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特許7002579正確なフォトレジスト輪郭予測のためのモデル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】正確なフォトレジスト輪郭予測のためのモデル
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/26 20060101AFI20220113BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
G03F7/26 501
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020033536
(22)【出願日】2020-02-28
(62)【分割の表示】P 2016558041の分割
【原出願日】2015-03-16
(65)【公開番号】P2020112805
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2020-03-25
(31)【優先権主張番号】61/954,592
(32)【優先日】2014-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/220,446
(32)【優先日】2014-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スミス マーク ディー
(72)【発明者】
【氏名】バイアフォア ジョン ジェイ
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-517868(JP,A)
【文献】特開2008-091721(JP,A)
【文献】特開2003-068625(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0224963(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101738874(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/26
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトレジストをモデル化するシステムであって、
プロセッサを含むコンピュータと、
前記プロセッサに結合され、前記プロセッサで実行可能な1つ以上のプログラム命令であって、
フォトリソグラフィープロセスのための1つ以上のプロセスパラメータを前記プログラム命令に格納された数学モデルに提供し、前記フォトリソグラフィープロセスは半導体ウェハ表面にフォトレジストを形成するために使用され、前記フォトレジストは、少なくとも1つのブロックポリマーを含み、前記プロセスパラメータの少なくとも1つはフォトレジスト内部のブロックポリマー濃度を含み、
フォトリソグラフィープロセスのために前記数学モデルを実行し、前記数学モデルは、フォトリソグラフィープロセスを用いて前記半導体ウェハ表面に形成される前記フォトレジストをモデル化するために用いられ、ブロックポリマー濃度勾配方程式は前記数学モデルで実行され、前記ブロックポリマー濃度勾配方程式は、前記数学モデルでモデル化されるフォトレジストの内部におけるブロックポリマーの濃度勾配を表し、前記ブロックポリマー濃度勾配方程式は、前記ブロックポリマーの濃度勾配を、フォトレジストと半導体ウェハ表面との界面からの距離、濃度低下の割合、低下の深さの関数として表し、前記ブロックポリマー濃度勾配方程式は、
M=(R-1)e -z/δ +1
から成り、式中、Mはブロックポリマー濃度、Rは濃度低下の割合、δは低下の深さ、かつzは界面からの距離であり、
前記半導体ウェハ表面に形成される前記フォトレジストのモデル化されたフォトレジストプロファイルを評価し、
前記モデル化されたフォトレジストプロファイルの評価に基づき、前記フォトリソグラフィープロセスの1つ以上のプロセスパラメータを調整して、前記半導体ウェハ表面に形成されるフォトレジストのモデル化されたフォトレジストプロファイルを制御する
システム。
【請求項2】
前記ブロックポリマー濃度勾配方程式は、前記フォトレジストの内部における前記ブロックポリマーの初期の濃度勾配を表している、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ブロックポリマー濃度は、前記フォトレジストの界面におけるブロックポリマー基準濃度に対して選択された値に調整される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記選択された値は、前記ブロックポリマー基準濃度より約20パーセント乃至約40パーセント低い、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記ブロックポリマー濃度勾配方程式は、前記フォトレジストの表面近傍において高まるブロックポリマー濃度を表しており、
