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  • 特許-二重管ロール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】二重管ロール
(51)【国際特許分類】
   B65H 27/00 20060101AFI20220112BHJP
   B65H 18/26 20060101ALI20220112BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
B65H27/00 A
B65H18/26
B65H27/00 Z
F16C13/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017214960
(22)【出願日】2017-11-07
(65)【公開番号】P2018080056
(43)【公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2016218055
(32)【優先日】2016-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500108688
【氏名又は名称】サンレイ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】武山 宏規
(72)【発明者】
【氏名】石田 雅信
(72)【発明者】
【氏名】名藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】越畑 雅信
(72)【発明者】
【氏名】葭谷 明彦
(72)【発明者】
【氏名】津覇 浩一
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-141039(JP,A)
【文献】特開2015-085555(JP,A)
【文献】特開2014-097884(JP,A)
【文献】特開2010-189077(JP,A)
【文献】特開平11-125238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 18/26
B65H 27/00
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維強化複合材料からなる外管及び内管と、複数の剛体からなるリングとを備え、
前記内管及び前記の複数のリングは、前記内管が前記の複数のリングに挿通された状態で、前記内管と前記外管の中心軸が一致するように前記外管内に挿入され、
前記の複数のリングはそれぞれ前記外管と前記内管の両方に固定されており、
前記内管が、軸方向に互いに繋ぎ合わされた複数の筒状部を備えている、二重管ロール。
【請求項2】
前記の複数のリングが、前記内管の軸方向において、中央部よりも第1端部側と第2端部側のそれぞれに配置されている、請求項1に記載の二重管ロール。
【請求項3】
前記の複数のリングが、炭素繊維強化複合材料からなる、請求項1又は2に記載の二重管ロール。
【請求項4】
前記リングを2つ備え、それらのリングが前記内管の軸方向において中央部から第1端部側と第2端部側に均等な距離となるように配置され、
前記外管の長さL1に対する、一方の前記リングの前記中央部側の端と他方の前記リングの前記中央部側の端との距離dの比d/L1が、1/100~1/1.5である、請求項1~のいずれか一項に記載の二重管ロール。
【請求項5】
前記外管のヤング率が60~350GPaであり、前記内管のヤング率が210~400GPaであり、前記リングのヤング率が60~400GPaである、請求項1~のいずれか一項に記載の二重管ロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックスフィルムや紙、金属箔(以下、特に限定しない限りウェブと総称する。)を製造する工程や、それらのウェブにコーティング、蒸着等の表面処理やラミネーティングを施す工程において、主にウェブ巻き取り時の外周空気の巻き込みを防ぐ目的で製造工程内に設置されるロール(一般的にタッチロール、コンタクトロールと呼ばれる。)、及びウェブを挟み込んでウェブに駆動力を与えたり、テンションカットしたり、複数のウェブを接着したりする目的で製造工程内に設置されるロール(一般的にニップロールやピンチロールと呼ばれる。)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高機能フィルム等を代表とするウェブの薄肉化、幅広化、生産速度向上によってウェブハンドリングの観点からカーボンロールの使用が注目されている。特に、ウェブ巻取工程においては、低撓みかつ小径のロールで、外周の空気の巻き込み量を小さくしながら、高速回転のもと、均一にコンタクトさせる必要があり、カーボンの二重管ロールが有効である。
