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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
G01R15/20 D ZHV
G01R15/20 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017233681
(22)【出願日】2017-12-05
(65)【公開番号】P2019100923
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥山 健
(72)【発明者】
【氏名】二口 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】駒野 晴保
(72)【発明者】
【氏名】梅津 潤
(72)【発明者】
【氏名】冨田 雄二朗
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-190780(JP,A)
【文献】特開2016-200438(JP,A)
【文献】特開2015-175757(JP,A)
【文献】国際公開第2014/188669(WO,A1)
【文献】特開平10-307156(JP,A)
【文献】特開2010-019747(JP,A)
【文献】国際公開第2013/005545(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0327594(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
G01R 33/00-33/18
G01R 19/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状かつ板状に形成され、三相交流における各相の電流が流れる3本のバスバと、
対応する前記バスバを流れる電流により発生する磁界の強度を検出する3つの磁気検出素子と、を備え、
前記3本のバスバは、
前記バスバを電流が流れる方向を長さ方向、前記バスバの表裏面に垂直な方向を板厚方向、前記長さ方向及び前記板厚方向に垂直な方向を板幅方向としたとき、
板幅方向に離間して整列配置された第1及び第2バスバと、
前記第1及び第2バスバに対して、板厚方向が一致し、かつ長さ方向が互いに直交するように配置された第3バスバと、を有し、
前記3つの磁気検出素子は、
前記板厚方向において前記第1及び第2バスバとそれぞれ対向して配置された第1及び第2磁気検出素子と、
前記板厚方向において前記第3バスバと対向して配置された第3磁気検出素子と、を有し、
前記第1及び第2磁気検出素子のそれぞれは、磁界強度を検出する検出軸方向が同じ方向である2つの感磁位置を有し、当該2つの感磁位置でそれぞれ検出した磁界強度の差分を出力する磁気検出素子であり、その検出軸方向が、前記第1及び第2バスバの長さ方向に対して垂直な方向となり、かつ、前記板厚方向に対して傾くように配置されており、
前記第1磁気検出素子は、その検出軸方向の前記板厚方向に対する傾き角度が、前記第2バスバからの磁界により検出される磁界強度が前記2つの感磁位置で等しい値となる角度とされ、
前記第2磁気検出素子は、その検出軸方向の前記板厚方向に対する傾き角度が、前記第1バスバからの磁界により検出される磁界強度が前記2つの感磁位置で等しい値となる角度とされ、
前記第3磁気検出素子は、磁界強度を検出する検出軸方向が、前記第3バスバの板幅方向と一致するように配置されている、
電流センサ。
【請求項2】
前記第3磁気検出素子は、2つの感磁位置を有し、当該2つの感磁位置でそれぞれ検出した磁界強度の差分を出力する磁気検出素子である、
請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記第1及び第2バスバは、前記第3バスバの前記板厚方向における一側に配置されており、
前記第3磁気検出素子は、前記第3バスバの一側で、かつ、前記第1及び第2バスバの板幅方向における前記第1バスバと前記第2バスバとの間の位置に配置されている、
