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特許7005101偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度の定量化方法
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  • 特許-偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度の定量化方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度の定量化方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
G02B5/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020547379
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 KR2019007471
(87)【国際公開番号】W WO2019245311
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】10-2018-0072250
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ムン・チャン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ホ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ス・イ
(72)【発明者】
【氏名】ブ・ゴン・シン
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-214500(JP,A)
【文献】特開2016-145341(JP,A)
【文献】特開2009-214357(JP,A)
【文献】特開2014-162821(JP,A)
【文献】国際公開第2009/008470(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 1/00-43/00
C09J 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)粘着層を含む偏光板を用意するステップと、
(b)ガイド部に前記偏光板の一端部が接するように前記偏光板を提供するステップと、
(c)前記ガイド部上で前記偏光板を移動させるステップと、
(d)前記偏光板を移動させる間に前記偏光板と前記ガイド部との間に作用する摩擦力を測定するステップと、
(e)前記測定された摩擦力の値に基づいて前記偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度を判別できる判別基準を導出するステップとを含み、
前記(c)ステップは、
前記偏光板の両面のいずれか一面が向く第1方向、または他の一面が向く第2方向に沿って前記偏光板を移動させるステップを含み、
前記(e)ステップは、
前記偏光板を前記第1方向に移動させる間に測定された摩擦力の値と、前記偏光板を前記第2方向に移動させる間に測定された摩擦力の値との差を算出するステップと、前記ガイド部上に前記偏光板の粘着剤が流出したか否かを確認するステップと、を含み、前記偏光板の粘着剤が流出した場合の摩擦力の情報と、前記偏光板の粘着剤が流出しない場合の摩擦力の情報とに基づいて前記偏光板の粘着剤の流出の有無を判別できる判別基準を導出する、偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度の定量化方法。
【請求項2】
前記(a)ステップは、
前記偏光板の両面のいずれか一面と前記偏光板の裁断面とのなす角度が互いに異なる複数のタイプの偏光板の少なくとも1つを選択して用意するステップを含む、請求項1に記載の偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度の定量化方法。
【請求項3】
前記(b)ステップは、
前記偏光板の一端部に形成されたカールの大きさを調節するステップを含む、請求項1または請求項2に記載の偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度の定量化方法。
【請求項4】
