IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-複合材の製造方法 図1
  • 特許-複合材の製造方法 図2
  • 特許-複合材の製造方法 図3
  • 特許-複合材の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】複合材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/18 20060101AFI20220114BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220114BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20220114BHJP
   B32B 15/092 20060101ALI20220114BHJP
   B32B 15/095 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B15/08 M
B32B15/082
B32B15/092
B32B15/095
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020515195
(86)(22)【出願日】2018-09-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 KR2018010896
(87)【国際公開番号】W WO2019054815
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2020-03-13
(31)【優先権主張番号】10-2017-0118864
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ウ・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ミン・シン
【審査官】團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-291673(JP,A)
【文献】特開2010-056179(JP,A)
【文献】特開2010-192233(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102513074(CN,A)
【文献】特開平01-225925(JP,A)
【文献】米国特許第03839080(US,A)
【文献】特表2001-527656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00-43/00
H01M 4/86- 4/98
12/00-16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム形状の金属フォームと、前記金属フォームの対向する第1表面および第2表面のうち少なくとも前記第1表面に存在する高分子成分とを含み、前記第1表面上の高分子成分の面積比(A)と第2表面上の高分子成分の面積比(B)の比率(B/A)が0~0.99の範囲内である複合材の製造方法であって、
前記金属フォームの前記第1表面上に光硬化性組成物が形成された状態で、前記金属フォームの前記第1表面のみに対して光を照射する段階と、
光照射後に未硬化の光硬化性組成物を除去する段階とを含み、
前記第1表面上に存在する高分子成分の面積比(A)が90%以上である、複合材の製造方法。
【請求項2】
金属フォームは、鉄、コバルト、ニッケル、銅、リン、モリブデン、亜鉛、マンガン、クロム、インジウム、スズ、銀、白金、金、アルミニウム、ステンレスおよびマグネシウムよりなる群から選ばれる一つ以上の金属または金属合金を含む骨格を有する、請求項1に記載の複合材の製造方法。
【請求項3】
金属フォームは、厚さが5μm~5cmの範囲内にある、請求項1または2に記載の複合材の製造方法。
【請求項4】
金属フォームは、気孔度(porosity)が40%~99%の範囲内である、請求項1から3のいずれか一項に記載の複合材の製造方法。
【請求項5】
光硬化性組成物は、アクリル系光硬化性組成物、エポキシ系光硬化性組成物、イソシアネート系光硬化性組成物、ウレタン系光硬化性組成物またはシリコーン系光硬化性組成物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合材の製造方法。
【請求項6】
第1表面上の高分子成分の厚さが1nm~1cmの範囲内にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の複合材の製造方法。
【請求項7】
