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特許7000022高電流、低スイッチングロスのSiCパワーモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】高電流、低スイッチングロスのSiCパワーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20220112BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20220112BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20220112BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H02M1/00 Z
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2016567562
(86)(22)【出願日】2015-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-06-15
(86)【国際出願番号】 US2015030853
(87)【国際公開番号】W WO2015175820
(87)【国際公開日】2015-11-19
【審査請求日】2017-10-26
【審判番号】
【審判請求日】2020-01-31
(31)【優先権主張番号】14/277,820
(32)【優先日】2014-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592054856
【氏名又は名称】クリー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ダス ムリナル ケー.
(72)【発明者】
【氏名】リン ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】シュプバッハ マルセロ
(72)【発明者】
【氏名】パルマー ジョン ウィリアムズ
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】井上 信一
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-50206(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0248883(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーモジュールであって、
内部チャンバを有するハウジングと、
第1の端子および第2の端子であって、前記パワーモジュールの該第1の端子および該第2の端子の間の漏れインダクタンスの少なくとも一部を打ち消すように、前記第1の端子および前記第2の端子の互いに対向する部分が互いに1.5mm内に位置するよう配置される第1の端子および第2の端子と、
前記内部チャンバ内において前記第1の端子および前記第2の端子の間に取り付けられ、電力の負荷への切り替えを容易にするために相互連結された複数のスイッチモジュールとを備えたパワーモジュールであって、前記複数のスイッチモジュールはそれぞれ、少なくとも1つのダイオードと逆並列に連結された少なくとも1つのトランジスタを備え、前記パワーモジュールは少なくとも1200ボルトを遮断し、25ミリジュール未満のスイッチングロスで少なくとも120アンペアを通電する、パワーモジュール。
【請求項2】
前記パワーモジュールは、少なくとも200アンペアを通電することが可能である、請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項3】
前記パワーモジュールは、少なくとも300アンペアを通電することが可能である、請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項4】
前記パワーモジュールは、1ミリジュールと25ミリジュールとの間のスイッチングロスを有する、請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項5】
前記パワーモジュールは、1ミリジュールと20ミリジュールとの間のスイッチングロスを有する、請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項6】
前記パワーモジュールは、1ミリジュールと15ミリジュールとの間のスイッチングロスを有する、請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項7】
前記少なくとも1つのトランジスタ、および前記少なくとも1つのダイオードは、炭化ケイ素(SiC)デバイスである、請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項8】
前記少なくとも1つのトランジスタは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)であり、前記少なくとも1つのダイオードは、ショットキーダイオードである、請求項7に記載のパワーモジュール。
【請求項9】
前記少なくとも1つのトランジスタは、並列に連結されたトランジスタ群を備え、前記少なくとも1つのダイオードは、並列に連結されたダイオード群を備える、請求項7に記載のパワーモジュール。
【請求項10】
前記パワーモジュールは、少なくとも50kHzのスイッチング周波数で作動するよう構成されている、請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項11】