前記偏光板は、両面のいずれか一面に保護フィルム層が位置し、他の一面に離型フィルム層が位置する、請求項1~3のいずれか一項に記載の偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度の定量化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度の定量化方法に関し、より詳細には、偏光板とガイド部との間に作用する摩擦力測定値から粘着剤の流出判別基準を導出した偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度の定量化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、全方向に振動する光を特定方向にのみ振動するように偏光させて所望の映像を実現させる構成であって、液晶表示装置(LCD、Liquid Crystal Display)パネルの両側に貼り付けられる。
【0003】
偏光板100は、図1に示されるように、PVA素材からなる偏光子層130と、偏光子層130の両面に貼り付けられた上下部支持体層120、140と、上部支持体層120の上部に形成され、温度または湿度のような外部環境から偏光子層130を保護するための保護フィルム層110と、下部支持体層140の下部に形成される粘着層150と、粘着層150の下部に形成され、粘着層150を保護する離型フィルム層160とを含む積層構造からなる。
【0004】
偏光板100は、現場の生産ラインで量産されて適用製品の大きさに合わせて裁断された後にパネルに貼り付けられるが、偏光板100を裁断する過程、そして搬送設備1に沿って偏光板100を搬送させる過程で、図2のように、粘着層150から粘着剤151が流出することがある。特に、TVパネルに用いられる大型偏光板100の場合には、複数の偏光板100を積層して保管するか積層させた状態で搬送させる時、下部に位置した偏光板100に過度の荷重が加えられて、粘着剤151の流出がさらに問題化する。
【0005】
偏光板100の粘着層150の厚さは約20μm水準で、裁断または搬送過程で偏光板100から一度に多量の粘着剤151が流出するわけではないが、搬送設備1は一度固定設置されると変更が困難になり、搬送設備1上に微量の粘着剤151が流出するだけでも、偏光板100が貼付工程やクリーニング工程のための意図した位置に正確に配置できず、製品の不良を引き起こすことがある。
【0006】
従来は、このような粘着剤の流出の程度を改善するために、粘着剤に含まれたセグメントの組成比率を変更してハードな形態の粘着剤を使用したりしていたが、この場合、バルクモジュラス(bulk modulus)の増加による粘着力の低下、耐久性悪化などの問題が発生した。
【0007】
一方、粘着剤の流出の程度は、粘着剤の成分を変更する以外にも、偏光板の裁断面の形状(例えば、テーパ(Taper)角度)または偏光板のたわみあるいは垂れ下がり現象によって発生するカールの大きさなどに応じて異なり得る。したがって、粘着剤の流出問題を解決するためには、偏光板の裁断面の形状およびカールの大きさ条件によって粘着剤の流出がどれほど起こるかに関する分析が先行されていなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、搬送設備上で偏光板が移動する状況を偏光板とガイド部とを備える装置で模式化して、偏光板とガイド部との間に作用する摩擦力の大きさを測定し、摩擦力測定値に基づいて粘着剤の流出に対する判別基準を導出した偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度の定量化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施例による偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度の定量化方法は、(a)粘着層を含む偏光板を用意するステップと、(b)ガイド部に偏光板の一端部が接するように偏光板を提供するステップと、(c)ガイド部上で偏光板を移動させるステップと、(d)偏光板を移動させる間に偏光板とガイド部との間に作用する摩擦力を測定するステップと、(e)測定された摩擦力の値に基づいて偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度を判別できる判別基準を導出するステップとを含むことができる。
【0010】
本実施例において、(a)ステップは、偏光板の両面のいずれか一面と偏光板の裁断面とのなす角度が互いに異なる複数のタイプの偏光板の少なくとも1つを選択して用意するステップを含むことができる。
【0011】
本実施例において、(b)ステップは、偏光板の一端部に形成されたカールの大きさを調節するステップを含むことができる。
