてはR
H、及びR
41~R
52についてのアルキル基として上述した具体例及び好ましい例と同様のアルキル基が挙げられる。
R
53~R
55についてのシクロアルキル基としてはR
41~R
52についてのシクロアルキル基としては上述した具体例及び好ましい例と同様のシクロアルキル基が挙げられる。
R
56についてのアルキレン基としては、炭素原子数1以上5以下のアルキレン基が挙げられる。アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びブチレン基等が挙げられる。
【0032】
mが2以上の整数である場合、m価の対カチオンXm+についての含窒素芳香族カチオンとしては、分子中に2,2-ビピリジニウム骨格、3,3-ビピリジニウム骨格、4,4-ビピリジニウム骨格、2,2-ビピラジニウム骨格、4,4-ビキノリニウム骨格、4,4-ビイソキノリニウム骨格、4-[2-(4-ピリジニウム)ビニル]ピリジニウム骨格、又は4-[4-(4-ピリジニウム)フェニル]ピリジニウム骨格を有する2価以上のカチオンが挙げられる。
【0033】
対カチオンXm+についての金属カチオンとしては、典型金属元素、遷移金属元素、及び半金属元素からなる群より選択される金属原子のカチオン、又は上記金属原子を含む原子団のカチオンであることが好ましい。
上記典型金属元素としては、アルカリ金属元素(周期表1族のうち水素を除く元素からなる金属元素、例えば、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類金属元素(周期表2族の元素からなる金属元素、例えば、マグネシウム)、周期表12族の元素からなる金属元素(例えば、亜鉛)、周期表13族のうちホウ素を除く元素からなる金属元素(例えば、アルミニウム)、周期表14族のうち炭素、ケイ素を除く元素からなる金属元素(例えば、スズ)、周期表15族のうち窒素、リン、ヒ素を除く元素からなる金属元素(例えば、アンチモン)、周期表16族のうち酸素、硫黄、セレン、テルルを除く元素からなる金属元素(例えば、ポロニウム)が挙げられる。
上記遷移金属元素としては、周期表3~11族の元素からなる金属元素(例えば、ハフニウム)が挙げられる。
上記半金属元素としては、ホウ素、ケイ素、砒素、セレン、テルル等が挙げられる。
上記金属原子を含む原子団のカチオンとしては、金属原子と非金属原子の両方を含む原子団等が挙げられる。具体的には、[ZrO]2+、[(C2H5O)Al]2+、[(n-C4H9)2Sn-O-Sn(n-C4H9)2]2+等が挙げられる。
【0034】
式(1)中、R1は、置換基を有してもよい芳香族基を表す。置換基を有してもよい芳香族基は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基でもよく、置換基を有してもよい芳香族複素環基でもよい。
【0035】
芳香族炭化水素基の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。芳香族炭化水素基は、単環式の芳香族基であってもよく、2以上の芳香族炭化水素基が縮合して形成されていてもよく、2以上の芳香族炭化水素基が単結合により結合して形成されていてもよい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アンスリル基、及びフェナンスレニル基が好ましい。
【0036】
芳香族複素環基の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。芳香族複素環基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。芳香族複素環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、及びベンゾイミダゾリル基が好ましい。
【0037】
フェニル基、多環芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基が有してもよい置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホン酸エステル基、アミノ基、アンモニオ基、及び有機基が挙げられる。フェニル基、多環芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基が複数の置換基を有する場合、当該複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0038】
芳香族基が有する置換基が有機基である場合、当該有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、及びアラルキル基等が挙げられる。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。この有機基は、通常は1価であるが、環状構造を形成する場合等には、2価以上の有機基となり得る。
【0039】
芳香族基が隣接する炭素原子上に置換基を有する場合、隣接する炭素原子上に結合する2つの置換基はそれが結合して環状構造を形成してもよい。環状構造としては、脂肪族炭化水素環や、ヘテロ原子を含む脂肪族環が挙げられる。
【0040】
芳香族基が有する置換基が有機基である場合に、当該有機基に含まれる結合は本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、有機基は、酸素原子、窒素原子、珪素原子等のヘテロ原子を含む結合を含んでいてもよい。ヘテロ原子を含む結合の具体例としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、アミノ結合(-NRA-:RAは水素原子又は1価の有機基を示す)ウレタン結合、イミノ結合(-N=C(-RB)-、-C(=NRB)-:RBは水素原子又は1価の有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合等が挙げられる。
【0041】
有機基が有してもよいヘテロ原子を含む結合としては、式(1)で表されるイミダゾール化合物の耐熱性の観点から、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、アミノ結合(-NRA-:RAは水素原子又は1価の有機基を示す)ウレタン結合、イミノ結合(-N=C(-RB)-、-C(=NRB)-:RBは水素原子又は1価の有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、及びスルフィニル結合が好ましい。
【0042】
有機基が炭化水素基以外の置換基である場合、炭化水素基以外の置換基の種類は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。炭化水素基以外の置換基の具体例としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアルミ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホン酸エステル基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アルケニルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
【0043】
フェニル基、多環芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基が有する置換基としては、炭素原子数1以上12以下のアルキル基、炭素原子数1以上12以下のアリール基、炭素原子数1以上12以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上12以下のアリールオキシ基、炭素原子数1以上12以下のアリールアミノ基、及びハロゲン原子が好ましい。
【0044】
R1としては、式(1)で表される化合物を安価且つ容易に合成でき、上記化合物の水や有機溶剤に対する溶解性が良好であることから、それぞれ置換基を有してもよいフェニル基、フリル基、チエニル基が好ましい。
【0045】
式(1)中、R2は、置換基を有してもよいアルキレン基である。アルキレン基が有していてもよい置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。アルキレン基が有していてもよい置換基の具体例としては、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、及びハロゲン原子等が挙げられる。アルキレン基は、直鎖アルキレン基であっても、分岐鎖アルキレン基であってもよく、直鎖アルキレン基が好ましい。アルキレン基の炭素原子数は特に限定されないが、1以上20以下が好ましく、1以上10以下が好ましく、1以上5以下がより好ましい。なお、アルキレン基の炭素原子数には、アルキレン基に結合する置換基の炭素原子を含まない。
【0046】
アルキレン基に結合する置換基としてのアルコキシ基は、直鎖アルコキシ基であっても、分岐鎖アルコキシ基であってもよい。置換基としてのアルコキシ基の炭素原子数は特に限定されないが、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましく、1以上3以下が特に好ましい。
【0047】
アルキレン基に結合する置換基としてのアミノ基は、モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基であってもよい。モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基に含まれるアルキル基は、直鎖アルキル基であっても分岐鎖アルキル基であってもよい。モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基に含まれるアルキル基の炭素原子数は特に限定されないが、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましく、1以上3以下が特に好ましい。
【0048】
R2として好適なアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、n-プロパン-1,3-ジイル基、n-プロパン-2,2-ジイル基、n-ブタン-1,4-ジイル基、n-ペンタン-1,5-ジイル基、n-ヘキサン-1,6-ジイル基、n-ヘプタン-1,7-ジイル基、n-オクタン-1,8-ジイル基、n-ノナン-1,9-ジイル基、n-デカン-1,10-ジイル基、n-ウンデカン-1,11-ジイル基、n-ドデカン-1,12-ジイル基、n-トリデカン-1,13-ジイル基、n-テトラデカン-1,14-ジイル基、n-ペンタデカン-1,15-ジイル基、n-ヘキサデカン-1,16-ジイル基、n-ヘプタデカン-1,17-ジイル基、n-オクタデカン-1,18-ジイル基、n-ノナデカン-1,19-ジイル基、及びn-イコサン-1,20-ジイル基が挙げられる。
【0049】
R3は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホン酸エステル基、又は有機基である。nは0以上3以下の整数である。nが2以上3以下の整数である場合、複数のR3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0050】
R3が有機基である場合、当該有機基は、R1について、芳香族基が置換基として有していてもよい有機基と同様である。
【0051】
R3が有機基である場合、有機基としては、アルキル基、芳香族炭化水素基、及び芳香族複素環基が好ましい。アルキル基としては、炭素原子数1以上8以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びイソプロピル基がより好ましい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アンスリル基、及びフェナンスレニル基が好ましく、フェニル基、及びナフチル基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。芳香族複素環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、及びベンゾイミダゾリル基が好ましく、フリル基、及びチエニル基がより好ましい。
【0052】
R3がアルキル基である場合、アルキル基のイミダゾール環上での結合位置は、2位、4位、5位のいずれも好ましく、2位がより好ましい。R3が芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基である場合、これらの基のイミダゾール上での結合位置は、2位が好ましい。
【0053】
上記式(1)で表される化合物の中では、安価且つ容易に合成可能であり、水や有機溶剤に対する溶解性に優れる点から、下記式(1-1)で表される化合物が好ましく、式(1-1)で表され、R2がメチレン基である化合物がより好ましい。
【0054】
【化7】
(式(1-1)中、X、R
2、R
3、m及びnは、式(1)と同義であり、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホン酸エステル基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基であり、ただし、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8のうち少なくとも1つは水素原子以外の基である。R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8のうち少なくとも2つが結合して環状構造を形成してもよい。R
2はR
6と結合して環状構造を形成してもよい。)
【0055】
R4、R5、R6、R7、及びR8が有機基である場合、当該有機基は、式(1)におけるR1が置換基として有する有機基と同様である。R4、R5、R6、及びR7は、上記化合物の溶媒に対する溶解性の点から水素原子であるのが好ましい。
【0056】
中でも、R4、R5、R6、R7、及びR8のうち少なくとも1つは、下記置換基であることが好ましく、R8が下記置換基であるのが特に好ましい。R8が下記置換基である場合、R4、R5、R6、及びR7は水素原子であるのが好ましい。
-O-R9
(R9は水素原子又は有機基である。)
【0057】
R9が有機基である場合、当該有機基は、式(1)におけるR1が置換基として有する有機基と同様である。R9としては、アルキル基が好ましく、炭素原子数1以上8以下のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0058】
上記式(1-1)で表される化合物の中では、下記式(1-1-1)で表される化合物が好ましい。
【化8】
(式(1-1-1)において、X、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8、m及びnは、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8のうち少なくとも1つが水素原子以外の基であること以外は、式(1)と同義である。)
【0059】
式(1-1-1)で表される化合物の中でも、R4、R5、R6、R7、及びR8のうち少なくとも1つが、前述の-O-R9で表される基であることが好ましく、R8が-O-R9で表される基であるのが特に好ましい。R8が-O-R9で表される基である場合、R4、R5、R6、及びR7は水素原子であることが好ましい。
【0060】
式(1)で表される化合物の好適な具体例としては、以下のものが挙げられる。
【化9】
【化10】
【化11】
【0061】
(上記式(1)で表される化合物の製造方法)
上記式(1)で表される化合物の製造方法としては特に制限はない。例えば、下記式(10)で表される化合物と、m価の対カチオンX
m+を形成し得る塩基とを溶媒中若しくは非溶媒中にて中和反応させることにより上記式(1)で表される化合物を製造することができる。
【化12】
(式(10)中、R
1、R
2、R
3及びnは、式(1)と同義であり、具体例及び好ましい例も同様である。)
【0062】
m価の対カチオンXm+を形成し得る塩基としては、非環式若しくは環式の含窒素脂肪族化合物、含窒素芳香族化合物又は金属原子若しくは上記金属原子を含む原子団であることが好ましい。
m価の対カチオンXm+を形成し得る塩基としては、上記式(2)~(4)のいずれかで表される非環式若しくは環式の含窒素脂肪族カチオン、上記式(5)~(13)のいずれかで表される含窒素芳香族カチオン、上記式(14)~(16)のいずれかで表される含窒素脂肪族カチオン、又は典型金属元素、遷移金属元素及び半金属元素からなる群より選択される金属原子のカチオン若しくは上記金属原子を含む原子団のカチオンを形成し得る塩基であることがより好ましい。
【0063】
上記式(10)で表される化合物と、上記塩基とを溶媒中にて中和反応させる方法としては、加熱下ないし非加熱下において、例えば、極性溶媒中、上記式(10)で表される化合物と、上記塩基とを混合する方法等が挙げられる。
上記極性溶媒としては、アルコールが挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t-ブタノール等が挙げられる。
加熱下(例えば、40℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上)において、上記式(10)で表される化合物と、上記塩基とを上記溶媒に溶解して混合することができる。
加熱時の温度の上限としては特に制限はないが、上記溶媒の沸点以下であることが好ましい。
非加熱下、上記式(10)で表される化合物又は上記塩基が溶媒に溶解し難い場合であっても、中和反応及び塩形成が進行するに従い溶媒への溶解性も進行し得る。
【0064】
上記式(10)で表される化合物と、上記塩基とを非溶媒中にて中和反応させる方法としては、例えば、常温において、個体である上記式(10)で表される化合物と、個体若しくは液体である上記塩基とを、乳鉢等を用いて粉砕ないしすりつぶしながら混合する方法等が挙げられる。
【0065】
また、上記式(10)で表される化合物と上記塩基との割合(モル比)としては特に制限はないが、式(10)で表される化合物のモル数をM1とし、m価の対カチオンXm+を与える上記塩基のモル数をM2とする場合に、M1/(M2/m)の値として、20/80~80/20であることが好ましく、30/70~70/30であることがより好ましい。
【0066】
また、Xm+がナトリウムカチオン、カリウムカチオンである上記式(1)で表される化合物と、ナトリウムカチオン及びカリウムカチオン以外のm価の対カチオンXm+を形成し得る塩基とを混合して塩交換を行うことにより、Xm+がナトリウムカチオン及びカリウムカチオン以外の上記式(1)で表される化合物を製造することもできる。
【0067】
≪水素バリア膜形成用組成物≫
水素バリア膜形成用組成物は、基材成分(A)と、前述の水素バリア剤(B)とを含む。以下、水素バリア膜形成用組成物に含まれる得る成分と、水素バリア膜形成用組成物として好適な組成物とについて説明する。
【0068】
<基材成分(A)>
基材成分(A)は、水素バリア膜形成用組成物に、そのままで溶融加工法等の周知の方法で所望する形状の膜を製造可能な製膜性か、露光、加熱、水との反応等の処理により所望する形状の膜を製造可能な製膜性を付与する成分である。
基材成分(A)は、水素バリア膜形成用組成物に所望する製膜性を与えることができる材料であれば特に限定されない。
基材成分(A)としては、典型的には高分子化合物からなる樹脂材料、加熱により架橋して高分子化合物を生じたり、加熱により分子内環化等の化学変性が生じたりすることにより硬化する熱硬化性材料、露光により硬化し得る光重合性の化合物、組成物中や雰囲気中の水分により加水分縮合する加水分解縮合性のシラン化合物等が用いられる。
加水分解縮合性のシラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物等が挙げられる。加水分解縮合性シラン化合物は、これらのシラン化合物の部分加水分解縮合物であってもよい。
【0069】
〔樹脂材料〕
基材成分(A)のうち、樹脂材料の例としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等)、FR-AS樹脂、FR-ABS樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミドビスマレイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾチアゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、シリコーン樹脂、BT樹脂、ポリメチルペンテン、超高分子量ポリエチレン、FR-ポリプロピレン、(メタ)アクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート等)、及びポリスチレン等が挙げられる。
【0070】
樹脂材料を基材成分(A)として用いる場合、樹脂材料に対して、前述の水素バリア剤(B)が所定量配合された樹脂材料を、従来知られる製膜方法から所望する方法を採用して膜形成することにより水素バリア膜が製造される。
製膜方法としては、Tダイ法(キャスト法)、インフレーション法、プレス法等の溶融加工法や、溶液を用いるキャスト法等が挙げられる。
キャスト法では、樹脂材料と水素バリア剤(B)とを含む溶液を基板上に塗布又は流涎して溶液からなる膜を形成した後、当該膜から加熱等の方法により溶媒を除去して水素バリア膜が形成される。
樹脂材料を用いて得られた水素バリア膜には、必要に応じて一軸延伸や二軸延伸等の延伸処理が施されてもよい。
【0071】
基材成分(A)として上記の樹脂材料を用いる場合、水素バリア膜形成用組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、離型剤、可塑剤、充填材、及び強化材等の添加剤や強化材を含んでいてもよい。
また、水素バリア膜形成用組成物がキャスト用の組成物である場合、水素バリア膜形成用組成物は溶剤を含んでいてもよい。溶剤の種類は、樹脂材料の種類に応じて、適宜選択される。
【0072】
水素バリア膜形成用組成物が、上記の樹脂材料と、水素バリア剤(B)とを含む場合、水素バリア剤の含有量は、水素バリア膜形成用組成物の樹脂材料の質量に対して、0.01質量%以上30質量%以下が好ましく、0.05質量%以上20質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上10質量%以下が特に好ましい。
【0073】
〔熱硬化性材料〕
熱硬化性材料としては、従来から広く用いられている種々の熱硬化性樹脂の前駆体材料が挙げられる。熱硬化性樹脂の具体例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂等が挙げられる。
【0074】
また、加熱により、分子内での芳香環形成反応、及び/又は分子間での架橋反応を生じさせる樹脂も熱硬化性材料として好適に使用される。以下、加熱により、分子内での芳香環形成反応、及び/又は分子間での架橋反応を生じさせる樹脂を、前駆体樹脂とも称する。
【0075】
これらの中では、耐熱性、耐化学薬品性、機械的特性等に優れる水素バリア膜を特に形成しやすいことから、エポキシ樹脂前駆体と、前駆体樹脂とが特に好ましい。
以下、熱硬化性材料について、基材成分(A)として特に好適な前駆体材料について説明する。
【0076】
(エポキシ樹脂前駆体)
エポキシ樹脂前駆体としては、従来から広く知られる種々のエポキシ化合物を用いることができる。かかるエポキシ化合物の分子量は特に限定されない。エポキシ化合物の中では、耐熱性、耐化学薬品性、機械的特性等に優れる水素バリア膜を形成しやすいことから、分子内に2以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物が好ましい。エポキシ樹脂前駆体は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0077】
多官能エポキシ化合物は、2官能以上のエポキシ化合物であれば特に限定されない。多官能エポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂;ダイマー酸グリシジルエステル、及びトリグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、及びテトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;1,3-ジグリシジル-5-メチル-5-エチルヒダントイン等のヒダントイン型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂;フロログリシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、及び1,3-ビス[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]-2-プロパノール等の3官能型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、及びテトラグリシドキシビフェニル等の4官能型エポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ化合物はハロゲン化されていてもよく、水素添加されていてもよい。
【0078】
市販されている多官能エポキシ化合物としては、例えばジャパンエポキシレジン社製のJERコート828、1001、801N、806、807、152、604、630、871、YX8000、YX8034、YX4000、DIC社製のエピクロン830、EXA835LV、HP4032D、HP820、株式会社ADEKA製のEP4100シリーズ、EP4000シリーズ、EPUシリーズ、ダイセル社製のセロキサイドシリーズ(2021、2021P、2083、2085、3000等)、エポリードシリーズ、EHPEシリーズ、新日鐵化学社製のYDシリーズ、YDFシリーズ、YDCNシリーズ、YDBシリーズ、フェノキシ樹脂(ビスフェノール類とエピクロルヒドリンより合成されるポリヒドロキシポリエーテルで両末端にエポキシ基を有する;YPシリーズ等)、ナガセケムテックス社製のデナコールシリーズ、共栄社化学社製のエポライトシリーズ等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0079】
また、脂環式エポキシ化合物も、高硬度の硬化物を与える点で多官能エポキシ化合物として好ましい。脂環式エポキシ化合物の具体例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β-メチル-δ-バレロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、及びエポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、トリシクロデセンオキサイド基を有するエポキシ樹脂や、下記式(a01-1)~(a01-5)で表される化合物が挙げられる。
【0080】
これらの脂環式エポキシ化合物の具体例の中では、高硬度の硬化物を与えることから、下記式(a01-1)~(a01-5)で表される脂環式エポキシ化合物が好ましい。
【化13】
(式(a01-1)中、Z
01は単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。R
a01~R
a018は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0081】
連結基Z01としては、例えば、2価の炭化水素基、-O-、-O-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、-CBr2-、-C(CBr3)2-、-C(CF3)2-、及び-Ra019-O-CO-からなる群より選択される2価の基及びこれらが複数個結合した基等を挙げることができる。
【0082】
連結基Zである二価の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数が1以上18以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等を挙げることができる。炭素原子数が1以上18以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基等を挙げることができる。上記二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等を挙げることができる。
【0083】
Ra019は、炭素原子数1以上8以下のアルキレン基であり、メチレン基又はエチレン基であるのが好ましい。
【0084】
【0085】
(式(a01-2)中、Ra01~Ra012は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0086】
【化15】
(式(a01-3)中、R
a01~R
a010は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。R
a02及びR
a08は、互いに結合してもよい。)
【0087】
【化16】
(式(a01-4)中、R
a01~R
a012は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。R
a02及びR
a010は、互いに結合してもよい。)
【0088】
【化17】
(式(a01-5)中、R
a01~R
a012は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0089】
式(a01-1)~(a01-5)中、Ra01~Ra018が有機基である場合、有機基は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、炭化水素基であっても、炭素原子とハロゲン原子とからなる基であっても、炭素原子及び水素原子とともにハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子のようなヘテロ原子を含むような基であってもよい。ハロゲン原子の例としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びフッ素原子等が挙げられる。
【0090】
有機基としては、炭化水素基と、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基と、ハロゲン化炭化水素基と、炭素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基と、炭素原子、水素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基とが好ましい。有機基が炭化水素基である場合、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でも、脂肪族炭化水素基でも、芳香族骨格と脂肪族骨格とを含む基でもよい。有機基の炭素原子数は1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上5以下が特に好ましい。
【0091】
炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、及びn-イコシル基等の鎖状アルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-n-プロペニル基(アリル基)、1-n-ブテニル基、2-n-ブテニル基、及び3-n-ブテニル基等の鎖状アルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、ビフェニル-4-イル基、ビフェニル-3-イル基、ビフェニル-2-イル基、アントリル基、及びフェナントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、α-ナフチルエチル基、及びβ-ナフチルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0092】
ハロゲン化炭化水素基の具体例は、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、及びパーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、及びパーフルオロデシル基等のハロゲン化鎖状アルキル基;2-クロロシクロヘキシル基、3-クロロシクロヘキシル基、4-クロロシクロヘキシル基、2,4-ジクロロシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、3-ブロモシクロヘキシル基、及び4-ブロモシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、2,3-ジクロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、2,5-ジクロロフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、3,4-ジクロロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、2-ブロモフェニル基、3-ブロモフェニル基、4-ブロモフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基等のハロゲン化アリール基;2-クロロフェニルメチル基、3-クロロフェニルメチル基、4-クロロフェニルメチル基、2-ブロモフェニルメチル基、3-ブロモフェニルメチル基、4-ブロモフェニルメチル基、2-フルオロフェニルメチル基、3-フルオロフェニルメチル基、4-フルオロフェニルメチル基等のハロゲン化アラルキル基である。
【0093】
炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基の具体例は、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシ-n-プロピル基、及び4-ヒドロキシ-n-ブチル基等のヒドロキシ鎖状アルキル基;2-ヒドロキシシクロヘキシル基、3-ヒドロキシシクロヘキシル基、及び4-ヒドロキシシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2-ヒドロキシフェニル基、3-ヒドロキシフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、2,3-ジヒドロキシフェニル基、2,4-ジヒドロキシフェニル基、2,5-ジヒドロキシフェニル基、2,6-ジヒドロキシフェニル基、3,4-ジヒドロキシフェニル基、及び3,5-ジヒドロキシフェニル基等のヒドロキシアリール基;2-ヒドロキシフェニルメチル基、3-ヒドロキシフェニルメチル基、及び4-ヒドロキシフェニルメチル基等のヒドロキシアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-ヘプタデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基、n-ノナデシルオキシ基、及びn-イコシルオキシ基等の鎖状アルコキシ基;ビニルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、2-n-プロペニルオキシ基(アリルオキシ基)、1-n-ブテニルオキシ基、2-n-ブテニルオキシ基、及び3-n-ブテニルオキシ基等の鎖状アルケニルオキシ基;フェノキシ基、o-トリルオキシ基、m-トリルオキシ基、p-トリルオキシ基、α-ナフチルオキシ基、β-ナフチルオキシ基、ビフェニル-4-イルオキシ基、ビフェニル-3-イルオキシ基、ビフェニル-2-イルオキシ基、アントリルオキシ基、及びフェナントリルオキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、α-ナフチルメチルオキシ基、β-ナフチルメチルオキシ基、α-ナフチルエチルオキシ基、及びβ-ナフチルエチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、n-プロポキシメチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-n-プロポキシエチル基、3-メトキシ-n-プロピル基、3-エトキシ-n-プロピル基、3-n-プロポキシ-n-プロピル基、4-メトキシ-n-ブチル基、4-エトキシ-n-ブチル基、及び4-n-プロポキシ-n-ブチル基等のアルコキシアルキル基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、n-プロポキシメトキシ基、2-メトキシエトキシ基、2-エトキシエトキシ基、2-n-プロポキシエトキシ基、3-メトキシ-n-プロポキシ基、3-エトキシ-n-プロポキシ基、3-n-プロポキシ-n-プロポキシ基、4-メトキシ-n-ブチルオキシ基、4-エトキシ-n-ブチルオキシ基、及び4-n-プロポキシ-n-ブチルオキシ基等のアルコキシアルコキシ基;2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、及び4-メトキシフェニル基等のアルコキシアリール基;2-メトキシフェノキシ基、3-メトキシフェノキシ基、及び4-メトキシフェノキシ基等のアルコキシアリールオキシ基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、及びデカノイル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基、α-ナフトイル基、及びβ-ナフトイル基等の芳香族アシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、n-ブチルオキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、及びn-デシルオキシカルボニル基等の鎖状アルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、α-ナフトキシカルボニル基、及びβ-ナフトキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、及びデカノイルオキシ基等の脂肪族アシルオキシ基;ベンゾイルオキシ基、α-ナフトイルオキシ基、及びβ-ナフトイルオキシ基等の芳香族アシルオキシ基である。
