(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20220112BHJP
G01N 35/10 20060101ALI20220112BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20220112BHJP
C02F 1/32 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
G01N35/00 C
G01N35/10 K
A61L2/10
C02F1/32
(21)【出願番号】P 2019549914
(86)(22)【出願日】2018-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2018033364
(87)【国際公開番号】W WO2019082524
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2020-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2017206198
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(73)【特許権者】
【識別番号】501196013
【氏名又は名称】エフ・ホフマン・ラ・ロッシュ・アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN LA ROCHE AG
【住所又は居所原語表記】GRENZACHERSTRASSE 124, CH‐4070 BASEL, SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】薮谷 恒
(72)【発明者】
【氏名】石田 猛
(72)【発明者】
【氏名】山下 善寛
(72)【発明者】
【氏名】坂詰 卓
(72)【発明者】
【氏名】ヴィントフール ミヒャエラ
(72)【発明者】
【氏名】ハウプトマン ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】フィンケ アンドレアス
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-163168(JP,A)
【文献】実開平02-042641(JP,U)
【文献】特開2017-087153(JP,A)
【文献】実開平06-012773(JP,U)
【文献】特開2008-224122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-35/10
A61L 2/00- 2/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬及び検体が収容された反応容器内の上記検体を分析する分析部と、
分析に使用する液体を収納する液体収納容器と、
上記液体収納容器の液体に紫外線を照射する紫外線照射部と、
上記紫外線照射部に電力を供給する電源と、
上記液体収納容器及び上記紫外線照射部を収納する液体収納容器格納室と、
上記液体収納容器格納室の格納扉が閉のときは上記電源と上記紫外線照射部との接続を閉とし、格納扉が開のときは上記電源と上記紫外線照射部との接続を開とし、上記紫外線照射部への電力供給を停止する第1の電力開閉器と、
上記紫外線照射部が、上記液体収納容
器に挿入された状態では、上記電源と上記紫外線照射部との接続を閉とし、上記紫外線照射部が、上記液体収納容
器内から取り出された状態では、上記電源と上記紫外線照射部との接続を開とし、上記紫外線照射部への電力供給を停止する第2の電力開閉器と、
上記紫外線照射部が上記液体収納容器格納室に配置された状態で、上記紫外線照射部の紫外線発生部が、上記液体収納容器に収納された液体の液面より下方に位置する状態では、上記電源と上記紫外線照射部との接続を閉とし、上記液体収納容器に収納された液体の液面より上方に位置する状態では、上記電源と上記紫外線照射部との接続を開とし、上記電源から紫外線照射部に供給される電力を遮断する第3の電力開閉器と、
を備え、
上記第2の電力開閉器は、上記第1の電力開閉器と直列に接続され、
上記第3の電力開閉器は、上記第2の電力開閉器及び上記第1の電力開閉器と直列に接続され、上記液体
収納容器に収納された液体の重量に応じて開閉する重量スイッチであることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分析装置において、
