(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】溶鋼生産管理装置、溶鋼生産管理方法および溶鋼生産管理システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20220113BHJP
B22D 46/00 20060101ALI20220113BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20220113BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
B22D46/00
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2017088646
(22)【出願日】2017-04-27
【審査請求日】2019-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝又 大介
(72)【発明者】
【氏名】木村 鉄也
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-68788(JP,A)
【文献】特開2012-155591(JP,A)
【文献】特開2003-223550(JP,A)
【文献】特開2003-6422(JP,A)
【文献】特開2012-59135(JP,A)
【文献】特開2008-293475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
B22D 46/00
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の編成確定日までの対象期間内に溶解要望日が設定されている鋼塊の形状種類ごとの必要数量を特定し、1つの溶鋼から製造される鋼塊の形状種類とその数量とを規定した所定の鋼塊パターンを組み合わせた、前記溶解要望日および前記必要数量を満たす溶鋼編成を行う溶鋼編成部を備え、
前記溶鋼編成部は、
前記溶解要望日順に、製造対象の形状種類に係る前記鋼塊の必要数量を満たす前記鋼塊パターンを特定すると共に、当該鋼塊パターンを用いた当該形状種類に係る鋼塊の製造数量から前記必要数量を引いた数量と、当該鋼塊パターンを用いて同時に製造される当該形状種類以外の形状種類に係る前記鋼塊の製造数量と、を各々の形状種類に係る余り鋼塊の数量とし
た前記溶鋼編成の結果を登録し、
前記鋼塊パターンの特定にあたり、製造対象の形状種類に係る前記鋼塊が前記余り鋼塊として登録されている場合、当該余り鋼塊の数量から当該形状種類に係る鋼塊の前記必要数量を引いた数量を必要数量として算出し、当該算出した必要数量を満たす前記鋼塊パターンを特定し、
特定した前記鋼塊パターンの組み合わせに応じた複数通りの
前記溶鋼編成
の結果ごとに、所定の評価指標の値と、当該評価指標の値を用いた総合評価値と、を算出する
ことを特徴とする溶鋼生産管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の溶鋼生産管理装置であって、
前記溶鋼編成部は、
溶鋼重量、溶鋼数、廃棄コスト期待値、向け先平準度、バッチ工程集約度、追加作業、歩留りおよび鋼塊溶解要望日ばらつきのうち、少なくとも1つを前記評価指標として前記評価指標の値および前記総合評価値を算出する
ことを特徴とする溶鋼生産管理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の溶鋼生産管理装置であって、
前記溶鋼編成部は、
前記鋼塊の形状種類ごとの需要確率とその数量との関係により示される需要分布と、前記鋼塊の形状種類ごとの廃棄コストと、に基づいて、前記鋼塊の形状種類ごと、および数量ごとの前記廃棄コスト期待値を算出する
ことを特徴とする溶鋼生産管理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の溶鋼生産管理装置であって、
前記溶鋼編成部は、
前記評価指標に加えて、前記鋼塊に内包する鋼片の溶解要望日ばらつきを評価指標とし、該鋼片の溶解要望日ばらつきを含む評価指標のうち、少なくとも1つを前記評価指標として前記評価指標の値および前記総合評価値を算出する
ことを特徴とする溶鋼生産管理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の溶鋼生産管理装置であって、
前記溶鋼編成部は、
前記溶鋼編成を行った前記対象期間よりも後の編成確定日が存在する場合、該編成確定日までの新たな対象期間における前記溶鋼編成を行う
ことを特徴とする溶鋼生産管理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の溶鋼生産管理装置であって、
外部装置との間で通信を行う通信部をさらに備え、
前記溶鋼編成部は、前記対象期間における溶鋼編成の内容を示す溶鋼編成情報を生成し、
前記通信部は、前記溶鋼編成に基づき前記対象期間における前記溶鋼の生産計画を立案する所定の生産計画システムに対して前記溶鋼編成情報を送信する
ことを特徴とする溶鋼生産管理装置。
【請求項7】
請求項3に記載の溶鋼生産管理装置であって、
外部装置との間で通信を行う通信部をさらに備え、
前記溶鋼編成部は、前記対象期間における溶鋼編成の内容に基づき、余り鋼塊と、該余り鋼塊の前記廃棄コスト期待値とを対応付けた余り鋼塊に関する情報を生成し、
前記通信部は、営業担当者が利用可能な営業支援システムに前記余り鋼塊に関する情報を送信する
ことを特徴とする溶鋼生産管理装置。
【請求項8】
溶鋼生産管理装置が行う溶鋼生産管理方法であって、
前記溶鋼生産管理装置は、
所定の編成確定日までの対象期間内に溶解要望日が設定されている鋼塊の形状種類ごとの必要数量を特定し、1つの溶鋼から製造される鋼塊の形状種類とその数量とを規定した所定の鋼塊パターンを組み合わせた、前記溶解要望日および前記必要数量を満たす溶鋼編成を行うステップと、
前記溶鋼編成の総合評価値を算出するステップと、を行い、
前記溶鋼編成を行うステップでは、
前記溶解要望日順に、製造対象の形状種類に係る前記鋼塊の必要数量を満たす前記鋼塊パターンを特定すると共に、当該鋼塊パターンを用いた当該形状種類に係る鋼塊の製造数量から前記必要数量を引いた数量と、当該鋼塊パターンを用いて同時に製造される当該形状種類以外の形状種類に係る前記鋼塊の製造数量と、を各々の形状種類に係る余り鋼塊の数量とし
た前記溶鋼編成の結果を登録し、
前記鋼塊パターンの特定にあたり、製造対象の形状種類に係る前記鋼塊が前記余り鋼塊として登録されている場合、当該余り鋼塊の数量から当該形状種類に係る鋼塊の前記必要数量を引いた数量を必要数量として算出し、当該算出した必要数量を満たす前記鋼塊パターンを特定し、
