(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】透過度可変フィルム及びこれを含むスマートウィンドウ
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1681 20190101AFI20220112BHJP
G02F 1/167 20190101ALI20220112BHJP
【FI】
G02F1/1681
G02F1/167
(21)【出願番号】P 2020538063
(86)(22)【出願日】2019-04-19
(86)【国際出願番号】 KR2019004755
(87)【国際公開番号】W WO2019203612
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-07-14
(31)【優先権主張番号】10-2018-0046395
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0046381
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】バエ、ナム ソク
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ヨン グー
(72)【発明者】
【氏名】リー、スン ホン
(72)【発明者】
【氏名】クォン、テギュン
(72)【発明者】
【氏名】ユーン、ヨウンシク
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-507443(JP,A)
【文献】特開2011-048089(JP,A)
【文献】特開2013-041034(JP,A)
【文献】特開2008-281693(JP,A)
【文献】特開2008-064888(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102540613(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0104676(US,A1)
【文献】特開2012-173539(JP,A)
【文献】特表2013-500504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/15-1/19
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して備えられる第1電極基板及び第2電極基板
、及び
前記第1電極基板と前記第2電極基板との間に備えられ、液体物質及び前記液体物質を2つ以上の空間に区画する隔壁パターンを含む液体収容層を含み、
前記隔壁パターンの少なくとも一部は、隣り合う空間を連結する通路領域を含むものであ
り、
前記通路領域の厚さは、前記隔壁パターンの厚さの0.05倍~0.95倍であり、
前記隔壁パターンの一面は、前記通路領域を含む全体面で前記第1電極基板に接し、
前記隔壁パターンの第1電極基板に接して備えられる一面に対向する他の一面は、前記通路領域を除く全体面で前記第2電極基板に接し、
前記隔壁パターンは、連続して連結された閉図形の縁構造を含み、
前記閉図形は六角形であり、前記通路領域は、前記六角形の互いに向かい合う少なくとも一対の縁領域に設けられている、透過度可変フィルム。
【請求項2】
前記第1電極基板に接して備えられる前記隔壁パターンの一面の水平断面積全体を基準に、
前記通路領域が備えられる領域の面積は、0%超過30%以下である、請求項
1に記載の透過度可変フィルム。
【請求項3】
前記隔壁パターンの厚さは、5μm~50μmである、請求項1
または2に記載の透過度可変フィルム。
【請求項4】
前記通路領域の幅は、1μm~50μmである、請求項1から
3のいずれか一項に記載の透過度可変フィルム。
【請求項5】
前記隔壁パターンのピッチ(Pitch)は、100μm~3,000μmである、請求項1から
4のいずれか一項に記載の透過度可変フィルム。
【請求項6】
前記液体物質は、有色帯電粒子が分散した溶媒を含むものである、請求項1から
5のいずれか一項に記載の透過度可変フィルム。
【請求項7】
前記有色帯電粒子は、金属粒子、無機質粒子、ポリマー粒子及びこれらの組み合わせのうち1種以上を含むものである、請求項
6に記載の透過度可変フィルム。
【請求項8】
前記液体物質の粘度は、1cps~1,000cpsである、請求項1から
7のいずれか一項に記載の透過度可変フィルム。
【請求項9】
前記第1電極基板は、第1基
材及び前記第1基材上に備えられる透明導電性酸化物層を含み、
前記第2電極基板は、第2基
材及び前記第2基材上に備えられ、前記透明導電性酸化物層に対向して備えられる金属層、金属酸化物層、金属窒化物層、金属酸窒化物層又は金属合金層を含むものである、請求項1から
