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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】フォトポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/62 20060101AFI20220113BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20220113BHJP
   C08F 283/00 20060101ALI20220113BHJP
   G03H 1/02 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
C08G18/62 016
C08F2/44 C
C08F283/00
G03H1/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019538478
(86)(22)【出願日】2018-03-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 KR2018003002
(87)【国際公開番号】W WO2018199467
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2019-07-19
(31)【優先権主張番号】10-2017-0053106
(32)【優先日】2017-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、ボ キョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヘオン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ソク フーン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ヨン ラエ
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0115324(KR,A)
【文献】国際公開第2002/039185(WO,A1)
【文献】特開2012-082386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08F 2/00- 2/60
C08F 20/00- 20/70
C08F 283/00-283/14
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
G03H 1/00- 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子マトリックスまたはその前駆体20から80重量%;
1.5以下の屈折率(単量体の硬化後に測定された屈折率)および25℃で100cps以下の粘度を有する多官能(メト)アクリレート単量体および
1.5以上の屈折率(単量体の硬化後に測定された屈折率)を有する単官能(メト)アクリレート単量体を含む光反応性単量体10から70重量%;および
光開始剤0.1から15重量%;
を含み、
前記光反応性単量体中の前記1.5以上の屈折率(単量体の硬化後に測定された屈折率)を有する単官能(メト)アクリレート単量体の含有量が70重量%以上であり、
前記高分子マトリックスは、1以上のイソシアネート基を含む化合物とポリオール間の反応生成物であり、
前記ポリオールは、300g/molから10,000g/molの水酸基当量と100,000から1,500,000g/molの重量平均分子量を有する、
フォトポリマー組成物。
【請求項2】
前記光反応性単量体中の前記1.5以上の屈折率(単量体の硬化後に測定された屈折率)を有する単官能(メト)アクリレート単量体の含有量が70重量%から90重量%である、
請求項1に記載のフォトポリマー組成物。
【請求項3】
前記1.5以上の屈折率(単量体の硬化後に測定された屈折率)を有する単官能(メト)アクリレート単量体は、25℃で300cps以下の粘度を有する、
請求項1または2に記載のフォトポリマー組成物。
【請求項4】
前記1.5以下の屈折率(単量体の硬化後に測定された屈折率)および25℃で100cps以下の粘度を有する多官能(メト)アクリレート単量体および
前記1.5以上の屈折率(単量体の硬化後に測定された屈折率)を有する単官能(メト)アクリレート単量体の
それぞれは、
50から1000g/molの重量平均分子量を有する、
請求項1からのいずれか1項に記載のフォトポリマー組成物。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載のフォトポリマー組成物から製造された
ホログラム記録媒体。
【請求項6】
請求項に記載のホログラム記録媒体を含む
光学素子。
【請求項7】
電磁放射線により請求項1からのいずれか1項に記載のフォトポリマー組成物に含まれている光反応性単量体を選択的に重合させる段階を含む、
ホログラフィック記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
【0002】
