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特許7004818変性共役ジエン系重合体およびそれを含むゴム組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】変性共役ジエン系重合体およびそれを含むゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/00 20060101AFI20220114BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20220114BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220114BHJP
   C08F 36/04 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
C08F8/00
C08L15/00
C08K3/013
C08F36/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020530525
(86)(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 KR2019008584
(87)【国際公開番号】W WO2020013638
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-06-03
(31)【優先権主張番号】10-2018-0080581
(32)【優先日】2018-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0082689
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ロ-ミ
(72)【発明者】
【氏名】イ、テ-チョル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ノ-マ
(72)【発明者】
【氏名】ナ、ユク-ヨル
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-120785(JP,A)
【文献】特開2013-087219(JP,A)
【文献】特開2009-179754(JP,A)
【文献】特開2012-149239(JP,A)
【文献】特開2016-216544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/00-8/50
C08L 15/00-15/02
C08K 3/00-3/40
C08F 36/00-36/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記i)~v)の条件を満たす、変性共役ジエン系重合体。
i)ガラス転移温度:-90℃~-50℃、
ii)ASTM D1646の条件で測定した100℃におけるムーニー粘度:70~100、
iii)重合体の総重量に対する1,2-ビニル結合含量:30.0重量%以下、
iv)分子量分布(PDI;MWD):1.5~3.5、および
v)110℃で測定したムーニー緩和率:0.7以下。
【請求項2】
ガラス転移温度が-80℃~-50℃である、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項3】
重合体中の1,2-ビニル結合含量が5重量%~30重量%である、請求項1または2に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項4】
分子量分布が1.7~2.6である、請求項1~3のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項5】
110℃で測定したムーニー緩和率が0.45以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項6】
数平均分子量(Mn)が1,000g/mol~2,000,000g/molであり、重量平均分子量(Mw)が1,000g/mol~3,000,000g/molである、請求項1~5のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項7】
N原子を含み、前記N原子の含有量が、前記重合体の総重量に対して50ppm以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項8】
Si原子を含み、前記Si原子の含有量が、前記重合体の総重量に対して50ppm以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体および充填剤を含むゴム組成物。
【請求項10】
前記変性共役ジエン系重合体100重量部に対して、0.1重量部~200重量部の充填剤を含む、請求項9に記載のゴム組成物。
【請求項11】
前記充填剤が、シリカ系充填剤またはカーボンブラック系充填剤である、請求項9または10に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年7月11日付けの韓国特許出願第10‐2018‐0080581号および2019年7月9日付けの韓国特許出願第10‐2019‐0082689号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、転がり抵抗特性および摩耗特性が改善されるとともに、加工性に優れた変性共役ジエン系重合体、およびそれを含むゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、自動車に対する低燃費化の要求に伴い、タイヤ用ゴム材料として、転がり抵抗が少なく、耐磨耗性、引張特性に優れるとともに、ウェットグリップ性で代表される調整安定性も兼備した共役ジエン系重合体が求められている。
【0004】
タイヤの転がり抵抗を減少させるための方法としては、加硫ゴムのヒステリシス損を小さくする方法が挙げられ、かかる加硫ゴムの評価指標としては、50℃~80℃の反発弾性、tanδ、グッドリッチ発熱などが用いられている。すなわち、前記温度での反発弾性が大きいか、tanδ、グッドリッチ発熱が小さいゴム材料が好ましい。
【0005】
ヒステリシス損の小さいゴム材料としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、またはポリブタジエンゴムなどが知られているが、これらは、ウェットグリップ性が小さいという問題がある。そこで、近年、スチレン-ブタジエンゴム(以下、SBRという)またはブタジエンゴム(以下、BRという)などの共役ジエン系重合体または共重合体が乳化重合や溶液重合により製造され、タイヤ用ゴムとして用いられている。中でも、乳化重合に比べて溶液重合が有する最も大きい利点は、ゴムの物性を規定するビニル構造の含量およびスチレンの含量を任意に調節することができ、カップリング(coupling)や変性(modification)などによって分子量および物性などが調節可能であるという点である。したがって、最終的に製造されたSBRやBRの構造の変化が容易であるとともに、鎖末端の結合や変性によって鎖末端の動きを減少させ、シリカまたはカーボンブラックなどの充填剤との結合力を増加させることができるため、溶液重合によるSBRがタイヤ用ゴム材料として多く用いられている。
【0006】
かかる溶液重合によるSBRがタイヤ用ゴム材料として用いられる場合、前記SBR中のビニルの含量を増加させることで、ゴムのガラス転移温度を上昇させることにより、走行抵抗および制動力などのようなタイヤに要求される物性を調節することができるだけでなく、ガラス転移温度を適宜調節することで、燃料消費を低減することができる。前記溶液重合によるSBRは、アニオン重合開始剤を用いて製造し、形成された重合体の鎖末端を種々の変性剤を用いて結合させたり、変性させたりして用いている。例えば、米国特許第4,397,994号には、一官能性開始剤であるアルキルリチウムを用いて、非極性溶媒下でスチレン-ブタジエンを重合することで得られた重合体の鎖末端の活性アニオンを、スズ化合物などの結合剤を用いて結合させた技術が提示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、変性共役ジエン系重合体のガラス転移温度、1,2-ビニル結合含量、ムーニー粘度、および分岐化度を制御することで、最終タイヤの転がり抵抗性および耐磨耗性を改善し、配合時における加工性を改善することができる変性共役ジエン系重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、下記i)~v)の条件を満たす変性共役ジエン系重合体であって、i)ガラス転移温度:-90℃~-50℃、ii)ASTM D1646の条件で測定したムーニー粘度:50~100、iii)重合体の総重量に対する1,2-ビニル結合含量:30.0重量%以下、iv)分子量分布(PDI;MWD):1.5~3.5、およびv)110℃で測定したムーニー緩和率:0.7以下である、変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体および充填剤を含むゴム組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に系る変性共役ジエン系重合体は、特定の範囲のガラス転移温度、1,2-ビニル結合含量を満たし、且つ高い分岐化度を有することで、転がり抵抗性および耐磨耗性に優れるとともに、高い分岐化度を有するにもかかわらず、適正なレベルに制御されたムーニー粘度を有することにより、加工性も改善されることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。
【0012】
本発明の説明および請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0013】
定義
本明細書で用いられるような「重合体」という用語は、同一であるか異種類であるかを問わず、単量体らを重合することで製造された重合体化合物を指す。これにより、一般用語の重合体は、単に1種の単量体から製造された重合体を指す際に通常用いられる単独重合体という用語、および共重合体という用語を網羅する。
【0014】
本明細書で用いられるような「ビニル含量」という用語は、前記重合体中の共役ジエン単量体(ブタジエンなど)部分(重合されたブタジエンの総量)に基づく、前記重合体鎖中の1,2番位置に内包されるブタジエンの質量(もしくは重量)パーセントを意味する。
【0015】
本発明において、用語「1価の炭化水素基」は、1価のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、不飽和結合を1つ以上含むシクロアルキル基、およびアリール基などの、炭素と水素が結合された1価の原子団を意味し得て、1価の炭化水素で表される置換基の最小炭素原子数は、各置換基の種類によって決定される。
【0016】
本発明において、用語「2価の炭化水素基」は、2価のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、不飽和結合を1つ以上含むシクロアルキレン基、およびアリーレン基などの炭素と水素が結合された2価の原子団を意味し得て、2価の炭化水素で表される置換基の最小炭素原子数は、各置換基の種類によって決定される。
【0017】
本発明において、用語「アルキル基(alkyl group)」は、1価の脂肪族飽和炭化水素を意味し、メチル、エチル、プロピル、およびブチルなどの直鎖状アルキル基、およびイソプロピル(isopropyl)、sec-ブチル(sec-butyl)、tert-ブチル(tert-butyl)、およびネオペンチル(neo-pentyl)などの分岐状アルキル基の両方を含む意味であり得る。
【0018】
本発明において、用語「アルケニル基(alkenyl group)」は、二重結合を1つまたは2つ以上含む1価の脂肪族不飽和炭化水素を意味し得る。
【0019】
本発明において、用語「アルキニル基(alkynyl group)」は、三重結合を1つまたは2つ以上含む1価の脂肪族不飽和炭化水素を意味し得る。
