(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】組成物、硬化物、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、固体撮像素子、画像表示装置、及び、化合物
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20220114BHJP
C08F 290/12 20060101ALI20220114BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20220114BHJP
C09B 47/30 20060101ALI20220114BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20220114BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
C08F2/44 B
C08F290/12
C09B67/20 G
C09B47/30
G03F7/004 505
G02B5/20 101
(21)【出願番号】P 2020503528
(86)(22)【出願日】2019-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2019007341
(87)【国際公開番号】W WO2019167950
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2020-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2018035196
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 明夫
(72)【発明者】
【氏名】尾田 和也
(72)【発明者】
【氏名】小泉 宙夢
(72)【発明者】
【氏名】出井 宏明
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-176310(JP,A)
【文献】特開2003-161823(JP,A)
【文献】特開昭60-209583(JP,A)
【文献】特開昭63-071858(JP,A)
【文献】特開2017-160370(JP,A)
【文献】Kimura T et al.,Preparation, Structure Determination, and Electrochemical Properties of Bis{[1,4,8,11, 15,18,22,25-octaethyl-2,3,9,10,16,17,23,24-octakis(methylthio)-phthalocyaninato]titanium(IV)} Benzene-1,2,4,5-tetrathiolate,European Journal of Organic Chemistry,Vol. 30,2008年,p.5079-5084
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 - 2/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1により表され、極大吸収波長が600nm以上750nm未満の範囲にある化合物と、
重合性化合物と、を含
み、
前記式1により表される前記化合物の含有量が、組成物の全固形分に対し、20質量%以上である、
組成物。
【化1】
式1中、Zはそれぞれ独立に、式2により表される基を表し、nは4~16の整数を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はZとは異なる1価の置換基を表し、mは0~12の整数を表し、m+nは16である。
【化2】
式2中、Xは、-O-、-S-、-NR
3-、-(C=O)-、又は、これらの少なくとも2つの組み合わせにより表される基であり、R
3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は、置換基を有してもよいアリール基を表し、Aは、2価の連結基を表し、Arは、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
【請求項2】
前記Zのうち少なくとも1つが、式1により表される化合物のβ位に結合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式1により表される前記化合物が、下記式3により表される化合物である、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【化3】
式3中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は前記Zとは異なる1価の置換基を表し、Xはそれぞれ独立に、-O-、-S-、-NR
3-、-(C=O)-、又は、これらの少なくとも2つの組み合わせにより表される基であり、R
3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は、置換基を有してもよいアリール基を表し、Aはそれぞれ独立に、2価の連結基を表し、Arはそれぞれ独立に、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
【請求項4】
前記Xがそれぞれ独立に、-O-、-S-、又は、-NR
3-であり、前記Aがそれぞれ独立に、炭素数1~4の置換基を有してもよく、-O-、-S-、-NR
3-をXとの結合部位以外に含んでもよいアルキレン基であり、R
3がそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は、置換基を有してもよいアリール基を表し、前記Rがそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
式1により表される前記化合物の含有量が、組成物の全固形分に対し、40質量%以上である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
式1により表される前記化合物の、組成物中における溶解度が0.1質量%以下である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
黄色顔料を更に含む、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
重合開始剤を更に含み、かつ、前記重合性化合物がエチレン性不飽和化合物である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化物を備えるカラーフィルタ。
【請求項11】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の組成物を、支持体上に付与して組成物膜を形成する工程と、
形成された組成物膜を、パターン状に露光する工程と、
露光後の組成物膜を現像して着色パターンを形成する工程と、を含む
カラーフィルタの製造方法。
【請求項12】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の組成物を、支持体上に付与し、硬化して硬化物を形成する工程と、
前記硬化物上にフォトレジスト層を形成する工程と、
前記フォトレジスト層をパターン状に露光し、現像することによりレジストパターンを形成する工程と、
前記硬化物を、前記レジストパターンを介してエッチングする工程と、を含む
カラーフィルタの製造方法。
【請求項13】
請求項10に記載のカラーフィルタを有する
固体撮像素子。
【請求項14】
請求項10に記載のカラーフィルタを有する
画像表示装置。
【請求項15】
下記式4により表される化合物。
【化4】
式4中、Xはそれぞれ独立に、-O-、-S-、又は、-NR
3-を表し、Aはそれぞれ独立に、炭素数1~4の置換基を有してもよく、-O-、-S-、-NR
3-をXとの結合部位以外に含んでもよいアルキレン基を表し、Arはそれぞれ独立に、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R
3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は、置換基を有してもよいアリール基を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組成物、硬化物、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、固体撮像素子、画像表示装置、及び、化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタ等の部材は、有機顔料や無機顔料を分散させた組成物等の顔料分散組成物に、多官能モノマー及び光重合開始剤、アルカリ可溶性樹脂及びその他成分を含有して着色感光性組成物とし、これを用いてフォトリソ法などにより製造されている。
上記顔料として、フタロシアニン化合物を用いることが知られている。
従来のフタロシアニン化合物又はフタロシアニン化合物を用いた組成物等の例としては、下記特許文献1及び特許文献2に記載のものが挙げられる。
【0003】
例えば特許文献1には、分子内に、有機顔料の母核構造と、光により分解して開始種を発生しうる部分構造と、を有する光重合開始剤が記載されている。
【0004】
特許文献2には、下記一般式(1)で表される赤外線吸収色素、及び重合性化合物を含む硬化性インキ組成物。が記載されている。
【0005】
【0006】
〔一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基を表し、上記R1~R16の少なくとも一つはR17-X-基を表すか、又は上記R1~R16中の隣接する2つが縮環した構造を少なくとも一つ含む。Xは、-S-、-NH-、-NR18-、又は-O-を表し、R17及びR18は、それぞれ独立に脂肪族基又はアリール基を表す。Mは、水素原子及び1価の金属原子からなる群より選択される2個の原子、2価の金属原子、又は3価もしくは4価の金属原子を含む2価の置換金属原子を表す。〕
【0007】
特許文献1:特開2009-079150号公報
特許文献2:特開2011-241349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カラーフィルタ等の部材の形成において用いられる色素として、分光特性に優れる色素を用いることが検討されている。本開示において、特定の波長Aの光に対する吸光度に対し、別の波長Bの光に対する吸光度が低いほど分光特性に優れるといい、上記波長Aと波長Bとの差が小さいほど分光特性に優れるという。一般的には、化合物の吸収波長のピーク幅が狭いほど、分光特性に優れやすい。
ここで、本発明者らは、鋭意検討した結果、特許文献1及び特許文献2において用いられているフタロシアニン色素においては、未だ分光特性に改善の余地があることを見出した。
【0009】
本開示に係る実施形態が解決しようとする課題は、得られる硬化物の分光特性に優れる組成物、上記組成物の硬化物、上記硬化物を備えるカラーフィルタ、上記カラーフィルタの製造方法、又は、上記カラーフィルタを備える固体撮像素子、若しくは画像表示装置を提供することである。
また、本開示に係る別の実施形態が解決しようとする課題は、新規な化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 下記式1により表され、極大吸収波長が600nm以上750nm未満の範囲にある化合物と、
重合性化合物と、を含む
組成物。
【0011】
【0012】
式1中、Zはそれぞれ独立に、式2により表される基を表し、nは4~16の整数を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はZとは異なる1価の置換基を表し、mは0~12の整数を表し、m+nは16である。
【0013】
【0014】
式2中、Xは-O-、-S-、-NR3-、-(C=O)-、又は、これらの少なくとも2つの組み合わせにより表される基であり、R3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は、置換基を有してもよいアリール基を表し、Aは2価の連結基を表し、Arはアリール基又はヘテロアリール基を表す。
<2> 上記Zのうち少なくとも1つが、式1により表される化合物のβ位に結合している、上記<1>に記載の組成物。
<3> 式1により表される上記化合物が、下記式3により表される化合物である、上記<1>又は<2>に記載の組成物。
【0015】
【0016】
式3中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は上記Zとは異なる1価の置換基を表し、Xはそれぞれ独立に、-O-、-S-、-NR3-、-(C=O)-、又は、これらの少なくとも2つの組み合わせにより表される基であり、R3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は、置換基を有してもよいアリール基を表し、Aはそれぞれ独立に、2価の連結基を表し、Arはそれぞれ独立に、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
<4> 上記Xがそれぞれ独立に、-O-、-S-、又は、-NR3-であり、上記Aがそれぞれ独立に、炭素数1~4の置換基を有してもよく、-O-、-S-、-NR3-をXとの結合部位以外に含んでもよいアルキレン基であり、R3がそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は、置換基を有してもよいアリール基を表し、上記Rがそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子である、上記<1>~<3>のいずれか1つに記載の組成物。
<5> 式1により表される上記化合物の含有量が、組成物の全固形分に対し、40質量%以上である、上記<1>~<4>のいずれか1つに記載の組成物。
<6> 式1により表される上記化合物の、組成物中における溶解度が0.1質量%以下である、上記<1>~<5>のいずれか1つに記載の組成物。
<7> 黄色顔料を更に含む、上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の組成物。
<8> 重合開始剤を更に含み、かつ、上記重合性化合物がエチレン性不飽和化合物である、上記<1>~<7>のいずれか1つに記載の組成物。
<9> 上記<1>~<8>のいずれか1つに記載の組成物を硬化してなる硬化物。
<10> 上記<9>に記載の硬化物を備えるカラーフィルタ。
<11> 上記<1>~<8>のいずれか1つに記載の組成物を、支持体上に付与して組成物膜を形成する工程と、
形成された組成物膜を、パターン状に露光する工程と、
露光後の組成物膜を現像して着色パターンを形成する工程と、を含む
カラーフィルタの製造方法。
<12> 上記<1>~<8>のいずれか1つに記載の組成物を、支持体上に付与し、硬化して硬化物を形成する工程と、
上記硬化物上にフォトレジスト層を形成する工程と、
上記フォトレジスト層をパターン状に露光し、現像することによりレジストパターンを形成する工程と、
上記硬化物を、上記レジストパターンを介してエッチングする工程と、を含む
カラーフィルタの製造方法。
<13> 上記<10>に記載のカラーフィルタを有する
固体撮像素子。
<14> 上記<10>に記載のカラーフィルタを有する
画像表示装置。
<15> 下記式4により表される化合物。
【0017】
【0018】
式4中、Xはそれぞれ独立に、-O-、-S-、又は、-NR3-を表し、Aはそれぞれ独立に、炭素数1~4の置換基を有してもよく、-O-、-S-、-NR3-をXとの結合部位以外に含んでもよいアルキレン基を表し、Arはそれぞれ独立に、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は、置換基を有してもよいアリール基を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表す。