本出願は、2017年4月25日付韓国特許出願第10-2017-0053106号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0003】
本発明は、フォトポリマー組成物、ホログラム記録媒体、光学素子およびホログラフィック記録方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ホログラム(hologram)記録メディアは、露光過程を通じて前記メディア内のホログラフィック記録層内の屈折率を変化させることによって情報を記録し、このように記録されたメディア内の屈折率の変化を読み取って情報を再生する。
【0005】
フォトポリマー(感光性樹脂、photopolymer)を利用する場合、低分子単量体の光重合により光干渉パターンをホログラムで容易に保存できるため、光学レンズ、鏡、偏向鏡、フィルター、拡散スクリーン、回折部材、導光体、導波管、映写スクリーンおよび/またはマスクの機能を有するホログラフィック光学素子、光メモリシステムの媒質と光拡散板、光波長分割器、反射型、透過型カラーフィルターなど多様な分野に用いることができる。
【0006】
通常、ホログラム製造用フォトポリマー組成物は、高分子バインダー、単量体および光開始剤を含み、このような組成物から製造された感光性フィルムに対してレーザ干渉光を照射して局部的な単量体の光重合を誘導する。
【0007】
このような光重合過程で単量体が相対的に多く存在する部分では屈折率が高くなり、高分子バインダーが相対的に多く存在する部分では屈折率が相対的に低くなって屈折率変調ができるようになり、このような屈折率変調により回折格子が生成される。屈折率変調値△nは、フォトポリマー層の厚さと回折効率(DE)に影響を受け、角度選択性は厚さが薄いほど広くなる。
【0008】
最近は高い回折効率と安定的にホログラムを維持できる材料の開発に対する要求と共に、薄い厚さを有しながらも屈折率変調値が大きいフォトポリマー層の製造のための多様な試みが行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、薄い厚さを有しながらも屈折率変調値が大きいフォトポリマー層をより容易に提供可能なフォトポリマー組成物を提供することにある。
【0010】
また、本発明の目的は、薄い厚さを有しながらも屈折率変調値が大きいフォトポリマー層を含むホログラム記録媒体を提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、ホログラム記録媒体を含む光学素子を提供することにある。
【0012】
また、本発明の目的は、電磁放射線により前記フォトポリマー組成物に含まれている光反応性単量体を選択的に重合させる段階を含む、ホログラフィック記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書では、高分子マトリックスまたはその前駆体;1.5以下の屈折率および25℃で100cps以下の粘度を有する多官能(メト)アクリレート単量体および1.5以上の屈折率を有する単官能(メト)アクリレート単量体を含む光反応性単量体;および光開始剤;を含み、前記光反応性単量体中の前記1.5以上の屈折率を有する単官能(メト)アクリレート単量体の含有量が60重量%以上であるフォトポリマー組成物が提供される。
【0014】
また、本明細書では、前記フォトポリマー組成物から製造されたホログラム記録媒体が提供される。
【0015】
また、本明細書では、前記ホログラム記録媒体を含む光学素子が提供される。
【0016】
また、本明細書では、電磁放射線により前記フォトポリマー組成物に含まれている光反応性単量体を選択的に重合させる段階を含む、ホログラフィック記録方法が提供される。
【0017】
以下、発明の具体的な実施形態に係るフォトポリマー組成物、ホログラム記録媒体、光学素子、およびホログラフィック記録方法についてより詳細に説明する。
【0018】
本明細書で、(メト)アクリレートは、メタクリレートまたはアクリレートを意味する。
【0019】
また、本明細書で、ホログラム(hologram)は、露光過程を通じて全体可視範囲および近紫外線範囲(300-800nm)で光学的情報が記録された記録メディアを意味し、例えばインライン(ガボール(Gabor))ホログラム、オフアクシス(off-axis)ホログラム、完全穿孔(full-aperture)移転ホログラム、白色光透過ホログラム("レインボーホログラム")、デニシューク(Denisyuk)ホログラム、オフアクシス反射ホログラム、エッジリタラチャー(edge-literature)ホログラムまたはホログラフィーステレオグレム(stereogram)などの視覚的ホログラム(visual hologram)のすべてを含む。
【0020】
発明の一実施形態によれば、高分子マトリックスまたはその前駆体;1.5以下の屈折率および25℃で100cps以下の粘度を有する多官能(メト)アクリレート単量体および1.5以上の屈折率を有する単官能(メト)アクリレート単量体を含む光反応性単量体;および光開始剤;を含み、前記光反応性単量体中の前記1.5以上の屈折率を有する単官能(メト)アクリレート単量体の含有量が60重量%以上であるフォトポリマー組成物が提供され得る。
【0021】