【0094】
Ra01~Ra018は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上5以下のアルコキシ基からなる群より選択される基が好ましく、特に機械的特性に優れる硬化膜を形成しやすいことから、Ra01~Ra018が全て水素原子であるのがより好ましい。
【0095】
式(a01-2)~(a01-5)中、Ra01~Ra012は、式(a01-1)におけるRa01~Ra012と同様である。式(a01-2)及び式(a01-4)において、Ra02及びRa010が、互いに結合する場合に形成される2価の基としては、例えば、-CH2-、-C(CH3)2-が挙げられる。式(a01-3)において、Ra02及びRa08が、互いに結合する場合に形成される2価の基としては、例えば、-CH2-、-C(CH3)2-が挙げられる。
【0096】
式(a01-1)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、下記式(a01-1a)、式(a01-1b)、及び式(a01-1c)で表される脂環式エポキシ化合物や、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)プロパン[=2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン]等を挙げることができる。
【化18】
【0097】
式(a01-2)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、下記式(a01-2a)で表されるビシクロノナジエンジエポキシド、又はジシクロノナジエンジエポキシド等が挙げられる。
【化19】
【0098】
式(a01-3)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、Sスピロ[3-オキサトリシクロ[3.2.1.02,4]オクタン-6,2’-オキシラン]等が挙げられる。
【0099】
式(a01-4)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、4-ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジペンテンジオキシド、リモネンジオキシド、1-メチルー4-(3-メチルオキシラン-2-イル)-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン等が挙げられる。
【0100】
式(a01-5)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、1,2,5,6-ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0101】
[前駆体樹脂]
基材成分(A)としては、加熱により、分子内での芳香環形成反応、及び/又は分子間での架橋反応を生じさせる樹脂である前駆体樹脂が好ましい。
【0102】
分子内での芳香環形成反応によれば、樹脂を構成する分子鎖の構造が剛直化し、耐熱性及び機械的特性に優れる水素バリア膜を形成できる。分子内での芳香環形成反応のうち好ましい反応としては、例えば、下式(I)~(VI)で示される反応が挙げられる。なお、下式中の反応は芳香環形成反応の一例にすぎず、基材成分(A)として使用される、加熱により分子内での芳香環形成反応を生じさせる樹脂の構造は、下式中に示される前駆体ポリマーの構造に限定されない。
【0103】
【0104】
(分子中に、水酸基、カルボン酸無水物基、カルボキシ基、及びエポキシ基から選択される基を有する樹脂)
分子間での架橋反応によれば、樹脂を構成する分子鎖が相互に架橋され、三次元架橋構造が形成される。このため、加熱により架橋反応を生じさせる、分子中に、水酸基、カルボン酸無水物基、カルボキシ基、及びエポキシ基から選択される基を有する樹脂を基材成分(A)として用いると、耐熱性及び機械的特性に優れる水素バリア膜が得られる。
【0105】
水酸基を有する樹脂を用いる場合、脱水縮合剤の作用により、樹脂に含まれる分子間に水酸基間の脱水縮合による架橋が生じる。また、水酸基は、活性水素原子を含み反応性に富むため、種々の架橋剤と反応することで、架橋された樹脂を含む硬化物を与える。
【0106】
カルボン酸無水物基を有する樹脂を用いる場合、酸無水物基の加水分解により生じるカルボキシ基同士が、脱水縮合剤の作用によって脱水縮合して架橋する。また、酸無水物基自体も反応性に富むため、例えば、2以上の水酸基を有するポリオール、2以上のアミノ基を有するポリアミン等の架橋剤を用いることにより、架橋された樹脂を含む硬化物を与える。
【0107】
カルボキシ基を有する樹脂を用いる場合、脱水縮合剤の作用によって、樹脂に含まれる分子間にカルボキシ基間の脱水縮合による架橋が生じる。また、イソシアネート基のようにカルボキシ基と反応し得る官能基を有する架橋剤を用いて、架橋されることも可能である。
【0108】
エポキシ基を有する樹脂を用いる場合、必要に応じて周知の硬化促進剤等を用いることにより、樹脂に含まれる分子間にエポキシ基間の重付加反応による架橋が生じる。
【0109】
分子中に水酸基を有する樹脂としては、例えばノボラック樹脂が挙げられる。ノボラック樹脂としては、特に限定されないが、フェノール類1モルに対して、ホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒド等の縮合剤を0.5モル以上1.0モル以下の割合で、酸性触媒下で縮合反応させることにより得られる樹脂が好ましい。
【0110】
フェノール類としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等のクレゾール類;2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等のキシレノール類;o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール等のエチルフェノール類、2-イソプロピルフェノール、3-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、o-ブチルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール等のアルキルフェノール類;2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール等のトリアルキルフェノール類;レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール等の多価フェノール類;アルキルレゾルシン、アルキルカテコール、アルキルキルハイドロキノン等のアルキル多価フェノール類(アルキル多価フェノール類に含まれるアルキル基の炭素原子数は1以上4以下である)、α-ナフトール、β-ナフトール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA等が挙げられる。これらのフェノール類は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0111】
フェノール類の中でも、m-クレゾール及びp-クレゾールが好ましく、m-クレゾールとp-クレゾールとを併用することがより好ましい。両者の配合比率を調整することによって、フォトレジストとしての感度、耐熱性等の諸特性を調節することができる。m-クレゾールとp-クレゾールの配合比率は特に限定されないが、m-クレゾール/p-クレゾール=3/7以上8/2以下(質量比)が好ましい。m-クレゾールの比率が上記下限値未満になると感度が低下する場合があり、上記上限値を超えると耐熱性が低下する場合がある。
【0112】
ノボラック樹脂の製造に使用される酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜リン酸等の無機酸類、蟻酸、シュウ酸、酢酸、ジエチル硫酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸類、酢酸亜鉛等の金属塩類等が挙げられる。これらの酸性触媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0113】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算によるノボラック樹脂の質量平均分子量は、1000以上50000以下が好ましい。
【0114】
分子中にカルボン酸無水物基を有する樹脂としては、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、及びイタコン酸無水物から選択される1種以上の単量体を含む、不飽和二重結合を有する単量体の混合物を重合させて得られる共重合体が好ましい。このような重合体としては、スチレン-マレイン酸共重合体が好ましい。
【0115】
分子中にカルボキシ基を有する樹脂としては、前述の分子中にカルボン酸無水物基を有する樹脂中の酸無水物基を加水分解して得られる樹脂や、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、及びイタコン酸から選択される1種以上の単量体を含む、不飽和二重結合を有する単量体の混合物を重合させて得られる共重合体が好ましい。
【0116】
分子中にエポキシ基を有するエポキシ基含有樹脂については、詳細に後述する。
【0117】
このような加熱により分子内での芳香環形成反応や、分子間での架橋反応を生じさせる化合物の中では、耐熱性に優れる水素バリア膜を形成しやすいことから、ポリアミック酸、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリベンゾチアゾール前駆体、ポリベンゾイミダゾール前駆体、スチレン-マレイン酸共重合体、及びエポキシ基含有樹脂が好ましい。以下、これらの樹脂について説明する。
【0118】
〔スチレン-マレイン酸共重合体〕
スチレン-マレイン酸共重合体の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。スチレン-マレイン酸共重合体における、スチレン/マレイン酸の共重合比率(質量比)は、1/9以上9/1以下が好ましく、2/8以上8/1以下がより好ましく、1/1以上8/1以下が特に好ましい。スチレン-マレイン酸共重合体の分子量は特に限定されないが、ポリスチレン換算の質量平均分子量として、1000以上100000以下であるのが好ましく、5000以上12000以下であるのがより好ましい。
【0119】
〔エポキシ基含有樹脂〕
エポキシ基含有樹脂を基材成分(A)として用いると、必要に応じて硬化剤や硬化促進剤の存在下に加熱することで、エポキシ基含有樹脂が有するエポキシ基同士が架橋される。その結果、耐熱性や機械的特性に優れる硬化物が得られる。エポキシ基含有樹脂は、エポキシ基を有する分子から構成される樹脂であれば特に限定されない。
【0120】
エポキシ基含有樹脂は、エポキシ基を有する単量体又はエポキシ基を有する単量体を含む単量体混合物を重合させて得られる重合体であってもよい。エポキシ基含有樹脂は、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等の反応性を有する官能基を有する重合体に対して、例えばエピクロルヒドリンのようなエポキシ基を有する化合物を用いてエポキシ基を導入したものであってもよい。入手、調製、重合体中のエポキシ基の量の調整等が容易であることから、エポキシ基を有する重合体としては、エポキシ基を有する単量体又はエポキシ基を有する単量体を含む単量体混合物を重合させて得られる重合体が好ましい。
【0121】
エポキシ基含有樹脂の好ましい一例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、及びビスフェノールADノボラック型エポキシ樹脂等のノボラックエポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の環式脂肪族エポキシ樹脂;ナフタレン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の芳香族エポキシ樹脂が挙げられる。
【0122】
また、エポキシ基含有樹脂の中では、調製が容易であったり、水素バリア膜の物性の調整が容易であったりすることから、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体か、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体が好ましい。
【0123】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、鎖状脂肪族エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであっても、後述するような、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。また、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、芳香族基を含んでいてもよい。エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの中では、鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルや、脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルがより好ましく、パターニング特性の観点では、脂環式エポキシ基における環構造に多環式構造を含む脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルがさらに好ましい。
【0124】
芳香族基を含み、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、4-グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、2-グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、4-グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート、及び2-グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0125】
鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの例としては、エポキシアルキル(メタ)アクリレート、及びエポキシアルキルオキシアルキル(メタ)アクリレート等のような、エステル基(-O-CO-)中のオキシ基(-O-)に鎖状脂肪族エポキシ基が結合する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。このような(メタ)アクリル酸エステルが有する鎖状脂肪族エポキシ基は、鎖中に1又は複数のオキシ基(-O-)を含んでいてもよい。鎖状脂肪族エポキシ基の炭素原子数は、特に限定されないが、3以上20以下が好ましく、3以上15以下がより好ましく、3以上10以下が特に好ましい。
【0126】
鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート等のエポキシアルキル(メタ)アクリレート;2-グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシ-n-プロピル(メタ)アクリレート、4-グリシジルオキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、5-グリシジルオキシ-n-ヘキシル(メタ)アクリレート、6-グリシジルオキシ-n-ヘキシル(メタ)アクリレート等のエポキシアルキルオキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0127】
脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば下記式(a05-1)~(a05-15)で表される化合物が挙げられる。これらの中でも、下記式(a05-1)~(a05-5)で表される化合物が好ましく、下記式(a05-1)~(a05-2)で表される化合物がより好ましい。また、これら各化合物に関し、脂環に対するエステル基の酸素原子の結合部位はここで示されている位置に限られず、一部位置異性体を含んでいてもよい。
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
上記式中、Ra032は水素原子又はメチル基を示し、Ra033は炭素原子数1以上6以下の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Ra034は炭素原子数1以上10以下の2価の炭化水素基を示し、t0は0以上10以下の整数を示す。Ra033としては、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。Ra034としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基が好ましい。
【0132】
エポキシ基を有する重合体としては、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、及びエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体のいずれも用いることができるが、エポキシ基を有する重合体中の、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位の含有量は、例えば、1~100質量%であり、10質量%以上90質量%以下が好ましく、30質量%以上80質量%以下がより好ましく、50質量%以上75質量%以下が特に好ましい。
【0133】
エポキシ基を有する重合体が、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体である場合、他の単量体としては、不飽和カルボン酸、エポキシ基を持たない(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類等が挙げられる。これらの化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。水素バリア膜形成用組成物の保存安定性や、水素バリア膜形成用組成物を用いて形成される水素バリア膜のアルカリ等に対する耐薬品性の点からは、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体は、不飽和カルボン酸に由来する単位を含まないのが好ましい。
【0134】
不飽和カルボン酸の例としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸アミド;クロトン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、これらジカルボン酸の無水物が挙げられる。
【0135】
エポキシ基を持たない(メタ)アクリル酸エステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、t-オクチル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル(メタ)アクリレート;クロロエチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート;脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。エポキシ基を持たない(メタ)アクリル酸エステルの中では、脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0136】
脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルにおいて、脂環式骨格を構成する脂環式基は、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。
【0137】
脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば下記式(a06-1)~(a06-8)で表される化合物が挙げられる。これらの中では、下記式(a06-3)~(a06-8)で表される化合物が好ましく、下記式(a06-3)又は(a06-4)で表される化合物がより好ましい。
【0138】
【0139】
【0140】
上記式中、Ra035は水素原子又はメチル基を示し、Ra036は単結合又は炭素原子数1以上6以下の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Ra037は水素原子又は炭素原子数1以上5以下のアルキル基を示す。Ra036としては、単結合、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。Ra037としては、メチル基、エチル基が好ましい。
【0141】
(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N-アリール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-アリール(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0142】
アリル化合物の例としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール;等が挙げられる。
【0143】
ビニルエーテル類の例としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1-メチル-2,2-ジメチルプロピルビニルエーテル、2-エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロロフェニルエーテル、ビニル-2,4-ジクロロフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;等が挙げられる。
【0144】
ビニルエステル類の例としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフエニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル-β-フェニルブチレート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ安息香酸ビニル、テトラクロロ安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
【0145】
スチレン類の例としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4-メトキシ-3-メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2-ブロモ-4-トリフルオロメチルスチレン、4-フルオロ-3-トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン;等が挙げられる。
【0146】
エポキシ基含有樹脂の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、ポリスチレン換算の質量平均分子量として、3,000以上30,000以下が好ましく、5,000以上15,000以下がより好ましい。
【0147】
基材成分(A)として上記の熱硬化性材料を用いる場合、水素バリア膜形成用組成物は、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、脱水縮合剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、離型剤、可塑剤、充填材、及び強化材等の添加剤や強化材を含んでいてもよい。
また、製膜を容易にするため、水素バリア膜形成用組成物は溶剤を含んでいてもよい。溶剤の種類は、熱硬化性材料の種類に応じて、適宜選択される。
【0148】
水素バリア膜形成用組成物が、上記の熱硬化性材料と、水素バリア剤(B)とを含む場合、水素バリア剤の含有量は、水素バリア膜形成用組成物の熱硬化性材料の質量に対して、0.01質量%以上30質量%以下が好ましく、0.05質量%以上20質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上10質量%以下が特に好ましい。
【0149】
水素バリア膜形成用組成物としては、以上説明した基材成分(A)を含む組成物以外に、所謂フォトレジスト組成物として知られる感光性組成物も好ましい。従来知られる種々の感光性組成物に、所定量の前述の水素バリア剤(B)を加えることにより、感光性の水素バリア膜形成用組成物が得られる。
従来知られる感光性組成物には、種々の光硬化性の化合物や、アルカリ可溶性樹脂、露光されることでアルカリに対する溶解性が高まる樹脂等が基材成分(A)として含まれる。
感光性の水素バリア膜形成用組成物は、露光により現像液に対して不溶化するネガ型の感光性組成物であってもよく、露光により現像液に対して可溶化するポジ型の感光性組成物であってもよい。
以下、好適な感光性組成物について説明する。
【0150】
(1)第1の態様の感光性組成物
第1の態様の感光性組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A1)、光重合性化合物(A2)、及び光重合開始剤(C)とともに、水素バリア剤(B)、及び有機溶剤を含有するネガ型感光性組成物である。
第1の態様の感光性組成物では、アルカリ可溶性樹脂(A1)と、光重合性化合物(A2)とが基材成分(A)に該当する。
【0151】
第1の態様の感光性組成物におけるアルカリ可溶性樹脂(A1)としては、特に限定されず、従来公知のアルカリ可溶性樹脂を用いることができる。このアルカリ可溶性樹脂(A1)は、エチレン性不飽和基を有してもよく、エチレン性不飽和基を有さなくてもよい。
なお、本明細書においてアルカリ可溶性樹脂とは、樹脂濃度20質量%の樹脂溶液(溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)により、膜厚1μmの樹脂膜を基板上に形成し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液に1分間浸漬した際に、膜厚0.01μm以上溶解する樹脂をいう。
【0152】
エチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂(A1)としては、例えば、エポキシ化合物と不飽和カルボン酸との反応物を、さらに多塩基酸無水物と反応させることにより得られる樹脂を用いることができる。
【0153】
その中でも、下記式(a-1)で表される樹脂が好ましい。この式(a-1)で表される樹脂は、それ自体が、光硬化性が高い点で好ましい。
【0154】
【0155】
上記式(a-1)中、Xaは、下記式(a-2)で表される基を示す。
【0156】
【0157】
上記式(a-2)中、Ra1は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1以上6以下の炭化水素基、又はハロゲン原子を示し、Ra2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Waは、単結合又は下記式(a-3)で表される基を示す。
【0158】
【0159】
また、上記式(a-1)中、Yaは、ジカルボン酸無水物から酸無水物基(-CO-O-CO-)を除いた残基を示す。ジカルボン酸無水物の例としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸等が挙げられる。
【0160】
また、上記式(a-1)中、Zaは、テトラカルボン酸二無水物から2個の酸無水物基を除いた残基を示す。テトラカルボン酸二無水物の例としては、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
また、上記式(a-1)中、mは、0以上20以下の整数を示す。
【0161】
また、エチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂(A1)としては、多価アルコール類と一塩基酸又は多塩基酸とを縮合して得られるポリエステルプレポリマーに(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオールと2個のイソシアネート基を持つ化合物とを反応させた後、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等を用いることもできる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸との両方を意味する。同様に、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとの両方を意味する。
【0162】
一方、エチレン性不飽和基を有さないアルカリ可溶性樹脂(A1)としては、不飽和カルボン酸と、他の不飽和化合物とを共重合させて得られる樹脂を用いることができる。他の不飽和化合物としては、エポキシ基含有不飽和化合物、及び脂環式基含有不飽和化合物から選択される少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0163】
不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸;これらジカルボン酸の無水物;等が挙げられる。これらの中でも、共重合反応性、得られる樹脂のアルカリ溶解性、入手の容易性等の点から、(メタ)アクリル酸及び無水マレイン酸が好ましい。これらの不飽和カルボン酸は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0164】
エポキシ基含有不飽和化合物としては、脂環式基を有さないエポキシ基含有不飽和化合物と、脂環式基を有するエポキシ基含有不飽和化合物とが挙げられる。
脂環式基を有するエポキシ基含有不飽和化合物としては、前述の式(a05-1)~(a05-15)で表される化合物が挙げられる。
脂環式基を有さないエポキシ基含有不飽和化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート等のエポキシアルキル(メタ)アクリレート;2-グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシ-n-プロピル(メタ)アクリレート、4-グリシジルオキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、5-グリシジルオキシ-n-ペンチル(メタ)アクリレート、6-グリシジルオキシ-n-ヘキシル(メタ)アクリレート等のエポキシアルキルオキシアルキル(メタ)アクリレート;α-エチルアクリル酸グリシジル、α-n-プロピルアクリル酸グリシジル、α-n-ブチルアクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸6,7-エポキシヘプチル等のα-アルキルアクリル酸エポキシアルキルエステル類;o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類;等が挙げられる。これらの中でも、共重合反応性、硬化後の樹脂の強度等の点から、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、及びp-ビニルベンジルグリシジルエーテルが好ましい。
これらのエポキシ基含有不飽和化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0165】
脂環式基含有不飽和化合物としては、脂環式基を有する不飽和化合物であれば特に限定されない。脂環式基は、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。具体的に、脂環式基含有不飽和化合物としては、例えば前述の式(a06-1)~(a06-8)で表される化合物が挙げられる。
【0166】
不飽和カルボン酸に対して、上記以外の他の化合物をさらに重合させるのも好ましい。このような他の化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類、マレイミド類等が挙げられる。これらの化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0167】
(メタ)アクリル酸エステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、t-オクチル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル(メタ)アクリレート;クロロエチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0168】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N-アリール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-アリール(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0169】
アリル化合物としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール;等が挙げられる。
【0170】
ビニルエーテル類としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1-メチル-2,2-ジメチルプロピルビニルエーテル、2-エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロルフェニルエーテル、ビニル-2,4-ジクロルフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;等が挙げられる。
【0171】
ビニルエステル類としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニルジクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフエニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル-β-フェニルブチレート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロル安息香酸ビニル、テトラクロル安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
【0172】
スチレン類としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4-メトキシ-3-メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2-ブロモ-4-トリフルオロメチルスチレン、4-フルオロ-3-トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン;等が挙げられる。
【0173】
