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特許6999697局所的なローレンツ力を用いるモジュール式マイクロ波源
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】局所的なローレンツ力を用いるモジュール式マイクロ波源
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
H05H1/46 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019560655
(86)(22)【出願日】2018-04-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-09
(86)【国際出願番号】 US2018026330
(87)【国際公開番号】W WO2018208392
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2019-12-24
(31)【優先権主張番号】15/588,597
(32)【優先日】2017-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クラウス, フィリップ アレン
(72)【発明者】
【氏名】チョア, タイ チョン
(72)【発明者】
【氏名】スブラマニ, マニ
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-064018(JP,A)
【文献】特開平07-263188(JP,A)
【文献】特開平08-203873(JP,A)
【文献】国際公開第2004/064460(WO,A1)
【文献】特開2012-216745(JP,A)
【文献】特表2010-525155(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0215722(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H01J 37/32
C23C 16/511
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理チャンバ、
前記処理チャンバに接続された複数のモジュール式マイクロ波源であって、
前記処理チャンバの外壁の一部分を形成する誘電体にわたり位置決めされたアプリケータのアレイ、及び
マイクロ波増幅モジュールのアレイであって、各マイクロ波増幅モジュールが、前記アプリケータのアレイ内の前記アプリケータのうちの1以上に接続されている、マイクロ波増幅モジュールのアレイを備えた、複数のモジュール式マイクロ波源、並びに
前記アプリケータのうちの1以上の周りに位置決めされた複数の磁石を備え、
前記複数のモジュール式マイクロ波源の各々が前記処理チャンバ内に位置付けられた基板の表面に向けてマイクロ波を放射するように配置された、プラズマ処理ツール。
【請求項2】
前記複数の磁石が電磁石である、請求項1に記載のプラズマ処理ツール。
【請求項3】
各電磁石が、前記アプリケータのうちの1つの周りに形成されている、請求項2に記載のプラズマ処理ツール。
【請求項4】
各電磁石が、2つ以上のアプリケータの周りに形成されている、請求項3に記載のプラズマ処理ツール。
【請求項5】
前記電磁石のそれぞれが、独立して制御可能である、請求項2に記載のプラズマ処理ツール。
【請求項6】
前記電磁石のうちの2つ以上が、共に電気的に接続されている、請求項2に記載のプラズマ処理ツール。
【請求項7】
磁石が永久磁石であり、複数の永久磁石が各アプリケータの周りに形成されている、請求項1に記載のプラズマ処理ツール。
【請求項8】
前記複数の磁石のうちの1以上が、前記アプリケータのうちの少なくとも1つのハウジング内に統合されている、請求項1に記載のプラズマ処理ツール。
【請求項9】
前記複数の磁石のうちの1以上が、誘電体プレート内に埋め込まれている、請求項1に記載のプラズマ処理ツール。
【請求項10】
前記磁石の磁場強度が、10Gより大きい、請求項1に記載のプラズマ処理ツール。
【請求項11】
前記磁石の磁場強度が、前記処理ツールによって生成されたプラズマが電子サイクロトロン共鳴(ECR)を受けるように選ばれる、請求項1に記載のプラズマ処理ツール。
【請求項12】
前記アプリケータの間に位置決めされた複数のプラズマセンサを更に備え、各マイクロ波増幅モジュール用のフィードバック制御データが、前記複数のプラズマセンサのうちの1以上によって提供される、請求項1に記載のプラズマ処理ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、マイクロ波プラズマ源の分野に関し、特に、磁石を有するモジュール式マイクロ波プラズマ源に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業、ディスプレイ技術、微小電気機械システム(MEMS)における技術などの、多くの異なる技術の製造で、広くプラズマ処理が使用されている。現在、無線周波数(RF)生成プラズマが、最もよく使用されている。マイクロ波源を用いて生成されたプラズマは、より密度の高いプラズマ及び/又は励起した中性種の濃度が高いプラズマを可能にする。残念なことに、マイクロ波源を用いて生成されたプラズマも欠点を有する。典型的なマイクロ波プラズマシステムは、単一の大きなマイクロ波放射源(通常は、マグネトロン)と、マイクロ波放射をマグネトロンから処理チャンバに導くための伝送経路とを使用する。典型的な高出力の用途では、伝送経路がマイクロ波導波管である。導波管が使用されるのは、マイクロ波源の特定の周波数を運ぶように設計された導波管の外側では、マイクロ波電力が急速に減衰するからである。マイクロ波放射を処理チャンバに伝送するために、チューナー、カプラ、モード変換器などの更なる構成要素も必要とされる。これらの構成要素は、構造を大きなシステムに限定し、設計を厳しく制限する。更に、プラズマの幾何学的形状は導波管の形状に似るので、プラズマの幾何学的形状が制約される。
【0003】
したがって、プラズマの幾何学的形状を、処理されている基板の幾何学的状に適合させることは困難である。特に、より大きな基板のウエハ(例えば、300mm以上のウエハ)の表面全体にわたりプラズマが生成される、マイクロ波プラズマを生成することは困難である。あるマイクロ波生成プラズマは、マイクロ波エネルギーが、延在している表面にわたり広がることを可能にするために、スロットラインアンテナ(slot line antenna)を使用する場合がある。しかし、そのようなシステムは、複雑であり、特定の幾何学的形状を必要とし、プラズマに結合される電力密度を限定する。
