(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
G01R15/20 B
(21)【出願番号】P 2017233680
(22)【出願日】2017-12-05
【審査請求日】2020-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥山 健
(72)【発明者】
【氏名】二口 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】駒野 晴保
(72)【発明者】
【氏名】梅津 潤
(72)【発明者】
【氏名】冨田 雄二朗
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-190780(JP,A)
【文献】特開2016-200438(JP,A)
【文献】特開平10-307156(JP,A)
【文献】特開2002-156390(JP,A)
【文献】特開2012-108147(JP,A)
【文献】特表2015-521745(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0184635(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
G01R 33/00-33/18
G01R 19/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状かつ板状に形成された2本のバスバを備え、前記バスバを電流が流れる方向を長さ方向、前記バスバの表裏面に垂直な方向を板厚方向、前記長さ方向及び前記板厚方向に垂直な方向を板幅方向としたとき、前記2本のバスバがその板幅方向に離間して整列配置されており、
前記バスバの板厚方向において前記2本のバスバとそれぞれ対向して配置され、対応する前記バスバを流れる電流により発生する磁界の強度を検出する2つの磁気検出素子を備え、
前記
2つの磁気検出素子は、
それぞれが、磁界強度を検出する検出軸方向が同じ方向である2つの感磁位置を有し、当該2つの感磁位置でそれぞれ検出した磁界強度の差分を出力する磁気検出素子であり、
その検出軸方向が、前記バスバの長さ方向に対して垂直な方向となり、かつ、前記板厚方向に対して傾くように配置されており、
前記
2つの磁気検出素子の検出軸方向の板厚方向に対する傾き角度は、対応する前記バスバを流れる電流により
前記2つの感磁位置で検出された磁界強度の差分Daに対する、対応しない前記バスバを流れる電流により
前記2つの感磁位置で検出された磁界強度の差分Dbの比率Db/Da×100が、0.5%以下となる角度である、
電流センサ。
【請求項2】
前記
2つの磁気検出素子は、それぞれ対応する前記バスバからの前記板厚方向に沿った距離が略等しくなるように配置されている、
請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記
2つの磁気検出素子は、前記板幅方向を法線方向とする面に対して略対称に配置されている、
請求項1または2に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電流センサとして、測定対象となる電流により発生する磁界の強度を検出する磁気検出素子を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。磁気検出素子により磁界の強度を検出することで、その磁界の強度を基に、電流を演算により求めることが可能である。
【0003】
特許文献1では、2本のバスバ(導体)を流れる電流を2つの磁気検出素子を用いてそれぞれ検出する電流センサが記載されている。この電流センサでは、感磁方向直線(検出軸方向に沿った直線)が電流検出対象でないバスバを向くように、より好ましくは電流検出対象でないバスバを流れる電流に起因する磁界の方向と直交するように磁気検出素子を配置することで、電流検出対象でないバスバを流れる電流の影響を抑制する点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、磁気検出素子によって検知される磁界は、バスバを流れる電流により生じる磁界の他に、隣接機器から生じる磁界、地磁気等の外乱がある。これらの外乱は磁気シールドを設けることで低減可能であるが、小型化や軽量化等のために十分なシールド性能が確保できない場合等も考えられる。