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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
G01R15/20 C
G01R15/20 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017240048
(22)【出願日】2017-12-14
(65)【公開番号】P2019105613
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅津 潤
(72)【発明者】
【氏名】二口 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】駒野 晴保
(72)【発明者】
【氏名】奥山 健
(72)【発明者】
【氏名】冨田 雄二朗
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-194349(JP,A)
【文献】特開2017-102024(JP,A)
【文献】特開2017-156319(JP,A)
【文献】特開2015-049184(JP,A)
【文献】特開2010-002277(JP,A)
【文献】特開2015-201402(JP,A)
【文献】特開2011-117853(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02541261(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
H01R 13/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の電流が流れる帯状かつ板状のバスバと、
前記バスバの表裏面に垂直な板厚方向において前記バスバと対向して配置され、前記バスバを流れる電流により発生する磁界の強度を検出する磁気検出素子が搭載された回路基板と、
前記バスバの板厚方向において、前記バスバと前記回路基板とを挟み込むように前記板厚方向に対向して設けられ、前記バスバと前記回路基板とを板厚方向に押さえつけた状態で互いに固定される第1及び第2ハウジングを有するハウジングと、を備え、
前記第1及び第2ハウジングは、前記板厚方向において前記バスバ及び前記回路基板と重ならない位置であって前記板厚方向に対向する位置に、法線方向が前記バスバの板厚方向に対して傾斜した方向となる傾斜面をそれぞれ有し、前記傾斜面同士を互いに当接しつつ、前記傾斜面に沿った方向に滑らせて前記第1及び第2ハウジングを相対的にスライドさせることで、前記第1及び第2ハウジングにより前記バスバと前記回路基板とを板厚方向に押さえつけることが可能なスライドガイド部を有しており、
前記第1及び第2ハウジングは、少なくとも、前記スライドガイド部において、ボルトとナットとを用いて前記第1及び第2ハウジングを板厚方向に締め付けた状態で固定するボルト固定、あるいは、前記第2ハウジングの前記傾斜面から前記板厚方向に突出する熱かしめ用突起を、前記第1ハウジングの前記傾斜面に形成された孔に挿入し前記熱かしめ用突起の先端を加熱溶融させることで、前記第1及び第2ハウジングを板厚方向に締め付けた状態で固定する熱かしめにより互いに固定されている、
電流センサ。
【請求項2】
前記バスバを電流が流れる方向を長さ方向、前記長さ方向及び前記板厚方向に垂直な方向を板幅方向としたとき、
前記第1及び第2ハウジングの前記傾斜面は、その法線方向が、前記バスバの板幅方向に垂直で、かつ前記バスバの板厚方向及び長さ方向に対して傾斜した方向となるように形成されており、
前記スライドガイド部は、前記傾斜面同士を互いに当接しつつ、前記傾斜面に沿った方向に滑らせることで、前記第1及び第2ハウジングを、前記バスバの板幅方向に垂直で、かつ前記バスバの板厚方向及び長さ方向に対して傾斜した方向に相対的にスライド可能に形成されている、
請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記バスバと前記回路基板との間に設けられ、前記バスバと前記回路基板とを所定の間隔に維持するためのスペーサをさらに備えた、
請求項1または2の何れか1項に記載の電流センサ。
【請求項4】
複数の前記バスバを有し、
前記回路基板には、前記複数のバスバに対応する複数の磁気検出素子が搭載されており、
前記ハウジングは、前記複数のバスバと前記回路基板とを一括して挟み込むように設けられている、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記バスバ及び前記回路基板を前記板厚方向において一括して挟みこむように設けられた一対のシールド板をさらに備え、