前記総合評価値を算出するステップでは、
特定した前記鋼塊パターンの組み合わせに応じた複数通りの
前記溶鋼編成
の結果ごとに、所定の評価指標の値と、当該評価指標の値を用いた総合評価値と、を算出する
ことを特徴とする溶鋼生産管理方法。
【請求項9】
溶鋼生産管理装置と営業支援システムとを有する溶鋼生産管理システムであって、
前記溶鋼生産管理装置は、
所定の編成確定日までの対象期間内に溶解要望日が設定されている鋼塊の形状種類ごとの必要数量を特定し、1つの溶鋼から製造される鋼塊の形状種類とその数量とを規定した所定の鋼塊パターンを組み合わせた、前記溶解要望日および前記必要数量を満たす溶鋼編成を行い、当該溶鋼編成において、前記溶解要望日順に、製造対象の形状種類に係る前記鋼塊の必要数量を満たす前記鋼塊パターンを特定すると共に、当該鋼塊パターンを用いた当該形状種類に係る鋼塊の製造数量から前記必要数量を引いた数量と、当該鋼塊パターンを用いて同時に製造される当該形状種類以外の形状種類に係る前記鋼塊の製造数量と、を各々の形状種類に係る余り鋼塊の数量とし
た前記溶鋼編成の結果を登録し
、前記鋼塊パターンの特定にあたり、製造対象の形状種類に係る前記鋼塊が前記余り鋼塊として登録されている場合、当該余り鋼塊の数量から当該形状種類に係る鋼塊の前記必要数量を引いた数量を必要数量として算出し、当該算出した必要数量を満たす前記鋼塊パターンを特定し、特定した前記鋼塊パターンの組み合わせに応じた複数通りの
前記溶鋼編成
の結果ごとに、所定の評価指標の値と、当該評価指標の値を用いた総合評価値と、を算出する溶鋼編成部と、
外部装置との間で通信を行う通信部と、を備え、
前記溶鋼編成部は、前記対象期間における前記溶鋼編成の内容に基づき、前記余り鋼塊と、当該余り鋼塊の廃棄コスト期待値と、を対応付けた前記余り鋼塊に関する情報を生成し、
前記通信部は、前記営業支援システムに前記余り鋼塊に関する情報を送信し、
前記営業支援システムは、
前記余り鋼塊に関する情報に含まれる前記余り鋼塊に所定のポイントを対応付けた余り鋼塊情報と、前記余り鋼塊の受注を獲得した営業担当者に当該余り鋼塊の前記ポイントを対応付けた営業情報とを生成する営業情報管理部を備える
ことを特徴とする溶鋼生産管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鋼生産管理装置、溶鋼生産管理方法および溶鋼生産管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、出鋼枠配置計画立案装置に関し、「製造品種の注文情報、製造品種別の工程処理発生確率、及び立案方針に関する情報を取り込む入力手段と、注文データベース格納手段と、製造品種モデル格納手段と、注文マトリクス作成手段と、立案方針パラメタを設定する立案方針設定手段と、納期遅れ、製品在庫、出鋼ロット拡大に関する評価関数を最小又は最大にして、前記出鋼枠配置計画及び製造品種別充当枠を算出する最適化計算手段と、出鋼計画立案結果表示手段と、出鋼計画立案結果登録手段と、により出鋼枠配置計画を立案する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の出鋼枠配置計画立案装置は、納期と、次工程に必要な納期と、次工程に必要な日数のみを評価基準として溶鋼編成を行う装置である。そのため、同装置が生成する溶鋼編成は、納期優先に偏重しており、溶鋼重量、製造歩留りなどの評価指標を考慮した溶鋼編成を行うことができない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、溶鋼生産に関する様々な評価指標を考慮したより最適な溶鋼編成を行うことができる溶鋼生産管理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下のとおりである。上記の課題を解決する本発明の一態様に係る溶鋼生産管理装置は、所定の編成確定日までの対象期間内に溶解要望日が設定されている鋼塊の形状種類ごとの必要数量を特定し、1つの溶鋼から製造される鋼塊の形状種類とその数量とを規定した所定の鋼塊パターンを組み合わせた、前記溶解要望日および前記必要数量を満たす溶鋼編成を行う溶鋼編成部を備え、前記溶鋼編成部は、前記溶解要望日順に、製造対象の形状種類に係る前記鋼塊の必要数量を満たす前記鋼塊パターンを特定すると共に、当該鋼塊パターンを用いた当該形状種類に係る鋼塊の製造数量から前記必要数量を引いた数量と、当該鋼塊パターンを用いて同時に製造される当該形状種類以外の形状種類に係る前記鋼塊の製造数量と、を各々の形状種類に係る余り鋼塊の数量とした前記溶鋼編成の結果を登録し、前記鋼塊パターンの特定にあたり、製造対象の形状種類に係る前記鋼塊が前記余り鋼塊として登録されている場合、当該余り鋼塊の数量から当該形状種類に係る鋼塊の前記必要数量を引いた数量を必要数量として算出し、当該算出した必要数量を満たす前記鋼塊パターンを特定し、特定した前記鋼塊パターンの組み合わせに応じた複数通りの前記溶鋼編成の結果ごとに、所定の評価指標の値と、当該評価指標の値を用いた総合評価値と、を算出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る溶鋼生産管理装置によれば、溶鋼生産に関する様々な評価指標を考慮したより最適な溶鋼編成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る溶鋼生産管理装置の機能構成の一例を示した機能ブロック図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る受注情報の一例を示した図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る販売計画情報の一例を示した図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係る受注実績情報の一例を示した図である。
【
図5】本発明の第一実施形態に係る廃棄コスト情報の一例を示した図である。
【
図6】本発明の第一実施形態に係る廃棄コスト期待値情報の一例を示した図である。
【
図7】本発明の第一実施形態に係る鋼塊パターン情報の一例を示した図である。
【
図8】本発明の第一実施形態に係る編成確定日情報の一例を示した図である。
【
図9】本発明の第一実施形態に係る評価指標情報の一例を示した図である。
【
図10】本発明の第一実施形態に係る溶鋼生産管理装置のハードウェア構成の一例を示した図である。
【
図11】本発明の第一実施形態に係る溶鋼編成処理の一例を示したフロー図である。
【