【0004】
更に、マイクロ波プラズマ放電は、通常、低い圧力(例えば、近似的に0.5Torr未満)で安定しない。マイクロ波励起の高周波数によって生じる短い電子の移動距離と、低圧力を原因とする少ない数の背景ガス分子との組み合わせのために、マイクロ波プラズマは安定しない。これらの効果の組み合わせは、電離衝突の頻度が低くなることをもたらす。電離衝突の可能性を高めるための1つの選択肢は、磁場をプラズマに結合することによって電子の移動距離を長くすることである。磁場をプラズマに結合することは、ローレンツ力によって電子の移動距離を長くする。電子の移動距離をより長くすると、電子の背景ガスとの電離衝突の可能性が高くなる。したがって、システムがより低い圧力で動作しているときでさえも、プラズマは安定する。
【0005】
しかし、多くの半導体製造プロセスで使用される(例えば、300mm以上の)ウエハを覆う面積などの、大きな面積にわたり均一な磁場を実現しようとするときに、実際の問題が生じる。例えば、大きな基板用に必要とされる永久磁石アレイ又は電磁石のサイズは、処理ツール全体のサイズを大きくし、処理ツールの複雑さ及び費用を高める。更に、大きな電磁石が使用されるときに、所望の強度の磁場を提供するために高い電流が必要とされる。
【0006】
更に、磁場は、ウエハの処理を変質させ、且つ/又はウエハ上の既存の構造に損傷を与える可能性があることに留意されたい。したがって、プラズマ源の近くの磁場強度は、プラズマを安定させるのに十分な高さを有することが必要であると同時に、ウエハの平面において無視できる磁場強度(例えば、1G以下)を有することが必要である。しかし、プラズマ源の近くの磁場強度を高くすることは、ウエハの近くでも同様に磁場強度を不必要に高めることをもたらす。したがって、磁場に結合されたマイクロ波プラズマシステムを、(300mmのウエハなどの)非常に大きな基板サイズ、又はディスプレイ産業で使用されるガラスパネルのサイズを有する基板に合わせてスケーリングすることは困難である。更に、通常、マイクロ波源は、高度に均一ではない且つ/又は空間的に調整可能な密度を有することができないプラズマを生成する。特に、プラズマ源の均一性は、マイクロ波空洞又はアンテナの特定の幾何学的形状に対する、マイクロ波の定常波パターンのモードに依存する。したがって、設計の均一性は、調整可能ではない。処理される基板のサイズが大きくなるにつれて、プラズマを調整できないことによるエッジ効果に対処することが、ますます困難になる。更に、プラズマを調整できないので、やがて訪れるはずの基板の不均一性に対処し、処理システムに対してプラズマ密度を調整するために、処理レシピを改変する能力が制限される。その場合、処理システムの設計を補償するために(例えば、ある処理チャンバでは回転するウエハの不均一な径方向速度に対応するために)不均一性が必要とされるが、それを満たすことはできない。
【発明の概要】
【0007】
実施形態は、複数の磁石を含むプラズマ処理ツールを含む方法及び装置を含む。一実施形態では、プラズマ処理ツールが、処理チャンバ、及び処理チャンバに接続された複数のモジュール式マイクロ波源を備えてよい。一実施形態では、複数のモジュール式マイクロ波源が、処理チャンバの外壁の一部分を形成する誘電体にわたり位置決めされたアプリケータのアレイ、及びマイクロ波増幅モジュールのアレイを含む。一実施形態では、各マイクロ波増幅モジュールが、アプリケータのアレイ内のアプリケータのうちの1以上に接続される。一実施形態では、プラズマ処理ツールが、複数の磁石を含んでよい。一実施形態では、磁石が、アプリケータのうちの1以上の周りに位置決めされている。
【0008】
更なる一実施形態は、モジュール式マイクロ波アプリケータを含んでよい。一実施形態では、モジュール式マイクロ波アプリケータが、誘電体共振空洞、及び誘電体共振空洞の外部側壁の周りに形成されたアプリケータハウジングを含んでよい。一実施形態では、モジュール式マイクロ波アプリケータが、誘電体共振器の軸中心を下って、誘電体共振空洞の中心において形成されたチャネルの中へ延在する、モノポールも含んでよい。一実施形態では、アプリケータハウジング内に磁石が埋め込まれてよい。
【0009】
上述の概要は、全ての実施形態の包括的なリストを含むものではない。上述された概要の様々な実施形態、並びに以下の詳細な説明で開示されるもの、及び本出願の特許請求の範囲で特に指摘されたものの、適切な組み合わせの全てから実施することができる、全てのシステム及び方法が含まれると考えられる。そのような組み合わせは、上述の概要で特に挙げられていない特定の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態による、モジュール式マイクロ波プラズマ源を含むプラズマ処理ツールの概略図である。
図2】一実施形態による、固体マイクロ波プラズマ源の概略的なブロック図である。
図3A】一実施形態による、マイクロ波放射を処理チャンバに結合するために使用され得る、アプリケータの断面図である。
図3B】一実施形態による、処理チャンバの部分である誘電体シート上に位置決めされたアプリケータのアレイの断面図である。
図4A】一実施形態による、マイクロ波放射を処理チャンバに結合するために使用され得る、アプリケータのアレイの平面図である。
図4B】更なる一実施形態による、マイクロ波放射を処理チャンバに結合するために使用され得る、アプリケータのアレイの平面図である。
図4C】一実施形態による、アプリケータのアレイ、及びプラズマの状態を検出するための複数のセンサの平面図である。
図4D】一実施形態による、マルチゾーン処理ツールのうちの1つのゾーン内で形成されたアプリケータのアレイの平面図である。
図5A】一実施形態による、誘電体プレートにわたり配置されたアプリケータ及び永久磁石の断面図である。
図5B】一実施形態による、誘電体プレートにわたり配置されたアプリケータ及び電磁石の断面図である。
図5C】一実施形態による、誘電体プレート内に埋め込まれたアプリケータ及び電磁石の断面図である。
図6A】一実施形態による、複数の永久磁石がアプリケータの周りに形成されたアプリケータの平面図である。
図6B】一実施形態による、複数の永久磁石がアプリケータのハウジング内に埋め込まれたアプリケータの平面図である。
図6C】一実施形態による、電磁石がアプリケータの周りに形成されたアプリケータの平面図である。
図6D】一実施形態による、電磁石がアプリケータのハウジング内に埋め込まれたアプリケータの平面図である。
図7A】一実施形態による、それぞれが電磁石リングによって取り囲まれたアプリケータのアレイの平面図である。