前記ブロックポリマー濃度は、前記濃度が前記フォトレジスト内に向かうに連れて低下する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ブロックポリマー濃度勾配方程式は、前記フォトレジスト内のブロックポリマー濃度勾配を指数関数として表す、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
フォトレジスト断面プロファイルをモデル化する方法であって、
フォトリソグラフィープロセスのための1つ以上のプロセスパラメータをコンピュータプロセッサを用いて実行される数学モデルに提供し、前記フォトリソグラフィープロセスは半導体ウェハ表面にフォトレジストを形成するために使用され、前記フォトレジストは、少なくとも1つのブロックポリマーを含み、前記プロセスパラメータの少なくとも1つはフォトレジスト内部のブロックポリマー濃度を含み、
前記コンピュータプロセッサを用い、半導体ウェハ表面に形成されるフォトレジストのフォトレジストプロファイルを前記数学モデルでモデル化し、前記数学モデルは、ブロックポリマー濃度勾配方程式を含み、前記ブロックポリマー濃度勾配方程式は、前記数学モデルでモデル化されるフォトレジストの内部におけるブロックポリマーの濃度勾配を表し、前記ブロックポリマー濃度勾配方程式は、前記ブロックポリマーの濃度勾配を、フォトレジストと半導体ウェハ表面との界面からの距離、濃度低下の割合、低下の深さの関数として表し、
前記ブロックポリマー濃度勾配方程式は、
M=(R-1)e -z/δ +1
から成り、式中、Mはブロックポリマー濃度、Rは濃度低下の割合、δは低下の深さ、かつzは界面からの距離であり、
前記半導体ウェハ表面に形成される前記フォトレジストのモデル化されたフォトレジストプロファイルを前記コンピュータプロセッサを用いて評価し、
前記モデル化されたフォトレジストプロファイルの評価に基づき、前記フォトリソグラフィープロセスの1つ以上のプロセスパラメータを前記コンピュータプロセッサを用いて調整して、前記半導体ウェハ表面に形成されるフォトレジストのモデル化されたフォトレジストプロファイルを制御する
方法。
【請求項8】
前記ブロックポリマー濃度勾配方程式は、前記フォトレジスト内のブロックポリマーの初期の濃度勾配を表す、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ブロックポリマー濃度を、前記フォトレジストの界面におけるブロックポリマー基準濃度に対して選択された値に調整することを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記選択された値は、前記ブロックポリマー基準濃度より約20パーセント乃至約40パーセント低い、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ブロックポリマー濃度勾配方程式は、前記フォトレジスト内のブロックポリマー濃度勾配を指数関数として表す、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
プロセッサにより実行可能なプログラム命令を含むコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記プロセッサにより、
フォトリソグラフィープロセスのための1つ以上のプロセスパラメータを数学モデルに提供し、前記フォトリソグラフィープロセスは半導体ウェハ表面にフォトレジストを形成するために使用され、前記フォトレジストは、少なくとも1つのブロックポリマーを含み、前記プロセスパラメータの少なくとも1つはフォトレジスト内部のブロックポリマー濃度を含み、
前記プログラム命令に格納された前記フォトリソグラフィープロセスのための前記数学モデルを用いて前記半導体ウェハ表面上のフォトレジストのためのフォトレジストプロファイルを形成し、前記数学モデルは、ブロックポリマー濃度勾配方程式を含み、前記ブロックポリマー濃度勾配方程式は、前記数学モデルでモデル化されるフォトレジストの内部におけるブロックポリマーの濃度勾配を表し、前記ブロックポリマー濃度勾配方程式は、前記ブロックポリマーの濃度勾配を、フォトレジストと半導体ウェハ表面との界面からの距離、濃度低下の割合、低下の深さの関数として表し、前記ブロックポリマー濃度勾配方程式は、
M=(R-1)e -z/δ +1
から成り、式中、Mはブロックポリマー濃度、Rは濃度低下の割合、δは低下の深さ、かつzは界面からの距離であり、
