IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

<>
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図1
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図2
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図3
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図4
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図5
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図6
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図7
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図8
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図9
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図10
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図11
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図12
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図13
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図14
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図15
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図16
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図17
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図18
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図19
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図20
  • 特許-結像レンズ系、撮像装置 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】結像レンズ系、撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20220128BHJP
【FI】
G02B13/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017231991
(22)【出願日】2017-12-01
(65)【公開番号】P2019101229
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】長能 卓哉
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-083770(JP,A)
【文献】特開2016-126277(JP,A)
【文献】特開2013-125213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、第1レンズ群、正の第2レンズ群を配設してなり、
無限遠から近距離へのフォーカシング時に、第1レンズ群との間隔が減少するように第2レンズ群が物体側に移動する結像レンズ系であり、
前記第1レンズ群は、物体側から像側へ向かって順に、負の第1aレンズ群、正の第1bレンズ群で構成され、
前記第2レンズ群は、物体側から順に、正の第2aレンズ群、絞り、正の第2bレンズ群で構成され、
第2aレンズ群は物体側から像側へ向かって順に正レンズと負レンズとが接合された第2a接合レンズで構成され、
第2bレンズ群は物体側から像側へ向かって順に負レンズL2b1と正レンズL2b2とが接合された第2b接合レンズL2b12、正レンズL2b3、負レンズL2b4、正レンズL2b5で構成され、
無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離:f、第1レンズ群の焦点距離:fとしたとき、条件式(1):
