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特許7001066石英ガラスおよびそれを用いた紫外線発光素子用部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】石英ガラスおよびそれを用いた紫外線発光素子用部材
(51)【国際特許分類】
   C03B 20/00 20060101AFI20220112BHJP
   C03C 3/06 20060101ALI20220112BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20220112BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20220112BHJP
【FI】
C03B20/00 F
C03B20/00 C
C03B20/00 G
C03C3/06
H01L33/58
H01L33/48
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018561422
(86)(22)【出願日】2018-01-11
(86)【国際出願番号】 JP2018000548
(87)【国際公開番号】W WO2018131668
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2017005165
(32)【優先日】2017-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】貴島 美紗子
(72)【発明者】
【氏名】生田目 真美
(72)【発明者】
【氏名】本間 脩
(72)【発明者】
【氏名】勝田 信
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 泰夫
(72)【発明者】
【氏名】谷田 正道
【審査官】山田 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-273871(JP,A)
【文献】特開2010-222235(JP,A)
【文献】特開2014-005204(JP,A)
【文献】特開2000-103629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 1/00-5/44
C03B 8/00
C03B 19/12-20/00
C03C 3/06
H01L 33/48
H01L 33/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にビッカース圧子を用いて圧痕を形成した際のクラックの発生率が50%となるビッカース圧子の押し込み荷重が0.1~0.5kgfであり、
NaおよびKの含有量の合計が10~800ppmである、石英ガラス。
【請求項2】
IRスペクトルの2500~3900cm-1のSi-OH由来ピークから換算したβ-OH基濃度が10~800ppmである、請求項1に記載の石英ガラス。
【請求項3】
波長265nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)と波長200nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)との差ΔTが10~50%である、請求項1又は2に記載の石英ガラス。
【請求項4】
波長265nmの全光線透過率(%)(厚み1mm換算)が85%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の石英ガラス。
【請求項5】
波長265nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)が60%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の石英ガラス。
【請求項6】
平均径が1~50μmである散乱体の数が1cmあたり50~5000個であり、前記散乱体は空孔、結晶及びオパールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~のいずれか1項に記載の石英ガラス。
【請求項7】
波長265nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)が80%以上であり、かつ波長230nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)と波長200nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)との差ΔTが10~50%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の石英ガラス。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の石英ガラスを用いた紫外線発光素子用部材。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の石英ガラスに形状を付与することにより配光が制御された紫外線発光素子用部材。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の石英ガラスと接合剤とが一体となっている紫外線発光素子用部材。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載の石英ガラスがARコートされた紫外線発光素子用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石英ガラスおよびそれを用いた紫外線発光素子用部材に関する。本発明の石英ガラスは、紫外線発光ダイオード(UV-LED)のような紫外線発光素子の窓部材に好適である。
