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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】電線・ケーブルの接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 11/11 20060101AFI20220128BHJP
   H01R 4/62 20060101ALI20220128BHJP
   H01R 4/38 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
H01R11/11 D
H01R4/62
H01R4/38 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020155921
(22)【出願日】2020-09-17
【審査請求日】2021-06-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591086843
【氏名又は名称】古河電工産業電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】桜井 裕士
(72)【発明者】
【氏名】寺山 喜一郎
【審査官】鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】実公平06-031657(JP,Y2)
【文献】特開2011-159544(JP,A)
【文献】特開2010-287382(JP,A)
【文献】特公昭58-003348(JP,B2)
【文献】特開2015-130757(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02555332(EP,A1)
【文献】特開2015-210907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/11-11/32
H01R 4/62
H01R 4/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の電線・ケーブルの先端に取り付けられた各端子の羽子板部をそれぞれ導電板に接続することで、前記複数本の電線・ケーブルが前記導電板を介して接続されており、
前記複数本の電線・ケーブルは、前記導電板の面方向において互いに任意の角度で接続できるようになっており、
前記複数本の電線・ケーブルがどのような角度で接続される場合でも、前記各端子の羽子板部の接触面が前記導電板に対してそれぞれ全面で接触する状態で前記導電板に接続されるとともに、
前記導電板に、前記端子の羽子板部が前記導電板の面方向に回ることを防止するための凸部が設けられており、
前記凸部として、前記導電板にピンを取り付けることができるように構成されていることを特徴とする電線・ケーブルの接続構造。
【請求項2】
前記導電板は、前記各端子の羽子板部が接続される面が、前記複数本の電線・ケーブルが前記導電板の面方向において互いに任意の角度で接続される際に前記各端子の羽子板部の接触面が前記導電板に接触し得る領域を含むように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電線・ケーブルの接続構造。
【請求項3】
前記導電板は、材質が銅若しくは銅合金、又はアルミニウム若しくはアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電線・ケーブルの接続構造。
【請求項4】
前記導電板は、その表面にめっきが施されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電線・ケーブルの接続構造。
【請求項5】
前記各端子は、それらの表面にめっきが施されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電線・ケーブルの接続構造。
【請求項6】
2本の前記電線・ケーブルの先端に取り付けられた前記各端子の羽子板部の各接触面が対向する状態で配置され、前記各接触面の間に前記導電板が配置され、前記各端子と前記導電板とが互いに当接した状態で接続されることで、前記2本の電線・ケーブルが前記導電板を介して接続されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電線・ケーブルの接続構造。
【請求項7】
前記導電板の複数の箇所にそれぞれ単数又は複数の前記端子の羽子板部を接続することで、前記複数本の電線・ケーブルが前記導電板を介して接続されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電線・ケーブルの接続構造。
【請求項8】
