(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】ボンベ保管庫
(51)【国際特許分類】
F17C 13/08 20060101AFI20220112BHJP
B65G 1/137 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
F17C13/08 301
B65G1/137 A
(21)【出願番号】P 2021058998
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2021-09-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】野口 明之
(72)【発明者】
【氏名】城 和則
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2021-0029423(KR,A)
【文献】特開2015-009911(JP,A)
【文献】特開2018-063483(JP,A)
【文献】特開2019-071039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/08
B65G 1/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のガスボンベを収容でき、RFIDシステムを用いて保管管理ができるボンベ保管庫であって、
内部が複数のエリアに区画され、RFIDタグを付けたガスボンベが収容される筐体と、該筐体内において前記区画ごとに設置されたRFアンテナと、該RFアンテナから発信される電波が前記各区画間で通過しないように仕切る遮蔽板と、前記各区画内の少なくとも一つの区画の上部に設けられて
前記RFIDタグに前記電波
が到達できるように反射する反射板と、を備えたことを特徴とするボンベ保管庫。
【請求項2】
前記筐体に各区画に共通の排気口が設けられており、前記排気口を供用する区画間を仕切る前記遮蔽板は、その下部に各区画を連通させる隙間が設けられると共に、その上部にガスが通過可能なメッシュ部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のボンベ保管庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルゴン等の高圧ガスを封入した複数のガスボンベを保管するボンベ保管庫に関する。
【背景技術】
【0002】
アルゴン等の高圧ガスを封入したガスボンベを保管するボンベ保管庫としては、例えば特許文献1に開示されるように、筐体内に複数のガスボンベを保管する態様のものが一般的である。
【0003】
ボンベ保管庫内には、異なった種類のガスを封入したガスボンベが複数保管されるような場合もあるが、それらの保管状況の管理は、人が目視確認して保管台帳等によって行われているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスボンベは転倒防止の観点から複数のものをチェーン等で締結しているのが通常であり、目視確認がやりにくく、特に異なる種類のガスボンベがある場合には在庫管理が煩雑であるという問題がある。
また、複数種類のガスボンベが保管されている場合、保管庫内における保管位置が管理されていないため、取出しの際には対象となるガスボンベを探さなければならず、この点でも煩雑な作業となっていた。
【0006】
そこで、発明者は管理対象(物品)にRFIDタグ(Radio Frequency Identification TAG)を貼り付けて、アンテナから発信した電波によってRFIDタグのID情報を読み取ることで、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という)の画面上で物品管理を行うRFIDシステムに着目した。
【0007】
しかし、ボンベ保管庫は筐体内という閉じた空間内で複数の種類のガスボンベを管理しなければならず、一般的なRFIDシステムでは十分でないという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するものであり、保管している複数種類のガスボンベの管理を容易にできるボンベ保管庫を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るボンベ保管庫は、複数本のガスボンベを収容でき、RFIDシステムを用いて保管管理ができるものであって、
