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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   F21V 17/00 20060101AFI20220113BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20220113BHJP
【FI】
F21V17/00 155
F21S2/00 610
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2017190459
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019067585
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】河野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】浅野 彰
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 友路
(72)【発明者】
【氏名】桜木 晴海
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-091119(JP,A)
【文献】特開平10-319873(JP,A)
【文献】特開2009-104100(JP,A)
【文献】特開2016-051823(JP,A)
【文献】特開2017-083816(JP,A)
【文献】特許第5817530(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 17/00
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子と、
前記複数の発光素子を、所定のパターンに並べて配置する配置領域を上面に設けた基板と、
前記基板に固定され、前記基板上で前記配置領域を囲むように配置される筒状のパイプ部と、
前記パイプ部と異なる材料からなり、前記複数の発光素子が発する光を拡散させて透過させる光拡散部と、
前記基板に固定され、前記光拡散部を、前記パイプ部との間で保持するカバー部と、
を備え、
前記パイプ部は、前記光拡散部の外径よりも小さい第一内径を有する第一パイプ領域と、前記第一パイプ領域の上方において前記第一内径よりも大きい第二内径を有する第二パイプ領域を備え、
前記光拡散部は、前記第二パイプ領域の内側であって前記第一パイプ領域の上端に配置され、
前記カバー部は、前記パイプ部の外径よりも大きい内径を有し、前記パイプ部の外側面を被覆する被覆領域と、前記被覆領域の上端から内側に延長され、前記光拡散部の外径よりも小さい内径を有し、前記第二パイプ領域の上端を被覆する保持領域と、を備え
前記第二パイプ領域の高さを、前記光拡散部の厚さよりも高く形成し、
前記保持領域と前記光拡散部の間に厚さ方向マージンが形成されてなる発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置であって、
前記第二パイプ領域と前記光拡散部の間に横方向マージンが形成されてなる発光装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発光装置であって、
前記第二パイプ領域と前記光拡散部の間に形成された横方向マージンが、
記保持領域と前記光拡散部の間に形成された厚さ方向マージンよりも大きく形成されてなる発光装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の発光装置であって、
前記パイプ部はさらに、前記第一パイプ領域から外側に延長された、前記基板に固定するためのパイプ側ベース領域を備えてなる発光装置。
【請求項5】
請求項に記載の発光装置であって、
前記カバー部は、前記被覆領域から外側に延長された、前記基板に固定するためのカバー側ベース領域と
を備えてなる発光装置。
【請求項6】
請求項に記載の発光装置であって、
前記パイプ側ベース領域は、複数設けられており、
前記カバー側ベース領域は、平面視において、前記パイプ側ベース領域同士の間で、前記基板と固定されてなる発光装置。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の発光装置であって、
前記第一パイプ領域は、その下端の内壁に、前記発光素子の厚さよりも高い窪み部を形成してなる発光装置。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の発光装置であって、