第1表面上に存在する高分子成分の面積比(A)が91%以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載の複合材の製造方法。
【請求項8】
面積比の比率(B/A)が0を超過し、前記高分子成分は、第2表面上で柱形状で存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載の複合材の製造方法。
【請求項9】
第1表面から第2表面の方向への金属フォームの内部に、前記第1表面から高分子成分が存在する地点までの長さ(P)と前記第1表面から第2表面までの長さ(T)と、の比率(P/T)が0~1の範囲内である、請求項1から8のいずれか一項に記載の複合材の製造方法。
【請求項10】
第1表面から第2表面の方向への金属フォームの内部に、前記第1表面から高分子成分が存在する地点までの長さ(P)と前記第1表面から第2表面までの長さ(T)と、の比率(P/T)が、0を超過し、0.95以下である、請求項9に記載の複合材の製造方法。
【請求項11】
光硬化性組成物を金属フォームの表面上に1nm~2cmの厚さで形成する、請求項1から10のいずれか一項に記載の複合材の製造方法。
【請求項12】
フィルム形状の金属フォームと、前記金属フォームの対向する第1表面および第2表面のうち少なくとも前記第1表面に存在する高分子成分とを含み、前記第1表面上の高分子成分の面積比(A)と第2表面上の高分子成分の面積比(B)の比率(B/A)が0超過、0.99以下の範囲内であり、
前記高分子成分は、第2表面上で柱形状で存在する、複合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年9月15日付けで提出された韓国特許出願第10-2017-0118864号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は、複合材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
金属フォーム(metal foam)は、軽量性、エネルギー吸収性、断熱性、耐火性または親環境等の多様かつ有用な特性を具備することによって、軽量構造物、輸送機械、建築資材またはエネルギー吸収装置等を含む多様な分野に適用され得る。また、金属フォームは、高い比表面積を有すると共に、液体、気体等の流体または電子の流れをさらに向上させることができるので、熱交換装置用基板、触媒、センサー、アクチュエータ、2次電池、燃料電池、ガス拡散層(GDL:gas diffusion layer)または微小流体流量制御器(microfluidic flow controller)等に適用されて有用に使用されることもできる。
【0004】
金属フォームの適用分野の拡大や物性の補強等を目的として前記金属フォームと樹脂成分を複合化した複合材を製造することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願は、複合材の製造方法と、この方法で製造された複合材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願は、複合材の製造方法とその複合材に関する。用語「複合材」は、金属フォームと高分子成分を含む材料を意味する。
【0007】
本明細書で用語「金属フォームまたは金属骨格」は、金属を主成分として含む多孔性構造体を意味する。前記で金属を主成分とするというのは、金属フォームまたは金属骨格の全体重量を基準として金属の比率が55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上または95重量%以上である場合を意味する。前記主成分として含まれる金属の比率の上限は、特に制限されず、例えば、100重量%、99重量%または98重量%程度であってもよい。
【0008】
本明細書で用語「多孔性」は、気孔度(porosity)が少なくとも30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上または80%以上である場合を意味する。前記気孔度の上限は、特に制限されず、例えば、約100%未満、約99%以下、約98%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下または75%以下程度であってもよい。前記気孔度は、金属フォーム等の密度を計算して公知の方法で算出することができる。
【0009】