前記少なくとも1つのトランジスタは、窒化アルミニウムの層の上方に形成されている、請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項12】
前記複数のスイッチモジュールは、アルミニウム炭化ケイ素のベースプレートに取り付けられている、請求項11に記載のパワーモジュール。
【請求項13】
内部チャンバを有するハウジングと
前記内部チャンバ内の少なくとも第1パワー基板であって、前記第1パワー基板は、電力の負荷への切り替えを容易にするための、前記第1パワー基板の第1の面に1つあるいは複数のスイッチモジュールを備え、前記1つあるいは複数のスイッチモジュールはそれぞれ、少なくとも1つのダイオードと逆並列に連結される少なくとも1つのトランジスタを備える、少なくとも第1パワー基板と、
前記1つあるいは複数のスイッチモジュールそれぞれの少なくとも1つのトランジスタのゲートコンタクトに、前記第1パワー基板の前記第1の面に導電トレースを備える信号経路を介して連結されたゲートコネクタとを備え、
少なくとも1200ボルトを遮断し、25ミリジュール未満のスイッチングロスで少なくとも120アンペアを通電する、パワーモジュール。
【請求項14】
前記信号経路はさらにシールドケーブルを含む、請求項13に記載のパワーモジュール。
【請求項15】
前記シールドケーブルは同軸ケーブルである、請求項14に記載のパワーモジュール。
【請求項16】
前記少なくとも1つのトランジスタ、および前記少なくとも1つのダイオードは、炭化ケイ素(SiC)デバイスである、請求項13に記載のパワーモジュール。
【請求項17】
前記パワーモジュールは、少なくとも50kHzのスイッチング周波数で作動するよう構成されている、請求項13に記載のパワーモジュール。
【請求項18】
内部チャンバを有するハウジングと、
第1の端子および第2の端子であって、前記第1の端子における前記第2の端子に対向する部分が前記第2の端子から1.5mm内に位置するよう配置された第1の端子および第2の端子と、
前記内部チャンバ内に取り付けられ、前記第1の端子および前記第2の端子の間に連結された電源からの電力の負荷への切り替えを容易にするために相互連結され、少なくとも1つのダイオードと逆並列に連結された少なくとも1つのトランジスタを備える複数のスイッチモジュールとを備え、
少なくとも1200ボルトを遮断し、25ミリジュール未満のスイッチングロスで少なくとも120アンペアを通電する、パワーモジュール。
【請求項19】
前記少なくとも1つのダイオードは、前記少なくとも1つのトランジスタの内部ボディダイオードである、請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項20】
前記少なくとも1つのダイオードは、前記少なくとも1つのトランジスタの外部にある、請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項21】
前記第1の端子における前記第2の端子に対向する150mm~200mmの領域が前記第2の端子から1.5mm内に位置するよう配置される、請求項1に記載のパワーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2013年5月14日に提出された米国特許出願番号第13/893,998の一部継続出願であり、該一部継続出願は2012年8月17日に提出された米国特許出願番号第13/588,329の一部継続出願であり、該一部継続出願は2011年9月11日に提出された米国特許仮出願第61/533,254の利益を請求し、これらの開示の全内容は参照により本願に援用される。
[開示の分野]
本開示は、負荷への電力供給を制御するためのパワーモジュールに関する。
[背景]
電力コストは上昇を続け、環境への影響が懸念されるにつれて、向上した性能および効率を有するパワーデバイスへの需要は継続的に高まっている。パワーデバイスの性能および効率を向上させるための1つの方法は、炭化ケイ素(SiC)を用いるデバイスを作製することである。SiCで作製されたパワーデバイスは、従来のシリコンパワーデバイスと比較して、切り替え速度、電力処理能力、および温度処理能力において大きな利点を示すことが期待されている。具体的には、SiCデバイスの高臨界磁場およびワイドバンドギャップによって、従来のシリコンデバイスと比較して性能および効率の両方が向上する。
【0002】
シリコンに内在する性能限界のため、従来のパワーデバイスには、高電圧(例えば、5kVよりも大きい電圧)を遮断する際に、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等の双極型構造が必要とされ得る。双極型構造を使用することによって、概してドリフト層の抵抗は、ドリフト層の導電率変調のため低下するが、双極型構造は比較的遅いスイッチング時間に悩まされる。当該技術において通常の技術を有する者には明らかであるように、双極型構造の逆回復時間(少数派キャリアの比較的遅い拡散に起因する)は、その最大スイッチング時間を制限し、それによってシリコンデバイスは、概して高電圧および高周波数の用途に適さないものとなってしまう。
【0003】
上述されたSiCパワーデバイスに関する性能向上のため、単極性のSiCパワーデバイスを用いて、10kVまであるいはそれ以上の電圧を遮断してもよい。このような単極性のSiCパワーデバイスの多数キャリアの性質によって、当該デバイスの逆回復時間を効果的に排除し、それによって非常に高い切り替え速度(例えば、二重拡散金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(DMOSFET)のための阻止能力10kVおよび約100mΩ*cmの特定のオン抵抗を有する)を可能にする。