前記凸部は、その表面にめっきが施されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の電線・ケーブルの接続構造。
【請求項9】
導体が銅又は銅合金である前記電線・ケーブルを銅導体ケーブルといい、導体がアルミニウム又はアルミニウム合金である前記電線・ケーブルをアルミニウム導体ケーブルというとき、前記導電板に前記銅導体ケーブルと前記アルミニウム導体ケーブルが接続されている場合に、前記銅導体ケーブルと前記アルミニウム導体ケーブルのうち少なくとも一方に防水処理が施されていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電線・ケーブルの接続構造。
【請求項10】
防水処理が施されている前記電線・ケーブルが前記アルミニウム導体ケーブルであることを特徴とする請求項に記載の電線・ケーブルの接続構造。
【請求項11】
前記端子の端子筒部が密閉型であることを特徴とする請求項又は請求項10に記載の電線・ケーブルの接続構造。
【請求項12】
前記端子筒部に防水コンパウンドが内包されていることを特徴とする請求項11に記載の電線・ケーブルの接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の電線・ケーブルを電気的に接続する際の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
配電用途で使用される電線・ケーブルの配線工事には接続作業が伴う。そして、電線・ケーブルの接続作業には十分な広い空間が常に確保されているとは限らず、例えば図11に例示されるプルボックス100のような狭い空間内で接続しなければならないことも多い。
しかし、図示を省略するが、例えば、2本の電線・ケーブル50の導体51を接続管に両端側からそれぞれ挿入し、接続管ごとかしめて接続するいわゆる直線接続方式は、プルボックス100内で直線部分を確保することが難しいため採用しづらい。
【0003】
また、図示を省略するが、プルボックス100内に端子台を設けて接続することも採用しづらい。
狭いプルボックス100内で電線・ケーブル50に端子10(後述する図12(a)参照)を取り付けるのは難しいので、電線・ケーブル50をプルボックス100から一旦引き出し、電線・ケーブル50の被覆をそれぞれ剥ぎ取り、導体51に端子10をそれぞれ取り付けることになる。
しかし、先に端子台の位置を決め、プルボックス100内に端子台を固定してしまうと、プルボックス100の外に一度引き出してしまった電線・ケーブル50を元の状態に戻すのは難しい。そのため、端子10を端子台に取り付けることも困難になる。
【0004】
また、プルボックス100の外に引き出した電線・ケーブル50に端子10を取り付け、さらに端子台まで取り付けても、この端子台をプルボックス100内に収めることも難しい。
このように、プルボックス100内に端子台を設けて電線・ケーブル50同士を接続することも採用しづらい。
【0005】
一方、近年、配電用途で使用されている電線・ケーブル50の導体51に、軽さによる作業性の向上や作業者の負担軽減を目的としてアルミニウムやアルミニウム合金が用いられることがある。
そして、電線・ケーブル50の導体51がアルミニウムやアルミニウム合金である場合には、従来の銅や銅合金よりも曲げに対する反発が強く曲げづらいため、上記のような問題が生じやすい。
【0006】
そこで、電線・ケーブル50を接続する場合に、いわば松葉状に接続する方法が採用される場合がある(後述する図12(a)参照)。この方式を採用すれば、プルボックス100内のように狭い空間内でも比較的容易に電線・ケーブル50同士を電気的に接続することができる。
例えば、内線規程(非特許文献1参照)では、アルミニウム導体を松葉状に接続する方式として、リングスリーブによる接続やC形コネクタなどによる接続のほかに、図12(a)に示すような端子10による接続方式が規定されている。
【0007】
例えば2本の電線・ケーブル50の導体51を端子10で接続する場合、電線・ケーブル50をプルボックス100から一旦引き出し、電線・ケーブル50の導体51に端子10をそれぞれかしめるなどして取り付け、図12(a)に示したように端子10の羽子板部11同士を螺着して導体51同士を松葉状に接続する。
そして、それをプルボックス100内に戻すことで、図12(b)に示すようにプルボックス100内のように狭い空間内でも比較的容易に電線・ケーブル50同士を電気的に接続することが可能となる。
【0008】
なお、通常、端子10の部分等の接続部分に絶縁キャップを被せたり絶縁テープを巻くなどして絶縁処理等が施されてプルボックス100内に戻される。
