(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】トンネル内部状況検知装置およびこれを装備したトンネル並びにトンネル内部状況監視システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/103 20060101AFI20220112BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20220112BHJP
E21F 17/18 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
G08B17/103
G08B25/00 510M
E21F17/18
(21)【出願番号】P 2018024442
(22)【出願日】2018-02-14
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 英明
(72)【発明者】
【氏名】玉岡 弘行
(72)【発明者】
【氏名】鳥光 悟
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健吾
(72)【発明者】
【氏名】福地 稔栄
【審査官】白川 瑞樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第01/053851(WO,A1)
【文献】特開2003-177014(JP,A)
【文献】特開2017-072557(JP,A)
【文献】特開平07-309238(JP,A)
【文献】特開2012-103920(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0985816(KR,B1)
【文献】特開2001-045345(JP,A)
【文献】特開2000-233029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F1/00-17/18
G01D18/00-21/02
G01K1/00-19/00
G08B17/02-31/00
H01S3/00-3/02
3/04-3/0959
3/098-3/102
3/105-3/131
3/136-3/213
3/23-5/50
H04M3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの内部状態の画像情報を取得する画像情報取得部、および、該画像情報取得部で取得した画像情報から画像処理によりトンネルの内部状況を検知する検知部を有する装置本体部と、該装置本体部をトンネル内での路側帯に取り付ける装着部と、を備え、
前記画像情報取得部は、煙を含むトンネルの内部状態の画像情報としてトンネル内の大気状況とその中のオブジェクトの特徴を示すマッピング情報を取得可能なレーザレーダ装置であり、
前記検知部は、前記レーザレーダ装置から出力される、トンネル内のオブジェクトの特徴を示すマッピング情報に基づいて、トンネル内の大気状況とその中のオブジェクト全ての輪郭を描き出して火災の段階をとらえる、
ことを特徴するトンネル内部状況検知装置。
【請求項2】
前記装置本体部は、前記レーザレーダ装置を水平方向に180度の範囲で回頭する回頭機構を有する
請求項1に記載のトンネル内部状況検知装置。
【請求項3】
前記レーザレーダ装置は、レーザがアイセーフである
請求項1または2に記載のトンネル内部状況検知装置。
【請求項4】
前記レーザレーダ装置は、レーザの出力強度が、25W/m
2以下である
請求項1~3のいずれか一項に記載のトンネル内部状況検知装置。
【請求項5】
前記レーザレーダ装置は、レーザの波長が、1.3μm以上のアイセーフ帯である
請求項1~4のいずれか一項に記載のトンネル内部状況検知装置。
【請求項6】
前記トンネルは、路側帯を有する自動車用トンネルであり、
前記レーザレーダ装置は、レーザレーダの走査範囲が、前記路側帯側から最大高さが4.1m以上の範囲に設定されるとともに、前記レーザレーダ装置の設置高さが、1メートルよりも低い位置に設けられ、
さらに、前記レーザレーダ装置の設置箇所から自動車の車道までの距離をXmとし、前記レーザレーダ装置の設置箇所を車道の地上からYmと設置したとき、θ=tan
-1(4.1-Y/X)の角度とされている、
請求項1~5のいずれか一項に記載のトンネル内部状況検知装置。
【請求項7】
前記画像情報取得部として、赤外線に感度をもつカメラを含む画像取得手段を更に備える