図7B】一実施形態による、それぞれが直列に接続された電磁石リングによって取り囲まれたアプリケータのアレイの平面図である。
図8】一実施形態による、モジュール式マイクロ波放射源と併せて使用され得る、例示的なコンピュータシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
様々な実施形態による、1以上のモジュール式マイクロ波プラズマ源を含むデバイスが説明される。以下の説明では、実施形態の網羅的な理解を提供するために多数の具体的な詳細事項が明記される。実施形態は、これらの具体的な詳細がなくとも実践可能であることが、当業者には明らかになろう。他の事例では、実施形態が不必要に不明瞭にならないように、周知の態様については詳細に説明していない。更に、添付の図に示す様々な実施形態は、例示的な表現であり、必ずしも縮尺どおりには描かれていないことを理解されたい。
【0012】
実施形態は、1以上のマイクロ波モジュールを備えたマイクロ波源を含む。一実施形態によれば、各マイクロ波モジュールが、固体電子機器部分及びアプリケータ部分を備える。一実施形態では、アプリケータ部分が、誘電体共振器であってよい。
【0013】
マグネトロンの代わりに固体電子機器を使用することにより、プラズマ源のサイズ及び複雑さを大幅に低減させることができる。特に、固体素子は、上述されたマグネトロンハードウェアよりもかなり小さい。更に、固体素子を使用することにより、マイクロ波放射を処理チャンバに伝送するために必要とされる嵩張った導波管を除去することが可能になる。その代わりに、マイクロ波放射は、同軸ケーブルで伝送されてよい。導波管を除去することにより、大きな面積のマイクロ波源を構築することもできる。その場合、形成されるプラズマのサイズは、導波管のサイズによって制限されない。その代わりに、マイクロ波モジュールのアレイが、所与のパターンで構築されてよく、それによって、任意の基板の形状に適合する任意の大きさの(且つ任意の形状の)プラズマの生成が可能になる。更に、アプリケータのアレイができるだけ緊密に詰め込まれ得るように(すなわち、最密なアレイ)、アプリケータの断面形状が選ばれてよい。実施形態は、マイクロ波モジュールのアレイ内のアプリケータが、不均一なサイズを有することも可能にし得る。したがって、充填効率は更に改善され得る。
【0014】
マイクロ波モジュールのアレイを使用することは、各マイクロ波モジュールの電力設定を独立して変更することによって、プラズマ密度を局所的に変更することができるより大きな柔軟性も提供する。これにより、ウエハのエッジ効果の調整、やがて訪れるはずのウエハの不均一性の調整、及び処理システムに対してプラズマ密度を調整する能力などの、プラズマ処理中の均一性最適化が可能になる。処理システムでは、処理システムの設計を補償するために(例えば、ある処理チャンバでは回転するウエハの不均一な径方向速度に対応するために)不均一性が必要となる。
【0015】
更に、実施形態は、磁場を各マイクロ波モジュールに結合することによって、低い圧力において安定したプラズマの動作を可能にする。上述されたものなどの処理ツール全体に対して単一の大きな磁石を使用する代わりに、実施形態は、各マイクロ波モジュールに接続され得る複数の磁石を含んでよい。複数の局所的な磁石を提供することにより、磁場の広がりを最小化することができる。したがって、磁場は、大きさが、マイクロ波共振器の近くで大きく、処理ツール内で処理されている基板の近くで小さくなるように構築することができる。例えば、磁場は、マイクロ波共振器の近くで近似的に10Gより大きくてよく、処理されている基板の平面の近くで近似的に1Gより小さくてよい。特定の磁場強度では、プラズマが、密度が高いプラズマをもたらす電子サイクロトロン共鳴(ECR)を受けてよい。ECRを生成するために必要とされる磁場強度は、励起周波数に依存する。例えば、2.45GHzの励起周波数では、磁場強度が875GであるときにECRが生じ得る。したがって、局所的な磁石を使用することにより、基板の近くで高い磁場強度を生成することなく、プラズマの近くでそのような大きさの磁場強度が可能になる。
【0016】
各マイクロ波共振器に対する磁場の局所的な性質は、磁場が、電子速度ベクトルの主たる成分に対して垂直に配向されることも可能にする。電子速度ベクトルに対して実質的に垂直に磁場を配向することにより、ローレンツ力を最大化することができる。したがって、モジュールの効率は、上述されたものなどの単一のより大きな磁気源の使用よりも改善され得る。
【0017】
更なる実施形態は、1以上のプラズマモニタリングセンサも含んでよい。そのような実施形態は、各アプリケータによって局所的にプラズマの密度(又は任意の他のプラズマ諸特性)を測定し、その測定値をフィードバックループの部分として使用して、各マイクロ波モジュールに印加される電力を制御する方法を提供する。したがって、各マイクロ波モジュールは、独立したフィードバックを有してよく、又はアレイ内のマイクロ波モジュールのサブセットが、制御のゾーン内でグループ化されてよい。その場合、フィードバックループは、ゾーン内のマイクロ波モジュールのサブセットを制御する。
【0018】
次に、図1を参照すると、一実施形態による、処理ツール100の断面図が示されている。処理ツール100は、プラズマを利用する任意の種類の処理動作に適した処理ツールであってよい。例えば、プラズマ処理ツール100は、プラズマ化学気相堆積(PECVD)、プラズマ原子層堆積(PEALD)、エッチング及び選択的除去、並びにプラズマ洗浄で使用される、処理ツールであってよい。本明細書で詳細に説明される実施形態が、プラズマ処理ツールを対象とする一方で、更なる実施形態は、マイクロ波放射を利用する任意のツールを含む、処理ツール100を含んでよいことに留意されたい。例えば、プラズマの生成を必要とすることなしにマイクロ波放射を利用する処理ツール100は、工業加熱及び/又は硬化処理ツール100を含んでよい。
【0019】
概して、実施形態は、チャンバ178を含む処理ツール100を含む。プラズマ処理のために使用される処理ツール178では、チャンバ178が真空チャンバであってよい。真空チャンバは、チャンバからのガスを除去して所望の真空を提供するためのポンプ(図示せず)を含んでよい。更なる実施形態は、処理ガスをチャンバ178の中へ供給するための1以上のガスライン170、及びチャンバ178からの副生成物を除去するための排気ライン172を含む、チャンバ178を含んでよい。図示されていないが、処理ツールは、処理ガスを基板174にわたり均一に供給するためのシャワーヘッドを含んでよいことが理解されるだろう。
【0020】
