(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】配電用電線・ケーブル及び分岐付ケーブル
(51)【国際特許分類】
H02G 15/08 20060101AFI20220112BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20220112BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
H02G15/08
H01B7/00 305
H02G1/14
(21)【出願番号】P 2021032225
(22)【出願日】2021-03-02
【審査請求日】2021-06-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591086843
【氏名又は名称】古河電工産業電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】桜井 裕士
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 久弥
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 覚
【審査官】石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-167335(JP,A)
【文献】特開2018-006267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/08
H01B 7/00
H01B 7/04
H02G 1/14
H01B 13/00
H01R 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電線・ケーブルの少なくとも一方の端部に第2の電線・ケーブルが接続されている配電用電線・ケーブルであって、
前記第1の電線・ケーブルの導体の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記第2の電線・ケーブルの導体の材料が銅、銅合金、銀又は銀合金のいずれかであり、
前記第1の電線・ケーブルの導体と前記第2の電線・ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線を撚り合わせてなり、
前記第2の電線・ケーブルの導体を構成する素線よりも前記第1の電線・ケーブルの導体を構成する素線の本数が多く、
かつ、前記第2の電線・ケーブルの導体の径よりも前記第1の電線・ケーブルの導体の径が大きく
しつつも、
前記第2の電線・ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第1の電線・ケーブルの導体を構成する素線の径を細くして、前記第2の電線・ケーブルよりも前記第1の電線・ケーブルの可撓性が高く
しており、
前記第1の電線・ケーブルは、延線経路に延線される延線用の電線・ケーブルであり、
前記第2の電線・ケーブルは、配電用電線・ケーブルを既存の設備に接続するための接続用の電線・ケーブルであ
って、当該第2の電線・ケーブルが接続される前記既存の設備側の接続端子を、前記第1の電線・ケーブルを直接的に接続する場合よりも小型化することが可能なことを特徴とする配電用電線・ケーブル。
【請求項2】
第1の電線・ケーブルの少なくとも一方の端部に第2の電線・ケーブルが接続されている配電用電線・ケーブルであって、
前記第1の電線・ケーブルの導体の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記第2の電線・ケーブルの導体の材料が銅、銅合金、銀又は銀合金のいずれかであり、
前記第1の電線・ケーブルの導体と前記第2の電線・ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線を撚り合わせてなり、
前記第2の電線・ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第1の電線・ケーブルの導体を構成する素線の径が細く、
前記第2の電線・ケーブルの可撓性は、前記第1の電線・ケーブルと同等以上であり、
前記第2の電線・ケーブルの導体を構成する素線よりも前記第1の電線・ケーブルの導体を構成する素線の本数が多く、
前記第2の電線・ケーブルの導体の径よりも前記第1の電線・ケーブルの導体の径が大きく、
前記第1の電線・ケーブルは、延線経路に延線される延線用の電線・ケーブルであり、
前記第2の電線・ケーブルは、配電用電線・ケーブルを既存の設備に接続するための接続用の電線・ケーブルであることを特徴とする配電用電線・ケーブル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の配電用電線・ケーブルを幹線ケーブルとし、前記幹線ケーブルに分岐接続された複数の支線ケーブルを有する分岐付ケーブルであって、
前記幹線ケーブルは、前記第1の電線・ケーブルを第1幹線ケーブルとし、前記第2の電線・ケーブルを既存の設備に電気的に接続するための第2幹線ケーブルとし、
前記支線ケーブルは、前記第1幹線ケーブルに接続されていることを特徴とする分岐付ケーブル。
【請求項4】
前記支線ケーブルは、一端部が前記第1幹線ケーブルに接続された第1支線ケーブルと、前記第1支線ケーブルの他端部に接続された第2支線ケーブルとを有し、
前記第1支線ケーブルの導体の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記第2支線ケーブルの導体の材料が銅、銅合金、銀又は銀合金のいずれかであり、
前記第1支線ケーブルの導体と前記第2支線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線を撚り合わせてなり、
前記第2支線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第1支線ケーブルの導体を構成する素線の径が細く、
前記第2支線ケーブルよりも前記第1支線ケーブルの可撓性が高く、
前記第2支線ケーブルの導体を構成する素線よりも前記第1支線ケーブルの導体を構成する素線の本数が多く、
前記第2支線ケーブルの導体の径よりも前記第1支線ケーブルの導体の径が大きく、
前記第1支線ケーブルは、延線経路に延線される延線用のケーブルであり、