(1) -0.20 < f/f<0.20
を満足することを特徴とする結像レンズ系。
【請求項2】
請求項1に記載の結像レンズ系において、
負レンズL2b4の焦点距離:fL2b4、正レンズL2b5の焦点距離:fL2b5としたとき、
条件式(2):
(2) -1.55 < fL2b4 / fL2b5 < -0.90
を満足することを特徴とする結像レンズ系。
【請求項3】
請求項1または2に記載の結像レンズ系において、
第2b接合レンズの焦点距離:fL2b12、第2bレンズ群の正レンズL2b3の焦点距離:fL2b3としたとき、条件式(3):
(3) -2.5 < fL2b12 / fL2b3 < -1.3
を満足することを特徴とする結像レンズ系。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の結像レンズ系において、
負レンズL2b1の物体側レンズ面の曲率半径:RL2b1sur.1、正レンズL2b2の像側レンズ面の曲率半径:RL2b2sur.2としたとき、条件式(4):
(4) 0.65 < RL2b1sur.1 / RL2b2sur.2 < 0.90
を満足することを特徴とする結像レンズ系。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の結像レンズ系において、
正レンズL2b3のd線に対する屈折率:ndL2b3としたとき、条件式(5):
(5)1.80 < ndL2b3 < 2.05
を満足することを特徴とする結像レンズ系。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の結像レンズ系において、
全系で最も物体側に位置するレンズの物体側レンズ面から絞りまでの光軸上の距離:Ls、全系で最も物体側に位置するレンズの物体側レンズ面から全系で最も像側に位置するレンズの像側レンズ面までの光軸上の距離:Lとしたとき、条件式(6):
(6) 0.48 < Ls / L < 0.63
を満足することを特徴とする結像レンズ系。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の結像レンズ系において、
フォーカシング時に第1レンズ群は像面に対して固定されていることを特徴とする結像レンズ系。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の結像レンズ系において、
第1aレンズ群の最も像側に位置するレンズの像側レンズ面から第1bレンズ群の最も物体側に位置するレンズの物体側レンズ面までの光軸上の距離:DL1a-L1b、第1レンズ群の最も物体側に位置するレンズの物体側レンズ面から第1レンズ群の最も像側に位置するレンズの像側レンズ面までの光軸上の距離:Lとしたとき、条件式(7):
(7) 0.15 < DL1a-L1b / L < 0.35
を満足することを特徴とする結像レンズ系。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の結像レンズ系において、
第2b接合レンズの物体側レンズ面から像側レンズ面までの光軸上の距離:DL2b12、第2bレンズ群で最も物体側に位置するレンズの物体側レンズ面から最も像側に位置する像側レンズ面までの光軸上の距離:L2bとしたとき、条件式(8):
(8) 0.40 < DL2b12 / L2b < 0.60
を満足することを特徴とする結像レンズ系。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載の結像レンズ系において、
d線に対する負レンズL2b1の屈折率:ndL2b1
d線に対する負レンズL2b1のアッベ数:νdL2b1
負レンズL2b1のg線、F線、C線に対する屈折率ng、nF、nCにより(ng - nF) / (nF - nC)と定義される部分分散比:θg,Fとしたとき、それぞれ条件式(9)、(10)、(11)
(9)1.78 < ndL2b1 < 2.00
(10)20.0 < νdL2b1 < 32.0
(11)0.005 < θg,F - (-0.001802×νdL2b1 + 0.6483) < 0.009
を満足することを特徴とする結像レンズ系。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載の結像レンズ系において、
第1レンズ群が、負レンズL1a1、負レンズL1a2、正レンズL1b1で構成されることを特徴とする結像レンズ系。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項に記載の結像レンズ系において、