前記光拡散部が、ガラス板で構成されてなる発光装置。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の発光装置であって、
前記パイプ部とカバー部が、それぞれ樹脂で構成されてなる発光装置。
【請求項10】
請求項に記載の発光装置であって、
前記パイプ部とカバー部が、同じ材質の樹脂で構成されてなる発光装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の発光装置であって、
前記パイプ部の高さが、前記第二内径よりも小さく形成されてなる発光装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の発光装置であって、
前記複数の発光素子が、
第一の発光色を発する第一発光素子と、
該第一発光素子と異なる発光色の第二発光素子を含む発光装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の発光装置であって、
前記保持領域の内面をテーパ状に形成してなる発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)等の発光素子を用いた発光装置が照明等に用いられている。このような発光装置においては、光量を増やすために多数のLEDチップを用いているものがある。
【0003】
しかしながら、多数のLEDチップが発する光をそのまま出力すると、LED光の強い指向性によって、各LEDチップの外形が視認されることがある。例えば正方形状のLEDチップを碁盤目状に並べた発光素子の場合、碁盤目状のパターンがLEDの出力光として現れてしまうことがあった。
【0004】
そこで、LEDチップからの発光を拡散させて放出するための拡散光学系を備えることが考えられる。例えば、図11に示すような筒状の導光パイプ111と、導光パイプ111に接着された拡散ガラス130で構成された拡散光学系を設ける発光装置110とすることが考えられる。
【0005】
しかしながら、多数のLEDチップを集中的に配置する場合は、発熱量が多くなることが考えられる。例えば図11の構成において、導光パイプ111を樹脂製で構成すると、拡散ガラス130との間で線膨張係数に差が生じる。すなわち、高温時には樹脂製の導光パイプ111の変形量が大きくなり、一方で拡散ガラス130は殆ど膨張しない結果、導光パイプ111と拡散ガラス130との接合界面で導光パイプ111が膨張し、その反作用によって拡散ガラス130に押し戻される結果、樹脂製の導光パイプ111が破損することがあった。このように、拡散光学系を一体成型すると、熱応力による破損が発生してしまうという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-108878号公報
【文献】実開平03-092614号公報
【文献】特開平10-319873号公報
【文献】特開2006-178382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、その目的の一は、熱応力による破損を低減した発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る発光装置によれば、複数の発光素子と、前記複数の発光素子を、所定のパターンに並べて配置する配置領域を上面に設けた基板と、前記基板に固定され、前記基板上で前記配置領域を囲むように配置される筒状のパイプ部と、前記パイプ部と異なる材料からなり、前記複数の発光素子が発する光を拡散させて透過させる光拡散部と、前記基板に固定され、前記光拡散部を、前記パイプ部との間で保持するカバー部とを備え、前記パイプ部は、前記光拡散部の外径よりも小さい第一内径を有する第一パイプ領域と、前記第一パイプ領域の上方において前記第一内径よりも大きい第二内径を有する第二パイプ領域を備え、前記光拡散部は、前記第二パイプ領域の内側であって前記第一パイプ領域の上端に配置され、前記カバー部は、前記パイプ部の外径よりも大きい内径を有し、前記パイプ部の外側面を被覆する被覆領域と、前記被覆領域の上端から内側に延長され、前記光拡散部の外径よりも小さい内径を有し、前記第二パイプ領域の上端を被覆する保持領域とを備え、前記第二パイプ領域の高さを、前記光拡散部の厚さよりも高く形成し、前記保持領域と前記光拡散部の間に厚さ方向マージンを形成することができる。
【発明の効果】
【0009】
上記形態によれば、熱応力による破損を低減した発光装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係る照明装置の側面図である。
図2図1の照明装置からリフレクタを外した分解斜視図である。
