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特許7002636光触媒粒子付き基材、通気性シートおよびマスク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】光触媒粒子付き基材、通気性シートおよびマスク
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20220113BHJP
   B01J 27/24 20060101ALI20220113BHJP
   B01J 27/198 20060101ALI20220113BHJP
   B01J 23/22 20060101ALI20220113BHJP
   C01B 3/04 20060101ALI20220113BHJP
   C01B 13/02 20060101ALI20220113BHJP
   D06M 23/08 20060101ALI20220113BHJP
   D06M 11/44 20060101ALI20220113BHJP
   D06M 10/00 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B01J35/02 J
B01J27/24 M
B01J27/198 M
B01J23/22 M
C01B3/04 A
C01B13/02 B
D06M23/08
D06M11/44
D06M10/00 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020509821
(86)(22)【出願日】2019-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2019009722
(87)【国際公開番号】W WO2019188199
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2018062320
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】油屋 吉宏
(72)【発明者】
【氏名】成田 岳史
(72)【発明者】
【氏名】冨川 晴貴
(72)【発明者】
【氏名】脇田 拓
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/081584(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/046305(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C01B 3/04;13/02-13/08
C01B 13/02
D06M 10/00-11/84;
16/00;19/00-23/18
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材に担持された2種以上の水分解用光触媒粒子とを有し、
前記基材が、吸水性ポリマーを20~100質量%含有する、光触媒粒子付き基材。
【請求項2】
前記2種以上の水分解用光触媒粒子が、少なくとも、水素発生用光触媒粒子と、酸素発生用光触媒粒子とを含む、請求項1に記載の光触媒粒子付き基材。
【請求項3】
更に、前記水素発生用光触媒粒子の表面に担持された水素発生用助触媒を有する、請求項2に記載の光触媒粒子付き基材。
【請求項4】
更に、前記酸素発生用光触媒粒子の表面に担持された酸素発生用助触媒を有する、請求項2または3に記載の光触媒粒子付き基材。
【請求項5】
前記基材が、多孔質体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の光触媒粒子付き基材。
【請求項6】
前記吸水性ポリマーが、多糖類である、請求項1~のいずれか1項に記載の光触媒粒子付き基材。
【請求項7】
前記吸水性ポリマーが、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストランナトリウム、セルロース、セルロースアシレート、アガロース、および、アルギン酸からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~のいずれか1項に記載の光触媒粒子付き基材。
【請求項8】
前記基材が、セルロース繊維を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の光触媒粒子付き基材。
【請求項9】
前記2種以上の水分解用光触媒粒子が、いずれも、酸化物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の光触媒粒子付き基材。
【請求項10】
前記水素発生用光触媒粒子が、チタン酸ストロンチウムである、請求項2に記載の光触媒粒子付き基材。
【請求項11】
前記酸素発生用光触媒粒子が、酸化タングステン、バナジウム酸ビスマス、窒化タンタル、および、二酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の光触媒粒子付き基材。
【請求項12】
前記水素発生用助触媒が、白金、パラジウム、ロジウム、および、ルテニウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項に記載の光触媒粒子付き基材。