【0012】
本実施例において、偏光板は、両面のいずれか一面に保護フィルム層が位置し、他の一面に離型フィルム層が位置していてもよい。
【0013】
本実施例において、(c)ステップは、偏光板の両面のいずれか一面が向く第1方向、または他の一面が向く第2方向に沿って偏光板を移動させることができる。
【0014】
本実施例において、(e)ステップは、偏光板を第1方向に移動させる間に測定された摩擦力の値と、偏光板を第2方向に移動させる間に測定された摩擦力の値との差を算出するステップを含むことができる。
【0015】
本実施例において、(e)ステップは、ガイド部上に偏光板の粘着剤が流出したか否かを確認するステップを含み、偏光板の粘着剤が流出した場合の摩擦力の情報と、偏光板の粘着剤が流出しない場合の摩擦力の情報とに基づいて偏光板の粘着剤の流出の有無を判別できる判別基準を導出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の実施例による偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度の定量化方法は、粘着剤の流出に対する判別基準を導出することにより、実際の搬送設備上で偏光板を搬送させるに際して、判別基準に基づいて粘着剤が流出しないか、粘着剤の流出を最小化できる条件を適用して、粘着剤の流出に備えられる効果がある。
【0017】
また、本発明の実施例において、偏光板の移動方向による摩擦力測定値の差は、肉眼で確認した粘着剤の流出の有無または流出の程度と優れた関連性を示していることから、粘着剤の流出の有無または流出の程度に対する正確度の高い判別基準を提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一般的な偏光板の積層構造を示す断面図である。
図2】搬送設備上に粘着剤が流出する形態を簡略に示す図である。
図3】本発明による偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度を定量化するための方法を示すフローチャートである。
図4】本発明による偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度を定量化するために偏光板の移動状況を模式化した実験装置を示す図である。
図5】偏光板提供部をガイド部に隣接させる方向への偏光板移動距離ごとの偏光板のカールの大きさを示す図である。
図6】偏光板の移動方向による摩擦力測定実験の結果を例示的に示すグラフである。
図7】本発明の実験例であって、カールの大きさ条件ごとに偏光板の移動方向による偏光板とガイド部との間に作用する摩擦力の測定結果を示すグラフである。
図8】本発明の実験のために用意された偏光板の多様な裁断面の形状を示す図である。
図9A】本発明の実験例であって、偏光板のカールの大きさ条件および偏光板の裁断面の形状条件ごとに偏光板の移動方向による偏光板とガイド部との間に作用する摩擦力の測定結果を示すグラフである。
図9B】本発明の実験例であって、偏光板のカールの大きさ条件および偏光板の裁断面の形状条件ごとに偏光板の移動方向による偏光板とガイド部との間に作用する摩擦力の測定結果を示すグラフである。
図9C】本発明の実験例であって、偏光板のカールの大きさ条件および偏光板の裁断面の形状条件ごとに偏光板の移動方向による偏光板とガイド部との間に作用する摩擦力の測定結果を示すグラフである。
図10図9A~9Cの測定結果を偏光板の移動方向による摩擦力測定値の差として示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付した図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
【0020】
図3は、本発明による偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度を定量化するための方法を示すフローチャートであり、図4は、本発明による偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度を定量化するために偏光板の移動状況を模式化した実験装置を示す図である。
【0021】
