(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】ナノ粒子生産反応器
(51)【国際特許分類】
C01B 33/029 20060101AFI20220112BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20220112BHJP
B01J 19/12 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
C01B33/029
B01J19/08 J
B01J19/12 B
(21)【出願番号】P 2020506338
(86)(22)【出願日】2018-09-05
(86)【国際出願番号】 KR2018010361
(87)【国際公開番号】W WO2019050270
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-02-06
(31)【優先権主張番号】10-2017-0114288
(32)【優先日】2017-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ジュン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ジン ミ
(72)【発明者】
【氏名】イム、イエ ホーン
(72)【発明者】
【氏名】シン、ブ ゴン
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-505233(JP,A)
【文献】特開平01-242143(JP,A)
【文献】特開2000-176670(JP,A)
【文献】特開昭60-121097(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0189888(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/20
B01J 19/08、19/12
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスが供給される第1ノズルを含むメインチャンバと、
メインチャンバと流体移動可能に連結され、内部にフラッシングガスを供給するための第2ノズルを含むレンズハウジングと、
レンズハウジングに装着されたレンズと、
レンズを通過してメインチャンバ内の原料ガスに到逹するようにレーザーを照射するための光源と、
メインチャンバで生成されたナノ粒子が排出されるフードと、を含み、
レンズハウジングは、メインチャンバに向ける方向に沿って少なくとも一部領域の断面積が小さくなるように設けら
れ、
レンズハウジングは、
メインチャンバに向ける方向に沿って断面積が一定に維持される第1領域、
第1領域からメインチャンバ側に延長され、断面積が減少する第2領域、及び、
第2領域から延長され、第2領域と中心軸が同軸上に位置しない第3領域をさらに含む、
ナノ粒子生産反応器。
【請求項2】
レンズは、第1領域側に配置される、請求項
1に記載のナノ粒子生産反応器。
【請求項3】
第2ノズルは、第1領域側に配置される、請求項
1または
2に記載のナノ粒子生産反応器。
【請求項4】
第1領域と第2領域は、中心軸が同軸上に位置するように設けられる、請求項
1から
3のいずれか一項に記載のナノ粒子生産反応器。
【請求項5】
レンズハウジングは、第1領域の中心軸が第1ノズルの中心軸と直交するように配置され、
第3領域は、第1領域に対して第1ノズル側に下向きに傾斜される、請求項
1から4のいずれか1項に記載のナノ粒子生産反応器。
【請求項6】
光源は、レーザーが第1領域~第3領域を通過してメインチャンバ内に照射されるように配置される、請求項
5に記載のナノ粒子生産反応器。
【請求項7】
光源は、二酸化炭素(CO
2)レーザーを照射するように設けられ、
原料ガスは、モノシラン(SiH
4)を含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載のナノ粒子生産反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2017年9月7日に出願された大韓民国特許出願第10-2017-0114288号に基づく優先権の利益を主張し、該当大韓民国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、ナノ粒子生産反応器に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、レーザー熱分解法は、原料物質にレーザーを照射して非常に短い反応時間内に原料物質を分解してナノ粒子を形成する方法である。
【0004】
レーザーを用いたシランガス(SiH4)を熱分解してシリコンナノ粒子を合成し得る。このような装置では、生産性を向上させるために合成されたナノ粒子を損失なしによく捕集することが重要である。
【0005】
レーザー熱分解反応装置には、レーザービームが通過する光学レンズが設置されており、このレンズがナノ粒子により汚染される場合、破損される可能性がある。
【0006】