【背景技術】
【0002】
紫外線発光素子は、殺菌、消毒、浄水、空気清浄、光線治療、植物育成制御、センシング、樹脂硬化、分析、表面改質等の各種用途に用いられる。従来、紫外線発光素子として水銀灯が多く使用されてきたが、近年は、より環境負荷の少ないLED(発光ダイオード)への転換が検討されつつある。
【0003】
紫外線LED(UV-LED)には、光出射部分に平板やレンズ状の窓部材が用いられる。当該窓部材は、紫外線LEDチップを保護するカバー部材としての機能を果たすとともに、紫外線LEDから発せられた光を集光したり拡大したりする働きがある。当該光学レンズの材料として、例えば、概ね波長350nm以下の短波長域(深紫外域)において透過特性に優れた合成石英ガラスが用いられている(特許文献1)。バクテリア、菌、ウイルスなど微生物の核酸は、吸収スペクトルのピークが波長265nm近傍にある。そのため、殺菌用途では波長265nmの透過特性が重要である。
上記の目的で使用される合成石英ガラスの製造方法としては、火炎加水分解法が一般的である(特許文献2)。
【0004】
UV-LEDモジュールには、例えば、3.5~5mm角で、厚み約0.5mmの石英ガラス製の窓部材が用いられている。このような小片の石英ガラス部材を得るには、火炎加水分解法によって得られる合成石英ガラスのインゴットをウエハに加工し、さらにレーザ加工により小片化する必要があり、生産性が低い。
生産性向上のために、鋳造やプレスにより所望の形状の合成石英ガラスを得るのは、その融点、粘度の高さから極めて難しい。
【0005】
一方、所望の形状のセラミックス成形体を得る製造法としてゲルキャスト法がある。ゲルキャスト法とは、セラミックスの粉体、分散媒、及びゲル化剤を含むスラリーを注型した後に、このスラリーを温度条件や架橋剤の添加等によりゲル化させることにより固化して成形体を得る方法である。ゲルキャスト法により石英ガラスを製造する方法が特許文献3に開示されている。
ゲルキャスト法によればウエハ形状や凹凸形状を有する石英ガラスを直接製造することができ、レーザ加工により小片化することでUV-LEDの窓部材を得ることができると考えられる。
【0006】
UV-LEDの窓部材として用いられる石英ガラスは、ウエハからの小片化や、微細加工を加えて所望の形状にするため、レーザ加工性が良好であることが求められる。
レーザ加工法としては、紫外、可視、赤外レーザによる熱加工や、短パルスレーザによる非熱加工(アブレーション加工)が知られている。非熱加工はガラスへの熱影響およびチッピングの発生が抑制されることから、より好ましい方法である。
石英ガラスに短パルスレーザを照射すると、ガラス内部に改質層が連続的、または断続的に形成される。その後、長パルスレーザ照射による加熱熱膨張や、外部から機械的応力を与えることで改質領域を起点とした割断が行われるが、高精度な割断を行うためには、パルスレーザ照射時に改質領域内に微細なクラックが生じていることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特開2015-179734号公報
【文献】日本国特公平7-33259号公報
【文献】日本国特許第5937839号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
UV-LEDの窓部材として用いられる石英ガラスは、レーザ加工性の観点からは、レーザ加工に用いられる光の波長域の吸収が高いことが望ましい。その一方で、UV-LEDが発する光の波長域の光線透過性が高いことが望ましい。すなわち、波長選択的光透過性があることが好ましい。
【0009】
また、殺菌用途のUV-LEDモジュールに搭載される当該窓部材は、先述の通り波長265nmの透過特性が重要である。一方で、殺菌用途に不要な波長230nm以下の高エネルギの光を含む光源を用いる場合、高エネルギの光が周辺部材に局所的に照射されるため部材劣化の原因となる。すなわち、殺菌効果の高い波長265nmの光を透過しつつ、部材劣化の原因となる高エネルギの光の透過を抑制する波長選択的光透過性があることが好ましい。
【0010】
上記実情を鑑みて、本発明は、レーザ加工性に優れる紫外線発光素子用部材およびそれに用いる石英ガラスの提供を目的とする。
また本発明は、殺菌用途に好適な波長選択的光透過性がある紫外線発光素子用部材およびそれに用いる石英ガラスの提供をも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の目的を達成するため、表面にビッカース圧子を用いて圧痕を形成した際のクラックの発生率が50%となるビッカース圧子の押し込み荷重が0.1~0.5kgfである石英ガラスを提供する。
【0012】
