(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ポリマー及びその製造方法、このポリマーを用いたガス分離膜、ガス分離モジュール、及びガス分離装置、並びにm-フェニレンジアミン化合物
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20220111BHJP
B01D 71/64 20060101ALI20220111BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20220111BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20220111BHJP
C08G 69/02 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C08G73/10
B01D71/64
B01D53/22
B01D71/56
C08G69/02
(21)【出願番号】P 2019135161
(22)【出願日】2019-07-23
【審査請求日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】P 2019035097
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】弘中 幸治
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-065113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C、C08G、B01D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される構成成分を有するポリマーであって、前記ポリマーがポリイミド化合物、又はポリアミド化合物であ
り、前記式(I)で表される構成成分がジアミン由来成分である、ポリマー。
【化1】
式(I)中、R
Bは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、R
A及びR
Cは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。但し、R
A、R
B及びR
Cの少なくとも1つは炭素数1~4のアルキル基又はハロゲン原子である。前記の炭素数1~4のアルキル基はトリフルオロメチルではない。**は連結部位を示す。
【請求項2】
前記R
A、R
B及びR
Cの少なくとも1つが、前記の炭素数1~4のアルキル基である、請求項
1に記載のポリマー。
【請求項3】
下記式(Ia)で表されるm-フェニレンジアミン化合物を原料としてポリマーを得ることを含む、請求項1
又は2に記載のポリマーの製造方法。
【化2】
式(Ia)中、R
A、R
B及びR
Cは、それぞれ、前記式(I)におけるR
A、R
B及びR
Cと同義である。
【請求項4】
下記式(I)で表される構成成分を有する
ポリイミド化合物を含有してなるガス分離層を有
し、前記式(I)で表される構成成分がジアミン由来成分である、ガス分離膜。
【化3】
式(I)中、R
A、R
B及びR
Cは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。但し、R
A、R
B及びR
Cの少なくとも1つは炭素数1~4のアルキル基又はハロゲン原子である。前記の炭素数1~4のアルキル基はトリフルオロメチルではない。**は連結部位を示す。
【請求項5】
ガス分離層を構成するポリマーとして、下記式(II)で表される構成単位を有するポリイミド化合物を含有する、ガス分離膜。
【化4】
式(II)中、R
A、R
B及びR
Cは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。但し、R
A、R
B及びR
Cの少なくとも1つは炭素数1~4のアルキル基又はハロゲン原子である。前記の炭素数1~4のアルキル基はトリフルオロメチルではない。
Rは下記式(I-1)~(I-28)のいずれかで表される基を示す。ここでX
1~X
3は単結合又は2価の連結基を、Lは-CH=CH-又は-CH
2-を、R
1及びR
2は水素原子又は置換基を示し、*は式(II)中のカルボニル基との結合部位を示す。
【化4】
【請求項6】
前記R
A、R
B及びR
Cの少なくとも1つが、前記の炭素数1~4のアルキル基である、請求項
5に記載のガス分離膜。
【請求項7】
前記ガス分離膜が、前記ガス分離層をガス透過性の支持層上側に有するガス分離複合膜である、請求項
4~
6のいずれか1項に記載のガス分離膜。
【請求項8】
二酸化炭素及びメタンを含むガスから二酸化炭素を選択的に透過させるために用いられる、請求項
4~
7のいずれか1項に記載のガス分離膜。
【請求項9】
請求項
4~
8のいずれか1項に記載のガス分離膜を有するガス分離モジュール。
【請求項10】
請求項
4~
8のいずれか1項に記載のガス分離膜を有するガス分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、m-フェニレンジアミン骨格を有するポリマー及びその製造方法、このポリマーを用いたガス分離膜、ガス分離モジュール、及びガス分離装置、並びにm-フェニレンジアミン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子化合物からなる素材には、その素材ごとに特有の気体透過性がある。その性質に基づき、特定の高分子化合物から構成された膜によって、所望の気体成分を選択的に透過させて分離することができる。この気体分離膜(ガス分離膜)の産業上の利用態様として、地球温暖化の問題と関連し、火力発電所、セメントプラント、製鉄所高炉等において、大規模な二酸化炭素発生源から二酸化炭素を分離回収することが検討されている。また、天然ガスやバイオガス(生物の排泄物、有機質肥料、生分解性物質、汚水、ゴミ、エネルギー作物などの発酵、嫌気性消化により発生するガス)は主としてメタンと二酸化炭素を含む混合ガスであり、この混合ガスから二酸化炭素等の不純物を除去する手段としてガス分離膜の利用が検討されている。
【0003】
ガス分離膜を用いた天然ガスの精製では、より効率的に目的のガスを分離するために、優れたガス透過性とガス分離選択性が求められる。これを実現するために種々の膜素材が検討されており、その一環としてポリイミド化合物を用いたガス分離膜が検討されてきた。例えば、特許文献1には、m-フェニレンジアミンの特定部位に特定の極性基が導入されたジアミン成分を有するポリイミド化合物が記載されている。特許文献1によれば、このポリイミド化合物を用いてガス分離膜のガス分離層を形成することにより、ガス透過性とガス分離選択性をともに高めることができ、また、ガス中の可塑化成分による性能の劣化も抑えられるとされる。
【0004】
実用的なガス分離膜とするためには、ガス分離層を薄層にして十分なガス透過性を確保した上で、さらに目的のガス分離選択性も実現しなければならない。ガス分離層を薄層化する手法としては、ポリイミド化合物等の高分子化合物を相分離法により非対称膜とし、分離に寄与する部分を緻密層あるいはスキン層と呼ばれる薄層にする方法がある。この非対称膜では、緻密層以外の部分を膜の機械的強度を担う支持層として機能させる。
また、上記非対称膜の他に、ガス分離機能を担うガス分離層と機械強度を担う支持層とを別素材とし、ガス透過性の支持層上に、ガス分離能を有するガス分離層を薄層に形成する複合膜の形態も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、ガス透過性とガス分離選択性は互いにいわゆるトレードオフの関係にある。したがって、ガス分離層に用いるポリイミド化合物の共重合成分等を調整することにより、ガス分離層のガス透過性あるいはガス分離選択性のいずれかを改善することはできても、両特性を高いレベルで両立するのは困難とされる。また、天然ガス中の可塑化成分が少ない場合には、長期使用した際に、可塑化とは逆に、膜の乾燥が進んで緻密化のような現象が生じ、ガス透過性が損なわれる。したがって、ガス分離膜には過酷な乾燥条件においてもガス透過性を十分に維持できる特性も求められる。
【0007】
本発明は、ガス透過性に優れ、ガス分離選択性にも優れ、さらに過酷な乾燥条件に曝されてもガス透過性の低下を生じにくいガス分離膜、このガス分離膜を有するガス分離モジュール及びガス分離装置を提供することを課題とする。また、本発明は、上記ガス分離膜のガス分離層への適用に好適な機能性ポリマー及びその製造方法、並びにこのポリマーの原料として好適なジアミン化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は下記手段により解決される。
〔1〕
下記式(I)で表される構成成分を有する
ポリマーであって、上記ポリマーがポリイミド化合物、又はポリアミド化合物であるポリマー。
【化1】
式(I)中、
R
B
は水素原子、炭素数1~4のアルキル基、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、R
A
及びR
C
は水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。但し、R
A、R
B及びR
Cの少なくとも1つは炭素数1~4のアルキル基又はハロゲン原子である。上記の炭素数1~4のアルキル基はトリフルオロメチルではない。**は連結部位を示す。
〔2〕
上記式(I)で表される構成成分がジアミン由来成分である、〔1〕に記載のポリマー。
〔3〕
上記R
A、R
