(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】ポリメチン化合物
(51)【国際特許分類】
C09B 23/10 20060101AFI20220112BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20220112BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
C09B23/10 CSP
C09B67/20 F
G02B5/22
(21)【出願番号】P 2018537284
(86)(22)【出願日】2017-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2017030844
(87)【国際公開番号】W WO2018043451
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2016173037
(32)【優先日】2016-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】岡田 光裕
【審査官】▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-349833(JP,A)
【文献】特開平06-102624(JP,A)
【文献】特開平06-138575(JP,A)
【文献】特開昭63-034539(JP,A)
【文献】特開昭63-034538(JP,A)
【文献】特開昭63-034537(JP,A)
【文献】特開昭55-161232(JP,A)
【文献】特開平03-127053(JP,A)
【文献】特開平06-175553(JP,A)
【文献】特開平06-175558(JP,A)
【文献】特開平06-175554(JP,A)
【文献】特開平06-175556(JP,A)
【文献】特開平06-130879(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第01310750(GB,A)
【文献】独国特許出願公告第01154894(DE,B1)
【文献】米国特許第03431110(US,A)
【文献】米国特許第03372160(US,A)
【文献】英国特許出願公開第00672291(GB,A)
【文献】特開2004-211096(JP,A)
【文献】特表2006-521220(JP,A)
【文献】特開2003-043605(JP,A)
【文献】特許第6760926(JP,B2)
【文献】特開2016-188363(JP,A)
【文献】CIERNIK, J., et al,Bis-merocyanine dyes. I. Spectral properties,Collection of Czechoslovak Chemical Communications,Vol.31,No.12,1996年,pp.4669-4681
【文献】CIERNIK, J., et al,Bis-merocyanine dyes. II. Sensitization efficiency in the photographic emulsion,Collection of Czechoslovak Chemical Communications,Vol.33,No.1,1968年,pp.327-331
【文献】DHAL, P. N., et al,Studies on 1,3-diaryl pyrazolones and their derivatives,Journal of the Indian Chemical Society,Vol.52,No.12,1975年,pp.1196-1199
【文献】Chemical Abstract, Vol.47, (1953) p.6285, 抄録番号第1953:37185 (47:6285d-i), VAN DORMAEL, A. E., "Photographic trinuclear cyanine sensitizers", Chimie et Industrie, Vol.63, No.3 bis (1950) pp.478-482
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00-69/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(II)又は(III)で表されるポリメチン化合物。
【化1】
(式中、R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
6
及びR
7
は、それぞれ独立に、水素原子又は下記式で表される基を表し、
【化2】
(式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
R
5
は、水素原子又は下記式で表される基を表し、
【化3】
(式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
R
8
は、下記式で表される基を表し、
【化4】
(式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
R
9
は、下記式で表される基を表し、
【化5】
(式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
Xは、>CR
10
R
11
を表し、
R
10
及びR
11
は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、
R
1
とR
2
、R
2
とR
3
及びR
3
とR
4
は、それぞれ結合して環を形成する場合がある。)
【化6】
(式中、R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
6
、R
7
、R
8
、R
9
及びXは、上記一般式(II)と同じであり、X
1
は、炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、Z
1
及びZ
2
は、直接結合を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載のポリメチン化合物を含有する組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の組成物を用いた光学フィルム。
【請求項4】
請求項2に記載の組成物を用いた光学フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有するポリメチン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメチン化合物は、光吸収剤、増感剤、染料等として、ディスプレイや光学レンズに用いられる光学フィルム及び光学フィルタ、感光写真材料、染物、塗料、インク、電子写真感光体、トナー、感熱記録紙、転写リボン、光学記録色素、太陽電池、光電変換素子、半導体材料、臨床検査試薬、レーザー治療用色素、染色等に広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、メチン色素化合物を含有するハロゲン化銀写真感光材料が開示されており、特許文献2には、ポリメチン化合物並びに該化合物を用いた光学フィルタ及び光学記録材料が開示されており、特許文献3には、ポリメチン化合物を含む光電変換素子が開示されており、特許文献4には、酸メロシアニン色素が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-057777号公報
【文献】特開2008-222991号公報
【文献】米国特許出願公開第2013/0087682号明細書
【文献】米国特許第2526632号明細書
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、特許文献1~4に記載の化合物は、耐光性及び耐熱性が十分ではなかった。
【0006】
本発明の目的は、耐光性及び耐熱性に優れるポリメチン化合物を提供することにある。
【0007】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するポリメチン化合物が上記目的を達成しうることを知見し、本発明に到達した。
本発明は、上記知見に基づき成されたものであり、下記一般式(I)で表されるポリメチン化合物を提供するものである。
【0008】
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
6及びR
7は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホンアミド基、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~20の基又はメタロセニル基を表し、
R
5及びR
9は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~30の炭化水素基、又は複素環を含有する炭素原子数2~20の基を表し、
R
8は、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、又は、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホンアミド基若しくはフッ化アルキル基で置換された炭素原子数6~20のアリール基を表し、
Xは、>CR
10R
11、酸素原子、硫黄原子又は>NR
12を表し、
R
10及びR
11は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~20の基又はメタロセニル基を表し、
R
12は、水素原子、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~20の基を表し、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11及びR
12で表される基中のメチレン基は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-COS-、-OCS-、-SO
2-、-SO
3-、-NH-、-CONH-、-NHCO-、-SO
2NH-、-NH-SO
2-、-N=CH-、-CH=CH―、又はこれらを組み合わせた基によって、酸素原子が隣り合わない条件で、置き換わっている場合もあり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11及びR
12で表される基のアルキル部分は、分岐側鎖又は環状アルキルである場合があり、置換基を有する場合もあり、
R
1とR
2、R
2とR
3、R
3とR
4、R
4とR
5、R
10とR
11及びR
12とR
1は、それぞれ結合して環を形成する場合があり、形成した環は置換基を有する場合もあり、
mは1~6の整数であり、
m≧2の場合、複数存在するR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びXは、それぞれ同一である場合があり、異なる場合もあり、
m=1の場合、Aは、存在せず、m≧2のとき、Aは、直接結合、窒素原子、>NR
13、酸素原子、硫黄原子、-SO
2-、-SO-、リン原子、>PR
13、E
m+、L
m-又は下記(i)、(ii)、(iii)、(iv)若しくは(v)に示すいずれかの連結基を表し、
R
13は、水素原子、又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、
R
13で表される炭素原子数1~30の炭化水素基中のメチレン基は、-COO-、-O-、-OCO-、-NHCO-、-NH-、-CONH-、又はこれらを組み合わせた基によって、酸素原子が隣り合わない条件で、置き換わっている場合もあり、
E