本発明者らは、相対的に低い屈折率と常温で低い粘度を有する多官能性記録単量体と相対的に高い屈折率を有する単官能性記録単量体を用い、前記単官能単量体を一定水準以上の含有量で用いる場合、最終製造されるホログラムがより薄い厚さを有しながらも以前に知られたホログラムに比べて大幅向上した屈折率変調値を実現できるという点を実験を通じて確認して発明を完成した。
【0022】
より具体的に、前記フォトポリマー組成物は、1.5以下の屈折率および25℃で100cps以下、または90cps以下の粘度を有する多官能(メト)アクリレート単量体および1.5以上の屈折率を有する単官能(メト)アクリレート単量体を含む光反応性単量体を含有し、前記光反応性単量体中の前記1.5以上の屈折率を有する単官能(メト)アクリレート単量体の含有量が60重量%以上または65重量%以上であるが、そのため、前記フォトポリマー組成物から製造されるホログラムは5μmから30μmの厚さでも0.01以上または0.0120以上の屈折率変調値(△n)を実現することができる。
【0023】
特に、前記フォトポリマー組成物は、25℃で100cps以下、または90cps以下の粘度を有する多官能(メト)アクリレート単量体を含むが、多官能アクリレートは高い架橋点を付与して高い屈折率付与用である単官能(メト)アクリレートの低い架橋密度を補完する役割を果たすことができる。
【0024】
前記フォトポリマー組成物は、相対的に高い屈折率を有する単官能(メト)アクリレート単量体を前記光反応性単量体中の60重量%以上、65重量%以上、または70重量%から90重量%含めてバインダーとの屈折率差を高める役割を果たすことができる。そのため、前述のように前記フォトポリマー組成物から製造されるホログラムは5μmから30μmの厚さでも0.0100以上または0.0120以上の屈折率変調値(△n)を実現することができる。
【0025】
一方、前記1.5以上の屈折率を有する単官能(メト)アクリレート単量体は、前記多官能(メト)アクリレート単量体に比べて相対的に高い粘度を有することができ、具体的に前記1.5以上の屈折率を有する単官能(メト)アクリレート単量体は、25℃で300cps以下、または100cpsから300cpsの粘度を有することができる。
【0026】
一方、前記光反応性単量体としては(メト)アクリレート系α、β-不飽和カルボン酸誘導体、例えば(メト)アクリレート、(メト)アクリルアミド、(メト)アクリロニトリルまたは(メト)アクリル酸などを用いることができる。
【0027】
より具体的に、前記1.5以下の屈折率および25℃で100cps以下、または90cps以下の粘度を有する多官能(メト)アクリレート単量体は、分子内部にエーテル結合およびフルオレン作用基を含むことができる。このような1.5以下の屈折率および25℃で100cps以下、または90cps以下の粘度を有する多官能(メト)アクリレート単量体の具体的な例としては、ポリエチレングリコールジ(メト)アクリレート、トリメチロプロパン(エチレンオキシド)トリ(メト)アクリレートなどが挙げられる。
【0028】
また、前記1.5以上の屈折率を有する単官能(メト)アクリレート単量体は、分子内部にエーテル結合およびフルオレン作用基を含むことができる。このような1.5以上の屈折率を有する単官能(メト)アクリレート単量体の具体的な例としては、フェノキシベンジル(メト)アクリレート、o-フェニルフェノールエチレンオキシド(メト)アクリレート、ベンジル(メト)アクリレート、2-(フェニルチオ)エチル(メト)アクリレート、またはビフェニルメチル(メト)アクリレートなどが挙げられる。
【0029】
一方、前記1.5以下の屈折率および25℃で100cps以下、または90cps以下の粘度を有する多官能(メト)アクリレート単量体および前記1.5以上の屈折率を有する単官能(メト)アクリレート単量体のそれぞれは、50から1000g/mol、または200から600g/molの重量平均分子量を有することができる。前記重量平均分子量はGPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0030】
前記多官能(メト)アクリレート単量体および単官能(メト)アクリレート単量体のそれぞれのガラス転移温度は、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry)などの装置や通常知られた方法により測定可能である。
【0031】
一方、前記高分子マトリックスは、前記フォトポリマー組成物およびこれから製造されたフィルムなどの最終製品の支持体の役割を果たすことができ、前記フォトポリマー組成物から形成されたホログラムでは屈折率が異なる部分で屈折率変調を高める役割を果たすことができる。
【0032】
前記高分子マトリックスは、1以上のイソシアネート基を含む化合物とポリオール間の反応生成物であってもよい。
【0033】
前記1以上のイソシアネート基を含む化合物は、分子当たり平均1個以上のNCO官能基を有する公知の化合物またはその混合物であってもよく、前記1以上のイソシアネート基を含む化合物であってもよい。
【0034】
より具体的に前記1以上のイソシアネート基を含む化合物は、脂肪族、脂環式、芳香族または芳香脂肪族のモノ-、ジ-、トリ-またはポリ-イソシアネートである。また、前記1以上のイソシアネート基を含む化合物は、ウレタン、尿素、カルボジイミド、アシル尿素、イソシアヌレート、アロファネート、ビューレット、オキサジアジントリオン、ウレトジオンまたはイミノオキサジアジンジオン構造を有する単量体型ジ-および/またはトリイソシアネートの比較的に分子量が大きい2次産物(オリゴ-およびポリイソシアネート)であってもよい。