第1群レンズ群および第2レンズ群を構成する全てのレンズが球面レンズであることを特徴とする結像レンズ系。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の結像レンズ系において、
第1群レンズ群および第2レンズ群を構成する全てのレンズ材質が、無機固体材料であることを特徴とする結像レンズ系。
【請求項14】
請求項1~13の何れか1項に記載の結像レンズ系を有する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に用いられる結像レンズ系に関する。
【背景技術】
【0002】
エリアセンサを用いた撮像装置の利用方法として、被写体を撮影する従来のコンパクトカメラや一眼レフカメラ、ミラーレスカメラ等の他、産業用カメラ、車載カメラ等が知られている。
産業用カメラとしては例えば産業用機械に対象物を認識させるマシンビジョン用途等が挙げられるが、このような用途に用いられる結像レンズ系は、従来のカメラ用途等と比べてフォーカシングに伴うレンズ性能の低下が少なく、安定していることが重要である。
このような光学特性を満足するために、様々なレンズ群構成の結像光学系が知られている(例えば特許文献1~2等参照)。
【0003】
しかしながら、従来の方法では、フォーカシング時のレンズ性能の変動を低減しようとすると、周辺光量比が十分に確保できないことや、像面への入射角が大きくなってしまう等の問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、フォーカシング時のレンズ性能の変動を抑制しながらも、周辺光量比が十分に高く、像面への入射角を小さく抑えた結像レンズ系の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の結像レンズ系は、物体側から順に、第1レンズ群、正の第2レンズ群を配設してなり、無限遠から近距離へのフォーカシング時に、第1レンズ群との間隔が減少するように第2レンズ群が物体側に移動する結像レンズ系であり、前記第1レンズ群は、物体側から像側へ向かって順に、負の第1aレンズ群、正の第1bレンズ群で構成され、前記第2レンズ群は、物体側から順に、正の第2aレンズ群、絞り、正の第2bレンズ群で構成され、第2aレンズ群は物体側から像側へ向かって順に正レンズと負レンズとが接合された第2a接合レンズで構成され、第2bレンズ群は物体側から像側へ向かって順に負レンズL2b1と正レンズL2b2とが接合された第2b接合レンズL2b12、正レンズL2b3、負レンズL2b4、正レンズL2b5で構成され、無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離:f、第1レンズ群の焦点距離:fとしたとき、条件式(1):
(1) -0.20 < f / f < 0.20 を満足する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の結像レンズ系によれば、フォーカシング時のレンズ性能の変動を抑制しながらも、周辺光量比が十分に高く、像面への入射角を小さく抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明にかかわる撮像装置の概略構成である。
図2】実施例1の結像レンズの構成を示す断面図である。
図3】実施例1の結像レンズの無限遠合焦状態での収差曲線図である。
図4】実施例1の結像レンズのWD=0.25mに合焦した状態での収差曲線図である。
図5】実施例1の結像レンズのWD=0.10mに合焦した状態での収差曲線図である。
図6】実施例2の結像レンズの構成を示す断面図である。
図7】実施例2の結像レンズの無限遠合焦状態での収差曲線図である。
図8】実施例2の結像レンズのWD=0.25mに合焦した状態での収差曲線図である。
図9】実施例2の結像レンズのWD=0.10mに合焦した状態での収差曲線図である。
図10】実施例3の結像レンズの構成を示す断面図である。
図11】実施例3の結像レンズの無限遠合焦状態での収差曲線図である。
図12】実施例3の結像レンズのWD=0.25mに合焦した状態での収差曲線図である。
図13】実施例3の結像レンズのWD=0.10mに合焦した状態での収差曲線図である。
図14】実施例4の結像レンズの構成を示す断面図である。
図15】実施例4の結像レンズの無限遠合焦状態での収差曲線図である。
図16】実施例4の結像レンズのWD=0.25mに合焦した状態での収差曲線図である。
図17】実施例4の結像レンズのWD=0.10mに合焦した状態での収差曲線図である。
図18参考例1の結像レンズの構成を示す断面図である。
図19参考例1の結像レンズの無限遠合焦状態での収差曲線図である。