これを防止するために、レンズは原料ガスが流動するメインチャンバから離隔されて設置されており、レンズが設置された領域には、ナノ粒子の流入を防止するためのフラッシングガス(flushing gas)注入ノズルが設けられる。しかし、従来の反応器は、ナノ粒子がレンズ側に流入されることを完璧に防止できなくてレンズがナノ粒子により汚染され、これによって、連続運転が不可能であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ナノ粒子がレンズ側に流入されることを防止し得るナノ粒子生産反応器を提供することを解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明の一側面によると、原料ガスが供給される第1ノズルを含むメインチャンバと、メインチャンバと流体移動可能に連結され、内部にフラッシングガスを供給するための第2ノズルを含むレンズハウジングと、レンズハウジングに装着されたレンズと、レンズを通過してメインチャンバ内の原料ガスに到逹するようにレーザーを照射するための光源と、メインチャンバで生成されたナノ粒子が排出されるフードと、を含み、レンズハウジングは、メインチャンバに向ける方向に沿って少なくとも一部領域の断面積が小さくなるように設けられたナノ粒子生産反応器が提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明の少なくとも一実施例と関連されたナノ粒子生産反応器は、次のような効果を有する。
【0010】
レンズが設置されたレンズハウジングは、メインチャンバ方向に行くほど断面積が減少するように形成され、これによって、レンズハウジング内のフラッシングガスのモメンタムが増加するようになり、その結果、メインチャンバからレンズハウジングのレンズにナノ粒子が流入されることを防止することができる。
【0011】
また、フラッシングガスの流れがメインチャンバの原料ガスの流れに直接的に触れないようにレンズハウジングの流路を曲げることで、レンズハウジングで加速されたフラッシングガスがメインチャンバの原料ガスの流れを撹乱させてナノ粒子がメインチャンバ内部の壁面を汚染させることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一般的なナノ粒子生産反応器を示す概略図である。
【
図2】一般的なナノ粒子生産反応器を示す概略図である。
【
図3】
図1に示したナノ粒子生産反応器を示す要部斜視図である。
【
図4】
図1に示したナノ粒子生産反応器を示す要部斜視図である。
【
図5】
図3の反応器で粒子の軌跡を示すシミュレーション結果である。
【
図6】本発明の第1実施例と関連されたナノ粒子生産反応器を示す要部斜視図である。
【
図7】本発明の第1実施例と関連されたナノ粒子生産反応器を示す要部斜視図である。
【
図8】
図6の反応器で粒子の軌跡を示すシミュレーション結果である。
【
図9】本発明の第2実施例と関連されたナノ粒子生産反応器を示す要部斜視図である。
【
図10】本発明の第2実施例と関連されたナノ粒子生産反応器を示す要部斜視図である。
【
図11】
図9の反応器で粒子の軌跡を示すシミュレーション結果である。
【
図12】本発明の第3実施例と関連された反応器で粒子の軌跡を示すシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例によるナノ粒子生産反応器を添付された図面を参考にして詳しく説明する。
【0014】
また、図面符号に関係なく同一であるか対応する構成要素には同一又は類似な参照番号を付与し、これに対する重複説明は省略する。説明の便宜のために図示された各構成部材のサイズ及び形状は誇張されるか縮小され得る。
【0015】
本文書でナノ粒子生産反応器は、レーザー熱分解反応装置と関連される。
【0016】
図1及び
図2は、一般的なナノ粒子生産反応器100を示す概略図であり、
図3及び
図4は、
図1に示されたナノ粒子生産反応器100を示す要部斜視図であり、
図5は、
図3の反応器で粒子の軌跡を示すシミュレーション結果である。
【0017】
前記反応器100は、原料ガスが供給される第1ノズル111を含むメインチャンバ110及び、メインチャンバ110と流体移動可能に連結され、内部にフラッシングガスを供給するための第2ノズル121を含むレンズハウジング120を含む。また、前記反応器100は、レンズハウジング120に装着されたレンズ130と、レンズ130を通過してメインチャンバ110内の原料ガスに到逹するようにレーザーを照射するための光源150と、メインチャンバ110で生成されたナノ粒子が排出されるフード140と、を含む。
【0018】
一実施例で、光源150は、二酸化炭素(CO2)レーザーを照射するように設けられ、原料ガスは、モノシラン(SiH4)を含み得る。また、第1ノズル110を通じて原料ガス及びシースガス(sheath gas)(例えば、N2)が一緒に噴射され得る。このとき、第1ノズル110は、中央から原料ガスが噴射され、シースガスは、原料ガスを取り囲んだ状態で噴射されるように設けられ得る。
【0019】
第1ノズル110からメインチャンバ110内に噴射された原料ガス(SiH4)がレーザーを吸収して強烈な分子振動によりラジカル(Siラジカル)形態に分解され、ラジカルがナノ粒子核に発展した後、周辺ラジカルと結合して徐徐に成長しながら、球形のナノ粒子(シリコンナノ粒子)が生成される。原料ガスとレーザーが交差するメインチャンバ110の反応領域でナノ粒子が形成され、反応後の残余ガスは、合成された粒子を有してフード140に到逹する。ナノ粒子によりレンズ130が汚染及び破損されることを防止するために、レンズ130はレンズハウジング120を介してメインチャンバ110から離隔して設置されており、レンズハウジング120には、フラッシングガスを注入するための第2ノズル121が備われている。
【0020】
図3及び
図4に示したように、メインチャンバに向ける方向に沿ってレンズハウジング120の断面積(流動断面積)が一定な場合、
図5を参照すると、原料ガスに含まれた粒子の一部がレンズ130に触れる。特に、速度ベクターを分析した結果で、メインチャンバ110からレンズハウジング120のレンズ130側に流動が流入されることを確認した。このような流動によってナノ粒子がレンズハウジング120の内部に流入されることで確認される。