前記第2支線ケーブルは、配電用電線・ケーブルを既存の設備に接続するための接続用のケーブルであることを特徴とする請求項3に記載の分岐付ケーブル。
【請求項5】
前記支線ケーブルは、一端部が前記第1幹線ケーブルに接続された第1支線ケーブルと、前記第1支線ケーブルの他端部に接続された第2支線ケーブルとを有し、
前記第1支線ケーブルの導体の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記第2支線ケーブルの導体の材料が銅、銅合金、銀又は銀合金のいずれかであり、
前記第1支線ケーブルの導体と前記第2支線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線を撚り合わせてなり、
前記第2支線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第1支線ケーブルの導体を構成する素線の径が細く、
前記第2支線ケーブルの可撓性は、前記第1支線ケーブルと同等以上であり、
前記第2支線ケーブルの導体を構成する素線よりも前記第1支線ケーブルの導体を構成する素線の本数が多く、
前記第2支線ケーブルの導体の径よりも前記第1支線ケーブルの導体の径が大きく、
前記第1支線ケーブルは、延線経路に延線される延線用のケーブルであり、
前記第2支線ケーブルは、配電用電線・ケーブルを既存の設備に接続するための接続用のケーブルであることを特徴とする請求項3に記載の分岐付ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電用電線・ケーブル及び分岐付ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配電用途の電線・ケーブルの導体には銅もしくは銅合金が広く使用されているが、近年、軽量化を目的として電線・ケーブルの導体にアルミニウムもしくはアルミニウム合金も使用され始めている。
一方、現在広く普及している分電盤のようなケーブルが接続される機器は、接続部が銅製であって銅導体との接続を前提に設計されている。このため、アルミニウム導体を接続する場合には異種金属接触腐食が問題となる。つまり、その接続箇所に結露が生じるなどして水分が介在してしまうと、アルミニウム導体が損傷してしまうので、分電盤での結露・湿気対策が必要になる。
【0003】
また、アルミ電線を、例えば銅ブスバーに接続するために用いるアルミ端子が知られている(例えば、特許文献1,非特許文献1参照。)。
このアルミ端子は、アルミ電線と銅ブスバーとの接続箇所での異種金属接触腐食の発生を防ぐ機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】古河電工 銅厚めっきアルミ端子カタログ、[平成26年10月30日検索]、インターネット<URL:http://www.furukawa.co.jp/tukuru/pdf/aluminum-tanshi_d321.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,非特許文献1のアルミ端子は、通常の端子に比べて高価であり、コストの増大を招いてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、軽量化が可能であって特殊な端子を不要とする配電用電線・ケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、本発明は、
第1の電線・ケーブルの少なくとも一方の端部に第2の電線・ケーブルが接続されている配電用電線・ケーブルであって、
前記第1の電線・ケーブルの導体の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記第2の電線・ケーブルの導体の材料が銅、銅合金、銀又は銀合金のいずれかであり、
前記第1の電線・ケーブルの導体と前記第2の電線・ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線を撚り合わせてなり、
前記第2の電線・ケーブルの導体を構成する素線よりも前記第1の電線・ケーブルの導体を構成する素線の本数が多く、かつ、前記第2の電線・ケーブルの導体の径よりも前記第1の電線・ケーブルの導体の径が大きくしつつも、
前記第2の電線・ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第1の電線・ケーブルの導体を構成する素線の径を細くして、前記第2の電線・ケーブルよりも前記第1の電線・ケーブルの可撓性が高くしており、
前記第1の電線・ケーブルは、延線経路に延線される延線用の電線・ケーブルであり、
前記第2の電線・ケーブルは、配電用電線・ケーブルを既存の設備に接続するための接続用の電線・ケーブルであって、当該第2の電線・ケーブルが接続される前記既存の設備側の接続端子を、前記第1の電線・ケーブルを直接的に接続する場合よりも小型化することが可能なことを特徴とする。
【0009】
また、他の本発明は、
第1の電線・ケーブルの少なくとも一方の端部に第2の電線・ケーブルが接続されている配電用電線・ケーブルであって、
前記第1の電線・ケーブルの導体の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記第2の電線・ケーブルの導体の材料が銅、銅合金、銀又は銀合金のいずれかであり、
前記第1の電線・ケーブルの導体と前記第2の電線・ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線を撚り合わせてなり、
前記第2の電線・ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第1の電線・ケーブルの導体を構成する素線の径が細く、
前記第2の電線・ケーブルの可撓性は、前記第1の電線・ケーブルと同等以上であり、
前記第2の電線・ケーブルの導体を構成する素線よりも前記第1の電線・ケーブルの導体を構成する素線の本数が多く、
前記第2の電線・ケーブルの導体の径よりも前記第1の電線・ケーブルの導体の径が大きく、
前記第1の電線・ケーブルは、延線経路に延線される延線用の電線・ケーブルであり、
前記第2の電線・ケーブルは、配電用電線・ケーブルを既存の設備に接続するための接続用の電線・ケーブルであることを特徴とする。
【0010】
また、他の本発明は、
上記配電用電線・ケーブルを幹線ケーブルとし、前記幹線ケーブルに分岐接続された複数の支線ケーブルを有する分岐付ケーブルであって、