図20参考例1の結像レンズのWD=0.25mに合焦した状態での収差曲線図である。
図21参考例1の結像レンズのWD=0.10mに合焦した状態での収差曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る撮像装置用の結像レンズ系、撮像装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0009】
第1の実施形態
以下、本発明に係る結像光学系たる結像レンズ系たるレンズ系10の実施形態について説明する。
本実施形態おいて、撮像装置100は、図1に示すように、被写体たる対象物WKを撮影して画像認識により対象物WKの位置や形状等を特定するための産業用カメラである。
撮像装置100は、対象物WKの像を結像するために複数のレンズで構成された結像光学系たるレンズ系10と、レンズ系10によって結像された光を画像として認識する撮像素子たる撮像部20と、を有している。
なお、レンズ系10においては、像面Imに結像させた像を撮像部20で撮像する場合が想定されており、図2、6、10、14、18において符号CGは「撮像素子のカバーガラス」を示している。
また、図2、6、10、14、18において、図中左方向を対象物WKが置かれる「物体側」、図中右方向を「像側」として呼称する。
【0010】
撮像部20は、レンズ系10の像面Im上に受光面がくるように配置された撮像素子である。
【0011】
カバーガラスCGは「平行平板状」で、撮像部20の受光面は像面Imに合致している。
【0012】
カバーガラスCGは、撮像部20の受光面をシールドして保護する機能を持つが、赤外線カットフィルタ等の機能を併せ持つとしても良い。
【0013】
レンズ系10は、物体側から順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2とを配設されたレンズ群である。
レンズ系10は、無限遠から近距離へのフォーカシング時において、第2レンズ群G2が物体側に移動することでフォーカスを調整する。
【0014】
第1レンズ群G1は、物体側から像側に向かって順に負の屈折力を有する第1aレンズ群G1aと、正の屈折力を有する第1bレンズ群G1bと、を有している。
【0015】
また、第2レンズ群G2は、物体側から順に、正の屈折力を有する第2aレンズ群G2a、開口絞り30、正の屈折力を有する第2bレンズ群G2bで構成されている。
【0016】
第2aレンズ群G2aは物体側から像側へ向かって順に正レンズL2a1と負レンズL2a2とが接合された第2a接合レンズL2a12で構成され、第2bレンズ群G2bは物体側から像側へ向かって順に負レンズL2b1と正レンズL2b2とが接合された第2b接合レンズL2b12と、正レンズL2b3、負レンズL2b4、正レンズL2b5で構成されたレンズ群である。
このように第2bレンズ群G2bの最も物体側のレンズを接合レンズ、その像側に正レンズを配置することで、負レンズL2b1の物体側レンズ面S2b1と正レンズL2b2の像側レンズ面S2b2と正レンズL2b3の物体側レンズ面との間で生じる収差を適切にやり取り出来て、特に球面収差とコマ収差に対して良好な補正を行うことができる。
さらに、第2aレンズ群G2aを物体側から順に正、負の屈折力配置として第2a接合レンズL2a12を構成することにより、2つの接合レンズである第2a接合レンズL2a12と第2b接合レンズL2b12との間に開口絞り30が配置される。
すなわち、開口絞り30を挟んで2つの接合レンズの屈折力の配置が対称となる。かかる構成により、コマ収差とコマ収差の色差を十分に補正することができる。
このとき、第2a接合レンズL2a12の正レンズL2a1は像側に凸面の凸レンズ、負レンズL2a2は像側に凸面を向けた負メニスカスレンズであることが望ましい。
また、第2b接合レンズL2b12の接合面は、像側に凹面を向けることがより好ましい。
また、正レンズL2b3の像側に負レンズL2b4、正レンズL2b5の順で配置することで、射出瞳位置を十分確保しつつ、像面湾曲や歪曲収差などの残存収差を十分に補正できる。
【0017】
さて、このように第2bレンズ群G2bがフォーカシング時に動作するタイプの結像レンズ系において、フォーカシング時のレンズ性能の変動を低減しようとすると、周辺光量比が十分に確保できないことや、像面への入射角が大きくなってしまう等の問題があった。
そこで、本実施形態のレンズ系10では、上述したレンズ構成並びに以下に挙げる条件式(1)~(11)を満たすことで、フォーカシング時のレンズ性能の変動を抑制しながらも、周辺光量比が十分に高く、像面への入射角を小さく抑えることができる。
【0018】
