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特許7004048熱収縮性フィルム、包装資材、成形品または容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】熱収縮性フィルム、包装資材、成形品または容器
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20220128BHJP
   B29C 61/02 20060101ALI20220128BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220128BHJP
   B65D 55/08 20060101ALI20220128BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20220128BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20220128BHJP
   B29K 105/02 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B29C61/02
B65D65/40 D
B65D55/08 110
B29K67:00
B29L7:00
B29K105:02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020171437
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2020-10-09
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】牟田 隆敏
【審査官】橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-136723(JP,A)
【文献】特開2004-196918(JP,A)
【文献】特開2006-240717(JP,A)
【文献】特開2004-142126(JP,A)
【文献】特開昭63-146940(JP,A)
【文献】特開2005-335368(JP,A)
【文献】特開2020-122060(JP,A)
【文献】特開2009-279902(JP,A)
【文献】特開平06-339991(JP,A)
【文献】特開2015-141348(JP,A)
【文献】特開平09-300843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
B29C 61/00-61/10
B65D 65/00-65/46
B65D 55/08
B29K 67/00
B29L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂(A)を主成分として含む樹脂組成物(Z)からなる層を少なくとも1層有する熱収縮性フィルムであって、
前記樹脂組成物(Z)が、ジオール残基としてエチレングリコール残基、1,3-プロパンジオール残基を含み、かつ、樹脂組成物(Z)に含まれる全ジオール残基100モル%に対して、エチレングリコール残基を65モル%以下含み、
雰囲気温度23℃における、熱収縮性フィルムの主収縮方向と直交する方向の引張弾性率が1750MPa以上であり、
下記a)およびb)を満たす熱収縮性フィルム。
a)前記ポリエステル系樹脂(A)が共重合ポリエステル系樹脂を含む
b)複屈折ΔNが0.055以上0.100以下
【請求項2】
下記c)~e)を満たす請求項1記載の熱収縮性フィルム。
c)面配向係数ΔPが、0.035以上0.073以下
d)前記樹脂組成物(Z)の示差走査型熱量測定により、10℃/分で昇温した際の結晶融解熱量(ΔHm)が1J/g以上35J/g以下
e)100℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が45%以上
【請求項3】
JIS K7128-3(1998)に準拠した直角法による引き裂き強度において、主収縮方向の引き裂き強度と主収縮方向に対して直交方向の引き裂き強度の差の絶対値が11N以下である請求項1または2記載の熱収縮性フィルム。
【請求項4】
前記樹脂組成物(Z)が、ジカルボン酸残基としてテレフタル酸残基を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項5】
前記樹脂組成物(Z)が、ジオール残基として1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、ネオペンチルグリコール残基、1,4-ブタンジオール残基、ジエチレングリコール残基から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1~のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項6】
前記樹脂組成物(Z)に含まれる全ジオール残基100モル%に対して、1,3-プロパンジオールを1モル%以上45モル%以下含む、請求項1~のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項7】
前記樹脂組成物(Z)が、バイオマス由来の残基を含む請求項1~のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムを用いてなる包装資材。
【請求項9】
請求項に記載の包装資材が装着された成形品または容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用包装材料、飲料用包装材料、医薬・医療用包装材料、化学品用包装材料、化粧品用包装材料、トイレタリー用包装材料、工業用包装材料、農業資材用包装材料等に好適に利用することができる熱収縮性フィルム、包装資材、成形品または容器に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムは、食品、飲料、医薬・医療品、化学品、化粧品、トイレタリー、工業用品に至るまで、様々な用途に使用されている。一方で、近年、プラスチックの廃棄や海洋汚染が世界的な社会問題となっている。そのため、プラスチック容器や、プラスチックフィルムの厚さを薄くする(薄肉化する)ことにより、廃棄されるプラスチック量を削減する動きが強まっている。この薄肉化への取り組みは、例えば、飲料や調味料が充填されたペットボトル等の容器に装着される熱収縮性フィルムにおいても積極的に検討されている。
【0003】
一般に、成形品や容器への熱収縮性フィルムの装着において、熱収縮性フィルムは、フィルムの端部同士を溶剤などでシールすることにより、容器の周外径よりも少し大きい径のチューブ状物に加工される。その後、所定の被覆長さ(高さ)に裁断された後、容器等に被覆され、そのまま加熱されることでフィルムが収縮し容器に装着される。
また、熱収縮性フィルムは、使用後のリサイクルのために装着後の容器から脱着しやすいように、予め、フィルムに断続的な穴加工(ミシン目)が施されることが多い。
【0004】
ここで、熱収縮性フィルムの剛性が低い場合、容器への被覆時に、フィルムが倒れ込んだり、チューブの口が綺麗に開かなかったりし、装着不良が生じやすくなるという課題が生じていた。そのため、熱収縮性フィルムには、剛性の高いポリエステル系熱収縮性フィルムが使用されることが多い。例えば、特許文献1には、表面層に非晶性ポリエステル系樹脂と結晶性ポリエステル系樹脂とからなる樹脂組成物を主成分とする熱収縮性積層フィルムが開示されている。また、特許文献2には、シームレスの熱収縮ポリエステルチューブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-159901号公報
【文献】特開2004-276364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、非晶性ポリエステル系樹脂に結晶性ポリエステル系樹脂を混合することで、収縮開始温度の調整や延伸方向の機械的強度の向上、印刷インキなどの耐溶剤性の向上効果が確認されており、結晶性ポリエステル系樹脂として、ポリブチレンテレフタレートや、ポリトリメチレンテレフタレートが例示されている。
しかしながら、近年の更なる薄肉化要求に対応するための熱収縮性フィルムの剛性付与という技術課題に対し、結晶性ポリエステル系樹脂の種類選択や、熱収縮性フィルムの配向制御という課題を解決するための技術的思想は言及されていない。また、熱収縮性フィルムの配向を制御することによって、ミシン目に沿ったフィルムの裂けやすさ(手切れ性)を付与するという技術的思想についても言及されていない。
【0007】
また、特許文献2では、20℃~70℃における貯蔵弾性率を規定することで、被覆時のチューブの腰の維持と、加熱時の加工性の維持の両立が試みられており、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが例示されているが、薄肉化された熱収縮性フィルムに更なる剛性を付与するために、熱収縮フィルムの配向を制御という技術的思想や、配向制御によりミシン目手切れ性を付与するという技術的思想についても言及されていない。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、薄肉化された熱収縮性フィルムにおいても、優れた剛性と熱収縮特性、ミシン目手切れ性を有する熱収縮性フィルムを提供することにある。また、該熱収縮性フィルムを用いてなる包装資材、包装資材が装着された成形品または容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討した結果、ポリエステル系樹脂の組成、および、熱収縮性フィルムの配向を制御することで、上記従来技術の課題を解決し得る熱収縮性フィルムを得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[10]を、その要旨とする。
[1]ポリエステル系樹脂(A)を主成分として含む樹脂組成物(Z)からなる層を少なくとも1層有する熱収縮性フィルムであって、
下記a)およびb)を満たす熱収縮性フィルム。
a)前記ポリエステル系樹脂(A)が共重合ポリエステル系樹脂を含む
b)複屈折ΔNが0.055以上0.100以下
