IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友化学株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-樹脂フィルムの搬送方法 図1
  • 特許-樹脂フィルムの搬送方法 図2
  • 特許-樹脂フィルムの搬送方法 図3
  • 特許-樹脂フィルムの搬送方法 図4
  • 特許-樹脂フィルムの搬送方法 図5
  • 特許-樹脂フィルムの搬送方法 図6
  • 特許-樹脂フィルムの搬送方法 図7
  • 特許-樹脂フィルムの搬送方法 図8
  • 特許-樹脂フィルムの搬送方法 図9
  • 特許-樹脂フィルムの搬送方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】樹脂フィルムの搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 20/02 20060101AFI20220127BHJP
   B29C 55/14 20060101ALI20220127BHJP
   B32B 37/16 20060101ALI20220127BHJP
   B65H 39/16 20060101ALI20220127BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
B65H20/02 Z
B29C55/14
B32B37/16
B65H39/16
G02F1/13363
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2017077754
(22)【出願日】2017-04-10
(65)【公開番号】P2017197386
(43)【公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2016085521
(32)【優先日】2016-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】石上 佳照
(72)【発明者】
【氏名】住田 幸司
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-121269(JP,A)
【文献】特開2013-080219(JP,A)
【文献】特開平10-012906(JP,A)
【文献】特開2009-184277(JP,A)
【文献】特開2002-241001(JP,A)
【文献】特開2010-036414(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0314036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 20/00-20/40
B65H 23/00-23/16
B65H 23/24-23/34
B65H 27/00
B65H 39/00-39/16
B29C 55/00-55/30
B29C 61/00-61/10
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムを、互いに重なり合った状態で第一ロール及び第二ロールで挟んで搬送する工程を備え、
前記第一ロールが、前記第一樹脂フィルムに接触し、
前記第二ロールが、前記第二樹脂フィルムに接触し、
前記第一ロールの表面において前記第一樹脂フィルムに接触する接触領域の幅が、前記第一樹脂フィルムの幅及び前記第二樹脂フィルムの幅のうち少なくとも一方よりも狭く、
前記第一樹脂フィルム及び前記第二樹脂フィルムを、前記第一ロール側から前記第一ロール及び前記第二ロールの間へ進入させ、
前記第一ロールの回転軸線A1と前記第二ロールの回転軸線A2とに垂直な断面において、第一基準線L1は、前記回転軸線A1及び前記回転軸線A2を結ぶ線分Laに垂直であり、且つ前記第一樹脂フィルムと交わる線分であり、
前記断面において、前記第一樹脂フィルムの進入角θ1は、前記第一樹脂フィルムが前記第一基準線L1に対してなす角と定義され、
前記断面において、第二基準線L2は、前記線分Laに垂直であり、且つ前記第二樹脂フィルムと交わる線分であり、
前記断面において、前記第二樹脂フィルムの進入角θ2は、前記第二樹脂フィルムが前記第二基準線L2に対してなす角と定義され、
前記進入角θ1は、10~170°であり、
前記進入角θ2は、10~170°であり、
前記第一樹脂フィルムが前記第一ロール及び前記第二ロールの間へ進入する前の時点において、前記第一樹脂フィルムの搬送方向に垂直な方向における前記第一樹脂フィルムの両端部のうち少なくとも一方の端部が、前記両端部の間に位置する前記第一樹脂フィルムの中央部よりも厚い、
樹脂フィルムの搬送方法。
【請求項2】
前記第二樹脂フィルムが前記第一ロール及び前記第二ロールの間へ進入する前の時点において、前記第二樹脂フィルムの搬送方向に垂直な方向における前記第二樹脂フィルムの両端部のうち少なくとも一方の端部が、前記両端部の間に位置する前記第二樹脂フィルムの中央部よりも厚い、
請求項に記載の樹脂フィルムの搬送方法。
【請求項3】
前記第一ロールの前記接触領域の幅が、前記第二樹脂フィルムの幅よりも狭く、
前記第一樹脂フィルムの表面全体を前記第一ロールの表面に接触させる、
請求項1又は2に記載の樹脂フィルムの搬送方法。
【請求項4】
第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムを、互いに重なり合った状態で第一ロール及び第二ロールで挟んで搬送する工程を備え、
前記第一ロールが、前記第一樹脂フィルムに接触し、
前記第二ロールが、前記第二樹脂フィルムに接触し、
前記第一ロールの表面において前記第一樹脂フィルムに接触する接触領域の幅が、前記第一樹脂フィルムの幅及び前記第二樹脂フィルムの幅のうち少なくとも一方よりも狭く、
前記第一樹脂フィルム及び前記第二樹脂フィルムを、前記第一ロール側から前記第一ロール及び前記第二ロールの間へ進入させ、
前記第一ロールの回転軸線A1と前記第二ロールの回転軸線A2とに垂直な断面において、第一基準線L1は、前記回転軸線A1及び前記回転軸線A2を結ぶ線分Laに垂直であり、且つ前記第一樹脂フィルムと交わる線分であり、
前記断面において、前記第一樹脂フィルムの進入角θ1は、前記第一樹脂フィルムが前記第一基準線L1に対してなす角と定義され、
前記断面において、第二基準線L2は、前記線分Laに垂直であり、且つ前記第二樹脂フィルムと交わる線分であり、
前記断面において、前記第二樹脂フィルムの進入角θ2は、前記第二樹脂フィルムが前記第二基準線L2に対してなす角と定義され、
前記進入角θ1は、10~170°であり、
前記進入角θ2は、10~170°であり、
前記第二樹脂フィルムが前記第一ロール及び前記第二ロールの間へ進入する前の時点において、前記第二樹脂フィルムの搬送方向に垂直な方向における前記第二樹脂フィルムの両端部のうち少なくとも一方の端部が、前記両端部の間に位置する前記第二樹脂フィルムの中央部よりも厚い、
樹脂フィルムの搬送方法。
【請求項5】
前記第一ロールの前記接触領域の幅が、前記第二樹脂フィルムの幅よりも狭く、
前記第一樹脂フィルムの表面全体を前記第一ロールの表面に接触させる、
請求項に記載の樹脂フィルムの搬送方法。
【請求項6】
第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムを、互いに重なり合った状態で第一ロール及び第二ロールで挟んで搬送する工程を備え、
前記第一ロールが、前記第一樹脂フィルムに接触し、
前記第二ロールが、前記第二樹脂フィルムに接触し、
前記第一ロールの表面において前記第一樹脂フィルムに接触する接触領域の幅が、前記第一樹脂フィルムの幅及び前記第二樹脂フィルムの幅のうち少なくとも一方よりも狭く、
前記第一樹脂フィルム及び前記第二樹脂フィルムを、前記第一ロール側から前記第一ロール及び前記第二ロールの間へ進入させ、
前記第一ロールの回転軸線A1と前記第二ロールの回転軸線A2とに垂直な断面において、第一基準線L1は、前記回転軸線A1及び前記回転軸線A2を結ぶ線分Laに垂直であり、且つ前記第一樹脂フィルムと交わる線分であり、
前記断面において、前記第一樹脂フィルムの進入角θ1は、前記第一樹脂フィルムが前記第一基準線L1に対してなす角と定義され、
前記断面において、第二基準線L2は、前記線分Laに垂直であり、且つ前記第二樹脂フィルムと交わる線分であり、
前記断面において、前記第二樹脂フィルムの進入角θ2は、前記第二樹脂フィルムが前記第二基準線L2に対してなす角と定義され、
前記進入角θ1は、10~170°であり、
前記進入角θ2は、10~170°であり、
前記第一ロールの前記接触領域の幅が、前記第二樹脂フィルムの幅よりも狭く、
前記第一樹脂フィルムの表面全体を前記第一ロールの表面に接触させる、
樹脂フィルムの搬送方法。
【請求項7】
第一樹脂フィルムと第二樹脂フィルムとが積層された積層フィルムを製造する方法であって、
前記第一樹脂フィルム及び前記第二樹脂フィルムを、互いに重なり合った状態で第一ロール及び第二ロールで挟んで搬送する搬送工程を備え、
前記搬送工程では、前記第一ロールが、前記第一樹脂フィルムに接触し、前記第二ロールが、前記第二樹脂フィルムに接触し、
前記第一ロールの表面において前記第一樹脂フィルムに接触する接触領域の幅が、前記第一樹脂フィルムの幅及び前記第二樹脂フィルムの幅のうち少なくとも一方よりも狭く、
前記搬送工程では、前記第一樹脂フィルム及び前記第二樹脂フィルムを、前記第一ロール側から前記第一ロール及び前記第二ロールの間へ進入させ、
前記第一ロールの回転軸線A1と前記第二ロールの回転軸線A2とに垂直な断面において、第一基準線L1は、前記回転軸線A1及び前記回転軸線A2を結ぶ線分Laに垂直であり、且つ前記第一樹脂フィルムと交わる線分であり、