上記第1の電力開閉器、上記第2の電力開閉器及び上記第3の電力開閉器と配列に接続され、上記第1の電力開閉器、上記第2の電力開閉器、及び上記第3の電力開閉器が全て開であっても、上記紫外線照射部に電力を供給可能な第4の電力開閉器を備えることを特徴とする分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の分析装置において、
上記液体収納容器格納室の内壁は、紫外線に感応して変色する材料が塗布されていることを特徴とする分析装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の分析装置において、
上記紫外線照射部が、紫外線を発生しているか否かを示す表示部を備えることを特徴とする分析装置。
【請求項5】
請求項4に記載の分析装置において、
上記表示部は、分析装置の筐体側面及び上記分析部に配置されていることを特徴とする分析装置。
【請求項6】
請求項1、2、3、4、5のうちのいずれか一項に記載の分析装置において、
上記液体は試薬であり、上記液体収納容器は試薬収納容器であることを特徴とする分析装置。
【請求項7】
請求項6項に記載の分析装置において、
上記紫外線照射部の紫外線発生方向は、上記格納扉に向かう方向とは、逆方向であることを特徴とする分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬を用いて検体を分析する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分析装置の中には分析結果の導出のために、分析対象の試料に試薬を添加する装置がある。試料との反応を発生させる反応試薬だけでなく、希釈液や洗剤、緩衝液、あるいは分析対象と反応試薬との界面を活性化する界面活性剤も広義の試薬である。
【0003】
従ってこれら試薬を収納する試薬容器を分析装置内部、あるいは装置外部近傍に保持する必要がある。
【0004】
分析結果は添加する試薬の含有成分に依存するので、添加する試薬の含有成分が経時に伴い変質すると、分析結果の再現性が低下する。経時変化の原因は試薬温度変化、周囲湿度の変化、あるいは試薬収納容器内部へ進入した微生物の活動に伴う試薬含有成分の分解・変質などが挙げられる。
【0005】
このため、試薬容器内の試薬の経時変化を回避するか、あるいは経時変化を遅延させる対策をとる。具体的には予め定められた温度・湿度範囲内で試薬を管理したり、試薬への微生物の進入を遮断したりすることで、経時変化を緩和する方法がある。微生物が試薬に進入した場合に備えて、進入した微生物の増殖を不能にしたり、微生物の代謝を抑止したりするための実装は、試薬に対する微生物の進入を完全に防止する実装と比較して費用対効果の点で有利な場合がある。
【0006】
特許文献1には、分析装置に関するものでは無いが、特に容器内の収納物の殺菌手段として、多くの工程が不要で、かつ廃水処理が不要である容器殺菌方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2も、分析装置に関するものでは無いが、加熱殺菌が不要で容器内の食品の風味を損なわずに殺菌を行う食品容器の殺菌方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載された技術は、紫外線フラッシュランプを殺菌対象容器の内側に挿入されたことをセンサで検知した後に、紫外線フラッシュランプから光パルスを容器内側面に照射させるように制御する制御装置を備えた構成を有している。
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、センサや制御装置の故障時に、紫外線フラッシュランプが殺菌対象容器の内側に挿入されていない状態でも紫外線フラッシュランプから光パルスが照射される懸念がある。
【0012】
また、特許文献2に記載された技術では紫外線レーザを導引するために光ファイバを使用している。そして、殺菌対象容器に対して光ファイバを挿抜するために昇降手段を利用している。この昇降手段には昇降位置を検出する位置センサが設けられており、制御手段を用いて昇降手段に取り付けた光ファイバ先端部の上下方向の位置に応じて紫外線レーザの発振のON/OFFを行っている。
【0013】
特許文献2に記載の技術において、光ファイバ先端部が殺菌対象容器の外にあっても、制御手段や昇降手段が故障した場合、紫外線レーザが照射される懸念がある。
【0014】
