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特許7003575アンダーフィル材、半導体パッケージ及び半導体パッケージの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】アンダーフィル材、半導体パッケージ及び半導体パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20220113BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20220113BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20220113BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20220113BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
C08G59/40
H01L23/30 R
H01L21/60 311Q
H01L21/56 R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017209448
(22)【出願日】2017-10-30
(65)【公開番号】P2019081835
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 智也
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0073008(US,A1)
【文献】特表2014-521824(JP,A)
【文献】特開2017-071704(JP,A)
【文献】特開2010-147175(JP,A)
【文献】特開昭58-147416(JP,A)
【文献】特開平04-080226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08G 59/00 - 59/72
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C08C 19/00 - 19/44
C08F 6/00 - 246/00
C08F 301/00
H01L 21/447- 21/607
H01L 23/28 - 23/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、硬化剤と、充填材と、下記一般式(1)で表されるグアニジン化合物及びビグアニド化合物の少なくとも一方である含窒素化合物(但し、前述の硬化剤には含まれない)と、を含み、
前記硬化剤は、ジエチルトルエンジアミン及び3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、又は、ジエチルトルエンジアミン及びジメチルチオトルエンジアミンを含むアンダーフィル材。
【化1】

(一般式(1)中、R~Rはそれぞれ独立に水素原子、電子求引性基又は電子供与性基を表す。但し、R~Rが全て水素原子の場合を除く。R及びRにおける前記電子求引性基の合計数並びにR及びRにおける前記電子求引性基の合計数は等しく、かつR及びRにおける前記電子供与性基の合計数並びにR及びRにおける前記電子供与性基の合計数は等しい。)
【請求項2】
前記一般式(1)中、R及びRが水素であり、かつR及びRが共に電子求引性基又は電子供与性基である請求項1に記載のアンダーフィル材。
【請求項3】
前記ビグアニド化合物は、一般式(2)で表される構造を有する、請求項1又は請求項2に記載のアンダーフィル材。
【化2】

(一般式(2)中、*はそれぞれ結合部位を表す。)
【請求項4】
前記含窒素化合物の含有率は、アンダーフィル材全量に対して0.5質量%~10質量%である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項5】
アミン硬化剤以外の硬化剤を含まない請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂を含む、請求項1~請求項のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項7】
支持体と、前記支持体上に配置された半導体素子と、前記半導体素子を封止している請求項1~請求項のいずれか1項に記載のアンダーフィル材の硬化物と、を備える半導体パッケージ。
【請求項8】
支持体と、前記支持体上に配置される半導体素子との間の空隙を請求項1~請求項のいずれか1項に記載のアンダーフィル材で充填する工程と、前記アンダーフィル材を硬化する工程と、を有する半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーフィル材、半導体パッケージ及び半導体パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の実装技術においては、基板と半導体チップとの間の空隙を充填するためにアンダーフィル材と呼ばれる液状のアンダーフィル材が広く用いられている。
例えば、特許文献1にはビスフェノール型エポキシ樹脂にアミノフェノールエポキシ樹脂を特定量配合することで良好な注入性と封止後のフィレットクラックの抑制を達成した液状封止材が記載されている。
