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特許7004788埋込金物位置探知方法、及び、埋込金物位置探知装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】埋込金物位置探知方法、及び、埋込金物位置探知装置
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/08 20060101AFI20220114BHJP
   G01V 3/12 20060101ALI20220114BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20220114BHJP
   E04G 23/00 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
G01V3/08 B
G01V3/12 B
E04G21/12 105Z
E04G23/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020184938
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2020-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】399117730
【氏名又は名称】住友金属鉱山シポレックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】飯田 好孝
(72)【発明者】
【氏名】杉原 淳
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-257172(JP,A)
【文献】米国特許第08248056(US,B1)
【文献】特開2010-066113(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0022666(US,A1)
【文献】特開2007-101451(JP,A)
【文献】実開平05-036386(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0181289(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0021461(US,A1)
【文献】米国特許第09703002(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G21/12 、23/00 -23/08 、
G01V 1/00 -99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートパネルに埋設されている埋込金物の位置を探知する、埋込金物位置探知方法であって、
磁気センサーによって、前記コンクリートパネルの表面上における前記埋込金物の推定埋設位置近傍範囲を走査する走査工程と、
前記磁気センサーによって前記埋込金物から生じる磁気が検知された範囲と該磁気が検知されなかった範囲との境界線に囲まれる円領域を特定する、円領域特定工程と、
前記円領域の中心位置を、前記コンクリートパネルの面方向における前記埋込金物の埋設位置であると判断する、埋設位置判断工程と、
を含んでなる、
埋込金物位置探知方法。
【請求項2】
前記埋設位置判断工程においては、前記円領域の半径から算出される前記埋込金物の推定埋設深さを、深さ方向における前記埋込金物の埋設位置であると判断する、
請求項1に記載の埋込金物位置探知方法。
【請求項3】
前記磁気センサーが、直列配置される複数の磁気センサー素子からなり、
前記走査工程においては、前記磁気センサーを、前記推定埋設位置近傍範囲において、複数の前記磁気センサー素子の配置方向と直交する方向に沿って直線運動させる、
請求項1又は2に記載の埋込金物位置探知方法。
【請求項4】
前記埋込金物は、前記コンクリートパネルへの埋設後に、該コンクリートパネルへの穿孔によって、該コンクリートパネルの表面に露出させる部分である開口部を有し、
前記埋込金物を前記コンクリートパネル内に埋設する前に、前記開口部の周囲に磁気発生部を形成する、磁気発生部形成工程を行う、
請求項1から3の何れかに記載の埋込金物位置探知方法。
【請求項5】
前記コンクリートパネルが軽量気泡コンクリートパネルである、
請求項1から4の何れかに記載の埋込金物位置探知方法。
【請求項6】
複数の磁気センサー素子からなる磁気センサーによって、埋込金物が埋設されているコンクリートパネルの表面を、複数の前記磁気センサー素子の配置方向と直交する方向に沿って走査する、走査部と、
前記磁気センサー素子によって前記埋込金物から生じる磁気が検知された範囲と該磁気が検知されなかった範囲との境界線に囲まれる円領域を特定する、円領域特定部と、
