IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

特許6999620高い炭素含有量を有する炭素ドープ酸化ケイ素膜および炭化ケイ素膜の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】高い炭素含有量を有する炭素ドープ酸化ケイ素膜および炭化ケイ素膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20220111BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20220111BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20220111BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20220111BHJP
   C23C 16/50 20060101ALI20220111BHJP
   C23C 16/56 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
H01L21/316 C
H01L21/205
C23C16/42
C23C16/455
C23C16/50
C23C16/56
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019157143
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2020036013
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2019-10-30
(31)【優先権主張番号】62/724,109
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/553,080
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】シンチエン レイ
(72)【発明者】
【氏名】ハリピン チャンドラ
(72)【発明者】
【氏名】キム ム-ソン
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0122302(US,A1)
【文献】国際公開第2018/022719(WO,A1)
【文献】特表2018-506185(JP,A)
【文献】特開2011-108737(JP,A)
【文献】特開2011-166084(JP,A)
【文献】特表2005-524983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/205
C23C 16/42
C23C 16/455
C23C 16/50
C23C 16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマALDプロセスにより炭素ドープ酸化ケイ素膜を形成するための方法であって、
a)表面特徴を含む基材を反応器に提供する工程と、
b)20~400℃の範囲の1つ又は複数の温度に前記反応器を加熱し、前記反応器を100torr以下の圧力で維持する工程と、
c)1-クロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1-ブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジクロロ-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ブロモ-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,1,3,3,5,5,5-オクタクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,3,3,5,5-ヘキサクロロ-1,5-ジメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5-ヘキサクロロ-3,3-ジメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,3,5,5-ペンタクロロ-1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5-ヘキサクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,5,5-テトラクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1-ジヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジヨード-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1-クロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,5-ジクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ブロモ-1,3,5-トリシラペンタン、1,5-ジブロモ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ヨード-1,3,5-トリシラペンタン、及び1,5-ジヨード-1,3,5-トリシラペンタンからなる群より選択される、2つのSi-C-Si結合を有する少なくとも1つのケイ素前駆体を前記反応器に導入して、前記基材に化学吸着層を固定する工程と、
d)工程cからの未消費の前駆体及び/又は反応副産物を前記反応器から不活性ガスを用いてパージする工程と、
e)水素、不活性ガス、及びそれらの混合物からなる群より選択されるプラズマを前記反応器に提供して、前記化学吸着層と反応させて、炭化ケイ素膜を形成する工程と、
f)工程eからの反応副産物を前記反応器から不活性ガスを用いてパージする工程と、
g)工程c~fを繰り返して、前記炭化ケイ素膜を所定の厚さにする工程と、
h)得られた前記炭化ケイ素膜を、周辺温度~1000℃の範囲の1つ又は複数の温度で酸素源にさらして、前記炭化ケイ素膜を炭素ドープ酸化ケイ素膜に変換する工程とを含み、
前記炭素ドープ酸化ケイ素膜が、20~40原子%の範囲の炭素含有量を有する、方法。
【請求項2】
前記炭素ドープ酸化ケイ素膜が、4以下の誘電率k、及び30原子%以上の炭素含有量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭素ドープ酸化ケイ素膜が、脱イオン水中の0.5wt%のフッ酸において測定した場合、熱酸化ケイ素のエッチ速度の0.5倍以下のエッチ速度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炭素ドープ酸化ケイ素膜が、脱イオン水中の0.5wt%のフッ酸において測定した場合、熱酸化ケイ素のエッチ速度の0.1倍以下のエッチ速度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記炭素ドープ酸化ケイ素膜が、脱イオン水中の0.5wt%のフッ酸において測定した場合、熱酸化ケイ素のエッチ速度の0.05倍以下のエッチ速度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記炭素ドープ酸化ケイ素膜が、脱イオン水中の0.5wt%のフッ酸において測定した場合、熱酸化ケイ素のエッチ速度の0.01倍以下のエッチ速度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
300~1000℃の温度で、前記炭素ドープ酸化ケイ素膜に熱アニールを行う工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
25~600℃の温度で、不活性ガスプラズマ又は水素/不活性ガスプラズマを用いて、前記炭素ドープ酸化ケイ素膜にプラズマ処理を行う工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
基材の少なくとも表面上に炭化ケイ素膜を堆積するための方法であって、
前記基材を反応器に提供する工程と、
前記反応器を400~600℃の範囲の1つ又は複数の温度に加熱する工程と、
1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-1,3-ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2-メチル-1,3-ジシラプロパン、1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2,2-ジメチル-1,3-ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2-エチル-1,3-ジシラプロパン、1-クロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1-ブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジクロロ-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ブロモ-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,1,3,3,5,5,5-オクタクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,3,3,5,5-ヘキサクロロ-1,5-ジメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5-ヘキサクロロ-3,3-ジメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,3,5,5-ペンタクロロ-1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5-ヘキサクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,5,5-テトラクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1-ジヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジヨード-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1-クロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,5-ジクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ブロモ-1,3,5-トリシラペンタン、1,5-ジブロモ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ヨード-1,3,5-トリシラペンタン、及び1,5-ジヨード-1,3,5-トリシラペンタンからなる群より選択される前駆体を前記反応器に導入する工程と、
水素源を含むプラズマを前記反応器に導入して、前記前駆体の少なくとも一部と反応させて、炭化ケイ素膜を形成する工程とを含む、方法。
【請求項10】