そのため、図12(b)では、端子10の部分等に絶縁処理等が施された状態が四角形でイメージ的に表されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】日本電気技術規格委員会,「内線規定(電気技術規程 使用設備編)JEAC8001-2016」,第13版,一般社団法人日本電気協会,2016年,p.60-62
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、電線・ケーブル50の導体51同士を松葉状に接続する場合、例えば図13に示すように電線・ケーブル50が曲がった状態で接続するような場合、端子10の羽子板部11同士が当接しない状態になる場合がある。
正確に言えば、端子10の羽子板部11の接触面11a(羽子板部11のうち他の端子の羽子板部11と接触する面11a)同士が、それらの先端のみが接触するが全面的には接触しない状態になる場合がある。
【0011】
そして、このような状態で端子10の羽子板部11を無理に締め付けると、羽子板部11が折れるなどして変形したり、導体51に無理な力が加わったりした状態が続き、端子10(羽子板部11)や導体51等に余計な負荷がかかり続けるため、電線・ケーブル50の電気的な接続が維持できなくなり、通電性能に支障が出る可能性がある。
また、これを避けるために図13の状態で締め付けを止めてしまうと、端子10同士の接続不良が生じるため、やはり通電性能に支障が出る可能性がある。
【0012】
また、電線・ケーブル50の導体51が銅や銅合金の場合には、例えば図14に示すように2本の電線・ケーブル50を結束バンド60で固定するなどして電線・ケーブル50同士を近接させておき、その先で端子10同士を螺着することで図13の状態が生じないようにする場合があった。
しかし、このように処理すると、電線・ケーブル50の曲がりがきつくなるが(図中の電線・ケーブル50の結束バンド60の下側の部分参照)、電線・ケーブル50の導体51がアルミニウムやアルミニウム合金の場合には曲げに対する反発が強く曲げづらいため、このように電線・ケーブル50をきつく曲げて結束バンド60等で固定することが困難な場合が少なくない。
【0013】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、上記のような場合であっても、電線・ケーブルの端子や導体等に余計な負荷をかけることなく、通電性能に支障が出ないように複数本の電線・ケーブルを電気的に接続することが可能な電線・ケーブルの接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、電線・ケーブルの接続構造において、
複数本の電線・ケーブルの先端に取り付けられた各端子の羽子板部をそれぞれ導電板に接続することで、前記複数本の電線・ケーブルが前記導電板を介して接続されており、
前記複数本の電線・ケーブルは、前記導電板の面方向において互いに任意の角度で接続できるようになっており、
前記複数本の電線・ケーブルがどのような角度で接続される場合でも、前記各端子の羽子板部の接触面が前記導電板に対してそれぞれ全面で接触する状態で前記導電板に接続されるとともに、
前記導電板に、前記端子の羽子板部が前記導電板の面方向に回ることを防止するための凸部が設けられており、
前記凸部として、前記導電板にピンを取り付けることができるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電線・ケーブルの接続構造において、前記導電板は、前記各端子の羽子板部が接続される面が、前記複数本の電線・ケーブルが前記導電板の面方向において互いに任意の角度で接続される際に前記各端子の羽子板部の接触面が前記導電板に接触し得る領域を含むように構成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の電線・ケーブルの接続構造において、前記導電板は、材質が銅若しくは銅合金、又はアルミニウム若しくはアルミニウム合金であることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電線・ケーブルの接続構造において、前記導電板は、その表面にめっきが施されていることを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電線・ケーブルの接続構造において、前記各端子は、それらの表面にめっきが施されていることを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電線・ケーブルの接続構造において、2本の前記電線・ケーブルの先端に取り付けられた前記各端子の羽子板部の各接触面が対向する状態で配置され、前記各接触面の間に前記導電板が配置され、前記各端子と前記導電板とが互いに当接した状態で接続されることで、前記2本の電線・ケーブルが前記導電板を介して接続されていることを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電線・ケーブルの接続構造において、前記導電板の複数の箇所にそれぞれ単数又は複数の前記端子の羽子板部を接続することで、前記複数本の電線・ケーブルが前記導電板を介して接続されていることを特徴とする。