マレイミド類としては、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-n-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-n-ブチルマレイミド、N-n-ペンチルマレイミド、N-n-ヘキシルマレイミド等の炭素原子数1以上10以下のアルキル基でN置換されたマレイミド;N-シクロペンチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-シクロヘプチルマレイミド等の炭素原子数3以上20以下の脂環式基でN置換されたマレイミド:N-フェニルマレイミド、N-α-ナフチルマレイミド、N-β-ナフチルマレイミド等の炭素原子数6以上20以下のアリール基でN置換されたN-アリールマレイミド;N-ベンジルマレイミド、N-フェネチルマレイミド等の炭素原子数7以上20以下のアラルキル基でN置換されたN-アラルキルマレイミドが挙げられる。
【0174】
また、不飽和カルボン酸に由来する構成単位とともに、後述する光重合性化合物(A2)との重合可能部位を有する構成単位とを少なくとも有する共重合体、又は不飽和カルボン酸に由来する構成単位と、エポキシ基含有不飽和化合物に由来する構成単位と、後述する光重合性化合物(A2)との重合可能部位を有する構成単位とを少なくとも有する共重合体も、アルカリ可溶性樹脂(A1)として好適に使用することができる。
これらのアルカリ可溶性樹脂を用いる場合、機械的に強度に優れ、基板への密着性に優れる水素バリア膜を形成することができる。
【0175】
上記の光重合性化合物(A2)との重合可能部位を有する構成単位を有する共重合体は、上述の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類、及びマレイミド類等に由来する1種以上の構成単位をさらに有していてもよい。
【0176】
光重合性化合物(A2)との重合可能部位を有する構成単位は、光重合性化合物(A2)との重合可能部位としてエチレン性不飽和基を有するのが好ましい。このような構成単位を有する共重合体は、不飽和カルボン酸の単独重合体に含まれるカルボキシ基の少なくとも一部と、エポキシ基含有不飽和化合物とを反応させることにより、調製することができる。
また、不飽和カルボン酸に由来する構成単位と、エポキシ基含有不飽和化合物に由来する構成単位とを有する共重合体におけるエポキシ基の少なくとも一部と、不飽和カルボン酸とを反応させることでも、光重合性化合物(A2)との重合可能部位を有する構成単位を有する共重合体を調製することができる。
【0177】
このアルカリ可溶性樹脂(A1)中における上記不飽和カルボン酸に由来する構成単位の割合は、3質量%以上25質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。また、上記エポキシ基含有不飽和化合物に由来する構成単位の割合は、30質量%以上95質量%以下であることが好ましく、50質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。また、上記脂環式基含有不飽和化合物に由来する構成単位の割合は、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。上記の範囲とすることにより、得られる樹脂のアルカリ溶解性を適度なものとしながら、感光性組成物の基板への密着性、感光性組成物の硬化後の強度を高めることができる。
【0178】
アルカリ可溶性樹脂(A1)の質量平均分子量は、1000以上40000以下であることが好ましく、2000以上30000以下であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、良好な現像性を得ながら、十分な耐熱性、膜強度を得ることができる。
【0179】
アルカリ可溶性樹脂(A1)の含有量は、第1の態様の感光性組成物の固形分に対して5質量%以上80質量%以下であることが好ましく、15質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、現像性のバランスがとりやすい傾向がある。
【0180】
第1の態様の感光性組成物における光重合性化合物(A2)としては、単官能モノマーと多官能モノマーとがある。
単官能モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、tert-ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0181】
一方、多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN-メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能モノマーや、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらの多官能モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0182】
光重合性化合物(A2)の含有量は、第1の態様の感光性組成物の固形分に対して1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、感度、現像性、解像性のバランスがとりやすい傾向がある。
【0183】
第1の態様の感光性組成物における光重合開始剤(C)としては、特に限定されず、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0184】
光重合開始剤(C)として具体的には、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾル-3-イル],1-(O-アセチルオキシム)、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)[4-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルフェニル]メタノンO-アセチルオキシム、2-(ベンゾイルオキシイミノ)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1-オクタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4-ベンゾイル-4’-メチルジメチルスルフィド、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4-ジメチルアミノ-2-エチルヘキシル安息香酸、4-ジメチルアミノ-2-イソアミル安息香酸、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、o-ベンゾイル安息香酸メチル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2-クロロチオキサンテン、2,4-ジエチルチオキサンテン、2-メチルチオキサンテン、2-イソプロピルチオキサンテン、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロペルオキシド、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、α,α-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、9-フェニルアクリジン、1,7-ビス-(9-アクリジニル)ヘプタン、1,5-ビス-(9-アクリジニル)ペンタン、1,3-ビス-(9-アクリジニル)プロパン、p-メトキシトリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-n-ブトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0185】
これらの中でも、オキシム系の光重合開始剤を用いることが、感度の面で特に好ましい。オキシム系の光重合開始剤の中で、特に好ましいものとしては、O-アセチル-1-[6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル]エタノンオキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(ピロール-2-イルカルボニル)-9H-カルバゾル-3-イル],1-(O-アセチルオキシム)、及び1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]が挙げられる。
【0186】
光重合開始剤としては、また、下記式(c1)で表されるオキシム系化合物を用いることも好ましい。
【化29】
(R
c1は、1価の有機基、アミノ基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基からなる群より選択される基であり、
n1は0以上4以下の整数であり、
n2は0、又は1であり、
R
c2は、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいカルバゾリル基であり、
R
c3は、水素原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基である。)
【0187】
式(c1)中、Rc1は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から適宜選択される。Rc1が有機基である場合の好適な例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、アミノ基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、及びピペラジン-1-イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。n1が2以上4以下の整数である場合、Rc1は同一であっても異なっていてもよい。また、置換基の炭素原子数には、置換基がさらに有する置換基の炭素原子数を含まない。
【0188】
Rc1がアルキル基である場合、炭素原子数1以上20以下が好ましく、炭素原子数1以上6以下がより好ましい。また、Rc1がアルキル基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rc1がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、Rc1がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0189】
Rc1がアルコキシ基である場合、炭素原子数1以上20以下が好ましく、炭素原子数1以上6以下がより好ましい。また、Rc1がアルコキシ基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rc1がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec-オクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、Rc1がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0190】
Rc1がシクロアルキル基、又はシクロアルコキシ基である場合、炭素原子数3以上10以下が好ましく、炭素原子数3以上6以下がより好ましい。Rc1がシクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。Rc1がシクロアルコキシ基である場合の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、及びシクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0191】
Rc1が飽和脂肪族アシル基、又は飽和脂肪族アシルオキシ基である場合、炭素原子数2以上20以下が好ましく、炭素原子数2以上7以下がより好ましい。Rc1が飽和脂肪族アシル基である場合の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、n-ブタノイル基、2-メチルプロパノイル基、n-ペンタノイル基、2,2-ジメチルプロパノイル基、n-ヘキサノイル基、n-ヘプタノイル基、n-オクタノイル基、n-ノナノイル基、n-デカノイル基、n-ウンデカノイル基、n-ドデカノイル基、n-トリデカノイル基、n-テトラデカノイル基、n-ペンタデカノイル基、及びn-ヘキサデカノイル基等が挙げられる。Rc1が飽和脂肪族アシルオキシ基である場合の具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n-ブタノイルオキシ基、2-メチルプロパノイルオキシ基、n-ペンタノイルオキシ基、2,2-ジメチルプロパノイルオキシ基、n-ヘキサノイルオキシ基、n-ヘプタノイルオキシ基、n-オクタノイルオキシ基、n-ノナノイルオキシ基、n-デカノイルオキシ基、n-ウンデカノイルオキシ基、n-ドデカノイルオキシ基、n-トリデカノイルオキシ基、n-テトラデカノイルオキシ基、n-ペンタデカノイルオキシ基、及びn-ヘキサデカノイルオキシ基等が挙げられる。
【0192】
Rc1がアルコキシカルボニル基である場合、炭素原子数2以上20以下が好ましく、炭素原子数2以上7以下がより好ましい。Rc1がアルコキシカルボニル基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n-ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec-ブチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec-ペンチルオキシカルボニル基、tert-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec-オクチルオキシルカルボニル基、tert-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、n-デシルオキシカルボニル基、及びイソデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0193】
Rc1がフェニルアルキル基である場合、炭素原子数7以上20以下が好ましく、炭素原子数7以上10以下がより好ましい。またRc1がナフチルアルキル基である場合、炭素原子数11以上20以下が好ましく、炭素原子数11以上14以下がより好ましい。Rc1がフェニルアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、及び4-フェニルブチル基が挙げられる。Rc1がナフチルアルキル基である場合の具体例としては、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、2-(α-ナフチル)エチル基、及び2-(β-ナフチル)エチル基が挙げられる。Rc1が、フェニルアルキル基、又はナフチルアルキル基である場合、Rc1は、フェニル基、又はナフチル基上にさらに置換基を有していてもよい。
【0194】
Rc1がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、及びキノキサリン等が挙げられる。Rc1がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基はさらに置換基を有していてもよい。
【0195】
Rc1が1、又は2の有機基で置換されたアミノ基である場合、有機基の好適な例は、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素原子数2以上20以下の飽和脂肪族アシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよい炭素原子数7以上20以下のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよい炭素原子数11以上20以下のナフチルアルキル基、及びヘテロシクリル基等が挙げられる。これらの好適な有機基の具体例は、Rc1と同様である。1、又は2の有機基で置換されたアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、n-ペンチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、n-ヘプチルアミノ基、n-オクチルアミノ基、n-ノニルアミノ基、n-デシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、n-ブタノイルアミノ基、n-ペンタノイルアミノ基、n-ヘキサノイルアミノ基、n-ヘプタノイルアミノ基、n-オクタノイルアミノ基、n-デカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、α-ナフトイルアミノ基、及びβ-ナフトイルアミノ基等が挙げられる。
【0196】
Rc1に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。Rc1に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1以上4以下が好ましい。Rc1に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0197】
Rc1の中では、化学的に安定であることや、立体的な障害が少なく、オキシムエステル化合物の合成が容易であること等から、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、及び炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシル基からなる群より選択される基が好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキルがより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0198】
Rc1がフェニル基に結合する位置は、Rc1が結合するフェニル基について、フェニル基とオキシムエステル化合物の主骨格との結合手の位置を1位とし、メチル基の位置を2位とする場合に、4位、又は5位が好ましく、5位がよりに好ましい。また、n1は、0以上3以下の整数が好ましく、0以上2以下の整数がより好ましく、0、又は1が特に好ましい。
【0199】
Rc2は、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいカルバゾリル基である。また、Rc2が置換基を有してもよいカルバゾリル基である場合、カルバゾリル基上の窒素原子は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基で置換されていてもよい。
【0200】
Rc2において、フェニル基、又はカルバゾリル基が有する置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。フェニル基、又はカルバゾリル基が、炭素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルコキシ基、炭素原子数2以上20以下の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2以上20以下の飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいフェニルチオ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数7以上20以下のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数11以上20以下のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、アミノ基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、及びピペラジン-1-イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
【0201】
Rc2がカルバゾリル基である場合、カルバゾリル基が窒素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素原子数2以上20以下の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数7以上20以下のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数11以上20以下のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。これらの置換基の中では、炭素原子数1以上20以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0202】
フェニル基、又はカルバゾリル基が有してもよい置換基の具体例について、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び1、又は2の有機基で置換されたアミノ基に関しては、Rc1と同様である。
【0203】
Rc2において、フェニル基、又はカルバゾリル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基の例としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基;炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基;炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシル基;炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基;炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素原子数1以上6以下のアルキル基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン-1-イル基;ピペラジン-1-イル基;ハロゲン;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。フェニル基、又はカルバゾリル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1以上4以下が好ましい。フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0204】
Rc2の中では、感度に優れる光重合開始剤を得やすい点から、下記式(c2)、又は(c3)で表される基が好ましく、下記式(c2)で表される基がより好ましく、下記式(c2)で表される基であって、AがSである基が特に好ましい。
【0205】
【化30】
(R
c4は、1価の有機基、アミノ基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基からなる群より選択される基であり、AはS又はOであり、n3は、0以上4以下の整数である。)
【0206】
【化31】
(R
c5及びR
c6は、それぞれ、1価の有機基である。)
【0207】
式(c2)におけるRc4が有機基である場合、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。式(c2)においてRc4が有機基である場合の好適な例としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基;炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基;炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシル基;炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基;炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素原子数1以上6以下のアルキル基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン-1-イル基;ピペラジン-1-イル基;ハロゲン;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。
【0208】
Rc4の中では、ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素原子数1以上6以下のアルキル基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;ニトロ基が好ましく、ベンゾイル基;ナフトイル基;2-メチルフェニルカルボニル基;4-(ピペラジン-1-イル)フェニルカルボニル基;4-(フェニル)フェニルカルボニル基がより好ましい。
【0209】
また、式(c2)において、n3は、0以上3以下の整数が好ましく、0以上2以下の整数がより好ましく、0、又は1であるのが特に好ましい。n3が1である場合、Rc4の結合する位置は、Rc4が結合するフェニル基が酸素原子又は硫黄原子と結合する結合手に対して、パラ位であるのが好ましい。
【0210】
式(c3)におけるRc5は、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。Rc5の好適な例としては、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素原子数2以上20以下の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数7以上20以下のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数11以上20以下のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。
【0211】
Rc5の中では、炭素原子数1以上20以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0212】
式(c3)におけるRc6は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から選択できる。Rc6として好適な基の具体例としては、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリル基が挙げられる。Rc6として、これらの基の中では置換基を有してもよいフェニル基がより好ましく、2-メチルフェニル基が特に好ましい。
【0213】
Rc4、Rc5、又はRc6に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。Rc4、Rc5、又はRc6に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1以上4以下が好ましい。Rc4、Rc5、又はRc6に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0214】
式(c1)におけるRc3は、水素原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基である。Rc3としては、メチル基、又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0215】
式(c1)で表されるオキシムエステル化合物の中でも特に好適な化合物としては、下記のPI-1~PI-42が挙げられる。
【化32】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
また、下記式(c4)で表されるオキシムエステル化合物も、光重合開始剤として好ましい。
【0222】
【化38】
(R
c7は水素原子、ニトロ基又は1価の有機基であり、R
c8及びR
c9は、それぞれ、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子であり、R
c8とR
c9とは相互に結合して環を形成してもよく、R
c10は1価の有機基であり、R
c11は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上11以下のアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、n4は0以上4以下の整数であり、n5は0又は1である。)
【0223】
ここで、式(c4)のオキシムエステル化合物を製造するためのオキシム化合物としては、下式(c5)で表される化合物が好適である。
【0224】
【化39】
(R
c7、R
c8、R
c9、R
c10、n4、及びn5は、式(c4)と同様である。)
【0225】
式(c4)及び(c5)中、Rc7は、水素原子、ニトロ基又は1価の有機基である。Rc7は、式(c4)中のフルオレン環上で、-(CO)n5-で表される基に結合する6員芳香環とは、異なる6員芳香環に結合する。式(c4)中、Rc7のフルオレン環に対する結合位置は特に限定されない。式(c4)で表される化合物が1以上のRc7を有する場合、式(c4)で表される化合物の合成が容易であること等から、1以上のRc7のうちの1つがフルオレン環中の2位に結合するのが好ましい。Rc7が複数である場合、複数のRc7は同一であっても異なっていてもよい。
【0226】
Rc7が有機基である場合、Rc7は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から適宜選択される。Rc7が有機基である場合の好適な例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、及びピペラジン-1-イル基等が挙げられる。
【0227】
Rc7がアルキル基である場合、アルキル基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。また、Rc7がアルキル基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rc7がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、Rc7がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0228】
Rc7がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。また、Rc7がアルコキシ基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rc7がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec-オクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、Rc7がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0229】
Rc7がシクロアルキル基又はシクロアルコキシ基である場合、シクロアルキル基又はシクロアルコキシ基の炭素原子数は、3以上10以下が好ましく、3以上6以下がより好ましい。Rc7がシクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。Rc7がシクロアルコキシ基である場合の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、及びシクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0230】
Rc7が飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基である場合、飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、2以上21以下が好ましく、2以上7以下がより好ましい。Rc7が飽和脂肪族アシル基である場合の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、n-ブタノイル基、2-メチルプロパノイル基、n-ペンタノイル基、2,2-ジメチルプロパノイル基、n-ヘキサノイル基、n-ヘプタノイル基、n-オクタノイル基、n-ノナノイル基、n-デカノイル基、n-ウンデカノイル基、n-ドデカノイル基、n-トリデカノイル基、n-テトラデカノイル基、n-ペンタデカノイル基、及びn-ヘキサデカノイル基等が挙げられる。Rc7が飽和脂肪族アシルオキシ基である場合の具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n-ブタノイルオキシ基、2-メチルプロパノイルオキシ基、n-ペンタノイルオキシ基、2,2-ジメチルプロパノイルオキシ基、n-ヘキサノイルオキシ基、n-ヘプタノイルオキシ基、n-オクタノイルオキシ基、n-ノナノイルオキシ基、n-デカノイルオキシ基、n-ウンデカノイルオキシ基、n-ドデカノイルオキシ基、n-トリデカノイルオキシ基、n-テトラデカノイルオキシ基、n-ペンタデカノイルオキシ基、及びn-ヘキサデカノイルオキシ基等が挙げられる。
【0231】
Rc7がアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2以上20以下が好ましく、2以上7以下がより好ましい。Rc7がアルコキシカルボニル基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n-ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec-ブチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec-ペンチルオキシカルボニル基、tert-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec-オクチルオキシカルボニル基、tert-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、n-デシルオキシカルボニル基、及びイソデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0232】
Rc7がフェニルアルキル基である場合、フェニルアルキル基の炭素原子数は、7以上20以下が好ましく、7以上10以下がより好ましい。また、Rc7がナフチルアルキル基である場合、ナフチルアルキル基の炭素原子数は、11以上20以下が好ましく、11以上14以下がより好ましい。Rc7がフェニルアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、及び4-フェニルブチル基が挙げられる。Rc7がナフチルアルキル基である場合の具体例としては、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、2-(α-ナフチル)エチル基、及び2-(β-ナフチル)エチル基が挙げられる。Rc7が、フェニルアルキル基、又はナフチルアルキル基である場合、Rc7は、フェニル基、又はナフチル基上にさらに置換基を有していてもよい。
【0233】
Rc7がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。ヘテロシクリル基は、芳香族基(ヘテロアリール基)であっても、非芳香族基であってもよい。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、キノキサリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロピラン、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。Rc7がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基はさらに置換基を有していてもよい。
【0234】
Rc7がヘテロシクリルカルボニル基である場合、ヘテロシクリルカルボニル基に含まれるヘテロシクリル基は、Rc7がヘテロシクリル基である場合と同様である。
【0235】
Rc7が1又は2の有機基で置換されたアミノ基である場合、有機基の好適な例は、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素原子数2以上21以下の飽和脂肪族アシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよい炭素原子数7以上20以下のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよい炭素原子数11以上20以下のナフチルアルキル基、及びヘテロシクリル基等が挙げられる。これらの好適な有機基の具体例は、Rc7と同様である。1、又は2の有機基で置換されたアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、n-ペンチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、n-ヘプチルアミノ基、n-オクチルアミノ基、n-ノニルアミノ基、n-デシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、n-ブタノイルアミノ基、n-ペンタノイルアミノ基、n-ヘキサノイルアミノ基、n-ヘプタノイルアミノ基、n-オクタノイルアミノ基、n-デカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、α-ナフトイルアミノ基、及びβ-ナフトイルアミノ基等が挙げられる。