B及びR
Cの少なくとも1つが、上記の炭素数1~4のアルキル基である、〔1〕又は〔2〕に記載のポリマー。
〔4
〕
下記式(Ia)で表されるm-フェニレンジアミン化合物を原料としてポリマーを得ることを含む、〔1〕~〔
3〕のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
【化2】
式(Ia)中、R
A、R
B及びR
Cは、それぞれ、上記式(I)におけるR
A、R
B及びR
Cと同義である。
〔
5〕
下記式(I)で表される構成成分を有するポリマーを含有してなるガス分離層を有するガス分離膜。
【化3】
式(I)中、R
A
、R
B
及びR
C
は水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。但し、R
A
、R
B
及びR
C
の少なくとも1つは炭素数1~4のアルキル基又はハロゲン原子である。前記の炭素数1~4のアルキル基はトリフルオロメチルではない。**は連結部位を示す。
〔
6〕
ガス分離層を構成するポリマーとして、下記式(II)で表される構成単位を有するポリイミド化合物を含有する、ガス分離膜。
【化4】
式(II)中、R
A、R
B及びR
Cは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。但し、R
A、R
B及びR
Cの少なくとも1つは炭素数1~4のアルキル基又はハロゲン原子である。上記の炭素数1~4のアルキル基はトリフルオロメチルではない。
Rは下記式(I-1)~(I-28)のいずれかで表される基を示す。ここでX
1~X
3は単結合又は2価の連結基を、Lは-CH=CH-又は-CH
2-を、R
1及びR
2は水素原子又は置換基を示し、*は式(II)中のカルボニル基との結合部位を示す。
【化5】
〔
7〕
上記R
A、R
B及びR
Cの少なくとも1つが、上記の炭素数1~4のアルキル基である、〔
6〕に記載のガス分離膜。
〔
8〕
上記ガス分離膜が、上記ガス分離層をガス透過性の支持層上側に有するガス分離複合膜である、〔
5〕~〔
7〕のいずれかに記載のガス分離膜。
〔
9〕
二酸化炭素及びメタンを含むガスから二酸化炭素を選択的に透過させるために用いられる、〔
5〕~〔
8〕のいずれかに記載のガス分離膜。
〔
10〕
〔
5〕~〔
9〕のいずれかに記載のガス分離膜を有するガス分離モジュール。
〔
11〕
〔
5〕~〔
9〕のいずれかに記載のガス分離膜を有するガス分離装置。
〔
12〕
下記式(Ia-1)で表されるm-フェニレンジアミン化合物。
【化6】
式(Ia-1)中、R
aは水素原子、炭素数1~3のアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~3のアルコキシ基、又は炭素数1~3のアシルオキシ基を示
し、-C(R
a)
3の炭素数は1~4であ
る。
R
B及びR
Cは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又はハロゲン原子を示す
。
但し、-C(R
a)
3はトリフルオロメチルではな
く、R
B
及びR
Cとして採り得る炭素数1~4のアルキル基
もトリフルオロメチルではない。
また、-C(R
a
)
3
を構成する3つのR
a
と、R
B
と、R
C
のすべてが水素原子となることはない。
【0009】
本明細書において「~」で表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。
本明細書において、特定の符号で表示された置換基や連結基等(以下、置換基等という)が複数あるとき、あるいは複数の置換基等を同時もしくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、ポリマーが同一表示の複数の構成成分を有する場合は、各構成成分は互いに同一でも異なっていてもよい。
本明細書において置換又は無置換を明記していない置換基(連結基についても同様)については、所望の効果を損なわない範囲で、その基に任意の置換基を有していてもよい意味である。これは置換又は無置換を明記していない化合物についても同義である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のガス分離膜、ガス分離モジュール及びガス分離装置は、ガス透過性に優れ、ガス分離選択性にも優れ、さらに、ガス分離層が過酷な乾燥条件に曝されてもガス透過性を十分に維持することができる。また、本発明のポリマーは、構成成分が特徴的な構造を有し、ガス分離層の構成材料をはじめ、種々の機能性ポリマーとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のガス分離複合膜の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明のガス分離複合膜の別の実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好ましい実施形態について説明する。
[ポリマー]
本発明のポリマー(高分子化合物)は、下記式(I)で表される構成成分を有する。
【0013】
【0014】
式(I)中、RA、RB及びRCは水素原子、炭素数1~4のアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基)、又はハロゲン原子を示す。**はポリマー中に組み込まれるための連結部位を示す。
式(I)において、RA、RB及びRCの少なくとも1つは炭素数1~4のアルキル基又はハロゲン原子である。なかでも、少なくともRAが炭素数の1~4のアルキル基又はハロゲン原子である形態が好ましい。
RA、RB及びRCとして採り得るハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。上記ハロゲン原子は好ましくは塩素原子、臭素原子であり、より好ましくは塩素原子である。
【0015】
式(I)で表される構成成分は、RA、RB及びRCの少なくとも1つが炭素数の1~4のアルキル基であることが好ましく、少なくともRAが炭素数の1~4のアルキル基であることがより好ましい。
RA、RB及びRCとして採り得る炭素数1~4のアルキル基は、置換基を有してもよい。つまり、RA、RB及びRCとして採り得る炭素数1~4のアルキル基は炭素数1~4の置換アルキル基であってもよい。しかし、RA、RB及びRCとして採り得る炭素数1~4のアルキル基はトリフルオロメチルではないことが好ましい。
上記の炭素数1~4のアルキル基がトリフルオロメチルの場合、このような構成成分を導くモノマーは立体的な影響と電子的な影響とが相俟って、重合しにくい傾向にある。例えば、式(I)の構成成分がジアミン成分であり、RA、RB又はRCがトリフルオロメチルの場合、このジアミン成分を導くジアミンモノマーは重合効率に劣る。
RA、RB及びRCとして採り得る炭素数1~4のアルキル基は、置換基を1つ又は2つ有した形態の置換アルキル基であることも好ましい。すなわち、RA、RB及びRCとして採り得る炭素数1~4のアルキル基は、無置換アルキル基、無置換アルキル基を構成する水素原子1つを置換基に置き換えた一置換アルキル基、又は、無置換アルキル基を構成する水素原子2つを置換基に置き換えた二置換アルキル基であることも好ましい。
上記の炭素数1~4のアルキル基が置換アルキル基の場合、この置換アルキル基における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~3)、及びアシルオキシ基(好ましくは炭素数1~3)が挙げられ、ハロゲン原子が好ましい。
RA、RB及びRCとして採り得る炭素数1~4のアルキル基は、無置換アルキル基であることが好ましい。
また、RA、RB及びRCとして採り得る炭素数1~4のアルキル基はエチル又はメチルが好ましく、無置換エチル又は無置換メチルがより好ましく、無置換メチルがさらに好ましい。
【0016】
本発明のポリマーは、上記式(I)で表される特有の構造に起因して所望の特性ないし機能性を発現する。例えば、ポリマーの低誘電率化を実現でき、また、ポリマーの透明性をより高めることができる。この理由は定かではないが、式(I)の構成成分が特定の部位にトリフルオロメチル基を有することがポリマーの低誘電率化と透明性の向上に寄与し、さらに、式(1)中のRA、RB及びRCの少なくとも1つが特定の低級アルキル基又はハロゲン原子であることも、ポリマーの平面性ないしパッキング性をほどよく抑えてポリマー内に適度な空隙を生じ、上記の低誘電率化と透明性の向上に効果的に作用しているものと考えられる。
【0017】
上記特性に基づき、上記式(I)で表される構成成分を有するポリマーは、種々の機能性ポリマーとして用いることができる。例えば、本発明のポリマーを、透明耐熱樹脂、低誘電率樹脂、高周波対応材料、及び防湿コート材料等の構成ポリマーとして好適に用いることができる。
【0018】
また、本発明のポリマーは、ガス分離膜のガス分離層の構成材料としても好適である。本発明のポリマーを用いることにより、ガス分離層を薄層に形成した場合であっても、混合ガス中から所望のガス成分を高い選択性で透過させることができ、ガス透過性とガス分離選択性の両立を高度なレベルで実現することができる。このガス分離膜は、過酷な乾燥条件下においてもガス分離層のガス透過性を十分に維持することができる。これは、上記トリフルオロメチル基がポリマーの凝集力を抑え、RA、RB及びRCによる平面性ないしパッキング性の抑制作用と相俟って、ポリマー内に、ガス分離選択性を阻害しない程度の十分な空隙が形成されること、その結果、高い自由体積量が付与され、この自由体積量が過酷な乾燥条件に晒しても十分に維持できるためと考えられる。したがって、本発明のポリマーをガス分離層に用いたガス分離膜は、可塑化成分の少ない天然ガス田などにおける使用に特に好適である。