【0020】
本発明において、用語「アルキレン基(alkylene group)」は、メチレン、エチレン、プロピレン、およびブチレンなどのような2価の脂肪族飽和炭化水素を意味し得る。
【0021】
本発明において、用語「アリール基(aryl group)」は、環状の芳香族炭化水素を意味し、また、1つの環が形成された単環芳香族炭化水素(monocyclic aromatic hydrocarbon)、または2つ以上の環が結合された多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon)を両方とも含む意味であり得る。
【0022】
本発明において、用語「ヘテロ環基(heterocyclic group)」は、シクロアルキル基またはアリール基中の炭素原子が、1個以上のヘテロ原子で置換されたものであって、例えば、ヘテロシクロアルキル基またはヘテロアリール基を何れも含む意味である。
【0023】
本発明において、用語「含む」、「有する」という用語、およびそれらの派生語は、それらが具体的に開示されているかいないかを問わず、任意の追加の成分、ステップもしくは手順の存在を排除することを意図しない。如何なる不確実性も避けるために、「含む」という用語の使用により請求された全ての組成物は、反対に述べられない限り、重合体であるかもしくはその他のものであるかを問わず、任意の追加の添加剤、補助剤、もしくは化合物を含み得る。これと対照的に、「から本質的に構成される」という用語は、操作性において必須ではないものを除き、任意のその他の成分、ステップもしくは手順を任意の連続する説明の範囲から排除する。「から構成される」という用語は、具体的に述べられるか挙げられない任意の成分、ステップもしくは手順を排除する。
【0024】
測定方法および条件
本明細書において、「ガラス転移温度(Tg)」は、変性共役ジエン系重合体を試料とし、ISO22768:2006に準じて、示差走査熱量計(メックサイエンス(McScience)社製、商品名「DSC3200S」)を用いて、ヘリウム50mL/分の流通下で、-100℃から10℃/分で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度として測定したものである。
【0025】
本明細書において、「1,2-ビニル結合含量」は、Varian VNMRS 500 MHz NMRを用いて測定および分析したものであり、NMR測定時における溶媒としては1,1,2,2-テトラクロロエタンを使用し、溶媒ピーク(solvent peak)は6.0ppmと計算し、7.2~6.9ppmはランダムスチレン、6.9~6.2ppmはブロックスチレン、5.8~5.1ppmは1,4-ビニルおよび1,2-ビニル、5.1~4.5ppmは1,2-ビニルのピークとして、全重合体中の1,2-ビニル結合含量を計算して測定したものである。
【0026】
本明細書において、「重量平均分子量(Mw)」、「数平均分子量(Mn)」、および「分子量分布(MWD)」は、GPC(Gel permeation chromatohraph)分析により測定し、分子量分布曲線を確認することで測定したものである。分子量分布(PDI、MWD、Mw/Mn)は、測定された前記各分子量から計算する。具体的に、前記GPCは、PLgel Olexis(Polymer Laboratories社)カラム2本とPLgel mixed-C(Polymer Laboratories社)カラム1本を組み合わせて使用し、分子量の計算時に、GPC基準物質(Standard material)としてPS(polystyrene)を使用して実施する。GPC測定溶媒は、テトラヒドロフランに2wt%のアミン化合物を交ぜて製造する。
【0027】
本明細書において、「ムーニー粘度(MV)」および「ムーニー緩和率(-S/R)」において、前記ムーニー粘度(MV、(ML1+4、@100℃ MU)は、MV-2000(ALPHA Technologies社)により、100℃で、Rotor Speed 2±0.02rpm、Large Rotorを用いて測定する。この際、使用された試料は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させて4分間測定する。ムーニー粘度の測定後、トルクが解放されながら現れるムーニー粘度変化の勾配値を測定し、その絶対値をムーニー緩和率とする。
【0028】
本明細書において、「Siの含量」は、ICP分析方法として、誘導結合プラズマ発光分析器(ICP-OES;Optima 7300DV)を用いて測定する。前記誘導結合プラズマ発光分析器を用いる場合、試料約0.7gを白金るつぼ(Pt crucible)に入れ、濃硫酸(98重量%、Electronic grade)約1mLを入れて、300℃で3時間加熱し、試料を電気炉(Thermo Scientific、Lindberg Blue M)にて、下記ステップ(step)1~3のプログラムで灰化を進行した後、
1)ステップ1:initial temp 0℃、rate(temp/hr)180℃/hr、temp(holdtime)180℃(1hr)
2)ステップ2:initial temp 180℃、rate(temp/hr)85℃/hr、temp(holdtime)370℃(2hr)
3)ステップ3:initial temp 370℃、rate(temp/hr)47℃/hr、temp(holdtime)510℃(3hr)
残留物に、濃硝酸(48重量%)1mL、濃フッ酸(50重量%)20μlを加え、白金るつぼを密封して30分以上振った(shaking)後、試料にホウ酸(boric acid)1mLを入れて0℃で2時間以上保管してから、超純水(ultrapure water)30mLに希釈し、灰化を進行して測定する。
【0029】
本明細書において、「Nの含量」は、一例として、NSX分析方法により測定することができる。前記NSX分析方法では、極微量窒素定量分析器(NSX-2100H)を用いて測定する。例示的に、前記極微量窒素定量分析器を用いる場合、極微量窒素定量分析器(Auto sampler、Horizontal furnace、PMT&Nitrogen detector)をオンにし、Arを250ml/min、O2を350ml/min、オゾナイザ(ozonizer)300ml/minにキャリアガス流量を設定し、ヒータ(heater)を800℃に設定した後、約3時間待機して分析器を安定化させる。分析器が安定化された後、Nitrogen standard(AccuStandard S-22750-01-5ml)を用いて、検量線範囲5ppm、10ppm、50ppm、100ppm、および500ppmの検量線を作成し、各濃度に該当するAreaを得た後、濃度とAreaとの割合を用いて直線を作成する。その後、試料20mgが入ったセラミックボートを前記分析器のAuto samplerに置いて測定し、areaを得る。得られた試料のareaと前記検量線を用いてNの含量を計算する。この際、試料は、スチームで加熱された温水に入れて撹拌し、溶媒を除去した変性共役ジエン系重合体であって、残留単量体、残留変性剤、およびオイルが除去されたものである。
【0030】
変性共役ジエン系重合体
本発明に系る変性共役ジエン系重合体は、下記i)~v)の条件を満たす変性共役ジエン系重合体であり、その条件が、i)ガラス転移温度:-90℃~-50℃、ii)ASTM D1646の条件で測定したムーニー粘度:50~100、iii)重合体の総重量に対する1,2-ビニル結合含量:30.0重量%以下、iv)分子量分布(PDI;MWD):1.5~3.5、および、v)110℃で測定したムーニー緩和率:0.7以下である、変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0031】
本発明の一実施形態によると、前記変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、および変性剤由来の官能基を含んでもよい。前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位は、共役ジエン系単量体が重合時に成す繰り返し単位を意味し得る。前記変性剤由来の官能基は、活性重合体と変性剤との反応またはカップリングにより、活性重合体の一側末端に存在する変性剤に由来した官能基を意味し得る。
【0032】
本発明の一実施形態によると、前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、および2-ハロ-1,3-ブタジエン(ハロは、ハロゲン原子を意味する)からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0033】
一方、前記変性共役ジエン系重合体は、芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位を含む共重合体であって、芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位を30重量%以上、または30重量%~50重量%で含んでもよい。この範囲内である場合、転がり抵抗およびウェットグリップ性のバランスに優れる効果がある。
【0034】
前記芳香族ビニル単量体は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、1-ビニル-5-ヘキシルナフタレンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0035】
さらに他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位とともに、炭素数1~10のジエン系単量体由来の繰り返し単位をさらに含む共重合体であってもよい。前記ジエン系単量体由来の繰り返し単位は、前記共役ジエン系単量体とは異なるジエン系単量体に由来の繰り返し単位であってもよい。前記共役ジエン系単量体とは異なるジエン系単量体は、例えば、1,2-ブタジエンであってもよい。前記変性共役ジエン系重合体がジエン系単量体をさらに含む共重合体である場合、前記変性共役ジエン系重合体は、ジエン系単量体由来の繰り返し単位を0超過重量%~1重量%、0超過重量%~0.1重量%、0超過重量%~0.01重量%、または0超過重量%~0.001重量%で含んでもよく、この範囲内である場合、ゲルの生成を防止する効果がある。
【0036】
本発明の一実施形態によると、前記共重合体はランダム共重合体であってもよく、この場合、各物性間のバランスに優れる効果がある。前記ランダム共重合体は、共重合体を成す繰り返し単位が無秩序に配列されたものを意味し得る。
【0037】
本発明の一実施形態に系る前記変性共役ジエン系重合体は、ガラス転移温度が-90℃~-50℃を満たすべきであり、好ましくは-80℃~-50℃であってもよい。前記ガラス転移温度は、前記共単量体である芳香族ビニル単量体の含量に依存して変わり得るが、この共単量体の含量のみによって決定されるわけではなく、重合方法および条件によって流動的である。すなわち、前記範囲を満たすように製造された変性共役ジエン系重合体は、配合時に、シリカまたはカーボンブラックのような充填剤との親和力に優れて耐磨耗性が向上することができる。前記ガラス転移温度が-50℃より高い場合には、耐磨耗性のような引張特性が低下する恐れがあり、-90℃より低い場合には、加工性に劣り、転がり抵抗性およびウェットグリップ性のような粘弾性特性が劣化する恐れがあるため、上記の範囲を満たすことが好ましい。
【0038】
また、本発明の一実施形態に系る前記変性共役ジエン系重合体は、ASTM D1646の条件で測定したムーニー粘度(Mooney viscosity)が50~100を満たすべきであり、具体的に、70~100であり、好ましくは、70~90であってもよい。加工性を評価する尺度は多様であるが、ムーニー粘度が前記範囲を満たす場合、非常に優れた加工性を有することができる。
【0039】