【0236】
Rc7に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。Rc7に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1以上4以下が好ましい。Rc7に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0237】
以上説明した基の中でも、Rc7としては、ニトロ基、又はRc12-CO-で表される基であると、感度が向上する傾向があり好ましい。Rc12は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から選択できる。Rc12として好適な基の例としては、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリル基が挙げられる。Rc12として、これらの基の中では、2-メチルフェニル基、チオフェン-2-イル基、及びα-ナフチル基が特に好ましい。
また、Rc7が水素原子であると、透明性が良好となる傾向があり好ましい。なお、Rc7が水素原子であり且つRc10が後述の式(c4a)又は(c4b)で表される基であると透明性はより良好となる傾向がある。
【0238】
式(c4)中、Rc8及びRc9は、それぞれ、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子である。Rc8とRc9とは相互に結合して環を形成してもよい。これらの基の中では、Rc8及びRc9として、置換基を有してもよい鎖状アルキル基が好ましい。Rc8及びRc9が置換基を有してもよい鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基は直鎖アルキル基でも分岐鎖アルキル基でもよい。
【0239】
Rc8及びRc9が置換基を持たない鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上6以下が特に好ましい。Rc8及びRc9が鎖状アルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、Rc8及びRc9がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0240】
Rc8及びRc9が置換基を有する鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上6以下が特に好ましい。この場合、置換基の炭素原子数は、鎖状アルキル基の炭素原子数に含まれない。置換基を有する鎖状アルキル基は、直鎖状であるのが好ましい。
アルキル基が有してもよい置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。置換基の好適な例としては、シアノ基、ハロゲン原子、環状有機基、及びアルコキシカルボニル基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらの中では、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。環状有機基としては、シクロアルキル基、芳香族炭化水素基、ヘテロシクリル基が挙げられる。シクロアルキル基の具体例としては、Rc7がシクロアルキル基である場合の好適な例と同様である。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、及びフェナントリル基等が挙げられる。ヘテロシクリル基の具体例としては、Rc7がヘテロシクリル基である場合の好適な例と同様である。Rc7がアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基に含まれるアルコキシ基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。アルコキシカルボニル基に含まれるアルコキシ基の炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。
【0241】
鎖状アルキル基が置換基を有する場合、置換基の数は特に限定されない。好ましい置換基の数は鎖状アルキル基の炭素原子数に応じて変わる。置換基の数は、典型的には、1以上20以下であり、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。
【0242】
Rc8及びRc9が環状有機基である場合、環状有機基は、脂環式基であっても、芳香族基であってもよい。環状有機基としては、脂肪族環状炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヘテロシクリル基が挙げられる。Rc8及びRc9が環状有機基である場合に、環状有機基が有してもよい置換基は、Rc8及びRc9が鎖状アルキル基である場合と同様である。
【0243】
Rc8及びRc9が芳香族炭化水素基である場合、芳香族炭化水素基は、フェニル基であるか、複数のベンゼン環が炭素-炭素結合を介して結合して形成される基であるか、複数のベンゼン環が縮合して形成される基であるのが好ましい。芳香族炭化水素基が、フェニル基であるか、複数のベンゼン環が結合又は縮合して形成される基である場合、芳香族炭化水素基に含まれるベンゼン環の環数は特に限定されず、3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1が特に好ましい。芳香族炭化水素基の好ましい具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、及びフェナントリル基等が挙げられる。
【0244】
Rc8及びRc9が脂肪族環状炭化水素基である場合、脂肪族環状炭化水素基は、単環式であっても多環式であってもよい。脂肪族環状炭化水素基の炭素原子数は特に限定されないが、3以上20以下が好ましく、3以上10以下がより好ましい。単環式の環状炭化水素基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、及びアダマンチル基等が挙げられる。
【0245】
Rc8及びRc9がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。ヘテロシクリル基は、芳香族基(ヘテロアリール基)であっても、非芳香族基であってもよい。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、キノキサリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロピラン、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0246】
Rc8とRc9とは相互に結合して環を形成してもよい。Rc8とRc9とが形成する環からなる基は、シクロアルキリデン基であるのが好ましい。Rc8とRc9とが結合してシクロアルキリデン基を形成する場合、シクロアルキリデン基を構成する環は、5員環~6員環であるのが好ましく、5員環であるのがより好ましい。
【0247】
Rc8とRc9とが結合して形成する基がシクロアルキリデン基である場合、シクロアルキリデン基は、1以上の他の環と縮合していてもよい。シクロアルキリデン基と縮合していてもよい環の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピリジン環、ピラジン環、及びピリミジン環等が挙げられる。
【0248】
以上説明したRc8及びRc9の中でも好適な基の例としては、式-A1-A2で表される基が挙げられる。式中、A1は直鎖アルキレン基であり、A2は、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、環状有機基、又はアルコキシカルボニル基である。
【0249】
A1の直鎖アルキレン基の炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。A2がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。アルコキシ基の炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。A2がハロゲン原子である場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子がより好ましい。A2がハロゲン化アルキル基である場合、ハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子がより好ましい。ハロゲン化アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。A2が環状有機基である場合、環状有機基の例は、Rc8及びRc9が置換基として有する環状有機基と同様である。A2がアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基の例は、Rc8及びRc9が置換基として有するアルコキシカルボニル基と同様である。
【0250】
Rc8及びRc9の好適な具体例としては、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、及びn-オクチル基等のアルキル基;2-メトキシエチル基、3-メトキシ-n-プロピル基、4-メトキシ-n-ブチル基、5-メトキシ-n-ペンチル基、6-メトキシ-n-ヘキシル基、7-メトキシ-n-ヘプチル基、8-メトキシ-n-オクチル基、2-エトキシエチル基、3-エトキシ-n-プロピル基、4-エトキシ-n-ブチル基、5-エトキシ-n-ペンチル基、6-エトキシ-n-ヘキシル基、7-エトキシ-n-ヘプチル基、及び8-エトキシ-n-オクチル基等のアルコキシアルキル基;2-シアノエチル基、3-シアノ-n-プロピル基、4-シアノ-n-ブチル基、5-シアノ-n-ペンチル基、6-シアノ-n-ヘキシル基、7-シアノ-n-ヘプチル基、及び8-シアノ-n-オクチル基等のシアノアルキル基;2-フェニルエチル基、3-フェニル-n-プロピル基、4-フェニル-n-ブチル基、5-フェニル-n-ペンチル基、6-フェニル-n-ヘキシル基、7-フェニル-n-ヘプチル基、及び8-フェニル-n-オクチル基等のフェニルアルキル基;2-シクロヘキシルエチル基、3-シクロヘキシル-n-プロピル基、4-シクロヘキシル-n-ブチル基、5-シクロヘキシル-n-ペンチル基、6-シクロヘキシル-n-ヘキシル基、7-シクロヘキシル-n-ヘプチル基、8-シクロヘキシル-n-オクチル基、2-シクロペンチルエチル基、3-シクロペンチル-n-プロピル基、4-シクロペンチル-n-ブチル基、5-シクロペンチル-n-ペンチル基、6-シクロペンチル-n-ヘキシル基、7-シクロペンチル-n-ヘプチル基、及び8-シクロペンチル-n-オクチル基等のシクロアルキルアルキル基;2-メトキシカルボニルエチル基、3-メトキシカルボニル-n-プロピル基、4-メトキシカルボニル-n-ブチル基、5-メトキシカルボニル-n-ペンチル基、6-メトキシカルボニル-n-ヘキシル基、7-メトキシカルボニル-n-ヘプチル基、8-メトキシカルボニル-n-オクチル基、2-エトキシカルボニルエチル基、3-エトキシカルボニル-n-プロピル基、4-エトキシカルボニル-n-ブチル基、5-エトキシカルボニル-n-ペンチル基、6-エトキシカルボニル-n-ヘキシル基、7-エトキシカルボニル-n-ヘプチル基、及び8-エトキシカルボニル-n-オクチル基等のアルコキシカルボニルアルキル基;2-クロロエチル基、3-クロロ-n-プロピル基、4-クロロ-n-ブチル基、5-クロロ-n-ペンチル基、6-クロロ-n-ヘキシル基、7-クロロ-n-ヘプチル基、8-クロロ-n-オクチル基、2-ブロモエチル基、3-ブロモ-n-プロピル基、4-ブロモ-n-ブチル基、5-ブロモ-n-ペンチル基、6-ブロモ-n-ヘキシル基、7-ブロモ-n-ヘプチル基、8-ブロモ-n-オクチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、及び3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-n-ペンチル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0251】
Rc8及びRc9として、上記の中でも好適な基は、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、2-メトキシエチル基、2-シアノエチル基、2-フェニルエチル基、2-シクロヘキシルエチル基、2-メトキシカルボニルエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、及び3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-n-ペンチル基である。
【0252】
Rc10の好適な有機基の例としては、Rc7と同様に、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、及びピペラジン-1-イル基等が挙げられる。これらの基の具体例は、Rc7について説明した基と同様である。また、Rc10としてはシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェノキシアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基、も好ましい。フェノキシアルキル基、及びフェニルチオアルキル基が有していてもよい置換基は、Rc7に含まれるフェニル基が有していてもよい置換基と同様である。
【0253】
有機基の中でも、Rc10としては、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素原子数1以上20以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上8以下のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。置換基を有していてもよいフェニル基の中では、メチルフェニル基が好ましく、2-メチルフェニル基がより好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるシクロアルキル基の炭素原子数は、5以上10以下が好ましく、5以上8以下がより好ましく、5又は6が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1以上8以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、2が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基の中では、シクロペンチルエチル基が好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1以上8以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、2が特に好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基の中では、2-(4-クロロフェニルチオ)エチル基が好ましい。
【0254】
また、Rc10としては、-A3-CO-O-A4で表される基も好ましい。A3は、2価の有機基であり、2価の炭化水素基であるのが好ましく、アルキレン基であるのが好ましい。A4は、1価の有機基であり、1価の炭化水素基であるのが好ましい。
【0255】
A3がアルキレン基である場合、アルキレン基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。A3がアルキレン基である場合、アルキレン基の炭素原子数は1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましく、1以上4以下が特に好ましい。
【0256】
A4の好適な例としては、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、及び炭素原子数6以上20以下の芳香族炭化水素基が挙げられる。A4の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、α-ナフチルメチル基、及びβ-ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0257】
-A3-CO-O-A4で表される基の好適な具体例としては、2-メトキシカルボニルエチル基、2-エトキシカルボニルエチル基、2-n-プロピルオキシカルボニルエチル基、2-n-ブチルオキシカルボニルエチル基、2-n-ペンチルオキシカルボニルエチル基、2-n-ヘキシルオキシカルボニルエチル基、2-ベンジルオキシカルボニルエチル基、2-フェノキシカルボニルエチル基、3-メトキシカルボニル-n-プロピル基、3-エトキシカルボニル-n-プロピル基、3-n-プロピルオキシカルボニル-n-プロピル基、3-n-ブチルオキシカルボニル-n-プロピル基、3-n-ペンチルオキシカルボニル-n-プロピル基、3-n-ヘキシルオキシカルボニル-n-プロピル基、3-ベンジルオキシカルボニル-n-プロピル基、及び3-フェノキシカルボニル-n-プロピル基等が挙げられる。
【0258】
以上、R
c10について説明したが、R
c10としては、下記式(c4a)又は(c4b)で表される基が好ましい。
【化40】
(式(c4a)及び(c4b)中、R
c13及びR
c14はそれぞれ有機基であり、n6は0以上4以下の整数であり、R
c13及びR
c14がベンゼン環上の隣接する位置に存在する場合、R
c13とR
c14とが互いに結合して環を形成してもよく、n7は1以下8以下の整数であり、n8は1以上5以下の整数であり、n9は0以上(n8+3)以下の整数であり、R
c15は有機基である。)
【0259】
式(c4a)中のRc13及びRc14についての有機基の例は、Rc7と同様である。Rc13としては、アルキル基又はフェニル基が好ましい。Rc13がアルキル基である場合、その炭素原子数は、1以下10以上が好ましく、1以上5以下がより好ましく、1以上3以下が特に好ましく、1が最も好ましい。つまり、Rc13はメチル基であるのが最も好ましい。Rc13とRc14とが結合して環を形成する場合、当該環は、芳香族環でもよく、脂肪族環でもよい。式(c4a)で表される基であって、Rc13とRc14とが環を形成している基の好適な例としては、ナフタレン-1-イル基や、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-5-イル基等が挙げられる。上記式(c4a)中、n6は0以上4以下の整数であり、0又は1であるのが好ましく、0であるのがより好ましい。
【0260】
上記式(c4b)中、Rc15は有機基である。有機基としては、Rc7について説明した有機基と同様の基が挙げられる。有機基の中では、アルキル基が好ましい。アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。アルキル基の炭素原子数は1以上10以下が好ましく、1以上5以下がより好ましく、1以上3以下が特に好ましい。Rc15としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が好ましく例示され、これらの中でも、メチル基であることがより好ましい。
【0261】
上記式(c4b)中、n8は1以上5以下の整数であり、1以上3以下の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。上記式(c4b)中、n9は0以上(n8+3)以下であり、0以上3以下の整数が好ましく、0以上2以下の整数がより好ましく、0が特に好ましい。上記式(c4b)中、n7は1以上8以下の整数であり、1以上5以下の整数が好ましく、1以上3以下の整数がより好ましく、1又は2が特に好ましい。
【0262】
式(c4)中、Rc11は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上11以下のアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基である。Rc11がアルキル基である場合に有してもよい置換基としては、フェニル基、ナフチル基等が好ましく例示される。また、Rc7がアリール基である場合に有してもよい置換基としては、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が好ましく例示される。
【0263】
式(c4)中、Rc11としては、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、ナフチル基等が好ましく例示され、これらの中でも、メチル基又はフェニル基がより好ましい。
【0264】
式(c4)で表される化合物は、前述の式(c5)で表される化合物に含まれるオキシム基(>C=N-OH)を、>C=N-O-CORc11で表されるオキシムエステル基に変換する工程を含む方法により製造される。Rc11は、式(c4)中のRc11と同様である。
【0265】
オキシム基(>C=N-OH)の、>C=N-O-CORc11で表されるオキシムエステル基への変換は、前述の式(c5)で表される化合物と、アシル化剤とを反応させることにより行われる。
-CORc11で表されるアシル基を与えるアシル化剤としては、(Rc11CO)2Oで表される酸無水物や、Rc11COHal(Halはハロゲン原子)で表される酸ハライドが挙げられる。
【0266】
式(c4)で表される化合物の好適な具体例としては、以下のPI-43~PI-83が挙げられる。
【化41】
【0267】
【0268】
光重合開始剤の含有量は、第1の態様の感光性組成物の固形分100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下であることが好ましい。上記の範囲とすることにより、十分な耐熱性、耐薬品性を得ることができ、また塗膜形成能を向上させ、硬化不良を抑制することができる。
【0269】
第1の態様の感光性組成物は、上記の通り、水素バリア剤(B)を含有する。この化合物を感光性組成物に含有させた際、水素バリア性能を有するパターン形成が可能となる。
【0270】
水素バリア剤(B)の含有量は、上記光重合開始剤100質量部に対して0.5質量部以上95質量部以下であることが好ましく、1質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、水素バリア性に優れた水素バリア膜を形成できるととともに、良好な現像性を得ながら、良好な微小パターニング特性を得ることができる。
【0271】
第1の態様の感光性組成物は、さらに、着色剤を含有していてもよい。着色剤を含有することにより、例えば、液晶表示ディスプレイや有機ELディスプレイ等の画像表示装置のカラーフィルタ形成用途として好ましく使用される。また、第1の態様の感光性組成物は、着色剤として遮光剤を含むことにより、例えば、カラーフィルタにおけるブラックマトリクス形成用途として好ましく使用される。
【0272】
着色剤としては、特に限定されないが、例えば、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されている顔料を用いることが好ましい。
【0273】
C.I.ピグメントイエロー1(以下、「C.I.ピグメントイエロー」は同様であり、番号のみを記載する。)、3、11、12、13、14、15、16、17、20、24、31、53、55、60、61、65、71、73、74、81、83、86、93、95、97、98、99、100、101、104、106、108、109、110、113、114、116、117、119、120、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、166、167、168、175、180、185;
C.I.ピグメントオレンジ1(以下、「C.I.ピグメントオレンジ」は同様であり、番号のみを記載する。)、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、55、59、61、63、64、71、73;
C.I.ピグメントバイオレット1(以下、「C.I.ピグメントバイオレット」は同様であり、番号のみを記載する。)、19、23、29、30、32、36、37、38、39、40、50;
C.I.ピグメントレッド1(以下、「C.I.ピグメントレッド」は同様であり、番号のみを記載する。)、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、53:1、57、57:1、57:2、58:2、58:4、60:1、63:1、63:2、64:1、81:1、83、88、90:1、97、101、102、104、105、106、108、112、113、114、122、123、144、146、149、150、151、155、166、168、170、171、172、174、175、176、177、178、179、180、185、187、188、190、192、193、194、202、206、207、208、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、242、243、245、254、255、264、265;
C.I.ピグメントブルー1(以下、「C.I.ピグメントブルー」は同様であり、番号のみを記載する。)、2、15、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、66;
C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン37;
C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラウン26、C.I.ピグメントブラウン28;
C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7。
【0274】
また、着色剤を遮光剤とする場合、遮光剤としては黒色顔料を用いることが好ましい。黒色顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウム、銀等の金属酸化物、複合酸化物、金属硫化物、金属硫酸塩、金属炭酸塩等、有機物、無機物を問わず各種の顔料を挙げることができる。これらの中でも、高い遮光性を有するカーボンブラックを用いることが好ましい。
【0275】
カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック等の公知のカーボンブラックを用いることができるが、遮光性に優れるチャンネルブラックを用いることが好ましい。また、樹脂被覆カーボンブラックを使用してもよい。
【0276】
樹脂被覆カーボンブラックは、樹脂被覆のないカーボンブラックに比べて導電性が低いことから、液晶表示ディスプレイのブラックマトリクスとして使用した場合に電流のリークが少なく、信頼性の高い低消費電力のディスプレイを製造できる。
【0277】
また、カーボンブラックの色調を調整するために、補助顔料として上記の有機顔料を適宜添加してもよい。
【0278】
また、着色剤を感光性組成物において均一に分散させるために、さらに分散剤を使用してもよい。このような分散剤としては、ポリエチレンイミン系、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系の高分子分散剤を用いることが好ましい。特に、着色剤としてカーボンブラックを用いる場合には、分散剤としてアクリル樹脂系の分散剤を用いることが好ましい。
【0279】
また、無機顔料及び有機顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよいが、併用する場合には、無機顔料と有機顔料との総量100質量部に対して、有機顔料を10質量部以上80質量部以下の範囲で用いることが好ましく、20質量部以上40質量部以下の範囲で用いることがより好ましい。
【0280】
着色剤の含有量は、第1の態様の感光性組成物の用途に応じて適宜決定すればよいが、一例として、第1の態様の感光性組成物の固形分100質量部に対して、5質量部以上70質量部以下が好ましく、25質量部以上60質量部以下がより好ましい。
特に、第1の態様の感光性組成物を使用してブラックマトリクスを形成する場合には、ブラックマトリクスの膜厚1μm当たりのOD値が4以上となるように、感光性組成物における遮光剤の量を調整することが好ましい。ブラックマトリクスにおける膜厚1μm当たりのOD値が4以上あれば、液晶表示ディスプレイのブラックマトリクスに用いた場合に、十分な表示コントラストを得ることができる。
【0281】
なお、着色剤は、分散剤を用いて適当な濃度で分散させた分散液とした後、感光性組成物に添加することが好ましい。
【0282】
第1の態様の感光性組成物における有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン類;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタンメチル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n-ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、前記式(a04)で表される溶剤等のアミド類等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0283】
上記有機溶剤の中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、3-メトキシブチルアセテート、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、前記式(a04)で表される溶剤等のアミド類は、上記アルカリ可溶性樹脂(A1)、上記光重合性化合物(A2)、上記光重合開始剤(C)、及び水素バリア剤(B)に対して優れた溶解性を示すため好ましい。
【0284】
有機溶剤の含有量は、第1の態様の感光性組成物の固形分濃度が1質量%以上50質量%以下となる量が好ましく、5質量%以上30質量%以下となる量がより好ましい。
【0285】
(2)第2の態様の感光性組成物
第2の態様の感光性組成物は、ポジ型感光性組成物である。第2の態様の感光性組成物が、化学増幅型ポジ型感光性組成物の場合、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する酸発生剤(以下、光酸発生剤とも記す。)と、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(以下、感光性樹脂とも記す。)とを含有する。感光性樹脂組成物は、必要に応じて、アルカリ可溶性樹脂、酸拡散抑制剤、及び有機溶剤等の成分を含んでいてもよい。他の第2の態様の感光性組成物としては、キノンジアジド基含有化合物とノボラックフェノール樹脂等のアルカリ可溶性樹脂(例えば後述のノボラック樹脂(C1)等)を含むポジ型感光性組成物が挙げられる。
【0286】
第2の態様の感光性組成物を用いて形成されるレジストパターンの膜厚は特に限定されない。第2の態様の感光性組成物は厚膜のレジストパターンの形成に好ましく使用される。第2の態様の感光性組成物を用いて形成されるレジストパターンの膜厚は、特に限定されず、具体的には、0.1μm以上が好ましく、1μm以上150μm以下がより好ましく、10μm以上120μm以下が特に好ましく、特に好ましくは20μm以上80μm以下が最も好ましい。
【0287】
以下、第2の態様の感光性組成物が含む、必須又は任意の成分と、感光性樹脂組成物の製造方法とについて説明する。
【0288】
光酸発生剤は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物であり、光により直接又は間接的に酸を発生する化合物であれば特に限定されない。
以下、第2の態様の感光性組成物において好適に使用される光酸発生剤の好適な例について説明する。
【0289】
好適な光酸発生剤の第1の例としては、下記式(a1)で表される化合物が挙げられる。
【0290】
【0291】
上記式(a1)中、X1aは、原子価gの硫黄原子又はヨウ素原子を表し、gは1又は2である。hは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。R1aは、X1aに結合している有機基であり、炭素原子数6以上30以下のアリール基、炭素原子数4以上30以下の複素環基、炭素原子数1以上30以下のアルキル基、炭素原子数2以上30以下のアルケニル基、又は炭素原子数2以上30以下のアルキニル基を表し、R1aは、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールチオカルボニル、アシロキシ、アリールチオ、アルキルチオ、アリール、複素環、アリールオキシ、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキレンオキシ、アミノ、シアノ、ニトロの各基、及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。R1aの個数はg+h(g-1)+1であり、R1aはそれぞれ互いに同じであっても異なっていてもよい。また、2個以上のR1aが互いに直接、又は-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-NH-、-NR2a-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素原子数1以上3以下のアルキレン基、若しくはフェニレン基を介して結合し、X1aを含む環構造を形成してもよい。R2aは炭素原子数1以上5以下のアルキル基又は炭素原子数6以上10以下のアリール基である。
【0292】
X2aは下記式(a2)で表される構造である。
【0293】
【0294】
上記式(a2)中、X4aは炭素原子数1以上8以下のアルキレン基、炭素原子数6以上20以下のアリーレン基、又は炭素原子数8以上20以下の複素環化合物の2価の基を表し、X4aは炭素原子数1以上8以下のアルキル、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ、炭素原子数6以上10以下のアリール、ヒドロキシ、シアノ、ニトロの各基、及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。X5aは-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-NH-、-NR2a-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素原子数1以上3以下のアルキレン基、又はフェニレン基を表す。hは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。h+1個のX4a及びh個のX5aはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R2aは前述の定義と同じである。
【0295】
X3a-はオニウムの対イオンであり、下記式(a17)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオン又は下記式(a18)で表されるボレートアニオンが挙げられる。
【0296】
【0297】
上記式(a17)中、R3aは水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。jはその個数を示し、1以上5以下の整数である。j個のR3aはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0298】
【0299】
上記式(a18)中、R4a~R7aは、それぞれ独立にフッ素原子又はフェニル基を表し、該フェニル基の水素原子の一部又は全部は、フッ素原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
【0300】