【0004】
パワーデバイスは多くの場合、相互連結され、パワーモジュールに一体化され、モータ、インバータ、ジェネレータ、のような様々な構成要素を介して大容量の電力を動的に切り替えるように作動する。同時に従来のものと同様の、あるいはより良好な性能を提供しつつ、上述のように、電力のコスト上昇および環境への影響の懸念によって、より小さく、安価で、かつより効率的なパワーモジュールが継続的に必要とされている。
[概要]
本開示は負荷への電力供給を制御するためのパワーモジュールに関する。一実施形態によると、パワーモジュールは、内部チャンバを有するハウジングと、前記ハウジングの前記内部チャンバ内に取り付けられた複数のスイッチモジュールとを備える。前記スイッチモジュールは相互連結され、電力の負荷への切り替えを容易にするよう構成されている。前記複数のスイッチモジュールはそれぞれ、少なくとも1つのトランジスタと少なくとも1つのダイオードとを備える。共に、前記スイッチモジュールは1200ボルトを遮断し、300アンペアを通電することが可能であり、20ミリジュール未満のスイッチングロスを有する。前記パワーモジュールが1200V/300A定格で20ミリジュール未満のスイッチングロスを有するように前記パワーモジュールにスイッチングモジュールを含めることによって、パワーモジュールの性能は、従来の電力モジュールと比較して著しく向上している。
【0005】
一実施形態によると、パワーモジュールは、内部チャンバを有するハウジングと、前記内部チャンバ内に取り付けられた少なくとも1つのパワー基板と、ゲートコネクタとを備える。前記パワー基板は、前記パワー基板の第1の面に、電力の負荷への切り替えを容易にするためのスイッチモジュールを備える。前記スイッチモジュールは少なくとも1つのトランジスタと、少なくとも1つのダイオードとを備える。前記ゲートコネクタは、前記パワー基板の前記第1スイッチングモジュールに第1導電トレースを備える信号経路を介して、前記少なくとも1つのトランジスタのゲートコンタクトに連結されている。前記ゲートコネクタを前記少なくとも1つのトランジスタのゲートに接続するために前記パワー基板の前記第1の面上に設けられた導電トレースを用いることによって、前記パワーモジュール内の干渉を減少させ、前記ゲートコネクタと前記少なくとも1つのトランジスタのゲートコンタクトとの間の接続の信頼性を高める。
【0006】
一実施形態によると、パワーモジュールは内部チャンバを有するハウジングと、1組の出力コンタクトと、複数のスイッチモジュールとを備える。前記複数のスイッチモジュールは、ハウジングの内部チャンバに取り付けられ、出力コンタクト間に連結された電源からの電力の負荷への切り替えを容易にするように相互連結されている。前記1組の出力コンタクトは、前記出力コンタクトのそれぞれの少なくとも150mmの領域が他方の前記出力コンタクトから1.5mm未満に位置するよう配置されている。それぞれの前記出力コンタクトに、他方の出力コンタクトから1.5mm未満である、少なくとも150mmの領域を設けることによって、出力コンタクト間の漏れインダクタンスを減少させ、それによってパワーモジュールの性能が向上する。
【0007】
当業者は、以下の添付の図に関連する好ましい実施形態の詳細な説明を読んだ後、本開示の範囲を理解し、かつ本開示の付加的な局面を実現するであろう。 本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成している添付の図は、本開示のいくつかの局面を説明し、明細書と共に本開示の原理を説明する役割を果たしている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一実施形態によるパワーモジュールの詳細を示す概略図である。
図2図2は、図1に示されたパワーモジュールによって生成される様々な信号を示すグラフである。
図3図3は、図1に示されたパワーモジュールにおけるスイッチングモジュールの詳細を示す概略図である。
図4図4は、図1に示された本開示の一実施形態によるパワーモジュールの詳細を示すブロック図である。
図5図5は、図1に示された本開示の一実施形態によるパワーモジュールの詳細を示す平面図である。
図6図6は、図1に示された本開示の一実施形態によるパワーモジュールの更なる詳細を示す平面図である。
図7図7は、図1に示された本開示の一実施形態によるパワーモジュールの外側のハウジングを示す平面図である。
図8図8は、図1に示された本開示の一実施形態によるパワーモジュールの外側のハウジングの詳細を示す平面図である。
図9図9は、図4に示された本開示の一実施形態によるパワーモジュールにおけるパワー基板の詳細を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[詳細な説明]
以下の実施形態は、当業者が本実施形態を実行するために必要な情報を提示しており、また、本実施形態を実行する際のベストモードを説明している。添付の図を考慮して以下の説明を読むことによって、当業者は本開示の概念を理解し、本明細書では特に示されていないこれらの概念の応用を認識するであろう。尚、これらの概念および応用は、本開示および添付の請求項の範囲内であることを理解されたい。
【0010】
第1、第2等の用語が本明細書中で様々な要素を説明するために用いられているかもしれないが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことが理解されるであろう。これらの用語は、単にある要素を別の要素と区別するために用いられる。例えば、第1の要素は第2の要素と呼ばれてもよく、同様に、第2の要素は本開示の範囲を逸脱することなく、第1の要素と呼ばれてもよい。本明細書中で用いられるように、「および/あるいは」という用語は、1つあるいは複数の関連する列挙された項目の任意の、および全ての組み合わせを含んでいる。