m+はm価の陽イオンを表し、L
m-はm価の陰イオンを表し、
m≧2でAがE
m+又はL
m-でない場合、AはR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8又はR
9で表される基の水素原子に置き換わる形で連結する。)
(i)m=2のとき、Aは、下記式(α)で表される連結基である場合がある。
【0009】
【化2】
(式中、X
1は、>NR
14、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~20の基又は下記(α-1)、(α-2)若しくは(α-3)で表される基を表し、
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立に、直接結合、-O-、-S-、-SO
2-、-SO-、>NR
14、又は>PR
15を表し、
R
14及びR
15は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、
R
14及びR
15で表される基中のメチレン基は、-COO-、-O-、-OCO-、-NHCO-、-NH-、-CONH-、又はこれらを組み合わせた基によって、酸素原子が隣り合わない条件で、置き換わっていてもよい。
但し、上記式(α)で表される基は炭素原子数1~35の範囲内であり、式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0010】
【化3】
(式中、R
21は、炭素原子数1~30の炭化水素基又は炭素原子数1~10のアルコキシ基により置換されたフェニル基を表し、R
22は炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数1~30の炭化水素基又はハロゲン原子を表し、
上記の炭素原子数1~30の炭化水素基及び炭素原子数1~10のアルコキシ基の水素原子はハロゲン原子で置き換わっている場合があり、
dは0~4の整数であり、
式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0011】
【化4】
(式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0012】
【化5】
(式中、R
23及びR
24は、それぞれ独立に、炭素原子数1~30の炭化水素基、炭素原子数6~20のアリールオキシ基、炭素原子数6~20のアリールチオ基、複素環を含有する炭素原子数2~20の基又はハロゲン原子を表し、
R
23及びR
24で表される基中の水素原子は、ハロゲン原子で置き換わっている場合があり、
R
23及びR
24で表される基中のメチレン基は、不飽和結合、-O-、-S-、又はこれらを組み合わせた基によって、酸素原子が隣り合わない条件で、置き換わっている場合があり、
R
23は、隣接するR
23同士が結合して環を形成する場合があり、
eは0~4の数を表し、fは0~8の数を表し、gは0~4の数を表し、hは0~4の数を表し、gとhの数の合計は2~4であり、
式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
(ii)m=3のとき、Aは、下記式(β)で表される連結基である場合がある。
【0013】
【化6】
(式中、X
2は、炭素原子数1~30の炭化水素基又は複素環を含有する炭素原子数2~20の基を表し、
X
2で表される基中のメチレン基は、-COO-、-O-、-OCO-、-NHCO-、-NH-、-CONH-、-O-CONH-、-NHCO-O-、又はこれらを組み合わせた基によって、酸素原子が隣り合わない条件で、置き換わっている場合もあり、
Z
1、Z
2及びZ
3は、それぞれ独立に、上記式(α)におけるZ
1及びZ
2で表される基と同じである。
但し、上記一般式(β)で表わされる基は炭素原子数1~35の範囲内であり、式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
(iii)m=4のとき、Aは、下記式(γ)で表される連結基である。
【0014】
【化7】
(式中、X
3は、炭素原子、炭素原子数1~30の炭化水素基又は複素環を含有する炭素原子数2~20の基を表し、
X
3で表される基中のメチレン基は、-COO-、-O-、-OCO-、-NHCO-、-NH-、-CONH-、-O-CONH-、-NHCO-O-、又はこれらを組み合わせた基によって、酸素原子が隣り合わない条件で、置き換わっている場合もあり、
Z
1、Z
2、Z
3及びZ
4は、それぞれ独立に、上記式(α)におけるZ
1及びZ
2で表される基と同じである。
但し、上記一般式(γ)で表される基は炭素原子数1~35の範囲内であり、式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
(iv)m=5のとき、Aは、下記式(δ)で表される連結基である。
【0015】
【化8】
(式中、X
4は、炭素原子数1~30の炭化水素基又は複素環を含有する炭素原子数2~20の基を表し、
X
4で表される基中のメチレン基は、-COO-、-O-、-OCO-、-NHCO-、-NH-、-CONH-、-O-CONH-、-NHCO-O-、又はこれらを組み合わせた基によって、酸素原子が隣り合わない条件で置き換わっている場合もあり、
Z
1、Z
2、Z
3、Z
4及びZ
5は、それぞれ独立に、上記式(α)におけるZ
1及びZ
2で表される基と同じである。
但し、上記一般式(δ)で表される基は炭素原子数2~35の範囲内であり、式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
(v)m=6のとき、Aは、下記式(ε)で表される連結基である。
【0016】
【化9】
(式中、X
5は、炭素原子数1~30の炭化水素基又は複素環を含有する炭素原子数2~20の基を表し、
X
5で表される基中のメチレン基は、-COO-、-O-、-OCO-、-NHCO-、-NH-、-CONH-、-O-CONH-、-NHCO-O-、又はこれらを組み合わせた基によって、酸素原子が隣り合わない条件で、置き換わっている場合もあり、
Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、Z
5及びZ
6は、それぞれ独立に、上記式(α)におけるZ
1及びZ
2で表される基と同じである。
但し、上記一般式(ε)で表される基は炭素原子数2~35の範囲内であり、式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0017】
また、本発明は、下記一般式(II)で表される上記ポリメチン化合物を提供するものである。
【0018】
【化10】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びXは、上記一般式(I)と同じである。)
【0019】
また、本発明は、下記一般式(III)で表される上記ポリメチン化合物を提供するものである。
【0020】
【化11】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
6、R
7、R
8、R
9及びXは、上記一般式(I)と同じであり、X
1、Z
1及びZ
2は、上記一般式(α)と同じである。)
【0021】
また、本発明は、上記一般式(I)、(II)及び(III)中のR9が下記式(ζ)で表される基である上記ポリメチン化合物を提供するものである。
【0022】
【化12】
(式中、R
31、R
32、R
33、R
34及びR
35は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホン酸基、-SO
2NR
36R
37、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~20の基又はメタロセニル基を表し、
R
31、R
32、R
33、R
34及びR
35のうち、一つ以上は、-SO
2NR
36R
37であり、
R
36及びR
37は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~20の基又はメタロセニル基を表し、
R
31、R
32、R
33、R
34、R
35、R
36及びR
37で表される基中のメチレン基は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-COS-、-OCS-、-SO
2-、-SO
3-、-NH-、-CONH-、-NHCO-、-SO
2NH-、-NH-SO
2-、-N=CH-、-CH=CH―、又はこれらを組み合わせた基によって、酸素原子が隣り合わない条件で、置き換わっている場合もあり、
R
31、R
32、R
33、R
34、R
35、R
36及びR
37で表される基のアルキル部分は、分岐側鎖又は環状アルキルである場合があり、置換基を有する場合もあり、
R
31とR
32、R
32とR
33、R
33とR
34、R
34とR
35及びR
36とR
37は、それぞれ結合して環を形成する場合があり、形成した環は置換基を有する場合もある。)
【0023】
また、本発明は、上記ポリメチン化合物を含有する組成物並びに該組成物を用いた光学フィルム及び光学フィルタを提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のポリメチン化合物について、好ましい実施形態に基づき説明する。
【0025】
本発明のポリメチン化合物は、上記一般式(I)で表される構造を有する。
【0026】
R1、R2、R3、R4、R6及びR7で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0027】
R1、R2、R3、R4、R6、R7で表される炭素原子数1~30の炭化水素基は、特に限定されるものではないが、好ましくは炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数8~30のアリールアルケニル基等を表し、吸光度が高いことから、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、炭素原子数4~10のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数8~20のアリールアルケニル基がより好ましい。
【0028】
上記炭素原子数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、アミル、イソアミル、t-アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、t-オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル及びイコシル等が挙げられ、上記炭素原子数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、アミル、イソアミル、t-アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、t-オクチル、ノニル、イソノニル、デシル及びイソデシル等が挙げられる。
【0029】
上記炭素原子数2~20のアルケニル基としては、例えば、ビニル、2-プロペニル、3-ブテニル、2-ブテニル、4-ペンテニル、3-ペンテニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、5-ヘキセニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、3-オクテニル、3-ノネニル、4-デセニル、3-ウンデセニル、4-ドデセニル、3-シクロヘキセニル、2,5-シクロヘキサジエニル-1-メチル、及び4,8,12-テトラデカトリエニルアリル等が挙げられ、上記炭素原子数2~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル、2-プロペニル、3-ブテニル、2-ブテニル、4-ペンテニル、3-ペンテニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、5-ヘキセニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、3-オクテニル、3-ノネニル及び4-デセニル等が挙げられる。