図3図2の発光装置の拡大斜視図である。
図4図3の発光装置の分解斜視図である。
図5図4の発光装置を斜め下方から見た分解斜視図である。
図6図3のVI-VI線における断面図である。
図7図6の要部拡大段面図である。
図8図8Aは発光素子の配置パターンの一例、図8Bは他の例を示す平面図である。
図9】変形例に係るカバー部を示す斜視図である。
図10図10A図10Bは保持領域の内面の一例を示す拡大断面図である。
図11】本発明者らが試作した拡散光学系を設けた発光装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態及び実施例を、図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態及び実施例は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに限定されるものでない。また各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明に係る実施形態及び実施例を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
(照明装置)
【0012】
図1図7に、実施形態1に係る照明装置1000を示す。ここでは発光装置の一例として、医療用の照明装置に適用した例を示している。これらの図において、図1は、実施形態1に係る照明装置1000の側面図、図2図1の照明装置1000からリフレクタ50を外した分解斜視図、図3図2の発光装置100の拡大斜視図、図4図3の発光装置100の分解斜視図、図5図4の発光装置100を斜め下方から見た分解斜視図、図6図3のVI-VI線における断面図、図7図6の要部拡大段面図を、それぞれ示している。図1図2に示す照明装置1000は、発光装置100にリフレクタ50を設けている。リフレクタ50は、発光装置100から出射光を放出する発光面に固定されて、発光装置100からリフレクタ50内部に進入した光を反射面で反射させている。このリフレクタ50は、発光装置100からの光を平行光に近付けるコリメート系の光学系を構成している。またリフレクタ50の代わりに、上記の光学系としてレンズを用いてもよい。また端面に反射効率に優れた反射面を形成する。反射面は、金属製とすることが好ましい。なお、リフレクタは必ずしも別部材とする必要はなく、発光装置と一体に構成してもよい。またリフレクタは必須でなく、省略することもできる。
(発光装置100)
【0013】
図3図4図5に示す発光装置100は、複数の発光素子1と、これら複数の発光素子1を実装する基板10と、基板10上で発光素子1を囲むように配置される筒状のパイプ部20と、パイプ部20の上面に固定される光拡散部30と、光拡散部30をパイプ部20との間で挟み込んで基板10に固定されるカバー部40とを備える。
(発光素子1)
【0014】
発光素子1は、通常、発光ダイオードが用いられる。発光素子1は、その組成、発光色又は波長、大きさ、個数等、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、青色、緑色の発光素子としては、ZnSe、窒化物系半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)、GaPなどの半導体層を用いたもの、赤色の発光素子としては、GaAlAs、AlInGaPなどの半導体層を用いたものが挙げられる。
【0015】
発光素子1は、通常、成長用基板(例えば、サファイア基板)上に、半導体層を積層させて形成される。成長用基板は半導体層との接合面に凹凸を有していてもよい。これにより半導体層から出射された光が、成長用基板に当たるときの臨界角を意図的に変えて、成長用基板の外部に光を容易に取り出すことができる。成長用基板は、半導体層の積層後に除去されていてもよい。成長用基板の除去は、例えば研磨、LLO(Laser Lift Off)等で行うことができる。
【0016】
発光素子1は、同一面側に正負一対の電極を有していてもよい。これにより、発光素子1を、基板10上の配置領域に予め形成された導電パターンに対してフリップチップ実装することができる。この場合、一対の電極が形成された面と対向する面が光取り出し面となる。フリップチップ実装は、Au、Cu等の金属バンプ、半田等の導電性を有するペースト状の接合部材、薄膜状の接合部材等を用いて、発光素子1と基板10の導電パターンとが電気的に接続される。あるいは、フェイスアップ実装する場合には、一対の電極が形成された面を光取り出し面としてもよい。あるいはまた発光素子は、異なる側に正負一対の電極を有するものであってもよい。この場合、一方の電極が導電性接着材で基板10に接着され、他方の電極が導電性ワイヤ等で基板10と接続される。