図12】本発明の第一実施形態に係るある1つの鋼塊の需要分布の一例を示した図である。
【
図13】本発明の第一実施形態に係る鋼塊オーダー情報の一例を示した図である。
【
図14】本発明の第一実施形態に係る溶鋼編成情報の一例を示した図である。
【
図15】本発明の第二実施形態に係る受注情報の一例を示した図である。
【
図16】本発明の第二実施形態に係る評価指標情報を示した図である。
【
図17】本発明の第三実施形態に係る編成確定日情報の一例を示した図である。
【
図18】本発明の第三実施形態に係る溶鋼編成処理の一例を示したフロー図である。
【
図19】本発明の第四実施形態に係る溶鋼生産管理システムが有する溶鋼生産管理装置および営業支援システムの機能構成の一例を示した機能ブロック図である。
【
図20】本発明の第四実施形態に係る余り鋼塊情報の一例を示した図である。
【
図21】本発明の第四実施形態に係る営業情報の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の複数の実施形態に係る溶鋼生産管理装置について図面を用いて説明する。
【0010】
[第一実施形態]
鉄鋼業における製鋼プロセスでは、溶解炉で材料を溶解させて溶鋼を生成する。生成された溶鋼は、必要に応じて二次精錬による成分調整が行われた後、精錬炉から定盤上に設置された鋼塊ケースに注入される。鋼塊ケースは、形状の異なる複数の種類があり、鋼塊ケースを変えることにより形状の異なる鋼塊が製造される。
【0011】
鋼塊ケース内で凝固した溶鋼は、押し湯部分をクレーンなどによって引き抜くことで鋼塊が製造される。このような製鋼プロセスにより、1つの溶鋼から複数の形状種類の鋼塊が複数個(例えば、数個~数十個)製造される。製造された鋼塊は、所定の向け先へと移動し、圧延や切断などの工程を経て製品となる。
【0012】
ここで、製造単位となる溶鋼をどのような鋼塊で構成するかを決定することを溶鋼編成という。溶鋼編成にあたり、製鋼プロセス上の様々な事象を考慮しなければ効率的な製造を行うことができず、損失が発生してしまう。
【0013】
例えば、同一溶鋼内における各鋼塊の溶解要望日のばらつきが大きくなると、製品の製造中に材料の入れ替え作業が発生し、作業性を悪化させる。また、所定の向け先だけが混み合うと、負荷集中による仕掛り増となり、圧延などの処理に滞りが生じてしまう。また、将来の受注を見越して鋼塊を余分に製造する場合もあるが、受注見込みが外れて対象となる鋼塊の受注を得られなかった場合、製造した鋼塊を廃棄することになり、その材料費や製造原価が損失になってしまう。
【0014】
本実施形態に係る溶鋼生産管理装置は、受注情報や販売計画情報などの所定情報を用いて、同一溶鋼内の溶解要望日のばらつき、鋼塊の廃棄率と廃棄損失との積である廃棄コスト期待値、向け先別の平準度、バッチ工程の集約度、溶鋼数などを評価指標として最適な溶鋼編成を行う。
【0015】
図1は、本実施形態に係る溶鋼生産管理装置100の機能構成の一例を示した機能ブロック図である。溶鋼生産管理装置100は、溶鋼の生産管理を行う装置であって、一機能として溶鋼編成を行う。具体的には、溶鋼生産管理装置100は、溶鋼編成処理により、製造単位となる溶鋼から生成される鋼塊の構成を示した溶鋼編成情報を生成する。溶鋼編成処理の詳細は後述する。
【0016】
図示するように、溶鋼生産管理装置100は、演算部101と、記憶部102と、通信部103とを有している。演算部101には、入力受付部111と、出力処理部112と、溶鋼編成部113とが含まれている。
【0017】
入力受付部111は、溶鋼生産管理装置100の使用者である編成担当者から様々な指示入力を受け付ける機能部である。具体的には、入力受付部111は、評価指標の値を算出するための演算式や評価指標の重み付け値、溶鋼編成の対象期間を示す編成確定日などの所定情報の入力や、溶鋼編成処理の実行指示を編成担当者から受け付ける。
【0018】
出力処理部112は、表示画面を構成する画面情報を生成する機能部である。具体的には、出力処理部112は、溶鋼生産管理装置100が有するディスプレイへの表示が要求される所定の画面情報(例えば、所定情報の入力画面や溶鋼編成結果など)を生成し、これをディスプレイに表示する。
【0019】
溶鋼編成部113は、溶鋼編成を行う機能部である。具体的には、溶鋼編成部113は、溶鋼編成処理の実行により、現在から編成確定日までの期間を対象とした溶鋼編成を行う。また、溶鋼編成部113は、溶鋼編成の結果として製造単位の溶鋼から生成される鋼塊の構成を示した溶鋼編成情報を生成する。溶鋼編成情報の詳細については後述する。
【0020】
記憶部102は、様々な情報を記憶する機能部である。具体的には、記憶部102は、受注情報121と、販売計画情報122と、受注実績情報123と、廃棄コスト情報124と、廃棄コスト期待値情報125と、鋼塊パターン情報126と、編成確定日情報127と、評価指標情報128とを有している。
【0021】
図2は、受注情報121の一例を示した図である。受注情報121は、受注した鋼塊に関する情報である。具体的には、受注情報121は、鋼塊ID121aと、成分ID121bと、鋼塊形状121cと、向け先121dと、バッチ工程121eと、溶解要望日121fと、鋼塊重量121gと、数量121hとが対応付けられたレコードを有している。
【0022】
鋼塊ID121aは、受注した鋼塊を識別する情報である。成分ID121bは、対応付けられた鋼塊の成分を識別する情報である。鋼塊形状121cは、受注した鋼塊の形状を特定する情報であって、例えば所定の識別番号により表される。向け先121dは、圧延や切断などを行う加工エリア(あるいは工作機)を識別する情報である。バッチ工程121eは、製造した鋼塊を加熱処理するなどの処理工程を特定する情報であって、例えば所定の識別番号により表される。溶解要望日121fは、対応する鋼塊を製造するための溶鋼の溶解要望日を示す情報である。鋼塊重量121gは、対応付けられた鋼塊の重量を示す情報である。数量121hは、受注した数量を示す情報である。
【0023】
受注情報121は、予め記憶部102に格納され、溶鋼編成処理に用いられる。
【0024】
図3は、販売計画情報122の一例を示した図である。販売計画情報122は、鋼塊の販売計画を示す情報である。具体的には、販売計画情報122は、鋼塊ID122aと、成分ID122bと、鋼塊形状122cと、向け先122dと、バッチ工程122eと、受注確度122fと、溶解要望日122gと、鋼塊重量122hと、数量122iとが対応付けられたレコードを有している。ここで、受注確度122fは、対応付けられた鋼塊の受注確率を示す情報である。なお、鋼塊ID122aと、成分ID122bと、鋼塊形状122cと、向け先122dと、バッチ工程122eと、溶解要望日122gと、鋼塊重量122hと、数量122iとは、前述の受注情報121と同様であるため説明を省略する。