【0003】
また、特許文献2にはエポキシ樹脂と、硬化剤と、水酸基含有イミダゾール化合物を含有する硬化促進剤と、ゴム成分と、を含有し、硬化剤としてジシアンジアミドを含む接着性樹脂組成物を用いた場合に、金属表面の油塗布面との接着性が良好になることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/093148号
【文献】特開2016-74806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2のように、ジシアンジアミドをエポキシ樹脂及び硬化剤と混合した場合、ジシアンジアミドが、エポキシ樹脂と硬化剤との反応の触媒になったり、エポキシ樹脂と反応したりしてゲルタイムが短くなり過ぎるおそれがある。その結果、支持体と半導体素子との間の空隙にアンダーフィル材を充填する途中でアンダーフィル材が硬化してしまったり、ボイドを巻き込んでアンダーフィル材が硬化してしまったりするといった問題がある。
そのため、ゲルタイムが短くなり過ぎることを抑制しつつ、かつ硬化した際に支持体との接着性に優れるアンダーフィル材が望ましい。
【0006】
本発明は、ゲルタイムが短くなり過ぎることが抑制されており、かつ硬化した際に支持体との接着性に優れるアンダーフィル材、並びにこれを用いて得られる半導体パッケージ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施形態が含まれる。
<1> エポキシ樹脂と、硬化剤と、充填材と、下記一般式(1)で表されるグアニジン化合物及びビグアニド化合物の少なくとも一方である含窒素化合物と、
を含むアンダーフィル材。
【0008】
【化1】
【0009】
(一般式(1)中、R~Rはそれぞれ独立に水素原子、電子求引性基又は電子供与性基を表す。但し、R~Rが全て水素原子の場合を除く。R及びRにおける前記電子求引性基の合計数並びにR及びRにおける前記電子求引性基の合計数は等しく、かつR及びRにおける前記電子供与性基の合計数並びにR及びRにおける前記電子供与性基の合計数は等しい。)
<2> 前記一般式(1)中、R及びRが水素であり、かつR及びRが共に電子求引性基又は電子供与性基である<1>に記載のアンダーフィル材。
<3> 前記ビグアニド化合物は、一般式(2)で表される構造を有する、<1>又は<2>に記載のアンダーフィル材。
【0010】
【化2】
【0011】
(一般式(2)中、*はそれぞれ結合部位を表す。)
<4> 前記含窒素化合物の含有率は、アンダーフィル材全量に対して0.5質量%~10質量%である<1>~<3>のいずれか1つに記載のアンダーフィル材。
<5> 前記硬化剤は、アミン硬化剤を含む<1>~<4>のいずれか1つに記載のアンダーフィル材。
<6> 前記アミン硬化剤は、ジエチルトルエンジアミン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びジメチルチオトルエンジアミンのいずれか1つを含む<5>に記載のアンダーフィル材。
<7> 前記エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載のアンダーフィル材。
【0012】
<8> 支持体と、前記支持体上に配置された半導体素子と、前記半導体素子を封止している<1>~<7>のいずれか1つに記載のアンダーフィル材の硬化物と、を備える半導体パッケージ。
【0013】
<9> 支持体と、前記支持体上に配置される半導体素子との間の空隙を<1>~<7>のいずれか1つに記載のアンダーフィル材で充填する工程と、前記アンダーフィル材を硬化する工程と、を有する半導体パッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ゲルタイムが短くなり過ぎることが抑制されており、かつ硬化した際に支持体との接着性に優れるアンダーフィル材、並びにこれを用いて得られる半導体パッケージ及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
【0016】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0017】
<アンダーフィル材>
本開示のアンダーフィル材は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、充填材と、下記一般式(1)で表されるグアニジン化合物及びビグアニド化合物の少なくとも一方である含窒素化合物と、を含む。
【0018】
【化3】
【0019】
一般式(1)中、R~Rはそれぞれ独立に水素原子、電子求引性基又は電子供与性基を表す。但し、R~Rが全て水素原子の場合を除く。R及びRにおける前記電子求引性基の合計数並びにR及びRにおける前記電子求引性基の合計数は等しく、かつR及びRにおける前記電子供与性基の合計数並びにR及びRにおける前記電子供与性基の合計数は等しい。
なお、本開示において、電子求引性基とは、隣に位置して結合対象となる窒素原子の電子密度を減少させる効果を持つ置換基をいい、電子供与性基とは、隣に位置して結合対象となる窒素原子の電子密度を増加させる効果を持つ置換基をいう。
【0020】