前記円領域の中心位置を、前記コンクリートパネルの面方向における前記埋込金物の埋設位置であると判断する、埋設位置判断部と、を備える、
埋込金物位置探知装置。
【請求項7】
前記埋設位置判断部は、前記円領域の半径から算出される前記埋込金物の推定埋設深さを、深さ方向における前記埋込金物の埋設位置であると判断する、
請求項6に記載の埋込金物位置探知装置。
【請求項8】
前記磁気センサーにおいて、複数の前記磁気センサー素子が、千鳥状に配置されている、請求項7に記載の埋込金物位置探知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量気泡コンクリート(ALC)パネル等のコンクリートパネルの内部に埋め込まれた埋込金物の埋込位置を探知する、埋込金物位置探知方法、及び、埋込金物位置探知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、軽量気泡コンクリート(ALC)パネル等のコンクリートパネルの内部に埋め込まれた埋込金物(特許文献1参照)の開口部(ナット部分)を、パネル表面に露出させるために、ドリル等による穿孔加工が行われている。この埋込金物の位置は、パネルの外部からは視認できないため、パネルへの金物の埋設位置に係る設計値に基づいて穿孔位置を推定して穿孔する作業が行われている。
【0003】
しかしながら、実際には、設計値通りの位置で穿孔しても、設計値の誤差等により穿孔位置とナット位置が正確に一致せず、上記の開口部が適切に露出しない不具合が少なからず発生していた。このような不具合を解消するために、コンクリートパネルへの穿孔前に埋込金物の開口部の埋設位置を正確に検出する手段が模索されていた。
【0004】
コンクリート構造物の内部の埋設物の位置を探索する技術的手段として、例えば、予備孔に、金属感知センサーを備えた探知棒を挿入してコンクリート構造物に配筋されている鉄筋を探索する方法(特許文献2参照)や、ECTセンサーをコンクリート構造物に開けた試掘孔に挿入する方法(特許文献3参照)等が知られている。しかしながら、これらは何れも、探索対象埋設される構造物に探索のためだけに必要となる孔を別途形成することが必須とされている技術であり、パネルを傷つけることが許容されない建材用等のコンクリートパネルには適用が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-248636号公報
【文献】特開2007-178365号公報
【文献】特開2009-168768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ALCパネル等のコンクリートパネルに埋設されている埋込金物の開口部を、パネル表面に露出させるために、埋込金物のパネルの面方向における埋設位置を、パネルを傷つけることなく探知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、埋込金物の埋設位置を磁気センサーによる走査によって行い、尚且つ、独自の発想で構成を最適化した円領域特定工程を、埋設位置の判断に寄与させることで、上記課題を解決し得ることに想到し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
(1) コンクリートパネルに埋設されている埋込金物の位置を探知する、埋込金物位置探知方法であって、磁気センサーによって、前記コンクリートパネルの表面上における前記埋込金物の推定埋設位置近傍範囲を走査する走査工程と、前記磁気センサーによって前記埋込金物から生じる磁気が検知された範囲と該磁気が検知されなかった範囲との境界線に囲まれる円領域を特定する、円領域特定工程と、前記円領域の中心位置を、前記コンクリートパネルの面方向における前記埋込金物の埋設位置であると判断する、埋設位置判断工程と、を含んでなる、埋込金物位置探知方法。
【0009】
(1)の埋込金物位置探知方法によれば、コンクリートパネルに埋設されている埋込金物のパネルの面方向における埋設位置を、パネルを傷つけることなく探知することができる。
【0010】
(2) 前記埋設位置判断工程においては、前記円領域の半径から算出される前記埋込金物の推定埋設深さを、深さ方向における前記埋込金物の埋設位置であると判断する、(1)に記載の埋込金物位置探知方法。
【0011】
(2)の埋込金物位置探知方法によれば、コンクリートパネルに埋設されている埋込金物のパネルの面方向及び深さ方向における埋設位置を、パネルを傷つけることなく探知することができる。
【0012】
(3) 前記磁気センサーが、直列に配置される複数の磁気センサー素子からなり、前記走査工程においては、前記磁気センサーを、前記推定埋設位置近傍範囲において、複数の前記磁気センサー素子の配置方向と直交する方向に沿って直線運動させる、(1)又は(2)に記載の埋込金物位置探知方法。