また、本発明の石英ガラスは、IRスペクトルの2500~3900cm-1のSi-OH由来ピークから換算したβ-OH基濃度が10~800ppmであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の石英ガラスは、波長250nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)と波長200nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)との差ΔTが10~50%であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の石英ガラスは、波長265nmの全光線透過率(%)(厚み1mm換算)が85%以上であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の石英ガラスは、波長265nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)が60%以上であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の石英ガラスは、NaおよびKの含有量の合計が10~800ppmであることが好ましい。
【0017】
また、本発明の石英ガラスは、平均径が1~50μmである散乱体の数が1cmあたり50~5000個であることが好ましく、前記散乱体は空孔、結晶及びオパールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の石英ガラスは、波長265nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)が80%以上であり、かつ波長230nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)と波長200nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)との差ΔTが10~50%であることが望ましい。
【0019】
また、本発明は、本発明の石英ガラスを用いた紫外線発光素子用部材を提供する。
【0020】
また、本発明は、本発明の石英ガラスに形状を付与することにより光の配向(配光)が制御された紫外線発光素子用部材を提供する。
【0021】
また、本発明は、本発明の石英ガラスと接合剤とが一体となっている紫外線発光素子用部材を提供する。
【0022】
また、本発明は、本発明の石英ガラスがARコートされた紫外線発光素子用部材を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の石英ガラスは、ウエハ形状等の大型基板の石英ガラスをレーザ加工により小片化する際にレーザ加工性が良好である。
また、本発明の石英ガラスは、殺菌用途に好適かつ周辺部材の劣化を抑制する波長選択的光透過性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の石英ガラスについて説明する。なお、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また‘質量部’と‘重量部’とは同義であり、単に‘ppm’と記載する場合には、重量ppmであることを意味する。
本発明の石英ガラスは、表面にビッカース圧子を用いて圧痕を形成した際のクラックの発生率が50%となるビッカース圧子の押し込み荷重(以下、「CIL値」と記載する。)が0.1~0.5kgfである。上記ビッカース圧子の押し込み荷重が上記範囲であると、ウエハ形状の石英ガラスをレーザ加工により小片化する際のレーザ加工性に優れ、大型化・アレイ化したものから小片化が容易にでき、生産性に優れる。
【0025】
極短パルスレーザの照射により石英ガラスに内部応力が誘起され、改質層と呼ばれる高密度領域が形成されることが知られている。また、この内部応力で改質領域内に微細なクラックを生じることがあり、改質領域を起点とした高精度な割断に有利に働くと考えられる。断面観察に見られる割断の起点となった改質層の幅は、クラックの発生率が50%となるビッカース圧子の押し込み荷重が0.1~0.5kgfであると大きくなるため、加工性に優れると考えられる。
【0026】
CIL値が0.5kgfを超える場合、極短パルスレーザ加工を行う際、高いエネルギが必要となり、高出力の高価な装置が必要となる。また、その様な装置を用いてもパルスエネルギが過大となってチッピング、形状不良などの不具合が生じるおそれがある。
一方、CIL値が0.1kgf未満の場合、本発明の石英ガラスを紫外線発光素子用部材に用いた際、紫外線発光素子の窓部材としての使用時に傷つきやすいなどの不具合が生じるおそれがある。
そのため、CIL値は0.1~0.5kgfであり、0.1~0.3kgfであることが好ましく、0.2~0.3kgfであることがより好ましい。
【0027】
本発明の石英ガラスは、IRスペクトルの2500~3900cm-1のSi-OH由来ピークから換算したβ-OH基濃度が10~800ppmであることが好ましい。
β-OH基濃度を10ppm以上とすることにより、高エネルギのレーザ照射した際にSiOの結合が切れることによるE’センター、NBOHCなどのラジカル種が発生した際もSi-OHによる修復作用が働き、レーザ加工による透過率変化を抑制できることから好ましい。一方、β-OH基濃度を800ppm以下とすることにより、波長170nm付近にピークを持つ吸収帯が大きくなるのを防ぎ、吸収端が波長265nmの透過率に影響を及ぼすことも防ぐことができることから好ましい。
当該β-OH基濃度は40ppm以上がより好ましく、また、100ppm以下がより好ましい。
【0028】