請求項1または2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記第1及び第2磁気検出素子は、その中心位置が、前記第3バスバの板幅方向中心位置と前記板厚方向に対向して配置されている、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記第1及び第2磁気検出素子は、それぞれ対応する前記バスバからの前記板厚方向に沿った距離が略等しくなるように配置されている、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記第1及び第2磁気検出素子は、前記第1及び第2バスバの前記板幅方向を法線方向とする面に対して略対称に配置されている、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電流センサとして、測定対象となる電流により発生する磁界の強度を検出する磁気検出素子を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。磁気検出素子により磁界の強度を検出することで、その磁界の強度を基に、電流を演算により求めることが可能である。
【0003】
特許文献1では、2本のバスバ(導体)を流れる電流を2つの磁気検出素子を用いてそれぞれ検出する電流センサが記載されている。この電流センサでは、感磁方向直線(検出軸方向に沿った直線)が電流検出対象でないバスバを向くように、より好ましくは電流検出対象でないバスバを流れる電流に起因する磁界の方向と直交するように磁気検出素子を配置することで、電流検出対象でないバスバを流れる電流の影響を抑制する点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-200438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えばインバータとモータ間では三相交流が伝送される。このような三相交流の各相の電流を測定する電流センサにおいては、磁気検出素子に対する電流検出対象でない他の相のバスバを流れる電流の影響をできるだけ小さくすること、すなわち三相間の干渉をできるだけ小さくすることが望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、三相間の干渉を抑制し検出精度の向上を図った電流センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、帯状かつ板状に形成され、三相交流における各相の電流が流れる3本のバスバと、対応する前記バスバを流れる電流により発生する磁界の強度を検出する3つの磁気検出素子と、を備え、前記3本のバスバは、前記バスバを電流が流れる方向を長さ方向、前記バスバの表裏面に垂直な方向を板厚方向、前記長さ方向及び前記板厚方向に垂直な方向を板幅方向としたとき、板幅方向に離間して整列配置された第1及び第2バスバと、前記第1及び第2バスバに対して、板厚方向が一致し、かつ長さ方向が互いに直交するように配置された第3バスバと、を有し、前記3つの磁気検出素子は、前記板厚方向において前記第1及び第2バスバとそれぞれ対向して配置された第1及び第2磁気検出素子と、前記板厚方向において前記第3バスバと対向して配置された第3磁気検出素子と、を有し、前記第1及び第2磁気検出素子のそれぞれは、磁界強度を検出する検出軸方向が同じ方向である2つの感磁位置を有し、当該2つの感磁位置でそれぞれ検出した磁界強度の差分を出力する磁気検出素子であり、その検出軸方向が、前記第1及び第2バスバの長さ方向に対して垂直な方向となり、かつ、前記板厚方向に対して傾くように配置されており、前記第1磁気検出素子は、その検出軸方向の前記板厚方向に対する傾き角度が、前記第2バスバからの磁界により検出される磁界強度が前記2つの感磁位置で等しい値となる角度とされ、前記第2磁気検出素子は、その検出軸方向の前記板厚方向に対する傾き角度が、前記第1バスバからの磁界により検出される磁界強度が前記2つの感磁位置で等しい値となる角度とされ、前記第3磁気検出素子は、磁界強度を検出する検出軸方向が、前記第3バスバの板幅方向と一致するように配置されている、電流センサを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、三相間の干渉を抑制し検出精度の向上を図った電流センサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係る電流センサを示す図であり、(a)は第1及び第2バスバの長さ方向に垂直な断面を示す断面図、(b)はその1A-1A線断面図である。
