(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】基板処理装置、ガスボックス及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20220112BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20220112BHJP
C23C 16/448 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/31 B
C23C16/448
(21)【出願番号】P 2019174571
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2020-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(72)【発明者】
【氏名】鍋田 和弥
(72)【発明者】
【氏名】竹脇 基哉
【審査官】田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-242791(JP,A)
【文献】特開2013-062271(JP,A)
【文献】特開2011-001995(JP,A)
【文献】特開2010-265501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/31
C23C 16/448
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室を含む処理炉と、
前記処理室に前記基板を処理する処理ガスを供給する処理ガス供給路と、
前記処理室に供給される処理ガスの量を制御する処理ガス供給制御部と、
前記処理ガス供給路若しくは前記処理ガス供給制御部の少なくとも一部を加熱するヒータと、
前記処理ガス供給路と前記処理ガス供給制御部と前記ヒータとを収納するガスボックスと、を備え、
前記ガスボックスは、前記ガスボックス外の雰囲気を前記ガスボックス内に吸い込む吸込口と、排気ダクトに接続され前記ガスボックス内の雰囲気を前記排気ダクトに排気する排気口と、前記ガスボックス内の雰囲気を冷却するとともに前記雰囲気の温度を測定又は監視する温度制御機器と、前記ガスボックス内に漏洩した処理ガスを検知するガス漏洩センサと、を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記温度制御機器は、前記ガスボックスの内の雰囲気と接触する第1面及び前記ガスボックスの外の雰囲気と接触する第2面を有する放熱フィンと、前記第1面に雰囲気の流れを形成する第1ファンと、ガスボックス内の温度を測定する温度センサと、前記温度センサが測定した温度に応じて、第2面に雰囲気の流れを形成する前記ファンの回転数を制御する温度調整器と、を備える請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記温度制御機器は、前記第2面に雰囲気の流れを形成する第2ファンを更に備え、前記第2ファンは、前記ガス漏洩センサが漏洩を検知したときに停止させられる請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
処理室で基板を処理する基板処理装置に備えられるガスボックスであって、
前記処理室に前記基板を処理する処理ガスを供給する処理ガス供給路、及び、前記処理室に供給される処理ガスの量を制御する処理ガス供給制御部と、前記処理ガス供給路若しくは前記処理ガス供給制御部の少なくとも一部を加熱するヒータと、を収納する筐体と、
前記ガスボックス外の雰囲気を前記ガスボックス内に吸い込む吸込口と、
排気ダクトに接続され前記ガスボックス内の雰囲気を前記排気ダクトに排気する排気口と、
前記ガスボックス内の雰囲気を冷却するとともに前記雰囲気の温度を測定又は監視する温度制御機器と、
前記ガスボックス内に漏洩した処理ガスを検知するガス漏洩センサと、を備えるガスボックス。
【請求項5】
処理室に処理ガスを供給して基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法であって、
前記基板を処理する工程では、
前記処理室に前記基板を処理する処理ガスを供給する処理ガス供給路、及び、前記処理室に供給される処理ガスの量を制御する処理ガス供給制御部と、前記処理ガス供給路若しくは前記処理ガス供給制御部の少なくとも一部を加熱するヒータと、を収納するガスボックスの内部雰囲気の温度を取得する工程と、