【0011】
層、領域、あるいは基板等の要素が、別の要素「の上に」ある、あるいは別の要素の「の上へ」延出していると言われている場合には、別の要素の上に直接あっても、あるいは別の要素の上に直接延出していてもよく、あるいは介在する要素が存在していてもよいと理解される。同様に、層、領域、あるいは基板等の要素が、別の要素「の上方に」ある、あるいは別の要素の「の上方を覆うように」延出していると言われている場合には、別の要素の上方に直接あっても、あるいは別の要素の上方を直接覆うように延出していてもよく、あるいは介在する要素が存在していてもよいと理解される。対照的に、ある要素が他の要素の「上方に直接」ある、あるいは別の要素の「上方に直接」延出しているといわれる場合は、介在する要素は存在しない。ある要素が別の要素に「接続されている」あるいは「連結されている」といわれている場合には、別の要素に直接接続あるいは連結されていてもよく、あるいは介在する要素が存在してもよいと理解される。対照的に、ある要素が別の要素に「直接接続されている」あるいは「直接連結されている」といわれる場合は、介在する要素は存在しない。
【0012】
「よりも下に」あるいは「よりも上に」あるいは「上側」あるいは「下側」あるいは「水平」あるいは「垂直」などの相対的な語が、ある要素、層、あるいは領域と別の要素、層、あるいは領域との関係を図に示すように説明するために、本明細書中で用いられているかもしれない。これらの用語および上述の用語は、図に示された方向に加えて、デバイスの異なる向きを含むことを意図されていることが理解される。
【0013】
本明細書中で用いられる用語は、特定の実施形態のみを説明するためであるが、本開示を限定するものではない。本明細書中で用いられているように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈でそうではないことを明確に示さない限り、複数も同様に含むことが意図される。「備える」、「備えている」、「含む」および/あるいは「含んでいる」という語が本明細書中で用いられているときは、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/あるいは構成要素が存在することを特定しているが、その存在あるいは1つあるいは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/あるいはこれらのグループの追加を排除していないと理解される。
【0014】
定義されていない限り、本明細書中で用いられている全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本開示が属する技術において通常の技術を有する者に共通して理解される意味と同様の意味を有する。本明細書中で用いられている用語は、本明細書および関連技術の文脈において一貫した意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書中で明確に定義されていない限り、理想化された、あるいは過度に形式的な観念で解釈されないということが更に理解される。
【0015】
図1は本開示の一実施形態による例示的なパワーモジュール10を示している。パワーモジュール10は、2つのスイッチモジュールSM1およびSM2を備えており、該スイッチモジュールSM1およびSM2は、電力を電源(DC+/DC-)から負荷14へと制御された様態で供給するよう、制御システム12によって制御される。当該技術において通常の技術を有する者には明らかなように、当該スイッチモジュールSM1およびSM2はハーフブリッジを形成しており、その詳細は以下で説明される。当該スイッチモジュールSM1およびSM2はそれぞれ、第1のダイオードと逆並列の少なくとも第1トランジスタを備える。具体的には、第1のスイッチモジュールSM1は、第1ダイオードD1と逆並列の第1トランジスタQ1を備え、第2のスイッチモジュールSM2は、第2ダイオードD2と逆並列の第2トランジスタQ2を備える。一実施形態において、第1トランジスタQ1および第2トランジスタQ2は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)である。しかしながら、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、電界効果トランジスタ(FET)、接合電界効果トランジスタ(JFET)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)等の、任意の適切なスイッチングデバイスが本開示の原理を逸脱することなく、スイッチングモジュールSM1およびSM2において用いられてもよいということは、当該技術において通常の技術を有する者には明らかであろう。第1ダイオードD1および第2ダイオードD2は、ショットキーダイオード、とりわけ接合障壁ショットキーダイオードであってもよい。また、例えばP-NダイオードおよびPiNダイオードの任意の適切なダイオードデバイスが、本開示の原理を逸脱することなく、スイッチングモジュールSM1およびSM2において用いられてもよいということは、当該技術において通常の技術を有する者には明らかであろう。一実施形態において、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2は省略されており、その機能性は第1トランジスタQ1および第2トランジスタQ2の内部ボディダイオードによってそれぞれ置き換えられている。第1トランジスタQ1および第2トランジスタQ2の内部ボディダイオードを、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2の代わりに用いることによって、パワーモジュール10におけるスペースおよびコストを節約してもよい。