図2】バスバの配置を示す斜視図である。
図3】(a)は、第1バスバに直流電流を流した際に、第1磁気検出素子の両感磁素子で検出される磁界強度の角度φによる変化を示すグラフ図であり、(b)は、第1バスバに直流電流を流した際に、第2磁気検出素子の両感磁素子で検出される磁界強度の角度φによる変化を示すグラフ図である。
図4】第1バスバに直流電流を流した際における、第2磁気検出素子の出力の角度φによる変化を示すグラフ図である。
図5】本発明の一変形例に係る電流センサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る電流センサを示す図であり、(a)は第1及び第2バスバの長さ方向に垂直な断面を示す断面図、(b)はその1A-1A線断面図である。図2は、バスバの配置を示す斜視図である。図1,2に示すように、電流センサ1は、3本のバスバ2と、3つの磁気検出素子3と、を備えている。なお、図2では磁気検出素子3を省略して示している。
【0012】
バスバ2は、銅やアルミニウム等の電気良導体からなる板状の導体であり、電流を流す電流路となるものである。バスバ2は、例えば電気自動車やハイブリッド車におけるモータとインバータ間の電源ラインとして用いられるものである。本実施の形態では、三相交流に対応した3本のバスバ2を用いる場合を説明する。バスバ2の厚さは、例えば3mmである。
【0013】
3本のバスバ2は、板幅方向に離間して整列配置された第1バスバ2a及び第2バスバ2bと、第1及び第2バスバ2a,2bに対して、板厚方向が一致し、かつ長さ方向が互いに直交するように配置された第3バスバ2cと、を有している。第1及び第2バスバ2a,2bは、第3バスバ2cの板厚方向における一側に並んで配置されている。本実施の形態では、第1バスバ2aにはU相、第2バスバ2bにはV相、第3バスバ2cにはW相の電流が流れている。
【0014】
以下、第1及び第2バスバ2a,2bの長さ方向(第3バスバ2cの板幅方向)をX方向、各バスバ2a~2cの板厚方向をY方向、第1及び第2バスバ2a,2bの板幅方向(第3バスバ2cの長さ方向)をZ方向という。第3バスバ2cと第1バスバ2a、及び第3バスバ2cと第2バスバ2bのY方向に沿った距離は、同じ距離とされる。
【0015】
磁気検出素子3は、対応するバスバ2を流れる電流により発生する磁界の強度を検出するものである。3つの磁気検出素子3は、Y方向(板厚方向)において第1及び第2バスバ2a,2bとそれぞれ対向して配置されると共に、対応する第1及び第2バスバ2a,2bからのY方向(板厚方向)に沿った距離d1が等しくなるように配置された第1及び第2磁気検出素子3a,3bと、Y方向(板厚方向)において第3バスバ2cと対向して配置された第3磁気検出素子3cと、を有している。第1磁気検出素子3aと第2磁気検出素子3bとは、Z方向に並んで配置されている。なお、第2バスバ2bと第2磁気検出素子3bとの距離が、第1バスバ2aと第1磁気検出素子3aとの距離と等しくなることが望ましいが、例えば、製造誤差等の理由により0.99~1.01倍(略等しい場合)であってもよい。
【0016】
ここで、バスバ2a,2bと磁気検出素子3a,3bとの距離d1とは、より詳細には、バスバ2a,2bの磁気検出素子3a,3b側の面から、磁気検出素子3a,3bの中心位置(幅方向、長さ方向、及び厚さ方向における中心位置)までの距離である。同様に、第3バスバ2cと第3磁気検出素子3cとの距離、すなわち第3バスバ2cの第3磁気検出素子3c側の面から第3磁気検出素子3cの中心位置までの距離をd3とする。
【0017】
3つの磁気検出素子3a~3cは、その中心位置が、対応するバスバ2a~2cの板幅方向中心位置と厚さ方向に対向するように配置されている。本実施の形態では、第3磁気検出素子3cは、第3バスバ2cの第1及び第2バスバ2a,2b側で、かつ、Z方向における第1バスバ2aと第2バスバ2bとの間の位置に配置されている。より詳細には、第3磁気検出素子3cは、その中心位置が、Z方向における第1バスバ2aと第2バスバ2bの中間位置とY方向に対向するように配置されている(つまり中心位置のZ方向位置が、第1バスバ2aと第2バスバ2bの中間位置のZ方向位置と等しくなっている)。
【0018】