本開示のアンダーフィル材は、前述の一般式(1)で表されるグアニジン化合物及びビグアニド化合物の少なくとも一方である含窒素化合物(以下、「特定の含窒素化合物」とも称する。)を含むことにより、ゲルタイムが短くなり過ぎることが抑制されており、かつ硬化した際に支持体との接着性に優れる。
【0021】
通常、グアニジンは、共役酸の正電荷が共鳴により3つの窒素上に非局在化して安定となっている。しかし、グアニジンにおける水素(一般式(1)中のR~R)の少なくとも一部が置換されている場合、例えば、グアニジンにおける一つの水素がシアノ基であるジシアンジアミドでは、シアノ基が電子求引性基であるため、シアノ基への電荷の偏りが生じており、グアニジン骨格の共鳴による安定化が阻害されていると考えられる。その結果、ジシアンジアミドが、エポキシ樹脂と硬化剤との反応の触媒になったり、エポキシ樹脂と反応したりしやすくなるため、ゲルタイムが短くなりすぎると推測される。
【0022】
一方、本開示にて用いる一般式(1)で表されるグアニジン化合物では、R及びRにおける電子求引性基の合計数及び電子供与性基の合計数が、R及びRにおける電子求引性基の合計数及び電子供与性基の合計数とそれぞれ等しいため、置換基R~Rへの電荷の偏りが生じにくくなっている。したがって、一般式(1)で表されるグアニジン化合物は、グアニジン骨格の共鳴による安定化が阻害されにくく、一般式(1)で表されるグアニジン化合物が、エポキシ樹脂と硬化剤との反応の触媒になること、及び、エポキシ樹脂と反応したりしやすくなることが抑制されると考えられる。以上により、一般式(1)で表されるグアニジン化合物を含むアンダーフィル材では、ゲルタイムが短くなりすぎることが抑制できると考えられる。
【0023】
また、本開示にて用いるビグアニド化合物では、共役酸の正電荷が共鳴により5つの窒素上に非局在化して安定となっており、グアニジン化合物よりも多くの窒素上にて正電荷が非局在化するため、グアニジン化合物よりも安定性が高いと考えられる。そのため、ビグアニド化合物は、ビグアニド骨格の共鳴による安定化が阻害されにくく、ビグアニド化合物が、エポキシ樹脂と硬化剤との反応の触媒になること、及び、エポキシ樹脂と反応したりしやすくなることが抑制されると考えられる。以上により、ビグアニド化合物を含むアンダーフィル材では、ゲルタイムが短くなりすぎることが抑制できると考えられる。
【0024】
また、一般式(1)で表されるグアニジン化合物は、置換されていない窒素に結合する水素がガラス、シリコンウエハ等の支持体の表面の官能基(例えば、シラノール基)と相互作用しやすく、一般式(1)で表されるグアニジン化合物を含むアンダーフィル材では、硬化した際に支持体との接着性に優れると推測される。
【0025】
ビグアニド化合物は、窒素に結合する水素が、ガラス、シリコンウエハ等の支持体の表面の官能基(例えば、シラノール基)と相互作用しやすく、ビグアニド化合物を含むアンダーフィル材では、硬化した際に支持体との接着性に優れると推測される。
【0026】
[エポキシ樹脂]
アンダーフィル材はエポキシ樹脂を含む。エポキシ樹脂の種類は特に制限されず、アンダーフィル材の所望の特性等に応じて選択できる。
【0027】
エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルトルイジン、ジアミノジフェニルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミン等の芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニレン骨格及びビフェニレン骨格の少なくともいずれかを有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格及びビフェニレン骨格の少なくともいずれかを有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂、並びにビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、アリサイクリックジエポキシ-アジペイド等の脂環式エポキシ樹脂などの脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
エポキシ樹脂は、アンダーフィル材の諸特性のバランスの観点からは、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。この場合、ビスフェノール型エポキシ樹脂とグリシジルアミン型エポキシ樹脂の合計含有率が、エポキシ樹脂全体の20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。
【0029】
アンダーフィル材がエポキシ樹脂としてビスフェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂を含む場合、その質量比(ビスフェノール型エポキシ樹脂:グリシジルアミン型エポキシ)は、特に制限はなく、耐熱性、接着性及び流動性の観点から、例えば、20:80~95:5であることが好ましく、40:60~90:10であることがより好ましく、60:40~80:20であることが更に好ましい。
【0030】
また、エポキシ樹脂の含有率は、アンダーフィル材全量に対して5質量%~60質量%であることが好ましく、10質量%~50質量%であることがより好ましく、15質量%~40質量%であることが更に好ましい。エポキシ樹脂の含有率がアンダーフィル材全量に対して5質量%~60質量%であると、反応性に優れ、かつ硬化物の耐熱性及び機械的強度、並びに封止時の流動特性に優れる傾向にある。