[2] 下記c)~e)を満たす[1]に記載の熱収縮性フィルム。
c)面配向係数ΔPが、0.035以上0.073以下
d)前記樹脂組成物(Z)の示差走査型熱量測定により、10℃/分で昇温した際の結晶融解熱量(ΔHm)が1J/g以上35J/g以下
e)100℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が45%以上
[3] JIS K7128-3(1998)に準拠した直角法による引き裂き強度において、主収縮方向の引き裂き強度と主収縮方向に対して直交方向の引き裂き強度の差の絶対値が11N以下である[1]または[2]に記載の熱収縮性フィルム。
[4] 前記樹脂組成物(Z)が、ジカルボン酸残基としてテレフタル酸残基を含む[1]~[3]のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
[5] 前記樹脂組成物(Z)が、ジオール残基としてエチレングリコール残基を含む[1]~[4]のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
[6] 前記樹脂組成物(Z)が、ジオール残基として1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、ネオペンチルグリコール残基、1,3-プロパンジオール残基、1,4-ブタンジオール残基、ジエチレングリコール残基から選ばれる少なくとも1種を含む[1]~[5]のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
[7] 前記樹脂組成物(Z)に含まれる全ジオール残基100モル%に対して、1,3-プロパンジオールを1モル%以上45モル%以下含む、[1]~[6]のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
[8] 前記樹脂組成物(Z)が、バイオマス由来の残基を含む[1]~[7]のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の熱収縮性フィルムを用いてなる包装資材。
[10] [9]に記載の包装資材が装着された成形品または容器。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱収縮性フィルムの厚さがさらに薄くなる場合においても、優れた剛性と熱収縮特性とミシン目手切れ性を有する熱収縮性フィルムを得ることができるため、食品用包装材料、飲料用包装材料、医薬・医療用包装材料、化学品用包装材料、化粧品用包装材料、トイレタリー用包装材料、工業用包装材料、農業資材用包装材料等に好適に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例としての本発明の熱収縮性フィルム、包装資材、成形品、容器について説明する。ただし、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
なお、本明細書において、「主成分」とは、構成する成分の合計を100質量%としたとき、もっとも多い質量%を占める成分であることを示し、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
【0014】
また、「X~Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意とともに、「好ましくはXより大きい」および「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
【0015】
なお、本明細書において、「フィルム」とは、厚いシートから薄いフィルムまでを包括した意を有する。
【0016】
本明細書において、「少なくとも1方向」とは、熱収縮性フィルムの製造工程において、押出機からの流れ方向を縦方向(MD)、その直交方向を横方向(TD)としたとき、縦方向と横方向のいずれかまたは両方向を意味し、「主収縮方向」とは、縦方向と横方向のうち、熱収縮率が大きい方向を意味する。
【0017】
また、本明細書における数値範囲の上限値および下限値は、本発明が特定する数値範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含するものとする。
【0018】
本発明は、ポリエステル系樹脂(A)を主成分として含む樹脂組成物(Z)からなる層を少なくとも1層有する熱収縮性フィルムであって、
下記a)およびb)を満たす熱収縮性フィルムである。
a)前記ポリエステル系樹脂(A)が共重合ポリエステル系樹脂を含む
b)複屈折ΔNが0.055以上0.100以下
【0019】
〔ポリエステル系樹脂(A)〕
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)は、主鎖にエステル結合を有する樹脂であれば、特にその種類を限定するものではない。
前記ポリエステル系樹脂(A)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロへキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等のジカルボン酸残基とジオール残基とから誘導されるポリエステル系樹脂、ポリ乳酸、ポリ-ε-カプロラクタム等のカルボン酸残基とアルコール残基とを1分子中に持つモノマーを重合したポリエステル樹脂、およびこれらの共重合体等を挙げることができる。これらのポリエステル系樹脂(A)は、1種を単独で使用してもよく、または2種以上のポリエステル系樹脂(A)を使用していてもよい。
ポリエステル系樹脂(A)が2種類以上で構成される場合、その合計がポリエステル系樹脂(A)の質量となり、前記樹脂組成物(Z)中におけるポリエステル系樹脂(A)の質量比率が算出される。
【0020】
本発明において前記ポリエステル系樹脂(A)としては、ジカルボン酸残基とジオール残基とから誘導されるポリエステル系樹脂であることが好ましい。
【0021】
また、前記ポリエステル系樹脂(A)としては、共重合ポリエステル系樹脂を含むことが必要である。すなわち、上記ポリエステル系樹脂(A)の重合成分であるジカルボン酸残基、およびジオール残基の少なくとも一方が、2種以上の残基からなる混合物である。
なお、前記ポリエステル系樹脂(A)が2種類以上のジカルボン酸残基で構成される場合、全ジカルボン酸残基100モル%に対して、最も多いモル%を占めるジカルボン酸残基を「第1ジカルボン酸残基」とし、以下、モル%の多い順に「第2ジカルボン酸残基」、「第3ジカルボン酸残基」、・・・とする(以下、これらを纏めて、「第2以下ジカルボン酸残基」と称す。)。
また、前記ポリエステル系樹脂(A)が2種類以上のジオール残基で構成される場合も同様に、全ジオール残基100モル%に対して、最も多いモル%を占めるジオール残基を「第1ジオール残基」とし、以下、モル%の多い順に「第2ジオール残基」、「第3ジオール残基」、・・・とする(以下、これらを纏めて、「第2以下ジオール残基」と称す。)。
前記ポリエステル系樹脂(A)において、ジカルボン酸残基とジオール残基の少なくとも一方が2種以上の残基からなることにより、ポリエステル系樹脂(A)の結晶性を低くできるため、熱収縮性フィルムの結晶化の進行を抑制し、充分な熱収縮特性を付与できる。
【0022】
前記ジカルボン酸残基としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フランジカルボン酸、2-クロロテレフタル酸、2,5-ジクロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、4,4-スチルベンジカルボン酸、4,4-ビフェニルジカルボン酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ビス安息香酸、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4-ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-Naスルホイソフタル酸、エチレン-ビス-p-安息香酸等の芳香族ジカルボン酸残基、ダイマー酸、水添ダイマー酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸残基、またはそれらのエステル誘導体から誘導される残基等が挙げられる。これらのジカルボン酸残基は、1種を単独で、または2種以上を含有していてもよい。なかでも、前記ポリエステル系樹脂(A)が、ジカルボン酸残基としてテレフタル酸残基を含むことが好ましい。
【0023】
また、前記ジオール残基としては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-プロパンジオール、スピログリコール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、イソソルビド等が挙げられる。これらのジオール残基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明で用いる好ましいポリエステル系樹脂(A)としては、第1ジカルボン酸残基としてテレフタル酸残基を含み、第1ジオール残基としてエチレングリコール残基を含むポリエチレンテレフタレート系樹脂(以下、「PET系樹脂」と称す。)、第1ジカルボン酸残基としてテレフタル酸残基を含み、第1ジオール残基として1,3-プロパンジオール残基を含むポリトリメチレンテレフタレート系樹脂(以下、「PTT系樹脂」と称す。)が挙げられる。また、本発明で用いるポリエステル系樹脂(A)は、PET系樹脂とPTT系樹脂を含むことが、熱収縮性フィルムの剛性とミシン目手切れ性の点から好ましく、ポリエステル系樹脂(A)がPET系樹脂とPTT系樹脂のみからなることが特に好ましい。
【0025】
[PET系樹脂]
前記PET系樹脂は、第1ジカルボン酸残基としてテレフタル酸残基を含むことが必須であるが、第2以下ジカルボン酸残基が含まれていてもよい。第2以下ジカルボン酸残基としては、イソフタル酸、フランジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の残基を含むことが好ましく、第2以下ジカルボン酸残基としてイソフタル酸残基を含むことがより好ましい。