【0017】
また発光素子に、この発光素子1からの発光を吸収して異なる波長の光に波長変換する蛍光体を組み合わせてもよい。蛍光体としては、当該分野で公知のものを使用することができる。例えば、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG:Ce)、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(LAG:Ce)、ユーロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム系蛍光体(CaO-Al23-SiO2:Eu,Cr)、ユーロピウムで賦活されたシリケート系蛍光体((Sr,Ba)2SiO4:Eu)、βサイアロン蛍光体、クロロシリケート蛍光体、CASN系又はSCASN系蛍光体などの窒化物系蛍光体、希土類金属窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体、KSF系蛍光体(K2SiF6:Mn)、硫化物系蛍光体、量子ドット蛍光体などが挙げられる。これらの蛍光体と、青色光発光素子又は紫外光発光素子とを組み合わせることにより、様々な色の発光装置(例えば白色系の発光装置)を得ることができる。青色の発光素子を用いて白色に発光可能な発光装置とする場合、発光素子を被覆する蛍光体の種類、濃度によって白色となるよう調整される。
【0018】
発光素子1は、1つの発光装置100において複数含まれている。複数の発光素子1は、整列して配置されている。例えば、一列に整列されてもよいし、複数列に整列されていてもよい。発光素子1の数は、得ようとする発光装置の特性、サイズ等に応じて適宜設定することができる。
【0019】
整列する複数の発光素子1は、互いに近接していることが好ましく、さらに輝度分布等を考慮すると、発光素子間の距離は、発光素子1の最大辺の長さの5~50%程度が挙げられ、5~30%程度が好ましく、5~20%程度がさらに好ましい。このように発光素子同士を近接して配置させることにより、均一で良好な輝度分布を確保することができる。その結果、発光ムラの少ない発光品位の高い面光源の発光装置10とすることができる。
【0020】
また複数の発光素子1を、異なる発光色を組み合わせて構成してもよい。例えば第一の発光色を発する第一発光素子1aと、この第一発光素子とは異なる発光色の第二発光素子1bを含める。具体的には、電球色の発光ダイオードと、白色光の発光ダイオードを組み合わせることができる。
【0021】
さらに図4等の例では、複数の発光素子1を円形状に配置している。このとき、複数の異なる種類の発光素子1を配置する際の配置パターンは、種々のパターンが採用できる。例えば図8Aに示すように、同種の発光素子1同士、例えば第一発光素子1a、第二発光素子1b同士をそれぞれ線状に並べ、交互に配置する。あるいは図8Bに示すように、同種の発光素子同士を直線状でなく、波形状に配置してもよい。図8Bの例では、水平方向に対して中央を窪ませた緩やかなV字状のパターンを各ライン毎に交互に配置している。このような、非直線状の曲線を、同種の発光素子毎に交互に配置することで、図8Aのような直線状に並べた同種の発光素子を交互に配置するパターンと比べ、より混色性を高めることが可能となる。
(基板10)
【0022】
基板10は、複数の発光素子1を、所定のパターンに並べて上面に実装する実装基板である。基板10は、通常、導電パターンとそれを支持する基体とからなる。基体の材料としては、例えば、ガラスエポキシ、樹脂、セラミックスなどの絶縁材料から成る基体、絶縁材料を形成したアルミニウム等の金属部材等が挙げられる。なかでも、耐熱性及び耐候性の高いセラミックスを利用したものが好ましい。セラミックスとしては、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライトなどが挙げられる。これらのセラミックスに、例えば、BTレジン、ガラスエポキシ、エポキシ系樹脂等の絶縁材料を組み合わせてもよい。基体の厚みは、例えば100μm~1mm程度が挙げられる。この基板10上には、複数の発光素子1を配置する配置領域を形成している。
(パイプ部20)
【0023】