【0031】
エポキシ樹脂の純度は、高いほど好ましい。特に加水分解性塩素量は、IC等の素子上のアルミ配線腐食に関わるため少ない方が好ましい。耐湿性に優れるアンダーフィル材を得る観点からは、例えば、加水分解性塩素量が500ppm以下のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
本開示においてエポキシ樹脂の加水分解性塩素量とは、試料のエポキシ樹脂1gをジオキサン30mlに溶解し、1N(mol/l)-KOH(水酸化カリウム)メタノール溶液5mlを添加して30分間還流させた後、電位差滴定により求めた値を尺度としたものである。
【0032】
[硬化剤]
アンダーフィル材は硬化剤を含む。硬化剤の種類は特に制限されず、アンダーフィル材の所望の特性等に応じて選択できる。具体的には、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本開示において、後述する特定の含窒素化合物は「硬化剤」には含まれないものとする。
【0033】
アンダーフィル材に使用する硬化剤は、常温(25℃)で液状のものが好ましく、被着体への接着性の観点からは、アミン硬化剤であることが好ましい。アミン硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、n-プロピルアミン、2-ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン等の脂肪族アミン化合物、ジエチルトルエンジアミン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン、2-メチルアニリン等の芳香族アミン化合物、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール等のイミダゾール化合物、イミダゾリン、2-メチルイミダゾリン、2-エチルイミダゾリン等のイミダゾリン化合物などが挙げられる。これらの中でも保存安定性の観点からは、芳香族アミン化合物が好ましく、ジエチルトルエンジアミン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びジメチルチオトルエンジアミンがより好ましい。
【0034】
アンダーフィル材がアミン化合物を含む場合、その含有率は特に制限されず、例えば、硬化剤全体の50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。
【0035】
アンダーフィル材がジエチルトルエンジアミン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びジメチルチオトルエンジアミンのいずれか1つを含む場合、これらの合計含有率は特に制限されず、例えば、硬化剤全体の50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。
【0036】
硬化剤の活性水素当量は、特に制限はなく、耐ブリード性と耐クリープ性の観点から、例えば、10g/mol~200g/molであることが好ましく、20g/mol~100g/molであることがより好ましく、30g/mol~70g/molであることが更に好ましい。
【0037】
エポキシ樹脂と硬化剤の配合比は、それぞれの未反応分を少なく抑える関連からは、エポキシ樹脂のエポキシ基の数に対する硬化剤の官能基(アミン硬化剤の場合は活性水素)の数の比(硬化剤の官能基数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.5~2.0の範囲内となるように設定されることが好ましく、0.6~1.3の範囲内となるように設定されることがより好ましい。成形性と耐リフロー性の観点からは、0.8~1.2の範囲内となるように設定されることが更に好ましい。
【0038】
[充填材]
アンダーフィル材は、充填材を含む。充填材は特に制限されず、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、炭酸カルシウム、クレー、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミニウム、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、前記粉体を球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。充填材として難燃効果のあるものを用いてもよい。難燃効果のある充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が挙げられる。充填材は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
充填材の粒子形状は、特に制限はなく、不定形であっても球状であってもよいが、アンダーフィル材の微細間隙への流動性及び浸透性の観点からは、球状であることが好ましい。具体的には、例えば、球状シリカが好ましく、球状溶融シリカがより好ましい。
【0040】