本発明の石英ガラスは、波長265nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)と波長200nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)との差ΔTが10~50%であることが好ましい。
ΔTが上記範囲であれば、UV-LEDが発する光の波長域(波長265nm)の光線透過性は高い一方で、高エネルギのレーザ加工に用いられる波長200nm以下の光の波長域、例えばエキシマレーザの波長193nmで吸収があるという、波長選択的光透過性がより良好に達成されるためである。
【0029】
本発明の石英ガラスは、波長265nmの全光線透過率(%)(厚み1mm換算)が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0030】
本発明の石英ガラスは、波長265nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)が60%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。波長265nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)の直線透過率が60%以上であると、散乱の影響が小さく、窓部材の形状を、レンズ型、ドーム型、砲弾型等に変え、形状を付与することによる配光制御が容易となることから好ましい。
【0031】
本発明の石英ガラスは、NaおよびKの含有量の合計が10ppm~800ppmであることが好ましい。
NaおよびKは、クリストバライト、トリジマイト等の結晶質シリカの結晶構造を安定化させるため、結晶化促進剤として作用する。
NaおよびKを合計含有量で10ppm以上含有させると、石英ガラスが微小結晶を含有するため、散乱層としての効果が得られ、光取り出し効率の向上が期待できる。また、低圧UVランプ等、殺菌用途に不要な波長230nm以下の高エネルギの光を含む光源を用いる場合、波長230nm以下の高エネルギの光が局所的に照射されることが抑制され、周辺部材の劣化を抑制できる。
一方、NaおよびKの合計含有量を800ppm以下とすることにより、結晶化がより進行して散乱の影響が大きくなることを防ぐことができ、窓部材の形状を、レンズ型、ドーム型、砲弾型等に変え、形状を付与することによる配光制御が容易となることから好ましい。
【0032】
本発明の石英ガラスは、NaおよびKの含有量の合計が10ppm~800ppmであることが好ましく、15ppm以上がより好ましく、20ppm以上がさらに好ましく、25ppm以上がよりさらに好ましく、40ppm以上がことさらに好ましく、50ppm以上がなおさらに好ましく、80ppm以上が特に好ましい。また、600ppm以下がより好ましく、580ppm以下がさらに好ましく、200ppm以下がよりさらに好ましく、130ppm以下がことさらに好ましい。
【0033】
本発明の石英ガラスは、その光学特性に悪影響が及ばない限り、NaおよびK以外の元素を含有してもよい。
具体的には、Al、Mg、CaおよびFeからなる群から選択される元素を1種以上含有してもよい。これらの元素の含有量が合計で1ppm以上800ppm未満であることが好ましい。これらの元素の合計含有量が800ppm未満とすることにより、結晶化がより進行して散乱の影響が大きくなることを防ぐことができ、窓部材の形状を、レンズ型、ドーム型、砲弾型等に変え、形状を付与することによる配光制御が容易となることから好ましい。
これらの元素の合計含有量は、より好ましくは5ppm以上580ppm未満であり、さらに好ましくは100ppm未満である。
【0034】
本発明の石英ガラスは、平均径が1~50μmの散乱体の数が1cmあたり50~5000個であることが好ましい。散乱体としては空隙(空孔)、結晶、オパールが考えられ、これらから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
1cmあたり50~5000個の前記散乱体が石英ガラス中に存在していれば、ヘイズ値が高くなり、好ましくは0.5%以上となる。これにより、散乱層としての効果が得られ、光取り出し効率の上昇が期待できる。
1cmあたりの前記散乱体の数を5000個以下とすることにより、散乱の影響が大きくなることを防ぐことができ、窓材の形状を、レンズ型、ドーム型、砲弾型等に変え、形状を付与することによる配光制御が容易となることから好ましい。前記散乱体の数は500個以下がより好ましい。
【0035】
本発明の石英ガラスは、ヘイズ値が0.1%以上10%未満であることが好ましく、0.5%以上がより好ましい。ヘイズ値が0.1%以上であることが好ましい理由は上述した通りである。一方、ヘイズ値が10%未満であると、散乱の影響が大きくなるのを防ぐことができ、窓部材の形状を、レンズ型、ドーム型、砲弾型等に変え、形状を付与することによる配光制御が容易となることから好ましい。
【0036】
本発明の石英ガラスは、波長265nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)が80%以上、かつ波長230nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)と波長200nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)との差ΔTが10~50%であることが好ましい。
