(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】パーティクル除去装置および関連システム
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20220112BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20220112BHJP
B08B 6/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
H01L21/68 N
B08B6/00
(21)【出願番号】P 2019566585
(86)(22)【出願日】2018-03-05
(86)【国際出願番号】 EP2018055283
(87)【国際公開番号】W WO2018219509
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-03-04
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】ファン ダイフェンボーデ、ジェローン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ギルス、ペトルス、ヤコブス、マリア
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ウフェル、ペトルス、ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】バルティス、コーエン、ヒューベルトゥス、マテウス
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-120776(JP,A)
【文献】特開平11-297595(JP,A)
【文献】特開平08-071878(JP,A)
【文献】特開平09-260245(JP,A)
【文献】特開2011-040464(JP,A)
【文献】特開2002-124463(JP,A)
【文献】特開平02-298031(JP,A)
【文献】特開2006-013308(JP,A)
【文献】特開平08-167643(JP,A)
【文献】特表2016-509688(JP,A)
【文献】特開平11-330056(JP,A)
【文献】特開2008-211018(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0247935(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102485356(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
H01L 21/683
B08B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプからパーティクルを除去するための、前記クランプの近傍に配置可能な装置であって、
絶縁部と、
支持部と、を備え、前記絶縁部の少なくとも一部または全部が前記支持部に設けられ、前記支持部は、電圧が前記装置の前記支持部及び/または前記クランプの電極に印加されるとき前記支持部が前記クランプからのパーティクルの除去のために前記装置と前記クランプとの間に電界を発生可能とする電極として働くように構成され
、前記支持部は、複数の凹部を備え、前記絶縁部は、少なくとも2つの隣接する凹部の間に延在する、装置。
【請求項2】
前記装置は、前記装置の少なくとも一部分の形状が、前記装置と前記クランプとの間の距離を低減または最小化することができるように、前記クランプの一部分の形状と相補的となるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記複数の凹部の各凹部は、前記装置が前記クランプに向けて移動するとき、前記クランプの支持体
が前記複数の凹部の各凹部に少なくとも部分的に受け入れられることができるように成形されている、請求項
1または
2に記載の装置。
【請求項4】
前記絶縁部は、電圧が前記装置の前記支持部及び/または前記クランプの電極に印加されるとき不均一電界が前記装置と前記クランプとの間に生成されるように成形されまたは構成されている、請求項1から
3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記絶縁部は、電圧が前記装置の前記支持部及び/または前記クランプの電極に印加されるとき前記装置と前記クランプとの間に生成される電界の少なくとも一部が前記絶縁部での1つまたは複数の点で集中または増加されるように成形されまたは構成されている、請求項1から
4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
装置は、複数の絶縁部を備え、各絶縁部が前記支持部から延在または突出するように設けられている、請求項1から
5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記絶縁部または各絶縁部は、第1端から第2端へと先細となるように設けられ、前記絶縁部または各絶縁部の第1端が前記支持部に設けられ、前記第2端が使用時に前記クランプに向けられるように設けられている、請求項
6に記載の装置。
【請求項8】
前記絶縁部または各絶縁部の第2端は、尖状または鋭状の部分を備える、請求項
7に記載の装置。
【請求項9】
前記装置の横方向の延長または寸法は、前記クランプの横方向の延長または寸法に実質的に一致するように選択されている、請求項1から
8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記装置の横方向の延長または寸法は、前記クランプの予め定められた領域または空間からパーティクルが除去されまたは除去可能であるように選択されている、請求項1から
8のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、コントローラに接続されまたは接続可能であるように構成され、前記コントローラは、前記装置の前記支持部及び/または前記クランプの電極に電圧を印加するように構成されている、請求項1から
10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記支持部及び/または前記絶縁部は、連続面を定めるように設けられている、請求項1または請求項
4から
11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
電圧が前記装置の前記支持部及び/または前記クランプの電極に印加されるとき、前記電圧は、前記装置と前記クランプとの間の電界が前記クランプと前記クランプで使用される物体との間に生成される電界の方向とは反対の方向に延在するように選択されている、請求項1から
12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
クランプからパーティクルを除去するためのシステムであって、
請求項1から
13のいずれかに記載の装置と、
物体を保持するように構成されたクランプと、を備えるシステム。
【請求項15】
前記クランプは、リソグラフィ装置とともに使用されるように構成され、または、前記クランプは、リソグラフィ装置の一部でありまたはリソグラフィ装置に備えられている、請求項
14に記載のシステム。
【請求項16】
前記クランプは、静電クランプを備える、請求項
14または
15に記載のシステム。
【請求項17】
前記装置の前記支持部及び/または前記クランプの電極に電圧を印加するように構成されたコントローラをさらに備え、前記電圧は、前記装置と前記クランプとの間に生成される電界が前記クランプからのパーティクルの除去を生じさせるように前記クランプ上のパーティクルに働くように選択されている、請求項
14から
16のいずれかに記載のシステム。
【請求項18】
クランプからパーティクルを除去する方法であって、
クランプからパーティクルを除去するための装置を前記クランプの近傍に配置することを備え、前記装置は、絶縁部と、支持部と、を備え、前記絶縁部の少なくとも一部または全部が前記支持部に設けられ、前記支持部は、電圧が前記装置の前記支持部及び/または前記クランプの電極に印加されるとき前記支持部が前記クランプからのパーティクルの除去のために前記装置と前記クランプとの間に電界を発生可能とする電極として働くように構成され、
前記支持部は、複数の凹部を備え、前記絶縁部は、少なくとも2つの隣接する凹部の間に延在し、さらに、
前記クランプからのパーティクルの除去のために前記装置と前記クランプとの間に電界を発生させるように前記装置の前記支持部及び/または前記クランプの電極に電圧を印加することを備える、方法。
【請求項19】
前記電圧は、パーティクルが前記絶縁部の少なくとも一部または全部に付着するように選択されている、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
放射ビームを調整するように構成された照明システムと、
前記放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付けられた放射ビームを形成可能なパターニングデバイスを支持するように構築された支持構造と、
基板を保持するように構築された基板テーブルであって、前記基板を保持するためのクランプを備える基板テーブルと、
前記パターン付けられた放射ビームを前記基板に投影するように構成された投影システムと、
前記クランプからパーティクルを除去するための、請求項1から
13のいずれかに記載の装置と、を備えるリソグラフィ装置。
【請求項21】
放射ビームを調整するように構成された照明システムと、
前記放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付けられた放射ビームを形成可能なパターニングデバイスを支持するように構築された支持構造であって、前記パターニングデバイスを保持するためのクランプを備える支持構造と、
基板を保持するように構築された基板テーブルと、
前記パターン付けられた放射ビームを前記基板に投影するように構成された投影システムと、
前記クランプからパーティクルを除去するための、請求項1から
13のいずれかに記載の装置と、を備えるリソグラフィ装置。
【請求項22】
基板テーブルからパーティクルを除去するための、前記基板テーブルの近傍に配置可能な装置であって、
絶縁部と、
支持部と、を備え、前記絶縁部の少なくとも一部または全部が前記支持部に設けられ、前記支持部は、電圧が前記装置の前記支持部及び/または前記基板テーブルに印加されるとき前記支持部が前記基板テーブルからのパーティクルの除去のために前記装置と前記基板テーブルとの間に電界を発生可能とする電極として働くように構成され
、前記支持部は、複数の凹部を備え、前記絶縁部は、少なくとも2つの隣接する凹部の間に延在する、装置。
【請求項23】
前記装置は、前記基板テーブルのバールの上面からパーティクルを除去するように構成されている、請求項