第3磁気検出素子3cを、第3バスバ2cの第1及び第2バスバ2a,2b側に配置することで、3つの磁気検出素子3a~3cの配置位置を近づけ、共通の回路基板(不図示)に搭載することが可能となり、電流センサ1の小型化に寄与する。但し、これに限らず、第3バスバ2cの第1及び第2バスバ2a,2bと反対側に、第3磁気検出素子3cを配置してもよい。この場合、第3磁気検出素子3cと第1及び第2バスバ2a,2bの距離が離れるので、第3磁気検出素子3cにおける外乱の影響(第1及び第2バスバ2a,2bで発生する磁界の影響)がより抑えられる。
【0019】
本実施の形態に係る電流センサ1では、第1及び第2磁気検出素子3a,3bとして、2つの感磁位置A,Bを有し、両感磁位置でそれぞれ検出した磁界強度の差分を出力する勾配検知タイプの磁気検出素子を用いる。第1及び第2磁気検出素子3a,3bとしては、例えば、勾配検知タイプのGMR(Giant Magneto Resistive effect)素子を用いることができる。
【0020】
勾配検知タイプの磁気検出素子3では、感磁位置A,Bで検出した磁界強度の差分を出力するため、空間に対して一様な分布とみなせる外乱(十分に離れた位置に配置された機器からの磁界や地磁気など)はキャンセルされる。つまり、勾配検知タイプの磁気検出素子3を用いることによって、外乱の影響による検出精度の低下を抑制することが可能になる。
【0021】
(U相とV相との間の干渉抑制)
勾配検知タイプの磁気検出素子3では、2つの感磁位置A,Bが離間しているため、磁界の発生位置が近く磁気検出素子3の位置で磁場勾配が大きい外乱に対しては、感磁位置A,Bで同じ磁界強度が検出されないため検出誤差の要因となってしまう。そのため、電流検出対象でないバスバ2(第1磁気検出素子3aに対する第2バスバ2b、第2磁気検出素子3bに対する第1バスバ2a。以下、隣接バスバ2と呼称する)で発生する磁界は、検出誤差の要因となってしまう。
【0022】
そこで、本実施の形態では、第1及び第2磁気検出素子3a,3bを、その検出軸方向が、X方向(第1及び第2バスバ2a,2bの長さ方向)に対して垂直な方向となり、かつ、Y方向(板厚方向)に対して傾くように配置した。これにより、第1及び第2磁気検出素子3a,3bの両感磁位置A,Bで検出される隣接バスバ2からの磁界を同等に調整することが可能になり、隣接バスバ2で発生する磁界の影響を抑制することが可能になる。図1(a),(b)では、検出軸を符号Dで表している。
【0023】
さらに、本実施の形態では、第1及び第2磁気検出素子3a,3bにおける検出軸方向のY方向(板厚方向)に対する傾き角度θ(絶対値)を略同じ角度とし、かつY方向(板厚方向)に対する傾き方向を逆方向とした。図1(a)の例では、図示左側に配置された第1磁気検出素子3aの検出軸方向を反時計回り方向に傾け、図示右側に配置された第2磁気検出素子3bの検出軸方向を時計回り方向に傾けた場合を示している。ただし、これに限らず、第1磁気検出素子3aの検出軸方向を時計回り方向に傾けると共に、第2磁気検出素子3bの検出軸方向を反時計回り方向に傾けてもよい。第1及び第2磁気検出素子3a,3bの傾き角度θについては、後述する。
【0024】
両磁気検出素子3a,3bは、Z方向(第1及び第2バスバ2a,2bの板幅方向)を法線方向とする面、すなわちXY平面に対して対称となるように配置されている。なお、ここでいう対称は、両磁気検出素子3a,3bの感磁位置A,Bが対称に配置されていることも含んでいる。つまり、第1及び第2磁気検出素子3a,3bは、感磁位置A,BがX方向(第1及び第2バスバ2a,2bの長さ方向)に垂直な断面視で左右対称となるように配置される。両磁気検出素子3a,3bを対称配置することにより、両磁気検出素子3a,3bで検出される磁束密度の振幅を同等とすることが可能になり、電流センサ1の取り扱い(検出精度の管理等)が容易になる。
【0025】
(U相及びV相と、W相との間の干渉抑制)
本実施の形態では、第1及び第2バスバ2a,2bに対して、第3バスバ2cを直交するように配置している。そのため、第3バスバ2cを流れる電流により発生する磁界の向きは、第1及び第2磁気検出素子3a,3bの感磁位置A,Bにおいて、検出軸Dに対して略垂直な方向となる。これにより、第3バスバ2cを流れる電流により発生する磁界が、第1及び第2磁気検出素子3a,3bの検出結果に影響を与えることが抑制される。
【0026】
