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特許7004221シリコンウェーハのエッチング方法、エッチング装置及び不純物分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】シリコンウェーハのエッチング方法、エッチング装置及び不純物分析方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20220114BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
H01L21/66 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018215280
(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公開番号】P2020087991
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2020-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】荒木 健司
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-114080(JP,A)
【文献】特公昭49-042423(JP,B1)
【文献】特開平11-097361(JP,A)
【文献】特表2018-504777(JP,A)
【文献】特開平11-260793(JP,A)
【文献】国際公開第2017/174371(WO,A1)
【文献】特開2014-041030(JP,A)
【文献】特開2012-222014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング用のガスを、ガス導入口とガス排出口とを具備する反応室に導入し、前記反応室内に支持されたシリコンウェーハの表面をエッチングする方法であって、
前記ガス導入口を、前記反応室の、前記シリコンウェーハの表面に対する水平方向における一端側に設け、
前記ガス排出口を、前記反応室の、前記水平方向における前記ガス導入口と反対側に設け、
前記水平方向のうち前記ガス導入口から前記ガス排出口に向かう方向をガス流れ方向、前記水平方向のうち前記ガス流れ方向に直角な方向を幅方向として、
前記ガス導入口と前記ガス排出口の前記幅方向における長さを前記シリコンウェーハの直径の83.3%以上にし、
前記ガスはフッ化水素酸と硝酸又はフッ化水素酸とオゾンの混酸ガスであり、
前記反応室内の前記シリコンウェーハを、前記表面に直交する軸線回りに95.49~133.69deg/secの角速度で回転させ、
前記反応室内の前記シリコンウェーハ上での前記ガスの流速を4~6cm/secとすることを特徴とするシリコンウェーハのエッチング方法。
【請求項2】
前記幅方向における前記ガス導入口の長さと前記ガス排出口の長さを同じにすることを特徴とする請求項1に記載のシリコンウェーハのエッチング方法。
【請求項3】
前記表面のエッチング量の狙い値が0.3μm~10μmとなるようにエッチング時間を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコンウェーハのエッチング方法。
【請求項4】
エッチング用のガスを供給するガス供給部と、
ガス導入口とガス排出口とを具備する反応室と、
前記反応室内に設けられてシリコンウェーハを支持する支持部とを備え、前記ガス供給部から供給される前記ガスを前記ガス導入口から前記反応室内に導入して、前記支持部に支持された前記シリコンウェーハの表面をエッチングする装置であって、
前記ガス導入口は、前記反応室の、前記シリコンウェーハの表面に対する水平方向における一端側に設けられ、
前記ガス排出口は、前記反応室の、前記水平方向における前記ガス導入口と反対側に設けられ、
前記水平方向のうち前記ガス導入口から前記ガス排出口に向かう方向をガス流れ方向、前記水平方向のうち前記ガス流れ方向に直角な方向を幅方向として、
前記ガス導入口と前記ガス排出口の前記幅方向における長さが前記シリコンウェーハの直径の83.3%以上であり、
前記ガスはフッ化水素酸と硝酸又はフッ化水素酸とオゾンの混酸ガスであり、
前記支持部は、前記シリコンウェーハを、前記表面に直交する軸線回りに95.49~133.69deg/secの角速度で回転させ、
前記ガス供給部は、前記反応室内の前記シリコンウェーハ上での前記ガスの流速が4~6cm/secとなる流量の前記ガスを供給することを特徴とするシリコンウェーハのエッチング装置。
【請求項5】
前記幅方向における前記ガス導入口の長さと前記ガス排出口の長さが同じであることを特徴とする請求項に記載のシリコンウェーハのエッチング装置。
【請求項6】
前記表面のエッチング量の狙い値が0.3μm~10μmとなるようにエッチング時間が調整されることを特徴とする請求項4又は5に記載のシリコンウェーハのエッチング装置。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載のシリコンウェーハのエッチング方法又はエッチング装置によりシリコンウェーハをエッチングした後に、前記シリコンウェーハの表面の不純物分析を行うことを特徴とするシリコンウェーハの不純物分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハのエッチング方法、エッチング装置及び不純物分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造において、高集積化、微細化に伴い、シリコンウェーハ中の不純物濃度を極力低く抑えることが要求されている。特にウェーハ表面から表層に存在する不純物は、素子の電気特性を劣化させる要因となり、高精度かつ高感度な不純物評価技術が重要となっている。