取得した前記温度に基づいて、前記ガスボックスの内部雰囲気を冷却する温度制御機器のファンの回転数を決定する工程と、
吸込口を通じて前記ガスボックスの外から内に取り込まれた前記内部雰囲気を、温度制御機器によって冷却し、排気口から排気ダクトに排気する工程と、を備える半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、ガスボックス及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置(集積回路)等の製造工程において、シリコンウェーハ等の基板に薄膜の堆積、酸化、拡散、アニール等の熱処理を行う基板処理装置が広く用いられている。この種の基板処理装置は、処理室内に処理ガスを供給するガス供給系を有する。ガス供給系は、漏洩ガスの人への曝露を防止するために、ガスボックスと呼ばれるエンクロージャに収納される。ガスボックスは、負圧に管理された排気ダクトに接続され、換気される。
【0003】
常温において液体の原料が、気化器によって加熱及び気化されて処理ガスとして処理室内に供給される場合がある。その際、原料が再液化するのを防ぐため、配管は加熱されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-242791号公報
【文献】特開2013-62271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスボックスには、ガス供給系として、電気回路を有し処理ガスの流量を制御するMFC(マスフローコントローラ)が収納されうる。液体原料の使用などにより、加熱すべき配管の数が多くなったり、大きな被加熱物をガスボックス内に配置したりした場合、熱排気が間に合わず、ガスボックス内の温度(MFCの環境温度)がより高くなる可能性がある。ガスボックス内の温度が高く維持されたり、上下動する場合、部品特性によりガス流量制御性が悪くなり、処理された基板が製品として満足できない品質になることがある。
【0006】
本開示の目的は、基板処理装置におけるガス流量制御性の低下を防止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、基板を処理する処理炉と、前記処理室に前記基板を処理する処理ガスを供給する処理ガス供給路と、前記処理室に供給される処理ガスの量を制御する処理ガス供給制御部と、前記処理ガス供給路若しくは前記処理ガス供給制御部の少なくとも一部を加熱するヒータと、前記処理ガス供給路と前記処理ガス供給制御部と前記ヒータとを収納するガスボックスと、を備え、
前記ガスボックスは、前記ガスボックス外の雰囲気を前記ガスボックス内に吸い込む吸込口と、排気ダクトに接続され前記ガスボックス内の雰囲気を前記排気ダクトに排気する排気口と、ガスボックス内の雰囲気を冷却するとともに前記雰囲気の温度を測定又は監視する温度制御機器と、前記ガスボックス内に漏洩した処理ガスを検知するガス漏洩センサと、を備える技術が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、基板処理装置におけるガス流量制御性の低下を防止する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る基板処理装置の透視図である。
【
図2】実施形態に係る基板処理装置を垂直断面図である。
【
図3】実施形態に係るガスボックスの垂直面図である。
【
図4】実施形態に係る主コントローラのブロック図である。
【
図5】実施形態に係るガスボックスの温度制御に関連する処理のフロー図である。
【
図6】実施形態に係る変形されたボックス筐体の垂直面図である。。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
本開示を実施するための形態において、基板処理装置は、一例として、半導体装置(IC)の製造方法における処理工程を実施する半導体製造装置として構成されている。尚、以下の説明では、基板処理装置としてCVD(Chemical Vapor Deposition)を行うバッチ装置を想定する。
図1は、本開示に適用される処理装置の斜透視図として示されている。また、
図2は
図1に示す処理装置の側面透視図である。
【0012】