前記半導体ウェハ表面に形成される前記フォトレジストのフォトレジストプロファイルを前記数学モデルで評価し、
前記フォトレジストプロファイルの前記数学モデルでの評価に基づき、前記フォトリソグラフィープロセスの1つ以上のプロセスパラメータを調整して、前記半導体ウェハ表面に形成されるフォトレジストのモデル化されたフォトレジストプロファイルを制御する
コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項13】
前記ブロックポリマー濃度勾配方程式は、前記フォトレジストの内部における前記ブロックポリマーの初期の濃度勾配を表す、請求項12に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
前記ブロックポリマー濃度を、前記フォトレジストの界面における前記ブロックポリマーの基準濃度に対して選択された値に調整することを更に含む、請求項12に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
前記選択された値は、前記ブロックポリマー基準濃度より約20パーセント乃至約40パーセント低い、請求項14に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項16】
前記ブロックポリマー濃度勾配方程式は、前記フォトレジスト内のブロックポリマー濃度勾配を指数関数として表す、請求項12に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
少なくとも1つの調整された前記プロセスパラメータは、前記フォトレジスト内のブロックポリマー濃度である、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体を加工する間に用いるフォトレジストに関する。より詳しくは、本発明は、半導体表面上のフォトレジストの輪郭を予測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
優先権主張
この特許は、2014年3月17日に出願された米国仮特許出願第61/954,592号について優先権を主張する。なお、当該出願の内容の全体がこの参照によって本明細書に援用されるものとする。
半導体表面上にフォトレジストを付着させた後のフォトレジストの断面形状を予測して正確に表すことは、フォトレジストの品質についての重要な測定規準である。フォトレジストの薄い部分は、その後の半導体加工の間における短絡あるいは破損を生じさせて、その半導体加工によって製造された半導体素子の不良あるいは性能低下に結びつき得る。例えば、エッチング工程の間に、フォトレジストのパターンをその下方にある表面(例えば、半導体基板)に適切に転写するためには、フォトレジストには最小限の厚みが必要である。
【0003】
フォトレジストを現像する間におけるフォトレジストの挙動及び高さ損失の予測を試みるべく、表面抑制/促進モデルが用いられて、かなりの成功を収めてきている。現在の表面抑制/促進モデルは、典型的に、丸い上角部と比較的平坦な上面によりフォトレジストの断面を予測している。図1は、現在の表面抑制/促進モデルを用いて見いだされるフォトレジスト輪郭の実施例の断面を図示している。フォトレジスト102は、半導体ウェハ100の上に形成されるものとしてモデル化されている。図1に示すように、フォトレジスト102は、丸い上角部と比較的平坦な上面の断面輪郭を有している。しかしながら、実験に基づく断面データは、通常、完全に丸い上部(例えば、ドーム状の輪郭)のフォトレジスト輪郭を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2014/0067346号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フォトレジストの丸い上部輪郭をより正確に予測することを試みるべく、追加のモデリング要素が表面抑制/促進モデルに追加されてきた。例えば、フォトレジスト輪郭について比較的良好な断面形状を生じさせるべく、PEB(露光後現像前ベーク)の間の酸による汚染が追加されてきた。酸による汚染の追加には、露光プロセスにより生じることがなかったフォトレジスト表面の上部に対する酸の追加が含まれる。しかしながら、この方法は、トップコートを用いるときにだけ見込みが有るメカニズムをモデル化するものであり、かつ丸い上部輪郭は、トップコートを有していないフォトレジストシステム(例えば、液浸ArFフォトレジストシステム)において観察されてきている。従って、PEBの間の酸による汚染は、フォトレジストにおけるトップロスについては起こりそうにないメカニズムである。加えて、トップレジストの厚みロスは、多くの場合、様々な特徴にわたって比較的一様であり、かつ酸による汚染は一様なトップロスを予測しない。