前記ハウジングは、前記バスバの板厚方向における外側の面に、前記シールド板を保持するシールド板保持部を有する、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電流センサとして、測定対象となる電流により発生する磁界の強度を検出する磁気検出素子を備えたものが知られている。磁気検出素子により磁界の強度を検出することで、その磁界の強度を基に、電流を演算により求めることが可能である。この種の電流センサとして、電流路となるバスバと磁気検出素子とをハウジングで覆ったものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
電流センサでは、バスバに対する磁気検出素子の位置ずれをなるべく小さくすることが望まれる。バスバと板厚方向に対向して磁気検出素子を配置する場合、板厚方向に沿ったバスバと磁気検出間の距離は一定に保たれる必要がある。そこで、バスバと回路基板とを直接、あるいはスペーサ等を介して間接的に当接させ、バスバと回路基板とを挟み込む上下のハウジングによって、バスバの板厚方向に所定の押圧力を加えることで(押圧力を加えた状態で上下のハウジングを互いに固定することで)、バスバと磁気検出素子間の距離を一定に保つことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-102024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の電流センサでは、上下のハウジングが板厚方向に互いに当接していると、製造公差等によりハウジング内で隙間が生じ、バスバと回路基板間に十分な押圧力を加えられない場合があった。これは、バスバ、回路基板、スペーサ、上下のハウジング等の複数の部材を積層するために、各部材の公差の影響が積み重なり、ハウジング内で隙間が生じるおそれが大きくなるためである。
【0006】
本発明者らは、上下のハウジングが互いに当接しないようにすること(積層時に上下のハウジング間に隙間が生じるように構成すること)を検討した。これにより、各部材の公差の影響を吸収して、バスバと回路基板間に押圧力を付与することが可能になる。しかしこの場合、上下のハウジングをボルト固定等で固定した際に、隙間の部分でハウジングが凹むなどしてハウジングが変形してしまう場合があった。ハウジングが変形すると押圧力が偏り、押圧力が弱い部分で浮きが発生する等して部材が傾いてしまうため、バスバと磁気検出素子の位置ずれが生じてしまうおそれが生じる。
【0007】
そこで、本発明は、バスバと磁気検出素子の位置ずれを抑制可能な電流センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、検出対象の電流が流れる帯状かつ板状のバスバと、前記バスバの表裏面に垂直な板厚方向において前記バスバと対向して配置され、前記バスバを流れる電流により発生する磁界の強度を検出する磁気検出素子が搭載された回路基板と、前記バスバの板厚方向において、前記バスバと前記回路基板とを挟み込むように前記板厚方向に対向して設けられ、前記バスバと前記回路基板とを板厚方向に押さえつけた状態で互いに固定される第1及び第2ハウジングを有するハウジングと、を備え、前記第1及び第2ハウジングは、前記板厚方向において前記バスバ及び前記回路基板と重ならない位置であって前記板厚方向に対向する位置に、法線方向が前記バスバの板厚方向に対して傾斜した方向となる傾斜面をそれぞれ有し、前記傾斜面同士を互いに当接しつつ、前記傾斜面に沿った方向に滑らせて前記第1及び第2ハウジングを相対的にスライドさせることで、前記第1及び第2ハウジングにより前記バスバと前記回路基板とを板厚方向に押さえつけることが可能なスライドガイド部を有しており、前記第1及び第2ハウジングは、少なくとも、前記スライドガイド部において、ボルトとナットとを用いて前記第1及び第2ハウジングを板厚方向に締め付けた状態で固定するボルト固定、あるいは、前記第2ハウジングの前記傾斜面から前記板厚方向に突出する熱かしめ用突起を、前記第1ハウジングの前記傾斜面に形成された孔に挿入し前記熱かしめ用突起の先端を加熱溶融させることで、前記第1及び第2ハウジングを板厚方向に締め付けた状態で固定する熱かしめにより互いに固定されている、電流センサを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バスバと磁気検出素子の位置ずれを抑制可能な電流センサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a),(b)は、本発明の一実施の形態に係る電流センサを示す斜視図である。