25~600℃の温度で、不活性ガスプラズマ又は水素/不活性ガスプラズマで前記炭化ケイ素膜を処理する工程をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
プラズマALDプロセスにより炭素ドープ酸化ケイ素膜を形成するための方法であって、
a)表面特徴を含む基材を反応器に提供する工程と、
b)550℃以下の範囲の1つ又は複数の温度に前記反応器を加熱し、前記反応器を100torr以下の圧力で維持する工程と、
c)1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-1,3-ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2-メチル-1,3-ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2,2-ジメチル-1,3-ジシラプロパン、及び1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2-エチル-1,3-ジシラプロパンからなる群より選択される1つのSi-C-Si結合を有する少なくとも1つのケイ素前駆体を前記反応器に導入して、前記基材に化学吸着層を形成する工程と、
d)工程cからの未消費の前駆体及び/又は反応副産物を前記反応器から不活性ガスを用いてパージする工程と、
e)水素を含むプラズマを前記反応器に提供して、前記化学吸着層と反応させて、炭化ケイ素膜を形成する工程と、
f)工程eからの反応副産物を前記反応器から不活性ガスを用いてパージする工程と、
g)工程c~fを繰り返して、前記炭化ケイ素膜を所定の厚さにする工程と、
h)得られた前記炭化ケイ素膜を、周辺温度~1000℃の範囲の1つ又は複数の温度で酸素源にさらして、前記炭化ケイ素膜を炭素ドープ酸化ケイ素膜に変換する工程とを含み、
前記炭素ドープ酸化ケイ素膜が、20~40原子%の範囲の炭素含有量を有する、方法。
【請求項12】
400~1000℃の温度で、前記炭素ドープ酸化ケイ素膜をスパイクアニールで処理する工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記炭素ドープ酸化ケイ素膜をUV光源にさらす工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記炭素ドープ酸化ケイ素膜を、Si-Me基及びSi-H基の1つ又は両方を有する有機アミノシラン又はクロロシランにさらす工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2018年8月29日出願の米国仮特許出願第62/724,109号の優先権を主張し、その全ての内容は、全ての許容される目的について、その文献を参照することにより本明細書中に組み込まれる。
【0002】
本発明は、電子デバイスの製作のための組成物及び方法に関する。より具体的には、本発明は、高い耐酸素アッシング性のケイ素含有膜、例えば、限定されないが、炭化ケイ素膜、炭素ドープ酸化ケイ素膜、及び炭素ドープ酸窒化ケイ素膜の堆積のための化合物、組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
米国特許第8,575,033号明細書では、基材表面上に炭化ケイ素膜を堆積する方法が記載されている。当該方法は、気相のカルボシラン前駆体を使用することを含み、プラズマ原子層堆積プロセスを用いることができる。
【0004】
米国特許出願公開第2013/022496号明細書では、(i)基材の表面上に前駆体を吸着させる工程と、(ii)吸着した前駆体と反応性ガスとを基材上で反応させる工程と、(iii)工程(i)及び(ii)を繰り返して、基材上に少なくともSi-C結合を有する誘電体膜を形成する工程とを含む原子層堆積(ALD)により、半導体基材上にSi-C結合を有する誘電体膜を形成する方法が教示されている。
【0005】
国際公開第14/134476号では、SiCN及びSiOCNを含む膜を堆積する方法が記載されている。幾つかの方法は、基材表面を第1の前駆体及び第2の前駆体にさらすことを含み、第1の前駆体は、式(Xy3-ySi)zCH4-z、(Xy3-ySi)(CH2)(SiXp2-p)(CH2)(SiXy3-y)、又は(Xy3-ySi)(CH2n(SiXy3-y)を有し、式中、Xがハロゲンであり、yが1~3の値であり、zが1~3の値であり、pが0~2の値であり、nが2~5であり、第2の前駆体は還元アミンを含む。幾つかの方法はまた、基材表面を酸素源にさらして炭素ドープ酸化ケイ素を含む膜を提供することを含む。
【0006】
米国特許出願公開第2014/287596号明細書では、ケイ素、炭素及びハロゲン元素を含有し、Si-C結合を有する前駆体ガス及び第1の触媒ガスを基材に供給することと、酸化ガス及び第2の触媒ガスを基材に供給することとを含むサイクルを所定の回数行うことで、基材上に、ケイ素、酸素及び炭素を含有する薄膜を形成する工程を含む半導体装置の製造方法が記載されている。
【0007】
米国特許第9,343,290号明細書では、サイクルを所定の回数行うことで、基材上に酸化物膜を形成する工程を含む半導体装置の製造方法が記載されている。当該サイクルは、基材に前駆体ガスを供給することと、基材にオゾンガスを供給することとを含む。前駆体ガスを供給する動作において、前駆体ガスは、触媒ガスが基材に供給されない状態で基材に供給され、オゾンガスを供給する動作において、オゾンガスは、アミン系触媒ガスが基材に供給される状態で基材に供給される。
【0008】
米国特許第9,349,586号明細書では、望ましい耐エッチング性及び低い誘電率を有する薄膜を開示している。
【0009】
米国特許出願公開第2015/044881号明細書では、高い制御性を持つ高炭素濃度を含有する膜を形成する方法を記載している。半導体装置を製造する方法は、サイクルを所定の回数行うことで、ケイ素、炭素及び所定の元素を含有する膜を基材上に形成することを含む。所定の元素は、窒素及び酸素のうちの1つである。当該サイクルは、1モルあたり少なくとも2つのケイ素原子、炭素及びハロゲン元素を含有する前駆体ガスを供給して、基材上にSi-C結合を付与することと、前記所定の元素を含有する改質ガスを基材に供給することとを含む。
【0010】
米国特許第9,234,276号明細書では、SiC膜を提供するための方法及びシステムを開示している。SiC層は、1以上のSi-H結合及び/又はSi-Si結合を有する1つ又は複数のSi含有前駆体を用いるプロセス条件下で提供することができる。極めて低いエネルギー状態の1つ又は複数のラジカル種はSi含有前駆体と反応して、SiC膜を形成する。1以上のラジカル種は、リモートプラズマ源において形成することができる。
【0011】
国際公開第12/039833号では、基材上に炭化ケイ素を形成する方法を記載している。式Sinabであって、式中n=1~5、a+b=2n+2、a>0、及びX=F、Cl、Br、Iである第1の反応性ガスと、式MR3-bbであって、式中、Rが炭化水素含有置換基、yがハライド、水素化物又は他の配位子であり、b=1~3である第2の反応性ガスとが連続して基材上に堆積され、次いで、プラズマにさらされる、炭化ケイ素を形成する原子層堆積法が記載されている。当該プロセスは複数回繰り返されて、複数の炭化ケイ素層を堆積することができる。
【0012】
米国特許第9,455,138号では、1回以上のプロセスサイクルでプラズマ原子層堆積を行うことで基材上のトレンチにおいて誘電体膜を形成する方法であって、各プロセスサイクルが、(i)ケイ素含有前駆体をパルスで供給することと、(ii)窒素含有ガスの非存在下で水素含有反応性ガスを30~800sccmの流量で供給することと、(iii)反応スペースに希ガスを供給することと、(iv)反応スペースにおいて反応性ガス及び希ガスの存在下、かつ、任意の前駆体の非存在下において、RF電力を適用して、1サイクル当たり1原子層厚未満の成長速度で基材上に誘電体膜を構成する単層を形成することとを含む方法が開示されている。
【0013】
米国特許第8,722,546号では、周期的堆積により半導体基材上にSi-C結合及び/又はSi-N結合を有する誘電体膜を形成する方法であって、(i)Si含有前駆体及び反応性ガスを使用して、半導体基材が設置された反応スペースにおいて1又は複数回サイクルの周期的堆積を行う工程と、(ii)工程(i)の前又は後に、Si含有前駆体を供給することなく希ガス及び処理ガスを供給しつつ、反応スペースにRF電力のパルスを適用する工程とを含み、それにより、Si-C結合及び/又はSi-N結合を有する誘電体膜が半導体基材上に形成される方法が開示されている。
【0014】
Han,Z.らの「Highly Stable Ultrathin Carbosiloxane Films by Molecular Layer Deposition(Journal of Physical Chemistry C,117,19967(2013))」と題した文献では、1,2-ビス[(ジメチルアミノ)ジメチルシリル]エタン及びオゾンを使用してカルボシロキサン膜を成長させることを教示している。熱安定性は、膜が40℃以下で安定であり、60℃で厚さ減少がほとんどないことを示している。
【0015】
Liuらの「Jpn.J.Appl.Phys.,38,3482-3486(1999)」では、スピンオン技術で堆積したポリシルセスキオキサン上でのH2プラズマの使用を教示している。H2プラズマは、安定した誘電率を提供し、膜の熱安定性及びO2アッシング(プラズマ)処理を改善する。
【0016】
Kimらの「Journal of the Korean Physical Society,40,94(2002)」は、PECVD炭素ドープ酸化ケイ素膜上でのH2プラズマ処理により、漏れ電流密度が改善(4~5桁)し、誘電率が2.2から2.5に向上されたことを教示している。H2プラズマ後の炭素ドープ酸化ケイ素膜は、酸素アッシングプロセスの間に低い損傷を与える。
【0017】
Possemeらの「Solid State Phenomena,103-104,337(2005)」では、炭素ドープ酸化ケイ素PECVD膜上でのH2/不活性プラズマ処理について教示している。kは、H2プラズマ処理後に変化せず、これはバルク改質がないことを示している。
【0018】
上述の特許、特許出願及び文献の開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