【発明の効果】
【0019】
本開示に係る実施形態によれば、得られる硬化物の分光特性に優れる組成物、上記組成物の硬化物、上記硬化物を備えるカラーフィルタ、上記カラーフィルタの製造方法、又は、上記カラーフィルタを備える固体撮像素子、若しくは画像表示装置を提供することである。
また、本開示に係る別の実施形態によれば、新規な化合物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】吸収のすそ切れを説明するための吸収波長-吸光度曲線の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
更に、本開示において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質の合計量を意味する。
また、本開示における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本開示において、特別な記載がない限り、「Me」はメチル基を、「Et」はエチル基を、「Pr」はプロピル基を、「Bu」はブチル基を、「Ph」はフェニル基を、それぞれ表す。
本開示において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
また、本開示において、「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
本開示において「全固形分」とは、組成物の全組成から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また、「固形分」とは、上述のように、溶剤を除いた成分であり、例えば、25℃において固体であっても、液体であってもよい。
また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
以下、本開示を詳細に説明する。
【0022】
(組成物)
本開示に係る組成物は、上記式1により表され、極大吸収波長が600nm以上750nm未満の範囲にある化合物(以下「特定化合物」ともいう。)と、重合性化合物と、を含む。
【0023】
本開示に係る組成物を用いることにより、得られる硬化物の分光特性に優れる硬化物が得られる。
上記効果が得られる機構の詳細は不明であるが、以下のように推測される。
フタロシアニン化合物としては、構造の中心部において銅、亜鉛等の金属と錯体を形成した化合物が知られている。例えば、市販のカラーインデックス(C.I.)Pigment Blue 15:6は、下記式により表される構造の化合物である。
しかし、本開示における特定化合物は、中心部に上記金属を含まないことにより、結晶中での化合物の平面性が大きくなり、特定化合物同士の分子間のπ相互作用の影響が増加しやすいと考えられる。
また、本開示における特定化合物は、上記Zとして、式2により表される基を少なくとも4つ有することにより、式2に含まれるアリール基によるπ相互作用が更に影響するため、特定化合物同士の分子間のπ相互作用の影響が増加しやすいと考えられる。
以上のように、特定化合物同士の分子間のπ相互作用が増加する結果、特定化合物における吸収のすそ切れが向上するため、このような化合物を含む組成物の硬化物においても、分光特性が向上すると考えられる。
また、「吸収のすそ切れ」とは、吸収波長-吸光度曲線において、吸光度が小さい領域における傾きの絶対値が大きいことをいう。
すそ切れについて、
図1を用いて説明する。
図1は、2つの化合物(化合物A(実線)及び化合物B(破線))の吸収波長-吸光度曲線を示したものであり、横軸が吸収波長、縦軸が吸光度を示している。
ここで、化合物Aにおいては、化合物Bと比較して、吸光度が小さい領域(矢印C付近の領域)における傾きの絶対値が大きい。すなわち、化合物Aは化合物Bよりも吸収のすそ切れがよいといえる。
【0024】
【0025】
また、本開示に係る特定化合物は、亜鉛等の金属元素を含むフタロシアニン色素よりも、耐光性に優れやすいと考えられる。
更に、本開示に係る特定化合物は、式2により表される基を4個以上含むことにより、組成物の保存安定性にも優れやすいと考えられる。
以下、本開示に係る組成物に含まれる各成分の詳細を説明する。
【0026】
<特定化合物>
本開示において用いられる特定化合物は、下記式1により表され、極大吸収波長が600nm以上750nm未満の範囲にある化合物である。
また、特定化合物は、着色剤であることが好ましく、顔料であることがより好ましい。
なお、本開示において、顔料とは、溶剤に不溶性の色素化合物を意味する。また、染料とは、溶剤に溶解する色素化合物を指す。
本開示に用いられる顔料は、例えば、25℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテ-ト100gに対する溶解量、及び、25℃の水100gに対する溶解量がいずれも0.1g以下であることが好ましく、0.05g以下であることがより好ましく、0.01g以下であることが更に好ましい。また、本開示に用いられる染料は、25℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテ-ト100gに対する溶解量、及び、25℃の水100gに対する溶解量の少なくとも一方が0.1gを超えることが好ましく、1g以上であることがより好ましく、5g以上であることが更に好ましい。
【0027】
【0028】
式1中、Zはそれぞれ独立に、式2により表される基を表し、nは4~16の整数を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はZとは異なる1価の置換基を表し、mは0~12の整数を表し、m+nは16である。
【0029】
【0030】
式2中、Xは-O-、-S-、-NR3-、-(C=O)-、又は、これらの少なくとも2つの組み合わせにより表される基であり、R3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は、置換基を有してもよいアリール基を表し、Aは2価の連結基を表し、Arはアリール基又はヘテロアリール基を表す。
【0031】
〔Z〕
式1中、Zはそれぞれ独立に、上記式2により表される基を表す。
Zのうち少なくとも1つが、式1により表される化合物のβ位に結合していることが好ましく、Zのうち少なくとも2つが、式1により表される化合物のβ位に結合していることがより好ましく、Zのうち少なくとも4つが、式1により表される化合物のβ位に結合していることが更に好ましい。
本開示において、Zのうち少なくとも1つが、式1により表される化合物のβ位に結合しているとは、Zのうち少なくとも1つが、下記式1-1中のβで記載された位置に存在することをいう。
下記式1-1におけるα及びβにより記載された16箇所が、式1により表される化合物におけるZ及び後述するRが結合する位置である。
式1-1に示すように、式1により表される化合物は8つのβ位を有しているが、8つのβ位のうち少なくとも2つにZが結合していることが好ましく、少なくとも4つにZが結合していることがより好ましい。
また、分光特性の観点からは、式1で表される化合物の全てのβ位に上記Zが結合していることが好ましく、式1で表される化合物の全てのβ位に上記Zが結合しており、かつ、式1で表される化合物の全てのα位に上記Zが結合していないことが好ましい。具体的には、式1で表される化合物は、後述する式3で表される化合物であることが好ましい。
【0032】
【0033】
〔式3で表される化合物〕
式1で表される化合物は、下記式3で表される化合物であることが好ましい。
【0034】
【0035】
式3中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は上記Zとは異なる1価の置換基を表し、Xはそれぞれ独立に、-O-、-S-、-NR3-、-(C=O)-、又は、これらの少なくとも2つの組み合わせにより表される基であり、R3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は、置換基を有してもよいアリール基を表し、Aはそれぞれ独立に、2価の連結基を表し、Arはそれぞれ独立に、アリール基を表す。
式3中、-X-A-Arにより表される基は、式1におけるZにより表される基(すなわち、式2により表される基)と同義であり、好ましい態様も同様である。
また、式3中のRは、式1におけるRにより表される基と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0036】
〔式2により表される基〕
-X-
Xはそれぞれ独立に、-O-、-S-、-NR3-、-(C=O)-、又は、これらの少なくとも2つの組み合わせにより表される基であり、R3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は、置換基を有してもよいアリール基を表す。
Xとしては、-O-、-S-、-NR3-、-C(=O)-、-OC(=O)-、-SC(=O)-、-NR3C(=O)-、-NR3C(=O)O-、-NR3C(=O)NR3-、-OC(=O)O-、-OC(=O)S-、-OC(=O)NR3-等が好ましく挙げられる。なお、本開示において、特段の記載がない限り、二価の基の結合の向きは特に限定されないものとする。具体的には、例えばXが-OC(=O)-であると記載された場合、酸素原子側がAに結合してもよいし、炭素原子側(-C(=O)-側)がAに結合してもよいものとする。
また、R3としては、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6~20のアリール基が好ましく、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~4のアルキル基、又は、置換基を有してもよいフェニル基がより好ましい。
上記アルキル基が有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリーロキシ基、ジアルキルアミノ基、アルキルアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。
上記アリール基が有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリーロキシ基、ジアルキルアミノ基、アルキルアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。
また、極大吸収波長が600nm以上750nm未満の範囲となりやすい観点からは、上記Xがそれぞれ独立に、-O-、-S-、又は、-NR3-であることが好ましい。
【0037】
-A-
Aはそれぞれ独立に、2価の連結基を表す。上記2価の連結基の連結原子数は、耐光性及び色価の観点から、1~12が好ましく、1~8がより好ましく、1~6が更に好ましい。
本開示において、2価の連結基には、単結合は含まれないものとする。
連結原子数とは、Aにおける、Xとの結合部位とArとの結合部位とを最短で結ぶ原子数をいう。
本開示において、色価とは、単位質量当たりの吸光係数を示す値である。
また、Aは、-O-、-S-、-NR3-、-(C=O)-、又は、これらの少なくとも2つの組み合わせにより表される基を、Xとの結合部位以外の位置に含んでもよい炭化水素基であることが好ましい。
上記炭化水素基としては、アルキレン基、アリーレン基、又は、これらの結合により表される基が挙げられる。
上記-O-、-S-、-NR3-、-(C=O)-、又は、これらの少なくとも2つの組み合わせにより表される基については、Xにおけるこれらの基と同様である。
また、Aとしては、アルキレン基、アリーレン基、アルキレンオキシ基、ポリアルキレンオキシ基、-RA-NR3-、又は、-RA-S-、又は、これらの少なくとも2つの組み合わせにより表される基が好ましい。上記アルキレン基としては、炭素数1~6のアルキレン基が好ましい。
上記アリーレン基としては、フェニレン基が好ましい。
上記アルキレンオキシ基としては、炭素数1~6のアルキレンオキシ基が好ましい。
上記ポリアルキレンオキシ基としては、ポリエチレンオキシ基、又は、ポリプロピレンオキシ基がより好ましい。
-RA-NR3-、又は、-RA-S-、におけるRAは炭化水素基を表し、炭素数1~6のアルキレン基又はフェニレン基が好ましい。R3は上述のXにおけるR3と同義であり、好ましい態様も同様である。
また、吸収波長のすそ切れの向上の観点から、Aとしては、炭素数1~4の置換基を有してもよく、-O-、-S-、-NR3-をXとの結合部位以外に含んでもよいアルキレン基がより好ましい。
R3は上述のXにおけるR3と同義であり、好ましい態様も同様である。
上記炭素数1~4の置換基としては、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0038】
-Ar-
Arはそれぞれ独立に、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
アリール基としては、色価の観点からは、炭素数4~10のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
ヘテロアリール基におけるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子が好ましい。また、ヘテロアリール基は、炭素数3~9のヘテロアリール基が好ましく、ピリジル基、キノリル基又はフラニル環、チエニル基、ピロリル基がより好ましい。
Arは置換基を有してもよく、好ましい置換基としては、フェニル基、ナフチル基、又は、ヘテロアリール基が挙げられ、耐光性の観点からはフェニル基又はナフチル基が好ましく、色価の観点からはフェニル基がより好ましい。
ヘテロアリール基におけるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子が好ましい。また、ヘテロアリール基は、炭素数3~9のヘテロアリール基が好ましく、ピリジル基、キノリル基又はチエニル基がより好ましい。
【0039】
〔n、m〕
式1中、nは4~16の整数を表し、4~12の整数であることが好ましく、6~10の整数であることがより好ましい。
すなわち、mは0~12の整数であることが好ましく、4~12の整数であることが好ましく、6~10の整数であることがより好ましい。
nが6以上であれば、特定化合物における吸収波長のすそ切れが向上し、得られる硬化物の分光特性がより優れやすい。
また、nが12以下(より好ましくは10以下)であれば、耐光性に優れやすい。
更に、nの数によって特定化合物の極大吸収波長を調整することも可能である。nが小さいほど上記極大吸収波長が短波長化しやすく、nが大きいほど長波長化しやすいと考えられる。
【0040】
〔R〕
Rはそれぞれ独立に、水素原子又はZとは異なる1価の置換基を表し、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、-OR1、-NR1R2又は-SR1であることが好ましい。
また、色価の観点からは、水素原子又はハロゲン原子が好ましい。
上記アルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
上記アリール基としては、炭素数6~20のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子がより好ましい。
上記R1はアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~20のアリール基又は炭素数7~24のアラルキル基が好ましい。
上記R2はR1と同様の基を表し、-NR1R2においてR1とR2とが同一の基であってもよいし、異なる基であってもよい。
【0041】