【0025】
販売計画情報122は、予め記憶部102に格納され、溶鋼編成処理に用いられる。
【0026】
図4は、受注実績情報123の一例を示した図である。受注実績情報123は、鋼塊の過去の受注実績に関する情報である。具体的には、受注実績情報123は、成分ID123aと、鋼塊形状123bと、受注日付123cと、数量123dとが対応付けられたレコードを有している。ここで、受注日付123cは、対応付けられた鋼塊の過去の受注日付を示す情報である。数量123dは、対応付けられた受注日付における受注数を示す情報である。なお、成分ID123a、鋼塊形状123bは、前述の受注情報121と同様であるため説明を省略する。
【0027】
受注実績情報123は、予め記憶部102に格納され、溶鋼編成処理に用いられる。
【0028】
図5は、廃棄コスト情報124の一例を示した図である。廃棄コスト情報124は、鋼塊の形状種類ごとの廃棄コストを示す情報である。具体的には、廃棄コスト情報124は、成分ID124aと、鋼塊形状124bと、廃棄コスト124cとが対応付けられたレコードを有している。ここで、廃棄コスト124cは、鋼塊の形状種類ごとの廃棄コストを示す情報である。なお、成分ID124aおよび鋼塊形状124bは、前述の受注情報121と同様であるため説明を省略する。
【0029】
廃棄コスト情報124は、予め記憶部102に格納され、溶鋼編成処理に用いられる。
【0030】
図6は、廃棄コスト期待値情報125の一例を示した図である。廃棄コスト期待値情報125は、鋼塊の廃棄率および廃棄コストの積からなる廃棄コスト期待値を示す情報である。具体的には、廃棄コスト期待値情報125は、成分ID125aと、鋼塊形状125bと、数量125cと、廃棄コスト期待値125dとが対応付けられたレコードを有している。なお、成分ID125aおよび鋼塊形状125bは、前述の受注情報121と同様であるため説明を省略する。
【0031】
数量125cは、廃棄する鋼塊の数量を示す情報である。廃棄コスト期待値125dは、対応付けられた数量の鋼塊を廃棄する場合の廃棄コストの期待値を示す情報である。廃棄コスト期待値の算出については後述する。
【0032】
廃棄コスト期待値情報125は、溶鋼編成処理により生成され、記憶部102に格納される。
【0033】
図7は、鋼塊パターン情報126の一例を示した図である。鋼塊パターン情報126は、1つの溶鋼から生成される鋼塊パターンなどを示す情報である。具体的には、鋼塊パターン情報126は、成分IDごとに生成され、パターンNo126aと、溶鋼重量126bと、炉126cと、追加作業126dと、歩留り率126eと、鋼塊形状別数量126fとが対応付けられたレコードを有している。
【0034】
パターンNo126aは、鋼塊パターンを識別する情報である。溶鋼重量126bは、対応付けられた鋼塊パターンにより生成された各鋼塊の総重量を示す情報である。炉126cは、対応付けられた鋼塊パターンの各鋼塊ケースに注入する溶鋼の溶解炉を示す情報である。追加作業126dは、標準作業以外の作業の有無を示す情報であって、追加作業がある場合は1、追加作業がない場合は0で示される。なお、標準作業以外の作業とは、例えば定盤同士が離れている場合に定盤間の移動が発生する場合などがある。歩留り率126eは、歩留りの割合を示す情報である。なお、歩留りとは、原材料の投入量から期待される生産量に対して実際に得られた製品生産量の比率のことである。鋼塊形状別数量126fは、鋼塊形状別の製造数量を示す情報である。
【0035】
鋼塊パターン情報126は予め記憶部102に格納され、溶鋼編成処理に用いられる。
【0036】
図8は、編成確定日情報127の一例を示した図である。編成確定日情報127は、溶鋼編成の対象期間を示す情報である。具体的には、編成確定日情報127の編成確定日127aには、現在から所望の溶解要望日を全て含む編成期間の末日が登録される。
【0037】
編成確定日情報127は、編成担当者から所望の編成確定日に関する入力情報を受け付けると、溶鋼編成部113により生成され、記憶部102に格納される。
【0038】
図9は、評価指標情報128の一例を示した図である。評価指標情報128は、溶鋼編成の評価指標に関する情報である。具体的には、評価指標情報128は、評価指標128aと、重み付け値128bとが対応付けられたレコードを有している。
【0039】
評価指標128aは、溶鋼編成の各評価指標を示す情報である。評価指標128aには、例えば溶鋼重量、m炉溶鋼数、廃棄コスト期待値、向け先a平準度、バッチ工程b集約度、追加作業、歩留りおよび鋼塊溶解要望日ばらつきなどがある。重み付け値128bは、対応付けられた評価指標の重み付け値を示す情報である。
【0040】
評価指標情報128は、入力受付部111が編成担当者から各評価指標に対して所望の重み付け値の入力情報を受け付けると、溶鋼編成部113により生成され、記憶部102に格納される。
【0041】
図1に戻って説明する。通信部103は、外部装置との間で情報通信を行う機能部である。例えば、通信部103は、生成された溶鋼編成を生産計画システムなど所定の外部装置に送信する。
【0042】
以上、溶鋼生産管理装置100の機能構成の一例について説明した。
【0043】
図10は、溶鋼生産管理装置100のハードウェア構成の一例を示した図である。溶鋼生産管理装置100は、例えばパーソナルコンピュータあるいはメインフレームと言われる汎用コンピュータやワークステーションなどの情報処理装置により実現される。
【0044】
図示するように、溶鋼生産管理装置100は、入力装置201と、出力装置202と、外部記憶装置203と、演算装置204と、主記憶装置205と、通信装置206と、これらを電気的に相互接続するバス207とを有している。
【0045】
入力装置201は、キーボードやマウス、タッチパネルなどのポインティングデバイスあるいは音声入力装置であるマイクなどである。出力装置202は、ディスプレイやプリンタあるいは音声出力装置であるスピーカなどである。外部記憶装置203は、デジタル情報を記憶可能ないわゆるHDDやSSD(Solid State Drive)あるいはフラッシュメモリなどの不揮発性記憶装置である。
【0046】
演算装置204は、溶鋼生産管理装置100の様々な処理を行う中心的なユニットである。演算装置204は、編成確定日までの期間を対象とした溶鋼編成を行い、製造単位の溶鋼から生成される鋼塊の構成を示した溶鋼編成情報を生成する。
【0047】
このような演算装置204は、例えばCPUで構成される。主記憶装置205は、RAMやROMなどのメモリ装置である。通信装置206は、外部装置との間で情報通信を行うための通信モジュールなどである。