本発明のポリマーをガス分離層の構成材料とする場合、このポリマーは後述するように、ポリイミド化合物であることが好ましい。
【0019】
上記式(I)で表される構成成分は、下記式(Ia)で表されるm-フェニレンジアミン化合物由来の構成成分であることが好ましい。すなわち、本発明のポリマーは、好ましくは、下記式(Ia)で表されるm-フェニレンジアミン化合物を合成原料として得られるものである。
【0020】
【0021】
式(Ia)中、RA、RB及びRCは、それぞれ、上記式(I)におけるRA、RB及びRCと同義であり、好ましい形態も同じである。
【0022】
本発明のポリマーは、上記式(Ia)で表されるm-フェニレンジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とを縮重合させることにより、ポリイミド化合物として得ることができる。ポリイミド化合物の合成は、用いる原料以外は、常法により行うことができる。また、一般的な成書(例えば、今井淑夫、横田力男編著、「最新ポリイミド~基礎と応用~」、株式会社エヌ・ティー・エス、2010年8月25日、p.3~49、など)を適宜参照して合成することができる。
また、一般式(I)のm-フェニレンジアミン化合物のアミノ基をイソシアネート化した後、ジオール化合物と反応させることにより、ポリウレタン化合物を得ることができる。ポリウレタン化合物の合成は、用いる原料以外は、常法により行うことができる、また、例えば、高分子学会高分子実験学編集委員編、「高分子実験学第5巻 重縮合と重付加」、共立出版、1980年を参照することができる。
一般式(I)のm-フェニレンジアミン化合物をイソシアネート化した後、ジアミン化合物と反応させたり、一般式(I)のm-フェニレンジアミン化合物とジイソシアネート化合物とを反応させたりすることにより、ポリウレア化合物を得ることができる。ポリウレア化合物の合成は、用いる原料以外は、常法により行うことができる。また、例えば、高分子学会高分子実験学編集委員編、「高分子実験学第5巻 重縮合と重付加」、共立出版、1980年を参照することができる。
一般式(1)のm-フェニレンジアミン化合物とジカルボン酸化合物とを縮重合させることによりポリアミド化合物を得ることができる。ポリアミド化合物の合成は、用いる原料以外は、常法により行うことができる、また、例えば、高分子学会高分子実験学編集委員編、「高分子実験学第5巻 重縮合と重付加」、共立出版、1980年を参照することができる。
【0023】
本発明において「ポリマー」の分子量は上記構造を満たす限り特に制限されない。例えば分子量を1000~1000000とすることができ、10000~500000とすることが好ましく、20000~300000とするがより好ましい。ここで、分子量が1000以上のものについては、重量平均分子量としての値である。
【0024】
[ガス分離膜]
本発明のガス分離膜は、上述した本発明のポリマーを含有してなるガス分離層を有する。本発明のポリマーは上記の通り高い自由体積を有し、過酷な乾燥条件に曝されてもこの自由体積を保持できるものと考えられる。このポリマーをガス分離層の構成材料として用いることにより、ガス透過性とガス分離選択性を高いレベルで両立し、また、過酷な環境下においてもガス分離性能を十分に維持することが可能となる。
【0025】
本発明のガス分離膜が有するガス分離層は好ましくは、少なくとも上記式(I)で表される構成成分を有するポリイミド化合物である。このポリイミド化合物は好ましくは、少なくとも下記式(II)で表される構成単位を有する。
【0026】
【0027】
式(II)中、RA、RB及びRCは、それぞれ、上記式(I)におけるRA、RB及びRCと同義であり、好ましい形態も同じである。
【0028】
上記式(II)中、Rは下記式(I-1)~(I-28)のいずれかで表される構造の基を示す。ここでX1~X3は単結合又は2価の連結基を、Lは-CH=CH-又は-CH2-を、R1及びR2は水素原子又は置換基を示し、*は式(II)中のカルボニル基との結合部位を示す。Rは式(I-1)、(I-2)又は(I-4)で表される基であることが好ましく、(I-1)又は(I-4)で表される基であることがより好ましく、(I-1)で表される基であることが特に好ましい。
【0029】
【0030】
上記式(I-1)、(I-9)及び(I-18)中、X1~X3は、単結合又は2価の連結基を示す。この2価の連結基としては、-C(Rx)2-(Rxは水素原子又は置換基を示す。Rxが置換基の場合、互いに連結して環を形成してもよい)、-O-、-SO2-、-C(=O)-、-S-、-NRY-(RYは水素原子、アルキル基(好ましくはメチル基又はエチル基)又はアリール基(好ましくはフェニル基))、-C6H4-(フェニレン基)、又はこれらの組み合わせが好ましく、単結合又は-C(Rx)2-がより好ましい。Rxが置換基を示すとき、その具体例としては、後記置換基群Zから選ばれる基が挙げられ、なかでもアルキル基(好ましい範囲は後記置換基群Zに示されたアルキル基と同義である)が好ましく、ハロゲン原子を置換基として有するアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチルが特に好ましい。なお、式(I-18)は、X3が、その左側に記載された2つの炭素原子のいずれか一方、及び、その右側に記載された2つの炭素原子のうちいずれか一方と連結していることを意味する。
【0031】
上記式(I-4)、(I-15)、(I-17)、(I-20)、(I-21)及び(I-23)中、Lは-CH=CH-又は-CH2-を示す。
【0032】
上記式(I-7)中、R1及びR2は水素原子又は置換基を示す。この置換基としては、後述する置換基群Zから選ばれる基が挙げられる。R1及びR2は互いに結合して環を形成していてもよい。
R1、R2は水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0033】
式(I-1)~(I-28)中に示された炭素原子は、本発明の効果を損なわない範囲でさらに置換基を有していてもよい。本発明においては、この置換基を有する形態も、式(I-1)~(I-28)のいずれかで表される基に包含される。この置換基の具体例としては、後記置換基群Zから選ばれる基が挙げられ、なかでもアルキル基又はアリール基が好ましい。
【0034】
本発明に用いるポリイミド化合物中、上記式(II)で表される構造単位の含有量は20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。本発明に用いるポリイミド化合物は、上記式(II)で表される構造単位からなることも好ましい。
上記ポリイミド化合物は、上記式(II)で表される構成単位に加えて、下記式(III)又は(IV)で表される構成単位を有してもよい。但し、下記式(III)で表される構成単位には、上記式(II)で表される構成単位に包含されるものは含まれない。上記ポリイミド化合物は、下記式(III)又は(IV)で表される構成単位を1種又は2種以上含むことができる。
【0035】
【0036】
【0037】
上記式(III)及び(IV)中、Rは式(II)中のRと同義であり、好ましい形態も同じである。R4~R6は置換基を示す。置換基としては、後述する置換基群Zから選ばれる基が挙げられる。
R4はアルキル基、カルボキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基又はハロゲン原子であることが好ましい。R4の数を示すl1は0~4の整数である。R4がアルキル基である場合、このアルキル基の炭素数は1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、1~3であることがさらに好ましく、さらに好ましくはメチル、エチル又はトリフルオロメチルである。式(III)の構成単位は、カルボキシ基、又はスルファモイル基を有することが好ましい。また、式(III)の構成単位がカルボキシ基又はスルファモイル基を有する場合、式(III)中のカルボキシ基又はスルファモイル基の数は1つであることが好ましい。
式(III)において、ジアミン成分(すなわちR4を有しうるフェニレン基)のポリイミド化合物に組み込まれるための2つの連結部位は、互いにメタ位又はパラ位に位置することが好ましく、互いにメタ位に位置することがより好ましい。
【0038】
R5及びR6はアルキル基もしくはハロゲン原子を示すか、又は互いに連結してX4と共に環を形成する基を示すことが好ましい。また、2つのR5が連結して環を形成している形態や、2つのR6が連結して環を形成している形態も好ましい。R5とR6が連結した構造に特に制限はなく、単結合、-O-又は-S-が好ましい。R5及びR6の数を示すm1及びn1は0~4の整数であるが、0~3であることが好ましく、0~2であることがより好ましく、より好ましくは0又は1である。R5及びR6がアルキル基である場合、このアルキル基の炭素数は1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、1~3であることがさらに好ましく、さらに好ましくはメチル、エチル又はトリフルオロメチルである。
式(IV)において、ジアミン成分中の2つのフェニレン基(すなわちR5とR6を有しうる2つのフェニレン基)のポリイミド化合物に組み込まれるための2つの連結部位は、X4の連結部位に対しメタ位又はパラ位に位置することが好ましい。
【0039】