前記断面において、前記第一樹脂フィルムの進入角θ1は、前記第一樹脂フィルムが前記第一基準線L1に対してなす角と定義され、
前記断面において、第二基準線L2は、前記線分Laに垂直であり、且つ前記第二樹脂フィルムと交わる線分であり、
前記断面において、前記第二樹脂フィルムの進入角θ2は、前記第二樹脂フィルムが前記第二基準線L2に対してなす角と定義され、
前記進入角θ1は、10~170°であり、
前記進入角θ2は、10~170°であり、
前記第一樹脂フィルムが前記第一ロール及び前記第二ロールの間へ進入する前の時点において、前記第一樹脂フィルムの搬送方向に垂直な方向における前記第一樹脂フィルムの両端部のうち少なくとも一方の端部が、前記両端部の間に位置する前記第一樹脂フィルムの中央部よりも厚い、
積層フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記第二樹脂フィルムが前記第一ロール及び前記第二ロールの間へ進入する前の時点において、前記第二樹脂フィルムの搬送方向に垂直な方向における前記第二樹脂フィルムの両端部のうち少なくとも一方の端部が、前記両端部の間に位置する前記第二樹脂フィルムの中央部よりも厚い、
請求項に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記第一ロールの前記接触領域の幅が、前記第二樹脂フィルムの幅よりも狭く、
前記第一樹脂フィルムの表面全体を前記第一ロールの表面に接触させる、
請求項7又は8に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項10】
第一樹脂フィルムと第二樹脂フィルムとが積層された積層フィルムを製造する方法であって、
前記第一樹脂フィルム及び前記第二樹脂フィルムを、互いに重なり合った状態で第一ロール及び第二ロールで挟んで搬送する搬送工程を備え、
前記搬送工程では、前記第一ロールが、前記第一樹脂フィルムに接触し、前記第二ロールが、前記第二樹脂フィルムに接触し、
前記第一ロールの表面において前記第一樹脂フィルムに接触する接触領域の幅が、前記第一樹脂フィルムの幅及び前記第二樹脂フィルムの幅のうち少なくとも一方よりも狭く、
前記搬送工程では、前記第一樹脂フィルム及び前記第二樹脂フィルムを、前記第一ロール側から前記第一ロール及び前記第二ロールの間へ進入させ、
前記第一ロールの回転軸線A1と前記第二ロールの回転軸線A2とに垂直な断面において、第一基準線L1は、前記回転軸線A1及び前記回転軸線A2を結ぶ線分Laに垂直であり、且つ前記第一樹脂フィルムと交わる線分であり、
前記断面において、前記第一樹脂フィルムの進入角θ1は、前記第一樹脂フィルムが前記第一基準線L1に対してなす角と定義され、
前記断面において、第二基準線L2は、前記線分Laに垂直であり、且つ前記第二樹脂フィルムと交わる線分であり、
前記断面において、前記第二樹脂フィルムの進入角θ2は、前記第二樹脂フィルムが前記第二基準線L2に対してなす角と定義され、
前記進入角θ1は、10~170°であり、
前記進入角θ2は、10~170°であり、
前記第二樹脂フィルムが前記第一ロール及び前記第二ロールの間へ進入する前の時点において、前記第二樹脂フィルムの搬送方向に垂直な方向における前記第二樹脂フィルムの両端部のうち少なくとも一方の端部が、前記両端部の間に位置する前記第二樹脂フィルムの中央部よりも厚い、
積層フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記第一ロールの前記接触領域の幅が、前記第二樹脂フィルムの幅よりも狭く、
前記第一樹脂フィルムの表面全体を前記第一ロールの表面に接触させる、
請求項10に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項12】
第一樹脂フィルムと第二樹脂フィルムとが積層された積層フィルムを製造する方法であって、
前記第一樹脂フィルム及び前記第二樹脂フィルムを、互いに重なり合った状態で第一ロール及び第二ロールで挟んで搬送する搬送工程を備え、
前記搬送工程では、前記第一ロールが、前記第一樹脂フィルムに接触し、前記第二ロールが、前記第二樹脂フィルムに接触し、
前記第一ロールの表面において前記第一樹脂フィルムに接触する接触領域の幅が、前記第一樹脂フィルムの幅及び前記第二樹脂フィルムの幅のうち少なくとも一方よりも狭く、
前記搬送工程では、前記第一樹脂フィルム及び前記第二樹脂フィルムを、前記第一ロール側から前記第一ロール及び前記第二ロールの間へ進入させ、
前記第一ロールの回転軸線A1と前記第二ロールの回転軸線A2とに垂直な断面において、第一基準線L1は、前記回転軸線A1及び前記回転軸線A2を結ぶ線分Laに垂直であり、且つ前記第一樹脂フィルムと交わる線分であり、
前記断面において、前記第一樹脂フィルムの進入角θ1は、前記第一樹脂フィルムが前記第一基準線L1に対してなす角と定義され、
前記断面において、第二基準線L2は、前記線分Laに垂直であり、且つ前記第二樹脂フィルムと交わる線分であり、
前記断面において、前記第二樹脂フィルムの進入角θ2は、前記第二樹脂フィルムが前記第二基準線L2に対してなす角と定義され、
前記進入角θ1は、10~170°であり、
前記進入角θ2は、10~170°であり、
前記第一ロールの前記接触領域の幅が、前記第二樹脂フィルムの幅よりも狭く、
前記第一樹脂フィルムの表面全体を前記第一ロールの表面に接触させる、
積層フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記搬送工程では、
前記第一樹脂フィルム及び前記第二樹脂フィルムの間に、接着剤又は粘着剤を介在させて、
前記第一樹脂フィルム及び前記第二樹脂フィルムを、前記第一ロール及び前記第二ロールで挟むことにより、前記第一樹脂フィルム及び前記第二樹脂フィルムを貼合する、
請求項7~12のいずれか一項に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記第一樹脂フィルム及び前記第二樹脂フィルムのうち少なくとも一方が、自己粘着性のフィルムである、
請求項7~12のいずれか一項に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項15】
第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムを互いに重なり合った状態で挟んで搬送する第一ロール及び第二ロールを備え、
前記第一ロールが、前記第一樹脂フィルムに接触し、
前記第二ロールが、前記第二樹脂フィルムに接触し、
前記第一ロールの表面において前記第一樹脂フィルムに接触する接触領域の幅が、前記第一樹脂フィルムの幅及び前記第二樹脂フィルムの幅のうち少なくとも一方よりも狭く、
前記第一樹脂フィルム及び前記第二樹脂フィルムを、前記第一ロール側から前記第一ロール及び前記第二ロールの間へ進入させるように構成され、
請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂フィルムの搬送方法に用いられる、
樹脂フィルムの搬送装置。
【請求項16】
第一樹脂フィルムと第二樹脂フィルムとが積層された積層フィルムを製造する装置であって、
請求項15に記載の搬送装置を備える、
積層フィルムの製造装置。
【請求項17】
前記第二樹脂フィルムを向く前記第一樹脂フィルムの表面、又は前記第一樹脂フィルムを向く前記第二樹脂フィルムの表面のうち少なくともいずれかの面に、接着剤又は粘着剤を塗る塗布装置をさらに備える、
請求項16に記載の積層フィルムの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムの搬送方法に関し、積層フィルムの製造方法、樹脂フィルムの搬送装置、及び積層フィルムの製造装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶表示素子等の光学表示デバイスを用いた画像表示装置では、光学補償フィルム(位相差フィルム)や偏光子保護フィルム、反射防止フィルム等の各種の光学フィルムが用いられている。
【0003】
このような光学フィルムの製造では、例えば、特許文献1に記載の通り、熱可塑性樹脂の押出成形により、長尺帯状の樹脂フィルムを作製する。さらに樹脂フィルムを幅方向(横方向)に延伸することもある。この横延伸により、樹脂フィルムに所望の光学特性を付与したり、靱性を付与したりする。具体的には、長尺帯状の熱可塑性樹脂フィルムを連続的に長さ方向に搬送しながら、樹脂フィルムの両端部をそれぞれクリップで把持する。そして、クリップ間の距離を拡げることによって、樹脂フィルムを幅方向に延伸する。さらに、延伸後の樹脂フィルムを他の樹脂フィルム(例えば保護フィルム等)と積層する工程等を経て、積層フィルム(積層型光学フィルム)が完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-36414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
横延伸においてクリップに把持された樹脂フィルムの両端部は、延伸前の熱可塑性樹脂フィルムとほぼ同じ厚みで残る。一方、両端部の間の部分は延伸により薄くなる。このため、延伸後の樹脂フィルムの両端部は、スリット加工により切断・除去され、樹脂フィルムの幅は、所定の幅に調整される。所定の幅に調整された延伸フィルムは通常、ロールに巻き取られた後に、製品として出荷される。
【0006】