【請求項13】
前記酸素発生用助触媒が、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、および、クロムからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物である、請求項に記載の光触媒粒子付き基材。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の光触媒粒子付き基材を用いた通気性シート。
【請求項15】
請求項14に記載の通気性シートを用いたマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒粒子付き基材、通気性シートおよびマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光触媒と太陽エネルギーとを用いて水を分解し、水素や酸素を製造する技術が注目されている。
光触媒によって水を分解する場合、水の還元反応(プロトンの還元反応)と水の酸化反応との双方を触媒する光触媒を用いることが好ましいが、そのような光触媒は種類が限られている。
そこで、水の還元反応を触媒する光触媒(水素発生用光触媒)と水の酸化反応を触媒する光触媒(酸素発生用光触媒)とを併用して水を効率的に分解することについて種々の検討がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、酸化チタンと、4価のレニウムを含むレニウム化合物と、を含む光触媒が記載されており([請求項1])、この光触媒を含む光触媒層を基材上に設けた光触媒機能性部材が記載されている([請求項4])。
【0004】
また、特許文献2には、基材と、基材に固定化されてなる光触媒層とを含んでなる光触媒材であって、光触媒層が、一次粒子径が100nm以下である水素発生用可視光応答型光触媒粒子と、酸素発生用可視光応答型光触媒粒子とを含み、水素発生用可視光応答型光触媒粒子と酸素発生用可視光応答型光触媒粒子とが互いに接触している、光触媒材が記載されている([請求項12])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-262071号公報
【文献】国際公開第2014/046305号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、特許文献1に記載された光触媒機能性部材、および、特許文献2に記載された光触媒材について検討したところ、光分解反応に用いる水の供給装置が必要となるため、これらを水分解用のモジュールや水素を製造するシステムに用いた場合には、装置全体が大型化ないし複雑化する場合があることを明らかした。
【0007】
そこで、本発明は、水の供給装置を必要とせず、水素を発生することが可能な光触媒粒子付き基材、ならびに、これを用いた通気性シートおよびマスクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、吸水性ポリマーを含有する基材に2種以上の光触媒粒子を担持させることにより、水の供給装置を必要とせず、水素を発生することが可能となることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0009】
[1] 基材と、基材に担持された2種以上の水分解用光触媒粒子とを有し、
基材が、吸水性ポリマーを含有する、光触媒粒子付き基材。
[2] 2種以上の水分解用光触媒粒子が、少なくとも、水素発生用光触媒粒子と、酸素発生用光触媒粒子とを含む、[1]に記載の光触媒粒子付き基材。
[3] 基材が、多孔質体である、[1]または[2]に記載の光触媒粒子付き基材。
[4] 吸水性ポリマーが、多糖類である、[1]~[3]のいずれかに記載の光触媒粒子付き基材。
[5] 吸水性ポリマーが、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストランナトリウム、セルロース、セルロースアシレート、アガロース、および、アルギン酸からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれかに記載の光触媒粒子付き基材。
[6] 基材が、セルロース繊維を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の光触媒粒子付き基材。
【0010】
[7] 更に、水素発生用光触媒粒子の表面に担持された水素発生用助触媒を有する、[1]~[6]のいずれかに記載の光触媒粒子付き基材。
[8] 更に、酸素発生用光触媒粒子の表面に担持された酸素発生用助触媒を有する、[1]~[7]のいずれかに記載の光触媒粒子付き基材。
[9] 2種以上の水分解用光触媒粒子が、いずれも、酸化物である、[1]~[8]のいずれかに記載の光触媒粒子付き基材。
[10] 水素発生用光触媒粒子が、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)である、[2]に記載の光触媒粒子付き基材。