本出願の複合材に含まれる金属フォームは、フィルム形状であってもよい。本出願の複合材は、前記のようなフィルム形状の金属フォームと、前記金属フォームの対向する両表面のうち少なくとも一つの表面に存在する高分子成分を含むことができる。すなわち、前記複合材において、金属フォームの対向する両表面共に高分子成分が存在してもよく、一つの表面にのみ高分子成分が存在してもよい。前記で対向する両表面は、フィルム形状の金属フォームの上部および下部表面や両側面等のように互いに対向する表面を意味する。以下、便宜上、前記互いに対向する表面のうち高分子成分が相対的に多く存在する表面を第1表面と呼び、その反対側の表面であって、高分子成分が存在しないか、または前記第1表面に比べて少なく存在する表面を第2表面と呼ぶことができる。
【0010】
複合材において金属フォームは、気孔度が約40%~99%の範囲内であってもよい。一例において、後述する方法で前記複合材を形成するに際して、目的とする非対称構造を考慮して前記金属フォームの気孔度や孔隙のサイズ等を制御することができる。例えば、後述する方法で非対称構造を形成するに際して、金属フォームの気孔度が小さいか、または孔隙のサイズが小さい場合には、一方の表面から照射された光が他方の表面に到達する程度が小さくなり、反対に大きい場合には、前記他方の表面に到達する程度が大きくなって、反対表面の光硬化性組成物の硬化度が制御され得る。他の例において、前記気孔度は、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上または80%以上であるか、または95%以下、90%以下、85%以下または80%以下程度であってもよい。
【0011】
金属フォームは、フィルム形状であってもよい。このような場合に、フィルムの厚さは、後述する方法により複合材を製造するに際して、目的とする非対称構造の形態等を考慮して調節され得る。すなわち、前記フィルム形状の厚さが厚いほど、後述する方法で非対称構造を形成するに際して、一方の表面から照射された光が他方の表面に到達する程度が小さくなり、反対に薄いほど、前記他方の表面に到達する程度が大きくなって、反対表面の光硬化性組成物の硬化度が制御され得る。前記フィルムの厚さは、例えば、約5μm~5cmの範囲内であってもよい。前記厚さは、他の例において、4cm以下、3cm以下、2cm以下または1cm以下であるか、または6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上または10μm以上程度であってもよい。
【0012】
前記金属フォームの骨格は、多様な種類の金属や金属合金からなることができ、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、銅、リン、モリブデン、亜鉛、マンガン、クロム、インジウム、スズ、銀、白金、金、アルミニウム、ステンレスおよびマグネシウムよりなる群から選ばれる一つ以上の金属または金属合金を含むか、あるいは、前記金属または金属合金からなり得る。
【0013】
このような金属フォームは、多様に公知となっており、金属フォームを製造する方法もやはり多様に公知となっている。本出願では、このような公知の金属フォームや前記公知の方法で製造した金属フォームが適用され得る。
【0014】
金属フォームを製造する方法としては、塩等の気孔形成剤と金属の複合材料を焼結する方法、高分子フォーム等の支持体に金属をコートし、その状態で焼結する方法やスラリー法等が知られている。また、前記金属フォームは、本出願人の先行出願である韓国出願第2017-0086014号、第2017-0040971号、第2017-0040972号、第2016-0162154号、第2016-0162153号または第2016-0162152号等に開示された方法により製造され得る。
【0015】
また、前記金属フォームは、前記先行出願に開示された方法のうち誘導加熱法で製造され得るが、このような場合に、金属フォームは、導電性磁性金属を少なくとも含むことができる。この場合、金属フォームは、前記導電性磁性金属を重量を基準として30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上または50重量%以上含むことができる。他の例において、前記金属フォーム内の導電性磁性金属の比率は、約55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上または90重量%以上であってもよい。前記導電性磁性金属の比率の上限は、特に制限されず、例えば、約100重量%未満または95重量%以下であってもよい。
【0016】
本出願において用語「導電性磁性金属」は、所定の比透磁率と電気伝導度を有する金属であって、誘導加熱法により金属の焼結が可能となるほどに発熱が可能な金属を意味する。
【0017】