【0013】
(3)の埋込金物位置探知方法によれば、最小限の走査作業によって、円領域特定工程において特定される円領域の位置・大きさの理想値からのバラつきを少なくして、埋設位置判断工程において、より正確に、埋込金物の埋設位置を判断することができる。
【0014】
(4) 前記埋込金物を前記コンクリートパネル内に埋設する前に前記埋込金物の開口部の周囲に磁気発生部を形成する、磁気発生部形成工程を行う、(1)から(3)の何れかに記載の埋込金物位置探知方法。
【0015】
(4)の埋込金物位置探知方法によれば、埋込金物の開口部から発せられる磁気の強度を高めることによって、走査工程における磁気検出の精度を高めて、例えば、埋設深さが一定以上の深さである場合等においても、埋設位置判断工程において、高い精度で、埋込金物の開口部の位置を判断することができる。
【0016】
(5) 前記コンクリートパネルが軽量気泡コンクリートパネルである、(1)から(4)の何れかに記載のコンクリートパネルの埋込金物位置探知方法。
【0017】
(5)の埋込金物位置探知方法によれば、プレキャスト型の建材であり、パネル成形後において穿孔作業が頻繁に必要となる軽量気泡コンクリートパネルにおいて、高い精度で、埋込金物の埋設位置を判断することができる。
【0018】
(6) 複数の磁気センサー素子からなる磁気センサーによって、埋込金物が埋設されているコンクリートパネルの表面を、複数の前記磁気センサー素子の配置方向と直交する方向に沿って走査する、走査部と、前記磁気センサー素子によって前記埋込金物から生じる磁気が検知された範囲と該磁気が検知されなかった範囲との境界線に囲まれる円領域を特定する、円領域特定部と、前記円領域の中心位置を、前記コンクリートパネルの面方向における前記埋込金物の埋設位置であると判断する、埋設位置判断部と、を備える、埋込金物位置探知装置。
【0019】
(6)の埋込金物位置探知装置によれば、ALCパネル等のコンクリートパネルに埋設されている埋込金物のパネルの面方向における埋設位置を、パネルを傷つけることなく探知することができる。
【0020】
(7) 前記埋設位置判断部は、前記円領域の半径から算出される前記埋込金物の推定埋設深さを、深さ方向における前記埋込金物の埋設位置であると判断する、(6)に記載の埋込金物位置探知装置。
【0021】
(7)の埋込金物位置探知装置によれば、コンクリートパネルに埋設されている埋込金物のパネルの面方向における埋設位置及び深さ方向における埋設位置を、パネルを傷つけることなく探知することができる。
【0022】
(8) 前記磁気センサーにおいて、複数の前記磁気センサー素子が、千鳥状に配置されている、(7)に記載の埋込金物位置探知装置。
【0023】
(8)の埋込金物位置探知装置によれば、必要最小限個数の磁気センサー素子によって、十分に高い精度で埋込金物の埋設位置を、パネルを傷つけることなく探知することができる装置を構成することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ALCパネル等のコンクリートパネルに埋設されている埋込金物の開口部を、パネル表面に露出させるために、埋込金物のパネルの面方向における埋設位置を、パネルを傷つけることなく探知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の埋込金物位置探知方法の処理の流れを示すフロー図である。
図2】本発明の埋込金物位置探知方法における、走査工程の実施態様の説明に供する模式図である。を模式的に示す図面である。
図3図2に示す走査工程において、磁気センサーが磁気が検知された範囲と磁気が検知されなかった範囲との境界線に囲まれる円領域を特定する、円領域特定工程の実施態様の説明に供する模式図である。
図4図3に示す円領域特定工程において、特定される円領域の具体例を示す図である。
図5】埋設位置判断工程における、埋設深さの判断方法の説明に供する図面である。
図6】本発明の埋込金物位置探知装置の構成及びその実施形態の一例を模式的に示す図面である。
図7】本発明の埋込金物位置探知方法の実施対象となるコンクリートパネルに埋設されている埋込金物の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の「埋込金物位置探知方法」と、「埋込金物位置探知装置」の好ましい実施形態について説明する。但し、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0027】
<埋込金物位置探知方法>