【0006】
他のフォトレジストモデルは、フォトレジストの他の成分(例えば、光酸発生剤(PAG)あるいは失活剤の成分)の不均一な濃度を考慮して、フォトレジストの断面形状を変化させている。例えば、PAGの濃度あるいは失活剤の成分は、フォトレジストの内部に勾配を有し得る。しかしながら、PAGあるいは失活剤の成分の不均一な濃度を用いるそのようなモデルは、暗い(露光されない)領域におけるレジストのロスを示さないが、レジストのロスは暗い領域において実験的に観察されている。従って、フォトレジストを現像(処理)する間のトップロスの原因となるメカニズムをより正確に予測しかつシミュレートするフォトレジストモデルが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある実施形態において、フォトレジストをモデル化するシステムは、フォトリソグラフィープロセスのための数学的モデルを含む。その数学的モデルは、コンピュータのプロセッサを用いて実行可能とすることができる。ブロックポリマー濃度勾配方程式は、その数学的モデルにおいて実行することができる。ブロックポリマー濃度勾配方程式は、数学的モデルによりモデル化されるフォトレジスト内のブロックポリマー濃度勾配を表すことができる。数学的モデルは、半導体ウェハの表面上に形成されるフォトレジストをモデル化するために用いることができる。
【0008】
ある実施形態において、フォトレジストの断面プロファイルをモデル化する方法は、コンピュータプロセッサを用いて実行されるフォトリソグラフィープロセスの数学的モデルを用いて、半導体ウェハの表面上に形成されるフォトレジストのフォトレジストプロファイルをモデリングすることを含む。数学的モデルは、ブロックポリマー濃度勾配方程式を含むことができる。ブロックポリマー濃度勾配方程式は、数学的モデルによりモデル化されるフォトレジスト内のブロックポリマーの濃度勾配を表すことができる。
【0009】
ある実施形態において、コンピュータ可読記憶媒体は、プログラム命令に格納されているフォトリソグラフィープロセスのための数学的モデルを用いて、半導体ウェハの表面上のフォトレジストのフォトレジストプロファイルを形成する、プロセッサにより実行可能なプログラム命令を含んでいる。数学的モデルは、ブロックポリマー濃度勾配方程式を含むことができる。ブロックポリマー濃度勾配方程式は、数学的モデルによりモデル化されるフォトレジスト内のブロックポリマーの濃度勾配を表すことができる。
【0010】
いくつかの実施形態において、ブロックポリマー濃度勾配方程式は、フォトレジストの内部におけるブロックポリマーの初期の濃度勾配を表す。いくつかの実施形態において、ブロックポリマー濃度は、フォトレジストの界面におけるブロックポリマー容積濃度の選択値に調整される。いくつかの実施形態において、ブロックポリマー濃度勾配方程式は、フォトレジスト内のブロックポリマー濃度勾配を指数関数として表す。いくつかの実施形態において、数学的モデルは表面抑制/促進モデルを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の方法及び装置の特徴及び利点は、本発明による目下のところは好ましいがそれでもなお例証となる実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面と共に参照することによって、より完全に理解される。
図1】現在の表面抑制/促進モデルを用いて見いだされる、一実施例のフォトレジスト輪郭の断面の表現を示す図である。
図2】フォトレジスト断面プロファイルをモデル化する、典型的な方法の一実施形態のフローチャートである。
図3】最初のブロックポリマー濃度勾配を表す方程式によりフォトレジスト断面プロファイルをモデル化する、一実施形態のプロセスのフローチャートである。
図4】最初のブロックポリマー濃度勾配を表す方程式が与えられた表面抑制/促進モデルを用いて見いだされる、フォトレジスト輪郭の断面の表現を示す図である。
図5】実験的な観察により見いだされたフォトレジスト輪郭のSEM画像の一実施例を示す図である。
図6】表面抑制/促進モデルにおいて異なるパラメータを用いて見いだされたフォトレジスト輪郭の断面の表現の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は様々な変形及び代わりの形態が可能であるが、その特定の実施形態が例証のために図面に示され、かつ本明細書に詳細に記載される。図面は、尺度通りでないことがあり得る。ここで理解されるべきことは、図面及び詳細な説明が、開示されている特定の形態に本発明を限定することは意図されておらず、それとは対照的に、添付の請求の範囲によって定まる本発明の精神及び範囲に含まれる全ての変形例、等価物及び代替物をカバーすることが意図されていることである。