【0048】
以上、溶鋼生産管理装置100のハードウェア構成の一例について説明した。
【0049】
なお、溶鋼生産管理装置100の演算部101は、演算装置204のCPUに処理を行わせるプログラムによって実現される。これらのプログラムは、主記憶装置205のROMあるいは外部記憶装置203に格納されており、実行にあたってRAM上にロードされ、CPUにより実行される。また、記憶部102は、RAM、ROMまたは外部記憶装置203によって実現されても良く、これらの組み合わせによって実現されても良い。また、通信部103は、通信装置206によって実現される。
【0050】
[動作の説明]
図11は、溶鋼編成処理の一例を示したフロー図である。かかる処理は、例えば溶鋼生産管理装置100の入力受付部111が編成担当者から溶鋼編成処理の実行指示を受け付けると開始される。
【0051】
溶鋼編成処理が開始されると、溶鋼編成部113は、受注情報121、販売計画情報122、受注実績情報123および廃棄コスト情報124を記憶部102から取得する(ステップS001)。
【0052】
次に、溶鋼編成部113は、廃棄コスト期待値を算出する(ステップS002)。具体的には、溶鋼編成部113は、受注情報121、販売計画情報122および受注実績情報123を用いて、統計処理により、鋼塊形状ごと、数量ごとの需要分布を算出する。
【0053】
図12は、ある1つの鋼塊の需要分布(縦軸は需要確率を示し、横軸は数量を示す)の一例を示した図である。溶鋼編成部113は、統計処理により求めた需要分布と、廃棄コスト情報124とを用いて、以下に示す式(1)により余り鋼塊数mの廃棄コスト期待値C
tmを算出する。なお、式(1)では、鋼塊形状tの需要数n時の確率をP
n、鋼塊形状tの1つ当たりの廃棄コストをC
iとする。
【0054】
【0055】
溶鋼編成部113は、上記式(1)を用いて鋼塊形状ごと、数量ごとの廃棄コスト期待値を算出すると、算出した廃棄コスト期待値と、対応する鋼塊形状と、成分IDと、数量とを対応付けた廃棄コスト期待値情報125を生成し、記憶部102に格納する。なお、廃棄コスト期待値は、例えばRFM(Recentry Frequency Monetary)分析等により編成担当者が算出し、廃棄コスト期待値情報125に入力しても良い。
【0056】
次に、溶鋼編成部113は、編成確定日情報127、鋼塊パターン情報126および評価指標情報128を記憶部102から取得し(ステップS003)、溶鋼編成を実行する(ステップS004)。
【0057】
以下、溶鋼編成の詳細について説明する。まず、溶鋼編成部113は、受注情報121、販売計画情報122および編成確定日情報127を用いて、現在から編成確定日までの対象期間に含まれる鋼塊のオーダー数を特定する。具体的には、溶鋼編成部113は、編成確定日情報127から編成確定日を特定し、現在の日付から編成確定日までの対象期間に溶解要望日が含まれる形状種類の鋼塊を受注情報121および販売計画情報122から特定する。また、溶鋼編成部113は、特定した鋼塊の数量の合計を算出し、鋼塊オーダー情報300を生成する。
【0058】
図13は、鋼塊オーダー情報300の一例を示した図である。鋼塊オーダー情報300は、鋼塊形状300aと、溶解要望日300bと、数量300cとを対応付けたレコードを有している。
【0059】
次に、溶鋼編成部113は、鋼塊パターン情報126を用いて、鋼塊オーダー情報300の溶解要望日および数量を満たす鋼塊パターンの組み合わせを溶解要望日順に編成した複数通りの溶鋼編成情報を生成する。
【0060】
図14は、溶鋼編成情報400の一例を示した図である。溶鋼編成情報400は、複数通りの溶鋼編成を含む情報であって、溶鋼No400aと、鋼塊形状400bと、数量400cと、余り鋼塊400dと、溶解日400eと、鋼塊パターンNo400fと、溶鋼重量400gと、炉400hと、追加作業400iと、歩留り率400jと、向け先400kと、バッチ工程400lとが対応付けられたレコードを有している。
【0061】
溶鋼No400aは、対応付けられた形状種類の鋼塊を製造するための溶鋼を識別する情報であって、例えば通し番号1~nにより表される。鋼塊形状400bは、鋼塊の形状を示す情報であって、受注情報121の鋼塊形状121cと共通の情報である。数量400cは、対応付けられた形状種類の鋼塊の製造数量を示す情報である。余り鋼塊400dは、対応付けられた形状種類の鋼塊を製造する際に同時に製造される鋼塊の形状種類およびその数量を示す情報である。溶解日400eは、対応付けられた形状種類の鋼塊の溶解日を示す情報である。鋼塊パターンNo400fは、対応付けられた形状種類の鋼塊を製造するための鋼塊パターンを識別する情報であって、鋼塊パターン情報126のパターンNo126aと共通の情報である。なお、溶鋼重量400g、炉400h、追加作業400i、歩留り率400j、向け先400kおよびバッチ工程400lは、鋼塊パターン情報126と共通の情報であるため、説明を省略する。
【0062】
このような溶鋼編成情報400の生成にあたり、溶鋼編成部113は、鋼塊オーダー情報300を用いて溶解要望日(2016/12/8)が対応付けられている形状種類の鋼塊(例えば、JJ550)および数量(2個)を特定し、溶鋼編成情報400の溶鋼No1が対応付けられたレコードに登録する。また、溶鋼編成部113は、特定した数量を製造するための鋼塊パターン(例えば、パターンNo3)を鋼塊パターン情報126から特定し、溶鋼No1のレコードの鋼塊パターンNoに登録する。
【0063】
また、溶鋼編成部113は、鋼塊パターンを用いて製造可能な対象の鋼塊(JJ550)の数量(3個)から必要製造数(2個)を引いた数量(1個)を対象の鋼塊に対応付けて、溶鋼No1のレコードの余り鋼塊に登録する。また、溶鋼編成部113は、かかる鋼塊パターンを用いて対象の鋼塊を製造した際に同時に製造される鋼塊(RGG)とその数量(5個)を対応付けて溶鋼No1のレコードの余り鋼塊に登録する。
【0064】
また、溶鋼編成部113は、鋼塊オーダー情報300における対象鋼塊の溶解要望日を溶鋼No1のレコードの溶解日に登録する。また、溶鋼編成部113は、対象鋼塊の鋼塊パターンに対応付けられている溶鋼重量、炉、追加作業、歩留り率を鋼塊パターン情報126から特定し、溶鋼No1のレコードの対応する項目欄に登録する。また、溶鋼編成部113は、対象鋼塊が対応付けられている向け先、バッチ工程などを受注情報121あるいは販売計画情報122から特定し、溶鋼No1のレコードの対応する項目欄に登録する。
【0065】