一実施形態では、基板174が、チャック176上で支持されてよい。例えば、チャック176は、静電チャックなどの任意の適切なチャックであってよい。チャックは、処理中に基板174に対して温度制御を提供するための冷却ライン及び/又はヒータも含んでよい。本明細書で説明されるマイクロ波モジュールのモジュール式構成によって、実施形態は、処理ツール100が任意のサイズの基板174を受け入れることを可能にする。例えば、基板174は、半導体ウエハ(例えば、200mm、300mm、450mm以上)であってよい。代替的な実施形態は、半導体ウエハ以外の基板174も含む。例えば、実施形態は、(例えば、ディスプレイ技術用の)ガラス基板を処理するために構成された処理ツール100を含んでよい。
【0021】
一実施形態によれば、処理ツール100が、1以上のモジュール式マイクロ波源105を含む。モジュール式マイクロ波源105は、固体マイクロ波増幅回路130、及びアプリケータ142を含んでよい。一実施形態では、電圧制御回路110が、各モジュール式マイクロ波源105内の固体マイクロ波増幅回路130に伝送される所望の周波数のマイクロ波放射を生成するために、電圧で制御される発振器120に入力電圧を提供する。マイクロ波増幅回路130による処理の後で、マイクロ波放射は、アプリケータ142に伝送される。一実施形態によれば、アプリケータ142のアレイ140が、チャンバ178に接続され、それぞれが、マイクロ波放射をチャンバ178内の処理ガスに結合してプラズマを生成するためのアンテナとして機能する。
【0022】
次に、図2を参照すると、一実施形態による、モジュール式マイクロ波源内の電子機器の概略的なブロック図が示されており、より詳細に説明される。上述のように、電圧制御回路110は、電圧で制御される発振器120に入力電圧を提供する。実施形態は、近似的に1Vと10V DCの間の入力電圧を含んでよい。電圧で制御される発振器120は、その発振周波数が入力電圧で制御される電子発振器である。一実施形態によれば、電圧制御回路110からの入力電圧は、電圧で制御される発振器120が所望の周波数で発振することをもたらす。一実施形態では、マイクロ波放射が、近似的に2.3GHzと2.6GHzの間の周波数を有してよい。
【0023】
一実施形態によれば、マイクロ波放射が、電圧で制御される発振器120からマイクロ波増幅回路130に伝送される。図示されている実施形態では、マイクロ波増幅回路130の単一のインスタンスが示されている。しかし、実施形態は、マイクロ波増幅回路130の任意の数のインスタンスを含んでよい。特に、マイクロ波増幅回路130のインスタンスの数は、アプリケータ142のアレイ140内で必要とされるアプリケータ142の数と等しくてよい。したがって、各アプリケータ142に供給される電力の個別の制御を提供するために、各アプリケータ142が、マイクロ波増幅回路130の異なるインスタンスに接続されてよい。一実施形態によれば、2つ以上のモジュール式マイクロ波源105が処理ツール100内で使用されるときに、マイクロ波増幅回路130は、位相シフター232を含んでよい。単一のアプリケータのみが使用されるときに、位相シフター232は省略されてよい。マイクロ波増幅回路130は、それぞれ電源239に接続された、ドライバ/従たる増幅器234、及び主たるマイクロ波電力増幅器236も含んでよい。一実施形態によれば、マイクロ波増幅回路130は、パルスモードで動作してよい。例えば、マイクロ波増幅回路130は、1%と99%の間のデューティーサイクルを有してよい。より具体的な一実施形態では、マイクロ波増幅回路130が、近似的に15%と30%の間のデューティーサイクルを有してよい。
【0024】
一実施形態では、マイクロ波放射が、増幅された後でアプリケータ142に伝送されてよい。しかし、アプリケータ142に伝送される電力の部分は、出力インピーダンス内の不整合によって反射して戻るかもしれない。したがって、ある実施形態は、反射した電力のレベルが、電圧制御回路110にフィードバックされることを可能にする、フィードバックライン286も含む。反射した電力のレベルVfeedbackは、電力増幅器236とアプリケータ142との間のサーキュレータ238を使用することによって、フィードバックライン286に向けられてよい。サーキュレータ238は、反射した電力を疑似負荷282及び接地284に向け、反射した電力のレベルVfeedbackは、疑似負荷282の前に読み取られる。一実施形態では、反射した電力のレベルVfeedbackが、電圧で制御される発振器120に送られる出力電圧を調整するために、電圧制御回路110によって使用されてよい。今度は、電圧で制御される発振器120が、マイクロ波増幅回路130に伝送されるマイクロ波放射の出力周波数を変化させる。そのようなフィードバックループの存在は、実施形態が、電圧で制御される発振器120の入力電圧の連続的な制御を提供することを可能にし、反射した電力のレベルVfeedbackが低減されることを可能にする。一実施形態では、電圧で制御される発振器120のフィードバック制御が、反射した電力のレベルが、順電力(forward power)の近似的に5%未満になることを可能にし得る。ある実施形態では、電圧で制御される発振器120のフィードバック制御が、反射した電力のレベルが、順電力の近似的に2%未満になることを可能にし得る。したがって、実施形態は、処理チャンバ178に接続される順電力の割合の増加を可能にし、プラズマに結合される利用可能な電力密度を高める。更に、フィードバックライン286を使用してインピーダンスを調整することは、典型的なスロットプレートアンテナにおけるインピーダンス調整より優れている。スロットプレートアンテナでは、インピーダンス調整が、アプリケータ内に形成された2つの誘電体スラグを移動させることを含む。これは、アプリケータ内で2つの分離した構成要素が機械的に移動することを含む。それは、アプリケータの複雑さを高める。更に、機械的な移動は、電圧で制御される発振器120によって提供され得る周波数の変化と比べて、精密ではないだろう。
【0025】
次に、図3Aを参照すると、一実施形態による、アプリケータ142の切断図が示されている。一実施形態では、マイクロ波放射が、同軸ケーブル351によってアプリケータ142に伝送される。同軸ケーブル351は、アプリケータ142を通って軸方向に延在するモノポール357に接続している。モノポール357は、誘電体共振空洞353の中心の中に形成されたチャネル358の中に延在してもよい。誘電体共振空洞353は、石英、酸化アルミニウム、酸化チタニウムなどの、誘電材料であってよい。更なる実施形態は、材料を含まない共振空洞353も含んでよい(すなわち、誘電体共振空洞353は、空気又は真空であってよい)。一実施形態によれば、誘電体共振器は、誘電体共振器がマイクロ波放射の共振を支援するように寸法決定される。概して、誘電体共振空洞353のサイズは、誘電体共振空洞353を形成するために使用される材料の誘電率、及びマイクロ波放射の周波数に依存する。例えば、より高い誘電率を有する材料は、より小さい共振空洞353が形成されることを可能にし得る。誘電体共振空洞353が円形断面を含む一実施形態では、誘電体共振空洞353の直径が、近似的に1cmと15cmの間であってよい。一実施形態では、誘電体共振空洞353が共振を支援するように寸法決定されている限り、モノポール357に垂直な平面に沿った誘電体共振空洞353の断面が任意の形状であってよい。図示されている実施形態では、モノポール357に垂直な平面に沿った断面が円形であるが、多角形(例えば、三角形、矩形など)、対称多角形(例えば、正方形、正五角形、正六角形など)、楕円形などの、他の形状も使用されてよい。