8のいずれか一項に記載の透過度可変フィルム。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の透過度可変フィル
ム及び前記透過度可変フィルムに電気的に連結された電圧印加装置を含むスマートウィンドウ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年4月20日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2018-0046381号及び2018年4月20日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2018-0046395号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に組み含まれる。
【0002】
本願は、透過度可変フィルム及びこれを含むスマートウィンドウに関する。
【背景技術】
【0003】
透過度可変フィルムは、外部から流入する光の透過と遮断が容易であって、建築用スマートウィンドウ、自動車用サンルーフ及び透明ディスプレイの遮光フィルムとして活用されることができる。このとき、透過度可変フィルムは、両基板の間に一定のセルギャップ(cell gap)を維持することが必須である。
【0004】
セルギャップの維持のための方法としては、ボールスペーサ(Ball Spacer)及びコラムスペーサ(Column Spacer)、そしてハニカム(Honeycomb)パターンといった隔壁が代表的に使用されることができる。しかしながら、ボールスペーサ(Ball Spacer)及びコラムスペーサ(Column Spacer)の場合、大面積で垂直にフィルムが置かれる時に、重力によって液相が下端に片寄りながら生じる外観不良問題が発生している。これによって、透過度可変フィルム分野においては、隔壁をパターン化させる技術を通じて、外観不良問題を解決しようとする研究が進行されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、透過度可変フィルム及びこれを含むスマートウィンドウを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の一実施態様は、
互いに対向して備えられる第1電極基板及び第2電極基板;及び
上記第1電極基板と上記第2電極基板との間に備えられ、液体物質及び上記液体物質を2つ以上の空間に区画する隔壁パターンを含む液体収容層を含み、
上記隔壁パターンの少なくとも一部は、隣り合う空間を連結する通路領域を含むものである、透過度可変フィルムを提供する。
【0007】
また、本願の別の実施態様は、上記透過度可変フィルムを含むスマートウィンドウを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本願の一実施態様に係る透過度可変フィルムは、大面積で製造する場合にも、セル貼り合わせ工程中に発生する気泡を除去することができるので、セルの外観において、向上した効果をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本願の一実施態様に係る透過度可変フィルムの隔壁パターンの形態を例示する図である。
【
図2】本願の一実施態様に係る透過度可変フィルムの隔壁パターンにおいて、互いに向かい合う一対の縁領域にそれぞれ通路領域が備えられる形態を示す図である。
【
図3】本願の一実施態様に係る透過度可変フィルムの通路領域の形態を概略的に示す図である。
【
図4】本願の一実施態様に係る透過度可変フィルムの隔壁パターンにおいて、互いに向かい合う 2対又は3対の縁領域にそれぞれ通路領域が備えられる形態を示す図である。
【
図5】本願の実施例1によって製造された透過度可変フィルム内の隔壁の内部空間を透過モードで撮影したOM像である。
【
図6】本願の実施例2によって製造された透過度可変フィルム内の隔壁の内部空間を透過モードで撮影したOM像である。
【
図7】本願の比較例1によって製造された透過度可変フィルム内の隔壁の内部空間を透過モードで撮影したOM像である。
【
図8】本願の比較例2によって製造された透過度可変フィルム内の隔壁の内部空間を透過モードで撮影したOM像である。
【
図9】本願の一実施態様に係る透過度可変フィルムの通路領域の形態を概略的に示す図である。
【
図10】本願の実施例3によって製造された透過度可変フィルム内の隔壁パターンの一区画を撮影したSEM像である。
【
図11】本願の一実施態様に係る透過度可変フィルム内の隔壁パターンの一区画を撮影したSEM像である。
【
図12】本願の実施例3に係る透過度可変フィルムの製造過程において、現像工程を経た後の隔壁パターンを撮影した写真である。