[11] 酸素発生用光触媒粒子が、酸化タングステン(WO)、バナジウム酸ビスマス(BiVO)、窒化タンタル(Ta)、および、二酸化チタン(TiO)からなる群から選択される少なくとも1種である、[2]に記載の光触媒粒子付き基材。
[12] 水素発生用助触媒が、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、および、ルテニウム(Ru)からなる群から選択される少なくとも1種である、[7]に記載の光触媒粒子付き基材。
[13] 酸素発生用助触媒が、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、および、クロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物である、[8]に記載の光触媒粒子付き基材。
[14] [1]~[13]のいずれかに記載の光触媒粒子付き基材を用いた通気性シート。
[15] [14]に記載の通気性シートを用いたマスク。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水の供給装置を必要とせず、水素を発生することが可能な光触媒粒子付き基材、ならびに、これを用いた通気性シートおよびマスクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
[光触媒粒子付き基材]
本発明の光触媒粒子付き基材は、吸水性ポリマーを含有する基材と、基材に担持された2種以上の水分解用光触媒粒子(以下、単に「光触媒粒子」とも略す。)とを有する。
ここで、「吸水性ポリマー」とは、吸水倍率1.03倍以上で、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法により測定した重量平均分子量が1000以上のポリマーを指す。
なお、本発明において吸水倍率は、120℃で2時間、真空乾燥した直後の質量〔W2(単位:g)〕と、この真空乾燥の後、25℃85%相対湿度の環境下に2時間放置した直後の質量〔W1(単位:g)〕とを測定し、下記式(I)から吸水倍率を算出する。
吸水倍率(倍)=(W1-W2)/W2 ・・・(I)
また、GPC法による重量平均分子量は、以下の条件で測定する。
・装置名:HLC-8220GPC(東ソー)
・カラムの種類:TSK gel Super HZM-M(東ソー)
・溶離液:クロロホルム
・流量:0.6ml/分
・検出器:RI
・試料濃度:0.05%
・検量線ベース樹脂:TSK標準ポリスチレン(分子量1050、5970、18100、37900、190000、706000)
【0014】
本発明においては、上述した通り、吸水性ポリマーを含有する基材に2種以上の光触媒粒子を担持させることにより、水の供給装置を必要とせず、水素を発生することが可能となる。
このような効果を奏する理由は詳細には明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
すなわち、吸水性ポリマーを含有する基材を用いることにより、空気中や呼気中に含まれる水蒸気が基材に吸収(吸水)され、また、吸収された水蒸気(水分)が、基材に担持された2種以上の光触媒粒子によって光分解されることにより、水素を発生することができたと考えられる。
以下に、本発明の光触媒粒子付き基材が有する基材および光触媒粒子について、詳述する。
【0015】
〔基材〕
本発明の光触媒粒子付き基材が有する基材は、上述した通り、吸水性ポリマーを含有する基材である。
上記吸水性ポリマーは、上述した吸水倍率が、1.03~1000倍であることが好ましく、1.05~800倍であることがより好ましい。
また、上記吸水性ポリマーは、上述した重量平均分子量が、1500~3000000であることが好ましく、2000~2000000であることがより好ましい。
【0016】
本発明においては、チキソ性を有し、また、生体親和性が高い理由から、上記吸水性ポリマーが、多糖類であることが好ましい。
ここで、「多糖類」とは、単糖類(例えば、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース等)が10個以上重合した糖重合体を意味する。なお、多糖類には、非水溶性多糖類および水溶性多糖類が包含される。
【0017】
上記吸水性ポリマーとしては、具体的には、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルデキストランナトリウム(CMD)、セルロース、セルロースアシレート、アガロース、および、アルギン酸などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、カルボキシメチルセルロース(CMC)〔吸水倍率:1.1倍〕、カルボキシメチルデキストランナトリウム(CMD)〔吸水倍率:1.1倍〕、セルロース〔吸水倍率:1.08倍〕、および、セルロースアシレート〔吸水倍率:1.05倍〕が好ましく、カルボキシメチルセルロース(CMC)、および、セルロースアシレートがより好ましい。
ここで、「セルロースアシレート」とは、セルロースの水酸基、すなわち、β-1,4結合しているグルコース単位の2位、3位および6位に有する遊離の水酸基を構成する水素原子の一部または全部がアシル基で置換されているセルロースエステルをいう。
また、上記アシル基としては、具体的には、例えば、アセチル基、プロピオニル基およびブチリル基など挙げられる。
