(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】電力供給設備
(51)【国際特許分類】
H02K 35/00 20060101AFI20220112BHJP
G16Y 10/35 20200101ALI20220112BHJP
H02P 9/04 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
H02K35/00
G16Y10/35
H02P9/04 Z
(21)【出願番号】P 2018122456
(22)【出願日】2018-06-27
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】小野 新平
(72)【発明者】
【氏名】益永 喜則
(72)【発明者】
【氏名】宇津巻 寛
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-246365(JP,A)
【文献】特開2011-153646(JP,A)
【文献】国際公開第2011/099118(WO,A1)
【文献】特開2012-175794(JP,A)
【文献】特開2005-322091(JP,A)
【文献】特開2017-011913(JP,A)
【文献】特開2007-067109(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0093267(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0066456(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 35/00
H02P 9/04
H02N 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を供給するための
発電設備に関わる構成機器に取り付けられ、振動により電力を得る振動発電手段と、
前記振動発電手段の固有振動周波数を、前記構成機器の振動の周波数の領域に調整する周波数調整手段とを備え、
前記周波数調整手段は、
前記振動発電手段の固有振動周波数を、前記構成機器が設置される地域の電源の商用周波数の第2高調波を含む領域、もしくは、商用周波数の第2高調波の高調波を含む領域であり、
前記周波数調整手段は、前記振動発電手段の固有振動周波数を、最大の発電能力の振動加速度の4分の1、もしくは、2分の1の値が得られる周波数の範囲の幅を許容する領域に設定し、
前記発電設備は、前記構成機器の状態監視・計測を行い、前記構成機器の状態監視・計測の結果情報を通信により送受信し、IoT(Internet of Things)技術による、構成機器のメンテナンスの計画、実行を行うためのセンサー、送受信手段を有し、
前記振動発電手段で得られた電力が、これら、センサー、送受信手段の電源として供給される
ことを特徴とする電力供給設備。
【請求項2】
請求項1に記載の電力供給設備において、
前記周波数調整手段で調整される、商用周波数の第2高調波を含む領域、もしくは、商用周波数の第2高調波の高調波を含む領域は、商用周波数の第2高調波、もしくは、その高調波である
ことを特徴とする電力供給設備。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の電力供給設備において、
前記構成機器と前記振動発電手段との間に前記構成機器の振動を増幅する増幅手段を備えた
ことを特徴とする電力供給設備。
【請求項4】
請求項3に記載の電力供給設備において、
前記増幅手段は、
一端が前記構成機器に支持され、他端側に前記振動発電手段が取り付けられる梁部材である
ことを特徴とする電力供給設備。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電力供給設備において、
前記
発電設備は、水力発電手段により交流電力を得る
水力発電所であり、
前記構成機器は、前記
水力発電所の交流発電機、もしくは、発電電動機である
ことを特徴とする電力供給設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発電手段を備えた電力供給設備に関する。
【背景技術】
【0002】