上記式(a1)で表される化合物中のオニウムイオンとしては、トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、フェニル[4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]4-ビフェニルスルホニウム、フェニル[4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]3-ビフェニルスルホニウム、[4-(4-アセトフェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム、ジフェニルヨードニウム、ジ-p-トリルヨードニウム、ビス(4-ドデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4-メトキシフェニル)ヨードニウム、(4-オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム、ビス(4-デシルオキシ)フェニルヨードニウム、4-(2-ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、又は4-イソブチルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、等が挙げられる。
【0301】
上記式(a1)で表される化合物中のオニウムイオンのうち、好ましいオニウムイオンとしては下記式(a19)で表されるスルホニウムイオンが挙げられる。
【0302】
【0303】
上記式(a19)中、R8aはそれぞれ独立に水素原子、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニル、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアリール、アリールカルボニル、からなる群より選ばれる基を表す。X2aは、上記式(a1)中のX2aと同じ意味を表す。
【0304】
上記式(a19)で表されるスルホニウムイオンの具体例としては、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、フェニル[4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]4-ビフェニルスルホニウム、フェニル[4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]3-ビフェニルスルホニウム、[4-(4-アセトフェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、ジフェニル[4-(p-ターフェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウムが挙げられる。
【0305】
上記式(a17)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンにおいて、R3aはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、好ましい炭素原子数は1以上8以下、さらに好ましい炭素原子数は1以上4以下である。アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル等の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等の分岐アルキル基;さらにシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクヘキシル等のシクロアルキル基等が挙げられ、アルキル基の水素原子がフッ素原子に置換された割合は、通常、80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%である。フッ素原子の置換率が80%未満である場合には、上記式(a1)で表されるオニウムフッ素化アルキルフルオロリン酸塩の酸強度が低下する。
【0306】
特に好ましいR3aは、炭素原子数が1以上4以下、且つフッ素原子の置換率が100%の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基であり、具体例としては、CF3、CF3CF2、(CF3)2CF、CF3CF2CF2、CF3CF2CF2CF2、(CF3)2CFCF2、CF3CF2(CF3)CF、(CF3)3Cが挙げられる。R3aの個数jは、1以上5以下の整数であり、好ましくは2以上4以下、特に好ましくは2又は3である。
【0307】
好ましいフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンの具体例としては、[(CF3CF2)2PF4]-、[(CF3CF2)3PF3]-、[((CF3)2CF)2PF4]-、[((CF3)2CF)3PF3]-、[(CF3CF2CF2)2PF4]-、[(CF3CF2CF2)3PF3]-、[((CF3)2CFCF2)2PF4]-、[((CF3)2CFCF2)3PF3]-、[(CF3CF2CF2CF2)2PF4]-、又は[(CF3CF2CF2)3PF3]-が挙げられ、これらのうち、[(CF3CF2)3PF3]-、[(CF3CF2CF2)3PF3]-、[((CF3)2CF)3PF3]-、[((CF3)2CF)2PF4]-、[((CF3)2CFCF2)3PF3]-、又は[((CF3)2CFCF2)2PF4]-が特に好ましい。
【0308】
上記式(a18)で表されるボレートアニオンの好ましい具体例としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C6F5)4]-)、テトラキス[(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート([B(C6H4CF3)4]-)、ジフルオロビス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(C6F5)2BF2]-)、トリフルオロ(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(C6F5)BF3]-)、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート([B(C6H3F2)4]-)等が挙げられる。これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C6F5)4]-)が特に好ましい。
【0309】
好適な光酸発生剤の第2の例としては、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(2-フリル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-メチル-2-フリル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-エチル-2-フリル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-プロピル-2-フリル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,5-ジメトキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,5-ジエトキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,5-ジプロポキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3-メトキシ-5-エトキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3-メトキシ-5-プロポキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(2-フリル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(5-メチル-2-フリル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(3,5-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、トリス(1,3-ジブロモプロピル)-1,3,5-トリアジン、トリス(2,3-ジブロモプロピル)-1,3,5-トリアジン等のハロゲン含有トリアジン化合物、並びにトリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート等の下記式(a3)で表されるハロゲン含有トリアジン化合物が挙げられる。
【0310】
【0311】
上記式(a3)中、R9a、R10a、R11aは、それぞれ独立にハロゲン化アルキル基を表す。
【0312】
好適な光酸発生剤の第3の例としては、α-(p-トルエンスルホニルオキシイミノ)-フェニルアセトニトリル、α-(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)-2,4-ジクロロフェニルアセトニトリル、α-(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)-2,6-ジクロロフェニルアセトニトリル、α-(2-クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)-4-メトキシフェニルアセトニトリル、α-(エチルスルホニルオキシイミノ)-1-シクロペンテニルアセトニトリル、並びにオキシムスルホネート基を含有する下記式(a4)で表される化合物が挙げられる。
【0313】
【0314】
上記式(a4)中、R12aは、1価、2価、又は3価の有機基を表し、R13aは、置換若しくは未置換の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、又は芳香族性化合物基を表し、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。
【0315】
上記式(a4)中、芳香族性化合物基とは、芳香族化合物に特有な物理的・化学的性質を示す化合物の基を示し、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基や、フリル基、チエニル基等のヘテロアリール基が挙げられる。これらは環上に適当な置換基、例えばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基等を1個以上有していてもよい。また、R13aは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が特に好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。特に、R12aが芳香族性化合物基であり、R13aが炭素原子数1以上4以下のアルキル基である化合物が好ましい。
【0316】
上記式(a4)で表される光酸発生剤としては、n=1のとき、R12aがフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基のいずれかであって、R13aがメチル基の化合物、具体的にはα-(メチルスルホニルオキシイミノ)-1-フェニルアセトニトリル、α-(メチルスルホニルオキシイミノ)-1-(p-メチルフェニル)アセトニトリル、α-(メチルスルホニルオキシイミノ)-1-(p-メトキシフェニル)アセトニトリル、〔2-(プロピルスルホニルオキシイミノ)-2,3-ジヒドロキシチオフェン-3-イリデン〕(o-トリル)アセトニトリル等が挙げられる。n=2のとき、上記式(a4)で表される光酸発生剤としては、具体的には下記式で表される光酸発生剤が挙げられる。
【0317】
【0318】
好適な光酸発生剤における第4の例としては、カチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩が挙げられる。この「ナフタレン環を有する」とは、ナフタレンに由来する構造を有することを意味し、少なくとも2つの環の構造と、それらの芳香族性が維持されていることを意味する。このナフタレン環は炭素原子数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基、水酸基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基等の置換基を有していてもよい。ナフタレン環に由来する構造は、1価基(遊離原子価が1つ)であっても、2価基(遊離原子価が2つ)以上であってもよいが、1価基であることが望ましい(ただし、このとき、上記置換基と結合する部分を除いて遊離原子価を数えるものとする)。ナフタレン環の数は1以上3以下が好ましい。
【0319】
このようなカチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩のカチオン部としては、下記式(a5)で表される構造が好ましい。
【0320】
【0321】
上記式(a5)中、R14a、R15a、R16aのうち少なくとも1つは下記式(a6)で表される基を表し、残りは炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、水酸基、又は炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を表す。あるいは、R14a、R15a、R16aのうちの1つが下記式(a6)で表される基であり、残りの2つはそれぞれ独立に炭素原子数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、これらの末端が結合して環状になっていてもよい。
【0322】
【0323】
上記式(a6)中、R17a、R18aは、それぞれ独立に水酸基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、又は炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R19aは、単結合又は置換基を有していてもよい炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基を表す。l及びmは、それぞれ独立に0以上2以下の整数を表し、l+mは3以下である。ただし、R17aが複数存在する場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。また、R18aが複数存在する場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0324】
上記R14a、R15a、R16aのうち上記式(a6)で表される基の数は、化合物の安定性の点から好ましくは1つであり、残りは炭素原子数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、これらの末端が結合して環状になっていてもよい。この場合、上記2つのアルキレン基は、硫黄原子を含めて3~9員環を構成する。環を構成する原子(硫黄原子を含む)の数は、好ましくは5以上6以下である。
【0325】
また、上記アルキレン基が有していてもよい置換基としては、酸素原子(この場合、アルキレン基を構成する炭素原子とともにカルボニル基を形成する)、水酸基等が挙げられる。
【0326】
また、フェニル基が有していてもよい置換基としては、水酸基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基等が挙げられる。
【0327】
これらのカチオン部として好適なものとしては、下記式(a7)、(a8)で表されるもの等を挙げることができ、特に下記式(a8)で表される構造が好ましい。
【0328】
【0329】
このようなカチオン部としては、ヨードニウム塩であってもスルホニウム塩であってもよいが、酸発生効率等の点からスルホニウム塩が望ましい。
【0330】
従って、カチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩のアニオン部として好適なものとしては、スルホニウム塩を形成可能なアニオンが望ましい。
【0331】
このような光酸発生剤のアニオン部としては、水素原子の一部又は全部がフッ素化されたフルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンである。
【0332】
フルオロアルキルスルホン酸イオンにおけるアルキル基は、炭素原子数1以上20以下の直鎖状でも分岐状でも環状でもよく、発生する酸の嵩高さとその拡散距離から、炭素原子数1以上10以下であることが好ましい。特に、分岐状や環状のものは拡散距離が短いため好ましい。また、安価に合成可能なことから、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等を好ましいものとして挙げることができる。
【0333】
アリールスルホン酸イオンにおけるアリール基は、炭素原子数6以上20以下のアリール基であって、アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもされていなくてもよいフェニル基、ナフチル基が挙げられる。特に、安価に合成可能なことから、炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましい。好ましいものの具体例として、フェニル基、トルエンスルホニル基、エチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基等を挙げることができる。
【0334】
上記フルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンにおいて、水素原子の一部又は全部がフッ素化されている場合のフッ素化率は、好ましくは10%以上100%以下、より好ましくは50%以上100%以下であり、特に水素原子を全てフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるので好ましい。このようなものとしては、具体的には、トリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネート、パーフルオロオクタンスルホネート、パーフルオロベンゼンスルホネート等が挙げられる。
【0335】
これらの中でも、好ましいアニオン部として、下記式(a9)で表されるものが挙げられる。
【0336】
【0337】
上記式(a9)において、R20aは、下記式(a10)、(a11)、及び(a12)で表される基である。
【0338】
【0339】
上記式(a10)中、xは1以上4以下の整数を表す。また、上記式(a11)中、R21aは、水素原子、水酸基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を表し、yは1以上3以下の整数を表す。これらの中でも、安全性の観点からトリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネートが好ましい。
【0340】
また、アニオン部としては、下記式(a13)、(a14)で表される窒素を含有するものを用いることもできる。
【0341】
【0342】
上記式(a13)、(a14)中、Xaは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基の炭素原子数は2以上6以下であり、好ましくは3以上5以下、最も好ましくは炭素原子数3である。また、Ya、Zaは、それぞれ独立に少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基の炭素原子数は1以上10以下であり、好ましくは1以上7以下、より好ましくは1以上3以下である。
【0343】
Xaのアルキレン基の炭素原子数、又はYa、Zaのアルキル基の炭素原子数が小さいほど有機溶剤への溶解性も良好であるため好ましい。
【0344】
また、Xaのアルキレン基又はYa、Zaのアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなるため好ましい。該アルキレン基又はアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70%以上100%以下、より好ましくは90%以上100%以下であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基又はパーフルオロアルキル基である。
【0345】
このようなカチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩として好ましいものとしては、下記式(a15)、(a16)で表される化合物が挙げられる。
【0346】
【0347】
好適な光酸発生剤における第6の例としては、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等のビススルホニルジアゾメタン類;p-トルエンスルホン酸2-ニトロベンジル、p-トルエンスルホン酸2,6-ジニトロベンジル、ニトロベンジルトシレート、ジニトロベンジルトシラート、ニトロベンジルスルホナート、ニトロベンジルカルボナート、ジニトロベンジルカルボナート等のニトロベンジル誘導体;ピロガロールトリメシラート、ピロガロールトリトシラート、ベンジルトシラート、ベンジルスルホナート、N-メチルスルホニルオキシスクシンイミド、N-トリクロロメチルスルホニルオキシスクシンイミド、N-フェニルスルホニルオキシマレイミド、N-メチルスルホニルオキシフタルイミド等のスルホン酸エステル類;N-ヒドロキシフタルイミド、N-ヒドロキシナフタルイミド等のトリフルオロメタンスルホン酸エステル類;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、(4-メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、(4-メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、(p-tert-ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート等のオニウム塩類;ベンゾイントシラート、α-メチルベンゾイントシラート等のベンゾイントシレート類;その他のジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、フェニルジアゾニウム塩、ベンジルカルボナート等が挙げられる。
【0348】
水素バリア剤(B)と組み合わせて用いる場合に、特に好ましい光酸発生剤としては、下記式(c-5)で表されるナフタル酸誘導体が挙げられる。
【化58】
(式(c-5)中、R
22aは、1価の有機基であり、R
23a、R
24a、R
25a、及びR
26a、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基であり、R
23aとR
24aと、R
24aとR
25aと、又はR
25aとR
26aとは、それぞれ互いに結合して環を形成してもよい。)
【0349】
R22aとしての有機基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。当該有機基は、炭化水素基であってもよく、O、N、S、P、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。また、当該有機基の構造は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であっても、これらの構造の組み合わせであってもよい。
【0350】
R22aとして好適な有機基としては、ハロゲン原子、及び/又はアルキルチオ基で置換されてもよい炭素原子数1以上18以下の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素原子数6以上20以下のアリール基、置換基を有してもよい炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数7以上20以下のアルキルアリール基、カンファー-10-イル基、及び下式(c-5a):
-R27a-(O)a-R28a-(O)b-Y1-R29a・・・(c-5a)
(式(c-5a)中、Y1は、単結合又は炭素原子数1以上4以下のアルカンジイル基である。R27a及びR28aは、それぞれ、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数2以上6以下のアルカンジイル基、又はハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数6以上20以下のアリーレン基である。R29aは、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1以上18以下のアルキル基、炭素原子数3以上12以下の脂環式炭化水素基、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数6以上20以下のアリール基、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数7以上20以下のアラルキル基である。a及びbは、それぞれ0又は1であり、a及びbの少なくとも一方は1である。)
で表される基が挙げられる。
【0351】
R22aとしての有機基が置換基としてハロゲン原子を有する場合、当該ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子が挙げられる。
【0352】
R22aとしての有機基が、アルキルチオ基で置換された炭素原子数1以上18以下のアルキル基である場合、アルキルチオ基の炭素原子数は1以上18以下であるのがこのましい。
炭素原子数1以上18以下のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、tert-ペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基、n-ヘプチルチオ基、イソヘプチルチオ基、tert-ヘプチルチオ基、n-オクチルチオ基、イソオクチルチオ基、tert-オクチルチオ基、2-エチルヘキシルチオ基、n-ノニルチオ基、n-デシルチオ基、n-ウンデシルチオ基、n-ドデシルチオ基、n-トリデシルチオ基、n-テトラデシルチオ基、n-ペンタデシルチオ基、n-ヘキサデシルチオ基、n-ヘプタデシルチオ基、及びn-オクタデシルチオ基が挙げられる。
【0353】
R22aとしての有機基が、ハロゲン原子、及び/又はアルキルチオ基で置換されてもよい炭素原子数1以上18以下の脂肪族炭化水素基である場合、当該脂肪族炭化水素基は、不飽和二重結合を含んでいてもよい。
また、当該脂肪族炭化水素基の構造は特に限定されず、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であっても、これらの構造の組み合わせであってもよい。
【0354】
R22aとしての有機基がアルケニル基である場合の好適な例としては、アリル基、2-メチル-2-プロペニル基が挙げられる。
【0355】
R22aとしての有機基がアルキル基である場合の好適な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘキサン-2-イル基、n-ヘキサン-3-イル基、n-ヘプチル基、n-ヘプタン-2-イル基、n-ヘプタン-3-イル基、イソヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基,n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、及びn-オクタデシル基が挙げられる。
【0356】
R22aとしての有機基が脂環式炭化水素基である場合、当該脂環式炭化水素基の主骨格を構成する脂環式炭化水素の例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、及びアダマンタンが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、これらの脂環式炭化水素から水素原子を1つ除いた基が好ましい。
【0357】
R22aとしての有機基がハロゲン原子で置換された脂肪族炭化水素基である場合の好適な例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、ヘプタフルオロ-n-プロピル基、3-ブロモプロピル基、ノナフルオロ-n-ブチル基、トリデカフルオロ-n-ヘキシル基、ヘプタデカフルオロ-n-オクチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、1,1-ジフルオロ-n-プロピル基、1,1,2,2-テトラフルオロ-n-プロピル基、3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル基、2-ノルボルニル-1,1-ジフルオロエチル基、2-ノルボルニルテトラフルオロエチル基、及び3-アダマンチル-1,1,2,2-テトラフルオロプロピル基が挙げられる。
【0358】
R22aとしての有機基がアルキルチオ基で置換された脂肪族炭化水素基である場合の好適な例としては、2-メチルチオエチル基、4-メチルチオ-n-ブチル基、及び2-n-ブチルチオエチル基が挙げられる。
【0359】
R22aとしての有機基がハロゲン原子及びアルキルチオ基で置換された脂肪族炭化水素基である場合の好適な例としては、3-メチルチオ-1,1,2,2-テトラフルオロ-n-プロピル基が挙げられる。
【0360】
R22aとしての有機基がアリール基である場合の好適な例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基が挙げられる。
【0361】
R22aとしての有機基がハロゲン原子で置換されたアリール基である場合の好適な例としては、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、トリクロロフェニル基が挙げられる。
【0362】
R22aとしての有機基がアルキルチオ基で置換されたアリール基である場合の好適な例としては、4-メチルチオフェニル基、4-n-ブチルチオフェニル基、4-n-オクチルチオフェニル基、4-n-ドデシルチオフェニル基が挙げられる。
【0363】
R22aとしての有機基がハロゲン原子及びアルキルチオ基で置換されたアリール基である場合の好適な例としては、1,2,5,6-テトラフルオロ-4-メチルチオフェニル基、1,2,5,6-テトラフルオロ-4-n-ブチルチオフェニル基、1,2,5,6-テトラフルオロ-4-n-ドデシルチオフェニル基が挙げられる。
【0364】
R22aとしての有機基がアラルキル基である場合の好適な例としては、ベンジル基、フェネチル基、2-フェニルプロパン-2-イル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基が挙げられる。
【0365】
R22aとしての有機基がハロゲン原子で置換されたアラルキル基である場合の好適な例としては、ペンタフルオロフェニルメチル基、フェニルジフルオロメチル基、2-フェニルテトラフルオロエチル基、2-(ペンタフルオロフェニル)エチル基が挙げられる。
【0366】
R22aとしての有機基がアルキルチオ基で置換されたアラルキル基である場合の好適な例としては、p-メチルチオベンジル基が挙げられる。
【0367】
R22aとしての有機基がハロゲン原子及びアルキルチオ基で置換されたアラルキル基である場合の好適な例としては、2-(2,3,5,6-テトラフルオロ-4-メチルチオフェニル)エチル基が挙げられる。
【0368】
R22aとしての有機基がアルキルアリール基である場合の好適な例としては、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、3-イソプロピルフェニル基、4-イソプロピルフェニル基、4-n-ブチルフェニル基、4-イソブチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-n-ヘキシルフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、4-n-オクチルフェニル基、4-(2-エチル-n-ヘキシル)フェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル基、2,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、2,6-ジ-tert-ブチルフェニル基、2,4-ジ-tert-ペンチルフェニル基、2,5-ジ-tert-ペンチルフェニル基、2,5-ジ-tert-オクチルフェニル基、2-シクロヘキシルフェニル基、3-シクロヘキシルフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、2,4,5-トリメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、2,4,6-トリイソプロピルフェニル基が挙げられる。
【0369】
式(c-5a)で表される基は、エーテル基含有基である。
式(c-5a)において、Y1で表される炭素原子数1以上4以下のアルカンジイル基としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-2,3-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基が挙げられる。
式(c-5a)において、R27a又はR28aで表される炭素原子数2以上6以下のアルカンジイル基としては、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-2,3-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ペンタン-1,3-ジイル基、ペンタン-1,4-ジイル基、ペンタン-2,3-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘキサン-1,2-ジイル基、ヘキサン-1,3-ジイル基、ヘキサン-1,4-ジイル基、ヘキサン-2,5-ジイル基、ヘキサン-2,4-ジイル基、ヘキサン-3,4-ジイル基が挙げられる。
【0370】
式(c-5a)において、R27a又はR28aが、ハロゲン原子で置換された炭素原子数2以上6以下のアルカンジイル基である場合、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びフッ素原子が挙げられる。ハロゲン原子で置換されたアルカンジイル基の例としては、テトラフルオロエタン-1,2-ジイル基、1,1-ジフルオロエタン-1,2-ジイル基、1-フルオロエタン-1,2-ジイル基、1,2-ジフルオロエタン-1,2-ジイル基、ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジイル基、1,1,2,2,-テトラフルオロプロパン-1,3-ジイル基、1,1,2,2,-テトラフルオロペンタン-1,5-ジイル基が挙げられる。
【0371】
式(c-5a)においてR27a又はR28aがアリーレン基である場合の例としては、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、2,5-ジメチル-1,4-フェニレン基、ビフェニル-4,4’-ジイル基、ジフェニルメタン-4,4’-ジイル基、2,2,-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイル基、ナフタレン-1,2-ジイル基、ナフタレン-1,3-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、ナフタレン-1,5-ジイル基、ナフタレン-1,6-ジイル基、ナフタレン-1,7-ジイル基、ナフタレン-1,8-ジイル基、ナフタレン-2,3-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-2,7-ジイル基が挙げられる。
【0372】
式(c-5a)において、R27a又はR28aが、ハロゲン原子で置換されたアリーレン基である場合、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びフッ素原子が挙げられる。ハロゲン原子で置換されたアリーレン基の例としては、2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-フェニレン基が挙げられる。
【0373】
式(c-5a)において、R29aで表される分岐を有してもよい炭素原子数1以上18以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘキサン-2-イル基、n-ヘキサン-3-イル基、n-ヘプチル基、n-ヘプタン-2-イル基、n-ヘプタン-3-イル基、イソヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基が挙げられる。
【0374】