図1および2に示されているように、本開示の処理装置100は、複数のウエハ102を収容可能なFOUP等のポッド110(基板収容器、ウエハキャリアとも呼ぶ)によって搬入されたウエハ102を、処理炉103で処理するように構成される。ポッド搬入搬出口(基板収容器搬入搬出口)112は、処理装置100の筐体111の正面壁111aに、筐体111の内外を連通するように開設され、フロントシャッタ(搬入搬出口開閉機構)113によって開閉される。ロードポート(基板収容器受渡し台)114は、ポッド搬入搬出口112の正面前方側に設置され、ポッド110を載置されて位置合わせするように構成されている。ポッド110は、ロードポート114上に工程内搬送装置(図示せず)によって搬入され、またロードポート114上から搬出される。
【0013】
回転式ポッド棚(基板収容器載置棚)105は、筐体111内の前後方向の略中央部における上部に設置され、複数個のポッド110を保管するように構成されている。回転式ポッド棚105は、垂直に立設されて水平面内で回転可能に構成される支柱116と、支柱116に上中下段の各位置において放射状に支持された複数枚の棚板(基板収容器載置台)117とを備え、複数枚の棚板117はその上でポッド110を保持する。本例では、15個のポッドが保持可能であるが、それらの一部のみ図示されている。
【0014】
ポッド搬送装置(基板収容器搬送装置)118は、筐体111内におけるロードポート114と回転式ポッド棚105との間に設置され、ポッド110を保持したまま昇降可能なポッドエレベータ(基板収容器昇降機構)118aと、搬送機構としてのポッド搬送機構(基板収容器搬送機構)118bとで構成される。ポッド搬送装置118は、ポッドエレベータ118aとポッド搬送機構118bとの連続動作によって、ロードポート114、回転式ポッド棚105、ポッドオープナ(基板収容器蓋体開閉機構)131との間で、ポッド110を搬送することができる。
【0015】
サブ筐体119は、筐体111内の前後方向の略中央部における下部に構築され、装填室(ローディングエリア、移載室とも呼ぶ)124を画成する。サブ筐体119の正面壁119aにはウエハ102をサブ筐体119内に対して搬入搬出するためのウエハ搬入搬出口(基板搬入搬出口)120が一対、垂直方向に上下二段に並べられて開設されており、ウエハ搬入搬出口120にはポッドオープナ121がそれぞれ設置されている。ポッドオープナ121は、ポッド110を載置する載置台122と、ポッド110のキャップ(蓋体)を着脱するキャップ着脱機構(蓋体着脱機構)123とを備える。ポッドオープナ121は、載置台122に載置されたポッド110のキャップをキャップ着脱機構123によって着脱することにより、ポッド110のウエハ出し入れ口を開閉するように構成されている。
【0016】
装填室124は、ポッド搬送装置118や回転式ポッド棚105の設置空間から流体的に隔絶され、或いは、設置空間に比べて高い圧力(陽圧)に保たれることによって一方向にのみ流体連通するように構成される。ウエハ移載機構(基板移載機構)125は、装填室124の前側領域に設置され、ウエハ102を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置(基板移載装置)125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるためのウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bと、125cで構成されている。ウエハ移載装置エレベータ125bは、サブ筐体119内の右側面に上下方向に沿って設置される。ウエハ移載装置125aのツイーザ(基板保持体)125cは、ウエハ移載装置エレベータ125bおよびウエハ移載装置125aの動作により、ウエハ102を載せて若しくは掴んで、ボート(基板保持具)127に対してウエハ102を装填(チャージング)および脱装(ディスチャージング)する。
【0017】
移載室124の後側には、ボート127を待機させる待機領域126が構成されている。処理炉103は、待機領域126の上方に、炉口を下にして設けられている。処理炉103の炉口は、炉口シャッタ(炉口開閉機構)147により開閉される。
【0018】
ボートエレベータ(基板保持具昇降機構)115は、サブ筐体119内の待機領域126の右側面に設置され、ボート127を昇降させる。アーム128は、ボートエレベータ115の昇降台に連結され、炉口の蓋としてのシールキャップ129を水平に保持する。シールキャップ129は、ボート127を垂直に支持し、処理炉103の炉口の下端部を気密に閉塞可能なように構成されている。ボート127は、複数本の柱(保持部材)を備えており、複数枚(例えば、50枚~125枚程度)のウエハ102をその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に保持する。