溶鋼編成部113は、このようにして溶鋼編成情報400の溶鋼No1が対応付けられたレコードが生成される。また、溶鋼編成部113は、このような処理を鋼塊オーダー情報300に登録されている各鋼塊の数量および溶解要望日を満たすように繰り返し行うことで溶鋼編成情報400を生成する。
【0066】
なお、溶鋼編成部113は、対象鋼塊(例えば、溶鋼編成情報の溶鋼No3が対応付けられたJJ551)が先のレコード(例えば、溶鋼No1のレコード)の余り鋼塊(RPGに対応付けられた余り鋼塊)に登録されている場合、対象鋼塊の製造必要数(例えば、3個)から余り鋼塊に登録されている数量(2個)を差し引いた数量(1個)を製造必要数として算出し、その数量を満たす鋼塊パターンを鋼塊パターン情報126から特定すれば良い。
【0067】
また、先に生成した溶鋼編成情報400に登録した鋼塊パターンの組み合わせ以外の組み合わせが存在する場合、溶鋼編成部113は、鋼塊パターンの全ての組み合わせについて溶鋼編成情報400を生成する。このような処理を鋼塊オーダー情報300の溶解要望日順に行うことにより、溶鋼編成部113は、相互に異なる鋼塊パターンを組み合わせた複数通りの溶鋼編成情報400を生成する。
【0068】
次に、溶鋼編成部113は、溶鋼編成情報400および評価指標情報128を用いて、溶鋼編成ごとに総合評価値を求める。具体的には、溶鋼編成部113は、鋼塊パターンiを溶鋼jに編成するか否かを表す変数Pjiを設定する。例えば、溶鋼編成部113は、鋼塊パターンiを溶鋼jに編成する場合、Pji=1を設定し、溶鋼jに編成しない場合はPji=0を設定する。
【0069】
また、溶鋼編成部113は、鋼塊kを溶鋼jに編成するか否かを表す変数Xkjを設定する。例えば、溶鋼編成部113は、鋼塊kを溶鋼jに編成する場合、Xkj=1を設定し、溶鋼jに編成しない場合はXkj=0を設定する。
【0070】
また、溶鋼編成部113は、溶鋼重量、溶解要望日のばらつき、歩留り、鋼塊廃棄コスト期待値、向け先平準度、バッチ工程集約度、追加作業、溶鋼数といった所定の評価指標ごとに評価指標値を算出し、それらの算出結果を用いて、溶解編成ごとに総合評価値を算出する。
【0071】
鋼塊パターンiの溶鋼重量を定数wiとすると、溶鋼jの溶鋼重量Wjは、以下に示す式(2)で表される。
【0072】
【0073】
また、溶鋼重量の評価指標値は、F1ΣjWjで表される。なお、F1は、溶鋼重量の重み付け値である。
【0074】
また、溶鋼jで生成される鋼塊(余り鋼塊を含む)のうち、最早の溶解要望日をtminj、鋼塊kの溶解要望日をtk、鋼塊kの鋼塊重量をwkとすると、鋼塊溶解要望日のばらつきSjは、以下に示す式(3)で表される。
【0075】
【0076】
また、鋼塊溶解要望日のばらつきの評価指標値は、F2ΣjSjで表される。なお、F2は、鋼塊溶解要望日のばらつきの重み付け値である。
【0077】
また、鋼塊パターンiの歩留り率を定数Qi、鋼塊パターンiの溶鋼重量を定数wiとすると、歩留りYjは以下に示す式(4)で表される。
【0078】
【0079】
また、歩留りの評価指標値は、F3ΣjYjで表される。なお、F3は、歩留りの重み付け値である。
【0080】
また、溶鋼編成情報に含まれる全ての溶鋼(j個)に編成されている鋼塊形状tのうち、最終的な余り鋼塊(鋼塊オーダー情報の数量以上に製造した鋼塊)の鋼塊数rtに対する廃棄コスト期待値をCt、rtとすると、廃棄コスト期待値Cは、以下の式(5)で表される。
【0081】
【0082】
また、廃棄コスト期待値の評価指標値は、F4Cで表される。なお、F4は、廃棄コスト期待値の重み付け値である。
【0083】
また、鋼塊パターンiの追加作業がある場合に1を、追加作業がない場合に0となる定数をAiとすると、J個の溶鋼の総追加作業数Aは、以下の式(6)で表される。
【0084】
【0085】
また、追加作業の評価指標値は、F5Aで表される。なお、F5は、追加作業の重み付け値である。
【0086】
また、溶鋼編成情報400に含まれる全ての溶鋼(j個)に編成されている鋼塊のうち、向け先aの鋼塊総重量をwaとし、j個の溶鋼に含まれる最早の溶解要望日をTmin、最遅溶解要望日をTmax、t日を溶解要望日とする溶鋼に編成され、かつ、向け先aの鋼塊の総重量をwatとすると、向け先aの平準度Laは、以下の式(7)で表される。
【0087】
【0088】
また、向け先aの評価指標値は、ΣaF6aLaで表される。なお、F6aは、向け先a平準度の重み付け値である。
【0089】
また、溶鋼jに編成された鋼塊に対応付けられたバッチ工程bの種類の総数をBbjとすると、バッチ工程集約度Bbは、以下の式(8)で表される。
【0090】
【0091】
また、バッチ工程bの評価指標値は、ΣbF7bBbで表される。なお、F7bは、バッチ工程bの重み付け値である。
【0092】
また、鋼塊パターンiの溶解炉がmである場合に1を、mでない場合に0となる定数をDmiとすると、溶解炉mの溶鋼数Nmは、以下の式(9)で表される。
【0093】
【0094】
また、溶解炉mの溶鋼数の評価指標値は、ΣmF8mNmで表される。なお、F8mは、m炉溶鋼数の重み付け値である。
【0095】
次に、溶鋼編成部113は、各評価指標値の演算結果を用いて、以下の式(10)に示す総合評価値を溶解編成情報400ごとに求める。
【0096】
【0097】
図11に戻って説明する。全ての溶鋼編成情報400に係る溶鋼編成の総合評価値を算出すると、溶鋼編成部113は、総合評価値が最小(あるいは最大)となる所定数(例えば、1~5個)の溶鋼編成情報400を特定し、溶鋼編成の結果として総合評価値と共にディスプレイに出力する(ステップS005)。
【0098】
また、溶鋼編成部113は、評価指標情報128の重み付け値を修正するか否かを判定する(ステップS006)。具体的には、溶鋼編成部113は、出力処理部112を介して、評価指標情報128の重み付け値を修正するか否かをユーザに確認する所定の画面情報をディスプレイに表示する。また、溶鋼編成部113は、入力受付部111を介してユーザから重み付け値の修正指示を取得した場合、重み付け値を修正すると判定し(ステップS005でYes)、処理をステップS003に戻す。なお、溶鋼編成部113は、ステップS003で評価指標情報128を記憶部102から取得する際、出力処理部112を介して重み付け値の修正情報を受け付けるための所定の画面情報をディスプレイに表示し、入力受付部111を介して取得した修正情報に基づき評価指標情報128の重み付け値を更新する。
【0099】
一方で、重み付け値の修正不要を示す入力情報を取得した場合(ステップS005でNo)、溶鋼編成部113は、本フローの処理を終了する。なお、溶鋼編成部113は、このような溶鋼編成処理を溶鋼の成分IDごとに実行し、同一溶鋼に編成可能な制約条件を満たしつつ、溶鋼重量や歩留りなど所定の評価指標を考慮した最適な溶鋼編成を得る。