電力を供給するための設備(電力供給設備)としての発電設備、例えば、水力発電設備では、発電用水により水車を回転させ、水車の回転により発電機(交流発電機)が駆動されて発電が行なわれる。交流発電機の駆動に伴い、励磁による電磁力に起因した電機子(固定子)等の揺れで交流発電機には振動が発生している。
【0003】
また、電力を供給するための設備としての変電所では、変圧器により交流電力が変圧されている。変圧に伴い変圧器の筐体には、励磁による電磁力の引っ張り力の繰り返しによる振動が発生している。
【0004】
このように、電力を供給するための設備には、振動によるエネルギーが未利用のエネルギーとして存在しているのが現状である。例えば、特許文献1で開示された振動発電装置を用いて、電力を供給するための設備での振動によるエネルギーを電力に変換することが考えられる。電力を供給するための設備での振動によるエネルギーを電力に変換することができれば、未利用のエネルギーを有効に利用することが可能になる。
【0005】
しかし、振動発電装置には固有振動周波数が存在しているので、電力を供給するための設備の振動の周波数によっては、十分な発電能力(振動加速度)が得られないことになり、既存の振動発電装置を適用することは現実的とはいえない状況であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、電力を供給するための発電設備の構成機器の振動の周波数に振動発電手段の固有振動周波数を合わせることができる電力供給設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本願発明の電力供給設備は、電力を供給するための発電設備に関わる構成機器に取り付けられ、振動により電力を得る振動発電手段と、前記振動発電手段の固有振動周波数を、前記構成機器の振動の周波数の領域に調整する周波数調整手段とを備え、前記周波数調整手段は、前記振動発電手段の固有振動周波数を、前記構成機器が設置される地域の電源の商用周波数の第2高調波を含む領域、もしくは、商用周波数の第2高調波の高調波を含む領域であり、前記周波数調整手段は、前記振動発電手段の固有振動周波数を、最大の発電能力の振動加速度の4分の1、もしくは、2分の1の値が得られる周波数の範囲の幅を許容する領域に設定し、前記発電設備は、前記構成機器の状態監視・計測を行い、前記構成機器の状態監視・計測の結果情報を通信により送受信し、IoT(Internet of Things)技術による、構成機器のメンテナンスの計画、実行を行うためのセンサー、送受信手段を有し、前記振動発電手段で得られた電力が、これら、センサー、送受信手段の電源として供給されることを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明では、周波数調整手段により、電力を供給するための設備の構成機器の振動の周波数に振動発電手段の固有振動周波数を合わせることができる。これにより、構成機器の振動に対して振動発電手段の振動加速度が最大限に得られ、効率が良い発電が実施でき、付設機器等の電源を確保することが可能になる。例えば、設備で使用する機器でバッテリから電源をとっていた機器の電力を賄うことができる。
そして、設備の機器の振動(振動加速度のピーク)が商用周波数の第2高調波、及び、商用周波数の第2高調波の高調波で生じていることが知見として得られたことに基づいて、振動発電手段の固有周波数を商用周波数域の第2高調波の領域、及び、商用周波数の第2高調波の高調波の領域に調整している。これにより、電力供給設備における振動が小さな振動であっても効率よく適切に電力に変換することができる。
また、振動発電手段で得られた電力が、発電設備で供給される電力によらない電源が用いられる負荷手段の電源として供給される。負荷手段として、IoT技術による設備の状態監視・計測におけるセンシングの装置が適用される。
【0010】
現状の発電設備(電力を供給するための設備)では、IoT(Internet of Things)技術を活用したインフラの整備が考えられてきている。例えば、発電設備の状態監視・計測を行い、状態監視・計測の結果情報を通信により送受信し、結果情報を複数の部門で共有し、発電設備のメンテナンスの計画、実行等を行うことが考えられている。
【0011】
IoT技術を活用したインフラの整備において、発電設備の状態監視・計測におけるセンシングは、バッテリからの電源が用いられることになる。このため、バッテリ交換、メンテナンス等が必要になり、適用範囲が限られてしまっていた。
【0012】
