(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】アンダーフィル用樹脂組成物、半導体装置の製造方法及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08G 59/30 20060101AFI20220112BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20220112BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20220112BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220112BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20220112BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
C08G59/30
C08L63/00 Z
C08L83/06
C08K3/013
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2017071926
(22)【出願日】2017-03-31
【審査請求日】2020-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 皓平
(72)【発明者】
【氏名】竹内 勇麿
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-182561(JP,A)
【文献】特開2011-084597(JP,A)
【文献】国際公開第2012/121336(WO,A1)
【文献】特開2007-162001(JP,A)
【文献】特開平10-231351(JP,A)
【文献】特開2011-168634(JP,A)
【文献】特開2017-119767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00- 59/72
C08L 63/00- 63/10
C08K 3/00- 13/08
H01L 23/28- 23/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材と、下記一般式(1)で表される末端にグリシジル基を有するシリコーン化合物と、を含み、前記末端にグリシジル基を有するシリコーン化合物の含有率が、アンダーフィル用樹脂組成物全体の0.005質量%~3質量%である、アンダーフィル用樹脂組成物
(ただし、シリコーン微粒子を含むものを除く)。
【化1】
〔一般式(1)中、R
2~R
5及びR
7~R
10は、それぞれ独立に
脂肪族炭化水素基を表す。R
1及びR
6は、それぞれ独立にグリシジル基を表す。mは、-[Si(R
3)(R
9)O]-で表されるシロキサン単位の1分子中のモル数を示し、0~3000の数である。nは、-[Si(R
4)(R
8)O]-で表されるシロキサン単位の1分子中のモル数を示し、0~3000の数である。〕
【請求項2】
前記末端にグリシジル基を有するシリコーン化合物の含有率が、前記アンダーフィル用樹脂組成物全体の0.008質量%~1.500質量%である、請求項1に記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
【請求項3】
前記末端にグリシジル基を有するシリコーン化合物のエポキシ当量が、300g/mol~3000g/molである、請求項1又は請求項2に記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
【請求項4】
エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材と、下記一般式(1)で表される末端にグリシジル基を有するシリコーン化合物と、を含み、前記末端にグリシジル基を有するシリコーン化合物の含有率が、アンダーフィル用樹脂組成物全体の0.005質量%~3質量%であり、前記末端にグリシジル基を有するシリコーン化合物のエポキシ当量が、300g/mol~3000g/molである、アンダーフィル用樹脂組成物(ただし、シリコーン微粒子を含むものを除く)。
【化1】
〔一般式(1)中、R
2
~R
5
及びR
7
~R
10
は、それぞれ独立に炭化水素基を表す。R
1
及びR
6
は、それぞれ独立にグリシジル基を表す。mは、-[Si(R
3
)(R
9
)O]-で表されるシロキサン単位の1分子中のモル数を示し、0~3000の数である。nは、-[Si(R
4
)(R
8
)O]-で表されるシロキサン単位の1分子中のモル数を示し、0~3000の数である。〕
【請求項5】