請求項1~6のいずれか一項に記載のトンネル内部状況検知装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のトンネル内部状況検知装置を路側帯に装備することを特徴とするトンネル。
【請求項9】
前記トンネル内部状況検知装置を複数台備え、各トンネル内部状況検知装置は、トンネルの延設方向での所定間隔毎に設置されている
請求項8に記載のトンネル。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載のトンネル内部状況検知装置を用いてトンネルの内部状況をモニタリングすることを特徴とするトンネル内部状況監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの内部状況を監視する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルには、消火器、消火栓等の消火設備の他、炎を検知する火災検知器が装備される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、火災の初期状態では十分に炎が生じていないため、炎を検知する火災検知器は、火災を迅速に検知できずに火災検知が遅れるおそれがある。火災検知が遅れた場合、自動車トンネルであれば、トンネル内での自動車の運転手等の一般人が119番通報し、消防署が出動して消火活動を行うまでは消火器による消火活動となる。そのため、スプリンクラー等の自動消化設備等を含め、トンネル内での火災対策(早期発見、早期消火)には未だ検討の余地がある。
【0005】
これに対し、火災に伴う煙を検知すれば、炎を検知する場合に比べて火災をその初期状態で迅速に検知可能である。ここで、火災に伴う煙は、上方に向けて立ち昇ることから、この種の火災検知器をトンネル内に設置する際に、トンネルの天井に火災検知器を取り付けることが考えられる。しかしながら、トンネルの天井に火災検知器を取り付ける場合、振動等の外乱の影響により落下する可能性がある。また、その取付け工事や保守点検に時間と費用がかかるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、トンネル内への取付け工事が容易で保守点検性に優れるとともに、トンネル内での火災等の災害をその初期状態で迅速に検知し得るトンネル内部状況検知装置およびこれを装備したトンネル並びにトンネル内部状況監視システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るトンネル内部状況検知装置は、トンネルの内部状態の画像情報から画像処理により内部状況を検知する検知部と、該検知部をトンネル内での路側帯に取り付ける装着部と、を有することを特徴する。
【0008】
また、本発明の一態様に係るトンネルは、本発明の一態様に係るトンネル内部状況検知装置を路側帯に装備することを特徴とする。
また、本発明の一態様に係るトンネル内部状況監視システムは、本発明の一態様に係るトンネル内部状況検知装置を用いてトンネルの内部状況をモニタリングすることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るトンネル内部状況検知装置によれば、トンネルの内部状況を検知する検知部と、この検知部をトンネル内での路側帯に取り付ける装着部と、を有し、検知部により、トンネルの内部状態の画像情報から画像処理により内部状況を検知することにより煙の有無を把握できる。よって、トンネル内での火災をその初期状態で迅速に検知できる。
【0010】
さらに、装着部は、検知部をトンネル内での路側帯に取り付けるので、トンネル内にトンネル内部状況検知装置を設置する際に、トンネルの天井に火災検知器を取り付ける場合と比較して、振動等の外乱の影響により落下する可能性が低く、また、仮に落下するような場合でも低い位置にトンネル内部状況検知装置が設けられるため比較的に安全である。さらに、トンネル内部状況検知装置が低い位置に設けられるため、その取付け工事や保守点検に要する時間と費用を低減できる。
【0011】
そして、本発明の一態様に係るトンネルは、本発明の一態様に係るトンネル内部状況検知装置を路側帯に装備しており、また、本発明の一態様に係るトンネル内部状況監視システムは、本発明の一態様に係るトンネル内部状況検知装置を用いトンネルの内部状況をモニタリングする。したがって、本発明のいずれかの態様によれば、トンネル内への取付け工事が容易で保守点検性に優れるとともに、トンネル内での火災等の災害をその初期状態で迅速に検知できる。
【発明の効果】
【0012】