【0019】
移載室124内の左側面部には、清浄化した雰囲気もしくは不活性ガスであるクリーンエア133を移載室124に供給するクリーンユニット134が設置される。クリーンユニット134は、供給ファンおよび防塵フィルタを備える。移載室124内には、ウエハの円周方向の位置を整合させる基板整合装置としてのノッチ合わせ装置(不図示)が設置されうる。クリーンユニット134から吹き出されたクリーンエア133は、ノッチ合わせ装置およびウエハ移載装置125a、待機部126にあるボート127に流通された後に、ウエハ移載装置エレベータ125bやボートエレベータ115に沿って設けられた吸気口(不図示)により吸い込まれて、筺体111の外部に排気がなされるか、もしくはクリーンユニット134の吸い込み側である一次側(供給側)にまで循環され、再びクリーンユニット134によって、移載室124内に吹き出されるように構成されている。
【0020】
ガスボックス140a,140bは、上下及び前後に長い直方体状を有し、その一側面が筐体111の側面と一直線に連続となるように、筐体111の背面に設けられ、ガス供給系を収納する。また他の側面には、開閉するメンテナンス扉80が設けられ、ガス供給系をメンテナンスできるようになっている。以下、メンテナンス扉80が設けられる面を、ガスボックス140a,140b自体の正面とする。前面パネル75は、メンテナンス扉80を含み、ボックス140a,140bの正面を構成する。上側のガスボックス140aは、気体原料やキャリアガスのガスユニットや、ファイナルバルブ等を収納し、下側のガスボックス140aは、液体原料のタンクや気化器、およびそれらの流量制御部等が収納されうる。ガスボックス140bは、ガスボックス140aにとって処理ガス源となりうる。
【0021】
以下、ボックス140a,140bを代表して、ガスボックス140aの内部構成を説明する。
図3に示されるように、ガスボックス140aは、全側面を覆うケーシングとしてのボックス筐体73を有し、ボックス筐体73の上面74には、排気ダクト81に接続され、内部の雰囲気(空気)を排気する排気口81aが設けらる。また前面パネル75の下方には、ボックス筐体73外の雰囲気(例えば空気)をボックス筐体73内に吸い込むための吸込口84が設けられている。排気ダクト81はステンレス製のフレキシブルダクト等にて連結され、基板処理装置以外のクリーンルームに設置された処理系排ガス路に排気ガスが排気されるようになっている。排気ダクト81の途中には、排気流量を調整するための手動のダンパ弁81bと、漏洩ガスを検出するガスセンサ81cとが設けられる。
【0022】
ガスボックス140aには、処理炉103内の処理室にウエハ102を処理する処理ガスを処理ガス供給流量制御部90を経由して供給する第1の処理ガス供給路としての第1配管82と、処理ガス供給量制御部90に処理ガスを供給する第2配管として第2配管83と、第1配管82と第2配管83との間に接続されるガスユニットとしての処理ガス供給流量制御部90と、が設けられている。本例では、処理室201へ向かう第1配管82は、ボックス筐体73の内部から上面を通して外部に引き出されている。処理ガス源からの第2配管83は、ボックス筐体73の外部から底面77を通して内部に引き込まれている。第1配管82、第2配管83、処理ガス供給量制御部90の他、タンクや気化器等を含めた総称として、それらをガス供給系と呼ぶ。
【0023】
一般に、処理装置100では、ウエハを熱処理する際に複数種の化学物質が使用される。化学物質は可燃性、支燃性、毒性、腐食性などに分類され、物質ごとに許容曝露濃度が定められている。化学物質を熱処理炉に搬送する第1配管8や第2配管配管83は、一般にはステンレスが使用されており、継手などを用いて接続されるため、外部への漏洩の可能性がある。そのため、配管をガスボックス(エンクロージャー)に収納し、ガスボックス内を排気して化学物質の漏洩時に作業員への暴露を防止するのが一般的である。ダンパ弁81bは、ガスボックス内を、化学物質の漏洩からの暴露を防止できる圧力まで下げるように調整される。排気ダクト81による換気は、化学物質だけでなく、熱排気も行っている。
【0024】