支持体と、前記支持体上に配置される半導体チップとの間の空間を、請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載のアンダーフィル用樹脂組成物で充填する工程と、前記アンダーフィル用樹脂組成物を硬化する工程と、を含む半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のアンダーフィル用樹脂組成物の硬化物を備える半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーフィル用樹脂組成物、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランジスタ、IC(Integrated Circuit)等の半導体装置の素子を封止するための封止材としては、生産性、コスト等の面から樹脂が主に用いられている。その中でも、作業性、成形性、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の封止材に要求される諸特性のバランスに優れているエポキシ樹脂が広く使用されている。
【0003】
近年、半導体装置の小型化及び薄型化に伴い、ベアチップを直接配線基板上に実装する、いわゆるベアチップ実装が主流となっている。このベアチップ実装による半導体装置としては、例えば、COB(Chip on Board)、COG(Chip on Glass)、TCP(Tape Carrier Package)等が挙げられる。これらの半導体装置においては、液状の樹脂組成物が封止材として広く使用されている。
また、半導体素子を、セラミック、ガラス/エポキシ樹脂、ガラス/イミド樹脂、ポリイミドフィルム等を基板とする配線基板(以下、単に「基板」ともいう)上に直接バンプ接続してなる半導体装置(フリップチップ)では、バンプ接続した半導体素子と配線基板との間隙(ギャップ)に充填するためのアンダーフィル材と称される封止材が使用されている。
アンダーフィル材として使用される樹脂組成物は、電子部品を温湿度及び機械的な外力から保護する重要な役割を果たしている。
【0004】
近年、情報技術の発展に伴って、電子機器のさらなる小型化、高集積度化及び多機能化が進展しており、多ピン化によるバンプの小径化、狭ピッチ化及び狭ギャップ化が進んでいる。これにより、アンダーフィル材の流動経路は複雑になり、従来に比べてボイド等の未充填部分が発生し易くなっている。未充填部分は、半導体素子と基板との接着性の低下、得られる半導体製品の信頼性の低下等を招く原因となり得るため、存在しないことが望ましい。
また、上述した電子機器の小型化により、基板上に配置された接続端子と半導体チップとの間隔が従来に比べ狭くなっている。このため、フィレット部において基板への樹脂成分の滲み出し(ブリード)が生じると、その滲み出しによって配線が汚染される場合がある。さらに、半導体チップ裏面への這い上がり現象が生じると、基板上の半導体チップ周辺にコンデンサ等の電子部品を後工程ではんだ接続する際に、基板上の接続部位まで樹脂成分の滲み出し(基板がチップの場合はクリープと呼ばれる)が伸展し、電子部品が搭載できなくなる場合がある。
【0005】
特許文献1には、耐ブリード性に優れる樹脂組成物として、(A)液状エポキシ樹脂、(B)芳香族アミン、(C)無機充填材、(D)ポリエーテル基を有する液状シリコーン化合物、及び(E)アミノ基を有する液状シリコーン化合物を含有する樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている樹脂組成物をアンダーフィル材として用いた場合、基板への樹脂成分の滲み出しを抑制する性能(耐ブリード性)が、上述した接続端子と半導体チップとの間隔の狭小化に対応するには十分ではなく、改善が望まれていた。さらに、特許文献1では言及されていないが、チップへの樹脂成分の滲み出しを抑制する性能(耐クリープ性)が、上述した後工程でのはんだ接続する際に対応するには十分ではなく、さらなる改善が望まれている。
そこで、本発明は、耐ブリード性及び耐クリープ性に優れるアンダーフィル用樹脂組成物、並びにこの樹脂組成物を用いた半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材と、末端にグリシジル基を有するシリコーン化合物と、を含む、アンダーフィル用樹脂組成物。
<2>前記末端にグリシジル基を有するシリコーン化合物が、下記一般式(1)で表される化合物を含む、<1>に記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
【0009】
【0010】
〔一般式(1)中、R2~R5及びR7~R10は、それぞれ独立に炭化水素基又はグリシジル基を含有する有機基を表す。R1及びR6は、それぞれ独立にグリシジル基を含有する有機基を表す。mは、-[Si(R3)(R9)O]-で表されるシロキサン単位の1分子中のモル数を示し、0~3000の数である。nは、-[Si(R4)(R8)O]-で表されるシロキサン単位の1分子中のモル数を示し、0~3000の数である。〕
<3>前記末端にグリシジル基を有するシリコーン化合物の含有率が、前記アンダーフィル用樹脂組成物全体の0.008質量%~1.500質量%である、<1>又は<2>に記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
<4>前記末端にグリシジル基を有するシリコーン化合物のエポキシ当量が、300g/mol~3000g/molである、<1>~<3>のいずれか1項に記載のアンダーフィル用樹脂組成物。
<5>支持体と、前記支持体上に配置される半導体チップとの間の空間を、<1>~<4>のいずれか1項に記載のアンダーフィル用樹脂組成物で充填する工程と、前記アンダーフィル用樹脂組成物を硬化する工程と、を含む半導体装置の製造方法。