【0003】
カーボンの二重管ロールとしては、筒状回転体と、前記筒状回転体に同芯状に挿通された軸体と、前記軸体と前記筒状回転体との間に嵌入され、軸方向において間隔を空けて配置された2つの球面軸受とを備える圧接ロールが知られている(特許文献1)。また、筒状部材と、前記筒状部材の内側に配設された軸体と、前記軸体に設けられ、前記筒状部材の内周面に押し付けられる弾性リングとを備える圧接ロールが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-66042号公報
【文献】特開2003-292217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、例えばフィルム製造ラインでは、フィルムの薄肉化や高機能化、そして生産速度の向上や広幅化による生産性向上が期待されている反面、コストダウンへの要求が厳しい。そのため、比較的構造がシンプルで安価に製造でき、メンテナンス性に優れ、耐久性のある低撓みロールが求められている。特許文献1のような二重管ロールでは、筒状回転体と軸体の間に軸受が存在し、軸受が筒状回転体と軸体の間の狭いスペースに設置されていることからメンテナンスが困難である。またロールの荷重を2個の軸受で受けており、軸受寿命にも悪影響がある。また筒状回転体と軸体の接合部が比較的複雑であり、ロールの小径化に制限がある。特許文献2のような二重管ロールでは、筒状部材と軸体の間に弾性材を充填しているため、長期の使用による摩擦や弾性劣化により安定した性能を維持することは困難である。また、使用時に筒状部材と軸体が軸方向にずれ、シート状物への押圧力が軸方向において不均一になりやすい。
【0006】
本発明は、低撓みと小径化を実現し、空気巻き込み量を低減しながらシート状物等への押圧力を軸方向において安定して均一に維持でき、かつ耐久性に優れ、軸受等のメンテナンスが必要な部材を備えない二重管ロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]炭素繊維強化複合材料からなる外管及び内管と、複数の剛体からなるリングとを備え、前記内管及び前記の複数のリングは、前記内管が前記の複数のリングに挿通された状態で、前記内管と前記外管の中心軸が一致するように前記外管内に挿入され、前記の複数のリングはそれぞれ前記外管と前記内管の両方に固定されている、二重管ロール。
[2]前記内管が、軸方向に互いに繋ぎ合わされた複数の筒状部を備えている、[1]に記載の二重管ロール。
[3]前記の複数のリングが、前記内管の軸方向において、中央部よりも第1端部側と第2端部側のそれぞれに配置されている、[1]又は[2]に記載の二重管ロール。
[4]前記の複数のリングが、炭素繊維強化複合材料からなる、[1]~[3]のいずれかに記載の二重管ロール。
[5]前記リングを2つ備え、それらのリングが前記内管の軸方向において中央部から第1端部側と第2端部側に均等な距離となるように配置され、前記外管の長さL1に対する、一方の前記リングの前記中央部側の端と他方の前記リングの前記中央部側の端との距離dの比d/L1が、1/100~1/1.5である、[1]~[4]のいずれかに記載の二重管ロール。
[6]前記外管のヤング率が60~350GPaであり、前記内管のヤング率が210~400GPaであり、前記リングのヤング率が60~400GPaである、[1]~[3]のいずれかに記載の二重管ロール。
【発明の効果】
【0008】
本発明の二重管ロールは、低撓みと小径化を実現し、空気巻き込み量を低減しながらシート状物等への押圧力を軸方向において安定して均一に維持できるうえ、耐久性に優れ、軸受等のメンテナンスが必要な部材を備えていない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の二重管ロールの一例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の二重管ロールの一例を示して説明する。図1は、本発明の一実施形態の二重管ロールを軸方向に沿って切断した断面図である。