図2】電流センサの分解斜視図である。
図3】電流センサの分解斜視図である。
図4】スペーサと回路基板の斜視図である。
図5】(a),(b)は、第1ハウジングの斜視図である。
図6】第2ハウジングの斜視図である。
図7】シールド板のハウジングへの取り付けを説明する説明図である。
図8】(a)は第1及び第2ハウジングを相対的にスライドさせる前、(b)はスライド後の側面図である。
図9】(a)は第1及び第2ハウジングを相対的にスライドさせる前、(b)はスライド後の平面図である。
図10】(a)は第1及び第2ハウジングを相対的にスライドさせる前、(b)はスライド後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0012】
図1(a),(b)は、本発明の一実施の形態に係る電流センサを示す斜視図である。図2,3は、電流センサの分解斜視図である。
【0013】
図1~3に示すように、電流センサ1は、検出対象の電流が流れるバスバ2と、磁気検出素子3と、磁気検出素子3が搭載された回路基板4と、スペーサ5と、第1ハウジング61及び第2ハウジング62を有する2分割構造のハウジング6と、を有している。なお、図1~3では、後述するシールド板7を省略して示している(図7参照)。
【0014】
(バスバ2の説明)
バスバ2は、銅やアルミニウム等の電気良導体からなる板状の導体であり、電流を流す電流路となるものである。バスバ2は、例えば電気自動車やハイブリッド車におけるモータとインバータ間の電源ラインとして用いられるものである。本実施の形態では、三相交流に対応した3本のバスバ2を用いる場合を説明する。ただし、バスバ2の本数はこれに限定されない。バスバ2の厚さは、例えば3mmである。3本のバスバ2a~2cは、その板幅方向に離間して整列配置されている。
【0015】
各バスバ2a~2cには、それぞれ2つの切欠き21が形成されている。2つの切欠き21は、各バスバ2a~2cの板幅方向における両側方へとそれぞれ開口するように形成されると共に、長さ方向における略同じ位置で板幅方向に対向するように形成されている。各バスバ2a~2cに2つの切欠き21を形成することにより、バスバ2a~2cの長手方向の一部が幅狭となった狭幅部22が形成されている。本実施の形態では、この狭幅部22と厚さ方向に対向するように、磁気検出素子3が配置される。
【0016】
狭幅部22は、高周波における表皮効果の影響を抑制する役割を果たし、検出精度の向上に寄与する。より詳細には、バスバ2に高周波の電流が流れると、表皮効果により電流分布がバスバ2の表面に偏る。周波数によって表皮厚さが異なり、バスバ2内部の電流分布が変わるため、磁気検出素子3の位置における磁束密度が変化してしまう。バスバ2の幅方向における中央部と対向するように磁気検出素子3を配置する場合、磁気検出素子3側から見て、バスバ2の通電面の断面形状のアスペクト比が小さい方が電流分布の広がり(すなわち電流分布の周波数依存性)が小さくなり、表皮効果の影響が小さくなると考えられる。
【0017】
(磁気検出素子3及び回路基板4の説明)
磁気検出素子3は、対応するバスバ2a~2cを流れる電流により発生する磁界の強度を検出するものである。ここでは、1本のバスバ2に対して2つの磁気検出素子3を用いる場合を示しており、合計6つの磁気検出素子3を用いる場合示している。ただし、これに限らず、1本のバスバ2に対して1つの磁気検出素子3を用いるように構成してもよい。磁気検出素子3としては、例えば、ホール素子やGMR(Giant Magneto Resistive effect)素子、AMR(Anisotropic Magneto Resistive)素子、TMR(Tunneling Magneto Resistive)素子等を用いることができる。
【0018】
磁気検出素子3は、検出軸に沿った方向の磁界の強度(磁束密度)に応じた電圧の出力信号を出力するように構成されている。本実施の形態では、各磁気検出素子3は、検出軸がバスバ2の板幅方向と一致するように配置されている。
【0019】
各磁気検出素子3は、共通の回路基板4に搭載されている。回路基板4には、第1ハウジング61に対する位置決めを行うための2つの位置決め用孔41が形成されている。また、回路基板4には、第2ハウジング62の熱かしめ用突起62aを通すための長孔42が形成されている。詳細は後述するが、本実施の形態では、組立時に、第1ハウジング61(及び第1ハウジング61に固定された回路基板4)に対して、バスバ2の板幅方向と垂直な方向に第2ハウジング62がスライドする。そのため、回路基板4に対して熱かしめ用突起62aがスライド移動できるように、長孔42は、バスバ2の長さ方向に延びる長円形状(角丸長方形状)に形成されている。位置決め用孔41及び長孔42は、共に回路基板4を板厚方向に貫通するように形成されている。回路基板4の端部には、電源供給や磁気検出素子3の検出信号の出力等に用いられるコネクタ43が設けられている。