<6><1>~<4>のいずれか1項に記載のアンダーフィル用樹脂組成物の硬化物を備える半導体装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐ブリード性及び耐クリープ性に優れるアンダーフィル用樹脂組成物、並びにこの樹脂組成物を用いた半導体装置及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
【0013】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
【0014】
[アンダーフィル用樹脂組成物]
本実施形態のアンダーフィル用樹脂組成物(以下、「アンダーフィル材」とも称する)は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材と、末端にグリシジル基を有するシリコーン化合物と、を含む。
【0015】
アンダーフィル材は、常温で液体であることが好ましい。本開示において「常温」とは25℃を意味し、「液体」とは流動性と粘性を示し、かつ粘性を示す尺度である粘度が0.0001Pa・s~100Pa・sである物質を意味する。また、「液状」とは前記液体の状態であることを意味する。
【0016】
上記粘度は、EHD型回転粘度計を25℃で1分間、所定の回毎分で回転させた時の測定値に、所定の換算係数を乗じた値と定義する。上記測定値は、25±1℃に保たれた液体について、コーン角度3゜、コーン半径14mmのコーンロータを装着したEHD型回転粘度計を用いて得られる。前記回毎分及び換算係数は、測定対象の液体の粘度によって異なる。具体的には、測定対象の液体の粘度を予め大まかに推定し、推定値に応じて回毎分及び換算係数を決定する。
【0017】
上記測定において、測定対象の液体の粘度の推定値が0Pa・s以上1.25Pa・s未満の場合は回転数を10回毎分、換算係数を0.5とし、粘度の推定値が1.25Pa・s以上2.5Pa・s未満の場合は回転数を5回毎分、換算係数を1とし、粘度の推定値が2.5Pa・s以上6.25Pa・s未満の場合は回転数を2.5回毎分、換算係数を2とし、粘度の推定値が6.25Pa・s以上12.5Pa・s未満の場合は回転数を1回毎分、換算係数を5とする。
【0018】
(A)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂の種類は特に制限されず、アンダーフィル材の材料として一般に使用されているものから選択できる。エポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルトルイジン、ジアミノジフェニルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミン等の芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニレン骨格又はビフェニレン骨格の少なくとも一方を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格又はビフェニレン骨格の少なくとも一方を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂、及びビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、アリサイクリックジエポキシ-アジペイド等の脂環式エポキシ樹脂などの脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
【0019】
上記エポキシ樹脂の中でも、芳香族環にグリシジル構造又はグリシジルアミン構造が結合した構造を含むエポキシ樹脂は、耐熱性、機械特性及び耐湿性向上の観点から好ましい。
【0020】
アンダーフィル材を常温で液体にする観点からは、エポキシ樹脂全体として常温で液体となるようにエポキシ樹脂を選択することが好ましい。すなわち、1種のエポキシ樹脂のみを含む場合は、そのエポキシ樹脂が常温で液体であることが好ましい。2種以上のエポキシ樹脂の組み合わせである場合は、2種以上のエポキシ樹脂がすべて常温で液状であってもよく、一部が室温で固形のエポキシ樹脂であり、2種以上のエポキシ樹脂を混合したときに常温で液体となるような組み合わせであってもよい。
エポキシ樹脂として常温で固形のエポキシ樹脂を使用する場合、その含有率は、流動性の観点から、エポキシ樹脂全体の20質量%以下であることが好ましい。
【0021】
2種以上のエポキシ樹脂を用いる場合は、あらかじめエポキシ樹脂同士を混合してから他の成分と混合してもよく、エポキシ樹脂同士を混合せずに他の成分と混合してもよい。
【0022】
エポキシ樹脂のアンダーフィル材における含有率は、特に限定されないが、アンダーフィル材全体の5質量%~60質量%であることが好ましく、5質量%~50質量%であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有率が前記範囲内であると、硬化時の反応性、硬化後の耐熱性及び機械的強度、及び封止時の流動性に優れる傾向にある。
【0023】
エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂と、グリシジルアミン型エポキシ樹脂とを含むことが好ましい。これらのエポキシ樹脂の性能を充分に発揮する観点からは、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂の合計含有率は、例えば、エポキシ樹脂全体の20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。
【0024】
エポキシ樹脂としてビスフェノール型エポキシ樹脂とグリシジルアミン型エポキシとを併用する場合、その質量比(ビスフェノール型エポキシ樹脂:グリシジルアミン型エポキシ)は、特に制限はないが、耐熱性、接着性及び流動性の観点から、例えば、20:80~95:5であることが好ましく、40:60~90:10であることがより好ましく、60:40~80:20であることがさらに好ましい。
【0025】
エポキシ樹脂の純度は、高いことが好ましい。具体的には、特に加水分解性塩素量は、IC等の素子上のアルミ配線の腐食に係わるため少ない方が好ましい。耐湿性に優れるアンダーフィル材を得る観点からは、例えば、500ppm以下であることが好ましい。
【0026】
ここで、加水分解性塩素量とは、試料のエポキシ樹脂1gをジオキサン30mlに溶解し、1N-KOH(水酸化カリウム)メタノール溶液5mlを添加して30分間還流させた後、電位差滴定により求めた値を尺度としたものである。
【0027】
(B)硬化剤
硬化剤の種類は特に制限されず、アンダーフィル材の材料として一般に使用されているものから選択できる。硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
硬化剤としては、アミノ基を有する化合物(アミン系硬化剤)が好ましい。アミノ基を有する化合物は、特に制限はないが、例えば、1分子中に1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群から選ばれる1種以上(以下、単に「アミノ基」ともいう)を2個以上含む化合物が好ましく、1分子中に前記アミノ基を2~4個有する化合物であることがより好ましく、1分子中に前記アミノ基を2個有する化合物(ジアミン化合物)であることがさらに好ましい。
【0028】
アンダーフィル材を常温で液体にする観点からは、硬化剤全体として常温で液体となるようにエポキシ樹脂を選択することが好ましい。すなわち、1種の硬化剤のみを含む場合は、その硬化剤が常温で液体であることが好ましい。2種以上の硬化剤の組み合わせである場合は、2種以上の硬化剤がすべて常温で液状であってもよく、一部が室温で固形の硬化剤であり、2種以上の硬化剤を混合したときに常温で液体となるような組み合わせであってもよい。
硬化剤として常温で固形の硬化剤を使用する場合、その含有率は、流動性の観点から、硬化剤全体の20質量%以下であることが好ましい。
【0029】
アミノ基を有する化合物は、芳香環を有する化合物(芳香族アミン化合物)であることが好ましく、常温で液状の芳香族アミン化合物であることがより好ましく、常温で液状であり、かつ1分子中にアミノ基を2個有する芳香族アミン化合物であることがより好ましい。
【0030】
常温で液状の芳香族アミン化合物としては、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミン等のジエチルトルエンジアミン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,4-ジアミノベンゼン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,6-ジアミノベンゼン、1,3,5-トリエチル-2,6-ジアミノベンゼン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,5,3’,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
【0031】
上記化合物の中でも、保存安定性の観点からは、例えば、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びジエチルトルエンジアミンが好ましい。硬化剤として3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びジエチルトルエンジアミンの少なくとも一方を用いる場合、その含有率は、例えば、硬化剤全体の50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0032】
硬化剤として、市販品を用いてもよい。例えば、常温で液状の芳香族アミン化合物の市販品としては、JERキュア(登録商標)-W、JERキュア(登録商標)-Z(三菱化学株式会社製、商品名)、カヤハード(登録商標)A-A、カヤハード(登録商標)A-B、カヤハード(登録商標)A-S(日本化薬株式会社製、商品名)、トートアミンHM-205(新日鉄住金化学株式会社製、商品名)、アデカハードナー(登録商標)EH-101(株式会社ADEKA製、商品名)、エポミック(登録商標)Q-640、エポミック(登録商標)Q-643(三井化学株式会社製、商品名)、DETDA80(Lonza社製、商品名)等が入手可能である。