【0030】
上記炭素原子数3~20のシクロアルキル基とは、全体で3~20個の炭素原子を有する、飽和単環式又は飽和多環式アルキル基を意味する。例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、アダマンチル、デカハイドロナフチル、オクタヒドロペンタレン、ビシクロ[1.1.1]ペンタニル及びテトラデカヒドロアントラセニル等が挙げられ、上記炭素原子数3~10のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、アダマンチル、デカハイドロナフチル、オクタヒドロペンタレン及びビシクロ[1.1.1]ペンタニル等が挙げられる。
【0031】
上記炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基とは、アルキル基の水素原子がシクロアルキル基で置き換えられた、全体で4~20個の炭素原子を有する基を意味する。例えば、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘプチルメチル、シクロオクチルメチル、シクロノニルメチル、シクロデシルメチル、2-シクロブチルエチル、2-シクロペンチルエチル、2-シクロヘキシルエチル、2-シクロヘプチルエチル、2-シクロオクチルエチル、2-シクロノニルエチル、2-シクロデシルエチル、3-シクロブチルプロピル、3-シクロペンチルプロピル、3-シクロヘキシルプロピル、3-シクロヘプチルプロピル、3-シクロオクチルプロピル、3-シクロノニルプロピル、3-シクロデシルプロピル、4-シクロブチルブチル、4-シクロペンチルブチル、4-シクロヘキシルブチル、4-シクロヘプチルブチル、4-シクロオクチルブチル、4-シクロノニルブチル、4-シクロデシルブチル、3-3-アダマンチルプロピル及びデカハイドロナフチルプロピル等が挙げられ、上記炭素原子数4~10のシクロアルキルアルキル基としては、例えば、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘプチルメチル、シクロオクチルメチル、シクロノニルメチル、2-シクロブチルエチル、2-シクロペンチルエチル、2-シクロヘキシルエチル、2-シクロヘプチルエチル、2-シクロオクチルエチル、3-シクロブチルプロピル、3-シクロペンチルプロピル、3-シクロヘキシルプロピル、3-シクロヘプチルプロピル、4-シクロブチルブチル、4-シクロペンチルブチル、4-シクロヘキシルブチル、ビシクロ[1.1.0]ブチル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[2.2.0]ヘキシル、ビシクロ[4.1.0]ヘプチル、ビシクロ[3.2.0]ヘプチル、ビシクロ[3.1.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[5.1.0]オクチル、ビシクロ[4.2.0]オクチル、ビシクロ[4.1.1]オクチル、ビシクロ[3.3.0]オクチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、スピロ〔4,4〕ノナニル、スピロ〔4,5〕デカニル、デカリン、トリシクロデカニル、テトラシクロドデカニル及びセドロール、シクロドデカニル等が挙げられる。
【0032】
上記炭素原子数6~30のアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、エチルフェニル、ナフチル、アンスリル及びフェナントレニル等や、上記アルキル基、上記アルケニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子等で1つ以上置換されたフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントリル、例えば、4-クロロフェニル、4-カルボキシルフェニル、4-ビニルフェニル、4-メチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル等の単環又は縮環構造の芳香族系炭化水素環あるいはその連結構造が挙げられ、上記炭素原子数6~10のアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、エチルフェニル及びナフチル等や、上記アルキル基、上記アルケニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子等で1つ以上置換されたフェニル、ビフェニリル及びナフチル等、例えば、4-クロロフェニル、4-カルボキシルフェニル、4-ビニルフェニル、4-メチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル等の単環又は縮環構造の芳香族系炭化水素環あるいはその連結構造が挙げられる。
【0033】
上記炭素原子数7~30のアリールアルキル基とは、アルキル基の水素原子がアリール基で置き換えられた、全体で7~30個の炭素原子を有する基を意味し、例えば、ベンジル、α-メチルベンジル、α、α-ジメチルベンジル、2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、トリフェニルプロピル及びナフチルプロピル等が挙げられ、上記炭素原子数7~20のアリールアルキル基とは、アルキル基の水素原子がアリール基で置き換えられた、全体で7~20個の炭素原子を有する基を意味し、例えば、ベンジル、α-メチルベンジル、α、α-ジメチルベンジルジメチルベンジル、2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル及びナフチルプロピル等が挙げられる。
【0034】
上記炭素原子数8~30のアリールアルケニル基とは、アルケニル基の水素原子がアリール基で置き換えられた、全体で8~30個の炭素原子を有する基を意味し、例えば、スチレニル、シンナミル、2-フェニル-2-プロペニル、3-フェニル-2-プロペニル、2-フェニル-4-ペンテニル、2-フェニル-4-ヘキセニル、2,2-ジフェニルエチレニル、3,3-フェニル-2-プロペニル、2-ナフチル-2-プロペニル、3-ナフチル-2-プロペニル、3-ナフチル-2-フェニル-2-プロペニル、5-アントラセニル-2-フェニル-4-ヘキセニル及び5-アントラセニル-2-ナフチル-4-ヘキセニル等が挙げられ、上記炭素原子数8~20のアリールアルケニル基とは、アルケニル基の水素原子がアリール基で置き換えられた、全体で8~20個の炭素原子を有する基を意味し、例えば、スチレニル、シンナミル、2-フェニル-2-プロペニル、3-フェニル-2-プロペニル、2-フェニル-4-ペンテニル、2-フェニル-4-ヘキセニル、2,2-ジフェニルエチレニル、3,3-フェニル-2-プロペニル、2-ナフチル-2-プロペニル、3-ナフチル-2-プロペニル及び3-ナフチル-2-フェニル-2-プロペニル等が挙げられる。
【0035】
R1、R2、R3、R4、R6及びR7で表される複素環を含有する炭素原子数2~20の基とは、少なくとも一つの複素環を含有する炭素原子数2~20の基を意味し、炭素原子数は、基全体の炭素原子数を意味する。以下の説明において、複素環を含有する基の炭素原子数が規定されている場合は、全て、基全体の炭素原子数を意味する。上記複素環を含有する炭素原子数2~20の基としては、例えば、ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペラジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリジル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、ユロリジル、モルフォリニル、チオモルフォリニル、2-ピロリジノン-1-イル、2-ピペリドン-1-イル、2,4-ジオキシイミダゾリジン-3-イル、2,4-ジオキシオキサゾリジン-3-イル等の単環又は縮環構造の複素環あるいはその連結構造が挙げられる。
【0036】
上記炭素原子数1~30の炭化水素基又は上記複素環を含有する炭素原子数2~20の基は、下記の置換基を有する場合がある。
上記炭素原子数1~30の炭化水素基が炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基又は炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基である場合、置換基としては、以下に例示の置換基のうち、アルキル基、アリールアルキル基以外の置換基が挙げられる。
上記炭素原子数1~30の炭化水素基が炭素原子数6~30のアリール基である場合、置換基としては、好ましくは単環若しくは縮環構造の芳香族系炭化水素環(環構造の部分のみをいう。以下、「芳香族系炭化水素環」において同じ。)又はその連結構造の置換基としては、以下に例示の置換基のうち、アリール基以外の置換基が挙げられる。
上記炭素原子数1~30の炭化水素基が炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数8~30のアリールアルケニル基である場合、好ましい置換基としては、下記に例示の中でも、単環若しくは縮環構造の芳香族系炭化水素環又はその連結構造が結合したアルキル基が挙げられる。
但し、以下に例示の置換基のうち、アルキル基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基は、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数8~30のアリールアルケニル基の芳香族系炭化水素環に置換する。
複素環を含有する炭素原子数2~20の置換基としては、以下に例示の置換基のうち、複素環を含有する基以外の置換基が挙げられる。
尚、上記炭素原子数1~30の炭化水素基又は上記複素環を含有する炭素原子数2~20の基が、以下の置換基の中でも、炭素原子を含有する置換基を有する場合は、該置換基を含めた全体の炭素原子数が、規定された範囲を満たすものとする。つまり、炭素原子数1~30の炭化水素基が、炭素原子を含有する置換基を有する場合の炭素原子数の範囲は、置換基も含めた全体として1~30であり、複素環を含有する炭素原子数2~20の基が、炭素原子を含有する置換基を有する場合の炭素原子数の範囲は、置換基も含めた全体として2~30であり、また、例えば、炭素原子数1~20のアルキル基が、炭素原子を含有する置換基を有する場合の炭素原子数の範囲は、置換基も含めた全体として1~20である。
【0037】