上述のように、延伸フィルムの両端部と中央部との間に厚みの差があるため、スリット加工前の搬送中に、延伸フィルムにおける皺が発生し易い。スリット加工前に延伸フィルムの両端部付近に皺が発生すると、スリット時に不良が発生し易くなる。また、スリット不良に起因したフィルム片(粉)が完成品に混入することがある。さらに、延伸フィルムの皺は、光学フィルムの光学特性の均一性を損ねる原因にもなる。特に、樹脂フィルムが、ポリメチルメタクリレート(PMMA)やポリスチレン(PS)等のように、比較的脆くて割れ易い熱可塑性樹脂から作製される場合、スリット加工前に発生する皺に起因して、スリット不良に起因するフィルム片の混入が起き易いばかりでなく、更には延伸フィルムが破断してしまうこともある。
【0007】
以上のような樹脂フィルムの皺は、必ずしも横延伸だけに起因するものではない。例えば、熱可塑性樹脂の押出成形では、押出金型の吐出口(リップ)から吐出された樹脂フィルムが、吐出時のネックインの影響を受けるため、樹脂フィルムの幅方向の中央部が端部よりも厚くなり易い。つまり、樹脂の押出成形において、樹脂フィルムの両端部が、樹脂フィルムの中央部よりも厚くなり易い。この例に限らず、樹脂フィルムの搬送又は積層フィルムの製造における様々な工程において、樹脂フィルムの厚みの差に起因する樹脂フィルムの皺を抑制する技術が必要となる。
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、樹脂フィルムの皺を抑制することができる、樹脂フィルムの搬送方法、積層フィルムの製造方法、樹脂フィルムの搬送装置、及び積層フィルムの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係る樹脂フィルムの搬送方法は、第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムを、互いに重なり合った状態で第一ロール及び第二ロールで挟んで搬送する工程を備え、第一ロールが、第一樹脂フィルムに接触し、第二ロールが、第二樹脂フィルムに接触し、第一ロールの表面において第一樹脂フィルムに接触する接触領域の幅が、第一樹脂フィルムの幅及び第二樹脂フィルムの幅のうち少なくとも一方よりも狭く、第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムを、第一ロール側から第一ロール及び第二ロールの間へ進入させる。
【0010】
第一ロールの「接触領域の幅」とは、第一樹脂フィルムの搬送方向に垂直な方向における第一ロールの接触領域の幅である。第一ロールの「接触領域の幅」とは、第一ロールの回転軸線に平行な方向における第一ロールの接触領域の幅と言い換えてよい。第一ロールの「接触領域の幅」とは、長尺な帯状の第一樹脂フィルムの長手方向に垂直な方向における第一ロールの接触領域の幅と言い換えてもよい。第一樹脂フィルムの搬送方向とは、第一樹脂フィルムの長手方向と言い換えてよい。第一樹脂フィルムの搬送方向とは、第一樹脂フィルムの長手方向と言い換えてよい。
【0011】
「第一樹脂フィルムの幅」とは、第一樹脂フィルムの搬送方向に垂直な方向における第一樹脂フィルムの幅である。「第一樹脂フィルムの幅」とは、第一ロールの回転軸線に平行な方向における第一樹脂フィルムの幅と言い換えてよい。「第一樹脂フィルムの幅」とは、長尺な帯状の第一樹脂フィルムの長手方向に垂直な方向における第一樹脂フィルムの幅と言い換えてもよい。
【0012】
「第二樹脂フィルムの幅」とは、第二樹脂フィルムの搬送方向に垂直な方向における第二樹脂フィルムの幅である。「第二樹脂フィルムの幅」とは、第二ロールの回転軸線に平行な方向における第二樹脂フィルムの幅と言い換えてよい。「第二樹脂フィルムの幅」とは、長尺な帯状の第二樹脂フィルムの長手方向に垂直な方向における第二樹脂フィルムの幅と言い換えてもよい。第二樹脂フィルムの搬送方向とは、第二樹脂フィルムの長手方向と言い換えてよい。
【0013】
本発明の一側面に係る樹脂フィルムの搬送方法では、第一樹脂フィルムが第一ロール及び第二ロールの間へ進入する前の時点において、第一樹脂フィルムの搬送方向に垂直な方向における第一樹脂フィルムの両端部のうち少なくとも一方の端部が、両端部の間に位置する第一樹脂フィルムの中央部よりも厚くてもよい。
【0014】
「第一樹脂フィルムの両端部」とは、第一樹脂フィルムの搬送方向に垂直な方向における第一樹脂フィルムの両端部である。「第一樹脂フィルムの両端部」とは、第一ロールの回転軸線に平行な方向における第一樹脂フィルムの両端部と言い換えてよい。「第一樹脂フィルムの両端部」とは、長尺な帯状の第一樹脂フィルムの長手方向に垂直な方向における第一樹脂フィルムの両端部と言い換えてもよい。
【0015】
本発明の一側面に係る樹脂フィルムの搬送方法では、第二樹脂フィルムが第一ロール及び第二ロールの間へ進入する前の時点において、第二樹脂フィルムの搬送方向に垂直な方向における第二樹脂フィルムの両端部のうち少なくとも一方の端部が、両端部の間に位置する第二樹脂フィルムの中央部よりも厚くてよい。
【0016】
「第二樹脂フィルムの両端部」とは、第二樹脂フィルムの搬送方向に垂直な方向における第二樹脂フィルムの両端部である。「第二樹脂フィルムの両端部」とは、第二ロールの回転軸線に平行な方向における第二樹脂フィルムの両端部と言い換えてよい。「第二樹脂フィルムの両端部」とは、長尺な帯状の第二樹脂フィルムの長手方向に垂直な方向における第二樹脂フィルムの両端部と言い換えてもよい。
【0017】
本発明の一側面に係る樹脂フィルムの搬送方法では、第一ロールの接触領域の幅が、第二樹脂フィルムの幅よりも狭くてよく、第一樹脂フィルムの表面全体を第一ロールの表面に接触させてよい。
【0018】
本発明の一側面に係る積層フィルムの製造方法は、第一樹脂フィルムと第二樹脂フィルムとが積層された積層フィルムを製造する方法であって、第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムを、互いに重なり合った状態で第一ロール及び第二ロールで挟んで搬送する搬送工程を備え、搬送工程では、第一ロールが、第一樹脂フィルムに接触し、第二ロールが、第二樹脂フィルムに接触し、第一ロールの表面において第一樹脂フィルムに接触する接触領域の幅が、第一樹脂フィルムの幅及び第二樹脂フィルムの幅のうち少なくとも一方よりも狭く、搬送工程では、第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムを、第一ロール側から第一ロール及び第二ロールの間へ進入させる。
【0019】
本発明の一側面に係る積層フィルムの製造方法では、第一樹脂フィルムが第一ロール及び第二ロールの間へ進入する前の時点において、第一樹脂フィルムの搬送方向に垂直な方向における第一樹脂フィルムの両端部のうち少なくとも一方の端部が、両端部の間に位置する第一樹脂フィルムの中央部よりも厚くてもよい。
【0020】
本発明の一側面に係る積層フィルムの製造方法では、第二樹脂フィルムが第一ロール及び第二ロールの間へ進入する前の時点において、第二樹脂フィルムの搬送方向に垂直な方向における第二樹脂フィルムの両端部のうち少なくとも一方の端部が、両端部の間に位置する第二樹脂フィルムの中央部よりも厚くてよい。
【0021】
本発明の一側面に係る積層フィルムの製造方法では、第一ロールの接触領域の幅が、第二樹脂フィルムの幅よりも狭くてよく、第一樹脂フィルムの表面全体を第一ロールの表面に接触させてよい。
【0022】
本発明の一側面に係る積層フィルムの製造方法の搬送工程では、第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムの間に、接着剤又は粘着剤を介在させて、第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムを、第一ロール及び第二ロールで挟むことにより、第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムを貼合してよい。
【0023】
本発明の一側面に係る積層フィルムの製造方法では、第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムのうち少なくとも一方が、自己粘着性のフィルムであってもよい。
【0024】
本発明の一側面に係る樹脂フィルムの搬送装置は、第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムを互いに重なり合った状態で挟んで搬送する第一ロール及び第二ロールを備え、第一ロールが、第一樹脂フィルムに接触し、第二ロールが、第二樹脂フィルムに接触し、第一ロールの表面において第一樹脂フィルムに接触する接触領域の幅が、第一樹脂フィルムの幅及び第二樹脂フィルムの幅のうち少なくとも一方よりも狭く、第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムを、第一ロール側から第一ロール及び第二ロールの間へ進入させるように構成されている。
【0025】
本発明の一側面に係る積層フィルムの製造装置は、第一樹脂フィルムと第二樹脂フィルムとが積層された積層フィルムを製造する装置であって、上記の搬送装置を備える。
【0026】
本発明の一側面に係る積層フィルムの製造装置は、第二樹脂フィルムを向く第一樹脂フィルムの表面、又は第一樹脂フィルムを向く第二樹脂フィルムの表面のうち少なくともいずれかの面に、接着剤又は粘着剤を塗る塗布装置をさらに備えてよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、樹脂フィルムの皺を抑制することができる、樹脂フィルムの搬送方法、積層フィルムの製造方法、樹脂フィルムの搬送装置、及び積層フィルムの製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第一実施形態に係る樹脂フィルムの搬送装置及び搬送方法の模式図であり、第一樹脂フィルムの進入角θ1が鈍角である場合を示す。
図2図1に示す搬送装置及び搬送方法の変形例であり、第一樹脂フィルムの進入角θ1が鋭角である場合を示す。
