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特許7003907半導体ウェーハの端面評価方法、半導体ウェーハ収容容器の評価方法、半導体ウェーハ梱包形態の評価方法および半導体ウェーハ輸送形態の評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】半導体ウェーハの端面評価方法、半導体ウェーハ収容容器の評価方法、半導体ウェーハ梱包形態の評価方法および半導体ウェーハ輸送形態の評価方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20220114BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20220114BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
H01L21/66 J
H01L21/68 N
G01N21/956 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018246861
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020107783
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】松尾 菜未
(72)【発明者】
【氏名】高梨 啓一
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-160687(JP,A)
【文献】国際公開第2008/123459(WO,A1)
【文献】特開2007-205864(JP,A)
【文献】特開2010-91360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
H01L 21/683
G01N 21/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象の半導体ウェーハは、ウェーハ端面に面取り面を含み、
評価対象の半導体ウェーハの少なくとも前記ウェーハ端面に光を照射すること、
前記光が照射されたウェーハ端面を、正反射光を選択的に検出するカメラにより撮影すること、
前記撮影により得られた画像から、ウェーハ厚さ方向の輝度分布曲線を複数作成すること、
前記作成された複数の輝度分布曲線の平均曲線を作成すること、
前記平均曲線上の各輝度値から、補正用輝度値として定めた輝度値を差し引くことにより閾値曲線を作成すること、および
前記画像上で前記閾値曲線上の値以下または該値未満の輝度を示す領域を、異物付着領域と判定すること、
を含む、半導体ウェーハの端面評価方法。
【請求項2】
前記撮影を、評価対象の半導体ウェーハをウェーハ中心を回転中心として回転させながらウェーハ周方向について行い、
前記撮影により得られた画像のウェーハ周方向の歪みを補正した後に、前記輝度分布曲線を作成する、請求項1に記載の半導体ウェーハの端面評価方法。
【請求項3】
前記画像上で異物付着領域と判定された領域の中で、ノイズ閾値として定めた画素数以下または未満の画素数の領域を、異物付着領域から除外するノイズ除去処理を更に行うことを含む、請求項1または2に記載の半導体ウェーハの端面評価方法。
【請求項4】
前記異物付着領域と判定された領域の輝度値、画素数およびサイズからなる群から選ばれる1つ以上を指標として、前記異物付着領域と判定された領域の異物の付着レベルを評価することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体ウェーハの端面評価方法。
【請求項5】
前記異物の付着レベルの評価を、評価対象の半導体ウェーハのウェーハ端面において汚染源部材と接触していた部分について行う、請求項4に記載の半導体ウェーハの端面評価方法。
【請求項6】
前記異物は有機物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体ウェーハの端面評価方法。
【請求項7】
評価対象の容器を半導体ウェーハを収容した状態で加振すること、
前記加振後の半導体ウェーハの端面を、請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体ウェーハの端面評価方法により評価すること、および、