一方、従来は、ガラス転移温度が-90℃~-50℃の範囲である際には、ムーニー粘度が前記範囲を満たすことが困難であったが、本発明によると、重合方法および条件を制御することで、変性共役ジエン系重合体の分岐化度を改善させることができ、これにより、上記のような範囲のガラス転移温度、ムーニー粘度、およびムーニー緩和率を満たす変性共役ジエン系重合体を提供することができる。
【0040】
また、本発明の一実施形態に系る前記変性共役ジエン系重合体は、重合体の総重量に対する1,2-ビニル結合含量が30重量%以下を満たす必要がある。前記ビニル含量は、ビニル基を有する単量体と芳香族ビニル系単量体からなる共役ジエン系共重合体に対する、1,4-添加ではなく1,2-添加された共役ジエン系単量体の重量%を意味し得る。これは、重合時に、重合反応が始まる時点と重合反応が終わる時点の反応環境などによる影響を受けることがある。
【0041】
具体的に、前記1,2-ビニル結合含量は、5~30重量%であり、好ましくは5~15重量%であってもよい。この1,2-ビニル結合含量によって、摩耗特性および転がり抵抗特性が影響を受けるが、1,2-ビニル結合含量が30重量%を超える場合には、それとともにガラス転移温度が影響を受けるため、摩耗特性が極めて劣化する恐れがある。したがって、変性共役ジエン系重合体を製造する時に、1,2-ビニル結合含量が前記範囲を満たすように、反応条件に留意する必要がある。
【0042】
本発明の一実施形態に系る前記変性共役ジエン系重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、Gel permeation chromatography)により測定された数平均分子量(Mn)が1,000g/mol~2,000,000g/mol、10,000g/mol~1,000,000g/mol、または100,000g/mol~800,000g/molであってもよく、重量平均分子量(Mw)が1,000g/mol~3,000,000g/mol、10,000g/mol~2,000,000g/mol、または100,000g/mol~1,500,000g/molであってもよい。この範囲内である場合、転がり抵抗およびウェットグリップ性に優れる効果がある。
【0043】
他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、分子量分布(PDI;MWD;Mw/Mn)が1.5~3.5であり、好ましくは1.5~3.0、または1.7~3.0、または1.7~2.6であってもよい。この範囲内である場合、引張特性および粘弾性特性に優れ、各物性間のバランスに優れる効果がある。
【0044】
そして、前記変性共役ジエン系重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、Gel permeation chromatography)による分子量分布曲線が単峰形(unimodal)または二峰形(bimodal)を有することができる。前記単峰形および二峰形の曲線形態は、連続式および回分式重合の方法的側面と、変性剤またはカップリング剤により行われる変性反応の側面によって決定される。
【0045】
前記変性共役ジエン系重合体の110℃で測定したムーニー緩和率は、当該変性共役ジエン系共重合体の分岐化度および分子量の指標となり得る。変性共役ジエン系重合体の110℃でのムーニー緩和率は0.7以下であり、0.6以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましく、0.45以下であることが最も好ましい。また、ムーニー緩和率は低いほど、分岐化度が高く、分子量が大きいことを意味する。したがって、その下限は特に限定されないが、0.05以上であることが好ましい。本発明に系る変性共役ジエン系重合体は、ムーニー緩和率が0.7以下であって、本実施形態の効果が発現される。
【0046】
前記変性共役ジエン系重合体の110℃で測定したムーニー緩和率は、上述のように、その変性共役ジエン系重合体の分岐化度および分子量の指標となり得る。前記ムーニー緩和率が減少するにつれて、変性共役ジエン系重合体の分岐化度および分子量が増加する傾向がある。ただ、一般には、前記ムーニー緩和率は上述のムーニー粘度に関連する。同等のレベルのムーニー粘度を有する変性共役ジエン系重合体は、分枝が多いほどムーニー緩和率が小さくなるため、同等のムーニー粘度では、リニアリティの指標としても活用可能である。
【0047】
前記ムーニー緩和率を0.7以下にするためには、例えば、変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度が70~100である範囲で、重量平均分子量と、製造される重合体の分岐化度とを制御することで達成できるが、重量平均分子量が小さくなると分岐化度を高め、重量平均分子量が大きくなると分岐化度を低めるように制御することができ、変性剤の官能基の数、変性剤の添加量、またはメタレーションの進行度に応じて制御してもよい。
【0048】
本発明の一実施形態に系る前記変性共役ジエン系重合体は、NおよびSiの含量が、重量を基準として、それぞれ25ppm以上、50ppm以上、70ppm~10,000ppm、または100ppm~5,000ppmであってもよい。この範囲内である場合、変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物の引張特性および粘弾性特性などの機械的物性に優れる効果がある。前記Nの含量とSiの含量は、前記変性共役ジエン系重合体中に存在するSi原子の含量をそれぞれ意味し得る。一方、前記N原子とSi原子は、変性剤に由来のものであってもよい。
【0049】
一方、本発明の一実施形態に系る変性共役ジエン系重合体は、変性率が30%以上であってもよい。
【0050】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、変性率が50%以上であってもよく、前記N原子およびSi原子の含量が25ppm(重量基準)以上である場合は、変性率が30%以上であってもよい。この変性率は、N原子およびSi原子の含量と独立して変化するのではなく、一定部分依存して変化し得る。
【0051】
しかし、変性反応において、変性剤によってカップリングがどれ位起こるかによって、N原子およびSi原子の含量と変性率が一部独立性を示すこともあり、変性率を50%以上、好ましくは55%以上、または60%以上、最も好ましくは70%以上の高変性率を達成するためには、変性反応時にカップリングされる重合体の量を低減する必要がある。これは、投入する変性剤量、極性添加剤量、反応時間、変性剤と活性重合体の混合時間、および混合程度などに応じて制御してもよい。
【0052】
上記のように、本発明に系る変性共役ジエン系重合体が上述の条件を満たす場合には、シリカまたはカーボンブラックのような充填剤との親和力が向上するなどによって、配合時に耐磨耗性および転がり抵抗性が著しく改善されることができ、このような物性の改善とともに、加工性も向上することができる。さらに、前記変性率の条件をさらに満たす変性共役ジエン系重合体の場合、耐磨耗性および転がり抵抗性に加えてウェットグリップ性も改善され、これにより、引張特性および粘弾性特性が著しく改善された変性共役ジエン系重合体を提供することができる。
【0053】
本発明に係る前記変性剤は、共役ジエン系重合体の末端を変性させるための変性剤であり、具体的な例として、シリカ親和性変性剤であってもよい。前記シリカ親和性変性剤は、変性剤として用いられる化合物中にシリカ親和性官能基を含有する変性剤を意味し得て、前記シリカ親和性官能基は、充填剤、特に、シリカ系充填剤との親和性に優れ、シリカ系充填剤と変性剤由来の官能基との相互作用が可能な官能基を意味し得る。
【0054】
前記変性剤は、一例として、アルコキシシラン系変性剤であってもよく、具体的な例として、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子などのヘテロ原子を1個以上含有するアルコキシシラン系変性剤であってもよい。前記アルコキシシラン系変性剤を用いる場合、活性重合体の一方の末端に位置したアニオン活性部位と、アルコキシシラン系変性剤のアルコキシ基との置換反応により、活性重合体の一方の末端がシリル基と結合した形態に変性が行われることができ、これにより、変性共役ジエン系重合体の一方の末端に存在する前記変性剤由来の官能基から、無機充填剤などとの親和性が向上し、変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物の機械的物性が向上する効果がある。尚、前記アルコキシシラン系変性剤が窒素原子を含有する場合には、前記シリル基に由来する効果の他にも、窒素原子に由来する、付加的な物性向上の効果が期待される。
【0055】
本発明の一実施形態によると、前記変性剤は、下記化学式1で表される化合物を含んでもよい。
【0056】
【化1】
【0057】
前記化学式1中、R1は、単一結合、または炭素数1~10のアルキレン基であり、R2およびR3は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、R4は、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキル基で置換された2価、3価、または4価のアルキルシリル基、または炭素数2~10のヘテロ環基であり、R21は、単一結合、炭素数1~10のアルキレン基、または-[R42O]j-であり、R42は、炭素数1~10のアルキレン基であり、aおよびmは、それぞれ独立して、1~3から選択される整数であり、nは、0、1、または2の整数であり、jは、1~30から選択される整数であってもよい。
【0058】
具体的な例として、前記化学式1中、R1は、単一結合、または炭素数1~5のアルキレン基であり、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~5のアルキル基であり、R4は、水素、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルキル基で置換された4価のアルキルシリル基、または炭素数2~5のヘテロ環基であり、R21は、単一結合、または炭素数1~5のアルキレン基、または-[R42O]j-であり、R42は、炭素数1~5のアルキレン基であり、aは、2または3の整数であり、mは、1~3から選択される整数であり、nは、0、1、または2の整数であり、この際、m+n=3であり、jは、1~10から選択される整数であってもよい。
【0059】
前記化学式1中、R4がヘテロ環基である場合、前記ヘテロ環基は、3置換アルコキシシリル基で置換されているかまたは置換されていないものであってもよく、前記ヘテロ環基が3置換アルコキシシリル基で置換された場合、前記3置換アルコキシシリル基は、炭素数1~10のアルキレン基により前記ヘテロ環基に連結されて置換されたものであってもよく、前記3置換アルコキシシリル基は、炭素数1~10のアルコキシ基で置換されたアルコキシシリル基を意味し得る。
【0060】