本実施形態におけるレンズ系10は、無限遠物体に合焦した状態における第1レンズ群G1と第2レンズ群G2とを合わせたレンズ系10全系の焦点距離:f、第1レンズ群G1の焦点距離:f1とすると、以下の条件式(1)を満足する。
【0019】
【数1】
【0020】
かかる条件式(1)は、レンズ系10全系に対する第1レンズ群G1の屈折力が弱いことを示している。
かかる条件式(1)の上限を超えると、第1レンズ群G1の正のパワーが過大になってしまい、第2bレンズ群のフォーカシング時におけるコマ収差の補正が困難となる。
また、相対的に第2レンズ群G2の屈折力も弱くなってしまうため、第2レンズ群G2のフォーカス群としての機能が低下し、移動量が増加することになるため、レンズ系10全体の大型化にもつながってしまう。
また、下限を下回ると、第1レンズ群G1の屈折力が負側に過大となってしまうため、被写体WKまでの物体距離の変化によって生じる像面湾曲を十分に低減することが困難となる。
【0021】
レンズ系10は、条件式(1)を満足することで、フォーカシング時の収差変動を抑制することができる。
【0022】
さらに、より好ましくは、条件式(1)は、―0.15<f/f1<0.15の範囲内に収まっていることがさらに望ましい。
このように、レンズ系10全系に対する第1レンズ群G1の屈折力をさらに抑制することで、さらにフォーカシング時の像面湾曲収差の変動を小さくして、フォーカシング時の収差変動を抑制する。
【0023】
また、本実施形態では、レンズ系10は、負レンズL2b4の焦点距離:fL2b4、正レンズL2b5の焦点距離:fL2b5としたとき、以下の条件式(2)を満足する。
【0024】
【数2】
【0025】
かかる条件式(2)は、正レンズL2b5と負レンズL2b4との間の屈折力の比を示すものであり、レンズ系10の像側に配置された2つのレンズの屈折力のバランスを条件式(2)の範囲内とすることにより、補正しきれず残存していた収差を良好に補正して、より結像性能を高めることができる。
また、条件式(2)の範囲外になると、特に像面湾曲収差の補正が困難となるため、満足する結像性能を達成することが困難である。
【0026】
また、レンズ系10は、第2b接合レンズL2b12の焦点距離:fL2b12、第2b接合レンズL2b12の像側に配置された正レンズL2b3の焦点距離:fL2b3としたとき、次の条件式(3)を満足する。
【0027】
【数3】
【0028】
かかる条件式(3)は、第2b接合レンズL2b12と正レンズL2b3との屈折力の比を規定するものである。
すなわち、条件式(3)の上限値を超えると、正レンズL2b3の正の屈折力が過小となり、第2b接合レンズL2b12と正レンズL2b3との間の収差補正のバランスが崩れ、良好な結像性能を得ることが難しい。
また、条件式(3)の下限値を下回ると、正レンズL2b3の屈折力が大きくなるため、バランスが崩れて球面収差、コマ収差の補正が困難となる。
【0029】
レンズ系10は、かかる条件式(3)を満足することで、さらに良好な球面収差、コマ収差の補正が可能となるとともに、小型化を図ることができる。
【0030】
また、本発明のレンズ系10は、負レンズL2b1の物体側レンズ面S2b1の曲率半径:RL2b1sur.1、正レンズL2b2の像側レンズ面S2b2の曲率半径:RL2b2sur.2としたとき、以下の条件式(4)を満足する。
【0031】
【数4】
【0032】
かかる条件式(4)を満足することで、より良好な収差補正、特に球面収差とコマ収差の良好な補正を行うことができる。
【0033】
条件式(4)は、第2b接合レンズL2b12の物体側と像側、両側のレンズ面の曲率半径の比を表すものであり、かかる条件式(4)の範囲外の値を取る時には、球面収差とコマ収差のバランスが崩れて良好な結像性能を得ることが難しくなる。
【0034】
また本実施形態では、レンズ系10は、正レンズL2b3のd線に対する屈折率:ndL2b3としたとき、以下の条件式(5)を満足する。
【0035】
【数5】
【0036】
かかる条件式(5)の上限値よりも大きい屈折率の物質を材料として正レンズL2b3を構成すると、コストが激増してしまうためにレンズのコストアップを招く虞がある。
他方、条件式(5)の下限値よりも小さい屈折率の材料を用いたのでは、収差補正に必要な正の屈折力の確保が難しくなり、レンズ面の曲率半径を大きくしてしまうこととなる。このようなレンズ面の曲率半径の増大は、レンズ面に対する入射角の増大を招く虞があるため、球面収差やコマ収差、像面湾曲等の各種収差が発生しやすくなり好ましくない。
さらに、このような曲率半径の増大は、製造誤差に対する性能劣化感度が増大してしまう虞もある。