【0018】
本発明の光触媒粒子付き基材が有する基材は、上記吸水性ポリマーを含有するものであれば特に限定されないが、上記吸水性ポリマーを20~100質量%含有する基材であることが好ましく、上記吸水性ポリマーを30~90質量%含有する基材であることがより好ましい。なお、100質量%含有するとは、上記吸水性ポリマーのみで基材が構成されていることを意味する。
【0019】
本発明においては、光触媒粒子の担持性が良好となり、また、比表面積が大きく、通気性を有する等の理由から、上記吸水性ポリマーを含有する基材が、多孔質体であることが好ましい。
ここで、「多孔質体」とは、多数の細孔を持つ材料のことをいい、細孔の大きさにより、ミクロポーラス、メソポーラス、マクロポーラスに分けられる材料である。
【0020】
また、本発明においては、水素の発生効率がより向上する理由から、上記吸水性ポリマーを含有する基材が、セルロース繊維を含むことが好ましい。
ここで、「セルロース繊維」とは、植物細胞壁の基本骨格などを構成するセルロースのミクロフィブリル、または、これを構成する繊維のことであり、平均繊維径(幅)が概ね100nm以下のいわゆるセルロースナノファイバー(CNF)をいう。
【0021】
このようなセルロース繊維としては、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、綿、ビートパルプ、ポテトパルプ、農産物残廃物、布、紙等に含まれる植物由来の繊維が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
木材としては、例えば、シトカスプルース、スギ、ヒノキ、ユーカリ、アカシア等が挙げられる。
紙としては、例えば、脱墨古紙、段ボール古紙、雑誌、コピー用紙等が挙げられる。
パルプとしては、例えば、植物原料を化学的もしくは機械的に又は両者を併用してパルプ化することで得られるケミカルパルプ(クラフトパルプ(KP)、亜硫酸パルプ(SP))、セミケミカルパルプ(SCP)、セミグランドパルプ(CGP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等が挙げられる。
【0022】
上記セルロース繊維は、化学修飾および/または物理修飾を施して機能性を高めたものであってもよい。
ここで、化学修飾としては、例えば、カルボキシ基、アセチル基、硫酸基、スルホン酸基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2-ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2-プロピル基、ブチル基、2-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、チイラン基、チエタン基などを付加させることなどが挙げられる。
また、化学修飾は、通常の方法を採ることができる。すなわち、セルロースを化学修飾剤と反応させることによって化学修飾することができる。必要に応じて、溶媒、触媒を用いたり、加熱、減圧等を行ったりしてもよい。
化学修飾剤の種類としては、酸、酸無水物、アルコール、ハロゲン化試薬、アルコール、イソシアナート、アルコキシシラン、オキシラン(エポキシ)等の環状エーテルが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸としては、例えば、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、プロパン酸、ブタン酸、2-ブタン酸、ペンタン酸等が挙げられる。
【0023】
一方、物理修飾としては、金属やセラミック原料を、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどの物理蒸着法(PVD法)、化学蒸着法(CVD法)、無電解メッキや電解メッキなどのメッキ法などにより表面被覆させる方法が挙げられる。
【0024】
本発明においては、上記セルロース繊維の平均繊維径は、3~50nmであるのが好ましく、3~30nmであるのがより好ましく、3~20nmであるのが更に好ましい。
【0025】
ここで、セルロース繊維の平均繊維径とは、以下のように測定した値をいう。
セルロース繊維を含有するスラリーを調製し、このスラリーを親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストして透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)観察用試料とする。径の大きなセルロース繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面の走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)像を観察してもよい。