【0013】
化学増幅型フォトレジストは、フォトレジストの露光及びその後に続く加工の後の半導体ウェハ上のパターンを定めるべく、半導体の加工において一般的に用いられている。化学増幅型フォトレジストは、フォトレジストを半導体ウェハ上に堆積させる(例えば、吐出させる)ときに「ブロック基」を含むことができる。「ブロック基」は、フォトレジストを現像溶液に対して不溶性とするフォトレジストの化学基(例えば、ポリマー基)である。
【0014】
化学増幅型フォトレジストで覆われた半導体ウェハは、スキャナあるいはステッパ上で露光され、かつ露光の光はレジスト内に酸を生成させる光学反応を生じさせる。その後に続く半導体加工(例えば、露光後現像前ベーク(PEB))の間に、この酸はブロック基(例えば、ブロックポリマー基)と反応し、不溶性のブロック基の部分を現像溶液に対して可溶性の化学基に変換させる。典型的なフォトレジストモデルは、最初のフォトレジストフィルム(例えば「堆積させた状態の」フォトレジストフィルム)の内部のブロック基の濃度を均一であるとしてモデル化している。均一なブロック基(例えば、均一なブロックポリマー濃度)によるフォトレジストのモデル化は、主としてフォトレジスト内の光の強度により決定される断面形状を現像されたフォトレジストの内部に生じさせて、(図1に示すような)丸い上角部及び比較的平坦な上面に帰着する。
【0015】
図2は、フォトレジストの断面輪郭(例えば、フォトレジスト断面形状)をモデル化する典型的なプロセスの一実施形態のフローチャートを示している。プロセス200は、例えば、フォトリソグラフィープロセスのために数学的モデル(例えば、表面抑制/促進モデル)とすることができる。図2においては、長方形はシミュレートされたフォトリソグラフィープロセスを表し、かつ楕円形は算出あるいはシミュレーションの結果を表していることに留意されたい。ある実施形態において、プロセス200は画像シミュレーション202から開始する(画像シミュレーションのための全ての入力が示されるわけではない点に留意されたい)。画像シミュレーション202は、フォトレジスト強度204を出力することができる。
【0016】
ある実施形態において、フォトレジスト強度204は、光酸発生剤(PAG)の濃度206と共に露光シミュレーション208に入力される。PAG濃度206は、フォトレジスト表面からの(z-方向で表される)距離の関数とすることができる。フォトレジスト表面からの距離の関数としてのPAG濃度206は、フォトレジストの断面形状を制御する方法として知られている。ある実施形態において、露光シミュレーション208の出力は酸の濃度210である。酸の濃度210は、フォトレジストのフィルム全体にわたってあらゆる方向に(例えば、x-、y-、及びz-方向の関数として)変化し得る。
【0017】
酸の濃度210は、失活剤の濃度212及びブロックポリマー濃度214と共に、露光後現像前ベーク(PEB)シミュレーション218に入力することができる。いくつかの実施形態において、酸による汚染216をPEBシミュレーション218に入力することができる。酸の汚染216は、フォトレジスト表面からの(z-方向)の距離の関数とすることができる。フォトレジスト表面からの距離の関数としての酸の汚染216は、フォトレジストの断面形状を制御する方法として知られている。失活剤の濃度212は、フォトレジスト表面からの(z-方向)距離の関数とすることができる。フォトレジスト表面からの距離の関数としての失活剤濃度212は、フォトレジストの断面形状を制御する方法として知られている。
【0018】
ある実施形態において、ブロックポリマー濃度214は、フォトレジストフィルムの全体にわたって一定(例えば、均一)であるとみなされる。PEBシミュレーション218の出力は、ブロックポリマー濃度220であり、それはx-、y-、及びz-方向の関数である。ブロックポリマー濃度220は、現像速度モデル222と共にフォトレジスト現像シミュレーション224に入力することができる。ある実施形態において、現像速度モデル222は、フォトレジスト表面からの(z-方向の)距離によって決まる表面機能を含むことができる。フォトレジスト表面近傍の現像速度の促進あるいは抑制は、フォトレジスト断面形状を制御する方法として知られている。
【0019】
ある実施形態において、フォトレジスト現像シミュレーション224の結果は、最終的なレジスト形状226である。図1は、プロセス200を用いて見いだされた最終的なレジスト形状226の実施例を示している(例えば、最終的なレジスト形状226は、半導体ウェハ100上のフォトレジスト102により表されている)。従って、図2に示すプロセス200は、図1に示すような、丸い上角部及び比較的平坦な上面を有するフォトレジスト断面輪郭を生じさせることができる。ブロックポリマー濃度214が均一である仮定するからである。