22に記載の装置。
【請求項24】
前記支持部及び/または前記絶縁部は、連続面を定めるように設けられている、請求項
22または
23に記載の装置。
【請求項25】
前記絶縁部及び前記支持部は、前記バールの領域において突出部を有する、請求項
23に記載の装置。
【請求項26】
前記支持部は、導電プレートである、請求項
22から
25のいずれかに記載の装置。
【請求項27】
前記絶縁部は、ポリマー層である、請求項
22から
26のいずれかに記載の装置。
【請求項28】
前記装置は、コントローラに接続されまたは接続可能であるように構成され、前記コントローラは、前記装置の前記支持部及び/または前記基板テーブルに電圧を印加するように構成されている、請求項
22から
27のいずれかに記載の装置。
【請求項29】
基板テーブルからパーティクルを除去するためのシステムであって、
請求項
22から
28のいずれかに記載の装置と、
基板を保持するように構築された基板テーブルと、を備えるシステム。
【請求項30】
前記基板テーブルは、リソグラフィ装置とともに使用されるように構成され、または、前記基板テーブルは、リソグラフィ装置の一部でありまたはリソグラフィ装置に備えられている、請求項
29に記載のシステム。
【請求項31】
前記装置の前記支持部及び/または前記基板テーブルに電圧を印加するように構成されたコントローラをさらに備え、前記電圧は、前記装置と前記基板テーブルとの間に生成される電界が前記基板テーブルからのパーティクルの除去を生じさせるように前記基板テーブル上のパーティクルに働くように選択されている、請求項
29または
30に記載のシステム。
【請求項32】
基板テーブルからパーティクルを除去する方法であって、
基板テーブルからパーティクルを除去するための装置を前記基板テーブルの近傍に配置することを備え、前記装置は、絶縁部と、支持部と、を備え、前記絶縁部の少なくとも一部または全部が前記支持部に設けられ、前記支持部は、電圧が前記装置の前記支持部及び/または前記基板テーブルに印加されるとき前記支持部が前記基板テーブルからのパーティクルの除去のために前記装置と前記基板テーブルとの間に電界を発生可能とする電極として働くように構成され、
前記支持部は、複数の凹部を備え、前記絶縁部は、少なくとも2つの隣接する凹部の間に延在し、さらに、
前記基板テーブルからのパーティクルの除去のために前記装置と前記基板テーブルとの間に電界を発生させるように前記装置の前記支持部及び/または前記基板テーブルに電圧を印加することを備える、方法。
【請求項33】
前記電圧は、パーティクルが前記絶縁部の少なくとも一部または全部に付着するように選択されている、請求項
32に記載の方法。
【請求項34】
放射ビームを調整するように構成された照明システムと、
前記放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付けられた放射ビームを形成可能なパターニングデバイスを支持するように構築された支持構造と、
基板を保持するように構築された基板テーブルと、
前記パターン付けられた放射ビームを前記基板に投影するように構成された投影システムと、
前記基板テーブルからパーティクルを除去するための、請求項
22から
28のいずれかに記載の装置と、を備えるリソグラフィ装置。
【請求項35】
前記クランプ上のパーティクルは、前記クランプから除去される前に、予め帯電されている、請求項
18または
19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年6月1日に出願された欧州出願第17173872.7号、2017年7月24日に出願された欧州出願第17182807.2号の優先権を主張し、それらの全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、クランプからパーティクルを除去するための装置、関連するシステムおよび方法に関する。本発明は、たとえば、リソグラフィ装置のクランプからパーティクルを除去するための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は、基板に所望のパターンを与えるように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に使用可能である。リソグラフィ装置は、パターニングデバイス(たとえばマスク)から、基板に設けられた放射感応性材料(レジスト)層にパターンを例えば投影しうる。
【0004】
リソグラフィ装置によって基板にパターンを投影するために使用される放射の波長がその基板に形成可能なフィーチャの最小サイズを定める。4~20nmの範囲内の波長をもつ電磁放射であるEUV放射を使用するリソグラフィ装置は、(たとえば193nmの波長をもつ電磁放射を使用しうる)従来のリソグラフィ装置よりも小さいフィーチャを基板に形成するために使用されうる。
【0005】
静電クランプは、物体を物体サポートに(たとえば、マスクを支持構造に、または、基板を基板テーブルに)静電的にクランプ(または保持)するためにリソグラフィ装置において使用されうる。
【0006】
物体上に存在しうるパーティクルは、静電クランプの表面に移動しうる。そこではパーティクルによって静電クランプと物体との間にいわゆるスティッキング作用が生じうる。このスティッキング作用は、たとえば、リソグラフィ装置のオーバレイ制御に影響しうる。
【0007】
パーティクルは、手作業で、たとえば洗浄剤で静電クランプの表面を拭き取ることによって、静電クランプの表面から除去されうる。しかしながら、パーティクルの除去はリソグラフィ装置のダウンタイムに行われ、手作業のパーティクル除去には時間がかかるから、これはリソグラフィ装置の可用性に影響しうる。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様によると、クランプからパーティクルを除去するための、クランプの近傍に配置されまたは配置可能な装置であって、絶縁部と、支持部と、を備え、絶縁部の少なくとも一部または全部が支持部に設けられ、支持部は、電圧が装置の支持部及び/またはクランプの電極に印加されるとき支持部がクランプからのパーティクルの除去のために装置とクランプとの間に電界を発生可能とする電極として働くように構成されている、装置が提供される。
【0009】
クランプからパーティクルを除去することによって、クランプとクランプによって保持される物体との間のスティッキング作用が低減または防止されうる。たとえば、本装置がリソグラフィ装置とともに使用されまたはリソグラフィ装置に備えられている場合には、クランプからパーティクルを除去することによって、リソグラフィ装置のオーバレイ制御に改良がもたらされうる。また、本装置を使用することによって、手作業によるクランプからのパーティクル除去を避けられる。これにより、たとえばパーティクルをリソグラフィ装置のダウンタイムに除去する必要がなくなるから、リソグラフィ装置の可用性も向上される。それに加えて又はそれに代えて、本装置に絶縁部を設けることによって、クランプから除去されたパーティクルがクランプに戻ることが防止されうる。
【0010】
装置は、装置の少なくとも一部分の形状が、たとえば装置とクランプとの間の距離を低減または最小化することができるように、クランプの一部分の形状と相補的となるように構成されていてもよい。装置とクランプとの間の距離を低減することによって、電界の強さが増加されうる。これにより、クランプからのパーティクルの除去は、増加、向上、または促進されうる。
【0011】
支持部は、少なくとも1つの凹部または複数の凹部を備えてもよい。
【0012】
たとえば、支持部は、複数の凹部を備え、絶縁部は、少なくとも2つの隣接する凹部の間に延在してもよい。
【0013】
少なくとも1つの凹部、または複数の凹部の各凹部は、たとえば装置がクランプに向けて移動するとき、クランプの支持体が少なくとも1つの凹部に、または複数の凹部の各凹部に少なくとも部分的に受け入れられることができるように成形されていてもよい。
【0014】
絶縁部は、たとえば電圧が装置の支持部及び/またはクランプの電極に印加されるとき、不均一電界が装置とクランプとの間に生成されるように成形されまたは構成されていてもよい。不均一電界を装置とクランプとの間に生成することによって、たとえば非帯電粒子などのパーティクルを除去することができる。
【0015】
絶縁部は、たとえば電圧が装置の支持部及び/またはクランプの電極に印加されるとき、装置とクランプとの間に生成される電界の少なくとも一部が絶縁部での1つまたは複数の点で集中または増加されるように成形されまたは構成されていてもよい。
【0016】
装置は、複数の絶縁部を備えてもよい。各絶縁部が支持部から延在または突出するように設けられていてもよい。
【0017】
前記絶縁部または各絶縁部は、第1端から第2端へと先細となるように設けられてもよい。前記絶縁部または各絶縁部の第1端が支持部に設けられてもよい。第2端は、たとえば使用時に、第2端がクランプ(たとえばクランプの表面または上面)に向けられるように設けられてもよい。
【0018】
前記絶縁部または各絶縁部の第2端は、尖状または鋭状の部分を備えてもよい。
【0019】
装置の横方向の延長または寸法は、クランプの横方向の延長または寸法に実質的に一致する(たとえば実質的に一致する)ように選択されていてもよい。これにより、クランプ(たとえばクランプの表面または上面)のほぼ全体からパーティクルを除去することができる。
【0020】
装置の横方向の延長または寸法は、クランプ(たとえばクランプの表面)の予め定められた領域または空間からパーティクルが除去されまたは除去可能であるように選択されていてもよい。これにより、クランプ(たとえばクランプの表面または上面)から局所的にパーティクルを除去することができる。
【0021】
装置は、コントローラに接続されまたは接続可能であるように構成されてもよい。コントローラは、装置の支持部及び/またはクランプの電極に電圧を印加するように構成されてもよい。
【0022】
支持部及び/または絶縁部は、連続面を定めるように設けられてもよい。
【0023】
たとえば電圧が装置の支持部及び/またはクランプの電極に印加されるとき、電圧は、装置とクランプとの間の電界がクランプと例えば使用時におけるクランプ上の物体との間に生成される電界の方向とは反対の方向に延在するように選択されていてもよい。
【0024】
本発明の第2の態様によると、クランプからパーティクルを除去するためのシステムであって、第1の態様に係る装置と、物体を保持するように構成されたクランプと、を備えるシステムが提供される。
【0025】
クランプは、リソグラフィ装置とともに使用されるように構成されてもよく、または、クランプは、リソグラフィ装置の一部でありまたはリソグラフィ装置に備えられてもよい。
【0026】
クランプは、静電クランプであってもよく、または、静電クランプを備えてもよい。
【0027】