【0026】
一実施形態では、誘電体共振空洞353の断面が、モノポール357に垂直な全ての平面で同じでなくてよい。例えば、アプリケータハウジング355の開放端に近い底延在部の断面は、チャネル358の近くの誘電体共振空洞の断面より広い。異なる寸法の断面を有することに加えて、誘電体共振空洞353は、異なる形状を有する断面を有してよい。例えば、チャネル358に近い誘電体共振空洞353の部分は、円形状の断面を有してよく、一方、アプリケータハウジング355の開放端に近い誘電体共振空洞353の部分は、対称多角形(例えば、正五角形、正六角形など)であってよい。しかし、実施形態は、モノポール357に垂直な全ての平面で均一な断面を有する誘電体共振空洞353も含んでよいことが理解される。
【0027】
一実施形態によれば、アプリケータ353が、インピーダンス調整バックショート356も含んでよい。バックショート356は、アプリケータハウジング355の外面を覆って摺動する変位可能な筐体であってよい。インピーダンスの調整を行う必要があるときに、アクチュエータ(図示せず)は、バックショート356の表面と誘電体共振空洞353の上面との間の距離Dを変更するために、アプリケータハウジング355の外面に沿ってバックショート356を摺動させてよい。したがって、実施形態は、システム内のインピーダンスを調整するための2つ以上の方法を提供する。一実施形態によれば、インピーダンスを調整するバックショート356が、上述のフィードバックプロセスと併せて使用されて、インピーダンスの不整合に対処することができる。代替的に、フィードバックプロセス又はインピーダンスを調整するバックショート356を単独で使用して、インピーダンスの不整合を調整することができる。
【0028】
一実施形態によれば、アプリケータ142が、マイクロ波電磁場を処理チャンバ178に直接的に結合する誘電体アンテナとして機能する。誘電体共振空洞353に入るモノポール357の特定の軸方向配置は、TM01δモードの励起を生成することができる。しかし、励起の異なるモードが、種々のアプリケータ配置で可能になる。例えば、ある軸方向配置が、図3Aで示されているけれども、モノポール357が、それとは異なる配向で誘電体共振空洞353に入り得ることを理解されたい。1つのそのような実施形態では、モノポール357が、誘電体共振空洞353に側方から(すなわち、誘電体共振空洞353の側壁を通って)入ってよい。
【0029】
次に、図3Bを参照すると、一実施形態による、アプリケータ142のアレイ140がチャンバ178に接続された、処理ツール100の一部分の図が示されている。図示されている実施形態では、アプリケータ142からのマイクロ波放射が、誘電体プレート350の近くに位置決めされることによって、チャンバ178の中に結合されている。アプリケータ142が誘電体プレート350に近いので、誘電体共振空洞353(図3Bでは示されていない)内で共振するマイクロ波放射が、誘電体プレート350に結合し、次いで、チャンバ内の処理ガスと結合して、プラズマを生成することができる。一実施形態では、誘電体共振空洞353が、誘電体プレート350と直接的に接触してよい。更なる一実施形態では、マイクロ波放射が未だ誘電体プレート350に伝達され得る限り、誘電体共振空洞353が、誘電体プレート350の表面から間隔を空けられてよい。
【0030】
一実施形態によれば、アプリケータ142のアレイ140が、チャンバ178から誘電体プレート350を除去する必要なしに、誘電体プレート350から除去可能であってよい(例えば、保守のため、種々の寸法を有する基板を受け入れるためにアプリケータのアレイを再配置するために、又は任意の他の理由で)。したがって、アプリケータ142は、チャンバ178内の真空を解放する必要なしに、処理ツール100から除去されてよい。更なる一実施形態によれば、誘電体プレート350は、ガス注入プレート又はシャワーヘッドとしても機能することができる。
【0031】
上述のように、アプリケータ140のアレイは、任意の形状の基板174をカバーできるように配置されてよい。図4Aは、円形基板174に適合するパターンで配置された、アプリケータ142のアレイ140の平面図である。基板174の形状に大まかに適合するパターンで複数のアプリケータ142を形成することによって、プラズマは、基板174の表面全体にわたり調整可能になる。例えば、アプリケータ142のそれぞれは、基板174の表面全体にわたり均一なプラズマ密度を有するプラズマが生成されるように制御されてよい。代替的に、アプリケータ142のうちの1以上は、基板174の表面にわたり可変なプラズマ密度を提供するために独立して制御されてよい。したがって、基板上に存在するやがて訪れるはずの不均一性が修正され得る。例えば、基板174の外周に近いアプリケータ142は、基板174の中心に近いアプリケータとは異なる電力密度を有するように制御されてよい。
【0032】
図4Aでは、アレイ140内のアプリケータ142が、基板174の中心から外に延在する一連の同心リング内に共に詰め込まれている。しかし、実施形態は、そのような構成に限定されず、任意の適切な間隔及び/又はパターンが、処理ツール100の必要に応じて使用されてよい。更に、実施形態は、上述のように、任意の対称な断面を有するアプリケータ142を可能にする。したがって、アプリケータ用に選ばれる断面形状は、高められた充填効率を提供するように選ばれてよい。
【0033】
次に、図4Bを参照すると、一実施形態による、非円形断面を有するアプリケータ142のアレイ140の平面図が示されている。図示されている実施形態は、六角形の断面を有するアプリケータ142を含む。そのようなアプリケータの使用は、改善された充填効率を可能にし得る。というのも、各アプリケータ142の外周が、隣接するアプリケータ142と略完全に嵌め合わされ得るからである。したがって、プラズマの均一性は、また更に高められ得る。何故ならば、各アプリケータ142のそれぞれの間の間隔が最小化され得るからである。図4Bは、側壁表面を共有する隣接するアプリケータ142を示しているが、実施形態は、隣接するアプリケータ142の間の間隔を含む、非円形の対称な形状のアプリケータを含むこともできると理解される。