【0003】
シリコンウェーハの表層に存在する不純物の評価方法には、硝酸とフッ化水素酸の混酸溶液によりシリコンウェーハ表層を溶解し、溶解液中の不純物濃度を測定する方法(液相法)や、フッ化水素酸と硝酸あるいはオゾンの混酸蒸気によりシリコンウェーハ表層を溶解し、シリコンウェーハ表面に残留する反応残渣を回収し、不純物濃度を測定する方法(気相法)がある(例えば特許文献1~6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-114080号公報
【文献】特開2014-41030号公報
【文献】特開2003-133381号公報
【文献】特開2011-018781号公報
【文献】特開2011-129831号公報
【文献】特開2007-198924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液相法では、混酸の薬液組成を適宜設定することで、エッチング量のコントロールが容易であり、0.1~10μmまでをエッチングすることが可能である。一方、混酸溶液でシリコンウェーハを溶解するため、薬液やエッチングに用いる治具に起因する不純物の持ち込みによるバックグラウンドが増加し、不純物の検出下限が高くなる。つまり不純物を高感度に検出できないという問題がある。
【0006】
また、気相法では、薬液起因の不純物持ち込みの影響は少なくなるが、発生させる混酸ガス量のコントロールが難しく、シリコンウェーハ表面を均一にエッチングすることが困難である。
【0007】
以上のような従来技術の問題点に鑑み、本発明は、シリコンウェーハ表面を均一にエッチングできる方法又は装置を提供すること、及びシリコンウェーハ表層の不純物を高精度かつ高感度に分析できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、気相エッチングであって、エッチング量の均一化を目的として検討を重ねた結果、シリコンウェーハ上を一定の流速でエッチング用ガスが流れるようにすることで、シリコンウェーハの表面の各部において、エッチング量の狙い値に対しての誤差を少なくでき、シリコンウェーハ面内のエッチング量のばらつきを抑えることができることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明に係るシリコンウェーハのエッチング方法は、
エッチング用のガスを、ガス導入口とガス排出口とを具備する反応室に導入し、前記反応室内に支持されたシリコンウェーハの表面をエッチングする方法であって、
前記ガス導入口を、前記反応室の、前記シリコンウェーハの表面に対する水平方向における一端側に設け、
前記ガス排出口を、前記反応室の、前記水平方向における前記ガス導入口と反対側に設け、
前記水平方向のうち前記ガス導入口から前記ガス排出口に向かう方向をガス流れ方向、前記水平方向のうち前記ガス流れ方向に直角な方向を幅方向として、
前記ガス導入口と前記ガス排出口の前記幅方向における長さを前記シリコンウェーハの直径の83.3%以上にすることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るシリコンウェーハのエッチング装置は、
エッチング用のガスを供給するガス供給部と、
ガス導入口とガス排出口とを具備する反応室と、
前記反応室内に設けられてシリコンウェーハを支持する支持部とを備え、前記ガス供給部から供給される前記ガスを前記ガス導入口から前記反応室内に導入して、前記支持部に支持された前記シリコンウェーハの表面をエッチングする装置であって、
前記ガス導入口は、前記反応室の、前記シリコンウェーハの表面に対する水平方向における一端側に設けられ、
前記ガス排出口は、前記反応室の、前記水平方向における前記ガス導入口と反対側に設けられ、
前記水平方向のうち前記ガス導入口から前記ガス排出口に向かう方向をガス流れ方向、前記水平方向のうち前記ガス流れ方向に直角な方向を幅方向として、
前記ガス導入口と前記ガス排出口の前記幅方向における長さが前記シリコンウェーハの直径の83.3%以上であることを特徴とする。
【0011】
本発明のシリコンウェーハのエッチング方法又は装置によれば、反応室のガス導入口とガス排出口の幅方向における長さがシリコンウェーハの直径の83.3%以上であり、シリコンウェーハの直径と同等又はそれ以上であるので、ガス導入口から反応室内に導入されたエッチング用のガスの流速を、シリコンウェーハ表面の幅方向における各部間で均一にできる。これにより、シリコンウェーハ表面のエッチング量のばらつきを抑制、つまりシリコンウェーハ表面を均一にエッチングできる。
【0012】
また、本発明のシリコンウェーハのエッチング方法又は装置において、幅方向におけるガス導入口の長さとガス排出口の長さを同じとするのが好ましい。これによれば、ガス導入口におけるガス流速と、ガス排出口におけるガス流速との差を小さくでき、ひいては反応室内においてガス流速が変化するのを抑制できる。これにより、シリコンウェーハの面内におけるガス流速のばらつきを抑制でき、ひいてはシリコンウェーハ表面のエッチング量のばらつきを抑制できる。