請求項1に係る本願発明の技術を適用することで、例えば、IoT技術による発電設備の状態監視・計測におけるセンシング、通信のための電源を賄うことができ、バッテリ交換、メンテナンスの時間、労力を省略することができ、発電設備でのIoT技術の構築に大きく貢献することが可能になる。
【0013】
電力を供給するための設備における構成機器としては、交流発電機、発電電動機を適用することができる。周波数調整手段としては、振動発電手段の発電機能で周波数の調整を行う手段を適用することができる。例えば、振動子等に錘などを追加することができる。また、片持ち梁や両持ちの手すりや梁等で、梁の硬さや取り付け位置等を調整する手段を適用することができる。
【0014】
ところで、本願発明の発明者等は、電力供給設備としての発電所の建屋、発電機器の周囲の構造体、及び、電力供給設備としての変電所の変圧器の構造体には、励磁による電磁力に起因したモータ(回転子)等の揺れで振動が発生していることに着目し、振動は、地域の電源の商用周波数50Hz、もしくは、60Hzの第2高調波(100Hz、もしくは、120Hz)、及び、その高調波で生じている知見を得るに至った。
【0015】
即ち、電源の商用周波数が50Hzの地域では、100Hz、200Hz、300Hz・・・で構造体等に振動が生じ、電源の商用周波数が60Hzの地域では、120Hz、240Hz、360Hz・・・で構造体等に振動が生じている知見を得るに至った。
【0018】
商用周波数の第2高調波の領域、商用周波数の第2高調波の高調波の領域として、一例として、最大の発電能力の指標値(振動加速度の最大値)の4分の1、もしくは、2分の1の値が得られる周波数の範囲の幅(例えば、最大の発電能力の振動加速度の4分の1の値における周波数の幅:最大値の周波数±2Hzの幅、即ち、4Hzの範囲)を許容する領域に特定することができる。
【0019】
また、請求項2に係る本発明の電力供給設備は、請求項1に記載の電力供給設備において、前記周波数調整手段で調整される、商用周波数の第2高調波を含む領域、もしくは、商用周波数の第2高調波の高調波を含む領域は、商用周波数の第2高調波、もしくは、その高調波であることを特徴とする。
【0020】
請求項2に係る本発明では、振動発電手段の固有周波数を商用周波数の第2高調波、もしくは、その高調波に調整する。
【0023】
また、請求項3に係る本発明の電力供給設備は、請求項1もしくは請求項2に記載の電力供給設備において、前記構成機器と前記振動発電手段との間に前記構成機器の振動を増幅する増幅手段を備えたことを特徴とする。
【0024】
請求項3に係る本発明では、増幅手段により振動が増幅され、小さな振動で十分な発電能力(振動加速度)を得ることができる。
【0025】
また、請求項4に係る本発明の電力供給設備は、請求項3に記載の電力供給設備において、前記増幅手段は、一端が前記構成機器に支持され、他端側に前記振動発電手段が取り付けられる梁部材であることを特徴とする。
【0026】
請求項4に係る本発明では、片持ち梁により振動を増幅することができる。また、梁の硬さを調整することで、振動発電手段固有振動周波数を調整することも合わせて行える(周波数調整手段)。
【0027】
増幅手段としては、片持ち梁のように、振動源から、てこの原理で振動を増幅させる機構を適用することが好ましい。てこの原理で振動を増幅させる機構としては、片持ち梁の他に、両持ちの梁、例えば、機器に付設された手すり等を適用することが可能である。
【0028】
また、請求項5に係る本発明の電力供給設備は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電力供給設備において、前記発電設備は、水力発電手段により交流電力を得る水力発電所であり、前記構成機器は、前記水力発電所の交流発電機、もしくは、発電電動機であることを特徴とする。
【0029】
請求項5に係る本発明では、発電所の発電機(交流発電機)、発電電動機の振動を用いて電力を得ることができる。発電所の発電機(交流発電機)、発電電動機は、励磁による電磁力に起因した電機子(固定子)等の揺れで振動が発生する。発電所の発電機(交流発電機)、発電電動機としては、例えば、水力発電所の交流発電機や、揚水発電所の揚水発電用の電動機/発電機を適用することができる。
【0030】
また、電力供給設備の設備として変電所に適用し、構成機器として、交流電力を変圧する変圧器、もしくは、進相電流を補償する分路リアクトルに適用することができる。
【0031】