当技術分野において、電子産業内での幾つかの用途のための高含有量の炭素がドープしたケイ素含有膜を堆積するための組成物及びそれを使用する方法を提供するニーズが存在している。さらに、そのような膜について、X線光電子分光(XPS)で測定した場合に約10原子%以上の炭素含有量を有するニーズが存在している。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記のニーズは、ある点において、プラズマALDプロセスにより炭素ドープ酸化ケイ素膜を形成する方法を提供することで満たされる。当該方法によれば、表面特徴を含む基材が反応器に導入される。反応器は約400℃以下の範囲の1つ又は複数の温度に加熱される。反応器は100torr以下の圧力で維持することができる。1-クロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1-ブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジクロロ-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ブロモ-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,1,3,3,5,5,5-オクタクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,3,3,5,5-ヘキサクロロ-1,5-ジメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5-ヘキサクロロ-3,3-ジメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,3,5,5-ペンタクロロ-1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5-ヘキサクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,5,5-テトラクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1-ジヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジヨード-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1-クロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,5-ジクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ブロモ-1,3,5-トリシラペンタン、1,5-ジブロモ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ヨード-1,3,5-トリシラペンタン、及び1,5-ジヨード-1,3,5-トリシラペンタンからなる群より選択される、2つのSi-C-Si結合を有する少なくとも1つのケイ素前駆体が反応器に導入され、基材上に化学吸着層を形成する。
【0021】
反応器は、適切な不活性ガスを用いて、任意の未消費の前駆体及び/又は反応副産物がパージされる。水素を含むプラズマが反応器に導入され、化学吸着したケイ素、クロロ/ブロモ/ヨード、及び炭素種を有する化学吸着層と反応する。例示のプラズマとしては、限定されないが、水素、水素/アルゴン、水素/ヘリウム、水素/ネオン、又はそれらの組み合わせが挙げられ、それはその場又はリモートのいずれかで生成される。
【0022】
次いで、反応器は、再度、適切な不活性ガスを用いて、任意の反応副産物がパージされる。1つ又は複数の前駆体を導入する工程、任意選択のパージする工程、プラズマを導入する工程、及び任意選択の再パージする工程は必要に応じて繰り返されて、堆積した炭化ケイ素膜を所定の厚さにする。
【0023】
次いで、得られる炭化ケイ素膜は、約周辺温度~1000℃、好ましくは約100~400℃の範囲の1つ又は複数の温度で酸素源にさらされて、膜中に酸素が導入され、炭素ドープ酸化ケイ素膜が得られる。任意選択で、炭素ドープ酸化ケイ素膜は、水素、不活性ガス、及びそれらの組み合わせの混合物からなる群より選択されるプラズマにさらされる。これらの工程で製造された炭素ドープ酸化ケイ素膜は、XPS測定に基づいて約20~約40原子%の範囲の炭素含有量を有し、本発明に係る方法に従って形成される。
【0024】
本発明の更なる態様は、5以下、好ましくは4以下、最も好ましくは3以下の誘電率kと、XPS測定に基づいて約20原子%以上、好ましくは30原子%以上、最も好ましくは35原子%以上の炭素含有量とを有する炭素ドープ酸化ケイ素膜に関し、本発明に係る方法に従って形成される。
【0025】
本発明の別の態様は、9以下、好ましくは8以下、最も好ましくは7以下の誘電率kと、XPS測定に基づいて約20原子%以上、好ましくは30原子%以上、最も好ましくは35原子%以上の炭素含有量とを有する炭化ケイ素膜に関し、本発明に係る方法に従って形成される。
【0026】
上述のニーズ及び他のニーズは、基材の少なくとも表面上に炭化ケイ素膜を堆積する方法によりさらに満たされる。当該方法によれば、基材が反応器に提供され、当該基材は約400~約600℃の範囲の1つ又は複数の温度に加熱される。1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-1,3-ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2-メチル-1,3-ジシラプロパン、1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2,2-ジメチル-1,3-ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2-エチル-1,3-ジシラプロパン、1-クロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1-ブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジクロロ-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ブロモ-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,1,3,3,5,5,5-オクタクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,3,3,5,5-ヘキサクロロ-1,5-ジメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5-ヘキサクロロ-3,3-ジメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,3,5,5-ペンタクロロ-1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5-ヘキサクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,5,5-テトラクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1-ジヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジヨード-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1-クロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,5-ジクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ブロモ-1,3,5-トリシラペンタン、1,5-ジブロモ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ヨード-1,3,5-トリシラペンタン、及び1,5-ジヨード-1,3,5-トリシラペンタンから選択される少なくとも1つの前駆体が反応器に導入される。次いで、水素源を含むプラズマが反応器に導入され、前駆体の少なくとも一部と反応して炭化ケイ素膜が形成される。
【0027】
上述のニーズ及び他のニーズはまた、プラズマALDプロセスにより炭化ケイ素膜又は炭素ドープ酸化ケイ素膜を形成する別の方法により満たすことができる。当該方法によれば、表面特徴を含む基材が反応器に導入される。当該反応器は約600℃以下の範囲の1つ又は複数の温度に加熱される。反応器は100torr以下の圧力で維持することができる。1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-1,3-ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2-メチル-1,3-ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2,2-ジメチル-1,3-ジシラプロパン、及び1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2-エチル-1,3-ジシラプロパンからなる群より選択される1つのSi-C-Si結合を有する少なくとも1つのケイ素前駆体が反応器に導入され、基材上に化学吸着層が形成される。
【0028】
反応器は、適切な不活性ガスを用いて、任意の未消費の前駆体及び/又は反応副産物がパージされる。水素を含むプラズマが反応器に導入され、化学吸着層と反応して、炭化ケイ素膜が形成される。
【0029】
次いで、反応器は、再度、適切な不活性ガスを用いて、任意の反応副産物がパージされる。1つ又は複数の前駆体を導入する工程、任意選択のパージする工程、プラズマを導入する工程、及び任意選択の再パージする工程は必要に応じて繰り返されて、堆積した炭化ケイ素膜を所定の厚さにする。
【0030】
次いで、得られる炭化ケイ素膜は、約周辺温度~1000℃、好ましくは約100~400℃の範囲の1つ又は複数の温度で酸素源にさらされ、炭化ケイ素膜が炭素ドープ酸化ケイ素膜に変換される。次いで、炭素ドープ酸化ケイ素膜は、水素を含むプラズマにさらされる。これらの工程により製造された炭素ドープ酸化ケイ素膜は、約20~約40原子%の範囲の炭素含有量を有する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
説明を通じて、「ALD又はALD型」という用語は、限定されないが、以下のプロセス:a)ケイ素前駆体及び反応性ガスを含む各反応剤を、反応器、例えば、シングルウエハALD反応器、半バッチ式ALD反応器、又はバッチ炉ALD反応器中に連続して導入すること;並びに、b)基材を、各セクションが不活性ガスカーテンより分離されている反応器、すなわち、空間的ALD反応器又はロールツーロールALD反応器の様々なセクションに移動又は回転することで、ケイ素前駆体及び反応性ガスを含む各反応剤を基材にさらすことを含むプロセスを言い表す。
【0032】
説明を通じて、「水素を含むプラズマ」という用語は、プラズマ生成器によりその場又はリモートで生成される反応性ガス又はガス混合物を言い表す。ガス又はガス混合物は、水素、水素とヘリウムの混合物、水素とネオンの混合物、水素とアルゴンの混合物、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0033】
説明を通じて、「不活性ガスプラズマ」という用語は、プラズマ生成器によりその場又はリモートで生成される反応性不活性ガス又は不活性ガス混合物を言い表す。不活性ガス又は不活性ガス混合物は、ヘリウム、ネオン、アルゴン、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0034】
説明を通じて、「アッシング」という用語は、半導体製造プロセスにおいて、酸素源を含むプラズマ、例えば、O2/不活性ガスプラズマ、O2プラズマ、CO2プラズマ、COプラズマ、H2/O2プラズマ、又はそれらの組み合わせを使用して、フォトレジスト又は炭素ハードマスクを除去するプロセスを言い表す。
【0035】