【0100】
なお、溶鋼編成部113は、通信部103を介して、生成した溶鋼編成情報400を生産計画システムなど所定のシステムあるいは装置に送信する。生産計画システムでは、取得した溶鋼編成情報400を用いて生産計画を立案することができる。
【0101】
以上、本実施形態に係る溶鋼生産管理装置100について説明した。このような溶鋼生産管理装置100によれば、溶鋼生産に関する様々な評価指標を考慮したより最適な溶鋼編成を行うことができる。
【0102】
[第二実施形態]
本発明の第二実施形態に係る溶鋼生産管理装置100は、第一実施形態の各評価指標に加え、鋼片の在庫の配置換えコストを考慮した溶鋼編成を行う。鉄鋼業における製造プロセスでは、溶鋼から鋼塊が製造された後に、圧延や切断などにより鋼片が製造される。通常、一つの鋼塊から複数の鋼片が製造される。このとき、鋼塊の溶解要望日は、内包している鋼片の中で最早の溶解要望日が設定され、溶鋼の溶解要望日は内包している鋼塊の最早の溶解要望日が設定されている。本実施形態では、同一溶鋼内の鋼片の鋼片溶解要望日のばらつきも考慮して溶鋼編成を行う。
【0103】
図15は、第二実施形態に係る受注情報121の一例を示した図である。図示するように、受注情報121は、第一実施形態の受注情報121に鋼片重量121iが追加されたものである。鋼片重量121iは、対応付けられた形状種類の鋼塊に内包する鋼片の重量を示す情報である。それ以外の各項目121a~121hは、受注情報121の対応する項目情報と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0104】
図16は、第二実施形態に係る評価指標情報128を示した図である。図示するように、評価指標情報128は、第一実施形態の評価指標情報128に鋼片溶解要望日ばらつきの重み付け値が追加されたものである。それ以外の各評価指標は第一実施形態の評価指標情報128と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0105】
溶鋼編成部113は、溶鋼編成処理のステップS004において、前述の評価指標に関する演算処理に加えて鋼片を考慮した以下の演算を行う。具体的には、鋼塊kを溶鋼jに編成する変数X
kjを設定すると、
図15に示す受注情報121に基づき、鋼片sを溶鋼jに編成するか否かを表すZ
sjは一意に求まる。溶鋼j内に含まれる鋼片の最早の溶解要望日をtsmin
j、鋼片sの溶解要望日をt
s、鋼片sの鋼片重量をw
sとすると、溶鋼jの溶解要望日のばらつきSS
jは、以下の式(11)で表される。
【0106】
【0107】
また、鋼片溶解日のばらつきの評価指標値は、F9ΣjSSjで表される。なお、F9は、鋼片溶解要望日ばらつきの重み付け値である。
【0108】
また、溶鋼編成部113は、鋼片溶解要望日ばらつきの評価指標値を含む各評価指標値の演算結果を用いて、以下の式(12)に示す総合評価値を溶解編成情報400ごとに求める。
【0109】
【0110】
なお、溶鋼編成処理のステップS001~S003、S005およびS006は、前述の第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0111】
このような第二実施形態に係る溶鋼生産管理装置100によれば、鋼片の在庫の配置換えコストを考慮したより細やかな溶鋼編成を行うことができる。
【0112】
[第三実施形態]
本発明の第三実施形態に係る溶鋼生産管理装置100は、溶鋼編成を所定の編成確定日ごとに繰り返し実行することで、計算負荷を低減した溶鋼編成を行う。例えば、編成確定日までの対象期間が長い場合、それに比例して、その期間に含まれる溶解要望日が多くなり、生成する溶鋼編成のパターン数も膨大になる。本実施形態の溶鋼生産管理装置100では、編成確定日を複数の短い期間に設定し、対象期間ごとに溶鋼編成を行うことで、演算処理の負担を軽減するものである。なお、本実施形態に係る溶鋼編成部113は、例えば編成担当者から受け付けた1つの編成確定日までの期間を複数の短い期間に分けて、複数の期間を有する編成確定日情報を生成しても良い。
【0113】
図17は、第三実施形態に係る編成確定日情報127の一例を示した図である。図示するように、編成確定日情報127には複数の期間が含まれており、それ以外は第一実施形態の編成確定日情報127と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。また、
図18は、第三実施形態に係る溶鋼編成処理の一例を示したフロー図である。
【0114】
図18のステップS004で溶鋼編成を行うと、溶鋼編成部113は、次の編成確定日が存在するか否かを判定する(ステップS004a)。具体的には、溶鋼編成部113は、編成確定日情報127を参照し、ステップS004で溶鋼編成を行った対象期間よりも後の編成確定日が存在するか否かを判定する。より具体的には、ステップS004において所定の編成確定日(例えば、2016/1/12)までの溶鋼編成を行った場合、溶鋼編成部113は、それ以降の編成確定日(本例では、2016/1/19と、2016/1/24と、2016/2/3とが存在する)が存在するか否かを判定する。
【0115】
そして、溶鋼編成を行った対象期間よりも後の編成確定日が存在していると判定した場合(ステップS004aでYes)、溶鋼編成部113は、処理をステップS004に戻し、溶鋼編成を行っていない編成確定日までの対象期間について溶鋼編成を実行する。一方で、溶鋼編成を行った対象期間よりも後の編成確定日が存在しないと判定した場合(ステップS004aでNo)、溶鋼編成部113は、処理をステップS005に移行する。
【0116】
なお、溶鋼編成処理のステップS001~S003、S005およびS006は、前述の第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0117】
このような第三実施形態に係る溶鋼生産管理装置100によれば、編成確定日を複数の短い期間に設定し、対象期間ごとに溶鋼編成を行うことで、演算処理の負担を軽減することができる。
【0118】
[第四実施形態]
本発明の第四実施形態は、溶鋼生産管理装置100と、営業支援システム500とを有する溶鋼生産管理システムに関し、溶鋼生産管理装置100が余り鋼塊を営業支援システム500に公開することで、余り鋼塊を積極的に受注するよう営業支援するものである。
【0119】