本発明の「埋込金物位置探知方法」は、コンクリートパネルの内部に埋設されている埋込金物の埋設位置を、パネルを傷つけることなく探知することができる方法である。この埋込金物位置探知方法は、図1に示す通り、走査工程st1、円領域特定工程st2、及び、埋設位置判断工程st3を含んでなるプロセスである。
【0028】
以下においては、本発明の「埋込金物位置探知方法」の全体構成の理解を容易にするために、各工程が順次行われるものとしてそれぞれの工程の詳細を説明するが、上記の各工程は、必ずしも時系列上において明確に独立した工程として、順を追って行われることを必須とするプロセスではない。例えば、走査工程st1の実施時に、実質的に、或いは、見かけ上、同時に円領域特定工程st2が実行されてもよいし、埋設位置判断工程st3迄を含む全行程が実質的に、或いは、見かけ上、同時に実行されてもよい。
【0029】
又、本発明の「埋込金物位置探知方法」は、各種のコンクリートパネルにおいて当該埋込金物の埋設位置を探知することを目的とする様々な工程に適用することができる。但し、一例として図に示すような埋込金物2が予め埋設された状態で建築現場等に搬入されるプレキャスト型の建材として広く用いられていて、且つ、埋設位置を探知するためであってもパネルの損傷を伴う作業が許容されない、軽量気泡コンクリートパネルにおける実施を、特に好ましい実施形態として挙げることができる。
【0030】
本発明の「埋込金物位置探知方法」の好ましい実施対象である軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)は、製造工程において埋込金物2が、パネル内に配設されている鉄筋31に固着された状態で、材料スラリーを注入して、発泡硬化させることにより、埋込金物2が埋設されたALCパネルとして得ることができるものである。
【0031】
又、埋込金物としては、コンクリートパネル3の内部に埋設した状態で、開口部(ナット部分)を、パネル表面に露出させて用いる金物であれば、公知の各種の埋込金物を得段の制限なく実施対象とすることができる。但し、本発明の「埋込金物位置探知方法」においては埋込金物の本体21の開口部の周囲に、磁気発生部22が形成されている埋込金物2を用いることが好ましい。
【0032】
上記の開口部の周囲に、磁気発生部22を形成するための磁性体材料としては、例えば、フェライト系磁石とニトリルゴム系コポリマーとからなる異方性ゴムマグネット等、所謂ゴム磁石を用いることが好ましい。一例として、汎用的なテープ状のゴム磁石を埋込金物の本体21の開口部の周辺に巻き付けることによって、磁気発生部22を容易に形成することができる。
【0033】
上記の磁気発生部22は、図に示すように、キャップ状に成形されているものを用いてもよい。このようなキャップ状の形状の磁気発生部22形成用部品を予め必要量製造或いは取得しておくことにより、埋込金物の本体21への装着を極めて容易な作業として行うことができる。又、これを軽量気泡コンクリートパネルに用いる場合には、パネルの製造過程において、材料スラリーの流入を防ぐために開口部に装着される材料スラリーの流入を防止するためのキャップとしても機能させることができる。
【0034】
[走査工程]
走査工程st1は、磁気センサー11によって、コンクリートパネル3の表面上における埋込金物2の推定埋設位置近傍範囲を走査する工程である。
【0035】
この走査工程st1においては、先ずは、図2に示すように、埋込金物位置探索装置1を、矢印Sの方向に向けて動かし、所与の設計値から推認される埋込金物2の推定埋設位置の近傍に移動させる。そして、この推定埋設位置含むその周辺の範囲(「推定埋設位置近傍範囲」)を、磁気センサー11によって走査する。
【0036】
又、本発明の「埋込金物位置探知方法」は、コンクリートパネル3に埋設する埋込金物について、予め、図に示すように、埋込金物2の本体21に、予め、磁気発生部22を形成しておく、「磁気発生部形成工程」を、走査工程st1に先行して行うプロセスとすることもできる。この場合における磁気発生部22は、ゴム磁石等、磁気を発する公知の様々な磁性体材料によることができる。
【0037】
尚、本明細書において、「埋込金物から発生されている磁気」とは、例えば、上記の埋込金物2に形成されている磁気発生部22等から直接発生されている磁力線に由来するものに限られず、導電体である埋込金物の存在に起因する磁場の変化によって発生する磁気を全て含むものである。つまり、「埋込金物から発生されている磁気」とは、電磁誘導を利用して磁場の変化を促し、当該磁場の変化を探知する従来公知の金属探知機を磁気センサー11として用いる場合において、金属の存在を示す磁気として探知される磁場の変化のことを含む概念である。
【0038】