分析装置について、試薬内の微生物の増殖を抑制する処理を行う場合、全体的に保冷する保冷装置を設置することも考えられるが、分析装置として高価格となってしまうので望ましいものではない。
【0015】
よって、分析装置においても、紫外線を利用した微生物の増殖を抑制する処理を適用することが好ましいが、紫外線の利用を分析装置に適用する場合には、操作者等に対して紫外線照射を防止し、安全性をより向上することが望ましい。
【0016】
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載の技術を分析装置に適用しようとすると、特許文献1及び特許文献2に記載の技術においては制御装置により発光制御を行っているため構成が複雑で高価であるため、分析装置の大幅な価格上昇を伴うこととなる。したがって、価格の大幅な上昇を伴うことなく、安全対策を向上化することは困難であった。
【0017】
本発明の目的は、分析装置において、紫外線を利用した微生物の不活性化処理を、簡単で安価な構成を用いて、安全性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明は次のように構成される。
【0019】
分析装置において、試薬及び検体が収容された反応容器内の上記検体を分析する分析部と、分析に使用する液体を収納する液体収納容器と、上記液体収納容器の液体に紫外線を照射する紫外線照射部と、上記紫外線照射部に電力を供給する電源と、上記液体収納容器及び上記紫外線照射部を収納する液体収納容器格納室と、上記液体収納容器格納室の格納扉が閉のときは上記電源と上記紫外線照射部との接続を閉とし、格納扉が開のときは上記電源と上記紫外線照射部との接続を開とし、上記紫外線照射部への電力供給を停止する第1の電力開閉器と、上記紫外線照射部が、上記液体収納容器に挿入された状態では、上記電源と上記紫外線照射部との接続を閉とし、上記紫外線照射部が、上記液体収納容器内から取り出された状態では、上記電源と上記紫外線照射部との接続を開とし、上記紫外線照射部への電力供給を停止する第2の電力開閉器と、上記紫外線照射部が上記液体収納容器格納室に配置された状態で、上記紫外線照射部の紫外線発生部が、上記液体収納容器に収納された液体の液面より下方に位置する状態では、上記電源と上記紫外線照射部との接続を閉とし、上記液体収納容器に収納された液体の液面より上方に位置する状態では、上記電源と上記紫外線照射部との接続を開とし、上記電源から紫外線照射部に供給される電力を遮断する第3の電力開閉器と、を備え、上記第2の電力開閉器は、上記第1の電力開閉器と直列に接続され、上記第3の電力開閉器は、上記第2の電力開閉器及び上記第1の電力開閉器と直列に接続され、上記液体収納容器に収納された液体の重量に応じて開閉する重量スイッチである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、紫外線を利用した微生物の不活性化処理を、簡単で安価な構成を用いて、安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】分析装置内部と外部とを分割する試薬格納扉が開状態であることを示す図。
【
図4】保持台に設置した共用試薬収納容器に対し、紫外線照射部と試薬吸引ノズルとが抜き出された状態を示す図。
【
図5】共用試薬収納容器内の試薬の量が低減し、紫外LEDが試薬液面より上方に位置した状態を示す図。
【
図7】試薬収納室内壁に紫外線に感光して変色する材料を塗布した状態の説明図。
【
図8A】分析装置における制御部の表示部に紫外線の照射中であるか否かを表示する例を示す図。
【
図8B】分析装置の筐体側面に表示部を備えた例の概略斜視図。
【
図8C】紫外線の照射中であるか否かの表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態について添付図面を参照して説明する。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
まず、実施例1が適用される分析装置の概略について説明する。
【0024】
ここでいう分析とは臨床化学分析を指す。すなわち、採血した血液を、遠心分離により血清と血餅に分離し、得られた血清と各種試薬とを混合する。さらに、混合した結果、発生する化学反応の電気的信号変換値を時系列変化をとして取得し、血清の成分濃度を求めることである。これらの作業の一部または全部を自動化したものを自動分析装置あるいは単に分析装置と呼ぶ。
【0025】
図1は、分析装置100の概略構成を示す斜視図である。
【0026】