これにより、励磁による電磁力の引っ張り力の繰り返しにより振動が発生する変電所の変圧器、もしくは、分路リアクトルの振動を用いて電力を得ることができる。
【0032】
また、振動発電機として、与えられた振動により電力を得る振動発電手段と、振動発電手段の固有振動周波数を、与えられた振動の周波数の領域に調整する周波数調整手段とを有することができる。
【0033】
このため、振動発電手段(振動発電素子)と周波数調整手段から振動発電機が構成される。周波数調整手段は、予め振動発電素子自体の調整によるものを適用することができる。また、梁等別部材で構成されるものを適用することができる。
【0034】
これにより、電力を供給するための設備、例えば、発電所、変電所の機器の振動周波数に固有振動周波数を合致させた振動発電機となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の電力供給設備は、電力を供給するための設備の構成機器の振動の周波数に振動発電手段の固有振動周波数を合わせることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施例に係る振動発電機を備えた電力供給設備の全体の説明図である。
【
図3】水力発電機の振動状況を説明するグラフである。
【
図4】水力発電機の振動状況を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に示す電力供給設備は、電力を供給するための発電設備である水力発電設備の水力発電機、及び、変電所の変圧器に取り付けられ、振動により電力を得る振動発電手段を備えている。そして、振動発電手段の固有振動周波数を、水力発電機、及び、変圧器の振動の周波数領域(周波数)に調整する周波数調整手段を備えたものである。
【0038】
このため、周波数調整手段により、振動発電手段の固有振動周波数を水力発電設備の水力発電機、及び、変電所の変圧器の振動の周波数に合わせることができる。これにより、水力発電機、及び、変電所の変圧器の振動に対して、振動発電手段の振動加速度が最大限に得られ、効率が良い発電が実施でき、付設機器の電源を確保することが可能になる。例えば、水力発電設備や変電所で使用する機器でバッテリから電源をとっていた機器の電力を賄うことができる。
【0039】
例えば、現在、水力発電設備をはじめとした発電設備(電力を供給するための設備)では、IoT(Internet of Things)技術を活用したインフラの整備が考えられてきている。発電機や変圧器の状態監視・計測を行い、状態監視・計測の結果情報を通信により送受信し、結果情報を複数の部門で共有し、メンテナンスの計画、実行等を行うことが考えられている。
【0040】
IoT技術を活用したインフラの整備において、発電機や変圧器の状態監視・計測におけるセンシングは、バッテリからの電源が用いられることになる。このため、バッテリ交換、メンテナンス等が必要になり、適用範囲が限られてしまっていた。
【0041】
本願発明の技術を適用することで、例えば、IoT技術による設備の状態監視・計測におけるセンシング、通信のための電源を賄うことができ、バッテリ交換、メンテナンスの時間、労力を省略することができ、IoT技術の構築に大きく貢献することが可能になる。
【0042】
水力発電設備の発電機としては、交流発電機、発電電動機が適用される。周波数調整手段としては、振動発電手段の発電機能でチューニングを行う、例えば、錘などを追加することができる。また、片持ち梁や両持ちの手すりや梁等で、梁の硬さや取り付け位置等を調整する手段を適用することができる。
【0043】
本願発明の発明者等は、水力発電所の建屋、発電機の周囲の構造体、及び、変電所の変圧器の構造体(筐体)には、励磁による電磁力に起因した電機子(固定子)等の揺れで振動が発生していることに着目し、振動は、地域の電源の商用周波数50Hz、もしくは、60Hzの第2高調波(100Hz、もしくは、120Hz)、及び、その高調波で生じている知見を得るに至った。
【0044】
即ち、電源の商用周波数が50Hzの地域(東日本)では、100Hz、200Hz、300Hz・・・で構造体等に振動が生じ、電源の商用周波数が60Hzの地域(西日本)では、120Hz、240Hz、360Hz・・・で構造体等に振動が生じている知見を得るに至った。
【0045】
尚、電力供給設備としては、水力発電設備の他に、火力発電設備、原子力発電設備等、他の発電設備を適用することが可能である。