又、走査工程st1においては、複数の磁気センサー素子111を有し、それらが、直列に配置されているか、或いは、複数の列において千鳥状に配置されている磁気センサーを好ましく用いることができる。例えば、図3に示すように、磁気センサー素子111が千鳥状に配置されている磁気センサー11を、埋込金物2の設計上の埋設位置に基づいて推定される推定埋設位置近傍範囲において、上記の複数の磁気センサー素子111の配置方向と直交する方向に沿って直線運動させる態様で走査を行うことが好ましい。これにより、最小限の走査作業によって、円領域特定工程st2において特定される円領域の位置・大きさの理想値からのバラつきを少なくして埋込金物の埋設位置検知の精度を向上させることができる。尚、磁気センサー素子111が1つである場合には、走査工程st1において、これを、推定埋設位置近傍範囲において、複数回、往復運動させることによって、上記同様の作用効果を享受することができる。
【0039】
[円領域特定工程]
円領域特定工程st2は、例えば、図3に示すように、走査工程st1によって得ることができる「埋込金物から発生されている磁気」が検知された範囲の分布から、コンクリートパネル3の内部に埋設されている埋込金物2から生じる磁気が検知された範囲と、当該磁気が検知されなかった範囲との境界線に囲まれる領域である、円領域100を特定する工程である。円領域特定工程st2は、走査工程st1において得た「埋込金物から発生されている磁気」が検知された範囲と検知されなかった範囲の分布から、円領域100を特定するための演算処理が可能な各種の情報処理装置、プログラム等によって行うことができる。
【0040】
円領域特定工程st2について、例えば、実施態様の一例を示す図3の場合においては、磁気センサー11が備える複数の磁気センサー素子111のうち、磁気センサー素子111Aは、走査工程st1において磁気を検知せず、磁気センサー素子111Bは、同図中の「位置ON」において、磁気を検知し始め、「位置OFF」において、磁気の検知が途絶えている。つまり、磁気センサー素子111Bの走査経路中における上記の「位置ON」と「位置OFF」が境界点となり、その間の範囲が、「埋込金物2から生じる磁気が検知された範囲」とされる。そして、全ての磁気センサー素子111からの同様の走査結果に基づいて、「埋込金物2から生じる磁気が検知された範囲」と、「当該磁気が検知されなかった範囲」との境界線に囲まれる円領域100が特定される。
【0041】
円領域100の特定は、より詳細には、走査工程st1で得た上記の「位置ON」及び「位置OFF」によって特定される複数の境界点から、最小二乗法で求めることができる。下記の表1は、本発明の方法に従って、最小二乗法を用いて円領域を特定した場合における特定の精度を確認する試験の結果を示すものであり、境界点の数と円領域の特定の結果のばらつきの相関が示されている。又、図4は、同試験によって特定された個々の円領域の例である。
【0042】
上記の試験では、磁気センサー素子111を2個から5個の範囲で変更して、即ち、境界点の数を、4個、6個、8個、10個に変更して、それぞれの態様で、円領域の特定を5回ずつ行い円領域特定(「円フィッティング」)の精度を比較している。磁気センサー素子111を2個として境界点の数を4個程度確保することで実用上十分な精度とできることが確認されたが、より精度を高めるためには、磁気センサー素子111の数を3個以上とすることが好ましい。尚、表1において、(a,b)は、特定された円領域の中心座標、rは同円領域の半径、σは、5回の試験結果の分散(標準偏差)を示している。尚、実際には、磁気センサーの移動経路(走査線)が、円領域の1点と接する状態となる場合もあるため、その場合は、必ずしも、上記のように境界点の数が磁気センサー素子111の数の2倍とはならない場合もあり得る。
【0043】
【表1】
【0044】
[埋設位置判断工程]
埋設位置判断工程st3は、円領域特定工程st2において特定された円領域100の中心位置を、コンクリートパネル3の面方向における埋込金物2の埋設位置であると判断する工程である。埋設位置判断工程st3は、円領域特定工程st2において特定された円領域100の座標情報に係る演算処理が可能な各種の情報処理装置、プログラム等によって行うことができる。
【0045】
又、本発明の埋込金物位置探知方法においては、この埋設位置判断工程st3を、上記の面方向における埋設位置の判断に加えて、更に、埋込金物2の深さ方向における埋設位置を併せて判断する工程とすることもできる。この場合、埋込金物2の深さ方向における「円領域100の半径」埋設位置の判断は、円領域特定工程st2において特定された円領域100の半径から、埋込金物2の推定埋設深さを算出することによって行う。
【0046】
円領域特定工程ST2において特定された「円領域100の半径」と、「磁気センサー素子111と埋込金物の磁気発生部(マグネットテープ)との間の距離(以下「センサー金物間推定距離」と言う。図5においては、「Z距離」と記した)」には一定の相関がある。従って、「円領域100の半径」から、「センサー金物間距離」を算出することができ、この値から、埋込金物2の推定埋設深さを算出することができる。