上記置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、シクロペンチル、ヘキシル、2-ヘキシル、2-エチルへキシル、3-へキシル(又はヘキサン-3-イル)、シクロヘキシル、ビシクロヘキシル、1-メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、第三オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、ラウリル等のアルキル基;メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第三アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第三ヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第三オクチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等のアルコキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、第二ブチルチオ、第三ブチルチオ、イソブチルチオ、アミルチオ、イソアミルチオ、第三アミルチオ、ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、ヘプチルチオ、イソヘプチルチオ、第三ヘプチルチオ、n-オクチルチオ、イソオクチルチオ、第三オクチルチオ、2-エチルヘキシルチオ等のアルキルチオ基;ビニル、1-メチルエテニル、2-メチルエテニル、2-プロペニル、1-メチル-3-プロペニル(又は1-メチル-2-プロペニル)、3-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、イソブテニル、3-ペンテニル、4-ヘキセニル、シクロヘキセニル、ビシクロヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ペンタデセニル、エイコセニル、トリコセニル等のアルケニル基;ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基;フェニル、ナフチル等のアリール基;フェノキシ、ナフチルオキシ等のアリールオキシ基;フェニルチオ、ナフチルチオ等のアリールチオ基;ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、2-ピロリジノン-1-イル、2-ピペリドン-1-イル、2,4-ジオキシイミダゾリジン-3-イル、2,4-ジオキシオキサゾリジン-3-イル等の複素環を含有する基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;アセチル、2-クロロアセチル、プロピオニル、オクタノイル、フェニルカルボニル(ベンゾイル)、フタロイル、4-トリフルオロメチルベンゾイル、ピバロイル、サリチロイル、オキザロイル、ステアロイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル、n-オクタデシルオキシカルボニル、カルバモイル等のアシル基;アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、2-エチルヘキシルアミノ、ドデシルアミノ、アニリノ、クロロフェニルアミノ、トルイジノ、アニシジノ、N-メチル-アニリノ、ジフェニルアミノ,ナフチルアミノ、2-ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、ホルミルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、カルバモイルアミノ、N,N-ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N-ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t-ブトキシカルボニルアミノ、n-オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N-メチル-メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、スルファモイルアミノ、N,N-ジメチルアミノスルホニルアミノ、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ等の置換アミノ基;スルホンアミド基、スルホニル含有基、カルボン酸基、シアノ基、スルホン酸基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、リン酸基等が挙げられ、これらの基は更に置換されていてもよい。
また、上記カルボン酸基、スルホン酸基及びリン酸基等の酸性基は、種々の陽イオンと塩を形成している場合もあり、上記置換アミノ基(例えば、ジエチルアミノ基、ジメチルアミノ基)は、四級化した後、例えばメチル基、エチル基等の炭化水素数1~10のアルキル基で四級化した後、種々の陰イオンと塩を形成している場合もある。上記陽イオンとしては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属カチオン、炭素原子数4以上のアンモニウム、アミジニウム、グアニジニウムカチオン等が挙げられ、陰イオンとしては、例えば、一価のものとして、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオン等のハロゲン化物イオン;過塩素酸イオン、塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン等の無機系陰イオン;メタンスルホン酸イオン、ドデシルスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸イオン、ジフェニルアミン-4-スルホン酸イオン、2-アミノ-4-メチル-5-クロロベンゼンスルホン酸イオン、2-アミノ-5-ニトロベンゼンスルホン酸イオン、フタロシアニンスルホン酸イオン、パーフルオロ-4-エチルシクロヘキサンスルホン酸イオン、ナフタレンモノスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ナフチルアミンモノスルホン酸、ナフチルアミンジスルホン酸、ナフチルアミントリスルホン酸、ナフトールモノスルホン酸、ナフトールジスルホン酸、ナフトールトリスルホン酸等の有機スルホン酸系陰イオン;チオシアン酸イオン、リンタングステンモリブデン酸イオン、リンタングステン酸イオン、リンモリブデン酸イオン、タンニン酸イオン、酒石酸イオン、パルミチン酸イオン、ステアリン酸イオン、オレイン酸イオン、リノール酸イオン、オクチルリン酸イオン、ドデシルリン酸イオン、オクタデシルリン酸イオン、フェニルリン酸イオン、ノニルフェニルリン酸イオン、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスホン酸イオン等の有機リン酸系陰イオン、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドイオン、ビスパーフルオロブタンスルホニルイミドイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)カルボアニオン、テトラキスペンタフルオロフェニルボレートアニオン等が挙げられる。
【0038】
R1、R2、R3、R4、R6及びR7で表されるメタロセニル基としては、フェロセニル、ニッケロセニル、コバルトニル、フェロセンアルキル、フェロセンアルコキシ等が挙げられる。
【0039】
R1、R2、R3、R4、R6及びR7としては、水素原子又は下記式で表される基が特に好ましい。
【0040】
【化13】
(式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0041】
R5及びR9で表される炭素原子数1~30の炭化水素基及び複素環を含有する炭素原子数2~20の基は、それぞれ、R1、R2、R3、R4、R6及びR7で表される炭素原子数1~30の炭化水素基及び複素環を含有する炭素原子数2~20の基と同様である。
【0042】
R5としては、下記式で表される基が特に好ましい。
【0043】
【化14】
(式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0044】
R9としては、下記式で表される基が特に好ましい。
【0045】
【化15】
(式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0046】
R8で表される炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基とは、上記炭素原子数1~20のアルキル基中の水素原子の一つ以上が、ハロゲン原子で置き換えられた基を意味し、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、4-トリフルオロメチルフェニル及び4-トリフルオロメチルベンゾイル等が挙げられる。
R8で表される炭素原子数6~20のアリール基は、炭素原子数1~30の炭化水素基の例として述べた上記炭素原子数6~20のアリール基と同様である。
R8で表される炭素原子数6~20のアリール基を置換し得るハロゲン原子は、R1、R2、R3、R4、R6及びR7で表されるハロゲン原子と同様である。
R8で表される炭素原子数6~20のアリール基を置換し得るフッ化アルキル基としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル等が挙げられる。
【0047】
R8としては、下記式で表される基が特に好ましい。
【0048】
【化16】
(式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0049】
R10及びR11で表される炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~20の基及びメタロセニル基は、それぞれ、R1、R2、R3、R4、R6及びR7で表される炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~20の基及びメタロセニル基と同様である。
>CR10R11としては、下記式で表される基が特に好ましい。
【0050】
【化17】
(式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0051】
R12で表される炭素原子数1~30の炭化水素基及び複素環を含有する炭素原子数2~20の基は、それぞれ、R1、R2、R3、R4、R6及びR7で表される炭素原子数1~30の炭化水素基及び複素環を含有する炭素原子数2~20の基と同様である。
>NR12としては、>N-Meが特に好ましい。
【0052】
R1とR2、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R10とR11、R12とR1が結合して形成する環構造としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環及びシクロヘプタン環等の炭素原子数5~10の脂肪族環、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環等の炭素原子数6~16の芳香族環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピロリジン環、モルフォリン環、チオモルフォリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、イミダゾール環、オキサゾール環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、イソオキサゾリジン環、イミノオキサゾリジン環、イソチアゾリジン環、ロダニン環、チオオキサゾリドン環、チオヒダントイン環、インダンジオン環、チアナフテン環、ピラゾロン環、ピリドン環、ピラゾリジンジオン環、ローダニン環、バルビツール酸環、チオバルビツール酸環、オキサゾロン環、ヒダントイン環、チオヒダントイン環、スクシンイミド環及びマレイミド環等の炭素原子数2~20の複素環が挙げられ、これらの環は他の環と縮合されている場合もあり、またR1、R2、R3、R4、R6及びR7で表される炭素原子数1~30の炭化水素基等と同様の置換基を有する場合がある。
【0053】
R13で表される炭素原子数1~30の炭化水素基は、R1、R2、R3、R4、R6及びR7で表される炭素原子数1~30の炭化水素基と同様である。
【0054】