【0020】
しかしながら、フォトレジストに用いるポリマーは、典型的に二つあるはより多くの異なるポリマーの混合物である。例えば、フォトレジストは、高分子量及び低分子量のポリマーを含むことができる。溶解速度がポリマーの分子量によって決まるので、フォトレジストの全体にわたるポリマー濃度には、フォトレジストを現像する前後において差(例えば、勾配)があり得る。いくつかの実施形態において、フォトレジストは、異なるブロッキングレベルのポリマーを含む。異なるブロッキングレベルは、異なるバッチの原材料の品質を管理するために用いることができる。いくつかの実施形態において、フォトレジストは、一つあるいは複数の埋め込みバリヤー層を含む。例えば、フォトレジストは、液浸のためにトップコートのないポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態において、フォトレジストは、「通常の」ポリマー(例えば、典型的なフォトレジストポリマー)とPAG(光酸発生剤)官能基を含むポリマーの混合物を含む。
【0021】
フォトレジストにおける異なるポリマーの調合は、フォトレジストのブロッキングレベルの垂直方向の勾配に結びつき得る。ブロッキングレベルの垂直方向の勾配は、鉛直方向に濃度勾配が変化する、フォトレジスト内の一つあるいは複数のブロック基により生じ得る。例えば、トップコートのないフォトレジストは、フォトレジストの表面に対し段階的に分離する疎水性の添加剤を用いることができる。
【0022】
Hasegawa他に対する欧州特許第2466379号明細書、Maeda他による米国特許出願公開第2012/0064459号明細書、及び(液浸リソグラフィーについての第4回国際シンポジウムで提示された)D.Sanders他による「193ナノメートルフォトレジストの界面エネルギーのための新しい材料」は、フォトレジストの表面に対し段階的に分離する疎水性の添加剤の例を記載している。なお、これらの文献のそれぞれが、この参照により、本明細書において完全に述べているように援用される。疎水性の添加剤を含むフォトレジストの添加剤の充填量は、典型的に1%~5%である。いくつかの添加剤は、現像により性質が切り換わるが(例えば、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)に対し可溶性の酸性基を含む)、いくつかの添加剤は光により性質が切り換わる(例えば、PEBの間における光感応性酸との反応の後にTMAHに対し可溶性となるブロック基を含む)。ある実施形態において、添加剤は、t-トッピング(例えば、その形体に大きな不溶性の頭部が形成されること)を回避するために、フォトレジストよりも「ドーズツークリア値」が低い。
【0023】
化学増幅型フォトレジストに見いだされるブロッキングレベルの垂直方向の勾配により、均一でないブロック基の濃度(例えば、ブロックポリマー濃度)を用いるフォトレジストのモデリングは、フォトレジストを加工した後におけるフォトレジストの断面輪郭のより正確な予測をもたらし得る。ある実施形態において、フォトレジストモデルに与えられるブロックポリマー濃度は、最初の(堆積させたときの)フォトレジストフィルムにおいては、フォトレジスト界面の近傍においてより低いあるいはより高い(例えば、最初のブロックポリマー濃度は、フォトレジストフィルムの上面あるいは底面の近傍で減少させられあるいは高められる)。いくつかの実施形態において、最初のブロックポリマー濃度は、フォトレジストフィルムの上面の近傍でより低く、かつフォトレジストフィルムの底面の近傍でより高い。
【0024】
しかしながら、フォトレジストモデル(例えば、表面抑制/促進モデル)に与えられる最初のブロックポリマー濃度は、現像及びその後に続く処理の後のフォトレジストの断面輪郭のより正確な予測をもたらすために、所望の通りに変化させることができる。例えば、フォトレジストモデルに与えられる最初のブロックポリマー濃度は、(例えば、SEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)、あるいは他の断面検査技術により)実験的観察の間に見いだされたフォトレジストの断面輪郭をより正確に表すべく、変化させることができる。
【0025】