システムは、装置の支持部及び/またはクランプの電極に電圧を印加するように構成されたコントローラをさらに備えてもよい。電圧は、装置とクランプとの間に生成される電界が、たとえばクランプからのパーティクルの除去を生じさせるように、クランプ上のパーティクルに働くように選択されていてもよい。
【0028】
本発明の第3の態様によると、クランプからパーティクルを除去する方法であって、クランプからパーティクルを除去するための装置をクランプの近傍に配置することを備え、装置は、絶縁部と、支持部と、を備え、絶縁部の少なくとも一部または全部が支持部に設けられ、支持部は、電圧が装置の支持部及び/またはクランプの電極に印加されるとき支持部がクランプからのパーティクルの除去のために装置とクランプとの間に電界を発生可能とする電極として働くように構成され、さらに、クランプからのパーティクルの除去のために装置とクランプとの間に電界を発生させるように装置の支持部及び/またはクランプの電極に電圧を印加することを備える、方法が提供される。
【0029】
電圧は、パーティクルが絶縁部の少なくとも一部または全部に付着するように選択されていてもよい。
【0030】
第4の態様によると、放射ビームを調整するように構成された照明システムと、放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付けられた放射ビームを形成可能なパターニングデバイスを支持するように構築された支持構造と、基板を保持するように構築された基板テーブルであって、基板を保持するためのクランプを備える基板テーブルと、パターン付けられた放射ビームを基板に投影するように構成された投影システムと、クランプからパーティクルを除去するための、第1の態様に係る装置と、を備えるリソグラフィ装置が提供される。
【0031】
本発明の第5の態様によると、放射ビームを調整するように構成された照明システムと、放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付けられた放射ビームを形成可能なパターニングデバイスを支持するように構築された支持構造であって、パターニングデバイスを保持するためのクランプを備える支持構造と、基板を保持するように構築された基板テーブルと、パターン付けられた放射ビームを基板に投影するように構成された投影システムと、クランプからパーティクルを除去するための、第1の態様に係る装置と、を備えるリソグラフィ装置が提供される。
【0032】
本発明の第6の態様によると、基板テーブルからパーティクルを除去するための、基板テーブルの近傍に配置可能な装置であって、絶縁部と、支持部と、を備え、絶縁部の少なくとも一部または全部が支持部に設けられ、支持部は、電圧が装置の支持部及び/または基板テーブルに印加されるとき支持部が基板テーブルからのパーティクルの除去のために装置と基板テーブルとの間に電界を発生可能とする電極として働くように構成されている、装置が提供される。
【0033】
基板テーブルからパーティクルを除去することによって、汚染の蓄積が低減される。これにより、基板の縁部の歩留まり低下を避けるとともに、リソグラフィ装置の可用性を増加することができる。それに加えて又はそれに代えて、本装置に絶縁部を設けることによって、基板テーブルから除去されたパーティクルが基板テーブルに戻ることが防止されうる。
【0034】
装置は、基板テーブルのバールの上面からパーティクルを除去するように構成されていてもよい。
【0035】
支持部及び/または絶縁部は、連続面を定めるように設けられてもよい。
【0036】
絶縁部及び支持部は、バールの領域において突出部を有してもよい。
【0037】
支持部は、導電プレートであってもよい。
【0038】
絶縁部は、ポリマー層であってもよい。
【0039】
装置は、コントローラに接続されまたは接続可能であるように構成されてもよい。コントローラは、装置の支持部及び/または基板テーブルに電圧を印加するように構成されてもよい。
【0040】
本発明の第7の態様によると、基板テーブルからパーティクルを除去するためのシステムであって、第6の態様に係る装置と、基板を保持するように構築された基板テーブルと、を備えるシステムが提供される。
【0041】
基板テーブルは、リソグラフィ装置とともに使用されるように構成されてもよく、または、基板テーブルは、リソグラフィ装置の一部でありまたはリソグラフィ装置に備えられてもよい。
【0042】
システムは、装置の支持部及び/または前板テーブルに電圧を印加するように構成されたコントローラをさらに備えてもよい。電圧は、装置と基板テーブルとの間に生成される電界が基板テーブルからのパーティクルの除去を生じさせるように基板テーブル上のパーティクルに働くように選択されていてもよい。
【0043】
本発明の第8の態様によると、基板テーブルからパーティクルを除去する方法であって、基板テーブルからパーティクルを除去するための装置を基板テーブルの近傍に配置することを備え、装置は、絶縁部と、支持部と、を備え、絶縁部の少なくとも一部または全部が支持部に設けられ、支持部は、電圧が装置の支持部及び/または基板テーブルに印加されるとき支持部が基板テーブルからのパーティクルの除去のために装置と基板テーブルとの間に電界を発生可能とする電極として働くように構成され、さらに、基板テーブルからのパーティクルの除去のために装置と基板テーブルとの間に電界を発生させるように装置の支持部及び/または基板テーブルに電圧を印加することを備える、方法が提供される。
【0044】
電圧は、パーティクルが絶縁部の少なくとも一部または全部に付着するように選択されていてもよい。
【0045】
本発明の第9の態様によると、放射ビームを調整するように構成された照明システムと、放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付けられた放射ビームを形成可能なパターニングデバイスを支持するように構築された支持構造と、基板を保持するように構築された基板テーブルと、パターン付けられた放射ビームを基板に投影するように構成された投影システムと、基板テーブルからパーティクルを除去するための、第6の態様に係る装置と、を備えるリソグラフィ装置が提供される。
【0046】
上述または後述の本発明のさまざまな態様および特徴が本発明の他の態様および特徴と組み合わせうることは、当業者には直ちに明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明のある実施の形態に係るリソグラフィ装置を示す。
【
図2】本発明のある実施の形態に係り、クランプからパーティクルを除去するための装置を備えるシステムを概略的に示す。
【
図3A】
図2のシステムのクランプの誘電部上のパーティクルを概略的に示す。
【
図3B】
図2の装置とクランプの間に生成され、
図3Aのパーティクルに働く電界を概略的に示す。
【
図3C】
図2の装置とクランプの間に生成され、
図3Aのパーティクルに働く電界を概略的に示す。
【
図4A】本発明の他の実施の形態に係り、クランプからパーティクルを除去するための装置を備えるシステムを概略的に示す。
【
図4B】本発明の更なる他の実施の形態に係り、クランプからパーティクルを除去するための装置を備えるシステムを概略的に示す。
【
図5A】本発明のある実施の形態に係り、基板テーブルからパーティクルを除去するための装置を備えるシステムを概略的に示す。
【
図5B】本発明の他の実施の形態に係り、基板テーブルからパーティクルを除去するための装置を備えるシステムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本明細書ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に具体的に言及しているかもしれないが、本書に説明されたリソグラフィ装置は、集積光学システム、磁区メモリ用案内パターンおよび検出パターン、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造など他の用途を有してもよいものと理解されたい。当業者であればこうした代替用途の文脈において、本書における「ウェーハ」あるいは「ダイ」という用語がそれぞれ「基板」あるいは「目標部分」という、より一般的な用語と同義であるとみなされうると理解することができるであろう。本書に言及される基板は、露光前または露光後において例えばトラック(典型的にはレジスト層を基板に塗布し、露光後のレジストを現像する装置)、メトロロジツール、またはインスペクションツールにおいて処理されてもよい。適用可能であれば、本書の開示はこれらのまたは他の基板処理装置にも適用され得る。また、基板は例えば多層ICを製造するために複数回処理されてもよく、その場合には本書における基板という用語は処理済みの多数の層を既に含む基板をも意味しうる。
【0049】
本書に使用される「放射」および「ビーム」という用語は、紫外(UV)放射(例えば約365nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長を有する)及び極紫外(EUV)放射(例えば5から20nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆる種類の電磁放射、さらにはイオンビームまたは電子ビーム等の粒子ビームを包含する。
【0050】
本書で使用される「パターニングデバイス」という用語は、基板の目標部分にパターンを形成すべく放射ビームの断面にパターンを付与するために使用可能なデバイスを指し示すよう広く解釈されるべきである。放射ビームに与えられるパターンは、基板の目標部分に所望されるパターンと厳密に一致していなくてもよい。一般には、放射ビームに付与されるパターンは、目標部分に形成される集積回路などのデバイスにおける特定の機能層に対応する。
【0051】
パターニングデバイスは透過型であっても反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、マスクやプログラマブルミラーアレイがある。マスクはリソグラフィの分野では周知であり、バイナリマスクやレベンソン型位相シフトマスク、ハーフトーン型位相シフトマスク、更に各種のハイブリッド型マスクが含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例としては、小型のミラーがマトリックス状に配列され、各ミラーが入射してくる放射ビームを様々な方向に反射するように個別に傾斜可能であるというものがある。このようにして、反射されたビームにパターンが付与されることになる。
【0052】
支持構造は、パターニングデバイスを保持する。支持構造は、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計、および例えばパターニングデバイスが真空環境に保持されるか否か等その他の条件に応じた方式でパターニングデバイスを保持する。支持は、機械的、または真空、またはその他のクランプ技術、たとえば真空環境下での静電クランプを用いることができる。支持構造は、例えばフレームまたはテーブルであってもよく、これは必要に応じて固定されまたは移動可能であってもよく、パターニングデバイスが例えば投影システムに対して所望の位置にあることを保証してもよい。本書での「レチクル」または「マスク」との用語の使用はいずれも、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義であるとみなされうる。