本実施形態の二重管ロール1は、図1に示すように、円筒状の外管10と、円筒状の内管12と、複数の円環状のリング14とを備える。この例のリング14は2つであり、それらのリング14に内管12が挿通されている。内管12と2つのリング14は、このように内管12が2つのリング14に挿通された状態で、外管10内に挿入されている。外管10の中心軸と、外管10内に挿入された内管12の中心軸は一致している。すなわち、外管10と内管12とは同芯状になっている。また、外管10と内管12のクリアランスは、1mm~20mmである。
【0011】
(外管)
この例の外管10は、1つの筒状物からなる。なお、外管は、後述する内管と同様に、軸方向に互いに繋ぎ合わされた複数の筒状部で形成されたものであってもよい。
【0012】
外管10は、炭素繊維強化複合材料(炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics))(以下、「CFRP」と称する。)からなる。外管10がCFRPで形成されていることで、外管10が軽量となるうえ、幅広いヤング率に制御することが可能となる。
外管10のヤング率は、60~350GPaが好ましく、100~210GPaがより好ましい。外管10のヤング率が前記範囲の下限値以上であれば、二重管ロール1の自重撓みが低減されやすい。外管10のヤング率が前記範囲の上限値以下であれば、押し付け時に二重管ロール1がシート状物等になじみやすい。
なお、外管のヤング率は、使用する炭素繊維の種類や積層方向の設計によって制御される。
【0013】
外管10のCFRPを形成する炭素繊維としては、ピッチ系炭素繊維、ポリアクリロニトリル系(以下、PAN系と記す。)炭素繊維等が挙げられる。
ピッチ系炭素繊維は、「メソフェーズピッチすなわち石油タール、石炭タール等を処理して生じた部分的に液晶構造を示す樹脂、又は、人工的に合成されたメソフェーズピッチを紡糸して、不融化して、さらに炭化させて生成した、黒鉛結晶構造が繊維軸方向に高度に発達した実質的に炭素のみからなるフィラメント繊維」である。
PAN系炭素繊維とは、「アクリロニトリルを主成分として重合させたポリアクリロニトリル系樹脂からなる繊維を、不融化させて、さらに炭化させて生成した実質的に炭素のみからなるフィラメント繊維」である。
【0014】
炭素繊維として、ピッチ系炭素繊維とPAN系炭素繊維とを併用することで、外管10を任意のヤング率に制御することができる。
【0015】
CFRPにおけるマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂の硬化物又は熱可塑性樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、変性ポリオレフィン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリカーボネイト、ポリアミドイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブチレン-スチレン共重合体、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリエステル、アクリロニトリル-スチレン共重合体等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
マトリックス樹脂は、CFRPの要求物性に応じて、各種添加剤(難燃剤、耐候性改良剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、導電性フィラー等)を含んでいてもよい。
【0018】
(内管)
この例の内管12は、軸方向に互いに繋ぎ合わされた4つの筒状部16からなる本体部12aと、本体部12aの軸方向の両端部に嵌め込まれたジャーナル18と、を備えている。このように内管を繋ぎ構造とすることで、製造時に内管に湾曲が生じることを抑制しやすくなる。
【0019】
内管12は、CFRPからなる。内管12がCFRPで形成されていることで、内管12を軽量かつ高いヤング率に設計することが可能となる。
内管12のヤング率は、210~400GPaが好ましく、240~400GPaがより好ましい。内管12のヤング率が前記範囲の下限値以上であれば、内管12の撓みを低減しやすい。内管12のヤング率が前記範囲の上限値以下であれば、使用する炭素繊維のグレードが高価になりすぎず現実的である。
なお、内管のヤング率は、外管のヤング率と同様の方法で制御される。
内管12のCFRPを形成する炭素繊維及びマトリックス樹脂としては、外管10と同じものが挙げられ、好ましい態様も同じである。