式(c-5a)において、R29aが、ハロゲン原子で置換された炭素原子数1以上18以下のアルキル基である場合、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びフッ素原子が挙げられる。ハロゲン原子で置換されたアルキル基の例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ-n-プロピル基、ノナフルオロ-n-ブチル基、トリデカフルオロ-n-ヘキシル基、ヘプタデカフルオロ-n-オクチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、1,1-ジフルオロ-n-プロピル基、1,1,2,2-テトラフルオロ-n-プロピル基、3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル基、1,1,2,2-テトラフルオロテトラデシル基が挙げられる。
【0375】
式(c-5a)において、R29aが、炭素原子数3以上12以下の脂環式炭化水素基である場合、当該脂環式炭化水素基の主骨格を構成する脂環式炭化水素の例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、及びアダマンタンが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、これらの脂環式炭化水素から水素原子を1つ除いた基が好ましい。
【0376】
式(c-5a)において、R29aはアリール基、ハロゲン化アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アラルキル基である場合、これらの基の好適な例は、R22aがこれらの基である場合と同様である。
【0377】
式(c-5a)で表される基の中でも好適な基は、R27aで表される基のうち硫黄原子に結合する炭素原子がフッ素原子で置換されている基である。かかる好適な基の炭素原子数は2以上18以下が好ましい。
【0378】
R22aとしては、炭素原子数1以上8以下のパーフルオロアルキル基が好ましい。また、高精細なレジストパターンを形成しやすいことから、カンファー-10-イル基もR22aとして好ましい。
【0379】
式(c-5)において、R23a~R26aは、水素原子又は一価の有機基である。また、R23aとR24aと、R24aとR25aと、又はR25aとR26aとは、それぞれ互いに結合して環を形成してもよい。例えば、R25aとR26aとが結合してナフタレン環とともに5員環を形成することにより、アセナフテン骨格を形成してもよい。
【0380】
一価の有機基としては、脂環式炭化水素基、複素環基(ヘテロシクリル基)、又はハロゲン原子で置換されてもよく、分岐を有してもよい炭素原子数4以上18以下のアルコキシ基;ヘテロシクリルオキシ基;脂環式炭化水素基、複素環基(ヘテロシクリル基)、又はハロゲン原子で置換されてもよく、分岐を有してもよい炭素原子数4以上18以下のアルキルチオ基;ヘテロシクリルチオ基;が好ましい。
また、当該アルコキシ基の酸素原子に隣接しない任意の位置のメチレン基が-CO-で置換された基も好ましい。
当該アルコキシ基が-O-CO-結合、又は-O-CO-NH-結合で中断された基も好ましい。なお、-O-CO-結合及び-O-CO-NH-結合の左端が、アルコキシ基中のナフタル酸母核に近い側である。
さらに、脂環式炭化水素基、複素環基、又はハロゲン原子で置換されてもよく、分岐を有してもよい炭素原子数4以上18以下のアルキルチオ基も、R23a~R26aとして好ましい。
当該アルキルチオ基の硫黄原子に隣接しない任意の位置のメチレン基が-CO-で置換された基も好ましい。
当該アルキルチオ基が-O-CO-結合、又は-O-CO-NH-結合で中断された基も好ましい。なお、-O-CO-結合及び-O-CO-NH-結合の左端が、アルキルチオ基中のナフタル酸母核に近い側である。
【0381】
R23a~R26aとしては、R23aが有機基であり、R24a~R26aが水素原子であるか、R24aが有機基であり、R23a、R25a、及びR26aが水素原子であるのが好ましい。また、R23a~R26aが全て水素原子であってもよい。
【0382】
R23a~R26aが、無置換のアルコキシ基である場合の例としては、n-ブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、tert-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシル基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基,n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-ヘプタデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基が挙げられる。
【0383】
R23a~R26aが、無置換のアルキルチオ基である場合の例としては、n-ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、tert-ペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基、n-ヘプチルチオ基、イソヘプチルチオ基、tert-ヘプチルチオ基、n-オクチルチオ基、イソオクチルチオ基、tert-オクチルチオ基、2-エチルヘキシルチオ基、n-ノニルチオ基、n-デシルチオ基、n-ウンデシルチオ基、n-ドデシルチオ基、n-トリデシルチオ基、n-テトラデシルチオ基、n-ペンタデシルチオ基、n-ヘキサデシルチオ基、n-ヘプタデシルチオ基、n-オクタデシルチオ基が挙げられる。
【0384】
R23a~R26aが脂環式炭化水素基で置換されたアルコキシ基又はアルキルチオ基である場合に、脂環式炭化水素基の主骨格を構成する脂環式炭化水素の例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、及びアダマンタンが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、これらの脂環式炭化水素から水素原子を1つ除いた基が好ましい。
【0385】
R23a~R26aが複素環基で置換されたアルコキシ基又はアルキルチオ基である場合、又はR23a~R26aがヘテロシクリルオキシ基である場合、複素環基又はヘテロシクリルオキシ基の主骨格を構成する複素環の例としては、ピロール、チオフェン、フラン、ピラン、チオピラン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、イソオキサゾリジン、イソチアゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、クロマン、チオクロマン、イソクロマン、イソチオクロマン、インドリン、イソインドリン、ピリンジン、インドリジン、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、ナフチリジン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、カルバゾール、カルボリン、フェナジン、アンチリジン、チアジアゾール、オキサジアゾール、トリアジン、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾフロキサン、ナフトイミダゾール、ベンゾトリアゾール、テトラアザインデンが挙げられる。また、これらの複素環のうち共役結合を有する環に水素添加した、飽和複素環も好ましい。
アルコキシ基又はアルキルチオ基を置換する複素環基、又はヘテロシクリルオキシ基に含まれる複素環基としては、上記の複素環から水素原子を1つ除いた基が好ましい。
【0386】
R23a~R26aが、脂環式炭化水素基を含むアルコキシ基である場合の例としては、シクロペンチルオキシ基、メチルシクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、フルオロシクロヘキシルオキシ基、クロロシクロヘキシルオキシ基、シクロヘキシルメチルオキシ基、メチルシクロヘキシルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、エチルシクロヘキシルオキシ基、シクロヘキシルエチルオキシ基、ジメチルシクロヘキシルオキシ基、メチルシクロヘキシルメチルオキシ基、ノルボルニルメチルオキシ基、トリメチルシクロヘキシルオキシ基、1-シクロヘキシルブチルオキシ基、アダマンチルオキシ基、メンチルオキシ基、n-ブチルシクロヘキシルオキシ基、tert-ブチルシクロヘキシルオキシ基、ボルニルオキシ基、イソボルニルオキシ基、デカヒドロナフチルオキシ基、ジシクロペンタジエノキシ基、1-シクロヘキシルペンチルオキシ基、メチルアダマンチルオキシ基、アダマンチルメチルオキシ基、4-ペンチルシクロヘキシルオキシ基、シクロヘキシルシクロヘキシルオキシ基、アダマンチルエチルオキシ基、ジメチルアダマンチルオキシ基が挙げられる。
【0387】
R23a~R26aが、ヘテロシクリルオキシ基である場合の例としては、テトラヒドロフラニルオキシ基、フルフリルオキシ基、テトラヒドロフルフリルオキシ基、テトラヒドロピラニルオキシ基、ブチロラクトニルオキシ基、インドリルオキシ基が挙げられる。
【0388】
R23a~R26aが、脂環式炭化水素基を含むアルキルチオ基である場合の例としては、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、シクロヘキシルメチルチオ基、ノルボルニルチオ基、イソノルボルニルチオ基が挙げられる。
【0389】
R23a~R26aが、ヘテロシクリルチオ基である場合の例としては、フルフリルチオ基、テトラヒドロフラニルチオ基が挙げられる。
【0390】
R23a~R26aが、アルコキシ基の酸素原子に隣接しない任意の位置のメチレン基が-CO-で置換された基である場合の例としては、2-ケトブチル-1-オキシ基、2-ケトペンチル-1-オキシ基、2-ケトヘキシル-1-オキシ基、2-ケトヘプチル-1-オキシ基、2-ケトオクチル-1-オキシ基、3-ケトブチル-1-オキシ基、4-ケトペンチル-1-オキシ基、5-ケトヘキシル-1-オキシ基、6-ケトヘプチル-1-オキシ基、7-ケトオクチル-1-オキシ基、3-メチル-2-ケトペンタン-4-オキシ基、2-ケトペンタン-4-オキシ基、2-メチル-2-ケトペンタン-4-オキシ基、3-ケトヘプタン-5-オキシ基、2-アダマンタノン-5-オキシ基が挙げられる。
【0391】
R23a~R26aが、アルキルチオ基の硫黄原子に隣接しない任意の位置のメチレン基が-CO-で置換された基である場合の例としては、2-ケトブチル-1-チオ基、2-ケトペンチル-1-チオ基、2-ケトヘキシル-1-チオ基、2-ケトヘプチル-1-チオ基、2-ケトオクチル-1-チオ基、3-ケトブチル-1-チオ基、4-ケトペンチル-1-チオ基、5-ケトヘキシル-1-チオ基、6-ケトヘプチル-1-チオ基、7-ケトオクチル-1-チオ基、3-メチル-2-ケトペンタン-4-チオ基、2-ケトペンタン-4-チオ基、2-メチル-2-ケトペンタン-4-チオ基、3-ケトヘプタン-5-チオ基が挙げられる。
【0392】
式(c-5)で表されるナフタル酸誘導体の好適な例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化59】
【0393】
【0394】
【0395】
【0396】
【0397】
【0398】
【0399】
【0400】
【0401】
また、その他の光酸発生剤としては、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル-p-トルエンスルホニルジアゾメタン、1-シクロヘキシルスルホニル-1-(1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1-メチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4-エチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(3-メチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4-メトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4-フルオロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4-クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等のビススルホニルジアゾメタン類;2-メチル-2-(p-トルエンスルホニル)プロピオフェノン、2-(シクロヘキシルカルボニル)-2-(p-トルエンスルホニル)プロパン、2-メタンスルホニル-2-メチル-(p-メチルチオ)プロピオフェノン、2,4-ジメチル-2-(p-トルエンスルホニル)ペンタン-3-オン等のスルホニルカルボニルアルカン類;1-p-トルエンスルホニル-1-シクロヘキシルカルボニルジアゾメタン、1-ジアゾ-1-メチルスルホニル-4-フェニル-2-ブタノン、1-シクロヘキシルスルホニル-1-シクロヘキシルカルボニルジアゾメタン、1-ジアゾ-1-シクロヘキシルスルホニル-3,3-ジメチル-2-ブタノン、1-ジアゾ-1-(1,1-ジメチルエチルスルホニル)-3,3-ジメチル-2-ブタノン、1-アセチル-1-(1-メチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、1-ジアゾ-1-(p-トルエンスルホニル)-3,3-ジメチル-2-ブタノン、1-ジアゾ-1-ベンゼンスルホニル-3,3-ジメチル-2-ブタノン、1-ジアゾ-1-(p-トルエンスルホニル)-3-メチル-2-ブタノン、2-ジアゾ-2-(p-トルエンスルホニル)酢酸シクロヘキシル、2-ジアゾ-2-ベンゼンスルホニル酢酸-tert-ブチル、2-ジアゾ-2-メタンスルホニル酢酸イソプロピル、2-ジアゾ-2-ベンゼンスルホニル酢酸シクロヘキシル、2-ジアゾ-2-(p-トルエンスルホニル)酢酸-tert-ブチル等のスルホニルカルボニルジアゾメタン類;p-トルエンスルホン酸-2-ニトロベンジル、p-トルエンスルホン酸-2,6-ジニトロベンジル、p-トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸-2,4-ジニトロベンジル等のニトロベンジル誘導体;ピロガロールのメタンスルホン酸エステル、ピロガロールのベンゼンスルホン酸エステル、ピロガロールのp-トルエンスルホン酸エステル、ピロガロールのp-メトキシベンゼンスルホン酸エステル、ピロガロールのメシチレンスルホン酸エステル、ピロガロールのベンジルスルホン酸エステル、没食子酸アルキルのメタンスルホン酸エステル、没食子酸アルキルのベンゼンスルホン酸エステル、没食子酸アルキルのp-トルエンスルホン酸エステル、没食子酸アルキル(アルキル基の炭素原子数は1以上15以下である)のp-メトキシベンゼンスルホン酸エステル、没食子酸アルキルのメシチレンスルホン酸エステル、没食子酸アルキルのベンジルスルホン酸エステル等のポリヒドロキシ化合物と脂肪族又は芳香族スルホン酸とのエステル類;等が挙げられる。
これらの光酸発生剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0402】
この光酸発生剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、光酸発生剤の含有量は、第2の態様の感光性組成物の全質量に対し、0.1質量%以上10質量%以下とすることが好ましく、0.5質量%以上3質量%以下とすることがより好ましい。光酸発生剤の使用量を上記の範囲とすることにより、良好な感度を備え、均一な溶液であって、保存安定性に優れる第2の態様の感光性組成物を調製しやすい。
【0403】
酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂としては、特に限定されず、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する任意の樹脂を用いることができる。その中でも、ノボラック樹脂(B1)、ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)、及びアクリル樹脂(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。
【0404】
[ノボラック樹脂(B1)]
ノボラック樹脂(B1)としては、下記式(b1)で表される構成単位を含む樹脂を使用することができる。
【0405】
【0406】
上記式(b1)中、R1bは、酸解離性溶解抑制基を示し、R2b、R3bは、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。
【0407】
上記R1bで表される酸解離性溶解抑制基としては、下記式(b2)、(b3)で表される基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、ビニルオキシエチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラフラニル基、又はトリアルキルシリル基であることが好ましい。
【0408】
【0409】
上記式(b2)、(b3)中、R4b、R5bは、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R6bは、炭素原子数1以上10以下の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を表し、R7bは、炭素原子数1以上6以下の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を表し、oは0又は1を表す。
【0410】
上記直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。また、上記環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0411】
ここで、上記式(b2)で表される酸解離性溶解抑制基として、具体的には、メトキシエチル基、エトキシエチル基、n-プロポキシエチル基、イソプロポキシエチル基、n-ブトキシエチル基、イソブトキシエチル基、tert-ブトキシエチル基、シクロヘキシロキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、1-メトキシ-1-メチル-エチル基、1-エトキシ-1-メチルエチル基等が挙げられる。また、上記式(b3)で表される酸解離性溶解抑制基として、具体的には、tert-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニルメチル基等が挙げられる。また、上記トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリ-tert-ブチルジメチルシリル基等の各アルキル基の炭素原子数が1以上6以下のものが挙げられる。
【0412】
[ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)]
ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)としては、下記式(b4)で表される構成単位を含む樹脂を使用することができる。
【0413】
【0414】
上記式(b4)中、R8bは、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、R9bは、酸解離性溶解抑制基を表す。
【0415】
上記炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、例えば炭素原子数1以上6以下の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基である。直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0416】
上記R9bで表される酸解離性溶解抑制基としては、上記式(b2)、(b3)に例示したものと同様の酸解離性溶解抑制基を用いることができる。
【0417】
さらに、ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)は、物理的、化学的特性を適度にコントロールする目的で他の重合性化合物を構成単位として含むことができる。このような重合性化合物としては、公知のラジカル重合性化合物や、アニオン重合性化合物が挙げられる。また、このような重合性化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシ基及びエステル結合を有するメタクリル酸誘導体類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチル等のジカルボン酸ジエステル類;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、α-メチルヒドロキシスチレン、α-エチルヒドロキシスチレン等のビニル基含有芳香族化合物類;酢酸ビニル等のビニル基含有脂肪族化合物類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有重合性化合物類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド結合含有重合性化合物類;等を挙げることができる。
【0418】
[アクリル樹脂(B3)]
アクリル樹脂(B3)としては、下記式(b5)~(b7)で表される構成単位を含む樹脂を使用することができる。
【0419】
【0420】
上記式(b5)~(b7)中、R10b、及びR14b~R19bは、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、フッ素原子、又は炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のフッ素化アルキル基を表し、R11b~R13bは、それぞれ独立に炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のフッ素化アルキル基、又は炭素原子数5以上20以下の脂肪族環式基を表し、R12b及びR13bは互いに結合して、両者が結合している炭素原子とともに炭素原子数5以上20以下の炭化水素環を形成してもよく、Ybは、置換基を有していてもよい脂肪族環式基又はアルキル基を表し、pは0以上4以下の整数を表し、qは0又は1を表す。
【0421】
なお、上記直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。また、フッ素化アルキル基とは、上記アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換された基である。
脂肪族環式基の具体例としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が挙げられる。特に、シクロヘキサン、アダマンタンから1個の水素原子を除いた基(さらに置換基を有していてもよい)が好ましい。
【0422】
上記R12b及びR13bが互いに結合して炭化水素環を形成しない場合、上記R11b、R12b、及びR13bとしては、高コントラストで、解像度、焦点深度幅等が良好な点から、炭素原子数2以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましい。上記R15b、R16b、R18b、R19bとしては、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0423】
上記R12b及びR13bは、両者が結合している炭素原子とともに炭素原子数5以上20以下の脂肪族環式基を形成してもよい。このような脂肪族環式基の具体例としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。特に、シクロヘキサン、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基(さらに置換基を有していてもよい)が好ましい。
【0424】
さらに、上記R12b及びR13bが形成する脂肪族環式基が、その環骨格上に置換基を有する場合、当該置換基の例としては、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、酸素原子(=O)等の極性基や、炭素原子数1以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。極性基としては特に酸素原子(=O)が好ましい。
【0425】
上記Ybは、脂肪族環式基又はアルキル基であり、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。特に、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基(さらに置換基を有していてもよい)が好ましい。
【0426】
さらに、上記Ybの脂肪族環式基が、その環骨格上に置換基を有する場合、該置換基の例としては、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、酸素原子(=O)等の極性基や、炭素原子数1以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。極性基としては特に酸素原子(=O)が好ましい。
【0427】
また、Ybがアルキル基である場合、炭素原子数1以上20以下、好ましくは6以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましい。このようなアルキル基は、特にアルコキシアルキル基であることが好ましく、このようなアルコキシアルキル基としては、1-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基、1-n-プロポキシエチル基、1-イソプロポキシエチル基、1-n-ブトキシエチル基、1-イソブトキシエチル基、1-tert-ブトキシエチル基、1-メトキシプロピル基、1-エトキシプロピル基、1-メトキシ-1-メチル-エチル基、1-エトキシ-1-メチルエチル基等が挙げられる。
【0428】
上記式(b5)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記式(b5-1)~(b5-33)で表される構成単位を挙げることができる。
【0429】
【0430】
上記式(b5-1)~(b5-33)中、R20bは、水素原子又はメチル基を表す。
【0431】
上記式(b6)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記式(b6-1)~(b6-25)で表される構成単位を挙げることができる。
【0432】
【0433】
上記式(b6-1)~(b6-25)中、R20bは、水素原子又はメチル基を表す。
【0434】
上記式(b7)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記式(b7-1)~(b7-15)で表される構成単位を挙げることができる。
【0435】
【0436】
上記式(b7-1)~(b7-15)中、R20bは、水素原子又はメチル基を表す。
【0437】
さらに、アクリル樹脂(B3)は、上記式(b5)~(b7)で表される構成単位に対して、さらにエーテル結合を有する重合性化合物から誘導された構成単位を含む共重合体からなる樹脂であることが好ましい。
【0438】
上記エーテル結合を有する重合性化合物としては、エーテル結合及びエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体等のラジカル重合性化合物を例示することができ、具体例としては、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記エーテル結合を有する重合性化合物は、好ましくは、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートである。これらの重合性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0439】
さらに、アクリル樹脂(B3)には、物理的、化学的特性を適度にコントロールする目的で他の重合性化合物を構成単位として含めることができる。このような重合性化合物としては、公知のラジカル重合性化合物や、アニオン重合性化合物が挙げられる。
【0440】
このような重合性化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシ基及びエステル結合を有するメタクリル酸誘導体類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチル等のジカルボン酸ジエステル類;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、α-メチルヒドロキシスチレン、α-エチルヒドロキシスチレン等のビニル基含有芳香族化合物類;酢酸ビニル等のビニル基含有脂肪族化合物類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有重合性化合物類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド結合含有重合性化合物類;等を挙げることができる。
【0441】
また、重合性化合物としては、酸非解離性の脂肪族多環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、ビニル基含有芳香族化合物類等を挙げることができる。酸非解離性の脂肪族多環式基としては、特にトリシクロデカニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基、イソボルニル基、ノルボルニル基等が、工業上入手しやすい等の点で好ましい。これらの脂肪族多環式基は、炭素原子数1以上5以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を置換基として有していてもよい。
【0442】
酸非解離性の脂肪族多環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル類としては、具体的には、下記式(b8-1)~(b8-5)の構成単位を与える(メタ)アクリル酸エステル類を例示することができる。
【0443】
【0444】
上記式(b8-1)~(b8-5)中、R21bは、水素原子又はメチル基を表す。
【0445】
上記の感光性樹脂の中でも、アクリル樹脂(B3)を用いることが好ましい。このようなアクリル樹脂(B3)の中でも、上記式(b5)で表される構成単位と、(メタ)アクリル酸から誘導された構成単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類から誘導された構成単位と、(メタ)アクリル酸アリールエステル類から誘導された構成単位とを有する共重合体であることが好ましい。
【0446】
このような共重合体としては、下記式(b9)で表される共重合体であることが好ましい。
【0447】
【0448】
上記式(b9)中、R22bは、水素原子又はメチル基を表し、R23bは、炭素原子数2以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、Xbは、それが結合している炭素原子とともに形成された炭素原子数5以上20以下の炭化水素環を表し、R24bは、炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシアルキル基を表し、R25bは、炭素原子数6以上12以下のアリール基を表す。
【0449】
さらに、上記式(b9)で表される共重合体において、s、t、u、vはそれぞれの構成単位のモル比を表し、sは8モル%以上45モル%以下であり、tは10モル%以上65モル%以下であり、uは3モル%以上25モル%以下であり、vは6モル%以上25モル%以下である。
【0450】
感光性樹脂のポリスチレン換算質量平均分子量は、好ましくは10000以上600000以下であり、より好ましくは20000以上400000以下であり、さらに好ましくは30000以上300000以下である。このような質量平均分子量とすることにより、基板表面との剥離性が低下することなく感光性樹脂層の十分な強度を保持でき、さらにはめっき時のプロファイルの膨れや、クラックの発生を防ぐことができる。
【0451】
また、感光性樹脂は、分散度が1.05以上の樹脂であることが好ましい。ここで、分散度とは、質量平均分子量を数平均分子量で除した値のことである。このような分散度とすることにより、所望とするめっきに対する応力耐性や、めっき処理により得られる金属層が膨らみやすくなるという問題を回避できる。
【0452】
樹脂の含有量は、第2の態様の感光性組成物の全質量に対して5質量%以上60質量%以下とすることが好ましい。
【0453】
第2の態様の感光性組成物は、クラック耐性を向上させるため、さらにアルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、ノボラック樹脂(C1)、ポリヒドロキシスチレン樹脂(C2)、及びアクリル樹脂(C3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
【0454】
[ノボラック樹脂(C1)]
ノボラック樹脂は、例えばフェノール性水酸基を有する芳香族化合物(以下、単に「フェノール類」という。)とアルデヒド類とを酸触媒下で付加縮合させることにより得られる。
【0455】
上記フェノール類としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-ブチルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、p-フェニルフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、没食子酸、没食子酸エステル、α-ナフトール、β-ナフトール等が挙げられる。
上記アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、アセトアルデヒド等が挙げられる。
付加縮合反応時の触媒は、特に限定されないが、例えば酸触媒では、塩酸、硝酸、硫酸、蟻酸、シュウ酸、酢酸等が使用される。
【0456】
なお、o-クレゾールを使用すること、樹脂中の水酸基の水素原子を他の置換基に置換すること、あるいは嵩高いアルデヒド類を使用することにより、ノボラック樹脂の柔軟性を一層向上させることが可能である。
【0457】
ノボラック樹脂(C1)の質量平均分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、1000以上50000以下であることが好ましい。
【0458】
[ポリヒドロキシスチレン樹脂(C2)]
ポリヒドロキシスチレン樹脂(C2)を構成するヒドロキシスチレン系化合物としては、p-ヒドロキシスチレン、α-メチルヒドロキシスチレン、α-エチルヒドロキシスチレン等が挙げられる。
さらに、ポリヒドロキシスチレン樹脂(C2)は、スチレン樹脂との共重合体とすることが好ましい。このようなスチレン樹脂を構成するスチレン系化合物としては、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
【0459】
ポリヒドロキシスチレン樹脂(C2)の質量平均分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、1000以上50000以下であることが好ましい。
【0460】
[アクリル樹脂(C3)]
アクリル樹脂(C3)としては、エーテル結合を有する重合性化合物から誘導された構成単位、及びカルボキシ基を有する重合性化合物から誘導された構成単位を含むことが好ましい。
【0461】
上記エーテル結合を有する重合性化合物としては、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のエーテル結合及びエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体等を例示することができる。上記エーテル結合を有する重合性化合物は、好ましくは、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレートである。これらの重合性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0462】
上記カルボキシ基を有する重合性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシ基及びエステル結合を有する化合物;等を例示することができる。上記カルボキシ基を有する重合性化合物は、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。これらの重合性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0463】
アクリル樹脂(C3)の質量平均分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、50000以上800000以下であることが好ましい。
【0464】