得られる硬化膜の分光特性、色価及び耐光性の観点からは、上記Xがそれぞれ独立に、-O-、-S-、又は、-NR3-であり、上記Aがそれぞれ独立に、炭素数1~4の置換基を有してもよく、-O-、-S-、-NR3-をXとの結合部位以外に含んでもよいアルキレン基であり、R3がそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は、置換基を有してもよいアリール基を表し、上記Rがそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子であることが好ましい。
また、上記Xがそれぞれ独立に、-O-、-S-、又は、-NR3-であり、上記Aがそれぞれ独立に、炭素数1~4の置換基を有してもよく、-O-、-S-、-NR3-をXとの結合部位以外に含んでもよいアルキレン基であり、R3がそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は、置換基を有してもよいアリール基を表し、上記Arがフェニル基であり、上記Rがそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子であることが好ましい。
また、特定化合物は、上述の式3のように平面状に記載した構造が、点対称構造又は線対称構造であることが好ましい。
【0042】
〔極大吸収波長〕
式1により表される化合物の極大吸収波長は、波長650nm~750nmの範囲内にあることが好ましく、波長650nm~730nmの範囲内にあることがより好ましい。
上記極大吸収波長は、Cary5000 UV-Vis-NIR分光光度計(アジレント・テクノロジー製)を用いて測定される。
また、式1により表される化合物は、波長400nm~1200nmの範囲内における最大吸収波長が波長600nm~750nmの範囲内にあることが好ましく、波長650nm~750nmの範囲内にあることがより好ましく、波長650nm~730nmの範囲内にあることが更に好ましい。
【0043】
〔平均粒径〕
特定化合物が顔料である場合、平均粒径は、0.01μm~0.2μmが好ましく、0.01μm~0.1μmがより好ましい。
本開示において、特段の記載がない限り、顔料の平均粒径は、日機装(株)製のMICROTRAC UPA 150を用いて、体積基準で測定するものとする。
【0044】
〔含有量〕
本開示に係る組成物における、特定化合物の含有量は、組成物の全固形分に対し、20質量%以上であることが好ましく30質量%以上であることがより好ましく40質量%以上であることが更に好ましい。
また、上記含有量は、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
また、本開示に係る組成物が、後述する有彩色着色剤(好ましくは、黄色顔料)を含有する場合、分光特性、硬化性及びパターン形成時の現像性の観点から、特定化合物と有彩色着色剤の含有比(質量比)は、特定化合物:有彩色着色剤=8:1~2:1であることが好ましく、6:1~2:1であることがより好ましく、6:1~3:1であることが更に好ましい。
【0045】
〔溶解度〕
本開示に係る組成物における、特定化合物の溶解度は、0.1質量%以下であることが好ましく、0.08質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましい。
なお、溶解度が0.1質量%以下であるとは、組成物1gあたりに溶解している特定化合物の質量が0.001g以下であることを意味している。
また、上記特定化合物の溶解度は、0質量%以上であることが好ましい。なお、溶解度が0質量%であるとは、特定化合物が組成物に溶解しないことを意味する。
組成物における特定化合物の溶解度は、下記方法により測定される。
組成物を孔径0.5μmのフィルタにてろ過し、ろ液をNMP(N-メチル-2-ピロリドン)で希釈する。上記希釈液を溶液可視吸収スペクトル測定し、溶液中の特定化合物濃度を算出し、組成物中の溶解度を測定する。上記ろ過時の組成物の温度は25℃とする。
【0046】
以下、特定化合物の具体例である化合物Pc-1~Pc-121を示すが、これに限定されるものではない。
【0047】
Pc-1~Pc-89は、下記式Pc1により表される化合物であって、X、A、Ar及びRが下記表に示される構造である化合物である。
下記表1~表4中、C6H4はフェニレン基を、Ar1、Ar2、及びAr3は下記構造を、それぞれ表す。下記構造中、波線部はAとの結合部位を示している。
下記表1~表4中、Aの欄に記載した構造は、構造の左側がXとの結合部位、右側がArとの結合部位を示している。例えばAの欄に-(CH2CH2O)2-と記載されている場合、炭素原子である結合部位がXと結合し、酸素原子である結合部位がArと結合することを示している。
同様に、Xの欄に記載した構造についても、構造の右側がAとの結合部位である。
下記表1~表6中、λmaxの欄の記載は、各特定化合物の極大吸収波長を示している。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
Pc-90~Pc-113は、下記式Pc2により表される化合物であって、X、A、Ar及びRが下記表に示される構造である化合物である。
【0054】
【0055】
【0056】
Pc-114~Pc-121は、下記表の「S」の欄に記載した構造を有する化合物である。Sの欄に記載の化学式における「Z」及び「R」は、「Z」及び「R」の欄に記載した構造を表す。また、「Z」の欄の*は、「S」の欄に記載した構造との結合部位を表す。
Pc-115~Pc-117の各欄における「↑」の記載は、Pc-114における各欄の構造と同じ構造であることを示している。
【0057】
【0058】
【0059】
〔特定化合物の製造方法〕
本開示に係る特定化合物の製造は、下記のように行うことが可能である。
対応するフタロニトリル化合物に対して、ジアザビシクロウンデセン(DBU)存在下、1-ペンタノール中160℃で反応させると、対称型の特定化合物が析出し、ろ過作業で容易に単離できる。
【0060】
【0061】
また、非対称型の特定化合物は、3対1型はJ. Am. Chem. Soc., 1990, 112, 9640に記載の方法により製造することにより得られる。2対2型は2種のフタロニトリルで対称型と同様の操作で数種の混合物を調製し、精製により分割して単離することにより得られる。
【0062】
対応するフタロニトリルの製造は以下に段階的に記す。
【0063】
-R=Hである場合-
ジクロロフタロニトリルに対して、H-X-A-Arと炭酸カリウムをジメチルアセトアミド(DMAc)中で反応させることにより得られる。
【0064】
【0065】
-式1中のRがハロゲン原子である場合-
上記R=Hのフタロニトリルに対してハロゲン化(N-ハロゲンスクシンイミド等を作用させる)することで得られる。
【0066】
【0067】
-式1中のRがヘテロ原子連結置換基である場合-
上記ハロゲン化により得られたR=Clのフタロニトリルに対して、炭酸カリウム等の塩基存在下、ジメチルアセトアミド中で対応するヘテロ原子基を作用させると得られる。
【0068】
【0069】
-式1中のRが、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基である場合-
上記ハロゲン化により得られたR=Brのフタロニトリルに対して、アルキル基なら根岸カップリング、アリール基なら鈴木カップリングにより製造可能である。
【0070】
【0071】
<重合性化合物>
本開示に係る組成物は、重合性化合物を含有する。本開示に用いることができる重合性化合物としては、エチレン性不飽和化合物が好ましく、末端エチレン性不飽和基を有する化合物がより好ましい。
このような化合物群としては、公知のものを特に限定なく用いることができる。
これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0072】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート等がある。
【0073】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス-〔p-(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0074】
また、イソシアネート基とヒドロキシ基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48-41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(I)で示されるヒドロキシ基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0075】
CH2=C(R)COOCH2CH(R’)OH (I)
(ただし、R及びR’は、H又はCH3を示す。)
【0076】
また、特開昭51-37193号、特公平2-32293号、特公平2-16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-49860号、特公昭56-17654号、特公昭62-39417号、特公昭62-39418号公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63-277653号、特開昭63-260909号公報、特開平1-105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造又はスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた組成物を得ることができる。
【0077】
その他、重合性化合物としては、例えば、特開2007-277514号公報の段落0178~0190に記載の化合物が挙げられる。
【0078】
重合性化合物の組成物中における含有量としては、上記組成物の全固形分に対して、1質量%~90質量%であることが好ましく、5質量%~80質量%であることがより好ましく、10質量%~70質量%であることが更に好ましい。重合性化合物の含有量が上記範囲内であると、組成物の硬化性に優れる。
【0079】
<特定化合物とは異なる有彩色着色剤>
本開示に係る組成物は、特定化合物とは異なる有彩色着色剤を含むことが好ましい。
本開示において、有彩色着色剤とは、白色着色剤及び黒色着色剤以外の着色剤を意味する。
上記有彩色着色剤を適宜選択することにより、本開示に係る組成物、及び、上記組成物の硬化物が吸収する光の波長範囲を設計することが可能となる。
【0080】
例えば、特定化合物よりも極大吸収波長が短い有彩色着色剤と、特定化合物とを含有する本開示に係る組成物を用いることにより、本開示に係る特定化合物の極大吸収波長付近の波長の光と、それよりも短い波長である、有彩色着色剤の極大吸収波長付近の波長の光と、を吸収する硬化膜が得られる。
すなわち、上記硬化膜は、本開示に係る特定化合物の極大吸収波長付近の波長の光、及び、有彩色着色剤の極大吸収波長付近の波長の光以外の波長範囲の光を透過する硬化膜である。
本開示における特定化合物は分光特性に優れるため、上記硬化膜においては、上記透過光の波長範囲に含まれる、特定化合物の極大吸収波長側の波長範囲において、優れた分光特性を有するといえる。
一例としては、極大吸収波長が波長400nm~500nmの範囲にある黄色着色剤と、極大吸収波長が波長600nm以上700nm未満の範囲にある特定化合物とを含む本開示に係る組成物を用いることにより、波長530nm~580nm等の緑色の光を透過する、カラーフィルタにおける画素を製造することができる。
上記画素は、特定化合物を含むことにより、吸収波長のすそ切れがよいと考えられる。そのため、赤色の光(例えば、波長630nm~700nmなど)を透過する画素との間の透過波長のオーバーラップ(G/R間オーバーラップ)が小さくなると考えられる。
【0081】
また、特定化合物は吸収波長のピーク幅が小さいため、カラーフィルタにおける画素として使用する場合には、吸収する波長範囲を広げるため、組成物は、緑色着色剤を更に含んでもよい。
一例としては、極大吸収波長が波長600nm以上700nm未満の範囲にある特定化合物と、極大吸収波長が波長600nm以上700nm未満の範囲にあり、かつ、極大吸収波長が特定化合物よりも大きい緑色着色剤とを含む本開示に係る組成物を用いることにより、波長530nm~580nm等の緑色の光を透過し、波長600nm~波長750nmなど、長波長側において広い波長範囲の光を吸収する画素を製造することができる。
上記画素においても、特定化合物を含むことにより、吸収波長のすそ切れがよいと考えられる。そのため、赤色の光(例えば、波長630nm~700nmなど)を透過するカラーフィルタとの間の透過波長のオーバーラップ(G/R間オーバーラップ)が小さくなると考えられる。
また、本開示に係る組成物は、特定化合物と、上述の黄色着色剤と、上述の緑色着色剤と、をすべて含んでもよい。
【0082】
また、2色以上の着色剤を組み合わせて用いて着色画素の分光特性を調整する場合、2層以上の膜を積層させて所望の分光特性に調整してもよい。例えば、特定化合物と黄色着色剤と、必要に応じて緑色着色剤とを組み合わせて用いて緑色画素の分光特性を調整する場合、特定化合物を含む膜と、黄色着色剤を含む膜とを積層させて所望の分光特性に調整してもよい。緑色着色剤は、必要に応じて上記いずれの膜に含まれていてもよい。また、特開2017-167389号公報、特開2017-194560号公報に記載された積層形態についても本開示に適用することができる。
以下、有彩色着色剤について、具体例を挙げて説明する。
【0083】
〔黄色着色剤〕
上述の緑色の光を透過する画素を形成する観点から、上記有彩色着色剤は、黄色着色剤であることが好ましい。
また、黄色着色剤としては、耐光性及び耐湿性の観点から、黄色顔料であることが好ましい。
また、黄色顔料の平均粒径は、0.01μm~0.1μmが好ましく、0.01μm~0.05μmがより好ましい。
【0084】
黄色着色剤としては、黄色を呈する着色剤であれば特に限定されないが、極大吸収波長が波長400nm~500nmの範囲にあることが好ましく、波長450nm~480nmの範囲にあることが好ましく、波長450nm~460nmの範囲にあることがより好ましい。
【0085】
黄色着色剤は、アゾ化合物及びイソインドリン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アゾ化合物であることがより好ましく、バルビツール酸構造を有するアゾ化合物であることが更に好ましい。
【0086】
黄色着色剤の具体例としては、カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow (単に「PY-」ともいう。) 1、2、3、4、5、6、10、11、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、213、214などの黄色顔料や、C.I.ソルベントイエロー4、82、88、14、15、24、93、94、98、162等の黄色染料等が挙げられる。
黄色着色剤としては、保存安定性の観点から、PY-139、PY-150及びPY-185よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましく、PY-150及びPY-185よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことがより好ましく、PY-150を含むことがより好ましい。
【0087】
また、着色剤Yとして、下記式(Y1)~(Y4)で表される構造の化合物を用いることもできる。
【化19】
【0088】
式(Y1)において、R1~R13は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、R1~R8のうち隣接する基は、結合して環を形成していてもよい。ただし、R1~R8の隣接する二つの基のうち、少なくとも一組は、結合して芳香環を形成している。