より具体的な例として、前記化学式1で表される化合物は、N,N-ビス(3-(ジメトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(dimethoxy(methyl)silyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ビス(3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(diethoxy(methyl)silyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(trimethoxysilyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ジエチル-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミン(N,N-diethyl-3-(trimethoxysilyl)propan-1-amine)、N,N-ジエチル-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン(N,N-diethyl-3-(triethoxysilyl)propan-1-amine)、トリ(トリメトキシシリル)アミン(tri(trimethoxysilyl)amine)、トリ(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミン(tri-(3-(trimethoxysilyl)propyl)amine)、N,N-ビス(3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)-1,1,1-トリメチルシランアミン(N,N-bis(3-(diethoxy(methyl)silyl)propyl)-1,1,1-trimethlysilanamine)、N,N-ビス(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-(トリエトキシシリル)メタン-1-アミン(N,N-bis(3-(1H-imidazol-1-yl)propyl)-(triethoxysilyl)methan-1-amine)、N-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロピル)-3-(トリメトキシシリル)-N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミン(N-(3-(1H-1,2,4-triazole-1-yl)propyl)-3-(trimethoxysilyl)-N-(trimethoxysilyl)propyl)propan-1-amine)、3-(トリメトキシシリル)-N-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-N-(3-(1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)プロピル)プロパン-1-アミン(3-(trimethoxysilyl)-N-(3-(trimethoxysilyl)propyl)-N-(3-(1-(3-(trimehtoxysilyl)propyl)-1H-1,2,4-triazol-3-yl)propyl)propan-1-amine)、N,N-ビス(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン(N,N-bis(2-(2-methoxyethoxy)ethyl)-3-(triethoxysilyl)propan-1-amine)、N,N-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-2,5,8,11,14-ペンタオキサヘキサデカン-16-アミン(N,N-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)-2,5,8,11,14-pentaoxahexadecan-16-amine)、N-(2,5,8,11,14-ペンタオキサヘキサデカン-16-イル)-N-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-2,5,8,11,14-ペンタオキサヘキサデカン-16-アミン(N-(2,5,8,11,14-pentaoxahexadecan-16-yl)-N-(3-(triethoxysilyl)propyl)-2,5,8,11,14-pentaoxahexadecan-16-amine)、およびN-(3,6,9,12-テトラオキサヘキサデシル)-N-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-3,6,9,12-テトラオキサヘキサデカン-1-アミン(N-(3,6,9,12-tetraoxahexadecyl)-N-(3-(triethoxysilyl)propyl)-3,6,9,12-tetraoxahexadecan-1-amine)からなる群から選択される1種であってもよい。
【0061】
他の例として、前記変性剤は、下記化学式2で表される化合物を含んでもよい。
【0062】
【化2】
【0063】
前記化学式2中、R5、R6、およびR9は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、R7、R8、R10、およびR11は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、R12は、水素または炭素数1~10のアルキル基であり、bおよびcは、それぞれ独立して、0、1、2、または3であって、b+c≧1であり、Aは、
【0064】
【化3】
【0065】
または
【0066】
【化4】
【0067】
であり、この際、R13、R14、R15、およびR16は、それぞれ独立して、水素、または炭素数1~10のアルキル基であってもよい。
【0068】
具体的な例として、前記化学式2で表される化合物は、N-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-3-(トリエトキシシリル)-N-(3-(トリエトキシシリル)プロピルプロパン-1-アミン)(N-(3-(1H-imidazol-1-yl)propyl)-3-(triethoxysilyl)-N-(3-(triethoxysilyl)propyl)propan-1-amine))、および3-(4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-1-イル)-N,N-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミン(3-(4,5-dihydro-1H-imidazol-1-yl)-N,N-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)propan-1-amine)からなる群から選択される1種であってもよい。
【0069】
さらに他の例として、前記変性剤は、下記化学式3で表される化合物を含んでもよい。
【0070】
【化5】
【0071】
前記化学式3中、A1およびA2は、それぞれ独立して、酸素原子を含むかまたは含まない炭素数1~20の2価の炭化水素基であり、R17~R20は、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、L1~L4は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基で置換された2価、3価、または4価のアルキルシリル基、または炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、L1およびL2と、L3およびL4は、互いに連結されて炭素数1~5の環を形成してもよく、L1およびL2と、L3およびL4が互いに連結されて環を形成する場合、形成された環は、N、O、およびSからなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を1個~3個含んでもよい。
【0072】
具体的な例として、前記化学式3中、A1およびA2は、それぞれ独立して、1~10のアルキレン基であり、R17~R20は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、L1~L4は、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基で置換された4価のアルキルシリル基、炭素数1~10のアルキル基であるか、L1およびL2と、L3およびL4は、互いに連結されて炭素数1~3の環を形成してもよく、L1およびL2と、L3およびL4が互いに連結されて環を形成する場合、形成された環は、N、O、およびSからなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を1個~3個含んでもよい。
【0073】
より具体的な例として、前記化学式3で表される化合物は、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dimethylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dimethylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dimethylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-diethylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dipropylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-diethylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-diethylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dipropylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dipropylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-diethylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-diethylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-diethylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dimethylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dipropylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dimethylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dipropylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dimethylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dipropylmethan-1-amine))、N,N’-((1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-(トリメチルシリル)シランアミン)(N,N’-((1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(propan-3,1-diyl))bis(1,1,1-trimethyl-N-(trimethylsilyl)silanamine))、N,N’-((1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-(トリメチルシリル)シランアミン)(N,N’-((1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(propan-3,1-diyl))bis(1,1,1-trimethyl-N-(trimethylsilyl)silanamine))、N,N’-((1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-(トリメチルシリル)シランアミン)(N,N’-((1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(propan-3,1-diyl))bis(1,1,1-trimethyl-N-(trimethylsilyl)silanamine))、N,N’-((1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-フェニルシランアミン)(N,N’-((1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(propan-3,1-diyl))bis(