【0023】
請求項に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の電線・ケーブルの接続構造において、前記凸部は、その表面にめっきが施されていることを特徴とする。
【0024】
請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電線・ケーブルの接続構造において、導体が銅又は銅合金である前記電線・ケーブルを銅導体ケーブルといい、導体がアルミニウム又はアルミニウム合金である前記電線・ケーブルをアルミニウム導体ケーブルというとき、前記導電板に前記銅導体ケーブルと前記アルミニウム
導体ケーブルが接続されている場合に、前記銅導体ケーブルと前記アルミニウム導体ケーブルのうち少なくとも一方に防水処理が施されていることを特徴とする。
【0025】
請求項10に記載の発明は、請求項に記載の電線・ケーブルの接続構造において、防水処理が施されている前記電線・ケーブルが前記アルミニウム導体ケーブルであることを特徴とする。
【0026】
請求項11に記載の発明は、請求項又は請求項10に記載の電線・ケーブルの接続構造において、前記端子の端子筒部が密閉型であることを特徴とする。
【0027】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の電線・ケーブルの接続構造において、前記端子筒部に防水コンパウンドが内包されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、電線・ケーブルの端子や導体等に余計な負荷をかけることなく、通電性能に支障が出ないように複数本の電線・ケーブルを電気的に接続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】(a)本実施形態に係る電線・ケーブルの接続構造を表す平面図であり、(b)斜視図である。
図2】(a)、(b)端子の羽子板部の接触面の例を表す図である。
図3】導電板が各端子の羽子板部の接触面が導電板に接触し得る領域を含むように構成されていることを説明する図である。
図4】(a)、(b)導電板がないと端子同士が羽子板部の接触の一部でしか接触しない状態で接続されることを説明する図である。
図5】(a)絶縁処理部分同士が干渉して端子の羽子板部同士が接触しない状態を表す図であり、(b)導電板を介在させれば各端子の羽子板部がそれぞれ導電板に全面的に接続されることを表す図である。
図6】(a)銅導体ケーブル用の端子の羽子板部を上下から挟んだアルミニウム導体ケーブル用の端子の写真であり、(b)銅導体ケーブルの銅導体に引っ掛かったアルミニウム導体ケーブル用の端子の写真である。
図7】(a)~(c)導電板の複数の箇所にそれぞれ単数又は複数の端子の羽子板部を接続した電線・ケーブルの接続構造を表す図である。
図8】各電線・ケーブルが導電板の面方向において互いに任意の角度を有するように構成した状態を表す図である。
図9】(a)凸部として導電板にピンを取り付けた状態を表す平面図であり、(b)斜視図である。
図10】(a)凸部を設けた導電板の例を表す図であり、(b)(a)の導電板に複数本の電線・ケーブルを接続した状態を表す図である。
図11】プルボックスやプルボックス内に引き出された電線・ケーブル等を表す図である。
図12】(a)松葉状に接続した2本の電線・ケーブルを表す図であり、(b)プルボックス内で電線・ケーブル同士をそれぞれ松葉状に接続した状態を表す図である。
図13】電線・ケーブル同士を松葉状に接続する際に端子の羽子板部同士が当接しない状態を表す図である。
図14】2本の電線・ケーブルを結束バンドで固定して端子同士を接続した状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明に係る電線・ケーブルの接続構造について実施の形態を例示して説明する。
ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態や図示例に限定するものではない。
【0031】
また、本発明は、導体が銅又は銅合金である電線・ケーブル(以下、簡単に銅導体ケーブル(電線の場合も含む。)と言う場合がある。)と、導体がアルミニウム又はアルミニウム合金である電線・ケーブル(以下、アルミニウム導体ケーブル(電線の場合も含む。)と言う場合がある。)とを接続する場合だけでなく、銅導体ケーブル同士やアルミニウム導体ケーブル同士を接続する場合にも適用することができる。