【0013】
また、本発明のシリコンウェーハのエッチング方法又は装置において、反応室内のシリコンウェーハを、シリコンウェーハ表面に直交する軸線回りに回転させるのが好ましい。これによれば、エッチング用のガスを、シリコンウェーハの面内に万遍なく供給でき、ガス流れ方向におけるエッチング量のばらつきを抑制できる。なお、シリコンウェーハを回転させないとすると、シリコンウェーハの、ガス導入口に近い部分ほどエッチング量が大きくなってしまい、ガス流れ方向においてエッチング量のばらつきが大きくなってしまう。
【0014】
また、本発明のシリコンウェーハのエッチング方法又は装置において、シリコンウェーハを95.49~133.69deg/secの角速度で回転させるのが好ましい。これによれば、シリコンウェーハ面内のエッチング量のばらつきをより一層抑制できる。
【0015】
また、本発明のシリコンウェーハのエッチング方法又は装置において、反応室内のシリコンウェーハ上でのガスの流速を4~6cm/secとするのが好ましい。これによれば、シリコンウェーハ面内のエッチング量のばらつきをより一層抑制できる。
【0016】
また、本発明のシリコンウェーハのエッチング方法又は装置において、前記ガスはフッ化水素酸と硝酸又はフッ化水素酸とオゾンの混酸ガスとすることができる。
【0017】
本発明に係るシリコンウェーハの不純物分析方法は、上記シリコンウェーハのエッチング方法又はエッチング装置によりシリコンウェーハをエッチングした後に、シリコンウェーハの表面の不純物分析を行うことを特徴とする。これによれば、シリコンウェーハ表面を均一にエッチングした後にシリコンウェーハ表面の不純物分析を行うので、シリコンウェーハ表層の不純物を高精度に分析できる。また、気相エッチングを利用して不純物分析を行うので、液相法に比べてバックグラウンドノイズを小さくでき、不純物を高感度に分析できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】エッチング装置の概略側面図である。
図2】エッチング装置の概略平面図である。
図3】エッチング狙い値が0.3μmのときにおける、シリコンウェーハ外周部の接線速度と、シリコンウェーハ面内のエッチングばらつき量との関係を、各流速ごとに示した図である。
図4】エッチング狙い値が1μmのときにおける、シリコンウェーハ外周部の接線速度と、シリコンウェーハ面内のエッチングばらつき量との関係を、各流速ごとに示した図である。
図5】エッチング狙い値が3μmのときにおける、シリコンウェーハ外周部の接線速度と、シリコンウェーハ面内のエッチングばらつき量との関係を、各流速ごとに示した図である。
図6】エッチング狙い値が10μmのときにおける、シリコンウェーハ外周部の接線速度と、シリコンウェーハ面内のエッチングばらつき量との関係を、各流速ごとに示した図である。
図7】比較例1で使用したエッチング装置の概略側面図である。
図8】比較例1で使用したエッチング装置の概略平面図である。
図9】比較例2で使用したエッチング装置の概略側面図である。
図10】比較例2で使用したエッチング装置の概略平面図である.
図11】エッチング狙い値が0.3μmのときにおける、シリコンウェーハ面内のエッチングばらつき量を実施例4と比較例1、2とで示した図である。
図12】エッチング狙い値が1μmのときにおける、シリコンウェーハ面内のエッチングばらつき量を実施例4と比較例1、2とで示した図である。
図13】エッチング狙い値が3μmのときにおける、シリコンウェーハ面内のエッチングばらつき量を実施例4と比較例1、2とで示した図である。
図14】エッチング狙い値が10μmのときにおける、シリコンウェーハ面内のエッチングばらつき量を実施例4と比較例1、2とで示した図である。
図15】エッチング狙い値が0.3μmのときにおける、エッチング狙い値に対するエッチングばらつき量の割合を実施例4と比較例1、2とで示した図である。
図16】エッチング狙い値が1μmのときにおける、エッチング狙い値に対するエッチングばらつき量の割合を実施例4と比較例1、2とで示した図である。
図17】エッチング狙い値が3μmのときにおける、エッチング狙い値に対するエッチングばらつき量の割合を実施例4と比較例1、2とで示した図である。
図18】エッチング狙い値が10μmのときにおける、エッチング狙い値に対するエッチングばらつき量の割合を実施例4と比較例1、2とで示した図である。
図19】エッチング狙い値が0.3μmのときにおける、エッチング量の面内分布を示した図である。
図20】エッチング狙い値が1μmのときにおける、エッチング量の面内分布を示した図である。
図21】エッチング狙い値が3μmのときにおける、エッチング量の面内分布を示した図である。
図22】エッチング狙い値が10μmのときにおける、エッチング量の面内分布を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1図2に本実施形態のエッチング装置の概略図を示している。エッチング装置1は、シリコンウェーハWの表層の不純物を分析するために、該シリコンウェーハWの表面全面をエッチング(溶解)する装置である。先ず、エッチング装置1の構成を説明する。
【0020】