X4は上記式(I-1)におけるX1と同義であり、好ましい形態も同じである。
【0040】
本発明に用いるポリイミド化合物は、その構造中、上記式(II)で表される構成単位と、上記式(III)で表される構成単位と、上記式(IV)で表される繰り返し単位の総モル量中に占める、式(II)で表される繰り返し単位のモル量の割合が40~100モル%であることが好ましく、50~100モル%がより好ましく、70~100モル%であることも好ましく、80~100モル%であることも好ましく、90~100モル%であることも好ましい。なお、上記式(II)で表される繰り返し単位と、上記式(III)で表される繰り返し単位と、上記式(IV)で表される繰り返し単位の総モル量中に占める、式(II)で表される繰り返し単位のモル量の割合が100モル%であるとは、ポリイミド化合物が、上記式(III)で表される繰り返し単位と、上記式(IV)で表される繰り返し単位のいずれも有しないことを意味する。
【0041】
本発明に用いるポリイミド化合物は、上記式(II)で表される構成単位からなるか、又は、上記式(II)で表される構成単位以外の繰り返し単位を有する場合には、上記式(II)で表される構成単位以外の残部が、上記式(III)又は上記式(IV)で表される構成単位からなることが好ましい。ここで、「上記式(III)又は上記式(IV)で表される構成単位からなる」とは、上記式(III)で表される構成単位からなる態様、上記式(IV)で表される構成単位からなる態様、並びに、上記式(III)で表される構成単位と上記式(IV)で表される構成単位とからな態様の3つの態様を含む意味である。
【0042】
置換基群Z:
アルキル基(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~20、特に好ましくは炭素数1~10のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、iso-プロピル、tert-ブチル、n-オクチル、n-デシル、n-ヘキサデシル)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~30、より好ましくは炭素数3~20、特に好ましくは炭素数3~10のシクロアルキル基であり、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2~30、より好ましくは炭素数2~20、特に好ましくは炭素数2~10のアルケニル基であり、例えばビニル、アリル、2-ブテニル、3-ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2~30、より好ましくは炭素数2~20、特に好ましくは炭素数2~10のアルキニル基であり、例えばプロパルギル、3-ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6~30、より好ましくは炭素数6~20、特に好ましくは炭素数6~12のアリール基であり、例えばフェニル、p-メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、好ましくは炭素数0~30、より好ましくは炭素数0~20、特に好ましくは炭素数0~10のアミノ基であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~20、特に好ましくは炭素数1~10のアルコキシ基であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2-エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6~30、より好ましくは炭素数6~20、特に好ましくは炭素数6~12のアリールオキシ基であり、例えばフェニルオキシ、1-ナフチルオキシ、2-ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~20、特に好ましくは炭素数1~12のヘテロ環オキシ基であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、
【0043】
アシル基(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~20、特に好ましくは炭素数1~12のアシル基であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~30、より好ましくは炭素数2~20、特に好ましくは炭素数2~12のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7~30、より好ましくは炭素数7~20、特に好ましくは炭素数7~12のアリールオキシカルボニル基であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2~30、より好ましくは炭素数2~20、特に好ましくは炭素数2~10のアシルオキシ基であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2~30、より好ましくは炭素数2~20、特に好ましくは炭素数2~10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、
【0044】
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2~30、より好ましくは炭素数2~20、特に好ましくは炭素数2~12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7~30、より好ましくは炭素数7~20、特に好ましくは炭素数7~12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~20、特に好ましくは炭素数1~12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0~30、より好ましくは炭素数0~20、特に好ましくは炭素数0~12のスルファモイル基であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、
【0045】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~20、特に好ましくは炭素数1~12のアルキルチオ基であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6~30、より好ましくは炭素数6~20、特に好ましくは炭素数6~12のアリールチオ基であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~20、特に好ましくは炭素数1~12のヘテロ環チオ基であり、例えばピリジルチオ、2-ベンズイミゾリルチオ、2-ベンズオキサゾリルチオ、2-ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、
【0046】
スルホニル基(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~20、特に好ましくは炭素数1~12のスルホニル基であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~20、特に好ましくは炭素数1~12のスルフィニル基であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~20、特に好ましくは炭素数1~12のウレイド基であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~20、特に好ましくは炭素数1~12のリン酸アミド基であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、より好ましくはフッ素原子が挙げられる)、
【0047】
シアノ基、カルボキシ基、オキソ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは3~7員環のヘテロ環基で、芳香族ヘテロ環でも芳香族でないヘテロ環であってもよく、ヘテロ環を構成するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。炭素数は0~30が好ましく、より好ましくは炭素数1~12のヘテロ環基であり、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3~40、より好ましくは炭素数3~30、特に好ましくは炭素数3~24のシリル基であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3~40、より好ましくは炭素数3~30、特に好ましくは炭素数3~24のシリルオキシ基であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は、更に上記置換基群Zより選択されるいずれか1つ以上の置換基により置換されてもよい。
なお、本発明において、1つの構造部位に複数の置換基があるときには、それらの置換基は互いに連結して環を形成していたり、上記構造部位の一部又は全部と縮環して芳香族環もしくは不飽和複素環を形成していたりしてもよい。
【0048】
化合物ないし置換基等がアルキル基、アルケニル基等を含むとき、これらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。またアリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、置換されていても無置換でもよい。