【0046】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を具体的に説明する。
【0047】
図1には本発明の一実施例に係る振動発電機を備えた水力発電設備、変電所を有する電力供給設備の全体の状況を示してある。
【0048】
図に示すように、水力発電設備1は、貯水池2からの発電用水が水圧管3を介して送られる水車4を備えている。水車4の回転により水力発電機5が駆動され発電が行われ、水車4を回転させた発電用水は河川6に放出される。発電された電力は送電線11を介して変電所12の変圧器13で変圧されて事業所等の需要地に送られる。また、電柱14の変圧器15を介して一般の需要地に送られる。
【0049】
図2から
図5に基づいて、第1実施例として、水力発電機5に振動発電機が備えられた例を説明する。
【0050】
図2には水力発電機の概略構成、
図3には東日本地域の水力発電機の振動状況を説明するグラフ、
図4には西日本地域の水力発電機の振動状況を説明するグラフを示してある。そして、
図5には水力発電設備に備えられた振動発電機の能力を説明するグラフを示してある。
【0051】
水力発電設備1は、水力発電機5により交流電力を得る発電所であり、交流発電機が適用される。尚、揚水発電設備の場合、揚水・発電用の電動機/発電機(発電電動機)が適用される。水力発電設備1の水力発電機5(交流発電機)や、揚水・発電用の発電電動機は、励磁による電磁力に起因した電機子(固定子)等の揺れで振動が発生する。
【0052】
図2に示すように、水力発電機5には、振動により電力を得る振動発電手段(振動発電素子)21が備えられている。振動発電手段21には、錘等、振動発電手段21の機構の調整により固有振動周波数が調整される周波数調整手段が備えられ、周波数調整手段により、振動発電手段21の固有振動周波数が、水力発電機5が設置される地域の電源の商用周波数を含む領域、もしくは、その高調波を含む領域に調整されている。
【0053】
例えば、
図3に示すように、東日本の地域(商用周波数が50Hzの地域)では、水力発電機5に対し、商用周波数の第2高調波(100Hz)、及び、その高調波である、200Hz、300Hz、400Hzの振動(振動加速度のピーク)が得られていることが確認されている。
【0054】
また、
図4に示すように、西日本の地域(商用周波数が60Hzの地域)では、水力発電機5に対し、商用周波数の第2高調波(120Hz)、及び、その高調波である、240Hz、360Hz、480Hzの振動(振動加速度のピーク)が得られていることが確認されている。
【0055】
このため、水力発電機5の振動(振動加速度のピーク)が商用周波数の第2高調波、及び、その高調波で生じていることが知見として得られたことに基づいて、周波数調整手段は、振動発電手段21の固有周波数を、商用周波数の第2高調波の領域(商用周波数の第2高調波)、もしくは、商用周波数の第2高調波の高調波の領域(高調波)に調整している。
【0056】
これにより、水力発電機5の振動が小さな振動であっても、振動発電手段21により振動を効率よく適切に電力に変換することができる。
【0057】
そして、
図2に示すように、水力発電機5の構造体には、増幅手段としての長尺の梁部材22の一端が取り付けられ、梁部材22の他端には振動発電手段21が取り付けられている。即ち、水力発電機5の構造体と振動発電手段21との間に、水力発電機5の振動を増幅する増幅手段が備えられている。梁部材22(片持梁)により振動が増幅され、小さな振動で十分な発電能力(振動加速度)を得ることができる。
【0058】
尚、梁部材22の硬さを調整することで、振動発電手段21の固有振動周波数を調整することも合わせて行え、周波数調整手段として機能させることが可能である。
【0059】
増幅手段としては、図示に示した片持ち梁のように、水力発電機5(振動源)から、てこの原理で振動を増幅させる機構を適用することが好ましい。てこの原理で振動を増幅させる機構としては、片持ち梁の他に、両持ちの梁、例えば、水力発電機5(振動源)に付設された手すり等を適用することが可能である。
【0060】
上述した実施例では、振動発電手段21の固有周波数を、周波数調整手段により、商用周波数の第2高調波の領域、もしくは、商用周波数の第2高調波の高調波の領域に調整している。商用周波数の第2高調波の領域、商用周波数の第2高調波の高調波の領域として、一例として、最大の発電能力の指標値(振動加速度)の4分の1、もしくは、2分の1の値が得られる周波数の範囲の幅(例えば、最大の発電能力の振動加速度の4分の1の値における周波数の幅:最大値の周波数±2Hzの幅、即ち、4Hzの範囲)を許容する領域に特定することができる。