本発明において「Aは、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8又はR9で表される基の水素原子に置き換わる形で連結する」とは、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR9が水素原子である場合には、その水素原子に置き換わる形で連結することを意味する。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR9が炭素原子数1~30の炭化水素基又は複素環を含有する炭素原子数が2~20の基である場合には、それらの基に含まれる水素原子に置き換わる形で連結することを意味する。R8がハロゲン化アルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、又は水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホンアミド基若しくはフッ化アルキル基で置換された炭素原子数6~20のアリール基である場合、それらの基に含まれる水素原子に置き換わる形で連結することを意味する。
【0055】
本発明の一般式(I)で表されるポリメチン化合物において、mが2~6の整数である場合、Aは、複数の一般式(I)で表されるポリメチン化合物の同じ置換基の水素原子に置き換わる形で連結する場合があり、異なる置換基の水素原子に置き換わる形で連結する場合があるが、同じ置換基の水素原子に置き換わる形で連結することが好ましい。具体的には、mが2である化合物である場合、Aは、一方の一般式(I)で表されるポリメチン化合物をR5で表さる基の水素原子に置き換わり、他方の一般式(I)で表されるポリメチン化合物をR5で表さる基の水素原子に置き換わる形で、2つの一般式(I)で表されるポリメチン化合物を連結することができる。また、Aは、一方の一般式(I)で表されるポリメチン化合物をR5で表さる基の水素原子に置き換わり、他方の一般式(I)で表されるポリメチン化合物をR9で表さる基の水素原子に置き換わる形で、2つの一般式(I)で表されるポリメチン化合物を連結することができる。
【0056】
式(α)において、X1で表される炭素原子数1~30の炭化水素基及び複素環を含有する炭素原子数2~20の基は、それぞれ、R1、R2、R3、R4、R6及びR7で表される炭素原子数1~30の炭化水素基及び複素環を含有する炭素原子数2~20の基から任意の水素原子を1個除くことにより誘導される2価の基である。
式(α)において、R14及びR15で表される炭素原子数1~30の炭化水素基は、R1、R2、R3、R4、R6及びR7で表される炭素原子数1~30の炭化水素基と同様である。
【0057】
式(α-1)において、R21及びR22で表される炭素原子数1~30の炭化水素基は、R1、R2、R3、R4、R6及びR7で表される炭素原子数1~30の炭化水素基と同様である。
式(α-1)において、R21で表される基中の炭素原子数1~10のアルコキシ基及びR22で表される基中の炭素原子数1~10のアルコキシ基としては、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第三アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第三ヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第三オクチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等が挙げられる。
式(α-1)におけるハロゲン原子は、R1、R2、R3、R4、R6及びR7で表されるハロゲン原子と同様である。
【0058】
上記一般式(α-3)において、R23及びR24で表される炭素原子数1~30の炭化水素基及び複素環を含有する炭素原子数2~20の基は、それぞれ、R1、R2、R3、R4、R6及びR7で表される炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~20の基と同様である。
上記一般式(α-3)におけるハロゲン原子はいずれも、R1、R2、R3、R4、R6及びR7で表されるハロゲン原子と同様である。
R23及びR24で表される炭素原子数6~20のアリールオキシ基としては、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、2-メチルフェニルオキシ、3-メチルフェニルオキシ、4-メチルフェニルオキシ、4-ビニルフェニル二オキシ、3-iso-プロピルフェニルオキシ、4-iso-プロピルフェニルオキシ、4-ブチルフェニルオキシ、4-tert-ブチルフェニルオキシ、4-へキシルフェニルオキシ、4-シクロヘキシルフェニルオキシ、4-オクチルフェニルオキシ、4-(2-エチルヘキシル)フェニルオキシ、2,3-ジメチルフェニルオキシ、2,4-ジメチルフェニルオキシ、2,5-ジメチルフェニルオキシ、2.6-ジメチルフェニルオキシ、3.4-ジメチルフェニルオキシ、3.5-ジメチルフェニルオキシ、2,4-ジーtert-ブチルフェニルオキシ、2,5-ジーtert-ブチルフェニルオキシ、2,6-ジーtert-ブチルフェニルオキシ、2.4-ジーtert-ペンチルフェニルオキシ、2,5-tert-アミルフェニルオキシ、4-シクロへキシルフェニルオキシ、2,4,5-トリメチルフェニルオキシ、フェロセニルオキシ等の基及びこれらの基がハロゲン原子で置換された基が奉げられ、
炭素原子数6~20のアリールチオ基としては、上記炭素原子数6~20のアリールオキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えた基等が奉げられる。
【0059】
上記式(α-3)中のR23同士が結合して形成する環構造は、R1とR2、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R10とR11、R12とR1が結合して形成する環構造と同様である。
【0060】
式(α)で表される基としては、下記式で表される基が特に好ましい。
【0061】
【化18】
(式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0062】
上記式(β)、(γ)、(δ)及び(ε)において、X2、X3、X4又はX5で表される炭素原子数1~30の炭化水素基は、それぞれ、R1、R2、R3、R4、R6及びR7で表される炭素原子数1~30の炭化水素基から任意の水素原子を2個、3個、4個又は5個除くことにより誘導される3価、4価、5価又は6価の炭化水素基である。同様に、X2、X3、X4又はX5で表される複素環を含有する炭素原子数2~20の基は、それぞれ、R1、R2、R3、R4、R6及びR7で表される複素環を含有する炭素原子数2~20の基から任意の水素原子を2個、3個、4個又は5個除くことにより誘導される3価、4価、5価又は6価の基である。
【0063】
式(β)で表される基としては、下記式で表される基が特に好ましい。
【0064】
【化19】
(式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0065】
式(γ)で表される基としては、下記式で表される基が特に好ましい。
【0066】
【化20】
(式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0067】
式(ζ)において、R31、R32、R33、R34及びR35で表されるハロゲン原子は、R1、R2、R3、R4、R6及びR7で表されるハロゲン原子と同様である。
R31、R32、R33、R34、R35、R36及びR37で表される炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~20の基及びメタロセニル基は、それぞれ、R1、R2、R3、R4、R6及びR7で表される炭素原子数1~30の炭化水素基、複素環を含有する炭素原子数2~20の基及びメタロセニル基と同様である。
R31とR32、R32とR33、R33とR34、R34とR35及びR36とR37が結合して形成する環構造は、R1とR2、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R10とR11、R12とR1が結合して形成する環構造と同様である。
【0068】
式(ζ)で表される基としては、下記式で表される基が特に好ましい。
【0069】
【化21】
(式中の*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0070】
上記一般式(I)又は式(ζ)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R9、R10、R11、R12又はR31、R32、R33、R34、R35、R36、R37で表される炭素原子数1~30の炭化水素基としては、無置換のもの;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、置換アミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホン酸基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、リン酸基等で置換されたもの;アルキル基中のメチレン基が、-SO2NH-、-NHSO2-、-O-、-OCO-、-NHCO-又は-CONH-で置き換わったもの;以下に説明するアルキル基(置換基を有するアルキル基を含む)の末端メチル基が塩を形成したものが好ましい。
【0071】
上記一般式(I)又は式(ζ)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R9、R10、R11、R12、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37で表される炭素原子数1~30の炭化水素基の末端メチル基は、カルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基等の酸性基が種々の陽イオンと塩を形成した置換基を有している場合があり、或いは置換アミノ基を四級化した後種々の陰イオンと塩を形成した置換基を有する場合がある。
【0072】
このような塩を形成した置換基のうち、酸性基と塩を形成する陽イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属イオン、アルミニウムなどの典型金属イオン、亜鉛、ニッケル、コバルト、銅、バナジウム等遷移金属カチオン、炭素原子数4以上のアンモニウム等が挙げられ、四級化した置換アミノ基と塩を形成する陰イオンとしては、一価のものとして、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオン等のハロゲン化物イオン;過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン等の無機系陰イオン;メタンスルホン酸イオン、ドデシルスルホン酸イオン等の有機スルホン酸系陰イオン;リンモリブデン酸イオンなどのヘテロポリ酸イオン、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドイオン、ビスパーフルオロブタンスルホニルイミドイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)カルボアニオン、テトラキスペンタフルオロフェニルボレートアニオン等が挙げられる。
【0073】