前記幹線ケーブルは、前記第1の電線・ケーブルを第1幹線ケーブルとし、前記第2の電線・ケーブルを既存の設備に電気的に接続するための第2幹線ケーブルとし、
前記支線ケーブルは、前記第1幹線ケーブルに接続されていることを特徴とする分岐付ケーブル。
【0011】
また、本発明は、上記分岐付ケーブルにおいて、
前記支線ケーブルは、一端部が前記第1幹線ケーブルに接続された第1支線ケーブルと、前記第1支線ケーブルの他端部に接続された第2支線ケーブルとを有し、
前記第1支線ケーブルの導体の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記第2支線ケーブルの導体の材料が銅、銅合金、銀又は銀合金のいずれかであり、
前記第1支線ケーブルの導体と前記第2支線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線を撚り合わせてなり、
前記第2支線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第1支線ケーブルの導体を構成する素線の径が細く、
前記第2支線ケーブルよりも前記第1支線ケーブルの可撓性が高く、
前記第2支線ケーブルの導体を構成する素線よりも前記第1支線ケーブルの導体を構成する素線の本数が多く、
前記第2支線ケーブルの導体の径よりも前記第1支線ケーブルの導体の径が大きく、
前記第1支線ケーブルは、延線経路に延線される延線用のケーブルであり、
前記第2支線ケーブルは、配電用電線・ケーブルを既存の設備に接続するための接続用のケーブルであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記分岐付ケーブルにおいて、
前記支線ケーブルは、一端部が前記第1幹線ケーブルに接続された第1支線ケーブルと、前記第1支線ケーブルの他端部に接続された第2支線ケーブルとを有し、
前記第1支線ケーブルの導体の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記第2支線ケーブルの導体の材料が銅、銅合金、銀又は銀合金のいずれかであり、
前記第1支線ケーブルの導体と前記第2支線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線を撚り合わせてなり、
前記第2支線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第1支線ケーブルの導体を構成する素線の径が細く、
前記第2支線ケーブルの可撓性は、前記第1支線ケーブルと同等以上であり、
前記第2支線ケーブルの導体を構成する素線よりも前記第1支線ケーブルの導体を構成する素線の本数が多く、
前記第2支線ケーブルの導体の径よりも前記第1支線ケーブルの導体の径が大きく、
前記第1支線ケーブルは、延線経路に延線される延線用のケーブルであり、
前記第2支線ケーブルは、配電用電線・ケーブルを既存の設備に接続するための接続用のケーブルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軽量化が可能であって特殊な端子を用いることなく接続できる配電用電線・ケーブルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の配電用電線・ケーブルを示す外観図である。
【
図2】配電用電線・ケーブルにおける第1の電線・ケーブルと第2の電線・ケーブルの接続部分を一部断面視して示す側面図である。
【
図3】
図2のa-a線における断面図であり、第1の電線・ケーブルの断面図である。
【
図4】
図2のb-b線における断面図であり、第2の電線・ケーブルの断面図である。
【
図5】第1の電線・ケーブルと第2の電線・ケーブルの可撓性を計測するための試験装置の構成図である。
【
図6】配電用電線・ケーブルをトリプレックスとした状態を示す斜視図である。
【
図7】第3実施形態の分岐付ケーブルを示す外観図である。
【
図8】分岐付ケーブルにおける幹線ケーブルと支線ケーブルの接続部分を一部断面視して示す側面図である。
【
図9】
図9(A)~
図9(C)は分岐付ケーブルの布設作業を工程順に示した説明図である。
【
図10】第4実施形態の分岐付ケーブルを示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
なお、以下に述べる配電用電線・ケーブルに関する技術は、配電用電線にも配電用ケーブルにも適用できる技術である。
【0016】
[第1実施形態]
図1は第1実施形態の配電用電線・ケーブル100を示す外観図、
図2は配電用電線・ケーブル100における第1の電線・ケーブル10と第2の電線・ケーブル20の接続部分を一部断面視して示す側面図である。
【0017】
配電用電線・ケーブル100は、例えば、
図1、
図2に示すように、主たる第1の電線・ケーブル10と、第1の電線・ケーブル10の両端部に接続された第2の電線・ケーブル20を備えている。
【0018】
第1の電線・ケーブル10は、延線経路に延線される延線用の電線・ケーブルであり、配電用電線・ケーブル100の大部分(例えば、90%以上)を占める長さを有している。
この第1の電線・ケーブル10の導体11の材料には、アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられている。
導体11は、複数の素線11aが撚り合わされてなる。例えば、
図3に示すように、導体11は、φ1.8[mm]の素線11aを61本撚りした断面積が150[mm
2]の導体である。この導体11は絶縁材料からなる絶縁層12で覆われている。なお、絶縁層12は図示しないシースにより覆われていてもよい。
【0019】
第2の電線・ケーブル20は、配電用電線・ケーブル100を既存の設備の機器に電気的に接続するための接続用の電線・ケーブルであり、第1の電線・ケーブル10の端部に接続されている。
この第2の電線・ケーブル20の導体21の材料には、銅又は銅合金が用いられている。
導体21は、複数の素線21aが撚り合わされてなる。例えば
図4に示すように、導体21は、φ2.6[mm]の素線21aを19本撚りした断面積が100[mm
2]の導体である。この導体21は絶縁材料からなる絶縁層22で覆われている。なお、絶縁層22は図示しないシースにより覆われていてもよい。