図3図1に示す搬送装置、第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムの断面の模式図であって、第一ロールの回転軸線及び第二ロールの回転軸線を含む断面を示す。
図4】第一実施形態の搬送工程前の第二樹脂フィルム(延伸フィルム)の断面の模式的な拡大図である。
図5】本発明の第二実施形態に係る樹脂フィルムの搬送装置、第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムの断面の模式図である。
図6】第二実施形態の搬送工程前の第一樹脂フィルム(延伸フィルム)の断面の模式的な拡大図である。
図7】本発明の第三実施形態に係る樹脂フィルムの搬送装置、第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムの断面の模式図である。
図8図7に示す断面の変形例であり、第一樹脂フィルムの表面全体が第一ロールの表面(接触領域)に密着している場合を示す。
図9】比較例1に係る樹脂フィルムの搬送装置及び搬送方法の模式図である。
図10】比較例2に係る樹脂フィルムの搬送装置及び搬送方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。図面において、同等の構成要素には同等の符号を付す。本発明は下記実施形態に限定されるものではない。各図に示すX,Y及びZは、互いに直交する3つの座標軸を意味する。各座標軸が示す方向は、全図に共通する。
【0030】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態は、保護フィルムと延伸フィルムとが積層された積層フィルムの製造方法及び製造装置に関する。また第一実施形態は、保護フィルム及び延伸フィルムの搬送方法及び搬送装置に関する。第一実施形態では、第一樹脂フィルムが保護フィルムである。ただし、後述の通り、第一樹脂フィルムは保護フィルムでなくてよい。第一実施形態では、第二樹脂フィルムが熱可塑性の延伸フィルムである。延伸フィルムとは、例えば、縦延伸及び横延伸のいずれか一方又は両方を施すことにより、光学特性又は靱性等の所望の特性が付与された樹脂フィルムである。延伸フィルムの具体例は、例えば、位相差フィルム、偏光子、又は偏光子保護フィルムである。ただし、後述の通り、第二樹脂フィルムは熱可塑性を有しなくてよく、延伸フィルムでなくてもよい。以下では、直接的に又は間接的に重なり合った保護フィルム及び延伸フィルムを含む積層体を、積層フィルムと記す。第一樹脂フィルムは、単層構造の単層フィルムであってもよいし、多層構造の多層フィルムであってもよい。また第二樹脂フィルムは単層構造の単層フィルムであってもよいし、多層構造の多層フィルムであってもよい。第一樹脂フィルムと第二樹脂フィルムとが共に単層フィルムであってもよいし、共に多層フィルムであってもよい。第一樹脂フィルムが単層フィルムであり、第二樹脂フィルムが多層フィルムであってもよい。第一樹脂フィルムが多層フィルムであり、第二樹脂フィルムが単層フィルムであってもよい。
【0031】
延伸フィルムを構成する熱可塑性樹脂は、透光性を有する熱可塑性樹脂、好ましくは光学的に透明である熱可塑性樹脂であればよい。熱可塑性樹脂は、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(例えばノルボルネン系樹脂)、ポリエチレン系樹脂、又はポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂であってよい。熱可塑性樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、又はポリ‐L‐乳酸などのポリエステル系樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂は、メタクリル酸メチル系樹脂などの(メタ)アクリル系樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂は、セルローストリアセテート又はセルロースジアセテートなどのセルロース系樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂、又はポリイミド系樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂は、上記の樹脂の混合物又は共重合体であってもよい。熱可塑性樹脂は、必要に応じて、添加剤を更に含んでよい。添加剤は、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収材、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、又はアンチブロッキング剤であってよい。例えば、延伸フィルムとして偏光子を作製する場合、熱可塑性樹脂はポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。
【0032】
保護フィルムを構成する樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート)であってよい。保護フィルムにおいて延伸フィルムに対面する表面には、粘着層が形成されていてもよい。
【0033】
延伸フィルムは、例えば、以下に説明する押出成形工程、縦延伸工程及び横延伸工程を経て作製される。縦延伸工程を経た後に横延伸工程を経て延伸フィルムを作製してもよく、横延工程を経た後に縦延伸工程を経て延伸フィルムを作製してもよい。また、押出成形工程を経た後に横延伸工程を経て延伸フィルムを作製してもよい。以下では、縦延伸工程後に横延伸工程を行う場合について説明する。
【0034】
押出工程では、加熱溶融された熱可塑性樹脂を、押出機の先端に設けられた吐出口(リップ)から連続的に押出し、フィルム状に成形する。この成形体を複数の冷却ロールを通過させて冷却することにより、長尺な帯状の押出フィルムが得られる。押出フィルムを、そのまま連続的に縦延伸装置へ搬送してよい。または押出フィルムを、ロール状に巻き取った後、ロール状の押出フィルムを繰り出して、縦延伸装置へ搬送してもよい。押出フィルムは、その長手方向に沿って搬送される。
【0035】
縦延伸装置は、例えば、離間して配置された少なくとも2つのニップロールを備える。ニップロールとは、一対のロールから構成され、一対のロール間に樹脂フィルムを挟んで加圧しながら搬送する装置である。縦延伸工程では、押出フィルムが、縦延伸装置が備える2つのニップロールを通過する。押出フィルムが最初に通過するニップロールの周速度を、次に通過するニップロールの周速度よりも遅くなるように調整する。この周速度の差により、押出フィルムは、その長手方向(搬送方向)に延伸されて縦延伸フィルムとなる。縦延伸工程では、2つのニップロールの間にオーブン等を配置して、押出フィルムを加熱しながら延伸してよい。縦延伸工程の前に、押出フィルムを予熱してもよい。
【0036】
縦延伸に続いて横延伸を実施する。以下では、横延伸工程の一例として、テンター法を説明する。テンター法に用いる横延伸装置は、例えば、縦延伸フィルムの両端部に沿って並ぶ2つのクリップ列を備える。つまり、縦延伸フィルムは、2つのクリップ列の間に配置される。各クリップ列は、複数のクリップから構成される。つまり、縦延伸フィルムの両端部に沿って、複数のクリップが並んでいる。縦延伸フィルムの両端部を各クリップで把持する。横延伸工程では、両端部を複数のクリップで把持された縦延伸フィルムをその長手方向に搬送する。搬送の過程で、縦延伸フィルムの幅方向(横方向)において向かい合う一対のクリップの間隔を拡げることで、縦延伸フィルムが横延伸フィルムとなる。一対のクリップの間隔を拡げた後に、この間隔を僅かに狭める操作(いわゆる弛緩)を行ってもよい。その後、横延伸フィルムの両端部をクリップから開放する。横延伸フィルムを放した一対のクリップは上流側に戻り、再び縦延伸フィルムの両端部を把持する。つまり、複数のクリップは、縦延伸フィルムの両端部の把持、縦延伸フィルムの横延伸、及び横延伸フィルムの開放を繰り返す。以上のテンター法により、縦延伸フィルムが連続的に幅方向(横方向)に延伸され、横延伸フィルムが得られる。横延伸工程においても、縦延伸フィルムを加熱しながら延伸してよい。横延伸工程中、又は横延伸工程後、横延伸フィルムを加熱して安定化させる熱固定を行ってもよい。横延伸後の延伸フィルムは、複数のガイドロールにより案内されて、後述する搬送装置へ搬送される。
【0037】
クリップに把持された縦延伸フィルムの両端部の厚みは、横延伸後においても、横延伸前の厚みとほぼ同じである。一方、縦延伸フィルムの両端部の間に位置する部分(中央部)は、横延伸により薄くなり易い。つまり、図4に示すように、横延伸フィルム8の両端部8bが、両端部8bの間に位置する横延伸フィルム8の中央部8aよりも厚くなり易い。横延伸フィルム8の中央部8aの厚みT8aは、均一になり易い。したがって、横延伸フィルム8の両端部8bは、後のスリット加工により切断・除去され、横延伸フィルム8の幅W8は、所定の幅(例えば幅W8a)に調整される。しかし、従来のガイドロール又はニップロールを用いた搬送方法によって横延伸フィルムをスリット加工装置へ搬送する場合、搬送中の延伸フィルムに皺が発生し易い。特に横延伸フィルム8において、両端部8bから中央部8aに向かう皺や、中央部8aから両端部8bに向かう皺が発生し易い。この皺は、横延伸フィルム8の両端部8bの厚みT8bと中央部8aの厚みT8aとの差に起因する。以下で詳説する搬送装置及び搬送方法によれば、搬送中の横延伸フィルム8(第二樹脂フィルム)における皺を抑制することができる。ただし、搬送中の横延伸フィルムにおける皺は、必ずしも厚みの差だけに起因するわけではない。横延伸フィルム8における厚みの差がほぼない場合であっても、第一実施形態に係る搬送装置及び搬送方法によれば、搬送中の横延伸フィルム8における皺を抑制することができる。