内部が複数のエリアに区画され、RFIDタグを付けたガスボンベが収容される筐体と、該筐体内において前記区画ごとに設置されたRFアンテナと、該RFアンテナから発信される電波が前記各区画間で通過しないように仕切る遮蔽板と、前記各区画内の少なくとも一つの区画の上部に設けられて前記電波を反射する反射板と、を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記筐体に各区画に共通の排気口が設けられており、前記排気口を供用する区画間を仕切る前記遮蔽板は、その下部に各区画を連通させる隙間が設けられると共に、その上部にガスが通過可能なメッシュ部が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るボンベ保管庫は、内部が複数のエリアに区画され、RFIDタグを付けたガスボンベが収容される筐体と、該筐体内において前記区画ごとに設置されたRFアンテナと、該RFアンテナから発信される電波が前記各区画間で通過しないように仕切る遮蔽板と、前記各区画内の少なくとも一つの区画の上部に設けられて前記電波を反射する反射板と、を備えたことにより、RFIDシステムを用いてPC画面上での効率的な保管管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態にかかるボンベ保管庫の内部構造を示す正面図である。
【
図2】
図1に示したボンベ保管庫の内部構造を示す側面図である。
【
図4】
図1に示したボンベ保管庫の各区画に設けられるボンベストッカーの説明図である。
【
図5】
図1に示したボンベ保管庫内に設置される遮蔽板の説明図である。
【
図6】本発明の実施の形態で適用されるRFIDシステムの概要を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施の形態に係るボンベ保管庫1は、複数本のガスボンベ3を収容でき、RFIDシステムを用いて保管管理ができるものあって、
図1~
図3に示すように、内部が複数の区画(区画A、B、C)に区分され、RFIDタグ10を付けたガスボンベ3が収容される筐体5と、筐体5内において区画ごとに設置されたRFアンテナ7と、各区画間で電波が通過しないように仕切る遮蔽板11と、各区画内の少なくとも一つの区画の上部に設けられて電波を反射する反射板13と、を備えたものである。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0014】
本願発明は、RFIDシステムを適用可能としたボンベ保管庫1の構造に主な特徴があるが、ボンベ保管庫1の構造説明に先立ってRFIDシステムについて、
図6に基づいて概説する。
ボンベ保管庫1に保管されているガスボンベ3にはRFIDタグ10(
図1(b)参照)入ったRFタグホルダ9が付けられており、RFアンテナ7から送信される電波によってRFIDタグ10のID情報が反射波としてRFアンテナ7で受信され、受信されたID情報はRFIDリーダ部15を介してPC17に送信される。
【0015】
PC17は、少なくとも記憶部19、制御部21、表示部23を備えている。そして、記憶部19には管理対象となるボンベ保管庫1の情報や、各ボンベ保管庫1において保管対象となるガスボンベ3の情報が記憶されている。
ボンベ保管庫1の情報としては、保管庫内がどのような区画になっているかといった区画情報、各区画に保管されるガスボンベ3の本数、各区画に保管されるべきガスボンベ3のガス種類等がある。
またガスボンベ3の情報としては、ガス種類、充填日、製造日等であり、これらは保管対象となるガスボンベ3に付けられているRFIDタグ10のID情報と関連付けられている。
【0016】
制御部21は、RFIDリーダ部15から送信されたID情報と記憶部19の情報を照合して、照合結果をPC画面等の表示部23に表示する。
【0017】
上記のようなRFIDシステムを利用可能としたボンベ保管庫1の各構成を
図1~
図5に基づいて説明する。
【0018】
<筐体>
筐体5は、外観が直方体形状で内部空間が3つに区画され、各区画A、B、Cにはボンベストッカー25が設置されている。
一つの区画に設置されたボンベストッカー25に収容されるガスボンベ3は同一種類のものである。
【0019】
筐体5の上面の略中央部(
図3参照)には、ガス検知器付きの排気口27が設けられている。排気口27には図示しないダクトが接続され、排気口27から排気されるガスはダクトを介してガス処理装置(図示なし)に送られて処理される。