【0020】
この例の内管12は、軸方向に互いに繋ぎ合わされた4つの筒状部16で形成されている。本発明の二重管ロールにおいては、このように内管が、軸方向に互いに繋ぎ合わされた複数の筒状部で形成されていることが好ましい。内管は構造上径が小さいため、内管を形成する筒状部の外径Dに対する軸方向の長さLの比L/Dが大きくなり、CFRP成形時に湾曲等の寸法誤差が生じやすい。しかし、この例のように複数の筒状部で湾曲を打ち消す形で繋ぎ合わせることで、湾曲を抑制することができ、直線的な内管を得ることが容易になる。
【0021】
また、内管を複数の筒状部を互いに繋ぎ合わせたものとすることで、一本の長い筒状物からなる内管とする場合に比べて、リングを嵌め込む際に内管の軸方向に該リングを移動させる距離が短くなり、組み立て作業が容易になる。特に、後述のようにリングを接着剤によって内管に固定する場合には、リングを内管に装着する際にリングの内面に付与しておいた接着剤が剥げ落とされて充分な接着力が得られなくなることを抑制しやすい。
【0022】
具体的には、例えば内管を軸方向に3等分する位置にリングを配置する場合、一本の長い筒状物からなる内管であると、該内管の端部にリングを嵌め込んだ後に該リングを内管の軸方向に移動させる距離が、内管の長さの1/3に相当する距離となる。しかし、例えばこの例のように、4つの筒状部16で形成された内管12の場合、リング14が配置される位置の筒状部16にリング14を嵌め込んで所望の位置まで移動させた後に、その筒状部16を別の筒状部16と繋げればよい。このように、内管12の一部分である筒状部16に個別にリング14を装着すればよいため、リング14を移動させる距離が短くなる。そのため、リング14の設置作業が容易であり、リング14を接着剤で内管12に固定する場合も接着剤が剥げ落ちにくく、充分な接着力が得られやすい。
【0023】
内管を形成する筒状部の数は、内管の長さに応じて適宜設定すればよいが、製造や組み立てが簡易になる点から、2~4つが好ましい。
内管を形成する筒状部の外径Dに対する軸方向の長さLの比L/Dは、30以下が好ましく、20以下がより好ましい。
【0024】
筒状部同士を繋ぎ合わせる態様は、特に限定されない。この例では、軸方向に隣り合う筒状部16の対向するそれぞれの端部に円柱状の接続部材20を嵌め込むことで、それら筒状部16同士を繋ぎ合わせている。
【0025】
接続部材20を形成する材料としては、例えば、繊維強化複合材料、金属、セラミック等が挙げられる。なかでも、接続部材20を形成する材料としては、軽量性及び加工性の点から、繊維強化複合材料が好ましく、CFRPがより好ましい。
【0026】
(リング)
2つのリング14のそれぞれは、内管12が挿通された状態で外管10と内管12の両方に固定されている。そのため、外管10と内管12が同期して回転する。
【0027】
二重管ロール1においては、リング14が外管10と内管12の両方に固定されていることで、使用時においてリング14と外管10や内管12との間で摩耗が生じない。そのため、二重管ロール1は、リングが外管や内管に固定されない場合に比べて、耐久性に優れている。また、リング14が外管10と内管12の両方に固定されていることで、使用時に外管10と内管12が軸方向にずれることが抑制される。そのため、二重管ロール1を用いることで、シート状物等に対して押圧力を軸方向に均一に与えることができる。さらにリング14は剛体であるため弾性劣化が生じず、長期において安定した性能を発揮することができる。また、単純なリング機構とすることで、内管と外管のクリアランスを小さくすることができる。
【0028】
本発明では、複数のリングが内管の軸方向において、中央部よりも第1端部側と第2端部側のそれぞれに配置されていることが好ましい。すなわち、内管の軸方向における中央部を除いて、内管の両端側にそれぞれリングを配置することが好ましい。これにより、内管12をシート状物等に向けて押す力が外管10に軸方向に均等に伝わりやすくなるため、シート状物等への押圧力を軸方向において均一に維持することが容易になる。
この例では、内管12の軸方向に2つのリング14を配置している。リングは3つ以上あってもよいが、軽量性、組み立ての容易性、撓みの抑制効果等の観点から、2つが好ましい。
【0029】
この例の2つのリング14は、内管12の中央部から第1端部側と第2端部側に均等な距離となるように、かつ外管10の長さL1に対する、一方のリング14の中央部側の端と他方のリング14の中央部側の端との距離dの比d/L1が1/4となるように配置している。