1,1,1-trimethyl-N-phenylsilanamine))、N,N’-((1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-フェニルシランアミン)(N,N’-((1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(propan-3,1-diyl))bis(1,1,1-trimethyl-N-phenylsilanamine))、N,N’-((1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-フェニルシランアミン)(N,N’-((1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(propan-3,1-diyl))bis(1,1,1-trimethyl-N-phenylsilanamine))、1,3-ビス(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン(1,3-bis(3-(1H-imidazol-1-yl)propyl)-1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane)、1,3-ビス(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン(1,3-bis(3-(1H-imidazol-1-yl)propyl)-1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane)、および1,3-ビス(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン(1,3-bis(3-(1H-imidazol-1-yl)propyl)-1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane)からなる群から選択される1種であってもよい。
【0074】
他の例として、前記変性剤は、下記化学式4で表される化合物を含んでもよい。
【0075】
【化6】
【0076】
前記化学式4中、R22およびR23は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基、または-R28[OR29f-であり、R24~R27は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、R28およびR29は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり、R47およびR48は、それぞれ独立して、炭素数1~6の2価の炭化水素基であり、dおよびeは、それぞれ独立して、0、または1~3から選択される整数であって、d+eは1以上の整数であり、fは1~30の整数であってもよい。
【0077】
具体的に、前記化学式4中、R22およびR23は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基、または-R28[OR29f-であり、R24~R27は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、R28およびR29は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、dおよびeは、それぞれ独立して、0、または1~3から選択される整数であって、d+eは1以上の整数であり、fは1~30から選択される整数であってもよい。
【0078】
より具体的に、前記化学式4で表される化合物は、下記化学式4a、化学式4b、または化学式4cで表される化合物であってもよい。
【0079】
【化7】
【0080】
【化8】
【0081】
【化9】
【0082】
前記化学式4a、化学式4b、および化学式4c中、R22~R27、dおよびeは、上述のとおりである。
【0083】
より具体的な例として、前記化学式4で表される化合物は、1,4-ビス(3-(3-(トリエトキシシリル)プロポキシ)プロピル)ピペラジン(1,4-bis(3-(3-(triethoxysilyl)propoxy)propyl)piperazine、1,4-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ピペラジン(1,4-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)piperazine)、1,4-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)ピペラジン(1,4-bis(3-(trimethoxysilyl)propyl)piperazine)、1,4-ビス(3-(ジメトキシメチルシリル)プロピル)ピペラジン(1,4-bis(3-(dimethoxymethylsilyl)propyl)piperazine)、1-(3-(エトキシジメチルシリル)プロピル)-4-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ピペラジン(1-(3-(ethoxydimethylsilyl)propyl)-4-(3-(triethoxysilyl)propyl)piperazine)、1-(3-(エトキシジメチル)プロピル)-4-(3-(トリエトキシシリル)メチル)ピペラジン(1-(3-(ethoxydimethyl)propyl)-4-(3-(triethoxysilyl)methyl)piperazine)、1-(3-(エトキシジメチル)メチル)-4-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ピペラジン(1-(3-(ethoxydimethyl)methyl)-4-(3-(triethoxysilyl)propyl)piperazine)、1,3-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)イミダゾリジン(1,3-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)imidazolidine)、1,3-ビス(3-(ジメトキシエチルシリル)プロピル)イミダゾリジン(1,3-ビス(3-(dimethoxyethylsilyl)propyl)imidazolidine)、1,3-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)ヘキサヒドロピリミジン(1,3-bis(3-(trimethoxysilyl)propyl)hexahydropyrimidine)、1,3-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ヘキサヒドロピリミジン(1,3-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)hexahydropyrimidine)、および1,3-ビス(3-(トリブトキシシリル)プロピル)-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン(1,3-bis(3-(tributoxysilyl)propyl)-1,2,3,4-tetrahydropyrimidine)からなる群から選択される1種であってもよい。
【0084】
さらに他の例として、前記変性剤は、下記化学式5で表される化合物を含んでもよい。
【0085】
【化10】
【0086】
前記化学式5中、R30は、炭素数1~30の1価の炭化水素基であり、R31~R33は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、R34~R37は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、gおよびhは、それぞれ独立して、0、または1~3から選択される整数であって、g+hは1以上の整数であってもよい。
【0087】
さらに他の例として、前記変性剤は、下記化学式6で表される化合物を含んでもよい。
【0088】
【化11】
【0089】
前記化学式6中、A3およびA4は、それぞれ独立して、1~10のアルキレン基であり、R38~R41は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数1~10のアルコキシ基であり、iは、1~30から選択される整数であってもよい。
【0090】
さらに他の例として、前記変性剤は、3,4-ビス(2-メトキシエトキシ)-N-(4-(トリエトキシシリル)ブチル)アニリン(3,4-bis(2-methoxyethoxy)-N-(4-(triethoxysilyl)butyl)aniline)、N,N-ジエチル-3-(7-メチル-3,6,8,11-テトラオキサ-7-シラトリデカン-7-イル)プロパン-1-アミン(N,N-diethyl-3-(7-methyl-3,6,8,11-tetraoxa-7-silatridecan-7-yl)propan-1-amine)、2,4-ビス(2-メトキシエトキシ)-6-((トリメチルシリル)メチル)-1,3,5-トリアジン(2,4-bis(2-methoxyethoxy)-6-((trimethylsilyl)methyl)-1,3,5-triazine)、および3,14-ジメトキシ-3,8,8,13-テトラメチル-2,14-ジオキサ-7,9-ジチア-3,8,13-トリシラペンタデカン(3,14-dimethoxy-3,8,8,13-tetramethyl-2,14-dioxa-7,9-dithia-3,8,13-trisilapentadecane)からなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0091】
さらに他の例として、前記変性剤は、下記化学式7で表される化合物を含んでもよい。
【0092】
【化12】
【0093】
前記化学式7中、R43、R45、およびR46は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、R44は、炭素数1~10のアルキレン基であり、kは、1~4から選択される整数であってもよい。
【0094】
より具体的な例として、前記化学式7で表される化合物は、8,8-ジブチル-3,13-ジメトキシ-3,13-ジメチル-2,14-ジオキサ-7,9-ジチア-3,13-ジシラ-8-スタンペンタデカン(8,8-dibutyl-3,13-dimethoxy-3,13-dimethyl-2,14-dioxa-7,9-dithia-3,13-disila-8-stannapentadecane)、8,8-ジメチル-3,13-ジメトキシ-3,13-ジメチル-2,14-ジオキサ-7,9-ジチア-3,13-ジシラ-8-スタンペンタデカン(8,8-dimetyl-3,13-dimethoxy-3,13-dimethyl-2,14-dioxa-7,9-dithia-3,13-disila-8-stannapentadecane)、8,8-ジブチル-3,3,13,13-テトラメトキシ-2,14-ジオキサ-7,9-ジチア-3,13-ジシラ-8-スタンペンタデカン(8,8-dibutyl-3,3,13,13-tetramethoxy-2,14-dioxa-7,9-dithia-3,13-disila-8-stannapentadecane)、および8-ブチル-3,3,13,13-テトラメトキシ-8-((3-(トリメトキシシリル)プロピル)チオ)-2,14-ジオキサ-7,9-ジチア-3,13-ジシラ-8-スタンペンタデカン(8-butyl-3,3,13,13-tetramethoxy-8-((3-(trimehtoxysilyl)propyl)thio)-2,14-dioxa-7,9-dithia-3,13-disila-8-stannapentadecane)からなる群から選択される1種であってもよい。
【0095】
変性共役ジエン系重合体の製造方法