【0020】
(スペーサ5の説明)
図4は、スペーサ5と回路基板4の斜視図である。スペーサ5は、バスバ2と回路基板4との間に設けられ、バスバ2と回路基板4(磁気検出素子3)とを所定の間隔に維持するためのものである。スペーサ5は、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の樹脂からなり、板状に形成されている。
【0021】
スペーサ5には、第1ハウジング61に対する位置決めを行うための2つの位置決め用孔51が形成されている。また、スペーサ5には、第2ハウジング62の熱かしめ用突起62aを通すための長孔52が形成されている。スペーサ5に対して熱かしめ用突起62aがスライド移動できるように、長孔52は、バスバ2の長さ方向に延びる長円形状(角丸長方形状)に形成されている。また、スペーサ5には、磁気検出素子3を収容するための3つの収容孔53が形成されている。各収容孔53には、2つずつの磁気検出素子3が収容されている。位置決め用孔51、長孔52、及び収容孔53は、共にスペーサ5を板厚方向に貫通するように形成されている。
【0022】
(ハウジング6の説明)
図5(a),(b)は、第1ハウジング61の斜視図である。図6は、第2ハウジング62の斜視図である。ハウジング6は、バスバ2の板厚方向において、バスバ2、回路基板4、及びスペーサ5を挟み込むように設けられた第1及び第2ハウジング61,62を有している。第1及び第2ハウジング61,62は、3本のバスバ2と回路基板4とを一括して挟み込むように設けられている。第1ハウジング61及び第2ハウジング62は、PPS(ポリフェニレンサルファイド),PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の樹脂からなる。
【0023】
図5に示すように、第1ハウジング61は、バスバ2を収容するバスバ収容溝610aが形成された上蓋部610と、バスバ2の板幅方向における上蓋部610の一側に設けられた第1スライドガイド部611と、バスバ2の板幅方向における上蓋部610の他側に設けられた側壁部612と、を一体に有している。以下、説明を容易とするため、図5(a),(b)における上側を上、下側を下として説明する。なお、これら上下の方向は、電流センサ1の使用状態における上下を表すものではなく、電流センサ1の設置姿勢は適宜設定可能である。
【0024】
上蓋部610の下面(第2ハウジング62側の面)には、第1スライドガイド部611と側壁部612との対向方向に対して垂直方向に延びるように、3本のバスバ収容溝610aが等間隔に形成されている。各バスバ収容溝610aの間には、下方に突出する2つの突出部610bが形成されている。この突出部610bは、バスバ収容溝610a内に突出しバスバ2の切欠き21に嵌合する凸部610cを有している。凸部610cをバスバ2の切欠き21に嵌合させることで、バスバ2の第1ハウジング61に対する位置決めがなされる。
【0025】
また、2つの突出部610bには、下方に突出する位置決め突起610dがそれぞれ形成されている。両位置決め突起610dを、スペーサ5と回路基板4の位置決め用孔41,51に挿入することで、第1ハウジング61に対するスペーサ5及び回路基板4の位置決めがなされる。
【0026】
上蓋部610の上面には、上方に突出するように一対のリブ状の突起610eが形成されている。両突起610eは、バスバ2の板幅方向に延びるように直線状に形成されており、上蓋部610の長さ方向(バスバ2の長さ方向)における端部の近傍に、長さ方向に対向するように形成されている。両突起610eには、両突起610eを長さ方向に貫通する係止孔610fが2つずつ形成されている。
【0027】
図7に示すように、第1ハウジング61には、シールド板7が固定される。シールド板7は、磁性材料からなり、外部からの磁界が磁気検出素子3の検出結果に影響を及ぼさないように、外部からの磁界を遮蔽するためのものである。シールド板7には、側方に突出する係止片7aが形成されており、この係止片7aを係止孔610fに係止させることで、ハウジング6の上部に固定される。
【0028】
同様に、第1スライドガイド部611と側壁部612には、下方に突出するリブ状の突起611a,612aがそれぞれ形成されており、これら突起611a,612aに形成された係止孔611b,612b(図5(b)参照)に係止片7aを係止させることで、他のシールド板7がハウジング6の下部に固定される。つまり、電流センサ1は、バスバ2及び磁気検出素子3が、一対のシールド板7で挟み込まれた構造となっている。