【0035】
前記1以上のイソシアネート基を含む化合物の具体的な例としては、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,8-ジイソシアネート-4-(イソシアネートメチル)オクタン、2,2,4-および/または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4'-イソシアネートシクロヘキシル)メタンおよび任意の要望される異性体含有量を有するその混合物、イソシアネートメチル-1,8-オクタンジイソシアネート、1,4-シクロへキシレンジイソシアネート、異性体シクロヘキサンジメチレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-および/または2,6-トルエンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,4'-または4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/またはトリフェニルメタン4,4',4"-トリイソシアネートなどが挙げられる。
【0036】
前記1以上のイソシアネート基を含む化合物と反応して高分子マトリックスを形成するポリオールは、2から20炭素数を有する脂肪族、芳香脂肪族または脂環式ジオール、トリオールおよび/または高級ポリオールであってもよい。
【0037】
前記ポリオールは、300g/molから10,000g/molの水酸基当量と100,000から1,500,000g/molの重量平均分子量を有することができる。
【0038】
前記ジオールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、ジエチルオクタンジオールの位置異性体、1,3-ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-および1,4-シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオネートがある。
【0039】
また、前記トリオールの例としては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンまたはグリセロールがある。適した高度-官能性アルコールは、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールまたはソルビトールである。
【0040】
また、前記ポリオールとしては、比較的に大きい分子量の脂肪族および脂環式ポリオール、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ヒドロキシ-官能性アクリル樹脂、ヒドロキシ-官能性ポリウレタン、ヒドロキシ-官能性エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0041】
前記ポリエステルポリオールは、例えばエタンジオール、ジ-、トリ-またはテトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジ-、トリ-またはテトラプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4-ジメチロールシクロヘキサン、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールまたはこれらの混合物のような多価アルコールを用い、任意にトリメチロールプロパンまたはグリセロールのようにより高い官能性のポリオールを同時に用い、例えばコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、o-フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸またはトリメリット酸、および酸無水物、例えばo-フタル酸無水物、トリメリット酸無水物またはコハク酸無水物、またはこれらの混合物のような脂肪族、脂環式または芳香族のジ-またはポリカルボン酸またはその無水物から公知の方式で製造され得るような、線状ポリエステルジオールである。もちろん、脂環式および/または芳香族のジ-およびポリヒドロキシ化合物もまたポリエステルポリオールの製造のための多価アルコールとして適する。遊離ポリカルボン酸の代わりに、低級アルコールの相応するポリカルボン酸無水物または相応するポリカルボキシレート、またはこれらの混合物をポリエステルの製造に用いることも可能である。
【0042】
また、前記高分子マトリックスの合成に用いることができるポリエステルポリオールとしては、ラクトンの単一-または共重合体があり、これは好ましくはブチロラクトン、ε-カプロラクトンおよび/またはメチル-ε-カプロラクトンのようなラクトンまたはラクトン混合物の、例えばポリエステルポリオール用合成成分として前記で言及された小さい分子量の多価アルコールのような適した2官能性および/またはより高い官能性の開始剤分子との添加反応により得られる。
【0043】