【0033】
硬化剤として常温で液状の芳香族アミン化合物を用いる場合、その性能を充分に発揮する観点から、その含有率は硬化剤全体の50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0034】
硬化剤の活性水素当量は、特に制限されない。耐ブリード性及び耐クリープ性の観点から、例えば、10g/mol~200g/molであることが好ましく、20g/mol~100g/molであることがより好ましく、30g/mol~70g/molであることがさらに好ましい。
【0035】
アンダーフィル材におけるエポキシ樹脂と硬化剤との当量比(エポキシ樹脂のエポキシ基のモル数/硬化剤の活性水素のモル数)は、特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑える観点から、例えば、0.7~1.6であることが好ましく、0.8~1.4であることがより好ましく、0.9~1.2であることがさらに好ましい。
【0036】
(C)無機充填材
無機充填材の種類は特に制限されず、アンダーフィル材の材料として一般に使用されているものから選択できる。具体的には、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミニウム、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填材として水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が挙げられる。無機充填材は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
無機充填材の粒子形状は、特に制限はなく、不定形であっても球状であってもよいが、アンダーフィル材の微細間隙への流動性及び浸透性の観点からは、球状であることが好ましい。同様の観点から、無機充填材としては、例えば、球状シリカが好ましく、球状溶融シリカがより好ましい。
【0038】
無機充填材の体積平均粒子径は、特に制限されない。例えば、0.1μm~10μmであることが好ましく、0.3μm~5μmであることより好ましい。無機充填材の体積平均粒子径が0.1μm以上であると、エポキシ樹脂への分散性が向上し、アンダーフィル材の流動特性が向上する傾向にある。10μm以下であると、無機充填材の沈降が抑制され、かつアンダーフィル材の微細間隙への浸透性及び流動性が向上して、ボイド及び未充填部分の発生がより抑制される傾向にある。
【0039】
本開示において無機充填材の体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて得られる体積基準の粒度分布において小径側からの累積が50%となるときの粒子径(D50%)である。
【0040】
無機充填材の含有率は、特に制限されない。例えば、アンダーフィル材全体の20質量%~90質量%であることが好ましく、30質量%~80質量%であることがより好ましく、40質量%~75質量%であることがさらに好ましく、50質量%~75質量%であることが特に好ましく、60質量%~75質量%であることが極めて好ましい。無機充填材の含有率が20質量%以上であると、熱膨張係数が低減する傾向にあり、90質量%以下であると、アンダーフィル材の粘度が低減し、流動性、浸透性及びディスペンス性が向上する傾向にある。
【0041】
(D)末端にグリシジル基を有するシリコーン化合物
末端にグリシジル基を有するシリコーン化合物(以下、「特定シリコーン化合物」とも称する)の種類は特に制限されず、1種を単独で用いても、構造の異なる2種以上を併用してもよい。
本開示において「シリコーン化合物」とは、シロキサン結合で形成される主鎖を有する化合物を意味する。「末端にグリシジル基を有するシリコーン化合物」とは、シロキサン結合で形成される主鎖の末端にグリシジル基を有するシリコーン化合物を意味する。
本開示において「末端にグリシジル基を有するシリコーン化合物」は、上述したエポキシ樹脂には含まれないものとする。
【0042】
本発明者らの検討の結果、特定シリコーン化合物を含むアンダーフィル材は、特定シリコーン化合物を含まないアンダーフィル材に比べて耐ブリード性及び耐クリープ性に優れることがわかった。
【0043】
特定シリコーン化合物は、主鎖の末端の少なくともいずれかにグリシジル基を有していればよいが、すべての主鎖の末端(主鎖が分岐していない場合は主鎖の両末端)にエポキシ基を有していることが好ましい。シリコーン化合物は、主鎖の末端に加えて側鎖にグリシジル基を有していてもよいが、主鎖の末端にのみグリシジル基を有していることが好ましい。
【0044】
特定シリコーン化合物におけるグリシジル基の結合状態は、特に制限されない。例えば、主鎖の末端のケイ素原子に直接結合していても、エーテル基、エステル基、アミノ基、アルキレン基等の連結基、これらの連結基の組み合わせなどを介して結合していてもよい。
【0045】
グリシジル基が主鎖の末端のケイ素原子に連結基を介して結合している場合、連結基の炭素数は特に制限されない。耐ブリード性及び耐クリープ性の観点からは、例えば、2~20であることが好ましく、2~15であることがより好ましく、2~10であることがさらに好ましい。
【0046】