パイプ部20は、基板10上で配置領域を囲むように固定される。またパイプ部20の内面は、光反射性を高めた部材とする。例えば白色の樹脂や、金属メッキを施した樹脂、あるいは金属製の筒などとできる。パイプ部20を樹脂で構成する場合は、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン等が利用できる。特に、ポリブチレンテレフタレートが強度の点で好ましい。このように、複数の発光素子1の周囲を筒状に囲むことで、パイプ部20を光を案内する導光管(ライトガイド)として利用できる。具体的には、パイプ部20の形状を、両端を開口した筒状とする。そして一方の開口を光を導入する導入端とし、他方の開口を光を放出する放出端とする。さらに導入端を基板10側に配置し、放出端に光拡散部30を配置している。このように、パイプ部20でもって光拡散板を光源である発光素子1から離間させることにより、光路長を確保して光の拡散効果を高めることができる。
【0024】
筒状のパイプ部20の端面は、円環状としている。ただし筒状の端面は、円環状とする構成に限らず、楕円状や矩形状、多角形状等としてもよい。またこのパイプ部20は、第一パイプ領域21と第二パイプ領域22を有する。第一パイプ領域21は、光拡散部30の外径よりも小さい第一内径D1を有する。第二パイプ領域22は、第一パイプ領域21の上方において第一内径D1よりも大きい第二内径D2を有する。また第二パイプ領域22の高さH2は、後述する光拡散部30の厚さH3よりも高く形成する。光拡散部30の厚さH3と第二パイプ領域22の高さH2との差が、後述する厚さ方向マージンMVとなる。
【0025】
一方第一パイプ領域21は、その内壁の下端に、発光素子1の厚さよりも高い窪み部23を形成している。図5の分解斜視図や図6の断面図に示す例では、窪み部23はパイプ部20の導光端の端縁を面取りする、あるいは階段状に削り取るようにして形成される。このような窪み部23を形成したことで、発光装置100の組立時にパイプ部20を基板10上に固定する際、パイプ部20の内壁を発光装置100に接触させるおそれを低減でき、発光素子1の保護が図られる。
【0026】
またパイプ部20の高さHPは、このパイプの内径、具体的には第二内径D2よりも小さく形成することが好ましい。これにより、パイプ部20でもって光拡散板を複数の発光素子1から離間させて光路長を確保しつつも、光路長が長くなって光がパイプ部20内で反射され吸収されて効率が低下する事態を抑制できる。
(パイプ側ベース領域24)
【0027】
またパイプ部20は、第一パイプ領域21の下端から外側に延長された、基板10に固定するためのパイプ側ベース領域24を備えている。パイプ側ベース領域24は、好ましくは複数設けられている。複数のパイプ側ベース領域24は、パイプ部20の周囲に等間隔に配置される。図4図5の例では、平面視において3つのパイプ側ベース領域24が、約120°の間隔で配置されている。さらに各パイプ側ベース領域24の裏面側、すなわち基板10と接する面には、図5に示すようにパイプ側固定部として、先端にパイプ側ピン25が設けられる。また基板10側には、パイプ部20を配置領域を囲む姿勢に配置した際に、パイプ側ピン25と対応する位置に、基板側第一固定部として基板側第一ピン穴15が開口される。パイプ側ピン25を、基板側第一ピン穴15に嵌合して、パイプ部20は基板10上に固定される。なお本発明は、パイプ部を基板に固定する構造を、ピンとピン穴の嵌合に限定せず、他の既知の固定方法、例えばねじやボルトによる螺合、かしめ、接着等を適宜利用できる。
(光拡散部30)
【0028】
光拡散部30は、複数の発光素子1が発する光を拡散させて透過させるための部材である。このような光拡散部30は、透光性を有すると共に、両面又は片面を粗面にしている、又は光を拡散させる拡散材を分散させている。また光拡散部30は、パイプ部20と異なる材料で構成される。例えば耐熱性、耐光性に優れたガラス板で光拡散部30を構成することでその劣化を抑制できる。特に、LEDのような強い光を照射する発光素子を用いると、強い光に晒されることになる。LEDを複数個使用する場合は、さらに強い光となる。加えて複数の発光素子では発熱量もこれに応じて多くなる。このため光拡散部30には耐光性、耐熱性などの高い耐久性が求められ、有機系の樹脂材よりも無機系の材質が好ましい。
【0029】
光拡散部30は、第二パイプ領域22の内側であって第一パイプ領域21の上端に配置される。このように、導光管としてパイプ部20を設け、かつ放出端に光拡散部30を設けたことで、複数の発光素子1の発する光を比較的均一に混色でき、ムラの少ない高品質な発光装置を得ることが可能となる。
【0030】
光拡散部30を構成する材料は、例えば、ケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスなどのガラス材料が挙げられる。光拡散部30の両面又は片面を粗面にする方法としては、サンドブラスト、研磨等を用いることができる。
【0031】