前記評価の結果、前記半導体ウェーハの端面の異物の付着が許容レベルと判定された場合、評価対象の容器と同仕様の容器を、半導体ウェーハを収容して輸送する際に使用する容器として決定すること、
を含む、半導体ウェーハ収容容器の評価方法。
【請求項8】
評価対象の梱包形態で梱包された半導体ウェーハを加振すること、
前記加振後の半導体ウェーハの端面を、請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体ウェーハの端面評価方法により評価すること、および、
前記評価の結果、前記半導体ウェーハの端面の異物の付着が許容レベルと判定された場合、評価対象の梱包形態を、半導体ウェーハを輸送する際の梱包形態として決定すること、
を含む、半導体ウェーハ梱包形態の評価方法。
【請求項9】
半導体ウェーハを評価対象の輸送形態で輸送すること、
前記輸送後の半導体ウェーハを、請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体ウェーハの端面評価方法により評価すること、および、
前記評価の結果、前記半導体ウェーハの端面の異物の付着が許容レベルと判定された場合、評価対象の輸送形態を、製品半導体ウェーハを輸送するための輸送形態として決定すること、
を含む、半導体ウェーハ輸送形態の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの端面評価方法、半導体ウェーハ収容容器の評価方法、半導体ウェーハ梱包形態の評価方法および半導体ウェーハ輸送形態の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体ウェーハをカメラによって撮影し、得られた画像データを用いて外観検査を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-204703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体ウェーハの製造分野では、半導体ウェーハの端面が外観検査の対象となる場合がある。これは、例えば輸送時等に加振されることによって、半導体ウェーハ収容容器のウェーハ保持部材とウェーハ端面との間に摩擦が生じること等に起因して、ウェーハ端面に異物が付着することがあるためである。しかし、特許文献1で提案されている方法は、具体的には、カメラ撮影により得られた画像データを用いて基板上に形成された半導体装置(チップ)を評価するための方法であって、ウェーハ端面を評価するための方法ではない。
【0005】
本発明の一態様は、半導体ウェーハの端面を評価するための新たな評価方法を提供することを目的とし、詳しくは、半導体ウェーハの端面の異物の付着に関する評価が可能な新たな評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
評価対象の半導体ウェーハは、ウェーハ端面に面取り面を含み、
評価対象の半導体ウェーハの少なくとも上記ウェーハ端面に光を照射すること、
上記光が照射されたウェーハ端面を、正反射光を選択的に検出するカメラにより撮影すること、
上記撮影により得られた画像から、ウェーハ厚さ方向の輝度分布曲線を複数作成すること、
上記作成された複数の輝度分布曲線の平均曲線を作成すること、
上記平均曲線上の各輝度値から、補正用輝度値として定めた輝度値を差し引くことにより閾値曲線を作成すること、および
上記画像上で上記閾値曲線上の値以下またはこの値未満の輝度を示す領域を、異物付着領域と判定すること、
を含む、半導体ウェーハの端面評価方法(以下、単に「端面評価方法」とも記載する。)、
に関する。
【0007】
上記端面評価方法では、光が照射されたウェーハ端面を、正反射光を選択的に検出するカメラにより撮影する。ウェーハ端面の異物が付着している領域では、光が照射されると乱反射が生じる。そのため、異物が付着している領域は、正反射光を選択的に検出するカメラで撮影された画像では、暗く(即ち低輝度で)表示される。これに対し、異物付着のない領域は、上記カメラにより撮影された画像では、明るく(即ち高輝度で)表示される。