本発明は、偏光板100とガイド部200との間に作用する摩擦力測定値から粘着剤151の流出判別基準を導出した偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度の定量化方法に関し、図3を参照すれば、(a)粘着層150を含む偏光板100を用意するステップS100と、(b)ガイド部200に偏光板100の一端部が接するように偏光板100を提供するステップS200と、(c)ガイド部200上で偏光板100を移動させるステップS300と、(d)偏光板100を移動させる間に偏光板100とガイド部200との間に作用する摩擦力を測定するステップS400と、(e)測定された摩擦力の値に基づいて偏光板100の粘着剤151の流出の有無または流出の程度を判別できる判別基準を導出するステップS500とを含んでなる。
【0022】
本発明の実施例において、偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度の定量化のための実験は、図4による実験装置を用いて実施された。
【0023】
図4の実験装置は、実際の搬送設備1上での偏光板100の移動を模式化したものであって、偏光板100と、ガイド部200と、ガイド部200に偏光板100を提供する偏光板提供部300とを備えてなる。
【0024】
図4を参照すれば、ガイド部200の一面にはガラス210が形成され、偏光板100の一端部は、ガイド部200のガラス210上に提供される。偏光板提供部300は、ガイド部200と所定の間隔lだけ離隔して備えられ、上下方向(以下、「垂直方向」)または左右方向(以下、「水平方向」)に移動することができる。
【0025】
また、偏光板提供部300は、偏光板100の他端部を支持するクランプ310を含むことができる。
【0026】
以下、本発明の一実施例による偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度の定量化のための方法についてより詳細に説明する。
【0027】
(a)ステップ:粘着層を含む偏光板を用意するステップS100
(a)ステップは、粘着層150を含む偏光板100を用意するステップであって、例えば、図1のような構造の偏光板100を用意することができる。
【0028】
偏光板100は、製造しようとするディスプレイの規格と実験規模を反映して、それに適した大きさで用意される。本実施例では、実験のために、65インチのディスプレイパネルの規格(横143.97cm×縦80.90cm)の比率を適用して、横1.8cm×縦1.0cm規格の偏光板100を用意した。
【0029】
また、粘着剤151の流出の程度は、偏光板100の裁断面170の形状に応じて異なり得るので、本発明の実施例では、実験のために、多様な裁断面170の形状を有する偏光板100を用意することができる。偏光板100の裁断面170の形状は、偏光板100の両面のいずれか一面と上記偏光板100の裁断面170とのなす角度に応じて決定可能である。
【0030】
例えば、本ステップにおいて、図8に示されるように、多様な裁断面170の形状(以下、「テーパ角度θ」)を有する偏光板100を用意することができる。
【0031】
テーパ角度θは、前述した偏光板100の裁断面170の形状を決定するものであって、偏光板100の両面のいずれか一面と偏光板100の裁断面170とのなす角度を意味する。ここで、偏光板100の両面のうちの一面は、保護フィルム層110であるか、離型フィルム層160であってもよいが、本明細書において、テーパ角度θは、偏光板100の裁断面170と偏光板100の両面のうちの離型フィルム層160とのなす角度を意味するものと定義する。
【0032】
本発明は、実験のために、テーパ角度θが51゜、76゜、85゜、95゜、108゜、132゜(図8参照)、そして90°の偏光板100を用意した。
【0033】
(b)ステップ:ガイド部に偏光板の一端部が接するように偏光板を提供するステップS200
(b)ステップは、ガイド部200に用意された偏光板100の一端部が接するように偏光板100を提供するステップであって、偏光板提供部300をガイド部200側に移動させて、ガイド部200に偏光板100の一端部が接するように偏光板100を提供する。この時、ガイド部200に提供される偏光板100の一端部は、偏光板100の裁断面170であり、偏光板100の他端部は、クランプ310に固定された状態であってもよい。
【0034】
ガイド部200に提供される偏光板100の一端部は固定されていないので、ガイド部200に提供された時にたわみ現象(または垂れ下がり現象)が発生することがあるが、このような現象は偏光板100の一端部にカールが形成される原因となり、たわみの程度に応じて偏光板100から流出する粘着剤151の量が異なり得る。
【0035】