上述のように、本発明によれば、トンネル内への取付け工事が容易で保守点検性に優れるとともに、トンネル内での火災等の災害をその初期状態で迅速に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るトンネル内部状況監視システムを装備したトンネルの一実施形態を説明する模式図である。
【
図2】
図1のトンネルに装備されたトンネル内部状況監視システムの一実施形態を説明するブロック図である。
【
図3】トンネル内での路側帯に設けたトンネル内部状況検知装置の一実施形態を説明する模式図である。
【
図4】
図1のトンネル内部状況監視システムを用いて同図のトンネル内を監視する状態(車両走行状況や内壁状況)を説明する模式図である。
【
図5】
図1のトンネル内部状況監視システムを用いた災害検知動作(火災初期)を説明する模式図である。
【
図6】
図1のトンネル内部状況監視システムを用いた災害検知動作(火炎発生)を説明する模式図である。
【
図7】
図1のトンネル内部状況検知装置を用いて同図のトンネルを監視する災害検知予知動作(落下物感知)を説明する模式図である。
【
図8】
図1のトンネル内部状況検知装置を用いて同図のトンネルを監視する災害検知予知動作(人の立ち入り)を説明する模式図である。
【
図9】
図1のトンネル内部状況検知装置を用いて同図のトンネルを監視する検知動作(アイセーフティ監視)を説明する模式図である。
【
図10】従来の火災検知器が装備されたトンネルの一例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0015】
図1に示すように、本実施形態のトンネルTには、トンネル内部状況監視システム(以下、単に「監視システム」ともいう)Sが装備されている。トンネルTの適所には、不図示の避難所および避難所への誘導灯が設けられる。なお、本明細書での「トンネル」とは、両端が大気開放された延設方向に沿って比較的に長く水平ないしほぼ水平に設けられた地下または地中通路であって、自動車用トンネルに限らず、鉄道用トンネルを含む隧道をいう。
【0016】
本実施形態のトンネルTには、同図に示すように、複数のトンネル内部状況検知装置(以下、単に「検知装置」ともいう)10A、10B、10C・・・が路側帯Wに設置される。本実施形態では、各検知装置10A、10B、10C・・・は、トンネルTの延設方向での所定間隔D(例えばD=50m)毎にそれぞれ設置される。なお、各検知装置10A、10B、10C・・・の構成は同一なので、以下、特に区別しない場合は代表符号10として記載する。
【0017】
本実施形態の監視システムSは、少なくとも一台のトンネル内部状況検知装置10と、監視装置20と、を用いて構成される。本実施形態の例では、トンネルTから離れた遠隔地に、オペレータが駐在する監視室Zが設けられている。監視室Zには、監視装置20並びにディスプレイ等の表示部30およびキーボードやマウス等の操作部40を含む必要な機器が装備されている。
【0018】
図2に示すように、各検知装置10は、レーザレーダ装置1と、レーザレーダ装置1により取得されたマッピング情報に基づいた画像処理で煙等のオブジェクトの状況を検知する検知部4とを少なくとも有する。各検知装置10は、ケーブルCを介して監視装置20に接続されている。監視装置20は、各検知装置10から取得した画像情報から、トンネルTの内部状況の画像を画面に表示する表示部30を有する。なお、本実施形態の検知装置10は、単独で用いてもよいし、複数台を組み合わせて用いてもよい。複数台の協働により、水平方向および垂直方向のスキャンで煙の状況を3次元表示できる。
【0019】
より詳しくは、監視装置20は、コンピュータを含んで構成され、トンネルTの内部状況を監視するために必要なプログラムを実行する情報処理装置であり、
図2に示すように、通信部21と、制御部22とを有する。監視装置20は、必要な電力および信号を授受可能なケーブルCを介して各検知装置10A、10B、10C・・・に接続される。
【0020】
また、同図に示すように、各検知装置10は、中空直方体状をなす箱型の筐体6と、筐体6の外面の適所に付設された装着部7と、を有する。本実施形態の例では、装着部7は、筐体6の外側面に設けられている。なお、各検知装置10は同一の構成を有するので、同図では検知装置10Aを例に構成を示し、他の検知装置10B、10C・・・の図示および説明は省略する。
【0021】
各検知装置10は、筐体6の内部に、レーザレーダ(Lidar)装置1と、赤外線(IR)カメラ2と、を画像情報取得部として内蔵している。この例では、赤外線(カメラ2が、画像情報取得部のうちの画像取得手段に対応する。