以下では、銅導体ケーブルやアルミニウム導体ケーブルと特に断らない限り、電線・ケーブル50は銅導体ケーブルであってもアルミニウム導体ケーブルであってもよい。
【0032】
図1(a)、(b)は、本実施形態に係る電線・ケーブルの接続構造を表す図であり、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
本実施形態に係る電線・ケーブルの接続構造1では、2本の電線・ケーブル50の先端の剥き出された各導体51に、羽子板部11を有する端子10がそれぞれ取り付けられている。
そして、各端子10の羽子板部11を、導電性を有する導電板20にそれぞれ接続することで、2本の電線・ケーブル50が導電板20を介して接続されている。
【0033】
具体的には、本実施形態では、各電線・ケーブル50の先端に取り付けられた各端子10の羽子板部11の各接触面11aが対向する状態で配置され、各接触面11aの間に導電板20が配置され、各端子10と導電板20とが互いに当接した状態でボルト30で螺着するなどして接続されることで、2本の電線・ケーブル50が導電板20を介して接続されている。
そして、その際、2本の電線・ケーブル50は、導電板20の面方向において互いに任意の角度θで接続できるようになっている。角度θは0°や180°であってもよく、それ以外の角度であってもよい。
【0034】
また、上記のように2本の電線・ケーブル50がどのような角度θで接続される場合でも、各端子10の羽子板部11の接触面11aが、導電板20に対してそれぞれ全面で接触する状態で導電板20に接続されるようになっている。
すなわち、図2(a)、(b)に例示するように、羽子板部11の接触面11a(図中のドットの部分)は端子10ごとに種々の形状をしているが、このような羽子板部11の接触面11aが全面的に接触できる程度に導電板20は大きく形成されている。
【0035】
言い方を変えれば、図3に示すように、導電板20は、各端子10の羽子板部1が接続される面21が(この場合は2枚の面21がそれぞれ)、上記のように2本の電線・ケーブル50が導電板20の面方向において互いに任意の角度θで接続される際に各端子10の羽子板部11の接触面11aが導電板20に接触し得る領域A(図3では二点鎖線で円形に囲まれた領域A)を含むように構成されている。
このように構成することの作用効果については後で説明する。
【0036】
導電板20の材質は、電線・ケーブル50の導体51と同様に、銅や銅合金又はアルミニウムやアルミニウム合金とすることが可能である。
銅導体ケーブル同士(端子10も銅製や銅合金製)を接続する場合は、導電板20も銅製や銅合金製のものを用いることが好ましく、アルミニウム導体ケーブル同士(端子10もアルミニウム製やアルミニウム合金製)を接続する場合は、導電板20もアルミニウム製やアルミニウム合金製のものを用いることが好ましい。
【0037】
また、銅導体ケーブル(端子10は銅製や銅合金製)とアルミニウム導体ケーブル(端子10はアルミニウム製やアルミニウム合金製)を接続する場合は、導電板20として銅製や銅合金製のものを用いてもアルミニウム製やアルミニウム合金製のものを用いても端子10との間で異種金属の接触が生じ、電食(異種金属接触腐食)が生じるおそれがあるが、導電板20の表面に錫やニッケル等でめっきを施しておき、同様に各端子10の表面に錫やニッケル等でめっきを施しておけば電食が生じないようにすることができる。
なお、銅導体ケーブル同士やアルミニウム導体ケーブル同士を接続する場合でも、導電板20や各端子10の表面を錫やニッケル等でめっきしたものを用いてもよい。
【0038】
次に、本実施形態に係る電線・ケーブルの接続構造1の作用効果について説明する。
例えば図13に示したように2本の電線・ケーブル50間に角度がある場合でも、各電線・ケーブル50に取り付ける端子10の向きを変えることで、例えば図4(a)に示すように、各電線・ケーブル50の先端に取り付けた端子10の羽子板部11の接触面11a同士を面接触させることが可能である。
【0039】
しかし、この場合、端子10同士が、図4(b)に示すように羽子板部11の接触面11aの一部(図中でドットを付した八角形の部分)でしか接触しておらず、端子10同士が接触面11aの全面で接触する状態になっていない。
そのため、端子10同士の接触面積が、接触面11aの全面で接触する場合に比べて小さくなるため、端子10同士の接続部分での通電性能に支障が生じる可能性がある。
【0040】
それに対し、本実施形態に係る電線・ケーブルの接続構造1を採用すれば、図1(a)、(b)や図2(a)、(b)に示したように、各電線・ケーブル50の先端に取り付けた各端子10の羽子板部11の接触面11aが導電板20に対してそれぞれ全面で接触する状態で導電板20に接続される。