第3バスバ2cを流れる電流により発生する磁界の影響をより抑制するために、第1及び第2磁気検出素子3a,3bは、その中心位置が、第3バスバ2cの板幅方向中心位置とY方向(板厚方向)に対向して配置されていることが好ましい。
【0027】
さらに、本実施の形態では、第3磁気検出素子3cは、その検出軸方向が、X方向(第3バスバ2cの板幅方向)と一致するように配置されている。そのため、第1及び第2バスバ2a,2bを流れる電流により発生する磁界の向きは、第3磁気検出素子3cの感磁位置A,Bにおいて、検出軸Dに対して略垂直な方向となる。これにより、第1及び第2バスバ2a,2bを流れる電流により発生する磁界が、第3磁気検出素子3cの検出結果に影響を与えることが抑制される。
【0028】
本実施の形態では、外乱による影響を抑制するため、第3磁気検出素子3cとしても勾配検知タイプのものを用いている。ただし、第3磁気検出素子3cについては、上述のように第1及び第2バスバ2a,2bを流れる電流により発生する磁界に対しては不感となるので、1つの感磁位置にて磁界の大きさを検出するタイプの磁気検出素子を用いてもよい。
【0029】
また、上述のように、第1及び第2磁気検出素子3a,3bはXY平面に対して対称配置することにより検出される磁束密度の振幅を同等とすることができるが、第3磁気検出素子3cについては、第3バスバ2cからの距離d3を適宜調整することにより、検出される磁束密度の振幅を第1及び第2磁気検出素子3a,3bと同等とすることが可能である。
【0030】
(第1及び第2磁気検出素子3a,3bの傾き角度θについて)
感磁位置A,B間の距離dが1.2mmである磁気検出素子3a,3bを用いた場合に、傾き角度θを変化させた際の両磁気検出素子3a,3bの感磁位置A,Bで検出される磁界強度をシミュレーションにより求めた。シミュレーションでは、第1及び第2バスバ2a,2bと第1及び第2磁気検出素子3a,3bとの距離d1を10mmとし、バスバ2a,2b及び磁気検出素子3a,3bの幅方向配置ピッチ(バスバ2a,2b及び磁気検出素子3a,3bのZ方向中心位置同士の間隔)d2を20.5mm、両バスバ2a,2bの幅を15mm、両バスバ2a,2bの厚さを3mmとした。
【0031】
第1バスバ2aに直流電流を流した際に、第1磁気検出素子3aの両感磁位置A,Bで検出される磁界強度(磁束密度)の角度φによる変化を図3(a)に示す。また、第1バスバ2aに直流電流を流した際に、第2磁気検出素子3bの両感磁位置A,Bで検出される磁界強度(磁束密度)の角度φによる変化を図3(b)に示す。さらに、第1バスバ2aに直流電流を流した際における、第2磁気検出素子3bの出力(感磁位置A,Bの磁束密度の差分)の角度φによる変化を図4に示す。なお、角度φは、検出軸方向と垂直な方向とY方向(板厚方向)とのなす角度であり、φ=90-θで表される(図1(a)参照)。
【0032】
図3(a),(b)では、縦軸の磁束密度については、φ=0度としたときの第1磁気検出素子3aの感磁位置Bで検出される磁束密度を基準として規格化している。また、図4では、縦軸の磁束密度の差分について、絶対値が最大となる値(角度φが約120度における磁束密度の差分)にて規格化している。
【0033】
図3(a)に示されるように、対応する第1バスバ2aに電流が流れている場合、第1磁気検出素子3aの角度φ(傾き角度θ)を変化させると、両感磁位置A,Bで検出される磁束は周期的に変化する。なお、図3(a)では、第1バスバ2aに電流を流した場合に第1磁気検出素子3aの感磁位置A,Bで検出される磁束密度を示しているが、第2バスバ2bに電流を流した場合に第2磁気検出素子3bの感磁位置A,Bで検出される磁束密度も同様の特性となる。
【0034】
他方、図3(b)に示されるように、対応しない第1バスバ2aに電流が流れている場合であっても、第2磁気検出素子3bの感磁位置A,Bでは磁束密度が検出される。この場合も、第2磁気検出素子3bの角度φ(傾き角度θ)を変化させると、図3(a)と同様に、両感磁位置A,Bで検出される磁束は周期的に変化する。図3に示されるように、第2磁気検出素子3bの出力、すなわち両感磁位置A,Bで検出した磁束密度の差分についても、第2磁気検出素子3bの角度φ(傾き角度θ)を変化させると、周期的に変化する。なお、図3(b)及び図4では、第1バスバ2aに電流を流した場合に第2磁気検出素子3bの感磁位置A,Bで検出される磁束密度及びその差分を示しているが、第2バスバ2bに電流を流した場合に第1磁気検出素子3aの感磁位置A,Bで検出される磁束密度及びその差分も同様の特性となる。