エッチング装置1は、エッチング用のガスを供給(発生)するガス供給部2と、エッチングが行われる反応室3と、反応室3内に設けられてシリコンウェーハWを支持する支持部としての回転ステージ4とを備えている。なお、図2では、ガス供給部2の図示及び反応室3の蓋3aの図示を省略している。シリコンウェーハWの直径は例えば300mmであるが、これに限らず、直径100mmの小口径ウェーハでも良いし、それ以外の直径のウェーハでもよい。
【0021】
ガス供給部2は、エッチング用のガスとして、例えばフッ化水素酸と硝酸の混酸ガスを発生させて、発生させた混酸ガスを反応室3に供給する。具体的には、ガス供給部2は、所定濃度のフッ化水素酸と所定濃度の硝酸とを所定比率(例えば1:1)で混合した液を入れた容器5と、容器5の混合液内にキャリアガス(例えば窒素)を導入する管6と、管6から導入されたキャリアガスによるバブリングにより混合液から発生したフッ化水素と硝酸との混酸ガス及びキャリアガス(窒素)を含んだガス(以下単に混酸ガスという)を反応室3のガス導入口8まで導く管7とを備えている。
【0022】
なお、ガス供給部2は、エッチング用のガスとして、フッ化水素酸とオゾンとの混酸ガスを供給してもよい。この場合、ガス供給部2は、フッ化水素酸をバブリングし、発生したフッ化水素ガスにオゾンガスを混合し、この混合ガスをキャリアガス(例えば窒素)で反応室3に導入する。
【0023】
反応室3は、例えば上面と底面とこれらの間の空間を四方から囲む側面とを有した形状つまり直方体状に形成されている。反応室3は上部に開閉可能な蓋3aを有している。この蓋3aを開けることで、反応室3内にシリコンウェーハWを投入でき、エッチング後においては反応室3からシリコンウェーハWを搬出できるようになっている。なお、エッチング時においては、蓋3aが閉じられることで反応室3が密閉される。
【0024】
また、反応室3は、ガス供給部2から供給される混酸ガスの導入及び排気が可能に構成されている。具体的には、反応室3は、ガス導入口8及びガス排出口9を有している。ガス導入口8は、反応室3の、鉛直方向に直角な方向である水平方向(シリコンウェーハWの表面に平行な方向)における一端側の側面の上部に設けられている。ガス排出口9は、反応室3の、水平方向におけるガス導入口8と反対側の側面の上部に設けられている。鉛直方向(シリコンウェーハWの表面に直角な方向)を高さ方向としたとき、ガス導入口8及びガス排出口9は、高さ方向において互いに同じ位置(同一高さ)に設けられている。また、ガス導入口8及びガス排出口9は、回転ステージ4に載置されたシリコンウェーハWの表面と同等の高さ位置又は該表面よりも若干高い位置に設けられている。また、ガス導入口8及びガス排出口9は、回転ステージ4及びこれに載置されたシリコンウェーハWを間に挟んで水平方向に対向する位置に設けられている。すなわち、ガス導入口8はガス排出口9の方に向けて開口を形成しており、ガス排出口9はガス導入口8の方に向けて開口を形成している。また、ガス導入口8及びガス排出口9は、回転ステージ4の回転軸線L1から水平方向に等距離となる位置に設けられている。
【0025】
さらに、ガス導入口8及びガス排出口9は互いに同じ形状、同じサイズに形成されている。具体的には、ガス導入口8及びガス排出口9の流路断面(ガスの流れ方向に直交する断面)は例えば矩形状となっている。ここで、水平方向のうちガス導入口8からガス排出口9に向かう方向P1(図1参照)(図2に示す一点鎖線L2に平行な方向でもある)をガス流れ方向とし、水平方向のうちガス流れ方向P1に直角な方向P2(図2参照)を幅方向とする。ガス導入口8の幅方向P2における長さa1(図2参照)と、ガス排出口9の幅方向P2における長さb1(図2参照)は、互いに同じ長さであり、かつ、シリコンウェーハWの直径の83.3%以上である。これら長さa1、b1は、シリコンウェーハWの直径の83.3%以上であれば、シリコンウェーハWの直径と同等(具体的には、シリコンウェーハWの直径の83.3%以上、120%以下)でもよいし、シリコンウェーハWの直径の同等以上の長さ(具体的には、シリコンウェーハWの直径の120%以上)でもよい。また、長さa1、b1は、シリコンウェーハWの直径と全く同じでもよい。
【0026】
また、ガス導入口8の高さ方向における長さa2(図1参照)と、ガス排出口9の高さ方向における長さb2は互いに同じ長さである。また、ガス導入口8のガス流れ方向P1に平行な方向における長さa3(図1参照)と、ガス排出口9のガス流れ方向P1に平行な方向における長さb3(図1参照)は互いに同じ長さでもよいし、異なる長さでもよい。
【0027】
また、図2において、ガス導入口8の幅方向P2における中間点と、ガス排出口9の幅方向P2における中間点とを通る直線L2が、回転ステージ4の回転軸線L1(言い換えるとシリコンウェーハWの中心に直交する軸線)に交差するように、ガス導入口8、ガス排出口9及び回転ステージ4(又はシリコンウェーハW)の位置関係が定められている。
【0028】
回転ステージ4は、ガス導入口8とガス排出口9の間の位置において、シリコンウェーハWを水平に支持する載置面4aを有している。また、回転ステージ4は、回転ステージ4を鉛直方向に延びた軸線L1回りに回転させる駆動部10を有する。この軸線L1は載置面4aの中心を通るように設定されている。シリコンウェーハWは、シリコンウェーハWの中心が回転軸線L1に一致するように、載置面4aに載置される。
【0029】