本発明者らは、上記端面評価方法を完成させるにあたり、ウェーハ端面の異物の付着に関する評価として、正反射光を選択的に検出するカメラにより撮影された画像上の低輝度領域を、異物付着領域と判定することを検討した。しかし検討した結果、撮影された画像には位置により輝度にムラ(濃淡)があり、単純に低輝度領域を異物付着領域と判定してしまうと、異物が付着していない領域を異物付着領域と判定してしまったり、またはその逆に異物が付着している領域を付着がない領域と判定してしまう可能性があることが判明した。この輝度ムラは、ウェーハ端面に通常形成されている面取り面の加工ムラが起因するものと推察されるが、そのような加工ムラを完全になくすことは通常困難と考えられる。
以上に鑑み本発明者らは更に鋭意検討を重ねた結果、上記のように、複数の輝度分布曲線の平均曲線を作成したうえで、この平均曲線から補正用輝度値を差し引いて作成された閾値曲線を異物付着領域の判定に用いる上記端面評価方法を完成させた。このように作成された閾値曲線を用いることによって、撮影された画像における輝度ムラの影響を低減することが可能になる。
【0008】
一態様では、上記撮影を、評価対象の半導体ウェーハをウェーハ中心を回転中心として回転させながらウェーハ周方向について行うことができ、上記撮影により得られた画像のウェーハ周方向の歪みを補正した後に、上記輝度分布曲線を作成することができる。
【0009】
一態様では、上記端面評価方法は、ノイズ除去処理を更に含むことができる。上記ノイズ除去処理は、上記画像上で異物付着領域と判定された領域の中で、ノイズ閾値として定めた画素数以下または未満の画素数の領域を、異物付着領域から除外する処理であることができる。
【0010】
一態様では、上記端面評価方法は、上記異物付着領域と判定された領域の輝度値、画素数およびサイズからなる群から選ばれる1つ以上を指標として、上記異物付着領域と判定された領域の異物の付着レベルを評価することを含むことができる。
【0011】
一態様では、上記異物の付着レベルの評価を、評価対象の半導体ウェーハのウェーハ端面において汚染源部材と接触していた部分について行うことができる。
【0012】
一態様では、上記異物は、有機物であることができる。
【0013】
本発明の一態様は、
評価対象の容器を半導体ウェーハを収容した状態で加振すること、
上記加振後の半導体ウェーハの端面を、上記端面評価方法により評価すること、および、
上記評価の結果、上記半導体ウェーハの端面の異物の付着が許容レベルと判定された場合、評価対象の容器と同仕様の容器を、半導体ウェーハを収容して輸送する際に使用する容器として決定すること、
を含む、半導体ウェーハ収容容器の評価方法(以下、単に「容器評価方法」とも記載する。)、
に関する。
ここで半導体ウェーハ収容容器が同仕様であるとは、同じ製造メーカーの同じ型番の収容容器であることをいうものとする。
【0014】
本発明の一態様は、
評価対象の梱包形態で梱包された半導体ウェーハを加振すること、
上記加振後の半導体ウェーハの端面を、上記端面評価方法により評価すること、および、
上記評価の結果、上記半導体ウェーハの端面の異物の付着が許容レベルと判定された場合、評価対象の梱包形態を、半導体ウェーハを輸送する際の梱包形態として決定すること、
を含む、半導体ウェーハ梱包形態の評価方法(以下、単に「梱包形態評価方法」とも記載する。)、
に関する。
【0015】
本発明の一態様は、
半導体ウェーハを評価対象の輸送形態で輸送すること、
上記輸送後の半導体ウェーハを、上記半導体ウェーハの端面評価方法により評価すること、および、
上記評価の結果、上記半導体ウェーハの端面の異物の付着が許容レベルと判定された場合、評価対象の輸送形態を、製品半導体ウェーハを輸送するための輸送形態として決定すること、
を含む、半導体ウェーハ輸送形態の評価方法(以下、単に「輸送形態評価方法」とも記載する。)、
に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、半導体ウェーハの端面の異物の付着に関する評価が可能な新たな評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ウェーハ端面を撮影して得られた画像の一例(歪み補正済)である。
図2】ウェーハ端面を撮影して得られた画像の一例(歪み補正前)である。
図3図1に示す画像について作成された平均曲線と閾値曲線の一例を示す。
図4図3に示されている閾値曲線と、図1のI-I’位置について作成された輝度分布曲線とを示す。
図5】異物付着領域の輝度に関し、画像判定ソフトにより求められた値と目視判定での判定結果との相関を示すグラフである。
図6】異物付着領域の面積(画素数)に関し、画像判定ソフトにより求められた値と目視判定での判定結果との相関を示すグラフである。