すなわち、図3に示したように、各端子10の羽子板部1が接続される導電板20の各面21が、2本の電線・ケーブル50が導電板20の面方向において互いにどのような角度θで接続されても各端子10の羽子板部11の接触面11aが導電板20に接触し得る領域Aを含むように構成されている。
【0041】
また、その際、端子10や電線・ケーブル50の導体51等にそれらを折り曲げたり捩じったりするような力が働かない状態で接続することができる。
そのため、本実施形態に係る電線・ケーブルの接続構造1では、端子10や導体51等に余計な負荷をかけることなく端子10の羽子板部11の接触面11a同士を導電板20に接続することができる。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る電線・ケーブルの接続構造1によれば、導電板20を介して2本の電線・ケーブル50を接続するように構成されているため、2本の電線・ケーブル50の各端子10や各導体51等に余計な負荷をかけることなく、通電性能に支障が出ないように2本の電線・ケーブル50を電気的に接続することが可能となる。
【0043】
[応用例1]
ところで、例えば、電線・ケーブル50の先端の端子10が接続された部分に絶縁テープを巻き付けるなどして絶縁処理される場合があるが、このように絶縁処理が行われると絶縁処理部分が太くなる。
そのため、例えば図5(a)に示すように、端子10同士を松葉状に接続しようとしても絶縁処理部分B同士が干渉してしまい、端子10の羽子板部11同士が接触しない状態になる場合がある。
【0044】
このような場合に、本実施形態に係る電線・ケーブルの接続構造1を採用して、2本の電線・ケーブル50の各端子10の羽子板部11の間に導電板20を挟み込むように構成すれば、図5(b)に示すように、絶縁処理部分B同士が干渉しなくなり、各端子10の羽子板部11がそれぞれ導電板20に全面的に接続されるようになる。
そのため、導電板20を介して絶縁処理された2本の電線・ケーブル50を確実に接続させることが可能となり、正常な通電性能が得られる。
なお、この場合も、図1等に示したように、2本の電線・ケーブル50が導電板20の面方向において互いに任意の角度θを有するように構成することも可能である。
【0045】
[応用例2]
また、銅導体ケーブルとアルミニウム導体ケーブルを接続する際に、両者の端子10をうまく接続することができない場合がある。
例えば、図6(a)の写真は、250mmの銅導体ケーブル用の端子(左側)の羽子板部に、2つの150mmのアルミニウム導体ケーブル用の端子(右側)の羽子板部を上下から挟むようにして接続したものを撮影したものであるが、上側のアルミニウム導体ケーブル用の端子の羽子板部の先端が銅導体ケーブル用の端子に引っ掛かってしまい、上側のアルミニウム導体ケーブル用の端子の羽子板部と銅導体ケーブル用の端子の羽子板部とが一部でしか接触しておらず、十分に接触できていない。
【0046】
また、例えば、図6(b)の写真では、銅導体ケーブル用の端子(左側)にアルミニウム導体ケーブル用の端子(右側)を接続しようとしたところ、アルミニウム導体ケーブル用の端子の羽子板部の先端が銅導体ケーブルの銅導体に引っ掛かってしまい、アルミニウム導体ケーブル用の端子の羽子板部が銅導体ケーブル用の端子の羽子板部に接触できない状態になっている。
これらの接続状態では、正常な通電性能が確保できない。
【0047】
そこで、このような場合に本実施形態に係る電線・ケーブルの接続構造1を採用して、複数本の電線・ケーブル50の先端にそれぞれ取り付けられた各端子10の羽子板部11を導電板20に接続し、導電板20を介して複数本の電線・ケーブル50を接続するように構成すれば、上記の問題を回避することができる。
すなわち、例えば図7(a)~(c)に示すように、導電板20の複数の箇所にそれぞれ単数又は複数の端子10の羽子板部11を接続することで、複数本の電線・ケーブル50が導電板20を介して接続されるように構成することが可能である。
【0048】
このように、上記のような場合に本実施形態に係る電線・ケーブルの接続構造1を採用すれば、図6(a)、(b)に示したように一方の端子が他方の端子や導体等に引っ掛かるようなことは生じず、各端子10の羽子板部11をそれぞれ導電板20と全面的に接触させることが可能となる。
そのため、導電板20を介して複数本の電線・ケーブル50を確実に接続させることが可能となり、正常な通電性能が得られる。
【0049】
なお、以上では、銅導体ケーブルとアルミニウム導体ケーブルを接続する場合について説明したが、この応用例2を銅導体ケーブル同士やアルミニウム導体ケーブル同士を接続する場合に適用することも可能である。
また、図7(a)~(c)では、各端子10を導電板20の2箇所にそれぞれ接続する場合を示したが、各端子10を導電板20の3箇所以上にそれぞれ接続するように構成することも可能である。
【0050】