式(Y2)において、R205及びR208は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、R201~R204、R206及びR207は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、Y1は、窒素原子または-CRY1-を表し、Y2は、硫黄原子または-NRY2-を表し、RY1及びRY2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、Xは、ビス(スルホニル)イミドアニオン、トリス(スルホニル)メチドアニオンまたはホウ素原子を有するアニオンを表す。
式(Y3)において、R301、R311及びR310は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、R302~R305、R306~R309は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、Xは、ビス(スルホニル)イミドアニオン、トリス(スルホニル)メチドアニオンまたはホウ素原子を有するアニオンを表す。
式(Y4)において、R401及びR402は、それぞれ独立に、SO2R403またはCOR403を表す;R403は、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
【0089】
式(Y1)~(Y4)の詳細については、国際公開第2017/082226号の段落番号0016~0046の記載を参酌でき、この内容は本開示に組み込まれる。
【0090】
また、黄色着色剤として、特開2013-54339号公報の段落番号0011~0034に記載のキノフタロン化合物、特開2014-26228号公報の段落番号0013~0058に記載のキノフタロン化合物などを用いることもできる。
【0091】
組成物は、黄色着色剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
黄色着色剤の含有量は、組成物の全質量に対し、1質量%~30質量%であることが好ましく、2質量%~25質量%であることがより好ましく、5質量%~20質量%であることが更に好ましい。
【0092】
組成物に含まれる黄色着色剤の50質量%以上がアゾ化合物及びイソインドリン化合物から選ばれる少なくとも1種(好ましくはアゾ化合物、より好ましくはバルビツール酸構造を有するアゾ化合物)であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
また、組成物において、組成物に含まれる黄色着色剤の50質量%以上がPY-139、PY-150及びPY-185よりなる群から選ばれる少なくとも1種(より好ましくはPY-150)であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
【0093】
〔緑色着色剤〕
上述の緑色の光を透過する画素を形成する観点から、上記有彩色着色剤は、緑色着色剤を含むことが好ましい。
また、緑色着色剤としては、耐光性及び耐湿性の観点から、緑色顔料であることが好ましい。
また、緑色顔料の平均粒径は、0.01μm~0.1μmが好ましく、0.01μm~0.05μmがより好ましい。
緑色着色剤としては、緑色を呈する着色剤であれば特に限定されないが、極大吸収波長が波長600nm~700nmの範囲にあることが好ましく、波長620nm~695nmの範囲にあることが好ましく、波長640nm~690nmの範囲にあることがより好ましい。
【0094】
緑色着色剤としては、C.I.Pigment Green 7、10、36、37、58、59等の緑色顔料が挙げられる。
【0095】
また、緑色着色剤として、分子中のハロゲン原子数が平均10~14個であり、臭素原子数が平均8~12個であり、塩素原子数が平均2~5個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/118720号に記載された化合物が挙げられる。
【0096】
組成物は、緑色着色剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
緑色着色剤の含有量は、組成物の全質量に対し、1質量%~30質量%であることが好ましく、2質量%~20質量%であることがより好ましく、5質量%~15質量%であることが更に好ましい。
【0097】
<顔料誘導体>
組成物は、顔料誘導体を含有することができる。顔料誘導体としては、発色団の一部分を、酸基、塩基性基またはフタルイミドメチル基で置換した構造を有する化合物(例えば、上記有彩色着色剤の誘導体)が挙げられる。顔料誘導体を構成する発色団としては、キノリン系骨格、ベンゾイミダゾロン系骨格、ジケトピロロピロール系骨格、アゾ系骨格、フタロシアニン系骨格、アンスラキノン系骨格、キナクリドン系骨格、ジオキサジン系骨格、ペリノン系骨格、ペリレン系骨格、チオインジゴ系骨格、イソインドリン系骨格、イソインドリノン系骨格、キノフタロン系骨格、スレン系骨格、金属錯体系骨格等が挙げられ、キノリン系骨格、ベンゾイミダゾロン系骨格、ジケトピロロピロール系骨格、アゾ系骨格、キノフタロン系骨格、イソインドリン系骨格およびフタロシアニン系骨格が好ましく、アゾ系骨格およびベンゾイミダゾロン系骨格がより好ましい。顔料誘導体が有する酸基としては、スルホ基、カルボキシル基が好ましく、スルホ基がより好ましい。顔料誘導体が有する塩基性基としては、アミノ基が好ましく、三級アミノ基がより好ましい。顔料誘導体の具体例としては、例えば、特開2011-252065号公報の段落番号0162~0183の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
組成物が顔料誘導体を含有する場合、顔料誘導体の含有量は、顔料100質量部に対し、1~30質量部が好ましく、3~20質量部がさらに好ましい。顔料誘導体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0098】
<他の成分>
本開示に係る組成物は、最終的に硬化することにより硬化膜が得られる組成物である。
また、本開示に係る組成物は、例えば、パターン露光により硬化膜のパターンを形成することができる組成物であることが好ましく、すなわち、ネガ型の組成物であることが好ましい。
本開示に係る組成物がネガ型の組成物である場合、例えば、重合開始剤と、重合性化合物と、アルカリ可溶性樹脂と、を含む態様が好ましい。
以下、本開示に係る組成物がネガ型の組成物である態様において含まれる各成分物について記載する。
本開示に係る組成物がポジ型の組成物である態様において含まれる各成分については、国際公開第2014/003111号に記載の各成分が挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0099】
<重合開始剤>
本開示に係る組成物は、重合開始剤を更に含むことが好ましく、光重合開始剤を更に含むことがより好ましい。
また、本開示に係る組成物は、重合開始剤を更に含み、かつ、上記重合性化合物がエチレン性不飽和化合物であることが好ましい。
光重合開始剤としては、重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する化合物が好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する化合物であってもよい。光重合開始剤は光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0100】
光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物などが挙げられる。光重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物及び3-アリール置換クマリン化合物が好ましく、オキシム化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、及び、アシルホスフィン化合物から選ばれる化合物がより好ましく、オキシム化合物が更に好ましい。光重合開始剤については、特開2014-130173号公報の段落番号0065~0111、特開2013-29760号公報の段落番号0274~0306の記載を参酌でき、これらの内容は本開示に組み込まれる。
【0101】
α-ヒドロキシケトン化合物の市販品としては、IRGACURE-184、DAROCUR-1173、IRGACURE-500、IRGACURE-2959、IRGACURE-127(以上、BASF社製)などが挙げられる。α-アミノケトン化合物の市販品としては、IRGACURE-907、IRGACURE-369、IRGACURE-379、及び、IRGACURE-379EG(以上、BASF社製)などが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、IRGACURE-819、DAROCUR-TPO(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0102】
オキシム化合物としては、例えば、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-66385号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、特開2017-19766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開第2015/152153号に記載の化合物、国際公開第2017/051680号に記載の化合物などがあげられる。オキシム化合物の具体例としては、例えば、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。オキシム化合物の市販品としては、IRGACURE-OXE01、IRGACURE-OXE02、IRGACURE-OXE03、IRGACURE-OXE04(以上、BASF社製)も好適に用いられる。また、TRONLY TR-PBG-304、TRONLY TR-PBG-309、TRONLY TR-PBG-305(常州強力電子新材料有限公司(CHANGZHOU TRONLY NEW ELECTRONIC MATERIALS CO.,LTD)製)、アデカアークルズNCI-930、アデカオプトマーN-1919(特開2012-14052号公報の光重合開始剤2)(以上、(株)ADEKA製)が挙げられる。
【0103】
また上記以外のオキシム化合物として、カルバゾール環のN位にオキシムが連結した特表2009-519904号公報に記載の化合物、ベンゾフェノン部位にヘテロ置換基が導入された米国特許第7626957号公報に記載の化合物、色素部位にニトロ基が導入された特開2010-15025号公報及び米国特許公開2009-292039号に記載の化合物、国際公開第2009/131189号に記載のケトオキシム化合物、トリアジン骨格とオキシム骨格を同一分子内に含有する米国特許7556910号公報に記載の化合物、405nmに吸収極大を有し、g線光源に対して良好な感度を有する特開2009-221114号公報に記載の化合物などを用いてもよい。
【0104】
本開示は、光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本開示に組み込まれる。
【0105】
本開示は、光重合開始剤として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/036910号に記載の化合物OE-01~OE-75が挙げられる。
【0106】
本開示は、光重合開始剤として、カルバゾール環の少なくとも1つのベンゼン環がナフタレン環となった骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。そのようなオキシム化合物の具体例としては、国際公開第2013/083505号に記載の化合物が挙げられる。
【0107】
本開示は、光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。この内容は本開示に組み込まれる。
【0108】
本開示は、光重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落番号0031~0047、特開2014-137466号公報の段落番号0008~0012、0070~0079に記載の化合物、特許第4223071号公報の段落番号0007~0025に記載の化合物、アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0109】
本開示において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0110】
【0111】
【0112】
オキシム化合物は、波長350nm~500nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、波長360nm~480nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物がより好ましい。また、オキシム化合物は、波長365nm及び405nmの吸光度が高い化合物が好ましい。
【0113】
オキシム化合物の波長365nmまたは405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、1,000~300,000であることが好ましく、2,000~300,000であることがより好ましく、5,000~200,000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0114】
本開示は、光重合開始剤として、2官能あるいは3官能以上の光重合開始剤を用いてもよい。そのような光重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開第2015/004565号、特表2016-532675号公報の段落番号0417~0412、国際公開第2017/033680号の段落番号0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体や、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)及び化合物(G)、国際公開第2016/034963号に記載されているCmpd1~7などが挙げられる。
【0115】
重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
重合開始剤の組成物中における含有量としては、上記組成物の全固形分に対して、0.1~50質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5~30質量%、特に好ましくは1~20質量%である。この範囲で、良好な感度とパターン形成性が得られる。
【0116】
<アルカリ可溶性樹脂>
本開示に係る組成物は、アルカリ可溶性樹脂の少なくとも一種を含有することが好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えばカルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。このうち、更に好ましくは、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものである。
【0117】
アルカリ可溶性樹脂の製造には、例えば公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めるようにすることもできる。