【
図13】本願の実施例4に係る透過度可変フィルムの製造過程において、現像工程を経た後の隔壁パターンを撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願について、より詳細に説明する。
【0011】
本願の一実施態様に係る透過度可変フィルムは、互いに対向して備えられる第1電極基板及び第2電極基板;及び上記第1電極基板と上記第2電極基板との間に備えられ、液体物質及び上記液体物質を2つ以上の空間に区画する隔壁パターンを含む液体収容層を含み、上記隔壁パターンの少なくとも一部は、隣り合う空間を連結する通路領域を含む。
【0012】
本願において、透過度可変フィルムは、電圧印加の有無によって光透過率が変わり得るフィルムを意味する。このとき、上記光透過率は、物質層又は境界面を透過した光の強度の入射光強度に対する比を意味する。
【0013】
透過度可変素子を実現するためには、電圧印加前・後の光透過率の変化が、約10%以上であることが必要である。より具体的に、上記電圧印加前・後の光透過率の変化が、約10%以上、約20%以上、約40%以上、約60%以上、又は約80%以上であってもよい。
【0014】
本願において、「光」とは、可視光、例えば、380nm~780nmの範囲の波長を有する光を意味することができる。
【0015】
また、本願において、構成間の位置に関して使用される「上」という用語は、「上」又は「上部」に対応する意味で使用され、該当位置を有する構成が他の構成に直接接しながらその上に存在する場合を意味することもでき、これらの間に他の構成が存在する場合を意味することもできる。
【0016】
通常、電気泳動方式の透過度可変フィルムを製造するためには、2枚の電極基板の使用が必須である。また、透過度可変フィルムの外観にムラが生じる現象及び光学特性のバラツキを防止するためには、セルギャップの維持が必要である。
【0017】
このとき、セルギャップの維持のための方法として、パターン化される隔壁が代表的に使用されることができる。しかしながら、上/下板フィルムを貼り合わせる工程中に気泡が効率的に抜けることができず、隔壁によって区画される空間内に気泡がトラップされる問題点が存在する。このような不良は、液状物質の粘度が高いほどより深化する傾向を見せ、セルの信頼性評価時に気泡膨脹などによってより深化する傾向を見せるから、セルの外観及び耐久性の評価において大きな問題点として作用する。
【0018】
本願の一実施態様に係る透過度可変フィルムは、上述した電気泳動方式だけでなく、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)、EC(electrochromic)などのような液体基盤のセルにも適用されることができる。
【0019】
本願の一実施態様に係る透過度可変フィルムにおいて、上記液状物質を2つ以上の空間に区画する隔壁パターンを含む液体収容層は、ロール・ツー・ロール・フォトリソグラフィ、ロール・ツー・ロール・インプリント、フォトリソグラフィ、インプリントなどのような工程を通じて形成されることができる。このとき、上記隔壁パターンは、いずれか一つの電極基板上に、アクリル系又はエポキシ系高分子層を設け、上記高分子層をパターニングすることにより形成されることができる。上記ロール・ツー・ロール・インプリント又はインプリント工程は、残膜によって電極面が露出しなくて駆動電圧が高くなる問題点を発生し得るので、上記液体収容層は、ロール・ツー・ロール・フォトリソグラフィ又はフォトリソグラフィ工程で形成することがより好ましい。
【0020】
本願の一実施態様において、上記隔壁パターンは、連続して連結された閉図形の縁構造を含むことができる。上記閉図形は、n角形(nは、偶数)であってもよく、より具体的に、上記閉図形は、四角形又は六角形であってもよい。
図1に、本願の一実施態様に係る隔壁パターンの閉図形が六角形である形態を示す。
【0021】
本願の一実施態様において、上記隔壁パターンのピッチ(pitch)は、100μm~3,000μmであってもよく、200μm~3,000μmであってもよい。このとき、上記隔壁パターンのピッチ(pitch)は、互いに隣接する閉図形同士の重心点間の距離(p)を意味し、
図2に上記隔壁パターンのピッチ(p)を示す。
【0022】
上記隔壁パターンのピッチが100μm以上の場合には、隔壁パターンの面積比が増えることによって、ヘーズ増加といった光学特性損失を最小限に抑えることができ、3,000μm以下の場合には、セルギャップのバラツキによるムラ現象を防止することができる。
【0023】
本願の一実施態様において、上記隔壁パターンの厚さ(q)は、5μm~50μmであってもよく、好ましくは10μm~50μmであってもよい。このとき、隔壁の厚さは、第1電極基板に接する点から第2電極基板に接する点までの最短距離を意味する。