【0035】
ここで、図3(b)および図4に白抜き矢印で示されるように、この例では、角度φが約70度及び約170度(傾き角度θが約20度及び約-80度)にて、両感磁位置A,Bで検出される磁束密度が同等の値となり、出力(両感磁位置A,Bで検出した磁束密度の差分)が略ゼロになる。つまり、角度φを約70度あるいは約170度とすることで、隣接バスバ2からの磁界の影響を抑制することが可能になる。
【0036】
なお、検出軸方向が隣接バスバ2からの磁界の方向と直交するように磁気検出素子を配置する従来技術では、図3(b)に塗り潰し矢印で示されるように、検出される磁界強度が0となる角度に角度φ(傾き角度θ)を設定することになる。この例では、角度φが約30度あるいは約210度に設定されることになる。しかし、図4に塗り潰し矢印で示されるように、この角度においては、両感磁位置A,Bで検出した磁束密度の差分がゼロとはならず、隣接バスバ2からの磁界の影響を抑制することはできない。この例では、従来技術に従って角度φを設定した場合、第2磁気検出素子3bの出力が略極大値となり、隣接バスバ2からの磁界の影響が非常に大きくなってしまうことになる。
【0037】
図3,4に示した特性は、第1及び第2磁気検出素子3a,3bの感磁位置A,B間の距離d、第1及び第2バスバ2a,2bと第1及び第2磁気検出素子3a,3bとの距離d1、第1及び第2バスバ2a,2b及び第1及び第2磁気検出素子3a,3bの幅方向配置ピッチd2等によって変化し、それに伴って、最適な傾き角度θ(角度φ)も変化する。よって、第1及び第2バスバ2a,2bと第1及び第2磁気検出素子3a,3bの配置等を考慮し、隣接するバスバ2からの磁界の影響が最も小さくなる傾き角度θ(角度φ)に設定するとよい。
【0038】
対応するバスバ2a,2bを流れる電流により両感磁位置A,Bで検出された磁界強度の差分Daに対する、対応しないバスバ2a,2bを流れる電流により両感磁位置A,Bで検出された磁界強度の差分Dbの比率Db/Da×100は、0.5%以下とされることが望ましく、より望ましくは0.1%以下とされるとよい。つまり、傾き角度θは、比率Db/Da×100が0.5%以下、より好ましくは0.1%以下となる角度に設定されるとよい。
【0039】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る電流センサ1では、板幅方向に離間して整列配置された第1及び第2バスバ2a,2bと、第1及び第2バスバ2a,2bに対して、板厚方向が一致し、かつ長さ方向が互いに直交するように配置された第3バスバ2cと、板厚方向において第1及び第2バスバ2a,2bとそれぞれ対向して配置されると共に、対応する第1及び第2バスバ2a,2bからの板厚方向に沿った距離d1が等しくなるように配置された第1及び第2磁気検出素子3a,3bと、板厚方向において第3バスバ2cと対向して配置された第3磁気検出素子3cと、を有している。さらに、第1及び第2磁気検出素子3a,3bは、2つの感磁位置A,Bでそれぞれ検出した磁界強度の差分を出力する勾配検知タイプの磁気検出素子であり、その検出軸方向が、第1及び第2バスバ2a,2bの長さ方向に対して垂直な方向となり、かつ、板厚方向に対して傾くように配置されており、第3磁気検出素子3cは、その検出軸方向が、第3バスバ2cの板幅方向と一致するように配置されている。
【0040】
これにより、U相とV相との間の干渉抑制、及びU相及びV相とW相との間の干渉抑制を共に実現でき、三相間の相互干渉を抑制した高精度な電流センサ1を実現できる。
【0041】
(変形例)
上記実施の形態では、平行配置した第1及び第2バスバ2a,2bにU相とV相、これに直交する第3バスバ2cにW相の電流をそれぞれ流す場合について説明したが、各バスバ2a~2cに流す電流の相はこれに限定されるものではなく、例えば、第3バスバ2cにU相の電流を流しても良い。
【0042】
また、上記実施の形態では、第1及び第2バスバ2a,2bの第3バスバ2cと反対側に各磁気検出素子3a~3cを配置したが、図5に示す電流センサ1aのように、第1及び第2バスバ2a,2bと第3バスバ2cとを板厚方向に離して配置し、第1及び第2バスバ2a,2bと第3バスバ2cとの間に、各磁気検出素子3a~3cを配置してもよい。