図1において、分析装置100は、検体搬送機構101、反応試薬保管部102、反応容器104が配置される反応槽103、反応試薬分注機構105、検体分注機構106、共用試薬分注機構107、共用試薬収納容器110、シリンジ108、及び制御部109を備えている。
【0027】
検体搬送機構101は分析対象となる検体を検体分注機構106の稼働範囲まで搬送する。反応試薬保管部102は分析に必要な各種反応試薬を保管する。反応槽103は、検体と反応試薬とを反応させる複数の反応容器104を備えている。
【0028】
反応試薬分注機構105は反応試薬保管部102に保管された試薬を反応槽103へ吸引・吐出する。検体分注機構106は検体搬送機構101により搬送された検体を反応槽103に備えた反応容器104に吸引・吐出する。
【0029】
共用試薬分注機構107は、共用試薬収納容器110に収納された共用試薬を吸引し、反応容器107に吐出する。
【0030】
制御部109は分析装置各構成部品の動作を制御する。また、検体を分析し、分析結果を記憶する機能と、分析結果を表示する機能を有する。制御部109は分析部と定義することができる。
【0031】
以上のような構成の分析装置100において、実施例1による紫外線照射部は共用試薬収納容器110内にある試薬中の微生物の増殖を抑制する場合の例である。
【0032】
なお、
図1で共用試薬収納容器110は、分析装置100筺体内部に配置しているが、これは筺体外部に配置されていてもよい。共用試薬収納容器110は、分析装置100の分析動作に対して規定量を継続的に供給可能なことが必要である。
【0033】
図1に示した共用試薬収納容器110内の細菌に対する不活性化の実施例1について、
図2を用いて説明する。以下、共用試薬を単に試薬と呼ぶ。
【0034】
図2は、実施例1による紫外線照射部の概略構成図である。
【0035】
図2において、共用試薬収納容器110は、試薬収納容器開口部201を有し、この開口部201から紫外線照射部202と試薬吸引ノズル203とが共用試薬収納容器110の内部に挿入されている。試薬吸引ノズル203から吸出された試薬は分析反応で使用するために、共用試薬用試薬分注機構107(
図1)へ送液される。
【0036】
紫外線照射部202は、共用試薬収納容器110の底面近傍に紫外領域の波長を照射する紫外LED204を備え、通常配線205により電源206と接続されている。また、紫外LED204と通常配線205とが、試薬に対して接触しないように紫外線照射部202は格納筒216内に格納されている。格納筒216は石英ガラスのような、紫外線を透過し、かつ紫外線により分解されない材質が好適である。
【0037】
一方、紫外LED204と通常配線205とが試薬に対して接触せず、紫外線を透過し、かつ紫外線により分解しない材質であれば、石英ガラスより強度が高い樹脂でも良い。石英ガラスより高強度の樹脂材質を使用することにより、分析装置100の使用者が共用試薬収納容器110を操作する際に紫外線照射部202を損傷する懸念を低減することができる。
【0038】
紫外LED204は波長200nm~300nmの紫外線を照射する。この波長は対象となる細菌が有する遺伝子(DNAあるいはRNA)を破損する。本波長領域の紫外線は細菌が有する遺伝子の代謝を停止する。この結果、微生物の増殖を抑制する。標的とする微生物の増殖抑制に対して有効で、かつ試薬の含有物を変質させない波長を選択的に放射する構成が望ましい。
【0039】
具体的には、紫外LED204そのものをどのようなものに選択するかにより照射波長を選択したり、紫外LED204に対して特定波長を透過・遮断するフィルタ(
図2には示していない)を使用したりすることにより適切に対応可能となる。
【0040】
ここで、紫外LED204の紫外線発生方向は試薬格納扉210に向かう方向とは逆方向215に指向するように配置されている。これは、分析装置100の使用者は、試薬格納扉210を開として、共用試薬収納容器110に接近するが、この使用者の接近方向とは逆方向に紫外線照射方向を限定することで使用者が紫外線に対し露光することを回避している。
【0041】
電源206が供給する紫外LED204が紫外線を照射するために必要な電流は、通常配線205を介して紫外LED204に供給する。通常配線205は電流開閉器207、208、209および電源206を接続する線を含む。
【0042】
第1の電力開閉器207は、試薬格納扉210の開閉に伴い動作し、電力の供給、および遮断を行う。すなわち、試薬格納扉210が閉状態のときは紫外LED204に対して電力を供給し、開状態のときは電力を遮断する。ここで、試薬格納扉210は、粉塵が分析装置100内部に侵入することを防止するとともに、使用者による分析装置100内の稼動部に対する接触回避も目的としている。