上述の塩を形成した置換基は、酸性染料をレーキ化する沈殿剤、或いは塩基性染料をレーキ化する沈殿剤を用いて得ることができる。上記酸性染料をレーキ化する沈殿剤としては、例えば、塩化バリウム、塩化アルミニウム、アルカリ土類金属塩、マンガン塩、ナトリウム塩等を用いることができ、上記塩基性染料をレーキ化する沈殿剤としては、リンタングステンモリブデン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイ素タングステンモリブデン酸、ケイ素モリブデン酸、タンニン酸、酒石酸、カオリン、緑土、高級脂肪酸等を用い、水溶液又は水分散液中で必要に応じて加熱、ろ過することにより得ることができる。
【0074】
本発明のポリメチン化合物は、上記一般式(I)におけるAがEm+である場合、m≧2であり、且つ一般式(I)におけるA以外の部分がm個の一価の陰イオンとなり、これらの陰イオンが、Em+であるm価の陽イオンと結合している状態となる。後述の例示化合物で言えば、No.64~No.69が該当する。
【0075】
Em+で表わされるm価の陽イオンは、2価の陽イオンとしては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属イオン;亜鉛、銅、ニッケル等の遷移金属カチオン等が挙げられ、3価の陽イオンとしては、アルミニウム等の典型金属イオン;コバルト、鉄等の遷移金属カチオン等が挙げられ、4価以上の陽イオンとしては、マンガン等の遷移金属カチオン等が挙げられる。
【0076】
本発明のポリメチン化合物は、上記一般式(I)におけるAがLm-である場合、m≧2かつ一般式(I)におけるA以外の部分がm個の一価の陽イオンとなり、これらの陽イオンが、Lm―であるm価の陰イオンと結合している状態となる。後述の例示化合物で言えば、化合物No.70~No.75が該当する。
【0077】
Lm-で表わされるm価の陰イオンは、2価の陰イオンとしては、タングステン酸イオン、モリブデン酸イオン(MoO4
2-)クロム酸イオン等が挙げられ、3価の陰イオンとしては、リンモリブデン酸イオン、リンタングステン酸イオン、リンタングストモリブデン酸イオン、バナジン酸イオン等が挙げられ、4価の陰イオンとしては、ケイタングステン酸イオン等が挙げられ、5価以上の陰イオンとしては、リンバナドモリブデン酸イオン、モリブデン酸イオン(Mo7O24
6-)等が挙げられる。
【0078】
尚、上記一般式(I)で表される本発明のポリメチン化合物は、下記一般式に示されるような構造を取りうるが、どちらの構造式であってもよく、また、どちらかの構造式で表される構造異性体を単離して用いても、或いはそれらの混合物として用いてもよい。さらには、下記一般式では、NR5基とR6基とが二重結合に対してシス配置(Z配置)になっているが、これらの基がトランス配置(E配置)になっているものも、本発明のポリメチン化合物に含まれる。上記一般式(I)は、これら炭素-炭素二重結合に起因する全ての幾何異性体を含むものとして定義される。
【0079】
【化22】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、及びXは、上記一般式(I)と同じである。)
【0080】
また、上記一般式(II)及び(III)並びに後述の一般式(IV)においても、上記一般式(I)と同様に、二重結合に対してそれぞれ、シス配置(Z配置)又はトランス配置(E配置)をとる幾何異性体が存在するが、本発明のポリメチン化合物は、これらを区別するものではなく、これら炭素-炭素二重結合に起因する全ての幾何異性体を含むものとして定義される。
【0081】
上記一般式(I)で表される本発明のポリメチン化合物の具体例としては、下記化合物No.1~No.75が挙げられる。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
本発明のポリメチン化合物の中でも、上記一般式(II)で表されるポリメチン化合物は、溶剤への溶解性又は分散性に優れることから好ましい。
【0102】
上記一般式(III)で表されるポリメチン化合物は、昇華性が低いことから好ましい。
【0103】
また、下記一般式(IV)で表されるポリメチン化合物は、昇華性が低いことから好ましい。
【0104】
【化42】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びXは、上記一般式(I)と同じであり、X
1、Z
1及びZ
2は、上記一般式(α)と同じである。)
【0105】
上記一般式(I)~(III)中のR9が上記式(ζ)で表される基であるポリメチン化合物は、適切な吸収波長域を示すことから赤色の補助着色剤として好ましい。吸収波長域が450~550nmであるものが好ましく、更に好ましくは500~550nmである。
【0106】
上記一般式(I)~(IV)中のR8がトリフルオロメチル基又は4-ニトロフェニル基であるものは、耐光性及び耐熱性にとりわけ優れることから好ましい。
【0107】
上記一般式(I)~(IV)中のXが、>CR10R11又は硫黄原子であるものは、耐光性及び耐熱性に優れることから好ましく、特に>CR10R11は、より好ましい。さらにCR10R11中のR10及びR11がメチル基であるものは、特に耐熱性に優れることからより好ましい。
【0108】
一般式(I)で表されるポリメチン化合物において、mが1である化合物は、溶剤への溶解性又は分散性に優れることから好ましい。また、一般式(I)で表されるポリメチン化合物において、mが2である化合物は、昇華性が低いことから好ましい。
【0109】
上記一般式(I)で表される本発明のポリメチン化合物は、その製造方法によって特に限定されず、周知一般の反応を利用した方法で得ることができる。該化合物は、例えばm=1の場合、下記反応式1の如く、インドレニン四級塩とアミジン化合物との反応生成物に、活性メチレンを有する化合物を反応させる方法により合成することができる。
【0110】
【化43】
(式中、R
41、R
42及びR
43は、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数8~30のアリールアルケニル基を表し、An
q-はq価のアニオンを表し、qは1又は2であり、pは電荷を中性に保つ係数を表し、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びXは、上記一般式(I)と同じである。)
【0111】
また、m=2であり、Aが上記一般式(α)で表される連結基でR5と連結する場合、下記反応式2の如く、アルキルジハライドと2等量のインドレニン四級塩を反応させ、続いて上記反応式1と同様にして合成することができる。
m=3以上のポリメチン化合物も、AがR5以外と連結する場合も、下記反応式2に示されるルートに準じて合成することができる。
【0112】
【化44】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びXは、上記一般式(I)と同じであり、X
1、Z
1及びZ
2は、上記式(α)と同じであり、R
41、R
42、R
43、An
q-、q及びpは、上記反応式1と同じであり、X
*は、ハロゲン原子である。)
【0113】
本発明のポリメチン化合物は、光吸収剤、増感剤、染料等として、光学フィルム、光学フィルタ、感光写真材料、染物、塗料、インク、電子写真感光体、トナー、感熱記録紙、転写リボン、光学記録色素、太陽電池、光電変換素子、半導体材料、臨床検査試薬、レーザー治療用色素、染色等の用途に用いることができる。本発明のポリメチン化合物は、特に、光学フィルム又は光学フィルタに用いる光吸収剤として好適である。
【0114】
本発明の組成物は、本発明のポリメチン化合物を含有するものであり、上記の各種用途に用いられる。本発明の組成物は、通常、本発明のポリメチン化合物のほかに、用途に応じた樹脂を含有する。
本発明の組成物には、その他に、用途に応じて必要な成分や、例えば、後述する有機溶媒、本発明のポリメチン化合物以外の光吸収剤、各種安定剤等の任意成分等を、さらに必要量含有させることができる。
本発明の組成物において、本発明のポリメチン化合物及び上記バインダー樹脂等の使用量は特に制限されず、用途に応じて適宜決定される。
【0115】
次に、光学フィルム及び光学フィルタについて説明する。
本発明の光学フィルム及び光学フィルタは、例えば、反射防止フィルム、位相差フィルム、偏光フィルム、配向フィルム、保護フィルム、視野角向上フィルム、輝度向上フィルム、遮光フィルム、電磁波シールドフィルム等の光学フィルムとして、又はローパスフィルタ、カラーフィルタ等の光学フィルタとして、画像表示装置のディスプレイや光学レンズ等に用いることができるものであり、本発明のポリメチン化合物を含有する本発明の組成物を用いて作製される点以外は、従来の光学フィルム及び光学フィルタと同様とすることができる。
【0116】
本発明のポリメチン化合物の用途の一つである光学フィルタについて、以下に詳しく説明する。
本発明の光学フィルタは、本発明の組成物を用いて作製されたものであり、該組成物により構成された層を有する。該組成物により構成される層は、後述する各層の何れの層でもよい。本発明の光学フィルタを作製する際、本発明の組成物には、通常バインダー樹脂が配合される。該バインダー樹脂は、本発明の組成物により構成する層の種類によるが、代表例としては、例えば、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、セルロース誘導体、アルギン酸等の天然高分子材料、或いは、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、メラミン樹脂、環状オレフィン樹脂等の合成高分子材料、後述する粘着剤等が挙げられる。
【0117】
本発明の光学フィルタ、特に画像表示用光学フィルタにおいて、本発明のポリメチン化合物の使用量は、光学フィルタの単位面積当たり、通常1~1000mg/m2、好ましくは5~100mg/m2の範囲である。1mg/m2未満の使用量では、光吸収効果を十分に発揮することができず、1000mg/m2を超えて使用した場合には、フィルタの色目が強くなりすぎて表示品質等を低下させるおそれがあり、更には、明度が低下するおそれもある。尚、本発明のポリメチン化合物が複数種の混合物である場合は、本発明のポリメチン化合物の使用量は、その合計量とする。
【0118】
本発明の光学フィルタを製造する際、本発明の組成物において本発明のポリメチン化合物及び上記バインダー樹脂等の使用量は制限されないが、通常、次のようにされる。例えば、後述するように、本発明の組成物から構成される粘着層を有する本発明の光学フィルタを製造する場合には、上記バインダー樹脂である粘着剤の固形分100質量部に対し、本発明のポリメチン化合物が0.0001~50質量部、好ましくは0.001~5.0質量部、及びメチルエチルケトン等の溶剤が0.1~1000質量部、好ましくは1.0~500質量部となるように粘着剤溶液(塗工液)を調製し、この粘着剤溶液を、易密着処理をしたPETフィルム等の透明支持体に塗布した後、乾燥させ、厚さ2~400μm、好ましくは5~40μmの粘着層を有する本発明の光学フィルタを得る。更に、本発明のポリメチン化合物以外の他の光吸収剤、各種安定剤等の任意成分等を本発明の組成物に含有させる場合や、本発明の組成物により粘着層以外の層を構成する場合も、各成分の配合割合は、上述の配合割合に準じればよい。
【0119】
本発明の光学フィルタは、画像表示装置のディスプレイに用いる場合は、通常、ディスプレイの前面に配置される。例えば、本発明の光学フィルタは、ディスプレイの表面に直接貼り付けてもよく、ディスプレイの前に前面板が設けられている場合は、前面板の表側(外側)又は裏側(ディスプレイ側)に貼り付けてもよい。
【0120】
本発明の光学フィルタの構成としては、透明支持体上に、光学フィルタ層、下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層、粘着層等の任意の各層を設けたものが挙げられる。例えば、本発明のポリメチン化合物を、透明支持体、又は下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層、粘着層等の層のいずれかに含有させた構成とすることができ、これらの層とは別に本発明のポリメチン化合物を含有する色補正層を有する構成とすることもできる。本発明の光学フィルタの構成としては、本発明のポリメチン化合物を粘着層に含有させたものが、製造工程を削減でき、積層された光学フィルタを安価に製造できるので好ましい。