【0038】
第一実施形態に係る積層フィルムの製造装置は、図1~3に示すように、保護フィルム6及び横延伸フィルム8を搬送する搬送装置100を備える。搬送装置100は、第一ロール1及び第二ロール2を備える。第一ロール1の回転軸線A1は、第二ロール2の回転軸線A2と平行である。第一実施形態に係る積層フィルムの製造方法は、搬送装置100を用いた搬送工程を備える。搬送工程では、保護フィルム6及び横延伸フィルム8を、互いに重なり合った状態で第一ロール1及び第二ロール2で挟んで搬送する。保護フィルム6も、横延伸フィルム8と同様に長尺の帯状である。保護フィルム6は、例えば、原反ロールから繰り出されて搬送装置100へ供給される。
【0039】
第一ロール1及び第二ロール2は、樹脂フィルムの表面に線圧を付与するニップロールである。つまり、保護フィルム6及び横延伸フィルム8は、搬送の過程において、第一ロール1及び第二ロール2の間に挟まれ、第一ロール1及び第二ロール2によって加圧される。例えば、ニップロールの速度を制御することで、ニップロールの上流側に位置する保護フィルム6及び横延伸フィルム8其々の張力を制御することができる。
【0040】
第一ロール1は、例えば、直径が略均一であるフラットロールであってよい。つまり図3に示すように、第一ロール1の回転軸線A1を含む断面において、第一ロール1の表面は略直線であってよい。第二ロール2も、フラットロールであってよい。つまり図3に示すように、第二ロール2の回転軸線A2を含む断面において、第二ロール2の表面は略直線であってよい。
【0041】
第一ロール1の表面において保護フィルム6(第一樹脂フィルム)に接触する接触領域1aの幅W1aは、第二ロール2に接触する横延伸フィルム8(第二樹脂フィルム)の中央部8aの幅W8aよりも狭い。第一ロール1の接触する接触領域1aの幅W1aが横延伸フィルム8(第二樹脂フィルム)の中央部8aの幅W8aよりも狭い場合、第一ロール1の接触領域1aが、横延伸フィルム8(第二樹脂フィルム)の両端部8b(中央部8aに比べて厚い部分)にあたり難く、第一ロール1が張力を横延伸フィルム8(第二樹脂フィルム)の中央部8aのみに付与し易い。横延伸フィルム8(第二樹脂フィルム)の中央部8aにのみ張力を付与することにより、厚みが均一な中央部8aで皺が発生し難くなる。横延伸フィルム8(第二樹脂フィルム)の幅W8と第一ロール1の接触領域1aの幅W1aとの差(W8-W1a)は、例えば、10~300mm程度であればよい。
【0042】
搬送工程では、保護フィルム6及び横延伸フィルム8を、第一ロール1側から第一ロール1及び第二ロール2の間へ進入させる。つまり、保護フィルム6及び横延伸フィルム8を、横延伸フィルム8よりも幅が狭い第一ロール1側からロール間へ進入させる。その結果、第一ロール1の接触領域1aが保護フィルム6を介して横延伸フィルム8の中央部8aに均一な線圧を付与し易くなる。
【0043】
以上の通り、第一実施形態では、第一ロール1が保護フィルム6を介して横延伸フィルム8の中央部8aに十分に均一な線圧を付与することができる。この均一な線圧によって、横延伸フィルム8の中央部8aに均一な張力を付与することができる。その結果、搬送中の横延伸フィルム8における皺が抑制される。特に、横延伸フィルム8の両端部8bから中央部8aに向かう皺や中央部8aから両端部8bに向かう皺が抑制され易く、横延伸フィルム8の中央部8aと両端部8bとの厚み差に起因する皺が抑制され易い。仮に、保護フィルム6及び横延伸フィルム8の一方又は両方を、第二ロール2側から第一ロール1及び第二ロール2の間へ進入させる場合、第一ロール1の接触領域1a(第一ロール1の太い部分)が均一な線圧を横延伸フィルム8の中央部8aへ及ぼし難くなり、皺を抑制し難くなる。
【0044】
図1及び2に示すように、第一ロール1の回転軸線A1と第二ロール2の回転軸線A2とに垂直な断面(ZX面)において、第一基準線L1は、回転軸線A1及び回転軸線A2を結ぶ線分Laに垂直であり、且つ保護フィルム6(第一樹脂フィルム)と交わる線分である。保護フィルム6(第一樹脂フィルム)の進入角θ1は、保護フィルム6(第一樹脂フィルム)が第一基準線L1に対してなす角と定義される。また回転軸線A1及び回転軸線A2に垂直な断面において、第二基準線L2は、線分Laに垂直であり、且つ横延伸フィルム8(第二樹脂フィルム)と交わる線分である。横延伸フィルム8(第樹脂フィルム)の進入角θ2は、横延伸フィルム8(第二樹脂フィルム)が第二基準線L2に対してなす角と定義される。
【0045】
図1に示すように、保護フィルム6の進入角θ1は、鈍角であってよい。図2に示すように、保護フィルム6の進入角θ1は、鋭角であってもよい。保護フィルム6の進入角θ1は、例えば、10~170°であればよい。第一ロール1の形状に起因する皺抑制効果を大きくするためには、進入角θ1は30~120°であることが好ましい。図1に示すように、横延伸フィルム8の進入角θ2は、鋭角であってよい。横延伸フィルム8の進入角θ2は、鈍角であってもよい。例えば、横延伸フィルム8の進入角θ2は、10~170°であればよい。進入角θ1及びθ2が上記の範囲内である場合、横延伸フィルム8の皺が抑制され易い。
【0046】
横延伸フィルム8が第一ロール1及び第二ロール2の間へ進入する前の時点において、図4に示すように、横延伸フィルム8の搬送方向D8に垂直な方向における横延伸フィルム8の両端部8bは、両端部8bの間に位置する横延伸フィルム8の中央部8aよりも厚くてよい。つまり、幅方向(短手方向又はY軸方向)における横延伸フィルム8の両端部8bは、両端部8bの間に位置する横延伸フィルム8の中央部8aよりも厚くてよい。横延伸工程において横延伸フィルム8の両端部8bの厚みT8bが中央部8aの厚みT8aより大きくなり、中央部8aに向かう皺や中央部8aから両端部8bへ向かう皺が発生し易くなったとしても、搬送工程において、第一ロール1の接触領域1aが、保護フィルム6を介して、横延伸フィルム8の中央部8aに均一に張力を付与させることができるため、横延伸フィルム8の皺を抑制することができる。
【0047】
図3に示すように、保護フィルム6(第一樹脂フィルム)の表面全体を第一ロール1の表面(第一ロール1の接触領域1a)に密着させてもよい。第一ロール1の表面(第一ロール1の接触領域1a)に密着する保護フィルム6(第一樹脂フィルム)の表面積が広いほど、第一ロール1の接触領域1aが、保護フィルム6(第一樹脂フィルム)を介して、線圧を横延伸フィルム8(第二樹脂フィルム)の中央部8aへ及ぼし易くなる。その結果、横延伸フィルム8の中央部8aに向かう皺や中央部8aから両端部8bに向かう皺を抑制することができる。
【0048】
図3に示すように、保護フィルム6(第一樹脂フィルム)の幅W6は、第一ロール1の接触領域1aの幅W1aより狭くてよい。保護フィルム6(第一樹脂フィルム)の幅W6が、第一ロール1の接触領域1aの幅W1aより狭い場合、第一ロール1の接触領域1aが保護フィルム6及び横延伸フィルム8に線圧を付与し易い。ただし、保護フィルム6(第一樹脂フィルム)の幅W6は、第一ロール1の接触領域1aの幅W1aより広くてもよい。図3に示すように、保護フィルム6(第一樹脂フィルム)の幅W6は、横延伸フィルム8(第二樹脂フィルム)の幅W8よりも狭くてよい。ただし、保護フィルム6(第一樹脂フィルム)の幅W6は、横延伸フィルム8(第二樹脂フィルム)の幅W8よりも広くてもよい。図3に示すように、横延伸フィルム8(第二樹脂フィルム)の幅W8は、第二ロール2の幅W2よりも狭くてよい。
【0049】
図3に示すように、搬送工程では、第一ロール1の中央部、保護フィルム6(第一樹脂フィルム)の中央部、横延伸フィルム8(第二樹脂フィルム)の中央部、及び第二ロール2の中央部が、同一平面(ZX面)上、又は同一直線(Z軸)上で揃っていてよい。
【0050】
第一ロール1の表面は、剛性の高い剛体であってよい。例えば、第一ロール1の表面は、鉄、又はステンレス(SUS304)等の金属であってもよく、第二ロール2の表面にクロムメッキ処理やニッケルメッキ処理等の表面処理がされていてもよい。第一ロール1の表面は、弾性体であってもよい。例えば、第一ロール1の表面は、ニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、又はエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)等のゴムであってよい。クラウン形状を第一ロール1に付与しやすいことから、第一ロール1の表面は弾性体であることが好ましい。
【0051】
第二ロール2の表面は、剛性の高い剛体であってよい。例えば、第二ロール2の表面は、鉄、又はステンレス(SUS304)等の金属であってもよく、第二ロール2の表面にクロムメッキ処理やニッケルメッキ処理等の表面処理がされていてもよい。第二ロール2の表面は、弾性体であってもよい。例えば、第二ロール2の表面は、ニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、又はエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)等のゴムであってよい。
【0052】
皺抑制効果と均一な貼合圧力を両立できることから、第一ロール1の表面が弾性体であり、且つ第二ロール2の表面が剛体であることが好ましい。
【0053】
第一ロール1及び第二ロール2のうち一方又は両方は、動力源(例えばモーター)によって直接又は間接的によって駆動されることにより、回転してよい。
【0054】
保護フィルム6及び横延伸フィルム8は、積層フィルム4として、第一ロール1及び第二ロール2の間から繰り出される。積層フィルム4は、複数のガイドロールにより案内されて、スリット加工装置へと搬送される。スリット加工装置を用いたスリット加工工程では、横延伸フィルム8の両端部8bが切断(スリット)され、除去される。横延伸フィルム8の両端部8bのいずれかに保護フィルム6が重なっている場合、横延伸フィルム8の両端部8bに重なる保護フィルム6の一部も切断(スリット)され、除去される。