これは、保管されるガスボンベ3には有毒ガスが充填されることもあり、ガスボンベ3からガス漏れが発生した場合の対策のためのものである。
【0020】
また、筐体5の上面には、筐体5の入側及び出側を開閉するためのシャッター装置29が設けられている。
【0021】
ボンベストッカー25は、
図4に示すように、保管するガスボンベ3を収容するフレーム31と、フレーム31の底部に搬送路を形成する搬送ローラ33と、収容されるガスボンベ3を保持するボンベ保持片35と、搬送路の最奥において搬送されるガスボンベ3が搬送路から離脱するのを防止するストッパー部材37とを備えている。
【0022】
搬送ローラ33をモーター駆動することにより、図面奥側から手前側に向かってガスボンベ3が移動し、最初のガスボンベ3はストッパー部材37の手前まで搬送される。また、ボンベ保持片35はガスボンベ3が搬送方向に移動するのを許容するが反対方向への移動を規制し、ガスボンベ3を保持する。
【0023】
なお、本発明において筐体5内にボンベストッカー25を設けることは必須ではなく、各区画内はガスボンベ3を保管して出し入れが容易になっておればよい。
【0024】
<RFアンテナ>
RFアンテナ7は、各区画に一つ設けられており、本例では3つの区画の各区画に一つ、合計3つ設けられている。各区画に一つのRFアンテナ7を設けることでガスボンベ3がどの区画に配置されているかの位置情報を取得して管理することができる。
仮に、筐体5内にRFアンテナ7が一つだけ設けられた場合には、各ガスボンベ3がどの区画に配置されているかの位置情報がなく、出し入れの際に探さなければならず管理が煩雑になる。
【0025】
<RFIDタグ>
RFIDタグ10は収容されるガスボンベ3に取り付けられるものであり、例えば、
図1に示すように、RFタグホルダ9に入れて各ガスボンベ3の首に掛けるようにする。なお、
図1の拡大図(a)はRFタグホルダ9の上面図であり、拡大図(b)はRFタグホルダ9の内部構造を示している。
電波を正確に読み取るためには、RFアンテナ7からRFIDタグ10に対して垂直に電波を照射することが望ましいため、RFIDタグ10は、
図1(a)に示すように、RFタグホルダ9の上面に配置されている。
RFIDタグ10には、ID情報が書き込まれており、制御部21は、RFIDタグ10から送信されたID情報と、記憶部19に記憶されている該ID情報に紐づけられたガスボンベ3の情報と照合して、当該RFIDタグ10が付けられたガスボンベ3を特定する。
【0026】
<遮蔽板>
遮蔽板11は、RFアンテナから発信される電波が各区画間を通過しないように仕切るものであり、金属板によって構成されている。
遮蔽板11の下端は、
図5に示すように、隣の区画との間に所定の隙間Sが設けられており、また、遮蔽板11の上部にはガスが通過可能なメッシュ部39が形成されている。このような隙間Sを設け、メッシュ部39を形成した理由は以下の通りである。
【0027】
上述のように、筐体5の上面には排気口27が一つ設けられており、筐体5内のどの区画に保管されているガスボンベ3からガス漏れがあったとしても排気口27にガスが流れるようにする必要がある。
しかし、仮に遮蔽板11がガスの通過を完全に仕切るものであったなら区画ごとに排気口27を設けなければならないが、区画ごとに排気口27を設けるとコストが高くなる。
そこで、本実施の形態では、遮蔽板11の下方に隙間Sを形成すると共に上部にメッシュ部39を設け、電波を遮蔽すると共にガスの通過を許容できるようにした。
これによって、排気口27を一つにしつつ、区画毎のガスボンベ3の管理を可能にしている。
【0028】
<反射板>
反射板13は、各区画内の少なくとも一つの区画の上部に設けられて電波を反射するものであり、各区画に保管された全てのガスボンベ3のRFIDタグ10に電波が到達できるようにするために設けられている。
本実施の形態では、RFアンテナ7が各区画の中央の上方に設けられている関係から、反射板13は各区画の両端(入側の端と出側の端(
図2参照))の上方に設置されている。
反射板13は、
図2に示すように、反射面がガスボンベ3に対向するように45度の角度で傾斜している。
【0029】
なお、反射板13は必ずしも全ての区画に設ける必要はなく、例えば本実施の形態のように3列の区画の真ん中の区画のように、両側に平坦な遮蔽板11が存在する場合には、遮蔽板11が反射板13の機能を有し、別途反射板13を設ける必要がない場合もある。
【0030】
以上のように構成されたボンベ保管庫1の使用方法を説明する。