特許文献1に記載の電流センサでは、このような外乱の影響が無視できない場合に、十分な精度を確保することが困難であるという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、外乱の影響による検出精度の低下を抑制でき、かつ、電流検出対象でないバスバを流れる電流の影響を抑制可能な電流センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、帯状かつ板状に形成された2本のバスバを備え、前記バスバを電流が流れる方向を長さ方向、前記バスバの表裏面に垂直な方向を板厚方向、前記長さ方向及び前記板厚方向に垂直な方向を板幅方向としたとき、2本のバスバがその板幅方向に離間して整列配置されており、前記バスバの板厚方向において前記2本のバスバとそれぞれ対向して配置され、対応する前記バスバを流れる電流により発生する磁界の強度を検出する2つの磁気検出素子を備え、前記両磁気検出素子は、それぞれが、磁界強度を検出する検出軸方向が同じ方向である2つの感磁位置を有し、当該2つの感磁位置でそれぞれ検出した磁界強度の差分を出力する磁気検出素子であり、その検出軸方向が、前記バスバの長さ方向に対して垂直な方向となり、かつ、前記板厚方向に対して傾くように配置されており、前記両磁気検出素子の検出軸方向の板厚方向に対する傾き角度は、対応する前記バスバを流れる電流により両感磁位置で検出された磁界強度の差分Daに対する、対応しない前記バスバを流れる電流により両感磁位置で検出された磁界強度の差分Dbの比率Db/Da×100が、0.5%以下となる角度である、電流センサを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外乱の影響による検出精度の低下を抑制でき、かつ、電流検出対象でないバスバを流れる電流の影響を抑制可能な電流センサを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る電流センサを示す図であり、(a)はバスバの長さ方向に垂直な断面を示す断面図、(b)はその側面図である。
【
図2】(a)は、第1バスバに直流電流を流した際に、第1磁気検出素子の両感磁素子で検出される磁界強度の角度φによる変化を示すグラフ図であり、(b)は、第1バスバに直流電流を流した際に、第2磁気検出素子の両感磁素子で検出される磁界強度の角度φによる変化を示すグラフ図である。
【
図3】第1バスバに直流電流を流した際における、第2磁気検出素子の出力の角度φによる変化を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る電流センサを示す図であり、(a)はバスバの長さ方向に垂直な断面を示す断面図、(b)はその側面図である。
図1(a),(b)に示すように、電流センサ1は、2本のバスバ2と、2つの磁気検出素子3と、を備えている。
【0012】
バスバ2は、銅やアルミニウム等の電気良導体からなる板状の導体であり、電流を流す電流路となるものである。本実施の形態では、2本のバスバ2には、それぞれ独立した単相の電流が導通されている。2本のバスバ2は、その板幅方向に離間して整列配置されており、その長さ方向に沿って電流を流すようになっている。両バスバ2の厚さは、例えば3mmである。以下、
図1(a)の右側のバスバ2を第1バスバ2a、
図1(a)の左側のバスバ2を第2バスバ2bと呼称する。
【0013】
磁気検出素子3は、対応するバスバ2を流れる電流により発生する磁界の強度を検出するものである。磁気検出素子3は、バスバ2の板厚方向において2本のバスバ2a,2bとそれぞれ対向して配置されると共に、対応するバスバ2からの前記板厚方向に沿った距離d1が略等しくなるように配置されている。以下、
図1(a)の左右方向を幅方向、上下方向を厚さ方向、紙面方向を長さ方向という。長さ方向は図示X軸方向、厚さ方向は図示Y軸方向、幅方向は図示Z軸方向に対応する。また、バスバ2の板幅方向は幅方向に、板厚方向は厚さ方向にそれぞれ対応する。このように、電流センサ1では、2つの磁気検出素子3が、幅方向(Z方向)に並んで配置されている。
【0014】
ここで、バスバ2と磁気検出素子3との距離d1とは、より詳細には、バスバ2の磁気検出素子3側の面から、磁気検出素子3の中心位置(幅方向、長さ方向、及び厚さ方向における中心位置)までの距離である。磁気検出素子3は、その中心位置が、対応するバスバ2の幅方向中心位置と厚さ方向に対向するように配置されている。以下、第1バスバ2aと厚さ方向に対向して配置された磁気検出素子3を第1磁気検出素子3a、第2バスバ2bと厚さ方向に対向して配置された磁気検出素子3を第2磁気検出素子3bと呼称する。なお、バスバ2bと磁気検出素子3bとの距離が、バスバ2aと磁気検出素子3aとの距離と等しくなることが望ましいが、例えば、製造誤差等の理由により0.99~1.01倍(略等しい場合)であってもよい。