また光拡散部30に、拡散材の他、蛍光体等を有していてもよい。拡散材や蛍光体は光拡散部30の内部に含有させてもよいし、光拡散部30の両面又は片面に拡散材や蛍光体を含有する層を設けてもよい。拡散材や蛍光体を含有する層を形成する方法としては、例えば、印刷、スプレー法、電着法、静電塗装法を用いることができる。あるいは樹脂に蛍光体を含有させた材料から成る蛍光体シート等を光拡散部に接着してもよい。
【0032】
拡散材としては、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等を用いることができる。
(カバー部40)
【0033】
カバー部40は、光拡散部30をパイプ部20との間で保持するための部材である。このカバー部40は、基板10に固定される。カバー部40は、被覆領域41と、保持領域42と、カバー側ベース領域43を備える。カバー部40は、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン等で構成される。好ましくは、パイプ部20と同じ部材で構成する。
(被覆領域41)
【0034】
カバー部40の被覆領域41は、パイプ部20の外径よりも大きい内径を有する筒状に形成される。被覆領域41はパイプ部20の形状に応じて形成され、パイプ部20が円筒形に形成される場合は、被覆領域41はこれよりも一回り大きい円筒形に形成される。この被覆領域41でもって、パイプ部20の外側面を被覆する。
(保持領域42)
【0035】
保持領域42は、被覆領域41の上端から内側に延長されて、第二内径D2よりも小さい内径DCの開口窓を形成している。このように形成することで、図6の断面図に示すよう保持領域42で、第二パイプ領域22の上端を被覆すると共に、その間で光拡散部30の周囲を保持する。
(熱膨張による変形緩和機能)
【0036】
光拡散部30はパイプ部20に直接固定されておらず、パイプ部20の段差に載置して保持された状態となっている。いいかえると、光拡散部30をパイプ部20とカバー部40で保持し、パイプ部20とカバー部40のそれぞれを基板10に固定している。すなわち、パイプ部20とカバー部40同士も、直接固定されていない。このような構成によって、熱膨張によって生じる応力を緩和することができる。
【0037】
導光管を構成するパイプ部を樹脂製等の有機材料とした場合、ガラス等の無機材料である光拡散部とは線膨張係数が異なり、高温時には樹脂製のパイプ部の変形量がガラス製の光拡散部よりも大きくなる。よって、光拡散部をパイプ部と一体に成形した場合は、パイプ部と光拡散部との接合界面で熱によりパイプ部が膨張し光拡散部を押圧すると、その反作用によってパイプ部が破損される可能性があった。これに対して実施形態1に係る発光装置100では、パイプ部20と光拡散部30とを一体に形成せず、敢えて隙間(マージン)を設けた状態にて保持することで、いわば遊びを意図的に設けることで、このような熱応力による破損を回避している。
(マージン)
【0038】
上述の通り光拡散部30と、これを保持するパイプ部20やカバー部40との間には、マージンが設けられる。具体的には、光拡散部30と第二パイプ領域22との間、すなわち光拡散部30の水平方向である横方向マージンMHと、光拡散部30と保持領域42との間、すなわち水平拡散部の鉛直方向である厚さ方向マージンMVが、それぞれ形成される。このようにマージンを設けたことで、光拡散部30よりも線膨張係数の大きいパイプ部20及びカバー部40が、発光素子の発熱によって膨張した際、光拡散部30との接触面で押圧されて変形しクラックや歪み等が生じる事態を、マージンで吸収することが可能となる。
【0039】
また横方向マージンMHを、厚さ方向マージンMVよりも大きく形成することが好ましい。これにより、熱膨張によって変形量が大きくなる周囲方向のマージンを、厚さ方向よりも大きく採ることで、周方向の変形を抑制してより確実に発光装置100の保護を図ることが可能となる。
【0040】
このように、パイプ部20でもって光拡散板を複数の発光素子1から離間させることにより、光路長を確保して光の拡散効果を高めることに加えて、光拡散部30よりも線膨張係数の大きいパイプ部20及びアウター部が、発光素子1の発熱によって膨張した際、光拡散部30との接触面で押圧されて変形しクラックや歪み等が生じる事態を、マージンを設けたことで吸収することが可能となる。
(カバー側ベース領域43)
【0041】