上記範囲であれば、殺菌効果のある波長265nmで高い透過率を有しながら、波長230nm以下の高エネルギの光が局所的に照射されることによる周辺部材の劣化を抑制できる。また、前記波長265nmの直線透過率(%)は85%以上がより好ましい。
【0037】
また、本発明の石英ガラスを用いた紫外線発光素子用部材として、石英ガラスに形状を付与することにより配光が制御されたものの他に、石英ガラスと接合剤とが一体となっているものや、石英ガラスがARコートされたものなどを好ましい態様として挙げることができる。
【0038】
本発明の石英ガラスは、ゲルキャスト法により製造できる。具体的には、下記工程1~8を順に実施すればよい。
工程1:原料シリカ粉末を溶媒に分散して分散液を作製する分散液調製工程
工程2:工程1で得た分散液に硬化性樹脂、硬化剤、硬化触媒、界面活性剤を添加してシリカと硬化性樹脂の混合液を作製する混合液調製工程
工程3:工程2で得た混合液を型に流し込んで充填させる成形工程
工程4:混合液を型の中で硬化させる硬化工程
工程5:硬化した成形体を型から取り外す脱型工程
工程6:乾燥した成形体に含有する硬化性樹脂等の有機物を焼失させる脱脂工程
工程7:脱脂した成形体を焼結して石英ガラスを得る焼成工程
工程8:焼結した成形体をガス雰囲気中で加熱する熱処理工程
各工程の詳細について以下に記載する。
【0039】
(工程1)
工程1で使用する原料シリカ粉末は、純度99.0%以上であることが好ましく、より好ましくは純度99.5%以上、さらに好ましくは純度99.9%以上である。
また、原料シリカ粉末は、平均粒子径が5nm以上400nm以下であることが好ましく、より好ましくは平均粒子径が7nm以上350nm以下であり、さらに好ましくは平均粒子径が12nm以上300nm以下である。後述する実施例では平均粒子径20nm(実施例1、2、4、5)と平均粒子径120nm(実施例3)の原料シリカ粉末をそれぞれ用いた。
【0040】
工程1で原料シリカ粉末を溶媒に分散させる方法は、原料シリカ粉末の凝集を解離できればその手法は特に限定されないが、後述する実施例では、超音波ホモジナイザー(実施例1、2、3、4)又は超音波洗浄機(実施例5)を用いた。また、シリカ粉末の凝集を解離し、より分散させるため、pH調整剤、界面活性剤、高分子分散剤などを、適宜選択して添加できる。pH調整剤、界面活性剤、高分子分散剤などは、後述の硬化性樹脂のゲル化に悪影響を与えないものが好ましい。また、溶媒としては、例えば純水が挙げられる。
【0041】
塩基性のpH調整剤には、塩基性有機物質を用いることができ、例えば、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、コリン、グアニジン類、またテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなどの4級アンモニウム塩などが挙げられる。
酸性のpH調整剤には、無機酸および有機酸やその塩類を用いることができ、例えば、リン酸、硝酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸等やその塩類、アミノ酸類などの両性塩類などが挙げられる。
【0042】
界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、脂肪族あるいは芳香族第4級アンモニウム塩類、ピリジニウム、イミダゾリウム等の複素環第4級アンモニウム塩類、及び脂肪族または複素環を含むホスホニウムまたはスルホニウム塩類、アセチレングリコール等が挙げられる。
高分子分散剤としては、ポリマー主鎖または側鎖に第1~3級アミン、第4級アンモニウム塩基、または第4級ホスホニウム塩基などを有する高分子、アクリル酸又はその塩の単独重合体、水溶性アミノカルボン酸系重合体、あるいは、アクリル酸エステルの(共)重合体などが挙げられる。
これらのpH調整剤、界面活性剤、高分子分散剤は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
なお、分散液中に残存する凝集物を除去するためにフィルタリングを実施してもよい。後述する実施例では、フィルタリング方法として、エア圧送式フィルタリング装置にデプスフィルターを設置してフィルタリングを実施した。
【0044】
(工程2)
工程2では溶媒を使用することが好ましい。溶剤の使用により混合液の粘度を調整してスラリー状にすることにより、工程3での型への充填が容易になる。この目的で使用する溶媒としては、例えば、イオン交換水、蒸留水等の純水、およびそれらとアルコール類、エーテル類、アミド類、エタノールアミン類等の混合物である水系溶剤、アセトン、ヘキサン等の有機溶媒が使用できる。溶媒には消泡や脱泡を目的として界面活性剤を添加することも出来る。その中でも、製造コストや環境負荷の観点からイオン交換水、純水、水系溶剤などの水系溶媒であることが好ましい。
【0045】
工程2で使用する硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。エポキシ樹脂は成形体の保形性が高く、大気雰囲気下で硬化するという点で好ましく、アクリル樹脂は室温で反応が迅速に進行する点で好ましい。
【0046】