充填材の平均粒径は、特に制限されず、例えば、0.1μm~10μmであることが好ましく、0.3μm~5μmであることより好ましい。充填材の平均粒径が0.1μm以上であると、樹脂成分(エポキシ樹脂及び硬化剤)への分散性が向上し、アンダーフィル材の流動特性がより向上する傾向にあり、10μm以下であると充填材の沈降をより抑制し易くなり、かつ微細間隙への浸透性及び流動性が向上してボイド又は未充填部分の発生がより抑制される傾向にある。
【0041】
本開示において充填材の平均粒径は、体積平均粒径を意味する。具体的には、レーザー回折・散乱法により得られる体積基準の粒度分布曲線において、小径側からの累積が50%となるときの粒径(d50)を意味する。
【0042】
アンダーフィル材における充填材の含有率は、特に制限はなく、例えば、アンダーフィル材全量に対して20質量%~90質量%であることが好ましく、30質量%~80質量%であることがより好ましく、40質量%~75質量%であることが更に好ましく、50質量%~75質量%であることが特に好ましく、55質量%~70質量%であることが極めて好ましい。
充填材の含有率がアンダーフィル材全量に対して20質量%以上であると、硬化物の熱膨張係数が低減する傾向にあり、90質量%以下であると、アンダーフィル材の粘度が低く維持されて流動性、浸透性及びディスペンス性が良好に維持される傾向にある。
【0043】
(特定の含窒素化合物)
アンダーフィル材は、下記一般式(1)で表されるグアニジン化合物及びビグアニド化合物の少なくとも一方である含窒素化合物(特定の含窒素化合物)を含む。
【0044】
【化4】
【0045】
一般式(1)中、R~Rはそれぞれ独立に水素原子、電子求引性基又は電子供与性基を表す。但し、R~Rが全て水素原子の場合を除く。R及びRにおける前記電子求引性基の合計数並びにR及びRにおける前記電子求引性基の合計数は等しく、かつR及びRにおける前記電子供与性基の合計数並びにR及びRにおける前記電子供与性基の合計数は等しい。
なお、R及びRにおける前記電子求引性基の合計数並びにR及びRにおける前記電子求引性基の合計数は、R~Rがそれぞれ独立に、その全体が電子求引性基であるか否かが基準となり、それぞれ0~2の整数である。
同様に、R及びRにおける前記電子供与性基の合計数並びにR及びRにおける前記電子供与性基の合計数は、R~Rがそれぞれ独立に、その全体が電子供与性基であるか否かが基準となり、それぞれ0~2の整数である。
【0046】
一般式(1)中、R及びRが水素原子であり、かつR及びRが共に電子求引性基又は共に電子供与性基であることが好ましく、R及びRが水素原子であり、かつR及びRが電子供与性基であることがより好ましい。
【0047】
電子求引性基としては、アリール基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等が挙げられる。
【0048】
電子供与性基としては、アルキル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0049】
電子求引性基及び電子供与性基において、アリール基、アルキル基、各官能基のアルキル骨格、各官能基のアリール骨格等の水素は置換されていてもよく、例えば、アリール基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、ハロゲン原子によって置換されていてもよい。
【0050】
また、一般式(1)で表されるグアニジン化合物としては、特に制限されず、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジメチルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、1,1,3,3-テトラフェニルグアニジン等が挙げられる。中でも、1,3-ジフェニルグアニジン及び1,3-ジ-o-トリルグアニジンが好ましい。
【0051】
ビグアニド化合物としては、ビグアニド及びビグアニド誘導体が挙げられる。また、ビグアニド化合物は、一般式(2)で表される構造を有することが好ましい。
【0052】
【化5】
【0053】
一般式(2)中、*はそれぞれ結合部位を表す。なお、ビグアニド化合物は、一般式(2)で表される構造を一つ有する化合物であってもよく、二つ以上有する化合物であってもよい。
【0054】
一般式(2)で表される構造を有するビグアニド化合物としては、具体的には、1-(o-トリル)ビグアニド、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、ブホルミン、フェンホルミン、プログアニル、クロロプログアニル、クロルヘキシジン、アレキシジン、ポリアミノプロピルビグアニド、ポリヘキサニド等が挙げられる。中でも、1-(o-トリル)ビグアニド、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニドが好ましく、1-(o-トリル)ビグアニドがより好ましい。
【0055】
更に、ビグアニド化合物は、一般式(3)で表されるビグアニド化合物であることがより好ましい。
【0056】
【化6】
【0057】
一般式(3)中、R~Rはそれぞれ独立に水素原子、電子求引性基又は電子供与性基を表す。R~Rは全て水素原子であってもよく、少なくとも一つが水素原子でなくてもよい。電子求引性基及び電子供与性基の具体例としては、前述の一般式(1)の項目にて説明した電子求引性基及び電子供与性基と同様である。