なお、レーザレーダ装置1と赤外線カメラ2とは相互に同期しており、赤外線カメラ2は、パルスレーザの干渉を受けないように、レーザレーダ装置1がパルスレーザを投受光するタイミングを外して画像情報を取得するように電子シャッタが構成されている。同様に、各検知装置10も相互に同期しており、隣接する他の検知装置10との相互干渉が防止されている。
【0022】
本実施形態では、レーザレーダ装置1および赤外線カメラ2は、回頭機構3の上に載置された状態で筐体6内の上部の位置に併設されている。回頭機構3の下部には、通信部5を有する検知部4が設けられている。本実施形態の回頭機構3は、レーザレーダ装置1および赤外線カメラ2を水平方向に180度の範囲で回頭可能になっている。
【0023】
検知装置10は、
図3に正面図を示すように、装置本体部を構成する筐体6が、トンネルT内での路側帯Wの位置に装着部7によって取り付けられる。本実施形態の例では、路側帯Wの位置の周壁面に設けられた装着位置に装着されている。検知装置10は、装着状態において、レーザレーダ装置1の設置高さが、1メートル(4才の子供の平均身長)よりも低い位置になるように設けられる。4才の子供は、非常時の避難経路として路側帯を歩く可能性のある最年少の幼児を想定している。装着部7は、トンネルT内での路側帯Wに検知装置10を例えばボルトによって着脱可能に取り付けている。なお、本実施形態の例では、車両が右側走行の例を図示するが、勿論これに限定されず、車両が左側走行の場合であっても本発明を適用できる。
【0024】
検知装置10は、レーザレーダ装置1によって、トンネル内の走行レーンL側および車両Mの上方に向けてレーザレーダを照射するように設置される。本実施形態の検知装置10は、回頭機構3を駆動して、レーザレーダ装置1を水平方向に180゜の範囲で走査を行い、これによって、水平方向および垂直方向についてトンネル内の状況が連続して把握され、トンネル内部をくまなく監視可能になっている。
【0025】
レーザレーダ装置1は、煙等を含むトンネルTの内部状態の画像情報(マッピング情報)をライダー(Lidar)技術で取得可能に構成されている。すなわち、レーザレーダ装置1は、トンネル内部に向けて所定のパルスレーザを照射し、戻ってくる反射光と散乱光をコヒーレント検波し、受信信号の時間応答波形を記録して時間遅れに対応する距離毎に散乱強度を求めて座標の集合である「ポイントクラウド」を生成することにより、トンネル内部の状況のオブジェクトの特徴をマッピング情報として取得できる。
【0026】
レーザレーダ装置1の仕様は、例えば、最大測定範囲が50m、回頭機構3による水平スキャン角が180゜、角度分解能が0.5゜、スキャン速度が60回/sec等とされている。レーザレーダ技術は、広範囲に渡って遠距離のオブジェクトとなる物体の凹凸を認識できる。また、赤外線カメラ2は、高温の煙や炎を含むトンネルTの内部状態の画像情報を取得可能に構成されている。
【0027】
本実施形態のレーザレーダ装置1は、パルスレーザの発光部および受光部を有し、発光部から発射されたパルスレーザがトンネル内の対象に照射されるとともに、その反射光が受光部に検知情報として入力されるようになっている。ここで、本実施形態のレーザレーダ装置1は、パルスレーザがアイセーフティであり、レーザの出力強度が、25W/m2以下である。また、レーザの波長が、1.4μm以上のアイセーフ帯である。
【0028】
なお、「アイセーフティ」の定義としては、人の目に障害を与えないレーザの光強度であって、国際電気標準会議やアメリカ規格協会で設定されている安全基準を満たすものである。レーザ光に対する最大許容露光量は波長と動作条件に依存し、波長1.4~2.6μmの範囲内の赤外レーザは、パルス幅、繰り返し周波数等を変えても、他波長よりも人の目に障害を与えない高い許容量を示す。この帯域のレーザとしては、Er3+、Tm3+、Ho3+等をYAG、YLF、ガラスにドープした材料によって半導体レーザ励起で高効率、高出力化が可能である。また、コヒーレントなレーザ光を直接出力可能な半導体レーザも用いることができる。
【0029】
本実施形態では、レーザレーダ装置1は、垂直方向での所定の走査範囲にレーザレーダを照射して対象までの距離を測定する。ここで、
図3に示すように、本実施形態のレーザレーダの垂直方向の走査範囲は、路側帯側からの最大高さHが4.1m以上の範囲に設定されている。
つまり、レーザを出射する方向Rは、同図に示すように、レーザレーダ装置1の設置箇所から自動車の車道までの距離をXmとし、レーザレーダ装置1の設置箇所を地上からYmと設置したとき、θ=tan
-1(4.1-Y/X)の角度とする。この構成を採用することで、パルスレーザをアイセーフティに限定しない場合であっても、パルスレーザ光が運転者の眼球に損傷を与えるおそれを防止する上で好適である。