また、ヒドロキシル基を有するポリカーボネートもまた予備重合体合成のためのポリヒドロキシ成分として適しているが、例えばジオール、例えば1,4-ブタンジオールおよび/または1,6-ヘキサンジオールおよび/または3-メチルペンタンジオールの、ジアリールカーボネート、例えばジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはホスゲンとの反応によりて製造され得るものである。
【0044】
また、前記高分子マトリックスの合成に用いることができるポリエーテルポリオールは、例えばスチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリンの多重添加生成物とこれらの混合添加生成物およびグラフト生成物、そして多価アルコールまたはこれらの混合物の縮合により得られるポリエーテルポリオールおよび多価アルコール、アミンおよびアミノアルコールのアルコキシ化により得られるものである。前記ポリエーテルポリオールの具体的な例としては、1.5から6のOH官能度および200から18000g/モル間の数平均分子量、好ましくは1.8から4.0のOH官能度および600から8000g/モルの数平均分子量、特に好ましくは1.9から3.1のOH官能度および650から4500g/モルの数平均分子量を有する、ランダムまたはブロック共重合体形態のポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)およびこれらの組み合わせ、またはポリ(テトラヒドロフラン)およびこれらの混合物である。
【0045】
一方、前記実施形態のフォトポリマー組成物は、光開始剤を含む。前記光開始剤は、光または化学放射線により活性化される化合物であり、前記光反応性単量体など光反応性作用基を含有する化合物の重合を開始する。
【0046】
前記光開始剤としては、通常知られた光開始剤を大きい制限なしに用いることができ、例えば一分子(類型I)または二分子(類型II)開始剤を用いることができる。
【0047】
自由ラジカル光重合のための(類型I)システムは、例えば第三級アミンと組み合わせられた芳香族ケトン化合物、例えばベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーの(Michler's)ケトン)、アントロンおよびハロゲン化ベンゾフェノンまたは前記類型の混合物である。ベンゾインおよびその誘導体、ベンジルケタール、アシルホスファインオキシド、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスファインオキシド、ビスアシルホスファインオキシド、フェニルグリオキシルエステル、カンファーキノン、アルファ-アミノアルキルフェノン、アルファ-、アルファ-ジアルコキシアセトフェノン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)およびアルファ-ヒドロキシアルキルフェノンのような(類型II)開始剤もまた適する。また、アンモニウムアリールボレートと1種以上の染料の混合物から構成される光開始剤システムもまた光開始剤として用いることができる。
【0048】
前記フォトポリマー組成物は、前記高分子マトリックスまたはその前駆体20から80重量%;前記光反応性単量体10から70重量%;および光開始剤0.1から15重量%;を含むことができ、前記高分子マトリックスまたはその前駆体30から70重量%;前記光反応性単量体20から60重量%;および光開始剤0.1から10重量%;を含むことができる。
【0049】
前記フォトポリマー組成物は、その他添加剤、触媒などをさらに含むことができる。例えば、前記フォトポリマー組成物は、前記高分子マトリックスや光反応性単量体の重合を促進するために通常知られた触媒を含むことができる。前記触媒の例としては、スズオクタノエート、亜鉛オクタノエート、ジブチルスズジラウレート、ジメチルビス[(1-ヨウ素ネオデシル)オキシ]スタナン、ジメチルスズジカルボキシレート、ジルコニウムビス(エチルヘキサノエート)、ジルコニウムアセチルアセトネートまたは第三級アミン、例えば1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデカン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-メチル-2H-ピリミド(1,2-a)ピリミジンなどが挙げられる。
【0050】
一方、発明の他の実施形態によれば、フォトポリマー組成物から製造されたホログラム記録媒体が提供され得る。
【0051】
前述のように、前記一実施形態のフォトポリマー組成物を用いると、より薄い厚さを有しながらも、以前に知られたホログラムに比べて大幅向上した屈折率変調値を実現可能なホログラムが提供され得る。
【0052】
前記一実施形態のフォトポリマー組成物は、これに含まれるそれぞれの成分を均一に混合し、20℃以上の温度で乾燥および硬化を行った以降に、所定の露光過程を経て全体可視範囲および近紫外線領域(300から800nm)での光学的適用のためのホログラムとして製造され得る。
【0053】
前記一実施形態のフォトポリマー組成物中の高分子マトリックスまたはその前駆体を形成する1以上のイソシアネート基を含む化合物を除いた残りの成分をまず均質化して混合し、1以上のイソシアネート基を含む化合物を後ほど触媒と共に混合してホログラムの形成過程を準備することができる。