ある実施形態において、最初のブロックポリマー濃度は、フォトレジストフィルムの上面(例えば、空気/レジスト界面)あるいは底面(例えば、ウェハ/レジスト界面)において、選択値に調整される(例えば、減少させあるいは増加される)。最初のブロックポリマー濃度の選択値は、基準(バルク)濃度に対し、フォトレジストフィルムの内部に向かうにつれて、勾配(例えば、ゆっくりとした変化あるいは減衰)を有することができる。いくつかの実施形態において、ブロックポリマーの濃度勾配は、フォトレジストフィルムの表面近傍においてブロックポリマー濃度が高くなると共に、フォトレジストフィルムの内部に向かうに連れてブロックポリマー濃度が低くなる。いくつかの実施形態において、ブロックポリマーの濃度勾配は、フォトレジストフィルムの表面近傍においてブロックポリマー濃度が低くなると共に、フォトレジストフィルムの内部に向かうに連れてブロックポリマー濃度は高くなる。
【0026】
フィルムの内部に向かう濃度の変化(例えば、濃度勾配)は指数関数で表すことができる。上面における最初のブロックポリマー濃度の選択値は、例えば、ブロックポリマー基準濃度より約20パーセント乃至約40パーセント低いものとすることができる。しかしながら、選択値の範囲は、それに限定するものではないが、例えばポリマーの分布やポリマーの組成物といったファクターに応じて変動し得る。例えば、選択値は、ブロックポリマー基準濃度より約10パーセント乃至約50パーセント低い、ブロックポリマー基準濃度より約25パーセント乃至約35パーセント低い、あるいはブロックポリマー基準濃度より約20パーセント乃至約30パーセント低いものとすることができる。
【0027】
いくつかの実施形態において、ブロックポリマー濃度は、例えば下記の式(1)といった方程式において指数関数的減衰で表される。
(式1) M=(R-1)e-z/δ+1
【0028】
ここで、Mはブロックポリマー濃度、Rは濃度低下の割合、δは低下の深さ、かつzは界面からの距離である。
【0029】
例えば上記の(式1)のような、フォトレジスト内部の最初のブロックポリマー濃度の指数関数的減衰を表す方程式を用いることにより、このモデルは、現像及びその後に続く加工の後のフォトレジストの断面形状(輪郭)、(例えば、半導体ウェハ上のパターンを定める、フォトレジストの結果として生じる断面形状)の、より正確な予測をもたらすことができる。従って、最初のブロックポリマー濃度勾配を表す方程式を表面抑制/促進モデルに与えることは、フォトレジストの断面形状にわたるより良好なモデリングの制御をもたらすと共に、より現実的なフォトレジスト輪郭形状(例えば、例えばドーム形の輪郭といった、実験的に観察される輪郭形状により良く似た輪郭形状)をもたらす。
【0030】
いくつかの実施形態においては、ブロックポリマー濃度の勾配を表す他の関数が用いられる。例えば、ブロックポリマー濃度の勾配を表すために、双曲正接関数を用いることができる。(式2)は、双曲正接関数の観点においてブロックポリマー濃度勾配を表すことができる。(式2)は以下の通りである:
(式2) M=(R-1)tanh(-z/δ)+R
【0031】
ある実施形態において、最初のブロックポリマー濃度勾配を表す方程式は、プロセッサ(例えば、コンピュータプロセッサ)により実行可能なソフトウェア内にプログラムされる。いくつかの実施形態において、最初のブロックポリマー濃度勾配を表す方程式は、コンピュータ可読記憶媒体(例えば、非一時的コンピュータ可読記憶媒体)にプログラム命令として格納され、かつその方程式はプロセッサにより実行される。ある実施形態において、最初のブロックポリマー濃度勾配を表す方程式は、フォトリソグラフィープロセスについての数学的モデル(例えば、表面抑制/促進モデル)の一部として実行される。最初のブロックポリマー濃度勾配を表す方程式は、数学的モデルの一部としてのコンピューターコードにおいて実行することができる。例えば、方程式は、フォトリソグラフィーモデルPROLITHの一部としてのコンピューターコードにおいて実行することができる。フォトリソグラフィープロセスについての数学的モデルは、コンピュータ可読記憶媒体(例えば、非一時的コンピュータ可読記憶媒体)にプログラム命令として格納することができ、かつプロセッサ(例えば、コンピュータ)により実行可能である。いくつかの実施形態において、フォトリソグラフィープロセスについての数学的モデルは、プロセッサにより実行可能なソフトウェアにプログラムされる。
【0032】
図3は、フォトレジスト断面プロファイル(例えば、フォトレジスト断面形状)を、最初のブロックポリマー濃度勾配を表す方程式でモデル化するプロセスの、一実施形態のフローチャートを示している。プロセス200’は、例えば、フォトリソグラフィープロセスについての数学的モデル(例えば、表面抑制/促進モデル)とすることができる。プロセス200’は、図2に示されているプロセス200と実質的に類似しているが、ブロックポリマー濃度214に代えて、ブロックポリマー濃度214’がPEBシミュレーション218に入力される点で異なっている。
【0033】