【0053】
本書で使用される「投影システム」という用語は、屈折光学系、反射光学系、反射屈折光学系を含み、使用される露光放射に関して又は液浸流体の使用または真空の使用等の他の要因に関して適切とされる各種の投影システムを包含するよう広く解釈されるべきである。本書での「投影レンズ」との用語の使用はいずれも、より一般的な用語である「投影システム」と同義であるとみなされうる。「投影レンズ」の略記として本書では「レンズ」との用語が使用されうる。
【0054】
また、照明システムは、放射ビームの方向や形状の調整、または制御のために、屈折光学素子、反射光学素子、反射屈折光学素子を含む各種の光学素子を包含してもよく、これら構成要素は以下、総称として、または単独で、「レンズ」と称されてもよい。
【0055】
リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)又はそれより多くの基板テーブル(及び/または2以上の支持構造)を有する形式のものであってもよい。このような「多重ステージ」の装置においては、追加されたテーブルは並行して使用されるか、あるいは1以上のテーブルが露光のために使用されている間に1以上の他のテーブルで準備工程が実行されてもよい。
【0056】
また、リソグラフィ装置は、基板が例えば水などの比較的高い屈折率を有する液体で投影システムと基板との間の空間を満たすよう浸される形式のものであってもよい。液浸技術は投影システムの開口数を増大させるために本分野において周知である。
【0057】
図1は、本発明のある具体的な実施の形態に係るリソグラフィ装置を概略的に示す。本装置は、
- 放射ビームPB(たとえば紫外放射)を調整する照明システムILと、
- パターニングデバイスMA(例えばマスク)を支持し、パターニングデバイスを要素PLに対して正確に位置決めする第1位置決め装置PMに接続されている支持構造MT(例えばマスクテーブル)と、
- 基板W(例えば、レジストで被覆されたウェーハ)を保持するためにあり、基板を要素PLに対して正確に位置決めするための第2位置決め装置PWに接続されている基板テーブルWT(例えば基板テーブル)と、
- パターニングデバイスMAにより放射ビームPBに付与されたパターンを基板Wの(例えば1つ以上のダイを含む)目標部分Cに結像するように構成されている投影システムPL(例えば屈折投影レンズ)と、を備える。
【0058】
図示されるように、本装置は、(例えば透過型マスクを用いる)透過型である。これに代えて、本装置は、(例えば、反射型マスク、または上述の形式のプログラマブルミラーアレイを用いる)反射型であってもよい。
【0059】
照明システムILは放射源SOから放射ビームを受ける。放射源とリソグラフィ装置とは、例えば放射源がエキシマレーザである場合には、別体であってもよい。この場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を構成しているとはみなされなく、放射ビームは、適当な方向変更用のミラー及び/またはビームエキスパンダを例えば含むビーム搬送系BDを介して放射源SOから照明システムILへと受け渡される。放射源が例えば水銀ランプである等の他の場合には、放射源はリソグラフィ装置と一体の部分であってもよい。放射源SOと照明システムILとは、またビーム搬送系BDが必要とされる場合にはこれも合わせて、放射システムと総称されてもよい。
【0060】
照明システムILは、ビームの角強度分布を調整するための調整手段AMを備えてもよい。照明システムの瞳面における強度分布の外側及び/又は内側半径範囲(通常それぞれアウターおよびインナーと呼ばれる)を調整することができる。
【0061】
加えて照明システムILは、インテグレータINおよびコンデンサCO等その他の各種構成要素を一般に備える。照明システムは、ビーム断面における所望の均一性及び強度分布を有するよう調整された放射ビームPBを提供する。
【0062】
放射ビームPBは、支持構造MTに保持されるパターニングデバイスMA(例えばマスク)に入射する。パターニングデバイスMAを横切ったビームPBは投影システムPLを通過し、基板Wの目標部分Cに合焦される。第2位置決め装置PWと位置センサIF(例えば干渉計デバイス)により、例えばビームPBの経路に様々な目標部分Cを位置決めするように、基板テーブルWTを正確に移動させることができる。同様に、第1位置決め装置PMと他の位置センサ(
図1には明示せず)は、ビームPBの経路に対してパターニングデバイスMAを、例えばマスクライブラリからの機械的な取り出し後または走査中に、正確に位置決めするために使用することができる。一般に物体テーブルMT、WTの移動は、位置決め装置PM、PWの一部を構成するロングストロークモジュール(粗い位置決め)及びショートストロークモジュール(精確な位置決め)により実現されうる。パターニングデバイスMAと基板Wとは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いてアライメントされてもよい。代替的な構成(図示せず)においては、物体テーブルMT、WTの移動は、平面モータ及びエンコーダシステムによって制御されてもよい。
【0063】
図示される装置は、たとえばスキャンモードで使用されてもよい。このモードでは、ビームPBに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間、支持構造MT及び基板テーブルWTは同期して走査される(すなわち単一動的露光)。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPLの拡大(縮小)特性及び像反転特性により定められる。スキャンモードでは露光フィールドの最大サイズが単一動的露光での目標部分の(非走査方向の)幅を制限し、走査移動距離が目標部分の(走査方向の)長さを決定する。走査方向は、従来、リソグラフィ装置のy方向と称される。
【0064】
他の例においては図示される装置は、ステップモードで使用されてもよい。ステップモードにおいては、放射ビームに付与されたパターンの全体が1回で目標部分Cに投影される間、パターニングデバイス(例えばマスクテーブル)MT及び基板テーブルWTは実質的に静止状態とされる(すなわち単一静的露光)。そして基板テーブルWTがX方向及び/またはY方向に移動されて、異なる目標部分Cが露光されることができる。ステップモードでは露光フィールドの最大サイズが単一静的露光で結像される目標部分Cのサイズを制限する。
【0065】
更なる他のモードにおいては、支持構造MT(例えばマスクテーブル)がプログラマブルパターニングデバイスを保持して実質的に静止状態とされ、放射ビームに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間、基板テーブルWTが移動または走査される。このモードではパルス放射源が通常用いられ、プログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTの毎回の移動後、または走査中の連続放射パルス間に必要に応じて更新される。この動作モードは、上述の形式のプログラマブルミラーアレイ等のプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0066】
リソグラフィ装置は、物体を保持するために、たとえば静電クランプなどのクランプを備えてもよい。物体は、基板及び/またはマスクMAであり、またはこれを備えてもよい。静電クランプは、基板テーブルWT及び/または支持構造MTの一部であり、またはこれに備えられてもよい。
【0067】
図2は、本発明のある実施の形態に係り、クランプからパーティクルを除去するためのシステム2を示す。
図2に示される実施形態においては、クランプは、リソグラフィ装置の静電クランプ4の形式で設けられている。静電クランプ4は、誘電部6と、誘電部6によって取り囲まれている電極8と、を備える。誘電部6は、誘電性または絶縁性の材料を備えてもよく、及び/または、非導電でありまたは絶縁されているとみなされてもよい。静電クランプ4は、下部10を備える。下部10は、絶縁材料で形成されていてもよい。誘電部6及び電極8は、下部10に設けられていてもよい。静電クランプ4は、物体(たとえばマスクMA及び/または基板)支持するために複数の支持体12a、12bを備えてもよく、そのうち2つが
図2に示されている。他の実施形態においては、クランプは、2より多数または少数の支持体を備えてもよい。支持体12a、12bは、バール12a、12の形式で設けられてもよい。バール12a、12bは、誘電部6の上面6aに設けられてもよい。バール12a、12bは、導電コーティングまたは導電材料が設けられた誘電材料で形成されてもよい。バール12a、12bは、グランドに接続されていてもよい。バール12a、12bの上面は、物体を保持可能な平面14を定めてもよい。
【0068】
静電クランプ4の電極8は、静電クランプ4と物体との間に静電力を発生させる電圧に保持されるように構成されている。すなわち、物体は、電極8に電圧が印加されるとき静電クランプ力によって平面14に保持されうる。静電またはクーロンクランプ圧(単位あたりのクランプ力)は、以下の等式に従って、印加された電界の強さに関連づけられる。
【数1】
ここで、Pは、クランプされる物体に及ぼされるクーロンクランプ圧であり、ε
0は、真空の誘電率であり、Eは、クランプされる物体に作用する電界の強さである。例として、誘電体が誘電材料と真空ギャップを備える場合、電界と誘電率は、関与する材料及び/または媒体の組み合わせを反映する条件によって置換されうる。電界の強さEは、静電クランプ4の電極8に印加される電圧Vに概ね比例し、誘電材料及び/または媒体の比誘電率に比例し、誘電材料及び/または媒体の厚さ(たとえば誘電材料の厚さと真空ギャップの厚さの合計)に反比例するとみなされうる。
【0069】
本書に述べるシステムは、
図2に示される例示的な静電クランプを使用することには限定されず、他の静電クランプが使用されてもよい。たとえば、他の実施形態においては、静電クランプは、薄膜クランプの形式で設けられてもよい。薄膜クランプの誘電部は、たとえばポリマーなどの誘電材料で形成されてもよい。それに代えて又はそれとともに、他の実施形態においては、誘電部は、電極を取り囲むのではなく、電極に設けられてもよく、または、電極は、互いに空間をあけた1つ又は複数の部分を備えてもよい。
【0070】
図2は、システムとともに使用される、クランプからパーティクルを除去するための装置を示す。装置は、クリーニング装置16の形式で設けられてもよい。