さらに、この場合も、例えば図8に示すように、各電線・ケーブル50が導電板20の面方向において互いに任意の角度を有するように構成することも可能である。
また、図示を省略するが、例えば図8の右下の電線・ケーブル50も、図中右上の電線・ケーブル50と平行になるように接続して、各電線・ケーブル50の延在方向を屈曲させるように構成することも可能であり、各電線・ケーブル50を導電板20に任意の向きに接続することが可能である。
【0051】
[回り止めについて]
例えば、図1に示したように導電板20に各端子10をボルト30で螺着するなどして接続した場合、何らかの原因で導電板20に対して端子10の羽子板部11が動き、ボルト30が回って緩んでしまう可能性がある場合には、導電板20に、端子10の羽子板部11が導電板20の面方向に回ることを防止するための凸部22を設けるように構成することが可能である。
【0052】
例えば、図9(a)、(b)に示すように、凸部22として導電板20にピン23を取り付けることができるように構成することが可能である。
この場合、例えば、ピン23の先端にねじ加工を施し、端子10が接続される導電板20の面21にねじ穴24を形成しておき、ねじ穴24にピン23を螺着することでピン23を導電板20に取り付けられるように構成することが可能である。
【0053】
なお、図7(a)~(c)に例示した応用例2の場合にも、導電板20にピン23を取り付けられるように構成することが可能である。
また、図9(a)、(b)に示すように、ねじ穴24を導電板20の面21の複数の箇所に設けておき、それらのねじ穴24のうちのいずれかのねじ穴24に1本又は複数本のピン23を取り付けられるように構成すれば、複数本の電線・ケーブル50を導電板20の面方向に対して種々の角度で接続することが可能となる。
【0054】
また、例えば図10(a)、(b)に示すように、導電板20の一部を折り曲げるなどして、導電板20に、端子10の羽子板部11の回り止め用の凸部22を設けるように構成することも可能である。
なお、図10(a)では左側の銅導体ケーブル50と右側のアルミニウム導体ケーブル50の角度θが180°である場合を示したが、任意の角度とすることも可能である。
【0055】
以上のように構成すれば、導電板20に接続した各端子10の羽子板部11が導電板20に対して端子10の羽子板部11が回ろうとしても、その動きがピン23等の凸部22に邪魔されて回ることができない。
そのため、ボルト30が回って緩んでしまうことが防止され、各端子10を導電板20に接続した最初の状態を維持することが可能となる。
【0056】
なお、このように導電板20にピン23等の凸部22を設ける場合も、凸部22の表面に錫やニッケル等でめっきを施すように構成することが望ましい。
また、ピン23で端子10の回り止めを行う場合、ピン23に強度が求められるため、ピン23がステンレス等で形成される場合もあるが、この場合もピン23を錫やニッケル等でめっきしておけば、異種金属の接触による電食等が生じることを防止することが可能となる。
【0057】
[防水処理について]
ところで、本実施形態では、銅又は銅合金とアルミニウム又はアルミニウム合金とが接触すると異種金属の接触による電食が生じる可能性があるため、銅又は銅合金とアルミニウム又はアルミニウム合金とが直接接触し得る部分、すなわち端子10や導電板20の表面や凸部22(ピン23を含む。)の表面等に錫やニッケル等でめっきを施すことについて説明した。
【0058】
一方、銅又は銅合金製の導体51やアルミニウム又はアルミニウム合金製の導体51のように錫やニッケル等でメッキされていない銅又は銅合金とアルミニウム又はアルミニウム合金が直接接触しない場合でも、銅又は銅合金に付着した水分がアルミニウム又はアルミニウム合金に触れるとやはりアルミニウム又はアルミニウム合金側で電食が発生し、発熱したり、最悪の場合は焼損に至る可能性がある。
そのため、本実施形態に係る電線・ケーブルの接続構造1は、防水処理が施されていることが望ましい。
【0059】
例えば、2本の電線・ケーブル50を松葉状に接続する場合、通常、図12(b)に示したように、端子10同士の接続部分を含む部分に絶縁キャップを被せたりその部分に絶縁テープを巻くなどして絶縁処理が施される。
しかし、単に絶縁処理を施しただけでは、例えばプルボックス100内が結露するなど何らかの原因で、絶縁処理を施した接続部分の内部に水分が浸入する場合がある。そして、その接続部分が銅導体ケーブルとアルミニウム導体ケーブルの接続部分である場合には、この浸入した水分により上記のように電食が発生し得る。
【0060】
そのため、本実施形態に係る電線・ケーブルの接続構造1において、特に導電板20に銅導体ケーブルとアルミニウム導体ケーブルが接続される場合には、上記のような電食が生じないようにするために、防水処理が施されていることが望ましく、銅導体ケーブルと前記アルミニウム導体ケーブルのうち少なくとも一方に防水処理が施されていることが望ましい。