【0024】
上記隔壁パターンの厚さが5μm以上の場合には、高い濃度の液体物質の溶解度問題による析出不良問題を防止することができ、50μm以下の場合には、透過可変範囲を確保することが容易になる。
【0025】
本願の一実施態様において、上記隔壁パターンの少なくとも一部は、隣り合う空間を連結する通路領域を含むことができる。上記通路領域は、上記隔壁パターンの一部の領域をパターニングする過程を通じて形成することができる。
【0026】
本願の一実施態様において、上記隔壁パターンの一面は、上記第1電極基板に接して備えられ、上記隔壁パターンの第1電極基板に接して備えられる一面に対向する他の一面は、上記第2電極基板に接して備えられる。このとき、上記第1電極基板に接して備えられる上記隔壁パターンの一面の水平断面積全体を基準に、上記通路領域が備えられる領域の面積は、0%超過30%以下であってもよく、0%超過10%以下であってもよく、0%超過5%以下であってもよい。上記第1電極基板に接して備えられる上記隔壁パターンの一面の水平断面積全体を基準に、上記通路領域が備えられる領域の面積が、0%超過30%以下の場合に、本願で達成しようとする効果である、大面積で製造する場合にも、セル貼り合わせ工程中に発生する気泡を除去できる効果を得ることができる。また、上記第1電極基板に接して備えられる上記隔壁パターンの一面の水平断面積全体を基準に、上記通路領域が備えられる領域の面積が30%を超過する場合には、隔壁パターンが断線されて貼付特性が低下するおそれがあり、液体物質を閉じ込める効果が相対的に低下するおそれがある。
【0027】
本願の一実施態様において、上記通路領域の厚さは、上記隔壁パターンの厚さと同一であってもよい。このとき、上記通路領域の厚さは、隔壁パターンの厚さ方向での最大長さを意味する。
【0028】
上記通路領域の厚さが上記隔壁パターンの厚さと同一である場合、セル貼り合わせ工程中に発生する気泡を効果的に除去することができ、上記隔壁パターン内に通路領域が存在しない場合には、隔壁パターンによって区画される空間内に気泡がトラップされるおそれがある。
【0029】
上記通路領域の厚さが上記隔壁パターンの厚さと同一である場合に、上記隔壁パターンの一面は、上記通路領域を除く全体面が上記第1電極基板に接して備えられることができ、上記隔壁パターンの第1電極基板に接して備えられる一面に対向する他の一面は、上記通路領域を除く全体面が上記第2電極基板に接して備えられることができる。
【0030】
本願の一実施態様において、上記通路領域の厚さは、上記隔壁パターンの厚さの0.05倍~0.95倍であってもよい。このとき、上記通路領域の厚さは、隔壁の厚さ方向での最大長さを意味する。
【0031】
上記通路領域の厚さが上記隔壁パターンの厚さの0.05倍~0.95倍の場合に、上記隔壁パターンの一面は、上記通路領域を含む全体面が上記第1電極基板に接して備えられ、上記隔壁パターンの第1電極基板に接して備えられる一面に対向する他の一面は、上記通路領域を除く全体面が上記第2電極基板に接して備えられることができる。
【0032】
上記通路領域の厚さが上記隔壁パターンの厚さの0.05倍~0.95倍の場合、セル貼り合わせ工程中に発生する気泡を効果的に除去することができ、現像及びエアナイフ(Air Knife)乾燥区間を通りながら受ける外力によって、隔壁パターンが浮き上がる現象を防止することができる。
【0033】
下記
図11に、本願の一実施態様に係る透過度可変フィルム内の隔壁パターンの一区画を撮影したSEM像を示す。より具体的に、下記
図11は、上記通路領域の厚さが上記隔壁パターンの厚さと同一である場合に発生し得る問題点として、現像及びエアナイフ乾燥区間を通りながら受ける外力によって、隔壁パターンが浮き上がる現象を示すものである。
【0034】
したがって、本願の一実施態様においては、上記通路領域の厚さが上記隔壁パターンの厚さと同一である場合よりも、上記通路領域の厚さが上記隔壁パターンの厚さの0.05倍~0.95倍の場合がより好ましい。
【0035】
本願の一実施態様において、上記通路領域の幅(s)は、1μm~50μmであってもよく、好ましくは5μm~50μmであってもよい。このとき、上記通路領域の幅(s)は、通路領域の厚さ方向に垂直な方向での最大長さを意味する。
【0036】
上記通路領域の幅が1μm以上の場合には、上/下板フィルムの貼り合わせ工程中に気泡が効率的に除去されることができる。
図3に、本願の一実施態様に係る透過度可変フィルムにおいて、隔壁パターン1の厚さ(q)、通路領域2の幅(s)、通路領域の厚さ(t)を表示した。
【0037】
本願の一実施態様において、上記通路領域の形態は、特に限定はしない。
【0038】