アルカリ可溶性樹脂の含有量は、上記感光性樹脂とアルカリ可溶性樹脂との合計を100質量部とした場合、0質量部以上80質量部以下が好ましく、0質量部以上60質量部以下がより好ましい。アルカリ可溶性樹脂の含有量を上記の範囲とすることによりクラック耐性を向上させ、現像時の膜減りを防ぐことができる傾向がある。
【0465】
第2の態様の感光性樹脂組成物は、感光性組成物からなる膜の引き置き安定性等の向上のため、さらに酸拡散制御剤を含有することが好ましい。酸拡散制御剤としては、含窒素化合物(D1)が好ましく、さらに必要に応じて、有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(D2)を含有させることができる。
【0466】
[含窒素化合物(D1)]
含窒素化合物(D1)としては、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、トリベンジルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N-メチルピロリドン、メチルウレア、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア、1,1,3,3,-テトラメチルウレア、1,3-ジフェニルウレア、イミダゾール、ベンズイミダゾール、4-メチルイミダゾール、8-オキシキノリン、アクリジン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、2,4,6-トリ(2-ピリジル)-S-トリアジン、モルホリン、4-メチルモルホリン、ピペラジン、1,4-ジメチルピペラジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピリジン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0467】
含窒素化合物(D1)は、上記感光性樹脂及びアルカリ可溶性樹脂の合計質量100質量部に対して、通常0質量部以上5質量部以下の範囲で用いられ、0質量部以上3質量部以下の範囲で用いられることが特に好ましい。
【0468】
[有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(D2)]
有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(D2)のうち、有機カルボン酸としては、具体的には、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等が好適であり、特にサリチル酸が好ましい。
【0469】
リンのオキソ酸又はその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ-n-ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸及びそれらのエステルのような誘導体;ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸-ジ-n-ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸及びそれらのエステルのような誘導体;ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸等のホスフィン酸及びそれらのエステルのような誘導体;等が挙げられる。これらの中でも、特にホスホン酸が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0470】
有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(D2)は、上記感光性樹脂及び上記アルカリ可溶性樹脂の合計質量100質量部に対して、通常0質量部以上5質量部以下の範囲で用いられ、0質量部以上3質量部以下の範囲で用いられることが特に好ましい。
【0471】
また、塩を形成させて安定させるために、有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(D2)は、上記含窒素化合物(D1)と同等量を用いることが好ましい。
【0472】
第2の態様の感光性組成物は、有機溶剤を含有する。有機溶剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来よりポジ型の感光性樹脂組成物に使用されている有機溶剤から適宜選択して使用することができる。
【0473】
有機溶剤の具体例としては、第1の態様の感光性組成物において挙げた溶剤の他、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、モノフェニルエーテル等の多価アルコール類及びその誘導体;ジオキサン等の環式エーテル類;蟻酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0474】
有機溶剤の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、例えば感光性樹脂組成物の固形分濃度が2質量%以上55質量%以下となる範囲で適宜調整すればよい。感光性組成物を、スピンコート法等により得られる感光性樹脂層の膜厚が10μm以上となるような厚膜用途で用いる場合、感光性樹脂組成物の固形分濃度が30質量%以上55質量%以下となる範囲で、有機溶剤を用いるのが好ましい。
【0475】
第2の態様の感光性組成物は、可塑性を向上させるため、さらにポリビニル樹脂を含有していてもよい。ポリビニル樹脂の具体例としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリヒドロキシスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニル安息香酸、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルフェノール、及びこれらの共重合体等が挙げられる。ポリビニル樹脂は、ガラス転移点の低さの点から、好ましくはポリビニルメチルエーテルである。
【0476】
また、第2の態様の感光性組成物は、感光性組成物を用いて形成される水素バリア膜と基板、特に金属基板との接着性を向上させるため、さらに接着助剤を含有していてもよい。
【0477】
第2の感光性組成物は、現像液に対する溶解性の微調整を行うため、酸、酸無水物、又は高沸点溶媒をさらに含有していてもよい。
【0478】
酸及び酸無水物の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、n-酪酸、イソ酪酸、n-吉草酸、イソ吉草酸、安息香酸、桂皮酸等のモノカルボン酸類;乳酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、m-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ桂皮酸、3-ヒドロキシ桂皮酸、4-ヒドロキシ桂皮酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、シリンギン酸等のヒドロキシモノカルボン酸類;シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、1,2,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸等の多価カルボン酸類;無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバニル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス無水トリメリタート、グリセリントリス無水トリメリタート等の酸無水物;等を挙げることができる。
【0479】
また、高沸点溶媒の具体例としては、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ-ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセタート等を挙げることができる。
【0480】
第2の態様の感光性組成物は、感度を向上させるため、増感剤をさらに含有していてもよい。
【0481】
水素バリア剤(B)の含有量は、第2の態様の感光性組成物における基材成分(A)に相当する樹脂の質量に対して、0.01質量%以上30質量%以下が好ましく、0.05質量%以上20質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上10質量%以下が特に好ましい。上記の範囲とすることにより、良好な現像性を得ながら、水素バリア性能を有するパターンを得ることができる。
【0482】
(3)第3の態様の感光性組成物
第3の態様の感光性組成物は、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂、酸架橋性物質、光酸発生剤、水素バリア剤(B)、及び有機溶剤を含有するネガ型感光性組成物である。
【0483】
第3の態様の感光性組成物におけるフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシスチレン系樹脂を用いることができる。
ポリヒドロキシスチレン系樹脂は、ヒドロキシスチレンに由来する構成単位を少なくとも有する。
ここで「ヒドロキシスチレン」とは、ヒドロキシスチレン、及びヒドロキシスチレンのα位に結合する水素原子がハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体のヒドロキシスチレン誘導体(モノマー)を含む概念とする。
「ヒドロキシスチレン誘導体」は、少なくともベンゼン環とこれに結合する水酸基とが維持されており、例えば、ヒドロキシスチレンのα位に結合する水素原子が、ハロゲン原子、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにヒドロキシスチレンの水酸基が結合したベンゼン環に、さらに炭素原子数1以上5以下のアルキル基が結合したものや、この水酸基が結合したベンゼン環に、さらに1個以上2個以下の水酸基が結合したもの(このとき、水酸基の数の合計は2以上3以下である。)等を包含するものとする。
ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
なお、「ヒドロキシスチレンのα位」とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことをいう。
【0484】
このヒドロキシスチレンに由来する構成単位は、例えば下記式(b-1)で表される。
【0485】
【0486】
上記式(b-1)中、Rb1は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、又はハロゲン化アルキル基を示し、Rb2は炭素原子数1以上5以下のアルキル基を示し、pは1以上3以下の整数を示し、qは0以上2以下の整数を示す。
【0487】
Rb1のアルキル基は、好ましくは炭素原子数1以上5以下である。また、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、工業的にはメチル基が好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
ハロゲン化アルキル基としては、上述した炭素原子数1以上5以下のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基である。この中でも、水素原子の全部がフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。また、直鎖状又は分岐鎖状のフッ素化アルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等がより好ましく、トリフルオロメチル基(-CF3)が最も好ましい。
Rb1としては、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0488】
Rb2の炭素原子数1以上5以下のアルキル基としては、Rb1の場合と同様の基が挙げられる。
qは0以上2以下の整数である。これらの中でも0又は1であることが好ましく、工業上は特に0であることが好ましい。
Rb2の置換位置は、qが1である場合にはオルト位、メタ位、パラ位のいずれでもよく、さらに、qが2の場合には任意の置換位置を組み合わせることができる。
pは1以上3以下の整数であり、好ましくは1である。
水酸基の置換位置は、pが1である場合にはオルト位、メタ位、パラ位のいずれでもよいが、容易に入手可能で低価格であることからパラ位が好ましい。さらに、pが2又は3の場合には任意の置換位置を組み合わせることができる。
【0489】
上記式(b-1)で表される構成単位は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0490】
ポリヒドロキシスチレン系樹脂中、ヒドロキシスチレンに由来する構成単位の割合は、ポリヒドロキシスチレン系樹脂を構成する全構成単位に対して60モル%以上100モル%以下であることが好ましく、70モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、80モル%以上100モル%以下であることがさらに好ましい。上記の範囲内とすることにより、感光性組成物とした際に適度なアルカリ溶解性が得られる。
【0491】
ポリヒドロキシスチレン系樹脂は、スチレンに由来する構成単位をさらに有することが好ましい。
ここで「スチレンに由来する構成単位」とは、スチレン及びスチレン誘導体(但し、ヒドロキシスチレンは含まない。)のエチレン性二重結合が開裂してなる構成単位を包含すると定義される。
「スチレン誘導体」は、スチレンのα位に結合する水素原子が、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換された誘導体、並びにスチレンのフェニル基の水素原子が、炭素原子数1以上5以下のアルキル基等の置換基に置換されている誘導体等を包含すると定義される。
ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
なお、「スチレンのα位」とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことをいう。
【0492】
このスチレンに由来する構成単位は、例えば下記式(b-2)で表される。式中、Rb1、Rb2、qは上記式(b-1)と同義である。
【0493】
【0494】
Rb1及びRb2としては、上記式(b-1)のRb1及びRb2とそれぞれ同様の基が挙げられる。
qは0以上2以下の整数である。これらの中でも0又は1であることが好ましく、工業上は特に0であることが好ましい。
Rb2の置換位置は、qが1である場合にはオルト位、メタ位、パラ位のいずれでもよく、さらに、qが2の場合には任意の置換位置を組み合わせることができる。
【0495】
上記式(b-2)で表される構成単位は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0496】
ポリヒドロキシスチレン系樹脂中、スチレンに由来する構成単位の割合は、ポリヒドロキシスチレン系樹脂を構成する全構成単位に対して40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましい。上記の範囲とすることにより、感光性組成物とした際に適度なアルカリ溶解性が得られるとともに、他の構成単位とのバランスも良好になる。
【0497】
なお、ポリヒドロキシスチレン系樹脂は、ヒドロキシスチレンに由来する構成単位やスチレンに由来する構成単位以外の他の構成単位を有していてもよい。より好ましくは、上記ポリヒドロキシスチレン系樹脂は、ヒドロキシスチレンに由来する構成単位のみからなる重合体、あるいはヒドロキシスチレンに由来する構成単位とスチレンに由来する構成単位とからなる共重合体である。
【0498】
ポリヒドロキシスチレン系樹脂の質量平均分子量は、特に限定されないが、1500以上40000以下が好ましく、2000以上8000以下がより好ましい。
【0499】
また、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、ノボラック樹脂を用いることもできる。このノボラック樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下で付加縮合させることにより得ることができる。
【0500】
フェノール類としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等のクレゾール類;2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等のキシレノール類;o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、2-イソプロピルフェノール、3-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、o-ブチルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール等のアルキルフェノール類;2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール等のトリアルキルフェノール類;レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール等の多価フェノール類;アルキルレゾルシン、アルキルカテコール、アルキルハイドロキノン等のアルキル多価フェノール類(アルキル多価フェノール類に含まれるアルキル基の炭素原子数は1以上4以下である);α-ナフトール、β-ナフトール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA等が挙げられる。これらのフェノール類は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
これらのフェノール類の中でも、m-クレゾール、p-クレゾールが好ましく、m-クレゾールとp-クレゾールとを併用することがより好ましい。この場合、両者の配合割合を調整することにより、感度等の諸特性を調整することができる。
【0501】
アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、アセトアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒド類は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0502】
酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜リン酸等の無機酸類;蟻酸、シュウ酸、酢酸、ジエチル硫酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸類;酢酸亜鉛等の金属塩類等が挙げられる。これらの酸触媒は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0503】
このようにして得られるノボラック樹脂としては、具体的には、フェノール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、クレゾール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、フェノール-ナフトール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂等が挙げられる。
【0504】
ノボラック樹脂の質量平均分子量は、特に限定されないが、1000以上30000以下が好ましく、3000以上25000以下がより好ましい。
【0505】
また、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、フェノール-キシリレングリコール縮合樹脂、クレゾール-キシリレングリコール縮合樹脂、フェノール-ジシクロペンタジエン縮合樹脂等を用いることもできる。
【0506】
フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂の含有量は、第3の態様の感光性組成物の固形分に対して20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、35質量%以上65質量%以下であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、現像性のバランスがとりやすい傾向がある。
【0507】
第3の態様の感光性組成物における酸架橋性物質としては、特に限定されず、従来公知の酸架橋性物質を用いることができる。
【0508】
酸架橋性物質として具体的には、ヒドロキシ基又はアルコキシル基を有するアミノ樹脂、例えばメラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、グリコールウリル-ホルムアルデヒド樹脂、スクシニルアミド-ホルムアルデヒド樹脂、エチレン尿素-ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。これらの酸架橋性物質は、メラミン、尿素、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、スクシニルアミド、エチレン尿素を沸騰水中でホルマリンと反応させてメチロール化、あるいはこれにさらに低級アルコールを反応させてアルコキシル化することにより容易に得られる。実用上は、ニカラックMX-750、ニカラックMW-30、ニカラックMW100LM等のメラミン樹脂、ニカラックMX-290等の尿素樹脂(いずれも三和ケミカル社製)として入手することができる。また、サイメル1123、サイメル1128(三井サイアナッド社製)等のベンゾグアナミン樹脂も市販品として入手することができる。
【0509】
また、1,3,5-トリス(メトキシメトキシ)ベンゼン、1,2,4-トリス(イソプロポキシメトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(sec-ブトキシメトキシ)ベンゼン等のアルコキシル基を有するベンゼン化合物、2,6-ジヒドロキシメチル-p-tert-ブチルフェノール等のヒドロキシ基又はアルコキシル基を有するフェノール化合物等を用いることもできる。
これらの酸架橋性物質は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0510】
酸架橋性物質の含有量は、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂100質量部に対して5質量部以上50質量部以下であることが好ましく、10質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、感光性組成物の硬化性、パターニング特性が良好になる。
【0511】
第3の態様の感光性組成物における光酸発生剤としては、特に限定されず、従来公知の光酸発生剤を用いることができる。好ましい光酸発生剤としては、第2の感光性組成物について説明した光酸発生剤が挙げられる。
【0512】
光酸発生剤の含有量は、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂100質量部に対し0.05質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、感光性組成物の硬化性が良好になる。
【0513】
第3の態様の感光性組成物は、上記の通り、水素バリア剤(B)を含有する。この化合物を感光性組成物に含有させた際、水素バリア性能を有するパターン形成が可能となる。
【0514】
水素バリア剤(B)の含有量は、第3の態様の感光性組成物における基材成分(A)に相当する樹脂の質量に対して、0.01質量%以上30質量%以下が好ましく、0.05質量%以上20質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上10質量%以下が特に好ましい。上記の範囲とすることにより、良好な現像性を得ながら、水素バリア性能を有するパターンを得ることができる。
【0515】
第3の態様の感光性組成物は、さらに、フェノール性水酸基4個以上を有する分子量2000未満の化合物を含有していてもよい。
【0516】
このような化合物として具体的には、各種テトラヒドロキシベンゾフェノン、ペンタヒドロキシベンゾフェノン、ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ヘプタヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物の他に、ビス[2-ヒドロキシ-3-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルベンジル)-5-メチルフェニル]メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-2,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-2,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-6‐メチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-6-ヒドロキシ-4-メチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5-トリメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン等のヒドロキシアリール系化合物;2-(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)-2-(2’,3’,4’-トリヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2-(2’,4’-ジヒドロキシフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系化合物;分子量2000未満のポリ(o-ヒドロキシスチレン)、ポリ(m-ヒドロキシスチレン)、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、ポリ(α-メチル-p-ヒドロキシスチレン)、ポリ(4-ヒドロキシ-3-メチルスチレン)等のポリヒドロキシスチレン系化合物;等が挙げられる。これらのベンゾフェノン系化合物、ヒドロキシアリール系化合物、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系化合物、ポリヒドロキシスチレン系化合物は、水酸基以外の置換基を有していてもよい。
これらの化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0517】
フェノール性水酸基4個以上を有する分子量2000未満の化合物の含有量は、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂100質量部に対し0.5質量部以上5質量部以下であることが好ましい。上記の範囲とすることにより、感光性組成物をパターニングした際の先細り現象を抑制することができる。
【0518】
第3の態様の感光性組成物における有機溶剤としては、第1の態様の感光性組成物において例示した有機溶剤が挙げられる。
有機溶剤の含有量は、第3の態様の感光性組成物の固形分濃度が1質量%以上50質量%以下となる量が好ましく、5質量%以上30質量%以下となる量がより好ましい。
第3の態様の感光性組成物は、第1の態様の感光性組成物と同様に、必要に応じて、上記の各種添加剤を含有してもよい。
【0519】
(4)第4の態様の感光性組成物
第4の態様の感光性組成物は、エポキシ化合物、及び水素バリア剤(B)を含有し、さらに任意で有機溶剤を含有してもよい。
【0520】
第4の態様の感光性組成物におけるエポキシ化合物としては、例えば、上述のエポキシ樹脂前駆体として挙げたエポキシ化合物と同様のものが挙げられる。
【0521】
エポキシ化合物の含有量は、第4の態様の感光性組成物の固形分に対して55質量%以上99質量%以下であることが好ましく、70質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、塗膜形成能を向上させることができる。
【0522】
第4の態様の感光性組成物は、前述の水素バリア剤(B)を含有する。水素バリア剤(B)は、イミダゾール環を含む化合物であるため、露光された際にエポキシ化合物の硬化を促進させ、感光性組成物に良好なパターニング特性及び水素バリア性能を与える。
【0523】
水素バリア剤(B)の含有量は、エポキシ化合物100質量部に対して0.01質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上20質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上10質量部以下が特に好ましい。上記の範囲とすることにより、パターニング特性及び水素バリア性能を得ることができる。
【0524】
第4の態様の感光性組成物における有機溶剤としては、第1の態様の感光性組成物において例示した有機溶剤が挙げられる。この中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン等の極性溶剤、トルエン等の芳香族炭化水素類、及びこれらの混合溶剤が好ましい。
有機溶剤を含有する場合の有機溶剤の含有量は、第4の態様の感光性組成物の固形分濃度が1質量%以上50質量%以下となる量が好ましく、5質量%以上30質量%以下となる量がより好ましい。
【0525】
第4の態様の感光性組成物は、第1の態様の感光性組成物と同様に、必要に応じて、上記の各種添加剤を含有してもよい。
【0526】
尚、後述の第5の態様におけるエポキシ基含有ポリカルボン酸樹脂は、全てのエポキシ基が「アルコール性水酸基を有するモノカルボン酸」及び「多塩基酸無水物」との反応によって消費されているとは限らず、通常、残存するエポキシ基を有する点で、第4の態様の感光性組成物におけるエポキシ樹脂にも該当する。この点で、第4の態様の感光性組成物におけるエポキシ樹脂として、第4の態様の感光性組成物におけるエポキシ基含有ポリカルボン酸樹脂を用いることができる場合もある。本明細書において、第4の態様の感光性組成物におけるエポキシ樹脂のうち、第4の態様の感光性組成物におけるエポキシ基含有ポリカルボン酸樹脂以外の樹脂を非カルボン酸変性エポキシ樹脂ということがある。
【0527】
(5)第5の態様の感光性組成物
第5の態様の感光性組成物は、エポキシ基含有ポリカルボン酸樹脂、光酸発生剤、水素バリア剤(B)、及び有機溶剤を含有するネガ型感光性組成物である。
【0528】
第5の態様の感光性組成物におけるエポキシ基含有ポリカルボン酸樹脂としては、例えば、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と1分子中に1個以上のアルコール性水酸基を有するモノカルボン酸とを反応させて得られる反応物に、さらに多塩基酸無水物を反応させて得られる樹脂を用いることができる。
【0529】
一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、例えば、上述のエポキシ樹脂前駆体として挙げたエポキシ化合物、上述のエポキシ基含有樹脂と同様のものが挙げられる。中でも、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、ビフェニルジグリシジルエーテル、脂環式エポキシ樹脂、共重合型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0530】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾール、ハロゲン化フェノール、アルキルフェノール等のフェノール類とホルムアルデヒドとを酸性触媒下で反応して得られるノボラック類と、エピクロルヒドリンやメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。市販品としては、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、EOCN-1027、EPPN-201、BREN-S(いずれも日本化薬社製);DEN-431、DEN-439(いずれもダウ・ケミカル社製);N-730、N-770、N-865、N-665、N-673、VH-4150(いずれも大日本インキ化学工業社製)等が挙げられる。
【0531】
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロムビスフェノールA等のビスフェノール類とエピクロルヒドリンやメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂や、ビスフェノールAやビスフェノールFのジグリシジルエーテルと上記ビスフェノール類の縮合物とエピクロルヒドリンやメチルエピクロルヒドリンとを反応させ得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。市販品としては、エピコート1004、エピコート1002、エピコート4002、エピコート4004(いずれも油化シェルエポキシ社製)等が挙げられる。
【0532】
トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂としては、例えば、トリスフェノールメタンやトリスクレゾールメタンとエピクロルヒドリンやメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。市販品としては、EPPN-501、EPPN-502(いずれも日本化薬社製)等が挙げられる。
【0533】
脂環式エポキシ樹脂としては、上述の脂環式エポキシ化合物と同様のものが挙げられる。市販品としてはダイセル化学工業社製のセロキサイド2021;三井石油化学工業社製のエポミックVG-3101;油化シェルエポキシ社製のE-1031S、日本曹達社製のEPB-13、EPB-27等が挙げられる。また、共重合型エポキシ樹脂としては、グリシジルメタクリレートとスチレンとα-メチルスチレンとの共重合体である日本油脂社製のCP-50M、CP-50S、あるいはグリシジルメタクリレートとシクロヘキシルマレイミド等との共重合体等が挙げられる。
【0534】
これらの1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の特に好ましい例としては、例えばクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。特に、α-ヒドロキシフェニル-ω-ヒドロポリ(ビフェニルジメチレン-ヒドロキシフェニレン)と1-クロロ-2,3-エポキシプロパンとの重縮合物、及びα-2,3-エポキシプロポキシフェニル-ω-ヒドロポリ{2-(2,3-エポキシプロポキシ)-ベンジリデン-2,3-エポキシプロポキシフェニレン}が好ましい。
【0535】
1分子中に1個以上のアルコール性水酸基を有するモノカルボン酸としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、ジメチロールカプロン酸、ヒドロキシピバリン酸等のヒドロキシモノカルボン酸類が挙げられる。これらの中でも、1分子中に1個以上5個以下のアルコール性水酸基を有するモノカルボン酸が好ましい。
【0536】
多塩基酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
【0537】
上記エポキシ化合物と上記モノカルボン酸との反応は、エポキシ化合物のエポキシ基1当量に対して、モノカルボン酸0.1モル以上0.7モル以下が好ましく、0.2モル以上0.5モル以下がより好ましい。この反応では、エポキシ化合物や多塩基酸無水物と反応しない、水酸基やカルボキシ基を持たない、有機溶剤を使用することが好ましい。さらに、反応を促進させるために触媒(例えば、トリフェニルフォスフィン、ベンジルジメチルアミン、トリアルキルアンモニウムクロライド、トリフェニルスチビン等)が使用できる。触媒を使用した場合、特に反応終了後、有機過酸化物等を使用し触媒を不活性化したものは、安定で保存性が良好であり好ましい。反応触媒の使用量は、反応混合物に対して0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、反応温度は60℃以上150℃以下が好ましい。これにより、上記エポキシ化合物と上記モノカルボン酸との反応物を得ることができる。
【0538】
この反応物と多塩基酸無水物との反応では、最終的に得られるエポキシ基含有ポリカルボン酸樹脂の酸価が50mgKOH/g以上150mgKOH/g以下となる量の多塩基酸無水物を反応させることが好ましい。反応温度は60℃以上150℃以下が好ましい。このようにしてエポキシ基含有ポリカルボン酸樹脂を得ることができる。