【0121】
上記粘着層は、上記粘着剤で形成される。上記粘着剤としては、例えば、シリコン系、ウレタン系、アクリル系等の粘着剤、ポリビニルブチラール系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、エチレン-酢酸ビニル系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤、SBR系粘着剤、ゴム系粘着剤等の公知の合わせガラス用透明粘着剤を用いることができ、中でもアクリル系粘着剤、特に酸性アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0122】
上記アクリル系粘着剤としては特に限定されず、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等の反応性官能基及びエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の単独重合体或いは複数種を組み合わせた共重合体、又は上記反応性官能基及びエチレン性不飽和二重結合を有する単量体と、(メタ)アクリル系単量体やビニル系単量体のようなエチレン性不飽和二重結合を有する単量体との共重合体を用いることができ、必要に応じて粘着剤の凝集力を向上させるために、硬化剤として、金属キレート系化合物、イソシアネート系化合物、メラミン化合物、エポキシ系化合物、アミン系化合物、アジリジン系化合物、オキサゾリン化合物等の架橋剤を含有するものを用いることができる。
【0123】
上記アクリル系粘着剤としては市販のものを用いることができ、例えば、デービーボンド5541(ダイアボンド社製)、SKダインAS-1925、KP-2230、SK-1811L(綜研化学社製)、DX2-PDP-19(日本触媒社製)、AT-3001(サイデン化学社製)、オリバインBPS5896(東洋インキ社製)、CS-9611(日東電工社製)等が挙げられる。
【0124】
上記粘着層を有する本発明の光学フィルタの製造において、本発明のポリメチン化合物や、本発明のポリメチン化合物以外の他の光吸収剤、各種安定剤等の任意成分を、透明支持体及び任意の各層から選択される任意の隣り合う二者間の粘着層に含有させる場合には、本発明のポリメチン化合物等を粘着剤に含有させて本発明の組成物とした後、該組成物を粘着剤として用いて、透明支持体及び任意の各層のうちの隣り合う二者を接着すればよい。更に、粘着層の表面に、易密着したポリエチレンテレフタレートフィルム等の公知のセパレータフィルムを設けることもできる。
【0125】
また、上記透明支持体の材料としては、例えば、ガラス等の無機材料;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-1,2-ジフェノキシエタン-4,4'-ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン、ノルボルネン樹脂等の高分子材料が挙げられる。透明支持体の透過率は80%以上であることが好ましく、86%以上であることが更に好ましい。ヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることが更に好ましい。屈折率は、1.45~1.70であることが好ましい。
【0126】
上記透明支持体中には、本発明のポリメチン化合物以外の他の光吸収剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、蛍光消光剤、フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、無機微粒子、耐光性付与剤、芳香族ニトロソ化合物、アミニウム化合物、イミニウム化合物、遷移金属キレート化合物、粘度鉱物等を添加することができ、また、上記透明支持体には、各種の表面処理を施すこともできる。
【0127】
本発明のポリメチン化合物以外の他の光吸収剤としては、例えば、光学フィルタを画像表示装置用途に用いる場合には、色調調整用の光吸収剤、外光の反射や映り込み防止用の光吸収剤が挙げられ、画像表示装置がプラズマディスプレイの場合には、赤外リモコン誤作動防止用の光吸収剤が挙げられる。
【0128】
上記色調調整用の上記光吸収剤としては、波長450~620nmのオレンジ光の除去のために用いられるものとして、トリメチンインドリウム化合物、トリメチンベンゾオキサゾリウム化合物、トリメチンベンゾチアゾリウム化合物等のトリメチンシアニン誘導体;ペンタメチンオキサゾリウム化合物、ペンタメチンチアゾリウム化合物等のペンタメチンシアニン誘導体;スクアリリウム色素誘導体;アゾメチン色素誘導体;キサンテン色素誘導体;アゾ色素誘導体;オキソノール色素誘導体;ベンジリデン色素誘導体;ピロメテン色素誘導体;アゾ金属錯体誘導体:ローダミン色素誘導体;フタロシアニン誘導体;ポルフィリン誘導体;ジピロメテン金属キレート化合物等が挙げられる。
【0129】
上記の外光の反射や映り込み防止用の光吸収剤(波長480~500nm対応)としては、トリメチンインドリウム化合物、トリメチンオキサゾリウム化合物、トリメチンチアゾリウム化合物、インドリデントリメチンチアゾニウム化合物等のトリメチンシアニン誘導体;フタロシアニン誘導体;ナフタロシアニン誘導体;ポルフィリン誘導体;ジピロメテン金属キレート化合物等が挙げられる。
【0130】
上記の赤外リモコン誤作動防止用の光吸収剤(波長750~1100nm対応)としては、ジイモニウム化合物;ペンタメチンベンゾインドリウム化合物、ペンタメチンベンゾオキサゾリウム化合物、ペンタメチンベンゾチアゾリウム化合物等のペンタメチンシアニン誘導体;ヘプタメチンインドリウム化合物、ヘプタメチンベンゾインドリウム化合物、ヘプタメチンオキサゾリウム化合物、ヘプタメチンベンゾオキサゾリウム化合物、ヘプタメチンチアゾリウム化合物、ヘプタメチンベンゾチアゾリウム化合物等のヘプタメチンシアニン誘導体;スクアリリウム誘導体;ビス(スチルベンジチオラト)化合物、ビス(ベンゼンジチオラト)ニッケル化合物、ビス(カンファージチオラト)ニッケル化合物等のニッケル錯体;スクアリリウム誘導体;アゾ色素誘導体;フタロシアニン誘導体;ポルフィリン誘導体;ジピロメテン金属キレート化合物等が挙げられる。
【0131】
また、上記透明支持体に添加することができる上記無機微粒子としては、例えば、二酸化珪素、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン等が挙げられる。
【0132】
上記透明支持体に施すことができる上記の各種の表面処理としては、例えば、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理等が挙げられる。
【0133】
本発明の光学フィルタに設けることができる上記下塗り層は、任意の各層とは別に光吸収剤を含有する光学フィルタ層を設ける場合に、透明支持体と光学フィルタ層との間に用いる層である。上記下塗り層は、ガラス転移温度が-60~60℃のポリマーを含む層、光学フィルタ層側の表面が粗面である層、又は光学フィルタ層のポリマーと親和性を有するポリマーを含む層として形成する。また、下塗り層は、光学フィルタ層が設けられていない透明支持体の面に設けて、透明支持体とその上に設けられる層(例えば、反射防止層、ハードコート層)との接着力を改善するために設けてもよく、光学フィルタと画像表示装置とを接着するための接着剤と光学フィルタとの親和性を改善するために設けてもよい。下塗り層の厚みは、2nm~20μmが好ましく、5nm~5μmがより好ましく、20nm~2μmが更に好ましく、50nm~1μmが更にまた好ましく、80nm~300nmが最も好ましい。ガラス転移温度が-60~60℃のポリマーを含む下塗り層は、ポリマーの粘着性で、透明支持体と光学フィルタ層とを接着する。ガラス転移温度が-60~60℃のポリマーは、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ブタジエン、ネオプレン、スチレン、クロロプレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル又はメチルビニルエーテルの重合又はこれらの共重合により得ることができる。ガラス転移温度は、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることが更に好ましく、25℃以下であることが更にまた好ましく、20℃以下であることが最も好ましい。下塗り層の25℃における弾性率は、1~1000MPaであることが好ましく、5~800MPaであることが更に好ましく、10~500MPaであることが最も好ましい。光学フィルタ層の表面が粗面である下塗り層は、粗面の上に光学フィルタ層を形成することで、透明支持体と光学フィルタ層とを接着する。光学フィルタ層の表面が粗面である下塗り層は、ポリマーラテックスの塗布により容易に形成することができる。ラテックスの平均粒径は、0.02~3μmであることが好ましく、0.05~1μmであることが更に好ましい。光学フィルタ層のバインダーポリマーと親和性を有するポリマーとしては、アクリル樹脂、セルロース誘導体、アルギン酸、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、可溶性ナイロン及び高分子ラテックス等が挙げられる。また、本発明の光学フィルタには、二以上の下塗り層を設けてもよい。下塗り層には、透明支持体を膨潤させる溶剤、マット剤、界面活性剤、帯電防止剤、塗布助剤、硬膜剤等を添加してもよい。
【0134】
本発明の光学フィルタに設けることができる上記反射防止層においては、低屈折率層が必須である。低屈折率層の屈折率は、上記透明支持体の屈折率よりも低い。低屈折率層の屈折率は、1.20~1.55であることが好ましく、1.30~1.50であることが更に好ましい。低屈折率層の厚さは、50~400nmであることが好ましく、50~200nmであることが更に好ましい。低屈折率層は、屈折率の低い含フッ素ポリマーからなる層(特開昭57-34526号、特開平3-130103号、特開平6-115023号、特開平8-313702号、特開平7-168004号の各公報記載)、ゾルゲル法により得られる層(特開平5-208811号、特開平6-299091号、特開平7-168003号の各公報記載)、或いは微粒子を含む層(特公昭60-59250号、特開平5-13021号、特開平6-56478号、特開平7-92306号、特開平9-288201号の各公報に記載)として形成することができる。微粒子を含む層では、微粒子間又は微粒子内のミクロボイドとして、低屈折率層に空隙を形成することができる。微粒子を含む層は、3~50体積%の空隙率を有することが好ましく、5~35体積%の空隙率を有することが更に好ましい。
【0135】
広い波長領域の反射を防止するためには、上記反射防止層において、低屈折率層に加えて、屈折率の高い層(中・高屈折率層)を積層することが好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.65~2.40であることが好ましく、1.70~2.20であることが更に好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50~1.90であることが好ましく、1.55~1.70であることが更に好ましい。中・高屈折率層の厚さは、5nm~100μmであることが好ましく、10nm~10μmであることが更に好ましく、30nm~1μmであることが最も好ましい。中・高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。中・高屈折率層は、比較的高い屈折率を有するポリマーバインダーを用いて形成することができる。屈折率が高いポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン共重合体、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、環状(脂環式又は芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタン等が挙げられる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高い。二重結合を導入してラジカル硬化を可能にしたモノマーの重合反応により形成されたポリマーを用いてもよい。