【0043】
上記粉塵浸入防止及び接触回避の目的に加え、試薬格納扉210は紫外LEDが照射する紫外線に対して分析装置100の使用者が曝露されないような遮蔽の役割もする。分析装置筐体外部211の温度に対して、分析装置筐体内部212の温度を一定に保温する必要があるとき、試薬格納扉210は温度絶縁手段として用いてもよい。
【0044】
試薬収納容器110と、紫外線照射部202と、保持台213と、第1の電力開閉器207と、第2の電力開閉器208と、第3の電力開閉器209とは、試薬格納室220に内部に配置されている。試薬格納室220は、試薬格納扉210により、開放及び閉鎖が行われる構成となっている。
【0045】
第1の電力開閉器207について
図3を参照して説明を行う。なお、
図3においては、第2の開閉器208は簡略化して示している。
【0046】
図3は、分析装置内部211と外部212とを分割する試薬格納扉210が開状態であることを示す図である。
図3において、第1の電力開閉器207は試薬格納扉210が閉状態であれば閉状態となり、紫外線照射部202に対して電力供給を行い、試薬格納扉210が閉状態であれば、開状態となり、電力を遮断し、紫外線照射部202が紫外線照射しないよう実装されている。従って、試薬格納扉210が開状態であれば開閉器207は電力を供給しない。
【0047】
このように構成することで共用試薬収納容器110内の細菌を不活性化するために紫外LED204に対して電力供給し紫外線照射中であっても、分析装置100の使用者が共用試薬収納容器110の交換等のために試薬格納扉210を開けると、直ちに電力供給が停止される。これにより、紫外LED204による紫外線照射は停止し、使用者が紫外線により露光されることを回避できる。
【0048】
第2の電力開閉器208は、共用試薬収納容器110に対する紫外線照射部202の挿抜に伴い電力の供給、および遮断を行う。すなわち、紫外線照射部202が共用試薬収納容器110に対して挿入状態のときは紫外LED204に対して電力を供給し、紫外線照射部202が共用試薬収納容器110から取り出された状態のときは電力を遮断する。紫外線照射部202は、試薬吸引ノズル203に固定されており、試薬吸引ノズル203を共用試薬収納容器110から取り出すときに、第2の電力開閉器208が開状態となる。
【0049】
第2の電力開閉器208を利用する目的は共用試薬収納容器110の内部以外に対し紫外線照射を行わないことである。紫外線の透過率は小さいことが知られている。収納容器として一般的なポリエチレンテレフタラート(PET)でも300nm以下の波長に対する透過率は5%未満である(Fabrication of concave gratings by curved surface UV-nanoimprint lithography, Yung-Pin Chen, et al., 2008 American Vacuum Society)。
【0050】
紫外線照射部202が、共用試薬収納容器110内に挿入されている状態であれば、共用試薬収納容器110を除く周囲の構成部品に対する紫外線照射を低減することができる。この第2の開閉器208を使用することにより、特許文献1において開示されている、紫外線照射対象である容器内に紫外線フラッシュランプが挿入されたことを検知するセンサが不要となる。
【0051】
次に、第2の電力開閉器208について
図4を参照して説明する。
【0052】
図4は、保持台213に設置した共用試薬収納容器110に対し、紫外線照射部202と試薬吸引ノズル203とが抜き出された状態を示す図である。
【0053】
図4において、共用試薬収納容器110は、第2の電力開閉器208を、開口部201に固定している。さらに、開口部201は開口部固定具214を使用して保持台213に固定されている。このような形態をとることで、紫外線照射部202と試薬吸引ノズル203とが共用試薬収納容器110から抜き出された際に、第2の電力開閉器208が閉状態から開状態となる。第2の電力開閉器208が開状態になることで紫外線照射部202が共用試薬収納容器110から取り出された状態では紫外線照射が行われない構造を実現することができる。
【0054】
紫外線照射部202を共用試薬収納容器110内に挿入し、共用試薬収納容器110内に配置された状態では第2の電力開閉器208が閉状態になる