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型等のビスフェノール類のジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、メチルグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、シクロヘキセンオキサイド型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂などが挙げられる。
反応してアクリル樹脂となるモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸アミド、メタクリル酸、メトキシ(ポリエチレングリコール)モノメタクリレート、n-ビニルピロリドン、アクリルアミド、アルキルアクリルアミド、アルキルメタクリルアミド、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ヒドロキシアルキルアクリルアミド、ヒドロキシアルキルメタクリルアミド、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、メタクリラトエチルトリメチルアンモニウムクロリド、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、p-スチレンスルホン酸、p-スチレンスルホン酸塩などが挙げられる。
【0047】
硬化性樹脂として、エポキシ樹脂を使用する場合、平均分子量は20~30000が好ましい。エポキシ樹脂の平均エポキシ官能基数は2~10であるのが好ましい。これにより、工程5での脱型時に一定の強度が得られ、かつ工程3の成形時に十分な可使時間も確保できる。
上述したように、製造コストや環境負荷の観点から水系溶剤が好ましい。そのため、硬化性樹脂も水溶性が好ましく、水溶性エポキシ樹脂においては水溶率が70~100%であることが好ましい。
硬化性樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
硬化性樹脂の配合量は適宜選択することができ、シリカ粉末に対する重量比が0.1以上1.0以下であるのが好ましい。
【0049】
工程2で使用する硬化剤は、硬化性樹脂を硬化させるものであり、使用する硬化性樹脂に応じて選択する。エポキシ樹脂の硬化剤としては、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリアミド系硬化剤等が挙げられる。アミン系硬化剤は反応が迅速であるという点で好ましく、酸無水物系硬化剤は耐熱衝撃性に優れた硬化物が得られるという点で好ましい。
アミン系硬化剤としては、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミン、変性ポリアミノアミド、変性脂肪族ポリアミン等が挙げられ、モノアミン、ジアミン、トリアミン、ポリアミンのいずれも用いることができる。
酸無水物系硬化剤としてはメチルテトラヒドロ無水フタル酸、2塩基酸ポリ無水物等が挙げられる。
アクリル樹脂の硬化剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤等が挙げられる。ラジカル重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過酸化物、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチルアミド)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2-シアノ-2-プロピルアゾホルムアミド、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)等のアゾ化合物などが挙げられる。カチオン性重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩などのオニウム塩等が挙げられる。
【0050】
工程2で使用する硬化触媒は、硬化性樹脂の硬化を促進させるものであり、使用する硬化性樹脂に応じて選択する。この硬化触媒としては、第三アミン類、イミダゾール類等が挙げられる。
第三アミン類としては、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられる。
イミダゾール類としては2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、N-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0051】
製造する石英ガラスが、Naおよび/またはK、あるいは、Al、Mg、CaおよびFeからなる群から選択される1種以上の元素を含有する場合は、混合液におけるこれらの元素の含有量が所定の含有量になるように混合液を調製すればよい。
混合液における上記元素の含有量は、原料シリカ粉末、pH調整剤、分散剤、界面活性剤、硬化性樹脂、硬化剤、硬化触媒中に含有する金属含有量を適宜選択することで調整してもよいし、上記元素の塩を添加することで調整してもよいし、それらの併用でもよい。
上記元素の塩を添加する場合、工程2での添加に限定されず、工程3(成形工程)、工程6(脱脂工程)、工程7(焼成工程)で添加してもよい。
【0052】
工程2で各成分を混合する手段は特に限定されないが、後述する実施例では自転公転ミキサーを用いた。