ここで、銅の導電率を100とした場合、アルミニウムの導電率は約60であるので、銅製の導体とアルミニウム製の導体とで略同じ通電容量とするために導体の抵抗を等しくするように、アルミニウム製の導体の断面積に対し、銅製の導体の断面積を約60%にしている。
【0020】
また、第1の電線・ケーブル10の導体11のアルミニウム又はアルミニウム合金からなる素線11aの径を第2の電線・ケーブル20の導体21の銅又は銅合金からなる素線21aの径よりも十分に小さくすることで、第1の電線・ケーブル10の可撓性を第2の電線・ケーブル20よりも高めている。
【0021】
第1の電線・ケーブル10と第2の電線・ケーブル20の可撓性は、いずれも、
図5に示す試験装置Tによって計測されるたわみ量に基づいて評価した。
試験装置Tは、試験架台T1と電線固定部T2と重りT3とを備えている。
試験架台T1は、十分な重量を有し、電線固定部T2に把持された第1又は第2の電線・ケーブル10,20を水平に保持する。即ち、試験架台T1は、水平面上に設置した状態でその上面が水平となる。
電線固定部T2は、試験架台T1の上面に装備されており、第1又は第2の電線・ケーブル10,20の一端部を把持することができる。電線固定部T2は、第1又は第2の電線・ケーブル10,20の一端部を、その中心線が水平となるように把持することができる。
重りT3は、第1又は第2の電線・ケーブル10,20の他端部に着脱可能であり、その重量は、例えば、500[g]とする。
【0022】
測定の際には、後述する延出長さL+取り付け代以上の長さ(例えば、1100[mm])の第1及び第2の電線・ケーブル10,20が用意される。第1及び第2の電線・ケーブル10,20は、いずれも、予め曲がり等のくせが取り除かれて真っ直ぐな状態に矯正される。また、材料の調質のため、予め、20±5[℃]の環境に1時間以上放置された物を使用した。
第1,第2の電線・ケーブル10,20は、それぞれ個別に、上記試験装置Tの電線固定部T2に、一端部が把持される。このとき、第1又は第2の電線・ケーブル10,20は、電線固定部T2よりも他端部側の長さ(延出長さL)が、例えば、900[mm]となるように調整される。
また、一端部が把持された第1,第2の電線・ケーブル10,20の他端部は、いずれも、自重によって撓みが生じて下降する。従って、第1,第2の電線・ケーブル10,20は、いずれも撓みによって下降した他端部の最低部の高さを予め測定してそれぞれの原点としておく。
そして、第1又は第2の電線・ケーブル10,20の他端部には、重りT3が装着される。
【0023】
このように取り付けられた第1又は第2の電線・ケーブル10,20は、電線固定部T2側を支点として、他端部が下方にさらに撓みを生じる。
そして、重りT3を装着して約20秒経過後に、第1,第2の電線・ケーブル10,20のそれぞれについて、他端部側のたわみ量bを計測した。たわみ量bは、電線固定部T2に把持された状態における第1,第2の電線・ケーブル10,20の前述した自重で撓んだ他端部の最低部の高さを基準高さsとし、当該基準高さsと第1,第2の電線・ケーブル10,20の他端部の最低部の高さとの差から求めた。
第1,第2の電線・ケーブル10,20のそれぞれについて計測されたたわみ量bの大小から、第1,第2の電線・ケーブル10,20のそれぞれの可撓性の大小を評価した。即ち、たわみ量bが大きいほど可撓性が大きくなる。
これによると、第1の電線・ケーブル10のたわみ量bは、500[g]の負荷をかけたときに210[mm]、第2の電線・ケーブル20のたわみ量bは、70[mm]となり、第1の電線・ケーブル10は3倍の可撓性を示した。
【0024】
図2に示すように、第1の電線・ケーブル10の導体11と、第2の電線・ケーブル20の導体21は、接続部材30を介して接続されている。
接続部材30には、例えば導体接続管やコネクタを用いることができる。コネクタとしてはC型コネクタ、T型コネクタなどを用いることができるが特に限定するものではない。
接続部材30の材料には、アルミニウム又はアルミニウム合金、もしくは銅又は銅合金が用いられている。なお、接続部材30は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることが好ましい。
接続部材30が、アルミニウム又はアルミニウム合金、もしくは銅又は銅合金からなることで、導体11と導体21とを好適に接続することができる。
【0025】
接続部材30を介して第1の電線・ケーブル10の導体11と第2の電線・ケーブル20の導体21とを接続した箇所には、絶縁被覆部40が設けられている。
絶縁被覆部40は、絶縁性の材料でケーブルの接続箇所を被覆したものであり、例えば、レジン、モールド、テープ巻き、熱収縮チューブ、常温収縮チューブなどを用いることができる。
この絶縁被覆部40は、電線・ケーブルの接続箇所を保護する機能を有しており、後述するように、その接続箇所に良好な絶縁性や防水性を付与するようになっている。
【0026】
この配電用電線・ケーブル100は、施工現場にて第1の電線・ケーブル10と第2の電線・ケーブル20を接続するのではなく、工場などにて予め接続されたものを施工現場に搬入してから布設する。
第1の電線・ケーブル10と第2の電線・ケーブル20を品質管理の行き届いた工場にて接続することによれば、電線・ケーブルの接続箇所に良好な絶縁性や防水性を付与することができる。
具体的には、熟練作業者が工場にて専用工具を用いて第1の電線・ケーブル10と第2の電線・ケーブル20を接続することにより、配電用電線・ケーブル100の品質が安定する。特に、熟練作業者が温度・湿度が管理された工場内で、導体11,21表面の酸化被膜を除去するブラッシング後に、酸化及び腐食を防止するコンパウンドを内面に塗布した接続部材30との接続作業を所定の時間内に終えるようにすること、接続部材のケーブル接続後の形状を管理することで、配電用電線・ケーブル100の品質がより一層安定する。
【0027】
例えば、工場にて製造された配電用電線・ケーブル100は、
図1に示すように、必要に応じてドラム1に巻き取られた状態で出荷される。
なお、配電用電線・ケーブル100における第1の電線・ケーブル10と第2の電線・ケーブル20の長さは、施工現場毎に、配電用電線・ケーブル100を延線する経路長に応じて予め調整されている。特に、第2の電線・ケーブル20は、既存の設備の機器である分電盤に接続する際に切断される余長も見込んで長さ調整されている。
【0028】