【0026】
前記PET系樹脂が2種類以上のジカルボン酸残基で構成される場合、前記第2以下ジカルボン酸残基の合計含有量は、全ジカルボン酸残基100モル%に対して、1モル%以上40モル%以下であることが好ましく、5モル%以上35モル%以下であることがより好ましい。前記第2以下ジカルボン酸残基の合計含有率が前記数値以上であれば、得られるPET系樹脂の結晶化度を低く抑えることができ、熱収縮性フィルムの収縮性を向上させることができる傾向がある。また、前記第2以下ジカルボン酸残基の合計含有率が前記数値以下であれば、PET系樹脂の耐熱性を阻害しにくい傾向がある。
【0027】
また、前記PET系樹脂は、第1ジオール残基としてエチレングリコール残基を含むことが必須であるが、第2以下ジオール残基が含まれることが好ましい。
前記第2以下ジオール残基としては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、イソソルビドからなる群から選ばれる少なくとも1種の残基を含むことが好ましく、第2以下ジオール残基として1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、ネオペンチルグリコール残基、1,3-プロパンジオール残基、1,4-ブタンジオール残基、ジエチレングリコール残基から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0028】
前記PET系樹脂が2種類以上のジオール残基で構成される場合、前記第2以下ジオール残基の合計含有率は、全ジオール残基100モル%に対して、1モル%以上45モル%以下であることが好ましく、10モル%以上40モル%以下であることがより好ましい。前記第2以下ジオール残基の合計含有率が前記数値以上であれば、得られるPET系樹脂の結晶化度を低く抑えることができ、熱収縮性フィルムの収縮性や耐破断性を向上させることができる傾向がある。また、前記第2以下ジオール残基の合計含有率が前記数値以下であれば、PET系樹脂の耐熱性や耐薬品性を阻害しにくい傾向がある。
【0029】
前記PET系樹脂のガラス転移温度は、構成される第2以下ジカルボン酸残基や第2以下ジオール残基の組成や比率に応じて決定され得るものであるが、40℃以上85℃以下であることが好ましい。
本発明において、ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、約10mgの樹脂を加熱速度10℃/分で0℃~280℃まで昇温し、280℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で0℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で280℃まで再昇温したときに測定されるサーモグラムプロファイルにおける、再昇温時のベースラインシフト部の中間温度(℃)である。また、後述する実施例の樹脂のガラス転移温度についても同様に測定したときの値である。
【0030】
また、前記PET系樹脂は、ポリエステル系樹脂(A)の合計を100質量%としたとき、50質量%以上含まれることが好ましく、60質量%以上含まれることがより好ましく、70質量%以上含まれることがさらに好ましい。なお、PET系樹脂の含有量の上限は、通常100質量%である。
前記ポリエステル系樹脂(A)中に、前記PET系樹脂が前記数値以上含まれることにより、熱収縮性フィルムとして好適な収縮特性を付与することができる傾向がある。
前記PET系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、または2種以上のPET系樹脂を使用していてもよい。PET系樹脂が2種類以上で構成される場合、その合計がPET系樹脂の質量となり、前記ポリエステル系樹脂(A)中におけるPET系樹脂の質量比率が算出される。
【0031】
前記PET系樹脂の市販品としては、例えば、「PETGcoplyester」(イーストマンケミカル社製)、「Embrace」(イーストマンケミカル社製)、「PETGSKYGREEN」(SKケミカル社製)等が挙げられる。
【0032】
[PTT系樹脂]
前記PTT系樹脂は、第1ジカルボン酸残基としてテレフタル酸残基を含むことが必須であるが、第2以下ジカルボン酸残基が含まれてもよい。前記PTT系樹脂に共重合可能な第2以下ジカルボン酸残基としては、前述のジカルボン酸残基として列挙したものを用いることができる。
【0033】
前記PTT系樹脂に含まれる第2以下ジカルボン酸残基の合計含有量は、前記PTT系樹脂を構成する全ジカルボン酸残基100モル%に対して、40モル%以下であることが好ましく、35モル%以下であることがより好ましい。なお、下限は通常0モル%である。前記第2以下ジカルボン酸残基の合計含有率が前記数値の範囲であれば、PTT系樹脂のガラス転移温度を極端に低下させないため好ましい。また、延伸時に配向結晶化が生じやすくなり、熱収縮性フィルムの剛性向上に寄与するため好ましい。
【0034】
前記PTT系樹脂は、第1ジオール残基として1,3-プロパンジオール残基を含むことが必須であるが、第2以下ジオール残基が含まれてもよい。前記PTT系樹脂に共重合可能な第2以下ジオール残基としては、前述のジオール残基で列挙したものを用いることができる。
【0035】
前記PTT系樹脂に含まれる第2以下ジオール残基の合計含有率は、前記PTT系樹脂を構成する全ジオール残基100モル%に対して、45モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましい。なお、下限は通常0モル%である。前記第2以下ジオール残基の合計含有率が前記数値の範囲であれば、PTT系樹脂のガラス転移温度を極端に低下させないため好ましい。また、延伸時に配向結晶化が生じやすくなり、熱収縮性フィルムの剛性向上に寄与するため好ましい。
【0036】
なかでも、本発明で用いるPTT系樹脂としては、ジカルボン酸残基としてテレフタル酸残基、ジオール残基として1,3-プロパンジオール残基のみからなるPTT系樹脂が好ましい。
【0037】
前記PTT系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、40,000以上400,000以下が好ましく、50,000以上300,000以下がより好ましく、60,000以上200,000以下がさらに好ましい。また、前記PTT系樹脂の数平均分子量(Mn)は、5,000以上200,000以下が好ましく、10,000以上150,000以下がより好ましく、20,000以上100,000以下がさらに好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn値)は、成形加工性の観点から、1.0以上が好ましく、機械的物性の観点から、5.5以下が好ましく、より好ましくは1.3~4.5、さらに好ましくは1.6~4.0である。なお、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定による、ポリスチレン換算分子量から得られる。
【0038】
前記PTT系樹脂の還元粘度は、機械的物性の観点から、0.50dL/g以上であることが好ましく、成形加工性の観点から1.70dL/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.60~1.60dL/gであり、さらに好ましくは0.70~1.50dL/gである。なお、還元粘度は、0.5dL/gのクロロホルム溶液を用いて、温度30℃の条件下、ウベローデ型粘度管を用いて測定することができる。
【0039】
前記PTT系樹脂のガラス転移温度や融点は、構成される第2以下ジカルボン酸残基や第2以下ジオール残基の組成や比率に応じて決定され得るものであるが、前記PTT系樹脂のガラス転移温度は、40℃以上60℃以下であることが好ましい。また、前記PTT系樹脂の融点は、180℃以上260℃以下が好ましく、200℃以上240℃以下であることがより好ましい。
ここで、PTT系樹脂のガラス転移温度は、前述と同様の方法により得ることができる。
本発明における融点は、前述のガラス転移温度と同様の測定を行った際のサーモグラムプロファイルにおける、再昇温時の結晶融解ピーク温度(Tm)(℃)である。また、後述する実施例の樹脂のガラス転移温度や融点についても同様に測定したときの値である。
【0040】
また、前記PTT系樹脂は、ポリエステル系樹脂(A)の合計を100質量%としたとき、55質量%以下含まれることが好ましく、50質量%以下含まれることがより好ましく、45質量%以下含まれることがさらに好ましい。
前記ポリエステル系樹脂(A)中に、前記PTT系樹脂が前記数値以下含まれることにより、熱収縮性フィルムとして好適な手切れ性を付与することができる傾向がある。
前記PTT系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、または2種以上のPTT系樹脂を使用していてもよい。
また、PTT系樹脂が2種類以上で構成される場合、その合計がPTT系樹脂の質量となり、前記ポリエステル系樹脂(A)中におけるPTT系樹脂の質量比率が算出される。
【0041】
前記PTT系樹脂の市販品としては、例えば、「Sorona」(デュポンスペシャリティプロダクツ社製)等が挙げられる。
【0042】
また、前記ポリエステル系樹脂(A)を構成するジカルボン酸残基、およびジオール残基の少なくとも一方がバイオマス由来の残基を含むことが好ましい。特に、ジカルボン酸残基であるテレフタル酸残基、およびジオール残基である1,3-プロパンジオール残基の少なくとも一方がバイオマス由来の残基であることが好ましい。前記ポリエステル系樹脂(A)がバイオマス由来の残基を含むことにより、熱収縮性フィルムの薄肉化とともに、石油由来の資源利用を削減できる傾向がある。
【0043】
本発明で用いる樹脂組成物(Z)には、前記ポリエステル系樹脂(A)が主成分として含まれれば、例示した様々なポリエステル系樹脂(A)が使用でき、それらの好ましい含有量を示したが、ポリエステル系樹脂(A)を2種以上組み合わせて使用する場合、成形加工時の溶融状態においてエステル交換反応が生じるため、それぞれの樹脂の含有比率の同定や、混合物か共重合体かの判別が困難となる場合がある。