【0030】
図2に戻り、検知部4は、コンピュータを含んで構成され、監視装置20の管理下でトンネルTの内部状況を監視するために必要なプログラムを実行する情報処理装置であり、通信部5により監視装置20の通信部21との間で必要な通信が可能になっている。検知部4は、レーザレーダ装置1が取得した画像情報(マッピング情報)および赤外線カメラ2が取得した画像情報(内部状況情報)から画像処理により、炎や煙等を含むトンネル内部状況の異常の有無を検知可能に構成されている。
【0031】
本実施形態では、検知部4は、レーザレーダ装置1から出力される、トンネル内のオブジェクトの特徴を示すマッピング情報に基づいて、トンネル内の大気状況とその中のオブジェクト全ての輪郭を緻密に描き出すとともに、赤外線カメラ2が取得した画像情報(内部状況情報)をも加味して、オブジェクトの特徴点を画像処理することで、早期に火災の初期段階をとらえることができる処理プログラムを実行可能に構成されている。
また、検知部4は、レーザレーダ装置1がレーザレーダ技術により取得したマッピング情報に基づき、パルスレーザの投光から受光までの時間(パルスレーザの伝播時間)から対象までの距離情報を併せて取得する。
【0032】
監視装置20は、検知装置10から取得した画像情報等を通信した情報に基づいて、煙等の対象となるトンネル内部のオブジェクトまでの距離を測定し、オブジェクトの凹凸を2次元的な画像として表示部30に表示できる。対象までの距離情報は、トンネルT内での火災対策(早期発見、早期消火)を行う上で有益な情報として取得され、例えば、火災発生現場から最も近い消火栓の位置や避難所を設定したりする基礎情報とされる。監視装置20は、画像処理で得られた画像の特徴点に基づく形状、散乱強度に対応して設定された色合いや時間的な変化等から、所定の基準(動き、形状、色合い)で火災により発生する煙と判定することができる。
【0033】
更に、監視装置20は、検知装置10が赤外線カメラ2で取得した画像情報(内部状況情報)から、火炎発生点を検知して火炎情報(火炎検知信号)を出力するとともに、求めた火炎情報を画像処理し、マッピング情報を表示する画面に画像化された火炎情報を表示部30に重畳表示することができる。
【0034】
次に、トンネル内部状況監視システムSの動作および作用効果について説明する。
図4にシステム稼動時のイメージを示すように、監視システムSは、複数の検知装置10を備え、各検知装置10A、10B、10C・・・が、トンネルTの延設方向での所定間隔D(例えばD=50m)毎にそれぞれ設置されているので、車両Mの走行状況やトンネル内壁の状況等を含むトンネル内の随時の状況を監視することができる。なお、同図に示す符号RaおよびRzは、レーザレーダ装置1がパルスレーザを投受光して、水平方向および垂直方向のスキャンでトンネルTの内部状況を監視しているイメージを示している。
【0035】
そして、
図5に示すように、仮に、トンネルT内で車両Mから煙Kが発生すると、検知装置10の検知部4は、レーザレーダ装置1によって取得したマッピング情報から煙Kを検知し、その検知情報がケーブルCを介して監視システムSの監視装置20に送られる。監視装置20は、検知装置10から取得したマッピング情報を含む検知情報に基づいて、所定の画像処理により、トンネル内の状況とその中のオブジェクト全ての輪郭を緻密に描き出すことができる。また、煙Kを検知し、その検知情報を取得後、
図6に示すように、火炎が検出されていれば、赤外線カメラ2で検出された火炎が火炎情報として監視装置20に併せて送られる。
【0036】
特に、本実施形態によれば、検知装置10から監視室Z監視装置20に入力されたマッピング情報および検知情報は、監視装置20において画像処理を含む解析処理により仔細に解析され、解析結果の情報が、監視装置20の記憶装置に記憶される。そして、監視装置20は、記憶装置に記憶された解析結果の情報を表示部30の表示画面に表示し、オペレータが監視室Zで随時のトンネル内部状況をモニタリングすることができる。
【0037】
これにより、本実施形態の監視システムSによれば、煙Kを検知した早期の時点にて火災の初期段階を迅速にとらえ、適切な対処をする時間を創出できる。なお、オペレータは、操作部40から所定の入力を行うことにより、各検知装置10A、10B、10Cの監視エリアについて、表示部30の表示画面に監視状態を選択して表示することができる。
【0038】
ここで、