図7】異物付着領域の長さに関し、画像判定ソフトにより求められた値と目視判定での判定結果との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[半導体ウェーハの端面評価方法]
本発明の一態様は、評価対象の半導体ウェーハはウェーハ端面に面取り面を含み、評価対象の半導体ウェーハの少なくとも上記ウェーハ端面に光を照射すること、上記光が照射されたウェーハ端面を正反射光を選択的に検出するカメラにより撮影すること、上記撮影により得られた画像からウェーハ厚さ方向の輝度分布曲線を複数作成すること、上記作成された複数の輝度分布曲線の平均曲線を作成すること、上記平均曲線上の各輝度値から補正用輝度値として定めた輝度値を差し引くことにより閾値曲線を作成すること、および上記画像上で上記閾値曲線上の値以下またはこの値未満の輝度を示す領域を異物付着領域と判定することを含む半導体ウェーハの端面評価方法に関する。
以下、上記端面評価方法について、更に詳細に説明する。
【0019】
<評価対象の半導体ウェーハ>
上記端面評価方法の評価対象の半導体ウェーハは、ウェーハ端面に面取り面を含む半導体ウェーハである。面取り面は、半導体ウェーハの外周縁部に面取り加工および面取り鏡面研磨加工を施すことによって形成することができる。面取り加工および面取り鏡面研磨加工は、公知の方法によって行うことができる。評価対象の半導体ウェーハは、一般に半導体基板として使用される各種半導体ウェーハであることができる。例えば、半導体ウェーハの具体例としては、各種シリコンウェーハを挙げることができる。シリコンウェーハは、例えば、シリコン単結晶インゴットから切り出された後に面取り加工、面取り鏡面研磨加工等の各種加工を経たシリコン単結晶ウェーハであることができる。かかるシリコン単結晶ウェーハの具体例としては、例えば、研磨が施されて表面に研磨面を有するポリッシュドウェーハを挙げることができる。また、シリコンウェーハは、シリコン単結晶ウェーハ上にエピタキシャル層を有するエピタキシャルウェーハ、シリコン単結晶ウェーハにアニール処理により改質層を形成したアニールウェーハ等の各種シリコンウェーハであることもできる。評価対象の半導体ウェーハは、直径が例えば200mm、300mmまたは450mmであることができ、厚さが例えば700~1000μmであることができる。
【0020】
<ウェーハ端面の撮影>
上記端面評価方法では、評価対象の半導体ウェーハのウェーハ端面を撮影して得られた画像を使用する。この画像は、評価対象の半導体ウェーハの少なくともウェーハ端面に光を照射し、光が照射されたウェーハ端面を正反射光を選択的に検出するカメラにより撮影することによって取得できる。ウェーハ端面の少なくとも撮影対象部分に光を照射すればよい。ここで照射される光の種類は限定されず、任意の波長の光であることができ、単色光でもよく、所定の幅をもった波長域の光を含むものでもよい。カメラとしては、市販のカメラまたは公知の構成のカメラを使用することができる。一例としては、CCD(Charge Coupled Device)カメラを挙げることができるが、これに限定されない。カメラと光源とウェーハ端面との相対的な位置関係を調整することにより、ウェーハ端面からの反射光のうちの正反射光を選択的に検出させることができる。撮影に使用するカメラは、1台でもよく、2台以上であってもよい。例えば、ウェーハ端面の上部、中央部および下部を撮影するためにそれぞれカメラを設置して合計3台のカメラで撮影を行い、各カメラにより撮影された画像をウェーハ厚さ方向の輝度分布曲線を作成するために使用することができる。また、撮影は、評価対象の半導体ウェーハを、ウェーハ中心を回転中心として回転させながら、ウェーハ周方向について連続的または断続的に行うことができる。ウェーハ周方向で連続的に撮影を行うために、ラインスキャンカメラを使用することもできる。以上の撮影は、例えば、市販の半導体ウェーハの端面検査装置を使用して実施することができる。
【0021】
<閾値曲線の作成>