本明細書において、単に置換基としてしか記載されていないものは、特に断わりのない限りこの置換基群Zを参照するものであり、また、各々の基の名称が記載されているだけのとき(例えば、「アルキル基」と記載されているだけのとき)は、この置換基群Zの対応する基における好ましい範囲、具体例が適用される。
【0049】
上記ポリイミド化合物の分子量は、重量平均分子量として10,000~1,000,000であることが好ましく、より好ましくは15,000~500,000であり、さらに好ましくは20,000~200,000である。
【0050】
本明細書において分子量及び分散度は特に断らない限りGPC(ゲルろ過クロマトグラフィー)法を用いて測定した値とし、分子量はポリスチレン換算の重量平均分子量とする。GPC法に用いるカラムに充填されているゲルは芳香族化合物を繰り返し単位に持つゲルが好ましく、例えばスチレン-ジビニルベンゼン共重合体からなるゲルが挙げられる。カラムは2~6本連結させて用いることが好ましい。用いる溶媒は、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N-メチルピロリジノン等のアミド系溶媒が挙げられる。測定は、溶媒の流速が0.1~2mL/minの範囲で行うことが好ましく、0.5~1.5mL/minの範囲で行うことが最も好ましい。この範囲内で測定を行うことで、装置に負荷がかからず、さらに効率的に測定ができる。測定温度は10~50℃で行うことが好ましく、20~40℃で行うことが最も好ましい。なお、使用するカラム及びキャリアは測定対称となるポリマーの物性に応じて適宜選定することができる。
【0051】
上記ポリイミド化合物は、特定構造の2官能酸無水物(テトラカルボン酸二無水物)と特定構造のジアミンとを、上述の通り、常法により縮合重合させて合成することができる。
【0052】
上記ポリイミド化合物の合成において、一方の原料であるテトラカルボン酸二無水物は下記式(V)で表されることが好ましい。
【0053】
【0054】
式(V)中、Rは上記式(II)におけるRと同義であり、好ましい形態も同じである。
【0055】
本発明に用いうるテトラカルボン酸二無水物の具体例としては、例えば以下に示すものが挙げられる。下記構造式中、Phはフェニルである。
【0056】
【0057】
【0058】
本発明に用いうるポリイミド化合物の合成において、他方の原料であるジアミン化合物の少なくとも1種は、上記式(Ia)で表される。
式(Ia)で表されるジアミン化合物の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、Meはメチル、Etはエチル、Prはノルマルプロピルである。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
また、本発明に用いうるポリイミド化合物の合成において、原料とするジアミン化合物として、上記式(Ia)で表されるジアミン化合物に加えて、下記式(IIIa)又は下記式(IVa)で表されるジアミン化合物を用いてもよい。
【0063】
【0064】
式(IIIa)中、R4及びl1は、それぞれ上記式(III)におけるR4及びl1と同義であり、好ましい形態も同じである。但し、式(III)で表されるジアミン化合物は、式(Ia)で表されるジアミン化合物ではない。
式(IVa)中、R5、R6、X4、m1及びn1は、それぞれ上記式(IV)におけるR5、R6、X4、m1及びn1と同義であり、好ましい形態も同じである。
【0065】
式(IIIa)又は(IVa)で表されるジアミン化合物の好ましい具体例を以下に示す。
【0066】
【0067】
【0068】
本発明の用いうるポリイミド化合物の合成において、原料とするジアミン化合物として、特開2015-83296の段落[0023]~[0034]、及び国際公開第2017/002407号の段落[0017]~[0045]に定義されるポリイミドの繰り返し単位を導くジアミン化合物を用いることも好ましい。このようなジアミン化合物の具体例を以下に挙げる。
【0069】
【0070】
本発明に用いるポリイミド化合物は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよい。
【0071】
本発明に用いるポリイミド化合物は、上記各原料を溶媒中に混合して、上記のように通常の方法で縮合重合させて得ることができる。
上記溶媒としては、特に限定されるものではないが、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の脂肪族ケトン化合物、エチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、ジオキサン等のエーテル化合物、N-メチルピロリドン、2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド化合物、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄化合物などが挙げられる。これらの有機溶媒は反応基質であるテトラカルボン酸二無水物、ジアミン化合物、反応中間体であるポリアミック酸、さらに最終生成物であるポリイミド化合物を溶解させることを可能とする範囲で適切に選択されるものである。好ましくは、エステル化合物(好ましくは酢酸ブチル)、脂肪族ケトン化合物(好ましくは、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン)、エーテル化合物(ジエチレングリコールモノメチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル)、アミド化合物(好ましくはN-メチルピロリドン)、又は含硫黄化合物(ジメチルスルホキシド、スルホラン)が好ましい。また、これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
重合反応温度に特に制限はなくポリイミド化合物の合成において通常採用されうる温度を採用することができる。具体的には-40~60℃であることが好ましく、より好ましくは-30~50℃である。
【0073】
上記の重合反応により生成したポリアミック酸を分子内で脱水閉環反応させることによりイミド化することで、ポリイミド化合物が得られる。例えば、120℃~200℃に加熱して、副生する水を系外に除去しながら反応させる熱イミド化法や、ピリジンやトリエチルアミン、DBUのような塩基性触媒共存下で、無水酢酸やジシクロヘキシルカルボジイミド、亜リン酸トリフェニルのような脱水縮合剤を用いるいわゆる化学イミド化等の手法が好適に用いられる。
【0074】
本発明において、ポリイミド化合物の重合反応液中のテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の総濃度は特に限定されるものではないが、5~70質量%が好ましく、より好ましくは5~50質量%が好ましく、さらに好ましくは5~30質量%である。
【0075】
続いて、本発明のガス分離膜の構成について説明する。本発明のガス分離膜は、ガス分離層を薄層にしてガス透過性を確保した上で、目的のガス分離選択性も実現するものである。ガス分離層を薄層化する手法としては、ガス分離膜を相分離法により非対称膜とし、分離に寄与する部分を緻密層あるいはスキン層と呼ばれる薄層にする方法がある。この非対称膜では、緻密層以外の部分を膜の機械的強度を担う支持層として機能させる。
また、ガス分離機能を担うガス分離層と機械強度を担う支持層とを別素材とし、ガス透過性の支持層上に、ガス分離能を有するガス分離層を薄層に形成する複合膜の形態も知られている。各形態について以下に順に説明する。
【0076】
<ガス分離非対称膜>
ガス分離非対称膜は、ポリイミド化合物を含む溶液を用いて相転換法によって形成することができる。相転換法は、ポリマー溶液を凝固液と接触させて相転換させながら膜を形成する公知の方法であり、本発明ではいわゆる乾湿式法が好適に用いられる。乾湿式法は、膜形状にしたポリマー溶液の表面の溶液を蒸発させて薄い緻密層を形成し、ついで凝固液(ポリマー溶液の溶媒とは相溶し、ポリマーは不溶な溶剤)に浸漬し、その際生じる相分離現象を利用して微細孔を形成して多孔質層を形成させる方法であり、ロブ・スリラージャンらの提案(例えば、米国特許第3,133,132号明細書)したものである。
【0077】
本発明のガス分離非対称膜において、緻密層あるいはスキン層と呼ばれるガス分離に寄与する表層の厚さは特に限定されないが、実用的なガス透過性を付与する観点から、0.01~5.0μmであることが好ましく、0.05~1.0μmであることがより好ましい。一方、緻密層より下部の多孔質層はガス透過性の抵抗を下げると同時に機械強度の付与の役割を担うものであり、その厚さは非対称膜としての自立性が付与される限りにおいては特に限定されない。例えば、5~500μmとすることができ、5~200μmがより好ましく、5~100μmがさらに好ましい。
【0078】
本発明のガス分離非対称膜は、平膜であってもあるいは中空糸膜であってもよい。非対称中空糸膜は乾湿式紡糸法により製造することができる。乾湿式紡糸法は、乾湿式法を紡糸ノズルから吐出して中空糸状の目的形状としたポリマー溶液に適用して非対称中空糸膜を製造する方法である。より詳しくは、ポリマー溶液をノズルから中空糸状の目的形状に吐出させ、吐出直後に空気又は窒素ガス雰囲気中を通した後、ポリマーを実質的には溶解せず且つポリマー溶液の溶媒とは相溶性を有する凝固液に浸漬して非対称構造を形成し、その後乾燥し、さらに必要に応じて加熱処理して分離膜を製造する方法である。