本発明は、前記変性共役ジエン系重合体を製造するために、変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。前記変性共役ジエン系重合体の製造方法は、炭化水素溶媒中で、有機金属化合物の存在下で、共役ジエン系単量体を重合することで、有機金属が結合された活性重合体を製造するステップ(S1)と、前記(S1)ステップで製造された活性重合体と変性剤を反応させるステップ(S2)と、を含み、重合反応(S1)および変性反応(S2)は、連続式または回分式により行ってもよい。
【0096】
以下において、製造された変性共役ジエン系重合体と、反応に用いられる変性剤の特徴は上述の事項と重複されるため、その記載を省略する。
【0097】
前記炭化水素溶媒は、特に制限されるものではないが、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、およびキシレンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0098】
本発明の一実施形態によると、前記有機金属化合物は、単量体の総100gを基準として、0.01mmol~10mmol、0.05mmol~5mmol、0.1mmol~2mmol、0.1mmol~1mmol、または0.15~0.8mmolで用いてもよい。前記有機金属化合物は、一例として、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、n-デシルリチウム、t-オクチルリチウム、フェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、n-エイコシルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、4-トリルリチウム、シクロヘキシルリチウム、3,5-ジ-n-ヘプチルシクロヘキシルリチウム、4-シクロペンチルリチウム、ナフチルナトリウム、ナフチルカリウム、リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、リチウムスルホネート、ナトリウムスルホネート、カリウムスルホネート、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、およびリチウムイソプロピルアミドからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0099】
前記(S1)ステップにおける重合は、一例として、アニオン重合であってもよく、具体的な例として、アニオンによる成長重合反応によって重合末端にアニオン活性部位を有するリビングアニオン重合であってもよい。また、前記(S1)ステップにおける重合は、昇温重合、等温重合、または定温重合(断熱重合)であってもよい。前記定温重合は、有機金属化合物を投入した後に任意に熱を加えず、その自体の反応熱で重合させるステップを含む重合方法を意味し、前記昇温重合は、前記有機金属化合物を投入した後に任意に熱を加えて温度を増加させる重合方法を意味し、前記等温重合は、前記有機金属化合物を投入した後に熱を加えて熱を増加させたり、熱を奪うことで、重合物の温度を一定に維持する重合方法を意味し得る。
【0100】
また、本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップにおける重合は、前記共役ジエン系単量体以外に、炭素数1~10のジエン系化合物をさらに含んで行ってもよく、この場合、長時間運転する際に反応器の壁面にゲルが形成されることが防止される効果がある。前記ジエン系化合物は、例えば、1,2‐ブタジエンであってもよい。
【0101】
前記(S1)ステップにおける重合は、一例として、100℃以下、50℃~100℃、または50℃~80℃の温度範囲で行ってもよい。この範囲内である場合、重合反応の転換率を高めることができ、重合体の分子量分布を調節しつつ、上述の範囲のガラス転移温度、ムーニー粘度、および1,2-ビニル結合含量を満たすことができるため、物性改善に優れる効果がある。
【0102】
前記(S1)ステップにより製造された活性重合体は、重合体アニオンと有機金属カチオンが結合された重合体を意味し得る。
【0103】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップにおける重合により製造される活性重合体は、ランダム共重合体であってもよく、この場合、各物性間のバランスに優れる効果がある。前記ランダム共重合体は、共重合体を成す繰り返し単位が無秩序に配列されたものを意味し得る。
【0104】
本発明において、用語「重合物」は、(S1)ステップまたは(S2)ステップが完了され、活性重合体または変性共役ジエン系重合体が得られる前に、(S1)ステップを行っている中に、各反応器内で重合が行われている重合体形態の中間体を意味し得て、反応器内で重合が行われている、重合転換率が90%未満の重合体を意味し得る。
【0105】
一方、前記(S1)ステップにおける重合は、極性添加剤を含んで行ってもよく、前記極性添加剤は、単量体の総100gを基準として、0.001g~50g、または0.002g~0.1gの割合で添加してもよい。他の例として、前記極性添加剤は、有機金属化合物の総100gを基準として、0g超過~1g、0.01g~1g、または0.1g~0.9gの割合で添加してもよい。上記のような範囲で極性添加剤を投入する場合、上述の範囲のガラス転移温度、ムーニー粘度、および1,2-ビニル結合含量を満たすことができる。
【0106】
前記極性添加剤は、一例として、テトラヒドロフラン、ジテトラヒドロフリルプロパン、ジエチルエーテル、シクロペンチルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレンメチルエーテル、エチレンジメチルエーテル、ジエチルグリコール、ジメチルエーテル、ターシャリーブトキシエトキシエタン、ビス(3-ジメチルアミノエチル)エーテル、(ジメチルアミノエチル)エチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびテトラメチルエチレンジアミンからなる群から選択される1種以上であってもよく、好ましくは、トリエチルアミンまたはテトラメチルエチレンジアミンであってもよい。前記極性添加剤を含む場合、共役ジエン系単量体、または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体を共重合させる際に、それらの反応速度の差を補完することにより、ランダム共重合体が容易に形成されるように誘導する効果がある。
【0107】
本発明の一実施形態によると、前記(S2)ステップにおける反応において、前記変性剤は、単量体の総100gを基準として、0.01mmol~10mmolの量で用いてもよい。他の例として、前記変性剤は、前記(S1)ステップの有機金属化合物1モルを基準として、1:0.1~10、1:0.1~5、または1:0.1~1:3のモル比で用いてもよい。前記変性剤と有機金属化合物のモル比、単量体に対する変性剤の投入量は、実質的に製造される重合体のガラス転移温度、ムーニー粘度、およびムーニー緩和率に影響を及ぼし得るため、できるかぎり上記の範囲内で適切な割合を選択して適用することが好ましい。
【0108】
また、本発明の一実施形態によると、前記変性剤は変性反応器に投入してもよく、前記(S2)ステップは、変性反応器で行ってもよい。他の例として、前記変性剤は、前記(S1)ステップで製造された活性重合体を、(S2)ステップを行うための変性反応器に移送するための移送部に投入してもよく、前記移送部内で、活性重合体と変性剤の混合により反応が進行されることができる。この際、前記反応は、変性剤が活性重合体に単純結合される変性反応であるか、変性剤を基準として活性重合体が連結されるカップリング反応であってもよい。上述のように、変性反応とカップリング反応の割合は制御する必要があり、これは、ムーニー粘度とムーニー緩和率、およびガラス転移温度に影響を及ぼし得る。
【0109】
一方、本発明の一実施形態に系る前記製造方法において、有機金属化合物の種類および使用量、極性添加剤の種類および使用量、変性剤の種類および使用量、重合反応および変性反応の温度および時間によって、製造される変性共役ジエン系重合体のガラス転移温度、ムーニー粘度、ムーニー緩和率、1,2-ビニル結合含量の調節が影響を受け得る。したがって、本発明に系る前記製造方法は、上述の条件内で本発明で提示した変性共役ジエン系重合体の条件を満たすように、互いに有機的に適切に制御して反応を行う。
【0110】
本発明によると、前記変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物が提供される。
【0111】
前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体を10重量%以上、10重量%~100重量%、または20重量%~90重量%の量で含んでもよい。この範囲内である場合、引張強度、耐磨耗性などの機械的物性に優れ、各物性間のバランスに優れる効果がある。
【0112】
また、前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体以外に、必要に応じて、他のゴム成分をさらに含んでもよい。この際、前記ゴム成分は、ゴム組成物の総重量に対して90重量%以下の含量で含まれてもよい。具体的な例として、前記他のゴム成分は、前記変性共役ジエン系重合体100重量部に対して、1重量部~900重量部で含まれてもよい。
【0113】
前記ゴム成分は、一例として、天然ゴムまたは合成ゴムであってもよく、具体的な例として、シス-1,4-ポリイソプレンを含む天然ゴム(NR);前記一般的な天然ゴムを変性または精製した、エポキシ化天然ゴム(ENR)、脱蛋白天然ゴム(DPNR)、水素化天然ゴムなどの変性天然ゴム;スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン-コ-イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン-コ-プロピレン)、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(エチレン-コ-プロピレン-コ-ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ハロゲン化ブチルゴムなどのような合成ゴムであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が使用可能である。
【0114】
前記ゴム組成物は、一例として、本発明の変性共役ジエン系重合体100重量部に対して、0.1重量部~200重量部、または10重量部~120重量部の充填剤を含んでもよい。前記充填剤は、一例として、シリカ系充填剤であり、具体的な例として、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、またはコロイドシリカなどであってもよく、好ましくは、破壊特性の改良効果およびウェットグリップ性(wet grip)の両立効果が最も高い湿式シリカであってもよい。また、前記ゴム組成物は、必要に応じて、カーボン系充填剤をさらに含んでもよい。
【0115】
他の例として、前記充填剤としてシリカが用いられる場合、補強性および低発熱性を改善するために、シランカップリング剤がともに用いられてもよい。具体的な例として、前記シランカップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、またはジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が使用可能である。好ましくは、補強性の改善効果を考慮すると、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドまたは3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドであってもよい。
【0116】