上記の撮影により、評価対象の半導体ウェーハのウェーハ端面のウェーハ厚さ方向の一部または全部の画像を、ウェーハ周方向の一部または全周について取得することができる。ウェーハ端面の撮影対象部分に異物が付着している領域が含まれる場合、その領域では、光が照射されると乱反射が生じる。そのため、異物が付着している領域は、上記画像において暗く(即ち低輝度で)表示される。これに対し、異物付着のない領域は、上記画像において明るく(即ち高輝度で)表示される。そこで、単純に上記画像上の低輝度領域を、異物付着領域と判定することが考えられる。しかし、本発明者らの検討の結果、上記のように撮影された画像には位置により輝度にムラ(濃淡)があることが判明した。そのような輝度のムラを含む画像の一例を、図1に示す。図1は、図2に示す画像のウェーハ周方向の歪みを補正した画像である。かかる歪み補正について、詳細は後述する。図1および図2に示されている画像では、異物付着領域が暗く表示されているが、異物付着領域以外にも、暗く表示されている低輝度帯域(画像上で上方から下方にわたる黒色帯域)が存在しているため、ウェーハ厚さ方向に輝度ムラが生じている。また、図1および図2では明確に現れていないものの、ウェーハ周方向にも輝度ムラが生じている。このような輝度ムラは、面取り加工の加工ムラに起因するものと推察されるが、かかる加工ムラを完全になくすことは通常困難と考えられる。そこで上記端面評価方法では、輝度ムラの影響を低減するために、下記(1)および(2)を実施する。
(1)上記撮影により得られた画像から、ウェーハ厚さ方向の輝度分布曲線を複数作成する。そして、これら複数の輝度分布曲線の平均曲線を作成する。
(2)作成された平均曲線上の各輝度値から、補正用輝度値として定めた輝度値を差し引いた曲線を、閾値曲線として使用する。
上記のように、一つの輝度分布曲線ではなく複数の輝度分布曲線の平均曲線を閾値曲線作成のために使用することによって、ウェーハ端面の各箇所での輝度ムラの影響が低減された閾値曲線を得ることができる。また、単純に輝度値の閾値として1つの値を設定し、この閾値以下またはこの閾値未満の輝度を示す領域を異物付着領域と判定すると、判定結果がウェーハ厚さ方向の輝度ムラの影響を受けてしまう。これに対し、上記のように作成された閾値曲線を使用して異物付着領域を判定することにより、判定結果がウェーハ厚さ方向の輝度ムラの影響を受けることを低減することができる。上記の平均曲線は、例えば、複数の輝度分布曲線上の各輝度値の算術平均を算出して作成することができる。平均曲線を得るために作成する輝度分布曲線は、2以上の輝度分布曲線であり、100以上の輝度分布曲線、1000以上の輝度分布曲線であることもでき、一例として1000~30000程度の輝度分布曲線であることもできる。ただし、平均曲線作成のために用いる輝度分布曲線の数は、撮影された画像の解像度等に応じて任意に決定することができ、上記で例示した範囲に限定されるものではない。また、補正用輝度値は、低輝度領域として検出すべき異物の種類等に応じて任意の値に設定可能である。上記の平均曲線および閾値曲線は、例えば、公知の手法に基づく解析により作成することができる。図3に、図1に示す画像について作成された平均曲線と閾値曲線の一例を示す。
【0022】
<歪み補正>
図2は、評価対象の半導体ウェーハをウェーハ中心を回転中心として回転させながら、CCDカメラ(ラインスキャンカメラ)を備えた端面検査装置によって、ウェーハ端面の撮影をウェーハ周方向で連続的に行い得られた画像である。図2から明らかなように、撮影された画像は、ウェーハ周方向に歪んでいる。これは、固定されているCCDカメラに対してウェーハを常に水平に回転させることが、一般的なウェーハ回転機構では通常困難なことに依る。撮影された画像にこのような歪みが生じている場合には、ウェーハ周方向の歪みを補正した歪み補正済画像を用いて、上記の輝度分布曲線を作成し、作成された輝度分布曲線を用いて上記の平均曲線および閾値曲線を作成することが好ましい。歪み補正は、撮影された画像のウェーハ周方向の各位置のウェーハ厚さ方向の中心位置を合わせることによって行うことができる。そのような歪み補正は、例えば、公知の手法に基づく画像処理によって行うことができる。
【0023】
<異物付着位置の判定>