説明を通じて、「耐損傷性」という用語は、酸素アッシングプロセスの後の膜特性を言い表す。良好な又は高い耐損傷性とは、酸素アッシング後の以下の膜特性として定義される:膜誘電率が4.5未満である;バルク内(膜中の50Å超の深さ)の炭素含有量がアッシング前と比較して5原子%以内である;膜の表面近傍(50Å未満の深さ)とバルク(50Å超の深さ)との間の希HF中のエッチ速度の差により観測して、損傷された膜が50Å未満であることと定義される。
【0036】
説明を通じて、「アルキル炭化水素」という用語は、直鎖又は分枝状C1~C20炭化水素、環状C6~C20炭化水素を言い表す。例示の炭化水素としては、限定されないが、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカンが挙げられる。
【0037】
説明を通じて、「芳香族炭化水素」という用語は、C6~C20芳香族炭化水素を言い表す。例示の芳香族炭化水素としては、限定されないが、トルエン、メシチレンが挙げられる。
【0038】
説明を通じて、「触媒」という用語は、熱ALDプロセス中のヒドロキシル基とSi-Cl結合との間の表面反応において触媒として機能することができる気相のルイス塩基を言い表す。例示の触媒としては、限定されないが、環状アミン系ガス、例えば、アミノピリジン、ピコリン、ルチジン、ピペラジン、ピペリジン、ピリジン、又は有機アミン系ガス、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、tert-ブチルアミンの少なくとも1つが挙げられる。
【0039】
説明を通じて、「有機アミン」という用語は、C1~C20炭化水素、環状C6~C20炭化水素を有する環状1級アミン、2級アミン、3級アミンを言い表す。例示の有機アミンとしては、限定されないが、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、tert-ブチルアミンが挙げられる。
【0040】
説明を通じて、「シロキサン」という用語は、少なくとも1つのSi-O-Si結合及びC4~C20炭素原子を有する直鎖、分枝状又は環状の液状化合物を言い表す。例示のシロキサンとしては、限定されないが、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、1,1,1,3,3,5,5,5-オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)が挙げられる。
【0041】
説明を通じて、本明細書で使用される場合、「段差被覆性」という用語は、ビア若しくはトレンチのいずれか又は両方を有する構造化した又は特徴化した基材における、堆積した膜の2つの厚さの割合として規定され、底部段差被覆性は、特徴部の底部の厚さを特徴部の頂部の厚さで割った比(%)であり、中央部段差被覆性は、特徴部の側壁上の厚さを特徴部の頂部の厚さで割った比(%)である。本明細書で説明する方法を使用して堆積した膜は、その膜がコンフォーマルであることを示す約80%以上又は約90%以上の段差被覆性を示す。本明細書で説明されるのは、堆積プロセス、例えば、限定されないが、プラズマ原子層堆積プロセスにより炭素ドープ(例えば、XPSで測定した場合に約20原子%以上の炭素含有量を有する)ケイ素含有膜を堆積するためのケイ素前駆体組成物及びそのような組成物を用いる方法である。本明細書で説明される組成物及び方法を使用して堆積される膜は、極めて低いエッチ速度、例えば、希フッ酸中で測定した場合に、熱酸化ケイ素のエッチ速度の0.5倍以下のエッチ速度(例えば、希HF(0.5wt%)中で約0.20Å/秒以下又は約0.15Å/秒以下)、又は熱酸化ケイ素のエッチ速度の0.1倍以下のエッチ速度、又は熱酸化ケイ素のエッチ速度の0.05倍以下のエッチ速度、又は熱酸化ケイ素のエッチ速度の0.01倍以下のエッチ速度を示し、他の調整可能な特性、例えば、限定されないが、密度、誘電率、反射率及び元素組成における可変性を示す。
【0042】
幾つかの実施形態において、本明細書で説明されるケイ素前駆体及びそれを用いる方法により、以下のように、以下の特徴のうち1つ又は複数が付与される。第1に、堆積した反応性の炭素ドープ窒化ケイ素膜が少なくとも1つのSi-C-Si結合を含むケイ素前駆体及び窒素源を使用して形成される。あらゆる理論又は説明に拘束されることを望むわけではないが、ケイ素前駆体からのSi-C-Si結合は、得られる堆積した膜中に残り、XPSで測定した場合に10原子%以上(例えば、約25~約50原子%、約30~約40原子%、幾つかの場合は約40~約50原子%)の高い炭素含有量を提供すると考えられる。第2に、堆積プロセス中に間欠的に、後堆積処理の間に、又はそれらの組み合わせのいずれかに、堆積した膜を水のような酸素源にさらした場合、膜中の窒素含有量の少なくとも一部又は全てが酸素に変換され、炭素ドープ酸化ケイ素膜又は炭素ドープ酸窒化ケイ素膜から選択される膜が提供される。堆積した膜中の窒素は、1つ又は複数の窒素含有副産物、例えば、アンモニア又はアミン基として放出される。
【0043】
この又は他の実施形態において、最終的な膜は、おそらく低密度に主に起因して多孔質であり、約1.7グラム/立方センチメートル(g/cc)以下の密度を有し、0.5wt%の希フッ酸中で0.20Å/秒以下のエッチ速度、0.5wt%の希フッ酸中で0.10Å/秒以下のエッチ速度、0.5wt%の希フッ酸中で0.05Å/秒以下のエッチ速度、0.5wt%の希フッ酸中で0.01Å/秒以下のエッチ速度を有する。
【0044】
1つの態様において、ケイ素含有膜を堆積するための組成物は、(a)1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-1,3-ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2-メチル-1,3-ジシラプロパン、1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2,2-ジメチル-1,3-ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2-エチル-1,3-ジシラプロパン、1-クロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1-ブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジクロロ-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ブロモ-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,1,3,3,5,5,5-オクタクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,3,3,5,5-ヘキサクロロ-1,5-ジメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5-ヘキサクロロ-3,3-ジメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,3,5,5-ペンタクロロ-1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5-ヘキサクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,5,5-テトラクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1-ジヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラヨード-1,3-ジシラシクロブタン、及び1,3-ジヨード-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタンからなる群より選択される、1つのSi-C-Si又は2つのSi-C-Si結合を有する少なくとも1つのケイ素前駆体化合物と、(b)少なくとも1つの溶媒とを含む。
【表1】
【表2-1】
【表2-2】
本明細書で説明される組成物の幾つかの実施形態において、例示の溶媒としては、限定されないが、エーテル、3級アミン、アルキル炭化水素、芳香族炭化水素、3級アミノエーテル、シロキサン、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。幾つかの実施形態において、1つのSi-C-Si結合又は2つのSi-C-Si結合を有する化合物の沸点と溶媒の沸点との差は40℃以下である。溶媒中のケイ素前駆体化合物の重量パーセント(wt%)は、1~99wt%、又は10~90wt%、又は20~80wt%、又は30~70wt%、又は40~60wt%、又は50~50wt%で変えることができる。幾つかの実施形態において、組成物は、従来の直接液体注入設備及び方法を使用して、ケイ素含有膜のための反応チャンバーに直接液体注入により輸送することができる。
【0045】
本明細書で説明される方法の1つの実施形態において、20~40原子%の炭素含有量を有する炭化ケイ素膜又は炭素ドープ酸化ケイ素膜は、プラズマALDプロセスを使用して堆積される。この実施形態において、方法は、
a.表面特徴を含む1つ又は複数の基材を反応器に設置する工程と、
b.周辺温度~約600℃の範囲の1つ又は複数の温度に反応器を加熱して、任意選択で、反応器を100torr以下の圧力で維持する工程と、
c.1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-1,3-ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2-メチル-1,3-ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2,2-ジメチル-1,3-ジシラプロパン、及び1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2-エチル-1,3-ジシラプロパンからなる群より選択される1つのSi-C-Si結合を有する少なくとも1つのケイ素前駆体を反応器に導入する工程と、
d.不活性ガスを用いてパージして、それにより、未反応のケイ素前駆体を除去して、パージガス及びケイ素前駆体を含む組成物を形成する工程と、
e.水素源を含むプラズマを反応器に提供して、表面と反応させて炭化ケイ素膜を形成する工程と、
f.不活性ガスを用いてパージして反応副産物を除去する工程と、
g.工程c~fを繰り返して、所望の厚さの炭化ケイ素膜を提供する工程と、
h.任意選択で、約周辺温度~1000℃又は約100~400℃の範囲の1つ又は複数の温度で、炭化ケイ素膜を酸素源で後堆積処理して、その場で又は別のチャンバーで炭化ケイ素膜を炭素ドープ酸化ケイ素膜に変換する工程と、
i.任意選択で、炭素ドープ酸化ケイ素膜を、水素を含むプラズマにさらす後堆積処理を行い、膜特性を向上させて、膜特性の少なくとも1つを改善する工程と、
j.任意選択で、400~1000℃の温度での熱アニール若しくはスパイクアニール、又はUV光源で炭素ドープ酸化ケイ素膜を後堆積処理する工程とを含む。この又は他の実施形態において、UV露光工程は、膜堆積中に、又は堆積が完了した後に行うことができる。
【0046】
1つの実施形態において、基材は少なくとも1つの特徴を含み、当該特徴は、1:9以上のアスペクト比、180nm以下の開口を持つパターントレンチを含む。
【0047】