分析装置100の使用者が試薬格納扉210を開状態にして、分析を行うために共用試薬収納容器110から、この共用試薬収納容器110の外部へ送液した結果、共用試薬収納容器110が空になる。このため、共用試薬収納容器110を、試薬が満たされた試薬収納容器と交換する際に、試薬吸引ノズル203を共用試薬収納容器110から取り出す場合には、
図4に示すような状態となる。
【0055】
図4に示す状態において、第1の電力開閉器207が故障して紫外LED204が紫外線照射を継続している場合には、共用試薬収納容器110の交換者が紫外線に対し露光される懸念がある。
【0056】
第2の電力開閉器208は、この懸念を払拭する役割を持つ。つまり、第1の電力開閉器207が万一、故障したとしても、試薬吸引ノズル203を共用試薬収納容器110から取り出すときには、第2の電力開閉器208が開状態となり、紫外LED204への電力供給を遮断し、操作者の安全を確保することができる。
【0057】
加えて、特許文献2において開示されている昇降手段に設けられた位置センサが不要となる。位置センサが不要であるので、構成が簡易で安価であり、故障する頻度の低減も期待できるという効果がある。
【0058】
次に、第3の電力開閉器209について説明する。
【0059】
第3の電力開閉器209は、共用試薬収納容器110内の試薬液量に従って、紫外LED204への電力の供給、および遮断を行う。すなわち、共用試薬収納容器110の底面近傍に設置した紫外LED(紫外線発生部)204が、共用試薬収納容器110内の試薬の、紫外線を照射すべき液面より下方に位置する液量の状態では、紫外LED204に対して電力を供給する。
【0060】
一方、分析を行うために共用試薬収納容器110外へ試薬を送液した結果、低下した試薬液面より、紫外LED204が上方に位置した状態のときは紫外LED204への電力を遮断する。これは、紫外線照射対象である共用試薬収納容器110内の試薬への照射を効果的に実行する目的がある。
【0061】
第3の電力開閉器209について
図5を参照して説明する。
図5は、共用試薬収納容器110内の試薬の量が低減し、紫外LED204が試薬液面より上方に位置した状態を示す図である。
【0062】
電力開閉器209の実装例としては重量スイッチが好例である。重量スイッチは共用試薬収納容器110の保持台213に組み込んでおり、規定の重量を超過した場合、紫外LED204への電力の供給を行う。なお、
図5は、第3の電力開閉器209が開となった状態を示しているが、電力開閉器209の開状態を概念的に示すものである。
【0063】
同一の比重を有する試薬は重量に対する体積が同一となる。したがって、同一の断面積を有する共用試薬収納容器110内に収納した試薬の比重及び体積が等しい試薬は、共用試薬収納容器110の底面からの高さが等しくなる。このことを利用して、共用試薬収納容器110内に収容した試薬が既定重量より大きいときは紫外LED204が共用試薬収納容器110内の液面より下に位置するとして第3の電力開閉器209が閉状態となる。
【0064】
一方、共用試薬収納容器110に収納した試薬が既定重量より小さいときは紫外LED204が共用試薬収納容器110内の液面より上に位置するとして第3の電力開閉器209が開状態となる。
【0065】
なお、共用試薬収納容器110に収納した試薬の液面検出は、共用試薬収納容器110内の試薬残量の静電容量を用いた静電量方式や、共用試薬収納容器110の側面からの撮像を行い、検知する方式でもよい。
【0066】
以上のように、実施例1によれば、共用試薬収納容器110内内にある試薬中の微生物の増殖を抑制するために共用試薬収納容器110内に紫外線を照射する紫外LED204と、この紫外LED204に電力を供給する電源206との間に、第1の電力開閉器207と、第2の電力開閉器208と、第3の電力開閉器209とが直列に接続されている。これら第1の電力開閉器207、第2の電力開閉器208および第3の電力開閉器209は、2つの接点と、これら2つの接点の接続及び分離を行う接続部とから構成され、簡単な構成となっている。
【0067】
第1の電力開閉器207は、試薬格納扉210が開となると開となり、第2の電力開閉器208は、紫外線照射部202の共用試薬収納容器110からの取り出し動作によって開となる。そして、第3の電力開閉器209は、共用試薬収納容器110内の試薬の量が一定値以下となったときに開となる。これにより、第1の電力開閉器207、第2の電力開閉器208、第3の電力開閉器209のいずれか一つでも、開となれば、紫外LED204への電力供給が遮断される。
【0068】