【0079】
ノズルから吐出させるポリイミド化合物を含む溶液の溶液粘度は、吐出温度(例えば10℃)で2~17000Pa・s、好ましくは10~1500Pa・s、特に20~1000Pa・sであることが、中空糸状などの吐出後の形状を安定に得ることができるので好ましい。凝固液への浸漬は、一次凝固液に浸漬して中空糸状等の膜の形状が保持出来る程度に凝固させた後、案内ロールに巻き取り、ついで二次凝固液に浸漬して膜全体を十分に凝固させることが好ましい。凝固した膜の乾燥は、凝固液を炭化水素などの溶媒に置換してから行うのが効率的である。乾燥のための加熱処理は、用いたポリイミド化合物の軟化点又は二次転移点よりも低い温度で実施することが好ましい。
【0080】
<ガス分離複合膜>
ガス分離複合膜は、ガス透過性の支持層の上側に、特定のポリイミド化合物を含有してなるガス分離層が形成されている。この複合膜は、多孔質の支持体の少なくとも表面に、上記のガス分離層をなす塗布液(ドープ)を塗布(本明細書において塗布とは浸漬により表面に付着される態様を含む意味である。)することにより形成することが好ましい。
図1は、本発明の好ましい実施形態であるガス分離複合膜10を模式的に示す縦断面図である。1はガス分離層、2は多孔質層からなる支持層である。
図2は、本発明の好ましい実施形態であるガス分離複合膜20を模式的に示す断面図である。この実施形態では、ガス分離層1及び多孔質層2に加え、支持層として不織布層3が追加されている。
図1及び2は、二酸化炭素とメタンの混合ガスから二酸化炭素を選択的に透過させる態様を示す。
【0081】
本明細書において「支持層上側」とは、支持層とガス分離層との間に他の層が介在してもよい意味である。また、上下の表現については、特に断らない限り、分離対象となるガスが供給される側を「上」とし、分離されたガスが出される側を「下」とする。
【0082】
本発明のガス分離複合膜は、多孔質性の支持体(支持層)の少なくとも表面にガス分離層を形成して複合膜とすることができる。ガス分離層の膜厚としては機械的強度、分離選択性を維持しつつ高ガス透過性を付与する条件において可能な限り薄膜であることが好ましい。
【0083】
本発明のガス分離複合膜において、ガス分離層の厚さは特に限定されないが、0.01~5.0μmであることが好ましく、0.05~2.0μmであることがより好ましい。
【0084】
支持層に好ましく適用される多孔質支持体は、機械的強度及び高気体透過性の付与に合致する目的のものであれば、特に限定されるものではなく有機、無機どちらの素材であってもよい。好ましくは有機高分子の多孔質膜であり、その厚さは好ましくは1~3000μm、より好ましくは5~500μmであり、さらに好ましくは5~150μmである。この多孔質膜の細孔構造は、通常平均細孔直径が10μm以下、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。空孔率は好ましくは20~90%であり、より好ましくは30~80%である。
ここで、支持層が「ガス透過性」を有するとは、支持層(支持層のみからなる膜)に対して、40℃の温度下、ガス供給側の全圧力を4MPaにして二酸化炭素を供給した際に、二酸化炭素の透過速度が1×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg(10GPU)以上であることを意味する。さらに、支持層のガス透過性は、40℃の温度下、ガス供給側の全圧力を4MPaにして二酸化炭素を供給した際に、二酸化炭素透過速度が3×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg(30GPU)以上であることが好ましく、100GPU以上であることがより好ましく、200GPU以上であることがさらに好ましい。多孔質膜の素材としては、従来公知の高分子、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアラミド等の各種樹脂を挙げることができる。多孔質膜の形状としては、平板状、スパイラル状、管状、中空糸状などいずれの形状をとることもできる。
【0085】
本発明のガス分離複合膜においては、ガス分離層が形成される支持層の下部にさらに機械的強度を付与するために支持体が形成されていることが好ましい。このような支持体としては、織布、不織布、ネット等が挙げられるが、製膜性及びコスト面から不織布が好適に用いられる。不織布としてはポリエステル、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリアミド等からなる繊維を単独あるいは複数を組み合わせて用いてもよい。不織布は、例えば、水に均一に分散した主体繊維とバインダー繊維を円網や長網等で抄造し、ドライヤーで乾燥することにより製造できる。また、毛羽を除去したり機械的性質を向上させたり等の目的で、不織布を2本のロール挟んで圧熱加工を施すことも好ましい。
【0086】
ガス分離複合膜の製造法それ自体は公知であり、例えば、特開2015-83296号公報を参照することができる。
【0087】
本発明のガス分離膜において、ガス分離層中における本発明のポリマーの含有量は、所望のガス分離性能が得られれば特に制限はない。ガス分離性能をより向上させる観点から、ガス分離層中における本発明のポリマーの含有量は、20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。また、ガス分離層中の本発明のポリマーの含有量は、100質量%であってもよいが、通常は99質量%以下である。
【0088】
(支持層とガス分離層の間の他の層)
本発明のガス分離複合膜において、支持層とガス分離層との間には他の層が存在していてもよい。他の層の好ましい例として、シロキサン化合物層が挙げられる。シロキサン化合物層を設けることで、支持体最表面の凹凸を平滑化することができ、分離層の薄層化が容易になる。シロキサン化合物層を形成するシロキサン化合物としては、主鎖がポリシロキサンからなるものと、主鎖にシロキサン構造と非シロキサン構造とを有する化合物とが挙げられる。これらのシロキサン化合物層としては、例えば、特開2015-160167号公報の段落[0103]~[0127]に記載されたものを好適に適用することができる。
【0089】
(ガス分離層の上側の保護層)
ガス分離膜は、上記ガス分離層上に、保護層としてシロキサン化合物層を有してもよい。
保護層として用いるシロキサン化合物層としては、例えば、国際公開第2017/002407号の段落[0125]~[0175]に記載されたものを好適に適用することができる。
【0090】
本発明のガス分離膜は、ガス分離複合膜の形態が好ましい。
【0091】
(ガス分離膜の用途)
本発明のガス分離膜(複合膜及び非対称膜)は、ガス分離回収法、ガス分離精製法として好適に用いることができる。例えば、水素、ヘリウム、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、酸素、窒素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、メタン、エタンなどの炭化水素、プロピレンなどの不飽和炭化水素、テトラフルオロエタンなどのパーフルオロ化合物などのガスを含有する気体混合物から特定の気体を効率よく分離し得るガス分離膜とすることができる。特に二酸化炭素/炭化水素(メタン)を含む気体混合物から二酸化炭素を選択的に分離するガス分離膜とすることが好ましい。
本発明のガス分離膜を用いたガス分離の際の圧力は0.5~10MPaであることが好ましく、1~10MPaであることがより好ましく、2~7MPaであることがさらに好ましい。また、ガス分離温度は、-30~90℃であることが好ましく、15~70℃であることがさらに好ましい。
【0092】
[ガス分離モジュール、ガス分離装置]
本発明のガス分離膜を用いてガス分離膜モジュールを調製することができる。モジュールの例としては、スパイラル型、中空糸型、プリーツ型、管状型、プレート&フレーム型などが挙げられる。
また、本発明のガス分離膜又はガス分離モジュールを用いて、ガスを分離回収又は分離精製させるための手段を有するガス分離装置を得ることができる。
【0093】
[m-フェニレンジアミン化合物]
本発明のm-フェニレンジアミン化合物は、下記式(Ia-1)で表される。
【0094】
【化22】
式(Ia-1)中、R
aは水素原子、炭素数1~3のアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~3のアルコキシ基、又は炭素数1~3のアシルオキシ基を示す。
但し、式(Ia-1)においてベンゼン環に結合する-C(R
a)
3の炭素数は1~4であり、1~3が好ましい。また、この-C(R
a)
3はトリフルオロメチルではない(3つのR
aのすべてがフッ素原子となることはない)。
この-C(R
a)
3が全体として置換アルキル基の場合、この置換アルキル基における置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~3のアルコキシ基、及び炭素数1~3のアシルオキシ基が挙げられ、ハロゲン原子が好ましい。
式(Ia-1)中の-C(R
a)
3は無置換アルキル基が好ましく、無置換エチル又は無置換メチルがより好ましく、無置換メチルがさらに好ましい。
R
aとして採り得るハロゲン原子は式(Ia)のR
Aとして採り得るハロゲン原子と同義であり、好ましい形態も同じである。
【0095】
式(Ia-1)中のRB及びRCは、それぞれ式(Ia)中のRB及びRCと同義であり、好ましい形態も同じである。
【0096】