【0055】
スリット加工後の積層フィルム4には、さらに別の樹脂フィルムが積層又は貼合されてよい。例えば、保護フィルム6とは別の保護フィルム(第二の樹脂フィルム)を延伸フィルムに積層又は貼合して、延伸フィルムを一対の保護フィルムで挟み込んでよい。第二の樹脂フィルムに加えて、さらに、一つの以上の他の樹脂フィルムを積層フィルム4に積層又は貼合してもよい。
【0056】
横延伸フィルム8が第一ロール1及び第二ロール2の間へ進入する前の時点において、横延伸フィルム8の中央部8aの厚みT8aは、例えば、3~100μm、4~80μm、又は5~40μmであってよい。従来の搬送工程では、横延伸フィルム8の中央部8aの厚みT8aが小さいほど、横延伸フィルム8に皺が生じ易い傾向にあった。換言すれば、横延伸フィルム8の中央部8aが薄いほど、皺等の影響により横延伸フィルム8の幅方向に均一に張力を付加し難く、横延伸フィルム8の張力が部分的に高くなり、横延伸フィルム8が破断し易かった。そのため、従来の搬送工程では、薄い横延伸フィルム8における皺を張力によって抑制することは困難であった。しかし、第一実施形態によれば、横延伸フィルム8の中央部8aの厚みT8aが40μm以下である場合あっても、搬送中における横延伸フィルム8の皺を抑制し、横延伸フィルム8の破断を抑制することができる。保護フィルム6の厚みは、例えば、10~100μm程度であればよい。
【0057】
横延伸フィルム8の幅W8は、例えば、300~6000mmであってよい。横延伸フィルム8の幅W8(特に横延伸フィルム8の中央部8aの幅W8a)が広いほど、搬送中の横延伸フィルム8に皺が発生し易い。しかし、第一実施形態によれば、横延伸フィルム8の幅W8が広い場合であっても、搬送中における横延伸フィルム8の皺を抑制することができる。保護フィルム6の幅W6は、例えば、300~6000mmであってよい。
【0058】
保護フィルム6及び横延伸フィルム8の搬送速度は、例えば、2~100m/分であってよい。
【0059】
第一ロール1の接触領域1aの直径は、例えば、60~400mmであってよい。第二ロール2の直径は、例えば、60~400mmであってよい。
【0060】
以上の第一実施形態において得られる積層フィルムは、例えば、積層型光学フィルムとして、液晶表示素子又は有機EL表示素子等の光学表示デバイスに貼合されてよい。積層型光学フィルムは、例えば、積層型偏光板であってよい。
【0061】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態においても、第一実施形態の場合と同様に、搬送中の延伸フィルムにおける皺を抑制することができる。以下では、第二実施形態に固有の事項(第一実施形態と第二実施形態との相違点)について説明する。以下で説明されない事項において、第二実施形態は第一実施形態と共通する。
【0062】
第一実施形態では、第一ロール1に接触する第一樹脂フィルム6が保護フィルムであり、第二ロール2に接触する第二樹脂フィルム8が延伸フィルムである。対照的に、第二実施形態では、第一ロール1に接触する第一樹脂フィルム6が延伸フィルムであり、第二ロール2に接触する第二樹脂フィルム8が保護フィルムである。このように延伸フィルム及び保護フィルムの上下関係が逆である点を除いて、第二実施形態は第一実施形態と同じである。
【0063】
第二実施形態に係る積層フィルムの製造方法も、搬送装置100を用いた搬送工程を備える。
【0064】
図5及び図6に示すように、第一ロール1の表面において第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)に接触する接触領域1aの幅W1aは、第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の幅W6よりも狭くい。第一ロール1の接触領域1aの幅W1aが第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の幅W6よりも狭い場合、第一ロール1の接触領域1aが、第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の両端部6b(中央部6aに比べて厚い部分)にあたり難く、第一ロール1が張力を第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の中央部6aのみに付与し易い。第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の中央部6aにのみ張力を付与することにより、第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の中央部6aに向かう皺や中央部6aから両端部6bに向かう皺を抑制することができる。第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の幅W6と第一ロール1の接触領域1aの幅W1aとの差(W6-W1a)は、例えば、10~300mm程度であればよい。
【0065】
搬送工程では、第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)及び第二樹脂フィルム8(保護フィルム)を、第一ロール1側から第一ロール1及び第二ロール2の間へ進入させる。つまり、第一樹脂フィルム6及び第二樹脂フィルム8を、第一樹脂フィルム6よりも幅が狭い第一ロール1側からロール間へ進入させる。その結果、第一ロール1が第一樹脂フィルム6の中央部6a及び第二樹脂フィルム8に線圧を付与し易くなる。
【0066】
以上の通り、第二実施形態では、第一ロール1が第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の中央部6aに十分に均一な線圧を付与することができる。この線圧によって、第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の中央部6aに均一な張力を付与することができ、皺を抑制することができる。特に、第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の両端部における皺が抑制され易い。
【0067】
第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)が第一ロール1及び第二ロール2の間へ進入する前の時点において、図5及び図6に示すように、第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の搬送方向D6に垂直な方向における第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の両端部6bは、両端部6bの間に位置する第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の中央部6aよりも厚くてよい。つまり、幅方向(短手方向又はY軸方向)における第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の両端部6bは、両端部6bの間に位置する第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の中央部6aよりも厚くてよい。横延伸工程において第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の両端部6bの厚みT6bが中央部6aの厚みT6aより大きくなり、中央部6aに向かう皺が発生し易くなったとしても、搬送工程において、第一ロール1の接触領域1aが、第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の中央部6aに均一な張力を付与することができるため、皺の発生を抑制することができる。
【0068】
図5に示すように、第二樹脂フィルム8(保護フィルム)の幅W8は、第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の幅W6よりも狭くてよい。ただし、第二樹脂フィルム8(保護フィルム)の幅W8は、第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の幅W6よりも広くてもよい。図5に示すように、第二樹脂フィルム8(保護フィルム)の幅W8は、第一ロール1の接触領域1aの幅W1aよりも狭くてよい。ただし、第二樹脂フィルム8(保護フィルム)の幅W8は、第一ロール1の接触領域1aの幅W1aよりも広くてよい。図5に示すように、第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の幅W6は、第二ロール2の幅W2よりも狭くてよい。第二樹脂フィルム8(保護フィルム)の幅W8、第二ロール2の幅W2よりも狭くてよい。
【0069】
(第三実施形態)
本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態においても、第一実施形態及び第二実施形態の場合と同様に、第一樹脂フィルム6又は第二樹脂フィルム8における皺を抑制することができる。以下では、第三実施形態に固有の事項について説明する。以下で説明されない事項において、第三実施形態は第一実施形態と共通する。また、以下で説明されない事項において、第三実施形態は第二実施形態と共通する。
【0070】