このような配電用電線・ケーブル100は、第1の電線・ケーブル10が延線用の電線・ケーブルであり、第2の電線・ケーブル20が接続用の電線・ケーブルである。このため、第2の電線・ケーブル20は、配電用電線・ケーブル100を既存の設備の機器に接続するために必要最小限の長さしか必要とされず、配電用電線・ケーブル100の殆ど全てを第1の電線・ケーブル10で占めることが可能である。
そして、第1の電線・ケーブル10は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる導体11を有するので、導体が銅もしくは銅合金であった従来の電線・ケーブルに比べて、飛躍的な軽量化と低コスト化を図ることができる。
そして、配電用電線・ケーブル100の一端又は両端に、銅又は銅合金からなる導体21を有する第2の電線・ケーブル20が接続されているので、既存の分電盤や電源設備の機器に配電用電線・ケーブル100を電気的に接続する場合に、特殊な端子を用いなくとも、異種金属接触腐食が抑制される。
また、アルミニウムの導電率は、銅の約60%なので、第2の電線・ケーブル20銅からなる導体21に流す電流と同じ電流を第1の電線・ケーブル10のアルミニウムからなる導体11に流そうとすると、導体11の外径を太くする必要が生じる。第1の電線・ケーブル10の導体11に端子を接続しようとした場合、端子も大きいものを選ばなければならなくなり、場合によっては端子を受ける機器も大型化し、現行の分電盤のスペースに収まらないことが懸念される。
しかしながら、配電用電線・ケーブル100は、第2の電線・ケーブル20を接続用の電線・ケーブルとしているので、端子を大型化する必要がなく、機器や盤の大型化も避けることが出来る。
また、第2の電線・ケーブル20の導体21の材料に銅又は銅合金を用いており、曲げやすいことから取り扱い性がよいので、既存の分電盤や電源設備に作業性よく接続することができる。
【0029】
さらに、第1の電線・ケーブル10は、導体11を構成する素線11aの径を第2の電線・ケーブル20よりも細くして、第1の電線・ケーブル10の可撓性を第2の電線・ケーブル20よりも高くしている。
第1の電線・ケーブル10は、延線用の電線・ケーブルなので、延線経路に沿って延線する必要がある。屋内の延線や経路上に障害物がある等により、電線・ケーブルを迂回させたり、構造物の外形に沿って延線する場合や経路が複雑となる場合でも、第1の電線・ケーブル10の可撓性が高いので、柔軟に対応して延線させることが可能である。また、可撓性により、延線作業の負担の軽減を図ることができる。
【0030】
つまり、本実施形態の配電用電線・ケーブル100は、軽量化と低コスト化を図るとともに、既存の設備に作業性よく好適に接続することを可能にした優れた電線・ケーブルである。
【0031】
また、第2の電線・ケーブル20の導体21の材料にアルミニウムより導電率の高い銀や銀合金を用いたり、あるいは最近研究が進んでいるカーボンナノチューブ入りの銅合金といった電気容量の高い材料を用いたりすることにより、導体外径をより小さくすることができ、接続する機器の大型化を更に避けることができる。
第2の電線・ケーブル20の導体21の材料に銀又は銀合金を用いる場合、配電用電線・ケーブル100のうち最低限必要な長さに銀導体を用いるようにすれば、コストアップを抑えることができる。
【0032】
なお、
図1に示した配電用電線・ケーブル100は単心ケーブルであるが、例えばトリプレックスとして3本の配電用電線・ケーブル100を撚り合わせる場合、
図6に示すように、配電用電線・ケーブル100の絶縁被覆部40をいわゆる千鳥配置とすることで、その撚り合わせ外径を小さくするように抑えることができる。
【0033】
なお、上記第1の電線・ケーブル10の導体11の素線11aと第2の電線・ケーブル20の導体21の素線21aの径と本数については、上記の例に限定されず、(1)素線11aが素線21aより細いこと、(2)素線11aの本数が素線21aの本数より多いこと、(3)導体11の径が導体21の径より大きいこと、(4)第1の電線・ケーブル10の可撓性が第2の電線・ケーブル20よりも高いことの各条件を満たす範囲で適宜変更可能である。
【0034】
また、第2の電線・ケーブル20の導体21の素線21aの材料として、銅又は銅合金に替えて、銀又は銀合金等を使用する場合も、上記(1)~(4)の条件を満たす範囲で、第1の電線・ケーブル10の導体11の素線11aと第2の電線・ケーブル20の導体21の素線21aの径と本数を適宜選択すべきである。
【0035】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る配電用電線・ケーブル100について説明する。この第2実施形態に係る配電用電線・ケーブル100は、第1実施形態に係る配電用電線・ケーブル100と構造がほぼ同一なので、同一の符号及び同一の図面(
図1及び
図2)を使用し、異なる点を主に説明する。
【0036】
第2実施形態に係る配電用電線・ケーブル100では、第1の電線・ケーブル10の導体11の素線11aと第2の電線・ケーブル20の導体21の素線21aについて、(1)素線11aが素線21aより細いこと、(2)素線11aの本数が素線21aの本数より多いこと、(3)導体11の径が導体21の径より大きいことの三つの条件を満たし、さらに、(5)第2の電線・ケーブル20の可撓性が第1の電線・ケーブル10と同等以上という条件を満たしている。
【0037】
上記(1)~(3),(5)の条件を満たすべく、第1の電線・ケーブル10は、導体11の素線11aの径をφ1.8[mm]として、素線本数を61本撚りしており、導体11の断面積を150[mm2]としている。
また、第2の電線・ケーブル20は、導体21の素線21aの径をφ2.6[mm]として、素線本数を19本撚りしており、導体21の断面積を100[mm2]としている。但し、第2実施形態では、導体21は、素線21aを撚り合わせた後に焼鈍を行っている。
【0038】
また、第1の電線・ケーブル10の可撓性をたわみ量で表すと、500[g]の負荷をかけたときに210[mm]であり、第2の電線・ケーブル20の可撓性をたわみ量で表すと220[mm]である。第1及び第2の電線・ケーブル10,20の可撓性は、いずれも、前述した
図5に示す試験装置Tにより、前述した測定条件と同じ測定条件で測定したたわみ量bで示している。
【0039】
第2実施形態に係る配電用電線・ケーブル100も、第2の電線・ケーブル20は必要最小限の長さとし、第1の電線・ケーブル10が配電用電線・ケーブル100の殆どを占めている。