ガスボックス140a内には、ボックス筐体73の前面パネル75と対向する後板76の内壁に沿って設けられ、第1配管82や第2配管83、処理ガス供給量制御部90の各コンポーネントを支持する基盤91とを有する。また、ガスボックス140a内には、配管ヒータ99と、熱交換ユニット61も設けられる。
【0025】
処理ガス供給量制御部90は、下端において第1配管82と接続され、上端において第2配管83と接続され、第1配管82に流入する処理ガスbの供給流量若しくは供給圧力を制御するようになっている。簡易な例では、処理ガス供給量制御部90は、上流から下流に向かって流量制御器(MFC)92、エアバルブ93、及びフィルタ94が直列接続されて構成される。通常、このような流量制御器流量制御器を含む構成が、ガス種の数、ノズルの数或いはそれらの組合せの数ごとに複数設けられている。
【0026】
配管ヒータ99は、ガス供給系の内、気化された液体原料が通過しうる部分(加熱対象)の第1配管82、第2配管83、MFC92、エアバルブ93、及びフィルタ94を加熱する。配管ヒータ99は、対象を均等に加熱できることが望ましく、流路に沿って取り付けることができるリボンヒータやテープヒータ等の電気ヒータが用いられる。更に断熱材(不図示)が、それら覆うように巻き付けられうる。配管ヒータ99は、180℃程度まで昇温可能であるが、対象の温度は、蒸気圧との関係で、再液化を防ぐことができる温度となるように制御され、例えば30℃~100℃である。温度は、液体原料が流通する主経路が支線に比べ高く設定され、主経路の中でも下流ほど高く設定されうる。MFC92、エアバルブ93は、流路を含んでいる金属製ブロック部が加熱の対象であり、弁体の劣化を防ぐため、比較的低い温度に設定されうる。従って配管ヒータ99は、設定温度が異なる対象毎に分割され、温度制御用の温度センサ(不図示)と一緒に設けられうる。ガスボックス140bの場合には、原料タンク、気化器等も、ガスボックス内を温度上昇させうる。これらや配管ヒータ99を総称して発熱体と呼ぶ。
【0027】
なお、処理炉103内の処理室等をドライクリーニングする際には、流路の主経路を含む第1配管82と第2配管83には、気化された原料ではなく、クリーニングガスが流れうる。このとき、配管の過剰なエッチングや腐食を防ぐため、配管ヒータ99の温度は一時的に低く設定され、或いは加熱自体が停止されうる。なお温度を下げる前には、配管を液体原料から断絶した後、配管内に窒素等のパージガスを十分な時間流通させ、配管内を乾燥させるものとする。
【0028】
前面パネル75の下側には、複数のスリットによって吸込口84が形成される。整流フィン87は、吸込口84の内側で前面パネル75と平行に設けられ、吸込口84と処理ガス供給流量制御部90の上流端との間の空間を仕切る。この空間は下方にむけて開口しており、この整流フィン87は、吸込口84から吸い込まれる空気aの流れの向きを下向きに転換させる。空気aは、整流フィン87と底面77との間の隙間88を通ることで、ガスボックス140aの内部を、底部を十分にパージしながら上方に流れるようになる。整流フィン87はまた、吸込口84を通る流れ(特に流速)が、後述のファン69の動作によって乱されることを防止する。
【0029】
温度制御機器としての熱交換ユニット61は、前面パネル75の内面側に取り付けられ、ガスボックス140aの環境温度を下げる。熱交換ユニット61は、環境温度センサ62と、放熱フィン63と、温度調整器64と、吸気口65と排気口66と、ファン67とを備える。環境温度センサ62は、ガスボックス140a内の空気の温度を測定するものであり、熱容量が小さく応答性の良い熱電対が好ましい。環境温度センサ62は、ガスボックス140a内の空気の代表的な温度を測定するために、ガスボックス140a内で特に高温となる物体から適度に離れるように、例えばガスボックス140aの中心付近に設けられうる。
【0030】
放熱フィン63は、ガスボックス140a内外を流体的に隔絶しつつ、熱交換を行うように構成される。放熱フィン66は金属製で、多数のひだまたは折り返しを有し、ガスボックス140a内外のそれぞれの空気との接触面積が拡大されている。つまり放熱フィン66の内気側(第1面)は、ガスボックス140a内で露出している。
【0031】
ファン67は、放熱フィン66の外気側(第2面側)に空気の流れを作ることによって熱交換の効率を調整する。吸気口65と排気口66は、前面パネル75若しくは放熱フィン63の筐体に設けられる開口であり、ガスボックス140a外の空気を、放熱フィン63内に流通させる。ガスボックス140a内外を連通させないように、前面パネル75と放熱フィン63の間には、パッキン(不図示)等が設けられる。