そのため、前記樹脂組成物(Z)において、前記樹脂組成物(Z)に含まれる残基の種類、および、残基の含有量により、熱収縮性フィルムとしての特性を精査することができる。
【0044】
本発明において、記樹脂組成物(Z)が、ジカルボン酸残基としてテレフタル酸残基を含むことが好ましい。前記樹脂組成物(Z)に含まれる全ジカルボン酸残基100モル%に対して、テレフタル酸残基が75モル%以上含まれることが好ましく、80モル%以上含まれることがより好ましく、85モル%以上含まれることがさらに好ましい。なお、上限は通常100モル%である。テレフタル酸残基が前記数値以上含まれることにより、熱収縮性フィルムに必要な耐熱性と剛性を維持することができる傾向がある。
【0045】
本発明において、前記樹脂組成物(Z)が、ジオール残基としてエチレングリコール残基を含むことが好ましい。前記樹脂組成物(Z)に含まれる全ジオール残基100モル%に対して、エチレングリコール残基が25モル%以上75モル%以下含まれることが好ましく、30モル%以上70モル%以下含まれることがより好ましく、35モル%以上65モル%以下含まれることがさらに好ましい。含まれるエチレングリコール残基が前記数値範囲内であることにより、熱収縮性フィルムに必要な耐熱性と耐薬品性を維持することができる傾向がある。
【0046】
本発明において、前記樹脂組成物(Z)が、ジオール残基として1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、ネオペンチルグリコール残基、1,3-プロパンジオール残基、1,4-ブタンジオール残基、ジエチレングリコール残基から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。前記樹脂組成物(Z)に含まれる全ジオール残基100モル%に対して、これらのジオール残基が10モル%以上70モル%以下含まれることが好ましく、15モル%以上68モル%以下含まれることがより好ましく、20モル%以上65モル%以下含まれることがさらに好ましい。これらのグリコール残基が前記数値範囲内であることにより、1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、ネオペンチルグリコール残基、1,3-プロパンジオール残基、1,4-ブタンジオール残基、ジエチレングリコール残基から選ばれる少なくとも1種が前記数値範囲内であることにより、熱収縮性フィルムに必要な耐熱性と耐薬品性を維持することができる傾向がある。
【0047】
本発明において、前記樹脂組成物(Z)に含まれる全ジオール残基100モル%に対して、1,3-プロパンジオールが1モル%以上45モル%以下含むことが好ましく、5モル%以上40モル%以下含まれることがより好ましく、10モル%以上35モル%以下含まれることが特に好ましい。1,3-プロパンジオール残基が前記数値範囲内であることにより、熱収縮性フィルムに剛性とミシン目手切れ性を向上できる傾向がある。
【0048】
前記樹脂組成物(Z)に1,4-シクロヘキサンジメタノール残基が含まれる場合、前記樹脂組成物(Z)に含まれる全ジオール残基100モル%に対して、1,4-シクロヘキサンジメタノール残基が5モル%以上40モル%以下含まれることが好ましく、10モル%以上35モル%以下含まれることがより好ましい。
【0049】
前記樹脂組成物(Z)にネオペンチルグリコール残基が含まれる場合、前記樹脂組成物(Z)に含まれる全ジオール残基100モル%に対して、ネオペンチルグリコール残基が5モル%以上40モル%以下含まれることが好ましく、10モル%以上35モル%以下含まれることがより好ましい。
【0050】
前記樹脂組成物(Z)に1,4-ブタンジオール残基が含まれる場合、前記樹脂組成物(Z)に含まれる全ジオール残基100モル%に対して、1,4-ブタンジオール残基が3モル%以上25モル%以下含まれることが好ましく、6モル%以上20モル%以下含まれることがより好ましい。
【0051】
前記樹脂組成物(Z)にジエチレングリコール残基が含まれる場合、前記樹脂組成物(Z)に含まれる全ジオール残基100モル%に対して、ジエチレングリコール残基が0.5モル%以上5モル%以下含まれることが好ましく、1モル%以上4モル%以下含まれることがより好ましい。
【0052】
また、前記樹脂組成物(Z)には、バイオマス由来の残基を含むことが、石油由来の資源利用を削減できる点から好ましく、バイオマス由来の残基としてテレフタル酸残基、および1,3-プロパンジオール残基の少なくとも一方を含むことがより好ましく、バイオマス由来の残基としてテレフタル酸残基と1,3-プロパンジオール残基とを含むことが特に好ましい。
【0053】
(その他の成分)
前記樹脂組成物(Z)には、前記ポリエステル系樹脂(A)が主成分として含まれていれば、他の樹脂を含有してもよいが、樹脂としてポリエステル系樹脂(A)のみを含むことが好ましい。
他の樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンビニルアルコール系共重合体、エチレン酢酸ビニル系共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、 ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0054】
また、樹脂組成物(Z)には、熱可塑性エラストマーが含有されていてもよく、含有し得る熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマーや、アクリル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、アイオノマー、および、これらのブレンドやアロイ、変性物、動的架橋物、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体、コアシェル型多層構造ゴム等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。ただし、エステル系熱可塑性エラストマーは主鎖にエステル結合を有するため、前記ポリエステル系樹脂(A)に含まれる。
【0055】
また、前記樹脂組成物(Z)には、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤を適宜添加できる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性および熱収縮性フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳等のトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂や、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、着色剤等の添加剤が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0056】
本発明で用いる樹脂組成物(Z)は、前記ポリエステル系樹脂(A)を主成分とし、必要に応じてその他の成分を配合することにより得ることができる。
【0057】
(結晶融解熱量(ΔHm))
前記樹脂組成物(Z)を、示差走査型熱量測定を用いて、10℃/分で昇温した際の結晶融解熱量(ΔHm)は、1J/g以上35J/g以下であることが好ましく、2J/g以上30J/g以下がより好ましい。結晶融解熱量(ΔHm)が前記数値以上であることにより、耐熱性が付与できる傾向がある。また、前記数値以下であることにより、フィルムに熱収縮性を付与できる傾向がある。
【0058】
ここで、結晶融解熱量(ΔHm)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、約10mgの樹脂組成物(Z)を、加熱速度10℃/分で0℃~280℃まで昇温したときに測定される結晶融解ピークの面積より算出されるものである。
このとき、結晶融解ピークが2つ以上観察される場合は、それぞれのピーク面積より算出された結晶融解熱量の合計が、本発明の熱収縮性フィルムに用いる樹脂組成物(Z)の結晶融解熱量(ΔHm)となる。
また、示差走査熱量計(DSC)での昇温過程において、結晶融解ピークよりも低い温度で、結晶化に伴う吸熱ピーク(冷結晶化ピーク)が見られる場合がある。結晶融解ピークとともに冷結晶化ピークが見られる場合、本発明の熱収縮性フィルムの結晶融解熱量(ΔHm)は、測定にて得られた結晶融解熱量から冷結晶化熱量を差し引いた値となる。
なお、後述する実施例の樹脂組成物(Z)の結晶融解熱量についても同様に測定したときの値である。
【0059】
〔熱収縮性フィルムの製造方法〕
本発明の熱収縮性フィルムは、前記樹脂組成物(Z)を用いて従来公知の製造方法により製造することができる。また、本発明の熱収縮性フィルムの形態は特に限定されず、平面状、チューブ状のいずれであってもよいが、生産性(原反フィルムの幅方向に製品として数丁取りが可能)や印刷の容易さの観点から、平面状の形態であることが好ましい。
【0060】
前記平面状のフィルムの製造方法としては、例えば、押出機を用いて前記樹脂組成物(Z)を溶融し、Tダイ等の口金から平面状に溶融樹脂を押出し、冷却ロールで冷却固化して未延伸フィルムを得た後、得られた未延伸フィルムを少なくとも1方向に延伸をし、その後、アニール、冷却、必要に応じてコロナ放電処理等を経る工程により、平面状の熱収縮性フィルムを製造する方法が挙げられる。
【0061】
また、押出機を用いて樹脂組成物(Z)を溶融し、丸ダイ等の口金からチューブ状に溶融樹脂を押出し、空冷装置や水冷装置で冷却固化して未延伸フィルムを得た後、チューブラー法により加熱されたトンネル炉内でチューブに内圧を掛け、風船状に膨らませることにより少なくとも1方向に延伸を行い、その後、アニール、冷却したチューブ状延伸フィルムを切り開くことにより平面状のフィルムを製造することもできる。
【0062】
本発明の熱収縮性フィルムは、ポリエステル系樹脂(A)を主成分として含む樹脂組成物(Z)からなる層を少なくとも1層有すればよいため、例えば、複数の押出機を用いて、共押出を行うことにより、その他の層を有する積層フィルムも同様に製造できる。
【0063】