図7に示すように、第三実施形態の第一ロール1Aは、クラウンロールである。つまり、第一ロール1Aの回転軸線A1を含む断面において、第一ロール1Aの中央に位置する接触領域1aの表面は、なだらかな曲線である。そして、第一ロール1Aの直径(太さ)は、第一ロール1Aの真ん中から第一ロール1Aの両端部1bへ向かうにつれて減少する。一方、第三実施形態の第二ロール2は、例えば、フラットロールであってよい。ただし、実際の第二ロール2は、例えば自重によって、第一ロール1Aの接触領域1aに沿うように撓んでいてよい。
【0071】
第三実施形態の搬送工程においても、第一樹脂フィルム6及び第二樹脂フィルム8を、第一ロール1A側から第一ロール1A及び第二ロール2の間へ進入させる。つまり、第一樹脂フィルム6及び第二樹脂フィルム8をクラウンロール側からロール間へ進入させる。第一ロール1Aの接触領域1a(クラウンロールの太い部分)は、フラットロールに比べて凸状であるため、第一樹脂フィルム6の表面に接触し易い。したがって、第一ロール1A(クラウンロール)は、フラットロールに比べて、第一樹脂フィルム6の中央部6a又は第二樹脂フィルム8の中央部8aに均一に張力を付与し易く、第一樹脂フィルム6又は第二樹脂フィルム8の皺が発生し難い。つまり、クラウンロールを用いる第三実施形態によれば、フラットロールを用いる第一実施形態及び第二実施形態に比べて、第一樹脂フィルム6又は第二樹脂フィルム8の皺を抑制し易い。仮に、第一樹脂フィルム6及び第二樹脂フィルム8の一方又は両方を、第二ロール2側から第一ロール1A及び第二ロール2の間へ進入させる場合、第一ロール1Aの接触領域1a(クラウンロールの太い部分)が線圧を均一に各樹脂フィルムへ及ぼし難くなり、皺を抑制し難くなる。
【0072】
第一ロール1(クラウンロール)のクラウン量は、例えば、0.05~5mmであってよい。クラウン量とは、第一ロール1の接触領域1aにおける直径の最大値と最小値との差である。換言すると、クラウン量とは、第一ロール1の接触領域1aの中央部の直径と、第一ロール1の接触領域1aの端部の直径と、の差である。第一ロール1のクラウン量が、第一ロール1の撓み量から第二ロール2の撓み量を引いた値(撓み量の差)であり、且つ撓み量の差が正の値であり、且つ撓み量の差が大きいほど、第一ロール1が保護フィルム6及び横延伸フィルム8の中央部8aに線圧を付与し易く、皺を抑制し易くなる。ただし、撓み量の差(正の値)が大きすぎると、各フィルムの幅方向の端部がニップされないため、皺抑制効果が小さくなる恐れがある。そのため、クラウン量が、上記の撓み量の差であり、且つ正の値であり、且つ各フィルムの幅方向の端部がニップされる程度の範囲内であることが好ましい。
【0073】
図7に示すように、第一樹脂フィルム6の表面の一部を第一ロール1Aの表面(第一ロール1の接触領域1a)に密着させてもよいし、図8に示すように、第一樹脂フィルム6の表面全体を第一ロール1Aの表面(第一ロール1の接触領域1a)に密着させてもよい。第一ロール1Aの表面(第一ロール1Aの接触領域1a)に密着する第一樹脂フィルム6の表面積が広いほど、第一ロール1Aの接触領域1aが、第一樹脂フィルム6を介して、線圧を第二樹脂フィルム8の中央部8aへ及ぼし易くなる。その結果、第二樹脂フィルム8の中央部8aに向かう皺や中央部8aから両端部8bに向かう皺が発生し難い。また、搬送装置100の上流側に位置する第二樹脂フィルム8に皺が発生したとしても、第一ロール1A(クラウンロール)の形状に起因して第二樹脂フィルム8の皺が押し拡がり易い。
【0074】
(他の実施形態)
以上、本発明の第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【0075】
樹脂フィルムの皺は、必ずしも押出フィルムの横延伸だけに起因するものではない。例えば、熱可塑性樹脂の押出成形工程では、押出金型の吐出口(リップ)から吐出された溶融樹脂を例えば冷却ロールで冷却固化させてフィルム状に成形すると、ネックインの影響により押出フィルムの端部が押出フィルムの中央部に比べて厚くなり易い。つまり、横延伸前の押出フィルムの両端部が、押出フィルムの中央部よりも厚くなり易い。この押出成形工程に起因する押出フィルムの皺を抑制する手段としても、本発明は有用である。この例に限らず、樹脂フィルムの搬送又は積層フィルムの製造における様々な場面において、樹脂フィルムの厚みの差に起因する樹脂フィルムの皺を本発明によって抑制することが可能である。積層フィルムの製造において、本発明に係る樹脂フィルムの搬送方法を複数回実施してもよい。
【0076】
第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態に係る積層フィルムの製造装置は、樹脂フィルムの搬送装置に加えて、さらに塗布装置を備えてよい。第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態に係る積層フィルムの製造方法では、搬送工程の前に、塗布装置を用いて、第二樹脂フィルムを向く第一樹脂フィルムの表面、又は第一樹脂フィルムを向く第二樹脂フィルムの表面のうち少なくともいずれかの面に、接着剤又は粘着剤を塗布してよい。続く搬送工程では、第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムの間に、接着剤又は粘着剤を介在させて、第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムを、第一ロール及び第二ロールで挟んでよい。つまり搬送工程では、第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムを、接着剤又は粘着剤を介して貼合してよい。つまり、樹脂フィルムの搬送装置は、樹脂フィルム同士を貼合する機能も兼ね備えてよい。
【0077】
第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムのうち少なくとも一方が、自己粘着性のフィルムであってもよい。例えば、保護フィルムが、自己粘着性を有してもよい。例えば、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂から構成される保護フィルムがある。自己粘着性フィルムの粘着面は、例えば、第二樹脂フィルムを向く第一樹脂フィルムの表面であってよい。または、自己粘着性フィルムの粘着面は、第一樹脂フィルムを向く第二樹脂フィルムの表面であってもよい。第二樹脂フィルムを向く第一樹脂フィルムの表面、及び第一樹脂フィルムを向く第二樹脂フィルムの表面の両方が、粘着面であってもよい。第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムのうち少なくとも一方が、自己粘着性のフィルムである場合、搬送工程では、接着剤又は粘着剤を用いることなく、第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムを貼合することができる。
【0078】
例えば、上記第三実施形態において、第二ロール2もクラウンロールであってよい。第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態において、第一ロールの接触領域の幅が、第一樹脂フィルムの幅及び第二樹脂フィルムの幅の両方よりも狭くてよい。第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態において、第二樹脂フィルムの両端部が、両端部の間に位置する第二樹脂フィルムの中央部よりも厚く、且つ第一樹脂フィルムの両端部が、両端部の間に位置する第一樹脂フィルムの中央部よりも厚くてよい。
【0079】
第一樹脂フィルムは、保護フィルム又は延伸フィルムに限られない。第二樹脂フィルムも、保護フィルム又は延伸フィルムに限られない。第一樹脂フィルム又は第二樹脂フィルムは、例えば、反射型偏光フィルム、防眩フィルム、表面反射防止フィルム、反射フィルム、半透過反射フィルム、位相差フィルム、及び視野角補償フィルムからなる群より選ばれる一種であってよい。積層フィルムは、例えば、偏光子、偏光子保護フィルム、偏反射型偏光フィルム、防眩フィルム、表面反射防止フィルム、反射フィルム、半透過反射フィルム、位相差フィルム、及び視野角補償フィルムからなる群より選ばれる少なくとも一種以上を備える積層型光学フィルムであってよい。
【実施例
【0080】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
(実施例1)
実施例1では、以下の縦延伸工程、横延伸工程及び搬送工程をこの順に実施した。
【0082】
縦延伸工程では、長尺帯状の樹脂フィルムを、120℃で加熱しながら、樹脂フィルムをその長尺方向(搬送方向)に延伸した。樹脂フィルムとしては、PMMA樹脂(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体(重量比94/6)、ガラス転移温度108℃)から形成されたフィルムを用いた。縦延伸前の樹脂フィルムの幅Wは、1000mmであった。縦延伸前の樹脂フィルムの厚みTは、下記表1に示す値であった。縦延伸倍率は、下記表1に示す値に調整した。縦延伸後の樹脂フィルム(縦延伸フィルム)の幅方向(短手方向)における中央部の厚みTは、下記表1に示す値であった。
【0083】
縦延伸工程に続く横延伸工程では、テンター法を採用した。テンター法では、縦延伸フィルムの両端部に沿って並ぶ2つのクリップ列を備えた横延伸装置を用いた。2つのクリップ列はそれぞれ複数のクリップから構成されていた。横延伸工程では、縦延伸フィルムの両端部に沿って並ぶ複数のクリップにより、縦延伸フィルムの両端部を把持した。各クリップで把持された縦延伸フィルムを、120℃で加熱しながら、縦延伸フィルムの幅方向において向かい合う一対のクリップの間隔を拡げることで、縦延伸フィルムの幅方向(横方向)に延伸した。延伸後のフィルムを同温度で加熱しながらクリップの間隔を5mm狭める弛緩を行った。以上の手順により、横延伸フィルム(第二樹脂フィルム)を得た。横延伸倍率は、下記表1に示す値に調整した。図4に示すように、得られた横延伸フィルム8の幅方向(短手方向)における両端部8bは、横延伸フィルム8の中央部8aよりも厚かった。つまり、横延伸フィルム8の両端部8bでは、縦延伸フィルムの厚みTと概ね同じ厚みを有する部分が残っていた。横延伸フィルム8の中央部8aの厚みT8aは、下記表1に示す値であり、略均一であった。