【0043】
また、上記実施の形態では、第1バスバ2aと第1磁気検出素子3aとの距離が、第2バスバ2bと第2磁気検出素子3bとの距離が等しくなる場合について説明したが、これに限らず、これらの距離が異なっていても良い。この場合も、第1及び第2磁気検出素子3a,3bは、上記実施の形態と同様に、比率Db/Da×100が0.5%以下となるように配置されることが望ましく、より望ましくは0.1%以下となるように配置されるとよい。つまり、この場合は、第1磁気検出素子3aの傾き角度は、第2磁気検出素子3bの傾き角度と違う角度となる。なお、両磁気検出素子3の厚さ方向に対する傾き方向は、上記実施の形態と同様に、逆方向となるように配置される。
【0044】
さらに、上記実施の形態では言及しなかったが、外乱による影響をより抑制するために、バスバ2a~2cと磁気検出素子3a~3cとを厚さ方向から挟み込むように、一対のシールド板を設けてもよい。また、バスバ2a~2cと磁気検出素子3a~3cとをモールド樹脂で覆うようにしてもよい。
【0045】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0046】
[1]板状に形成され、三相交流における各相の電流が流れる3本のバスバ(2)と、対応する前記バスバ(2)を流れる電流により発生する磁界の強度を検出する3つの磁気検出素子(3)と、を備え、前記3本のバスバ(2)は、板幅方向に離間して整列配置された第1及び第2バスバ(2a,2b)と、前記第1及び第2バスバ(2a,2b)に対して、板厚方向が一致し、かつ長さ方向が互いに直交するように配置された第3バスバ(2c)と、を有し、前記3つの磁気検出素子(3)は、前記板厚方向において前記第1及び第2バスバ(2a,2b)とそれぞれ対向して配置された第1及び第2磁気検出素子(3a,3b)と、前記板厚方向において前記第3バスバ(2c)と対向して配置された第3磁気検出素子(3c)と、を有し、前記第1及び第2磁気検出素子(3a,3b)は、2つの感磁位置でそれぞれ検出した磁界強度の差分を出力する勾配検知タイプの磁気検出素子であり、その検出軸方向が、前記第1及び第2バスバ(2a,2b)の長さ方向に対して垂直な方向となり、かつ、前記板厚方向に対して傾くように配置されており、前記第3磁気検出素子(3c)は、その検出軸方向が、前記第3バスバ(2c)の板幅方向と一致するように配置されている、電流センサ(1)。
【0047】
[2]前記第3磁気検出素子(3c)は、2つの感磁位置でそれぞれ検出した磁界強度の差分を出力する勾配検知タイプの磁気検出素子である、[1]に記載の電流センサ(1)。
【0048】
[3]前記第1及び第2バスバ(2a,2b)は、前記第3バスバ(2c)の前記板厚方向における一側に配置されており、前記第3磁気検出素子(3c)は、前記第3バスバ(2c)の一側で、かつ、前記第1及び第2バスバ(2a,2b)の板幅方向における前記第1バスバ(2a)と前記第2バスバ(2b)との間の位置に配置されている、[1]または[2]に記載の電流センサ。
【0049】
[4]前記第1及び第2磁気検出素子(3a,3b)は、その中心位置が、前記第3バスバ(2c)の板幅方向中心位置と前記板厚方向に対向して配置されている、[1]乃至[3]の何れか1項に記載の電流センサ(1)。
【0050】
[5]前記第1及び第2磁気検出素子(3a,3b)は、それぞれ対応する前記バスバからの前記板厚方向に沿った距離が略等しくなるように配置されている、[1]乃至[4]の何れか1項に記載の電流センサ(1)。
【0051】
[6]前記第1及び第2磁気検出素子(3a,3b)は、前記第1及び第2バスバ(2a,2b)の前記板幅方向を法線方向とする面に対して略対称に配置されている、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の電流センサ(1)。
【0052】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…電流センサ
2…バスバ
2a…第1バスバ
2b…第2バスバ
2c…第3バスバ
3…磁気検出素子
3a…第1磁気検出素子
3b…第2磁気検出素子
3c…第3磁気検出素子
A,B…感磁位置
D…検出軸
図1
図2
図3
図4
図5