【0136】
更に高い屈折率を得るため、上記ポリマーバインダー中に無機微粒子を分散してもよい。無機微粒子の屈折率は、1.80~2.80であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物又は硫化物から形成することが好ましい。金属の酸化物又は硫化物としては、酸化チタン(例えば、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛等が挙げられる。これらの中でも、酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。無機微粒子は、これらの金属の酸化物又は硫化物を主成分とし、更に他の元素を含むことができる。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。他の元素としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P、S等が挙げられる。被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機材料、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例えばキレート化合物)、活性無機ポリマーを用いて、中・高屈折率層を形成することもできる。
【0137】
上記反射防止層の表面には、アンチグレア機能(入射光を表面で散乱させて、膜周囲の景色が膜表面に移るのを防止する機能)を付与することができる。例えば、透明フィルムの表面に微細な凹凸を形成してその表面に反射防止層を形成するか、或いは、反射防止層を形成後、エンボスロールにより表面に凹凸を形成することにより、アンチグレア機能を有する反射防止層を得ることができる。アンチグレア機能を有する反射防止層は、一般に3~30%のヘイズを有する。
【0138】
本発明の光学フィルタに設けることができる上記ハードコート層は、上記透明支持体の硬度よりも高い硬度を有する。ハードコート層は、架橋しているポリマーを含むことが好ましい。ハードコート層は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系のポリマー、オリゴマー又はモノマー(例えば紫外線硬化型樹脂)等を用いて形成することができる。シリカ系材料からハードコート層を形成することもできる。
【0139】
上記反射防止層(低屈折率層)の表面には、潤滑層を形成することができる。潤滑層は、低屈折率層表面に滑り性を付与し、耐傷性を改善する機能を有する。潤滑層は、ポリオルガノシロキサン(例えばシリコンオイル)、天然ワックス、石油ワックス、高級脂肪酸金属塩、フッ素系潤滑剤又はその誘導体を用いて形成することができる。潤滑層の厚さは、2~20nmであることが好ましい。
【0140】
上記の各層においてポリマーないしバインダー樹脂を使用する際には、同時に有機溶媒を使用することもでき、該有機溶媒としては、特に限定されることなく公知の種々の溶媒を適宜用いることができ、例えば、イソプロパノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルジグリコール等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール等のフッ化アルコール類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;メチレンジクロライド、ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は混合して用いることができる。
【0141】
また、上記の下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層、光学フィルタ層等は、一般的な塗布方法により形成することができる。塗布方法としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法(米国特許第2681294号明細書記載)等が挙げられる。二以上の層を同時塗布により形成してもよい。同時塗布法については、米国特許第2761791号、米国特許第2941898号、米国特許第3508947号、米国特許第3526528号の各明細書及び原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年朝倉書店発行)に記載がある。
【0142】
光学フィルタの作製において、本発明の組成物を塗布により適用する場合は、本発明の組成物に有機溶媒を含有させて本発明の組成物を塗工液とする。本発明のポリメチン化合物、バインダー樹脂、有機溶媒及び本発明のポリメチン化合物以外の光吸収剤、各種安定剤等の任意成分等を含む塗工液の濃度(固形分)は、1~50質量%、特に10~30質量%であるのが好ましい。
【実施例】
【0143】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0144】
〔実施例1〕化合物No.1の製造
化合物No.1及びその中間体の製造について下記に示す。
【0145】
<ステップ1;中間体1Aの製造>
フラスコに(4-ニトロベンゾイル)酢酸エチル(156.6g、0.66mol)、4-ヒドラジノベンゼンスルホンアミド塩酸塩(147.63g、0.66mol)、ピリジン(475.60g)を入れ、100℃で2時間攪拌後、これにメタノールを滴下して析出した固体をろ別し、減圧下、120度で溶剤留去し、中間体1Aの180.60gを得た(収率75.9%)。
【0146】
【0147】
<ステップ2;中間体1Bの製造>
2Lフラスコに1,1,2,3-テトラメチル-1H-ベンズ[e]インドリウム=ヨージド(245.86g、0.7mol)、N,N’-ジフェニルホルムアミジン(164.85g、0.84mol)、BuOH(636.1g)を加え、内温85℃で3時間反応を行った。HPLCで反応完結を確認し、水(12.6g、0.7mol)を滴下し30分攪拌後、これに酢酸エチルを滴下して析出した固体をろ別し、減圧下、80℃で乾燥し、中間体1Bの262.1gを得た(収率82.4%)。
【0148】
【0149】
<ステップ3;化合物No.1の製造>
2Lフラスコに中間体1B(113.6g、0.25mol)とピリジン(736g)を仕込み攪拌後、これに無水酢酸(38g、0.375mol)を常温で滴下し、50℃で撹拌を1時間行った。これに中間体1A(90.1g、0.25mol)を加え3時間反応後、油水分離(クロロホルム/水)を行い、取り出した水層に塩酸を酸性になるまで滴下し、ろ過をし、目的物を80.7g得た(収率54.4%)。
【0150】
〔実施例2~11〕化合物No.2~7及びNo.43~46の製造
対応する中間体を用いて実施例1と同様の製造方法によって化合物No.2~7及び43~46を得た。
【0151】
実施例1~11でそれぞれ得られた化合物No.1~No.7、No.43~No.46、及び比較化合物No.1、No.2、No.3について、以下の分析を行った。尚、比較化合物No.1~No.3の構造は、以下の通りである。
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
<最大吸収波長(λmax)及びモル吸光係数(ε)>
化合物No.1~No.7又はNo.43~No.46を10mg秤量し、100mlメスフラスコに入れ、これにクロロホルムを標線まで加え、超音波で10分震盪させ、均一化した溶液を得た。得られた溶液からホールピペットで2mlを取り出し、空の100mlメスフラスコに入れた後、これにクロロホルムを標線まで加え、測定サンプルを調製した。
上記測定サンプルについて、日本分光製U-3900にて下記の測定を行った。即ち、クロロホルムのベースラインを測定後、上記測定サンプルを光路長1cmのクォーツセルに入れ、800~300nmの可視光領域を0.5nm間隔にて300nm/minで吸光度測定し、600~400nmで最大吸光度となる波長をλmaxとした。また、λmaxの吸光度とその分子量から、ランベルトベールの法則を用い、モル吸光係数εを計算した。結果を[表1]に示す。
【0156】
<分解温度>
セイコーインスツルメンツ製示差熱同時熱重量測定装置TG-DTA6200を用いた。試料アルミパンに化合物No.1~No.7又はNo.43~No.46を2mg秤量し、窒素フロー200ml/min、昇温スピード10℃/min、測定温度範囲35℃~550℃にて、測定を行った。得られたTG曲線の重量減少0%の接線と10%重量減少時の接線との交点から分解温度を算出した。結果を[表1]に示す。
【0157】
<1H-NMR>
化合物を重溶媒(DMSO-d6)にそれぞれ溶解し、1H-NMRを測定した。結果を[表2]に示す。
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
〔評価例1〕
化合物No.3、No.4及び比較化合物No.3の酸化電位を下記の方法に従い評価した。結果を[表3]に示す。
【0162】
<酸化電位測定>
過塩素酸テトラブチルアンモニウム(ナカライテスク製ポーラログラフィー用試薬)を脱水ジクロロメタンに0.1Mの濃度で溶解し、この溶液に色素(化合物No.3、No.4又は比較化合物No.3)を1.0×10-3Mで溶解させた。この色素溶液を電気化学セルに5ml入れ、Ag/AgCl参照電極と白金ワイヤー型対極、白金作用極を取り付け、BAS製電気化学アナライザー600Cにて-0.4V~1.5Vまで掃引し、酸化電位のピーク値を求めた。
【0163】
【0164】
[表3]より、本発明のポリメチン化合物(化合物No.3及びNo.4)は、一般式(I)中のR8に相当する基がメチル基である比較化合物(比較化合物No.3)と比較して、酸化電位が高いことは明らかである。
【0165】
〔実施例12~21並びに比較例1及び2〕
化合物No.2~7若しくはNo.43~46又は上記比較化合物No.1~No.3の0.5質量%アセトン溶液0.4gと、ポリメチルメタクリレートの25質量%トルエン溶液3.0gを混合し、15分間超音波照射を行い、塗工液を調製した。詳細を[表4]に示す。
【0166】
【0167】
上記で得られた塗工液を、易密着処理した188μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、バーコーター#30により塗布した後、70℃で15分間乾燥し、光学フィルタ(膜厚7~8μm)を作製した。
【0168】
〔評価例2〕
上記光学フィルタについて、以下の耐光性試験を行った。
光学フィルタに、キセノン耐光性試験機(ATLAS製SUNTESTCPS+)にて光を48時間照射した。光照射前後の光学フィルタの吸収極大波長における吸光度を測定し、初期値(光照射前)を100として光照射後の相対値(吸光度保持率)を算出した。吸光度保持率は高い方が好ましい。結果を[表5]に示す。
【0169】
【0170】
[表5]より、本発明の光学フィルタは耐光性に優れることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明によれば、耐光性及び耐熱性に優れ、光学フィルム及び光学フィルタに好適なポリメチン化合物を提供することができる。