本実施形態のレンズ系10は、かかる条件式(5)を満足することで、小型化及び良好な収差補正を図ることができる。
【0037】
また、本実施形態では、レンズ系10は、レンズ系10全系で最も物体側に位置するレンズの物体側レンズ面から開口絞り30までの光軸上の距離:Ls、レンズ系10全系で最も物体側に位置するレンズの物体側レンズ面から最も像側に位置するレンズの像側レンズ面までの光軸上の距離:L、としたとき、次の条件式(6)を満足する。
【0038】
【数6】
【0039】
条件式(6)において、Lは所謂レンズ全長、Lsはレンズ系10の開口絞り30までの物体側部分の長さを表し、条件式(6)はレンズ系10の全長に対する「レンズ系10全系で最も物体側に位置するレンズの物体側レンズ面から開口絞り30までの光軸上の距離」を規定するものである。
【0040】
かかる条件式(6)の上限値を超えると、開口絞り30の位置がレンズ全系に対して像側に寄りすぎてしまい、第2bレンズ群G2bの自由度が減り、レンズ系10の中で比較的大きな割合の屈折力を占める第2bレンズ群G2bでの収差補正が困難となる。
また、第1レンズ群G1及び第2aレンズ群G2aを通過する軸外光線が高くなるため、第1レンズ群G1の大型化につながるため好ましくない。
また、条件式(6)の下限値を下回ると、開口絞り30の位置がレンズ全系に対して物体側に寄りすぎてしまい、開口絞り30の大型化を招いてしまう。また、第2bレンズ群G2bを通る軸外光線が高くなりすぎてしまい、第2bレンズ群G2bの大型化につながるため好ましくない。
【0041】
本実施形態では、かかる条件式(6)を満足する構成により、小型化及び良好な収差補正を図ることができる。
【0042】
また、本実施形態では、レンズ系10は、フォーカシング時に第1レンズ群G1の位置が像面に対して固定化される。
かかる構成により、フォーカシング用の移動機構が簡素化できて、レンズ系10全体の小型化を容易に行うことができる。
【0043】
また、本実施形態では、レンズ系10は、第1aレンズ群G1aの最も像側に位置するレンズの像側レンズ面から、第1bレンズ群G1bの最も物体側に位置するレンズLの物体側レンズ面までの距離:DL1a-L1b、第1レンズ群G1の最も物体側に位置するレンズの物体側レンズ面から第1レンズ群G1の最も像側に位置するレンズの像側レンズ面までの光軸上の距離:Lとしたとき、条件式(7)を満足する。
【0044】
【数7】
【0045】
かかる条件式(7)は、第1レンズ群G1の最も物体側に位置するレンズの物体側レンズ面から第1レンズ群G1の最も像側に位置するレンズの像側レンズ面までの光軸上の距離に対する第1aレンズ群G1aと第1bレンズ群G1bとの間の光軸上の距離の比を規定するものである。
条件式(7)の上限値を超えると、第1aレンズ群G1aと第1bレンズ群G1bとの間隔が広くなりすぎてしまい、第1aレンズ群G1aの大型化が生じてしまう。
条件式(7)の下限値を下回ると、第1aレンズ群G1aと第1bレンズ群G1bとの間隔が狭すぎてしまい、第1aレンズ群G1aで発生する収差を第1bレンズ群G1bで補正しきれなくなり、結像性能の劣化を生じやすくなる。
【0046】
本実施形態では、かかる条件式(7)を満足する構成により、より良好な収差補正と小型化とを図ることができる。
【0047】
本実施形態では、レンズ系10は、第2b接合レンズL2b12の物体側レンズ面から像側レンズ面までの光軸上の距離:DL2b12、第2bレンズ群G2bで最も物体側に位置するレンズL2b1の物体側レンズ面S2b1から最も像側に位置するレンズL2b5の像側レンズ面までの光軸上の距離:L2bとしたとき、条件式(8)を満足する。
【0048】
【数8】
【0049】
かかる条件式(8)は第2bレンズ群G2bの光軸上の厚さに対する第2b接合レンズL2b12の肉厚の比を規定するものである。
条件式(8)の上限値を超えると、負レンズL2b1の物体側レンズ面と正レンズL2b2の像側レンズ面の間隔が過大になり、正レンズL2b3、負レンズL2b4、正レンズL2b5の各レンズの自由度が低下する。
そのため、レンズ系10の小型化が困難になり、さらに、単色収差の十分な補正が困難となる。
条件式(8)の下限値を下回ると、負レンズL2b1の物体側レンズ面と正レンズL2b2の像側レンズ面の間隔が過小となり、球面収差、コマ収差の十分な補正が困難となる。
本実施形態では、レンズ系10が条件式(8)を満足することで、効果的に結像レンズの小型化と高性能を両立させることができる。
【0050】
さらに、本実施形態では、負レンズL2b1が、d線に対する負レンズL2b1の屈折率:ndL2b1、d線に対する負レンズL2b1のアッベ数:νdL2b1、g線,F線,C線に対する屈折率ng,nF,nCを用いて(ng-nF)/(nF-nC)と定義される部分分散比:θg,Fとしたとき、以下の条件式を満足する。