さらに、紫外LED204の照射方向が、操作者が接近する試薬格納扉210に向かう方向とは逆方向となるように、共用試薬収納容器110内に配置されている。
【0069】
したがって、実施例1によれば、簡単な構成で、安価であり、安全性を向上可能であり、紫外線を用いた微生物の増殖を抑制することができる分析装置を実現することができる。
【0070】
(実施例2)
次に、実施例2について説明する。
【0071】
実施例1における電力開閉器207、208および209は、分析装置100の通常使用において分析装置100の使用者の紫外線露光の可能性を低減する効果を有するが、一方で、紫外LED204の動作確認の作業が煩雑となる可能性がある。
【0072】
つまり、実施例1においては、紫外LED204の動作確認では、第1電力開閉器207、第2電力開閉器208および第3電力開閉器209が同時に閉状態となることが必要だからである。これは、試薬格納扉210が閉状態であり、紫外LED204が共用試薬収納容器110内へ挿入された状態であり、さらに共用試薬収納容器110内の紫外LED204が試薬液面より下に位置する程度の試薬液量が必要である。
【0073】
分析装置100の通常使用状態でも紫外線線量を測定可能な測定系を分析装置100へ搭載するのは、使用頻度に対して費用の観点から不利となる。
【0074】
そこで、あらかじめ紫外LED204の動作確認を目的として、第1の電力開閉器207、第2の電力開閉器208および第3の電力開閉器209が全て開状態でも、それらを迂回して、つまり、上記第1の電力開閉器207、上記第2の電力開閉器208及び上記第3の電力開閉器209とは並列に接続され、かつ、上記第1紫外線照射部202と直列に接続され、上記第1紫外線照射部202へ電力を供給するための例が実施例2である。
【0075】
図6は、実施例2の概略説明図である。分析装置100の構成、第1電力開閉器207、第2電力開閉器208および第3電力開閉器209の構成は実施例1と同様であるので、それらの詳細な説明は省略する。
【0076】
図6において、第1電力開閉器207、第2電力開閉器208および第3電力開閉器209は、全て開である状態をあらわしている。この状態で紫線LED204の動作確認を実行可能なように、配線601、配線602、配線603及び第4の電力開閉器600を備えている。つまり、配線601、配線602、配線603及び第4の電力開閉器600は、電源206および紫外LED204に接続され、第4の電力開閉器600を閉とすることにより、電源206から紫外LED204に電力を供給することができる構成となっている。
【0077】
これによって、第1乃至第3の電力開閉器207、208および209が開であっても、第4の電力開閉器600を閉状態とすることで、紫外LED204に対して電力を印加することができる。
【0078】
第4の電力開閉器600を閉状態とすると、試薬格納扉210が開状態の場合、共用試薬収納容器110や試薬格納扉210による紫外線の遮光を得ることができなくなる。このことにより、紫外LED204の動作確認者が紫外線に対して継続的に露光される懸念がある。これは、紫外線は可視光外であり作業者は紫外LED204から照射の有無を認識することが難しいからである。
【0079】
そこで、実施例2では、共用試薬収納容器110が収容される試薬収納室内壁700に紫外線に感光して変色する材料を塗布している。
【0080】
図7は、試薬収納室内壁700に紫外線に感光して変色する材料を塗布した状態の説明図である。紫外LED204そのものに感光材料を塗布してもよい。
【0081】
第4の電力開閉器600を分析装置筐体外部211に設置しておき、共用試薬収納容器110が試薬格納扉210外部に移動され、試薬格納扉210が開放され、第1乃至第3の電力開閉器207、208および209が開となり、かつ、作業者が、紫外LED204からの紫外線を照射されない位置で、第4の電力開閉器600を閉とする。その後、第4の電力開閉器600を開として、紫外LED204への電力供給を停止しても、紫外線に感光して変色する材料が、変色していれば、動作確認者は、紫外LED204からの照射を確認することができる。
【0082】
よって、動作確認者の紫外線の継続的な露光を回避することができる。
【0083】
また、実施例2においては、分析装置100は紫外LED204からの紫外線照射を実行中には、分析装置筐体内部212に紫外線を照射中であることを示す表示部を有する。紫外線の照射中であるか否かの検知は、例えば、通常配線205、配線601、602、又は603に電力が流れているか否かにより行うことができる。