構成する繊維の大きさに応じて1000倍、5000倍、10000倍、20000倍、50000倍および100000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。ただし、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、この直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で直線Xと垂直に交差する直線Yを引き、直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記のような電子顕微鏡観察画像に対して、直線Xに交錯する繊維、直線Yに交錯する繊維の各々について少なくとも20本(すなわち、合計が少なくとも40本)の幅(繊維の短径)を読み取る。こうして上記のような電子顕微鏡画像を少なくとも3組以上観察し、少なくとも40本×3組(すなわち、少なくとも120本)の繊維径を読み取る。
このように読み取った繊維径を平均して平均繊維径を求める。
【0026】
上記セルロース繊維の平均繊維径を調整する方法は特に限定されないが、例えば、機械的解砕法では、使用する超高圧ホモジナイザーやグラインダーの処理時間、回数により調整することが可能であり、化学的解砕法では、酸化剤(例えば、次亜塩素酸ソーダなど)の種類、触媒(例えば、TEMPO(2,2,6,6-tetramethyl-1-piperidinyloxy)触媒など)の濃度、反応時間などで調整することが可能である。
【0027】
また、本発明においては、上記セルロース繊維の平均繊維長は、200~1500nmであるであるのが好ましく、300~1200nmであるのがより好ましく、400~800nmであるがの更に好ましい。
【0028】
ここで、セルロース繊維の平均繊維長とは、以下のように測定した値をいう。
すなわち、セルロース繊維の繊維長は、上述した平均繊維径を測定する際に使用した電子顕微鏡観察画像を解析することにより求めることができる。
具体的には、上記のような電子顕微鏡観察画像に対して、直線Xに交錯する繊維、直線Yに交錯する繊維の各々について少なくとも20本(すなわち、合計が少なくとも40本)の繊維長を読み取る。
こうして上記のような電子顕微鏡画像を少なくとも3組以上観察し、少なくとも40本×3組(すなわち、少なくとも120本)の繊維長を読み取る。
このように読み取った繊維長を平均して平均繊維長を求める。
【0029】
上記セルロース繊維の調製方法は特に限定されず、機械的または化学的に解砕する方法が好ましい。
機械的に解砕する方法としては、例えば、セルロース繊維含有材料の水懸濁液やスラリーを、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸又は多軸混練機、ビーズミル等により機械的に摩砕または叩解することにより解繊する方法が挙げられる。機械処理法として、例えば、特許第5500842号公報、特許第5283050号公報、特許第5207246号公報、特許第5170193号公報、特許第5170153号公報、特許第5099618号公報、特許第4845129号公報、特許第4766484号公報、特許第4724814号公報、特許第4721186号公報、特許第4428521号公報、国際公開第11/068023号、特許第5477265号公報、特開2014-84434号公報などが挙げられる。
一方、化学的に解砕する方法としては、例えば、セルロース系原料を、N-オキシル化合物と、臭化物および/またはヨウ化物の存在下で、酸化剤を用いて酸化し、さらに酸化されたセルロースを湿式微粒化処理して解繊し、ナノファイバー化することにより製造することができる。化学処理法として、例えば、特許第5381338号公報、特許第4981735号公報、特許第5404131号公報、特許第5329279号公報、特許第5285197号公報、特許第5179616号公報、特許第5178931号公報、特許第5330882号公報、特許第5397910号公報などに記載された方法が挙げられる。
【0030】
〔光触媒粒子〕
本発明の光触媒粒子付き基材は、上述した基材に担持された2種以上の水分解用光触媒粒子を有する。
ここで、「基材に担持された(態様)」とは、基材上に2種以上の光触媒粒子の含有する光触媒層が固定化されている態様であってもよいが、基材(例えば、セルロース繊維)の内部に2種以上の光触媒粒子が取り込まれている態様であってもよい。
【0031】
光触媒粒子の平均粒子径は特に限定されないが、1μm未満であることが好ましく、100~800nmであることがより好ましい。
ここで、平均粒子径の測定は、本発明の技術分野で知られた方法により行うことができ、例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)、吸着法、光散乱法、X線小角散乱法(Small Angle X-ray Scattering:SAXS)などにより測定できる。TEMでは電子顕微鏡で観察するが、粒子径分布が広い場合には、視野内に入った粒子が全粒子を代表しているか否かに注意を払う必要がある。
本発明においては、平均粒子径とは、倍率10万倍のTEM写真から、立方体形状を有する任意の10個の微粒子を選択し、各微粒子の一辺の長さ(粒子径)を測定した平均値をいう。
【0032】
本発明においては、水素の発生効率がより向上する理由から、2種以上の光触媒粒子が、少なくとも、水素発生用光触媒粒子と、酸素発生用光触媒粒子とを含むことが好ましい。
ここで、「水素発生用光触媒粒子」とは、伝導帯の下端電位が標準電極電位よりも卑側に存在する光触媒粒子をいい、「酸素発生用光触媒粒子」とは、価電子帯の上端電位が水の酸化電位よりも貴側に存在する光触媒粒子をいう。