図5は、偏光板提供部をガイド部に隣接させる方向への偏光板移動距離ごとの偏光板のカールの大きさを示す図であり、図5を参照すれば、偏光板100がガイド部200に提供された時に発生するたわみまたは垂れ下がり現象によって、偏光板100の両面をなす保護フィルム層110または離型フィルム層160が押されるにつれ、粘着層150が露出して偏光板100から粘着剤151が流出することがある。
【0036】
一方、実際の設備上で偏光板100がガイド部に提供される時、偏光板の他端部が固定されたクランプの位置に応じて偏光板とガイド部とのなす角度(以下、「カールの大きさc」)が異なり、カールの大きさcに応じて偏光板100両面の押される程度が異なってきて、粘着剤の流出の有無または流出の程度に影響を及ぼす。ここで、カールの大きさcは、偏光板100の一端部を含めて一端部から直線区間と取り扱える所定の領域とガイド部200上の接触面とのなす角度で定義する。
【0037】
そこで、本ステップは、上記のような偏光板搬送時の状況を模式化するためのものであって、偏光板100の一端部に形成されたカールの大きさcを調節するステップを含むことができる。
【0038】
本発明の実施例では、偏光板100の一端部に形成されたカールの大きさcを15゜、30゜、および50゜に調節しながらガイド部200に偏光板100を提供した。
【0039】
(c)ステップ:ガイド部上で偏光板を移動させるステップS300
(c)ステップは、ガイド部上で偏光板を移動させるステップであって、偏光板100の一端部がガイド部200に接するように提供された後、偏光板提供部300を垂直方向に移動させることにより、ガイド部200上で偏光板100の両面のいずれか一面が向く第1方向、または他の一面が向く第2方向に沿って偏光板100を移動させる。本実験において、偏光板提供部300は、ガイド部200上で偏光板100を300mm/minの速度で移動させるように設定した。
【0040】
本発明の実施例において、偏光板100の移動方向は、ガイド部200を向く偏光板100の一面の種類に応じて決定可能である。本発明の実施例では、第1方向は、偏光板100の離型フィルム層160がガイド部200を向く場合を、第2方向は、偏光板100の保護フィルム層110がガイド部200を向く場合を意味する。
【0041】
実際に偏光板100は搬送設備1上で第1方向または第2方向に移動可能なため、本発明による実験装置も、偏光板提供部300を基準位置(P)から垂直方向に移動させながら、偏光板100がガイド部200上で第1方向または第2方向に移動できるように構成した。
【0042】
(d)ステップ:偏光板を移動させる間に偏光板とガイド部との間に作用する摩擦力を測定するステップS400
(d)ステップは、偏光板100を移動させる間に偏光板100とガイド部200との間に作用する摩擦力を測定するステップであって、偏光板100がガイド部200に接した瞬間からガイド部200上で移動する間に偏光板100とガイド部200との間に作用する摩擦力を測定した。摩擦力の測定は、偏光板100の移動方向に沿ってそれぞれ行われた。
【0043】
本実験では、摩擦力を測定するために、TA XT PLUS(Texture analyzer)を用い、具体的には、偏光板提供部300にTA XT PLUS(Texture analyzer)を設けて偏光板提供部300が300mm/minの移動速度で移動する時、TA XT PLUS(Texture analyzer)にかかる力を測定した。
【0044】
本実験で測定された摩擦力の値の単位はgf/cmである。
【0045】
(e)ステップ:測定された摩擦力の値に基づいて偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度を判別できる判別基準を導出するステップS500
(e)ステップは、測定された摩擦力の値に基づいて偏光板100の粘着剤151の流出の有無または流出の程度を判別できる判別基準を導出するステップであって、(d)ステップで測定された摩擦力の値から偏光板100の粘着剤151の流出の有無または流出の程度を判別できる判別基準を導出した。
【0046】
本ステップは、偏光板100を第1方向に移動させる時に測定された摩擦力の値と、偏光板100を第2方向に移動させる時に測定された摩擦力の値との差を算出するステップを含むことができる。この時、偏光板100の移動方向を除いたテーパ角度θおよびカールの大きさcは、同一の条件であってもよい。
【0047】
一方、偏光板100の移動方向が異なる場合、ガイド部200には、互いに異なる偏光板100の層、保護フィルム層110または離型フィルム層160が接するようになるが、保護フィルム層110と離型フィルム層160の摩擦系数は互いに異なるので、移動方向を除いたテーパ角度θおよびカールの大きさcの条件が同一でも、測定された偏光板100とガイド部200との間の摩擦力の値は異なり得る。