上記の高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマーが好ましい。例えば、特開昭59-44615号、特公昭54-34327号、特公昭58-12577号、特公昭54-25957号、特開昭59-53836号、特開昭59-71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、ヒドロキシ基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等が挙げられ、さらに側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体も好ましいものとして挙げられる。
【0118】
アルカリ可溶性樹脂として具体的には、特に(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他の単量体と、の共重合体が好適である。
上記(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、オレフィン類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0119】
(メタ)アクリル酸エステル類の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t-オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(2-メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸-2-フェニルビニル、(メタ)アクリル酸-1-プロペニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸-2-アリロキシエチル、(メタ)アクリル酸プロパルギル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β-フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフルオロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸-γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0120】
本開示で使用しうるアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは5、000以上であり、さらに好ましくは1万~30万の範囲であり、数平均分子量については好ましくは1,000以上であり、さらに好ましくは2,000~25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.1~10の範囲が好ましく、さらに好ましくは1.2~5の範囲である。
これらのアルカリ可溶性樹脂は、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでもよい。
【0121】
その他、アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、特開2007-277514号公報の段落0162~0175に記載の化合物が挙げられる。
【0122】
なお、本開示に係る第一の高分子化合物及び第二の高分子化合物よりなる群から選ばれた少なくとも一方を、アルカリ可溶性樹脂として利用することもできる。
【0123】
アルカリ可溶性樹脂の組成物中における含有量としては、組成物の全固形分に対して、1質量%~20質量%が好ましく、より好ましくは2質量%~15質量%であり、特に好ましくは3質量%~12質量%である。
【0124】
<分散剤>
本開示に係る組成物は、式1により表される化合物、及び、必要に応じて添加される黄色顔料、緑色顔料との顔料を分散するための分散剤を含有してもよい。
分散剤としては、特に限定されず、顔料の分散剤として公知の分散剤を用いることができる。
【0125】
分散剤としては、例えば、高分子分散剤〔例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物〕、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン等が挙げられる。
【0126】
高分子分散剤は、その構造から更に直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子に分類することができる。高分子分散剤は、顔料の表面に吸着し、再凝集を防止するように作用する。そのため、顔料表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子を好ましい構造として挙げることができる。また、特開2011-070156号公報の段落番号0028~0124に記載の分散剤及び特開2007-277514号公報に記載の分散剤も好ましく用いられる。これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0127】
高分子分散剤は、酸基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。分散剤として用いる樹脂が酸基を有する繰り返し単位を含むことにより、フォトリソグラフィ法によりパターン形成する際、画素の下地に発生する残渣をより低減することができる。
【0128】
高分子分散剤は、グラフト共重合体であることも好ましい。グラフト共重合体は、グラフト鎖によって溶剤との親和性を有するために、顔料の分散性、及び、経時後の保存安定性に優れる。グラフト共重合体の詳細は、特開2012-255128号公報の段落番号0025~0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、グラフト共重合体の具体例は、後述する実施例におけるP-2が挙げられるが、これに限定されるわけではない。以下の樹脂は酸基を有する樹脂(アルカリ可溶性樹脂)でもある。また、グラフト共重合体としては特開2012-255128号公報の段落番号0072~0094に記載の樹脂が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0129】
また、高分子分散剤としては、エチレン性不飽和基を有する高分子分散剤を用いてもよい。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、ビニロキシ基、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基、ビニルフェニル基、シンナモイル基及びマレイミド基が挙げられ、反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基、ビニルフェニル基、マレイミド基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましく、アクリロイル基が特に好ましい。
エチレン性不飽和基を有する高分子分散剤の例としては、後述する実施例におけるP-1、P-3又はP-4が挙げられるが、これに限定されるわけではない。
【0130】
分散剤としては市販品を用いることもできる。例えば、特開2012-137564号公報の段落番号0129に記載された製品を分散剤として用いることもできる。例えば、Disperbyk-111(BYKChemie社製)などが挙げられる。なお、上記分散剤として説明した樹脂は、分散剤以外の用途で使用することもできる。例えば、バインダーとして用いることもできる。
【0131】
本開示において、分散剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
分散剤の含有量は、使用する顔料に応じて適宜調整すればよいが、式1で表される化合物及び顔料の合計含有量100質量部に対して1質量部~200質量部が好ましい。下限は、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。上限は、150質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましい。
【0132】
<重合禁止剤>
本開示に係る組成物は、保存安定性の観点から、重合禁止剤を含むことが好ましい。
重合禁止剤としては、特に限定されず、公知の重合禁止剤を用いることができる。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、t-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等が挙げられる。
なお、重合禁止剤は、酸化防止剤として機能することもある。
【0133】
重合禁止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
重合禁止剤の含有量は、保存安定性の観点から、組成物の全固形分に対して、0.1ppm~1,000ppmであることが好ましく、1ppm~500ppmであることがより好ましく、1ppm~100ppmであることが特に好ましい。
【0134】
<溶剤>
本開示に係る組成物は、溶剤を含有してもよい。
溶剤としては、エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、並びに、3-オキシプロピオン酸メチル及び3-オキシプロピオン酸エチルなどの3-オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル)、並びに、2-オキシプロピオン酸メチル、2-オキシプロピオン酸エチル、及び2-オキシプロピオン酸プロピルなどの2-オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-オキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-オキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル)、並びに、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル等;
【0135】
エーテル類、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等;
ケトン類、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等;
芳香族炭化水素類、例えばトルエン、キシレン、等が挙げられる。
【0136】
これらのうち、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が好適である。
溶剤は、単独で用いる以外に2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0137】
<増感剤>
本開示に係る組成物は、ラジカル開始剤のラジカル発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、増感剤を含有していてもよい。本開示に用いることができる増感剤としては、上記した光重合開始剤に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものが好ましい。
【0138】
本開示に用いることができる増感剤としては、以下に列挙する化合物類に属しており、且つ波長300nm~450nmの波長領域に吸収波長を有するものが挙げられる。
好ましい増感剤の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ波長330nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げられる。
例えば、多核芳香族類(例えば、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、9,10-ジアルコキシアントラセン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、チオキサントン類(イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、クロロチオキサントン)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、フタロシアニン類、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、アクリジンオレンジ、クマリン類(例えば、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン)、ケトクマリン、フェノチアジン類、フェナジン類、スチリルベンゼン類、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン類、カルバゾール類、ポルフィリン、スピロ化合物、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトンなどの芳香族ケトン化合物、N-アリールオキサゾリジノンなどのヘテロ環化合物などが挙げられる。等が挙げられ、更に欧州特許第568,993号明細書、米国特許第4,508,811号明細書、同5,227,227号明細書、特開2001-125255号公報、特開平11-271969号公報等に記載の化合物等などが挙げられる。
【0139】
増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本開示に係る組成物中における増感剤の含有量は、深部への光吸収効率と開始分解効率の観点から、組成物の全固形分に対し、0.1質量%~20質量%であることが好ましく、0.5~15質量%がより好ましい。
【0140】
<共増感剤>
本開示に係る組成物は、共増感剤を含有してもよい。共増感剤は、増感色素や開始剤の活性放射線に対する感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
【0141】
その他、共増感剤としては、例えば、特開2007-277514号公報の段落0233~0241に記載の化合物が挙げられる。
【0142】
これら共増感剤の含有量は、重合成長速度と連鎖移動のバランスによる硬化速度の向上の観点から、組成物の全固形分の質量に対し、0.1質量%~30質量%の範囲が好ましく、1質量%~25質量%の範囲がより好ましく、0.5質量%~20質量%の範囲が更に好ましい。
【0143】
<その他成分>
本開示に係る組成物には、必要に応じて、フッ素系有機化合物、熱重合防止剤、光重合開始剤、その他充填剤、アルカリ可溶性樹脂及び分散剤以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤などの各種添加物を含有することができる。
【0144】
その他成分としては、例えば、特開2007-277514号公報の段落0238~0249に記載の化合物が挙げられる。
【0145】
<組成物の調製>
本開示に係る組成物の調製方法は、特に限定されず、組成物に含まれる各成分を公知の方法により混合することにより得られる。
また、本開示に係る組成物は、特定化合物及び有彩色着色剤の分散性の向上のため、特定化合物と分散剤とを混合して特定化合物の分散液を調製し、有彩色着色剤と分散剤とを混合して特定化合物の分散液を調製してから、これらの分散液及び他の成分を更に混合してもよい。
また、異物の除去、欠陥の低減などの目的で、フィルタでろ過してもよい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているものであれば特に限定されることなく用いることができる。
【0146】
(硬化物)
本開示に係る硬化物は、本開示に係る組成物を硬化してなる硬化物である。
上記硬化の方法は、特に限定されないが、紫外光等の活性光線の露光による硬化、加熱による硬化等が挙げられる。
本開示に係る硬化物は、例えば、薄膜状であることが好ましい。
本開示に係る硬化物は、カラーフィルタ、赤外線吸収フィルタ、カラーフィルタの画素間に設けられるブラックマトリックス、屈折率調製膜等として好適に用いられ、特にカラーフィルタとして好適に用いられる。