また、本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、ゴム成分として、活性部位にシリカとの親和性が高い官能基が導入された変性共役ジエン系重合体が用いられているため、シランカップリング剤の配合量が通常の場合よりも低減されることができる。したがって、前記シランカップリング剤は、シリカ100重量部に対して、1重量部~20重量部、または5重量部~15重量部で用いられてもよい。この範囲内である場合、カップリング剤としての効果が十分に発揮されながらも、ゴム成分のゲル化が防止される効果がある。
【0117】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、硫黄架橋性であってもよく、加硫剤をさらに含んでもよい。前記加硫剤は、具体的に、硫黄粉末であってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~10重量部で含まれてもよい。この範囲内である場合、加硫ゴム組成物が必要とする弾性率および強度を確保するとともに、低燃費性に優れる効果がある。
【0118】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、上記の成分の他に、ゴム工業界で通常用いられる各種添加剤、具体的には、加硫促進剤、プロセス油、可塑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華(zinc white)、ステアリン酸、熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂などをさらに含んでもよい。
【0119】
前記加硫促進剤としては、例えば、M(2-メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)などのチアゾール系化合物、もしくはDPG(ジフェニルグアニジン)などのグアニジン系化合物が使用可能であり、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~5重量部で含まれてもよい。
【0120】
前記プロセス油は、ゴム組成物中で軟化剤として作用するものであって、一例として、パラフィン系、ナフテン系、または芳香族系化合物であってもよく、引張強度および耐磨耗性を考慮すると芳香族系プロセス油が、ヒステリシス損および低温特性を考慮するとナフテン系またはパラフィン系プロセス油が使用できる。前記プロセス油は、一例として、ゴム成分100重量部に対して100重量部以下の含量で含まれてもよく、この範囲内である場合、加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)の低下を防止する効果がある。
【0121】
前記老化防止剤は、一例として、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、またはジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物などであってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~6重量部で用いられてもよい。
【0122】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、前記配合処方に応じて、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練機を用いて混練することで得られ、成形加工後、加硫工程により、低発熱性および耐磨耗性に優れたゴム組成物が得られる。
【0123】
これにより、前記ゴム組成物は、タイヤトレッド、アンダトレッド、サイドウォール、カーカスコーティングゴム、ベルトコーティングゴム、ビードフィラー、チェーファー、またはビードコーティングゴムなどのタイヤの各部材や、防塵ゴム、ベルトコンベア、ホースなどの各種工業用ゴム製品の製造において有用である。
【0124】
尚、本発明は、前記ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供する。
【0125】
前記タイヤは、タイヤまたはタイヤトレッドを含んでもよい。
【0126】
実施例
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は、種々の形態に変形可能であり、本発明の範囲が、以下で詳述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に、本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0127】
[実施例1]
3つの連続撹拌液相反応器(CSTR)のうち第1反応器に、n-ヘキサン4kg/hr、n-ヘキサンに単量体混合物(ブタジエン80重量%およびスチレン20重量%)が60重量%で溶解された単量体溶液を1.6kg/hr、n-ヘキサンにn-ブチルリチウムが10重量%で溶解された開始剤溶液を6g/hr、極性添加剤として、n-ヘキサンにジテトラヒドロフリルプロパンが10重量%で溶解された極性添加剤溶液を0.5g/hr、n-ヘキサンに1,2-ブタジエンが15重量%で溶解された溶液を1g/hrの流速で連続して投入した。反応器の内部温度が70℃になるように調節し、40分間滞留させた。その後、得られた前記第1反応器の重合物を第2反応器の上部に連続的に供給し、反応器の内部温度を70℃になるように調節し、60分間滞留させ、重合転換率が90%になるようにした。その結果として得られた第2反応器の重合物を第3反応器の上部に連続的に供給し、変性剤として、N,N-ビス(3-(ジメトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミンが20重量%で溶解された溶液を連続的に供給して変性反応を進行した(n-ブチルリチウム:変性剤=1:0.5モル比)。その結果として得られた第3反応器に、30重量%の酸化防止剤(WINGSTAY-K)が含まれている溶液を16g/hの速度で投入して重合反応を停止させ、重合物を得た。得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れて撹拌し、溶媒を除去した後、ロール乾燥して残存している溶媒および水を除去することで、変性共役ジエン系重合体を製造した。このように製造された変性共役ジエン系重合体の分析結果は、下記表1に示した。
【0128】
[実施例2]
実施例1において、変性剤として、N,N-ビス(3-(ジメトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミンの代わりに、トリ(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミンを使用したことを除き、前記実施例1と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した。このように製造された変性共役ジエン系重合体の分析結果は、下記表1に示した。
【0129】
[実施例3]
実施例2において、極性添加剤として、ジテトラヒドロフリルプロパンの代わりに、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)がn-ヘキサンに10重量%で溶解された溶液を1g/hrで供給し、第1反応器の内部温度を75℃に調節したことを除き、前記実施例2と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した。このように製造された変性共役ジエン系重合体の分析結果は、下記表1に示した。
【0130】
[実施例4]
実施例3において、変性剤として、トリ(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミンの代わりに、N-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-3-(トリエトキシシリル)-N-(3-(トリメトキシシリル)プロピルプロパン-1-アミンを使用したことを除き、前記実施例3と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した。このように製造された変性共役ジエン系重合体の分析結果は、下記表1に示した。
【0131】
[実施例5]
実施例3において、変性剤として、トリ(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミンの代わりに、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルプロパン-1-アミン)を使用したことを除き、前記実施例3と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した。このように製造された変性共役ジエン系重合体の分析結果は、下記表1に示した。
【0132】
[実施例6]
実施例3において、変性剤としてトリ(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミンの代わりに、1,4-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)ピペラジンを使用したことを除き、前記実施例3と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した。このように製造された変性共役ジエン系重合体の分析結果は、下記表1に示した。
【0133】
[実施例7]
実施例3において、変性剤として、トリ(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミンの代わりに、1,1,3,3-テトラメトキシ-1,3-ビス(3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル)ジシロキサンを使用したことを除き、前記実施例3と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した。このように製造された変性共役ジエン系重合体の分析結果は、下記表1に示した。
【0134】
[実施例8]
実施例7において、極性添加剤として、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)がn-ヘキサンに10重量%で溶解された溶液を2g/hrで供給したことを除き、前記実施例7と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した。このように製造された変性共役ジエン系重合体の分析結果は、下記表1に示した。
【0135】
[比較例1]
実施例1において、極性添加剤として、ジテトラヒドロフリルプロパンがn-ヘキサンに10重量%で溶解された溶液を2g/hrで連続的に投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した。このように製造された変性共役ジエン系重合体の分析結果は、下記表1に示した。
【0136】
[比較例2]
実施例1において、n-ヘキサンにn-ブチルリチウムが10重量%で溶解された開始剤溶液を7.2g/hrで連続的に投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した。このように製造された変性共役ジエン系重合体の分析結果は、下記表1に示した。
【0137】
[比較例3]
実施例1において、n-ヘキサンにn-ブチルリチウムが10重量%で溶解された開始剤溶液を4.7g/hrで、極性添加剤として、n-ヘキサンにジテトラヒドロフリルプロパンが10重量%で溶解された極性添加剤溶液を0.4g/hrで連続的に投入し、変性剤として、N,N-ビス(3-(ジメトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミンの代わりに、N,N-ジエチル-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミン(N,N-diethyl-3-(trimethoxysilyl)propan-1-amine)がn-ヘキサンに20重量%で溶解された溶液を連続的に投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により変性共役ジエン系重合体を製造した(n-ブチルリチウム:変性剤=1:0.5モル比)。このように製造された変性共役ジエン系重合体の分析結果は、下記表1に示した。