工程2で各成分を混合する際には、脱泡も行うことが好ましい。脱泡することにより、工程4(硬化工程)において、成形体中にスラリー中の泡起因のポアが入ることを防止できる。脱泡は真空式自転公転ミキサーを用いて各成分を混合しながら実施できる。
【0053】
工程3で使用する型の種類や形状は特に限定されず、製造する石英ガラスに応じて適宜選択することができ、金属製の型や樹脂製の型、シリコーンゴム製の型を使用できる。
【0054】
工程4で混合液を硬化させる条件は特に限定されず、使用する硬化性樹脂、硬化剤、硬化触媒に応じて適宜選択することができる。後述する実施例では、型に充填した混合液を室温で静置して硬化させた。
【0055】
工程5で型から取り外した成形体は乾燥させてから、工程6を実施することが好ましい。
【0056】
工程6では、乾燥させた成形体を電気炉等の加熱炉を用いて、所定の温度で所定時間を保持して、成形体に含有する硬化性樹脂等の有機物を焼失させる。加熱温度および当該温度に保持する時間は特に限定されないが、後述する実施例では、550℃以下の温度で24時間保持(実施例1、2、3)又は168時間保持(実施例4、5)をした。
【0057】
工程7では、工程6で脱脂した成形体を焼結させて石英ガラスを得る。焼結条件は特に限定されない。後述する実施例では、1125℃で真空焼成(実施例1、3、4、5、6)又は大気焼成(実施例2)をした。
【0058】
工程8では、焼結した石英ガラスの透過率特性を調整するためにガス雰囲気中で熱処理する。透過率特性を調整する必要がない場合は省いてもよい。雰囲気ガスの種類や熱処理条件は特に限定されないが、深紫外領域の透過率を調整するためには水素雰囲気での熱処理が好ましい。後述する実施例では、水素100%雰囲気中600℃で10時間熱処理(実施例1、2、3)した。
【実施例
【0059】
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明する。例1~例5は実施例1~5に相当し、例6は比較例1に相当する。
【0060】
(例1)
先述した工程1~工程8の手順を実施して、石英ガラスを得た。
工程1では、純度99.9%以上、平均粒子径20nm、比表面積90m/gの原料シリカ粉末を33.9質量部、溶媒としてpH調整剤を用いてpHを13に調整した水66.1質量部に超音波ホモジナイザーにより分散させて分散液を作製した。
工程2では、上記の分散液88.2質量部、水溶性エポキシ樹脂10.0質量部、脂肪族アミン硬化剤1.8質量部を真空ポンプ搭載自転公転式ミキサーにより混合および脱泡して混合液を調製した。
工程3では、Φ30mm×10mmtのポリエチレン製の型に上記の混合液を充填させた。
工程4は、型に充填した混合液を室温で静置して硬化させた。
工程5で型から成形体を取り外した後、乾燥させた。
工程6では、乾燥後の成形体は電気炉を用いて、550℃以下で24時間保持して脱脂した。
工程7では、工程6で脱脂した成形体を1125℃で真空焼成させ、石英ガラスを得た。
工程8では、工程7で焼結した成形体の透過率特性を調整するために水素100%雰囲気中600℃で10時間保持して熱処理した。
上記の手順で得られた石英ガラスについて以下の評価を実施した。
【0061】
(β-OH基濃度)
フーリエ変換赤外分光光度計(Thermo Fisher Scientific・Nicolet 6700)を使用した。石英ガラスを円形板状(直径1.5cm、約1.0mm厚)に加工し、両主面を鏡面研磨した。電子冷却DTGSにより下記条件で解析を行った。
積算:128回、分解能:8cm-1、測定範囲:4000~400cm-1
IRスペクトル中、Si-OH由来ピークが2500~3900cm-1に検出される。約3500cm-1の吸光度をA(Peak)、ベースラインとして3955cm-1の吸光度をA(Base)としたとき、Si-OHピーク吸光度A(Si-OH)は、A(Si-OH)=A(Peak)-A(Base)で表される。このA(Si-OH)をガラスの厚さで1mm厚相当に規格化した値をβ-OH基濃度とした。
【0062】
(金属元素(K,Na,Al,Mg,Ca,Fe)含有量)
ICP質量分析計(Agilent8800、アジレント・テクノロジー株式会社)を使用した。粉砕した石英ガラスをガラスにフッ化水素酸を添加し加熱して分解した。分解後、硝酸を添加して一定量にし、ICP質量分析法で各金属元素(K,Na,Al,Mg,Ca,Fe)の濃度を測定する。標準液を用いて作製された検量線より濃度を計算する。この測定濃度と石英ガラスの分解量より石英ガラス中の各金属元素(K,Na,Al,Mg,Ca,Fe)の含有量を算出した。
【0063】
(散乱体(結晶)の数及び平均径(平均結晶径))
光学顕微鏡(Nikon ELIPSE LV100)を使用した。石英ガラスを円形板状(直径1.5cm、約1.0mm厚)に加工し、両主面を鏡面研磨した。散乱体の数は、1.5×1.5μmの観察面に観察された結晶の数をカウントし,単位体積当たりの散乱体の数を算出した。平均径は散乱体の直径の総和を散乱体の数で除して算出した。
【0064】
(CIL評価、クラック発生率)
マイクロビッカーズ硬度計(HMV-2、島津製作所)を使用した。石英ガラスを円形板状(直径1.5cm、約1.0mm厚)に加工し、両主面を鏡面研磨した。気温23℃、露点-2.4℃の雰囲気下で、ビッカース圧子を15秒押し込んだ後にビッカース圧子をはずし、圧痕付近のクラックの有無を観測した。0.1kgf、0.2kgf、0.3kgf、0.5kgf及び1.0kgfの5荷重にて100μm間隔で10点圧痕をつくり、各荷重のクラック発生率を算出した。なお、荷重とクラック発生率のプロットを行い、50%クラックが発生する(クラックの発生率が50%となる)荷重がCIL値である。