【0147】
(カラーフィルタ及びその製造方法)
本開示に係るカラーフィルタは、本開示に係る硬化物を備える。
本開示に係るカラーフィルタは、支持体上に、本開示に係る硬化物を備えることが好ましい。
本開示に係る硬化物は、カラーフィルタにおいて、カラーフィルタの画素であることが好ましく、カラーフィルタの緑色画素であることがより好ましい。
また、本開示に係る硬化物と他の着色膜(例えば、上述の黄色着色剤を含む着色膜)とを重ねて1つのカラーフィルタの画素としてもよい。
以下、本開示に係るカラーフィルタについて、その製造方法を通じて詳述する。
【0148】
(カラーフィルタの製造方法の第一の態様)
本開示に係るカラーフィルタの製造方法の第一の態様は、本開示に係る組成物を、支持体上に付与して組成物膜を形成する工程(組成物膜形成工程)と、形成された組成物膜を、パターン状に露光する工程(以下、適宜「露光工程」と略称する。)と、露光後の組成物膜を現像して着色パターンを形成する工程(以下、適宜「現像工程」と略称する。)と、を含む。
以下、各工程について説明する。
【0149】
<組成物膜形成工程>
組成物膜形成工程では、支持体上に、本開示に係る組成物を付与して組成物膜を形成する。
【0150】
本工程に用いうる支持体としては、例えば、液晶表示素子等に用いられるソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス及びこれらに透明導電膜を付着させたものや、撮像素子等に用いられる光電変換素子基板、例えばシリコン基板等や、相補性金属酸化膜半導体(CMOS)等が挙げられる。これらの基板は、各画素を隔離するブラックストライプが形成されている場合もある。
また、これらの基板上には、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止或いは、基板表面の平坦化のために下塗り層(他の層)を設けてもよい。
【0151】
支持体上への本開示に係る組成物の付与方法としては、スリット塗布、インクジェット法、回転塗布、流延塗布、ロール塗布、スクリーン印刷法等の各種の塗布方法を適用することができる。
組成物の塗布膜厚としては、0.1μm~10μmが好ましく、0.2μm~5μmがより好ましく、0.2μm~3μmがさらに好ましい。
【0152】
支持体上に塗布された組成物膜の乾燥(プリベーク)を、ホットプレート、オーブン等で50℃~140℃の温度で10秒~300秒として行ってもよい。
【0153】
<露光工程>
露光工程では、上記組成物膜形成工程において形成された組成物膜を、パターン状に露光する。パターン状に露光する方法としては、例えば、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光する方法が挙げられる。
本工程では、本開示に係る組成物がネガ型の組成物である場合には、光照射された部分を硬化させることができる。ポジ型の組成物である場合には、光照射された部分の現像液に対する溶解性が増大する。
【0154】
露光において用いることができる活性放射線としては、特に、g線、i線等の紫外線が好ましく用いられる。露光量は5mJ/cm2~1500mJ/cm2が好ましく10mJ/cm2~1000mJ/cm2がより好ましく、10mJ/cm2~500mJ/cm2が最も好ましい。
本開示に係るカラーフィルタが液晶表示素子用である場合は、上記範囲の中で5~200mJ/cm2が好ましく10mJ/cm2~150mJ/cm2がより好ましく、10mJ/cm2~100mJ/cm2が最も好ましい。また、本開示に係るカラーフィルタが固体撮像素子用である場合は、上記範囲の中で30mJ/cm2~1500mJ/cm2が好ましく50mJ/cm2~1000mJ/cm2がより好ましく、80mJ/cm2~500mJ/cm2が最も好ましい。
【0155】
<現像工程>
次いで、現像処理を行うことにより、露光工程における未露光部分が現像液に溶出し、光硬化した部分が着色パターンとして得られる。現像液としては、未硬化部における組成物を除去可能なものであれば、特に制限されず、公知のものを用いることができる。具体的には、種々の有機溶剤の組合せやアルカリ性の水溶液を用いることができる。
現像温度としては、好ましくは20℃~30℃であり、現像時間は、好ましくは20秒~90秒である。
【0156】
上記有機溶剤としては、本開示に係る顔料分散組成物又は組成物を調製する際に使用できる既述の溶剤が挙げられる。
上記アルカリ性の水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン等のアルカリ性化合物を、濃度が0.001質量%~10質量%、好ましくは0.01質量%~1質量%となるように純水で希釈したアルカリ性水溶液が現像液として好ましく使用される。
なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、現像後純水で洗浄(リンス)する態様も好ましく挙げられる。
【0157】
現像工程後、余剰の現像液を洗浄除去し、乾燥を施した後に加熱処理(ポストベーク)を行ってもよい。
ポストベークは、現像後の加熱処理であり、好ましくは100℃~240℃の熱硬化処理を行う。基板がガラス基板又はシリコン基板の場合は上記温度範囲の中でも200℃~240℃が好ましい。
ポストベーク処理は、現像後の塗布膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。
【0158】
以上説明した、組成物膜形成工程、露光工程、及び現像工程(更に、必要により加熱処理)を所望の色相数だけ繰り返すことにより、所望の色相よりなるカラーフィルタが作製される。
【0159】
本開示に係る組成物を基板上に付与して膜形成する場合、膜の乾燥厚みとしては、0.3μm~5.0μmであることが好ましく、0.5μm~3.5μmであることがより好ましく、1.0μm~2.5μmであることが更に好ましい。
【0160】
基板としては、例えば、液晶表示素子等に用いられる無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス、及びこれらに透明導電膜を付着させたもの、固体撮像素子等に用いられる光電変換素子基板、例えばシリコン基板等、並びにプラスチック基板等が挙げられる。これらの基板上には、各画素を隔離するブラックストライプが形成されていることが好ましい。
プラスチック基板には、その表面にガスバリヤー層及び/又は耐溶剤性層を有していることが好ましい。
【0161】
上記製造方法は、カラーフィルタの画素の製造方法であるが、本開示に係る組成物によれば、例えば、カラーフィルタの画素間に設けられるブラックマトリックスも製造される。ブラックマトリックスは、例えば、本開示に係る組成物に着色剤として、カーボンブラック、チタンブラックなどの黒色の着色剤を添加したものを用いる以外は、上記画素の作製方法と同様に、パターン露光、アルカリ現像し、更にその後、ポストベークして膜の硬化を促進させて形成させることができる。
【0162】
(カラーフィルタの製造方法の第二の態様)
本開示に係るカラーフィルタの製造方法の第二の態様は、本開示に係る組成物を、支持体上に付与し、硬化して硬化物を形成する工程(硬化物形成工程)と、上記硬化物上にフォトレジスト層を形成する工程(フォトレジスト層形成工程)と、上記フォトレジスト層をパターン状に露光し、現像することによりレジストパターンを形成する工程(レジストパターン形成工程)と、上記硬化物を、上記レジストパターンを介してエッチングする工程(エッチング工程)と、を含む。以下、各工程について説明する。
【0163】
<硬化物形成工程>
硬化物形成工程においては、本開示に係る組成物を、支持体上に付与し、硬化して硬化物を形成する。
支持体としては、上述の組成物膜形成工程における支持体が好ましく用いられる。
また、組成物の付与方法としては、上述の組成物膜形成工程における付与方法が好ましく用いられる。
付与された組成物の硬化方法としては、特に限定されず、光又は熱により硬化することが好ましい。
光により硬化を行う場合、光としては、組成物に含まれる開示剤に応じて適宜選択すればよいが、例えば、g線、i線等の紫外線が好ましく用いられる。露光量は5mJ/cm2~1500mJ/cm2が好ましく、10mJ/cm2~1000mJ/cm2がより好ましく、10mJ/cm2~500mJ/cm2が最も好ましい。
熱により硬化を行う場合、加熱温度は、120℃~250℃であることが好ましく、160℃~230℃であることがより好ましい。加熱時間は、加熱手段により異なるが、ホットプレート上で加熱する場合、3分間~30分間程度が好ましく、オーブン中で加熱する場合、30分間~90分間程度が好ましい。
【0164】
<フォトレジスト層形成工程>
フォトレジスト層形成工程においては、上記硬化物上にフォトレジスト層が形成される。
フォトレジスト層の形成においては、例えば、公知のネガ型又はポジ型の感光性組成物が用いられ、ポジ型の感光性組成物が好ましい。
上記感光性組成物を上記硬化物上に塗布し、必要に応じて乾燥を行うことにより、フォトレジスト層が得られる。
フォトレジスト層の形成方法としては、特に限定されず、公知の方法により行われればよい。
フォトレジスト層の厚みとしては、0.1μm~3μmが好ましく、0.2μm~2.5μmがより好ましく、0.3μm~2μmが更に好ましい。
【0165】
<レジストパターン形成工程>
レジストパターン形成工程においては、上記フォトレジスト層をパターン状に露光し、現像することによりレジストパターンが形成される。
上記露光及び現像は、特に限定されず、公知の方法により行われる。
【0166】
<エッチング工程>
エッチング工程においては、上記レジストパターンを介して上記硬化物がエッチングされる。
エッチング方法としては、特に限定されず、公知の方法により行われればよいが、例えば、ドライエッチングによる方法が挙げられる。
【0167】
<レジストパターンを剥離する工程>
本開示に係るカラーフィルタの製造方法の第2の態様は、上記エッチング工程後、レジストパターンを剥離する工程をさらに含んでもよい。
レジストパターンの剥離方法としては、特に限定されず、公知の方法が用いられる。
【0168】
(画像表示装置)
本開示に係る画像表示装置(例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、電子ペーパーなど)は、本開示に係るカラーフィルタを含む。
具体的には、例えば、カラーフィルタの内面側に配向膜を形成し、電極基板と対向させ、間隙部に液晶を満たして密封することにより、本開示に係る画像表示装置である液晶パネルが得られる。
【0169】
液晶表示装置の定義や各表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本開示が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
【0170】
(固体撮像素子)
本開示に係る固体撮像素子(例えば、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)等のイメージセンサ)は、本開示に係るカラーフィルタを含む。
例えば、受光素子上にカラーフィルタを形成することにより、本開示に係る固体撮像素子が得られる。
具体的には、基板上に、固体撮像素子(CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ、等)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオード及びポリシリコン等からなる転送電極を有し、上記フォトダイオード及び上記転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等からなる遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面及びフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、上記デバイス保護膜上に、本開示に係る固体撮像素子用カラーフィルタを有する構成が挙げられる。
更に、上記デバイス保護膜上であってカラーフィルタの下(支持体に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、カラーフィルタ上に集光手段を有する構成等であってもよい。
【0171】
(化合物)
本開示に係る化合物は、下記式4により表される化合物である。
【0172】
【0173】
式4中、Xはそれぞれ独立に、-O-、-S-、又は、-NR3-を表し、Aはそれぞれ独立に、炭素数1~4の置換基を有してもよく、-O-、-S-、-NR3-をXとの結合部位以外に含んでもよいアルキレン基を表し、Arはそれぞれ独立に、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は、置換基を有してもよいアリール基を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表す。
【0174】
式4中、Xはそれぞれ独立に、-O-、-S-、又は、-NR3-を表す以外は、上述の式1又は式3におけるXと同義であり、好ましい態様も同様である。
式4中、R3は上述の式1又は式3におけるR3と同義であり、好ましい態様も同様である。
式4中、Aは-O-、-S-、-NR3-をXとの結合部位以外に含んでもよいアルキレン基を表す以外は、上述の式1又は式3におけるAと同義であり、好ましい態様も同様である。
式4中、Arは上述の式1又は式3におけるR3と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0175】
その他、式4により表される化合物の極大吸収波長、波長570nmにおける吸光度、平均粒径等の好ましい態様についても、上述の式1における極大吸収波長、波長570nmにおける吸光度、平均粒径等の好ましい態様と同様である。
【実施例】
【0176】
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
本実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。なお、高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量は重量平均分子量(Mw)であり、構成繰り返し単位の比率はモル百分率である。
重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値として測定した値である。
また、本実施例中、特定化合物である化合物Pc-1~化合物Pc-121は、上記具体例における化合物Pc-1~化合物Pc-121と同一である。
【0177】
<特定化合物の合成>
〔Pc-6の合成〕
-中間体Aの製造-
ジクロロフタロニトリル(東京化成工業(株)製)20.0部、フェネチルアルコール(東京化成工業(株)製)23.0部、N、N-ジメチルアセトアミド(DMAc、和光純薬工業(株)製)250部を三口フラスコに加え、40℃で撹拌溶解させた。続いて、炭酸カリウム(日本曹達(株)製)42.0部を前記混合物中に添加後、80℃で16時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、500部の蒸留水を滴下し、更に同温度で1時間撹拌した。生じた固体をろ過し、固体を蒸留水500部で洗浄、更にメタノール250部と蒸留水250部の混合液で洗浄、乾燥した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=20/80vol%)により中間体Aを10.4部得た。
得られた中間体Aの構造は、1H-NMR(nuclear magnetic resonance)により同定した。同定結果を以下に示す。
【0178】
(1H-NMR 300MHz 重クロロホルム):3.11(t、4H)、4.27(t、4H)、7.12-7.30(m、10H)、7.90(s、2H).