【0047】
上記の埋込金物2の「センサー金物間推定距離」の算出について、具体的には、予め、埋設深さが特定されている埋込金物の埋設深さの実測値に基づく検量線を作成し、この検量線に、円領域特定工程ST2において特定された「円領域100の半径」の値を外挿することにより、「円領域100の半径」から「センサー金物間推定距離」を算出することができる(図参照)。
【0048】
但し、上記の換算方法による場合には、埋込金物2のコンクリートパネル3内への埋設深さによっては、解が2つ存在する場合がある。例えば、図は、埋込金物の開口径が18mmであり、当該開口部を覆って、厚さ1.5mmのゴム磁石によって、図に示す状態で磁気発生部22が形成されている場合における検量線を示している。この場合においては、「円領域の半径」が31mmである場合に対応する「センサー金物間推定距離(Z距離)」の解は、「10mm」及び「25mm」である。
【0049】
従って、本発明の実施においては、検知対象に応じて、上記の「センサー金物間推定距離(Z距離)」の解が1つとなるように、検量線の使用範囲を規定する。具体的に、検知対象が軽量気泡コンクリート内に埋設された埋込金物である場合であれば、実際の埋設深さが30mm前後であることも考慮して、図の検量線の使用範囲を、Z距離が18mm~42mmとなる範囲とすればよい。これにより、埋設位置判断工程st3において、円領域100の半径から、埋込金物2の推定埋設深さについて、正しい1つの解を推定することができる。
【0050】
(穿孔工程)
本発明の「埋込金物位置探知方法」の実施においては、埋設位置判断工程st3において判断された埋込金物2の埋設位置に穿孔する「穿孔工程」を行うことによって、コンクリートパネル3の表面に埋込金物2の開口部を適切に露出させることができる。又、この際、埋込金物2の深さ方向の位置についても、上記の換算方法に基づいて判断された深さに合せて、適切な深さまで過不足なく穿孔することができる。
【0051】
<埋込金物位置探知装置>
上記各工程を含んでなる本発明の「埋込金物位置探知方法」は、一例として、図に示すような磁気センサー11を備える埋込金物位置探知装置1を用いて行うことができる。
【0052】
本発明の埋込金物位置探知装置1は、上述した走査工程st1を行うための磁気センサー11によって構成される走査部と、円領域特定工程st2を行う円領域特定部(図示略)と、埋設位置判断工程st3を行う埋設位置判断部(図示略)と、を備えてなる装置である。又、図に示すように、埋込金物位置探知装置1は、穿孔工程を行う穿孔具12と一体化されている構成であることが好ましい。
【0053】
走査部を構成する磁気センサーとしては、従来公知の各種の機器を適宜用いることができる。但し、複数の磁気センサー素子を有し、それらが、直列に配置されている磁気センサーであることが好ましく、図2、3に示されるように、磁気センサー素子111が、複数の列において千鳥状に配置されている磁気センサー11を特に好ましく用いることができる。
【0054】
円領域特定部、及び、又、埋設位置判断部は、上述した通り、円領域特定工程st2、埋設位置判断工程st3の各工程を、それぞれ実行可能な情報処理装置、プログラム等によって構成することができる。尚、埋設位置判断部は、円領域の半径から算出される埋込金物の推定埋設深さを、深さ方向における前記埋込金物の埋設位置であると判断するものであることが好ましい。
【符号の説明】
【0055】
1 埋込金物位置探知装置
11 磁気センサー
111 磁気センサー素子
12 穿孔具
2 埋込金物
21 埋込金物の本体
22 磁気発生部
3 コンクリートパネル(軽量気泡コンクリートパネル)
31 鉄筋
st1 走査工程
st2 円領域特定工程
st3 埋設位置判断工程
【要約】
【課題】ALCパネル等のコンクリートパネルに埋設されている埋込金物の開口部を、パネル表面に露出させるために、埋込金物のパネルの面方向における埋設位置を、パネルを傷つけることなく探知すること。
【解決手段】コンクリートパネル3に埋設されている埋込金物2の位置を探知する、埋込金物位置探知方法であって、磁気センサー11によって、コンクリートパネル3の表面上における埋込金物2の推定埋設位置近傍範囲を走査する走査工程st1と、磁気センサー11が埋込金物2から生じる磁気が検知された範囲と当該磁気が検知されなかった範囲との境界線に囲まれる円領域を特定する、円領域特定工程st2と、円領域の中心位置を、コンクリートパネル3の面方向における埋込金物2の埋設位置であると判断する、埋設位置判断工程st3と、を含んでなる、埋込金物位置探知方法とする。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7