延伸方法としては、例えば、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、長間隔延伸法等により、少なくとも1方向に延伸する方法が挙げられる。また、延伸は、これらの延伸方法の組み合わせで行うこともでき、縦方向のみ延伸してもよく、横方向のみ延伸してもよく、縦方向に延伸した後、横方向に延伸してもよく、横方向に延伸した後、縦方向に延伸してもよい。また、同じ方向に2回以上延伸してもよい。さらには、縦方向に延伸した後、横方向に延伸し、さらに縦方向に延伸してもよい。また、同時二軸延伸機により縦方向、横方向に同時に延伸されてもよい。また、チューブラー成形により内圧によってチューブ状の未延伸フィルムを放射状に延伸してもよい。
【0064】
延伸温度は、熱収縮性フィルムを構成する樹脂の軟化温度や熱収縮性フィルムに要求される収縮特性等によって変える必要があるが、60℃以上130℃以下であることが好ましく、70℃以上120℃以下であることがより好ましく、80℃以上110℃以下であることがさらに好ましい。
【0065】
また、延伸倍率は、熱収縮性フィルムの構成成分、延伸方法、延伸温度、求められる熱収縮率等によって変える必要があるが、主収縮方向の延伸倍率が2倍以上8倍以下であることが好ましく、3倍以上7倍以下であることがより好ましく、4倍以上6倍以下であることがさらに好ましい。
【0066】
本発明の熱収縮性フィルムを容器やトレーのオーバーラップ等の用途に用いる場合、縦方向、および、横方向に延伸されることが好ましい。このとき、主収縮方向は、縦方向でもよく、横方向でもよい。また、食品用容器や飲料用容器等に装着されるラベル等のように、ほぼ一方向の収縮特性を必要とする用途に用いる場合、主収縮方向の1軸に延伸されることが好ましいが、主収縮方向と直交する方向(以下、「直交方向」ともいう。)に、1.03倍以上1.5倍以下の延伸倍率で延伸をすることも、良好な収縮特性を付与する点で効果的となる。
また、本発明の熱収縮性フィルムにおいては、主収縮方向が横方向(TD)、直交方向が縦方向(MD)であることが好ましい。
【0067】
延伸後は、必要に応じて、熱収縮性フィルムの熱収縮率や諸物性の調整を目的として、50℃以上120℃以下の温度で熱処理や弛緩処理を行うことができる。また、延伸や、熱処理や弛緩処理を行った後、分子配向が緩和しない時間内に速やかに冷却することにより、熱収縮性フィルムに収縮特性を付与することができる。さらに、冷却した熱収縮性フィルムは、耳等をトリミングし、巻取り機等を用いて熱収縮性フィルムをコアに巻き付け、フィルムロール状物にすることができる。
【0068】
[熱収縮性フィルムの層構成]
本発明の熱収縮性フィルムは、ポリエステル系樹脂(A)を主成分として含む樹脂組成物(Z)からなる層(以下、「層(I)」と称す。)を少なくとも1層有すればよい。したがって、本発明の熱収縮性フィルムは、前記層(I)単層フィルムであってもよく、前記層(I)とその他の層(II)が積層されたフィルムであってもよい。前記層(II)を構成する樹脂組成物は、前記ポリエステル系樹脂(A)を主成分としてなる樹脂組成物であることが好ましい。また、層構成は特に限定されるものではない。
【0069】
本発明の熱収縮性フィルムが、前記層(I)とその他の層(II)の少なくとも2層からなる熱収縮性フィルムである場合、前記層(I)と、前記層(II)が隣接する2層である連続層部を有し、かつ、前記層(II)を構成する樹脂組成物が、前記ポリエステル系樹脂(A)を主成分としてなる樹脂組成物であることがより好ましい。
前記層(I)と、前記層(II)が隣接する2層である連続層部を有し、かつ、前記層(II)を構成する樹脂組成物が、前記ポリエステル系樹脂(A)を主成分としてなる樹脂組成物であることにより、層(I)と層(II)の界面における層間剥離が生じにくい傾向がある。
【0070】
本発明の熱収縮性フィルムが、前記層(I)とその他の層(II)の少なくとも2層からなる熱収縮性フィルムである場合、好適な積層構成としては、例えば、「層(I)/層(II)」からなる2層構成、「層(I)/層(II)/層(I)」や、「層(II)/層(I)/層(II)」からなる2種3層構成、他の層(III)をさらに積層させた「層(I)/層(II)/層(III)」、「層(II)/層(I)/層(III)」、「層(I)/層(III)/層(II)」からなる3種3層構成、「層(I)/層(III)/層(II)/層(III)」、「層(III)/層(I)/層(III)/層(II)」、「層(III)/層(I)/層(II)/層(III)」からなる3種4層構成、「層(I)/層(III)/層(II)/層(III)/層(I)」、「層(II)/層(III)/層(I)/層(III)/層(II)」、「層(III)/層(II)/層(I)/層(II)/層(III)」、「層(III)/層(I)/層(II)/層(I)/層(III)」からなる3種5層構成等の構成を採用することができ、層の数や上述した他の層(III)としては、特に種類の制限はない。さらに前記層(III)としてその他の層、例えば、不織布、紙、金属からなる層等を積層してもよい。
また、各層は、共押出によって積層としてもよいし、別工程で得たフィルムをプレスやラミネート等により積層してもよい。
【0071】
本発明の熱収縮性フィルムが、前記層(I)とその他の層(II)の少なくとも2層からなる熱収縮性フィルムである場合、前記層(II)を構成する樹脂組成物が、前記ポリエステル系樹脂(A)を主成分としてなる樹脂組成物であり、「層(II)/層(I)/層(II)」、「層(I)/層(II)/層(I)」からなる2種3層構成であることが好ましい。
【0072】
一方で、未知の熱収縮性フィルムの分析において、前記層(I)と、前記層(II)が隣接する2層である連続層部を有し、かつ、前記層(II)を構成する樹脂組成物が、前記ポリエステル系樹脂(A)を主成分としてなる樹脂組成物である場合、隣接する層(I)と層(II)との界面が明確に区分できない場合がある。ここで、隣接する層(I)と層(II)との界面が明確に区分できないとは、走査型電子顕微鏡(SEM)または、透過型電子顕微鏡(TEM)にて、熱収縮性フィルムの断面観察を行った際に、隣接する層(I)と層(II)においてコントラストが付かず、界面が判断できない状態を示す。
そのため、本発明の技術的範囲に包含されるものかを判断するための、未知の熱収縮性フィルムの分析において、層(I)と層(II)が隣接する2層である連続層部を有し、かつ、層(I)を主成分として構成する樹脂と層(II)を主成分として構成する樹脂が同種であり、かつ、隣接する層(I)と層(II)との界面が明確に区分できない場合、前記層(I)と前記層(II)とを、合わせて1つの層と判断することを許容する。
【0073】
本発明の熱収縮性フィルムが、前記層(I)単層フィルムである場合においても、前記層(I)と層(II)の少なくとも2層からなる積層フィルムである場合においても、表面層を形成する層には、フィルムの滑り性の付与やブロッキング防止のために、アンチブロッキング剤を添加することが好ましい。
【0074】
前記アンチブロッキング剤としては、例えば、シリカ、タルク、炭酸カルシウム等の無機粒子、無機酸化物、炭酸塩、または、架橋アクリル系、架橋ポリエステル系、架橋ポリスチレン系、シリコーン系等の有機粒子等が挙げられる。また、多段階で重合せしめた多層構造を形成した有機粒子も用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでも、シリカや有機粒子が好ましい。
【0075】
前記アンチブロッキング剤はフィルム表面を荒らすことにより、滑り性や耐ブロッキング性を発現させるため、適切な添加量、および、種類を選択しなければ、透明性や、フィルムの光沢を阻害してしまう。そのため、アンチブロッキング剤の添加量は、表面層を形成する層を構成する樹脂組成物全体の質量を基準(100質量%)として、0.01質量%以上2質量%以下とすることが好ましく、0.015質量%以上1.5質量%以下がより好ましく、0.02質量%以上1質量%以下がさらに好ましい。前記アンチブロッキング剤の添加量が少なすぎる場合、フィルム表面へアンチブロッキング剤が析出しづらく、フィルム表面に凹凸を形成しづらいため、充分な滑り性や耐ブロッキング性を発現しづらい傾向がある。また、逆に多すぎる場合、フィルム表面の過剰な凹凸が生じやすく、表面荒れによる透明性の阻害や、過剰な滑り性の付与によるフィルムロールの巻きづれ等が生じやすい傾向がある。
【0076】
前記アンチブロッキング剤の形状は、特に限定されるものではないが、凝集抑制、均一分散の観点、透過する光の乱反射抑制、およびフィルム表面に形成される凹凸の観点から球状のものが好ましく用いられる。前記アンチブロッキング剤の平均粒径は、0.5μm以上10μm以下が好ましく、1μm以上8μm以下がより好ましく、1μm以上6μm以下がさらに好ましい。平均粒径は、例えば10個以上の粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して粒子の直径を測定し、その平均値として求めることができる。その際、非球状粒子の場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子の直径とする。但し、原料としての無機粒子の平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50を採用することができる。
前記アンチブロッキング剤の粒径が小さすぎる場合、表面へ析出しづらく、また、表面に析出したアンチブロッキング剤においても、滑り性や耐ブロッキング性を発現するに充分な凹凸を付与しづらい傾向がある。一方、前記アンチブロッキング剤の粒径が大きすぎる場合、本発明の熱収縮性フィルムに印刷を施し、意匠性を高める場合において、インキ抜け等が生じやすく、印刷図柄の外観を損ねる傾向がある。前記アンチブロッキング剤の粒径分布は、特に制限されるものではないが、前記粒径の大小による弊害の関係より、粒径分布が狭いものの方が好ましい。粒径分布が広くなりすぎると、前述した粒径の範囲から逸脱するものが含まれる可能性がある。
【0077】
本発明の熱収縮性フィルムの総厚さは特に限定されないが、包装資材への適用の観点から、5μm以上200μm以下であることが好ましく、7μm以上150μm以下であることがより好ましく、9μm以上70μm以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の熱収縮性フィルムを薄肉化する場合、包装資材としたときの剛性、強度とのバランスの観点から、10μm以上40μm以下であることが好ましい。