【0179】
-Pc-6の製造-
中間体A 2.0部、ジアザビシクロウンデセン(DBU、和光純薬工業(株)製)0.74部、ノルマルペンタノール(和光純薬工業(株)製)8.0部を三口フラスコに加え、160℃で4時間撹拌した。25℃まで冷却後、メタノールを10部添加し一時間同温度で撹拌した。生じた固体をろ過し、固体をメタノール20部で洗浄後、乾燥させた。前記固体とテトラヒドロフラン20部を3つ口フラスコに入れて、60℃で一時間撹拌させた。25℃まで冷却後、ろ過作業により固体を回収、固体をテトラヒドロフラン20部で2回洗浄、続いてメタノール10部で洗浄後に乾燥させて、Pc-6を1.12g得た。
【0180】
得られたPc-6は、N-メチルピペリドンを用いてUVスペクトル測定を行った結果、極大吸収波長が683nmであることを確認した.
【0181】
【0182】
〔Pc-10の合成〕
-中間体Bの製造-
中間体A 5.00部をN、N-ジメチルホルムアミド(DMF、和光純薬工業(株)製)40部を三口フラスコに加え、0℃以下に冷却した。続いて、N-クロロスクシンイミド(NCS、東京化成工業(株)製)3.99部のN、N-ジメチルホルムアミド(20部)溶液を滴下した。滴下終了後、25度まで昇温し、100部の蒸留水を滴下し、更に同温度で1時間撹拌した。生じた固体をろ過し、固体を蒸留水100部で洗浄、更にメタノール50部と蒸留水50部の混合液で洗浄、乾燥し中間体Bを3.30部得た。
得られた中間体B構造は、1H-NMR(nuclear magnetic resonance)により同定した。同定結果を以下に示す。
【0183】
(1H-NMR 300MHz 重クロロホルム):3.10(t、4H)、4.33(t、4H)、7.11-7.30(m、10H)
【0184】
-Pc-10の製造-
Pc-6の製造において、中間体Aの替わりに、中間体Bを用い、使用する化合物の量を適宜変更した以外は、Pc-6と同様の方法により、Pc-10を得た。
【0185】
得られたPc-10は、N-メチルピペリドンを用いてUVスペクトル測定を行った結果、極大吸収波長が701nmであることを確認した。
【0186】
【0187】
〔Pc-33の合成〕
-中間体Cの製造-
ジクロロフタロニトリル(東京化成工業(株)製)20.0部、フェネチルアミン(東京化成工業(株)製)25.8部、N、N-ジメチルアセトアミド(DMAc、和光純薬工業(株)製)250部を三口フラスコに加え、40℃で撹拌溶解させた。続いて、炭酸カリウム(日本曹達(株)製)42.0部を前記混合物中に添加後、60℃で4時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、500部の蒸留水を滴下し、更に同温度で1時間撹拌した。生じた固体をろ過し、固体を蒸留水500部で洗浄、更にメタノール250部と蒸留水250部の混合液で洗浄、乾燥し中間体Cを31.7部得た。
得られた中間体C構造は、1H-NMR(nuclear magnetic resonance)により同定した。同定結果を以下に示す。
【0188】
(1H-NMR 300MHz 重クロロホルム):2.93(t、4H)、3.42(t、4H)、7.02(s、2H)、7.18-7.26(m、10H).
【0189】
-Pc-33の製造-
Pc-6の製造において、中間体Aの替わりに、中間体Cを用い、使用する化合物の量を適宜変更した以外は、Pc-6と同様の方法により、Pc-33を得た。
【0190】
得られたPc-33は、N-メチルピペリドンを用いてUVスペクトル測定を行った結果、極大吸収波長が712nmであることを確認した。
【0191】
【0192】
〔Pc-37の合成〕
-中間体Dの製造-
中間体C 5.00部をN、N-ジメチルホルムアミド(和光純薬工業(株)富士フイルム和光純薬(株)製)40部を三口フラスコに加え、0℃以下に冷却した。続いて、N-クロロスクシンイミド(東京化成工業(株)製)4.01部のN、N-ジメチルホルムアミド(20部)溶液を滴下した。滴下終了後、25度まで昇温し、100部の蒸留水を滴下し、更に同温度で1時間撹拌した。生じた固体をろ過し、固体を蒸留水100部で洗浄、更にメタノール100部と蒸留水100部の混合液で洗浄、乾燥し中間体Dを2.78部得た。
得られた中間体D構造は、1H-NMR(nuclear magnetic resonance)により同定した。同定結果を以下に示す。
【0193】
(1H-NMR 300MHz 重クロロホルム):2.91(t、4H)、3.54(t、4H)、7.18-7.27(m、10H).
【0194】
-Pc-37の製造-
Pc-6の製造において、中間体Aの替わりに、中間体Dを用い、使用する化合物の量を適宜変更した以外は、Pc-6と同様の方法により、Pc-37を得た。
【0195】
得られたPc-37は、N-メチルピペリドンを用いてUVスペクトル測定を行った結果、極大吸収波長が722nmであることを確認した。
【0196】
【0197】
〔Pc-71の合成〕
-中間体Eの製造-
ジクロロフタロニトリル(東京化成工業(株)製)25.0部、2-フェニルエタンチオール(東京化成工業(株)製)36.8部、N、N-ジメチルアセトアミド(DMAc、和光純薬工業(株)製)500部を三口フラスコに加え、40℃で撹拌溶解させた。続いて、炭酸カリウム(日本曹達(株)製)52.6部を前記混合物中に添加後、60℃で4時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、500部の蒸留水を滴下し、更に同温度で1時間撹拌した。生じた固体をろ過し、固体を蒸留水500部で洗浄、更にメタノール250部と蒸留水250部の混合液で洗浄、乾燥し中間体E52.2部得た。
得られた中間体E構造は、1H-NMR(nuclear magnetic resonance)により同定した。同定結果を以下に示す。
【0198】
(1H-NMR 300MHz 重クロロホルム):3.02(t、4H)、3.26(t、4H)、7.18-7.37(m、12H)。
【0199】
-Pc-71の製造-
Pc-6の製造において、中間体Aの替わりに、中間体Eを用い、使用する化合物の量を適宜変更した以外は、Pc-6と同様の方法により、Pc-71を得た。
【0200】
得られたPc-71は、N-メチルピペリドンを用いてUVスペクトル測定を行った結果、極大吸収波長が703nmであることを確認した。
【0201】
【0202】
その他、Pc-1~Pc-121に含まれる、Pc-6、Pc-10、Pc-33、Pc-37及びPc-71以外の化合物は、Pc-6、Pc-10、Pc-33、Pc-37、Pc-71の合成方法を参考に合成した。
【0203】
<分散液の調製>
下記の表に記載の顔料(G顔料(特定化合物):8.29質量部.Y顔料(黄色顔料)2.07質量部)、誘導体(1.03質量部)、分散剤、溶剤(71.92質量部)を混合したのち、直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部を加えて、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液を製造した。下記の表に記載の数値は質量部である。
なお、下記表において、「↑」の記載は、該当する化合物又は使用量が、1つ上の欄の化合物又は使用量と同一であることを示している。
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
上記表中の略語の詳細は下記の通りである。
【0208】
〔G顔料〕
比較Pc-1~比較Pc-5は下記構造の化合物である。また、PG-36はC.I Pigment green 36を、PG-58はC.I Pigment green 58を、それぞれ表している。
【0209】
【0210】
〔誘導体(顔料誘導体)〕
誘導体(顔料誘導体)の欄に記載の誘導体-1~誘導体-4は下記構造の化合物である。
【0211】
【0212】
〔分散剤〕
P-1:下記構造の樹脂の30質量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw=20,000。
P-2:下記構造の樹脂の30質量%PGMEA溶液。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw=18,000。
P-3:下記構造の樹脂の30質量%PGMEA溶液。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw=22,000。
P-4:下記構造の樹脂の20質量%PGMEA溶液。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw=22,900。
【0213】
【0214】
〔溶剤〕
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0215】
(実施例1~実施例238、比較例1~比較例7)
<組成物の調製1>
下記表10に記載の組成の原料を混合して組成物を調製した。
【0216】
【0217】
上記表中の略語の詳細は下記の通りである。
【0218】
〔樹脂(アルカリ可溶性樹脂)〕
樹脂D1は下記構造の化合物である。主鎖に付記した数値はモル比である。Mw=11,000。
【0219】
【0220】
〔重合性化合物〕
・重合性化合物 E1:KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)、下記構造の化合物。
【0221】
【0222】
〔重合開始剤〕
・光重合開始剤 F3:下記構造の化合物。
【0223】
【0224】
〔界面活性剤〕
・界面活性剤 H1:下記混合物(Mw=14000)の1質量%PGMEA溶液。下記の式中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
【0225】
【0226】
<保存安定性評価>
上記で得られた組成物の粘度を、東機産業(株)製「RE-85L」にて測定後、分散液を45℃、3日間の条件にて静置した後、再度粘度を測定した。静置前後での粘度差(ΔVis)から下記評価基準に従って安定性を評価した。粘度差(ΔVis)の数値が小さいほど、分散安定性が良好であるといえる。分散液の粘度は25℃に温度調整を施した状態で測定した。評価基準は下記の通りとし、評価結果は下記表に記載した。
【0227】
〔評価基準〕
A:ΔVisが0.5Pa・s以下
B:ΔVisが0.5Pa・sより大きく1.0Pa・s以下
C:ΔVisが1.0Pa・sより大きく2.0Pa・s以下
D:ΔVisが2.0Pa・sより大きい
【0228】
<分光特性の評価>
各組成物をポストベーク後の膜厚が0.6μmとなるようにガラス基板上にスピンコートし、100℃、120秒間ホットプレートで乾燥した後、さらに、200℃のホットプレートを用いて300秒間加熱処理(ポストベーク)を行い、硬化膜を形成した。硬化膜が形成されたガラス基板を、紫外可視近赤外分光光度計U-4100((株)日立ハイテクノロジーズ製)(ref.(参照);ガラス基板)を用いて、波長300nm~1000nmの範囲における光の透過率を測定した。分光評価は得られた波長570nmと波長650nmの透過率比(T=(波長570nmにおける透過率)/(波長650nmにおける透過率)×100)から実施した。吸収分光の裾引きが良い場合、波長650nmの透過率が低く、波長570nmの透過率が高くなるため波長570nmと波長650nmの透過率比が大きいほど、分光が優れることを示す。評価基準は下記の通りとし、評価結果は下記表に記載した。
【0229】
〔評価基準〕
A: 16≦T
B: 14≦T<16
C: 12≦T<14
D: 10≦T<12
E: T<10
【0230】
<耐光性>
分光特性の評価において得られた硬化膜に対し、Xeランプにて紫外線カットフィルタを通して2万ルクスの光を20時間照射して耐光性試験を行った、色度計MCPD-1000(大塚電子(株)製)にて、耐光性試験前後の色差のΔEab値を測定した。評価基準は下記の通りとし、評価結果は下記表に記載した。
【0231】
〔評価基準〕
A:ΔEab値<2.5
B:2.5≦ΔEab値<5
C:5≦ΔEab値<10
D:10≦ΔEab値