また、光触媒粒子として水素発生用光触媒粒子を用いる場合の含有量は、担持させる上記基材の質量に対して、10~200質量%であることが好ましく、20~100質量%であることがより好ましい。
同様に、光触媒粒子として酸素発生用光触媒粒子を用いる場合の含有量は、担持させる上記基材の質量に対して、10~200質量%であることが好ましく、20~100質量%であることがより好ましい。
【0033】
また、本発明においては、安定性などの観点から、2種以上の光触媒粒子が、いずれも、酸化物であることが好ましい。
【0034】
更に、本発明においては、水素の発生効率がより向上する理由から、2種以上の光触媒粒子が、1μm以内に近接して担持されていることが好ましい。
ここで、粒子間の距離は、走査型電子顕微鏡(SEM)により、近接する2つの光触媒粒子の間の距離を算出することができる。その際、エネルギー分散型X線分析(Energy Dispersive X-ray spectrometry:EDX)により、2つの光触媒粒子が、酸素発生光触媒粒子と水素発生光触媒粒子であることを確認して行う。具体的には、近接する酸素発生光触媒粒子と水素発生光触媒粒子とのペアを無作為に20個所選定し、SEM画像から、2つの光触媒粒子の間の距離を算出して、その平均値を「粒子間の距離」として定義する。
なお、SEM画像上では、粒子同士が重なって見える場合もあるが、そのような個所は、粒子同士が接していると解釈して、2つの粒子間距離は0μmとして、平均の距離を算出する。
【0035】
<水素発生用光触媒粒子>
上記水素発生用光触媒粒子としては、具体的には、例えば、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸ランタン(LaTi)、および、ニオブ酸スズ(SnNb)などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、水素の発生効率がより向上する理由から、SrTiOであることが好ましく、クロム(Cr)、アンチモン(Sb)、タンタル(Ta)、ロジウム(Rh)、ランタン(La)等がドープされたSrTiOであることがより好ましく、RhがドープされたSrTiOであることが更に好ましい。
【0036】
<酸素発生用光触媒粒子>
上記酸素発生用光触媒粒子としては、具体的には、例えば、酸化タングステン(WO)、バナジウム酸ビスマス(BiVO)、窒化タンタル(Ta)、および、二酸化チタン(TiO)などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、酸素の発生効率がより向上する理由から、BiVOであることが好ましい。
【0037】
〔水素発生用助触媒〕
本発明においては、水素の発生効率がより向上する理由から、上述した水素発生用光触媒粒子の表面に、水素発生用助触媒が担持されていることが好ましい。
なお、水素発生用助触媒の濃度(担持量)としては、水素発生用光触媒粒子の質量に対して、0.1質量%~20.0質量%であることが好ましい。
【0038】
水素発生用助触媒としては、具体的には、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、および、ルテニウム(Ru)などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、水素の発生効率がより向上する理由から、Ptであることが好ましい。
【0039】
〔酸素発生用助触媒〕
本発明においては、酸素の発生効率がより向上する理由から、上述した酸素発生用光触媒粒子の表面に、酸素発生用助触媒が担持されていることが好ましい。
なお、酸素発生用助触媒の濃度(担持量)としては、酸素発生用光触媒粒子の質量に対して、0.1質量%~20.0質量%であることが好ましい。
【0040】
酸素発生用助触媒としては、例えば、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、および、クロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物が挙げられる。なお、これらの酸化物は、その一部が、酸化されていない上記金属であってもよく、上記金属の水酸化物であってもよい。
具体的には、例えば、二酸化イリジウム(IrO)、二酸化白金(PtO)、二酸化ルテニウム(RuO)、リン酸水溶液中で析出させたコバルト酸化物(Co-Pi)、および、オキシ水酸化鉄(III)(FeOOH)などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、酸素の発生効率が更に向上する理由から、Co-Piであることが好ましい。
【0041】
水素発生用助触媒および酸素発生用助触媒を光触媒粒子に担持する場合、その担持方法は特に限定されないが、例えば、光電着法、含浸法、無電解メッキ等を用いる手法が挙げられる。
これらのうち、光電着法を用いる手法が好ましい。
光電着法における光源としては、キセノンランプ、水銀ランプおよび太陽光などが挙げられるが、大面積に均一に、安価な設備で照射を行う観点からキセノンランプが好ましい。
また、光電着法においては、反応槽の表面には波長420nm以上の可視光を照度で照射することが好ましい。