【0051】
【数9】
【0052】
【数10】
【0053】
【数11】
【0054】
条件式(9)、(10)、(11)は、それぞれ硝材の屈折率、アッベ数、異常分散性を規定するものである。
かかる条件式(9)~(11)を満足する硝材であることで、高屈折率でありながら、高分散、かつ、異常分散性を有することができ、単色収差を十分に補正しつつ、色収差を十分に補正することが可能となる。
【0055】
さらに、本実施形態のレンズ系10は、第1レンズ群G1が、負レンズL1a1、負レンズL1a2、正レンズL1b1で構成されることが好ましい。このように2枚の負レンズを分割し、2つのレンズの間に空気間隔を持つように配置することで、分担して屈折させることができ、良好な収差補正が可能となる。
【0056】
さらに、本実施形態では、レンズ系10を構成するレンズは、全てのレンズが球面レンズであることが好ましい。かかる構成に限定されるものではないが、非球面や回折面を持ったレンズを採用しないことで例えば成形用の金型などのコストの上昇を避けられる。特に小ロットの生産時においてコスト面で有利である。
【0057】
さらに、本実施形態では、第1群レンズ群G1および第2レンズ群G2を構成する全てのレンズ材質が、無機固体材料であることが好ましい。有機材料や有機無機ハイブリッド材料等によるレンズは、温度・湿度などの環境条件による特性の変化が大きい。レンズ系10を構成する全てのレンズを無機固体材料で形成することにより、温度・湿度などの環境条件の変化の影響を受けにくいレンズ系10を実現できる。
【0058】
また本実施形態では、撮像装置100はレンズ系10を有している。かかるレンズ系10を用いることにより、フォーカシング時に性能劣化を発生させず、無限遠から近距離まで良好に収差補正可能な高性能な撮像装置が可能となる。
【0059】
以下、本発明の具体的な数値例として、実施例1~を示す。
実施例における記号の意味は以下の通りである。
【0060】
F:Fナンバ
Y’:像高
R:曲率半径
D:面間隔
Nd:d線に対する屈折率
νd:d線に対するアッベ数
BF:バックフォーカス
θg,F:部分分散比
WD:ワーキングディスタンス(物体から最も物体側に位置するレンズの物体側レンズ面の頂点までの距離)
【0061】
各実施例の収差図に示されるように、各実施例とも収差は高いレベルで補正され、フォーカシングによる像面湾曲の変化が良好に抑制されている。球面収差、軸上色収差、倍率色収差も小さく、コマ収差も最周辺部まで良好に抑制されている。また、歪曲収差も絶対値で至近から無限遠まで0.8%以下となっている。
即ち、実施例1~5に示したレンズ系10は何れも各種収差が十分に低減された結像レンズを実現している。即ち、画角37°~54°程度、Fナンバ1.8程度、レンズ枚数10枚で800万画素の撮像素子にまで対応した解像力を有し、無限遠物体からワーキングディスタンス0.1mの至近距離を「直線を直線として描写可能」であり、フォーカシングに伴う性能の変化が少ない高性能な結像レンズとなっている。
【0062】
(数値実施例1)
図2は、実施例1に係るレンズ系10の光学配置図を示している。物体側(紙面左側)から順番に、第1レンズL1から第10レンズL10で構成され、開口絞り30はL5とL6の間に設置される。
かかる実施例1において、無限遠に合焦した状態での収差図を図3、ワーキングディスタンス:0.25mに合焦した状態での収差図を図4、ワーキングディスタンス:0.10mに合焦した状態での収差図を図5、にそれぞれ示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表2に記した間隔A、Bは、それぞれのワーキングディスタンスの値にフォーカシングした時の図1に示したA、Bに対応するレンズ間隔である。
上記に示した各条件式(1)~(11)に関する数値は、表3に示す通りである。
【0066】
焦点距離f:11.99
Fナンバ:1.84
半画角ω:24.7°
【0067】
【表3】
【0068】
(数値実施例2)
図6は、実施例2に係るレンズ系10の光学配置図を示している。物体側(紙面左側)から順番に、第1レンズL1から第10レンズL10で構成され、開口絞り30はL5とL6の間に設置される。
かかる実施例2において、無限遠に合焦した状態での収差図を図7、ワーキングディスタンス:0.25mに合焦した状態での収差図を図8、ワーキングディスタンス:0.10mに合焦した状態での収差図を図9、にそれぞれ示す。
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