【0232】
<溶解度>
すべての実施例において、上述の方法により測定された、組成物中における特定化合物の溶解度は0.1質量%以下であった。
【0233】
【0234】
【0235】
【0236】
(実施例239~実施例254)
<組成物の調製>
下記表14に記載の組成の原料を混合して組成物を調製し、実施例1と同様に評価した結果、実施例9(分散剤9を使用した組成物)と同様の結果が得られた。
なお、下記表15において、「↑」の記載は、該当する化合物又は使用量が、1つ上の欄の化合物又は使用量と同一であることを示している。
【0237】
【0238】
【0239】
上記表15中の略語で記載した化合物のうち、上述した以外のものの詳細は下記の通りである。
【0240】
〔樹脂(アルカリ可溶性樹脂)〕
樹脂D2は下記構造の化合物である。主鎖に付記した数値はモル比である。Mw=14000。
【0241】
【0242】
〔重合性化合物〕
・E2:アロニックス M-305(東亞合成(株)製)、下記構造の化合物。
・E3:NKエステル A-TMMT(新中村化学工業(株)製)、下記構造の化合物。
・E4:KAYARAD RP-1040(日本化薬(株)製)、下記構造の化合物。
・E5:アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)
【0243】
【0244】
〔重合開始剤〕
・光重合開始剤 F1:IRGACURE-OXE01(BASF社製)、下記構造の化合物。
・光重合開始剤 F2:IRGACURE-OXE02(BASF社製)、下記構造の化合物。
・光重合開始剤 F4:IRGACURE 369(BASF社製)、下記構造の化合物。
・光重合開始剤 F5:下記構造の化合物。
【0245】
【0246】
(実施例255)
以下の分散液246を使用した以外は実施例19と同様に評価を実施した。保存安定性の評価結果がBとなる以外は、実施例19と同様の結果になった。
【0247】
<分散液246>
特定化合物Pc-10:10.36質量部)、誘導体-1(1.03質量部)、分散剤P-1、溶剤(PGMEA、71.92質量部)を混合したのち、直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部を加えて、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液を製造した。
【0248】
(実施例256)
以下の分散液247を使用した以外は実施例19と同様に評価を実施した。保存安定性がBとなる以外は実施例19と同様の結果になった。
【0249】
<分散液247>
特定化合物Pc-10:8.29質量部.Y顔料(黄色顔料)PY-185:2.07質量部)、分散剤P-1、溶剤(PGMEA、71.92質量部)を混合したのち、直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部を加えて、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液を製造した。下記の表に記載の数値は質量部である。
【0250】
以上の実施例により、本開示に係る組成物の硬化物は、分光特性に優れていることがわかる。そのため、本開示に係る組成物は、カラーフィルタの製造に用いられる組成物として好適であると考えられる。
また、本実施例に係る組成物は、保存安定性及び耐光性に優れていることもわかる。
【0251】
(実施例301~実施例556)
シリコンウェハ上に、Green組成物を製膜後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(キヤノン(株)製)を用い、1,000mJ/cm2で2μm四方のドットパターンのマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、更に純水にて水洗した。次いで、ホットプレートを用いて、200℃で5分間加熱することで、Red組成物をパターニングした。同様にRed組成物、Blue組成物を順次パターニングし、赤、緑及び青の着色パターン(Bayerパターン)を形成した。
Green組成物としては、実施例1~実施例256において調製した組成物を使用した。Green組成物として、実施例1~実施例256においてそれぞれ調製した組成物を用いて固体撮像素子を形成した例が、実施例301~実施例556にそれぞれ該当する。
Red組成物及びBlue組成物については後述する。
なお、Bayerパターンとは、米国特許第3,971,065号明細書に開示されているような、一個の赤色(Red)素子と、二個の緑色(Green)素子と、一個の青色(Blue)素子とを有する色フィルタ素子の2×2アレイを繰り返したパターンである
得られたカラーフィルタを公知の方法に従い固体撮像素子に組み込んだ。実施例1~実施例256で得られたいずれの組成物を使用した場合でも、固体撮像素子は分光特性に優れ、高解像度で色分離性に優れることが確認された
すなわち、本開示に係る組成物をGreen組成物として使用することにより、好適な画像認識能を有する固体撮像素子が得られた。
【0252】
実施例301~実施例556で使用したRed組成物、及び、Blue組成物は、以下の通りである。
【0253】
-Red組成物-
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Red組成物を調製した。
Red顔料分散液:51.7質量部
樹脂4(40質量%PGMEA溶液):0.6質量部
重合性化合物4:0.6質量部
光重合開始剤1:0.3質量部
界面活性剤1:4.2質量部
PGMEA:42.6質量部
【0254】
-Blue組成物-
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Blue組成物を調製した。
Blue顔料分散液:44.9質量部
樹脂4(40質量%PGMEA溶液):2.1質量部
重合性化合物1:1.5質量部
重合性化合物4:0.7質量部
光重合開始剤1:0.8質量部
界面活性剤1:4.2質量部
PGMEA:45.8質量部
【0255】
Red組成物、Green組成物、及び、Blue組成物、に使用した原料は、以下の通りである。
【0256】
・Red顔料分散液
C.I.Pigment Red 254を9.6質量部、C.I.Pigment Yellow 139を4.3質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を6.8質量部、PGMEAを79.3質量部とからなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合及び分散して、顔料分散液を調製した。その後更に、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2,000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行った。この分散処理を10回繰り返し、Red顔料分散液を得た。
【0257】
・Blue顔料分散液
C.I.Pigment Blue 15:6を9.7質量部、C.I.Pigment Violet 23を2.4質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を5.5部、PGMEAを82.4部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合及び分散して、顔料分散液を調製した。その後更に、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2,000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行った。この分散処理を10回繰り返し、Blue顔料分散液を得た。
【0258】
・重合性化合物1:KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物、日本化薬(株)製)
・重合性化合物4:下記構造
【0259】
【0260】
・樹脂4:下記構造(酸価:70mgKOH/g、Mw=11,000、各構成単位における比はモル比である。)
【0261】
【0262】
・光重合開始剤1:IRGACURE-OXE01(1-[4-(フェニルチオ)]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)、BASF社製)
【0263】
・界面活性剤1:下記混合物(Mw=14,000)の1質量%PGMEA溶液。下記の式中、構成単位の割合を示す%(62%及び38%)の単位は、質量%である。
【0264】
【0265】
(実施例601)
<硬化物の形成>
8インチシリコンウエハ基板上にスピンコータにて、下記組成の着色組成物Aを膜厚0.4μmの塗布膜となるように塗布した後、ホットプレートを使用して、200℃で5分間の加熱を行い、塗布膜の硬化を行って着色層(硬化物)を形成した。
【0266】
【0267】
〔エポキシ化合物〕
2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロへキサン付加物(ダイセル社製 EHPE3150、Mw23000)
〔界面活性剤〕
F-781(DIC(株)製)のシクロヘキサノン0.2%溶液
【0268】
<レジストパターンの形成>
次いで、ポジ型フォトレジスト「FHi622BC」(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)を上記着色層上に塗布し、プリベークを実施し、膜厚0.8μmのフォトレジスト層を形成した。
次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を使用して、365nmの波長で2.0μm四方のベイヤーパターンマスクを通してパターンサイズが2.0μm四方になるように露光量を調整して露光した。
次いで、フォトレジスト層の温度又は雰囲気温度が90℃となる温度で1分間、加熱処理を行なった。その後、現像液「FHD-5」(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)で1分間の現像処理を行ない、更に110℃で1分間のポストベーク処理を実施した。
【0269】
<ドライエッチング>
次に、ドライエッチングを以下の手順で行った。
ドライエッチング装置(日立ハイテクノロジーズ社製、U-621)にて、RFパワー:800W、アンテナバイアス:400W、ウエハバイアス:200W、チャンバーの内部圧力:4.0Pa、基板温度:50℃、混合ガスのガス種及び流量を、CF4:80mL/min.、O2:40mL/min.、Ar:800mL/min.として、80秒の第1段階のエッチング処理を実施した。
次いで、同一のエッチングチャンバーにて、RFパワー:600W、アンテナバイアス:100W、ウエハバイアス:250W、チャンバーの内部圧力:2.0Pa、基板温度:50℃、混合ガスのガス種及び流量をN2:500mL/min.、O2:50mL/min.、Ar:500mL/min.とし(N2/O2/Ar=10/1/10)、28秒の第2段階エッチング処理、オーバーエッチング処理を実施した。
【0270】
上記条件でドライエッチングを行った後、フォトレジスト剥離液「MS230C」(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)を使用して120秒間、剥離処理を実施してレジストを除去し、更に純水による洗浄、スピン乾燥を実施した。その後、100℃で2分間の脱水ベーク処理を行った。以上により、着色層を得た。
【0271】
実施例19と同様の操作で分光特性及び耐光性の評価を実施したところ、実施例19と同様の結果であった。
【0272】
2018年2月28日に出願された日本国特許出願第2018-035196号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び、技術規格は、個々の文献、特許出願、及び、技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。