【0078】
また、本発明の熱収縮性フィルムは、必要に応じて、スリット、コロナ処理、印刷、粘着剤の塗布、コーティング、蒸着等の表面処理や表面加工、さらには、各種溶剤やヒートシールによる製袋加工やミシン目加工を施すことができる。
【0079】
[熱収縮性フィルムの諸物性]
本発明の熱収縮性フィルムは、該熱収縮性フィルムの複屈折ΔNが0.055以上0.100以下である熱収縮性フィルムである。以下、本発明の熱収縮フィルムの諸物性について詳述する。
【0080】
(複屈折ΔN)
本発明の熱収縮性フィルムは、該熱収縮性フィルムの複屈折ΔNは0.055以上0.100以下であることが必要である。また、複屈折ΔNは0.055以上0.095以下であることが好ましく、0.055以上0.090以下であることがより好ましい。複屈折ΔNが前記数値以上であることにより、熱収縮性フィルムが熱収縮するために必要な配向が付与される。また、複屈折ΔNが前記数値以下であることにより、主収縮方向への過剰な配向付与が抑えられ、収縮時に被着体の変形を起こしにくくなる。また、被着体に装着された熱収縮性フィルムを、ミシン目に沿って剥がす際、引き裂きの伝播が配向の向きに依存しにくくなる。
【0081】
(熱収縮性フィルムの熱収縮率)
本発明の熱収縮性フィルムは、100℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が45%以上であることが好ましい。また、100℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が45%以上90%以下であることがより好ましく、50%以上80%以下であることがさらに好ましい。
一般に、熱収縮性フィルムは、装着する容器等の被覆対象物を被覆した後、ヒーターや熱風、水蒸気等により加熱された雰囲気内を比較的短時間(数秒~十数秒程度)で通過させることで、熱収縮性フィルムを収縮させ、被覆対象物へ装着される。そのため、熱収縮性フィルムの熱収縮率は、被覆対象物への密着性や形状追随性を判断するための指標となる。
したがって、100℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が前記数値以上であることにより、熱収縮性フィルムが収縮加工時間内に充分に被覆対象物に装着することができると判断することができる。
【0082】
また、90℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向における熱収縮率は、20%以上であることが好ましく、25%以上80%以下であることがより好ましく、30%以上75%以下であることがさらに好ましい。
さらに、80℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向における熱収縮率は、15%以上であることが好ましく、20%以上70%以下であることがより好ましく、25%以上60%以下であることが好ましい。
また、70℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向における熱収縮率は、5%以上であることが好ましく、6%以上60%以下であることがより好ましく、8%以上55%以下であることが好ましい。
収縮工程においては、熱収縮性フィルムを被覆対象物に対して完全に被覆する前に、低温で少し収縮(プレシュリンク)させ、被覆対象物へフィルムの位置固定が行われることがある。その際、各温度における熱収縮率が上述の好ましい範囲にある場合、より低温から少しずつ被覆対象物にフィルムを収縮させることができる傾向がある。
【0083】
また、50℃温水中に10秒間浸漬したときの熱収縮率は、主収縮方向、および直交方向のいずれにおいても、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0%であることが最も好ましい。
50℃温水中に10秒間浸漬したときの熱収縮率が前記数値より大きくなる場合、フィルムの自然収縮率が大きくなる可能性が高く、ロール状に巻いて保管した際の巻き絞まりや、ロール端面が不揃いとなる外観不良を引き起こす傾向がある。
【0084】
さらに、食品用容器や飲料用容器等に装着されるラベル等のように、ほぼ一方向の収縮特性を必要とする用途に用いる場合、100℃の温水中に10秒間浸漬したときの直交方向の熱収縮率は、-5%以上15%以下であることが好ましく、-5%以上10%以下であることがより好ましい。ここで、熱収縮率がマイナスの値を示す場合は、フィルムが、その方向に膨張することを示す。
100℃の温水中に10秒間浸漬したときの直交方向の熱収縮率が、前記範囲内であることにより、被覆対象物への装着において、熱収縮性フィルムに印刷された文字や図柄が歪むことを抑制することができる傾向がある。また、直交方向に、膨張または収縮させることで、装着時に生じるシワを緩和するアイロン効果をもたらすため好ましい。
【0085】
また、食品用容器や飲料用容器等に装着されるラベル等のように、ほぼ一方向の収縮特性を必要とする用途に用いる場合、70~90℃の温水中に10秒間浸漬したときの直交方向の熱収縮率は、-5%以上10%以下であることが好ましく、-5%以上7%以下であることがより好ましい。
70~90℃の温水中に10秒間浸漬したときの直交方向の熱収縮率が、前記範囲内であることにより、被覆対象物への装着において、熱収縮性フィルムに印刷された文字や図柄が歪むことを抑制することができる傾向がある。また、プレシュリンクでの位置固定において、固定位置のずれを抑制できる傾向がある。
【0086】
(面配向係数ΔP)
さらに本発明の熱収縮性フィルムは、該熱収縮性フィルムの面配向係数ΔPは0.035以上0.073以下であることが好ましい。また、面配向係数ΔPは0.035以上0.072以下であることがより好ましい。面配向係数ΔPが前記数値以上であることにより、熱収縮性フィルムが熱収縮するために必要な配向が付与されるため好ましい。また、面配向係数ΔPが前記数値以下であることにより、熱収縮性フィルムを薄肉化しても、充分な機械強度が得られやすいため好ましい。
【0087】
(引裂き強度)
さらに、本発明の熱収縮性フィルムは、JIS K7128-3(1998)に準拠した直角法による引き裂き強度において、主収縮方向の引き裂き強度と直交方向の引き裂き強度の差の絶対値が11N以下であることが好ましい。また、引き裂き強度の差の絶対値は10.5N以下であることが好ましく、10N以下であることがより好ましい。引き裂き強度の差の絶対値が前記数値以下であることにより、被着体に装着された熱収縮性フィルムを剥がす際、引き裂きに掛かる力の抵抗が小さくなり、ミシン目などの目的の方向に沿って、熱収縮性フィルムを引き裂くことができるため好ましい。また、引き裂き強度の差の絶対値の下限は1N以上であることが好ましい。
【0088】
また、主収縮方向の引き裂き強度は、3N以上が好ましく、6N以上がより好ましく、9N以上がさらに好ましい。主収縮方向の引き裂き強度が3N以上であることにより、熱収縮性フィルムの製造工程や搬送工程、装着工程などの各工程でフィルムが裂けたりしにくいため好ましい。また、直交方向の引き裂き強度は、4N以上が好ましく、7N以上がより好ましく、10N以上がさらに好ましい。直交方向の引き裂き強度が4N以上であることにより、熱収縮性フィルムを装着した容器を不意に落下させた際に、フィルムが破れにくいため好ましい。なお、主収縮方向および直交方向の引き裂き強度の上限は、特に規定はされないが、通常30N以下である。
【0089】
さらに、主収縮方向の引き裂き強度に対する直交方向の引き裂き強度の比率(直交方向の引き裂き強度/主収縮方向の引き裂き強度)は、1.10以上2.00以下が好ましく、1.20以上1.90以下であることがより好ましい。
【0090】
(引張弾性率)
本発明の熱収縮性フィルムは、フィルムの腰(常温での剛性)の観点から、直交方向の、雰囲気温度23℃における引張弾性率が1750MPa以上であることが好ましく、1800MPa以上であることがより好ましく、1850MPa以上であることがさらに好ましい。また、直交方向の引張弾性率の上限は特に制限されないが、通常使用される熱収縮性フィルムの引張弾性率の上限値を考慮すれば、上限値は4000MPa以下であることが好ましい。直交方向の引張弾性率が前記数値以上であれば、フィルム全体としての腰(常温での剛性)が高く、特にフィルムの厚さを薄くしていった場合にも、熱収縮性フィルムをラベリングマシン等で容器に被覆する際に、熱収縮性フィルムが折れてしまう等の加工不具合が生じにくい傾向がある。
【0091】
(引張破断強度)
本発明の熱収縮性フィルムは、雰囲気温度23℃、引張速度200mm/分の条件下で、JIS K7127(1999)に準拠して測定される、縦方向(MD)の引張破断強度が、35MPa以上であることが好ましく、40MPa以上であることがより好ましい。縦方向(MD)の引張破断強度が前記数値以上であることにより、印刷工程等の二次加工工程において、熱収縮性フィルムが破断する等の不具合が生じにくい傾向がある。
【0092】
(引張破断伸度)
本発明の熱収縮性フィルムは、雰囲気温度23℃、引張速度200mm/分の条件下で、JIS K7127(1999)に準拠して測定される、縦方向(MD)の引張破断伸度が、100%以上であることが好ましく、150%以上であることがより好ましく、200%以上であることがさらに好ましい。縦方向(MD)の引張破断伸度が前記数値以上であることにより、印刷工程等の二次加工工程において、熱収縮性フィルムが破断する等の不具合が生じにくくなる傾向がある。
【0093】
(最大収縮応力)
本発明の熱収縮性フィルムは、100℃のシリコンオイルに10秒間浸漬したときの主収縮方向の最大収縮応力が11MPa以下、好ましくは10.5MPa以下、さらに好ましくは10MPa以下であることが好ましい。一方、主収縮方向の最大収縮応力の下限は、被覆対象物と熱収縮性フィルムとの密着性を維持する観点から3.5MPa以上であることが好ましい。フィルム主収縮方向の最大収縮応力が前記数値以下であれば、熱収縮性フィルムの熱収縮により、被覆対象物を変形させる恐れが少ない傾向がある。