従って、第1の電線・ケーブル10は、飛躍的な軽量化と低コスト化を図ることができる。
また、第2の電線・ケーブル20により、異種金属接触腐食を抑制して、既存の分電盤や電源設備の機器に接続することができ、曲げやすく取り扱い性がよい。
【0040】
なお、第2実施形態に係る配電用電線・ケーブル100では、第2の電線・ケーブル20の可撓性は、第1の電線・ケーブル10と同等以上である。
しかしながら、第1の電線・ケーブル10の導体11を構成する素線11aの径は、第2の電線・ケーブル20よりも細くしているので、素線11aの径が素線21aより大きな従来のアルミ導体ケーブルよりも十分に可撓性は高い。
従って、第1の電線・ケーブル10を柔軟に対応して延線させることができ、延線作業の負担の軽減も図ることができる。
【0041】
つまり、第2実施形態の配電用電線・ケーブル100も、軽量化と低コスト化を図るとともに、既存の設備に作業性よく好適に接続することを可能にした優れた電線・ケーブルである。
【0042】
なお、第2実施形態における配電用電線・ケーブル100の場合も、第1の電線・ケーブル10の導体11の素線11aと第2の電線・ケーブル20の導体21の素線21aの径と本数については、前述した(1)~(3),(5)の各条件を満たす範囲で適宜変更可能である。
また、第2実施形態における第2の電線・ケーブル20の導体21の素線21aの材料に、銀又は銀合金等を使用する場合も、上記(1)~(3),(5)の条件を満たす範囲で、第1の電線・ケーブル10の導体11の素線11aと第2の電線・ケーブル20の導体21の素線21aの径と本数を適宜選択すべきである。
【0043】
なお、第1実施形態及び第2実施形態においては、第1の電線・ケーブル10と第2の電線・ケーブル20を品質管理の行き届いた工場にて接続して配電用電線・ケーブル100を製造するとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、品質管理の行き届いた工場にて、第1の電線・ケーブル10の端部にコネクタのソケットを取り付け、第2の電線・ケーブル20の端部にコネクタのプラグを取り付けた電線・ケーブルを用いてもよい。このような配電用電線・ケーブル100であれば、コネクタのソケットとプラグを接続することで、施工現場などであっても第1の電線・ケーブル10と第2の電線・ケーブル20を容易に接続することが可能になる。
【0044】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る分岐付ケーブル200について説明する。
図7は第3実施形態の分岐付ケーブル200を示す外観図、
図8は分岐付ケーブル200における幹線ケーブル150と支線ケーブル110の接続部分を一部断面視して示す側面図である。
【0045】
分岐付ケーブル200は、例えば、
図7及び
図8に示すように、幹線ケーブル150と、幹線ケーブル150に分岐接続された複数の支線ケーブル110とを備えている。さらに、分岐付ケーブル200は、第1実施形態における配電用電線・ケーブル100を幹線ケーブル150に適用している。
なお、第1実施形態では、第1の電線・ケーブル10の両端部に第2の電線・ケーブル20を接続した配電用電線・ケーブル100を例示しているが、この第3実施形態では、第1の電線・ケーブル10の一端部に第2の電線・ケーブル20を接続した配電用電線・ケーブル100を分岐付ケーブル200の幹線ケーブル150に適用した例を示す。
【0046】
分岐付ケーブル200は、中高層ビル等の建造物に電力を供給するためのケーブルであり、例えば、中高層ビルの階数に応じた本数の支線ケーブル110が幹線ケーブル150に接続されている。
この分岐付ケーブル200は、幹線ケーブル150(第1幹線ケーブル50)の上端部に取り付けられた吊り下げ治具200aによって、最上階側の天井Cに固定されている。なお、幹線ケーブル150(第1幹線ケーブル50)の途中部分は、各階の壁面などに適宜支持固定されている。
【0047】
幹線ケーブル150は、主たる第1幹線ケーブル50と、第1幹線ケーブル50の一端部(下端部)に接続された第2幹線ケーブル60を有している。
そして、幹線ケーブル150は第1実施形態における配電用電線・ケーブル100と同一の構成であり、第1幹線ケーブル50は第1の電線・ケーブル10と同一の構成であり、第2幹線ケーブル60は第2の電線・ケーブル20と同一の構成である。
従って、幹線ケーブル150、第1幹線ケーブル50及び第2幹線ケーブル60が有する各構成については、配電用電線・ケーブル100、第1の電線・ケーブル10及び第2の電線・ケーブル20の各構成と同じ名称及び同じ符号を使用する。
【0048】
第1幹線ケーブル50は、アルミニウム又はアルミニウム合金の素線11aの撚り合わせからなる導体11と当該導体11を覆う絶縁層12を有する。
また、第2幹線ケーブル60は、銅又は銅合金の素線21aの撚り合わせからなる導体21と当該導体21を覆う絶縁層22を有する。
さらに、第1幹線ケーブル50と第2幹線ケーブル60は、前述した第1の電線・ケーブル10と第2の電線・ケーブル20に定められた(1)~(4)の条件を満たす。
第1幹線ケーブル50と第2幹線ケーブル60は、(1)~(4)の条件を満たす範囲で、導体11,21の径と素線11a,21aの径及び本数を適宜変更可能である。
また、第2幹線ケーブル60の導体21の素線21aの材料として、銅又は銅合金に替えて、銀又は銀合金等を使用する場合も、上記(1)~(4)の条件を満たす範囲で、第1幹線ケーブル50の導体11と第2幹線ケーブル60の導体21の径と第1幹線ケーブル50の導体11の素線11aと第2幹線ケーブル60の導体21の素線21aの径と本数を適宜選択すべきである。
【0049】
また、第1幹線ケーブル50の導体11と、第2幹線ケーブル60の導体21は、接続部材30を介して接続され、絶縁被覆部40により接続部が被覆されている。
これら接続部材30及び絶縁被覆部40は、第1実施形態の接続部材30及び絶縁被覆部40と同一の構成である。これらを形成する第1幹線ケーブル50の導体11と第2幹線ケーブル60の導体21との接続作業も、第1実施形態の配電用電線・ケーブル100の場合と同じである。
【0050】
分岐付ケーブル200の支線ケーブル110は、中高層ビル等の建造物の各階に引き込んで機器としての分電盤に接続するためのケーブルである。
支線ケーブル110は、一端部が第1幹線ケーブル50に接続され、他端部が分電盤に接続されている。