図4には、図3に示されている閾値曲線と、図1のI-I’位置について作成された輝度分布曲線が示されている。図4中、輝度分布曲線には、閾値曲線上の輝度の値以下または閾値曲線上の輝度の値未満の低輝度領域が含まれている。このような低輝度領域は、異物の付着による乱反射によって輝度が低下した領域ということができるため、かかる低輝度領域を異物付着領域と判定することができる。このように、上記端面評価方法では、撮影された画像または歪み補正済画像において、閾値曲線上の輝度の値以下または閾値曲線上の輝度の値未満の輝度を示す領域を、異物付着領域と判定することができる。また、一態様では、このように異物付着領域と判定された領域の中で、ノイズ閾値として定めた画素数以下または未満の領域を、異物付着領域から除外する(即ち異物付着領域とは見なさない)ノイズ除去処理を更に行うことができる。これは、小画素数の低輝度領域はノイズ成分である可能性があるためである。ノイズ閾値として定める画素数は、撮影された画像の解像度等を考慮し、求められる判定精度に応じて任意に設定することができる。異物の付着量が多いほど、異物付着領域の輝度は低下する傾向がある。また、異物付着領域と判定された領域の画素数は面積に対応するため、異物付着領域の画素数が多いほど、異物が広範囲に付着していることを意味する。したがって、異物付着領域と判定された領域の輝度値および画素数は、異物付着レベルの評価の指標とすることができる。また、異物付着領域のサイズ(例えば長さまたは幅)も、異物付着レベルの評価の指標とすることができる。上記の異物付着レベルの判定は、評価対象の半導体ウェーハのウェーハ端面において、少なくとも汚染源部材と接触していた部分について行うことができ、かかる部分の周辺部分についても行うことができ、またはウェーハ端面全体で行うこともできる。例えば、汚染源部材と接触していた部分またはかかる部分とその周辺部分について、選択的に上記の異物付着レベルの判定を行うことができる。また、一態様では、異物付着領域と判定された領域の数を、ウェーハ端面の異物付着レベルの評価の指標とすることもできる。
【0024】
半導体ウェーハは、一般に、FOSB(Front Opening Shipping Box)等の収容容器に収容されて製造工場内で輸送(搬送とも呼ばれる。)されたり、収容容器に収容されて製造工場から出荷されて輸送される。この際、半導体ウェーハに意図せず振動が加えられる(加振される)ことがある。そのような加振によりウェーハ端面と収容容器の一部(例えばウェーハ保持部材)とが摩擦することによって、収容容器の構成成分がウェーハ端面に付着することがある。付着の生じやすさは、収容容器のウェーハとの接触部の形状、ウェーハとの接触部を構成している成分の種類等に依って異なる。そこで、ある仕様の収容容器が、実際に製造工場内での輸送や製造工場から出荷して輸送する際に使用する収容容器として適しているか否か判定する際、この仕様の収容容器に収容されていた半導体ウェーハのウェーハ端面の異物の付着のレベルを判定の指標とすることができる。そのような判定の指標を得るための方法として、上記端面評価方法を用いることができる。半導体ウェーハの収容容器としては、樹脂製容器が広く用いられているため、収容容器に由来する付着物は、通常、有機物であることが多い。
【0025】
以上説明した端面評価方法を実施するためのプログラムを実装した画像判定ソフトを作成することもできる。以下に、画像判定ソフトの具体的態様の一例について説明する。ただし本発明は、下記の一例に限定されるものではない。以下に記載の各種プロセスの前および/又は後に他のプロセスを更に任意に実施することもできる。
【0026】
まず、画像判定ソフトにおいて、評価対象の半導体ウェーハについて撮影された画像が保存されているフォルダを選択する。
【0027】
その後、画像判定ソフトにおいて、評価対象の半導体ウェーハが収容されていた収容容器の種類(仕様)を選択する。収容容器内に配置されている半導体ウェーハ保持部材の位置、大きさ、数等は、収容容器の仕様によって異なり得る。そこで、画像判定ソフトには、収容容器の種類毎に、異物の付着レベルの評価を行う位置情報を設定しておく。これにより、異物の付着レベルの評価を、評価対象の半導体ウェーハのウェーハ端面の汚染源部材と接触していた部分について選択的に行うことができる。
【0028】
画像判定ソフトにより、選択されたフォルダ内の画像の中から、異物の付着レベルの評価を行う位置(解析対象位置)の画像を選択し、上記の輝度分布曲線の作成、平均曲線の作成および閾値曲線の作成を行う。解析対象位置は、1箇所であることもでき、2箇所以上であることもできる。輝度分布曲線は、好ましくは上記の歪み補正を行った歪み補正済画像について作成する。
【0029】
更に、画像判定ソフトにより、異物の付着レベルの評価を行う位置の画像上で閾値曲線上の輝度値以下または未満の領域の中からノイズ閾値として定めた画素数以下または未満の領域を除外し、ここで除外されなかった領域を、「異物付着領域」と判定して色分け表示する。こうして色分け表示された異物付着領域の輝度値、画素数およびサイズ(例えば長さまたは幅)からなる群から選ばれる1つ以上を指標として、評価対象の半導体ウェーハの異物の付着レベルを評価することができる。