ガスボンベ3を入庫する場合、RFタグホルダ9が吊下げられガスボンベ3をボンベストッカー25の入側の搬送ローラ33上に載せる。
次に、駆動スイッチを押下して、駆動ローラを駆動させることでガスボンベ3が奥側に向かって搬送される。
同様の操作を繰り返すことによって4本のガスボンベ3をボンベストッカー25に保管した状態が
図4に示す状態である。
【0031】
このようにして、一つの区画には同一種類のガスボンベ3が保管される。保管されたガスボンベ3は、RFIDタグ10にRFアンテナ7から電波が送信され、RFIDタグ10に書き込まれているID情報が返信波としてRFアンテナ7、RFIDリーダ部15を介してPC17に送信される。
制御部21は、ID情報が、どの保管庫のどの区画のRFアンテナ7のものであるかに基づいて、当該区画のガスボンベ情報と照合する。ガスボンベ情報とID情報が整合しておれば、当該区画にガスボンベ3が存在する旨を表示部23に表示する。照合の結果、当該区画に存在すべきでないガスボンベ3の場合には、誤挿入である旨を表示する。また、当該区画に4本のガスボンベ3が収容可能であれれば、RFタグ情報が2本分しかない場合には、当該区画の2本分は空きである旨を表示する。
【0032】
なお、RFアンテナ7は一つの区画に一つ設けられているので、一つの区画のどの位置にガスボンベ3が存在するかを検知することはできない。しかしながら、各区画でのガスボンベ3の収容を奥側から順番にするという規則にしておけば、例えば当該区画に2本のガスボンベ3が存在する場合には、奥から2つの位置にガスボンベ3が存在するように表示すればよい。
【0033】
図6にはPC17の表示部23における表示画面の一例として、3つのボンベ保管庫1のガスボンベ保管状況が示されている。
図中において、矩形がボンベ保管庫1の筐体5内部空間を示し、矩形の中の丸印がガスボンベ3の保管位置を示している。白丸は当該位置にはガスボンベ3が存在しないことを示している。また、斜線を付した丸印は当該区画にガスボンベ3が存在することを示している。さらに、白丸に×印を付したものは誤挿入、すなわち当該区画に有るべきでないガスボンベ3が存在することを示している。例えば、
図6の真ん中の保管庫の一列目の先頭位置にはガス種別4のガスボンベが保管されるべきところ、別のガス種別のものが保管されたため、×印が表示されている。
【0034】
以上のように本実施の形態のボンベ保管庫1によれば、RFIDシステムを用いてPC画面上での効率的な保管管理が可能となる。また、隣の区画と仕切るための遮蔽板11をガスの通過を許容すると共に電波を遮蔽可能としたことで、排気口27を一つにしつつ区画毎の管理が可能になっている。
さらに、各区画に反射板13を設けたことで、各区画内のガスボンベ3に付けてRFIDタグ10のID情報を確実に読み取ることができる。
前述したように、電波を正確に読み取るためには、RFアンテナ7からRFIDタグ10に対して垂直に電波を照射することが望ましい。
一方、ガスボンベ3は金属製であるため各区画の両端にあるガスボンベ3は電波の乱反射が発生しやすく、正確に読み取りにくい傾向がある。
この点、本実施の形態においては、反射板13を設けると共にRFIDタグ10を上面に配置したRFタグホルダ9を用いることにより、RFIDタグ10に垂直方向から電波を当てることができ、情報を正確に読み取ることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 ボンベ保管庫
3 ガスボンベ
5 筐体
7 RFアンテナ
9 RFタグホルダ
10 RFIDタグ
11 遮蔽板
13 反射板
15 RFIDリーダ部
17 PC
19 記憶部
21 制御部
23 表示部
25 ボンベストッカー
27 排気口
29 シャッター装置
31 フレーム
33 搬送ローラ
35 ボンベ保持片
37 ストッパー部材
39 メッシュ部
A,B,C区画
S 隙間
【要約】
【課題】保管している複数種類ガスボンベの管理を容易にできるボンベ保管庫を提供する。
【解決手段】本発明に係るボンベ保管庫1は、複数本のガスボンベ3を収容でき、RFIDシステムを用いて保管管理ができるものあって、内部が複数のエリアに区画され、RFIDタグ10を付けたガスボンベ3が収容される筐体5と、筐体5内において前記区画ごとに設置されたRFアンテナ7と、前記各区画間で電波が通過しないように仕切る遮蔽板11と、前記各区画内の少なくとも一つの区画の上部に設けられて電波を反射する反射板13と、を備えたことを特徴とするものである。
【選択図】
図1