一例において、前記導電性金属としては、比透磁率が90以上の金属を使用することができる。比透磁率μは、当該物質の透磁率μと真空中の透磁率μの比率μ/μである。前記金属は、比透磁率が95以上、100以上、110以上、120以上、130以上、140以上、150以上、160以上、170以上、180以上、190以上、200以上、210以上、220以上、230以上、240以上、250以上、260以上、270以上、280以上、290以上、300以上、310以上、320以上、330以上、340以上、350以上、360以上、370以上、380以上、390以上、400以上、410以上、420以上、430以上、440以上、450以上、460以上、470以上、480以上、490以上、500以上、510以上、520以上、530以上、540以上、550以上、560以上、570以上、580以上または590以上であってもよい。比透磁率が高いほど、後述する誘導加熱のための電磁場の印加時にさらに高い熱を発生するので、その上限は、特に制限されない。一例において、前記比透磁率の上限は、例えば、約300,000以下であってもよい。
【0018】
前記導電性磁性金属は、20℃での電気伝導度が約8MS/m以上、9MS/m以上、10MS/m以上、11MS/m以上、12MS/m以上、13MS/m以上または14.5MS/m以上であってもよい。前記電気伝導度の上限は、特に制限されず、例えば、前記伝導度は、約30MS/m以下、25MS/m以下または20MS/m以下であってもよい。
【0019】
このような導電性磁性金属の具体的な例には、ニッケル、鉄またはコバルト等があるが、これらに制限されるものではない。
【0020】
前記複合材において金属フォームの対向する両表面に形成されている高分子成分は、非対称的な構造を有する。前記で非対称構造は、前記両表面に存在する高分子成分の比率が異なることを意味する。
【0021】
一例において、前記金属フォームの第1表面に存在する高分子成分の面積比Aと第2表面に存在する高分子成分の面積比Bの比率B/Aは、0~0.99の範囲内であってもよい。前記比率B/Aが0である場合は、第2表面には、高分子成分が存在しない場合を意味する。また、前記で面積比は、当該金属フォームの表面の面積対比高分子成分で覆っている面積の百分率である。
【0022】
前記比率B/Aは、他の例において、約0.95以下、0.90以下、0.85以下、0.80以下、0.75以下、0.70以下、0.65以下、0.60以下、0.55以下、0.50以下、0.45または0.40以下であってもよいが、これは、目的とする用途を考慮して調節され得る。
【0023】
前記で第1表面上に存在する高分子成分の面積比Aは、特に制限されないが、例えば、約90%以上、約91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上であるか、あるいは、100%程度であってもよい。また、第2表面上の高分子成分の面積比Bは、0%であるか、すなわち第2表面上には高分子成分が存在しないか、0%を超過することができる。また、前記面積比Bは、一例において、約99%以下、約95%以下、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約65%以下、約60%以下、約55%以下、約50%以下、約45%以下または約40%以下程度であってもよい。
【0024】
前記例において、第2表面上の高分子成分の面積比Bが0%である場合、すなわち第2表面上には、高分子成分が形成されていない場合には、第1表面から第2表面の方向に金属フォームの内部に高分子成分が存在する部分までの長さPと前記第1表面から第2表面までの長さTの比率P/Tは、0~1の範囲であってもよい。すなわち、前記場合で金属フォーム内部の高分子成分は、第1表面から第2表面までの全体範囲に存在するか(P/T=1)、金属フォームの内部には存在しなくてもよい(P/T=0)。前記比率P/Tは、他の例において、0超過、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上または0.45以上であるか、または0.95以下、0.9以下、0.85以下、0.8以下、0.75以下、0.7以下、0.65以下、0.6以下または0.55以下であってもよい。
【0025】
一方、前記で第1表面から第2表面の方向に測定した金属フォームの内部に高分子成分が存在する部分までの長さPは、前記第1表面で測定した高分子成分が存在する最も深い地点までの長さ、最も短い地点までの長さまたは高分子成分が存在する長さの平均値であってもよい。
【0026】
図1は、前記複合材を示す模式図であって、中間に金属フォーム101が存在し、前記金属フォーム101の一方の表面は、高分子成分102により全面的に覆われており、他方の表面には、高分子成分103が部分的に存在する場合を示す。
【0027】
前記で高分子成分は、光硬化性組成物の硬化物であってもよい。用語「光硬化性組成物」は、光の照射により硬化して高分子を形成し得る物質を意味する。
【0028】