図10に従来例を示すように、従来の火災検知器100A、100B、100Cは、検知器100A、100B、100C内にセンサが内臓され、検知器100A、100B、100C内に導入された対象の温度や煙による光の散乱の程度などで車両Mからの火災Fの有無を感知するので、トンネル内での火災をその初期状態で迅速に検知する上では検討の余地があり、また、火災以外のトンネル内災害をその初期状態で迅速に検知することができないという問題がある。
【0039】
これに対し、本実施形態の監視システムSによれば、検知装置10がレーザレーダ(Lidar)技術で取得したマッピング情報に基づき、画像処理により煙や炎等を含むトンネルTの内部状態の画像情報からトンネル内部状況を随時に検知して監視できるので、炎や煙等、トンネル内部状況の異常の有無を迅速に把握できる。
【0040】
そして、本実施形態の監視システムSによれば、各検知装置10は、
図3に示したように、トンネルT内で、車Mの走行する範囲の真上以外の路側帯Wに設置できるので、火災検知器としての各検知装置10A、10B、10Cを低位置に配置することができ、走行中の車両Mへの検知装置10の落下の危険性を回避できる。また、低位置に各検知装置10を設置できるため、検知装置10の設置工事やメンテナンスにかかる時間とコストを大幅に下げることができる。
【0041】
特に、本実施形態の監視システムSによれば、表示部30のモニタ表示は、火災、内壁の落下、内壁からの水漏れ、内壁のひび割れ、交通事故、交通量などの災害に関する情報の表示によってなされる。すなわち、監視装置20は、レーザレーダ装置1から照射されたパルスレーザの反射レーザから取得したマッピング情報に基づいた画像処理により、対象物の凹凸を2次元的な画像を表示部30にあらわし、煙および火炎等の火災に係る状態やトンネルの内壁落下や劣化等の内壁状態、交通事故の状況などがそれぞれ監視して画像として記憶するとともに表示することができる。
【0042】
また、本実施形態の検知装置10によれば、赤外線カメラ2が併設されているので、赤外線カメラ2で取得した煙の温度の情報や火炎の情報についても画像処理されて監視装置20に画像情報として記憶されるとともに、表示部30のモニタに重畳表示される。これにより、オペレータは、表示部30のモニタ画面上に表示される、火災の有無、場所、規模等の多くの画面表示から、この画面表示に基づいて、オペレータによって(あるいは自動的に)、トンネル内での火災対策(早期発見、早期消火)に迅速に且つ正確な判断のもとに対応できる。
【0043】
本実施形態によれば、レーザレーダ技術によって、炎や煙等を含むトンネル内部状況の異常の有無を迅速に検知し、レーザレーダ装置1の出力データが表示部30のモニタに画像化され、検知された火災に伴って発生する煙を、表示部30のモニタ画面上にてオペレータが監視できるので、トンネル内での迅速な火災対策(早期発見、早期消火)に寄与する。さらに、赤外線カメラ2によって高温の煙や火炎を表示部30のモニタ画面上に重畳表示できるので、より細密な火災表示画面を表示でき、トンネル内での火災対策(早期発見、早期消火)に寄与する。
【0044】
つまり、本実施形態によれば、複数の検知装置10A、10B、10Cを備えるトンネル内部状況監視システムSにより、レーザレーダ装置1による煙検知と赤外線カメラ2による火炎検知との協働によりトンネルの内部状況をきめ細かく監視できる。また、本実施形態の検知装置10を備える監視システムSでは、煙、炎以外にオブジェクトとしてトンネル内壁も同時にモニタリングできるため、トンネルの老朽化具合も評価することができる。
【0045】
例えば、本実施形態の検知装置10を備える監視システムSでは、煙、炎以外にトンネル内の自動車もオブジェクトとして同時にモニタリングできるため、
図6に示す例であれば、煙や火炎の状況の他、事故の状況(例えば車両の姿勢や位置等)も迅速に把握できる。
【0046】
また、例えば本実施形態の検知装置10を備える監視システムSでは、
図7に示す例のように、走行レーンL上の落下物等もオブジェクトとして迅速に把握できるため、落下物の警告表示を行うことにより、衝突事故を未然に防ぐこともできる。
また、例えば本実施形態の検知装置10を備える監視システムSでは、
図8に示す例のように、走行レーンL上や路側帯Wを歩行する人Pなどもオブジェクトとして迅速に把握できる。そのため、人Pと災害位置との関係や避難すべき方向の判断等を行うことにも寄与するため、人的被害を防止または抑制する上でも優れている。特に、本実施形態の検知装置10によれば、レーザレーダ装置1および赤外線カメラ2を水平方向に180度の範囲で回頭する回頭機構3を有するので、トンネルTの内部状況をきめ細かく監視する上で好適である。
【0047】