【0032】
温度調整器64は、環境温度センサ62が検知した温度を、所定の温度に近づけるようにファン67の回転数を制御する。ファン67は、ガスボックス内の環境温度が高ければ回転数が高くなる一方、室温程度であれば回転を止めるように制御されうる。なおファン67は排気口66に取り付けるものに限らず、吸気口7にファンファン67にも取り付けられうる。この制御はフィードバック制御に限らず、例えば、ガスボックス内の発熱体の設定温度と環境温度の関係を利用し、ファン回転数をフィードフォワード制御してもよい。或いは、発熱体の設定温度とファン回転数との関係を保持するテーブルを参照して、ファン回転数を決定してもよい。温度調整器64は、熱交換ユニット61又はガスボックス140aの外に別個に設けられてもよい。
【0033】
図6に変形例にかかるボックス筐体の内部構成を示す。この図では、処理ガス供給量制御部90等の一部の構成は省略されている。熱交換ユニット61は明示的に筐体68を備え、その中に放熱フィン63で仕切られた2つの部屋が形成される。外側の部屋は、外気が吸気口65、ファン67、排気口66を通るように構成される。また内側の部屋では、筐体68に設けた吸気口68a、吹き出し口68bを通じて、吸気口68aに設けたファン69によって内気が流通するように構成される。このとき、筐体68は、ファン69によって形成される流れが、放熱フィン66のなかを十分に通るように空気を誘導する。筐体68はまた、ガス漏洩したときの作業員への暴露防止を考慮し、外気側とガスボックス側を完全に隔絶する。
【0034】
ここで、ガス配管の加熱は、冷えた配管の中に気体が通ることで再液化してしまうことを防止することを目的としており、環境温度が低くなりすぎることでヒータの温度制御性が悪くなったり、一部分が冷えすぎたりすることで再液化するリスクが発生する。そこで、ガスボックス内の温度を一定に保ちたい場合、温度調整器64はファン67やファン69の回転数を任意に制御させ、ガスボックス内の温度を、室温以上のある一定の温度に保つこともできる。
【0035】
なお、ファン69によってガスボックス140a内を循環されられる空気は、吹き出し口68bを出たのち、加熱対象の処理ガス供給量制御部90等に到達する前に、ガスボックス140a内に十分広がることが望ましい。これによって吹き出し口68bを出た低温の空気によって、配管等が局所的に冷却されることを防ぐ。例えば、吹き出し口68bは処理ガス供給量制御部90に対面しない位置に設けられる。
【0036】
また、ファン69の回転数を制御する場合、仮に空気の温度は一定でも回転数の変動によって、処理ガス供給量制御部90からの放熱量も変動し、温度が変化してしまう可能性がある。特に、配管ヒータ99や断熱材で覆われていない、MFC92の電気制御部等の温度が変動しうる。従って、回転数は、配管ヒータ99の設定温度を変更しない限り一定とするか、変化のレートを非常に小さい値に制限することができる。例えば、温度調整器64をデジタルPID(Proportional-Integral-Differential)コントローラによって実装した場合、その出力(操作量)の変化レートを制限するような設定を行う。温度調整器64は、処理装置全体を制御する主コントローラ131に通信可能に接続され、目標温度等が設定されうる。
【0037】
ガスボックス140bは、詳細な説明は省略するが、ガスボックス140aと同様に構成される。なお、ガスボックス140bの排気口81aは、。
【0038】
ここで
図4を参照して、制御部である主コントローラ131の構成を説明する。主コントローラ131は、CPU(Central Processing Unit)131a,RAM(Random Access Memory)131b,記憶装置131c,I/Oポート131dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM131b,記憶装置131c,I/Oポート131dは、内部バスを介して、CPU131aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ131には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置132と、後述の制御プログラム等を外部記録媒体からロードするための媒体リーダ133が接続されている。