【0061】
つまり、
図5に示すように、振動発電手段21の固有周波数を、周波数調整手段により、商用周波数の第2高調波(その高調波)に合わせることで、最大の発電能力の指標値(振動加速度P)が得られる。周波数調整手段で調整する振動発電手段21の固有周波数の範囲として、最大の発電能力の指標値(振動加速度P)の4分の1(P/4)の値が得られる周波数の範囲の幅H(例えば、振動加速度Pの周波数±2Hzの幅H、即ち、4Hzの範囲)を許容する領域として特定することができる。
【0062】
一方、水力発電設備1では、IoT(Internet of Things)技術を活用したインフラの整備の一環として、水力発電機5(構成機器)の状態監視・計測を行い、状態監視・計測の結果情報を通信により送受信し、結果情報を複数の部門で共有し、水力発電機5(構成機器)のメンテナンスの計画、実行等を行うことが行われている。
【0063】
このため、例えば、水力発電機5には状態監視・計測を行うセンサー25、状態監視・計測の結果情報を通信により送受信する送受信手段26が備えられている。これら、センサー25、送受信手段26は、水力発電設備1で供給される電力によらない電源が用いられる負荷手段とされている。振動発電手段21で得られた電力は、センサー25、送受信手段26の電源として使用される。
【0064】
このため、IoT技術による設備の状態監視・計測におけるセンサー25の電源、通信のための送受信手段26の電源を振動発電手段21で得られた電力で賄うことができ、バッテリなどの電源を用いる必要がなくなる。これにより、バッテリ交換、メンテナンスの時間、労力を省略することができ、IoT技術の構築に大きく貢献することが可能になる。
【0065】
上述したように、振動発電手段21、周波数調整手段、梁部材22を備えた振動発電設備(振動発電機)は、水力発電設備1の水力発電機5の振動の周波数に振動発電手段21の固有振動周波数を合わせることが可能になる。従って、水力発電機5の振動が小さな振動であっても振動発電手段21により効率よく適切に電力に変換することができる。そして、例えば、IoT技術のセンサー25や送受信手段26の電源を確保することができ、IoT技術の構築に大きく貢献することが可能になる。
【0066】
尚、水力発電設備1の振動を利用する機器としては、水力発電機5のケースに限定されない。例えば、水力発電機5の内部や、水力発電機5の外の手すり、水車4のケーシングの上部、下部、足場、水力発電機5の近傍の機器の筐体、配管等、水力発電機5に起因する振動が生じる機器に振動発電手段21を設置することができる。
【0067】
図6から
図8に基づいて、
参考例として、変圧器13に振動発電機が備えられた例を説明する。
【0068】
図6には変圧器の概略構成、
図7には東日本地域の変圧器の振動状況を説明するグラフ、
図8には西日本地域の変圧器の振動状況を説明するグラフを示してある。
【0069】
変電所12の変圧器13は、交流電力を需要地の希望に応じて変圧する機器であり、建屋の外に設置された、冷却油を冷却するためのラジエータ31が配管32を介して接続されている。変圧器13では、励磁による電磁力の引っ張り力の繰り返しにより振動が発生している。
図6に示すように、変圧器13とラジエータ31を接続する配管32には、振動により電力を得る振動発電手段(振動発電素子)24が取り付けられている。
【0070】
振動発電手段24には、錘等、振動発電手段24の機構の調整により固有振動周波数が調整される周波数調整手段が備えられ、周波数調整手段により、振動発電手段24の固有振動周波数が、変電所12が設置される地域の電源の商用周波数の第2高調波を含む領域、商用周波数の第2高調波の高調波を含む領域に調整されている。
【0071】
例えば、
図7に示すように、東日本の地域(商用周波数が50Hzの地域)では、変圧器13とラジエータ31を接続する配管32に対し、商用周波数の第2高調波と同じ周波数、及び、その高調波である、100Hz、200Hz、300Hz、400Hzの振動(振動加速度のピーク)が得られていることが確認されている。
【0072】
また、