次に、エッチング装置1を用いたシリコンウェーハWのエッチング方法及び不純物分析方法を説明する。先ず、反応室3の蓋3aを開けて、シリコンウェーハWを反応室3内の回転ステージ4に載置させる。その後、蓋3aを閉める。次に、ガス供給部2において容器5内の混合液を窒素等のキャリアガスでバブリングすることで混酸ガスを発生させ、発生させた混酸ガスをガス導入口8から反応室3内に導入する。このとき、導入した混酸ガスの流速が、シリコンウェーハWの表面上で4~6cm/secとなるように制御するのが好ましい。言い換えると、ガス供給部2は、シリコンウェーハW上での混酸ガスの流速が4~6cm/secとなる流量の混酸ガスを反応室3に供給するのが好ましい。ガス供給部2からの混酸ガスの流量は、例えばキャリアガス(窒素)の流量や、容器5内の混合液の量によって制御できる。なお、4~6cm/secのガス流速とは、シリコンウェーハWの表面の各点上でのガス流速の平均値が4~6cm/secであることを意味する。ガス流速を4~6cm/secとすることで、後述の実施例で示すように、シリコンウェーハWの面内におけるエッチング量のばらつきをより一層小さくできる。
【0030】
なお、混酸ガスは、ガス導入口8から反応室3内に導入された後、シリコンウェーハWの表面の各部を一定の流速で通過して、その流速を保ったままガス排出口9から排出されると仮定して、シリコンウェーハW上でのガス流速は、反応室3への流入ガスの体積流量と、ガス排出口9のサイズ(流路面積)とから換算できる。すなわち、流速×流路面積=体積流量であるので、流速=体積流量/流路面積により導出できる。反応室3への流入ガスの体積流量は、例えばガス供給部2における混酸ガスの導入管7又はガス導入口8に、流量センサを設けて、このセンサによる流量測定値とすればよい。ガス排出口9のサイズ(流路面積)は、ガス排出口9の幅方向P2における長さb1と、高さ方向における長さb2とから導出できる。
【0031】
また、シリコンウェーハWの表面への混酸ガスの供給時には、駆動部10によって回転ステージ4及びそれに載置されたシリコンウェーハWを軸線L1回りに回転させるのが好ましい。シリコンウェーハWを回転させることで、混酸ガスをシリコンウェーハWの面内に万遍なく供給でき、ガス流れ方向P1においてエッチング量のばらつきを抑制できる。
【0032】
さらに、シリコンウェーハWを回転させる際の角速度を95.49~133.69deg/secとするのが好ましい。これによって、後述の実施例で示すように、シリコンウェーハWの面内におけるエッチング量のばらつきをより一層小さくできる。
【0033】
また、混酸ガスによるシリコンウェーハWのエッチング時間は、エッチング狙い値に応じて適宜に定めることができる。つまり、エッチング時間を制御することで、例えば一回のエッチングで0.1μm~10μmの範囲でエッチング量を制御できる。
【0034】
以上のように、本実施形態では、水平方向に対向する位置にガス導入口8及びガス排出口9を設けて、これらガス導入口8及びガス排出口9の間にシリコンウェーハWを支持し、かつ、ガス導入口8及びガス排出口9の長さa1、b1をシリコンウェーハWの直径と同等またはそれ以上としているので、シリコンウェーハWの表面の幅方向P2における各部間でガス流速の差異を小さくできる。これにより、シリコンウェーハWの面内のエッチング量のばらつきを小さくできる。換言すれば、シリコンウェーハWのエッチング面を平坦にできる。また、シリコンウェーハWを95.49~133.69deg/secの角速度で回転させ、シリコンウェーハW上でのガス流速を4~6cm/secとすることで、より一層、面内のエッチング量のばらつきを小さくできる。
【0035】
以上のようにエッチングを実施した後、蓋3aを開けて、エッチング後のシリコンウェーハWを取り出す。その後、取り出したシリコンウェーハWの表面に対して不純物分析を行う。具体的には、例えば、エッチング後のシリコンウェーハWの表面に残留する反応残渣をフッ酸と過酸化水素水の混合溶液又はフッ酸と塩酸の混合溶液などで回収する。そして、回収した溶液中の不純物濃度をICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)等で分析する。これによって、エッチングにより溶解したウェーハ表層中の不純物を定量評価できる。
【0036】
また、同一のシリコンウェーハWに対して上記エッチング及び不純物分析を繰り返し実施してもよい。これによって、シリコンウェーハWの深さ方向の不純物濃度の分布を評価できる。このとき、本実施形態のエッチング方法を用いることで、シリコンウェーハWの表面全体を均一にエッチングできるので、深さ方向の不純物濃度の変化を高精度に分析できる。
【実施例
【0037】
(実施例1)
図1図2と同様のエッチング装置を用いて、シリコンウェーハ上での混酸ガスの流速と、シリコンウェーハの面内のエッチング量のばらつきとの関係を調べた。具体的には、シリコンウェーハ上での混酸ガスの流速を2~8cm/secの範囲で振って、各流速においてシリコンウェーハの面内各部のエッチング量を測定した。そして、各部のエッチング量のうち最大エッチング量と最小エッチング量との差異を、面内のエッチング量のばらつきとして求めた。ガス流速は、反応室への流入ガス流量測定値と、ガス排出口のサイズ(流路面積)とから換算し、この換算値が狙いの流速値となるようにガス供給部による混酸ガスの流量(具体的にはキャリアガスとしての窒素流量)を調整した。また、ADE社製のウェーハ厚み測定装置により、ウェーハ面内を20mm角のメッシュに区切り、各メッシュごとにエッチング前後のウェーハ厚みの差をエッチング量として求めた。シリコンウェーハは直径300mm、導電型がp型のポリッシュドウェーハを用いた。反応室のガス導入口及びガス排出口の幅方向における長さは300mmとした。シリコンウェーハの回転は無しとした。エッチング時間は12分とした。