カバー側ベース領域43は、カバー部40を基板10に固定するための部材である。カバー側ベース領域43は、被覆領域41の下端から外側に延長されている。図4等の例では、カバー側ベース領域43は三角形状に形成される。三角形状のベース領域の中央に、被覆領域41が設けられる。すなわち、平面視において円筒形の被覆領域41が、三角形状のカバー側ベース領域43にほぼ内接する姿勢に設けられる。そして、カバー側ベース領域43を形成する三角形状の各頂点に、基板10と固定するためのカバー側固定部としてカバー側貫通孔44を形成している。基板10側には、カバー部40を配置した際にカバー側貫通孔44と対応する位置に、基板側第二固定部として基板側第二貫通孔16を形成している。カバー側貫通孔44と基板側第二貫通孔16に、ねじやボルト、リベットピンなどのピン材PNを挿通して、カバー部40を基板10に固定する。基板側第二貫通孔16は、長穴に形成することが好ましい。これにより、多少の製造公差や位置ずれを吸収して、カバー部40を基板10に確実に固定できる。なお図4図5等の例では、カバー部40を基板10に固定する構造としてカバー側貫通孔44と基板側第二貫通孔16の組み合わせに限らず、既知の固定構造を適宜利用できることは言うまでもない。例えば図9に示す変形例では、カバー側固定部としてカバー側貫通孔に代えて、切り欠き44Bを形成している。この構成のカバー側固定部は、同様にねじなどのピン材で基板10の基板側第二貫通孔16と螺合できる。またこの構成であれば多少の位置ずれにも対応できるので、基板側第二貫通孔16を長穴とせずともよい。
【0042】
基板10上において、パイプ部20を固定する基板側第一固定位置と、カバー部40を固定する基板側第二固定位置とは、図4図5の例では、異なる位置としている。すなわち、基板側第一固定位置と基板側第二固定位置とを同じ数とし、かつ第一固定位置同士の間に、第二固定位置が位置するよう、交互に設けている。これにより、パイプ部20とカバー部40とをそれぞれ安定して、基板10に確実に固定することができる。
【0043】
またカバー部40は、カバー側固定部同士の間に、被覆部と連通するスリット46を形成することができる。図1に示すカバー部40の例では、三角形状のカバー側ベース領域43の、各隅部を階段状に折曲させて、基板10と接触させつつ、カバー側ベース領域43の内、隅部以外の領域は基板10から離間させてスリット46を形成している。このスリット46によって、熱による反りを抑制することができる。また、このスリット46を通じて、カバー部40で被覆されたパイプ部20はパイプ側ベース領域24をカバー部40から部分的に表出させることができる。これにより、カバー部40はパイプ部20を完全に被覆することなく、基板10に固定することが可能となる。換言すると、カバー部40を必要以上に大型化させることなく、パイプ部20のパイプ側パイプ領域21及び第二パイプ領域22を被覆して光拡散部30を保持できる。
【0044】
ただ、本発明はパイプ部とカバー部の固定位置を共通としてもよい。例えばパイプ側ベース領域に固定穴を設け、カバー側貫通孔と重なるように配置することで、共通のねじなどで基板にパイプ部とカバー部とを同時に固定できる利点が得られる。
【0045】
保持領域42’の内面47’は、図10Aの拡大断面図に示すように垂直面状に形成してもよいが、図10Bの拡大断面図に示すようにテーパ状に形成することが好ましい。図10Bに示す例では、カバー部40の保持領域42の内面47、すなわち開口窓の端面を、断面視において下り勾配に傾斜させることで、端面を傾斜させたことによる光の反射される成分を低減することが可能となる。これにより、光拡散部30を覆うカバー部40’の端縁で光が反射されて、投光パターンがカバー部40’の端縁に沿って二重の環状に投影されてしまう事態を効果的に回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の実施形態に係る発光装置は、医療用の無影灯などに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1000…照明装置
100…発光装置
1…発光素子;1a…第一発光素子;1b…第二発光素子
10…基板
15…基板側第一ピン穴
16…基板側第二貫通孔
20…パイプ部
21…第一パイプ領域
22…第二パイプ領域
23…窪み部
24…パイプ側ベース領域
25…パイプ側ピン
30…光拡散部
40、40’…カバー部
41…被覆領域
42、42’…保持領域
43…カバー側ベース領域
44…カバー側貫通孔;44B…切り欠き
46…スリット
47、47’…保持領域の内面
50…リフレクタ
110…発光装置
111…導光パイプ
130…拡散ガラス
D1…第一内径
D2…第二内径
DC…保持領域の内径
H2…第二パイプ領域の高さ
H3…光拡散部の厚さ
HP…パイプ部の高さ
MV…厚さ方向マージン
MH…横方向マージン
PN…ピン材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11