本願の一実施態様において、上記閉図形は、n角形(nは、偶数)であり、上記n角形の互いに向かい合う少なくとも一対の縁領域にそれぞれ上記通路領域が備えられることができる。上記互いに向かい合う少なくとも一対の縁領域にそれぞれ上記通路領域が備えられることは、互いに平行に向かい合う一対の隔壁パターンに垂直な方向にそれぞれ上記通路領域が備えられることを意味する。
図2に、閉図形は六角形で、上記六角形の互いに向かい合う一対の縁領域にそれぞれ上記通路領域が備えられる形態を示す。
【0039】
上記互いに向かい合う一対の縁領域にそれぞれ上記通路領域が備えられる場合、2対又は3対の縁領域にそれぞれ上記通路が備えられる場合に比べて、セル内の垂直方向への液状物質の移動が自由でないから、透過度可変フィルムを垂直に置く際に重力によって液状物質が片寄る現象、例えば、重力不良現象を防止することができる。
図4に、上述した2対又は3対の縁領域にそれぞれ上記通路領域が備えられる形態を例示する。
【0040】
本願の一実施態様において、上記第1電極基板は、第1基材;及び上記第1基材上に備えられる透明導電性酸化物層を含むことができる。また、上記第2電極基板は、第2基材;及び上記第2基材上に備えられ、上記透明導電性酸化物層に対向して備えられる金属層、金属酸化物層、金属窒化物層、金属酸窒化物層又は金属合金層を含むことができる。
【0041】
上記第1基材及び第2基材は、透明性、表面平滑性、取り扱い容易性及び防水性に優れたガラス基材又は透明プラスチック基材であってもよいが、これに限定されず、電子素子に通常使用される透明基材であれば、制限されない。具体的に、上記第1基材及び第2基材は、それぞれガラス;ウレタン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエステル樹脂;(メタ)アクリレート系高分子樹脂;ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂などからなるものであってもよい。
【0042】
上記第1電極基板に含まれる透明導電性酸化物層は、透明導電性酸化物を含むことができる。
【0043】
上記透明導電性酸化物としては、ITO(Indium Tin Oxide)、In2O3(indium oxide:)、IGO(indium gallium oxide)、FTO(Fluor doped Tin Oxide)、AZO(Aluminium doped Zinc Oxide)、GZO(Gallium doped Zinc Oxide)、ATO(Antimony doped Tin Oxide)、IZO(Indium doped Zinc Oxide)、NTO(Niobium doped Titanium Oxide)、ZnO(Zink Oxide)、又はCTO(Cesium Tungsten Oxide)などを例に挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0044】
本願の一実施態様において、上記第1基材上に上記透明導電性酸化物層を形成するステップは、当該技術分野に知られている方法を用いることができる。より具体的に、上記第1基材上に上記透明導電性酸化物層を形成するステップは、蒸着工程などを用いることができるが、これにのみ限定されるものではない。
【0045】
本願の一実施態様において、上記第1電極基板に含まれる透明導電性酸化物層は、上記第1基材上に全面で備えられることができる。
【0046】
上記第2電極基板に含まれる金属層、金属酸化物層、金属窒化物層、金属酸窒化物層又は金属合金層は、第2基材上に備えられ、金、銀、アルミニウム、銅、ネオジム、モリブデン、ニッケルのうち少なくとも一つの金属、上記金属のうち1以上を含む酸化物、上記金属のうち1以上を含む窒化物、上記金属のうち1以上を含む酸窒化物又は上記金属のうち2以上を含む合金からなる群より選択される一つ以上を含むことができる。
【0047】
本願の一実施態様において、上記第2基材上に上記金属層、金属酸化物層、金属窒化物層、金属酸窒化物層又は金属合金層を形成するステップは、フォトリソグラフィ(photolithography)、フォトレジスト(photoresist)、リバースオフセットなどのような当該技術分野に知られている方法を用いることができる。
【0048】
本願の一実施態様において、上記第2電極基板に含まれる金属層、金属酸化物層、金属窒化物層、金属酸窒化物層又は金属合金層は、パターン化された層として備えられることができ、上記パターンの線幅は、1μm~20μmであってもよい。このとき、上記パターンの線幅が1μm未満の場合には、大面積で作製しにくいだけでなく、高い抵抗のため透過度可変フィルムの駆動速度が遅くなり、駆動電圧が高くなるおそれがある。
【0049】
本願の一実施態様において、上記第2電極基板に含まれる金属層、金属酸化物層、金属窒化物層、金属酸窒化物層又は金属合金層の厚さは、0.1μm~10μmであってもよい。