【0021】
図6及び
図7は、本発明の第1実施例と関連されたナノ粒子生産反応器を示す要部斜視図であり、
図8は、
図6の反応器で粒子の軌跡を示すシミュレーション結果である。
【0022】
レンズハウジング220は、メインチャンバ110に向ける方向に沿って少なくとも一部領域の断面積(流動断面積)が小さくなるように設けられる。
【0023】
レンズハウジング220の断面、面積は多様に決定され得、例えば、レンズハウジング220の断面は円形であってもよい。
【0024】
一実施例で、レンズハウジング220は、メインチャンバ110に向ける方向に沿って断面積が一定に維持される第1領域及び、第1領域からメインチャンバ110側に延長され、断面積が減少する第2領域を含み得る。
【0025】
このとき、レンズ130は、第1領域側に配置され、第2ノズル321は、第1領域側に配置され得る。
【0026】
また、第1領域と第2領域は、中心軸が同軸上に位置するように設けられ得る。例えば、レンズハウジング220は、第1領域の中心軸が第1ノズル111の中心軸と直交するように配置され得る。
【0027】
このとき、光源150は、レーザーが第1領域及び第2領域を通過してメインチャンバ110内に照射されるように配置され得る。
【0028】
メインチャンバ110の方向に行くほどレンズハウジング120の直径が減少するによって、レンズハウジング120とメインチャンバ110の連結領域でフラッシングガス(例えば、N
2)の流速が増加し、フラッシングガスのモメンタムが増加するによって、メインチャンバ110へのナノ粒子の逆流現象が消える。
図8を参照すると、レンズ側に向ける粒子の軌跡が発見されないことが確認できる。
【0029】
図9及び
図10は、本発明の第2実施例と関連されたナノ粒子生産反応器を示す要部斜視図であり、
図11は、
図9の反応器で粒子の軌跡を示すシミュレーション結果である。
【0030】
レンズハウジング320は、メインチャンバ110に向ける方向に沿って少なくとも一部領域の断面積(流動断面積)が小さくなるように設けられる。
【0031】
レンズハウジング320の断面、面積は多様に決定され得、例えば、レンズハウジング320の断面は、
図9に示したように、直線部と曲線部を含んで構成され得る。
【0032】
一実施例で、レンズハウジング320は、メインチャンバ110に向ける方向に沿って断面積が一定に維持される第1領域322及び、第1領域322からメインチャンバ110側に延長され、断面積が減少する第2領域323を含み得る。
【0033】
このとき、レンズ130は、第1領域322側に配置され、第2ノズル321は、第1領域322側に配置され得る。
【0034】
また、第1領域322と第2領域323は、中心軸が同軸上に位置するように設けられ得る。例えば、レンズハウジング320は、第1領域322の中心軸が第1ノズル111の中心軸と直交するように配置され得る。
【0035】
このとき、光源150は、レーザーが第1領域322及び第2領域323を通過してメインチャンバ110内に照射されるように配置され得る。
【0036】
メインチャンバ110の方向に行くほどレンズハウジング120の直径が減少するによって、レンズハウジング120とメインチャンバ110の連結領域でフラッシングガスの流速が増加し、フラッシングガスのモメンタムが増加するによって、メインチャンバ110へのナノ粒子の逆流現象が消える。
図11を参照すると、レンズ側に向ける粒子の軌跡が発見されないことが確認できる。
【0037】
図12は、本発明の第3実施例と関連された反応器で粒子の軌跡を示すシミュレーション結果である。
【0038】
レンズハウジング420は、メインチャンバ110に向ける方向に沿って少なくとも一部領域の断面積(流動断面積)が小さくなるように設けられる。
【0039】
一実施例で、レンズハウジング420は、メインチャンバ110に向ける方向に沿って断面積が一定に維持される第1領域422及び、第1領域422からメインチャンバ110側に延長され、断面積が減少する第2領域423を含み得る。また、レンズハウジング420は、第2領域423から延長され、第2領域423と中心軸が同軸上に位置しない第3領域424を含み得る。
【0040】
このとき、レンズ130は、第1領域422側に配置され、第2ノズル421は、第1領域422側に配置され得る。
【0041】
また、第1領域422と第2領域423は、中心軸が同軸上に位置するように設けられ得る。例えば、レンズハウジング420は、第1領域422の中心軸が第1ノズル111の中心軸と直交するように配置され得る。このとき、第3領域424は、第1領域422に対して第1ノズル111側に下向きに傾斜され得る。
【0042】
このような構造で、レンズハウジング420内のフラッシングガスの流れと第1ノズル111から噴射された原料ガスの流れが垂直で交差することを防止し得る。
【0043】
このような場合、フラッシングガスの流れが第1ノズルの外壁に衝突した後に第1ノズルを取り囲みながら上昇するため、原料ガスの拡散を防止する遮蔽ガスとしての役目も行う。
【0044】
上述した本発明の好ましい実施例は、例示を目的とするものであり、本発明に対する通常の知識を有する当業者であれば、本発明の思想と範囲内で多様な修正、変更、付加が可能である。このような修正、変更及び付加は、下記の特許請求範囲に属することで理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の少なくとも一実施例と関連されたナノ粒子生産反応器によると、レンズハウジングで加速されたフラッシングガスがメインチャンバの原料ガスの流れを撹乱させてナノ粒子がメインチャンバ内部の壁面を汚染させることを防止し得る。