銅導体ケーブルとアルミニウム導体ケーブルを接続する場合にはアルミニウム導体ケーブルの方が腐食されるため、上記のように銅導体ケーブルとアルミニウム導体ケーブルのいずれか一方に防水処理を施す場合には、アルミニウム導体ケーブルに防水処理が施されていることが望ましい。
【0061】
そして、このように接続されている銅導体ケーブルとアルミニウム導体ケーブルのいずれか一方、特にアルミニウム導体ケーブルに防水処理を施すことで、電線・ケーブル50の導体51等への水分の侵入を遮断して、導体51等が水分に触れることを防止することが可能となる。
そのため、本実施形態に係る電線・ケーブルの接続構造1において銅導体ケーブルとアルミニウム導体ケーブルを接続する場合でも電食が発生することを的確に防止することが可能となる。
【0062】
例えば、応用例2について説明した図7(a)~(c)や図8では、図中右側に、防水処理が施されたアルミニウム導体ケーブル50の例が示されている。
すなわち、図7(a)に示すように、端子10の端子筒部12から電線・ケーブル50の最外層50aに跨るように防水テープや粘着シート等の防水部材40を巻き付けて、端子10の端子筒部12と電線・ケーブル50の最外層50aとの間で露出されている導体51を被覆することで防水処理を行うことができる。
【0063】
また、図7(a)に示すように、導体51(図示省略)が取り付けられる端子10の端子筒部12を密閉型とすることで防水を図ることもできる。
同図左側の開放型の端子10と比較すると分かるように、同図右側の密閉型の端子筒部12では、端子10の羽子板部11側が封鎖されて密閉されているため、そちら側から端子筒部12内に水分が入ることを防止することが可能となる。
【0064】
さらに、端子10の端子筒部12に防水コンパウンドを内包させるように構成することが望ましい。
このように構成すれば、上記のように巻き付けた防水部材40を通って水分が浸入しても、少なくとも端子10の端子筒部12内への水分の浸入を防止することが可能となる。
【0065】
また、電線・ケーブル50の導体51は、端子10の端子筒部12に挿入された状態で端子筒部12ごとかしめられる(圧着又は圧縮される)ことで端子筒部12に取り付けられるが、その際、導体51がアルミニウム又はアルミニウム合金である場合、端子筒部12をかしめる際に防水コンパウンドに含まれている金属粉末により導体表面の酸化被膜が破れる。そのため、防水コンパウンドを介して導体51と端子筒部12とを確実に電気的に接続することが可能となる。
【0066】
なお、上記では、アルミニウム導体ケーブルを防水する場合について説明したが、銅導体ケーブルも同様にして防水することができる。
また、アルミニウム導体ケーブルと銅導体ケーブルを両方とも防水するように構成することも可能である。
【0067】
さらに、全ての電線・ケーブル50をまとめて防水することができる場合には、全ての電線・ケーブル50をまとめて防水することも可能である。
その際、導電板20や凸部22、羽子板部11や端子筒部12を含む各端子10、さらにボルト30等を含めて、電線・ケーブルの接続構造1全体を、絶縁テープや粘着シート等の防水部材40で巻き付けたり防水パテで覆ったりして防水処理を施せば、水分により電食が起きたり導電板20等の金属部分に錆が生じたりすることを確実に防止することが可能となる。
【0068】
なお、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0069】
1 電線・ケーブルの接続構造
10 端子
11 羽子板部
11a 接触面
12 端子筒部
20 導電板
21 面
22 凸部
23 ピン
50 電線・ケーブル
A 領域
θ 角度
【要約】
【課題】電線・ケーブルの端子や導体等に余計な負荷をかけることなく、通電性能に支障が出ないように複数本の電線・ケーブルを電気的に接続することが可能な電線・ケーブルの接続構造を提供する。
【解決手段】複数本の電線・ケーブル50の先端に取り付けられた各端子10の羽子板部11をそれぞれ導電板20に接続することで,複数本の電線・ケーブル50が導電板20を介して接続されており、複数本の電線・ケーブル50は、導電板20の面方向において互いに任意の角度θで接続できるようになっており、複数本の電線・ケーブル50がどのような角度θで接続される場合でも、各端子10の羽子板部11の接触面11aが導電板20に対してそれぞれ全面で接触する状態で導電板20に接続されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図10
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図14