本明細書で説明される方法の1つの実施形態において、20~40原子%の範囲の炭素含有量を有する炭化ケイ素膜又は炭素ドープ酸化ケイ素膜は、プラズマALDプロセスを使用して堆積される。この実施形態において、方法は、
a.表面特徴を含む1つ又は複数の基材を反応器に(例えば、従来のALD反応器に)設置する工程と、
b.周辺温度~約400℃の範囲の1つ又は複数の温度に反応器を加熱して、任意選択で、反応器を100torr以下の圧力で維持する工程と、
c.1-クロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1-ブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジクロロ-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ブロモ-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,1,3,3,5,5,5-オクタクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,3,3,5,5-ヘキサクロロ-1,5-ジメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5-ヘキサクロロ-3,3-ジメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,3,5,5-ペンタクロロ-1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5-ヘキサクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,5,5-テトラクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1-ジヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジヨード-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1-クロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,5-ジクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ブロモ-1,3,5-トリシラペンタン、1,5-ジブロモ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ヨード-1,3,5-トリシラペンタン、及び1,5-ジヨード-1,3,5-トリシラペンタンからなる群より選択される、2つのSi-C-Si結合を有する少なくとも1つのケイ素前駆体を反応器に導入する工程と、
d.不活性ガスを用いてパージする工程と、
e.水素源を含むプラズマを反応器に提供して、表面と反応させて、炭化ケイ素膜を形成する工程と、
f.不活性ガスを用いてパージして反応副産物を除去する工程と、
g.工程c~fを繰り返して、所望の厚さの炭化ケイ素膜を提供する工程と、
h.任意選択で、約周辺温度~1000℃又は約100~400℃の範囲の1つ又は複数の温度で、炭化ケイ素膜を酸素源で後堆積処理して、その場で又は別のチャンバーで炭化ケイ素膜を炭素ドープ酸化ケイ素膜に変換する工程と、
i.任意選択で、炭素ドープ酸化ケイ素膜を、水素を含むプラズマにさらす後堆積処理を行い、膜の物理特性の少なくとも1つを改善する工程と、
j.任意選択で、400~1000℃の温度での熱アニール又はUV光源で炭素ドープ酸化ケイ素膜を後堆積処理する工程とを含む。この又は他の実施形態において、UV露光工程は、膜堆積中に、又は堆積が完了した後に行うことができる。
【0048】
幾つかの実施形態において、炭化ケイ素のPEALDのために1:1比のケイ素:炭素を有するケイ素前駆体が好ましい。適切なケイ素前駆体としては、限定されないが、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2-メチル-1,3-ジシラプロパン、1-クロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1-ブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1-ヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1-ジヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリヨード-1,3-ジシラシクロブタン、及び1,1,3,3-テトラヨード-1,3-ジシラシクロブタンが挙げられる。理論により拘束はされないが、このような前駆体は、化学量論的な炭化ケイ素を提供する可能性が高いと考えられる。
【0049】
幾つかの実施形態において、得られる炭素ドープ酸化ケイ素膜は、Si-Me若しくはSi-H又は両方を有する有機アミノシラン又はクロロシランにさらされて、水素プラズマ処理にさらされる前に疎水性薄層を形成する。適切な有機アミノシランとしては、限定されないが、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、エチルメチルアミノトリメチルシラン、t-ブチルアミノトリメチルシラン、イソ-プロピルアミノトリメチルシラン、ジ-イソプロピルアミノトリメチルシラン、ピロリジノトリメチルシラン、ジエチルアミノジメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、エチルメチルアミノジメチルシラン、t-ブチルアミノジメチルシラン、イソ-プロピルアミノジメチルシラン、ジ-イソプロピルアミノジメチルシラン、ピロリジノジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(エチルメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジ-イソプロピルアミノ)ジメチルシラン、ビス(イソ-プロピルアミノ)ジメチルシラン、ビス(tert-ブチルアミノ)ジメチルシラン、ジピロリジノジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジエチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ-イソプロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(イソ-プロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(tert-ブチルアミノ)メチルビニルシラン、ジピロリジノメチルビニルシラン、2,6-ジメチルピペリジノメチルシラン、2,6-ジメチルピペリジノジメチルシラン、2,6-ジメチルピペリジノトリメチルシラン、トリス(ジメチルアミノ)フェニルシラン、トリス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ジイソプロピルアミノシラン、ジ-sec-ブチルアミノシラン、クロロジメチルシラン、クロロトリメチルシラン、ジクロロメチルシラン、及びジクロロジメチルシランが挙げられる。
【0050】
別の実施形態において、得られる炭素ドープ酸化ケイ素膜は、Si-Me若しくはSi-H又は両方を有するアルコキシシラン又は環状アルコキシシランにさらされて、水素プラズマ処理にさらされる前に疎水性薄層を形成する。適切なアルコキシシラン又は環状アルコキシシランとしては、限定されないが、ジエトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、又はオクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。あらゆる理論又は説明により拘束されることを望むわけではないが、有機アミノシラン又はアルコキシシラン又は環状アルコキシシランにより形成される薄層は、プラズマアッシングプロセス中に高密度の炭素ドープ酸化ケイ素に変換され、耐アッシング性をさらに向上させると考えられる。
【0051】
本明細書で説明される方法の別の実施形態において、30~50原子%の範囲の炭素含有量を有する炭化ケイ素膜は、プラズマALDプロセスを使用して堆積される。この実施形態において、方法は、
a.表面特徴を含む1つ又は複数の基材を反応器に(例えば、従来のALD反応器に)設置する工程と、
b.約400~約600℃の範囲の1つ又は複数の温度に反応器を加熱して、任意選択で、反応器を100torr以下の圧力で維持する工程と、
c.1-クロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1-ブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジクロロ-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ブロモ-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,1,3,3,5,5,5-オクタクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,3,3,5,5-ヘキサクロロ-1,5-ジメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5-ヘキサクロロ-3,3-ジメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,3,5,5-ペンタクロロ-1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5-ヘキサクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,5,5-テトラクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1-ジヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジヨード-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1-クロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,5-ジクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ブロモ-1,3,5-トリシラペンタン、1,5-ジブロモ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ヨード-1,3,5-トリシラペンタン、1,5-ジヨード-1,3,5-トリシラペンタン、1-クロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,5-ジクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ブロモ-1,3,5-トリシラペンタン、1,5-ジブロモ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ヨード-1,3,5-トリシラペンタン、及び1,5-ジヨード-1,3,5-トリシラペンタンからなる群より選択される、2つのSi-C-Si結合を有する少なくとも1つのケイ素前駆体を反応器に導入する工程と、