【0016】
第1トランジスタQ1のゲートコンタクトGおよび第1トランジスタQ1のソースコンタクトSは、制御システム12に連結されている。同様に、第2トランジスタQ2のゲートコンタクトGおよびソースコンタクトSも制御システム12に連結されている。特に、ゲートコンタクトGから第1トランジスタQ1および第2トランジスタQ2、制御システム12への接続は、それぞれ比較的低電力のゲートコネクタG1およびG2を介して成されていてもよい。同様に、第1トランジスタQ1および第2トランジスタQ2のソースコンタクトSから制御システム12への接続は、第1トランジスタQ1あるいは第2トランジスタQ1の1つあるいは複数の動作パラメータを測定するために用いられる、低電力の折り返し接続S1およびS2を介して成されていてもよい。第1トランジスタQ1のドレインコンタクトDは、正極電源端子DC+に連結されている。第2トランジスタQ2のドレインコンタクトDは、出力端子OUTに連結されている。第1トランジスタQ1のソースコンタクトSも出力端子OUTに連結されている。第2トランジスタQ2のソースコンタクトSは、負極電源端子DC-に連結されている。最後に、負荷14は出力端子OUTと負極DC電源端子DC-との間に連結されている。
【0017】
第1トランジスタQ1、第1ダイオードD1、第2トランジスタQ2、および第2ダイオードD2は、それぞれ多数キャリアデバイスであってもよい。多数キャリアデバイスは、概して、MOSFET、HEMT、JFET等のFETを備えるが、サイリスタ、バイポーラトランジスタ、および絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)は備えていない。従って、パワーモジュール10は、より高い切り替え速度で動作可能で、かつバイポーラデバイスを用いる従来のパワーモジュールと比較して、より低いスイッチングロスを被るかもしれない。一実施形態において、第1トランジスタQ1、第1ダイオードD1、第2トランジスタQ2、および第2ダイオードD2は、ワイドバンドギャップデバイスである。本開示では、ワイドバンドギャップデバイスは3.0エレクトロンボルト(eV)以上のバンドギャップを有する半導体デバイスである。例えば、第1トランジスタQ1、第1ダイオードD1、第2トランジスタQ2、および第2ダイオードD2は、炭化ケイ素(SiC)あるいは窒素ガリウム(GaN)デバイスであってもよい。参考のため、Siは約1.1eVのバンドギャップを有するが、SiCは約3.3eVのバンドギャップを有する。上述のように、第1トランジスタQ1、第1ダイオードD1、第2トランジスタQ2、および第2ダイオードD2にSiCを使用することによって、従来のシリコン(Si)IGBTベースのパワーモジュールと比較して、それぞれのデバイスのスイッチング時間が著しく短縮し、更により低いスイッチングロスを被る。例えば、パワーモジュール10の定格が1200Vおよび300Aの場合、パワーモジュール10は、様々な実施形態において-40C~150Cの間での作動時に、25ミリジュール(mJ)未満、20mJ未満、更には15mJ未満のスイッチングロスを保持していてもよく、オン状態の電圧降下も低い。当該技術において通常の技術を有する者には明らかであるように、パワーモジュール10のスイッチングロスは、概して1mJを下回らない。追加の実施形態において、第1トランジスタQ1、第1ダイオードD1、第2トランジスタQ2、および第2ダイオードD2は、多数キャリアデバイスおよびワイドバンドギャップデバイスの両方である。
【0018】
動作中、制御システム12は、第1スイッチングモジュールSM1および第2スイッチングモジュールSM2を相補的に作動させ、第1スイッチングモジュールSM1が通電しているとき、第2スイッチングモジュールSM2が遮断され、またその逆も同様となるようにしている。図2には、第1トランジスタQ1のゲートコンタクトGにおける電圧、第2トランジスタQ2のゲートコンタクトGにおける電圧、出力端子OUTにおける電圧、およびパワーモジュール10のスイッチング周期の間に負荷14を通る電流がグラフに示されている。第1の時間T1の間、第1スイッチングモジュールSM1は通電しているが、第2スイッチングモジュールSM2は遮断している。従って、出力端子OUTは正極電源端子DC+に接続されており、それによって正の電源電圧を負荷14に供給し、正極電源端子DC+から第1トランジスタQ1を介して負荷14へと電流が流れる。概して、負荷14は誘導負荷であり、それにより第1スイッチングモジュールSM1が通電している間に負荷14を流れる電流が徐々に上昇する。
【0019】
第2の時間T2の間、第1スイッチングモジュールSM1は遮断モードに切り替えられる。更に、第2スイッチングモジュールSM2は遮断モードのままである。この時間の間、第1スイッチングモジュールSM1および第2スイッチングモジュールSM2のそれぞれの内部容量によって、電流は出力端子OUTから負荷14へと流れ続ける。具体的には、負荷14を通る電流の約半分が、スイッチングモジュールSM1およびSM2のそれぞれの内部容量によって供給される。従って出力端子OUTにおける電圧は、所定の割合で下方に向きを変え、負荷14を通る電流は徐々に減少する。
【0020】
第3の時間T3の間、第2スイッチングモジュールSM2が通電モードに切り替えられると、出力端子OUTは負極電源端子DC-に連結されるが、実施形態によってはグランドであってもよい。従って、電流は第2トランジスタQ2を通り、出力端子OUTを介して負荷14に流れ、電流が増々負になる。