【0034】
次に、図4Cを参照すると、一実施形態による、アプリケータ142のアレイ140の更なる平面図が示されている。図4Cにおけるアレイ140は、複数のセンサ490も含まれていることを除いて、図4Aに関して上述されたアレイ140と実質的に類似する。複数のセンサは、モジュール式マイクロ波源105のそれぞれの更なるフィードバック制御を提供するために使用され得る、改善されたプロセスモニタリング能力を提供する。一実施形態では、センサ490が、プラズマ密度センサやプラズマ放出センサなどの、1以上の異なるセンサ490の種類を含んでよい。基板174の表面にわたりセンサを位置決めすることは、処理チャンバ100の所与の位置においてプラズマ諸特性がモニタされることを可能にする。
【0035】
一実施形態によれば、全てのアプリケータ142が、異なるセンサ490と組み合わされてよい。そのような実施形態では、各センサ490からの出力が、センサ490が組み合わされたそれぞれのアプリケータ142に対してフィードバック制御を提供するために使用されてよい。更なる実施形態は、各センサ490を複数のアプリケータ142と組み合わせることも含んでよい。例えば、各センサ490は、センサ490が近くに位置付けられた複数のアプリケータ142に対してフィードバックを提供することができる。更に別の一実施形態では、複数のセンサ490からのフィードバックが、マルチ入力マルチ出力(MIMO)制御システムの一部分として使用されてよい。そのような一実施形態では、各アプリケータ142が、複数のセンサ490からのフィードバックに基づいて調整されてよい。例えば、第1のアプリケータ142に直接的に隣接する第1のセンサ490は、第1のセンサ490より第1のアプリケータ142から遠くに位置付けられた第2のセンサ490によって第1のアプリケータ142に及ぼされる制御力より大きい制御力を第1のアプリケータ142に与えるように重み付けされてよい。
【0036】
次に、図4Dを参照すると、一実施形態による、マルチゾーン処理ツール100内に位置決めされたアプリケータ142のアレイ140の更なる平面図が示されている。一実施形態では、マルチゾーン処理ツール100が、任意の数のゾーンを含んでよい。例えば、図示されている実施形態は、ゾーン475~475を含む。各ゾーン475は、異なるゾーン475を通して回転される基板174上で種々の処理動作を実行するように構成されてよい。図示されているように、単一のアレイ140が、ゾーン475内に位置決めされている。しかし、実施形態は、デバイスの必要に応じて、種々のゾーン475のうちの1以上内にアプリケータ142のアレイ140を有するマルチゾーン処理ツール100を含んでよい。実施形態によって提供されるプラズマの空間的に調整可能な密度は、回転している基板174が異なるゾーン475を通過する際に、その基板174の不均一な径方向速度に対応することを可能にする。
【0037】
様々な実施形態によれば、1以上のマイクロ波アプリケータが、局所的な磁場に結合されてよい。上述したように、マイクロ波アプリケータを局所的な磁場に結合することにより、低い圧力であってさえも安定したプラズマの生成が可能になる。磁場は、電子の移動距離がローレンツ力によって増加することを可能にする。より長い移動距離は、電子の背景ガスとの電離衝突の可能性を高め、したがって、より低い圧力で安定したプラズマを提供する。
【0038】
実施形態は、永久磁石又は電磁石を用いて局所的な磁場を生成することを含む。ある実施形態では、磁石が、各マイクロ波アプリケータの近くに形成されてよい。代替的な実施形態では、磁石が、マイクロ波アプリケータのハウジング内に統合されてよい。ある実施形態では、磁石の磁場強度が独立して制御可能であり、磁石の磁場強度が集団で制御されてよく、又は磁石の磁場強度が均一であってよい。
【0039】
次に、図5Aを参照すると、一実施形態による、アプリケータ142及び永久磁石580の断面図が示されている。図示されている実施形態では、アプリケータ142が、単一の構成要素として概略的に示されているが、アプリケータ142は、本明細書で説明される任意のアプリケータであってよいことが理解される。例えば、アプリケータ142は、図3Aで示されているアプリケータ142のように、誘電体空洞及びハウジングを含んでよい。一実施形態では、永久磁石580が、アプリケータ142の周りでリングを形成するように配置されてよい。一実施形態では、永久磁石580が、近似的に10Gより大きい磁場強度を有してよい。一実施形態では、永久磁石が、近似的に500Gより大きい磁場強度を有してよい。更なる実施形態は、800Gより大きい磁場強度を有する永久磁石を有してよい。ある実施形態では、永久磁石580の磁場強度が、ECRがプラズマ内に含まれるように選ばれてよい。例えば、プラズマ周波数が2.45GHzであるときに、磁場強度は875Gであってよい。一実施形態では、アプリケータ142及び永久磁石580が、プラズマ処理チャンバの誘電体プレート350上に配置されてよい。
【0040】
図5Aは、磁力線582及び電気力線583も示している。磁力線582及び電気力線583は、例示的な描写として示され、それぞれの場の正確な形状を表していないかもしれないが、磁力線582と電気力線583との関係は、概して正しい描写になっている。特に、電気力線583は、磁力線582に対して相対的に垂直である。この関係は、磁石580がアプリケータ142の周りのリングとして形成されているために生じる。磁力線582と電気力線583との垂直な関係により、ローレンツ力が最大化される。
【0041】
一実施形態では、アプリケータ142の周りで局所的な磁石580を使用することにより、磁場が処理チャンバ内の基板(図示せず)の平面に向かって実質的に延伸しないことを保証する。その代わりに、磁力線582は、誘電体プレート350に近接して、プラズマが生成される局所的な場所に留まる。したがって、大きな磁場が存在するときであってさえも、基板は、潜在的に損傷を与える磁力に
実質的に曝露されることはないだろう。例えば、基板の平面において存在する磁場の大きさは、1G未満であってよい。
【0042】