【0084】
この横延伸フィルムを、複数のガイドロールによって、搬送装置へ搬送した。実施例1で用いた搬送装置は、図1及び図8に示すように、平行に並ぶ第一ロール1A及び第二ロール2と、これらの回転を駆動するモーターとを備えるものであった。第一ロール1A及び第二ロール2はニップロールであり、第一ロール1Aは、表面がゴムから構成されているクラウンロールであった。第一ロール1A(クラウンロール)の接触領域1aの直径の最大値は、120mmであった。第一ロール1Aのクラウン量は、400μmであった。第一ロール1Aの接触領域1aの幅W1aは、1500mmであった。第二ロール2は、剛性金属から構成されているフラットロールであった。第二ロール2の直径は、210mmであった。第二ロール2の幅W2は、2100mmであった。搬送工程では、図1に示すように、保護フィルム6及び横延伸フィルム8を、第一ロール1A側から第一ロール1A及び第二ロール2の間へ進入させ、これらを重なり合った状態で搬送した。保護フィルム6(第一樹脂フィルム)としては、ポリエチレン系樹脂から形成された長尺帯状のフィルム(東レフィルム加工株式会社製「トレテック」)を用いた。保護フィルム6の厚みは、30μmであった。保護フィルム6の幅W6は、1450mmであった。保護フィルム6の幅W6は、第一ロール1Aの接触領域1aの幅W1aよりも狭かった。横延伸フィルム8の中央部8aの幅W8aは、保護フィルム6の幅W6の幅よりも広かった。第一ロール1Aの接触領域1aの幅W1aは、横延伸フィルム8の中央部8aの幅W8aよりも狭かった。第二ロール2の接触領域の幅W2は、横延伸フィルム8の幅W8よりも広かった。
【0085】
第一ロール1A及び第二ロール2の間から重なり合った状態で繰り出された保護フィルム6及び横延伸フィルム8を観察した。実施例1の搬送工程後において、横延伸フィルム8における皺はなかった。
【0086】
(実施例2)
実施例2の縦延伸工程では、縦延伸前の樹脂フィルムの厚みTは、下記表1に示す値であった。実施例2の縦延伸工程では、縦延伸倍率は、下記表1に示す値に調整した。実施例2の場合、縦延伸フィルムの幅方向における中央部の厚みTは、下記表1に示す値であった。
【0087】
実施例2の横延伸工程では、横延伸倍率は、下記表1に示す値に調整した。また実施例2の横延伸工程では、クリップの間隔を10mm狭める弛緩を行った。実施例2の場合、得られた横延伸フィルム8の幅方向における中央部8aの厚みT8aは、下記表1に示す値であった。実施例2の場合、横延伸フィルム8の中央部8aの幅W8aは、下記表1に示す値であった。
【0088】
実施例2の場合、保護フィルム6の幅W6は、1450mmであり、保護フィルム6の幅W6は、第一ロール1Aの接触領域1aの幅W1aよりも狭かった。
【0089】
以上の事項を除いて、実施例1の場合と同様に、実施例2の縦延伸工程、横延伸工程及び搬送工程を実施した。実施例2の搬送工程後においても、横延伸フィルムにおける皺はなかった。
【0090】
(実施例3)
実施例3の縦延伸工程では、縦延伸倍率は、下記表1に示す値に調整した。実施例3の場合、縦延伸フィルムの幅方向における中央部の厚みTは、下記表1に示す値であった。
【0091】
実施例3の横延伸工程では、横延伸倍率は、下記表1に示す値に調整した。また実施例3の横延伸工程では、クリップの間隔を10mm狭める弛緩を行った。実施例3の場合、得られた横延伸フィルムの幅方向における中央部8aの厚みT8aは、下記表1に示す値であった。実施例3の場合、横延伸フィルムの中央部8aの幅W8aは、下記表1に示す値であった。
【0092】
以上の事項を除いて、実施例2の場合と同様に、実施例3の縦延伸工程、横延伸工程及び搬送工程を実施した。実施例3の搬送工程後においても、横延伸フィルムにおける皺はなかった。
【0093】
(比較例1)
比較例1の縦延伸工程では、縦延伸倍率は、下記表1に示す値に調整した。比較例1の場合、縦延伸フィルムの幅方向における中央部の厚みTは、下記表1に示す値であった。
【0094】
比較例1の横延伸工程では、横延伸倍率は、下記表1に示す値に調整した。また比較例1の横延伸工程では、クリップの間隔を16mm狭める弛緩を行った。比較例1の場合、得られた横延伸フィルムの幅方向における中央部6aの厚みT6aは、下記表1に示す値であった。比較例1の場合、延伸フィルムの中央部6aの幅W6aは、下記表1に示す値であった。
【0095】
図9に示すように、比較例1の搬送工程では、第一ロールとして、クラウンロールの代わりに、ゴムから構成されているフラットロール10を用いた。比較例1のフラットロール10の直径は、160mmであった。比較例1の搬送工程では、フラットロール10及び第二ロール2に対する第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の進入角がゼロであった。また比較例1の搬送工程では、第二樹脂フィルム8(保護フィルム)を、第二ロール2側からフラットロール10及び第二ロール2の間へ進入させた。図9に示すように、比較例1における延伸フィルム及び保護フィルムの上下関係は、実施例1の場合と逆であった。
【0096】
比較例1の場合、第二樹脂フィルム8(保護フィルム)の幅W8は、1900mmであった。比較例1の場合、第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の幅W6は、第二樹脂フィルム8(保護フィルム)の幅W8よりも狭かった。比較例1の場合、第一樹脂フィルム6(延伸フィルム)の幅W6は、第一ロール(フラットロール10)の幅及び第二ロール2の幅W2よりも狭かった。比較例1の場合、第二樹脂フィルム8(保護フィルム)の幅W8も、第一ロール(フラットロール10)の幅及び第二ロール2の幅W2よりも狭かった。
【0097】
以上の事項を除いて、実施例1の場合と同様に、比較例1の縦延伸工程、横延伸工程及び搬送工程を実施した。比較例1の搬送工程後においては、横延伸フィルム8に皺が発生していた。
【0098】
(比較例2)
比較例2の縦延伸工程では、縦延伸倍率は、下記表1に示す値に調整した。比較例2の場合、縦延伸フィルムの幅方向における中央部の厚みTは、下記表1に示す値であった。
【0099】
比較例2の横延伸工程では、クリップの間隔を狭める弛緩を行わなかった。横延伸倍率は、下記表1に示す値に調整した。比較例2の場合、得られた横延伸フィルム8の幅方向における中央部8aの厚みT8aは、下記表1に示す値であった。比較例2の場合、延伸フィルムの中央部8aの幅W8aは、下記表1に示す値であった。
【0100】
比較例2の搬送工程で用いた第一ロール1A(クラウンロール)全体の幅W1は、2100mmであった。比較例2の第一ロール1A(クラウンロール)の接触領域1aの幅W1aは、1591mmであった。比較例2の第一ロール1Aのクラウン量は、1200μmであった。図10に示すように、比較例2の搬送工程では、横延伸フィルム8を、第二ロール2側から第一ロール1A及び第二ロール2の間へ進入させた。
【0101】
比較例2の場合、保護フィルム6の幅W6は、1800mmであった。つまり、比較例2の場合、保護フィルム6の幅W6は、横延伸フィルム8の幅W8よりも広かった。比較例2の場合、保護フィルム6の幅W6は、第一ロール1Aの接触領域1aの幅W1aよりも広かった。比較例2の場合、第一ロール1Aの接触領域1aの幅W1aは、横延伸フィルム8の幅W8よりも狭かった。
【0102】
以上の事項を除いて、実施例1の場合と同様に、比較例2の縦延伸工程、横延伸工程及び搬送工程を実施した。比較例2の搬送工程後においては、横延伸フィルム8の中央部には皺が無かったが、横延伸フィルム8の両端部に皺が発生していた。
【0103】
(比較例3)
比較例3の横延伸工程では、クリップの間隔を5mm狭める弛緩を行った。得られた横延伸フィルム8の幅方向における中央部8aの厚みT8aは、下記表1に示す値であった。比較例3の場合、横延伸フィルム8の中央部8aの幅W8aは、下記表1に示す値であった。
【0104】
比較例3の搬送工程では、横延伸フィルム8を、第二ロール2側から第一ロール1A及び第二ロール2の間へ進入させた。
【0105】
以上の事項を除いて、実施例1の場合と同様に、比較例3の縦延伸工程、横延伸工程及び搬送工程を実施した。比較例3の搬送工程後においては、横延伸フィルム8にはわずかに皺が発生していた。
【0106】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明に係る樹脂フィルムの搬送方法によれば、積層フィルム(例えば積層型偏光板)の製造過程において延伸フィルム(例えば偏光子フィルム)を搬送する際に、延伸フィルムにおける皺を抑制することできる。
【符号の説明】
【0108】
1…第一ロール、1A…第一ロール(クラウンロール)、1a…第一ロールの接触領域、2…第二ロール、4…積層フィルム、6…第一樹脂フィルム(第一実施形態の保護フィルム、第二実施形態の横延伸フィルム)、8…第二樹脂フィルム(第一実施形態の横延伸フィルム、第二実施形態の保護フィルム)、8a…第二樹脂フィルムの中央部、8b…第二樹脂フィルムの両端部、100…樹脂フィルムの搬送装置、W1a…第一ロールの接触領域の幅、W6…第一樹脂フィルムの幅、W8…第二樹脂フィルムの幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10