【0021】
第4の時間T4の間、第2スイッチングモジュールSW2は遮断モードに切り替えられる。更に、第1スイッチングモジュールSM1は遮断のままである。この間、第1スイッチングモジュールSM1および第2スイッチングモジュールSM2のそれぞれの内部容量によって、負の電流が出力端子OUTから負荷へ流れ続ける。具体的には、負荷14を通る電流の約半分が、スイッチングモジュールSM1およびSM2のそれぞれの内部容量によって供給される。従って、出力端子OUTにおける電圧は、グランドから正極電源端子DC+において供給された正の電源電圧へと向きを変え、負荷14を通る電流は増々正の電気となる。最後に、第5の時間T5の間、第1スイッチングモジュールSM1が通電モードになり、第2スイッチングモジュールSM2が遮断モードのままとなるようにスイッチング周期が新たに始まる。
【0022】
図3は、本開示の一実施形態による第1スイッチングモジュールSM1の詳細を示している。第2スイッチングモジュールSM2は、第1スイッチングモジュールSM2と同様に構成されていてもよいが、簡略化のため図示しない。図3に図示のように、第1スイッチングモジュールSM1の第1トランジスタQ1および第1ダイオードD1は、並列に連結された複数のトランジスタQ1および複数の逆並列ダイオードD1を備えていてもよい。具体的には、複数のトランジスタQ1のそれぞれのドレインコンタクトDは、互いに連結されていてもよく、トランジスタQ1のそれぞれのソースコンタクトSは共に連結されていてもよく、トランジスタQ1それぞれのゲートコンタクトGはゲート抵抗Rを介してそれぞれ互いに連結されていてもよい。トランジスタQ1はそれぞれ、ソースコンタクトSとドレインコンタクトDとの間に連結された逆並列ダイオードD1を備えている。6つのトランジスタQ1が6つの逆並列ダイオードD1と並列に連結されて示されているが、本開示の原理を逸脱することなく、任意の数のトランジスタおよび逆並列ダイオードが用いられてもよい。
【0023】
複数の並列に連結されたトランジスタQ1および複数の逆並列ダイオードD1を備えることによって、第1スイッチングモジュールSM1は、さもなければ不可能であった、より大容量の電力を処理することが可能になる。例えば、一実施形態においてトランジスタQ1がそれぞれ1.2kVを遮断し、50Aを通電することによって、第1スイッチングモジュールSM1が300Aを通電することが可能となる。その他の実施形態において、トランジスタQ1はそれぞれ、1.2kVを遮断し、40Aを通電するようにしてもよく、それによって第1スイッチングモジュールSM1が240Aを通電することが可能になる。更に別の実施形態において、トランジスタQ1がそれぞれ1.2kVを遮断し、20Aを通電するようにしてもよく、それによって第1スイッチングモジュールSM1が120Aを通電することが可能となる。
【0024】
ゲート抵抗Rは、第1スイッチングモジュールSM1が比較的高い遷移速度(例えば、20V/nsより大きい)で駆動されるときに第1スイッチングモジュールSM1において生じ得る、不要な振動を低減させるために設けられていてもよい。ゲート抵抗Rの抵抗は、トランジスタQ11~6のそれぞれの定格電流、従って第1スイッチングモジュールSM1全体的な定格電流に応じて変化してもよい。第1スイッチングモジュールSM1が120Aの定格電流を有する一実施形態において、ゲート抵抗Rはそれぞれ約1Ω~15Ωの間の抵抗を有する。第1スイッチングモジュールSM1が240Aの定格電流を有する付加的な実施形態において、ゲート抵抗Rはそれぞれ約1Ω~15Ωまでの間の抵抗を有する。第1スイッチングモジュールSM1が300Aの定格電流を有する、更に別の実施形態において、ゲート抵抗はそれぞれ約15Ω~20Ωの間の抵抗を有する。
【0025】
図4は、本開示の一実施形態によるパワーモジュール10の詳細を示している。図4に図示のように、パワーモジュール10は、1つあるいは複数のパワー基板20を保持する内部チャンバ18が設けられたハウジング16を備える。具体的には、ハウジング16の内部チャンバ18は、第1パワー基板20A、第2パワー基板20B、第3パワー基板20C、および第4パワー基板20Dを保持する。ハウジング16の内部チャンバ18は、本開示の原理を逸脱することなく、任意の数のパワー基板20を保持可能であるということは、当該技術において通常の技術を有する者には明らかであろう。第1スイッチングモジュールSM1および第2スイッチングモジュールSM2の主要な構成要素を表す複数のトランジスタQ、複数のダイオードD、および複数のレジスタRを備えるそれぞれのパワー基板20が示されている。一実施形態において、第1スイッチングモジュールSM1は、第1パワー基板20Aおよび第2パワー基板20Bによって提供され、第2スイッチングモジュールSM2は、第3パワー基板20Cおよび第4パワー基板20Dによってそれぞれ提供される。パワー基板20のそれぞれの構成要素間に必要な相互連結は、パワー基板20の表面の金属トレース(図示なし)によって提供されてもよい。更に、異なるパワー基板20を相互連結したり、パワー基板20を1つあるいは複数の外部コネクタ(図示なし)に接続するために、ワイヤボンド(図示なし)が備えられていてもよい。パワー基板20は、ハウジング16に固定された取り付け構造22に取り付けられてもよい。一実施形態において、該取り付け構造22は、第1スイッチングモジュールSM1および第2スイッチングモジュールSM2によって発生した熱を放散するようにも機能する、平面のヒートシンクである。
【0026】