【0038】
表1に、各ガス流速に対する、シリコンウェーハ面内の最大エッチング量、最小エッチング量及びこれらの差異(エッチングばらつき量)を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示すように、ガス流速が4cm/sec未満、又は6cm/secより大きいと、最大エッチング量と最小エッチング量の差異が0.30μmより大きくなった。これに対して、ガス流速が4~6cm/secでは、最大エッチング量と最小エッチング量の差異が0.30μmより小さくなった。このことから、エッチング量の面内ばらつきを小さくするためには、シリコンウェーハ上でのガス流速を4~6cm/secにするのが好ましいといえる。
【0041】
(実施例2)
ガス導入口及びガス排出口のサイズ以外は図1図2と同様のエッチング装置を用いて、直径300mm、導電型がp型のシリコンウェーハ(ポリッシュドウェーハ)を使用し、シリコンウェーハ上での混酸ガスの流速を5cm/secとしたときの、ガス導入口及びガス排出口のサイズ(幅方向における長さ)と、シリコンウェーハの面内のエッチング量のばらつきとの関係を調べた。具体的には、反応室のガス導入口及びガス排出口のサイズを50mmから300mmまで段階的に振って、各サイズにおいてシリコンウェーハの面内各部のエッチング量を実施例1と同様の方法で測定した。そして、面内各部のエッチング量のうち最大エッチング量と最小エッチング量との差異を、面内のエッチング量のばらつきとして求めた。なお、シリコンウェーハの回転は無しとした。エッチング時間は12分とした。ガス流速は、実施例1と同様に、反応室への流入ガス流量測定値と、ガス排出口のサイズ(流路面積)とから換算し、この換算値が5cm/secとなるようにガス供給部による混酸ガスの流量(具体的にはキャリアガスとしての窒素流量)を調整した。
【0042】
表2に、ガス導入口及びガス排出口の各サイズに対する、シリコンウェーハ面内の最大エッチング量、最小エッチング量及びこれらの差異(エッチングばらつき量)を示す。
【0043】
【表2】
【0044】
表2に示すように、ガス導入口及びガス排出口のサイズが200mm以下では、最大エッチング量と最小エッチング量の差異が0.30μmより大きくなった。これに対して、ガス導入口及びガス排出口のサイズが250mm以上では、最大エッチング量と最小エッチング量の差異が0.30μmより小さくなった。このことから、エッチング量の面内ばらつきを小さくするためには、直径300mmのシリコンウェーハに対しては、ガス導入口及びガス排出口のサイズを250mm以上(シリコンウェーハの直径の83.3%以上)とするのが好ましいといえる。
【0045】
(実施例3)
図1図2と同様のエッチング装置を用いて、直径300mm、導電型がp型のシリコンウェーハ(ポリッシュドウェーハ)を使用したときの、シリコンウェーハの外周部の接線速度と、シリコンウェーハの面内のエッチング量のばらつきとの関係を調べた。具体的には、混酸ガスのシリコンウェーハ上での流速を3~7cm/sec、エッチング狙い値を0.3μm、1μm、3μm、10μm、シリコンウェーハの外周部の接線速度(=シリコンウェーハの半径×角速度)を0~50cm/secとしたときの、シリコンウェーハの面内の最大エッチング量と最小エッチング量との差異を実施例1と同様の方法で求めた。なお、ガス導入口及びガス排出口のサイズ(幅方向における長さ)は300mmとした。またエッチング狙い値に応じてエッチング時間を調整した。また、ガス流速は、実施例1と同様に、反応室への流入ガス流量測定値と、ガス排出口のサイズ(流路面積)とから換算し、この換算値が狙いの流速値となるようにガス供給部による混酸ガスの流量(具体的にはキャリアガスとしての窒素流量)を調整した。また、シリコンウェーハの外周部の接線速度が狙い値となるように、回転ステージの回転速度(角速度)を調整した。
【0046】
図3図6に、エッチング狙い値毎の、シリコンウェーハ外周部の接線速度と、シリコンウェーハ面内のエッチングばらつき量(最大エッチング量と最小エッチング量との差異)との関係を示す。
【0047】
図3図6に示すように、いずれのエッチング狙い値及び流速においても、シリコンウェーハを回転させる(つまりウェーハ外周部の接線速度をゼロより大きくする)ことで、回転させない場合(つまりウェーハ外周部の接線速度がゼロ)に比べて、シリコンウェーハ面内のエッチングばらつき量を小さくできる。また、いずれのエッチング狙い値及び流速においても、ウェーハ外周部の接線速度がゼロから大きくなるにしたがって次第にエッチングばらつき量が小さくなっていき、接線速度が30cm/secの辺りでエッチングばらつき量が最小となり、さらに接線速度が大きくなるとエッチングばらつき量が次第に大きくなっていくという傾向を示している。
【0048】