【0030】
[半導体ウェーハ収容容器の評価方法]
本発明の一態様は、評価対象の容器を半導体ウェーハを収容した状態で加振すること、上記加振後の半導体ウェーハの端面を上記端面評価方法により評価すること、および、上記評価の結果、上記半導体ウェーハの端面の異物の付着が許容レベルと判定された場合、評価対象の容器と同仕様の容器を、半導体ウェーハを収容して輸送する際に使用する容器として決定することを含む半導体ウェーハ収容容器の評価方法に関する。
【0031】
上記の容器評価方法によれば、加振によりウェーハ端面に収容容器由来の異物付着が発生しやすい収容容器は実使用に適さない容器と判定することができ、異物付着が発生しにくい収容容器を実際に半導体ウェーハを輸送する際に使用する収容容器として決定することができる。上記加振は、市販の振動試験機の使用等の公知の方法により行うことができ、加える振動の大きさや振動を加える時間は、任意に設定することができる。この点は、下記の梱包形態評価方法についても同様である。また、上記の許容レベルは、製品ウェーハに許容される異物付着の程度に応じて任意に設定することができる。この点は、下記の梱包形態評価方法および輸送形態評価方法についても同様である。
【0032】
[半導体ウェーハの梱包形態の評価方法]
本発明の一態様は、評価対象の梱包形態で梱包された半導体ウェーハを加振すること、上記加振後の半導体ウェーハの端面を上記端面評価方法により評価すること、および、上記評価の結果、上記半導体ウェーハの端面の異物の付着が許容レベルと判定された場合、評価対象の梱包形態を半導体ウェーハを輸送する際の梱包形態として決定することを含む半導体ウェーハ梱包形態の評価方法に関する。
【0033】
上記の梱包形態とは、輸送時に使用される梱包材の種類、緩衝材の種類等を含む。先に記載したように半導体ウェーハは輸送時に意図せず加振されることがあり得るが、そのような加振によるウェーハ端面の異物付着の生じやすさは、収容容器に収容された半導体ウェーハを梱包するためにどのような梱包材を使用するか、どのような緩衝材を使用するか等の梱包形態に依っても異なる。そこで、ある梱包形態が実際に製品ウェーハを出荷して輸送する際等の梱包形態として適しているか否か判定する際、この梱包形態で梱包されて加振された半導体ウェーハのウェーハ端面の異物の付着のレベルを、判定の指標とすることができる。そのような判定の指標を得るための方法として、上記端面評価方法を用いることができる。
【0034】
[半導体ウェーハの輸送形態の評価方法]
本発明の一態様は、半導体ウェーハを評価対象の輸送形態で輸送すること、上記輸送後の半導体ウェーハを上記端面評価方法により評価すること、および、上記評価の結果、上記半導体ウェーハの端面への異物の付着が許容レベルと判定された場合、評価対象の輸送形態を製品半導体ウェーハを輸送するための輸送形態として決定することを含む半導体ウェーハ輸送形態の評価方法に関する。
【0035】
上記の輸送形態とは、輸送時に使用する輸送手段の種類(航空機、船舶、トラック等)、目的地まで輸送する際に使用する輸送ルート等を含む。半導体ウェーハが収容容器に収容されて輸送される際に半導体ウェーハに加わる振動の大きさや振動が加わる時間は、輸送形態に依って異なる。そこで、ある輸送形態が実際に製品ウェーハを輸送する際の輸送形態として適しているか否か判定する際、この輸送形態で輸送された半導体ウェーハのウェーハ端面の異物の付着のレベルを、判定の指標とすることができる。そのような判定の指標を得るための方法として、上記端面評価方法を用いることができる。
【実施例
【0036】
以下に、本発明を実施例に基づき更に説明する。ただし、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0037】
約100枚の半導体ウェーハ(直径300mm、厚さ775μm)をそれぞれ樹脂製のFOSBに収容した状態で振動試験機(IMV社製VS-300-2)に配置して加振し、ウェーハ端面に強制的に樹脂付着を発生させた。
【0038】