次に、図5Bを参照すると、一実施形態による、アプリケータ142及び電磁石581の断面図が示されている。電磁石581によって永久磁石が置き替えられていることを除いて、図5Bの構成要素は、図5Aで説明された構成要素と実質的に類似する。一実施形態では、所望の磁場強度を提供するために、電磁石581が、電源(図示せず)に接続されていてよい。更に、単一のリングが示されているが、電磁石581は、アプリケータ142の周りに任意の数のリングを含んでよいことが理解される一実施形態では、電磁石581が、近似的に10Gより大きい磁場強度を有してよい。一実施形態では、電磁石581が、近似的に500Gより大きい磁場強度を有してよい。更なる実施形態は、800Gより大きい磁場強度を有する電磁石581を有してよい。ある実施形態では、電磁石581の磁場強度が、ECRがプラズマ内に含まれるように選ばれてよい。
【0043】
電磁石581を使用することにより、磁場が調整可能になるので、それは有用であり得る。例えば、磁場は、プラズマを調整するために調整されてよい。実施形態は、上述されたものなどの、1以上のセンサによって提供されるフィードバック情報に応答して、電磁石581の磁場を変化させることを含んでよい。更に、磁場を調整することができるので、やがて訪れるはずの基板の不均一性に対処し、改善されたツール間の整合を提供するためなどに、プラズマ内にばらつきを生成することが可能になる。
【0044】
次に、図5Cを参照すると、更なる一実施形態による、アプリケータ142及び電磁石581の断面図が示されている。アプリケータ142及び電磁石581が、誘電体プレート350内に埋め込まれていることを除いて、図5Cの構成要素は、図5Bの構成要素と実質的に類似する。一実施形態では、電磁石581が、誘電体プレート350内に完全に埋め込まれてよく、又は、電磁石の表面全体が誘電体プレート350によってカバーされないように、電磁石が、誘電体プレート350の溝内に置かれてよい。図5Cでは電磁石が示されているが、永久磁石580も、同様に誘電体プレート350内に埋め込まれ又は部分的に埋め込まれてよいことが理解される。
【0045】
次に、図6A図6Dを参照すると、様々な実施形態による、アプリケータ及び局所的な磁石の平面図が示されている。次に、図6Aを参照すると、一実施形態による、アプリケータ142の周りのリング内に形成された複数の永久磁石580が示されている。示されているように、永久磁石580のリングは、アプリケータ142のハウジング355及び誘電体共振空洞353の周りに配置されていてよい。8つの永久磁石580が示されているが、任意の数の永久磁石が使用されてよいことに留意されたい。例えば、単一の永久磁石580が使用されてよく、又は2つ以上の永久磁石580が使用されてよい。
【0046】
次に、図6Bを参照すると、一実施形態による、統合された永久磁石580を含むアプリケータ142の平面図が示されている。図示されている実施形態では、永久磁石580が、誘電体共振空洞353の周りのアプリケータ142のハウジング355内に統合されてよい。ハウジング355内に磁石を統合することによって、幾つかの利点がもたらされる。1つの利点は、アプリケータ142と磁石580を単一の構成要素の中へ組み合わせることにより、誘電体プレート350を覆う設置面積全体が低減され得ることである。更に、別の構成要素を必要とすることなく、磁気源をマイクロ波源に接続することができるという利益が得られる。したがって、システムの組み立て及び/又はシステムの再配置がより単純になる。
【0047】
次に、図6Cを参照すると、一実施形態による、アプリケータ142及び(アプリケータハウジング355の周りに形成された)電磁石581の平面図が示されている。図示されている実施形態では、電磁石581が実質的に円形リングとして示されているが、電磁石581は、任意の所望の形状で形成され得ることが理解されよう。電磁石581は、アプリケータ142の周りの単一のリングとして示されているが、電磁石581は、アプリケータ142の周りに2つ以上のリングを含んでよいことが理解される。更なる実施形態は、アプリケータ142を完全には取り囲まない電磁石581を含んでよい。
【0048】
次に、図6Dを参照すると、一実施形態による、アプリケータ142及び(アプリケータ142のハウジング355内に統合された)電磁石581の平面図が示されている。電磁石581は、アプリケータ142の周りの単一のリングとして示されているが、電磁石581は、2つ以上のリングを含んでよく又は部分的なリングであってよいことが理解される。
【0049】
図6A~6Dでは、(1以上の)局所的な磁石がアプリケータハウジングを取り囲む又はアプリケータハウジング内に統合された、単一のアプリケータが示されている。しかし、実施形態は、生成され得るプラズマの形状のより大きな柔軟性を可能とするために、アプリケータ及び磁石のアレイを使用することを含む。そのようなアプリケータ及び磁石のアレイの組み合わせが、図7A及び図7Bで示されている。特に、図7A及び図7Bは、電磁石を利用するシステムを示しているが、同様に永久磁石を有する実質的に類似の配置も使用されてよいことが理解されよう。
【0050】
次に、図7Aを参照すると、一実施形態による、複数の局所的な電磁石581を伴ったアプリケータ142のアレイ740が示されている。一実施形態では、各アプリケータ142が、電磁石581によって取り囲まれている。例示的な実施形態では、アプリケータ/電磁石の各組は、図6Cで示された構成要素と実質的に類似している。しかし、図6Dで示されたものと同様に、アプリケータのハウジングの中に統合された電磁石581を伴う、実質的に類似なアレイ740が形成されてよいことに留意されたい。一実施形態では、アプリケータ142が、任意の所望のパターンで配置されてよく、任意の数のアプリケータ142が、アレイ740内で使用されてよい。ある実施形態では、各電磁石581が独立して制御可能である。したがって、プラズマの種々の部分が異なる磁場強度を受けるように、プラズマが調整されてよい。図7Aでは示されていないが、各電磁石581の個別の制御を提供するために、電磁石581のそれぞれが、異なる電源に電気的に接続されてよいことが理解される。ある実施形態では、電磁石581の群を制御するために、2つ以上の電磁石が、単一の電源に電気的に接続されていてよい。
【0051】
次に、図7Bを参照すると、一実施形態による、互いに電気的に接続された電磁石581を含むアレイ740の平面図が示されている。そのような一実施形態では、電気接続585が、個別の電磁石581を接続してよい。一実施形態では、複数の電磁石581が、互いに直列に且つ/又は並列に接続されてよい。ある実施形態では、全ての電磁石581が、共に電気的に接続されている。したがって、単一の電源が使用されて、各電磁石に所望の磁場強度を提供することができる。更なる一実施形態では、アレイ740が、2つ以上の独立して制御可能な電磁石581の群を含んでよい。その場合、群内の各電磁石581は、電気接続585によって共に電気的に接続されている。そのような実施形態では、電磁石581の各群が、異なる電源に接続されていてよい。