【0539】
これらのエポキシ基含有ポリカルボン酸樹脂は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0540】
エポキシ基含有ポリカルボン酸樹脂の含有量は、第5の態様の感光性組成物の固形分に対して30質量%以上80質量%以下であることが好ましく、40質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、塗膜形成能を向上させることができる。
【0541】
第5の態様の感光性組成物における光酸発生剤としては、第2の態様の感光性組成物において例示した光酸発生剤が挙げられる。
光酸発生剤の含有量は、第5の態様の感光性組成物の固形分に対して0.5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、感光性組成物の硬化性が良好になる。
【0542】
第5の態様の感光性組成物は、上記の通り、水素バリア剤(B)を含有する。この化合物を感光性組成物に含有させた際、水素バリア性能を有するパターン形成が可能となる。
【0543】
水素バリア剤(B)の含有量は、第5の態様の感光性組成物における基材成分(A)に相当する樹脂の質量に対して、0.01質量%以上30質量%以下が好ましく、0.05質量%以上20質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上10質量%以下が特に好ましい。上記の範囲とすることにより、良好な現像性を得ながら、水素バリア性能を有するパターンを得ることができる。
【0544】
第5の態様の感光性組成物は、さらに、耐湿性、耐熱性、密着性等を調整するための改質成分を含有していてもよい。この改質成分は、それ自身が熱や紫外線等により硬化してもよく、熱や紫外線等によりエポキシ基含有ポリカルボン酸樹脂の残存水酸基やカルボキシ基等と反応してもよい。具体的には、1分子中に1個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、メラミン誘導体(例えば、ヘキサメトキシメラミン、ヘキサブトキシ化メラミン、縮合ヘキサメトキシメラミン等)、ビスフェノールA系化合物(例えば、テトラメチロールビスフェノールA等)、オキサゾリン化合物等が挙げられる。
【0545】
1分子中に1個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、エピコート1009、1031(いずれも油化シェル社製)、エピクロンN-3050、N-7050(いずれも大日本インキ化学工業社製)、DER-642U、DER-673MF(いずれもダウケミカル社製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ST-2004、ST-2007(いずれも東都化成社製)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;YDF-2004、YDF-2007(いずれも東都化成社製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;SR-BBS、SR-TBA-400(いずれも坂本薬品工業社製)、YDB-600、YDB-715(いずれも東都化成社製)等の臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂;EPPN-201、EOCN-103、EOCN-1020、BREN(いずれも日本化薬社製)等のノボラック型エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製のエピクロンN-880等のビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製のエピクロンTSR-601やエー・シー・アール社製のR-1415-1等のゴム変性エポキシ樹脂;日本化薬社製のEBPS-200や大日本インキ化学工業社製のエピクロンEXA-1514等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;日本油脂社製のプレンマーDGT等のジグリシジルテレフタレート;日産化学社製のTEPIC等のトリグリシジルイソシアヌレート;油化シェル社製のYX-4000等のビキシレノール型エポキシ樹脂;油化シェル社製のYL-6056等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021等の脂環式エポキシ樹脂;等が挙げられる。
【0546】
改質成分の含有量は、第5の態様の感光性組成物の固形分に対して50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0547】
第5の態様の感光性組成物は、さらに、第1の態様の感光性組成物と同様に、着色剤を含有してもよい。
【0548】
第5の態様の感光性組成物における有機溶剤としては、第1の態様の感光性組成物において例示した有機溶剤が挙げられる。
有機溶剤の含有量は、第5の態様の感光性組成物の固形分濃度が1質量%以上50質量%以下となる量が好ましく、5質量%以上30質量%以下となる量がより好ましい。
【0549】
水素バリア膜形成用組成物又は第1~5の態様の感光性組成物は、必要に応じて、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、増感剤、硬化促進剤、充填剤、密着性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、熱重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、増粘剤等が挙げられる。
【0550】
増感剤としては、例えば9位及び10位にアルコキシ基を有するアントラセン化合物(9,10-ジアルコキシ-アントラセン誘導体)が好ましい。アルコキシ基としては、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられる。9,10-ジアルコキシ-アントラセン誘導体は、さらに置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、スルホン酸アルキルエステル基、カルボン酸アルキルエステル基等が挙げられる。スルホン酸アルキルエステル基やカルボン酸アルキルエステル基におけるアルキル基としては、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が挙げられる。これらの置換基の置換位置は2位が好ましい。
【0551】
9,10-ジアルコキシ-アントラセン誘導体としては、例えば、9,10-ジメトキシ-アントラセン、9,10-ジエトキシ-アントラセン、9,10-ジプロポキシ-アントラセン、9,10-ジメトキシ-2-エチル-アントラセン、9,10-ジエトキシ-2-エチル-アントラセン、9,10-ジプロポキシ-2-エチル-アントラセン、9,10-ジメトキシ-2-クロロ-アントラセン、9,10-ジメトキシアントラセン-2-スルホン酸メチルエステル,9,10-ジエトキシアントラセン-2-スルホン酸メチルエステル,9,10-ジメトキシアントラセン-2-カルボン酸メチルエステル等が挙げられる。
【0552】
これらの化合物は、アントラキノン誘導体を、アルカリ水溶液中において、亜鉛末、ハイドロサルファイト、パラジウム-カーボン、ソジウムボロハイドライド等の還元剤で処理を行い、9,10-ジヒドロキシアントラセン誘導体とした後、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等の硫酸エステル、トルエンスルホン酸メチル、トルエンスルホン酸エチル、トルエンスルホン酸プロピル、トルエンスルホン酸モノエチレングリコールエステル等のトルエンスルホン酸エステル、あるいはベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸プロピル等のベンゼンスルホン酸エステルで9,10位をアルコキシ化することにより得られる。
【0553】
これらの増感剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0554】
増感剤の含有量は、各組成物が光酸発生剤を含む場合は、光酸発生剤に対してモル比で0.1以上6以下であることが好ましく、0.2以上4以下であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、各組成物の感度、硬化性が良好になる。
【0555】
充填剤としては、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、雲母等の公知の充填剤が挙げられる。
充填剤の含有量は、各組成物の固形分に対して60質量%以下であることが好ましく、5質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
フ
【0556】
界面活性剤としては、BM-1000、BM-1100(いずれもBMケミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183(いずれも大日本インキ化学工業社製)、フロラードFC-135、フロラードFC-170C、フロラードFC-430、フロラードFC-431(いずれも住友スリーエム社製)、サーフロンS-112、サーフロンS-113、サーフロンS-131、サーフロンS-141、サーフロンS-145(いずれも旭硝子社製)、SH-28PA、SH-190、SH-193、SZ-6032、SF-8428(いずれも東レシリコーン社製)等の市販のフッ素系界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0557】
増粘剤としては、超微粉シリカ、モンモリロナイト等が挙げられる。
【0558】
消泡剤及び/又はレベリング剤としては、シリコーン系高分子、フッ素系高分子等が挙げられる。
【0559】
密着性付与剤としては、シランカップリング剤等挙げられる。
また、水素バリア膜形成用組成物又は第1~5の態様の感光性組成物は、任意の添加剤として、1-(N,N-ジ(2-エチルヘキシル)アミノ)メチル-1H-ベンゾトリアゾール、1-(N,N-ジ(2-エチルヘキシル)アミノ)メチル-1H-メチルベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、ジハイドロキシプロピルベンゾトリアゾール、ビスアミノメチルベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール誘導体等を単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0560】
水素バリア膜形成用組成物又は第1~5の態様の感光性組成物が含有していてもよい上記各種添加剤の添加量は、特に記載した場合を除き、組成物全体に対して、例えば、0.001質量%上10質量%以下の範囲で適宜調整すればよく、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下である。
【0561】
<感光性組成物の調製方法>
感光性組成物は、上記の各成分を撹拌機で混合することにより調製される。なお、調製された感光性組成物が均一になるよう、メンブランフィルタ等を用いて濾過してもよい。
【0562】
≪水素バリア膜の製造方法≫
以上説明した、水素バリア剤(B)を含む水素バリア膜形成用組成物を用いることにより、水素バリア剤(B)を含む水素バリア膜を形成することができる。
【0563】
水素バリア膜形成用組成物が、基材成分(A)として、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等)、FR-AS樹脂、FR-ABS樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミドビスマレイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾチアゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、シリコーン樹脂、BT樹脂、ポリメチルペンテン、超高分子量ポリエチレン、FR-ポリプロピレン、(メタ)アクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート等)、及びポリスチレン等の樹脂材料を含む場合について、水素バリア膜の形成方法について前述の通りである。
【0564】
水素バリア膜形成用組成物が、熱硬化性材料を基材成分(A)として含む場合には、水素バリア膜形成用組成物を、塗布等の方法により膜化した後、形成された膜を、硬化性材料の種類に応じた温度に加熱して硬化させることによって、水素バリア膜を形成することができる。
【0565】
水素バリア膜形成用組成物が、前述の種々の感光性組成物である場合、典型的には、
水素バリア膜形成用組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成することと、
塗布膜を露光することと、を含む方法により水素バリア膜が製造される。
【0566】
より具体的には、まず、適切な塗布方法により、塗膜を形成する。例えば、ロールコータ、リバースコータ、バーコータ等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコータ等の非接触型塗布装置を用いて基板上に感光性組成物を塗布し、乾燥させることにより、塗布膜を形成することができる。
乾燥方法は特に限定されず、例えば、(1)ホットプレートにて80℃以上120℃以下、好ましくは90℃以上100℃以下の温度にて60秒以上120秒以下の間、プリベークを行う方法、(2)室温にて数時間以上数日以下の間放置する方法、(3)温風ヒータや赤外線ヒータ中に数十分間以上数時間以下の間入れて溶剤を除去する方法等が挙げられる。
【0567】
次いで、塗布膜に対して、位置選択的に電磁波を照射し、露光する。感光性組成物が露光により硬化するネガ型の感光性組成物である場合、塗布膜の全面に対して露光を行ってもよい。
露光を位置選択的に行う場合、電磁波は、ポジ型又はネガ型のマスクを介して照射してもよく、直接照射してもよい。露光量は、感光性組成物の組成によっても異なるが、例えば5mJ/cm2以上500mJ/cm2以下程度が好ましい。
【0568】
露光が塗布膜に対して全面的に行われた場合、露光された塗布膜をそのまま水素バリア膜として用いることができる。
露光が位置選択的に行われた場合、露光後の塗布膜を、現像液により現像することによって所望の形状にパターニングされた水素バリア膜が得られる。
現像方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法等を用いることができる。現像液としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機系の現像液や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、4級アンモニウム塩等の水溶液が挙げられる。
【0569】
現像後のパターン化された水素バリア膜に対しては、200℃以上250℃以下程度でポストベークを行うことが好ましい。
【0570】
以上のようにして形成される水素バリア膜は、水素ガスの遮蔽が要求される種々の用途に特に限定なく使用され、後述する電子素子において特に好適に使用される。
【0571】
なお、水素バリア膜は、分子量及び分子サイズの小さな、水素ガスの透過を抑制できるので、水素よりも分子サイズの大きな気体の透過も抑制することができる。かかる気体としては、窒素ガス、酸素ガス、オゾンガス、水蒸気、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素酸化物ガス、及び硫黄酸化物ガス等が挙げられる。
【0572】
≪電子素子≫
以上説明した水素バリア膜形成用組成物を用いて形成された水素バリア膜は、パッシベーション膜を備える電子素子において好適に用いられる。
パッシベーション膜は、半導体層等の機能層をイオンやガス等や物理的なダメージ等から保護するために設けられる膜である。
【0573】
電子素子としては、特に限定されないが、有機導電層、有機半導体層、有機発光層等を備える有機電子素子が好ましく挙げられる。
電子素子の好適な具体例としては、LED素子及び有機EL素子等の発光素子と、半導体素子と、太陽電池素子と、固体撮像素子とが挙げられる。
【0574】
パッシベーション膜は、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物、又は金属酸化炭化物等を含む。より具体的には、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、及びTaから選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、又は酸炭化物等が好ましく使用される。
これらの材料の中でも、Si、Al、In、Sn、Zn、及びTiから選ばれる金属の酸化物、窒化物、又は酸窒化物が好ましく、Si、又はAlの酸化物、又は窒化物がより好ましく、特に窒化シリコン(Si窒化物)が好ましい。
これらは、副次的な成分として他の元素を含有していてもよい。例えば、窒化シリコンは水素を含んで水素化窒化シリコンとなっていてもよく、さらに酸素を含んで水素化酸窒化シリコンとなっていてもよい。
Siの酸化物膜、又は窒化物膜は、ポリシラザン、ポリシロキサン、ポリシロキサザン、又はポリシラン等のケイ素含有ポリマー含有組成物の塗膜の焼成による酸化物膜、又は窒化物膜であってもよい。
パッシベーション膜の保護性能の点からは、パッシベーション膜は窒化ケイ素(SiN)を含むのが好ましい。
【0575】
以上説明した、パッシベーション膜は、その原材料及び製造方法に起因して、水素ガス、又はアンモニアやアミン類等の水素ガスを発生させ得る化合物を含む場合がある。
窒化ケイ素を含むパッシベーション膜は特に水素ガスを発生させやすい。
【0576】
他方、電子素子は、有機EL素子のように素子を駆動させるためにTFTを備えることが多い。また、電子素子は、銅等の金属からなる配線を備えることも多い。
TFTは、水素ガスとの接触による還元反応により機能が損なわれるおそれがあり、金属配線についても水素ガスによる還元によって電気的特性が変化するおそれがある。
【0577】
しかしながら、電子素子が、パッシベーション膜とともに水素バリア膜を備える場合、
パッシベーション膜から発生する水素ガスを水素バリア膜で遮蔽し、水素ガスによる影響を受ける部材での悪影響の発生を抑制できる。
水素バリア膜は、例えば、TFT等の水素から保護したい対象物と、水素の発生源との間に設けられるのが好ましい。
電子素子の外部環境中に存在する水素が、電子素子内の保護対象物に侵入するおそれがある場合、電子素子が外部環境に触れる面に設けられるハードコート層に水素バリア剤を配合して、水素バリア膜としてもよい。
また、パッシベーション膜等の水素発生源となる膜から発生する水素から、電子素子内のTFT等の保護対象物を保護する場合、水素発生源となる膜と、保護対象物との間に水素バリア膜が形成されるのが好ましい。この場合、例えば、平坦化膜を水素バリア膜としてよい。
【0578】
以上説明した通り、パッシベーション膜を備える電子素子において、水素バリア膜を設けると、TFTや金属配線等の水素により悪影響を受けるおそれがある部材を保護でき、動作の信頼性の高い電子素子を製造することができる。
【実施例】
【0579】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されない。
【0580】
〔合成例1〕上記式(1)で表される化合物の合成1
【化79】
50ml三つ口フラスコに化合物A(2.00g,8.12mmol)とメタノール(20g)を加え、窒素置換した後、ウォーターバスにて60℃にて加温し、化合物Aを溶解させた。次に、上記スキームに従いジアザビシクロウンデセン(DBU;1.24g,8.12mmol)を滴下し、60℃で4時間反応させた。反応終了後、室温(25℃)まで冷却した後、反応液をロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式(1)で表される化合物(化合物1)を得た。(収量=3.27g,収率=95%,黄色粘調液体)
1H-NMR(重DMSO,400MHz):カチオンδ(ppm)=3.48(CH
2,2H),3.40(CH
2,2H),3.15(CH
2,2H),2.65(CH
2,2H),1.82(CH
2,2H),1.70-1.45(CH
2,6H)、
アニオンδ(ppm)=7.70(CH,1H),7.22(Ph,2H),7.15(CH,1H),6.85(Ph,2H),6.80(CH,1H),5.63(CH,1H),3.70(CH
3,3H),2.85-2.65(CH
2,2H)
【0581】
〔合成例2〕上記式(1)で表される化合物の合成2
【化80】
50ml三つ口フラスコに化合物A(2.00g,8.12mmol)とメタノール(20g)を加え、窒素置換した後、ウォーターバスにて60℃にて加温し、化合物Aを溶解させた。次に、上記スキームに従いジアザビシクロノネン(DBN;1.11g,8.12mmol)を滴下し、60℃で4時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却した後、反応液をロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式(1)で表される化合物(化合物2)を得た。(収量=2.91g,収率=90%,黄色粘調液体)
1H-NMR(重DMSO,400MHz):カチオンδ(ppm)=3.55(CH
2,2H),3.40-3.25(CH
2,4H),2.81(CH
2,2H),2.00(CH
2,2H),1.88(CH
2,2H)
アニオンδ(ppm)=7.70(CH,1H),7.22(Ph,2H),7.15(CH,1H),6.85(Ph, 2H),6.80(CH,1H),5.63(CH,1H),3.70(CH
3,3H),2.85-2.65(CH
2,2H)
【0582】
〔合成例3〕上記式(1)で表される化合物の合成3
【化81】
50ml三つ口フラスコに化合物A(2.00g,8.12mmol)とメタノール(20g)を加え、窒素置換した後、ウォーターバスにて60℃にて加温し、化合物Aを溶解させた。次に、イミダゾール(IM;0.55g,8.12mmol)を加え、60℃で4時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却した後、反応液をロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式(1)で表される化合物(化合物3)を得た。(収量=2.43g,収率=95%,白色固体)
1H-NMR(重DMSO,400MHz):カチオンδ(ppm)=7.03(CH,2H),7.65(CH,1H)
アニオンδ(ppm)=7.86(CH,1H),7.35(3H),6.99(3H),5.70(CH,1H),3.71(CH
3,3H),3.35-3.16(CH
2,2H)
【0583】
原料の化合物A単体、イミダゾール単体、及び得られた化合物3について、それぞれ、X線回折測定装置((株)リガク社製;商品名「全自動水平型多目的X線回折測定装置SmartLab」)を用いて、以下の条件下に、X線回折パターンの測定を行った。得られた化合物3は、原料の各単体のいずれとも異なる反射パターンを示したことから、単なる混合物ではなく、塩であると判断される。
*使用X線 :回転対陰極型X線発生源由来CuKα線、45kV-200mA
*走査速度(2θ):4.0°/min
*発散スリット:(2/3)°
*散乱スリット:(2/3)°
その他、パッケージ測定「汎用測定>汎用(集中法)」の標準条件設定による。
【0584】
〔合成例4〕上記式(1)で表される化合物の合成4
【化82】
20mlナスフラスコに化合物A(1.60g,6.50mmol)とテトラヒドロフラン(3g)を加え、窒素置換した後、オイルバスにて60℃にて加温し、化合物Aを溶解させた。次に、上記スキームに従い7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD;1.00g,6.50mmol)を滴下し、60℃で30分反応させた。反応終了後、室温まで冷却した後、反応液をロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式(1)で表される化合物(化合物4)を得た。(収量=2.5g,収率=95%,黄色粘調液体)
1H-NMR(重DMSO,500MHz):カチオンδ(ppm)=9.20(NH,1H),3.27-3.22(6H),3.17-3.15(2H),2.90(CH3,3H),1.92-1.89(2H),1.81-1.79(2H)
アニオンδ(ppm)=7.67(CH,1H),7.21(2H),7.12(1H),6.84(2H),6.79(1H),5.62(CH,1H),3.71(CH
3,3H),2.73-2.61(CH
2,2H)
【0585】
〔合成例5〕上記式(1)で表される化合物の合成5
【化83】
20mlナスフラスコに化合物A(1.50g,6.09mmol)とメタノール(9g)を加え、窒素置換した後、オイルバスにて60℃にて加温し、化合物Aを溶解させた。次に、上記スキームに従い1,5,7-トリアザビシクロ[4,4,0]デカ-5-エン(TBD;0.85g,6.09mmol)を滴下し、60℃で30分反応させた。反応終了後、室温まで冷却した後、反応液をロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式(1)で表される化合物(化合物5)を得た。(収量=2.2g,収率=95%,黄色固体)
1H-NMR(重DMSO,500MHz):カチオンδ(ppm)=10.48(NH,2H),3.22-3.17(4H),3.10-3.07(4H),1.86-1.81(4H)
アニオンδ(ppm)=7.71(CH,1H),7.25(2H),7.17(1H),6.86(2H),6.80(1H),5.65(CH,1H),3.71(CH
3,3H),2.87-2.73(CH
2,2H)
【0586】
〔合成例6〕上記式(1)で表される化合物の合成6
【化84】
20mlナスフラスコに化合物A(1.50g,6.09mmol)とメタノール(9g)を加え、窒素置換した後、オイルバスにて60℃にて加温し、化合物Aを溶解させた。次に、上記スキームに従い1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG;0.7g,6.09mmol)を滴下し、60℃で30分反応させた。反応終了後、室温まで冷却した後、反応液をロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式(1)で表される化合物(化合物6)を得た。(収量=2.2g,収率=100%,黄色固体)
1H-NMR(重DMSO,500MHz):カチオンδ(ppm)=2.84(6H)
アニオンδ(ppm)=7.67(CH,1H),7.21(2H),7.12(1H),6.85(2H),6.79(1H),5.62(CH,1H),3.71(CH
3,3H),2.28-2.64(CH
2,2H)
【0587】
〔合成例7〕上記式(1)で表される化合物の合成7
【化85】
20mlナスフラスコに化合物A(1.00g,4.06mmol)とメタノール(9g)を加え、窒素置換した後、オイルバスにて60℃にて加温し、化合物Aを溶解させた。次に、上記スキームに従いイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(0.72g,4.06mmol)を滴下し、60℃で30分反応させた。反応終了後、室温まで冷却した後、反応液をロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式で表される化合物(化合物7)を得た。(収量=1.7g,収率=98%,黄色固体)
1H-NMR(重DMSO,500MHz):カチオンδ(ppm)=2.63(9H),2.61,9H),
アニオンδ(ppm)=7.65(CH,1H),7.18(2H),7.10(1H),6.84(2H),6.84(1H),5.61(CH,1H),3.71(CH
3,3H),2.28-2.64(CH
2,2H)
【0588】
〔実施例1〕
下記構造のアルカリ可溶性樹脂12質量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート6質量部と、下記構造の光重合開始剤1.0質量部と、表面調整剤(BYK-310、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.04質量部と、水素バリア剤(前述の化合物3)2.0質量部とを、混合溶剤中に溶解させて、加工性組成物を得た。
【0589】
混合溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル45質量部と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル30質量部と、N,N,N’,N’-テトラメチルウレアとからな混合溶剤を用いた。
【0590】
アルカリ可溶性樹脂の構造と、光重合開始剤の構造と、水素バリア剤の構造とを以下に記す。アルカリ可溶性樹脂について、各構成単位の右下の数字は、樹脂中の各構成単位の含有量(質量%)である。
【化86】
【0591】
得られた感光性組成物を、SiN基板(シリコンウエハ上にSiN層を有する積層体)上にスピンコーターで塗布した後、塗布膜を105℃100秒間プリベークした。プレベークされた塗布膜を、紫外線硬化機を用いて露光量50mJ/cm2で全面露光(ghi線ブロードバンド)し、塗布膜を硬化させた。露光後の塗布膜を、230℃で20分間ポストベークすることで、膜厚2.0μmの硬化膜を得た。
【0592】
硬化膜を備えるSiN基板について、シリコンウエハ側を加熱して、サーマル・デポジション・スペクトロメトリー(TDS)法により、硬化膜の表面から発生する分子量1の成分(水素ラジカル又は水素イオン)と、分子量2の成分(水素ガス)と、分子量18の成分(水蒸気)との量を測定した。
ガス発生量の測定時の加熱は、50℃から280℃まで、10℃/分の速度で昇温させて行った。280℃到達時に加熱を終了した。
これらの気体の発生量(ピーク強度)を表1に示す。
【0593】
〔比較例1〕
硬化膜が形成されていないSiN基板について、実施例1と同様にして、分子量1の成分(水素ラジカル又は水素イオン)と、分子量2の成分(水素ガス)と、分子量18の成分(水蒸気)との発生量を測定した。
これらの気体の発生量(ピーク強度)を表1に示す。
なお、発生ガス量は、SiN表面からの発生ガス量である。
【0594】
〔比較例2〕
水素バリア剤を用いないことの他は、実施例1と同様にして感光性組成物を得た。得られた感光組成物を用いて、実施例1と同様にして、SiN基板上に硬化膜を形成した。
硬化膜を備えるSiN基板について、実施例1と同様にして、分子量1の成分(水素ラジカル又は水素イオン)と、分子量2の成分(水素ガス)と、分子量18の成分(水蒸気)との発生量を測定した。
これらの気体の発生量(ピーク強度)を表1に示す。
【0595】
〔比較例3〕
固形分中の比率が20質量%となるように、感光性組成物に市販のモレキュラーシーブ粉末を加え均一になるよう分散することの他は、実施例1と同様にして感光性組成物を得た。得られた感光組成物を用いて、実施例1と同様にして、SiN基板上に硬化膜を形成した。
硬化膜を備えるSiN基板について、実施例1と同様にして、分子量1の成分(水素ラジカル又は水素イオン)と、分子量2の成分(水素ガス)と、分子量18の成分(水蒸気)との発生量を測定した。
これらの気体の発生量(ピーク強度)を表1に示す。
【0596】
【0597】
実施例1と、比較例1及び2との比較によれば、所定の構造の水素バリア剤を含む感光性組成物を用いてSiN基板上に硬化膜を形成する場合、SiNから発生するガスの透過を硬化膜により効果的に抑制できていることが分かる。
他方、比較例3と、比較例1及び2との比較によれば、感光性組成物を用いて形成される硬化膜にモレキュラーシーブ等の水素ガスや水を吸着し得る材料を加えても、SiNから発生するガスの透過を、硬化膜によりほとんど抑制できないことが分かる。
【0598】
<実施例2~4、比較例4~5>
[実施例2]
実施例1のアルカリ可溶性樹脂のエポキシ基含有構成単位を、グリシジルメタクリレート由来の構成単位に置き換えた樹脂を用いた他は、実施例1と同様にして、水素バリア膜形成用組成物を得た。
【0599】
[比較例4]
上記構造の水素バリア剤を用いなかった他は、実施例2と同様にして、比較用の膜形成組成物を得た。
【0600】
[実施例3]
実施例1のアルカリ可溶性樹脂のエポキシ基含有構成単位を、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート由来の構成単位に置き換えた樹脂を用いた他は、実施例1と同様にして、水素バリア膜形成用組成物を得た。
【0601】
[比較例5]
上記構造の水素バリア剤を用いなかった他は、実施例3と同様にして、比較用の膜形成組成物を得た。
【0602】
[実施例4]
実施例1の水素バリア剤の添加量を、0.6質量部とした他は、実施例1と同様にして、水素バリア膜形成用組成物を得た。
【0603】
得られた各組成物を、SiN基板(シリコンウエハ上にSiN層を有する積層体)上に塗膜した後、塗布膜を80℃100秒間プリベークした。プレベークされた塗布膜を、紫外線硬化機を用いて露光量50mJ/cm2で全面露光(ghi線ブロードバンド)し、塗布膜を硬化させた。露光後の塗布膜を、230℃で20分間ポストベークすることで、膜厚2.0μmの硬化膜を得た。それぞれ硬化膜2~4、及び比較硬化膜4~5とする。
得られた各硬化膜を備えるSiN基板について、実施例1と同様にして、各ガスの発生量を比較したところ、実施例に係る硬化膜2~3では、対応する比較硬化膜4~5よりも、効果的にガスの透過を抑制出来ていた。また実施例に係る硬化膜4においても、比較例2より効果的にガスの透過を抑制出来ていた。
【0604】
<実施例5~6、比較例6~7>
[実施例5]
基材成分として下記式(A-2)で表される化合物を100質量部と、1質量部の下記式(a1-2-1)で表される硬化剤及び10質量部の水素バリア剤(前述の化合物3)とを混合して水素バリア膜形成用組成物を得た。
【化87】
【化88】
【0605】
[比較例6]
水素バリア剤を用いなかった他は、実施例5と同様にして、比較用の膜形成組成物を得た。
【0606】
[実施例6]
上記式(A-2)で表される化合物のかわりに、下記式(A-3)で表される化合物を100質量部とした他は、実施例5と同様にして、水素バリア膜形成用組成物を得た。
【化89】
【0607】
[比較例7]
水素バリア剤を用いなかった他は、実施例6と同様にして、比較用の膜形成組成物を得た。
【0608】
得られた各組成物を、SiN基板(シリコンウエハ上にSiN層を有する積層体)上に塗膜した後、紫外線硬化機を用いて露光量50mJ/cm2で全面露光(ghi線ブロードバンド)し、膜厚約2.0μmの硬化膜を得た。それぞれ硬化膜5~6、及び比較硬化膜6~7とする。
得られた各硬化膜を備えるSiN基板について、実施例1と同様にして、各ガスの発生量を比較したところ、実施例に係る硬化膜5~6では、対応する比較硬化膜6~7よりも、効果的にガスの透過を抑制出来ていた。
【0609】
<実施例7~8、比較例8~9>
[実施例7]
基材成分として、下記式(A-3)及び下記式(A-4)で表される混合樹脂成分(質量比(A-3):(A-4)=70:30)を100質量部、下記式(a1-2-2)で表される硬化剤(ナフタル酸誘導体)を5質量部、水素バリア剤(前述の化合物3)を15質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート700質量部を用いて混合して、水素バリア膜形成用組成物を得た。
【化90】
【化91】
【化92】
【0610】
[比較例8]
水素バリア剤を用いなかった他は、実施例7と同様にして、比較用の膜形成組成物を得た。
【0611】
[実施例8]
基材成分として、混合樹脂成分を下記式(A-5)及び下記式(A-6)で表される混合樹脂成分(質量比(A-5):(A-6)=70:30)100質量部とした他は、実施例7と同様にして、水素バリア膜形成用組成物を得た。
【化93】
【化94】
【0612】
[比較例9]
水素バリア剤を用いなかった他は、実施例8と同様にして、比較用の膜形成組成物を得た。
得られた各組成物を、SiN基板(シリコンウエハ上にSiN層を有する積層体)上に塗膜した後、塗布膜を80℃120秒間プリベークした。プレベークされた塗布膜を、紫外線硬化機を用いて露光量50mJ/cm2で全面露光(ghi線ブロードバンド)し、塗布膜を硬化させた。露光後の塗布膜を、100℃で20分間ベークすることで、膜厚2.0μmの硬化膜を得た。それぞれ硬化膜7~8、及び比較硬化膜8~9とする。
得られた各硬化膜を備えるSiN基板について、実施例1と同様にして、各ガスの発生量を比較したところ、実施例に係る硬化膜7~8では、対応する比較硬化膜8~9よりも、効果的にガスの透過を抑制出来ていた。