ここで、図3図6の結果から、エッチング狙い値に対して、エッチングばらつき量(最大エッチング量と最小エッチング量との差異)が10%以内となる流速及び接線速度の条件を導出することを考える。図3の結果においては、エッチング狙い値(=0.3μm)に対してエッチングばらつき量が10%以内つまり0.03μm以内となる条件は、流速が4~6cm/sec、かつ、接線速度が25~35cm/secであった。
【0049】
図4の結果においては、エッチング狙い値(=1μm)に対してエッチングばらつき量が10%以内つまり0.1μm以内となる条件は、流速が4~6cm/sec、かつ、接線速度が25~35cm/secであった。
【0050】
図5の結果においては、エッチング狙い値(=3μm)に対してエッチングばらつき量が10%以内つまり0.3μm以内となる条件は、流速が3cm/sec、かつ、接線速度が25~45cm/secと、流速が4cm/sec、かつ、接線速度が15~45cm/secと、流速が5cm/sec、かつ、接線速度が15~50cm/secと、流速が6cm/sec、かつ、接線速度が20~45cm/secと、流速が7cm/sec、かつ、接線速度が20~40cm/secであった。
【0051】
図6の結果においては、エッチング狙い値(=10μm)に対してエッチングばらつき量が10%以内つまり1μm以内となる条件は、流速が4~6cm/sec、かつ、接線速度が25~35cm/secと、流速が7cm/sec、かつ、接線速度が30cm/secであった。
【0052】
以上より、直径300mmのシリコンウェーハを使用したときに、エッチング狙い値が0.3μm~10μmの範囲において、エッチング狙い値に対してエッチングばらつき量が10%以内となる条件は、流速が4~6cm/sec、かつ、接線速度が25~35cm/secであることが判明した。
【0053】
ここで、上記の接線速度25~35cm/secの条件は直径300mmのシリコンウェーハを使用したときの条件であるので、300mm以外の直径のシリコンウェーハを使用したときにも適用できるウェーハ回転条件を導出することを考える。表3に、各ウェーハ直径におけるウェーハの円周長さと、直径300mmを基準としたときの、各直径のウェーハの円周長さの比率とを示している。表4に、直径300mmのウェーハ外周部の接線速度(0~50cm/sec)を基準としたときの、各直径のウェーハにおけるウェーハ外周部の接線速度及び角速度を示す。なお、表4において、直径200mm、150mm、100mmのウェーハにおける接線速度は、直径300mmのウェーハにおける接線速度(0~50cm/sec)と、表3に示す比率とから導出できる。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
表4に示すように、各直径のウェーハにおけるウェーハ外周部の接線速度の好ましい条件(エッチング狙い値に対してエッチングばらつき量が10%以内となる条件)は、直径300mmのウェーハに対しては25~35cm/sec、直径200mmのウェーハに対しては16.67~23.33cm/sec、直径150mmのウェーハに対しては12.50~17.50cm/sec、直径100mmのウェーハに対しては8.33~11.67cm/secとなる。また、上記接線速度を角速度で表すと、95.49~133.69deg/secとなる。
【0057】
以上より、シリコンウェーハの直径にかかわらず、シリコンウェーハを95.49~133.69deg/secの角速度で回転させることで、エッチング狙い値に対してエッチングばらつき量が10%以内となる。
【0058】
(実施例4)
実施例4として、図1図2と同様のエッチング装置を用いて、直径300mm、導電型がp型のシリコンウェーハ(ポリッシュドウェーハ)に対してエッチングを行い、ウェーハ面内のエッチングばらつき量(最大エッチング量と最小エッチング量の差異)及びこのばらつき量のエッチング狙い値に対する割合を測定した。このとき、エッチング時間を調整することでエッチング狙い値を0.3μm、1μm、3μm、10μmの水準で振り、さらに、ウェーハ上での混酸ガスの流速を4cm/sec、5cm/sec、6cm/secの水準で振った。また、ガス導入口及びガス排出口のサイズ(幅方向における長さ)は300mmとした。また、エッチングの際には、シリコンウェーハを95.49~133.69deg/secを満たす角速度で回転させた。また、シリコンウェーハの面内の最大エッチング量、最小エッチング量及びこれらの差異は実施例1と同様の方法で求めた。また、ガス流速は、実施例1と同様に、反応室への流入ガス流量測定値と、ガス排出口のサイズ(流路面積)とから換算し、この換算値が狙いの流速値となるようにガス供給部による混酸ガスの流量(具体的にはキャリアガスとしての窒素流量)を調整した。
【0059】
比較例1として、図7図8のエッチング装置を用いて、直径300mm、導電型がp型のシリコンウェーハ(ポリッシュドウェーハ)に対してエッチングを行い、ウェーハ面内のエッチングばらつき量(最大エッチング量と最小エッチング量の差異)及びこのばらつき量のエッチング狙い値に対する割合を実施例4と同様の方法で測定した。このとき、エッチング時間を調整することでエッチング狙い値を0.3μm、1μm、3μm、10μmの水準で振った。
【0060】