NED社製ウェーハ端面検査機(SEMD-300)を使用し、各半導体ウェーハのウェーハ端面の周方向の全周にわたり72°毎に合計5つの撮影位置で撮影を行った。これら5つの撮影位置での撮影により、各半導体ウェーハのウェーハ端面の周方向の全周360°について画像を取得した(周方向の全周の画素数:30000画素)。ここで使用されたウェーハ端面検査機は、ウェーハ端面に光を照射するための光源および撮影対象のウェーハをウェーハ中心を回転中心として回転させる回転機構を有し、固定された3台のラインスキャンカメラ(CCDカメラ)により、各撮影位置において、ウェーハ端面の上部、中央部および下部をそれぞれ撮影する。各カメラは、ウェーハ端面からの正反射光を選択的に検出するように位置決めされて固定されている。3台のカメラで撮影された画像(各画像のウェーハ厚さ方向の画素数:300画素)を結合すると、ウェーハ端面のウェーハ厚さ方向全域の画像(300画素×3)が得られる。こうして得られた画像データを、各ウェーハ毎に所定のフォルダ名を付したフォルダに保存する。
【0039】
画像判定を行うためのソフトとして、先に具体的態様の一例として説明したプログラムを実装させた画像判定ソフトを準備した。
【0040】
上記の画像判定ソフトにより、以下のプロセスを実行した。
(1)解析対象のフォルダを選択する。
(2)解析対象の半導体ウェーハが収容されていたFOSBの種類を選択する。ここで選択されるFOSB情報には、ウェーハ端面とFOSBのウェーハ保持部材との接触位置情報が含まれる。画像判定ソフトは、ウェーハ端面の上記ウェーハ保持部材との接触位置(合計4箇所)を、解析対象位置として特定する。
(3)上記(2)で選択された種類のFOSBに設定されている接触位置情報にしたがい、上記(1)で選択されたフォルダ内の解析対象位置の画像データを選択する。
(4)上記(3)で選択された各解析対象位置の画像データについて、歪み補正を行い、歪み補正済画像について、ウェーハ周方向に連続する3000画素の1画素毎にウェーハ厚さ方向の輝度分布曲線を作成する。したがって、1つの解析対象位置について3000の輝度分布曲線が作成される。こうして合計4箇所の解析対象位置について作成された合計12000の輝度分布曲線の平均曲線を作成する。更に、この平均曲線から閾値曲線を作成する。閾値曲線は、平均曲線上の各輝度値から、予め設定していた補正用輝度値を差し引いて作成される。
(5)解析対象位置の画像データについて、閾値曲線上の輝度値以下の輝度の領域を特定し、特定された領域の中から、予めノイズ閾値として定めていた画素数以下の領域を除外し、除外されなかった領域を異物付着領域と判定して画像上で色分け表示する。
(6)上記(5)により色分け表示された各領域について、画像判定ソフトにより、輝度値、画素数(即ち面積)および長さを求め、これらデータを解析対象フォルダ内に保存する。長さは、異物付着領域と判定された領域の輪郭上で最も離れている2点間の直線距離として求める。
【0041】
上記の画像判定ソフトによる画像判定を行った画像を目視し、解析対象位置のウェーハ端面に付着している各異物について、輝度、面積および長さの程度を、1~4の4段階で判定した。輝度について、判定結果1は輝度が最も低いレベルであることを意味し、判定の数字が大きくなるほど輝度は高く、判定結果4は輝度が最も高いレベルであることを意味する。面積について、判定結果1は面積が最も小さいレベルであることを意味し、判定の数字が大きくなるほど面積は大きく、判定結果4は面積が最も大きいレベルであることを意味する。長さについて、判定結果1は長さが最も短いレベルであることを意味し、判定の数字が大きくなるほど長さは長く、判定結果4は長さが最も長いレベルであることを意味する。
【0042】
図5図7は、画像判定ソフトにより異物付着領域と判定された領域について、輝度、画素数(面積)または長さに関し、画像判定ソフトにより求められた値と目視判定での判定結果との相関を示すグラフである。図5図7中、縦軸の単位は、任意単位(a.u.)である。これらグラフから、画像判定の判定結果と目視判定の判定結果とは概ね相関していることが確認できる。なお各グラフにおいて、横軸の目視判定の判定結果0にも縦軸に数値がプロットされている。これは、目視では確認できない異物が、画像判定により確認可能であったことを示している。画像判定によれば、輝度、画素数、サイズ(例えば長さ)等の数値に基づく客観評価も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、半導体ウェーハの製造分野における各種評価のために有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7