また、R~Rの一つが電子求引性基又は電子供与性基であり、かつR~Rの残り三つが水素原子であってもよく、R及びRが共に電子求引性基又は電子供与性基であり、かつR及びRが水素原子であってもよい。
【0058】
特定の含窒素化合物の含有率は、アンダーフィル材の全量に対して0.5質量%~10質量%であることが好ましく、1質量%~7質量%であることがより好ましく、1.5質量%~5質量%であることが更に好ましい。特定の含窒素化合物の含有率が0.5質量%以上であることにより、アンダーフィル材を硬化した際に支持体との接着性により優れる傾向にある。特定の含窒素化合物の含有率が10質量%以下であることにより、ゲルタイムが短くなり過ぎることをより好適に抑制できる傾向にある。
【0059】
[各種添加剤]
アンダーフィル材は、上述の成分に加えて、硬化促進剤、応力緩和剤、カップリング剤、着色剤等の各種添加剤を含んでもよい。アンダーフィル材は、以下に例示する添加剤以外にも必要に応じて当技術分野で周知の各種添加剤を含んでもよい。
【0060】
(硬化促進剤)
アンダーフィル材は、硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤の種類は特に制限されず、エポキシ樹脂及び硬化剤の種類、アンダーフィル材の所望の特性等に応じて選択できる。
【0061】
アンダーフィル材が硬化促進剤を含む場合、その量は硬化性樹脂成分(エポキシ樹脂と硬化剤の合計)100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましい。
【0062】
(応力緩和剤)
アンダーフィル材は、応力緩和剤を含んでもよい。応力緩和剤としては、熱可塑性エラストマー、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の粒子などが挙げられる。応力緩和剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
アンダーフィル材が応力緩和剤を含む場合、その量は硬化性樹脂成分(エポキシ樹脂と硬化剤の合計)100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましい。
【0064】
(カップリング剤)
アンダーフィル材は、カップリング剤を含んでもよい。カップリング剤としては、アミノシラン、エポキシシラン、フェニルシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシラン化合物、チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウム/ジルコニウム化合物などが挙げられる。これらの中でもシラン化合物(シランカップリング剤)が好ましい。カップリング剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
アンダーフィル材がカップリング剤を含む場合、カップリング剤の量は、充填材100質量部に対して0.05質量部~5質量部であることが好ましく、0.1質量部~2.5質量部であることがより好ましい。
【0066】
(着色剤)
アンダーフィル材は、着色剤を含んでもよい。着色剤としては、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等が挙げられる。着色剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
アンダーフィル材が着色剤を含む場合、その量は硬化性樹脂成分(エポキシ樹脂と硬化剤の合計)100質量部に対して0.01質量部~10質量部であることが好ましく、0.1質量部~5質量部であることがより好ましい。
【0068】
(アンダーフィル材の調製方法)
アンダーフィル材の調製方法は特に制限されず、上記各種成分を分散混合できる手法であれば、いかなる手法を用いてもよい。
アンダーフィル材は、例えば、所定の配合量の前記各成分を秤量し、擂潰機、ミキシングロール、プラネタリミキサ等の混合機を用いて混合及び混練し、必要に応じて脱泡することによって得ることができる。
【0069】
(アンダーフィル材の用途)
アンダーフィル材は、種々の実装技術に用いることができる。特に、フリップチップ型実装技術に用いるアンダーフィル材として好適に用いることができる。例えば、バンプ等で接合された半導体素子と支持体の間の隙間を充填する用途に好適に用いることができる。
【0070】
半導体素子と支持体の種類は特に制限されず、半導体パッケージの分野で一般的に使用されるものから選択できる。支持体としては、ガラス、シリコンウエハ、窒化ケイ素膜付きシリコンウエハ等が挙げられる。
アンダーフィル材を用いて半導体素子と支持体の間の隙間を充填する方法は、特に制限されない。例えば、ディスペンサー等を用いて公知の方法により行うことができる。
【0071】
<半導体パッケージ>
本開示の半導体パッケージは、支持体と、前記支持体上に配置された半導体素子と、前記半導体素子を封止している上述したアンダーフィル材の硬化物と、を備える。
【0072】
上記半導体パッケージにおいて、半導体素子と支持体の種類は特に制限されず、半導体パッケージの分野で一般的に使用されるものから選択できる。上記半導体パッケージでは、アンダーフィル材の硬化物が支持体との接着性に優れている。
【0073】