特定シリコーン化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物を例示することができる。
【0047】
【0048】
一般式(1)中、R2~R5及びR7~R10は、それぞれ独立に炭化水素基又はグリシジル基を含有する有機基を表す。R1及びR6は、それぞれ独立にグリシジル基を含有する有機基を表す。
mは、-[Si(R3)(R9)O]-で表されるシロキサン単位の1分子中のモル数を示し、0~3000の数である。
nは、-[Si(R4)(R8)O]-で表されるシロキサン単位の1分子中のモル数を示し、0~3000の数である。
【0049】
一般式(1)において、-[Si(R3)(R9)O]-で表されるシロキサン単位と-[Si(R4)(R8)O]-で表されるシロキサン単位とは、ブロック状に配列されていてもよく、ランダムに配列されていてもよい。mが2以上である場合、複数のR3同士及び複数のR9同士は同一であっても異なっていてもよく、nが2以上である場合、複数のR4同士及び複数のR8同士は同一であっても異なっていてもよい。
【0050】
一般式(1)において、R2~R5及びR7~R10で表される炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基等の脂肪族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基の炭素数は特に制限されないが、入手容易性の観点からは、例えば、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3がさらに好ましい。アルキル基は直鎖状であっても、環状であっても、分岐状であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性の観点からは、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0051】
一般式(1)において、R1~R10で表されるグリシジル基を含有する有機基としては、グリシジル基、グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、グリシジルアミノ基、及びこれらの基が炭素数1~20の置換又は非置換のアルキル基に結合してなる基が挙げられる。
【0052】
特定シリコーン化合物のエポキシ当量は、特に制限されない。耐ブリード性及び耐クリープ性の観点からは、例えば、300g/mol~3000g/molであることが好ましく、350g/mol~2800g/molであることがより好ましく、400g/mol~2700g/molであることがさらに好ましい。
【0053】
特定シリコーン化合物は、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、X-22-163、KF-105、X-22-163A、X-22-163B、X-22-163C、X-22-169AB、X-22-169B(いずれも信越化学工業株式会社製、商品名)等が入手可能である。
【0054】
アンダーフィル材における特定シリコーン化合物の含有率は、特に制限されない。耐ブリード性及び耐クリープ性の観点からは、例えば、0.005質量%~3質量%であることが好ましく、0.008質量%~2質量%であることがより好ましく、0.01質量%~0.1質量%であることがさらに好ましい。
【0055】
(E)カップリング剤
封止材は、カップリング剤を含んでもよい。カップリング剤は、封止材中の樹脂成分と無機充填材又は樹脂成分と電子部品等の構成部材との間の接着性を強固にする役割を果たす。カップリング剤は特に制限されず、封止材の材料として一般に使用されているものから選択できる。具体的には、1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基からなる群から選ばれる1種以上を有するアミノシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等が挙げられる。これらの中でも、充填性の観点からは、シラン系化合物が好ましく、エポキシシランがより好ましい。
【0056】
エポキシシランとしては、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、充填性の観点からは、例えば、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。カップリング剤は、1種を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
アンダーフィル材がカップリング剤を含有する場合、その含有率は、特に制限されない。樹脂成分と無機充填材との界面接着及び樹脂成分と電子部品の構成部材との界面接着を強固にする観点、並びに充填性を向上させる観点からは、例えば、アンダーフィル材全体の0.05質量%~10質量%であることが好ましく、0.2質量%~5質量%であることがより好ましく、0.4質量%~1質量%であることがさらに好ましい。
【0058】
(F)その他の成分
アンダーフィル材は、上記した成分以外のその他の添加剤として、染料、カーボンブラック等の着色剤、希釈剤、レベリング剤、消泡剤などを必要に応じて含んでいてもよい。