d.不活性ガスを用いてパージする工程と、
e.水素を含むプラズマを反応器に提供して、表面と反応させて、炭化ケイ素膜を形成する工程と、
f.不活性ガスを用いてパージして反応副産物を除去する工程と、
g.工程c~fを繰り返して、所望の厚さの炭化ケイ素膜を提供する工程と、
h.任意選択で、400~1000℃の温度での熱アニール又はUV光源又はプラズマで炭化ケイ素膜を後堆積処理して、堆積した炭化ケイ素膜をさらに高密度化する工程とを含む。この又は他の実施形態において、UV露光工程は、膜堆積中、又は堆積が完了した後に行うことができる。
【0052】
幾つかの実施形態において、導入工程での反応器の温度は、約室温(例えば20℃)~約600℃の範囲の1つ又は複数の温度である。基材温度についての代替的な範囲は、以下の端点:20、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、及び500℃のうち1つ又は複数を有する。例示の温度範囲としては、以下:20~300℃、100~300℃、又は100~350℃が挙げられる。
【0053】
別の実施形態において、ケイ素含有膜を堆積するためのベッセルは、本明細書で説明される1つ又は複数のケイ素前駆体化合物を含む。1つの特定の実施形態において、当該ベッセルは、少なくとも1つの加圧可能なベッセル(好ましくは、米国特許第7334595号、同第6077356号、同第5069244号、及び同第5465766号に開示されるような設計を有するステンレス鋼のもの;これらの開示は参照することにより本明細書に組み込まれる)である。容器は、ガラス(ホウケイ酸ガラス又はクオーツガラス)又は316、316L、304若しくは304Lのステンレス鋼合金(UNS表示S31600、S31603、S30400、S30403)のいずれかを含むことができ、CVD又はALDプロセスのための反応器に1つ又は複数の前駆体の輸送を可能とする適切なバルブ及び継手を備える。この又は他の実施形態において、ケイ素前駆体は、ステンレス鋼で構成される加圧可能なベッセルに提供され、前駆体の純度は、98wt%以上又は99.5wt%以上であり、これらは半導体用途に適切である。ケイ素前駆体化合物は、好ましくは、金属イオン、例えば、Al3+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+イオンを実質的に含まない。本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」という用語は、それがAl3+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+に関する場合は、XPSで測定した場合に約5ppm(重量)未満、好ましくは約3ppm未満、より好ましくは約1ppm未満、最も好ましくは約0.1ppm未満であることを意味する。幾つかの実施形態において、そのようなベッセルはまた、望まれる場合は、当該前駆体を1つ又は複数の追加の前駆体と混合するための手段を有することができる。これら又は他の実施形態において、1つ又は複数のベッセルの内容物を追加の前駆体と事前混合することができる。代替的に、ケイ素前駆体及び/又は他の前駆体は、別々のベッセルにおいて、又は、保管中にケイ素前駆体及び他の前駆体を別々に維持するための分離手段を有する単一のベッセルにおいて維持することができる。
【0054】
ケイ素含有膜は、半導体基材のような基材の少なくとも表面上に堆積される。本明細書で説明される方法では、基材は、当技術分野で周知の様々な材料で構成されることができ、及び/又は当該材料でコーティングされることができ、当該材料としては、ケイ素の膜、例えば、結晶性ケイ素又は非晶性ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、非晶性炭素、酸炭化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、ゲルマニウムドープケイ素、ホウ素ドープケイ素、金属(例えば、銅、タングステン、アルミニウム、コバルト、ニッケル、タンタル)、金属窒化物、例えば、窒化チタン、窒化タンタル、金属酸化物、III/V族金属又はメタロイド、例えば、GaAs、InP、GaP及びGaN、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。これらのコーティングは、半導体基材を完全にコーティングしていてもよく、多層の様々な材料中に存在してもよく、材料の下地層を露出するために部分的にエッチングされていてもよい。表面はまた、当該表面上に、基材を部分的にコーティングするために現像され、パターンを含んで露出されたフォトレジスト材料を有することができる。幾つかの実施形態において、半導体基材は、ポア、ビア、トレンチ及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの表面特徴を含む。ケイ素含有膜の適用可能性としては、限定されないが、FinFET又はナノシートのための低kスペーサ、自己整合パターニングプロセス(例えば、SADP、SAQP、又はSAOP)のための犠牲ハードマスクが挙げられる。
【0055】
ケイ素含有膜又はコーティングを形成するために使用される堆積方法は堆積プロセスである。本明細書で説明される方法に適切な堆積プロセスの例としては、限定されないが、化学気相堆積プロセス又は原子層堆積プロセスが挙げられる。本明細書で使用される場合、「化学気相堆積プロセス」という用語は、基材を、基材表面上で反応及び/又は分解する1つ又は複数の揮発性前駆体にさらして、所望の堆積物を製造する任意のプロセスを言い表す。本明細書で使用される場合、「原子層堆積プロセス」という用語は、様々な組成の基材上に材料の膜を堆積する自己限定的な(例えば、各反応サイクルで堆積される膜材料の量が一定な)連続表面化学を言い表す。本明細書で使用される前駆体、反応剤及び源は「ガス状」として説明されることがあるが、前駆体が、不活性ガスを含むか又は含まずに、直接気化、バブリング又は昇華により反応器に輸送される液体又は固体のいずれかであることができることが理解される。ある場合において、気化した前駆体はプラズマ生成器を通過することができる。
【0056】
1つの実施形態において、ケイ素含有膜は、ALDプロセスを使用して堆積される。別の実施形態において、ケイ素含有膜はCCVDプロセスを使用して堆積される。更なる実施形態において、ケイ素含有膜は熱ALDプロセスを使用して堆積される。本明細書で使用される場合、「反応器」という用語は、限定されないが、反応チャンバー又は堆積チャンバーを含む。
【0057】
幾つかの実施形態において、本明細書で説明される方法は、反応器に導入する前に又は導入中に1つ又は複数の前駆体を分離する周期的CVD法又はALD法を使用することで、1つ又は複数の前駆体の事前反応を防止する。これに関連して、ALDプロセス又はCCVDプロセスのような堆積技術は、ケイ素含有膜を堆積するために使用される。1つの実施形態において、1つ又は複数のケイ素含有前駆体、酸素源、窒素含有源、又は他の前駆体若しくは反応剤に交互に基材表面をさらすことで、典型的なシングルウエハALD反応器、半バッチ式ALD反応器、又はバッチ炉ALD反応器において、ALDプロセスにより膜が堆積される。膜成長は、堆積温度、各前駆体又は反応剤のパルス長、及び表面反応の自己限定的な制御により進行する。しかしながら、基材の表面が飽和した後、膜成長が停止する。別の実施形態において、ケイ素前駆体及び反応性ガスを含む各反応剤は、各セクションが不活性ガスカーテンより分離されている反応器、すなわち、空間的ALD反応器又はロールツーロールALD反応器の様々なセクションに移動又は回転することで、基材にさらされる。
【0058】
堆積方法に応じて、幾つかの実施形態において、本明細書で説明されるケイ素前駆体及び任意選択の他のケイ素含有前駆体は、所定のモル容量、又は約0.1~約1000マイクロモルで反応器に導入することができる。この又は他の実施形態において、前駆体は所定の時間で反応器に導入することができる。幾つかの実施形態において、時間は、約0.001~約500秒間の範囲である。
【0059】
酸素源は少なくとも1つの酸素源の形態で反応器に導入されることがあり、及び/又は、堆積プロセスで使用される他の前駆体中に偶然に存在することがある。適切な酸素源ガスとしては、例えば、空気、水(H2O)(例えば、脱イオン水、精製水、蒸留水、水蒸気、水蒸気プラズマ、含酸素水、空気、水と他の有機液体を含む組成物)、酸素(O2)、酸素プラズマ、オゾン(O3)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、亜酸化窒素(N2O)、一酸化炭素(CO)、過酸化水素(H22)、水を含むプラズマ、水及びアルゴンを含むプラズマ、過酸化水素、水素を含む組成物、水素及び酸素を含む組成物、二酸化炭素(CO2)、空気、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。幾つかの実施形態において、酸素源は、約1~約10000標準立法センチメートル(sccm)又は約1~約1000sccmの範囲の流量で反応器に導入される酸素源ガスを含む。酸素源は、約0.1~約100秒間の範囲の時間で導入することができる。
【0060】
ALDプロセス又は周期的CVDプロセスにより膜が堆積される実施形態において、前駆体パルスは、0.01秒間超のパルス幅を有することができ、酸素源は0.01秒間未満のパルス幅を有することができ、水パルス幅は0.01秒間未満のパルス幅を有することができる。
【0061】
幾つかの実施形態において、酸素源は反応器に連続的に流れ、前駆体パルス及びプラズマが順番に導入される。前駆体パルスは、0.01秒間超のパルス幅を有することができ、パルス幅は0.01~100秒間の範囲であることができる。
【0062】
本明細書で説明される堆積方法は、パージガスを使用して反応器から不要又は未反応の材料をパージする1つ又は複数の工程を含む。未消費の反応剤及び/又は反応副産物をパージするのに使用されるパージガスは、前駆体と反応しない不活性ガスである。例示のパージガスとしては、限定されないが、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、水素(H2)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。幾つかの実施形態において、Arのようなパージガスは、約0.1~約1000秒間で約10~約10000sccmの範囲の流量で反応器に供給され、それにより、反応器に残ることがある未反応材料及び任意の副産物をパージする。
【0063】
前駆体、水素含有源、及び/又は他の前駆体、源ガス、及び/又は反応剤を供給する各々の工程は、得られる膜の化学量論的な組成を変えるためにそれらを供給するための時間を変えることで行うことができる。
【0064】
前駆体、水素プラズマのような還元剤、他の前駆体又はそれらの組み合わせの少なくとも1つにエネルギーを適用する。そのようなエネルギーは、限定されないが、熱、プラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、X線、電子ビーム、光子、リモートプラズマ法、及びそれらの組み合わせにより供給することができる。