【0050】
本願の一実施態様において、上記液体物質は、有色帯電粒子が分散した溶媒であってもよい。
【0051】
上記有色帯電粒子は、色を呈する帯電粒子を意味し、上記色は、有彩色又は無彩色などを呈することができ、例えば黒色であってもよいが、これに制限されるものではなく、発明の目的及び性質によって多様に変更されることができる。
【0052】
上記有色帯電粒子は、電圧を印加していない場合、光の透過を遮断する役割を果たすことができる。
【0053】
上記有色帯電粒子は、金属粒子、無機質粒子、ポリマー粒子及びこれらの組み合わせのうち1種以上を含むことができる。より具体的に、上記有色帯電粒子は、アルミニウム、銅、銀、シリコン、炭素、鉄、ニッケル、金、チタン、亜鉛、ジルコニウム、タングステンなどの元素及びこれらの組み合わせを含む金属粒子;ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリマー粒子;カーボンブラックなどのような無機質粒子などから形成されることができるが、これに制限されない。
【0054】
本願の一実施態様において、上記液体物質の粘度は、1cps~1,000cpsであってもよい。
【0055】
本願の一実施態様において、上記有色帯電粒子は、無機質粒子であってもよく、より好ましくはカーボンブラックであってもよい。
【0056】
本願の一実施態様に係る透過度可変フィルムは、上述した透過度可変フィルムの第1電極基板及び第2電極基板の一面にそれぞれ形成された離型層を追加でさらに備えることができる。
【0057】
上記離型層の形成方法は、特に制限はしないが、マイヤーバーを用いたバーコーティング後、乾燥及びUV硬化過程を経て、上記透過度可変フィルムの第1電極基板及び第2電極基板の一面に形成されたものであってもよい。
【0058】
上記離型層は、材料は特に限定はしないが、好ましくはフッ素系のUV硬化樹脂からなるものであってもよい。
【0059】
上記離型層の厚さ範囲は、10nm~1,000nmであってもよく、上記厚さ範囲を満足する場合には、液体収容層内の有色帯電粒子が電極の表面に吸着されることを防止することができる。
【0060】
上記表面離型層フィルムをさらに備えることにより、液体収容層内の有色帯電粒子が電極の表面に吸着されることを防止することができる。
【0061】
本願の一実施態様に係るスマートウィンドウは、上述した透過度可変フィルム及び上記透過度可変フィルムに電気的に連結された電圧印加装置を含むことができる。
【0062】
上記電圧印加装置は、上記透過度可変フィルムに電圧を印加することができる装置であれば、特に制限されない。
【実施例】
【0063】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。ところが、以下の実施例は、本発明を例示するためのものであり、これによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0064】
<実施例>
<実施例1>
PET基材上にスパッタリング工程でITOを全面に蒸着した後、UV硬化樹脂を上記ITO上に30μmの厚さでコーティングした。20μmの幅を有する通路領域が含まれたハニカムパターン状のフォトマスクを用いて上記UV硬化樹脂上に位置させ、紫外線を用いて440mJ/cm
2の露光量で照射した後、未硬化の部分を有機剥離液を用いた現像工程を通じて除去して、第1電極基板及び上記第1電極基板上に30μmの厚さを有する隔壁パターンを製造した。製造された通路領域の厚さは、隔壁パターンの厚さと同様に30μmであった。上記通路領域は、ハニカムパターンを構成する六角形の互いに向かい合う一対の縁領域にそれぞれ形成し、上記通路領域の形態は、下記
図2及び
図3の通りである。上記ITOに接して備えられる上記隔壁パターンの一面の水平断面積全体を基準に、上記通路領域が備えられる領域の面積は、約2%であった。
【0065】
PET基材上にAl酸窒化物が含まれた金属を200nmの厚さで蒸着して金属酸窒化物層を形成した後、リバースオフセット工程を用いて3μmの厚さを有するレジストインクメッシュパターンを形成した。上記Al酸窒化物層をエッチングした後、有機剥離液を使用してレジストインクを剥離して、第2電極基板を製造した。
【0066】
隔壁パターンが形成された上記第1電極基板及び上記第2電極基板の一面に封止剤を塗布した後、粘度30cpsのカーボンブラックを注入後、第1電極基板及び第2電極基板をラミネートした。上記封止剤のUV硬化過程を経て、最終的に透過度可変フィルムを製造した。
【0067】
<実施例2>
粘度が250cpsであるカーボンブラックを使用したことを除き、実施例1と同様に製造した。
【0068】
<実施例3>