<半導体パッケージの製造方法>
本開示の半導体パッケージの製造方法は、支持体と、前記支持体上に配置された半導体素子との間の空隙を上述したアンダーフィル材で充填する工程と、前記アンダーフィル材を硬化する工程と、を有する。
【0074】
上記方法において、半導体素子と支持体の種類は特に制限されず、半導体パッケージの分野で一般的に使用されるものから選択できる。アンダーフィル材を用いて半導体素子と支持体の間の隙間を充填する方法、及び充填後にアンダーフィル材を硬化する方法は特に制限されず、公知の手法で行うことができる。
【実施例
【0075】
以下、本開示のアンダーフィル材を実施例によって更に具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
(アンダーフィル材の調製)
表1及び表3に示す成分を表1及び表3に示す量(質量部)にて混合し、実施例1~6及び比較例1~8のアンダーフィル材を調製した。各成分の詳細は下記のとおりである。エポキシ樹脂と硬化剤の配合割合は、エポキシ樹脂のエポキシ基数と硬化剤の活性水素数が等しくなるように設定した。
なお、表1中及び表3中の「-」は該当する成分を混合していないことを示す。
【0077】
・エポキシ樹脂
(A)エポキシ樹脂1・・・商品名「エポトート YDF-8170C」、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量:160g/eq、新日鉄住金化学株式会社
(A)エポキシ樹脂2・・・商品名「jER 630」、トリグリシジル-p-アミノフェノール、エポキシ当量:95g/eq、三菱ケミカル株式会社
【0078】
・硬化剤
(B)硬化剤1・・・商品名「jERキュア W」、ジエチルトルエンジアミン、活性水素当量:45g/eq、三菱ケミカル株式会社
(B)硬化剤2・・・商品名「カヤハード A-A」、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、活性水素当量:63g/eq、日本化薬株式会社
(B)硬化剤3・・・商品名「ETHACURE 300」、ジメチルチオトルエンジアミン、活性水素当量:53.5g/eq、三井化学ファイン株式会社
【0079】
・充填材
(C)充填材・・・商品名「SE2200」、体積平均粒径が0.5μmの球状シリカ、株式会社アドマテックス
【0080】
・含窒素化合物
(D)含窒素化合物1・・・1-(o-トリル)ビグアニド
(D)含窒素化合物2・・・1,3-ジフェニルグアニジン
(D)含窒素化合物3・・・ジシアンジアミド
(D)含窒素化合物4・・・1,2,3-トリフェニルグアニジン
(D)含窒素化合物5・・・ジベンジルシアナミド
なお、含窒素化合物1が本開示のビグアニド化合物に該当し、含窒素化合物2が本開示の一般式(1)で表されるグアニジン化合物に該当する。
【0081】
カップリング剤・・・商品名「サイラエース S510」、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、JNC株式会社
着色剤・・・商品名「MA-100」、カーボンブラック、三菱ケミカル株式会社
【0082】
(ゲルタイムの測定)
各実施例及び各比較例にて調製したアンダーフィル材のゲルタイムは、キュラストメータ(JSRトレーディング株式会社)を用い、試料量1.5mlを160℃の条件で測定した。得られたチャートのトルクの立ち上がり開始の時間をゲルタイムとした。
結果を表2及び表4に示す。
【0083】
(接着力の測定)
各実施例及び各比較例にて調製したアンダーフィル材を用いてシリコンチップ(Si)及び窒化ケイ素膜を成形したシリコンチップ(SiN)に対する接着力を評価した。
接着力(対Si)/処理無し・・・シリコンチップ上に直径3mm、高さ1mmのアンダーフィル材の硬化物を作製し、万能型ボンドテスタを用いて、ツール高さ50μm、ツール速度50μm/sec、25℃の条件でせん断接着力を測定した。
接着力(対Si)/処理有り・・・前述と同じ方法でシリコンチップ上に作製したアンダーフィル材の硬化物を、30℃/60%RH(相対湿度)の条件下に196時間放置し、遠赤外線加熱方式のリフロー炉(予熱150℃~180℃で50秒、ピーク温度260℃、250℃以上の加熱時間40秒)中を3回通した。その後、110℃/85%RHの条件下に50時間放置し、前述と同じ方法でせん断接着力を測定した。
接着力(対SiN)/処理無し・・・表面に窒化ケイ素膜を成形したシリコンチップを用い、前述の「接着力(対Si)/処理無し」と同様の方法で測定した。
接着力(対SiN)/処理有り・・・表面に窒化ケイ素膜を成形したシリコンチップを用い、前述の「接着力(対Si)/処理有り」と同様の方法で測定した。
結果を表2及び表4に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
表2及び表4に示すように、実施例1~6のアンダーフィル材では、比較例2~4のアンダーフィル材と比べてゲルタイムの短縮が抑制されていた。
表2及び表4に示すように、実施例1~6のアンダーフィル材では、比較例1及び5~8のアンダーフィル材と比べてSi及びSiNに対する接着力が向上していた。
したがって、実施例1~6のアンダーフィル材は、ゲルタイムが短くなり過ぎることが抑制されており、かつ硬化した際にSi、SiN等の支持体との接着性に優れていた。