【0039】
記憶装置131cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置131c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム、後述する半導体装置の製造方法の手順や条件などが記載されたプロセスレシピなどが、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する半導体装置の製造方法における各工程(各ステップ)をコントローラ131に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピ、制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、プロセスレシピ及び制御プログラムの組み合わせを含む場合がある。RAM131bは、CPU131aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0040】
I/Oポート131dは、上述のMFC92、エアバルブ93、配管ヒータ99、ロードポート114、回転式ポッド棚105、ポッド搬送装置118、ポッドオープナ131、ウエハ移載機125、ボートエレベータ115、炉口シャッタ147等を電気信号によって操作可能に構成されている。
【0041】
CPU131aは、記憶装置131cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置132からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置131cからレシピ等を読み出すように構成されている。CPU131aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC92、エアバルブ93、配管ヒータ99等、処理装置100の各部を制御するように構成されている。
【0042】
図5に、温度調整器64及び主コントローラ131による、ガスボックス140a,140bの温度制御のフローの一例が示される。この処理は、発熱体が通電されている間、反復して継続される。すなわち通電によってガスボックス140a内が目標温度を超える高温になる前に、主コントローラ131によって、目標温度が設定されることで開始される。
【0043】
ステップS10において、温度調整器64は環境温度センサ62の検知温度を制御量として取得する。
【0044】
ステップS11において、温度調整器64は、回転数を決定する。例えば前回に保存しておいた、内部状態を読み出し、この内部状態と、検知温度と目標温度の差分に基づいて、内部状態を更新する。そして新たな内部状態に基づいて、操作量である回転数を算出する。ここで内部状態とは例えば、微分器への入力信号や、積分器の出力信号である。ファン67の制御に用いられるPIDパラメータは、ファン69のPIDパラメータよりも時定数が小さくなるように設定されうる。
【0045】
ステップS12において、温度調整器64は、ファン67へ回転数をセットする。例えばファン67へ、回転数に対応する電圧を印加する。これによりファン67は、決定された回転数で回転する。このとき、吸込口84からガスボックス140a内に取り込まれた外の雰囲気が、熱交換ユニット61の放熱フィン66によって冷却され、排気口81aから排気ダクト81に排気される。
【0046】
ステップS14において、温度調整器64は、制御量や操作量が異常な状態にあると判定したときは、主コントローラ131やエラー信号を報知する。あるいは、温度調整器64は単に現在の制御量や操作量を主コントローラ131の伝達し、異常の判定を主コントローラ131で行ってもよい。異常な状態とは、制御量が、目標温度よりも所定以上大きい場合や、操作量が所定時間以上最大値で飽和している場合である。また、ファンの実際の回転数を検知できる場合、ファンの停止(故障)を異常と判定してもよい。
【0047】
ステップS15において、ステップS14において異常が検知されていた場合、主コントローラ131は、対応する所定のインターロック動作を実行する。具体的には、特に高い温度に設定された配管或いは発熱量の大きい発熱体に関連するガスの供給を、エアバルブ93或いはより上流のバルブを操作して停止するとともに、第1配管82、第2配管83に適宜パージガスを流通させ、また配管ヒータ99等の発熱体への給電を停止または弱める。ウエハの処理レシピが進行中の際は、レシピを中断してアラームを発報し、操作員による確認を待つ。なお異常が軽微な場合は、アラームを発報しつつレシピは続行してもよい。この間、異常な温度の推移や、異常が持続した時間の累積がログとして記録されうる。