ある実施形態において、ブロックポリマー濃度214’は、フォトレジスト表面からの(例えば、z-方向の)距離の関数として与えられる。例えば、最初のブロックポリマー濃度勾配を表す方程式(例えば、上記の(式1)あるいは(式2))は、フォトレジスト表面からの距離の関数としてのブロックポリマー濃度214’を表すために用いることができる。フォトレジスト表面からの距離の関数としてのブロックポリマー濃度214’をもたらすことは、均一なブロックポリマー濃度を用いて見いだされる(例えば、図2に示すプロセス200において見いだされる)ものよりも、より正確なフォトレジスト断面輪郭を生じさせることができる。
【0034】
図4は、最初のブロックポリマー濃度勾配を表す方程式が与えられた表面抑制/促進モデル(例えば図3に示すプロセス200’)を用いて見いだされた、フォトレジスト輪郭の断面の表示を示している。ある実施形態において、フォトレジスト102’は、最初のブロックポリマー濃度勾配を表す方程式が与えられた表面抑制/促進モデルを用いて、半導体ウェハ100の上に形成されるものとしてモデル化される。図4に示すように、フォトレジスト102’は、より丸い断面輪郭(例えば、ドーム形の輪郭)を有することができる。フォトレジスト102’は、どちらかと言うと実験的観察で見いだされるフォトレジスト輪郭を表す断面輪郭を有している。図5は、実験的観察で見いだされるフォトレジスト輪郭のSEM画像の実施例を示している。
【0035】
図6は、表面抑制/促進モデルにおいて異なるパラメータを用いることで見いだされるフォトレジスト輪郭の断面表示の比較を示している。フォトレジスト輪郭300は、ブロックポリマー濃度勾配のない(例えば、ブロックポリマーが均一な濃度を有する)モデルを用いて形成されている。フォトレジスト輪郭302は、PEB酸汚染スパイクを追加したブロックポリマー濃度勾配なしのモデルを用いて形成されている。フォトレジスト輪郭304は、10ナノメートルである低下の深さδ、及び0.7である濃度低下の割合Rにより最初のブロックポリマー濃度勾配を表す(式1)を組み込んだモデルを用いて形成されている。フォトレジスト輪郭306は、10ナノメートルである低下の深さδ、及び0.4である濃度低下の割合Rにより最初のブロックポリマー濃度勾配を表す(式1)を組み込んだモデルを用いて形成されている。図6に示すように、最初のブロックポリマー濃度勾配を表す(式1)を組み込んだモデルを用いることにより、フォトレジストのより正確な(丸い)輪郭形状が見いだされる。加えて、フォトレジスト輪郭に示されるトップロスは、最初のブロックポリマー濃度勾配を表す(式1)を組み込んでいるモデルを用いると、PEB酸汚染スパイクを用いるモデルよりも、より一様となる。
【0036】
フォトレジストの輪郭形状のより正確な予測は、散乱計測モデル、及びフォトリソグラフィーの材料及びプロセスあるいはシミュレーションのコンピュータ支援による改良について、有用であり得る。例えば、正確なフォトレジスト輪郭(例えば、フォトレジストの3次元モデル)の算出は、それには限定されないが、例えばリソグラフィープロセスの最適化、光学的近接効果補正の検証(薄いフォトレジストによる故障モード)、及び(例えば散乱計測といった)モデルベースの計量のための正確な形状といった用途において有用であり得る。
【0037】
ここで理解されるべきことは、本発明が、記載した特定のシステムには限定されず、言うまでも無く、変化し得ることである。更に、ここで理解されるべきことは、本明細書において使用する用語は特定の実施形態を記載するためだけのものであり、限定を意図するものではないことである。この明細書において用いる単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容が明らかに他のものを示さない限り、複数の対象を含む。従って、例えば「形状」についての言及は二つ以上の形状の組合せを含み、かつ「ポリマー」についての言及はポリマーの混合物を含む。
【0038】
本発明の様々な態様の更なる変更及び代替的な実施形態は、この明細書を考慮すると、当業者にとって明らかである。従って、この明細書は、単に例示的なものであり、かつ本発明を実行する一般的なやり方を当業者に教示することを目的としているものと解釈されるべきである。ここで理解されるべきことは、本明細書に図示されかつ説明された本発明の形態が、目下の所好ましい実施形態であるとみなされるべきことである。要素及び材料を本明細書に図示かつ記載したものと入れ換えることができ、部品及びプロセスは反対にすることができ、かつ本発明のある特徴を独立して用いることができるが、それらの全ては本発明のこの説明から利益を得た当業者にとって明らかである。以下の請求の範囲に記載される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される要素において変更をなすことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6