【0048】
したがって、偏光板100の移動方向に沿った摩擦力の値に差があるからといって、偏光板100から粘着剤151が流出したと見なされず、摩擦力の値の差が実際に粘着剤151の流出によって発生したのか、別途のステップにより確認する必要がある。
【0049】
そこで、本ステップは、ガイド部200上に偏光板100の粘着剤151が流出したか否かを確認するステップをさらに含んでもよいし、このステップにより、偏光板100の粘着剤151が流出した場合の摩擦力の情報と、偏光板100の粘着剤151が流出しない場合の摩擦力の情報とに基づいて偏光板100の粘着剤151の流出の有無を判別できる判別基準を導出することができる。
【0050】
ガイド部200上に偏光板100の粘着剤151が流出したか否かを確認する方法には多様な方法があり得、本発明の実施例では、肉眼で確認する方法による。
【0051】
本発明の実施例では、偏光板100が提供されるガイド部200の一面にガラス210を形成して、肉眼で容易に粘着剤151の流出の有無を確認できるようにした。
【0052】
図6は、偏光板の移動方向による摩擦力測定実験の結果を例示的に示すグラフである。
【0053】
図6を参照すれば、偏光板100の移動方向によって互いに異なる大きさの摩擦力の値が測定されたことを確認することができる。本グラフにおいて、A区間は、偏光板100を第1方向に移動させた場合の運動摩擦力を示し、B区間は、偏光板100を第2方向に移動させた場合の運動摩擦力を示す。
【0054】
本グラフにおいて、摩擦力の値が0の区間は、偏光板100に対して外力が加えられる前を意味し、摩擦力の大きさが増加する区間は、偏光板100の静止摩擦力を示す区間で、この区間の摩擦力の大きさは、つまり、偏光板100に対して加えられる外力の大きさと同一であると考えられる。
【0055】
本グラフにおいて、A区間は、B区間より摩擦力の値がさらに大きく測定されたが、このような摩擦力の値の差は、偏光板100の移動方向による接触摩擦力の差によるか、偏光板100の移動方向による接触摩擦力および粘着剤151の流出によるものであってもよい。
【0056】
本発明の実施例では、前述のように、偏光板100の移動方向による摩擦力の値の差を算出した後、粘着剤151の流出の有無を確認するステップを追加的に経ることで、摩擦力の値の差が実際に粘着剤151の流出によるかを確認した。
【0057】
以下、図7図10を参照して、本発明による実験の結果について説明する。
【0058】
図7は、本発明の実験例であって、カールの大きさごとに偏光板の移動方向による偏光板とガイド部との間に作用する摩擦力の測定結果を示すグラフであり、図8は、本発明の実験のために用意された偏光板の多様な裁断面の形状を示す図であり、図9A~9Cは、本発明の実験例であって、偏光板のカールの大きさ条件および偏光板の裁断面の形状条件ごとに偏光板の移動方向による偏光板とガイド部との間に作用する摩擦力の測定結果を示すグラフであり、図10は、図9A~9Cの測定結果を偏光板の移動方向による摩擦力測定値の差として示すグラフである。
【0059】
以下に説明する本発明で実施した実験で用いた偏光板100のスペックは表1の通りである。
【0060】
【表1】
【0061】
上記表中、上部支持体層(TAC)は、機能性コーティング層(ASG5)を含む厚さで、本実験では、上部支持体層(TAC)60μm、機能性コーティング層4μmの厚さである偏光板を用いた。一方、テーパ角度θおよびカールの大きさcは変更しながら実施した。図7は、テーパ角度θが90゜の偏光板100に対してカールの大きさcをそれぞれ15゜、30゜、50゜に調節しながら摩擦力の値を測定した結果に関するグラフであり、実験の結果は下記表2から確認することができる。
【0062】
【表2】
【0063】
摩擦力の流出の有無の判別基準を導出するために、まず、偏光板100の一端部に形成されるカールの大きさc条件を表2のように変更しながら偏光板100の移動方向による摩擦力の値A、Bをそれぞれ測定した後、測定された摩擦力の値の差(|A-B|)を算出した。算出された摩擦力の値の差(|A-B|)は、偏光板100のカールの大きさcが15゜および30゜の場合、それぞれ5.7および5.2と類似しており、カールの大きさcが50゜の場合には、31.7と偏光板100の移動方向による摩擦力の値の差がやや大きくなった。
【0064】
一方、摩擦力の値の差(|A-B|)を算出した後、実際に偏光板100からガイド部200のガラス210上に粘着剤151が流出したか否かを確認した。その結果、カールの大きさcが15゜および30゜の場合には、ガラス210上に粘着剤151が流出しておらず、カールの大きさcが50゜の場合には、粘着剤151の流出が発生したことが確認された。