【0048】
ステップS16において、主コントローラ131は、ガスセンサ81cが、漏洩ガスを検知している(ガス漏洩アラームが発報されている)か判定し、漏洩ガスを検知している場合、対応する所定のインターロック動作を実行する。具体的には、ステップS15と同様のバルブ操作に加え、ファン67を停止させる。これは、ファン67の稼働によって拡大するガスボックス140a内の圧力偏差が、ボックス筐体73からの予期しないリークを生じさたり、ファン67による攪拌が吸気口84から排気口81aへの一様な流れによって維持される拡散バリアを破壊し、吸気口84へ向かうガス拡散によってリークが生じたりする恐れがあるためである。ファン67を停止させることで、ガス漏洩に対する安全性が最大化されうる。
【0049】
本実施形態によれば、ガスボックス140aの気密性を維持しつつ内部を冷却可能な熱交換ユニット61を設けたことで、加熱する配管の数が多くなった場合や大きな被加熱物をガスボックス内に配置した場合でも、ガスボックス内の空気を所定以下の温度に保つことができ、基板処理の生産性を維持し、電気部品等が破損し難い装置とすることができる。電気部品は、MFCに用いられるような能動部品に限らず、配線ケーブル等も含まれうる。
【0050】
逆に言えば、本実施形態によって、ガスボックス内の空気を所定以下の温度に保ちながら、配管等を加熱できる上限温度を高めることができる。別の言い方をすれば、被加熱物(配管等)と、被加熱物ではないもの(電気部品等)との温度差を拡大できる。電気部品は、温度が上昇すると短寿命化するほか、望ましくないガス(有機ガスやリン等の金属)を放出し、ウエハの処理の品質を低下させうる。
【0051】
また、本実施形態によれば、排気ダクト81への排気を増加させることなく、ガスボックス内を所定以下の温度に保つに保つことができる。処理系排ガス路の排気には、除害のためのコストがかかっており、そこへ大量の空気を流すことは運用コストの増加を招く。また排気ダクト81には、緊急時に排出される爆発性のガスをその爆発下限界以下の濃度に希釈するために、大量の不活性ガスが流されることがあり、そのような際に排気能力を超えないよう、十分な排気能力を用意しようとすると設備コストが増加する。
【0052】
また、本実施形態によれば、熱交換ユニット61を正面パネルのメンテナンス扉80に取り付けたことで、ガスボックスを大型化させることなく、熱交換ユニット61に十分な冷却能力を持たせることができる。熱交換ユニット61は空冷式のため、電気ケーブルによる接続のみが必要であり、可動するメンテナンス扉80へ容易に取り付けられ、ファン67の交換もしやすい。
【0053】
上述の実施形態の説明では、処理ガス供給量制御部90は、MFC92等のコンポーネントが、個別配管で相互接続される構成としたが、集積化ガスシステムとして実現してもよい。その場合、配管ヒータによる加熱は、内部にコンポーネント間を接続する流路を有し、その上にコンポーネントを搭載するベースブロックを単位として行われる。また隣接するMFCの間には、空気が流通する隙間を設け、電気回路部の過熱を防ぐことができる。
【0054】
<付記> 本開示は以下の内容を含む。
【0055】
前記熱交換器は、前記ガスボックス内部に設けられ、前記低温源として前記ガスボックス外の空気を用いるものであって、前記ガスボックスに設けた上通気口及び下通気口に連通し、ガス制御ユニットが設けられた空間とは遮断された外部空気流路に接触するとともに、前記空間にも接触するように構成され、前記外部空気流路には冷媒ファンが設けられる。
【0056】
前記熱交換器は、前記ガスボックスの開閉扉に設けられる。
【符号の説明】
【0057】
61 熱交換ユニット(温度制御機器)、 62 環境温度センサ、 63 放熱フィン、 64 温度調整器、 65 吸気口、 66 排気口、 67、69 ファン、 68 筐体、 73 ボックス筐体、 75 正面パネル、 81 排気ダクト、 81c ガスセンサ、 82 第1配管(第1の処理ガス供給路)、 83 第2配管(第2の処理ガス供給路)、 84 吸込口、 90 処理ガス供給流量制御部、 92 MFC、 93 エアバルブ、 100 処理装置、 102 ウエハ、 103 処理炉