図8に示すように、西日本の地域(商用周波数が60Hzの地域)では、変圧器13とラジエータ31を接続する配管32に対し、商用周波数の第2高調波と同じ周波数、及び、その高調波である、120Hz、240Hz、360Hz、480Hzの振動(振動加速度のピーク)が得られていることが確認されている。
【0073】
尚、振動発電手段24は、変電所12の建屋、変圧器13の筐体、その他、変電所12に関連する機器(例えば、進相電流を補償する分路リアクトル)の構造物に取り付けることが可能である。
【0074】
そして、第1実施例に示した梁部材22(
図2参照)を介して振動発電手段24を変圧器13とラジエータ31を接続する配管32に取り付けることも可能である。梁部材22(
図2参照)を備えた場合、梁部材22の硬さを調整することで、振動発電手段24の固有振動周波数を調整することも合わせて行え、周波数調整手段として機能させることが可能である。
【0075】
変圧器13の振動(振動加速度のピーク)が商用周波数の第2高調波、及び、その高調波で生じていることが知見として得られたことに基づいて、周波数調整手段は、振動発電手段24の固有周波数を、商用周波数の第2高調波の領域(商用周波数の第2高調波)、もしくは、商用周波数の第2高調波の高調波の領域(高調波)に調整している。
【0076】
これにより、変圧器13の振動が小さな振動であっても振動発電手段24により効率よく適切に電力に変換することができる。
【0077】
上述した
参考例において、第1実施例と同様に、商用周波数の第2高調波の領域、及び、商用周波数の第2高調波の高調波の領域として、一例として、最大の発電能力の指標値(振動加速度)の4分の1、もしくは、2分の1の値が得られる周波数の範囲の幅を許容する領域に特定することができる。例えば、第1実施例の
図5に示したように、最大の発電能力の振動加速度Pの4分の1の値(P/4)における周波数の幅(最大値の周波数±2Hzの幅)である4Hzの範囲を許容する領域に特定することができる。
【0078】
そして、IoT(Internet of Things)技術を活用したインフラの整備の一環として、第1実施例と同様に、変電所12に、状態監視・計測を行うセンサー25(
図2参照:負荷手段)、状態監視・計測の結果情報を通信により送受信する送受信手段26(
図2参照:負荷手段)が備えられている場合、振動発電手段24で得られた電力がセンサー25(
図2参照:負荷手段)、送受信手段26(
図2参照:負荷手段)の電源として使用される。
【0079】
このため、IoT技術による設備の状態監視・計測におけるセンサー25の電源、通信のための送受信手段26の電源を、振動発電手段24で得られた電力で賄うことができ、バッテリなどの電源を用いる必要がなくなり、バッテリ交換、メンテナンスの時間、労力を省略することができ、設備のIoT技術の構築に大きく貢献することが可能になる。
【0080】
上述したように、振動発電手段24(梁部材22:
図2参照)、周波数調整手段を備えた振動発電機は、変電所12の変圧器13の振動の周波数に振動発電手段24の固有振動周波数を合わせることが可能になる。従って、変圧器13の振動が小さな振動であっても、振動発電手段24により効率よく適切に電力に変換することができる。そして、例えば、IoT技術のセンサー類や送受信手段の電源を確保することができ、変電所12のIoT技術の構築に大きく貢献することが可能になる。
【0081】
本発明の電力供給設備である、上述した水力発電設備1(変電所12)は、電力を供給するための設備の構成機器である水力発電機5(変圧器13)の振動の周波数(商用周波数の第2高調波、商用周波数の第2高調波の高調波)に、振動発電手段21(24)の固有振動周波数を合わせることができる。これにより、水力発電機5(変圧器13)の振動に対して振動発電手段21(24)の振動加速度が最大限に得られ、効率が良い発電を実施して、付設機器等(IoT技術のセンサー類、送受信手段)の電源を確保することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、振動発電手段を備えた電力供給設備の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 水力発電設備
2 貯水池
3 水圧管
4 水車
5 水力発電機
6 河川
11 送電線
12 変電所
13、15 変圧器
14 電柱
21、24 振動発電手段
22 梁部材
25 センサー
26 送受信手段
31 ラジエータ
32 配管