【0065】
表2の実験結果から、テーパ角度θが90゜の偏光板100の場合、摩擦力の値の差(|A-B|)が少なくとも下記<式1>の範囲を満足する時、偏光板100から粘着剤151が流出しないことが分かる。
<式1>
0≦|A-B|<31.7
【0066】
一方、図9A~9Cおよび図10は、カールの大きさcおよびテーパ角度θを変更しながら図7と同様の実験を実施した結果を示すグラフであって、図9A~9Cおよび図10による実験結果は下記表2~表4から確認することができる。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
テーパ角度θおよびカールの大きさcを変更しながら偏光板100の移動方向による摩擦力の値を測定した後、偏光板100の移動方向による摩擦力の値の差(|A-B|)を算出し、ガラス210上の粘着剤151の流出の有無を確認した。表3の場合、テーパ角度θが51゜および108゜の偏光板100は、表2の実験結果よりも、偏光板100の移動方向による摩擦力の値の差(|A-B|)が小さく算出され、実際に肉眼でもガラス210上に粘着剤151の流出が確認されなかった。また、偏光板100の移動方向による摩擦力の値の差(|A-B|)が13と算出されたテーパ角度θが85゜の偏光板100の場合にも、ガラス210上に粘着剤151が流出しないことが明らかになった。一方、テーパ角度θが76゜、95゜、および132゜の偏光板100は、粘着剤151が流出したことが確認された。
【0071】
表3の実験結果によれば、摩擦力の値の差(|A-B|)が少なくとも下記<式2>の範囲を満足する時、偏光板100から粘着剤151が流出しないことが分かる。
<式2>
0≦|A-B|<20.5
【0072】
表4に関して、偏光板100の移動方向による摩擦力の値の差(|A-B|)が15.7と算出されたテーパ角度θが76゜の偏光板100の場合、肉眼での確認結果、ガラス210上に粘着剤151は流出しないことが明らかになった。
【0073】
表5によれば、テーパ角度θが76゜、85゜、および132゜の偏光板100の場合には、肉眼上、粘着剤151が流出しないことが確認され、テーパ角度θが51゜、95゜、および108゜の場合には、粘着剤151の流出が発生したことが確認された。
【0074】
本発明の実施例による実験を繰り返し実施した結果、どのようなテーパ角度θおよびカールの大きさc条件でも偏光板100の移動方向による摩擦力の値の差が下記式3を満足する場合には、偏光板100から粘着剤151が流出しないことが確認された。
【0075】
したがって、<式3>は、本発明の実施例により導出された偏光板100の粘着剤151の流出の有無の判別基準に相当することができる。
<式3>
0<|A-B|≦20
【0076】
一方、本実施例において、粘着剤151の流出の程度は、摩擦力の差(|A-B|)に比例すると見なされることから、摩擦力の差(|A-B|)が大きいほど、当該条件で偏光板100の移動時に粘着剤151の流出が多く生じたと考えられる。
【0077】
以上説明したように、本発明の実施例による偏光板の粘着剤の流出の有無または流出の程度の定量化方法は、粘着剤151の流出に対する判別基準を導出することにより、実際の搬送設備1上で偏光板100を搬送させるに際して、判別基準に基づいて粘着剤151が流出しないか、粘着剤151の流出を最小化できる条件を適用して、粘着剤151の流出に備えられる効果がある。
【0078】
また、本発明の実施例において、偏光板100の移動方向による摩擦力測定値の差は、肉眼で確認した粘着剤151の流出の有無または流出の程度と優れた関連性を示していることから、粘着剤151の流出の有無または流出の程度に対する正確度の高い判別基準を提供できる効果がある。
【0079】
たとえ、本発明が上記の言及された望ましい実施例に関して説明されたが、発明の要旨と範囲を逸脱することなく多様な修正や変形をすることが可能である。したがって、添付した特許請求の範囲には、本発明の要旨に属する限り、かかる修正や変形を含むであろう。
【符号の説明】
【0080】
100 偏光板
110 保護フィルム層
120 上部支持体層
130 偏光子層
140 下部支持体層
150 粘着層
151 粘着剤
160 離型フィルム層
170 裁断面
200 ガイド部
210 ガラス
300 偏光板提供部
310 クランプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10