【0029】
電流センサ1では、バスバ2や回路基板4を固定するハウジング6にシールド板7を取り付けることで、バスバ2及び磁気検出素子3に対するシールド板7の位置決めがなされ、各部材の相対的な位置関係が固定されることになる。本実施の形態においては、突起610e,611a,612a及び係止孔610f,611b,612bが、ハウジング6にシールド板7を保持するシールド板保持部としての役割を果たしている。
【0030】
図5に戻り、上蓋部610及び第1スライドガイド部611には、第2ハウジング62の熱かしめ用突起62aを通すための長孔61aが形成されている。本実施の形態では、組立時に、第1ハウジング61に対して、バスバ2の板幅方向と垂直な方向に第2ハウジング62がスライドする。そのため、熱かしめ用突起62aがスライド移動できるように、長孔61aは、バスバ2の長さ方向に延びる長円形状(角丸長方形状)に形成されている。本実施の形態では、上蓋部610に4つ、第1スライドガイド部611に2つの、合計6つの長孔61aを形成した。長孔61aは、上蓋部610及び第1スライドガイド部611を板厚方向に貫通するように形成されている。
【0031】
スライドガイド部611と側壁部612とは、3本のバスバ2、スペーサ5、及び回路基板4を、バスバ2の板幅方向において挟み込むように設けられている。側壁部612は、下方に開口する凹状の切欠き612cを有しており、この切欠き612cに、第2ハウジング62の下蓋部620(後述する)の端部が挿入されるようになっている。また、電流センサ1では、第1及び第2ハウジング61,62を互いに組み合わせた際には、側壁部612における切欠き612cの底面(上面)と第2ハウジング62(下蓋部620の端部)との間に隙間が形成されるようになっており、この隙間から、回路基板4の一部(コネクタ43を搭載する部分)が側方へと延出される。第1スライドガイド部611の詳細については後述する。
【0032】
図6に示すように、第2ハウジング62は、回路基板4の下面に当接する板状の下蓋部620と、バスバ2の板幅方向における下蓋部620の一側に設けられた第2スライドガイド部621と、を一体に有している。バスバ2の長さ方向における下蓋部620の両端部は他部に比較して厚く形成された縁部620aとなっている。第2スライドガイド部621は、下蓋部620から上方に突出するように設けられている。第2スライドガイド部621の詳細については後述する。下蓋部620と第2スライドガイド部621には、上方に突出する円柱状の熱かしめ用突起62aが形成されている。本実施の形態では、下蓋部620に4つ、第2スライドガイド部621に2つの、合計6つの熱かしめ用突起62aを形成した。
【0033】
(スライドガイド部611,621の説明)
スライドガイド部611,621は、バスバ2の板厚方向に互いに当接しつつ、バスバ2の板厚方向に対して傾斜した方向に、第1及び第2ハウジング61,62を相対的にスライド可能とするためのものである。本実施の形態では、スライドガイド部611,621は、第1及び第2ハウジング61,62を、バスバ2の板幅方向に垂直で、かつバスバ2の板厚方向及び長さ方向に対して傾斜した方向に相対的にスライド可能に形成されている。換言すれば、第1及び第2ハウジング61,62は、バスバ2の長さ方向にスライドしつつ、バスバ2の板厚方向にスライドする。
【0034】
本実施の形態では、スライドガイド部611,621は、法線方向が、バスバ2の板幅方向に垂直で、かつバスバ2の板厚方向及び長さ方向に対して傾斜した方向となる傾斜面63a,63bを有している。第1ハウジング61に設けられた第1スライドガイド部611は、下方に開口する凹状の切欠き611cを有し、その切欠き611cの底をなす面(上面)が、傾斜面63aとなっている。第2ハウジング62に設けられた第2スライドガイド部621は、スライド移動を許容できる程度にその幅が切欠き611cの幅よりも小さく形成されており、その上面が傾斜面63bとなっている。傾斜面63a,63bの傾斜角度は同じ角度となっている。傾斜面63a,63bの傾斜角度は特に限定するものではないが、各部材の公差を十分に吸収でき、かつ、バスバ2の長さ方向に沿ったスライド距離が大きくなりすぎないように、適宜決定すればよい。
【0035】
(電流センサ1の組み立ての説明)
電流センサ1を組み立てる際には、第1ハウジング61を上下反転した状態で配置し、第1ハウジング61のバスバ収容溝610aに各バスバ2を配置する。このとき、第1ハウジング61の凸部610cをバスバ2の切欠き21に嵌合させることで、バスバ2の第1ハウジング61に対する位置決めがなされる。その後、スペーサ5と回路基板4とを順次バスバ2上に重ねて配置する。このとき、第1ハウジング61の位置決め突起610dが、スペーサ5と回路基板4の位置決め用孔51,41に挿入され、第1ハウジング61に対するスペーサ5と回路基板4の位置決めがなされる。