図2に示されるクリーニング装置は、クリーニング基板とも称されうる。クリーニング装置16は、静電クランプ4からパーティクルを除去するのに適しうる。たとえば、電極8に印加される電圧によって、帯電したパーティクルが物体に引き寄せられてもよく、及び/または、物体に存在しうるパーティクルに電荷が誘起されてもよい。帯電したパーティクルは、静電クランプ4の電極8に印加される電圧が0Vに減少されたときであっても、静電クランプ4の誘電部6に残存しうる。
【0071】
静電クランプ4の誘電部6の上面6aに存在するパーティクルは、クランプ4と物体との間にいわゆるスティッキング作用を生じさせうる。パーティクルは、クランプ4の誘電部6の上面6aに残留電荷を生じさせ、これがスティッキング作用を生じさせうる。パーティクルは、静電クランプ4の誘電部の上面6aに位置するので、パーティクルの電荷を誘電部6から伝導により取り去る手段は無い。
【0072】
例として、物体が基板を備える場合、スティッキング作用は、クランプ4に基板を配置しまたはロードすることに影響しうる。静電クランプ4の誘電部6上の帯電パーティクルは、基板に作用し、及び/または、基板に力を印加しうる。力は、クランプ上の基板のローディング/配置に影響しうる。たとえば、力は、リソグラフィ装置のオーバレイ制御に影響しうる。リソグラフィ装置のオーバレイ制御は、投影されるパターンを基板に存在するパターンに位置合わせする制御であるとみなされうる。投影されるパターンと基板に存在するパターンとの間の位置合わせ不良は、多層デバイス構造において回路の短絡及び/または接続不良につながりうる。
【0073】
使用時において、クリーニング装置16は、静電クランプ4の近傍に配置されてもよい。クリーニング装置16は、絶縁部18を備える。絶縁部18は、たとえばガラスまたはポリマーなどの絶縁性または誘電性の材料を備えてもよい。たとえば、絶縁性または誘電性の材料は、二酸化シリコン(SiO
2)、窒化シリコン(Si
3N
4)、またはベンゾシクロブテン(BCB)系ポリマーを備えてもよい。ただし、他の絶縁性または誘電性の材料が使用されてもよい。クリーニング装置16は、支持部20を備える。
図2において、絶縁部18は、支持部20に設けられるものとして図示されている。絶縁部18は、支持部20から延在しまたは突出するように設けられている。
【0074】
支持部20は、電圧が支持部20及び/または静電クランプ4の電極8に印加されるとき支持部が静電クランプ4からのパーティクルの除去のためにクリーニング装置16と静電クランプ4との間に電界を発生可能とする電極として働くように構成されている。たとえば、電圧が静電クランプ4の電極8に印加されるとき、支持部20における電荷は、支持部20の一部が静電クランプ4の電極8に印加される電圧の極性とは反対の極性を有するように、支持部20において再配分される。すなわち、支持部20は、少なくとも部分的に又は完全に分極されるものとみなされてもよい。静電クランプ4の電極8に印加される電圧の極性とは反対の極性を有する支持部20の一部は、使用時において、静電クランプ4の誘電部6の上面6aに面し、または対向してもよい。静電クランプ4の電極8に印加される電圧の極性とは反対の極性を有する支持部20の一部は、支持部20の下部20aとみなされてもよい。静電クランプ4の電極8に印加される電圧は、パーティクルがクリーニング装置16の絶縁部18の少なくとも一部または全部に付着するように選択されていてもよい。
【0075】
図3Aは、帯電したパーティクル22と静電クランプ4の誘電部6との間の相互作用を模式的に示す。上述のように、帯電したパーティクル22は、物体から静電クランプ4の誘電部6の上面6aに移動しうる。帯電したパーティクル22は、静電クランプ4の誘電部6の一部に分極を誘起しうる。たとえば、パーティクル22は、
図3Aに示されるように、負に帯電され、誘電部6の上面6aに正の電荷を誘起してもよい。この分極は、帯電したパーティクル22を誘電部6に付着させうる。静電クランプ4の誘電部6への帯電したパーティクル22の付着は、帯電したパーティクル22と静電クランプ4の誘電部6との間に働くファンデルワールス力などの第1の力F1に起因しうる。帯電したパーティクル22と静電クランプ4の誘電部6との間に働く第1の力F1の方向は、
図3Aにおいて実線の矢印で示されている。静電クランプ4の電極8に印加される電圧が0Vであったとしても、帯電したパーティクル22は、たとえば第1の力F1によって、静電クランプ4の誘電部6に付着しうる。
【0076】
図3Bは、
図3Aと類似するが、静電クランプ4の電極8とクリーニング装置16の支持部20の下部20aを追加して示す。
図3Bに示される例においては、静電クランプ4の電極8は、負に帯電され、クリーニング装置16の支持部20の下部20aは、たとえば、静電クランプ4の電極8に印加される負電圧によって生じる支持部20における電荷分布によって、正に帯電されるとみなされる。電界Eがクリーニング装置16と静電クランプ4との間に生成され、これは点線の矢印で示される。クリーニング装置16の支持部20の下部20aの正電荷及び/または静電クランプ4の電極8の負電荷によって、第2の力F2が帯電したパーティクル22に第1の力F1とは反対の方向に働く。第2の力F2は、クーロン力とみなされ、パーティクル22と支持部20の下部20aとの間で引きつけ、パーティクル22と静電クランプ4の電極8との間で反発するものとみなされうる。
図3Bに示される電界Eは、静電クランプ4の使用時にたとえば物体と静電クランプ4との間に存在しうる電界とは反対の方向に延在するものとみなされうる。
図3Bに示されるように、逆方向の電界は、静電クランプ4の誘電部6の上面6aから帯電したパーティクル22を除去するのに十分ではないかもしれない。クリーニング装置16と静電クランプ4との間の電界の強さを増加させることが必要となるかもしれない。
【0077】
図3Cは、
図3Bと類似するが、クリーニング装置16の絶縁部18を追加して示す。
図3Cにおいては、電界Eの強さは、
図3Bに示される電界に対して増加されているとみなされうる。たとえば、電界の強さの増加は、後述のように、静電クランプ4の電極8に印加される電圧を増加させ、及び/または、クリーニング装置16と静電クランプ4との間の距離Dを低減することによって、実現されうる。電界の強さが増加されることによって、帯電したパーティクル22に働く第2の力F2が増加され、それにより、帯電したパーティクル22がクリーニング装置16の絶縁部18に向けて移動されうる。
【0078】
静電クランプ4からのパーティクルの除去を可能とするために必要とされる電界の強さは、たとえばパーティクルの半径など、パーティクルのサイズに依存しうる。静電クランプ4からパーティクルを除去するために必要とされる電界の強さは、パーティクルの半径をrとして、rの-1/2乗に比例しうる。すなわち、パーティクルサイズが小さくなれば、電界の強さは、静電クランプ4からのパーティクルの除去を可能とするために増加されることが必要である。
【0079】
たとえば、電界Eは、物体と静電クランプ4との間に静電クランプ4の使用時に生成される電界の強さの約1.5倍の強さを備えてもよい。たとえば、電界Eは、およそ1×108V/mから2×108V/m、たとえば1.5×108V/mの強さを備えてもよい。およそ1×108V/mから2×108V/m、たとえば1.5×108V/mの強さを備える電界は、静電クランプ4からのパーティクルの除去に十分でありうる。上述の例示的な強さをもつ電界は、たとえば真空条件で使用されてもよい。静電クランプ4の電極8に印加される電圧は、クリーニング装置16と静電クランプ4との間のギャップにわたる電圧がおよそ1000Vから2000V、たとえば1500Vとなるように選択されてもよい。静電クランプ4とクリーニング装置16との間のギャップにわたる電圧は、クリーニング装置16と静電クランプ4との間のギャップにわたる電圧の約3倍の電圧、たとえば3000Vから6000Vを静電クランプ4の電極8に印加することによって実現されてもよい。しかしながら、ギャップにわたるおよそ1000Vから2000Vの電圧を実現するために静電クランプ4の電極8に印加されることを必要とする電圧は、静電クランプ4の構成及び/またはクリーニング装置16の構成に依存しうる。たとえば、ギャップにわたるおよそ1000Vから2000Vの電圧を実現するために静電クランプ4の電極8に印加されることを必要とする電圧は、静電クランプ4の誘電部6の厚さ、バール12a、12bの厚さ、静電クランプ4とクリーニング装置16との間の距離D、及び/または、クリーニング装置16の絶縁部18の厚さに依存しうる。静電クランプからのパーティクルの除去に必要とされる静電クランプ4とクリーニング装置16との間のギャップにわたる電圧は、静電クランプ4とクリーニング装置16との間の距離Dに依存しうる。例として、静電クランプ4とクリーニング装置16との間の距離Dが約10μmである場合、約1500Vの電圧が静電クランプ4からのパーティクルの除去を可能とするために静電クランプ4とクリーニング装置16との間のギャップにわたり必要とされうる。静電クランプ4とクリーニング装置16との間のギャップにわたる1500Vの電圧は、約108V/mの強さをもつ電界をもたらしうる。例として、静電クランプ4とクリーニング装置16との間の距離Dが約7μmである場合、約1000Vの電圧が静電クランプ4からのパーティクルの除去を可能とするために静電クランプ4とクリーニング装置16との間のギャップにわたり必要とされうる。
【0080】
大気圧での電界Eの強さは、真空条件において使用される電界の強さに比べて減少されてもよい。たとえば、空気の絶縁破壊、たとえばパッシェンの法則に従って形成されうる放電またはアーク放電が、およそ4×106V/mから4×107V/mの強さをもつ電界において起こりうる。電界の強さは、クリーニング装置16と静電クランプ4との間の距離Dに依存しうる。たとえば、クリーニング装置16と静電クランプ4との間の距離Dが約10μmであるとき、空気は約4×107V/mの電界の強さで絶縁破壊しうる。約4×107V/mまたはそれ未満の強さをもつ電界は、クリーニング装置16と静電クランプ4との間の距離Dが約10μmである場合、静電クランプ4からパーティクルを除去するのに十分でありうる。クリーニング装置16と静電クランプ4との間の距離Dが約1mmである場合、空気は約4×106V/mの電界の強さで絶縁破壊しうる。こうした距離では、約4×106V/mまたはそれ未満の強さをもつ電界は、静電クランプ4からパーティクルを除去するのに十分でありうる。大気圧で静電クランプ4から除去されうるパーティクルは、およそ少なくとも1μmまたはそれより大きくてもよい。これは、静電クランプ4からパーティクルを除去するために必要とされる、パーティクルの半径をrとしてrの-1/2乗に比例する電界の強さによるものでありうる。
【0081】