また、光電着法における雰囲気は特に限定されず、大気圧下であっても、任意のガス中であってもよいが、同時に光触媒性能を評価する観点から、アルゴン雰囲気下で行うことが好ましい。
また、光電着法における反応液の最高到達温度は、溶媒の蒸発を抑えるために、40℃以下であることが好ましく、10℃~25℃であることがより好ましい。
【0042】
〔作製方法〕
本発明の光触媒粒子付き基材を作製する方法は特に限定されず、例えば、上述した吸水性ポリマーを含有する基材に対して、上述した光触媒粒子ならびに任意の水素発生用助触媒および酸素発生用助触媒などを分散させたコーティング液を塗布した後、乾燥により分散媒を除去する方法;上述した吸水性ポリマー(特に、セルロース繊維)を水に分散させた溶液に対して、上述した光触媒粒子ならびに任意の水素発生用助触媒および酸素発生用助触媒などを配合して分散させ、乾燥により水を除去する方法;などが挙げられる。
【0043】
[通気性シート/マスク]
本発明の通気性シートは、上述した本発明の光触媒粒子付き基材を用いた通気性シートであり、本発明のマスクは、本発明の通気性シートを用いたマスクである。
上述した本発明の光触媒粒子付き基材は、水の供給装置を必要とせず、水素を発生することが可能となるため、本発明の光触媒粒子付き基材をマスクなどの通気性シートに応用することで、空気中や呼気中に含まれる水蒸気がシートに吸収(吸水)され、シートから水素を発生することになる。
そのため、本発明の通気性シートは、手軽に水素を摂取できるヘルスケア商材への適応が可能となる。
特に、近年の健康志向の高まりから、水素水を飲むことで体内に水素を摂取することが知られているが、本発明のマスクは、水素水よりも濃度の高い水素分子を直接摂取することが可能となり、極めて有用性の高いものである。
【実施例
【0044】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0045】
〔光触媒粒子の合成方法〕
<酸素発生用光触媒粒子(BiVO)>
論文〔J.Am.Chem.Soc.(1999)vol121.11459-11467〕の第11461頁の「BiVO4 Syntheses by Aqueous Process.」に記載された方法に従い、BiVO(以下、「BVO」とも略す。)を合成した。
【0046】
<酸素発生用光触媒粒子(Ta)>
Ta(豊島製作所製)を、1123Kのアンモニア炉中で20時間焼成し、Ta(以下、「TaN」とも略す。)を合成した。
【0047】
<酸素発生用光触媒粒子(TiO)>
酸化チタンとしては、TiO(P25)(Degussa、99.5%)を用いた。
【0048】
<水素発生用光触媒粒子(SrTiO)>
論文〔J.Phys.Chem.B(2004)v26.89932-8995〕の「2.ExperimentalSection」を参考に、Rhドープ量を1%とし、焼結温度を1273Kとして、SrTiO(以下、「STO」とも略す。)を合成した。
【0049】
〔助触媒の担持方法〕
<酸素発生用助触媒(Co-Pi)の担持>
合成したBVOに対して、論文〔J.Phys.Chem.C(2012)v116.5082-5089〕の「2.1の項」を参考に、200rpmで撹拌しながら、AM1.5Gの光で光電着を施し、リン酸水溶液中で析出させたコバルト酸化物(Co-Pi)を担持させた。
【0050】
<水素発生用助触媒(Pt)の担持>
合成したSTOに対して、200rpmで撹拌しながら、AM1.5Gの光で光電着を施し、純粋中で析出させたヘキサクロロ白金酸から、白金を担持させた。
【0051】
〔吸水性ポリマーの準備〕
<TEMPO酸化セルロース水分散液の調製>
特許第4998981号に記載された方法に従い、セルロース不織布をTEMPO(2,2,6,6-tetramethyl-1-piperidinyloxy)酸化し、TEMPO酸化されたセルロースが分散された水分散溶液(濃度:1.1質量%)〔以下、「TEMPO酸化セルロース水分散液」と略す。〕を調製した。なお、調製した水分散液の一部から、TEMPO酸化セルロースを回収し、上述した方法で吸水倍率および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、吸水倍率は、1.15倍であり、Mwは、50000であった。
【0052】
<PVA-PAA水分散液の調製>
PVA-PAA(ポリビニルアルコール-ポリアクリル酸共重合体)を合成した。合成したPVA-PAAの吸水倍率は、1.08倍であり、Mwは、70000であった。
合成したPVA-PAAを水に分散し、PVA-PAAが分散された水分散液(濃度:5質量%)〔以下、「PVA-PAA水分散液」と略す。〕を調製した。
【0053】
<CMC水分散液>
CMC(和光純薬工業社製)〔吸水倍率:1.1倍、Mw:60000〕を水に分散し、CMCが分散された水分散液(濃度:2質量%)〔以下、「CMC水分散液」と略す。〕を調製した。
【0054】
<アガロース水分散液>
アガロース(和光純薬工業社製)〔吸水倍率:1.11倍、Mw:60000〕を水に分散し、アガロースが分散された水分散液(濃度:2質量%)〔以下、「アガロース水分散液」と略す。〕を調製した。
【0055】
<CMD水分散液>