【0036】
その後、回路基板4上に、第2ハウジング62を重ねる。このとき、各熱かしめ用突起62aが、対応する長孔42,52,61aに挿入される。また、このとき、第1スライドガイド部611と第2スライドガイド部621の傾斜面63a,63b同士を当接させる。
【0037】
この状態で作業者がバスバ2の板厚方向に押圧力を加えると、傾斜面63a,63b同士が互いに滑り、第2ハウジング62が、第1ハウジング61に対してスライドする。第1及び第2ハウジング61,62を相対的にスライドさせる前の側面図、平面図、及び断面図を図8(a),図9(a),及び図10(a)にそれぞれ示す。また、スライド後の側面図、平面図、及び断面図を図8(b),図9(b),及び図10(b)にそれぞれ示す。
【0038】
図8~10に示すように、第1及び第2ハウジング61,62は、傾斜面63a,63bに沿った方向に互いに滑りつつスライド移動する。つまり、第1及び第2ハウジング61,62は、バスバ2の長さ方向にスライドしつつ板厚方向に(互いに近づく方向に)スライドする。なお、図8(b),図9(b),及び図10(b)では、スライド方向を白抜き矢印にて示している。これにより、バスバ2、スペーサ5、及び回路基板4が、バスバ2の板厚方向にしっかりと押さえつけられる。
【0039】
この状態で、各熱かしめ用突起62aの先端を加熱して溶融させ、熱かしめを行う。これにより、第1及び第2ハウジング61,62が互いに固定され、バスバ2、スペーサ5、回路基板4、第1ハウジング61、及び第2ハウジング61の相対的な位置関係が固定される。その後、ハウジング61にシールド板7を取り付ければ電流センサ1が得られる。
【0040】
なお、本実施の形態では、熱かしめにより第1及び第2ハウジング61,62を互いに固定したが、ボルトとナットとを用いたボルト固定により両者を固定してもよい。また、第1及び第2ハウジング61,62を強固に固定するという観点からは、第1及び第2ハウジング61,62を当接させた位置で固定することが望ましい。つまり、第1及び第2ハウジング61,62は、少なくとも、スライドガイド部611,621において、ボルト固定あるいは熱かしめにより互いに固定されることが望ましい。本実施の形態では、スライドガイド部611,621において、2箇所で熱かしめを行い、第1及び第2ハウジング61,62を互いに固定している。
【0041】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る電流センサ1では、バスバ2の板厚方向において、バスバ2と回路基板4とを挟み込むように設けられた第1及び第2ハウジング61,62を有するハウジング6を備え、第1及び第2ハウジング61,62は、バスバ2の板厚方向に互いに当接しつつ、バスバ2の板厚方向に対して傾斜した方向に相対的にスライド可能なスライドガイド部611,621を有している。
【0042】
これにより、製造上の公差を吸収して、第1及び第2ハウジング61,62によってバスバ2と回路基板4とを押さえ込み、バスバ2と回路基板4(磁気検出素子3)との距離を一定に維持することができる。また、第1及び第2ハウジング61,62が、スライド後にもバスバ2の板厚方向に互いに当接している(つまり押圧しても接触を保持している)ため、従来技術のようなハウジング6の変形を抑制でき、押圧力の偏りによる部材の傾きを抑制し、バスバ2と磁気検出素子3の位置ずれを抑制可能となる。つまり、本実施の形態によれば、第1及び第2ハウジング61,62間に十分な押圧力を付与した場合であっても、ハウジング61,62の変形が生じにくく、バスバ2と磁気検出素子3の位置ずれを抑制可能な電流センサ1を実現できる。その結果、位置ずれによる検出感度の低下等の特性劣化を抑制した電流センサ1が実現できる。
【0043】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0044】
[1]検出対象の電流が流れるバスバ(2)と、前記バスバ(2)を流れる電流により発生する磁界の強度を検出する磁気検出素子(3)が搭載された回路基板(4)と、前記バスバ(2)の板厚方向において、前記バスバ(2)と前記回路基板(4)とを挟み込むように設けられた第1及び第2ハウジング(61,62)を有するハウジング(6)と、を備え、前記第1及び第2ハウジング(61,62)は、前記バスバ(2)の板厚方向に互いに当接しつつ、前記バスバ(2)の板厚方向に対して傾斜した方向に相対的にスライド可能なスライドガイド部(611,621)を有している、電流センサ(1)。