PET基材上にスパッタリング工程でITOを全面に蒸着した後、UV硬化樹脂を上記ITO上に30μmの厚さでコーティングした。20μmの幅を有する通路領域が含まれたハニカムパターン状のフォトマスクを用いて上記UV硬化樹脂上に位置させ、紫外線を用いて880mJ/cm
2の露光量で照射した後、未硬化の部分を有機剥離液を用いた現像工程を通じて除去して、第1電極基板及び上記第1電極基板上に30μmの厚さを有する隔壁パターンを製造した。
図10は、隔壁パターンの一区画を撮影したSEM像である。上記通路領域は、ハニカムパターンを構成する六角形の互いに向かい合う一対の縁領域にそれぞれ形成し、上記通路領域の形態は、下記
図2及び
図9の通りである。製造された通路領域の厚さは5μmであり、上記ITOに接して備えられる上記隔壁パターンの一面の水平断面積全体を基準に、上記通路領域が備えられる領域の面積は、約1.3%であった。
【0069】
PET基材上にAl酸窒化物が含まれた金属を200nmの厚さで蒸着して金属酸窒化物層を形成した後、リバースオフセット工程を用いて3μmの厚さを有するレジストインクメッシュパターンを形成した。上記Al酸窒化物層をエッチングした後、有機剥離液を使用してレジストインクを剥離して、第2電極基板を製造した。
【0070】
隔壁が形成された上記第1電極基板及び上記第2電極基板の一面に封止剤を塗布した後、粘度30cpsのカーボンブラックを注入後、第1電極基板及び第2電極基板をラミネートした。上記封止剤のUV硬化過程を経て、最終的に透過度可変フィルムを製造した。
【0071】
<実施例4>
ハニカムパターンを構成する六角形の互いに向かい合う3対の縁領域にそれぞれ通路領域を形成したことを除き、実施例3と同様に製造した。
【0072】
上記通路領域の形態は、下記
図4及び
図9の通りである。製造された通路領域の厚さは5μmであり、上記ITOに接して備えられる上記隔壁パターンの一面の水平断面積全体を基準に、上記通路領域が備えられる領域の面積は、約1.3%であった。
【0073】
<比較例1>
通路領域が備えられていない隔壁パターンを使用したことを除き、実施例1と同様に製造した。
【0074】
<比較例2>
通路領域が備えられていない隔壁パターンを使用したことを除き、実施例2と同様に製造した。
【0075】
<実験例1>
実施例1及び2によって製造された透過度可変フィルムにおいて、隔壁パターンによって区画される空間の気泡発生の有無をカメラを用いて撮影し、これを
図5及び
図6に示す。
【0076】
具体的に、
図5は、粘度が30cpsであるカーボンブラックが注入された透過度可変フィルムにおいて、全般的なセル内の形状及び隔壁パターンの一区画を撮影したものであり、
図6は、粘度が250cpsであるカーボンブラックが注入された透過度可変フィルムにおいて、全般的なセル内の形状及び隔壁パターンの一区画を撮影したものである。
【0077】
図5及び
図6から確認したように、パターン化された隔壁によって区画される空間に気泡が発生していないことを確認することができた。
【0078】
比較例1及び2によって製造された透過度可変フィルムにおいて、隔壁パターンによって区画される空間の気泡発生の有無をカメラを用いて撮影し、これを
図7及び
図8に示す。
【0079】
具体的に、
図7は、粘度が30cpsであるカーボンブラックが注入された透過度可変フィルムにおいて、全般的なセル内の形状及び隔壁パターンの一区画を撮影したものであり、
図8は、粘度が250cpsであるカーボンブラックが注入された透過度可変フィルムにおいて、全般的なセル内の形状及び隔壁パターンの一区画を撮影したものである。
【0080】
図7及び
図8から確認したように、パターン化されていない隔壁によって区画される空間に気泡が発生していることを確認することができた。
【0081】
<実験例2>
実施例3及び実施例4の透過度可変フィルムの製造過程において、現像工程を経た後、カーボンブラック注入過程の前の隔壁パターンをカメラを用いて撮影し、これを
図10、
図12及び
図13に示す。
【0082】
より具体的に、
図10は、実施例3に係る一区画の隔壁パターンが第1電極基板と貼り付けられていることを撮影したものである。また、
図12及び
図13は、それぞれ実施例3及び4に係る隔壁パターンの全般的な形態を撮影した写真であり、隔壁がITO上にまともに貼り付けられていることを確認することができた。
【0083】
上記結果の通り、本願の一実施態様に係る透過度可変フィルムは、大面積で製造する場合にも、セル貼り合わせ工程中に発生する気泡を除去することができるので、セルの外観において、向上した効果をもたらすことができる。
【符号の説明】
【0084】
1:隔壁パターン
2:通路領域
p:隔壁パターンのピッチ
q:隔壁パターンの厚さ
s:通路領域の幅
t:通路領域の厚さ