【0054】
前記一実施形態のフォトポリマー組成物は、これに含まれるそれぞれの成分の混合には通常知られた混合機、攪拌機またはミキサーなどを特別な制限なしに用いることができ、前記混合過程での温度は0から100℃、好ましくは10から80℃、特に好ましくは20から60℃であってもよい。
【0055】
一方、前記一実施形態のフォトポリマー組成物中の高分子マトリックスまたはその前駆体を形成する1以上のイソシアネート基を含む化合物を除いた残りの成分をまず均質化して混合した後、1以上のイソシアネート基を含む化合物を添加する時点で前記フォトポリマー組成物は20℃以上の温度で硬化する液体配合物になることができる。
【0056】
前記硬化の温度は、前記フォトポリマーの組成により変わることがあり、例えば30から180℃、好ましくは40から120℃、特に好ましくは50から100℃の温度で加熱することによって促進される。
【0057】
前記硬化時には前記フォトポリマーが所定の基板やモールドに注入されたりコーティングがされた状態であってもよい。
【0058】
一方、前記フォトポリマー組成物から製造されたホログラム記録媒体に視覚的ホログラムの記録する方法は、通常知られた方法を大きい制限なしに用いることができ、後述する実施形態のホログラフィック記録方法で説明する方法を一つの例として採用することができる。
【0059】
一方、発明のまた他の実施形態によれば、電磁放射線により前記フォトポリマー組成物に含まれている光反応性単量体を選択的に重合させる段階を含む、ホログラフィック記録方法が提供され得る。
【0060】
前述のように、前記フォトポリマー組成物を混合および硬化する過程を通じて視覚的ホログラムが記録されていない状態の媒体を製造することができ、所定の露出過程を通じて前記媒体上に視覚的ホログラムを記録することができる。
【0061】
前記フォトポリマー組成物を混合および硬化する過程を通じて提供される媒体に、通常知られた条件下に公知の装置および方法を利用して視覚的ホログラムを記録することができる。
【0062】
一方、発明のまた他の実施形態によれば、ホログラム記録媒体を含む光学素子が提供され得る。
【0063】
前記光学素子の具体的な例としては、光学レンズ、鏡、偏向鏡、フィルター、拡散スクリーン、回折部材、導光体、導波管、映写スクリーンおよび/またはマスクの機能を有するホログラフィック光学素子、光メモリシステムの媒質と光拡散板、光波長分割器、反射型、透過型カラーフィルターなどが挙げられる。
【0064】
前記ホログラム記録媒体を含む光学素子の一例としてホログラムディスプレイ装置が挙げられる。
【0065】
前記ホログラムディスプレイ装置は、光源部、入力部、光学系および表示部を含む。前記光源部は、入力部および表示部で物体の3次元映像情報を提供、記録および再生することに使用されるレーザビームを照射する部分である。また、前記入力部は、表示部に記録する物体の3次元映像情報を予め入力する部分であり、例えば、電気駆動液晶SLM(electrically addressed liquid crystal SLM)に空間別光の強さと位相のような物体の3次元情報を入力することができ、この時、入力ビーム(212)を用いることができる。前記光学系は、ミラー、偏光器、ビームスプリッタ、ビームシャッター、レンズなどから構成されてもよく、前記光学系は、光源部で放出されるレーザビームを入力部に送る入力ビーム、表示部に送る記録ビーム、基準ビーム、消去ビーム、読み出しビームなどで分配することができる。
【0066】
前記表示部は、入力部から物体の3次元映像情報を伝達されて光学駆動SLM(optically addressed SLM)からなるホログラムプレートに記録し、物体の3次元映像を再生することができる。この時、入力ビームと基準ビームの干渉を通じて物体の3次元映像情報を記録することができる。前記ホログラムプレートに記録された物体の3次元映像情報は、読み出しビームが生成する回折パターンにより3次元映像で再生され、消去ビームは形成された回折パターンを迅速に除去するために用いることができる。一方、前記ホログラムプレートは3次元映像を入力する位置と再生する位置の間で移動され得る。
【発明の効果】
【0067】
本発明によれば、薄い厚さを有しながらも屈折率変調値が大きいフォトポリマー層をより容易に提供可能なフォトポリマー組成物と、薄い厚さを有しながらも屈折率変調値が大きいフォトポリマー層を含むホログラム記録媒体と、前記ホログラム記録媒体を含む光学素子と、電磁放射線により前記フォトポリマー組成物に含まれている光反応性単量体を選択的に重合させる段階を含むホログラフィック記録方法が提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0068】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例により限定されるのではない。
【0069】
[製造例:ポリオールの合成]
【0070】