【0045】
[2]前記スライドガイド部(611,621)は、前記第1及び第2ハウジング(61,62)を、前記バスバ(2)の板厚方向に互いに当接しつつ、前記バスバ(2)の板幅方向に垂直で、かつ前記バスバ(2)の板厚方向及び長さ方向に対して傾斜した方向に相対的にスライド可能に形成されている、[1]に記載の電流センサ(1)。
【0046】
[3]前記スライドガイド部(611,621)は、法線方向が、前記バスバ(2)の板幅方向に垂直で、かつ前記バスバ(2)の板厚方向及び長さ方向に対して傾斜した方向となる傾斜面(63a,63b)を有する、[1]または[2]に記載の電流センサ(1)。
【0047】
[4]前記バスバ(2)と前記回路基板(4)との間に設けられ、前記バスバ(2)と前記回路基板(4)とを所定の間隔に維持するためのスペーサ(5)をさらに備えた、[1]乃至[3]の何れか1項に記載の電流センサ(1)。
【0048】
[5]複数の前記バスバ(2)を有し、前記回路基板(4)には、前記複数のバスバ(2)に対応する複数の磁気検出素子(3)が搭載されており、前記ハウジング(6)は、前記複数のバスバ(2)と前記回路基板(4)とを一括して挟み込むように設けられている、[1]乃至[4]の何れか1項に記載の電流センサ(1)。
【0049】
[6]前記バスバ(2)及び前記回路基板(4)を前記板厚方向において一括して挟みこむように設けられた一対のシールド板(7)をさらに備え、前記ハウジング(6)は、前記バスバ(2)の板厚方向における外側の面に、前記シールド板(7)を保持するシールド板保持部を有する、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の電流センサ(1)。
【0050】
[7]前記スライドガイド部(611,621)は、少なくとも、前記スライドガイド部(611,621)において、ボルト固定あるいは熱かしめにより互いに固定されている、[1]乃至[6]の何れか1項に記載の電流センサ(1)。
【0051】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0052】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、スライドガイド部611,621を、傾斜面63a,63b同士の滑りによりスライドさせる方式としたが、第1及び第2ハウジング61,62を互いにスライドさせる構造については、これに限定されない。例えば、一方のハウジングに傾斜面、他方のハウジングに傾斜面にガイドされ移動する突起等を設けてもよい。ただし、この場合、第1及び第2ハウジング61,62が傾いて固定されることを抑制するために、複数の突起を設けることが望ましい。また、例えば、傾斜面63a,63bに変えて階段状の面を形成するようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施の形態では、第1及び第2ハウジング61,62を、バスバ2の長手方向にスライドさせつつ、バスバ2の板厚方向にスライドさせたが、両ハウジング61,62のスライド方向はこれに限定されるものではなく、バスバ2の板厚方向に対して傾斜した方向(ただし、バスバ2の板厚方向に対して直行する方向は除く)であればよい。例えば、第1及び第2ハウジング61,62を、バスバ2の板幅方向にスライドさせつつ、バスバ2の板厚方向にスライドさせるように構成してもよい。
【0054】
さらに、上記実施の形態では、コネクタ43を設ける都合上、ハウジング2の幅方向(バスバ2の板幅方向)における一方の端部のみにスライドガイド部611,621を設ける場合について説明したが、これに限らず、ハウジング2の幅方向における両方の端部にスライドガイド部611,621を設けてもよい。また、ハウジング2に3箇所以上の611,621を設けてもよい。
【0055】
さらにまた、上記実施の形態では、スペーサ5を用いる場合について説明したが、スペーサ5は必須ではなく、省略可能である。例えばバスバ2に貫通孔を形成し、この貫通孔内に磁気検出素子3を配置するような場合には、バスバ2と回路基板4とをスペーサ5を介さずに直接当接させてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…電流センサ
2…バスバ
21…切欠き
22…狭幅部
3…磁気検出素子
4…回路基板
5…スペーサ
6…ハウジング
61…第1ハウジング
611…第1スライドガイド部
62…第2ハウジング
621…第2スライドガイド部
63a,63b…傾斜面
図1
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