本明細書で光の照射には、マイクロ波(microwaves)、赤外線(IR)、紫外線(UV)、X線およびガンマ線はもちろん、アルファ-粒子線(alpha-particle beam)、プロトンビーム(proton beam)、中性子ビーム(neutron beam)および電子線(electron beam)のような粒子ビーム等の照射も含まれ得る。
【0029】
このような光硬化性組成物としては、アクリル系光硬化性組成物、エポキシ系光硬化性組成物、イソシアネート系光硬化性組成物、ウレタン系光硬化性組成物またはシリコーン系光硬化性組成物等を例示することができる。前記各組成物は、それぞれ硬化して、アクリル系高分子成分、エポキシ系高分子成分、イソシアネート系高分子成分、ウレタン系高分子成分またはシリコーン系高分子成分を形成し得る組成物であり、このような組成物は、高分子組成物の業界に多様に公知となっており、本出願では、このような公知の成分のうち適切な成分を選択して使用することができ、必要な場合に、前記のうち2種以上の成分を使用して複合高分子を形成することもできる。
【0030】
前記のような組成物は、一般的に光照射により硬化し得る官能基を有する高分子成分、オリゴマー成分および/または単量体成分を含み、光の照射により硬化反応を開始させることができる開始剤、例えば、ラジカル開始剤や、カチオン開始剤等を含む。前記で光照射により硬化し得る官能基としては、アクリロイル基やメタクリロイル基等のラジカル重合性の二重結合を含む官能基や、グリシジル基、脂環式エポキシ基、オキセタニル基等のカチオン重合性の官能基等を例示することができるが、これらに制限されない。
【0031】
前記複合材の構造において金属フォームの第1表面上に存在する高分子成分の厚さは、約1nm~1cmの範囲内にあり得る。しかしながら、前記厚さは、目的に応じて適切に変更され得る。前記厚さは、他の例において、100nm~100μm程度であってもよい。
【0032】
前記高分子成分の厚さP2Tは、0~1cmの範囲内にありえる。しかしながら、前記厚さも、目的に応じて適切に変更され得る。
【0033】
また、前記複合材の構造において第2表面上に存在する高分子成分は、柱(pillar)形状で存在することができる。
【0034】
前記で高分子成分の厚さは、当該金属フォームの表面を開始地点として測定した厚さである。
【0035】
しかしながら、前記に言及された重量比率、厚さ比率や厚さまたは高分子成分の形状は、目的とする前記複合材の用途に応じて制御され得るものであって、特に制限されるものではない。
【0036】
本出願の複合材は、断熱素材、放熱素材、防音素材、軽量化素材、構造材または電極素材等に使用することができる。
【0037】
前記のような形態の複合材は、前記両表面、すなわち第1および第2表面のうち少なくともいずれか一つの表面上に光硬化性組成物が形成された前記金属フォームの前記両表面のうちいずれか一つの表面のみに対して光を照射する段階を通じて製造することができる。前記光硬化性組成物は、前記第1および第2表面のうちいずれか一つの表面上にのみ存在しているか、あるいは、両表面上に共に存在していてもよい。
【0038】
前記のような方法で光を照射すると、光が照射された金属フォーム表面の光硬化性組成物は、照射された光により硬化するが、その反対側の表面の光硬化性組成物の少なくとも一部は、前記金属フォームが光を遮断するようになって、硬化反応が行われないか、弱く行われる。したがって、前記光の照射工程後に未硬化の組成物を除去すると、前述した非対称構造が具現され得る。前記で未硬化の組成物は、硬化反応が全く行われない場合はもちろん、硬化反応が弱く行われて、後述する除去工程で除去され得る場合も含まれる。
【0039】
したがって、前記のような方法によるとき、光の照射程度や方向、光硬化性組成物の厚さおよび/または金属フォームの厚さ、金属フォームの気孔度や孔隙のサイズを制御すると、当該非対称構造の形態も多様に調節することができる。
【0040】
一例において、前記工程では、前記光硬化性組成物を金属フォームの第1および第2表面のうち少なくとも一つ以上の表面上に約1nm~2cmの範囲内の厚さで形成することができ、この際、光硬化性組成物は、層形状に形成され得るが、これに制限されない。
【0041】
前記過程で金属フォームの両表面上に光硬化性組成物を形成する方法は、特に制限されない。例えば、金属フォームを前記光硬化性組成物に浸漬して含浸させる方法や、前記光硬化性組成物を前記金属フォームにコートする方法等が適用され得る。
【0042】
また、光の照射形態も、特に制限されず、適用された光硬化性組成物の硬化条件によって適切な類型の光を照射すれば良い。例えば、一般的な光照射工程である紫外線照射工程の場合、約800~2,000W/cmの範囲内の照度および約10~10,000mJ/cmの光量で紫外線が照射され得るが、この条件は、例示的である。