図19は、第四実施形態に係る溶鋼生産管理システムが有する溶鋼生産管理装置100および営業支援システム500の機能構成の一例を示した機能ブロック図である。図示するように、第四実施形態に係る溶鋼生産管理装置100の通信部103は、インターネットなど所定の通信回線網Nを介して営業支援システム500と接続されている。なお、溶鋼生産管理装置100の各機能部は前述の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0120】
営業支援システム500は、営業担当者が利用可能であって、鋼塊の受注など様々な営業活動を支援するためのシステムである。なお、営業支援システム500は、例えば汎用コンピュータやワークステーションなどの情報処理装置により実現される。
【0121】
図示するように、営業支援システム500は、営業情報管理部501と、情報格納部502とを有している。営業情報管理部501は、営業情報の管理および更新等を行う機能部である。また、情報格納部502には、余り鋼塊情報511と、営業情報512とが格納されている。
【0122】
図20は、余り鋼塊情報511の一例を示した図である。余り鋼塊情報511は、鋼塊オーダー情報300の数量以上に製造した余り鋼塊に関する情報である。具体的には、余り鋼塊情報511は、余り鋼塊形状511aと、数量511bと、廃棄コスト511cと、廃棄コスト期待値511dと、ポイント511eとが対応付けられたレコードを有している。
【0123】
余り鋼塊形状511aは、余り鋼塊の形状種類を示す情報であって、受注情報121の鋼塊形状121cと共通の情報である。数量511bは、余り鋼塊の数量を示す情報である。廃棄コスト511cは、余り鋼塊単体の廃棄コストを示す情報であって、廃棄コスト情報124の廃棄コスト124cと共通の情報である。廃棄コスト期待値511dは、数量に応じた廃棄コストの期待値を示す情報であって、廃棄コスト期待値情報125と共通の情報である。ポイント511eは、対応付けられた余り鋼塊を販売したときに営業担当者に付与される営業ポイントを示す情報である。ポイント511eは、例えば廃棄コスト期待値が高い余り鋼塊ほど高い値が設定されても良い。
【0124】
余り鋼塊情報511は、溶鋼編成部113から所定情報を取得した営業情報管理部501により生成される。具体的には、溶鋼編成部113は、溶鋼編成情報400と、廃棄コスト情報124と、廃棄コスト期待値情報125とを用いて余り鋼塊の鋼塊形状と、数量と、廃棄コストと、廃棄コスト期待値と特定し、これらを対応付けた所定情報を営業支援システム500に送信する。営業支援システム500の営業情報管理部501は、溶鋼編成部113から取得した所定情報に、廃棄コスト期待値の大きさに応じた所定のポイントを対応づけることにより余り鋼塊情報511を生成する。
【0125】
図21は、営業情報512の一例を示した図である。営業情報512は、営業担当者および営業成績に関する情報である。具体的には、営業情報512は、担当者ID512aと、担当者名512bと、獲得ポイント512cとが対応付けられたレコードを有している。
【0126】
担当者ID512aは、営業担当者を一意に識別する情報である。担当者名は512b、営業担当者の氏名を示す情報である。獲得ポイント512cは、営業担当者が獲得した営業ポイントを示す情報である。
【0127】
営業情報512は、情報格納部502に予め格納されている。営業情報管理部501は、余り鋼塊を受注した営業担当者に対し、受注した余り鋼塊に応じたポイントを付与する。具体的には、営業情報管理部501は、受注した余り鋼塊のポイントを余り鋼塊情報511から特定し、受注した営業担当者の獲得ポイント512cに加算して営業情報512を更新する。
【0128】
このように、本実施形態に係る溶鋼生産管理システムによれば、余り鋼塊に関する情報を生成し、これを営業支援システム500に公開することにより、余り鋼塊を積極的に受注することを支援することができる。
【0129】
なお、前述の第一実施形態および第二実施形態では、溶鋼重量、溶鋼数、廃棄コスト期待値、向け先平準度、バッチ工程集約度、追加作業、歩留り、鋼塊溶解要望日ばらつきおよび鋼片溶解要望日ばらつきの全ての評価指標について評価指標値を算出し、これらの総和を総合評価値として求めたが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらの評価指標のうち、少なくとも1つ以上の評価指標値を算出し、総合評価値を求めても良い。また、溶鋼生産管理装置100は、算出した各評価指標値のうち所定の評価指標値を用いて溶鋼編成の総合評価値を算出するようにしても良い。
【0130】
また、前述の実施形態に係る溶鋼生産管理装置100は、インターネットなど所定のネットワーク網を介して、編成担当者が使用する端末(例えば、パーソナルコンピュータ)から溶鋼編成の実行指示や、演算式および評価指標の重み付け値の入力を受け付けるようにしても良い。
【0131】
また、溶鋼生産管理装置100の機能ブロックは、本実施形態において実現される溶鋼生産管理装置100の機能を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものであり、各機能の分類の仕方やその名称によって、本発明が制限されることはない。また、溶鋼生産管理装置100の各構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、一つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0132】
また、各機能部の全部または一部は、コンピュータに実装されるハードウェア(ASICといった集積回路など)により構築されてもよい。また、各機能部の処理が1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。
【0133】
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【0134】
また、上記説明では、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
【符号の説明】
【0135】
100・・・溶鋼生産管理装置、101・・・演算部、102・・・記憶部、
103・・・通信部、111・・・入力受付部、112・・・出力処理部、
113・・・溶鋼編成部、121・・・受注情報、122・・・販売計画情報、
123・・・受注実績情報、124・・・廃棄コスト情報、
125・・・廃棄コスト期待値情報、126・・・鋼塊パターン情報、
127・・・編成確定日情報、128・・・評価指標情報、201・・・入力装置、
202・・・出力装置、203・・・外部記憶装置、204・・・演算装置、
205・・・主記憶装置、206・・・通信装置、207・・・バス