【0015】
本実施の形態に係る電流センサ1では、両磁気検出素子3a,3bとして、2つの感磁位置A,Bを有し、両感磁位置でそれぞれ検出した磁界強度の差分を出力する勾配検知タイプの磁気検出素子を用いる。磁気検出素子3a,3bとしては、例えば、勾配検知タイプのGMR(Giant Magneto Resistive effect)素子を用いることができる。
【0016】
勾配検知タイプの磁気検出素子3では、感磁位置A,Bで検出した磁界強度の差分を出力するため、空間に対して一様な分布とみなせる外乱(十分に離れた位置に配置された機器からの磁界や地磁気など)はキャンセルされる。つまり、勾配検知タイプの磁気検出素子3を用いることによって、外乱の影響による検出精度の低下を抑制することが可能になる。
【0017】
しかし、勾配検知タイプの磁気検出素子3では、2つの感磁位置A,Bが離間しているため、磁界の発生位置が近く磁気検出素子3の位置で磁場勾配が大きい外乱に対しては、感磁位置A,Bで同じ磁界強度が検出されないため検出誤差の要因となってしまう。そのため、電流検出対象でないバスバ2(以下、隣接バスバ2と呼称する)で発生する磁界は、検出誤差の要因となってしまう。
【0018】
そこで、本実施の形態では、両磁気検出素子3を、その検出軸方向が、長さ方向に対して垂直な方向となり、かつ、厚さ方向(バスバ2の板厚方向)に対して傾くように配置した。これにより、磁気検出素子3の両感磁位置A,Bで検出される隣接バスバ2からの磁界を同等に調整することが可能になり、隣接バスバ2で発生する磁界の影響を抑制することが可能になる。
図1(a),(b)では、検出軸を符号Dで表している。
【0019】
さらに、本実施の形態では、両磁気検出素子3a,3bにおける検出軸方向の厚さ方向に対する傾き角度θ(絶対値)を略同じ角度とし、かつ厚さ方向に対する傾き方向を逆方向とした。
図1(a)の例では、図示左側に配置された第1磁気検出素子3aの検出軸方向を反時計回り方向に傾け、図示右側に配置された第2磁気検出素子3bの検出軸方向を時計回り方向に傾けた場合を示している。ただし、これに限らず、第1磁気検出素子3aの検出軸方向を時計回り方向に傾けると共に、第2磁気検出素子3bの検出軸方向を反時計回り方向に傾けてもよい。
【0020】
両磁気検出素子3a,3bは、幅方向を法線方向とする面(厚さ方向及び長さ方向に平行な面、XY平面)に対して対称となるように配置されている。なお、ここでいう対称は、両磁気検出素子3a,3bの感磁位置A,Bが対称に配置されていることも含んでいる。つまり、両磁気検出素子3a,3bは、感磁位置A,Bが長さ方向に垂直な断面視で左右対称となるように配置される。両磁気検出素子3a,3bを対称配置することにより、両磁気検出素子3a,3bで検出される磁束密度の振幅を同等とすることが可能になり、電流センサ1の取り扱い(検出精度の管理等)が容易になる。
【0021】
(磁気検出素子3a,3bの傾き角度θについて)
感磁位置A,B間の距離dが1.2mmである磁気検出素子3を用いた場合に、傾き角度θを変化させた際の両磁気検出素子3a,3bの感磁位置A,Bで検出される磁界強度をシミュレーションにより求めた。シミュレーションでは、バスバ2と磁気検出素子3との距離d1を10mmとし、バスバ2及び磁気検出素子3の幅方向配置ピッチ(バスバ2及び磁気検出素子3の幅方向中心位置同士の間隔)d2を20.5mm、両バスバ2の幅を15mm、両バスバ2の厚さを3mmとした。
【0022】
第1バスバ2aに直流電流を流した際に、第1磁気検出素子3aの両感磁位置A,Bで検出される磁界強度(磁束密度)の角度φによる変化を
図2(a)に示す。また、第1バスバ2aに直流電流を流した際に、第2磁気検出素子3bの両感磁位置A,Bで検出される磁界強度(磁束密度)の角度φによる変化を
図2(b)に示す。さらに、第1バスバ2aに直流電流を流した際における、第2磁気検出素子3bの出力(感磁位置A,Bの磁束密度の差分)の角度φによる変化を
図3に示す。なお、角度φは、検出軸方向と垂直な方向と厚さ方向とのなす角度であり、φ=90-θで表される(
図1(a)参照)。
【0023】