【0065】
幾つかの実施形態において、二次RF周波数源は、基材表面でのプラズマ特性を改質するために使用することができる。堆積にプラズマを用いる実施形態において、プラズマ生成プロセスは、プラズマが反応器内で直接生成される直接プラズマ生成プロセス、又は代替的に、プラズマが反応器の外部で生成され反応器に供給されるリモートプラズマ生成プロセスを含むことができる。
【0066】
ケイ素前駆体及び/又は他のケイ素含有前駆体は、様々な方法で、CVD反応器又はALD反応器のような反応チャンバーに輸送することができる。1つの実施形態において、液体輸送システムを利用することができる。代替的な実施形態において、複合液体輸送及びフラッシュ気化プロセスユニット、例えば、Shoreview,MNのMSP Corporation製のターボ気化装置を用いることができ、低揮発性材料を容量輸送することが可能となり、それにより、前駆体の熱分解なく再現可能な輸送及び堆積がもたらされる。液体輸送配合物中において、本明細書で説明される前駆体は原液形態で輸送することができるか、又は代替的に、溶媒の配合物又はそれを含む組成物の中で用いることができる。したがって、幾つかの実施形態において、基材上に膜を形成するための所望の最終使用用途において望ましくかつ有利であることができるように、前駆体配合物は、適切な性質の1つ又は複数の溶媒成分を含むことができる。
【0067】
この又は他の実施形態において、本明細書で説明される方法の工程は、様々な順序で行うことができ、連続して又は同時に(例えば、別の工程の少なくとも一部の間に)行うことができ、それらの組み合わせであることができる。前駆体及び窒素含有源ガスを供給する各々の工程は、得られるケイ素含有膜の化学量論的組成を変えるためにそれらを供給するための時間を変えることで行うことができる。
【0068】
本明細書で説明される方法のまた更なる実施形態において、膜又は堆積した膜は処理工程を受ける。処理工程は、堆積工程の少なくとも一部の間に、堆積工程の後に、又はそれらの組み合わせに行うことができる。例示の処理工程としては、限定されないが、膜の1つ又は複数の特性に影響を及ぼすための高温熱アニールを通じた処理、プラズマ処理、紫外(UV)光処理、レーザー、電子ビーム処理及びそれらの組み合わせが挙げられる。本明細書で説明される1つ又は2つのSi-C-Si結合を有するケイ素前駆体を用いて堆積される膜は、同一の条件下で既に開示されたケイ素前駆体を用いて堆積した膜と比べた場合に、改善した特性、例えば、限定されないが、処理工程の前の膜のウェットエッチ速度より低いウェットエッチ速度、又は処理工程の前の密度より高い密度を有する。1つの特定の実施形態において、堆積プロセス中に、堆積した膜は間欠的に処理される。これらの間欠的又は堆積中処理は、各ALDサイクルの後、複数回のALDの後、例えば、限定されないが、1回(1)のALDサイクルごと、2回(2)のALDサイクルごと、5回(5)ALDサイクルごと、又は10回(10)以上のALDサイクルごとに行うことができる。
【0069】
高温アニール工程で膜が処理される実施形態において、アニール温度は、100℃以上又は堆積温度より高い。この又は他の実施形態において、アニール温度は、約400~約1000℃の範囲である。この又は他の実施形態において、真空(<760torr)、不活性環境、又は酸素含有環境(例えばH2O、N2O、NO2又はO2)でアニール処理を行うことができる。
【0070】
膜がUV処理で処理される実施形態において、膜は、広帯域UV、又は代替的に、約150ナノメートル(nm)~約400nmの範囲の波長を有するUV源にさらされる。1つの特定の実施形態において、堆積される膜は、所望の膜厚に達した後、堆積チャンバーとは異なるチャンバーでUVにさらされる。
【0071】
膜がプラズマで処理される実施形態において、炭素ドープ酸化ケイ素のような不働態層は、次のプラズマ処理において塩素及び窒素不純物が膜に侵入するのを防ぐために堆積される。不働態層は、原子層堆積又は周期的化学気相堆積を使用して堆積することができる。
【0072】
膜がプラズマで処理される実施形態において、プラズマ源は、水素プラズマ、水素及びヘリウムを含むプラズマ、水素及びアルゴンを含むプラズマからなる群より選択される。水素プラズマは膜誘電率を低減し、後のプラズマアッシングプロセスに対する耐損傷性を向上させ、バルク中の炭素含有量をほぼ不変に維持する。
【0073】
以下の例は、本発明の幾つかの態様を例示しており、添付の特許請求の範囲に記載の範囲に限定されない。
【実施例
【0074】
以下の例において、別段の記載がない限り、基材として5~20Ω・cmの抵抗率を持つシリコンウエハ上に堆積したサンプル膜から特性を得た。全ての膜の堆積は、13.56MHzの直接プラズマを持つシャワーヘッド設計を有するCN-1反応器を使用して行った。
【0075】
典型的なプロセス条件において、別段の記載がない限り、チャンバー圧力を約1~約5torrの範囲の圧力で固定した。追加の不活性ガスを使用してチャンバー圧力を維持した。
【0076】
膜の堆積は、表2のプラズマALDで挙げた工程を含んでいた。表2の工程a~dは1つのALD又はPEALDサイクルを構成し、別段の特定がない限り、所望の膜厚を得るために合計で100又は200又は300又は500回の工程a~dを繰り返した。
【表3】
【0077】
堆積した膜についての反射率(RI)及び厚さをエリプソメーターを使用して測定した。膜の不均一性を標準的な式:%不均一性=((最大厚さ-最小厚さ)/(2×平均(avg)厚さ))を使用して計算した。膜の構造及び組成をフーリエ変換赤外(FTIR)分光及びX線光電子分光(XPS)を使用して分析した。膜の密度をX線反射系(XRR)を使用して測定した。ウェットエッチ速度を脱イオン水中の約5wt%のフッ酸(HF)を使用して測定した。各バッチについての参照として熱酸化物ウエハを使用して溶液濃度を確認した。脱イオン水中の0.5%HFについての典型的な熱酸化物ウエハのウェットエッチ速度は0.5Å/秒であった。
【0078】
例1:1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタン及び水素プラズマを使用したPEALD炭化ケイ素
シリコンウエハを、13.56MHzの直接プラズマを持つシャワーヘッド設計を備えたCN-1反応器に設置し、2torrのチャンバー圧力で500℃に加熱した。バブリング又はベーパードローを使用して1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタンを蒸気として反応器に輸送した。
【0079】
ALDサイクルは表2に示されるプロセス工程で構成されており、以下のプロセスパラメータを使用した。
a.1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタンの蒸気を反応器に導入する
アルゴン流:前駆体容器を通る100sccm
パルス:2秒間
水素流:500sccm
b.パージする
水素流:500sccm
パージ時間:5秒間
c.水素プラズマを導入する
水素流:500sccm
パルス:5秒間
プラズマ電力:100W
d.パージする
水素流:500sccm
パージ時間:5秒間
工程a~dを500サイクル繰り返して、32.2原子%の炭素、62.7原子%のケイ素及び3.8原子%の酸素の組成を持つ所望の厚さの炭化ケイ素を得た。反射率(RI)は約1.90であった。5原子%未満の酸素を有したことは、膜が空気のような酸素源に対して安定であったことを示している。したがって、高品質な炭化ケイ素を得ることができた。
【0080】
例2:1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタン及び水素/アルゴンプラズマを使用したPEALD炭化ケイ素
シリコンウエハを、13.56MHzの直接プラズマを持つシャワーヘッド設計を備えたCN-1反応器に設置し、2torrのチャンバー圧力で500℃に加熱した。バブリング又はベーパードローを使用して1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタンを蒸気として反応器に輸送した。
【0081】
ALDサイクルは表2に示されるプロセス工程で構成されており、以下のプロセスパラメータを使用した。
a.1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタンの蒸気を反応器に導入する
アルゴン流:前駆体容器を通る100sccm
パルス:2秒間
アルゴン流:100sccm
水素流:500sccm
b.パージする
アルゴン流:100sccm
水素流:500sccm
パージ時間:5秒間
c.水素プラズマを導入する
アルゴン流:100sccm
水素流:500sccm
パルス:5秒間
プラズマ電力:100W
d.パージする
アルゴン流:100sccm
水素流:500sccm
パージ時間:5秒間
工程a~dを500サイクル繰り返して、37.9原子%の炭素、52.4原子%のケイ素及び7.7原子%の酸素の組成を持つ所望の厚さの炭化ケイ素を得た。反射率(RI)は約1.90であった。この実験により示されたのは、より高い堆積温度において、安定な炭化ケイ素を得ることができ、堆積した膜は空気のような酸素源に対して反応性が低く、したがって、空気にさらされた後に低い酸素含有量を提供することである。
【0082】
例3:1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタン及び水素/ヘリウムプラズマを使用したPEALD炭素ドープ酸化ケイ素
シリコンウエハを、13.56MHzの直接プラズマを持つシャワーヘッド設計を備えたCN-1反応器に設置し、2torrのチャンバー圧力で300℃に加熱した。バブリング又はベーパードローを使用して1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタンを蒸気として反応器に輸送した。
【0083】
ALDサイクルは表2に示されるプロセス工程で構成されており、以下のプロセスパラメータを使用した。
a.1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタンの蒸気を反応器に導入する
アルゴン流:100sccm
水素流:250sccm
ヘリウム流:250sccm
パルス:3秒間
b.パージする
水素流:250sccm
ヘリウム流:250sccm
パージ時間:5秒間
c.水素プラズマを導入する
水素流:250sccm
ヘリウム流:250sccm
パルス:5秒間
プラズマ電力:300W
d.パージする
水素流:250sccm
ヘリウム流:250sccm
パージ時間:5秒間
【0084】
工程a~dを300サイクル繰り返して、所望の厚さの炭化ケイ素を得た。得られた膜を空気にさらし、XPS測定により36.2原子%の炭素、36.3原子%のケイ素及び20.3原子%の酸素を得た。反射率(RI)は約1.90であった。これらの例により示されたのは、堆積した炭化ケイ素は、低温(300℃)での堆積時に不安定であり、空気のような酸素源に反応性を示し、30原子%より高い炭素含有量を持つ炭素ドープ酸化ケイ素が予期せず形成されたことである。
【0085】
上記において幾つかの具体的な実施形態及び実施例を参照して本発明が例示及び説明されたが、それでもなお、本発明が、示された細部に限定されることは意図されない。むしろ、本発明の趣旨から逸脱することなく、特許請求の範囲の同等物の領域及び範囲内で細部に様々な変更を行うことができる。例えば、本明細書で広く規定した全ての範囲は、その広い範囲内にある全てのより狭い範囲内にある範囲を包含することが明示的に意図される。