この支線ケーブル110は、前述した第1実施形態における配電用電線・ケーブル100の第2の電線・ケーブル20と同一の構成である。
従って、支線ケーブル110は、銅又は銅合金の素線21aの撚り合わせからなる導体21と当該導体21を覆う絶縁層22を有する。
なお、支線ケーブル110の導体21の径は、分電盤に流す電流値に応じて、第2幹線ケーブル60の導体21の径よりも小さくしても良い。従って、支線ケーブル110の導体21の素線21aの径、本数は、第2幹線ケーブル60の導体21の素線21aの径、本数とは異なる構成としても良い。
【0051】
図8に示すように、支線ケーブル110の一端側の導体21は、第1幹線ケーブル50の導体11に分岐コネクタ70を介して接続されている。分岐コネクタ70の材料には、アルミニウム又はアルミニウム合金、もしくは銅又は銅合金が用いられている。
分岐コネクタ70を介して第1幹線ケーブル50の導体11と支線ケーブル110の導体21とを接続した箇所は、ポリエチレンやEPゴムからなるインジェクションモールド80によって被覆されている。
インジェクションモールド80は、導体同士の接続箇所を保護する機能を有しており、後述するように、その接続箇所に良好な絶縁性や防水性を付与するようになっている。
【0052】
第1幹線ケーブル50と支線ケーブル110の接続箇所は、施工現場にて接続するのではなく、工場などにて予め接続されたものを施工現場に搬入してから布設することが好ましい。
工場等における接続作業は、第1実施形態で説明した第1の電線・ケーブル10及び第2の電線・ケーブル20の接続作業と同じである。
【0053】
上記分岐付ケーブル200の布設作業を
図9に基づいて説明する。
図9(A)~
図9(C)は分岐付ケーブル200の布設作業を工程順に示している。
分岐付ケーブル200は、第1幹線ケーブル50と第2幹線ケーブル60との接続作業及び第1幹線ケーブル50と支線ケーブル110の接続作業が予め工場で行われた状態でドラム1に巻かれており、当該ドラム1と共に布設が行われる建造物Bの一階に搬入される。
【0054】
そして、
図9(A)に示すように、第1幹線ケーブル50の吊り下げ治具200a側の端部がドラム1から繰り出されて、建造物Bの最上階まで引き上げられ、天井Cのフックに吊下支持される。
また、このとき、各支線ケーブル110の第1幹線ケーブル50側とは逆側の端部の導体21が建造物Bの各階の分電盤WHに接続される。
【0055】
次に、
図9(B)に示すように、ドラム1に巻かれた残りの第1幹線ケーブル50及び第2幹線ケーブル60を全てドラム1から引き出して、一階のフロアに8の字状に束ねて待機する。符号dは、8の字状に束ねられた第1幹線ケーブル50の束である。なお、束ね方は、他の形状でも良い。
【0056】
そして、
図9(C)に示すように、最終的に、残りの第1幹線ケーブル50の束dをほどき、一階のフロアにおいて、所定の延線経路に沿って残りの第1幹線ケーブル50を延線し、先端部の第2幹線ケーブル60の接続端部を配電盤SBに接続して、布設作業を終了する。
【0057】
上記分岐付ケーブル200は、第1幹線ケーブル50が第1実施形態で説明した第1の電線・ケーブル10と同一の構成であり、第2幹線ケーブル60が第1実施形態で説明した第2の電線・ケーブル20と同一の構成である。
このため分岐付ケーブル200は、飛躍的な軽量化と低コスト化を図ることができる。
特に、分岐付ケーブル200は、天井Cに吊られるケーブルであるので、その軽量化を図ることは施工手順や施工コストの観点からも好ましい。
さらに、分岐付ケーブル200は、既存の分電盤や電源設備の機器に分岐付ケーブル200を電気的に接続する場合に、特殊な端子を用いなくとも、異種金属接触腐食が抑制される。
また、各支線ケーブル110及び第2幹線ケーブル60の導体21の材料に銅又は銅合金を用いているので、既存の分電盤や電源設備に作業性よく接続することができる。
さらに、第1幹線ケーブル50は、可撓性が十分に高いので、第1幹線ケーブル50の延線作業の負担の軽減を図ることができる。
また、第1幹線ケーブル50よりも導体径が小さい第2幹線ケーブル60を接続用の電線・ケーブルとしているので、端子を大型化する必要がなく、配電盤SBの大型化も避けることが出来る。
【0058】
なお、分岐付ケーブル200は、第1幹線ケーブル50と第2幹線ケーブル60に第1実施形態における第1の電線・ケーブル10と第2の電線・ケーブル20とが適用されている。
これら第1幹線ケーブル50と第2幹線ケーブル60に適用される第1実施形態における第1の電線・ケーブル10と第2の電線・ケーブル20に替えて、第2実施形態における第1の電線・ケーブル10と第2の電線・ケーブル20を適用しても良い。
【0059】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る分岐付ケーブル200Aについて説明する。なお、前述した分岐付ケーブル200と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0060】
図9は第4実施形態の分岐付ケーブル200Aを示す外観図である。
図示のように、分岐付ケーブル200Aは、第1支線ケーブル120と第2支線ケーブル130とを有する支線ケーブル110Aを備えている。さらに、分岐付ケーブル200Aは、第1実施形態における配電用電線・ケーブル100を支線ケーブル110Aに適用している。
なお、第1実施形態では、第1の電線・ケーブル10の両端部に第2の電線・ケーブル20を接続した配電用電線・ケーブル100を例示しているが、この第4実施形態では、第1の電線・ケーブル10の一端部に第2の電線・ケーブル20を接続した配電用電線・ケーブル100を分岐付ケーブル200Aの支線ケーブル110Aに適用した例を示す。
【0061】
支線ケーブル110Aは第1実施形態における配電用電線・ケーブル100と同一の構成であり、第1支線ケーブル120は第1の電線・ケーブル10と同一の構成であり、第2支線ケーブル130は第2の電線・ケーブル20と同一の構成である。
従って、支線ケーブル110A、第1支線ケーブル120及び第2支線ケーブル130が有する各構成については、配電用電線・ケーブル100、第1の電線・ケーブル10及び第2の電線・ケーブル20の各構成と同じ名称及び同じ符号を使用する。
【0062】
第1支線ケーブル120は、アルミニウム又はアルミニウム合金の素線11aの撚り合わせからなる導体11と当該導体11を覆う絶縁層12を有する。