【0059】
アンダーフィル材は、その成分を分散混合できる手法であれば、いかなる手法を用いても調製することができる。例えば、所定の配合量の前記各成分を秤量し、らい潰機、ミキシングロール、プラネタリミキサ等の混合機を用いて混合及び混練し、必要に応じて脱泡することによって得ることができる。混合及び混練条件は、原料の種類等に応じて適宜決定すればよいが、各成分が均一に混合及び分散する条件を選択することが好ましい。
【0060】
アンダーフィル材は、EHD型回転粘度計を用いた25℃における粘度が、例えば、1000Pa・s以下であることが好ましい。前記粘度が1000Pa・s以下であると、近年の電子部品の小型化、半導体素子の接続端子のファインピッチ化、配線基板の微細配線化に対応可能な流動性及び浸透性を確保できる。前記粘度は、同様の観点から、例えば、500Pa・s以下であることがより好ましく、100Pa・s以下であることがさらに好ましく、10Pa・s以下であることが特に好ましい。前記粘度の下限に特に制限はないが、実装性の観点からは、例えば、0.1Pa・s以上であることが好ましく、1Pa・s以上であることがより好ましい。
前記粘度は、封止の対象となる半導体装置及びその部材の種類に応じて適宜調整すればよい。粘度は、例えば、上記で例示した各成分の種類、含有量等を制御することによって調整が可能である。
【0061】
<アンダーフィル材の用途>
アンダーフィル材は、例えば、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、リジッド及びフレキシブル配線板、ガラス、シリコーンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、抵抗アレイ、コイル、スイッチ等の受動素子などの電子部品を搭載した半導体装置に適用することができる。
本実施形態のアンダーフィル材は、高い信頼性が求められるフリップチップ用のアンダーフィル材として特に好適である。具体的には、配線板又はガラス基板上に形成した配線に半導体素子をバンプ接続によるフリップチップボンディングした、フリップチップBGA/LGA、COF(Chip On Film)等の半導体装置に対して好適である。
本実施形態のアンダーフィル材は、配線基板と半導体素子とを接続するバンプの材質として鉛含有はんだを用いた従来のフリップチップ半導体部品に対しても好適であるが、鉛はんだと比べると物性的に脆いSn-Ag-Cu系等の鉛フリーはんだを用いたフリップチップ半導体部品に対しても良好な信頼性を維持できるため、特に好適である。
【0062】
また、近年、半導体素子の高速化に伴い、低誘電率の層間絶縁膜が半導体素子に形成されているが、この層間絶縁膜は機械強度が弱く、外部からの応力で破壊され易いため、故障が発生し易い。この傾向は半導体素子が大きくなる程顕著になるため、アンダーフィル材に起因して発生する応力の低減が求められている。
本実施形態のアンダーフィル材によると、半導体素子のサイズが長い方の辺で2mm以上であり、誘電率が3.0以下の層間絶縁膜を有する半導体素子を搭載するフリップチップ半導体装置に対しても、優れた信頼性を提供できる。
また、電子部品を構成する配線基板と半導体素子とのバンプ接続面の距離が200μm以下であるフリップチップ接続に対しても良好な流動性及び充填性を示し、耐湿性、耐熱衝撃性等の信頼性にも優れた半導体装置を提供することができる。
【0063】
<半導体装置の製造方法>
本実施形態の半導体装置の製造方法は、支持体と、前記支持体上に配置される半導体チップとの間の空間を、上述した実施形態のアンダーフィル材で充填する工程と、前記アンダーフィル材を硬化する工程と、を含む。
【0064】
アンダーフィル材を支持体と半導体チップとの間の空間に充填する方法は特に制限されず、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等により行うことができる。また、半導体装置の製造に使用する支持体及び半導体チップの種類は特に制限されず、半導体装置の製造に一般的に用いられるものを使用できる。
【0065】
<半導体装置>
本実施形態の半導体装置は、上述した実施形態のアンダーフィル材の硬化物を備える。具体的には、例えば、支持体と、前記支持体上に配置される半導体チップと、前記支持体と前記半導体チップとの間の空間に配置される上述した実施形態のアンダーフィル材の硬化物と、を備える。
【0066】
上記半導体装置を製造する方法は特に制限されず、例えば、上述した実施形態の半導体装置の製造方法により製造することができる。また、半導体装置に使用する支持体及び半導体チップの種類は特に制限されず、半導体装置の製造に一般的に用いられるものを使用できる。また、
【実施例】
【0067】
以下、実施例に基づいて、上記実施形態をより具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、上記実施形態を限定するものではない。
【0068】
[アンダーフィル材の調製]
表1に示す各成分を表1に示す量(質量部)で配合し、三本ロール及び真空らい潰機にて混練分散して、実施例と比較例のアンダーフィル材を調製した。表1に示す各材料の詳細は、下記のとおりである。表1中の空欄(-)は未配合であることを示す。
【0069】