図2(a),(b)では、縦軸の磁束密度については、φ=0度としたときの第1磁気検出素子3aの感磁位置Bで検出される磁束密度を基準として規格化している。また、
図3では、縦軸の磁束密度の差分について、絶対値が最大となる値(角度φが約120度における磁束密度の差分)にて規格化している。
【0024】
図2(a)に示されるように、対応する第1バスバ2aに電流が流れている場合、第1磁気検出素子3aの角度φ(傾き角度θ)を変化させると、両感磁位置A,Bで検出される磁束は周期的に変化する。なお、
図2(a)では、第1バスバ2aに電流を流した場合に第1磁気検出素子3aの感磁位置A,Bで検出される磁束密度を示しているが、第2バスバ2bに電流を流した場合に第2磁気検出素子3bの感磁位置A,Bで検出される磁束密度も同様の特性となる。
【0025】
他方、
図2(b)に示されるように、対応しない第1バスバ2aに電流が流れている場合であっても、第2磁気検出素子3bの感磁位置A,Bでは磁束密度が検出される。この場合も、第2磁気検出素子3bの角度φ(傾き角度θ)を変化させると、
図2(a)と同様に、両感磁位置A,Bで検出される磁束は周期的に変化する。
図3に示されるように、第2磁気検出素子3bの出力、すなわち両感磁位置A,Bで検出した磁束密度の差分についても、第2磁気検出素子3bの角度φ(傾き角度θ)を変化させると、周期的に変化する。なお、
図2(b)及び
図3では、第1バスバ2aに電流を流した場合に第2磁気検出素子3bの感磁位置A,Bで検出される磁束密度及びその差分を示しているが、第2バスバ2bに電流を流した場合に第1磁気検出素子3aの感磁位置A,Bで検出される磁束密度及びその差分も同様の特性となる。
【0026】
ここで、
図2(b)および
図3に白抜き矢印で示されるように、この例では、角度φが約70度及び約170度(傾き角度θが約20度及び約-80度)にて、両感磁位置A,Bで検出される磁束密度が同等の値となり、出力(両感磁位置A,Bで検出した磁束密度の差分)が略ゼロになる。つまり、角度φを約70度あるいは約170度とすることで、隣接バスバ2からの磁界の影響を抑制することが可能になる。
【0027】
なお、検出軸方向が隣接バスバ2からの磁界の方向と直交するように磁気検出素子を配置する従来技術では、
図2(b)に塗り潰し矢印で示されるように、検出される磁界強度が0となる角度に角度φ(傾き角度θ)を設定することになる。この例では、角度φが約30度あるいは約210度に設定されることになる。しかし、
図3に塗り潰し矢印で示されるように、この角度においては、両感磁位置A,Bで検出した磁束密度の差分がゼロとはならず、隣接バスバ2からの磁界の影響を抑制することはできない。この例では、従来技術に従って角度φを設定した場合、第2磁気検出素子3bの出力が略極大値となり、隣接バスバ2からの磁界の影響が非常に大きくなってしまうことになる。
【0028】
図2、3に示した特性は、磁気検出素子3の感磁位置A,B間の距離d、バスバ2と磁気検出素子3との距離d1、バスバ2及び磁気検出素子3の幅方向配置ピッチd2等によって変化し、それに伴って、最適な傾き角度θ(角度φ)も変化する。よって、バスバ2と磁気検出素子3の配置等を考慮し、隣接バスバ2からの磁界の影響が最も小さくなる傾き角度θ(角度φ)に設定するとよい。
【0029】
対応するバスバ2を流れる電流により両感磁位置A,Bで検出された磁界強度の差分Daに対する、対応しないバスバ2(隣接バスバ2)を流れる電流により両感磁位置A,Bで検出された磁界強度の差分Dbの比率Db/Da×100は、0.5%以下とされることが望ましく、より望ましくは0.1%以下とされるとよい。つまり、傾き角度θは、比率Db/Da×100が0.5%以下、より好ましくは0.1%以下となる角度に設定されるとよい。
【0030】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る電流センサ1では、両磁気検出素子3a,3bは、2つの感磁位置A,Bでそれぞれ検出した磁界強度の差分を出力する勾配検知タイプの磁気検出素子であり、その検出軸方向が、バスバ2の長さ方向に対して垂直な方向となり、かつ、バスバ2の板厚方向に対して傾くように配置されている。
【0031】
勾配検知タイプの磁気検出素子3a,3bを用いることで、空間に対して一様な分布とみなせる外乱の影響を抑制できる。さらに、磁気検出素子3a,3bを、検出軸方向が厚さ方向に対して傾くように配置することで、隣接バスバ2で発生した磁界の影響を両感磁位置A,Bで同等とし、これをキャンセルすることが可能になる。つまり、本実施の形態によれば、外乱の影響による検出精度の低下を抑制でき、かつ、電流検出対象でないバスバ2を流れる電流の影響を抑制可能な電流センサ1を実現でき、電流センサ1の検出精度の向上に寄与する。