大気圧で、静電クランプ4の電極8に印加される電圧は、クリーニング装置16と静電クランプ4の間のギャップにわたる電圧がおよそ400から4000Vとなるように選択されてもよい。例として、静電クランプ4とクリーニング装置16との間の距離Dが約10μmである場合、約400Vの電圧が静電クランプ4からのパーティクルの除去を可能とするために静電クランプ4とクリーニング装置16との間のギャップにわたり必要とされうる。例として、静電クランプ4とクリーニング装置16との間の距離Dが約1mmである場合、約4000Vの電圧が静電クランプ4からのパーティクルの除去を可能とするために静電クランプ4とクリーニング装置16との間のギャップにわたり必要とされうる。本書に述べる例示的なシステムは、上述の電界の強さ及び/またはギャップにわたる電圧の使用には限定されない。たとえば、他の実施形態においては、静電クランプの電極に印加される電圧は、クリーニング装置と静電クランプとの間に生成される電界が静電クランプからのパーティクルの除去を可能とするのに十分となるように選択されてもよい。
【0082】
クリーニング装置16と静電クランプ4との間のギャップのサイズまたは拡張は、クリーニング装置16と静電クランプ4との間の距離Dによって定義されまたは記述されうる。
【0083】
上述のように、
図3Cは、クリーニング装置16の絶縁部18を追加的に示す。クリーニング装置16に絶縁部18を設けることによって、たとえば支持部20の下部20aの正の極性が生じさせる、パーティクル22の電荷の逆転が防止されうる。絶縁部18は、静電クランプ4の誘電部6の上面6aから捕捉されたパーティクル22の放電、及び/または捕捉されたパーティクルが静電クランプ4の誘電部6の上面6aに戻ることを防止しうる。
【0084】
パーティクルが負の電荷を帯びるものとして上述したが、他の実施形態においては、パーティクルは、たとえば静電クランプの使用中に静電クランプの電極に印加される負の電圧によって、正の電荷を帯びてもよい。あるいは、パーティクルは、帯電しなくてもよい。静電クランプ4の電極8に印加される電圧、たとえば電圧の極性は、クリーニング装置16と静電クランプ4との間に生成される電界Eが静電クランプ4の使用時にたとえば物体と静電クランプとの間に生成されうる電界とは反対の方向に延びるように選択されてもよい。
【0085】
図2の実施形態においては電圧が静電クランプの電極に印加されているが、他の実施形態においては、静電クランプの電極に印加される電圧とともにまたはそれに代えて、電圧がクリーニング装置の支持部に印加されてもよい。クリーニング装置の支持部に印加される電圧は、静電クランプの電極に印加される電圧と同様にして選択されてもよい。
【0086】
図2に示される実施形態においては、クリーニング装置16は、クリーニング装置の少なくとも一部分の形状が、たとえばクリーニング装置16と静電クランプ4との間の距離Dを低減または最小化することを可能とするように、静電クランプ4の一部分の形状と相補的(または実質的に相補的)となるように構成されている。上述のように、クリーニング装置16とクランプ4との間の距離Dを減少させることによって、クリーニング装置16と静電クランプ4との間に延びる電界の強さは、増加されうる。距離Dは、クリーニング装置16と静電クランプ4との間に延びる電界の強さを増加させるために、たとえば静電クランプ4の電極8に印加される電圧を増加させるとともにまたはそれに代えて、減少されてもよい。たとえば、支持部20は、クリーニング装置16と静電クランプ4との間の距離Dを低減または最小化することを可能とするように、静電クランプ4の上面6a及び/または誘電部6の形状と相補的(または実質的に相補的)となるように成形されていてもよい。たとえば、クリーニング装置16と静電クランプとの間の距離Dは、およそ5から20μm、たとえば10μmに減少されてもよい。他の実施形態においては、クリーニング装置と静電クランプとの間の距離は、5から20μmより大きくまたは小さくなるように変化されまたは減少されてもよい。たとえば、上述のように大気圧下でクリーニング装置と静電クランプとの間の距離は約1mmであってもよい。支持部20は、複数の凹部20b、20cを備えてもよい(そのうち2つが
図2に示されている)。
図2には2つの凹部20b、20cが示されるが、他の実施形態においては、電極は、2より多数の、または少数の凹部を備えてもよい。たとえば、電極の凹部の数は、静電クランプの誘電部の上面に存在するバールの数に依存してもよい。
【0087】
各凹部20b、20cは、たとえばクリーニング装置16が静電クランプ4たとえば誘電部6の上面6aに向けて移動するとき静電クランプ4のバール12a、12bそれぞれが各凹部に少なくとも部分的にまたは完全に受け入れられるように成形されていてもよい。支持部20が静電クランプ4のバール12a、12bと接触するとき、支持部20が接地しているものとみなされることができる。他の実施形態においては、クリーニング装置の支持部は、グランドに接続されていてもよい。
【0088】
支持部20が複数の凹部20b、20cを備える実施形態においては、絶縁部18は、支持部の隣接する2つの凹部の間に延在してもよい。
【0089】
クリーニング装置16の横方向たとえば
図2に示されるy方向及び/またはz方向における延長または寸法は、静電クランプ4の横方向たとえば
図2に示されるy方向及び/またはz方向における延長または寸法に依存して選択されてもよい。たとえば、クリーニング装置16の横方向の延長または寸法は、静電クランプ4の横方向の延長または寸法に一致(または実質的に一致)するように選択されてもよい。これは、静電クランプ4の誘電部6の上面6aのほぼ全体からパーティクルを除去することを可能としうる。しかしながら、静電クランプの上面の予め定められた領域または空間からパーティクルを除去することが望まれてもよい。
【0090】
図4Aは、クランプからパーティクルを除去するためのシステム2の他の例を示す。
図4Aに示されるシステム2は、
図2に示されるものと類似する。ただし、支持部20と絶縁部18がそれぞれ連続面を定めるように設けられている。他の実施形態においては、支持部または絶縁部の一方が連続面を定め、他方が1つまたは複数の凹部を備えてもよい。クリーニング装置16の横方向たとえば
図4Aに示されるy方向及びz方向における延長または寸法は、
図2に示されるクリーニング装置の横方向の延長または寸法よりも小さい。クリーニング装置16の横方向の延長または寸法は、パーティクルが静電クランプ4の誘電部の上面6aに予め定められた領域または空間から除去されまたは除去可能であるように選択されてもよい。たとえば、クリーニング装置16の横方向の延長または寸法は、静電クランプ4の隣接する2つのバール12a、12bの間の空間または領域に一致(実質的に一致)しまたはそれより小さくなるように選択されてもよい。これは、たとえばクリーニング装置16と静電クランプ4との間の電界の強さを増加させるために、クリーニング装置16と静電クランプ4との間の距離Dを低減または最小化することを可能としうる。また、これは、パーティクルを静電クランプ4の誘電部6の上面6aから局所的に除去することを可能としうる。
図4Aに示されるクリーニング装置16は静電クランプの横方向の延長または寸法よりも小さい横方向の延長または寸法を備えるが、他の実施形態においては、クリーニング装置の横方向の延長または寸法は、静電クランプの横方向の延長または寸法に実質的に一致するように選択されてもよい。
【0091】
図4Bは、クランプからパーティクルを除去するためのシステムの他の例を示す。
図4Aに示されるシステム2は、
図2に示されるものと類似する。クリーニング装置16の絶縁部18は、クリーニング装置16と静電クランプ4との間に生成される電界が不均一電界を備えるように成形されていてもよい。絶縁部18は、クリーニング装置16と静電クランプ4との間に生成される電界が絶縁部18での1つまたは複数の点で集中または増加されるように成形されていてもよい。たとえば、クリーニング装置16は、複数の絶縁部18a、18b、18c、18dを備えてもよく、これらは電極20から延在するように設けられていてもよい。各絶縁部18a、18b、18c、18dは、第1端から第2端へと先細となるように設けられていてもよい。各絶縁部18a、18b、18c、18dの第1端は、支持部20に設けられてもよい。第2端は、支持部から遠位に設けられていてもよい。第2端は、使用時に第2端が静電クランプ4の誘電部6の上面6aに向けられるように設けられていてもよい。
【0092】
各絶縁部18a、18b、18c、18dは、尖状または鋭状の部分19a、19b、19c、19dを備えてもよい。尖状または鋭状の部分19a、19b、19c、19dは、各絶縁部18a、18b、18c、18dの第2端の一部であり、またはそこに備えられ、またはそれを定めてもよい。複数の絶縁部18a、18b、18c、18dは、使用時に各絶縁部18a、18b、18c、18dの各尖状または鋭状の部分19a、19b、19c、19dが静電クランプ4の誘電部6の上面6aに向けられるように、支持部20に設けられていてもよい。電界がクリーニング装置16と静電クランプ4との間に生成されるとき、その電界は、各絶縁部18a~18dの尖状または鋭状の部分19a~19dに集中するものとみなされうる。すなわち、生成される電界の強さは、各絶縁部18a~18dの尖状または鋭状の部分19a~19dで増加されるものとみなされうる。これは、上述のように、静電クランプ4の誘電部6の上面6aからのパーティクルの除去を可能としうる。
【0093】
図4Bに示されるクリーニング装置16との間に生成される電界は、不均一であるとみなされうる。クリーニング装置16と静電クランプ4との間に不均一電界を生成することによって、帯電していないパーティクルを除去することが可能となりうる。たとえば、使用時に、帯電していないパーティクルが静電クランプ4と物体との間に生成される電界によって引きつけられうる。たとえば、帯電していないパーティクルは、静電クランプ4と物体との間に生成される電界によって分極された状態となりうる。たとえば、2つの反対の電荷が静電クランプ4と物体の間の電界によってパーティクルに誘起されうる。パーティクルの一部が正に帯電し、そのパーティクルの他の一部が負に帯電しうる。これにより、パーティクルが電界に整列されうる。均一な電界においてパーティクルは、たとえばパーティクルの両部分に働くクーロン力によって、静電クランプ4上で静止しているか、または移動しないのに対し、不均一電界においては、パーティクルは、増加された電界強度を有する電界の一部へと引きつけられうる。他の例においては、たとえば予め帯電したパーティクルのように、電荷を備えるパーティクルが、静電クランプ4と物体との間に存在しまたは配置されてもよい。パーティクルは、たとえばパーティクルに働くクーロン力によって、静電クランプ4に向けて移動してもよい。帯電していないパーティクルに誘起される2つの反対の電荷の作用は、たとえばパーティクルに働くクーロン力によって静電クランプ4に向けて移動する予め帯電したパーティクルの作用よりも一般に弱いものとみなされうる。
【0094】
絶縁部18a~18dは、クリーニング装置の支持部20から延在する歯またはフォーク状の形で設けられてもよい。絶縁部は歯またはフォーク状に設けられることに限定されるものではなく、他の形状の絶縁部が、生成された電界を絶縁部の1つ又は複数の点に集中させ、及び/または不均一電界を発生させるために使用されてもよい。