【0094】
(透明性)
本発明の熱収縮性フィルムの透明性は、JIS K7361-1(1997)に準拠して測定された全光線透過率、JIS K7316(2000)に準拠して測定されたヘーズ値によって評価される。なおヘーズ値は、全光線透過率に対する拡散透過率の比として定義される。
【0095】
本発明の熱収縮性フィルムは、全光線透過率が87.5%以上であることが好ましく、88.0%以上であることがより好ましく、88.5%以上であることがさらに好ましい。全光線透過率が前記数値以上であれば、熱収縮性フィルムの透明性が高く、容物や裏面印刷の視認性が向上する傾向がある。
【0096】
また、本発明の熱収縮性フィルムは、ヘーズ値が10%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましく、8%以下がさらに好ましい。ヘーズ値が前記数値以下であれば、熱収縮性フィルムの散乱が少なく、内容物や裏面印刷の視認性が向上する傾向がある。
【0097】
〔包装資材〕
本発明の熱収縮性フィルムは、各種用途への利用が可能であるが、好ましくは、熱収縮性フィルムの片面または両面に印刷層を形成して、ガラス製容器やペットボトル等のプラスチック製容器に装着する熱収縮性ラベル等の包装資材を形成することができる。
【0098】
一般に、ラベル用途に用いられる熱収縮性フィルムの表面および裏面の少なくとも一方には、全面および部分の少なくとも一方にグラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、バーコータ等の公知方法により印刷層やオーバーコート層を形成する。印刷インキは特に限定されず、前記印刷法に応じて適宜選択でき、例えば、溶剤系(非水性)または水性のアクリル樹脂系やウレタン樹脂系インキ、発泡性インキ、加熱発泡性インキ等を挙げることができる。
【0099】
ラベル用途の包装資材は、被包装物によってフラット状から円筒状等に加工して包装に供される。ペットボトル等の円筒状の容器で印刷を要するものは、まずロールに巻き取られた広幅のフラットフィルムの一面に必要な画像を印刷し、そしてこれを必要な幅にカットしつつ、印刷面が内側になるように折り畳んでセンターシール(シール部の形状はいわゆる封筒貼り)して円筒状とすればよい。センターシール方法としては、有機溶剤によるシール法、ヒートシールによる方法、接着剤による方法、およびインパルスシーラーによる方法があるが、外観の見栄えを考慮すると、有機溶剤のシール法を用いることが好ましい。
【0100】
〔成形品、容器〕
本発明の熱収縮性フィルムは、フィルムの腰(常温での剛性)、収縮仕上がり性、透明性、機械的強度等に優れ、かつ自然収縮および収縮応力が小さいため、成形品または容器に装着する際、複雑な形状(例えば、中心がくびれた円柱、角のある四角柱、五角柱、六角柱等)の成形品または容器であっても該形状に密着可能であり、シワやアバタ等のない美麗に装着する包装資材とすることができる。よって、本発明の熱収縮性フィルムを装着する対象物としては、例えば、ペットボトル、プラスチック製容器、金属、磁器、ガラス、紙、瓶、トレー、弁当箱、総菜容器、乳製品容器等、様々な形状の成形品または容器が挙げられる。
特に本発明の熱収縮性フィルムをブローボトルの熱収縮性ラベルとして用いた場合には、前述のように複雑な形状であっても該形状に密着可能であり、シワやアバタ等のない美麗なラベルが装着された容器が得られる点で特に優れている。
【0101】
本発明の包装資材が装着されたプラスチック製容器を構成する材質としては、ポリエチレテレフタレート、ポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン-ブチルアクリレート共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、メタクリル酸エステル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。これらのプラスチック製容器は2種以上の樹脂類の混合物でも、積層体であってもよい。
【実施例
【0102】
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例、比較例によって何ら限定されるものではない。また、以下の実施例、比較例、参考例では、熱収縮性フィルムの押出機からの流れ方向を(MD)と表記し、MDの直交方向を(TD)と表記する。なお、実施例における熱収縮フィルムの主収縮方向は、TDである。
以下の実施例、比較例に示す測定値、および、評価は次のように行った。
【0103】
(1)アッベ測定による複屈折ΔN、面配向係数ΔP
JISK7142(2014)に準じて、アッベ屈折計(接触液はヨウ化メチレン)にて、得られた熱収縮性フィルムの、MD、TD、および厚さ方向(THD)の屈折率を測定した。各屈折率(NMD、NTD、およびNTHD)を用いて、複屈折ΔN=|NMD-NTD|、および、面配向係数ΔP=((NMD+NTD)/2)-NTHDを算出した。
【0104】
(2)主収縮方向の熱収縮率
得られた熱収縮性フィルムを、MD10mm、TD200mmの大きさで短冊状に切り取り、TDに対し間隔100mmで標線をマークした。その後、100℃、90℃、80℃、70℃、50℃のそれぞれの温度に設定した温水バスに短冊状フィルムを10秒間それぞれ浸漬し、収縮後の標線間隔を測定し、収縮量(=収縮前の標線間隔-収縮後の標線間隔)を測定した。熱収縮率は、収縮前の標線間隔に対する収縮量の比率(=(収縮量/収縮前の標線間隔)×100%)として算出した。
【0105】
(3)引張弾性率
JIS K7161-1(2014)に準じて、得られた熱収縮性フィルムを、MD200mm、TD5mmの大きさに切り出し、チャック間150mm、引張速度5mm/分で、雰囲気温度23℃におけるフィルムのMDの引張弾性率を測定し、5回の測定値の平均値を算出した。
また、得られた熱収縮性フィルムを、TD200mm、MD5mmの大きさに切り出し、チャック間150mm、引張速度5mm/分で、雰囲気温度23℃におけるフィルムのTDの引張弾性率を測定し、5回の測定値の平均値を算出した。
【0106】
(4)引張破断強度、引張破断伸度
得られた熱収縮性フィルムを、MD120mm、TD15mmの大きさに切り出し、JIS K7127(1999)に準拠し、引張速度200mm/分で、雰囲気温度23℃におけるフィルムのMDの引張破断強度、引張破断伸度を測定し、10回の測定値の平均値を算出した。
また、得られた熱収縮性フィルムを、MD15mm、TD120mmの大きさに切り出し、JIS K7127(1999)に準拠し、引張速度200mm/分で、雰囲気温度23℃におけるフィルムのTDの引張破断強度、引張破断伸度を測定し、10回の測定値の平均値を算出した。
【0107】
(5)最大収縮応力
得られた熱収縮性フィルムをMD10mm、TD70mmの大きさに切り出し、50mmの間隔でチャックし、ロードセルにタルミがないように固定した。その後、測定温度に設定したシリコンオイルバスに試料片を60秒間浸漬させ、TD(フィルム主収縮方向)の最大収縮応力を測定した。測定温度は、70℃、80℃、90℃、100℃にて行った。
【0108】
(6)全光線透過率、拡散透過率、ヘーズ
得られた熱収縮性フィルムを、JIS K7361-1(1997)に準拠して全光線透過率を測定した。また、JIS K7316(2000)に準拠して拡散透過率、ヘーズ値を測定した。
【0109】
(7)引き裂き強度
得られた熱収縮性フィルムより、JIS K7128-3(1998)に準拠し、直角形引裂法の試験片を採取し、MD、および、TDの引き裂き試験を、引張速度200mm/分で、雰囲気温度23℃にて測定し、5回の測定値の平均値を算出した。算出したMD、およびTDの引き裂き強度から、TDの引き裂き強度に対するMDの引き裂き強度の比率(MD/TD)、および、MDとTDの引き裂き強度の差(|NMD-NTD|)の絶対値を求めた。
【0110】
(8)総合評価
上記の評価において、下記の基準全てを満たすものを「〇」、一つでも基準を満たさないものを「×」とした。
[評価基準]
(i)複屈折ΔNが0.055以上0.100以下
(ii)100℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が45%以上
(iii)MDとTDの引き裂き強度の差の絶対値が11N以下
【0111】
各参考例、実施例、比較例で使用した原材料は、下記の通りである。
〔ポリエステル系樹脂(A)〕
・ポリエチレンテレフタレート系樹脂:ジカルボン酸残基として、テレフタル酸残基100モル%、ジオール残基として、エチレングリコール残基65モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノール残基32モル%、ジエチレングリコール残基3モル%からなるポリエステル系樹脂:ガラス転移温度78℃(以下、「a-1」と略する。)
・ポリトリメチレンテレフタレート:ジカルボン酸残基として、テレフタル酸残基100モル%、ジオール残基として、バイオマス由来の1,3-プロパンジオール残基100モル%、還元粘度1.378dL/g、重量平均分子量Mw112,000、数平均分子量Mn63,300、Mw/Mn=1.76、ガラス転移温度49℃、融点228℃(以下、「a-2」と略する。)
〔アンチブロッキング剤のマスターバッチ〕
・前記「a-1」99質量%、球状シリカ(平均粒径1μm)1質量%の混合比にて溶融混錬して得られたコンパウンドペレット(マスターバッチ)(以下、「a-3」と略する。)
【0112】
<実施例1>
後記の表1に示す配合に従い、「a-1」を94質量%、「a-2」を5質量%、「a-3」を1質量%の割合にて混合した。二軸押出機、導管、合流ブロック、マルチマニホールド口金が接合された押出設備にて、混合した原料を、設定温度を250℃とした二軸押出機にそれぞれ供給し、溶融混錬を行い、70℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて未延伸フィルムを得た。次いで、予熱温度100℃、延伸温度88℃、熱処理温度90℃に設定したフィルムテンター設備にて、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率5倍にてTDに延伸し、厚さ30μmの熱収縮性フィルム(包装資材)を得た。