【0065】
(レーザ加工性)
石英ガラスを円形板状(直径1.5cm、約1.0mm厚)に加工し、両主面を鏡面研磨した。中心波長1552nm、パルス幅680フェムト秒、平均出力10Wの半導体レーザ(フェムト秒レーザ)をサンプル内部に集光し、幅方向に走査することで、内部に改質層を連続的に入れた。ローラーで応力を加えることで改質層を起点として分割予定線に沿った位置で分離した。分断面は光学顕微鏡を用いて観察し、走査回数1回の時の改質層の深さを計測した。
【0066】
(透過率)
分光光度計(PerkinElmer Lambda 900)を使用した。石英ガラスを円形板状(直径1.5cm、約1.0mm厚)に加工し、両主面を鏡面研磨した。測定波長域200-800nm、スキャンスピード60nm/minで直線透過率、積分球を用いた全光線透過率を測定した。測定値は1mm厚の透過率に換算した。
【0067】
(ヘイズ値)
ヘイズメーター(HZ-2、スガ試験機株式会社)を使用した。石英ガラスを円形板状(直径1.5cm、約1.0mm厚)に加工し、両主面を鏡面研磨し、ヘイズ値を測定した。
【0068】
(例2)
工程7で、工程6で脱脂した成形体を真空焼成する代わりに1125℃で大気焼成させた。工程7以外は例1と同様の手順を実施した。
【0069】
(例3)
工程1では、純度99.9%以上、平均粒子径100nm、比表面積55~65m/gの原料シリカ粉末を62.9質量部、溶媒としてpH調整剤を用いてpHを13に調整した水37.1質量部を超音波ホモジナイザーにより分散させて分散液を作製した。
工程2では、上記の分散液94.1質量部、水溶性エポキシ樹脂5.0質量部、脂肪族アミン硬化剤0.9質量部を真空ポンプ搭載自転公転式ミキサーにより混合および脱泡して混合液を調製した。
以下の工程は例1と同様の手順を実施し、石英ガラスを得た。
【0070】
(例4)
工程2では、上記の分散液88.5質量部、水溶性エポキシ樹脂10.0質量部、脂肪族アミン硬化剤1.0質量部、3級アミン触媒0.5質量部を真空ポンプ搭載自転公転式ミキサーにより混合および脱泡して混合液を調製した。
工程6では、乾燥後の成形体は電気炉を用いて、550℃以下で168時間保持して脱脂した。
工程8は実施しなかった。
工程2、6、8以外は例1と同様の手順を実施した。
【0071】
(例5)
工程1での分散液の作製に超音波ホモジナイザーの代わりに超音波洗浄機を使用した。 工程6では、乾燥後の成形体は電気炉を用いて、550℃以下で168時間保持して脱脂した。
工程8は実施しなかった。
工程2、6、8以外は例1と同様の手順を実施した。
【0072】
(例6)
火炎加水分解法で合成された合成石英ガラス(旭硝子株式会社、AQシリーズ)を使用し、各評価のサンプルを板状(3cm×3cm×1mmt)とした以外は例1と同様の手順を実施した。
【0073】
例1~6の石英ガラス又は合成石英ガラスについて、β-OH濃度(ppm)、各金属元素の含有量(重量ppm)、平均径が1~50μmの散乱体の数(個/cm)及び散乱体の平均径を表1に、CIL評価及びレーザ加工性の評価結果を表2に、光学特性を表3にそれぞれ示す。表3における全光線透過率及び直線透過率はいずれも厚み1mm換算の値である。なお、表中の空欄は未測定であることを示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
例1~5の石英ガラスは、CIL値が0.2~0.5kgfであるため、極短パルスレーザであるフェムト秒レーザの照射による微細なクラックを含む改質層(割断の起点となる)の幅が例6より広く、ウエハ形状の石英ガラスをレーザ加工により小片化する際のレーザ加工性に優れている。
例1~3の石英ガラスは殺菌用途に重要な波長265nmの全光線透過率(%)(厚み1mm換算)が85%以上であり、ヘイズ値が0.5%以上5%未満であることから、散乱層としての効果が得られ、光取り出し効率の向上が期待でき、窓部材として優れている。
例1~5の石英ガラスは波長265nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)と波長200nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)の差ΔTが10~50%という、波長選択的光透過性を持つため、高エネルギのレーザ加工時に光を吸収して、加工性に優れることが期待できる。
例1~5の石英ガラスは波長265nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)が80%以上、かつ波長230nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)と波長200nmの直線透過率(%)(厚み1mm換算)の差ΔTが10~50%という、波長選択的光透過性を持つため、殺菌効果のある270~230nmの広い波長域で高い透過率を有しながら、周辺部材の劣化を抑制できる、波長選択的光透過性が達成される。
【0078】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2017年1月16日出願の日本特許出願(特願2017-5165)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。