CMD(東京化成工業社製)〔吸水倍率:1.1倍、Mw:65000〕を水に分散し、CMDが分散された水分散液(濃度:2質量%)〔以下、「CMD水分散液」と略す。〕を調製した。
【0056】
[実施例1]
下記表1に示す光触媒粒子および助触媒を、上述したTEMPO酸化セルロース水分散溶液に添加して分散させ、凍結乾燥により分散媒である水を取り除くことにより、セルロース繊維からなる基材に、下記表1に示す光触媒粒子が担持された光触媒粒子付き基材を作製した。なお、分散にはマゼルスターを利用した。また、下記表1中、酸素発生用光触媒粒子の含有量(A1)と水素発生用光触媒粒子の含有量(B1)との合計は、0.5gであり、酸素発生用助触媒の含有量(A2)と水素発生用助触媒の含有量(B2)との合計は、0.5gであり、TEMPO酸化セルロースの含有量(C)は、1.0gである。
【0057】
[実施例2]
助触媒を用いなかった以外は、実施例1と同様の方法により、光触媒粒子付き基材を作製した。
【0058】
[実施例3~6]
CNF水分散溶液に代えて、上述したPVA-PAA水分散溶液などを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、光触媒粒子付き基材を作製した。
【0059】
[実施例7]
酸素発生用光触媒粒子をTaNに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、光触媒粒子付き基材を作製した。
【0060】
[実施例8および9]
光触媒粒子、助触媒および吸水性ポリマーの質量比を下記表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、光触媒粒子付き基材を作製した。
【0061】
[比較例1]
ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA,吸水倍率:1.02倍)〔S001、三菱化学社製〕を酢酸エタノールに分散し、PMMA分散液を調製した。
酸化チタンTiO(P25)(Degussa、99.5%)を、上述したPMMA分散溶液に添加して分散させ、凍結乾燥により分散媒である酢酸エタノールを取り除くことにより、光触媒粒子付き基材を作製した。
【0062】
[比較例2]
TEMPO酸化セルロース水分散溶液に代えて、比較例1で調製したPMMA分散液を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、光触媒粒子付き基材を作製した。
【0063】
[比較例3]
ポリイミド(PI)〔ネオプリム、三菱瓦斯化学社製〕を乾燥させ、基材を得た。
【0064】
[比較例4]
上述したTEMPO酸化セルロース水分散溶液を用い、凍結乾燥により分散媒である水を取り除くことにより、セルロース繊維からなる基材を作製した。
【0065】
〔水素発生量〕
ガラス製反応容器(光信理化学)中の水100mlに、光触媒粒子付き基材を入れて、25℃50%RH(相対湿度)に相当する水分圧になるように水蒸気成分を入れて、上記反応容器をガラス製ガス配管に接続した。なお、ガス配管はガスクロマトグラフィー装置(島津製作所、GC2014)に接続されており、ガス成分分析、デジタルマノメータによる圧力測定、真空引き、エア充填などが可能である。
次いで、真空ポンプによる真空引きを行ない、デジタルマノメータの表示が3kPa以下になるまで継続した。その後、アルゴン充填と真空引きを3回繰り返し、混入酸素量が2000ppm以下になるまで前処理を行なった。
その後、撹拌を継続しながら、キセノンランプ(イーグルエンジニアリング)を電流表示1.5Aとなる強度で全光照射し、光触媒反応を開始した。反応後、15分、30分、60分、経過後にガスクロマトグラフィー装置にて気体を2.5mlサンプリングし、水素・酸素量を計測した。
水素発生量を測定し、以下の基準で評価した。結果を下記表1に示す。
5点:5μmol/hr以上
4点:1μmol/hr以上5μmol/hr未満
3点:0.5μmol/hr以上1μmol/hr未満
2点:0.1μmol/hr以上0.5μmol/hr未満
1点:0.01μmol/hr以上0.1μmol/hr未満
0点:0.01μmol/hr未満
【0066】
〔耐久性〕
水素発生量の評価が1点以上であった実施例1~9で作製した光触媒粒子付き基材ついては、以下の方法で、耐久性も評価した。
上述した水素発生量の試験を1時間行った後、大気下に解放した。
次いで、大気下で1時間放置した後、再度、上述した水素発生量の試験を行った。
その結果、水素発生量の変動が、30%未満であったものを「A」と評価し、30%以上であったものを「B」と評価した。結果を下記表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示す結果から、吸水性ポリマーを含有する基材に2種以上の光触媒粒子を担持させた光触媒粒子付き基材は、空気中の水蒸気圧分の水成分や、呼気中に含まれる量の水成分と同程度の水蒸気成分で水素を発生することが分かり、水の供給装置がなくても水素を発生することが分かった(実施例1~9)。
実施例1と実施例2との対比から、光触媒粒子に助触媒を担持させると、水素発生量が向上することが分かった。
実施例1と実施例3~6との対比から、基材がセルロース繊維であると、水素発生量が向上することが分かった。