得られた熱収縮性フィルムについて組成分析を行い残基の確認を行った。組成分析は、溶媒CDCl3にて、1H-NMR測定により行った。結果を後記の表1に示す(以下、実施例2~8および比較例1~3においても同様に、得られた熱収縮性フィルムの組成分析を行った。結果はそれぞれ後記の表1に示す。)。また、得られた熱収縮性フィルムについて評価した結果を後記の表2に示す。
【0113】
<実施例2>
実施例1と同様の手法により後記の表1に示す配合の未延伸フィルムを得た。次いで、予熱温度100℃、延伸温度88℃、熱処理温度83℃に設定したフィルムテンター設備にて、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率5倍にてTDに延伸し、厚さ30μmの熱収縮性フィルム(包装資材)を得た。得られた熱収縮性フィルムについて評価した結果を後記の表2に示す。
【0114】
<実施例3>
後記の表1に示す配合に従い、「a-1」を84質量%、「a-2」を15質量%、「a-3」を1質量%の割合にて混合した。二軸押出機、導管、合流ブロック、マルチマニホールド口金が接合された押出設備にて、混合した原料を、設定温度を250℃とした二軸押出機にそれぞれ供給し、溶融混錬を行い、70℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて未延伸フィルムを得た。次いで、予熱温度95℃、延伸温度83℃、熱処理温度100℃に設定したフィルムテンター設備にて、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率5倍にてTDに延伸し、厚さ30μmの熱収縮性フィルム(包装資材)を得た。得られた熱収縮性フィルムについて評価した結果を後記の表2に示す。
【0115】
<実施例4>
実施例3と同様の手法により後記の表1に示す配合の未延伸フィルムを得た。次いで、予熱温度95℃、延伸温度83℃、熱処理温度93℃に設定したフィルムテンター設備にて、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率5倍にてTDに延伸し、厚さ30μmの熱収縮性フィルム(包装資材)を得た。得られた熱収縮性フィルムについて評価した結果を後記の表2に示す。
【0116】
<実施例5>
後記の表1に示す配合に従い、「a-1」を74質量%、「a-2」を25質量%、「a-3」を1質量%の割合にて混合した。二軸押出機、導管、合流ブロック、マルチマニホールド口金が接合された押出設備にて、混合した原料を、設定温度を250℃とした二軸押出機にそれぞれ供給し、溶融混錬を行い、70℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて未延伸フィルムを得た。次いで、予熱温度95℃、延伸温度83℃、熱処理温度98℃に設定したフィルムテンター設備にて、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率5倍にてTDに延伸し、厚さ30μmの熱収縮性フィルム(包装資材)を得た。得られた熱収縮性フィルムについて評価した結果を後記の表2に示す。
【0117】
<実施例6>
実施例5と同様の手法により後記の表1に示す配合の未延伸フィルムを得た。次いで、予熱温度95℃、延伸温度83℃、熱処理温度83℃に設定したフィルムテンター設備にて、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率5倍にてTDに延伸し、厚さ30μmの熱収縮性フィルム(包装資材)を得た。得られた熱収縮性フィルムについて評価した結果を後記の表2に示す。
【0118】
<実施例7>
実施例5と同様の手法により後記の表1に示す配合の未延伸フィルムを得た。次いで、予熱温度95℃、延伸温度83℃、熱処理温度93℃に設定したフィルムテンター設備にて、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率5倍にてTDに延伸し、厚さ30μmの熱収縮性フィルム(包装資材)を得た。得られた熱収縮性フィルムについて評価した結果を表2に示す。
【0119】
<実施例8>
後記の表1に示す配合に従い、「a-1」を59質量%、「a-2」を40質量%、「a-3」を1質量%の割合にて混合した。二軸押出機、導管、合流ブロック、マルチマニホールド口金が接合された押出設備にて、混合した原料を、設定温度を250℃とした二軸押出機にそれぞれ供給し、溶融混錬を行い、70℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて未延伸フィルムを得た。次いで、予熱温度95℃、延伸温度83℃、熱処理温度83℃に設定したフィルムテンター設備にて、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率5倍にてTDに延伸し、厚さ30μmの熱収縮性フィルム(包装資材)を得た。得られた熱収縮性フィルムについて評価した結果を後記の表2に示す。
【0120】
<比較例1>
後記の表1に示す配合に従い、「a-1」を39質量%、「a-2」を60質量%、「a-3」を1質量%の割合にて混合した。二軸押出機、導管、合流ブロック、マルチマニホールド口金が接合された押出設備にて、混合した原料を、設定温度を250℃とした二軸押出機にそれぞれ供給し、溶融混錬を行い、70℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて未延伸フィルムを得た。次いで、予熱温度95℃、延伸温度83℃、熱処理温度83℃に設定したフィルムテンター設備にて、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率5倍にてTDに延伸し、厚さ30μmの熱収縮性フィルム(包装資材)を得た。
得られた熱収縮性フィルムについて評価した結果を表2に示す。
【0121】
<比較例2>
比較例1と同様の手法により後記の表1に示す配合の未延伸フィルムを得た。次いで、予熱温度95℃、延伸温度83℃、熱処理温度93℃に設定したフィルムテンター設備にて、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率5倍にてTDに延伸し、厚さ30μmの熱収縮性フィルム(包装資材)を得た。得られた熱収縮性フィルムについて評価した結果を後記の表2に示す。
【0122】
<比較例3>
後記の表1に示す配合に従い、「a-1」を99質量%、「a-3」を1質量%の割合にて混合した。二軸押出機、導管、合流ブロック、マルチマニホールド口金が接合された押出設備にて、混合した原料を、設定温度を250℃とした二軸押出機にそれぞれ供給し、溶融混錬を行い、70℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて未延伸フィルムを得た。次いで、予熱温度100℃、延伸温度88℃、熱処理温度83℃に設定したフィルムテンター設備にて、得られた未延伸フィルムを、延伸倍率5倍にてTDに延伸し、厚さ30μmの熱収縮性フィルム(包装資材)を得た。得られた熱収縮性フィルムについて評価した結果を後記の表2に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
実施例1~8の熱収縮性フィルムは、共重合ポリエステルを含むポリエステル系樹脂(A)を主成分として含む樹脂組成物(Z)からなる層を少なくとも1層含み、複屈折ΔNを0.055以上0.100以下とすることにより、熱収縮性フィルムとして充分な熱収縮率を有するとともに、MDの引張弾性率が1850MPa以上となり、優れた剛性を有することがわかる。すなわち、薄肉化された熱収縮性フィルムにおいても、優れた剛性を有するため、被覆体への装着工程においても装着不良が生じにくい熱収縮性フィルムを得ることができる。また、熱収縮性フィルムは、複屈折ΔNが本発明の規定する範囲に調整されることにより、引き裂き強度の異方性が小さく、ミシン目手切れ性に優れたフィルムとなっており、消費者の分別意識とともに、被覆体からの脱離が容易であるため、リサイクルを促進する熱収縮性フィルムであることがわかる。
【0126】
一方、比較例1および比較例2の熱収縮性フィルムにおいては、実施例と同様に共重合ポリエステルを含むポリエステル系樹脂(A)を主成分として含む樹脂組成物(Z)からなる層を少なくとも1層含んではいるが、複屈折ΔNが0.055より小さく、本発明が規定する複屈折ΔNの範囲より逸脱するため、主収縮方向における熱収縮率が不充分なフィルムであることがわかる。
さらに、比較例3の熱収縮性フィルムは、実施例と同様に共重合ポリエステルを含むポリエステル系樹脂(A)を主成分として含む樹脂組成物(Z)からなる層を少なくとも1層含んではいるが、複屈折ΔNが、0.100より大きく、本発明が規定する複屈折ΔNの範囲より逸脱するため、最大収縮応力が過剰に大きく、引き裂き強度の異方性も大きなフィルムであった。
【0127】
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨、或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う熱収縮性フィルムもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の熱収縮性フィルムは、優れた剛性と熱収縮特性とミシン目手切れ性を有する熱収縮性フィルムを得ることができるため、食品用包装材料、飲料用包装材料、医薬・医療用包装材料、化学品用包装材料、化粧品用包装材料、トイレタリー用包装材料、工業用包装材料、農業資材用包装材料等に好適に利用することができる。
【要約】      (修正有)
【課題】薄肉化された熱収縮性フィルムにおいても、優れた剛性と熱収縮特性、ミシン目手切れ性を有する熱収縮性フィルムを提供する。また、該熱収縮性フィルムを用いてなる包装資材、包装資材が装着された成形品または容器を提供する。
【解決手段】ポリエステル系樹脂(A)を主成分として含む樹脂組成物(Z)からなる層を少なくとも1層有する熱収縮性フィルムであって、下記a)およびb)を満たす熱収縮性フィルムとする。a)前記ポリエステル系樹脂(A)が共重合ポリエステル系樹脂を含む。b)複屈折ΔNが0.055以上0.100以下。
【選択図】なし