上述のように、複数のトランジスタQおよびダイオードDは多数キャリアデバイスであってもよく、それによってトランジスタQおよびダイオードDそれぞれに関連するスイッチング時間およびロスを減少させる。従って、パワーモジュール10は従来のパワーモジュールよりも高い周波数(少なくとも50kHz)で作動し、より小さいスイッチングロスを被るようにしてもよい。更に、トランジスタQおよびダイオードDは、例えばSiCデバイスのような、ワイドバンドギャップデバイスであってもよい。上述のように、SiCをトランジスタQおよびダイオードDに用いることによって、トランジスタQおよびダイオードDのスイッチング時間およびスイッチングロスが著しく減少し、それによってパワーモジュール10の性能が向上する。
【0027】
図5は、本開示の一実施形態による例示的な取り付け構造22およびパワー基板20の詳細を示している。図5に図示のように、第1パワー基板20A、第2パワー基板20B、第3パワー基板20C、および第4パワー基板20Dは、取り付け構造22に設けられている。第1パワー基板20Aは、第1スイッチングモジュールSM1の6つのトランジスタのうち3つのトランジスタQ11~3、3つのゲート抵抗R、および6つの逆並列ダイオードうち3つの逆並列ダイオードD11~3を備えている。第2パワー基板20Bは、第1スイッチングモジュールSM1の残りのトランジスタQ14~6、ゲート抵抗R、および逆並列ダイオードD14~6を備えている。同様に、第3パワー基板20Cは、第2スイッチングモジュールSM2の6つのトランジスタのうち3つのトランジスタQ21~3、3つのゲート抵抗R、および6つの逆並列ダイオードうち3つの逆並列ダイオードD21~3を備えている。第4パワー基板20Dは第2スイッチングモジュールSM2の残りのトランジスタQ24~6、ゲート抵抗R、および逆並列ダイオードD24~6を備えている。太く、濃い線はパワーモジュール10内の様々な構成要素間、およびパワーモジュール10の様々な構成要素と1つあるいは複数のアウトプット24との間のワイヤボンドを示す。パワーモジュール10のアウトプット24は、上述の第1ゲートコネクタG1、第2ゲートコネクタG2、第1ソースリターンコネクタS1、および第2ソースリターンコネクタS2を備えている。パワー基板20上の構成要素間の他の相互連結は、金属トレースによって提供される。特に、ゲートバス26がパワー基板20上に設けられ、第2スイッチングモジュールSM2におけるトランジスタQ21~6のゲートコンタクトGおよびパワーモジュール10のアウトプット24との間に延出している。具体的には、ゲートバス26は、第2スイッチングモジュールSM2内のトランジスタQ21~6のゲートコンタクトGと第2ゲートコネクタG2との間に延出しており、第2スイッチングモジュールSM2内のトランジスタQ21~6のソースコンタクトSおよび第2ソースリターンコネクタS2から低電力パスを更に提供してもよい。ゲートバス26は、それぞれのパワー基板20上の金属トレースであり、特に従来のパワーモジュールにおいて用いられる「フライング」ゲート接続と比較すると、パワーモジュール10における干渉を減少させ、第2スイッチングモジュールSM2内のトランジスタQ21~6のゲートコンタクトGとパワーモジュール10のアウトプット24との接続の信頼性が向上する。図示のように、取り付け構造22は、第1スイッチングモジュールSM1および第2スイッチングモジュールSM2によって発生した熱を放散する役割を果たす、ヒートシンクの全部あるいは一部を形成していてもよい。
【0028】
一実施形態において、第2スイッチングモジュールにおけるトランジスタQ21~6のゲートコンタクトGとパワーモジュール10のアウトプット24とを接続するため、ゲートバス26を1つあるいは複数の同軸ケーブルに置き換えてもよい。アウトプットをトランジスタQ21~6のゲートコンタクトGに接続するために同軸ケーブルを用いることによって、その他の解決方法と比較して向上した絶縁提供することでき、それによってパワーモジュール10の性能が向上する。更に、スイッチングモジュールSM1および第2スイッチングモジュールSM2両方のゲートコンタクトGのアウトプット24は、パワーモジュール10のハウジング16と同じ側に設けられているが、その他の実施形態では、これらはハウジング16の反対側に設けられてもよい。第1スイッチングモジュールSM1および第2スイッチングモジュールSM2のゲートコンタクトGのアウトプット24をハウジング16の反対側に設けることによって、第2スイッチングモジュールSM2のそれぞれのゲートコンタクトGへのより短い接続ルートが設けられてもよく、それによって干渉を減少させ、パワーモジュール10の耐久性を改善してもよい。更に、ハウジング16の反対側に第1スイッチングモジュールSM1および第2スイッチングモジュールSM2のゲートコンタクトGのアウトプット24を設けることによって、ゲートコンタクトG間のより短い接続パスとして、第2スイッチングモジュールSM2におけるトランジスタQ21~6のそれぞれのゲート抵抗RGの必要な抵抗を減少させ、アウトプット24がトランジスタQ21~6によって確認される振動の量を減少させる。
【0029】