2つのリングとする場合、外管の長さL1に対する、一方のリングの中央部側の端と他方のリングの中央部側の端との距離dの比d/L1は、1/100~1/1.5が好ましく、1/20~1/2がより好ましく、1/10~1/2がさらに好ましい。比d/L1が前記範囲の下限値以上であれば、外管の端部からリングまでの距離が短くなり、外管の撓みを低減しやすい。比d/L1が前記範囲の上限値以下であれば、外管は内管の撓みに追従しにくくなり、外管の撓みを低減しやすい。リングが3つ、4つと増えていくと内管の撓みに外管が追従しやすくなるため、リングが2つの場合に比べて撓み量が大きくなる。
【0030】
例えば、特開平9-156804号公報、特許第6009328号公報等には、一体的に構成された軸体と筒状回転体の軸方向の中央部一か所に剛体による接合部を設ける二重管構造のロールが開示されている。しかし、このように接合部がロール軸方向の中央部一か所の場合、接合部が長くなり、重量が大きくなるため固有振動数も下がりやすい。また接合部を接着により組み立てる場合、軸体が一体的に構成されているため、接合部の移動距離が長くなり、接着剤がはがれやすくなり、十分な接着強度が得られない。
【0031】
リング14の内径及び外径は、外管10と内管12の両方にリング14を固定できるように適宜設定すればよい。
リング14の軸方向の長さは、50~1500mmが好ましく、100~300mmがより好ましい。またリング14の厚みは、1~15mmが好ましく、2~5mmが特に好ましい。
【0032】
リング14は、剛体からなる。
リング14を形成する材料としては、例えば、繊維強化複合材料、金属、セラミック等が挙げられる。なかでも、リング14を形成する材料としては、軽量性及び加工性の点から、繊維強化複合材料が好ましく、CFRPがより好ましい。CFRPで形成された軽量かつ高剛性なリングとすることで金属製の軸受等と比べて軽量なロールとなるため、固有振動数が上がり、危険回転数も高くなる。
【0033】
リング14のヤング率は、60~400GPaが好ましい。リング14のヤング率が前記範囲の下限値以上であれば、リングの剛性が充分に得られやすい。リング14のヤング率が前記範囲の上限値以下であれば、コスト面で現実的である。
なお、リングのヤング率は、外管のヤング率と同様の方法で制御される。
【0034】
繊維強化複合材料を形成する炭素繊維以外の強化繊維としては、例えば、アルミナ繊維、無機繊維(ガラス繊維等)、有機繊維(アラミド繊維、ポリエステル繊維等)、金属繊維(ステンレスの繊維、金属を被覆した炭素繊維等)や、これらの複合繊維等が挙げられる。
繊維強化複合材料を形成するマトリックス樹脂としては、外管10において挙げたものと同じものが挙げられる。
【0035】
リング14を外管10及び内管12に固定する態様としては、リング14が外管10及び内管12に固定される態様であればよく、例えば、接着剤で固定する態様、ボルト、ビス等での固定、内管又は外管と一体成形等が挙げられる。なかでも、軽量、製造作業性の点から、接着剤で固定する態様が好ましい。
【0036】
(製造方法)
本発明の二重管ロールの製造方法は、特に限定されない。二重管ロール1であれば、例えば以下の製造方法が挙げられる。
公知の成形方法を利用して外管10、4つの筒状部16、及び2つのリング14を製造する。次いで、リング14の内面に接着剤を付与し、内管12においてリング14が配置される位置に設けられる筒状部16に嵌め込んで固定する。次いで、接続部材20を用いて各々の筒状部16を繋ぎ合わせて内管12の本体部12aを形成し、その両端にジャーナル18を取り付ける。次いで、内管12に装着されたリング14の外面に接着剤を付与し、内管12及びリング14を外管10内に挿入し、リング14を外管10に固定する。
この後、外管表面には使用用途にあわせてゴムライニング、メッキ、金属被覆等の処理が行われる。
【0037】
以上説明した本発明の二重管ロールにおいては、外管と内管の間に配置される複数のリングが外管及び内管の両方に固定されているため、シート状物等への押圧力を軸方向において安定して均一に維持できるうえ、耐久性にも優れている。
本発明の二重管ロールは、巻取装置におけるシート状物の姿勢制御のための圧接ロールとして特に有用である。なお、本発明の二重管ロールの用途は、巻取装置の圧接ロールには限定されない。
【符号の説明】
【0038】
1 二重管ロール
10 外管
12 内管
12a 本体部
14 リング
16 筒状部
18 ジャーナル
20 接続部材
図1