【0032】
また、磁気検出素子3a,3bの検出軸方向を厚さ方向に対して傾けることによって、磁気検出素子3a,3bの感磁位置A,Bでの検知感度を抑制できるので、よりバスバ2の近傍に磁気検出素子3a,3bを配置することが可能となり、電流センサ1の小型化に寄与する。
【0033】
(変形例)
上記実施の形態では、第1バスバ2aと第1磁気検出素子3aとの距離が、第2バスバ2bと第2磁気検出素子3bとの距離が等しくなる場合について説明したが、これに限らず、これらの距離が異なっていても良い。この場合も、両磁気検出素子3a,3bは、上記実施の形態と同様に、比率Db/Da×100が0.5%以下となるように配置されることが望ましく、より望ましくは0.1%以下となるように配置されるとよい。つまり、この場合は、第1磁気検出素子3aの傾き角度は、第2磁気検出素子3bの傾き角度と違う角度となる。なお、両磁気検出素子3の厚さ方向に対する傾き方向は、上記実施の形態と同様に、逆方向となるように配置される。
【0034】
また、上記実施の形態では、2本のバスバ2と、2つの磁気検出素子3を用いる場合について説明したが、これに限らず、1本のバスバと1つの磁気検出素子3のみを有する場合にも、本発明の効果は得られる。つまり、磁気検出素子3の近傍に磁界の発生源が存在する場合に、勾配検知タイプの磁気検出素子3をバスバ2の厚さ方向に対して傾けて配置することで、上記磁界の発生源からの影響を感磁位置A,Bで同等としてキャンセルして、上記磁界の発生源からの影響を抑制することが可能である。
【0035】
また、上記実施の形態では言及しなかったが、外乱による影響をより抑制するために、バスバ2と磁気検出素子3とを厚さ方向から挟み込むように、一対のシールド板を設けてもよい。また、バスバ2と磁気検出素子3とをモールド樹脂で覆うようにしてもよい。
【0036】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0037】
[1]板状に形成されると共に、その板幅方向に離間して整列配置されている2本のバスバ(2)と、前記バスバ(2)の板厚方向において前記2本のバスバ(2)とそれぞれ対向して配置され、対応する前記バスバ(2)を流れる電流により発生する磁界の強度を検出する2つの磁気検出素子(3)と、を備え、前記両磁気検出素子(3)は、2つの感磁位置(A,B)でそれぞれ検出した磁界強度の差分を出力する勾配検知タイプの磁気検出素子であり、その検出軸方向が、前記バスバ(2)の長さ方向に対して垂直な方向となり、かつ、前記板厚方向に対して傾くように配置されている、電流センサ(1)。
【0038】
[2]前記両磁気検出素子(3)は、それぞれ対応する前記バスバ(2)からの前記板厚方向に沿った距離が略等しくなるように配置されている、[1]に記載の電流センサ(1)。
【0039】
[3]前記両磁気検出素子(3)は、前記板幅方向を法線方向とする面に対して略対称に配置されている、[1]または[2]に記載の電流センサ(1)。
【0040】
[4]前記両磁気検出素子(3)の傾き角度は、対応する前記バスバ(2)を流れる電流により両感磁位置(A,B)で検出された磁界強度の差分Daに対する、対応しない前記バスバを流れる電流により両感磁位置で検出された磁界強度の差分Dbの比率Db/Da×100が、0.5%以下となる角度である、[1]から[3]いずれかに記載の電流センサ(1)。
【0041】
[5]板状に形成されたバスバ(2)と、前記バスバ(2)の板厚方向において前記バスバ(2)と対向して配置されており、前記バスバ(2)を流れる電流により発生する磁界の強度を検出する磁気検出素子(3)と、を備え、前記磁気検出素子(3)は、2つの感磁位置(A,B)でそれぞれ検出した磁界強度の差分を出力する勾配検知タイプの磁気検出素子であり、その検出軸方向が、前記バスバ(2)の長さ方向に対して垂直な方向となり、かつ、前記板厚方向に対して傾くように配置されている、電流センサ。
【0042】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…電流センサ
2…バスバ
2a…第1バスバ
2b…第2バスバ
3…磁気検出素子
3a…第1磁気検出素子
3b…第2磁気検出素子
A,B…感磁位置
D…検出軸