図6は、本開示の一実施形態によるハウジング16、出力端子OUT、正極電源端子DC+、および負極電源端子DC-の更なる詳細を示している。図6に図示のように、ハウジング16は実質的に矩形で、パワーモジュール10をプラットフォームに取り付けるために用いられる取り付け穴M1~M4のための切欠きを備える。更に、正極電源端子DC+、負極電源端子DC-、および出力端子OUTが示されている。当該技術において通常の技術を有する者には明らかなように、正極電源端子DC+および負極電源端子DC-の両端の浮遊インダクタンスは、特にパワーモジュール10の動作が高周波であるときに、パワーモジュール10の性能の低下を引き起こし得る。従って、端子間の漏れインダクタンスを緩和するために、正極電源端子DC+および負極電源端子DC-は互いに近接して、概して1.5mm未満離れて配置される。更に、対向する端子付近の領域を最大化するため、端子は幅広に、概して幅約33.5mmに作製されてもよい。概して、正極電源端子DC+および負極電源端子DC-は他方から1.5mm内で約150mm~200mmの領域を有するであろう。一実施形態において、正極電源端子DC+および負極電源端子DC-は他方から1.5mm内で約187.31mmの領域を有する。当該技術において通常の技術を有する者には明らかであるように、正極電源端子DC+の比較的大きな領域を負極電源端子DC-の大きな領域の近位に効果的に配置することによって生じる容量効果が、端子間の漏れインダクタンスを効果的に減少させ、それによってパワーモジュール10の性能が向上する。
【0030】
図7は、本開示の一実施形態によるハウジング16の更なる詳細を示している。図7に図示のように、ハウジング16はパワー基板20を収納し、正極電源端子DC+、負極電源端子DC-、出力端子OUT、およびそれぞれのパスの出力端子を提供して、第1スイッチングモジュールSM1および第2スイッチングモジュールSM2を制御システム12に接続する。特に、ハウジング16および様々な出力端子は業界標準であり、これによって数多くの既存のプラットフォームの当座の解決方法(ドロップインソリューション)としてパワーモジュール10を使用することが可能になる。加えて、沿面放電板28が正極電源端子DC+、負極電源端子DC-、および出力端子OUTのそれぞれの間に配置され、それぞれの端子間の沿面距離をおよそ50%増加させる。従って、パワーモジュール10は、短絡あるいはその他の損傷のリスクなしに、より高電圧の用途において用いられてもよい。
【0031】
図7に図示のように、1つあるいは複数の未使用の端子位置30が、ハウジング16内にあってもよい。未使用の端子位置30は、パワーモジュール10の1つあるいは複数の構成要素にケルビン接続を提供するために用いられても、あるいは様々な実施形態においてパワーモジュール10に備えられるNTC温度センサモジュールへの接続を提供するために用いられてもよい。
【0032】
図8は、本開示の一実施形態によるパワーモジュール10の切り欠き図を示している。特に、追加の沿面放電板32が、正極電源端子DC+と負極電源端子DC-との間に配置され、該沿面放電板32はそれぞれのノードを互いから絶縁し、従って高電圧における短絡から保護すると同時に、パワーモジュール10に上述のノードの間の漏れインダクタンスを減少させるという利点を有する。
【0033】
図9は、本開示の一実施形態による第1パワー基板20Aの詳細を示している。第2パワー基板20B、第3パワー基板20C、および第4パワー基板20Dは、第1パワー基板20Aと同様に構成されていてもよいが、簡略化のため図示していない。図9に図示のように、第1パワー基板20Aはベースプレート34上に形成されており、該ベースプレート34は銅であってもよい。ベースプレート34には様々な材料があり、これらの全ての材料がここで熟考されているということは、当該技術において通常の技術を有する者には明らかであろう。一実施形態において、ベースプレート34はアルミニウム炭化ケイ素(AlSiC)であり、当該ベースプレート34は銅よりもより軽く、1つあるいは複数の取り付けられた構成要素とのより良好なサーマルマッチングを提供し得る。ベースプレート34は、第1パワー基板20A、第2スイッチングモジュール20B、第3パワー基板20C、および第4パワー基板20Dが全てベースプレート34に形成されるように、それぞれのパワー基板20の間で共有されてもよい。直接接合銅(DBC)基板36はベースプレート34の上方に配置されてもよい。DBC基板36は、第1金属層38をベースプレート34の表面に、絶縁層40を第1金属層38の上方に、および第2金属層42を絶縁層40の上方の第1金属層38とは反対側に備えていてもよい。第1金属層38および第2金属層42は、例えば銅であってもよい。第1金属層38および第2金属層42には多数の適切な材料が存在し、全ての材料がここで熟考されているということは、当該技術において通常の技術を有する者には明らかであろう。絶縁層40は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)であってもよい。絶縁層40には、例えば酸化アルミニウム(Al)あるいは窒化ケイ素(Si)等の多数の適切な材料が存在し、全ての材料がここで熟考されているということは当該技術において通常の技術を有する者には明らかであろう。
【0034】
絶縁層40にAlNを用いることによって、従来のアルミナあるいは窒化ケイ素(SiN)層と比較すると、はるかに高い熱伝導性を提供し得る。SiCデバイスに関連する電気抵抗が比較的低く、AlNの熱抵抗が低いと、パワーモジュール10は従来の電力モジュールよりも高い電流を処理することが可能である。絶縁層40の厚さは、目標とする絶縁電圧に基づいて選択してもよい。SiC構成要素およびAlN絶縁層40を用いることによって提供される利点によって、パワーモジュール10は同一のサイズの従来のデバイスよりも大きな電圧を処理することが可能であり、および/あるいは従来のものよりもサイズを小さくしてもよい。
【0035】
当業者は、本開示の好ましい実施形態に対する改善および改良に気付くであろう。このような全ての改善および改良は、本明細書およびそれに続く請求項に開示された概念の範囲内であると考慮される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9