図4Bは4つの絶縁部を示すが、他の実施形態においては、4よりも多数または少数の絶縁部がクリーニング装置の電極に設けられてもよい。
【0095】
図4Aおよび
図4Bにおいては、電圧は、支持部20たとえば支持部20の上部20dに印加されてもよい。支持部20に印加される電圧の極性は、同じであってもよい。支持部20に印加される電圧は、たとえば静電クランプ4の電極8に電圧が印加されないとき、支持部20に電荷の再分配を生じさせてもよい。電圧がクリーニング装置16の支持部20と静電クランプの電極8に印加されるとき、支持部20における電荷の再分配が増強されてもよい。これは、クリーニング装置16と静電クランプ4との間に延びる電界の強さを増加させることにつながりうる。たとえば、正の電圧がクリーニング装置16の支持部20及び/または静電クランプ4の電極8に印加されるとき、支持部20の下部20aが負に帯電するとみなされてもよく、支持部20の上部20dが正に帯電するとみなされてもよい。負の電圧がクリーニング装置の支持部及び/または静電クランプの電極に印加される実施形態においては、支持部の下部が正に帯電するとみなされてもよく、支持部の上部が負に帯電するとみなされてもよい。
【0096】
図2、
図4A、及び/または
図4Bに示されるシステム2は、コントローラ23を備えてもよい(
図2、
図4Aおよび
図4Bにおいて破線の長方形で示される)。コントローラ23は、静電クランプ4の電極8及び/またはクリーニング装置16の支持部20に電圧を印加するように構成されていてもよい。コントローラ23は、電圧源24を備えてもよい。電圧源24は、クリーニング装置16の支持部20に電圧を印加するように構成されていてもよい。システム2は、静電クランプ4に電圧を供給するように構成される更なる電圧源26を備えてもよい。更なる電圧源26は、コントローラ23の一部でありまたはそこに備えられていてもよい。あるいは、更なる電圧源26は、更なるコントローラの一部でありまたはそこに備えられていてもよい。あるいは、電圧源24は、クリーニング装置16の支持部20および静電クランプ4の電極8に電圧を印加するように構成されていてもよい。他の実施形態においては、コントローラ(または更なるコントローラ)は、コントローラ(または更なるコントローラ)から分離されまたは追加して設けられてもよい。
【0097】
図2、
図4A、及び/または
図4Bに示される絶縁部18は、ある最小厚さを備えてもよい。絶縁部の最小厚さは、絶縁部18の絶縁破壊が防止されるようになっていてもよい。絶縁部18は、ある最大厚さを備えてもよい。最大厚さは、クリーニング装置16と静電クランプ4との間に生成される電界の強さが最大化されるように選択されてもよい。たとえば、最大厚さよりも大きい絶縁部18の厚さは、絶縁部が最大厚さに等しいかまたはそれ未満の厚さを備えるクリーニング装置16と静電クランプ4との間に生成される電界の強さに比べて、電界の強さを減少させる原因となりうる。絶縁部18の厚さは、たとえばクリーニング装置16の使用中にクリーニング装置16と静電クランプ4との間の距離Dより小さくなるように選択されてもよい。絶縁部18の厚さは、およそ100nmから5μmの範囲にあるように選択されてもよい。
【0098】
図2、
図4A、及び/または
図4Bに示される支持部20は、静電クランプ4からパーティクルを除去するのに使用される時間よりも小さくなるように選択された時定数をもつ材料を備えてもよい。材料の時定数は、クリーニング装置16と静電クランプ4との間に生成される電界への材料の応答とみなされうる。すなわち、材料の時定数は、上述のように、材料が少なくとも部分的にまたは完全に分極された状態となるのに要する時間、たとえば材料において電荷が再分配されるのに要する時間とみなされうる。材料の時定数は、材料の抵抗率と材料の誘電率の積から生じうる。材料は、時定数が1秒未満から1日以上の範囲にあるように選択されてもよい。たとえば、材料は、0.1秒に等しいかそれ未満の時定数を備えてもよい。これにより、支持部20の材料は導電性であるとみなされることができる。たとえば、
図2、
図4A、及び/または
図4Bに示される支持部は、たとえば金属などの導電材料、またはたとえばシリコン、窒化ガリウム(GaN)、またはシリコンカーバイド(SiC)などの半導体材料を備えてもよい。
【0099】
使用時において、
図2、
図4A、及び/または
図4Bに示されるクリーニング装置16は、静電クランプ4の上面6aの近傍に配置されてもよい。たとえば、クリーニング装置16は、絶縁部18が静電クランプ4たとえば誘電部6の上面6aに向けられまたはそこに向けて延在するように、静電クランプ4に対して配置されてもよい。クリーニング装置16は、絶縁部18及び/または支持部20が静電クランプ4の誘電部6の上面6aに平行(または実質的に平行)な方向に延在するように、静電クランプに対して配置されてもよい。
【0100】
使用時において、電圧は、静電クランプ4の電極8及び/またはクリーニング装置16の支持部20に、クリーニング装置16と静電クランプ4との間に電界を発生させるために印加されてもよい。電圧は、クリーニング装置16と静電クランプ4との間に生成される電界が静電クランプ4の上面6aからパーティクルを除去させるようにパーティクルに働くように選択されてもよい。
【0101】
システム2及び/またはクリーニング装置16は、リソグラフィ装置の一部であってもよい。しかしながら、他の実施形態においては、システム及び/またはクリーニング装置は、リソグラフィ装置から別個に設けられてもよい。たとえば、システム及び/またはクリーニング装置は、別個のクリーニングステーションの一部でありまたはそこに備えられてもよい。システム及び/または装置は、静電クランプ4または他の物体へとパーティクルが移動しまたは運ばれるのを防ぐために使用されうる。これにより、パーティクルがリソグラフィ装置に入ることが防止され、またはリソグラフィ装置に入りうるパーティクルの量が低減されうる。たとえば、システム及び/または装置は、基板ローディングシステムの一部であってもよい。
【0102】
支持部は電圧が静電クランプの電極及び/または支持部に印加されるとき電極として働くように構成されるものとして説明した。上述のように、支持部は、半導体材料を備えてもよい。この実施形態においては、支持部は、静電クランプ(たとえば静電クランプの電極に印加される電圧)によって生成される電界、または電圧に支持部が配置されまたは晒されるとき電極として働くものとみなされてもよい。あるいは、支持部は、電圧が印加されるとき電極として働くものとみなされてもよく、これは上述のように支持部に電荷の再分配を生じさせうる。他の実施形態においては、支持部は、半導体材料に加えてまたはそれに代えて、導電材料を備えてもよい。支持部は、電圧が導電材料に印加されるとき電極として働いてもよい。たとえば、導電材料は、支持部に電極を形成するように設けられてもよい。こうした実施形態においては、静電クランプの電極及び/または支持部に印加される電圧たとえば電圧の極性は、クリーニング装置と静電クランプとの間に生成される電界が静電クランプの上面からパーティクルを除去させるようにパーティクルに働くように選択されてもよい。
【0103】
静電クランプ上のパーティクルは、静電クランプからの改善された除去を促進するために静電力によって予め帯電されることができる。こうした事前帯電は、以下のように行われてもよい。まず、たとえば200Vを超える(プラスまたはマイナス300V未満であるべきである)クランプ電圧が、クランプ上に物体を存在させることなく静電クランプに印加される。このクランプ電圧の印加中に静電クランプとその上にあるパーティクルは(EUV)放射による露光によって放電される。そして、クランプ電圧は除去され、パーティクルはマイナス200V(クランプ電圧がマイナス200Vであった場合にはプラス200V)に事前帯電される。
【0104】
本発明の実施形態は、EUV放射または深紫外(DUV)放射(たとえば193nmまたは248nm)を使用するリソグラフィ装置において使用されてもよい。静電クランプは、真空クランプを使用することが実用的ではないリソグラフィ装置LAにおいて使用されてもよい。たとえば、EUVリソグラフィ装置LAの一部の領域は真空条件下で動作するので、そうした領域では真空クランプを使用することが実用的ではないかもしれない。静電クランプが代わりに使用されてもよい。DUV放射を使用する場合、リソグラフィ装置は、周囲(非真空条件)下にあってもよいので、真空クランプが基板Wを基板テーブルWTに保持するために使用されてもよい。本発明の実施形態は、真空クランプを備える基板テーブルWTから汚染物質を除去するために使用されてもよい。
【0105】
図5Aは、本発明のある実施形態に係り、基板テーブルWTからパーティクルを除去するためのシステム30を示す。基板テーブルWTは、基板W(図示せず)を保持するために、この例ではバール32である複数の支持体を備えてもよい。バール32は、二次元アレイとして設けられている。
図5Aでは15個のバール32が見える。これはおよそ150個のバールの二次元アレイに相当しうる。他の実施形態においては、基板テーブルWTは、他の個数のバールを備えてもよい。バール32は、基板テーブルWTの本体36の上面34上に配置されている。バール32は、基板テーブルWTの本体36と一体であってもよい。バール32の上面は、基板Wを保持できる平面38を定めてもよい。
【0106】
基板Wは、真空クランプによってバール32に取り付けられてもよい。すなわち、基板Wは、基板Wをバール32に引きつける力を与える真空を適用することによって、バール32に保持される。このために、シール49が基板テーブルWTに設けられている。なお、本書に述べるシステムは、真空クランプを使用するものに限られず、他のクランプが使用されてもよい。
【0107】
図5Aは、基板テーブルWTからパーティクルを除去するためのシステム30を使用する装置を示す。装置は、クリーニング装置40の形式で設けられてもよい。
図5Aに示されるクリーニング装置40は、クリーニング基板と称されてもよい。クリーニング装置40は、基板テーブルWTからパーティクルを除去するために適当でありうる。とくに、クリーニング装置40は、基板テーブルWTのバール32からパーティクルを除去するために適当でありうる。さらには、クリーニング装置40は、基板テーブルWTのバール32の上面からパーティクルを除去するために適当でありうる。
【0108】
使用時において、クリーニング装置40は、基板テーブルWTの近傍に配置されてもよい。クリーニング装置40は、絶縁部42を備える。絶縁部42は、たとえばガラスまたはポリマーなどの絶縁性または誘電性の材料を備えてもよい。絶縁部42は、フォトレジストを備えてもよい。
【0109】
クリーニング装置40は、支持部44を備える。支持部44は、基板Wであってもよい。支持部44は、導電プレート、より具体的には、ベア基板Wであってもよい。