本発明のm-フェニレンジアミン化合物の具体例を以下に示す。
【0097】
【0098】
【0099】
本発明のm-フェニレンジアミン化合物を得るための方法に特に制限はない。例えば、後述する実施例に記載された調製方法を参照し、また、適宜に、Chemistry Letters 1981,Vol.10,No.12; Ange.Chem.Int.Ed.2011,50,3793-3798; Synthetic Communications,22(22),3189-3195,1992; Synthesis,(16),2716-2726,2004等を参照して、上記式(Ia-1)で表されるm-フェニレンジアミン化合物を調製することができる。
【0100】
本発明のm-フェニレンジアミン化合物は、ポリマーの合成原料として好適であり、得られるポリマーに所望の特性を付与することができる。例えば、本発明のm-フェニレンジアミン化合物を合成原料(モノマー)として得られるポリマーは、低誘電率化を実現でき、また、ポリマーの透明性をより高めることができる。この理由は定かではないが、ポリマーに組み込まれた本発明のm-フェニレンジアミン化合物由来の構成成分が、特定の部位にトリフルオロメチル基を有することが、ポリマーの低誘電率化と透明性の向上に寄与すること、また、この構成成分が有する特定の置換基が、ポリマーの平面性ないしパッキング性をほどよく抑えてポリマー内に適度な空隙を生じることなどが、上記の低誘電率化と透明性の向上に効果的に作用しているものと考えられる。
したがって、本発明のm-フェニレンジアミン化合物は、種々の機能性ポリマーの合成原料として用いることにより、例えば、透明耐熱樹脂、低誘電率樹脂、高周波対応材料、及び防湿コート材料等の構成ポリマーを提供することができる。
また、本発明のm-フェニレンジアミン化合物を合成原料として用いることにより、上述のように、ガス分離膜のガス分離層の構成材料として好適なポリマーを提供することができる。
【0101】
本発明のm-フェニレンジアミン化合物を合成原料として、ポリイミド化合物、ポリウレタン化合物、ポリウレア化合物、又はポリアミド化合物を得ることができる。
【実施例】
【0102】
実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0103】
[合成例1]
<ポリイミドP-01の調製>
【0104】
【0105】
上記スキームに従って、下記の通りジアミン化合物を調製した。
4-メチルベンゾトリフルオリドの23.3g(東京化成工業製)を三口フラスコに入れ、氷浴で冷却した。濃硫酸87mL(1.84g/cm3、富士フイルム和光純薬社製)を加えた後、発煙硝酸46.4g(1.52g/cm3、富士フイルム和光純薬社製)を慎重に滴下した。内温50℃で3時間反応させた後、氷冷し、慎重に氷に注いだ。目的物が乾かないように慎重にろ過した後、水と飽和重曹水を用いて洗浄し、水を含んだ状態のジニトロ化合物45gを得た。
このジニトロ化合物45gをメタノール400mLに溶解し、1Lオートクレーブに入れた。パラジウム-活性炭素(Pd5%)7.3g(富士フイルム和光純薬社製)を入れ、オートクレーブを密閉した後、約5MPaの水素を充填し、30℃で6時間反応させた。パラジウム-活性炭素が乾かないように注意しながら慎重にろ過した。ろ液を減圧濃縮した後、得られた固体を酢酸エチル、ヘキサンを用いて再結晶し、得られた結晶を80℃で8時間真空乾燥し、目的のジアミン化合物18.6gを得た。4-メチルベンゾトリフルオリドからの収率は67%であった。
【0106】
【0107】
上記スキームに従って、下記の通りポリイミドP-01を調製した。
上記で調製したジアミン化合物13.7g、3,5-ジアミノ安息香酸1.2g(日本純良薬品製)、N-メチルピロリドン98mL(富士フイルム和光純薬工業製)を三口フラスコに入れ、窒素気流下とした。水冷下、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物35.5g(ダイキン工業製)を添加し、N-メチルピロリドン35mLで洗い込んだ。40℃で3時間撹拌した後、トルエン32mL(富士フイルム和光純薬工業製)を加え、170℃で6時間撹拌した。室温に冷却した後、N-メチルピロリドン30mL、アセトン350mLで希釈し、5L三口フラスコに移した。ここに、メタノール2Lを滴下してポリイミドを白色粉体として析出させた。吸引ろ過し、メタノールでリスラリー洗浄し、50℃、20時間、送風乾燥し、ポリイミドP-01を40.3g(収率85%)得た。テトラヒドロフランを用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量は92000であった。
【0108】
<ポリイミドP-02~P-11、cP-01~cP-03の調製>
使用する原料を、下記構造を導くものに代えたこと以外は、上記<ポリイミドP-01の調製>と同様にしてポリイミドP-02~P-11、cP-01~cP-03を得た。いずれのポリイミドも重量平均分子量が30000~200000の範囲内にあった。
【0109】
ポリイミドP-01~P-11、cP-01~cP-03の構造を以下に示す。下記構造中、構成単位に付された数値はモル比(%)である。
【0110】
【0111】
【0112】
<ポリイミドP-12~P-19の調製>
使用する原料を、下記構造を導くものに代えたこと以外は、上記<ポリイミドP-01の調製>と同様にしてポリイミドP-12~P-19を得た。いずれのポリイミドも重量平均分子量が30000~200000の範囲内にあった。
【0113】
ポリイミドP-12~P-19の構造を以下に示す。下記構造中、構成単位に付された数値はモル比(%)である。
【0114】
【0115】
[実施例1] ガス分離膜の作製
<平滑層付PAN多孔質膜の作製>
(ジアルキルシロキサン基を有する放射線硬化性ポリマーの調製)
150mLの3口フラスコにUV9300(Momentive社製)39g、X-22-162C(信越化学工業社製)10g、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)0.007gを加え、n-ヘプタン50gに溶解させた。これを95℃で168時間維持し、ポリ(シロキサン)基を有する放射線硬化性ポリマー溶液(25℃で粘度22.8mPa・s)を得た。
【0116】
(重合性の放射線硬化性組成物の調製)
上記放射線硬化性ポリマー溶液5gを20℃まで冷却し、n-ヘプタン95gで希釈した。得られた溶液に対し、光重合開始剤であるUV9380C(Momentive社製)0.5g及びオルガチックスTA-10(マツモトファインケミカル社製)0.1gを添加し、重合性の放射線硬化性組成物を調製した。
【0117】
(重合性の放射線硬化性組成物の多孔質支持体への塗布、平滑層の形成)
PAN(ポリアクリロニトリル)多孔質膜(不織布上にポリアクリロニトリル多孔質膜が存在、不織布を含め、膜厚は約180μm)を支持体として上記の重合性の放射線硬化性組成物をスピンコートした後、UV強度24kW/m、処理時間10秒のUV処理条件でUV処理(Fusion UV System社製、Light Hammer 10、D-バルブ)を行った後、乾燥させた。このようにして、多孔質支持体上にジアルキルシロキサン基を有する厚み1μmの平滑層を形成した。
【0118】
<ガス分離膜の作製>
図2に示すガス分離複合膜を作製した(
図2には平滑層は図示していない)。
30ml褐色バイアル瓶に、ポリイミドP-01を0.08g、テトラヒドロフラン7.92gを混合して30分攪拌した後、上記平滑層を付与したPAN多孔質膜上にスピンコートしてガス分離層を形成し、複合膜を得た。ポリイミドP-01層の厚さは約100nmであり、PAN多孔質膜の厚さは不織布を含めて約180μmであった。
なお、ポリアクリロニトリル多孔質膜は分画分子量100,000以下のものを使用した。また、この多孔質膜の40℃、5MPaにおける二酸化炭素の透過性は、25000GPUであった。
【0119】
[実施例2~19] ガス分離膜の作製
上記実施例1における複合膜の作製において、ポリイミドP-01をポリイミドP-02~P-19に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれ実施例2~19のガス分離膜を作製した。
【0120】
[比較例1~3] ガス分離膜の作製
上記実施例1において、ポリイミドP-01をポリイミドcP-01~cP-03に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれ比較例1~3のガス分離膜を作製した。
【0121】
[試験例1] ガス分離膜のCO2透過速度及びガス分離選択性の評価-1
上記各実施例及び比較例のガス分離膜(複合膜)を用いて、ガス分離性能を以下のように評価した。
ガス分離膜を多孔質支持体(支持層)ごと直径47mmに切り取り、透過試験サンプルを作製した。GTRテック株式会社製ガス透過率測定装置を用い、二酸化炭素(CO2):メタン(CH4)が10:90(体積比)の混合ガスをガス供給側の全圧力が5MPa(CO2の分圧:0.3MPa)、流量500mL/min、45℃となるように調整し供給した。透過してきたガスをガスクロマトグラフィーにより分析した。膜のガス透過性は、ガス透過率(Permeance)としてCO2透過速度を算出することにより決定した。ガス透過率(ガス透過速度)の単位はGPU(ジーピーユー)単位〔1GPU=1×10-6cm3(STP)/cm2・sec・cmHg〕で表した。ガス分離選択性は、この膜のCH4透過速度RCH4に対するCO2透過速度RCO2の比(RCO2/RCH4)として計算した。