また、本実施形態の検知装置10によれば、レーザレーダ装置1は、レーザレーダの垂直方向での走査範囲(高さ)が、路側帯とトラック最大高さ(4.1m)の間の範囲に設定できるので、この設定を採用すれば、
図9に示すように、レーザレーダ装置1からのパルスレーザ光が運転手の目線にかからない範囲に限定されるため、アイセーフとする上で好適である。アイセーフとは人間の眼球を損傷させないレーザ光である。同図の例では、走査範囲以外の部分を網掛けのイメージで示している。なお、トンネルTの内部状況をきめ細かく監視する上では、この設定を解除して、アイセーフ帯のレーザレーダにより走査範囲を広くすることができる。
火災初期の煙監視についての監視時であれば、道路管理者が道路の構造の保全及び交通の危険の防止上支障がないと認めて指定した道路(高さ指定道路)を通行する車両にあっては、例えばトラック等の車両の高さ上限について4.1メートルに設定されていることから、レーザレーダの走査範囲(高さ)をこの高さ以上とすることが好ましい。
【0048】
つまり、レーザレーダ装置1は、パルスレーザ光の出力強度が、25W/m2以下である。この出力強度は、どの波長帯であっても人間の眼球を損傷させない強度である。レーザ光の波長が、1.3μm以上では、25W/m2以上であっても、万一人間の目線にかかった場合であっても、レーザレーダ装置1から出力されるパルスレーザは人間の眼球を損傷させない。本実施形態のように、レーザ光の波長帯は、空間分解能、感度とアイセーフを両立できる1.3μm以上を用いることが望ましい。
【0049】
また、本実施形態によれば、レーザレーダ装置1の設置高さは、歩行する可能性のある4才の幼児の平均身長(1メートル)よりも低い位置に設けられるので、検知装置10が万一落下しても幼児の頭にぶつからないため、安全面において優れている。
【0050】
なお、本発明に係るトンネル内部状況検知装置およびこれを備えるトンネル並びにトンネル内部状況監視システムは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
【0051】
例えば、本実施形態では、各検知装置10が、異常を判断する監視機能を有する例を示したが、これに限らず、検知装置10は、トンネルの内部状況を検知するにとどめ、検知した情報を監視装置20に送信し、監視装置20が異常判断を含めて監視するように構成してもよい。監視システムSにおいてこのような判定部(プログラム)を任意にシステム内で振り分けて設けることができるし、相互に通信によって必要な情報をやりとりしてもよい。
【0052】
また、例えば本実施形態では、災害の一例として車両からの火災を例にして説明したが、トンネルTの内部における監視対象となる災害は、火災や上述した例に限定されず、画像処理によって監視可能であれば、種々の災害を対象とすることができるのは勿論である。
また、例えばオペレータは、あらかじめ、煙検出範囲の面積を初期設定で監視装置20に記憶させ、煙検出面積が初期設定を超えて増加した場合に検知装置10ないし監視装置20にて異常を検知する構成とすることができる。
また、例えば、画像情報取得部が、赤外線に感度をもつカメラを含む画像取得手段として、赤外線カメラ2を備える例を示したが、これに限らず、赤外線カメラ2に替えて電荷結合素子(CCD)カメラを設けることができる。また、レーザレーダ装置1以外には画像取得手段を設けない構成とすることができる。
【0053】
また、例えば検知装置10は、赤外線カメラ2は常時稼働させずに、通常時はレーザレーダ装置1による監視を行い、検知部4が異常か否かの判定を行い、トンネルT内での煙等の異常と推定される位置を特定した後に、赤外線カメラ2による監視を併せて行い、検出物のトンネル内での位置から火炎発生表示を重畳して表示するように構成してもよい。
また、例えば検知装置10は、煙分布の変化を判断し、対象の経時的変化の座標から発生した煙の位置および挙動を捉え、煙の流れを予測して画面上に表示するように構成してもよい。また、例えば検知装置10は、車両火災発生に伴って、車両の移動に伴って煙がトンネル内を順次に覆っていく挙動(煙の流れの把握)を表示させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 レーザレーダ装置(画像情報取得部)
2 赤外線カメラ(画像情報取得部:画像取得手段)
3 回頭機構
4 検知部
5 通信部
6 筐体
7 装着部
10(10A、10B、10C・・・) トンネル内部状況検知装置
20 監視装置
21 通信部
22 制御部
30 表示部
40 操作部
C ケーブル
T トンネル
L 走行レーン
W 路側帯
U 天井
M 車両
S トンネル内部状況監視システム
Z 監視室