図5Aにおいて絶縁部42は支持部44上に設けられるものとして示されている。絶縁部42は、支持部44から延在しまたは突出するように設けられてもよい。
【0110】
支持部44および絶縁部42はそれぞれ、実質的な連続面を定めるように設けられている。ただし、電気接続が通りうる支持部44および絶縁部42の一方または両方の一部分は除く。他の例においては、電気接続が通る部分がなくてもよく、支持部及び/または絶縁部は、全体的に連続な面を定めてもよい。他の例においては、支持部または絶縁部の一方が連続面を定め、他方が1つ又は複数の凹部を備えてもよい。
【0111】
支持部40は、電圧が支持部44及び/または基板テーブルWTに印加されるとき支持部44が基板テーブルWTからのパーティクルの除去のためにクリーニング装置40と基板テーブルWTとの間に電界を生成することを可能とするように電極として働くように構成されている。よって、非導電性の絶縁部42にわたる電圧差がある。支持部44及び/または基板テーブルWTに印加される電圧は、パーティクルがクリーニング装置40の絶縁部38の少なくとも一部または全体に付着するように選択されてもよい。
【0112】
システム30は、コントローラ46を備えてもよい(
図5Aでは長方形で示される)。この例では、コントローラ46は、クリーニング装置40の支持部44に電圧を印加するように構成されていてもよい。コントローラ46は、電圧源48を備えてもよい。電圧源は、DCであってもよい。電圧源48は、クリーニング装置40の支持部44に電圧を印加するように構成されていてもよい。DC電圧源48の負極が基板テーブルWTに接続されていてもよい。これは、基板テーブルWTにおける穴52にロッド50を取り付けることによって実現されてもよい。DC電圧源48の負極とロッド50との間の電気接続は、支持部44および絶縁部42の一方または両方の一部分を通過してもよい。基板テーブルWTは、接地されていてもよい。他の例においては、DC電圧源48の負極が基板テーブルWTと同様にグランドに接続されていてもよい。
【0113】
他の例においては、システム30は、基板テーブルWTに電圧を供給するように構成される更なる電圧源(図示せず)を備えてもよい。更なる電圧源は、コントローラ46の一部でありまたはそこに備えられてもよい。あるいは、更なる電圧源は、更なるコントローラ(図示せず)の一部でありまたはそこに備えられてもよい。あるいは、電圧源48は、クリーニング装置40の支持部44と基板テーブルWTに電圧を印加するように構成されていてもよい。
【0114】
クリーニング装置40と基板テーブルWTとの間の電界のセットアップによって、基板テーブルWT上のパーティクルは電荷を得る。電界が十分に強ければ、支持部44からの静電的な引力は、パーティクルに働く接着(および重力)に打ち勝ち、パーティクルは、絶縁部42に付着した状態となる。これは、
図2から
図4に関して上述した方法と同様である。
【0115】
パーティクルの直径と電界のサイズに依存して、重力、接着力、または静電力のうち1つがパーティクルにおいて支配的となる。一例として、パーティクル直径が200~300nmのパーティクル除去では、1MW/cmの電界が印加されれば、その結果得られる静電力が重力および接着に打ち勝つことになる。他の強さの電界が使用されてもよい。電界は、小さいサイズのパーティクルについてのパーティクル除去のために増加されてもよい。すなわち、小さいパーティクルについては、その小さいパーティクルでの静電力を支配的とするために、大きいパーティクルに比べて、電界を大きくしなければならない。
【0116】
絶縁部42は、およそ1~10μmの厚さ(すなわちx方向)を有してもよい。他の例においては、絶縁部42の厚さは、要件に依存してこれよりも小さくまたは大きくてもよい。
【0117】
図5Aのクリーニング装置は、最大10MW/cmの電界を実現しうる。たとえば、10MW/cmの電界を実現するために、10kVの電圧差が10μmの絶縁層42に印加されてもよい。他の例においては、実現される電界は、10MW/cmとは異なってもよい。
【0118】
システム30は、蓄積したパーティクルを除去することによって、バール30の上面を清掃する。基板テーブルWTを清掃する他の従前の方法は、基板テーブルWTを適正に清掃しない。
【0119】
従前の清掃手順、ツール、液体は、汚染された基板テーブルWTを適切に清掃するには不十分であると考えられている。手作業の清掃がある汚染しきい値に達したときに行われる。従前は、手作業の清掃をする汚染しきい値に達する前に、現場でグラナイトの清掃石が基板テーブルWTを清掃するために使用されていた。この現場での清掃は手作業の清掃(4時間)よりも短時間(数分程度)であるが、完全ではない。
【0120】
従前の清掃方法を使用すると、新規の基板テーブルWTから使用されるにつれて時間とともに必要な清掃頻度が増えていく。従前の清掃方法(現場と手作業の両方とも)では基板テーブルWTが完全には清掃されないからである。より具体的には、清掃石(手作業の清掃にも使用される)がバール上面よりも下方には届かないので、有効に清掃される表面がバールの上部領域のみとなるからである。汚染物質(パーティクル)は、これら従前の方法を使用しても除去されず、むしろ、たとえばバール間へと移動されるだけであるかもしれない。汚染物質が除去されずに移動される場合、清掃後にバール上部が汚染される可能性は、より高まる。このバール上部の汚染はフォーカススポット(z方向における基板W平面の変動)をもたらし、これは基板Wの歩留まりに損失をもたらす。
【0121】
パーティクルが除去されない場合、パーティクルが基板テーブルWTの表面に付着した状態となる可能性がある。たとえば、シリコンパーティクルが基板テーブルWTの表面で固まって酸化するかもしれない。
【0122】
図5Aのシステム30は、蓄積した汚染物質を低減する改善されたクリーニングを提供する。パーティクルは、システム30によって除去されうる。基板テーブルWT上のエッジに蓄積した汚染物質は基板エッジの歩留まりに悪影響を及ぼし、リソグラフィ装置LAの稼働時間を削ってしまう。したがって、
図5Aのシステム30を使用して汚染物質(パーティクル)を除去することによって、基板エッジの歩留まりの低下を回避し、リソグラフィ装置の可用性を向上させることができる。
【0123】
システム30は、バール30の上面に接着した硬いパーティクル(SiCの粒やSiのパーティクルなど)に特に良好に働きうる。
【0124】
図5Bは、基板テーブルWTからパーティクルを除去するための、他の例のシステム54を示す。このシステム54は、絶縁部56が実質的な連続面を定めないことを除いて、
図5Aのシステム30と同様である。
【0125】
絶縁部56は、支持部44から基板テーブルWTに向けて(x方向)基板テーブルWTのバール32の領域において突出する突出部58を有する。突出部58が基板テーブルWTに向けて突出する結果として、絶縁部56には凹部が形成される。突出部58は、バール32のy方向におけるサイズ(幅)と実質的に同じy方向におけるサイズ(幅)を有する。ただし、いくつかの突出部58はバール32とわずかに重なりうる。突出部58は、バール32のz方向におけるサイズ(長さ)と実質的に同じz方向におけるサイズ(長さ)を有する。ただし、いくつかの突出部58はバール32とわずかに重なりうる。一般に、突出部58の面積は、バール32の上面の面積と同じまたは類似のサイズである。
【0126】
支持部44も、支持部44から基板テーブルWTに向けて(x方向)基板テーブルWTのバール32の領域において突出する突出部60を有する。これら突出部60は、突出部58が基板テーブルWTに向けて突出する結果として絶縁部56に形成される凹部を埋める。よって、支持部44はいまだに、バール32の上面から同じ距離(すなわちx方向における絶縁部56の厚さ)となる。
【0127】
突出部58による絶縁部56の新たな形状は、絶縁部56と基板テーブルWTの本体36との間のアーク放電(空気のイオン化)の可能性を低減する。これは、絶縁部56の非突出部分と基板テーブルWTの本体36との間の距離が大きくなるからである。空気中のアーク放電は典型的に少なくとも0.03MW/cmの電界で問題となる。1MW/cmの電界を絶縁部56にわたり印加する場合、基板テーブルWTの本体36に向かう電界は、0.03MW/cmでありうる。絶縁部の厚さを小さくすることは、アーク放電のリスクを減少させうる。他の例においては、アーク放電のリスクは、他の方法たとえば絶縁部56と基板テーブルWTの本体36との間の距離を大きくすることによって、低減されてもよい。
【0128】
本書ではリソグラフィ装置の文脈における本発明の実施形態について具体的な言及がなされているかもしれないが、本発明の実施形態は、他の装置にも使用されうる。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置、または、ウェーハ(またはその他の基板)またはマスク(またはその他のパターニングデバイス)などの物体を測定または処理する何らかの装置の一部を形成してもよい。これらの装置は、一般に、リソグラフィックツールとも呼ばれる。こうしたリソグラフィックツールは、真空条件または周囲(非真空)条件を使用してもよい。
【0129】
「EUV放射」との用語は、4nmから20nmの範囲内、例えば13nmから14nmの範囲内の波長を有する電磁放射を含むものとみなされうる。EUV放射は、10nm未満、例えば6.7nm又は6.8nmなど4nmから10nmの範囲内の波長を有してもよい。
【0130】
本明細書ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に具体的に言及しているかもしれないが、本書に説明されたリソグラフィ装置は、他の用途を有してもよい。ありうる他の用途には、集積光学システム、磁区メモリ用案内パターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造が含まれる。
【0131】
上記では光リソグラフィにおける本発明の実施の形態の使用に具体的に言及したかもしれないが、本発明は例えばインプリントリソグラフィなどの他の用途においても使用されうるものであり、文脈が許す場合、光リソグラフィに限られるものではないことは理解されよう。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイスのトポグラフィによって、基板上に生成されるパターンが画定される。パターニングデバイスのトポグラフィを基板に供給されたレジストの層に押しつけ、その後に電磁放射、熱、圧力またはその組合せにより、レジストを硬化する。パターニングデバイスをレジストから離すと、レジストの硬化後にパターンが残される。
【0132】
上記では本発明の特定の実施形態を説明したが、本発明は、説明したものとは異なる方式で実施されうることが理解される。上述の説明は例示であり、限定を意図しない。よって、後述の特許請求の範囲から逸脱することなく既述の本発明に変更を加えることができるということは、関連技術の当業者には明らかなことである。