【0084】
図8Aは、分析装置100における制御部109の表示部803に紫外線の照射中であるか否かを表示する例(分析部である制御部109に表示部が配置されている例)を示す図であり、
図8Bは、分析装置100の筐体側面に表示部800を備えた例の概略斜視図である。また、
図8Cは、紫外線の照射中であるか否かの表示例を示す図である。
【0085】
図8A及び
図8Bに示した例では、紫外線の照射中であることを表示部800または表示部803に、
図8Cの示すマーク(丸印)801で指示し、照射中でないことをマーク(横棒)802で指示している。
【0086】
上述のように、紫外線照射部202が紫外線の照射中であるか否かを表示することにより、作業者が容易にそれを確認することができる。
【0087】
なお、紫外線の照射中であるか否かの表示は、制御部109の表示部803または分析装置100の筐体側面の表示部800のいずれか一方に表示してもよいし、表示部800および803のいずれにも表示するように構成してもよい。
【0088】
分析装置100の本体と、制御部109とが互いに離れた位置に配置されている場合は、紫外線の照射中であるか否かを示す表示を両者に行うことにより、作業者は、照射状況を確実に確認することができる。
【0089】
また、
図8Cに示すような表示801および802のような記号ではなく、照射中あるいは照射中でない内容を示す文言を表示してもよい。または、表示灯のような表示を点灯、あるいは消灯する構成であってもよい。
【0090】
実施例2によれば、実施例1と同様な効果を得ることができる他、紫外線照射部202の動作確認を容易に安全に行うことができるという効果がある。
【0091】
なお、上述した例は、本発明を共用試薬収納容器110内にある試薬中の微生物の増殖抑制に適用した場合の例であるが、本発明は、分析装置100に使用される液体(希釈液、洗剤、緩衝液、界面活性剤等の分析装置に使用する液体)の紫外線による微生物の増殖抑制にも適用可能である。この場合、液体は、液体収納容器に収納された状態で紫外線が照射される構成となる。
【0092】
例えば、反応試薬分注機構105または共用試薬分注機構107の試薬分注プローブに接続された配管内のシステム水と試薬との界面における試薬及びシステム水の微生物の増殖抑制にも本発明は適用可能である。この場合、分析装置100を覆う上カバーを閉じたときに紫外LED204がオンとなり、開けたときにオフとなるスイッチ等が設置される。なお、配管も液体収納容器と定義することができる。
【0093】
また、上述した実施例1においては、第1の電力開閉器207、第2の電力開閉器208及び第3の電力開閉器209を備えているが、本発明は、試薬格納扉210の開閉に従って開閉する第1の電力開閉器207を少なくとも備えていればよい。
【0094】
本発明は、分析装置において、液体収納容器(試薬収納容器110、反応試薬分注機構105のプローブに接続される配管)と、紫外線照射部202と、紫外線照射部202に電力を供給する電源206と、液体収納容器及び紫外線照射部202を収納する液体収納容器格納室(試薬格納室220)と、液体収納容器格納室220の開閉を行い、紫外線を遮断する格納扉(試薬格納扉210、分析装置100を覆う上カバー)と、格納扉が閉のときは、電源206からの電力を紫外線照射部202に供給し、格納扉が開のときは、電源206からの電力の紫外線照射部202への供給を停止する第1電力開閉器と、を備えるように構成される。
【符号の説明】
【0095】
100・・・分析装置、101・・・検体搬送機構、102・・・反応試薬保管部、103・・・反応槽、104・・・反応容器、105・・・反応試薬分注機構、106・・・検体分注機構、107・・・共用試薬分注機構、108・・・シリンジ、109・・・制御部、110・・・共用試薬収納容器、201・・・試薬収納容器開口部、202・・・紫外線照射部、203・・・試薬吸引ノズル、204・・・紫外LED、205・・・通常配線、206・・・電源、207・・・第1の電力開閉器、208・・・第2の電力開閉器、209・・・第3の電力開閉器、210・・・試薬格納扉、211・・・分析装置筐体外部、212・・・分析装置筐体内部、213・・・保持台、214・・・開口部固定具、220・・・試薬格納室、600・・・第4の電力開閉器、601、602、603・・・配線、700・・・試薬収納室内壁、800、803・・・表示部、801・・・紫外線照射中であることの表示(マーク)、802・・・照射中でないことの表示(マーク)