2Lのジャケット反応器にメチルアクリレート34.5g、ブチルアクリレート57.5g、4-ヒドロキシブチルアクリレート8gを入れ、エチルアセテート150gで希釈した。前記ジャケット反応器の温度を60から70℃に維持しながら約1時間ほど攪拌を進行した。そして、前記反応器にn-ドデシルメルカプタン0.035gを追加的に入れ、30分ほど追加攪拌を進行した。以降、重合開始剤AIBN(2,2'-azo-bisisobutyronitrile)0.04gを添加し、約70℃内外の温度で約4時間ほど重合しながら、残留するアクリレート類単量体の含有量1重量%になる時まで維持して、ポリオールを合成した。この時、得られたポリオールはGPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が約70万であり、KOH滴定法を利用して測定したOH当量が1802g/OH molであった。
【0071】
[実施例および比較例:フォトポリマー組成物の製造]
【0072】
前記製造例のポリオール39.44g、下記表1から2のモノマー31.33g、safranin O(染料、シグマアルドリッチ社製品)0.06g、N-メチルジエタノールアミン(シグマアルドリッチ社製品)2.01g、[4-メチルフェニル-(4-(2-メチルプロピル)フェニル)]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(Irafure250)4.19gおよびBYK-310(分散剤)0.42gを光を遮断した状態で混合し、 ペースト(Paste)ミキサーで約2分間攪拌して透明なコーティング液を得た。
【0073】
前記コーティング液にMFA-75X(Asahi Kasei、6官能イソシアネート、キシレンに75重量%に稀釈)7.56gを添加して1分間さらに攪拌し、触媒であるDBTDLを入れて(合成されたウレタン樹脂対比0.05重量%)約1分間攪拌した後、マイヤーバー(meyer bar)を利用して、125μm厚さのPC基材に18μmにコーティングして、80℃で30分間硬化した。そして、約25℃および50RH%の相対湿度の恒温抗湿条件の暗室でサンプルを12時間以上放置した。
【0074】
[実験例:ホログラフィック記録]
【0075】
(1)前記実施例および比較例のそれぞれで製造されたフォトポリマーコーティング面をスライド(slide)ガラスにラミレートし、記録時にレーザがガラス面を先に通過するように固定した。
【0076】
(2)二つの干渉光(参照光および物体光)の干渉を通じてホログラフィックを記録し、透過型記録は二つのビームをサンプルの同一面に入射した。二つのビームの入射角により回折効率は変わるようになり、二つのビームの入射角が同一な場合、non-slantedになる。non-slanted記録は二つのビームの入射角が法線基準に同一であるため、回折格子はフィルムと垂直に生成される。
【0077】
532nm波長のレーザを用いて透過型non-slanted方式で記録(2θ=45°)し、下記一般式1で回折効率(η)を計算した。
【0078】
[一般式1]
【数1】
【0079】
前記一般式1で、ηは回折効率であり、PDは記録後のサンプルの回折されたビームの出力量(mW/cm)であり、PTは記録したサンプルの透過したビームの出力量(mW/cm)である。
【0080】
透過型ホログラムのLossless Dielectric gratingは下記一般式2から屈折率変調値(△n)を計算することができる。
【0081】
[一般式2]
【数2】
【0082】
前記一般式2で、dはフォトポリマー層の厚さであり、△nは屈折率変調値であり、η(DE)は回折効率であり、λは記録波長である。
【0083】

実施例の単/多官能アクリレート単量体種類および屈折率変調値(△n)の測定結果
【表1】
【0084】
比較例の単/多官能アクリレート単量体種類および屈折率変調値(△n)の測定結果
【表2】
【0085】
(1)1単量体の屈折率の測定
【0086】
Irgacure184(ciba社製品、UV開始材)とF477(DIC製品、界面活性剤)を前記単量体に対比してそれぞれ0.5wt%と0.2wt%で用いて混合したコーティング液を製造し、ガラス基板に2μmの厚さでコーティングし、60℃で2分間乾燥した。そして、150mJ/cmの紫外線を照射して硬化した後、SPA-3DR装備で632.8nmで屈折率を測定した。
【0087】
(2)単量体のガラス転移温度(Tg)の測定
【0088】
Irgacure184(ciba社製品、UV開始材)を前記単量体に対比してそれぞれ0.5wt%に混合したコーティング液を製造し、ガラス基板に10μmの厚さにコーティングし、60℃で2分間乾燥した。そして、150mJ/cmの紫外線を照射して硬化した後、フィルムを剥離してDSCを利用して前記フィルムのガラス転移温度を測定した。具体的に、前記DSCを利用時、-100℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温し、200℃から-100℃まで-10℃/分の速度で減温する過程を2回進行し、2回目の昇温区間でガラス転移温度を確認した。
【0089】
前記表1および2から確認されるように、1.5以下の屈折率および25℃で100cps以下の粘度を有する多官能(メト)アクリレート単量体および1.5以上の屈折率を有する単官能(メト)アクリレート単量体を含み、前記単官能(メト)アクリレート単量体の含有量が60重量%以上である光反応性単量体を用いた実施例の場合、薄い厚さを有しながらも比較例に対比して大きい屈折率変調値を実現するホログラムを提供できるという点が確認された。