図7図8のエッチング装置は、反応室100の底部に、混酸ガスの供給ポート101及び排気ポート102を有する。これらポート101、102は上方に向けて開口を形成している。また、ポート101、102は、シリコンウェーハWの直径(=300mm)に対して小さいサイズに形成されている。また、エッチングの最中は、シリコンウェーハWを支持するステージ103は回転しない。図7図8のエッチング装置においては、供給ポート101から反応室100内に混酸ガスが導入されて、導入された混酸ガスによりシリコンウェーハWの表面のエッチングを行い、排気ポート102から混酸ガスが排気される。
【0061】
比較例2として、図9図10のエッチング装置(NAS技研製 SC7000)を用いて、直径300mm、導電型がp型のシリコンウェーハ(ポリッシュドウェーハ)に対してエッチングを行い、ウェーハ面内のエッチングばらつき量(最大エッチング量と最小エッチング量の差異)及びこのばらつき量のエッチング狙い値に対する割合を実施例4と同様の方法で測定した。このとき、エッチング時間を調整することでエッチング狙い値を0.3μm、1μm、3μm、10μmの水準で振った。
【0062】
図9図10のエッチング装置は、反応室200内に、シリコンウェーハWが載置される回転ステージ203と、回転ステージ203に載置されたシリコンウェーハWの表面に直接に混酸ガスを吹き付けるノズル201とを有する。ノズル201はスイングアーム202によって、シリコンウェーハWの面内方向に移動が可能となっている。図9図10のエッチング装置においては、回転ステージ203によりシリコンウェーハWを回転させるとともに、ノズル201を移動させてウェーハ面内の各部に混酸ガスを直接に吹き付けることでエッチングを行う。
【0063】
図11図14に、エッチング狙い値毎に、実施例4、比較例1、2のウェーハ面内のエッチングばらつき量(最大エッチング量と最小エッチング量の差異)を示す。また、図15図18に、エッチング狙い値毎に、実施例4、比較例1、2のエッチング狙い値に対するエッチングばらつき量の割合(ばらつき割合)を示す。
【0064】
図11図18に示すように、実施例4では、比較例1、2に比べて、ウェーハ面内のエッチングばらつき量及びばらつき割合を大幅に低減できた。具体的には、実施例4では、いずれのエッチング狙い値においてもばらつき割合を10%以内に抑えることができた(図15図18参照)。
【0065】
これに対して、比較例1では、ばらつき割合が非常に大きく、具体的にはおよそ100~170%であった(図15図18参照)。これは、比較例1で用いた図7図8のエッチング装置では、ガス供給ポート101及び排気ポート102が反応室100の底部にあり、またこれらポート101、102のサイズはウェーハ直径よりも小さく、さらにウェーハを回転させずに固定しているため、正確なエッチングコントロールが困難であり、ガスの流れ方向でエッチングムラが生じるためであると考えられる。
【0066】
また、比較例2では、ばらつき割合がおよそ20~70%であり(図15図18参照)、比較例1に比べると小さいが、実施例4に比べると2倍以上のばらつき割合となった。また、比較例2で用いた図9図10のエッチング装置では、ウェーハ中心からのノズル201の距離、ウェーハ外周部の接線速度、及びノズル201の走査ピッチを細かくコントロールする必要があり、面内平滑性の高いエッチング条件を見い出すのは非常に困難である。
【0067】
(実施例5)
図1図2と同様のエッチング装置を用いて、直径300mm、導電型がp型のシリコンウェーハ(ポリッシュドウェーハ)に対してエッチングを行い、ウェーハ面内のエッチング量の分布を測定した。このとき、エッチング時間を調整することでエッチング狙い値を0.3μm、1μm、3μm、10μmの水準で振った。また、ウェーハ上での混酸ガスの流速は5cm/secとした。具体的には、反応室への流入ガス流量測定値と、ガス排出口のサイズ(流路面積)とからウェーハ上でのガス流速を換算し、この換算値が5cm/secとなるようにガス供給部による混酸ガスの流量(具体的にはキャリアガスとしての窒素流量)を調整した。また、ガス導入口及びガス排出口のサイズ(幅方向における長さ)は300mmとした。また、エッチングの際には、シリコンウェーハを95.49~133.69deg/secを満たす角速度で回転させた。また、ウェーハ面内のエッチング量の分布は、ADE社製のウェーハ厚み測定装置により、ウェーハ面内を20mm角のメッシュに区切り、各メッシュごとにエッチング前後のウェーハ厚みの差を測定することで得た。
【0068】
図19図22に、エッチング狙い値毎のウェーハ面内のエッチング量の分布を示す。図19図22に示すように、いずれのエッチング狙い値においても、わずかにドーナツ状のエッチング量面内分布となったが、面内分布のばらつきを示す指標としての変動係数(coefficient of variation)(相対標準偏差(RSD)ともいう)は、0.51~2.2%と非常に小さく、エッチング面内の平坦性が優れていることを示した。
【0069】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその具体的な記載に限定されることなく、例示した構成等を技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせて実施することも可能であるし、またある要素、処理を周知の形態に置き換えて実施することもできる。
【符号の説明】
【0070】
1 エッチング装置
2 ガス供給部
3 反応室
4 回転ステージ(支持部)
8 ガス導入口
9 ガス排出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図22