・エポキシ樹脂1:ビスフェノールFをエポキシ化して得られるエポキシ当量160g/molの液状ジエポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、商品名「YDF-8170C」) ・エポキシ樹脂2:アミノフェノールをエポキシ化して得られるエポキシ当量95g/molの3官能液状エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、商品名「JER630」)
・エポキシ樹脂3:ナフタレンをエポキシ化して得られるエポキシ当量143g/mоlの液状ジエポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名「HP-4032D」)
・硬化剤1:活性水素当量45g/molのジエチルトルエンジアミン(三菱化学株式会社製、商品名「JERキュア(登録商標)W」)
・硬化剤2:活性水素当量63g/molのジエチルジアミノジフェニルメタン(三菱化学株式会社製、商品名「カヤハードA-A」)
・カップリング剤:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名「KBM-403」)
・着色剤:カーボンブラック(三菱化学株式会社製、商品名「MA-100」)
・イオントラップ剤:ビスマス系イオントラップ剤(東亞合成株式会社製、商品名「IXE-500」)
・無機充填材:平均粒径0.6μmの球状溶融シリカ(株式会社アドマッテクス製、商品名「SO-25H/24C」)
・シリコーン化合物1:一般式(1)で表されるグリシジル基を両末端に有するシリコーン化合物(信越化学工業株式会社製、エポキシ当量400g/mol、商品名「KF-105」)
・シリコーン化合物2:一般式(1)で表されるグリシジル基を両末端に有するシリコーン化合物(信越化学工業株式会社製、エポキシ当量1000g/mol、商品名「X-22-163A」)
・シリコーン化合物3:一般式(1)で表されるグリシジル基を両末端に有するシリコーン化合物(信越化学工業株式会社製、エポキシ当量2700g/mol、商品名「X-22-163C」)
・シリコーン化合物4:一般式(1)で表されるグリシジル基を両末端に有するシリコーン化合物(信越化学工業株式会社製、エポキシ当量1700g/mol、商品名「X-22-169B」)
・シリコーン化合物5:カルビノール基を両末端に有するシリコーン化合物(信越化学工業株式会社製、商品名「KF-6003」)
・シリコーン化合物6:アミノ基を両末端に有するシリコーン化合物(信越化学工業株式会社製、商品名「KF-8012」)
【0070】
[評価]
実施例及び比較例で調製したアンダーフィル材を用いて試験用の半導体装置を作製し、下記の特性試験を行った。結果を表1に示す。表1中の「測定不可」は、増粘が著しく、パッケージに充填されなかったために測定ができなかったことを意味する。
試験用の半導体装置の仕様は、以下のとおりである。試験用の半導体装置は、アンダーフィル材20mgを、110℃の条件下でディスペンス方式により半基板と素子との間隙に塗布した後、150℃で2時間、空気中で硬化することで間隙を封止して作製した。
【0071】
・半導体チップのサイズ:10mm×10mm×0.400mm
・基板のサイズ:35mm×35mm×1mm厚
・基板(コア)の種類:E-679FG(G)(日立化成株式会社製、商品名)
・ソルダーレジストの種類:SR-7300G(日立化成株式会社製、商品名)
・基板と半導体素子とのギャップ:50μm
【0072】
(1)基板上の滲み出し(ブリード)の長さ(耐ブリード性の評価)
封止後の半導体装置の基板におけるフィレットと接する部分近傍をレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製、Digital microscope VHX-500(商品名))で観察し、アンダーフィル材の滲み出し(ブリード)の長さを測定した。滲み出し(ブリード)の長さが短いほど、耐ブリード性に優れると判断できる。
【0073】
(2)半導体チップ上の滲み出し(クリープ)の長さ(耐クリープ性の評価)
封止後の半導体装置の半導体チップ上面における端部近傍をレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製、Digital microscope VHX-500(商品名))で観察し、アンダーフィル材の滲み出し(クリープ)の長さを測定した。滲み出し(クリープ)の長さが短いほど、耐クリープ性に優れると判断できる。
【0074】
【0075】
末端にグリシジル基を有するシリコーン化合物を含むアンダーフィル材を用いた実施例1~6は、末端にグリシジル基を有するシリコーン化合物を含まないアンダーフィル材を用いた比較例1と比較すると、耐ブリード性と耐クリープ性に優れていることがわかる。また、末端にグリシジル基ではない官能基を有するシリコーン化合物を用いた比較例2、3と比較しても実施例1~6が優れていることがわかる。
実施例1~6の中でも、実施例4は耐ブリード性と耐クリープ性の評価結果を総合的に判断すると特に優れていることがわかる。
【0076】
以上より、末端にグリシジル基を有するシリコーン化合物を含むアンダーフィル材は、耐ブリード性及び耐クリープ性に優れることがわかった。