【0138】
[比較例4]
20Lのオートクレーブ反応器に、スチレン180g、1,3-ブタジエン760g、n-ヘキサン5000g、および極性添加剤としてテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)3.0gを入れた後、反応器の内部温度を70℃に昇温した。反応器の内部温度が70℃に達した時に、重合開始剤としてn-ブチルリチウム0.6gを投入し、断熱昇温反応を進行させた。この際、反応器の内部温度が、重合体による発熱によって90℃に上昇した。断熱昇温反応が終わってから15分程度経過した後、1,3-ブタジエン60gを投入し、15分後、変性反応のための変性剤として、N,N-ジエチル-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミンを投入して30分間反応させた(n-ブチルリチウム:変性剤=1:0.3モル比)。その後、メタノール30gを投入して重合反応を停止させ、酸化防止剤であるBHT(butylated hydroxytoluene、ブチル化ヒドロキシトルエン)がヘキサンに0.3重量%で溶解されている溶液45mlを添加した。その結果として得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れて撹拌し、溶媒を除去した後、ロール乾燥して残存している溶媒および水を除去することで、変性共役ジエン系重合体を製造した。このように製造された変性共役ジエン系重合体の分析結果は、下記表1に示した。
【0139】
実験例
[実験例1]
前記実施例および比較例で製造されたそれぞれの変性または未変性の共役ジエン系重合体に対して、重合体のガラス転移温度、1,2-ビニル結合含量、重量平均分子量(Mw、X103g/mol)、数平均分子量(Mn、X103g/mol)、分子量分布(PDI、MWD)、ムーニー粘度(MV)、ムーニー緩和率(-S/R)、およびN原子とSi原子の含量をそれぞれ測定し、それらを下記表1に示した。
【0140】
1)ガラス転移温度(Tg)
変性共役ジエン系重合体を試料とし、ISO22768:2006に準じて、示差走査熱量計(メックサイエンス(McScience)社製、商品名「DSC3200S」)を用いて、ヘリウム50mL/分の流通下で、-100℃から10℃/分で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とした。
【0141】
2)1,2-ビニル結合含量
前記各重合体中のビニル(Vinyl)含量は、Varian VNMRS 500 MHz NMRを用いて測定および分析した。
【0142】
NMR測定時における溶媒としては1,1,2,2-テトラクロロエタンを使用した。溶媒ピーク(solvent peak)は5.97ppmと計算し、7.2~6.9ppmはランダムスチレン、6.9~6.2ppmはブロックスチレン、5.8~5.1ppmは1,4-ビニル、5.1~4.5ppmは1,2-ビニルのピークとして、1,2-ビニル結合含量(重量%)を計算した。
【0143】
3)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(MWD)
前記重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、GPC(Gel permeation chromatohraph)分析により測定し、分子量分布(PDI、MWD、Mw/Mn)は、測定された前記各分子量から計算して得た。具体的に、前記GPCは、PLgel Olexis(Polymer Laboratories社)カラム2本とPLgel mixed-C(Polymer Laboratories社)カラム1本を組み合わせて使用し、分子量の計算時に、GPC基準物質(Standard material)としてPS(polystyrene)を使用して実施した。GPC測定溶媒は、テトラヒドロフランに2wt%のアミン化合物を交ぜて製造した。
【0144】
4)ムーニー粘度(MV)およびムーニー緩和率(-S/R)
前記ムーニー粘度(MV、(ML1+4、@100℃ MU)は、MV-2000(ALPHA Technologies社)により、100℃で、Rotor Speed 2±0.02rpm、Large Rotorを用いて測定した。この際、使用された試料は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させて4分間測定した。ムーニー粘度の測定後、トルクが解放されながら現れるムーニー粘度変化の勾配値を測定し、ムーニー緩和率を得た。
【0145】
5)N原子およびSi原子の含量
前記Siの含量は、ICP分析方法として、誘導結合プラズマ発光分析器(ICP-OES;Optima 7300DV)を用いて測定した。前記誘導結合プラズマ発光分析器を用いる場合、試料約0.7gを白金るつぼ(Pt crucible)に入れ、濃硫酸(98重量%、Electronic grade)約1mLを入れて、300℃で3時間加熱し、試料を電気炉(Thermo Scientific、Lindberg Blue M)にて、下記ステップ(step)1~3のプログラムで灰化を進行した後、
1)ステップ1:initial temp 0℃、rate(temp/hr)180℃/hr、temp(holdtime)180℃(1hr)
2)ステップ2:initial temp 180℃、rate(temp/hr)85℃/hr、temp(holdtime)370℃(2hr)
3)ステップ3:initial temp 370℃、rate(temp/hr)47℃/hr、temp(holdtime)510℃(3hr)
残留物に、濃硝酸(48重量%)1mL、濃フッ酸(50重量%)20μlを加え、白金るつぼを密封して30分以上振った(shaking)後、試料にホウ酸(boric acid)1mLを入れて0℃で2時間以上保管してから、超純水(ultrapure water)30mLに希釈し、灰化を進行して測定した。
【0146】
前記窒素原子の含量は、極微量窒素定量分析器(Auto sampler、Horizontal furnace、PMT&Nitrogen detector)をオンにし、Arを250ml/min、O2を350ml/min、オゾナイザ(ozonizer)300ml/minにキャリアガス流量を設定し、ヒータ(heater)を800℃に設定した後、約3時間待機して分析器を安定化させた。分析器が安定化された後、Nitrogen standard(AccuStandard S-22750-01-5ml)を用いて、検量線範囲5ppm、10ppm、50ppm、100ppm、および500ppmの検量線を作成し、各濃度に該当するAreaを得た後、濃度とAreaとの割合を用いて直線を作成した。その後、試料20mgが入ったセラミックボートを前記分析器のAuto samplerに置いて測定し、areaを得た。得られた試料のareaと前記検量線を用いてNの含量を計算した。
【0147】
【表1】
【0148】
[実験例2]
前記実施例および比較例で製造された各変性共役ジエン系共重合体を含むゴム組成物、およびそれから製造された成形品の物性を比較分析するために、引張特性、粘弾性特性、および加工性特性をそれぞれ測定し、その結果を下記表3に示した。
【0149】
1)ゴム試験片の製造
実施例および比較例の各変性共役ジエン系重合体を原料ゴムとして、下記表3に示した配合条件で配合した。表3中の原料は、原料ゴム100重量部を基準とした各重量部である。
【0150】
【表2】
【0151】
具体的に、前記ゴム試験片は、第1段混練および第2段混練を経て混練される。第1段混練では、温度制御装置付きのバンバリーミキサを用いて、原料ゴム、シリカ(充填剤)、有機シランカップリング剤(X50S、Evonik)、プロセス油(TDAE oil)、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸、酸化防止剤(TMQ(RD)(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンポリマー)、老化防止剤(6PPD((ジメチルブチル)-N-フェニル-フェニレンジアミン)、およびワックス(Microcrystaline Wax)を混練した。この際、混練機の初期温度を70℃に制御し、配合完了後、145℃~155℃の排出温度で1次配合物を得た。第2段混練では、前記1次配合物を室温まで冷却した後、混練機に1次配合物、硫黄、ゴム促進剤(DPD(ジフェニルグアニン))、および加硫促進剤(CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド))を加え、100℃以下の温度で混合して2次配合物を得た。その後、160℃で20分間キュアリング工程を経てゴム試験片を製造した。
【0152】
2)引張特性
引張特性は、ASTM412の引張試験法に準じて各試験片を製造し、前記試験片の切断時における引張強度および300%伸び時の引張応力(300%モジュラス)を測定した。具体的に、引張特性は、Universal Test Machin 4204(Instron社)引張試験機を用いて、室温で50cm/minの速度で測定した。
【0153】
3)粘弾性特性
粘弾性特性は、動的機械分析機(GABO社)を用いて、Film Tensionモードで、周波数10Hz、各測定温度(-60℃~60℃)で動的変形に対する粘弾性挙動を測定し、tanδ値を確認した。この際、低温0℃でのtanδ値が高いほど、ウェットグリップ性に優れることを意味し、高温60℃でのtanδ値が高いほど、ヒステリシス損が少なく、低走行抵抗性(燃費性)に優れることを意味する。下記表3における結果値は、比較例1の測定結果値を基準として指数化して示したものであるため、その数値が高いほど優れることを意味する。
【0154】
4)加工性特性
前記1)ゴム試験片の製造時に得られた2次配合物のムーニー粘度(MV、(ML1+4、@100℃)MU)を測定し、各重合体の加工性特性を比較分析した。この際、ムーニー粘度の測定値が低いほど、加工性特性に優れることを意味する。
【0155】
具体的に、MV-2000(ALPHA Technologies社)により、100℃で、Rotor Speed 2±0.02rpm、Large Rotorを使用し、各2次配合物は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させて4分間測定した。
【0156】
5)耐磨耗性(DIN摩耗試験)
各ゴム試験片に対して、ASTM D5963に準じてDIN摩耗試験を行い、DIN wt loss index(損失体積指数(loss volume index):ARIA(Abration resistance index、Method A)で示した。数値が高いほど、優れることを意味する。
【0157】
【表3】
【0158】
前記表3に示されたように、本発明の一実施形態に系る実施例1~8は、比較例1~4に比べて引張特性、粘弾性特性、耐磨耗性、および加工性が何れも向上していることを確認した。
【0159】
これに反し、実施例1~8に比べて、比較例1は、粘弾性特性、耐磨耗性、および加工性が、比較例2は、引張強度および耐磨耗性が、比較例3は、加工性が、そして比較例4は、耐磨耗性および加工性が著しく低下していた。この際、比較例1は、重合体のガラス転移温度および1,2-ビニル結合含量が、本発明で提示した範囲を外れており、比較例2および比較例3はムーニー粘度およびムーニー緩和率が、そして比較例4はムーニー緩和率が、本発明で提示した範囲を外れていた。
【0160】
上記の結果は、本発明に係る変性共役ジエン系重合体は、特定の範囲に調節されたガラス転移温度、1,2-ビニル結合含量を有するとともに、特定の範囲に調節されたムーニー粘度およびムーニー緩和率を有することで、引張特性、粘弾性特性、および耐磨耗性に優れるとともに、加工性も著しく改善される効果を奏することができることを意味する。