本発明の実施形態としては、以下の実施形態を挙げることができる。
(付記1)
プラズマALDプロセスにより炭素ドープ酸化ケイ素膜を形成するための方法であって、
a)表面特徴を含む基材を反応器に提供する工程と、
b)約20~約400℃の範囲の1つ又は複数の温度に前記反応器を加熱し、任意選択で、前記反応器を100torr以下の圧力で維持する工程と、
c)1-クロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1-ブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジクロロ-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ブロモ-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,1,3,3,5,5,5-オクタクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,3,3,5,5-ヘキサクロロ-1,5-ジメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5-ヘキサクロロ-3,3-ジメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,3,5,5-ペンタクロロ-1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5-ヘキサクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,5,5-テトラクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1-ジヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジヨード-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1-クロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,5-ジクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ブロモ-1,3,5-トリシラペンタン、1,5-ジブロモ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ヨード-1,3,5-トリシラペンタン、及び1,5-ジヨード-1,3,5-トリシラペンタンからなる群より選択される、2つのSi-C-Si結合を有する少なくとも1つのケイ素前駆体を前記反応器に導入して、前記基材に化学吸着層を固定する工程と、
d)工程cからの未消費の前駆体及び/又は反応副産物を前記反応器から不活性ガスを用いてパージする工程と、
e)水素、不活性ガス、及びそれらの混合物からなる群より選択されるプラズマを前記反応器に提供して、前記化学吸着層と反応させて、炭化ケイ素膜を形成する工程と、
f)工程eからの反応副産物を前記反応器から不活性ガスを用いてパージする工程と、
g)必要に応じて工程c~fを繰り返して、前記炭化ケイ素膜を所定の厚さにする工程と、
h)得られた前記炭化ケイ素膜を、約周辺温度~1000℃の範囲の1つ又は複数の温度で酸素源にさらして、前記炭化ケイ素膜を炭素ドープ酸化ケイ素膜に変換する工程とを含み、
前記炭素ドープ酸化ケイ素膜が、約20~約40原子%の範囲の炭素含有量を有する、方法。
(付記2)
4以下のk、及び約30原子%以上の炭素含有量を有する、付記1に記載の方法で形成された膜。
(付記3)
脱イオン水中の約0.5wt%のフッ酸において測定した場合、熱酸化ケイ素のエッチ速度の約0.5倍以下のエッチ速度を有する、付記1に記載の方法で形成された膜。
(付記4)
脱イオン水中の約0.5wt%のフッ酸において測定した場合、熱酸化ケイ素のエッチ速度の約0.1倍以下のエッチ速度を有する、付記1に記載の方法で形成された膜。
(付記5)
脱イオン水中の約0.5wt%のフッ酸において測定した場合、熱酸化ケイ素のエッチ速度の約0.05倍以下のエッチ速度を有する、付記1に記載の方法で形成された膜。
(付記6)
脱イオン水中の約0.5wt%のフッ酸において測定した場合、熱酸化ケイ素のエッチ速度の約0.01倍以下のエッチ速度を有する、付記1に記載の方法で形成された膜。
(付記7)
酸素アッシングプロセス後に前記炭素ドープ酸化ケイ素膜の50Å以下の深さが損傷されることを特徴とする、付記1に記載の方法で形成された膜。
(付記8)
酸素アッシングプロセス後に20Å以下の深さが損傷される、付記7に記載の方法で形成された膜。
(付記9)
酸素アッシングプロセス後に10Å以下の深さが損傷される、付記8に記載の方法で形成された膜。
(付記10)
酸素アッシングプロセス後に5Å以下の深さが損傷される、付記9に記載の方法で形成された膜。
(付記11)
300~1000℃の温度で、前記炭素ドープ酸化ケイ素膜に熱アニールを行う工程をさらに含む、付記1に記載の方法。
(付記12)
25~600℃の温度で、不活性ガスプラズマ又は水素/不活性ガスプラズマを用いて、前記炭素ドープ酸化ケイ素膜にプラズマ処理を行う工程をさらに含む、付記1に記載の方法。
(付記13)
基材の少なくとも表面上に炭化ケイ素膜を堆積するための方法であって、
前記基材を反応器に提供する工程と、
前記反応器を約400~約600℃の範囲の1つ又は複数の温度に加熱する工程と、
1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-1,3-ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2-メチル-1,3-ジシラプロパン、1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2,2-ジメチル-1,3-ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2-エチル-1,3-ジシラプロパン、1-クロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1-ブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラブロモ-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジクロロ-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ブロモ-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,1,3,3,5,5,5-オクタクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,3,3,5,5-ヘキサクロロ-1,5-ジメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5-ヘキサクロロ-3,3-ジメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,3,5,5-ペンタクロロ-1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,1,5,5,5-ヘキサクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,1,5,5-テトラクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1-ジヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3-トリヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,1,3,3-テトラヨード-1,3-ジシラシクロブタン、1,3-ジヨード-1,3-ジメチル-1,3-ジシラシクロブタン、1-クロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1,5-ジクロロ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ブロモ-1,3,5-トリシラペンタン、1,5-ジブロモ-1,3,5-トリシラペンタン、1-ヨード-1,3,5-トリシラペンタン、及び1,5-ジヨード-1,3,5-トリシラペンタンからなる群より選択される前駆体を前記反応器に導入する工程と、
水素源を含むプラズマを前記反応器に導入して、前記前駆体の少なくとも一部と反応させて、炭化ケイ素膜を形成する工程とを含む、方法。
(付記14)
25~600℃の温度で、不活性ガスプラズマ又は水素/不活性ガスプラズマで前記炭化ケイ素膜を処理する工程をさらに含む、付記13に記載の方法。
(付記15)
プラズマALDプロセスにより炭素ドープ酸化ケイ素膜を形成するための方法であって、
a)表面特徴を含む基材を反応器に提供する工程と、
b)約550℃以下の範囲の1つ又は複数の温度に前記反応器を加熱し、任意選択で、前記反応器を100torr以下の圧力で維持する工程と、
c)1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-1,3-ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2-メチル-1,3-ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2,2-ジメチル-1,3-ジシラプロパン、及び1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロ-2-エチル-1,3-ジシラプロパンからなる群より選択される1つのSi-C-Si結合を有する少なくとも1つのケイ素前駆体を前記反応器に導入して、前記基材に化学吸着層を形成する工程と、
d)工程cからの未消費の前駆体及び/又は反応副産物を前記反応器から不活性ガスを用いてパージする工程と、
e)水素を含むプラズマを前記反応器に提供して、前記化学吸着層と反応させて、炭化ケイ素膜を形成する工程と、
f)工程eからの反応副産物を前記反応器から不活性ガスを用いてパージする工程と、
g)必要に応じて工程c~fを繰り返して、前記炭化ケイ素膜を所定の厚さにする工程と、
h)得られた前記炭化ケイ素膜を、約周辺温度~1000℃、好ましくは約100~400℃の範囲の1つ又は複数の温度で酸素源にさらして、前記炭化ケイ素膜を炭素ドープ酸化ケイ素膜に変換する工程とを含み、
前記炭素ドープ酸化ケイ素膜が、約20~約40原子%の範囲の炭素含有量を有する、方法。
(付記16)
400~1000℃の温度で、前記炭素ドープ酸化ケイ素膜をスパイクアニールで処理する工程をさらに含む、付記15に記載の方法。
(付記17)
前記炭素ドープ酸化ケイ素膜をUV光源にさらす工程をさらに含む、付記15に記載の方法。
(付記18)
前記炭素ドープ酸化ケイ素膜を、Si-Me基及びSi-H基の1つ又は両方を有する有機アミノシラン又はクロロシランにさらす工程をさらに含む、付記1に記載の方法。