【0052】
次に、図8を参照すると、一実施形態による、処理ツール100の例示的なコンピュータシステム860のブロック図が示されている。一実施形態では、コンピュータシステム860が、処理ツール100に接続され、処理ツール100内の処理を制御する。コンピュータシステム860は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、イントラネット、エクストラネット、又はインターネットにおいて、他のマシンに接続され(例えば、ネットワーク化され)得る。コンピュータシステム860は、クライアント‐サーバネットワーク環境内でサーバ又はクライアントマシンの役割で、或いは、ピアツーピア(又は分散)ネットワーク環境内でピアマシンとして動作してよい。コンピュータシステム860は、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットPC、セットトップボックス(STB)、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、携帯電話、ウェブアプライアンス、サーバ、ネットワークルータ、スイッチ又はブリッジ、或いは、そのマシンによって行われる動作を特定する(連続した又は別様な)指示命令のセットを実行可能な任意のマシンであってよい。更に、コンピュータシステム860として単一のマシンのみを示しているが、用語「マシン」は、本明細書に記載の方法のうちの任意の1以上を実施するために、指示命令のセット(又は複数のセット)を個々に、又は連携的に実行するマシン(例えば、コンピュータ)の任意の集合体を含むとも解釈すべきである。
【0053】
コンピュータシステム860は、指示命令が記憶された非一過性のマシン可読媒体を有するコンピュータプログラム製品、又はソフトウェア822を含んでいてよく、これらの指示命令は、実施形態による処理を実施するコンピュータシステム860(又は他の電子デバイス)をプログラムするために使用され得る。マシン可読媒体は、マシン(例えば、コンピュータ)によって可読な形態で情報を保存又は伝送するための任意の機構を含む。例えば、マシン可読(例えば、コンピュータ可読)媒体は、マシン(例えば、コンピュータ)可読記憶媒体(例えば、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイスなど)や、マシン(例えば、コンピュータ)可読伝送媒体(電気的形態、光学的形態、音響的形態、又はその他の形態の、例えば、赤外信号やデジタル信号といった伝播信号)などを含む。
【0054】
一実施形態では、コンピュータシステム860が、バス830を介して互いに通信し合う、システムプロセッサ802、メインメモリ804(例えば、読み出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、シンクロナスDRAM(SDRSM)、又はランバスDRAM(RDRSM)などのダイナミックランダムアクセスメモリ(DRSM)など)、スタティックメモリ806(例えば、フラッシュメモリ、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)など)、及び二次メモリ818(例えば、データ記憶装置)を含む。
【0055】
システムプロセッサ802は、マイクロシステムプロセッサ、中央処理装置などの1以上の汎用処理デバイスを表す。より詳細には、システムプロセッサが、複合命令セット演算(CISC)マイクロシステムプロセッサ、縮小命令セット演算(RISC)マイクロシステムプロセッサ、超長命令語(VLIM)マイクロシステムプロセッサ、他の指示命令セットを実行するシステムプロセッサ、又は指示命令セットの組み合わせを実行するシステムプロセッサであってよい。システムプロセッサ802は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号システムプロセッサ(DSP)、ネットワークシステムプロセッサなどの、1以上の特殊用途処理デバイスでもあってよい。システムプロセッサ802は、本明細書に記載の動作を実行するための処理論理826を実施するように構成されている。
【0056】
コンピュータシステム860は、他のデバイス又はマシンと通信するためのシステムネットワークインターフェースデバイス808を更に含み得る。コンピュータシステム860は、ビデオディスプレイユニット810(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオードディスプレイ(LED)、又は陰極線管(CRT))、英数字入力デバイス812(例えば、キーボード)、カーソル制御デバイス814(例えば、マウス)、及び信号生成デバイス816(例えば、スピーカ)も含み得る。
【0057】
二次メモリ818は、本明細書に記載の方法又は機能のうちの任意の1以上のものを具現化する、1以上の指示命令セット(例えば、ソフトウェア822)が記憶されている、マシンアクセス可能記憶媒体831(又は、より具体的には、コンピュータ可読記憶媒体)を含んでよい。このソフトウェア822は、コンピュータシステム860によって実行されている間、完全に又は少なくとも部分的に、メインメモリ804及び/又はシステムプロセッサ802の中にも常駐していてよく、メインメモリ804及びシステムプロセッサ802は、マシン可読記憶媒体も構成し得る。このソフトウェア822は更に、システムネットワークインターフェースデバイス808を介してネットワーク820を経由して送信又は受信され得る。
【0058】
例示の実施形態において、マシンアクセス可能記憶媒体831を単一の媒体として示したが、「マシン可読記憶媒体」という語は、1以上の支持命令セットを記憶する単一の媒体又は複数の媒体(例えば集中データベース若しくは分散データベース、並びに/又は関連キャッシュ及びサーバ)を含むと理解すべきである。用語「マシン可読記憶媒体」はまた、マシンによって実施される指示命令のセットを記憶すること又は符号化することが可能であり、且つ、方法のうちの任意の1以上をマシンに実施させる任意の媒体を含むとも解釈すべきである。従って、「マシン可読記憶媒体」という用語は、固体メモリ、光媒体、及び磁気媒体を含むがそれらに限定されないと解釈すべきである。
【0059】
前述の明細書では、特定の例示的な実施形態が説明された。以下の特許請求の範囲から逸脱しない限り、例示の実施形態に様々な修正を加えることができることが明らかになろう。従って、本明細書及び図面を限定的と捉えるのではなく、例として見なすべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8