上記CO2透過速度とガス分離選択性を下記評価基準にあてはめ、ガス分離膜の性能を評価した。
【0122】
<CO2透過速度の評価基準>
A:120GPU以上
B:105GPU以上120GPU未満
C:90GPU以上105GPU未満
D:75GPU以上90GPU未満
E:75GPU未満
【0123】
<ガス分離選択性(RCO2/RCH4)の評価基準>
A:18以上
B:14以上18未満
C:10以上14未満
D:10未満
【0124】
[試験例2] 強制乾燥試験
上記各実施例及び比較例のガス分離膜(複合膜)を、90℃で2週間放置して乾燥させた。この乾燥後のガス分離膜を用いて、試験例1と同様にしてCO2透過速度を調べた。CO2透過速度の評価基準は試験例1と同じである。この試験により、可塑化成分の少ない天然ガス田などへの適用性を模擬的に評価できる。
【0125】
上記の各試験例の結果を下記表1に示す。
【0126】
【0127】
【0128】
上記表1に示されるように、ポリマーのジアミン成分が、本発明で規定するのと同様にパーフルオロメチルを有するフェニレン構造を有していても、本発明で規定する特定の置換基を有する形態でない場合には、このポリマーにより構成したガス分離層を有するガス分離膜は、ガス透過速度に劣り、さらに、乾燥条件に曝すことによりガス透過速度はさらに低下する結果となった(比較例1及び3)。また、ポリマーのジアミン成分中に、パーフルオロメチルに代えて長鎖のパーフルオロアルキル基を導入した場合、ガス分離選択性が大きく劣る結果となった(比較例2)。
これに対し、本発明で規定する構造のジアミン成分を有するポリマーをガス分離層に用いたガス分離膜は、ガス透過速度とガス分離選択性のいずれにも優れていた。また、乾燥条件に曝してもガス透過速度を十分に維持することができるものであった(実施例1~19)。
【0129】
[合成例2]
<ポリアミドPA-01の調製>
【0130】
【0131】
上記スキームに従って、下記の通りポリアミドPA-01を調製した。
4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(安息香酸)ジクロリド2.00g(常法により合成)、ジアミン1.02g(上記と同様にして合成)、N-メチルピロリドン20g(富士フイルム和光純薬工業製)、4-ジメチルアミノピリジン1.20g(富士フイルム和光純薬社製)を入れ、60℃にて、4時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、N-メチルピロリドン10gで濃度を調整して、メタノールで再沈殿し、目的のPA-01を2.4g得た。N-メチルピロリドンを用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量は30000であった。
【0132】
【0133】
<ポリアミドPA-02、PA-03の調製>
使用する原料を、下記構造を導くものに代えたこと以外は、上記<ポリアミドPA-01の調製>と同様にして、下記ポリアミドPA-02及びPA-03を調製した。
【0134】
【0135】
【0136】
[合成例3]
<ポリウレアPU-01の調製>
【0137】
【0138】
上記スキームに従って、下記の通りポリウレアPU-01を調製した。
2,2-ビス(4-イソシアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン1.00g(東京化成工業製)、ジアミン0.56g(上記と同様にして合成)、N-メチルピロリドン10g(富士フイルム和光純薬工業製)、ネオスタンU-600(日東化成製)0.05gを入れ、70℃にて、6時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、N-メチルピロリドン10gで濃度を調整して、メタノールで再沈殿し、目的のPU-01を1.4g得た。N-メチルピロリドンを用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量は25000であった。
【0139】
【0140】
[合成例4]
<m-フェニレンジアミン化合物DA-1の調製>
【0141】
【0142】
上記スキームに従って、下記の通りm-フェニレンジアミン化合物DA-1を調製した。
2,4-ジメチルベンゾトリフルオリド4.5g(Oakwood Products,Inc.製)を三口フラスコに入れ、氷浴で冷却した。濃硫酸24mL(1.84g/cm3、富士フイルム和光純薬社製)を加えた後、発煙硝酸9.7g(1.52g/cm3、富士フイルム和光純薬社製)を慎重に滴下した。内温50℃で3時間反応させた後、氷冷し、慎重に氷に注いだ。目的物が乾かないように慎重にろ過した後、水と飽和重曹水を用いて洗浄し、水を含んだ状態のジニトロ化合物10gを得た。
このジニトロ化合物10gをメタノール200mLに溶解し、0.5Lオートクレーブに入れた。パラジウム-活性炭素(Pd5%)1.4g(富士フイルム和光純薬社製)を入れ、オートクレーブを密閉した後、約5MPaの水素を充填し、35℃で7時間反応させた。パラジウム-活性炭素が乾かないように注意しながら慎重にろ過した。ろ液を減圧濃縮した後、得られた固体を酢酸エチル、クロロホルムを用いてシリカゲルカラム精製し、得られた結晶を60℃で8時間真空乾燥し、目的のm-フェニレンジアミン化合物DA-1(上記スキームの右端の化合物)を4.3g得た。2,4-ジメチルベンゾトリフルオリドからの収率は82%であった。
【0143】
上記で得られたm-フェニレンジアミン化合物DA-1のスペクトルデータを以下に示す。
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ ppm 6.51(s,1H),3.72(brs,2H),3.59(brs,2H),2.16(d,J=1.2Hz,3H),2.02(s 3H),19F NMR(376MHz,CDCl3) δ ppm -59.98(s,6F)
【0144】
<m-フェニレンジアミン化合物DA-2の調製>
【0145】
【0146】
上記スキームに従って、下記の通りm-フェニレンジアミン化合物DA-2を調製した。
2,4、6-トリメチルベンゾトリフルオリド1.6g(Oakwood Products,Inc.製)を三口フラスコに入れ、氷浴で冷却した。濃硫酸7.5mL(1.84g/cm3、富士フイルム和光純薬社製)を加えた後、発煙硝酸4.0g(1.52g/cm3、富士フイルム和光純薬社製)を慎重に滴下した。内温50℃で3時間反応させた後、氷冷し、慎重に氷に注いだ。目的物が乾かないように慎重にろ過した後、水と飽和重曹水を用いて洗浄し、水を含んだ状態のジニトロ化合物4gを得た。
このジニトロ化合物4gをメタノール80mLに溶解し、0.2Lオートクレーブに入れた。パラジウム-活性炭素(Pd5%)0.5g(富士フイルム和光純薬社製)を入れ、オートクレーブを密閉した後、約5MPaの水素を充填し、30℃で6時間反応させた。パラジウム-活性炭素が乾かないように注意しながら慎重にろ過した。ろ液を減圧濃縮した後、得られた固体を酢酸エチル、ヘキサンを用いて再結晶し、得られた結晶を80℃で8時間真空乾燥し、目的のm-フェニレンジアミン化合物DA-2(上記スキームの右端の化合物)を1.5g得た。2,4、6-トリメチルベンゾトリフルオリドからの収率は80%であった。
【0147】
上記で得られたm-フェニレンジアミン化合物DA-2のスペクトルデータを以下に示す。
1H NMR(300MHz,CDCl3) δ ppm 3.63(brs,4H),2.21(q,J=2.7Hz,6H),2.06(s 3H),19F NMR(282MHz,CDCl3) δ ppm -51.00(s,6F)
【0148】
<m-フェニレンジアミン化合物DA-3の調製>
【0149】
【0150】
上記スキームに従って、下記の通りm-フェニレンジアミン化合物DA-3を調製した。
4-エチルベンゾトリフルオリド25.0g(Manchester Organics Ltd.製)を三口フラスコに入れ、氷浴で冷却した。濃硫酸250mL(1.84g/cm3、富士フイルム和光純薬社製)を加えた後、発煙硝酸55g(1.52g/cm3、富士フイルム和光純薬社製)を慎重に滴下した。内温40℃で5時間反応させた後、氷冷し、慎重に氷に注いだ。目的物が乾かないように慎重にろ過した後、水と飽和重曹水を用いて洗浄し、水を含んだ状態のジニトロ化合物50gを得た。
このジニトロ化合物50gをメタノール800mLに溶解し、2Lオートクレーブに入れた。パラジウム-活性炭素(Pd5%)7.6g(富士フイルム和光純薬社製)を入れ、オートクレーブを密閉した後、約5MPaの水素を充填し、40℃で6時間反応させた。パラジウム-活性炭素が乾かないように注意しながら慎重にろ過した。ろ液を減圧濃縮した後、得られた固体を酢酸エチル、クロロホルムを用いてシリカゲルカラム精製し、得られた結晶を60℃で8時間真空乾燥し、目的のm-フェニレンジアミン化合物DA-3(上記スキームの右端の化合物)を24.0g得た。4-エチルベンゾトリフルオリドからの収率は82%であった。
【0151】
上記で得られたm-フェニレンジアミン化合物DA-3のスペクトルデータを以下に示す。
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ ppm 6.39(s,2H),3.72(brs,4H),2.46(q,J=8Hz,4H),1.16(t,J=8Hz,3H),19F NMR(376MHz,CDCl3) δ ppm -63.03(s,6F)
【符号の説明】
【0152】
1 ガス分離層
2 多孔質層
3 不織布層
10、20 ガス分離複合膜