表5に記した間隔A、Bは、それぞれのワーキングディスタンスの値にフォーカシングした時の図1に示したA、Bに対応するレンズ間隔である。
上記に示した各条件式(1)~(11)に関する数値は、表6に示す通りである。
【0072】
焦点距離f:11.99
Fナンバ:1.84
半画角ω:24.7°
【0073】
【表6】
【0074】
(数値実施例3)
図10は、実施例3に係るレンズ系10の光学配置図を示している。物体側(紙面左側)から順番に、第1レンズL1から第10レンズL10で構成され、開口絞り30はL5とL6の間に設置される。
かかる実施例3において、無限遠に合焦した状態での収差図を図11、ワーキングディスタンス:0.25mに合焦した状態での収差図を図12、ワーキングディスタンス:0.10mに合焦した状態での収差図を図13、にそれぞれ示す。
【0075】
【表7】
【0076】
【表8】
【0077】
表8に記した間隔A、Bは、それぞれのワーキングディスタンスの値にフォーカシングした時の図1に示したA、Bに対応するレンズ間隔である。
上記に示した各条件式(1)~(11)に関する数値は、表3に示す通りである。
【0078】
焦点距離f:12.01
Fナンバ:1.84
半画角ω:24.7°
【0079】
【表9】
【0080】
(数値実施例4)
図14は、実施例4に係るレンズ系10の光学配置図を示している。物体側(紙面左側)から順番に、第1レンズL1から第10レンズL10で構成され、開口絞り30はL5とL6の間に設置される。
かかる実施例4において、無限遠に合焦した状態での収差図を図15、ワーキングディスタンス:0.25mに合焦した状態での収差図を図16、ワーキングディスタンス:0.10mに合焦した状態での収差図を図17、にそれぞれ示す。
【0081】
【表10】
【0082】
【表11】
【0083】
表11に記した間隔A、Bは、それぞれのワーキングディスタンスの値にフォーカシングした時の図1に示したA、Bに対応するレンズ間隔である。
上記に示した各条件式(1)~(11)に関する数値は、表12に示す通りである。
【0084】
焦点距離f:15.99
Fナンバ:1.84
半画角ω:19.0°
【0085】
【表12】
【0086】
参考例1
図18は、参考例1としてのレンズ系10の光学配置図を示している。物体側(紙面左側)から順番に、第1レンズL1から第10レンズL10で構成され、開口絞り30はL5とL6の間に設置される。
かかる参考例1において、無限遠に合焦した状態での収差図を図19、ワーキングディスタンス:0.25mに合焦した状態での収差図を図20、ワーキングディスタンス:0.10mに合焦した状態での収差図を図21、にそれぞれ示す。
【0087】
【表13】
【0088】
【表14】
【0089】
表14に記した間隔A、Bは、それぞれのワーキングディスタンスの値にフォーカシングした時の図1に示したA、Bに対応するレンズ間隔である。
上記に示した各条件式(1)~(11)に関する数値は、表15に示す通りである。
【0090】
焦点距離f:15.99
Fナンバ:1.84
半画角ω:19.0°
【0091】
【表15】
【0092】
以上の通りに、本発明に係る結像レンズ系は、数値実施例1乃至に示した具体的な構成において、収差が十分に補正されている。良好な光学性能を確保し得ることは、各実施例より明らかである。
【0093】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は、上述の各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに異なる実施形態や変形例を適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0094】
10 結像光学系(レンズ系)
20 撮像素子
100 撮像装置
f 無限遠物体に合焦した状態における全系の焦点距離
f 第1レンズ群の焦点距離
fL2b4 負レンズL2b4の焦点距離
fL2b5 正レンズL2b5の焦点距離
ndL2b3 正レンズL2b3のd線に対する屈折率
RL2b1sur.1 負レンズL2b1の物体側レンズ面の曲率半径
RL2b2sur.2 正レンズL2b2の像側レンズ面の曲率半径
Ls 全系で最も物体側に位置するレンズの物体側レンズ面から絞りまでの光軸上の距離
L 全系で最も物体側に位置するレンズの物体側レンズ面から全系で最も像側に位置するレンズの像側レンズ面までの光軸上の距離
【先行技術文献】
【特許文献】
【0095】
【文献】特開2017-083770号公報
【文献】特開2016-126277号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21