【0043】
本出願の製造方法では、前記光の照射後に未硬化の光硬化性組成物を除去する段階をさらに行うことができる。
【0044】
このような工程により前述した非対称構造が形成され得る。前記未硬化の光硬化性組成物を除去する段階は、現像(developing)と呼ぶことができる。このような現像工程は、公知の方法で行うことができ、例えば、前記現像工程は、未硬化の組成物を除去できるものと知られている処理剤等を使用して行うことができるが、前記処理剤としては、エタノール、塩基水、N-メチルピロリドン、メチレンクロリド、クロロホルム、トルエン、エチレングリコールまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の現像液等が知られている。前記のような現像液を使用した適切な処理を通じて現像工程が行われ得、例えば、約2bar以上の圧力と20℃~50℃の温度範囲内でスプレー現像法で前記現像液を適用して現像工程を行うことができる。
【0045】
また、本出願は、複合材、例えば、前記のような方法で形成された複合材に関する。
【0046】
このような複合材は、前述したように、フィルム形状の金属フォームおよび前記金属フォームの対向する両表面に存在する高分子成分を含み、この際、両表面の高分子成分は、前述したような非対称的な構造であってもよい。
【0047】
前記複合材に関する具体的な事項、例えば、前記金属フォームと高分子成分の種類、厚さ、厚さ比率や重量比率、高分子成分の形状等については、前記に記述した内容が同一に適用され得る。
【発明の効果】
【0048】
本出願では、金属フォームと高分子成分を含み、前記高分子成分が前記金属フォームの両面で非対称的な構造で形成された複合材を製造する方法と、この方法で製造された複合材を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本出願の複合材の模式的な側面図である。
図2】実施例1で形成された複合材の上面図(Top view)である。
図3】実施例1で形成された複合材の下面図(Bottom view)である。
図4】実施例1で形成された複合材の断面図(cross section view)である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、実施例および比較例を通じて本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲が下記実施例に制限されるものではない。
【0051】
実施例1
金属フォームとしては、銅金属フォームであって、厚さが約40μm程度のフィルム形状であり、気孔度が略75%程度の銅金属フォームを使用した。光硬化性組成物としては、紫外線硬化型の単量体であって、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)とラジカル開始剤であるTPO(Darocure)が混合された材料を使用した。前記光硬化性組成物を前記銅金属フォームの表面に厚さが約70μm程度となるようにコートした。次に、前記金属フォームの上部表面のみに対して約3J/cm程度の光量で紫外線(波長:320nm)を照射した。紫外線の照射後に、現像液(エタノール)を使用した現像工程で未硬化の組成物を除去して、複合材を製造した。
【0052】
図2は、前記のような工程により形成された複合材の上面図であって、紫外線が照射された表面を示す図であり、図面のように金属フォーム表面のほぼ全面積が高分子成分で覆われていた。この際、前記高分子成分の層の厚さは、約50~60μm程度であった。
【0053】
図3は、前記のような工程により形成された複合材の下面図であって、紫外線が照射された表面と反対側の表面を示す図である。図面のように、高分子成分(柱形状)は、金属フォームの表面の一部のみを覆っており、金属フォームが表面に露出している。この際、前記高分子成分(柱形状)の厚さは、約10μm程度であり、高分子成分(柱形状)は、金属フォーム表面の約36%の面積を覆っていた。図4は、前記工程で形成された複合材の断面図である。
【0054】
実施例2
紫外線の照射時に光量を約100mJ/cm程度に変更したことを除いて、実施例1と同一に複合材を製造した。このような場合に、紫外線の照射光量が低くなることによって、紫外線が照射された表面とは反対の表面に高分子成分の柱(pillar)が形成されず、金属フォームの内部においても厚さ方向に紫外線が照射された側の表面から約20μm深さまで高分子が存在する複合材が形成された。この場合、紫外線が照射された表面の高分子成分の厚さは、約50μm程度であり、反対側の場合、面積比は、0%であった。
【符号の説明】
【0055】
101 金属フォーム
102 高分子成分
103 高分子成分
図1
図2
図3
図4