また、第2支線ケーブル130は、銅又は銅合金の素線21aの撚り合わせからなる導体21と当該導体21を覆う絶縁層22を有する。
さらに、第1支線ケーブル120と第2支線ケーブル130は、前述した第1の電線・ケーブル10と第2の電線・ケーブル20に定められた(1)~(4)の条件を満たす。
第1支線ケーブル120と第2支線ケーブル130は、(1)~(4)の条件を満たす範囲で、導体11,21の径と素線11a,21aの径及び本数を適宜変更可能である。
また、第2支線ケーブル130の導体21の素線21aの材料として、銅又は銅合金に替えて、銀又は銀合金等を使用する場合も、上記(1)~(4)の条件を満たす範囲で、第1支線ケーブル120の導体11の径と第2支線ケーブル130の導体21の径、第1支線ケーブル120の導体11の素線11aと第2支線ケーブル130の導体21の素線21aの径と本数を適宜選択すべきである。
【0063】
また、第1支線ケーブル120の導体11と、第2支線ケーブル130の導体21は、接続部材30を介して接続され、絶縁被覆部40により接続部が被覆されている。
これら接続部材30及び絶縁被覆部40は、第1実施形態の接続部材30及び絶縁被覆部40と同一の構成である。これらを形成する第1支線ケーブル120の導体11と第2支線ケーブル130の導体21との接続作業も、第1実施形態の配電用電線・ケーブル100の場合と同じである。
【0064】
支線ケーブル110Aも、中高層ビル等の建造物の各階に引き込んで機器としての分電盤に接続するためのケーブルである。
第1支線ケーブル120の第1幹線ケーブル50側の導体11は、前述した支線ケーブル110の場合と同様に、分岐コネクタ70を介して第1幹線ケーブル50の導体11に接続され、接続部はインジェクションモールド80によって被覆されている。
また、第2支線ケーブル130における第1支線ケーブル120とは逆側の端部は、分電盤に接続される。
【0065】
なお、第1支線ケーブル120の導体11の径は、分電盤に流す電流値に応じて、第1幹線ケーブル50の導体11の径よりも小さくしても良い。同様に、第2支線ケーブル130の導体21の径も第2幹線ケーブル60の導体21の径よりも小さくしても良い。
これらに伴い、第1支線ケーブル120の導体11の素線11aの径、本数は、第1幹線ケーブル50の導体11の素線11aの径、本数とは異なる構成としても良い。同様に、第2支線ケーブル130の導体21の素線21aの径、本数は、第2幹線ケーブル60の導体21の素線21aの径、本数とは異なる構成としても良い。
【0066】
上記分岐付ケーブル200Aは、支線ケーブル110Aの第1支線ケーブル120が第1実施形態で説明した第1の電線・ケーブル10と同一の構成であり、第2支線ケーブル130が第1実施形態で説明した第2の電線・ケーブル20がと同一の構成である。
このため分岐付ケーブル200Aは、分岐付ケーブル200と同様の効果に加えて、さらに分岐付ケーブル全体の軽量化と低コスト化を図ることができる。
【0067】
さらに、第1支線ケーブル120は、導体11を構成する素線11aの径を第2支線ケーブル130よりも細くして、第1支線ケーブル120の可撓性を第2支線ケーブル130よりも高くしている。
従って、建造物の各階において、第1幹線ケーブル50から分電盤までが離隔しており、第1支線ケーブル120を延線経路に沿って延線する必要がある場合において、障害物の迂回や構造物の外形に沿って延線する等、経路が複雑となる場合でも、柔軟に対応して延線させることができ、延線作業の負担の軽減も図れる。
また、分岐付ケーブル200Aは、第1支線ケーブル120の導体11がアルミニウム又はアルミニウム合金からなるので、第1幹線ケーブル50の導体11との接続において異種金属接触腐食の問題が生じないことから、幹線ケーブル150と支線ケーブル110Aとを工場などにて予め接続せずに施工現場に搬入してから接続しても良い。その場合、第1幹線ケーブル50の吊り下げ治具200a側の端部を建造物Bの最上階まで引き上げてから支線ケーブル110Aを第1幹線ケーブル50に接続することにより、第1幹線ケーブル50の引き上げ作業等を容易に行うことが可能となり、作業性が向上する。
【0068】
なお、分岐付ケーブル200Aは、第1幹線ケーブル50と第2幹線ケーブル60に加えて、支線ケーブル110Aの第1支線ケーブル120と第2支線ケーブル130にも第1実施形態における第1の電線・ケーブル10と第2の電線・ケーブル20とが適用されている。
支線ケーブル110Aに適用される第1実施形態における第1の電線・ケーブル10と第2の電線・ケーブル20に替えて、第2実施形態における第1の電線・ケーブル10と第2の電線・ケーブル20を適用しても良い。
【0069】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上記の各実施形態に限られるものではない。各実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 ドラム
10 第1の電線・ケーブル
11,21 導体
11a,21a 素線
12 絶縁層
20 第2の電線・ケーブル
21 導体
22 絶縁層
30 接続部材
40 絶縁被覆部
50 第1幹線ケーブル
60 第2幹線ケーブル
70 分岐コネクタ
80 インジェクションモールド
100 配電用電線・ケーブル
110,110A 支線ケーブル
120 第1支線ケーブル
130 第2支線ケーブル
150 幹線ケーブル
200,200A 分岐付ケーブル
200a 吊り下げ治具
B 建造物
C 天井
d 束
SB 配電盤
WH 分電盤
【要約】
【課題】軽量化が可能であって既存の設備に作業性よく接続する。
【解決手段】第1の電線・ケーブル10に第2の電線・ケーブル20が接続され、第1の電線・ケーブルの導体11の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金、第2の電線・ケーブルの導体21の材料が銅、銅合金であり、第2の電線・ケーブルよりも第1の電線・ケーブルの導体の素線の径が細く、第2の電線・ケーブルよりも第1の電線・ケーブルの可撓性が高く、第2の電線・ケーブルよりも第1の電線・ケーブルの導体の素線の本数が多く、第2の電線・ケーブルよりも第1の電線・ケーブルの導体の径が大き、第1の電線・ケーブルを延線用とし、第2の電線・ケーブルを接続用とした。
【選択図】
図1